以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す図である。
図1に示すように、画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、給紙トレイユニット51a〜51cから送出された用紙Sに二次転写することにより、画像を形成する。
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60および制御部101を備える。定着部60は、本発明の「定着装置」に対応する。
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)102、ROM(Read Only Memory)103、RAM(Random Access Memory)104等を備える。CPU102は、ROM103から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM104に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロック等の動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
制御部101は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部101は、例えば、外部の装置から送信された画像データ(入力画像データ)を受信し、この画像データに基づいて用紙Sに画像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
図1に示すように、画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11により、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることが可能となる。
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
図2に示すように、操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部101から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部101に出力する。
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部101の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
図1に示すように、画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示すこととする。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、及びドラムクリーニング装置415等を備える。
感光体ドラム413は、例えばドラム状の金属基体の外周面に、有機光導電体を含有させた樹脂よりなる感光層が形成された有機感光体よりなる。
制御部101は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度で回転させる。
帯電装置414は、例えば帯電チャージャーであり、コロナ放電を発生させることにより、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。その結果、感光体ドラム413の表面のうちレーザー光が照射された画像領域には、背景領域との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
現像装置412は、二成分逆転方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分の現像剤を付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
現像装置412には、例えば帯電装置414の帯電極性と同極性の直流現像バイアス、または交流電圧に帯電装置414の帯電極性と同極性の直流電圧が重畳された現像バイアスが印加される。その結果、露光装置411によって形成された静電潜像にトナーを付着させる反転現像が行われる。
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に当接され、弾性体よりなる平板状のドラムクリーニングブレード等を有し、中間転写ベルト421に転写されずに感光体ドラム413の表面に残留するトナーを除去する。
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
中間転写ベルト421は、導電性および弾性を有するベルトであり、表面に高抵抗層を有する。中間転写ベルト421は、制御部101からの制御信号によって回転駆動される。
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側、つまり一次転写ローラー422と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
その後、用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Sに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙Sの裏面側、つまり二次転写ローラー424と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙Sに静電的に転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
