JP6887396B2 - 異方導電性部材の製造方法 - Google Patents

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本発明は、絶縁性基材を貫通する複数の導電性を備える導通路を有する異方導電性部材、異方導電性部材の製造方法、および異方導電性部材を有する接合体の製造方法に関し、特に、導通路が突出部を有し、突出部の先端側の断面積が小さい異方導電性部材、異方導電性部材の製造方法、および接合体の製造方法に関する。
絶縁性基材に設けられた複数の貫通孔に金属等の導電性物質が充填されてなる構造体は、近年ナノテクノロジーでも注目されている分野のひとつであり、例えば、異方導電性部材としての用途が期待されている。
異方導電性部材は、半導体素子等の電子部品と回路基板との間に挿入し、加圧するだけで電子部品と回路基板間の電気的接続が得られるため、半導体素子等の電子部品等の電気的接続部材、および機能検査を行う際の検査用コネクタ等として広く使用されている。
特に、半導体素子等の電子部品は、ダウンサイジング化が顕著である。従来のワイヤーボンディングのような配線基板を直接接続する方式、フリップチップボンディング、およびサーモコンプレッションボンディング等では、電子部品の電気的な接続の安定性を十分に保証することができないため、電子接続部材として異方導電性部材が注目されている。
例えば、特許文献1には、1000万個/mm2以上の密度でマイクロポア貫通孔を有する基材からなり、一部のマイクロポア貫通孔が、基材の材料以外の物質で充填されている、微細構造体の製造方法が記載されている。特許文献1の微細構造体の製造方法では、基材がアルミナであり、アルミニウム基板に、少なくとも、(A)陽極酸化処理によりマイクロポアを有する酸化皮膜を形成する処理、(B)上述の(A)処理で得られた酸化皮膜から、アルミニウムを除去する処理、(C)上述の(B)処理でアルミニウムが除去された酸化皮膜に存在するマイクロポアの一部を貫通させる処理、(D)上述の(C)処理で貫通させたマイクロポア内に、酸化皮膜以外の物質を充填させる処理、(E)上述の(D)処理後の酸化皮膜の表面および裏面を、化学機械研磨処理によって平滑化する表面平滑化処理、をこの順に施している。
また、特許文献2には、絶縁性基材の厚み方向に設けられた複数の貫通孔の内部に導電性材料を有する異方導電性部材が記載されている。特許文献2の異方導電性部材は、貫通孔の内部に、導電性材料とともに樹脂が存在し、貫通孔が導電性材料によって絶縁性基材の厚み方向に導通されており、樹脂の熱膨張率が100× 10-6-1以上である。
特開2013−167023号公報 特開2014−71962号公報
上述の特許文献1は、導通路の設置密度を飛躍的に向上させ、高集積化が一層進んだ現在においても半導体素子等の電子部品の検査用コネクタ等として使用することができる。上述の特許文献2は、電極との密着力が高く、優れた導通信頼性を達成することができる。
しかしながら、異方導電性部材と接続対象とを接合する場合、接合条件として、より低い接合温度であること、より低い接合圧力であることが望まれているのが現状である。上述の特許文献1および特許文献2では、上述の接合条件のように、より低い接合温度、より低い接合圧力では接続対象との十分な接合が得られない虞がある。
本発明の目的は、接合対象との接合性に優れる異方導電性部材、異方導電性部材の製造方法、および接合体の製造方法を提供することにある。
上述の目的を達成するために、本発明は、絶縁性基材と、絶縁性基材の厚み方向に貫通して設けられた、複数の導通路とを有し、導通路は、導電性物質で構成されており、絶縁性基材内の貫通部と、絶縁性基材の少なくとも一方の面から突出した突出部とを備え、導通路は、突出部が突出する絶縁性基材の面からの高さをhとし、突出部が突出する絶縁性基材の面から0.8hに相当する位置における断面積をSとし、導通路の貫通部の断面積をSdとするとき、S<Sdである、異方導電性部材を提供するものである。
絶縁性基材は、バルブ金属の陽極酸化膜であり、導通路は、陽極酸化膜の厚み方向に貫通して設けられたマイクロポアに充填された金属で構成されていることが好ましい。
絶縁性基材は、厚みが1μm以上30μm以下であることが好ましい。
0.8hに相当する位置における断面積Sと、貫通部の断面積Sdとは、0.1Sd<S≦0.95Sdの関係にあることが好ましい。
突出部の0.8hに相当する位置における断面積は、突出部1つにつき2000nm以上35000nm以下であることが好ましい。
突出部の高さhは、100nm以上であることが好ましい。
突出部は、絶縁性基材の面から延びるに従い断面積が減少していることが好ましい。
突出部は、その先端に凹部が形成されていることが好ましい。
本発明は、絶縁性基材と、絶縁性基材の厚み方向に貫通して設けられた、複数の導通路とを有し、導通路は、導電性物質で構成されており、絶縁性基材内の貫通部と、絶縁性基材の少なくとも一方の面から突出した突出部とを備える、異方導電性部材の製造方法であって、導通路が設けられ突出部が突出した絶縁性基材を形成する工程と、突出部が突出する絶縁性基材の面からの高さをhとし、突出部が突出する絶縁性基材の面から0.8hに相当する位置における断面積を貫通部の断面積よりも小さくする工程とを有する異方導電性部材の製造方法を提供するものである。
0.8hに相当する位置における断面積を貫通部の断面積よりも小さくする工程は、ドライエッチング処理、ウエットエッチング処理、ガス還元処理および摩擦処理のうち、少なくとも1つの処理を実施することが好ましい。
導通路が設けられ突出部が突出した絶縁性基材を形成する工程の前に、厚み方向に貫通するマイクロポアを有する絶縁性基材を形成する工程と、マイクロポアに導電性物質を充填する工程と、充填した導電性物質を絶縁性基材から突出させ、絶縁性基材の面から突出した突出部を形成する工程とを有することが好ましい。
本発明は、導電性を有する導電部を有する導電部材と、本発明の異方導電性部材とを、導電部と異方導電性部材の突出部とを接触させて接合する接合工程を有する、接合体の製造方法を提供するものである。
導電部を有する導電部材は、電極を有する基板であることが好ましい。
本発明によれば、接合対象との接合性に優れる異方導電性部材を得ることができ、更には異方導電性部材の製造方法を提供できる。また、異方導電性部材を有する接合体の製造方法を提供できる。
本発明の実施形態の異方導電性部材の第1の例を示す模式的断面である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の第1の例を示す平面図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の第1の例を拡大して示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の第2の例を示す模式図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の第3の例を示す模式図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の第4の例を示す模式図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の第5の例を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の第1の例の一工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の第1の例の一工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の第1の例の一工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の第1の例の一工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の第1の例の一工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の第1の例の一工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の第1の例の一工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の第1の例の一工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の第2の例の一工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の第2の例の一工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の供給形態の一例を示す模式的斜視図である。 本発明の実施形態の異方導電性部材の供給形態の一例を示す模式的斜視図である。 本発明の実施形態の接合体の第1の例を示す模式図である。 本発明の実施形態の接合体の第2の例を示す模式図である。 本発明の実施形態の接合体の製造方法の一工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の接合体の製造方法の一工程を示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の接合体の製造方法の一工程を拡大して示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の接合体の本接合条件の第1の例を示すグラフである。 本発明の実施形態の接合体の本接合条件の第2の例を示すグラフである。 本発明の実施形態の接合体の本接合条件の第3の例を示すグラフである。 本発明の実施形態の接合体の本接合条件の第4の例を示すグラフである。 本発明の実施形態の接合体の本接合条件の第5の例を示すグラフである。 本発明の実施形態の接合体の本接合条件の第6の例を示すグラフである。 本発明の実施形態の接合体の本接合条件の第7の例を示すグラフである。 半導体パッケージの第1の例を示す模式的断面図である。 半導体パッケージの第2の例を示す模式的断面図である。 半導体パッケージの第3の例を示す模式的断面図である。 半導体パッケージの第4の例を示す模式的断面図である。 半導体パッケージの第5の例を示す模式的断面図である。 半導体パッケージ基板を積層した構成を示す模式的断面図である。 半導体パッケージの第6の例を示す模式的断面図である。 半導体パッケージの第7の例を示す模式的断面図である。 同軸構造を説明するための模式的断面図である。 同軸構造を説明するための模式的平面図である。 本発明の実施形態の電子デバイスの第1の例を示す模式図である。 本発明の実施形態の電子デバイスの第2の例を示す模式図である。 本発明の実施形態の電子デバイスの第3の例を示す模式図である。 本発明の実施形態の電子デバイスの第4の例を示す模式図である。 本発明の実施形態の電子デバイスの第5の例を示す模式図である。 本発明の実施形態の電子デバイスの第6の例を示す模式図である。
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の異方導電性部材、異方導電性部材の製造方法、および接合体の製造方法を詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
なお、以下において数値範囲を示す「〜」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値α〜数値βとは、εの範囲は数値αと数値βを含む範囲であり、数学記号で示せばα≦ε≦βである。
「直交」等の角度は、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。また、「同一」とは、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。まず、異方導電性部材について説明する。
(異方導電性部材)
図1は本発明の実施形態の異方導電性部材の第1の例を示す模式的断面であり、図2は本発明の実施形態の異方導電性部材の第1の例を示す平面図であり、図3は本発明の実施形態の異方導電性部材の第1の例を拡大して示す模式的断面図である。なお、図2および図3では樹脂層19の図示を省略している。
図1に示す異方導電性部材10は、絶縁性基材12と、絶縁性基材12に設けられ、絶縁性基材12の厚み方向Dtに貫通して設けられた複数の貫通孔14と、複数の貫通孔14に設けられた導通路16とを有する。
複数の導通路16は、絶縁性基材12の厚み方向Dtに貫通して設けられている。複数の導通路16は、それぞれ絶縁性基材12の厚み方向に貫通して設けられた柱状部材である。
複数の導通路16は、それぞれ金属等の導通性物質で構成されおり、導電性を有し、電気の導通路として機能し、電気信号を伝達するものである。後述の接合体および電子デバイスにおいても導通路16は電気信号を伝達するものとして機能する。複数の導通路16は絶縁性基材12によって互いに電気的に絶縁された状態で存在する。
ここで、「互いに電気的に絶縁された状態」とは、絶縁性基材の内部に存在している各導通路16が絶縁性基材12の内部において互いに各導通路間の導通性が十分に低い状態であることを意味する。
異方導電性部材10は、絶縁性基材12の厚み方向Dtと直交する方向xには導電性が十分に低く、厚み方向Dtに導電性を有する。
導通路16は、絶縁性基材12内の貫通部16aと、絶縁性基材12の厚み方向Dtの表面12aから突出した突出部16bと、厚み方向Dtの裏面12bから突出した突出部16cとを備えるものである。また、導通路16の突出部16bおよび突出部16cを埋設する樹脂層19が設けられている。
貫通部16aは、導通路16のうち絶縁性基材12内にある部位、すなわち、貫通孔14の部分に相当する部位である。貫通部16aと、突出部16b、16cとは一体構成である。
図2に示すように、導通路16は、絶縁性基材12に対して、中心間距離pで配置されている。導通路16の中心間距離p、および密度等については後に詳細に説明する。
図3に示すように導通路16の突出部16bは、突出部16bが突出する絶縁性基材12の表面12aからの高さをhとする。導通路16の突出部16cについても、突出部16cが突出する絶縁性基材12の裏面12bからの高さをhとする。
図3に示す導通路16の突出部16bの高さhと、導通路16の突出部16cの高さhとは同じである。なお、高さhは、部材の寸法を示すものであるが、特定の数値に限定されるものではない。このため、図3に示す導通路16の突出部16bの高さhと、導通路16の突出部16cの高さhとは同じ記号で表わしているが、突出部16bと突出部16cとでは高さhは異なっていてもよい。
異方導電性部材10では、突出部が突出する絶縁性基材の面から0.8hに相当する位置における断面積をSとする。すなわち、突出部16bの表面12aから0.8hに相当する位置における断面積がSであり、突出部16cの裏面12bから0.8hに相当する位置における断面積がSである。
また、導通路16の貫通部16aの断面積をSdとする。このとき、S<Sdである。すなわち、突出部16b、16cの先端16e側の断面積Sは、導通路16の貫通部16aの断面積Sdよりも小さい。断面積を小さくすることにより、導通路16の突出部16b、16cの変形応力を小さくすることができ、突出部16b、16cの変形に必要な荷重を小さくすることができる。
また、S<Sdであると突出部16b、16cの変形応力が小さくなり、突出部16b、16cが変形しやすくなる。このため、突出部16b、16cが半導体素子等の接合対象に対して接触しやすくなり、突出部16b、16cと接合対象との接触状態が良好になり、十分な導通面積を確保でき電気抵抗を小さくできる。突出部と接合対象との接触状態が良好になることから、さらには、接合対象との接合強度も高くでき、異方導電性部材と接合対象との剥離等が抑制される。このように、異方導電性部材10は、接合対象との接合性に優れたものとなる。
突出部16b、16cについては、好ましくは0.1Sd<S≦0.95Sdの関係にある。突出部16b、16cの断面積が貫通部16aの断面積より5%以上小さければ、すなわち、S≦0.95Sdであれば、突出部16b、16cの変形に必要な荷重を小さくすることができる。なお、突出部16b、16cの断面積の下限値は、0.1Sd<Sであることが好ましい。
より好ましくは、0.3Sd≦S≦0.6Sdである。0.3Sd≦S≦0.6Sdであると、変形に必要な荷重を小さくできる上に、接合対象との電気抵抗が小さくなり、かつ接合対象との接合強度も高くなる。
なお、突出部16b、16cを含め、導通路16を細くして、突出部16b、16cの断面積を小さくした場合でも、上述のように導通路16の突出部16b、16cの変形応力を小さくすることができ、突出部16b、16cの変形に必要な荷重を小さくすることができる。しかしながら、導通路16は貫通孔14に設けられるものである。この場合、細い貫通孔を作製し、細い貫通孔に導電性物質を充填する必要がある。導電性物質が細い貫通孔に充填されないこともあり、十分に細い導通路16を形成することが困難である。
これに対して、異方導電性部材10では、上述のように0.8hに相当する位置における断面積Sを貫通部16aの断面積Sdよりも小さくすることにより、突出部16b、16cの変形応力を小さくし、突出部16b、16cの変形に必要な荷重を小さくしており、細い導通路16を形成する必要がない。
図3に示す突出部16b、16cは、いずれも周面16dの断面の輪郭形状が、貫通部16aから突出部16b、16cの先端16eに向かって傾斜する直線であり、先端16eが平面になっている。
複数の導通路16は、それぞれ突出部16bの長さ、すなわち、突出部16bの高さhは同じであること、全ての先端16eが平面PL上にあり、先端16eが略同一平面上に位置するように設けられていることが好ましい。
また、突出部16cについても長さ、すなわち、突出部16bの高さhが同じであり、全ての先端16eの先端が平面PL上にあり、先端16eが略同一平面上に位置するように設けられていることが好ましい。
