JP6885210B2 - 車両用制御装置 - Google Patents

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Description

本発明はエコラン制御を行なう車両用制御装置に係り、特に、エコラン制御から復帰する際にスクォート制御を行なう車両用制御装置に関するものである。
走行用のエンジンと、そのエンジンにより回転駆動されて油圧を出力する機械式オイルポンプと、前記機械式オイルポンプから作動油が供給されて係合させられる複数の油圧式摩擦係合装置の係合解放状態に応じて変速比(=入力回転速度/出力回転速度)が異なる複数の走行ギヤ段を形成する自動変速機と、その自動変速機の何れかの走行ギヤ段が形成される走行レンジと前記自動変速機の総ての油圧式摩擦係合装置が解放されて動力伝達が遮断される非走行レンジとに切り換えることができるレンジ選択装置と、を有する車両が知られている。そして、このような車両に関し、(a) 前記非走行レンジが選択された車両停止時に前記エンジンを回転停止させるエコラン制御(ストップ&スタート制御、アイドリングストップ制御とも言われる)を行なうエコラン制御部と、(b) 前記エコラン制御の実行中に前記レンジ選択装置によって前記非走行レンジから前記走行レンジへ切り換える操作が行なわれると、前記エンジンを始動するとともに、前記複数の走行ギヤ段の中の所定の発進ギヤ段を形成する第1係合装置に加えてスクォート制御用の第2係合装置を係合させることにより、その発進ギヤ段よりも変速比が小さいスクォートギヤ段を一時的に形成した後に、その第2係合装置を解放して前記発進ギヤ段を形成するスクォート制御を行なうスクォート制御部と、を有する車両用制御装置が提案されている(特許文献1参照)。発進ギヤ段に先立って変速比が小さいスクォートギヤ段が形成されることにより、走行レンジへ移行する際の駆動力変動が抑制される。特許文献2には、上記機械式オイルポンプに加えて、ポンプ用電動モータにより回転駆動されて油圧を出力する電動式オイルポンプを設け、エンジンが回転停止させられるエコラン制御の際に、電動式オイルポンプから待機油圧等の補助油圧を出力することにより、再発進の際に油圧式摩擦係合装置を速やかに係合させる技術が記載されている。
特開2017−67206号公報 特開2002−371878号公報
しかしながら、スクォート制御では、発進ギヤ段を形成する第1係合装置に加えてスクォート制御用の第2係合装置を係合させるため、仮に特許文献2に記載のように電動式オイルポンプを設けて補助油圧を出力する場合でも、エンジンの始動過渡時に作動油が不足して第1係合装置や第2係合装置の係合制御が不安定になり、伝達トルク変動(駆動力変動)等のショックが発生する可能性があった。すなわち、発進ギヤ段に先立ってスクォートギヤ段を形成するスクォート制御による駆動力変動の抑制効果が、必ずしも適切に得られない可能性がある。電動式オイルポンプによる補助油圧を高くすれば作動油不足を解消できるが、高圧の油圧を確保するためには高トルクを出力できる大型で高価なポンプ用電動モータが必要であるとともに、消費電力が増えて燃費が悪化する。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、スクォート制御によって第1係合装置および第2係合装置を係合させる際に、必ずしも大型で高価なポンプ用電動モータを必要とすることなく、作動油不足でそれ等の係合装置の係合制御が不安定になってショックが発生することを抑制することにある。
かかる目的を達成するために、本発明は、走行用のエンジンと、そのエンジンにより回転駆動されて油圧を出力する機械式オイルポンプと、ポンプ用電動モータにより回転駆動されて油圧を出力する電動式オイルポンプと、前記機械式オイルポンプおよび前記電動式オイルポンプから作動油が供給されて係合させられる複数の油圧式摩擦係合装置の係合解放状態に応じて変速比が異なる複数の走行ギヤ段を形成する自動変速機と、その自動変速機の何れかの走行ギヤ段が形成される走行レンジと前記自動変速機の総ての油圧式摩擦係合装置が解放されて動力伝達が遮断される非走行レンジとに切り換えることができるレンジ選択装置と、を有する車両に適用され、(a) 前記非走行レンジが選択された車両停止時に前記エンジンを回転停止させるエコラン制御を行なうエコラン制御部と、(b) 