ベルトクリーニング装置426は、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
定着部60は、用紙Sの定着面、つまりトナー像が形成されている面側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙Sの裏面つまり定着面の反対の面側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、および加熱源等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙Sを挟持して搬送する定着ニップが形成される。定着部60および制御部101は、本発明の定着装置に対応する。
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、筐体である定着器F内にユニットとして配置される。
上側定着部60Aは、定着面側部材である無端状の定着ベルト61、加熱ローラー62および押圧パッド部200を有する。定着ベルト61は、加熱ローラー62と押圧パッド部200とによって張架されている。加熱ローラー62は、定着ベルト61を加熱する加熱源60Cを備えている。定着ニップの近傍には、定着ベルト61の表面温度を検知する図示しない非接触温度センサーなどの温度検知部が設けられている。制御部101は、かかる非接触温度センサーの検知温度をモニターして、定着ベルト61が適温になるように加熱源60Cを制御する。なお、押圧パッド部200の構成については後述する。
下側定着部60Bは、裏面側支持部材である加圧ローラー64を有する。加圧ローラー64は、定着ベルト61との間で用紙Sを挟持して搬送する定着ニップを形成している。
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、及び搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類毎に収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aを含む複数の搬送ローラー対を有する。レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部は、用紙Sの傾きおよび片寄りを補正する。
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。画像形成部40においては、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
次に、図3を参照して、定着装置である定着部60の主要な構成を説明する。図3に示すように、本実施の形態の定着部60は、上側定着部60Aとして回転不能な押圧パッド部200が設けられている。また、この定着部60は、駆動源が下側定着部60Bの加圧ローラー64にのみ設けられ、かかる加圧ローラー64の回転により上側定着部60Aの定着ベルト61が従動して走行する構成となっている。
上側定着部60Aの押圧パッド部200(「パッド部材」に対応する)は、押圧部材210、摺動部材220、支持部材230、および潤滑剤供給部240を有する。
押圧部材210の下面側の領域は、定着ベルト61を介して加圧ローラー64との間で定着ニップNPを形成するニップ形成部としての役割を担う。かかるニップ形成部は、下加圧部材である加圧ローラー64に加圧されることにより、定着ベルト61を押圧する。
摺動部材220は、押圧部材210と定着ベルト61との間に挟み込まれる、例えば、テフロン(登録商標)加工されたシート状の部材である。摺動部材220は、押圧部材210と定着ベルト61との間における摺動抵抗を低減させる機能を有する。
また、摺動部材220と定着ベルト61との間には、後述のように潤滑剤が塗布されることにより、定着ニップ部分における定着ベルト61の摺動抵抗がさらに低減される。
支持部材230は、加圧ローラー64に加圧される押圧部材210を支持する部分である。支持部材230により押圧部材210が支持されることで、定着ニップNPにおける圧力が確保される。
潤滑剤供給部240は、定着ベルト61の内面に潤滑剤を供給するものであり、定着ベルト61の走行方向(用紙搬送方向)における定着ニップNPの下流側に設けられている。
かかる構成の定着部60において、制御部101の制御信号によって加圧ローラー64が図3中の反時計方向(矢印参照)に駆動回転されると、定着ベルト61および加熱ローラー62が時計方向(矢印参照)に従動して回転する。定着ベルト61の回転時には、摺動部材220に対して定着ベルト61が摺動し、潤滑剤供給部240から供給された潤滑剤により定着ニップNPにおける摺動部材220と定着ベルト61との間の摺動抵抗が低く保持される。
ところで、本実施の形態のように、下加圧部材である加圧ローラー64にのみ駆動源が設けられ、上加圧部材が従動する定着装置では、ウォームアップ動作の直後など、定着ベルト61(上加圧部材)の温度が高いときに用紙Sを通紙すると、用紙Sがスリップしやすいという問題がある。
特に、本実施の形態のように、上側定着部60Aにおける定着ニップNPを形成する部材として、上記のような押圧パッド部200を用いる場合、定着ベルト61の温度が高いときに用紙Sを通紙すると、用紙Sの水分の蒸発により、定着ニップNP内に水蒸気膜が形成され、下加圧部材と用紙S間の摩擦係数が低下し、用紙Sのスリップが発生しやすい。