上述の突出部16bの長さが同じ、すなわち、先端16eが略同一平面上に位置するとは、全ての突出部16bの先端16eの位置が±100nmの範囲内にあることをいう。すなわち、突出部16bの先端16eの変動が±100nmの範囲内である。
また、上述の突出部16cの長さが同じ、すなわち、先端16eが略同一平面上に位置するとは、全ての突出部16cの先端の高低差が±50nmの範囲内にあることをいう。すなわち、突出部16cの先端部21の先端の変動が±50nmの範囲内である。
図1に示す異方導電性部材10の構成では、絶縁性基材12の表面12aから突出した突出部16bと、裏面12bから突出した突出部16cとがある構成としたが、これに限定されるものではない。異方導電性部材10は、絶縁性基材12の少なくとも一方の面に突出部があればよく、すなわち、異方導電性部材10としては、突出部16bおよび突出部16cのうち、いずれか一方がある構成でもよい。
しかしながら、異方導電性部材10を接続対象と接合する際、上述のように1つの導通路16の突出部16bと突出部16cの両方に、貫通部16aの断面積Sdよりも小さい断面積Sを有する方が好ましい。この場合、突出部16bと突出部16cのいずれか一方の断面積Sを小さくするよりも、接合の際に突出部16bと突出部16cが小さい荷重で変形する。このため、より小さな荷重で接合できる。
なお、異方導電性部材10の突出部の構成は、図1〜図3に示す構成に限定されるものではない。
図4は本発明の実施形態の異方導電性部材の第2の例を示す模式図であり、図5は本発明の実施形態の異方導電性部材の第3の例を示す模式図であり、図6は本発明の実施形態の異方導電性部材の第4の例を示す模式図である。図7は本発明の実施形態の異方導電性部材の第5の例を示す模式的断面図である。
なお、図4〜図7において、図1〜図3に示す異方導電性部材10と同一構成物に同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。図4〜図6は、異方導電性部材10の全体を示すものではなく、異方導電性部材10のうち、突出部を示するものである。図4〜図7では、突出部16bと突出部16cのうち、代表して突出部16bを示しているが、突出部16cも突出部16bと同様の構成とすることができる。
また、図4〜図7に示す突出部16bは、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により、断面形状を得ることができる。
上述のS<Sdを満たすものであれば、突出部は、絶縁性基材12の面から延びるに従い断面積が減少する構成でもよい。
例えば、図4に示す突出部16bのように、突出部16bは、周面16dの断面の輪郭形状が曲線で構成され、絶縁性基材12の表面12aから先端16eに向かうに従い突出部16bの断面積が連続的に減少する構成でもよい。
また、図5に示す突出部16bのように、周面16dの断面の輪郭形状が曲線と直線とで構成され、絶縁性基材12の表面12aから先端16eに向かうに従い突出部16bの断面積が連続的に減少した後、最も小さい断面積を維持して状態で先端16eに向かって伸びた構成でもよい。
さらには、図6に示す突出部16bのように、上述のS<Sdを満たすが、0.8hに相当する位置よりも先端16eに近い側の断面積が断面積Sよりも大きくなっている構成でもよい。図6では周面16dの断面の輪郭形状が直線で構成され、絶縁性基材12の表面12aから先端16eに向かうに従い突出部16bの断面積が連続的に単調に減少した後、0.8hに相当する位置から先端16eに向かうに従い断面積が連続的に単調に増加する構成でもよい。この場合でも、先端16eの断面積が大きくなるが、突出部16bの変形に要する応力が小さくなり、変形に必要な荷重を小さくすることができる。図6に示す突出部16bは、周面16dの断面の輪郭形状が直線で構成されるものに限定されるものではなく、絶縁性基材12の表面12aから0.8hに相当する位置迄と、0.8hに相当する位置から先端16e迄とのそれぞれの範囲を、いずれも曲線で構成されていてもよく、直線と曲線との組合せで構成されていてもよい。
上述のS<Sdを満たすものであれば、周面16dの形状変化により断面積を小さくすることに限定されるものではない。図7に示す突出部16bのように、貫通部16aと突出部16bの外径は同じ状態で、突出部16bの先端16eに凹部16gが形成された構成でもよい。凹部16gは、例えば、表面12aに対して凸であるが、凹部16gの形状は特に限定されるものではなく、例えば、半球状でも、三角錐状でも、四角錐状でも、四角錐台状でもよい。凹部16gを設けること、すなわち、先端16eの一部を除去して断面積を小さくする構成でもよい。この場合でも、突出部16bは上述のS<Sdを満たしており、突出部16bの変形に要する応力が小さくなり、変形に必要な荷重を小さくすることができる。
上述の図4〜図7に示す突出部を有する異方導電性部材10は、上述の図1〜図3に示す異方導電性部材10と同様に接合対象との接合性に優れたものとなる。
次に、異方導電性部材の製造方法について説明する。
(異方導電性部材の製造方法)
<異方導電性部材の製造方法の第1の例>
図8〜図15は、本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の第1の例を工程順に示す模式的断面図である。
異方導電性部材は、絶縁性基材を有するものである。絶縁性基材は、特に限定されるものではなく、例えば、バルブ金属の陽極酸化膜で構成される。絶縁性基材として、アルミニウムの陽極酸化膜を例に説明する。
まず、図8に示すように、アルミニウム基板20を用意する。
最終的に得られる異方導電性部材10(図1参照)の絶縁性基材12(図1参照)の厚み、すなわち、陽極酸化膜24の厚み、および加工する装置等に応じて、アルミニウム基板20は、大きさおよび厚みが適宜決定されるものである。アルミニウム基板20は、例えば、矩形状の板材である。
次に、アルミニウム基板20の片側の表面20a(図8参照)を陽極酸化処理する。これにより、アルミニウム基板20の片側の表面20a(図8参照)が陽極酸化されて、図9に示すように、厚み方向Dtに延在する複数のマイクロポア22が形成され、マイクロポア22の底部に存在するバリア層23を有する陽極酸化膜24が形成される。上述の陽極酸化する工程を陽極酸化処理工程という。陽極酸化処理工程により、複数のマイクロポア22を有する陽極酸化膜24が形成される。
複数のマイクロポア22を有する陽極酸化膜24には、上述のようにマイクロポア22の底部にバリア層23(図9参照)が存在するが、図10に示すようにバリア層23(図9参照)を除去する。このバリア層23を除去する工程をバリア層除去工程という。
バリア層除去工程において、アルミニウムよりも水素過電圧の高い金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いることにより、陽極酸化膜24のバリア層23を除去すると同時に、マイクロポア22の底部に金属(金属M1)からなる金属層25aを形成する。これにより、マイクロポア22の底のアルミニウム基板20は金属層25aで被覆される。
次に、図11に示すように、陽極酸化膜24のマイクロポア22の内部に金属25bを充填する。マイクロポア22の内部に、導電性物質として、例えば、金属25bを充填することにより、導電性を有する導通路16が形成される。この場合、金属(金属M1)からなる金属層25aを電解めっきの電極として用いることができる。
マイクロポア22の内部に金属25bを充填することを金属充填工程という。金属充填工程には、電解めっきが用いられ、金属充填工程については後に詳細に説明する。
なお、上述のように複数のマイクロポア22を有する絶縁性基材12を形成することができれば、アルミニウム基板20に限定されるものではない。
金属充填工程の前のバリア層除去工程において、アルミニウムよりも水素過電圧の高い金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いてバリア層を除去することにより、バリア層23を除去するだけでなく、マイクロポア22の底部に露出したアルミニウム基板20にアルミニウムよりも水素ガスが発生しにくい金属M1の金属層25aが形成される。その結果、金属充填の面内均一性が良好となる。これは、めっき液による水素ガスの発生が抑制され、電解めっきによる金属充填が進行しやすくなったと考えられる。
また、バリア層除去工程において、陽極酸化処理工程における電圧の30%未満の範囲から選択される電圧(保持電圧)の95%以上105%以下の電圧に通算5分以上保持する保持工程を設け、金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を適用することを組み合わせることにより、めっき処理時の金属充填の均一性が大きく良化することを見出している。
詳しいメカニズムは不明だが、バリア層除去工程において、金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いることでバリア層下部に金属M1の層が形成され、これによりアルミニウム基板と陽極酸化膜との界面がダメージを受けることを抑制することができ、バリア層の溶解の均一性が向上したためと考えられる。
なお、バリア層除去工程において、マイクロポア22の底部に金属(金属M1)からなる金属層25aを形成したが、これに限定されるものではなく、バリア層23だけを除去し、マイクロポア22の底にアルミニウム基板20を露出させる。アルミニウム基板20を露出させた状態で、アルミニウム基板20を電解めっきの電極として用いてもよい。
次に、金属充填工程の後、図12に示すように陽極酸化膜24のアルミニウム基板20が設けられていない側の表面を厚み方向に一部除去し、金属充填工程で充填した金属25を陽極酸化膜24の表面24aよりも突出させる。すなわち、マイクロポア22に充填された導電性物質を絶縁性基材12から突出させる。これにより、導通路16を陽極酸化膜24の表面24aよりも突出させ、陽極酸化膜24の表面24aから突出した突出部16bを得る。充填した金属25を陽極酸化膜24の表面24aよりも突出させることを、表面突出工程という。図12では導通路16は柱状部材であり、突出部16bを含め直径が一定である。
表面突出工程の後に、突出部16bが突出する絶縁性基材の面からの高さをhとし、突出部が突出する絶縁性基材の面から0.8hに相当する位置における断面積S(図3参照)を貫通部16a(図3参照)の断面積Sd(図3参照)よりも小さくする。これにより、図13に示すように、突出部16bが縮径した導通路16を得ることができる。
上述の0.8hに相当する位置における断面積S(図3参照)を貫通部16a(図3参照)の断面積Sd(図3参照)よりも小さくする工程を縮径工程という。縮径工程は、ドライエッチング処理、ウエットエッチング処理、ガス還元処理および摩擦処理のうち、少なくとも1つの処理を実施することによりなされる。
表面突出工程の後に、図14に示すようにアルミニウム基板20を除去する。アルミニウム基板20を除去する工程を基板除去工程という。一方の突出部16bだけの構成の場合、図14に示す状態のものが異方導電性部材10である。
次に、図14に示すように、基板除去工程の後に陽極酸化膜24のアルミニウム基板20が設けられていた側の表面を厚み方向に一部除去し、金属充填工程で充填した金属25、すなわち、導通路16を陽極酸化膜24の裏面24bよりも突出させ、突出部16c(図15参照)を得る。次に、上述の突出部16bと同様に縮径工程を施し、図15に示すように、突出部16cにおいても、上述の0.8hに相当する位置における断面積S(図3参照)を貫通部16a(図3参照)の断面積Sd(図3参照)よりも小さくする。
これにより、図15に示す突出部16bと突出部16cとを有する異方導電性部材10が得られる。
充填した金属25を陽極酸化膜24の裏面24bよりも突出させることを、裏面突出工程という。
上述の表面突出工程および裏面突出工程は、両方の工程を有する態様であってもよいが、表面突出工程および裏面突出工程のうち、一方の工程を有する態様であってもよい。表面突出工程および裏面突出工程をまとめて「突出工程」ともいう。
<異方導電性部材の製造方法の第2の例>
図16および図17は、本発明の実施形態の異方導電性部材の製造方法の第2の例を工程順に示す模式的断面図である。
なお、図16および図17において、図8〜図13に示す構成と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、図16は、上述の図13の後の状態を示す。
第2の例は、上述の第1の例に比して、以下に示す工程が異なる。図16に示すように、金属充填工程の後に陽極酸化膜24のアルミニウム基板20が設けられていない側の表面に樹脂層29を設ける。樹脂層29を設けることを樹脂層形成工程という。
次に、図17に示すように、樹脂層形成工程の後にアルミニウム基板20を除去する(基板除去工程)。これにより、図14に示す突出部16bだけを有する異方導電性部材10が得られる。
第2の例では、図18に示すように製造された異方導電性部材10が巻き芯31にロール状に巻き取られた状態で供給することを意図した態様である。異方導電性部材10の使用時に樹脂層29(図19参照)を剥離することにより、例えば、異方導電性部材として使用することができる。
<他の製造工程>
製造方法としては、例えば、上述の陽極酸化処理工程、保持工程、バリア層除去工程、金属充填工程、表面突出工程、樹脂層形成工程、基板除去工程および裏面突出工程をこの順に実施してもよい。
また、所望の形状のマスク層を用いてアルミニウム基板の表面の一部に陽極酸化処理を施してもよい。
〔絶縁性基材〕
絶縁性基材は、無機材料からなり、従来公知の異方導電性フィルム等を構成する絶縁性基材と同程度の電気抵抗率(1014Ω・cm程度)を有するものであれば特に限定されない。
なお、「無機材料からなり」とは、後述する樹脂層を構成する高分子材料と区別するための規定であり、無機材料のみから構成された絶縁性基材に限定する規定ではなく、無機材料を主成分(50質量%以上)とする規定である。
絶縁性基材としては、例えば、金属酸化物基材、金属窒化物基材、ガラス基材、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド等のセラミックス基材、ダイヤモンドライクカーボン等のカーボン基材、ポリイミド基材、これらの複合材料等が挙げられる。絶縁性基材としては、これ以外に、例えば、貫通孔を有する有機素材上に、セラミックス材料またはカーボン材料を50質量%以上含む無機材料で成膜したものであってもよい。
絶縁性基材としては、所望の平均開口径を有するマイクロポアが貫通孔として形成され、後述する導通路を形成しやすいという理由から、金属酸化物基材であることが好ましく、バルブ金属の陽極酸化膜であることがより好ましい。
ここで、バルブ金属としては、具体的には、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン等が挙げられる。これらのうち、寸法安定性がよく、比較的安価であることからアルミニウムの陽極酸化膜(基材)であることが好ましい。このため、アルミニウム基板を用いて、絶縁性基材である陽極酸化膜を形成し、異方導電性部材を製造することが好ましい。
〔アルミニウム基板〕
アルミニウム基板は、特に限定されず、その具体例としては、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハ、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等が挙げられる。
アルミニウム基板のうち、陽極酸化処理工程により陽極酸化膜を設ける表面は、アルミニウム純度が、99.5質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上であることがより好ましく、99.99質量%以上であることが更に好ましい。アルミニウム純度が上述の範囲であると、貫通孔配列の規則性が十分となる。
また、アルミニウム基板のうち陽極酸化処理工程を施す片側の表面は、あらかじめ熱処理、脱脂処理および鏡面仕上げ処理が施されることが好ましい。
ここで、熱処理、脱脂処理および鏡面仕上げ処理については、特開2008−270158号公報の[0044]〜[0054]段落に記載された各処理と同様の処理を施すことができる
〔陽極酸化処理工程〕
陽極酸化工程は、上述のアルミニウム基板の片面に陽極酸化処理を施すことにより、上述のアルミニウム基板の片面に、厚み方向に貫通する貫通孔と貫通孔の底部に存在するバリア層とを有する陽極酸化膜を形成する工程である。
陽極酸化処理は、従来公知の方法を用いることができるが、貫通孔配列の規則性を高くし、異方導電性部材の異方導電性を担保する観点から、自己規則化法または定電圧処理を用いることが好ましい。
ここで、陽極酸化処理の自己規則化法および定電圧処理については、特開2008−270158号公報の[0056]〜[0108]段落および[図3]に記載された各処理と同様の処理を施すことができる。
<陽極酸化処理>
陽極酸化処理における電解液の平均流速は、0.5〜20.0m/minであることが好ましく、1.0〜15.0m/minであることがより好ましく、2.0〜10.0m/minであることが更に好ましい。
また、電解液を上述の条件で流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。特に、かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため好ましい。このようなかくはん装置としては、例えば、「マグネティックスターラーHS−50D(AS ONE製)」等が挙げられる。
陽極酸化処理は、例えば、酸濃度1〜10質量%の溶液中で、アルミニウム基板を陽極として通電する方法を用いることができる。