前記エコラン制御の実行中に前記レンジ選択装置によって前記非走行レンジから前記走行レンジへ切り換える操作が行なわれると、前記エンジンを始動するとともに、前記複数の走行ギヤ段の中の所定の発進ギヤ段を形成する第1係合装置に加えてスクォート制御用の第2係合装置を係合させることにより、その発進ギヤ段よりも変速比が小さいスクォートギヤ段を一時的に形成した後に、その第2係合装置を解放して前記発進ギヤ段を形成するスクォート制御を行なうスクォート制御部と、を有する車両用制御装置において、(c) 前記スクォート制御部は、前記機械式オイルポンプおよび前記電動式オイルポンプの両方から供給される作動油量が、前記エンジンの始動に伴う前記機械式オイルポンプの回転によって増加し、前記第1係合装置および前記第2係合装置を共に係合させるのに必要な所定量以上となる予め定められたスクォート条件を満たすか否かを判断し、そのスクォート条件を満たした後に前記スクォートギヤ段を形成するための油圧制御を行なうことを特徴とする。
このような車両用制御装置においては、レンジ選択装置によって非走行レンジから走行レンジへ切り換える操作が行なわれてエコラン制御から復帰する際に、機械式オイルポンプおよび電動式オイルポンプの両方から供給される作動油量が所定量以上となる予め定められたスクォート条件を満たすか否かを判断し、スクォート条件を満たした後にスクォートギヤ段を形成するための油圧制御を行なうため、作動油不足が抑制されて第1係合装置および第2係合装置の係合制御が円滑に行なわれるようになる。これにより、発進ギヤ段に先立ってスクォートギヤ段を形成するスクォート制御による駆動力変動の抑制効果が一層適切に得られるようになる。また、このように作動油不足が抑制されることから、電動式オイルポンプのために必ずしも大型で高価なポンプ用電動モータを用いる必要がなく、コストや搭載スペース、燃費等の点で有利である。
本発明の一実施例である車両用制御装置を備えている車両の駆動系統を説明するブロック線図で、油圧回路を併せて示した図である。 図1の車両制御用ECUが機能的に備えているスクォート制御部の作動を具体的に説明するフローチャートである。 図2のフローチャートに従ってスクォート制御が行なわれた場合の各部の変化を示すタイムチャートの一例である。 本発明の他の実施例を説明する図で、図2の代わりに実行されるフローチャートである。 本発明の更に別の実施例を説明する図で、図2の代わりに実行されるフローチャートである。 従来のスクォート制御を説明する図で、各部の変化を示すタイムチャートの一例である。
走行用のエンジンは、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関である。エンジンの他に電動モータ等が併用されても良い。自動変速機は、前進用或いは後進用に少なくとも高低2速の走行ギヤ段を有する遊星歯車式の有段変速機が好適に用いられる。複数の走行ギヤ段のうち低速側の発進ギヤ段に対してそれよりも変速比が小さい高速側の何れかの走行ギヤ段がスクォートギヤ段とされる。発進ギヤ段は、例えば変速比が最も大きい第1速ギヤ段であるが、変速比が2番目に大きい第2速ギヤ段などでも良く、少なくともスクォートギヤ段よりも低速側(変速比が大きい側)の走行ギヤ段であれば良い。この発進ギヤ段は、例えば単一の第1係合装置の係合だけで形成されるが、第1係合装置として複数の係合装置を係合させて発進ギヤ段を形成するものでも良い。その場合、スクォートギヤ段は、第1係合装置の複数の係合装置および第2係合装置の係合によって形成されても良いし、第1係合装置の一部の係合装置および第2係合装置の係合によって形成されても良い。3つ以上の油圧式摩擦係合装置の係合で発進ギヤ段やスクォートギヤ段が形成される自動変速機にも本発明は適用され得、発進ギヤ段では解放され且つスクォートギヤ段では係合させられる油圧式摩擦係合装置が第2係合装置である。油圧式摩擦係合装置は、例えば多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、或いはベルト式のブレーキである。
電動式オイルポンプは、例えば機械式オイルポンプによって十分な作動油が得られない場合に補助的に作動させられて待機油圧を出力するように用いられるが、エンジンに比べて応答性が優れていることから、レンジ選択装置によって走行レンジが選択された後に一時的に作動させられて補助油圧を出力するだけでも良い。また、機械式オイルポンプの作動、非作動に拘らず、車両の運転スイッチ(イグニッションスイッチなど)がONの間は電動式オイルポンプを常時作動させて補助油圧を出力しても良いなど、種々の態様が可能である。