より具体的に説明すると、加圧ローラー64の温度が低い場合には、通過する用紙Sの内部温度の上昇は少なく、用紙スリップの現象は、加圧ローラー64が温まっている場合よりも大きく抑制される。他方、本実施の形態のように、熱源が上ベルト側すなわち上側定着部60Aにあり、駆動源の駆動力が加圧ローラー64のみに伝達される構成では、定着ベルト61を回転させるために、非通紙のウォームアップの時点から加圧ローラー64を加熱された定着ベルト61に押圧させる必要がある。このために、加圧ローラー64はウォームアップの時点から定着ベルト61の熱が伝達され、加圧ローラー64の温度はウォームアップ時およびその直後で最も高くなり、ウォームアップ動作終了後に通紙された用紙Sのスリップが発生する虞がある。
ここで、定着部60における実質的な通紙の力は、定着ベルト61への加圧ローラー64の押圧時に発生する搬送トルク(以下「搬送力」という)と、押圧パッド部200および定着ベルト61間の摺動抵抗(以下、「抵抗力」という)と、の間の差で表すことができる。この特性を図4の特性グラフを参照して説明すると、加圧ローラー64の押圧力(N)を上げて行くと、搬送力および抵抗力のいずれも上昇して行くが、搬送力の上昇度合いよりも抵抗力の上昇度合いの方が緩やかなことが分かる。すなわち、図4の横軸方向に示す加圧ローラー64の押圧力を上げるほど、定着部60における実質的な通紙の力が大きくなり、スリップの発生可能性を低くできることが、本発明者らの鋭意研究により明らかになった。
また、本発明者らは、上述した構成の定着部60で種々の通紙実験を行ったところ、安定的にスリップを発生しないようにするためには、定着ニップNPにおける実質的な通紙の力として、10N以上の力が必要であることが分かった。
以下に、本発明者らが行った主な実験内容について説明する。
なお、以下の各実験では、共通条件として、上記構成の定着部60で定着ベルト61の温度を180℃、周速度を300mm/秒に設定し、定着ニップNP内の温度が最も上昇する白紙(カバレッジ0%)にて用紙Sを連続的に通紙して、スリップ発生の有無等を調べた。また、かかる実験用の画像形成装置として、加圧ローラー64の近傍に温度センサーを配置し、加圧ローラー64の温度を測定しながらスリップ発生の有無等を試験した。特に断り書きがない限り、通紙する用紙Sは、A3サイズのOKトップコート85g/m2のNN調湿紙を使用し、定着部60のウォームアップ動作の直後に通紙を開始した。
また、本発明者らは、用紙Sのスリップが発生しない条件下で定着ベルト61および加圧ローラー64の耐久性を試験した。かかる試験では、特に断り書きがない限り、用紙Sを10枚連続で通紙した後に5分間放置することを繰り返し、定着ベルト61や加圧ローラー64の耐久に問題が発生するまで用紙Sの通紙を行った。
(実験1)
本発明者らは、プッシュプルゲージを接続した用紙Sを定着ニップNPに通紙させ、定着ニップNPのニップ圧を様々に変えてスリップ発生の有無を調べ、スリップを発生させないようにするための定着ニップNPにおける実質的な通紙の力を求めた。
ここで、上述の搬送力は、用紙Sがプッシュプルゲージを引っ張る力であり、通紙中のプッシュプルゲージの目盛りの値に等しい。また、定着ベルト61の内面と押圧パッド部200(摺動部材220等)との間のトルクを上述の抵抗力とした。そして、用紙Sの種類や温湿度条件、加圧ローラー64の温度を様々に変えてスリップの発生有無の実験を行い、スリップが発生しない場合の「搬送力−抵抗力」を計算することによって、定着ニップNPにおける実質的な通紙の力を求めた。
かかる実験の結果、一旦定着ニップNPで用紙Sにある程度の力が掛けられた後でも、定着ニップNP内の温度上昇によってスリップが発生し得ることが判明した。そして、上述した構成の定着部60では、用紙Sの種類や加圧ローラー64の温度に関わらず安定的にスリップを発生させないための定着ニップNPの実質的な通紙の力は、10N以上必要であることが判明した。以下は、誤差等を考慮して、定着ニップNPの実質的な通紙の力を11N確保する場合について説明する。
(実験2)
本発明者らは、ウォームアップ動作の直後に、上述の用紙Sを連続で通紙して、搬送力および加圧ローラー64の温度を測定しつつ、加圧ローラー64の押圧力を様々に変えてスリップ発生の有無を調べた。
この実験では、加圧ローラー64の温度は、1枚目の通紙時に160℃まで上昇し、2枚目以降は約20℃ずつ低くなり、4枚目の通紙時に100℃の平衡状態に達した。そして、加圧ローラー64の温度が最も高い160℃の場合にも定着ニップNPの実質的な通紙の力を11Nに確保するためには、加圧ローラー64の押圧力を650Nに設定する必要があることが分かった。かかる650Nの値は、従来機における定着動作時(以下、通常時という。)の定着ニップNPのニップ圧よりも高い値である。
また、これら各実験から、定着ニップNPの実質的な通紙の力を固定値(この例では11N)と仮定した場合でも、必要とされる加圧ローラー64の押圧力は、固定値にはならず、加圧ローラー64の温度状態によって大きく変動することが分かった。言い換えると、従来のように定着ニップNPのニップ圧を固定値として通紙した場合、加圧ローラー64の温度が上がると実質的な通紙の力が弱くなり、加圧ローラー64の温度が下がるにつれて実質的な通紙の力が強くなり、最終的には11Nに達することを意味する。
上記の実験結果では、例えば加圧ローラー64の温度が平衡状態の100℃よりも60℃高い160℃の場合、実質的な通紙の力を11Nとするためには、加圧ローラー64の押圧力を通常よりも150N程度高くする必要があること、等が判明した。また、後述のように、実質的な通紙の力を11Nとするために必要とされる加圧ローラー64の押圧力は、用紙の種類等によっても変わって来ることが判明した。