陽極酸化処理に用いられる溶液としては、酸溶液であることが好ましく、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸、グリコール酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸等がより好ましく、中でも硫酸、リン酸、シュウ酸が特に好ましい。これらの酸は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には、電解液濃度0.1〜20質量%、液温−10〜30℃、電流密度0.01〜20A/dm2、電圧3〜300V、電解時間0.5〜30時間であることが好ましく、電解液濃度0.5〜15質量%、液温−5〜25℃、電流密度0.05〜15A/dm2、電圧5〜250V、電解時間1〜25時間であることがより好ましく、電解液濃度1〜10質量%、液温0〜20℃、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧10〜200V、電解時間2〜20時間であることが更に好ましい。
上述の陽極酸化処理工程は、例えば、異方導電性部材10を図18に示すように所定径および所定幅の巻き芯31に巻き取られた形状で供給する観点から、陽極酸化処理により形成される陽極酸化膜の厚みが30μm以下であることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。なお、陽極酸化膜の厚みは、陽極酸化膜を厚さ方向に対して集束イオンビーム(FIB)で切削加工し、その断面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により表面写真(倍率5万倍)を撮影し、10点測定した平均値として算出した。
〔保持工程〕
異方導電性部材の製造方法は保持工程を有してもよい。保持工程は、上述の陽極酸化処理工程の後に、1V以上かつ上述の陽極酸化処理工程における電圧の30%未満の範囲から選択される保持電圧の95%以上105%以下の電圧に通算5分以上保持する工程である。言い換えると、保持工程は、上述の陽極酸化処理工程の後に、1V以上かつ上述の陽極酸化処理工程における電圧の30%未満の範囲から選択される保持電圧の95%以上105%以下の電圧で通算5分以上電解処理を施す工程である。
ここで、「陽極酸化処理における電圧」とは、アルミニウムと対極間に印加する電圧であり、例えば、陽極酸化処理による電解時間が30分であれば、30分の間に保たれている電圧の平均値をいう。
陽極酸化膜の側壁厚み、すなわち、貫通孔の深さに対してバリア層の厚みを適切な厚みに制御する観点から、保持工程における電圧が、陽極酸化処理における電圧の5%以上25%以下であることが好ましく、5%以上20%以下であることがより好ましい。
また、面内均一性がより向上する理由から、保持工程における保持時間の合計が、5分以上20分以下であることが好ましく、5分以上15分以下であることがより好ましく、5分以上10分以下であることが更に好ましい。
また、保持工程における保持時間は、通算5分以上であればよいが、連続5分以上であることが好ましい。
更に、保持工程における電圧は、陽極酸化処理工程における電圧から保持工程における電圧まで連続的または段階的に降下させて設定してもよいが、面内均一性が更に向上する理由から、陽極酸化処理工程の終了後、1秒以内に、上述の保持電圧の95%以上105%以下の電圧に設定することが好ましい。
上述の保持工程は、例えば、上述の陽極酸化処理工程の終了時に電解電位を降下させることにより、上述の陽極酸化処理工程と連続して行うこともできる。
上述の保持工程は、電解電位以外の条件については、上述の従来公知の陽極酸化処理と同様の電解液および処理条件を採用することができる。
特に、保持工程と陽極酸化処理工程とを連続して施す場合は、同様の電解液を用いて処理することが好ましい。
〔バリア層除去工程〕
バリア層除去工程は、例えば、アルミニウムよりも水素過電圧の高い金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いて、陽極酸化膜のバリア層を除去する工程である。
上述のバリア層除去工程により、バリア層が除去され、かつ、図3にも示す通り、マイクロポア22の底部に、金属M1からなる金属層25aが形成されることになる。
ここで、水素過電圧(hydrogen overvoltage)とは、水素が発生するのに必要な電圧をいい、例えば、アルミニウム(Al)の水素過電圧は−1.66Vである(日本化学学会誌,1982、(8),p1305−1313)。なお、アルミニウムの水素過電圧よりも高い金属M1の例およびその水素過電圧の値を以下に示す。
<金属M1および水素(1N H2SO4)過電圧>
・白金(Pt):0.00V
・金(Au):0.02V
・銀(Ag):0.08V
・ニッケル(Ni):0.21V
・銅(Cu):0.23V
・錫(Sn):0.53V
・亜鉛(Zn):0.70V
後述する陽極酸化処理工程において充填する金属M2と置換反応を起こし、貫通孔の内部に充填される金属の電気的な特性に与える影響が少なくなる理由から、上述のバリア層除去工程で用いる金属M1は、金属充填工程で用いる金属M2よりもイオン化傾向が高い金属であることが好ましい。
具体的には、金属充填工程の金属M2として銅(Cu)を用いる場合には、上述のバリア層除去工程で用いる金属M1としては、例えば、Zn、Fe、Ni、Sn等が挙げられ、中でも、Zn、Niを用いることが好ましく、Znを用いるのがより好ましい。
また、金属充填工程の金属M2としてNiを用いる場合には、上述のバリア層除去工程で用いる金属M1としては、例えば、Zn、Fe等が挙げられ、中でも、Znを用いることが好ましい。
このような金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液を用いてバリア層を除去する方法は特に限定されず、例えば、従来公知の化学エッチング処理と同様の方法が挙げられる。
<化学エッチング処理>
化学エッチング処理によるバリア層の除去は、例えば、陽極酸化処理工程後の構造物をアルカリ水溶液に浸漬させ、貫通孔の内部にアルカリ水溶液を充填させた後に、陽極酸化膜の貫通孔の開口部側の表面にpH(水素イオン指数)緩衝液に接触させる方法等により、バリア層のみを選択的に溶解させることができる。
ここで、上述の金属M1のイオンを含むアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。また、アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であることが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、10〜60℃が好ましく、更に15〜45℃が好ましく、更に20〜35℃であることが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液等が好適に用いられる。
なお、pH緩衝液としては、上述のアルカリ水溶液に対応した緩衝液を適宜使用することができる。
また、アルカリ水溶液への浸漬時間は、5〜120分であることが好ましく、8〜120分であることがより好ましく、8〜90分であることが更に好ましく、10〜90分であることが特に好ましい。なかでも、10〜60分であることが好ましく、15〜60分であることがより好ましい。
〔バリア層除去工程の他の例〕
バリア層除去工程は、上述以外に、陽極酸化膜のバリア層を除去し、貫通孔の底にアルミニウム基板の一部が露出する工程でもよい。
この場合、バリア層を除去する方法は特に限定されず、例えば、陽極酸化処理工程の陽極酸化処理における電位よりも低い電位でバリア層を電気化学的に溶解する方法(以下、「電解除去処理」ともいう。);エッチングによりバリア層を除去する方法(以下、「エッチング除去処理」ともいう。);これらを組み合わせた方法(特に、電解除去処理を施した後に、残存するバリア層をエッチング除去処理で除去する方法);等が挙げられる。
〈電解除去処理〉
電解除去処理は、陽極酸化処理工程の陽極酸化処理における電位(電解電位)よりも低い電位で施す電解処理であれば特に限定されない。
電解溶解処理は、例えば、陽極酸化処理工程の終了時に電解電位を降下させることにより、陽極酸化処理と連続して施すことができる。
電解除去処理は、電解電位以外の条件については、上述した従来公知の陽極酸化処理と同様の電解液および処理条件を採用することができる。
特に、上述したように電解除去処理と陽極酸化処理とを連続して施す場合は、同様の電解液を用いて処理するのが好ましい。
(電解電位)
電解除去処理における電解電位は、陽極酸化処理における電解電位よりも低い電位に、連続的または段階的に降下させるのが好ましい。
ここで、電解電位を段階的に降下させる際の下げ幅、すなわち、ステップ幅は、バリア層の耐電圧の観点から、10V以下であることが好ましく、5V以下であることがより好ましく、2V以下であることが更に好ましい。
また、電解電位を連続的または段階的に降下させる際の電圧降下速度は、生産性等の観点から、いずれも1V/秒以下が好ましく、0.5V/秒以下がより好ましく、0.2V/秒以下が更に好ましい。
〈エッチング除去処理〉
エッチング除去処理は特に限定されないが、酸水溶液またはアルカリ水溶液を用いて溶解する化学エッチング処理であってもよく、ドライエッチング処理であってもよい。
(化学エッチング処理)
化学エッチング処理によるバリア層の除去は、例えば、陽極酸化処理工程後の構造物を酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸漬させ、マイクロポアの内部に酸水溶液またはアルカリ水溶液を充填させた後に、陽極酸化膜のマイクロポアの開口部側の表面にpH(水素イオン指数)緩衝液に接触させる方法等であり、バリア層のみを選択的に溶解させることができる。
ここで、酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。また、酸水溶液の濃度は1質量%〜10質量%であることが好ましい。酸水溶液の温度は、15℃〜80℃が好ましく、更に20℃〜60℃が好ましく、更に30℃〜50℃が好ましい。
一方、アルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。また、アルカリ水溶液の濃度は0.1質量%〜5質量%であることが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、10℃〜60℃が好ましく、更に15℃〜45℃が好ましく、更に20℃〜35℃であることが好ましい。なお、アルカリ水溶液には、亜鉛および他の金属を含有していてもよい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液等が好適に用いられる。
なお、pH緩衝液としては、上述した酸水溶液またはアルカリ水溶液に対応した緩衝液を適宜使用することができる。
また、酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8分〜120分であることが好ましく、10分〜90分であることがより好ましく、15分〜60分であることが更に好ましい。
(ドライエッチング処理)
ドライエッチング処理は、例えば、Cl2/Ar混合ガス等のガス種を用いることが好ましい。
〔金属充填工程〕
金属充填工程は、上述のバリア層除去工程の後に、電解めっきを用いて、陽極酸化膜のマイクロポアの内部に、例えば、導電性物質として金属M2を充填する工程である。金属充填工程により、導通路が形成される。
<金属M2>
上述の金属M2は、電気抵抗率が103Ω・cm以下の材料であるのが好ましく、その具体例としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)等が好適に例示される。
中でも、電気伝導性の観点から、Cu、Au、Al、Niが好ましく、Cu、Auがより好ましく、Cuが更に好ましい。
なお、金属充填工程では金属を充填しているが、導通路は金属に限定されるものではなく、導電性物質であれば酸化物導電体等でもよい。このため、金属にかえて、例えば、インジウムがドープされたスズ酸化物(ITO)等を充填してもよい。
しかしながら、金属は酸化物導電体に比して延性等に優れ変形しやすく、接合際の圧縮でも変形しやすいため、導通路は金属で構成することが好ましい。金属の中でも、Cu、Auは、上述の電気伝導性以外にも、圧縮により変形しやすい性質を有する金属であることからより好ましく、コスト等を考慮すると、Cuが更に好ましい。
<金属充填方法>
上述の金属M2をマイクロポアの内部に充填するめっき処理の方法としては、例えば、電解めっき法または無電解めっき法を用いることができる。
ここで、着色等に用いられる従来公知の電解めっき法では、選択的に孔中に金属を高アスペクトで析出(成長)させることは困難である。これは、析出金属が孔内で消費され一定時間以上電解を行なってもめっきが成長しないためと考えられる。
そのため、本発明の製造方法においては、電解めっき法により金属を充填する場合は、パルス電解または定電位電解の際に休止時間をもうける必要がある。休止時間は、10秒以上必要で、30〜60秒であるのが好ましい。
また、電解液のかくはんを促進するため、超音波を加えることも望ましい。
更に、電解電圧は、通常20V以下であって望ましくは10V以下であるが、使用する電解液における目的金属の析出電位を予め測定し、その電位+1V以内で定電位電解を行なうことが好ましい。なお、定電位電解を行なう際には、サイクリックボルタンメトリを併用できるものが望ましく、Solartron社、BAS社、北斗電工社、IVIUM社等のポテンショスタット装置を用いることができる。
めっき液は、従来公知のめっき液を用いることができる。
具体的には、銅を析出させる場合には硫酸銅水溶液が一般的に用いられるが、硫酸銅の濃度は、1〜300g/Lであるのが好ましく、100〜200g/Lであるのがより好ましい。また、電解液中に塩酸を添加すると析出を促進することができる。この場合、塩酸濃度は10〜20g/Lであるのが好ましい。
また、金を析出させる場合、テトラクロロ金の硫酸溶液を用い、交流電解でめっきを行なうのが望ましい。
なお、無電解めっき法では、アスペクトの高いマイクロポアからなる孔中に金属を完全に充填には長時間を要するので、本発明の製造方法においては、電解めっき法により金属を充填するのが望ましい。
本発明においては、上述のバリア層除去工程によりバリア層を除去し、かつ、マイクロポアの底部に上述した金属M1からなる金属層が形成されているため、上述した通り、めっき液による水素ガスの発生が抑制され、めっき処理による金属充填が進行しやすくなったと考えられる。
〔基板除去工程〕
基板除去工程は、金属充填工程の後に、上述のアルミニウム基板を除去する工程である。アルミニウム基板を除去する方法は特に限定されず、例えば、溶解により除去する方法等が好適に挙げられる。
<アルミニウム基板の溶解>
上述のアルミニウム基板の溶解は、陽極酸化膜を溶解しにくく、アルミニウムを溶解しやすい処理液を用いることが好ましい。
このような処理液は、アルミニウムに対する溶解速度が、1μm/分以上であることが好ましく、3μm/分以上であることがより好ましく、5μm/分以上であることが更に好ましい。同様に、陽極酸化膜に対する溶解速度が、0.1nm/分以下となることが好ましく、0.05nm/分以下となるのがより好ましく、0.01nm/分以下となるのが更に好ましい。
具体的には、アルミよりもイオン化傾向の低い金属化合物を少なくとも1種含み、かつ、pHが4以下または8以上となる処理液であることが好ましく、そのpHが3以下または9以上であることがより好ましく、2以下または10以上であることが更に好ましい。
アルミニウムを溶解する処理液としては、酸またはアルカリ水溶液をベースとし、例えば、マンガン、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、銅、水銀、銀、パラジウム、白金、金の化合物(例えば、塩化白金酸)、これらのフッ化物、これらの塩化物等を配合したものであることが好ましい。
中でも、酸水溶液ベースが好ましく、塩化物をブレンドすることが好ましい。
特に、塩酸水溶液に塩化水銀をブレンドした処理液(塩酸/塩化水銀)、塩酸水溶液に塩化銅をブレンドした処理液(塩酸/塩化銅)が、処理ラチチュードの観点から好ましい。
なお、アルミニウムを溶解する処理液の組成は、特に限定されるものではく、例えば、臭素/メタノール混合物、臭素/エタノール混合物、および王水等を用いることができる。
また、アルミニウムを溶解する処理液の酸またはアルカリ濃度は、0.01〜10mol/Lが好ましく、0.05〜5mol/Lがより好ましい。
更に、アルミニウムを溶解する処理液を用いた処理温度は、−10℃〜80℃が好ましく、0℃〜60℃が好ましい。
また、上述のアルミニウム基板の溶解は、上述の金属充填工程後のアルミニウム基板を上述の処理液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸漬法が好ましい。このときの接触時間としては、10秒〜5時間が好ましく、1分〜3時間がより好ましい。
〔突出工程〕
突出部を設けるために、表面突出工程および裏面突出工程のうち、少なくとも1つの工程を有する。
ここで、表面突出工程とは、上述の金属充填工程の後であって上述の基板除去工程の前に、上述の陽極酸化膜の上述のアルミニウム基板が設けられていない側の表面を厚み方向に一部除去し、上述の金属充填工程で充填した上述の金属M2を上述の陽極酸化膜の表面よりも突出させる工程である。
また、裏面突出工程とは、上述の基板除去工程の後に、上述の陽極酸化膜の上述のアルミニウム基板が設けられていた側の表面を厚み方向に一部除去し、上述の金属充填工程で充填した上述の金属M2を上述の陽極酸化膜の表面よりも突出させる工程である。
突出工程における陽極酸化膜の一部除去は、例えば、上述の金属M1および金属M2(特に金属M2)を溶解せず、陽極酸化膜、すなわち、酸化アルミニウムを溶解する酸水溶液またはアルカリ水溶液に対して、金属が充填された貫通孔を有する陽極酸化膜を接触させることにより行うことができる。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸漬法が好ましい。
酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。中でも、クロム酸を含有しない水溶液が安全性に優れる点で好ましい。酸水溶液の濃度は1〜10質量%であることが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜60℃であることが好ましい。
また、アルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であることが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であることが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸漬時間は、8〜120分であることが好ましく、10〜90分であることがより好ましく、15〜60分であることが更に好ましい。ここで、浸漬時間は、短時間の浸漬処理を繰り返した場合には、各浸漬時間の合計をいう。なお、各浸漬処理の間には、洗浄処理を施してもよい。
〔縮径工程〕
縮径工程は、上述のように導通路16の突出部16b、16cについて、0.8hに相当する位置における断面積S(図3参照)を貫通部16a(図3参照)の断面積Sd(図3参照)よりも小さくする工程である。縮径工程により、導通路16の突出部16b、16cの変形応力を小さくし、突出部16b、16cの変形に必要な荷重を小さくすることができる。
縮径工程は、上述のようにS<Sdにできれば、特に限定されるものではなく、上述のようにドライエッチング処理、ウエットエッチング処理、ガス還元処理および摩擦処理のうち、少なくとも1つの処理を実施する工程である。
ドライエッチング処理は、プラズマを用い、ガスによって突出部を加工して、突出部16b、16cの断面積Sを小さくする処理である。
ウエットエッチング処理は、エッチング液を用いて突出部を溶解して、突出部16b、16cの断面積Sを小さくする処理である。
ガス還元処理は、所定の温度の加熱下において、金属酸化物にガスを付与して金属酸化物を還元して突出部16b、16cの断面積Sを小さくする処理である。ガス還元処理では、ガス還元処理には、例えば、蟻酸、または水素ガス、もしくはアルゴンガスと水素ガスの混合ガスが用いられる。
摩擦処理は、物理的に突出部を変形させて、突出部16b、16cの断面積Sを小さくする処理である。摩擦処理は、例えば、縮径前の状態の突出部の先端と平板との接合し、平板を、突出部16b、16cの高さ方向に引張り、突出部を延ばすことにより突出部16b、16cの断面積Sを小さくする処理である。
なお、縮径工程は、異方導電性部材として用いた場合、電気抵抗が小さく、かつ高い接合強度が得られることから、ドライエッチング処理、ウエットエッチング処理、およびガス還元処理が好ましい。
図7に示すように突出部の先端16eに凹部16gを設ける場合、上述の方法以外に、縮径工程において、突出部の先端16eを電極に接触させた状態で、電極に電流をパルス状に印加して凹部16gを形成する処理、または突出部を先端の一部を除いて樹脂等のエッチング液で溶けないもので覆い、突出部の先端16eをエッチング液につけて、凹部を形成する処理を用いることもできる。
〔樹脂層形成工程〕
作製される異方導電性部材10の搬送性が向上する理由から、上述の樹脂層形成工程を有していることが好ましい。
ここで、樹脂層形成工程とは、上述の金属充填工程の後(上述の表面突出工程を有している場合は表面突出工程の後)であって上述の基板除去工程の前に、上述の陽極酸化膜の上述のアルミニウム基板が設けられていない側の表面に、樹脂層を設ける工程である。
上述の樹脂層を構成する樹脂材料としては、具体的には、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びセルロース系樹脂等を挙げることができるが、搬送性の観点と、異方導電性部材として使用しやすくする観点から、上述の樹脂層は、剥離可能な粘着層付きフィルムであることが好ましく、加熱処理または紫外線露光処理により粘着性が弱くなり、剥離可能となる粘着層付きフィルムであることがより好ましい。
上述の粘着層付きフィルムは特に限定されず、熱剥離型の樹脂層、および紫外線(ultraviolet:UV)剥離型の樹脂層等が挙げられる。
ここで、熱剥離型の樹脂層は、常温では粘着力があり、加熱するだけで容易に剥離可能なもので、主に発泡性のマイクロカプセル等を用いたものが多い。
また、粘着層を構成する粘着剤としては、具体的には、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤等が挙げられる。
また、UV剥離型の樹脂層は、UV硬化型の接着層を有するもので硬化により粘着力が失われて剥離可能になるというものである。
UV硬化型の接着層としては、ベースポリマーに、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に導入したポリマー等が挙げられる。炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするもことが好ましい。
更に、アクリル系ポリマーは、架橋させるため、多官能性モノマー等も、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。
炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは単独で使用することができるが、UV硬化性のモノマーまたはオリゴマーを配合することもできる。
UV硬化型の接着層は、UV照射により硬化させるために光重合開始剤を併用することが好ましい。光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル系化合物;ケタール系化合物;芳香族スルホニルクロリド系化合物;光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。
熱剥離型の樹脂層の市販品としては、例えば、WS5130C02、WS5130C10等のインテリマー〔登録商標〕テープ(ニッタ株式会社製);ソマタック〔登録商標〕TEシリーズ(ソマール株式会製);No.3198、No.3198LS、No.3198M、No.3198MS、No.3198H、No.3195、No.3196、No.3195M、No.3195MS、No.3195H、No.3195HS、No.3195V、No.3195VS、No.319Y−4L、No.319Y−4LS、No.319Y−4M、No.319Y−4MS、No.319Y−4H、No.319Y−4HS、No.319Y−4LSC、No.31935MS、No.31935HS、No.3193M、No.3193MS等のリバアルファ〔登録商標〕シリーズ(日東電工株式会社製);等が挙げられる。
UV剥離型の樹脂層の市販品としては、例えば、ELP DU−300、ELP DU−2385KS、ELP DU−2187G、ELP NBD−3190K、ELP UE−2091J等のエレップホルダー〔登録商標〕(日東電工株式会社製);Adwill D−210、Adwill D−203、Adwill D−202、Adwill D−175、Adwill D−675(いずれもリンテック株式会社製);スミライト〔登録商標〕FLSのN8000シリーズ(住友ベークライト株式会社製);UC353EP−110(古河電気工業株式会社製);等のダイシングテープ、ELP RF−7232DB、ELP UB−5133D(いずれも日東電工株式会社製);SP−575B−150、SP−541B−205、SP−537T−160、SP−537T−230(いずれも古河電気工業株式会社製);等のバックグラインドテープを利用することができる。
また、上述の粘着層付きフィルムを貼り付ける方法は特に限定されず、従来公知の表面保護テープ貼付装置およびラミネーターを用いて貼り付けることができる。
〔巻取工程〕
作製される異方導電性部材10の搬送性が更に向上する理由から、上述の任意の樹脂層形成工程の後に上述の樹脂層を有する状態で異方導電性部材10をロール状に巻き取る巻取工程を有していることが好ましい。
ここで、上述の巻取工程における巻き取り方法は特に限定されず、例えば、所定径および所定幅の巻き芯31(図18参照)に巻き取る方法が挙げられる。
また、上述の巻取工程における巻き取りやすさの観点から、樹脂層29(図19参照)を除く異方導電性部材10の平均厚みが30μm以下であることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。なお、平均厚みは、樹脂層を除く異方導電性部材10を厚さ方向に対してFIBで切削加工し、その断面をFE−SEMにより表面写真(倍率50000倍)を撮影し、10点測定した平均値とする等の方法で算出できる。
〔その他の処理工程〕
本発明の製造方法は、上述の各工程以外に、国際公開第2015/029881号の[0049]〜[0057]段落に記載された研磨工程、表面平滑化工程、保護膜形成処理、水洗処理を有していてもよい。
また、製造上のハンドリング性、および異方導電性部材10を異方導電性部材として用いる観点から、以下に示すような、種々のプロセスおよび形式を適用することができる。
<仮接着剤を使用したプロセス例>
本発明においては、上述の基板除去工程によって異方導電性部材10を得た後に、異方導電性部材10を仮接着剤(Temporary Bonding Materials)を用いてシリコンウエハ上に固定し、研磨により薄層化する工程を有していてもよい。
次いで、薄層化の工程の後、表面を十分に洗浄した後に、上述の表面突出工程を行うことができる。
次いで、金属を突出させた表面に、先の仮接着剤よりも接着力の強い仮接着剤を塗布してシリコンウエハ上に固定した後、先の仮接着剤で接着していたシリコンウエハを剥離し、剥離した異方導電性部材10側の表面に対して、上述の裏面突出工程を行うことができる。
<ワックスを使用したプロセス例>
本発明においては、上述の基板除去工程によって異方導電性部材10を得た後に、異方導電性部材10をワックスを用いてシリコンウエハ上に固定し、研磨により薄層化する工程を有していてもよい。
次いで、薄層化の工程の後、表面を十分に洗浄した後に、上述の表面突出工程を行うことができる。
次いで、金属を突出させた表面に、仮接着剤を塗布してシリコンウエハ上に固定した後、加熱により先のワックスを溶解させてシリコンウエハを剥離し、剥離した異方導電性部材10側の表面に対して、上述の裏面突出工程を行うことができる。
なお、固形ワックスを使っても構わないが、スカイコート(日化精工社製)等の液体ワックスを使うと塗布厚均一性の向上を図ることができる。
<基板除去処理を後から行うプロセス例>
本発明においては、上述の金属充填工程の後であって上述の基板除去工程の前に、アルミニウム基板を仮接着剤、ワックスまたは機能性吸着フィルムを用いて剛性基板(例えば、シリコンウエハ、ガラス基板等)に固定した後に、上述の陽極酸化膜の上述のアルミニウム基板が設けられていない側の表面を研磨により薄層化する工程を有していてもよい。
次いで、薄層化の工程の後、表面を十分に洗浄した後に、上述の表面突出工程を行うことができる。
次いで、金属を突出させた表面に、絶縁性材料である樹脂材料(例えば.エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等)を塗布したのち、その表面に上述と同様の手法で剛性基板を貼り付けることができる。樹脂材料による貼り付けは、接着力が仮接着剤等による接着力よりも大きくなるようなものを選択し、樹脂材料による貼り付けの後に、最初に貼り付けた剛性基板を剥離し、上述の基板除去工程、研磨工程および裏面突出処理工程を順に行うことにより行なうことができる。
なお、機能性吸着フィルムとしては、Q−chuck(登録商標)(丸石産業株式会社製)等を使用することができる。
本発明においては、異方導電性部材10が剥離可能な層によって剛体基板(例えば、シリコンウエハ、ガラス基板等)に貼り付けられた状態で製品として供されることが好ましい。
このような供給形態においては、異方導電性部材10を接合部材として利用する場合には、異方導電性部材10の表面をデバイス表面に仮接着し、剛体基板を剥離した後に接続対象となるデバイスを適切な場所に設置し、加熱圧着することで上下のデバイスを異方導電性部材10によって接合することができる。
また、剥離可能な層には、熱剥離層を用いても構わないし、ガラス基板との組合せで光剥離層を用いても構わない。
また、上述の各工程は、各工程を枚葉で行うことも可能であるし、アルミニウムのコイルを原反としてウェブで連続処理することもできる。
また、連続処理する場合には各工程間に適切な洗浄工程、乾燥工程を設置することが好ましい。
上述の各処理工程を有する製造方法により、アルミニウム基板の陽極酸化膜からなる絶縁性基材に設けられた貫通孔由来の貫通孔の内部に金属が充填されてなる異方導電性部材10が得られる。
具体的には、上述の製造方法により、例えば、特開2008−270158号公報に記載された異方導電性部材、すなわち、絶縁性基材(貫通孔を有するアルミニウム基板の陽極酸化膜)中に、導電性部材(金属)からなる複数の導通路が、互いに絶縁された状態で上述の絶縁性基材を厚み方向に貫通し、かつ、上述の各導通路の一端が上述の絶縁性基材の一方の面において露出し、上述の各導通路の他端が上述の絶縁性基材の他方の面において露出した状態で設けられる異方導電性部材を得ることができる。
以下、異方導電性部材10の構成についてより具体的に説明する。
〔絶縁性基材〕
絶縁性基材の物性、および組成は上述のとおりである。
絶縁性基材12の厚みhtは、1〜1000μmの範囲内であるのが好ましく、5〜500μmの範囲内であるのがより好ましく、10〜300μmの範囲内であるのが更に好ましく、1μm以上30μm以下であることが最も好ましい。絶縁性基材の厚みが最も好ましい範囲であると、絶縁性基材の取り扱い性が良好となり、かつ電気抵抗が小さくなり、接合強度も増す。
絶縁性基材12の厚みhtは、絶縁性基材12を、厚み方向Dtに対して集束イオンビーム(FIB)で切削加工し、その断面を電解放出形走査型電子顕微鏡により20万倍の倍率で観察し、絶縁性基材12の輪郭形状を取得し、厚みhtに相当する領域について10点測定した平均値のことである。
絶縁性基材における各貫通孔の間隔は、5nm〜800nmであることが好ましく、10nm〜200nmであることがより好ましく、50nm〜140nmであることが更に好ましい。絶縁性基材における各貫通孔の間隔がこの範囲であると、絶縁性基材が絶縁性の隔壁として十分に機能する。貫通孔の間隔は、導通路の間隔と同じである。
ここで、貫通孔の間隔、すなわち、導通路の間隔とは、隣接する導通路間の幅w(図1参照)をいい、異方導電性部材の断面を電界放出形走査型電子顕微鏡により20万倍の倍率で観察し、隣接する導通路間の幅を10点で測定した平均値をいう。
〔導通路〕
導通路は、導電性物質で構成される。導電性物質としては、特に限定されるものではなく、金属充填工程で例示したものが挙げられる。導通路は、上述の金属充填工程で説明したようにCuで構成することが好ましい。
<突出部>
異方導電性部材と電極とを圧着等の手法により電気的接続、または物理的に接合する際に、突出部が潰れた場合の面方向の絶縁性を十分に確保できる理由から、導通路の突出部のアスペクト比(突出部の高さ/突出部の直径)が0.5以上50未満であることが好ましく、0.8〜20であることがより好ましく、1〜10であることが更に好ましい。
接続対象の半導体部材等の表面形状に追従する観点から、導通路の突出部の高さh(図1および図3参照)は、100nm以上であることが好ましく、より好ましくは100nm〜7000nmであり、更に好ましくは100nm〜1000nmであり、更により好ましくは100nm〜300nmである。
導通路の突出部の高さhは、異方導電性部材の断面を電解放出形走査型電子顕微鏡により2万倍の倍率で観察し、導通路の突出部の高さを10点で測定した平均値をいう。
導通路の突出部の直径は、異方導電性部材の断面を電解放出形走査型電子顕微鏡により観察して得る。断面積Sdを求めるための、導通路の貫通部の直径、および断面積Sを求めるための0.8hに相当する位置(図3参照)における突出部の直径は、10個の導通路の平均値である。
上述の0.8hに相当する位置における突出部の断面積Sは、突出部1つにつき2000nm以上35000nm以下であることが好ましい。1つの突出部の断面積Sが2000nm以上35000nm以下であれば、電気抵抗を小さくでき、かつ接合強度を高くできる。
このため、1つの突出部において、上述の0.8hに相当する位置における突出部の直径は、50nm以上200nm以下であることが好ましい。
<他の形状>
導通路16は柱状部材で構成されており、導通路16の貫通部16a(図1参照)の直径R(図1参照)は貫通孔14(図1参照)の内径に相当する。
導通路の貫通部の直径Rは、例えば、導通路で最も径が大きい。貫通部の直径Rは、上述のS<Sdを満たす必要があるが、5nm超10μm以下であることが好ましく、20nm〜1000nmであることがより好ましい。
上述のように導通路16は絶縁性基材12によって互いに電気的に絶縁された状態で存在するものであるが、その密度は、2万個/mm2以上であることが好ましく、200万個/mm2以上であることがより好ましく、1000万個/mm2以上であることが更に好ましく、5000万個/mm2以上であることが特に好ましく、1億個/mm2以上であることが最も好ましい。
更に、隣接する各導通路16の中心間距離p(図1参照)は、20nm〜500nmであることが好ましく、40nm〜200nmであることがより好ましく、50nm〜140nmであることが更に好ましい。
〔樹脂層〕
上述のように、樹脂層は、絶縁性基材の表面と裏面に設けられ、上述のように導通路の突出部を埋設するものである。すなわち、樹脂層は絶縁性基材から突出した導通路の突出部を被覆し、突出部を保護する。