レンジ選択装置としては、例えばシフトレバーが用いられるが、押釦スイッチやスライドスイッチ等が用いられても良い。非走行レンジは、自動変速機の総ての油圧式摩擦係合装置が解放される動力伝達遮断レンジで、例えば駐車用のP(パーキング)レンジやN(ニュートラル)レンジなどであり、走行レンジは、何れかの走行ギヤ段が形成される動力伝達可能レンジで、例えば前進走行用のD(ドライブ)レンジや後進走行用のR(リバース)レンジなどである。これ等のレンジは、自動変速機の油圧式摩擦係合装置の係合解放状態が電気的に切り換えられることによって形成される。一部の油圧式摩擦係合装置については、例えばシフトレバー等の操作で機械的に切り換えられても良い。例えば、発進ギヤ段を形成するための第1係合装置は、シフトレバーがD位置等の走行レンジ選択位置へ操作された際にマニュアルバルブ等により機械的に油路が切り換えられて係合させられても良い。第2係合装置については、電気的に油圧制御(油路の切り換えを含む)が行なわれることによって係合させられ、その係合タイミングや解放タイミングをソレノイドバルブ等を用いて電気的に制御できるように構成される。
エコラン制御部は、少なくとも非走行レンジが選択された車両停止時に、エンジンを回転停止させる等のエコラン制御を行なうが、減速走行中でも一定の条件下で油圧式摩擦係合装置を解放するなどしてエコラン制御を行なうことが可能である。スクォート制御部は、レンジ選択装置により走行レンジへ切り換える切換操作が行なわれた場合に無条件でスクォート制御を行なうものでも良いが、ブレーキ操作等の他の許可条件を要件としてスクォート制御を行なうものでも良い。許可条件は適宜定められる。機械式オイルポンプおよび電動式オイルポンプの両方から供給される作動油量が、第1係合装置および第2係合装置を共に係合させるのに必要な所定量以上となるスクォート条件は、第1係合装置および第2係合装置の係合制御が円滑に行なわれるようになれば良く、種々の態様が可能である。電動式オイルポンプからの供給量が一定であれば、機械的オイルポンプからの供給量だけで判断しても良い。具体的には、例えばエンジン回転速度や機械式オイルポンプの回転速度、所定の経過時間等をスクォート条件として定めることができる。供給される作動油量は、機械式オイルポンプの回転速度の変化に対して遅れ時間を有するため、その遅れを考慮してスクォート条件を定めることもできる。また、供給される作動油量は油圧に対応するため、作動油の油圧に基づいてスクォート条件を定めることも可能である。例えばレンジ切換操作に伴って直ちに第1係合装置に対して油圧が供給される場合、その第1係合装置の油圧が所定値以上になったことをスクォート条件として、第2係合装置に対する油圧供給を開始するようにしても良い。第1係合装置および第2係合装置共に、スクォート条件を満たした後に係合制御(油圧供給)を開始しても良いが、第1係合装置についてはスクォート条件を満たす前に先行して係合制御を開始するようにしても良い。
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である車両用制御装置を備えている車両10の駆動系統を説明するブロック線図で、油圧回路12を併せて示した図である。車両10は、走行用駆動力源として内燃機関であるエンジン20を備えており、そのエンジン20の出力は、トルクコンバータ(T/C)22から自動変速機24を経て差動歯車装置28に伝達され、左右の駆動輪30に分配される。トルクコンバータ22は、エンジン20に連結されたポンプ翼車と、自動変速機24の入力軸に連結されたタービン翼車とを備えており、流体(作動油)を介して動力伝達を行うとともに、ポンプ翼車には機械式オイルポンプ40が連結されており、エンジン20により回転駆動されて油圧を出力することにより、油圧回路12の油圧源として用いられる。