樹脂層は、上述の樹脂層形成工程により形成されるものである。樹脂層は、例えば、50℃〜200℃の温度範囲で流動性を示し、200℃以上で硬化するものであることが好ましい。
樹脂層は、上述の樹脂層形成工程により形成されるものであるが、以下に示す、樹脂剤の組成を用いることもできる。以下、樹脂層の組成について説明する。樹脂層は、高分子材料を含有するものである。樹脂層は酸化防止材料を含有してもよい。
<高分子材料>
樹脂層に含まれる高分子材料としては特に限定されないが、半導体チップまたは半導体ウエハと異方導電性部材との隙間を効率よく埋めることができ、半導体チップまたは半導体ウエハとの密着性がより高くなる理由から、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、具体的には、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート系樹脂等が挙げられる。
なかでも、絶縁信頼性がより向上し、耐薬品性に優れる理由から、ポリイミド樹脂および/またはエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
<酸化防止材料>
樹脂層に含まれる酸化防止材料としては、具体的には、例えば、1,2,3,4−テトラゾール、5−アミノ−1,2,3,4−テトラゾール、5−メチル−1,2,3,4−テトラゾール、1H−テトラゾール−5−酢酸、1H−テトラゾール−5−コハク酸、1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1,2,3−トリアゾール、4,5−ジアミノ−1,2,3−トリアゾール、4−カルボキシ−1H−1,2,3−トリアゾール、4,5−ジカルボキシ−1H−1,2,3−トリアゾール、1H−1,2,3−トリアゾール−4−酢酸、4−カルボキシ−5−カルボキシメチル−1H−1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、3−カルボキシ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジカルボキシ−1,2,4−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール−3−酢酸、1H−ベンゾトリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−5−カルボン酸、ベンゾフロキサン、2,1,3−ベンゾチアゾール、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、カテコール、o−アミノフェノール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、メラミン、およびこれらの誘導体が挙げられる。
これらのうち、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体が好ましい。
ベンゾトリアゾール誘導体としては、ベンゾトリアゾールのベンゼン環に、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、アミノ基、ニトロ基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)等を有する置換ベンゾトリアゾールが挙げられる。また、ナフタレントリアゾール、ナフタレンビストリアゾール、と同様に置換された置換ナフタレントリアゾール、置換ナフタレンビストリアゾール等も挙げることができる。
また、樹脂層に含まれる酸化防止材料の他の例としては、一般的な酸化防止剤である、高級脂肪酸、高級脂肪酸銅、フェノール化合物、アルカノールアミン、ハイドロキノン類、銅キレート剤、有機アミン、有機アンモニウム塩等が挙げられる。
樹脂層に含まれる酸化防止材料の含有量は特に限定されないが、防食効果の観点から、樹脂層の全質量に対して0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましい。また、本接合プロセスにおいて適切な電気抵抗を得る理由から、5.0質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましい。
<マイグレーション防止材料>
樹脂層は、樹脂層に含有し得る金属イオン、ハロゲンイオン、ならびに半導体チップおよび半導体ウエハに由来する金属イオンをトラップすることによって絶縁信頼性がより向上する理由から、マイグレーション防止材料を含有しているのが好ましい。
マイグレーション防止材料としては、例えば、イオン交換体、具体的には、陽イオン交換体と陰イオン交換体との混合物、または、陽イオン交換体のみを使用することができる。
ここで、陽イオン交換体および陰イオン交換体は、それぞれ、例えば、後述する無機イオン交換体および有機イオン交換体の中から適宜選択することができる。
(無機イオン交換体)
無機イオン交換体としては、例えば、含水酸化ジルコニウムに代表される金属の含水酸化物が挙げられる。
金属の種類としては、例えば、ジルコニウムのほか、鉄、アルミニウム、錫、チタン、アンチモン、マグネシウム、ベリリウム、インジウム、クロム、ビスマス等が知られている。
これらの中でジルコニウム系のものは、陽イオンのCu2+、Al3+について交換能を有している。また、鉄系のものについても、Ag+、Cu2+について交換能を有している。同様に、錫系、チタン系、アンチモン系のものは、陽イオン交換体である。
一方、ビスマス系のものは、陰イオンのCl-について交換能を有している。
また、ジルコニウム系のものは条件に製造条件によっては陰イオンの交換能を示す。アルミニウム系、錫系のものも同様である。
これら以外の無機イオン交換体としては、リン酸ジルコニウムに代表される多価金属の酸性塩、モリブドリン酸アンモニウムに代表されるヘテロポリ酸塩、不溶性フェロシアン化物等の合成物が知られている。
これらの無機イオン交換体の一部は既に市販されており、例えば、東亜合成株式会社の商品名イグゼ「IXE」における各種のグレードが知られている。
なお、合成品のほか、天然物のゼオライト、またはモンモリロン石のような無機イオン交換体の粉末も使用可能である。
(有機イオン交換体)
有機イオン交換体には、陽イオン交換体としてスルホン酸基を有する架橋ポリスチレンが挙げられ、そのほかカルボン酸基、ホスホン酸基またはホスフィン酸基を有するものも挙げられる。
また、陰イオン交換体として四級アンモニウム基、四級ホスホニウム基または三級スルホニウム基を有する架橋ポリスチレンが挙げられる。
これらの無機イオン交換体および有機イオン交換体は、捕捉したい陽イオン、陰イオンの種類、そのイオンについての交換容量を考慮して適宜選択すればよい。勿論、無機イオン交換体と有機イオン交換体とを混合して使用してもよいことはいうまでもない。
電子素子の製造工程では加熱するプロセスを含むため、無機イオン交換体が好ましい。
また、マイグレーション防止材料と上述の高分子材料との混合比は、例えば、機械的強度の観点から、マイグレーション防止材料を10質量%以下とすることが好ましく、マイグレーション防止材料を5質量%以下とすることがより好ましく、更にマイグレーション防止材料を2.5質量%以下とすることが更に好ましい。また、半導体チップまたは半導体ウエハと異方導電性部材とを接合した際のマイグレーションを抑制する観点から、マイグレーション防止材料を0.01質量%以上とすることが好ましい。
<無機充填剤>
樹脂層は、無機充填剤を含有しているのが好ましい。
無機充填剤としては特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、カオリン、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、気相法シリカ、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、マイカ、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
導通路間に無機充填剤が入ることを防ぎ、導通信頼性がより向上する理由から、無機充填剤の平均粒子径が、各導通路の間隔よりも大きいことが好ましい。
無機充填剤の平均粒子径は、30nm〜10μmであることが好ましく、80nm〜1μmであることがより好ましい。
ここで、平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒子径測定装置(日機装(株)製マイクロトラックMT3300)で測定される、一次粒子径を平均粒子径とする。
<硬化剤>
樹脂層は、硬化剤を含有していてもよい。
硬化剤を含有する場合、接続対象の半導体チップまたは半導体ウエハの表面形状との接合不良を抑制する観点から、常温で固体の硬化剤を用いず、常温で液体の硬化剤を含有しているのがより好ましい。
ここで、「常温で固体」とは、25℃で固体であることをいい、例えば、融点が25℃より高い温度である物質をいう。
硬化剤としては、具体的には、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンのような芳香族アミン、脂肪族アミン、4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物等のカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリフェノール化合物、ノボラック樹脂、ポリメルカプタン等が挙げられ、これらの硬化剤から、25℃で液体のものを適宜選択して用いることができる。なお、硬化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂層には、その特性を損なわない範囲内で、広く一般に半導体パッケージの樹脂絶縁膜に添加されている分散剤、緩衝剤、粘度調整剤等の種々の添加剤を含有させてもよい。
<形状>
導通路を保護する理由から、樹脂層の厚みは、導通路の突出部の高さh(図1および図3参照)よりも高く、1μm〜5μmであることが好ましい。
なお、異方導電性部材10の厚みH(図1参照)は、例えば、30μm以下である。また、異方導電性部材10は、TTV(Total Thickness Variation)が10μm以下であることが好ましい。異方導電性部材10の厚みHは、異方導電性部材10を、電解放出形走査型電子顕微鏡により20万倍の倍率で観察し、異方導電性部材10の輪郭形状を取得し、異方導電性部材10の厚みHに相当する領域について10点測定した平均値のことである。
[接合体]
次に、接合体について説明する。接合体は、導電性を有する導電部を有する導電部材と、異方導電性部材とを有するものであり、導電部と異方導電性部材の突出部とを接触させて接合されたものである。接合体とは、例えば、単体で特定の機能を発揮するものである。なお、複数のものが集まって特定の機能を発揮するものも接合体に含まれる。
図20は本発明の実施形態の接合体の第1の例を示す模式図であり、図21は本発明の実施形態の接合体の第2の例を示す模式図である。なお、図20および図21において、図1〜図3に示す異方導電性部材10と同一構成物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
図20に示す接合体40は、例えば、半導体素子42と異方導電性部材10と半導体素子44とがこの順で接合され、かつ電気的に接続されたものである。図示はしないが、半導体素子42の導電を担う電極または端子等の導電部と異方導電性部材10の突出部とを接触させて接合されている。
接合体40は、1つの半導体素子42に対して1つの半導体素子44を接合する形態であるが、これ限定されるものではない。図21に示す接合体40のように、異方導電性部材10を介して、3つの半導体素子42、44、46を接合する形態でもよい。この場合でも、図示はしないが、半導体素子42、44、46の導電を担う電極または端子等と異方導電性部材10の突出部とを接触させて接合されている。
上述の図20および図21に示す接合体40は、いずれも半導体デバイス、または電子デバイス等と呼ばれるものである。
上述の半導体素子42、44、46が、導電性を有する導電部を有する導電部材である。導電性を有する導電部を有する導電部材は、半導体素子に限定されるものではなく、電極を有する基板であってもよい。電極を有する基板は、例えば、配線基板、およびインターポーザー等である。
[接合体の製造方法]
次に、図20に示す異方導電性部材10を有する接合体40の製造方法について説明する。
図22および図23は本発明の実施形態の接合体の製造方法を工程順に示す模式図である。図24は本発明の実施形態の接合体の製造方法の一工程を拡大して示す模式的断面図である。図22〜図24において、図1〜図6に示す接合体40および半導体素子42、44と同一構成物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
なお、図22および図23に示す接合体40の製造方法の例は、チップオンチップに関するものである。
図20に示す接合体40の製造に際して、まず、図22に示す半導体素子42、半導体素子44および異方導電性部材10を用意する。半導体素子42は、例えば、半導体素子部50に、外部との信号のやり取り、または電圧もしくは電流の授受を行うための電極52が複数設けられたものである。各電極52は絶縁層54により電気的に絶縁されている。電極52の表面52aは、例えば、絶縁層54の表面54aよりも突出している。
半導体素子44は、半導体素子42と同様の構成である。半導体素子44は、例えば、インターポーザー基板51に、外部との信号のやり取り、または電圧もしくは電流の授受を行うための電極53が複数設けられたものである。各電極53は絶縁層55により電気的に絶縁されている。電極53の表面53aは、例えば、絶縁層55の表面55aよりも突出している。インターポーザー基板51は、例えば、引出配線層を有しており、また、電極53により、接合体40は、外部と電気的に接続される。
異方導電性部材10は、上述の図1に示す構成であり、導電性を有する導通路16(図22および図24参照)を複数備える。例えば、異方導電性部材10には、樹脂層19(図1参照)等の接着する機能を有する部材はない構成を示しているが、樹脂層19(図1参照)があってもよい。
図22に示すように、異方導電性部材10を挟んで、半導体素子42と半導体素子44とを電極53と電極52と電極53とを対向して配置する。
このとき、半導体素子42、44と異方導電性部材10とに、それぞれ設けられたアライメントマーク(図示せず)を用いて位置合せされている。
なお、アライメントマークを用いた位置合せは、例えば、アライメントマークの画像または反射像を取得し、アライメントマークの位置情報を求めることができれば、特に限定されるものではなく、公知の位置合せの手法を適宜利用可能である。
次に、半導体素子42と異方導電性部材10と半導体素子44とを近づけ、半導体素子42と異方導電性部材10と半導体素子44とを積層し、半導体素子42と異方導電性部材10と半導体素子44とを位置合せした状態で、半導体素子42と異方導電性部材10と半導体素子44とを接合する。これにより、図23に示すように、半導体素子42と異方導電性部材10と半導体素子44とが接合され、接合体40を得ることができる。
なお、上述の半導体素子42と異方導電性部材10と半導体素子44とを接合する工程が接合工程である。接合工程では、例えば、仮接合した状態で、予め定めた条件にて接合してもよいが、仮接合を省略してもよい。なお、仮接合する工程を仮接合工程といい、接合工程の仮接合以外の接合のことを本接合ともいう。
上述の接合工程で製造された接合体40は、図24に示すように電極52の表面52aに異方導電性部材10の導通路16の突出部16bが接触しており、接触状態が良好であり、かつ十分な導通面積が確保されている。なお、図24では示していないが、異方導電性部材10の導通路16の突出部16cが電極53の表面53aに接触しており、接触状態が良好であり、かつ十分な導通面積が確保されている。
上述の接合工程では、電極52等の導電部と異方導電性部材10の突出部16bとを接触させ、電極53等の導電部と異方導電性部材10の突出部16cとを接触させて接合する。
異方導電性部材10は、上述のように突出部16b、16cの構成を断面積についてS<Sdとしており、突出部16b、16cの変形に必要な荷重を小さくしている。このため、接合する際に、小さな荷重で接合できる。これにより、接合に用いる装置として最大荷重が小さな装置を用いることができ、製造設備を小型化でき、しかもコストを下げることができる。
以下、接合体の製造方法についてより具体的に説明する。
〔仮接合工程〕
仮接合工程の仮接合とは、接合する対象物に対して位置合せした状態で、接合する対象物上に固定することをいう。仮接合は、位置合せした状態が保たれているが、永久に固定された状態ではない。異方導電性部材と接合対象の半導体素子とでは、仮固定されている場合、半導体素子に異方導電性部材が位置合せした状態で固定されている状態にある。
仮接合工程では、少なくとも2つの部材を近づけて接触させることにより実施する。この場合、加圧条件は、特に限定されるものではないが、10MPa以下であることが好ましく、5MPa以下であることがより好ましく、1MPa以下であることが特に好ましい。
同様に、仮接合工程における温度条件は、特に限定されるものではないが、0℃〜300℃であることが好ましく、10℃〜200℃であることがより好ましく、常温(23℃)〜100℃であることが特に好ましい。
仮接合工程には、東レエンジニアリング、渋谷工業株式会社、株式会社新川、およびヤマハ発動機株式会社等の各社の装置を用いることができる。
〔接合工程〕
上述のように接合工程の接合を本接合ともいう。本接合に際して、本接合時の雰囲気、加熱温度、加圧力(荷重)、および処理時間が制御因子として挙げられるが用いる半導体素子等のデバイスに適合した条件を選ぶことができる。