自動変速機24は、油圧式摩擦係合装置として複数のクラッチC1、・・・、ブレーキB1、・・・(以下、特に区別しない場合は単に係合装置CBという)を有する遊星歯車式の有段変速機で、係合装置CBの係合解放状態に応じて変速比が異なる複数(例えば4速〜8速程度)の前進ギヤ段および一つの後進ギヤ段が形成される。また、総ての係合装置CBが解放されることにより、動力伝達を遮断するニュートラル状態になる。具体的には、単一の第1クラッチC1が係合させられることによって変速比が最も大きい前進用の第1速ギヤ段が形成され、第1クラッチC1および第1ブレーキB1が係合させられることによって変速比が2番目に大きい第2速ギヤ段が形成される。本実施例では、第1クラッチC1が第1係合装置で、第1速ギヤ段が発進ギヤ段に相当し、第1ブレーキB1が第2係合装置で、第2速ギヤ段がスクォートギヤ段に相当する。第3速ギヤ段以上のギヤ段をスクォートギヤ段に設定することもできる。上記自動変速機24の係合装置CBには、油圧回路12に設けられた油圧作動制御部32から作動油が供給されるようになっている。油圧作動制御部32は、油路を切り換える電磁切換弁や油圧を制御する電磁調圧弁等が設けられたバルブボデーなどで、複数の係合装置CBの油圧を電気的に任意のタイミングで個別に制御して係合解放制御することができる。
油圧回路12は、エンジン20によって回転駆動される機械式オイルポンプ40の他に電動式オイルポンプ42を備えている。電動式オイルポンプ42は、ポンプ用電動モータ44によって任意の時間に任意の駆動トルクで回転駆動される。これ等の機械式オイルポンプ40および電動式オイルポンプ42は、共通の吸い込み口(ストレーナ)46を備えているとともに途中の分岐点48で分岐している吸入油路50、52に接続されており、トランスミッションケースの下部に設けられたオイルパン34に還流した作動油を吸い込み口46から吸い上げて吐出油路54、56に吐出する。吐出油路54、56は、連結点58で互いに連結されて油圧作動制御部32に作動油を供給するが、吐出油路56には、機械式オイルポンプ40から吐出された作動油が電動式オイルポンプ42側へ流入することを防止するための逆止弁60が設けられている。また、吐出油路56と吸入油路52との間には、リリーフ弁62を有する還流油路64が接続されており、吐出油路56内の油圧が所定のリリーフ圧以上になった場合には、その吐出油路56内の作動油がリリーフ弁62を介して吸入油路52へ還流されるようになっている。
車両10はまた、各種の制御を行なうコントローラとして車両制御用ECU(電子制御装置)70およびポンプ制御用ECU80を備えている。車両制御用ECU70およびポンプ制御用ECU80は、何れもマイクロコンピュータを備えて構成されており、RAM等の一時記憶機能を利用しつつROMに予め定められたプログラムに従って所定の信号処理を行う。車両制御用ECU70には、シフトレバー82のシフト操作を検出するシフト操作検出スイッチ84からシフト操作信号Pshが供給される他、エンジン回転速度NE、車速Vに対応する出力回転速度Nout、アクセルペダルの踏込み操作量(アクセル操作量)Accを表す信号など、各種の制御に必要な種々の情報が供給されるようになっている。シフトレバー82は、例えば運転席の近傍に配設され、少なくともD位置、R位置、P位置、N位置へ手動操作できるようになっており、D位置への移動操作によって前進走行用のD(ドライブ)レンジを選択することができ、R位置への移動操作によって後進走行用のR(リバース)レンジを選択することができる。また、P位置は駐車用のP(パーキング)レンジを選択する位置で、N位置は動力伝達を遮断するN(ニュートラル)レンジを選択する位置である。このシフトレバー82はレンジ選択装置に相当し、DレンジおよびRレンジが走行レンジで、PレンジおよびNレンジが非走行レンジである。
車両制御用ECU70は、例えばアクセル操作量Acc等に応じてエンジン20の出力制御を行うとともに、シフトレバー82によるレンジ選択操作に従って油圧作動制御部32を制御することにより、自動変速機24のギヤ段を切り換える。具体的には、シフトレバー82によってDレンジが選択された場合は所定の前進ギヤ段を形成し、Rレンジが選択された場合は後進ギヤ段を形成する。また、PレンジまたはNレンジが選択された場合は、総ての係合装置CBを解放してニュートラル状態にする。すなわち、本実施例は、シフトレバー82によるレンジ選択操作に応じてシフトバイワイヤ方式で油圧作動制御部32の油路を切り換えたり油圧制御を行なったりすることにより、自動変速機24のギヤ段を電気的に切り換えるのである。
ポンプ制御用ECU80は、モータドライバー86を介してポンプ用電動モータ44を回転駆動することにより、電動式オイルポンプ42から所定の油量の作動油を出力するもので、必要油量すなわち必要油圧に応じて任意の時間に任意の駆動トルク(モータ電流)でポンプ用電動モータ44を回転駆動することができる。
前記車両制御用ECU70はまた、機能的にエコラン制御部72およびスクォート制御部74を備えている。すなわち、この車両制御用ECU70は、車両用制御装置に相当する。エコラン制御部72は、少なくともシフトレバー82がN位置またはP位置へ操作された非走行レンジ選択時であって且つ車速Vが略0の車両停止時に、エンジン20への燃料供給等を停止して回転停止させるエコラン制御を実行する。また、再発進時における自動変速機24の係合装置CBの係合制御に備えて、ポンプ制御用ECU80を介してポンプ用電動モータ44を作動させることにより、電動式オイルポンプ42から予め定められた所定の待機油圧を出力させる。本実施例では、エンジン20が回転停止させられるエコラン制御の実行中は、常時、電動式オイルポンプ42から待機油圧が出力される。なお、エンジン20の回転停止に伴う機械式オイルポンプ40の出力油圧の低下に拘らず、各部の潤滑に必要な油圧等を確保するために、エンジン回転速度NEが予め定められた判定値以下になったら、エコラン制御の実行の有無に拘らずポンプ用電動モータ44を作動させて電動式オイルポンプ42から所定の油圧を出力するようにしても良い。
スクォート制御部74は、上記エコラン制御の実行中にシフトレバー82がN位置またはP位置からD位置へ操作された場合、すなわち非走行レンジから前進用の走行レンジへ切り換えるDレンジ切換操作が行なわれた場合に、エンジン20を始動するとともに、第1クラッチC1および第1ブレーキB1を係合させてスクォートギヤ段(第2速ギヤ段)を一時的に形成した後、第1ブレーキB1を解放して発進ギヤ段(第1速ギヤ段)を形成するスクォート制御を実行する。具体的には、図2に示すフローチャートのステップS1〜S5(以下、単にS1〜S5という)に従って信号処理を行なう。
図2のフローチャートは、前記エコラン制御部72によるエコラン制御の実行中に実行され、S1では、シフトレバー82をN位置またはP位置からD位置へ操作するDレンジ切換操作が行なわれたか否かを、シフト操作信号Pshによって判断する。Dレンジ切換操作が行なわれなければそのまま終了するが、Dレンジ切換操作が行なわれた場合はS2以下を実行し、走行レンジへの復帰制御を実施する。S2では、クランキングや燃料噴射、点火時期制御等によりエンジン20の始動制御を行い、S3では、第1クラッチC1の係合制御すなわち第1クラッチC1を係合させるための油圧供給制御を開始する。図3は、図2のフローチャートに従ってスクォート制御が行なわれた場合の各部の変化を示すタイムチャートの一例で、時間t1は、シフトレバー82がD位置へ操作されてS1の判断がYES(肯定)になった時間である。第1クラッチC1の油圧を制御する電磁調圧弁に対する指示圧(実線)は直ちに上昇させられ、実油圧(破線)は前記電動式オイルポンプ42による待機油圧に基づいて、指示圧に遅れて上昇させられる。エンジン回転速度NEおよびタービン回転速度NTは、各部のイナーシャ等により更に遅れて回転開始させられ、機械式オイルポンプ40からの作動油の供給量はエンジン回転速度NEに応じて増加する。図3の車両前後Gは、車両前後方向の加速度である。また、エンジン始動判定は、エンジン20が自力回転できる回転速度以上(ON)か否(OFF)かの判定で、エンジン状態フラグは、エンジン20が安定した運転状態である(ON)か否(OFF)かの判断フラグである。図3の時間t2はエンジン始動判定がONになった時間で、時間t3はエンジン状態フラグがONになった時間である。なお、図3は、ブレーキ操作により車速Vが0の停止状態に維持されている場合である。
S4では、第1クラッチC1および第1ブレーキB1を共に係合させるのに必要な必要クラッチ圧を供給可能になったか否かを判断する。必要クラッチ圧を供給可能か否かは、機械式オイルポンプ40および電動式オイルポンプ42の両方から油圧作動制御部32に供給される作動油量に基づいて判断でき、電動式オイルポンプ42の供給量は待機油圧で略一定であるため、機械式オイルポンプ40の供給量すなわちエンジン回転速度NEに基づいて判断することができる。具体的には、エンジン始動判定がONか否か、エンジン状態フラグがONか否か、或いはその両方がONか否か、によって判断することができる。また、そのON状態が予め定められた所定時間以上継続したか否か、或いはON状態で且つエンジン回転速度NEが予め定められた判定値以上か否か、エンジン回転速度NEが所定の判定値以上の状態が所定時間以上継続したか否か、等によって判断することもできる。