本接合における温度条件は、特に限定されるものではないが、仮接合の温度よりも高い温度であることが好ましく、具体的には、150℃〜350℃であることがより好ましく、200℃〜300℃であることが特に好ましい。
また、本接合における加圧条件は、特に限定されるものではないが、30MPa以下であることが好ましく、0.1MPa〜20MPaであることがより好ましい。加圧条件の最大荷重は1MN以下であることが好ましい。より好ましくは、0.1MN以下である。
また、本接合の時間は特に限定されるものではないが、1秒〜60分であることが好ましく、5秒〜10分であることがより好ましい。
また、上述の本接合に用いる装置としては、例えば、三菱重工工作機械、ボンドテック、株式会社PMT、アユミ工業、東京エレクトロン(TEL)、EVG、ズースマイクロテック株式会社(SUSS)、ムサシノエンジニアリング等各社のウエハ接合装置を用いることができる。
本接合時の雰囲気としては、大気下を始め、窒素雰囲気等の不活性雰囲気、および真空雰囲気を含む減圧雰囲気から選ぶことができる。
加熱温度は、上述のものに特に限定されるものではなく、温度100℃〜400℃まで種々選択可能であり、かつ昇温速度に関しても10℃/分〜10℃/秒まで加熱ステージの性能、または加熱方式に従って選択することができる。冷却に関しても同様である。またステップ状に加熱することも可能であり、数段に分け、順次加熱温度を上げて接合することも可能である。
圧力(荷重)に関しても、上述のものに特に限定されるものではなく、接合対象の強度等の物理特性等に応じて急速に加圧したり、ステップ状に加圧したりすることを選択できる。
本接合時の雰囲気、加熱および加圧それぞれの保持時間、および変更時間は適宜設定することができる。また、その順序についても適宜変更することができる。例えば、真空状態になったのち第1段の加圧を行い、その後加熱して昇温したところで第2段の加圧を行って一定時間保持し、除荷すると同時に冷却を行い一定温度以下になった段階で大気下に戻すといった手順を組むことができる。
このような手順は、様々に組み替えることができ、大気下で加圧後、真空状態にして加熱してもよいし、真空化、加圧、加熱を一気に行ってもよい。これらの組合せの例を図25〜図31に示す。
また、面内の加圧分布、加熱分布を接合時に個別に制御する機構を利用すれば接合の歩留まり向上につなげられる。
仮接合に関しても同じように変更可能で、例えば、不活性雰囲気で行うことにより、半導体素子の電極表面の酸化を抑制できる。さらに超音波を付加しながら接合を行うことも可能である。
図25〜図31は本発明の実施形態の接合体の本接合条件の第1の例〜第7の例を示すグラフである。図25〜図31は、接合時の雰囲気、加熱温度、加圧力(荷重)、および処理時間を示しており、符号Vは真空度を示し。符号Lは荷重を示し、符号Tは温度を示す。図25〜図31において真空度が高いとは、圧力が低くなることを示す。
接合時の雰囲気、加熱温度、および荷重については、例えば、図25〜図27に示すように、圧力を減圧した状態で荷重をかけた後に、温度を上昇させてもよい。また、図28、図30および図31に示すように、荷重を加えるタイミングと温度を上げるタイミングとを合わせてもよい。図29に示すように温度を上昇させた後、荷重を加えるようにしてもよい。また、図28および図29に示すように、圧力の減圧のタイミングと温度を上げるタイミングとを合わせてもよい。
温度の上昇も、図25、図26および図30に示すように、ステップ状に上昇させてもよいし、図31に示すように2段階で加熱してもよい。荷重も図27および図30に示すようにステップ状に加えてもよい。
また、圧力を減圧するタイミングは、図25、図27、図29、図30および図31に示すように減圧してから荷重を加えてもよく、図26および図28に示すように減圧のタイミングと荷重を加えるタイミングとを合わせてもよい。この場合、減圧と接合を同時並行する。
以下、異方導電性部材10(図1〜7等参照)を用いた半導体パッケージについて説明する。
(半導体パッケージ)
〔半導体パッケージの製造方法1〕
例えば、上述の〔金属充填工程〕の後に、絶縁性基材の表面に半導体素子を搭載して、上述の金属M2と半導体素子の電極を接合する半導体素子実装工程と、樹脂でモールドするモールド工程と、上述の〔基板除去工程〕をこの順に有する製造方法により、図32に示す半導体パッケージ60を作製することができる。
図32は半導体パッケージの第1の例を示す模式的断面図である。なお、以下に示す図32〜図41において、上述の図1〜3に示す異方導電性部材10と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図32に示す半導体パッケージ60は、異方導電性部材10の表面10aに半導体素子62が載置され、異方導電性部材10と半田ボール65により電気的に接続されている。異方導電性部材10の表面10aは半導体素子62を含めてモールド樹脂64で覆われている。
[半導体素子実装工程]
本発明の異方導電性部材に半導体素子を実装する場合、加熱による実装を伴うが、半田リフローを含めての熱圧着による実装、およびフリップチップによる実装では、均一かつ確実な実装を施す観点から、最高到達温度は220〜350℃が好ましく、240〜320℃がより好ましく、260〜300℃が特に好ましい。
これらの最高到達温度を維持する時間としては、同観点から2秒〜10分が好ましく、5秒〜5分がより好ましく、10秒〜3分が特に好ましい。
また、アルミニウム基板と陽極酸化膜との熱膨張率差に起因して陽極酸化膜内に発生するクラックを抑制する観点から、上述の最高到達温度に到達する前に、所望の一定温度で5秒〜10分、より好ましくは10秒〜5分、特に好ましくは20秒〜3分の熱処理を施す方法をとることもできる。所望の一定温度としては、80〜200℃であることが好ましく、100〜180℃がより好ましく、120〜160℃が特に好ましい。
また、ワイヤーボンディングでの実装時の温度としては、確実な実装を施す観点から、80〜300℃が好ましく、90〜250℃がより好ましく、100〜200℃が特に好ましい。加熱時間としては、2秒〜10分が好ましく、5秒〜5分がより好ましく、10秒〜3分が特に好ましい。
〔半導体パッケージの製造方法2〕
上述の〔金属充填工程〕の後に、上述の絶縁性基材の表面に半田もしくは銀ペースト、またはフィラーが充填された樹脂ペーストによって半導体素子を搭載する素子搭載工程と、樹脂でモールドするモールド工程と、上述のモールド樹脂に穴を開けて素子電極と上述の金属M2を露出する穴あけ工程と、上述の金属M2と半導体素子の電極を電気的に導通させる配線形成工程と、上述の配線を覆う絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、上述の〔基板除去工程〕をこの順に有する製造方法により、図33に示す半導体パッケージ60を作製することができる。
図33は半導体パッケージの第2の例を示す模式的断面図である。
図33に示す半導体パッケージ60は、異方導電性部材10の表面10aに半導体素子62が載置されて電気的に接続されている。異方導電性部材10の表面10aは半導体素子62を含めてモールド樹脂64で覆われている。モールド樹脂64には、半導体素子62の電極と、異方導電性部材10の導通路16とを電気的に導通させる配線を形成するための穴66が形成されている。穴66を通る配線67が設けられている。配線67により半導体素子62の電極と、異方導電性部材10の金属M2とが電気的に導通される。また、モールド樹脂64の上面に、配線67を覆う絶縁層68が設けられている。
<配線形成工程>
上述の配線形成工程は、上述の異方導電性部材の少なくとも一面に配線を形成する工程である。
ここで、上述の配線を形成する方法は、例えば、電解めっき処理、無電解めっき処理、置換めっき処理等の種々めっき処理;スパッタリング処理;蒸着処理;等を施す方法が挙げられる。これらのうち、耐熱性が高い観点から、金属のみの層形成であることが好ましく、厚膜、均一形成化および高密着性の観点から、めっき処理による層形成が特に好ましい。上述のめっき処理は、非導電性物質(複合材料)に対するめっき処理になるため、シード層と呼ばれる還元金属層を設けた後、その金属層を利用して厚い金属層を形成する手法を用いるのが好ましい。
上述のシード層は、スパッタリング処理により形成するのが好ましい。また、上述のシード層の形成には、無電解めっきを用いてもよく、めっき液としては、例えば、金属塩、還元剤等の主成分と、例えば、pH調整剤、緩衝剤、錯化剤、促進剤、安定剤および改良剤等の補助成分とから構成される溶液を用いるのが好ましい。
なお、めっき液としては、SE−650・666・680、SEK−670・797、SFK−63(いずれも日本カニゼン社製)、メルプレートNI−4128、エンプレートNI−433、エンプレートNI−411(いずれもメルテックス社製)等の市販品を適宜用いることができる。
また、上述の配線の材料として銅を用いる場合、硫酸、硫酸銅、塩酸、ポリエチレングリコールおよび界面活性剤を主成分とし、その他各種添加剤を加えた種々の電解液を用いることができる。
このようにして形成される配線は、半導体素子等の実装の設計に応じ、公知の方法でパターン形成される。また、実際に半導体素子等が実装される箇所には、再度、半田も含む金属を設け、熱圧着、フリップチップ、またはワイヤーボンディング等で接続しやすい様に適宜加工することができる。
好適な金属としては、半田、または金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)等の金属素材が好ましく、加熱による半導体素子等の実装の観点では、半田、またはNiを介してAu、またはAgを設ける方法が接続信頼性の観点から好ましい。
具体的には、パターンが形成された銅(Cu)配線上に、ニッケル(Ni)を介して金(Au)を形成する方法としては、Niストライクめっきを施し、その後にAuめっきを施す方法が挙げられる。
ここで、Niストライクめっきは、Cu配線の表面酸化層の除去とAu層密着性確保を目的に施される。
また、Niストライクめっきには、一般的なNi/塩酸混合液を用いてもよく、NIPS−100(日立化成工業製)等の市販品を用いてもよい。
一方、Auめっきは、Niストライクめっきを施した後に、ワイヤーボンディングまたは半田の濡れ性を向上させる目的で施される。また、Auめっきは無電解めっきで生成させるのが好ましく、HGS−5400(日立化成工業社製)、ミクロファブAuシリーズ、ガルバノマイスターGBシリーズ、プレシャスハブIGシリーズ(いずれも田中貴金属社製)等の市販の処理液を用いることができる。
この他、上述の配線を用いて本発明の異方導電性部材と半導体素子等とを接続する態様としては、例えば、C4(Controlled Collapse Chip Connection)バンプ、はんだボール、およびCuピラー等によるフリップチップ接続、ならびに導電粒子配列型の異方導電膜(ACF)を用いた接続等も挙げられるが、本発明の態様がこれらに限定されるものではない。
[同軸構造]
この他、上述の配線を、例えば、図40および図41に示すように、信号電流が流れる複数の線状導体100の周囲に、所定の間隔を空けてグランド配線103に接続された複数の線状導体100を配置することもできる。この構造は、同軸線路と同等の構造であるため、シールド(遮蔽)効果を奏することができる。また、隣接して配置され、異なる信号電流が流れる複数の線状導体100間には、グランド配線103に接続された複数の線状導体100が配置されることになる。このため、隣接して配置され、異なる信号電流が流れる複数の線状導体100間に生じる電気的結合(容量結合)を低減することができ、信号電流が流れる複数の線状導体100自体がノイズ源となることを抑制することができる。図40では、信号電流が流れる複数の線状導体100は、絶縁性基材101に形成され互いに電気的に絶縁されており、かつ信号配線102に電気的に接続されている。信号配線102およびグランド配線103には、それぞれ絶縁層104により電気的に絶縁された配線層105に、電気的に接続されている。
<絶縁層形成工程>
上述の絶縁層形成工程は、上述の絶縁層を形成する工程である。
上述の絶縁層を形成する方法としては特に限定されないが、上述の絶縁層として後述の樹脂を用いる場合、例えば、ラミネーター装置を用いて上述の異方導電性部材の上に積層させる方法、スピンコータ装置を用いて上述の異方導電性部材の上に塗布する方法、フリップチップボンディング装置を用いて上述の異方導電性部材と上述の半導体素子の接合と同時に絶縁層を形成する方法等が挙げられる。
(絶縁層)
絶縁層の材料としては、絶縁性が高い素材であれば特に限定されず、その具体例としては、例えば、空気、ガラス、アルミナ等の無機絶縁体、樹脂等の有機絶縁体等が挙げられ、これらを1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらのうち、安価であり熱伝導率が高い理由から樹脂を用いるのが好ましい。
上述の樹脂の材質は、熱硬化性樹脂が好ましい。上述の熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂、および、ポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂がより好ましい。
また、上述の樹脂としては、耐熱性、耐候性、耐光性に優れた樹脂を用いることが好ましい。
また、上述の樹脂には、所定の機能を持たせるため、フィラー、拡散剤、顔料、蛍光物質、反射性物質、紫外線吸収剤、および、酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種を混合することもできる。
また、上述の樹脂として接着性組成物を用いることもでき、例えば、通称:アンダーフィル材(液体)、NCP(Non Conductive Paste)(ペースト状)、NCF(Non Conductive Film)(フィルム状)と呼称される半導体用の接着剤が挙げられ、ドライフィルムレジスト等も使用できる。
さらに、上述の絶縁層としては、上述の配線としても記載した導電粒子配列型の異方導電膜(ACF)を使用してもよい。
もっとも、本発明において、上述の絶縁層の態様としては上述のものに限定されない。
<穴あけ工程>
穴あけ工程は、レーザー加工、ドリル加工、ドライエッチング等物理的な方法、およびウエットエッチングによる化学的な方法が考えられるが、これらの方法に限定されない。
〔半導体パッケージの製造方法3〕
上述の半導体パッケージの製造方法1、および半導体パッケージの製造方法2に記載の、上述の金属充填工程と上述の半導体素子実装工程、または半導体素子搭載工程の間に、異方導電性部材の表面にマスク層を形成するマスク層形成工程と、上述の陽極酸化膜に充填した上述の金属M2、金属M1を除去する充填金属除去工程と、上述のマスク層を除去するマスク層除去工程とをこの順に有する製造方法により、図34に示す半導体パッケージ60を作製することができる。
図34は半導体パッケージの第3の例を示す模式的断面図である。
図34に示す半導体パッケージ60は、図32に示す半導体パッケージ60に比して異方導電性部材10の構成が異なる点以外は同じ構成である。異方導電性部材10は、充填金属除去工程により金属M2、金属M1が除去された部分に樹脂69が充填されている。異方導電性部材10と半導体素子62とは除去されていない導通路16に設けられた半田ボール65により電気的に接続されている。
〔半導体パッケージの製造方法4〕
上述の半導体パッケージの製造方法1、および半導体パッケージ2に記載の上述の金属充填工程と上述の半導体素子実装工程、または半導体素子搭載工程の間に、上述の異方導電性部材の表面にマスク層を形成するマスク層形成工程と、上述の異方導電性部材の一部を除去する異方導電性部材除去工程と、上述の異方導電性部材の一部を除去した部分に樹脂を充填する樹脂充填工程と、上述のマスク層を除去するマスク層除去工程とをこの順に有する製造方法により、図35に示す半導体パッケージ60を作製することができる。
図35は半導体パッケージの第4の例を示す模式的断面図である。
図35に示す半導体パッケージ60は、図32に示す半導体パッケージ60に比して異方導電性部材10の構成が異なる点以外は同じ構成である。異方導電性部材10は、異方導電性部材除去工程により除去された部分に、樹脂充填工程により樹脂79が充填されている。異方導電性部材10と半導体素子62とは除去されていない導通路16に設けられた半田ボール65により電気的に接続されている。
<マスク層形成工程>
上述のマスク層形成工程は、上述の〔金属充填工程〕の後に、絶縁性基材の表面に、所定の開口パターン(開口部)を有するマスク層を形成する工程である。
上述のマスク層は、例えば、上述の絶縁性基材の表面に画像記録層を形成した後に、上述の画像記録層に対して露光または加熱によりエネルギーを付与して所定の開口パターンに現像する方法等により形成することができる。ここで、上述の画像記録層を形成する材料は特に限定されず、従来公知の感光層(フォトレジスト層)または感熱層を形成する材料を用いることができ、必要に応じて、赤外線吸収剤等の添加剤も含有していてもよい。
<マスク層除去工程>
上述のマスク層除去工程は、上述のマスク層を除去する工程である。
ここで、上述のマスク層を除去する方法は特に限定されず、例えば、上述のマスク層を溶解し、かつ、上述のアルミニウム基板および上述の陽極酸化膜を溶解しない液体を用いて、上述のマスク層溶解し、除去する方法が挙げられる。このような液体としては、例えば、上述のマスク層に感光層および感熱層を用いる場合は、公知の現像液が挙げられる。
<充填金属除去工程>
上述の充填金属除去工程は、上述のマスク層の開口部の下部に存在する異方導電性部材中の導通路16を構成する金属M2、金属M1を除去する工程である。ここで、上述の金属M2、金属M1を除去する方法は特に限定されず、例えば、過酸化水素水もしくは酸性水溶液、またはそれらの混合液を用いて金属M2、金属M1を溶解させる方法等が挙げられる。
<異方導電性部材除去工程>