そして、上記S4の判断がYESになったらS5を実行し、スクォートギヤ段である第2速ギヤ段を形成するために第1ブレーキB1の係合制御、すなわち第1ブレーキB1を係合させるための油圧供給制御を実行する。S4の判断がYESになる要件がスクォート条件であり、図3は、エンジン始動判定がONになったことをスクォート条件として、第1ブレーキB1に対する油圧供給制御が開始された場合である。S5のスクォート油圧制御は、第1ブレーキB1の係合により第1クラッチC1の係合と合わせて一時的に第2速ギヤ段を形成した後に、第1ブレーキB1のみを解放して発進ギヤ段である第1速ギヤ段を成立させるもので、例えば図3に示すような予め定められた油圧制御パターンに従ってスクォート油圧(B1油圧)を増減変化させる。図3の時間t4は、スクォート油圧制御すなわち第1ブレーキB1の係合解放制御が終了した時間である。電動式オイルポンプ42は、例えばこのスクォート油圧制御の終了に伴って待機油圧の出力制御が終了されるが、エンジン回転速度NE等に基づいて待機油圧の出力制御を終了しても良い。
このように発進ギヤ段に先立って一時的に変速比が小さいスクォートギヤ段が形成されることにより、非走行レンジから走行レンジへ移行する際の駆動トルク変化が緩やかになり、車両前後Gの変動が軽減される。特に、本実施例では第1クラッチC1および第1ブレーキB1を共に係合させるのに必要な必要クラッチ圧を供給可能か否かを判断するスクォート条件を満たした後に、S5を実行してスクォートギヤ段を形成する第1ブレーキB1に対する油圧供給を開始するため、作動油不足を生じることなく第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合制御が円滑に行なわれるようになり、走行レンジへ切り換える際の車両前後Gの変動が適切に抑制される。すなわち、例えば図6のタイムチャートに示されるように、シフトレバー82をN位置またはP位置からD位置へ操作するDレンジ切換操作が行なわれた場合に(時間t1)、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合制御を直ちに開始する従来技術では、エンジン20の運転開始遅れ等で機械式オイルポンプ40からの作動油の供給が遅れ、且つエンジン20の始動開始当初は回転が不安定で作動油の供給量も安定しないため、電動式オイルポンプ42による待機油圧の供給に拘らず作動油が不足し、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合制御が不安定になって車両前後Gの変動が比較的大きい状態が長く続き、運転者に違和感を生じさせる可能性があった。
このように本実施例の車両制御用ECU70においては、シフトレバー82によるDレンジ切換操作に伴ってエコラン制御から復帰する際に、機械式オイルポンプ40および電動式オイルポンプ42の両方から供給される作動油量に関連して予め定められたスクォート条件を満たすか否か、具体的には第1クラッチC1および第1ブレーキB1を共に係合させるのに必要な必要クラッチ圧を供給可能か否かを判断し(S4)、必要クラッチ圧を供給可能になった後にスクォートギヤ段を形成するための第1ブレーキB1に対する油圧供給を開始するため(S5)、作動油不足を生じることなく第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合制御が円滑に行なわれるようになる。これにより、発進ギヤ段に先立ってスクォートギヤ段を形成するスクォート制御による駆動力変動すなわち車両前後Gの変動の抑制効果が一層適切に得られるようになる。また、このように作動油不足が抑制されることから、電動式オイルポンプ42のために必ずしも大型で高価なポンプ用電動モータを用いる必要がなく、コストや搭載スペース、燃費等の点で有利である。