上述の異方導電性部材除去工程は、上述のマスク層の開口部の下部に存在する異方導電性部材を除去する工程である。
ここで、上述の異方導電性部材を除去する方法は特に限定されず、例えば、アルカリエッチング水溶液または酸性水溶液を用いて異方導電性部材の陽極酸化膜を溶解させる方法等が挙げられる。
<水洗処理>
上述の各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、および水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
〔半導体パッケージの製造方法5〕
上述の〔基板除去工程〕の後に、露出した異方導電性部材の表面に少なくとも1層以上の配線層を形成する配線層形成工程を有する製造方法により、図36に示す半導体パッケージ60を作製することができる。
図36は半導体パッケージの第3の例を示す模式的断面図である。
図36に示す半導体パッケージ60は、図32に示す半導体パッケージ60に比して異方導電性部材10の裏面10bに配線基板70が設けられている点が異なる以外は同じ構成である。
配線基板70は、電気絶縁性を有する絶縁性基材72に配線層74が設けられている。配線層74は、一方が異方導電性部材10の導通路16と電気的に接続され、他方が半田ボール65に電気的に接続されている。これにより、半導体素子62から信号等を半導体パッケージ60の外部に取り出すことができる。また、半導体パッケージ60の外部から半導体素子62に信号、電圧、または電流等を供給することができる。
〔半導体パッケージの製造方法6〕
上述の〔半導体パッケージの製造方法5〕の配線層形成工程の後に、上述の半導体パッケージと半導体素子が搭載されたパッケージ基板の接合を少なくとも1回以上行う工程を有する製造方法により、図37に示すように半導体パッケージ基板を積層したPoP(Package on Package)基板41を作製することができる。
図37は半導体パッケージ基板を積層した構成を示す模式的断面図である。
図37に示すPoP基板41は、半導体パッケージ基板60aと半導体パッケージ基板60bとが積層され、半田ボール88により電気的に接続されている。半導体パッケージ基板60aは、異方導電性部材10の表面10aに配線層78が設けられている。配線層78は絶縁層77に、例えば、2つの配線58が設けられている。各配線58は、半田ボール65により1つの半導体素子62と電気的に接続されている。配線層78および1つの半導体素子62はモールド樹脂64で覆われている。
また、異方導電性部材10の裏面10bに配線層80が設けられている。配線層80は絶縁性基材81に、2つの配線層82が設けられている。各配線層82は、それぞれ異方導電性部材10の導通路16を介して半田ボール65と電気的に接続されている。
半導体パッケージ基板60bは、例えば、基板84の両側に電極85が設けられ、中央部に2つの電極86が設けられている。中央部の各電極86は、それぞれ半田ボール65を介して半導体素子62と電気的に接続されている。基板84の両側の電極85は、それぞれ半田ボール88を介して半導体パッケージ基板60aの配線層82と電気的に接続されている。
〔半導体パッケージの製造方法7〕
上述の〔半導体パッケージの製造方法2〕に記載の絶縁層形成工程の後に、上述の絶縁層の下にある上述の配線を露出するために絶縁層に穴をあける工程を有する製造方法により、図38に示す半導体パッケージ60を作製することができる。こうして、部品内蔵基板を作製することができる。
図38は半導体パッケージの第4の例を示す模式的断面図である。
図38に示す半導体パッケージ60は、図33に示す半導体パッケージ60に比して絶縁層68に配線67を露出する穴69が設けられている点以外は同じ構成である。
なお、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、実装形態としては、例えば、SoC(System on a chip)、SiP(System in Package)、PoP(Package on Package)、PiP(Polysilicon Insulater Polysilicon)、CSP(Chip Scale Package)、TSV(Through Silicon Via)等が挙げられる。
より詳細には、例えば、本発明の異方導電性部材は、半導体素子単体のデータ信号、および電源の接続に加えて、グランド部および熱伝導部としても使用できる。
また、本発明の異方導電性部材は、2個以上の半導体素子間のデータ信号または電源の接続に加えて、グランド部および熱伝導部としても使用できる。このような態様としては、例えば、以下の例におけるインターポーザーとして本発明の異方導電性部材を使用したものが挙げられる。
・3次元SoCのロジックデバイス(例えば、ホモジニアス基板(インターポーザー上にFPGA(Field Programmable Gate Array)を複数層積層したもの)、ヘテロジニアス基板(インターポーザー上にデジタルデバイスと、アナログデバイスと、RFデバイスと、MEMSと、メモリとを積層したもの)等)
・ロジックとメモリとを組み合わせた3次元SiP(Wide I/O)(例えば、インターポーザーの上または上下にCPUとDRAMとを積層したもの、インターポーザーの上または上下にGPUとDRAMとを積層したもの、インターポーザーの上または上下にASIC/FPGAとWideI/Oメモリとを積層したもの、インターポーザーの上または上下にAPEとWideI/Oメモリとを積層したもの等)
・SoCとDRAMとを組み合わせた2.5次元ヘテロジニアス基板
また、本発明の異方導電性部材は、図39に示すように半導体パッケージ60とプリント配線基板90との電気的な接続にも使用できる。プリント配線基板90は、半導体パッケージ60の異方導電性部材10の裏面10bに設けられる。プリント配線基板90は、例えば、樹脂で構成された絶縁性基材92に配線層94が設けられている。配線層94は異方導電性部材10の裏面10bの導通路16と電気的に接続されている。
また、本発明の異方導電性部材は、2個以上の半導体パッケージ同士の接続(PoP)にも使用でき、この場合における態様としては、例えば、本発明の異方導電性部材が、その上下面側に配置された2個の半導体パッケージと、所定の配線を介して接続された態様が挙げられる。
また、本発明の異方導電性部材は、2個以上の半導体素子を基板上に積み重ねる態様または平置きにする態様によってパッケージングしたマルチチップパッケージにも使用でき、この場合における態様としては、例えば、本発明の異方導電性部材上に、2個の半導体素子を積層し、所定の配線を介して接続された態様が挙げられる。
(電子デバイス)
以下、異方導電性部材を用いた電子デバイスについて説明する。電子デバイスは、接合体の一種である。
図42は本発明の実施形態の電子デバイスの第1の例を示す模式図であり、図43は本発明の実施形態の電子デバイスの第2の例を示す模式図である。
図42に示す電子デバイス110のように、インターポーザー117と異方導電性部材10を用いて、半導体素子114と半導体素子116と半導体素子118を積層方向Dsに積層して接合し、かつ電気的に接続した構成としてもよい。
また、図43に示す電子デバイス110のように光学センサーとして機能するものでもよい。図43に示す電子デバイス110は、半導体素子120とセンサチップ122とが異方導電性部材10を介して積層方向Dsに積層されている。また、センサチップ122にはレンズ124が設けられている。
半導体素子120は、ロジック回路が形成されたものであり、センサチップ122で得られる信号を処理することができれば、その構成は特に限定されるものではない。
センサチップ122は、光を検出する光センサーを有するものである。光センサーは、光を検出することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーが用いられる。
レンズ124は、センサチップ122に光を集光することができれば、その構成は特に限定されるものではなく、例えば、マイクロレンズと呼ばれるものが用いられる。
なお、上述の半導体素子114、半導体素子116および半導体素子118は、素子領域(図示せず)を有する。
素子領域とは、電子素子として機能するための、コンデンサ、抵抗およびコイル等の各種の素子構成回路等が形成された領域である。素子領域には、例えば、フラッシュメモリ等のようなメモリ回路、マイクロプロセッサおよびFPGA(field-programmable gate array)等のような論理回路が形成された領域、無線タグ等の通信モジュールならびに配線が形成された領域がある。素子領域には、これ以外に、発信回路、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が形成されてもよい。MEMSとは、例えば、センサー、アクチュエーターおよびアンテナ等である。センサーには、例えば、加速度、音および光等の各種のセンサーが含まれる。
上述のように、素子領域は素子構成回路等が形成されており、半導体素子には、例えば、再配線層(図示せず)が設けられている。
積層デバイスでは、例えば、論理回路を有する半導体素子と、メモリ回路を有する半導体素子の組合せとすることができる。また、半導体素子を全てメモリ回路を有するものとしてもよく、また、全て論理回路を有するものとしてもよい。また、電子デバイス110における半導体素子の組合せとしては、センサー、アクチュエーターおよびアンテナ等と、メモリ回路と論理回路との組み合わせでもよく、電子デバイス110の用途等に応じて適宜決定されるものである。
〔半導体素子〕
半導体素子は、上述の半導体パッケージおよび電子デバイスに用いられるものである。半導体素子としては、特に限定されず、上述のもの以外に、例えば、ロジックLSI(Large Scale Integration)(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASSP(Application Specific Standard Product)等)、マイクロプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等)、メモリ(例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、HMC(Hybrid Memory Cube)、MRAM(MagneticRAM:磁気メモリ)とPCM(Phase-Change Memory:相変化メモリ)、ReRAM(Resistive RAM:抵抗変化型メモリ)、FeRAM(Ferroelectric RAM:強誘電体メモリ)、フラッシュメモリ(NAND(Not AND)フラッシュ)等)、LED(Light Emitting Diode)、(例えば、携帯端末のマイクロフラッシュ、車載用、プロジェクタ光源、LCDバックライト、一般照明等)、パワー・デバイス、アナログIC(Integrated Circuit)、(例えば、DC(Direct Current)−DC(Direct Current)コンバータ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、(例えば、加速度センサー、圧力センサー、振動子、ジャイロセンサ等)、ワイヤレス(例えば、GPS(Global Positioning System)、FM(Frequency Modulation)、NFC(Nearfieldcommunication)、RFEM(RF Expansion Module)、MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)、WLAN(WirelessLocalAreaNetwork)等)、ディスクリート素子、BSI(Back Side Illumination)、CIS(Contact Image Sensor)、カメラモジュール、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、Passiveデバイス、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ、RF(Radio Frequency)フィルタ、RFIPD(Radio Frequency Integrated Passive Devices)、BB(Broadband)等が挙げられる。
半導体素子は、例えば、1つで完結したものであり、半導体素子単体で、回路またはセンサー等の特定の機能を発揮するものである。
電子デバイスとしては、1つの半導体素子に複数の半導体素子を接合する形態である1対複数の形態に限定されるものではなく、複数の半導体素子と複数の半導体素子とを接合する形態である複数対複数の形態でもよい。
図44は本発明の実施形態の電子デバイスの第3の例を示す模式図であり、図45は本発明の実施形態の電子デバイスの第4の例を示す模式図であり、図46は本発明の実施形態の電子デバイスの第5の例を示す模式図であり、図47は本発明の実施形態の電子デバイスの第6の例を示す模式図である。
複数対複数の形態としては、例えば、図44に示すように、1つの半導体素子114に対して、異方導電性部材10を用いて半導体素子116と半導体素子118とが接合され、かつ電気的に接続された形態の電子デバイス110aが例示される。半導体素子114は、インターポーザー機能を有するものであってもよい。
また、例えば、インターポーザー機能を有するデバイス上に、論理回路を有する論理チップ、およびメモリーチップ等の複数のデバイスを積層することも可能である。また、この場合、それぞれのデバイスごとに電極サイズが異なっていても接合することができる。
図45に示す電子デバイス110bでは、電極128の大きさは同じではなく、大きさが異なるものが混在しているが、1つの半導体素子114に対して、異方導電性部材10を用いて半導体素子116と半導体素子118とが接合され、かつ電気的に接続されている。さらに半導体素子116に半導体素子126が異方導電性部材10を用いて接合され、かつ電気的に接続されている。半導体素子116と半導体素子118とに跨って半導体素子127が異方導電性部材10を用いて接合され、かつ電気的に接続されている。
また、図46に示す電子デバイス110cのように、1つの半導体素子114に対して、異方導電性部材10を用いて半導体素子116と半導体素子118とが接合され、かつ電気的に接続されている。さらに半導体素子116に半導体素子126と半導体素子127とが異方導電性部材10を用いて接合され、半導体素子118に半導体素子131が異方導電性部材10を用いて接合され、かつ電気的に接続されている構成とすることもできる。
上述のような構成の場合に、光導波路を含むようなデバイス表面にVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)のような発光素子、およびCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーのような受光素子を積層することで高周波を想定したシリコンフォトニクスへの対応も可能となる。
例えば、図47に示す電子デバイス110dのように、1つの半導体素子114に対して、異方導電性部材10を用いて半導体素子116と半導体素子118とが接合され、かつ電気的に接続されている。さらに半導体素子116に半導体素子126と半導体素子127とが異方導電性部材10を用いて接合され、半導体素子118に半導体素子131が異方導電性部材10を用いて接合され、かつ電気的に接続されている。半導体素子114には光導波路133が設けられている。半導体素子118には発光素子135が設けられ、半導体素子116には受光素子136が設けられている。半導体素子118の発光素子135から出力された光Loは、半導体素子114の光導波路133を通過し、半導体素子116の受光素子136に出射光Ldとして出射される。これにより、上述のシリコンフォトニクスに対応することができる。
なお、異方導電性部材10には、光Loおよび出射光Ldの光路に相当する箇所に穴132が形成されている。
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の異方導電性部材、異方導電性部材の製造方法、および接合体の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、および、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、以下に示すTEGチップと異方導電性部材とインターポーザーとを接合し、以下に示す実施例1〜実施例15ならびに比較例1〜比較例3の接合体を得た。実施例1〜実施例15ならびに比較例1〜比較例3の接合体のそれぞれについて、電気抵抗および強度を評価した。電気抵抗および強度の結果を下記表1に示す。なお、下記表1には、導通路の突出部の断面積と貫通部の断面積との関係を示すS/Sdの値も合わせて示す。
以下、評価項目である電気抵抗および強度について説明する。
電気抵抗は、導通抵抗を用いて評価した。導通抵抗について説明する。
<抵抗の評価>
インターポーザーのデイジーチェインパターン部分の引出し配線パッドにプローブを接触させ、大気中で導通評価を行った。測定装置としてケースレー社ソースメーターを用い、抵抗値の測定を行った。
抵抗値の結果に基づき、以下に示す評価基準にて評価した。評価結果を下記表1の電気抵抗の欄に示す。
「A」:抵抗値が設計抵抗の10倍未満
「B」:抵抗値が設計抵抗の10倍以上100倍未満
「C」:抵抗値が設計抵抗の100倍以上1000倍未満
「D」:抵抗値が設計抵抗の1000倍以上
<強度の評価>
強度は、接合強度を用いて評価した。
接合強度は、万能型ボンドテスターDage-4000(ノードソンアドバンストテクノロジー株式会社製)を用いて、各実施例および比較例のTEGチップと異方導電性部材とインターポーザーとの接合体のシェア強度を測定して評価した。
接合強度は、得られた破壊荷重から半導体素子の面積当たりの接合強度値を求めた。接合強度は、以下に示す評価基準により評価した。評価結果を下記表1の強度の欄に示す。
「A」:20MPa≦接合強度
「B」:10MPa≦接合強度<20MPa
「C」:接合強度<10MPa
<TEGチップ>
Cuパッドを有するTEGチップ(Test Element Group chip)とインターポーザーを用意した。これらの内部には、導通抵抗を測定するデイジーチェインパターンと絶縁抵抗を測定する櫛歯パターンを含む。これらの、絶縁層はSiNである。TEGチップは、チップサイズが8mm四方であり、チップ面積に対する電極面積(銅ポスト)の比率が25%のチップを用意した。電極は直径5μm、高さ7μmとし、電極間に存在する絶縁層の厚みを2μmとした。TEGチップが半導体部材に相当する。インターポーザーは周囲に取出し配線を含むためチップサイズは10mm四方のものを用意した。
なお、接合に際しては、TEGチップ、異方導電性部材およびインターポーザーをこの順で積層して、チップボンダー(DB250、澁谷工業株式会社製)を用いて温度270℃、10分の接合条件で接合した。この際TEGチップとインターポーザーのCuパッドの位置がズレないよう予めチップの角に形成したアライメントマークにより位置を合わせて接合した。
以下、異方導電性部材について説明する。
[異方導電性部材]
<アルミニウム基板の作製>
Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.005質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC(Direct Chill)鋳造法で作製した。
次いで、表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。
さらに、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ1.0mmに仕上げ、JIS(日本工業規格) 1050材のアルミニウム基板を得た。
アルミニウム基板を、直径200mm(8インチ)のウエハ状に形成した後、以下に示す各処理を施した。
<電解研磨処理>
上述のアルミニウム基板に対して、以下組成の電解研磨液を用いて、電圧25V、液温度65℃、液流速3.0m/分の条件で電解研磨処理を施した。
陰極はカーボン電極とし、電源は、GP0110−30R(株式会社高砂製作所社製)を用いた。また、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(アズワン株式会社製)を用いて計測した。
(電解研磨液組成)
・85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
<陽極酸化処理工程>
次いで、電解研磨処理後のアルミニウム基板に、特開2007−204802号公報に記載の手順にしたがって自己規則化法による陽極酸化処理を施した。
電解研磨処理後のアルミニウム基板に、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度16℃、液流速3.0m/分の条件で、5時間のプレ陽極酸化処理を施した。
その後、プレ陽極酸化処理後のアルミニウム基板を、0.2mol/L無水クロム酸、0.6mol/Lリン酸の混合水溶液(液温:50℃)に12時間浸漬させる脱膜処理を施した。
その後、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度16℃、液流速3.0m/分の条件の条件で、3時間45分の再陽極酸化処理を施し、膜厚30μmの陽極酸化膜を得た。
なお、プレ陽極酸化処理および再陽極酸化処理は、いずれも陰極はステンレス電極とし、電源はGP0110−30R(株式会社高砂製作所製)を用いた。また、冷却装置にはNeoCool BD36(ヤマト科学株式会社製)、かくはん加温装置にはペアスターラー PS−100(EYELA東京理化器械株式会社製)を用いた。さらに、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(アズワン株式会社製)を用いて計測した。
<バリア層除去工程>
次いで、上述の陽極酸化処理と同様の処理液および処理条件で、電圧を40Vから0Vまで連続的に電圧降下速度0.2V/secで降下させながら電解処理(電解除去処理)を施した。
その後、5質量%リン酸に30℃、30分間浸漬させるエッチング処理(エッチング除去処理)を施し、陽極酸化膜のマイクロポアの底部にあるバリア層を除去し、マイクロポアを介してアルミニウムを露出させた。
ここで、バリア層除去工程後の陽極酸化膜に存在するマイクロポアの平均開口径は60nmであった。なお、平均開口径は、FE−SEM(Field emission - Scanning Electron Microscope)により表面写真(倍率50000倍)を撮影し、50点測定した平均値として算出した。
また、バリア層除去工程後の陽極酸化膜の平均厚みは80μmであった。なお、平均厚みは、陽極酸化膜を厚さ方向に対してFIB(Focused Ion Beam)で切削加工し、その断面をFE−SEMにより表面写真(倍率50000倍)を撮影し、10点測定した平均値として算出した。
また、陽極酸化膜に存在するマイクロポアの密度は、約1億個/mm2であった。なお、マイクロポアの密度は、特開2008−270158号公報の[0168]および[0169]段落に記載された方法で測定し、算出した。
また、陽極酸化膜に存在するマイクロポアの規則化度は、92%であった。なお、規則化度は、FE−SEMにより表面写真(倍率20000倍)を撮影し、特開2008−270158号公報の[0024]〜[0027]段落に記載された方法で測定し、算出した。
<金属充填工程>
次いで、アルミニウム基板を陰極にし、白金を正極にして電解めっき処理を施した。
具体的には、以下に示す組成の銅めっき液を使用し、定電流電解を施すことにより、マイクロポアの内部に銅が充填された金属充填微細構造体を作製した。
ここで、定電流電解は、株式会社山本鍍金試験器社製のめっき装置を用い、北斗電工株式会社製の電源(HZ−3000)を用い、めっき液中でサイクリックボルタンメトリを行って析出電位を確認した後に、以下に示す条件で処理を施した。
(銅めっき液組成および条件)
・硫酸銅 100g/L
・硫酸 50g/L
・塩酸 15g/L
・温度 25℃
・電流密度 10A/dm2
マイクロポアに金属を充填した後の陽極酸化膜の表面をFE−SEMで観察し、1000個のマイクロポアにおける金属による封孔の有無を観察して封孔率(封孔マイクロポアの個数/1000個)を算出したところ、96%であった。
また、マイクロポアに金属を充填した後の陽極酸化膜を厚さ方向に対してFIBで切削加工し、その断面をFE−SEMにより表面写真(倍率50000倍)を撮影し、マイクロポアの内部を確認したところ、封孔されたマイクロポアにおいては、その内部が金属で完全に充填されていることが分かった。
<基板除去工程>
次いで、20質量%塩化水銀水溶液(昇汞)に20℃、3時間浸漬させることによりアルミニウム基板を溶解して除去することにより、金属充填微細構造体を作製した。
<突出工程>
基板除去工程後の金属充填微細構造体を、水酸化ナトリウム水溶液(濃度:5質量%、液温度:20℃)に浸漬させ、突出部分の高さが300nmとなるように浸漬時間を調整してアルミニウムの陽極酸化膜の表面を選択的に溶解し、次いで、水洗し、乾燥して、導通路である銅の円柱を突出させた。
同様に、アルミニウムの陽極酸化膜の裏面についても、突出部分の高さが300nmとなるように、導通路である銅の円柱を突出させた。
<縮径工程>
アルミニウムの陽極酸化膜の貫通部の断面積Sdに対して、縮径後の0.8hに相当する位置の断面積Sと貫通部の断面積Sdとが、S<Sdとなるように、銅の円柱が突出した金属充填微細構造体に対して、異方導電性部材を得た。なお、異方導電性部材の絶縁性基材の厚みは、15μmとした。
(実施例1)
実施例1は、上述のインターポーザーと異方導電性部材とTEGチップとを位置合せした後に、接合して接合体を作製した。接合圧力は1サンプル当たり50MPaとした。
実施例1は、縮径工程において、突出部の0.8hに相当する位置における断面積Sと、貫通部の断面積Sdとの関係が、S=0.5Sdとなるように、H(1%)、クエン酸(1%)、水(98%)の液を用いたウエットエッチング処理を実施した。なお、実施例1は、突出部の高さを300nmとし、断面積Sは2800nmとした。
(実施例2)
実施例2は、実施例1に比して、絶縁性基材の構成と、突出部の高さと、突出部の断面積とが異なり、それ以外は実施例1と同じとした。
実施例2では、絶縁性基材がシリコン(Si)で構成されている。また、実施例2は、S=0.7Sdとし、突出部の高さを500nmとした。
(実施例3)
実施例3は、実施例1に比して、突出部の高さと、突出部の断面積とが異なり、さらに突出部の構成が異なり、それ以外は実施例1と同じとした。実施例3は、S=0.2Sdとし、突出部の高さを200nmとした。また、実施例3では、突出部をCuではなく、ITO(Indium Tin Oxide)で構成した。
(実施例4)
実施例4は、実施例1に比して、突出部の高さと、突出部の断面積と、絶縁性基材の厚みとが異なり、それ以外は実施例1と同じとした。実施例4は、S=0.5Sdとし、突出部の高さを200nmとした。また、実施例4は、絶縁性基材の厚みを0.8μmとした。
(実施例5)
実施例5は、実施例1に比して、突出部の高さと、突出部の断面積と、絶縁性基材の厚みとが異なり、それ以外は実施例1と同じとした。実施例5は、S=0.5Sdとし、突出部の高さを500nmとした。また、実施例5は、絶縁性基材の厚みを50μmとした。
(実施例6)
実施例6は、実施例1に比して、突出部の断面積が異なり、それ以外は実施例1と同じとした。実施例6は、S=0.97Sdとした。
(実施例7)
実施例7は、実施例1に比して、突出部の断面積が小さい点が異なり、それ以外は実施例1と同じとした。実施例7は、S=0.2Sdとし、突出部の高さを300nmとした。また、実施例7は、突出部の断面積Sを700nmとした。
(実施例8)
実施例8は、実施例1に比して、突出部の高さと、突出部の断面積が大きい点が異なり、それ以外は実施例1と同じとした。実施例8は、S=0.9Sdとし、突出部の高さを200nmとした。また、実施例8は、突出部の断面積Sを50000nmとした。
(実施例9)
実施例9は、実施例1に比して、突出部の高さと、突出部の断面積とが異なり、それ以外は実施例1と同じとした。実施例9は、S=0.95Sdとし、突出部の高さを50nmとした。
(実施例10)
実施例10は、実施例1に比して、縮径工程に摩擦処理を用いた点が異なり、それ以外は実施例1と同じとした。実施例10の摩擦処理は、縮径前の状態の突出部を、面方向に引張って延ばすことにより縮径する処理である。方法としてはディスコ社製サーフェスプレーナーを用い、突出部を摩擦することにより引張って伸ばすことができる。
実施例10は、S=0.5Sdとし、突出部の高さを500nmとした。
(実施例11)
実施例11は、実施例1に比して、突出部を絶縁性基材の一方にだけ設けた点が異なり、それ以外は実施例1と同じとした。
(実施例12)
実施例12は、実施例1に比して、縮径工程にドライエッチング処理を用いた点が異なり、それ以外は実施例1と同じとした。
ドライエッチング方法としては、基板温度を80℃とし、高周波パワーを600W、エッチングチャンバー内の圧力を4.0Pa(30mtorr)として、四塩化ケイ素ガスを1.69×10−2Pa・m/秒(100sccm(standard cubic centimeter per minute))、アンモニアガスを8.45×10−4Pa・m/秒(5sccm)、マイクロ波パワー800Wとして所定の径になるまで処理を行った。
(実施例13)
実施例13は、実施例1に比して、突出工程の前に酸化処理を行い、縮径工程にガス還元処理を用いた点が異なり、それ以外は実施例1と同じとした。
酸化処理としては、大気雰囲気下において金属充填微細構造体を100℃で1分間加熱する処理を用いた。ガス還元処理としてはユニテンプ社製ギ酸還元装置を用いて、ギ酸雰囲気で基盤を250℃の温度に、5分間保持することにより突出部表面を縮径化した。
(実施例14)
実施例14は、実施例1に比して、縮径工程に突出部の先端に凹部を形成する処理を用いた点が異なり、それ以外は実施例1と同じとした。
実施例14では、突出部の先端を電極に接触させた状態で、電極に電流をパルス状に印加して凹部を形成した。
(実施例15)
実施例15は、実施例1に対して接合圧力を5MPaとした点が異なり、それ以外は実施例1と同じとした。
(比較例1)
比較例1は、実施例1に比して、縮径工程がない点が異なり、それ以外は実施例1と同じにした。比較例1は、突出部の直径が同じであり、断面積の変化がない。
(比較例2)
比較例2は、実施例11に比して、縮径工程がない点が異なり、それ以外は実施例1と同じにした。比較例2は突出部が片側にだけある構成である。比較例2は、縮径工程がなく突出部の直径が同じであり、断面積の変化がない。
(比較例3)
比較例3は、実施例15に比して、縮径工程がない点が異なり、それ以外は実施例15と同じにした。比較例3は、突出部の直径が同じであり、断面積の変化がない。
Figure 0006887396
表1に示すように、実施例1〜10、12、13および14は、比較例1に比して、電気抵抗の結果が良好であった。
また、実施例11と比較例2とは、いずれも突出部が絶縁性基材の一方にだけ設けた構成であるが、実施例11の方が電気抵抗の結果が良好であった。
また、実施例15と比較例3とは、いずれも接合圧力が5MPaであり、他よりも接合圧力が低い。接合圧力が低い場合でも、実施例15は比較例3に比して電気抵抗および強度の結果が良好であった。このように、本発明では、低い接合圧力でも電気抵抗および強度について良好な結果を得ることができた。
実施例1と実施例2の電気抵抗の結果から、絶縁性基材はバルブ金属の陽極酸化膜であることが好ましい。
実施例1と実施例3の電気抵抗の結果から、導通路は金属で構成することが好ましい。
実施例1と実施例4および実施例5から、絶縁性基材の厚みは薄すぎると強度が低くなり、絶縁性基材の厚みが厚すぎると電気抵抗が増した。
実施例1と実施例6の電気抵抗の結果から、突出部は0.8hに相当する位置の断面積がS<0.95Sdであることが好ましい。
実施例1と実施例7および実施例8から、突出部の0.8hに相当する位置の断面積が小さすぎると強度が低くなり、突出部の0.8hに相当する位置の断面積が大きすぎると電気抵抗が増した。
実施例1と実施例9の電気抵抗および強度の結果から、突出部の高さは100nm以上であることが好ましい。
実施例1と実施例10、実施例12および実施例13との電気抵抗および強度の結果から、縮径工程は、ウエットエッチング処理、ドライエッチング処理およびガス還元処理を実施することが好ましい。
10 異方導電性部材
10a、12a、20a、24a 表面
10b、12b、24b 裏面
12 絶縁性基材
14 貫通孔
16 導通路
16a 貫通部
16b、16c 突出部
16d 周面
16e 先端
16g 凹部
19 樹脂層
20 アルミニウム基板
22 マイクロポア
23 バリア層
24 陽極酸化膜
25、25b 金属
25a 金属層
29 樹脂層
31 巻き芯
40 接合体
41 PoP基板
42、44,46 半導体素子
50 半導体素子部
51 インターポーザー基板
52、53 電極
52a、53a、54a、55a 表面
54、55、77 絶縁層
58 配線
60、60a、60b 半導体パッケージ
62 半導体素子
64 モールド樹脂
65 半田ボール
66 穴
67 配線
68 絶縁層
69 穴
70 配線基板
72 絶縁性基材
74 配線層
78 配線層
80 配線層
81 絶縁性基材
82 配線層
84 基板
85、86 基板
88 半田ボール
90 プリント配線基板
92 絶縁性基材
94 配線層
100 線状導体
101 絶縁性基材
102 信号配線
103 グランド配線
104 絶縁層
105 配線層
110、110a、110b、110c、110d 電子デバイス
114、116、118、120、126、127、131 半導体素子
117 インターポーザー
122 センサチップ
124 レンズ
128 電極
132 穴
133 光導波路
135 発光素子
136 受光素子
Ds 積層方向
Dt 厚み方向
Ld 出射光
Lo 光
H 厚み
h 高さ
ht 厚み
p 中心間距離
PL 平面
R 直径
S、Sd 断面積
x 方向

Claims (2)

  1. 絶縁性基材と、前記絶縁性基材の厚み方向に貫通して設けられた、複数の導通路とを有し、前記導通路は、導電性物質で構成されており、前記絶縁性基材内の貫通部と、前記絶縁性基材の少なくとも一方の面から突出した突出部とを備える、異方導電性部材の製造方法であって、
    前記導通路が設けられ前記突出部が突出した前記絶縁性基材を形成する工程と、
    前記突出部が突出する前記絶縁性基材の前記面からの高さをhとし、前記突出部が突出する前記絶縁性基材の前記面から0.8hに相当する位置における断面積を前記貫通部の断面積よりも小さくする工程とを有し、
    前記0.8hに相当する位置における前記断面積を前記貫通部の前記断面積よりも小さくする工程は、ドライエッチング処理、ウエットエッチング処理、ガス還元処理および摩擦処理のうち、少なくとも1つの処理を実施する、異方導電性部材の製造方法。
  2. 前記導通路が設けられ前記突出部が突出した前記絶縁性基材を形成する工程の前に、
    厚み方向に貫通するマイクロポアを有する前記絶縁性基材を形成する工程と、
    前記マイクロポアに導電性物質を充填する工程と、
    充填した前記導電性物質を前記絶縁性基材から突出させ、前記絶縁性基材の面から突出した前記突出部を形成する工程とを有する、請求項に記載の異方導電性部材の製造方法。
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