なお、上記実施例ではスクォート条件であるS4で第1クラッチC1および第1ブレーキB1を共に係合させるのに必要な必要クラッチ圧を供給可能か否かを判断していたが、図4のフローチャートのS4−1に示すように、所定時間が経過したか否かをタイマ等によって判断しても良い。すなわち、エンジン始動要求後の経過時間、具体的にはシフトレバー82によるDレンジ切換操作(図3の時間t1)後の経過時間が、第1クラッチC1および第1ブレーキB1を共に係合させるのに必要な必要クラッチ圧を供給可能となる予め定められたスクォート判定時間を超えた場合に、S5を実行するようにしても良い。或いは、エンジン始動開始時からの経過時間が所定のスクォート判定時間を超えた場合、エンジン完爆判定後の経過時間が所定のスクォート判定時間を超えた場合、エンジン始動判定がONになった後の経過時間が所定のスクォート判定時間を超えた場合、エンジン状態フラグがONになった後の経過時間が所定のスクォート判定時間を超えた場合など、種々のスクォート条件を定めることが可能である。
また、図5のフローチャートのS4−2に示すように、機械式オイルポンプ(MOP)40の回転速度が、第1クラッチC1および第1ブレーキB1を共に係合させるのに必要な必要クラッチ圧を供給可能となる予め定められた閾値すなわちスクォート判定値を超えた場合に、S5を実行するようにしても良い。前記実施例では機械式オイルポンプ40の回転速度はエンジン回転速度NEと同じであり、エンジン回転速度NEで代用することができるが、エンジン20と機械式オイルポンプ40との間に変速歯車等の変速機構が存在する場合には、S4−2のように機械式オイルポンプ40そのものの回転速度を検出して判定するようにしても良い。
上記S4−1のように経過時間で判断したり、S4−2のように機械式オイルポンプ40の回転速度で判断したりする場合も、実質的に第1クラッチC1および第1ブレーキB1を共に係合させるのに必要な必要クラッチ圧を供給可能か否かを判断するもので、図2のS4の一実施態様と見做すことができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両 20:エンジン 24:自動変速機 40:機械式オイルポンプ 42:電動式オイルポンプ 44:ポンプ用電動モータ 70:車両制御用ECU(車両用制御装置) 72:エコラン制御部 74:スクォート制御部 82:シフトレバー(レンジ選択装置) C1:第1クラッチ(油圧式摩擦係合装置、第1係合装置) B1:第1ブレーキ(油圧式摩擦係合装置、第2係合装置) S4、S4−1、S4−2:スクォート条件

Claims (1)

  1. 走行用のエンジンと、該エンジンにより回転駆動されて油圧を出力する機械式オイルポンプと、ポンプ用電動モータにより回転駆動されて油圧を出力する電動式オイルポンプと、前記機械式オイルポンプおよび前記電動式オイルポンプから作動油が供給されて係合させられる複数の油圧式摩擦係合装置の係合解放状態に応じて変速比が異なる複数の走行ギヤ段を形成する自動変速機と、該自動変速機の何れかの走行ギヤ段が形成される走行レンジと前記自動変速機の総ての油圧式摩擦係合装置が解放されて動力伝達が遮断される非走行レンジとに切り換えることができるレンジ選択装置と、を有する車両に適用され、
    前記非走行レンジが選択された車両停止時に前記エンジンを回転停止させるエコラン制御を行なうエコラン制御部と、
    前記エコラン制御の実行中に前記レンジ選択装置によって前記非走行レンジから前記走行レンジへ切り換える操作が行なわれると、前記エンジンを始動するとともに、前記複数の走行ギヤ段の中の所定の発進ギヤ段を形成する第1係合装置に加えてスクォート制御用の第2係合装置を係合させることにより、該発進ギヤ段よりも変速比が小さいスクォートギヤ段を一時的に形成した後に、該第2係合装置を解放して前記発進ギヤ段を形成するスクォート制御を行なうスクォート制御部と、
    を有する車両用制御装置において、
    前記スクォート制御部は、前記機械式オイルポンプおよび前記電動式オイルポンプの両方から供給される作動油量が、前記エンジンの始動に伴う前記機械式オイルポンプの回転によって増加し、前記第1係合装置および前記第2係合装置を共に係合させるのに必要な所定量以上となる予め定められたスクォート条件を満たすか否かを判断し、該スクォート条件を満たした後に前記スクォートギヤ段を形成するための油圧制御を行なう
    ことを特徴とする車両用制御装置。
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