このような性質に鑑みると、加圧ローラー64と用紙Sとの摩擦力(μ)が低下した際の用紙Sのスリップ発生を防止するために、恒常的に加圧ローラー64の圧接力を通常時よりも高くして(例えば650N或いはそれ以上として)対応することも考えられる。このような構成とすることにより、加圧ローラー64が最高温度の状態であってもジョブを停止する必要がないことから、印刷の生産性を確保しつつ、用紙のスリップの発生を防止することができる。他方、このような対応策では、定着ニップNPすなわち加圧ローラー64と定着ベルト61との摺動部で抵抗力が増して定着ベルト61が痛みやすくなり、また、加圧ローラー64にかかる負荷が増すことから、部材の耐久面という点で課題が残る。
そこで、本実施の形態では、下加圧部材である加圧ローラー64の温度が高い場合、定着ニップNPのニップ圧を第1の値よりも高い第2の値とし、加圧ローラー64の温度が下がっていく態様に応じて定着ニップNPのニップ圧を第2の値から第1の値まで下げるように、制御部101によって加圧ローラー64の押圧力を制御する。
より具体的には、制御部101は、加圧ローラー64の温度が予め定められた温度範囲よりも高くなる状況では、加圧ローラー64の押圧力を、通常時における第1の押圧力よりも高い第2の押圧力とするように制御する。また制御部101は、加圧ローラー64の温度が下がって行く態様に応じて、加圧ローラー64の押圧力を第2の押圧力から第1の押圧力まで下げる制御を行う。
ここで、定着ニップNPのニップ圧すなわち加圧ローラー64の押圧力の制御は、本実施の形態では、加圧ローラー64に備えられた、図示しないカム等からなる押圧機構を駆動するモーター等の駆動源に、制御部101から駆動信号を出力することで行う。
また、ニップ圧の第1の値に対応する加圧ローラー64の第1の押圧力は、例えば、加圧ローラー64の温度が平衡状態(この例では100℃)となった場合に安定的にスリップが発生しない程度の押圧力と定義することができる。
このような構成とすることで、加圧ローラー64の温度状態等に関わらずジョブを中断させることなく、印刷の生産性を確保しつつ、用紙Sのスリップの発生を防止することが可能となり、加えて、定着ニップNPを構成する部材の耐久性を確保し寿命を延ばすこともできるようになる。
加圧ローラー64の温度は、図示しない温度センサー等の温度測定部を設けることで測定することができる。この場合、制御部101は、かかる温度測定部の測定値に応じて、上述のように加圧ローラー64の押圧力を制御する。このように温度測定部を設ける場合、測定された加圧ローラー64の実際の温度に応じて加圧ローラー64の押圧力を制御(調整)することができる。
他方、温度センサーは、設置のための場所(スペース)が必要となり、定着器(筐体)Fが小型の場合にはかかる設置スペースを確保することが難しい場合がある。特に、定着ベルト61の駆動を加圧ローラー64でのみ行うような比較的小型の定着装置では、温度センサーの設置スペースを確保し難い。また、加圧ローラー64の実際の温度は軸方向における中央側と端部側とで異なる場合があるため、温度センサーは、軸方向に複数設ける必要がある。したがって、温度センサー等の温度測定部を設ける構成は、大型機に適した構成であり、小型機には不向きな構成といえる。
また、上述の温度測定部を設けない場合でも、加圧ローラー64の温度は、画像形成条件、言い換えると画像形成装置1の稼働の条件や状態等により推定することができる。かかる実情に鑑みて、以下に説明する実施の形態では、制御部101は、加圧ローラー64の温度状態やスリップのしやすさ等に関する値を登録したテーブルを用いて加圧ローラー64の押圧力を制御する。
加圧ローラー64の温度は、画像形成装置1の稼働開始時やアイドリングからの復帰時における非通紙でのウォームアップ動作時に最も高くなり、その後のプリント動作中に平衡状態に至る。したがって、制御部101は、テーブルを用いて、画像形成装置1の稼働開始時やアイドリングからの復帰時における非通紙でのウォームアップ動作終了後の最初のプリント時に加圧ローラー64の押圧力を最も高くし、その後、温度が下がるにつれて、加圧ローラー64の押圧力を低くする制御を行う。
ここで、加圧ローラー64の押圧力の制御に用いられるテーブルは、加圧ローラー64の温度に関連した値と、加圧ローラー64の押圧力に関する値とを対応付けたものである。以下、かかるテーブルの構成例について詳述する。
(テーブルの例)
上述のように、印刷ジョブ実行時の定着装置において加圧ローラー64の温度が最も上がりやすいのは、(アイドリング解消時を含む)ウォームアップ動作の直後である。すなわち、定着動作中の加圧ローラー64の温度は、ウォームアップ動作の直後の最初の用紙の定着時に最も高くなり(本例では160℃)、その後の経過時間や通紙枚数につれて徐々に低くなり、所定枚数の通紙時に平衡温度(本例では4枚目で100℃)に達する。このため、制御部101は、ウォームアップ動作時には、印刷ジョブ開始からの用紙の通紙枚数と加圧ローラー64の押圧力とを対応付けたテーブルを使用して加圧ローラー64の押圧力を制御するとよい。かかるテーブルの例を表1に示す。
表1のテーブルは、通紙枚数が4枚目で加圧ローラー64の温度が平衡状態に達する場合の例であり、制御部101は、4枚目以降の通紙では加圧ローラー64の押圧力が下限値すなわち第1の押圧力(この場合は500N)になるように制御する。
上記表1および後述する各表において、「加圧ローラー押圧力」の値は、加圧ローラー64の押圧力に関する他の値とすることができ、例えば、制御部101から加圧ローラー64の押圧機構のモーター等に供給する電力(電流や電圧)の値としてもよい。
このように、通紙枚数毎に加圧ローラー64の押圧力を低下させる制御を行う本実施の形態によれば、生産性の確保および用紙Sのスリップの発生防止とともに、定着ニップNPの構成部材の寿命を伸ばすことができる。本発明者らは、実際に、表1に示す数値を用いて定着ベルト61や加圧ローラー64の耐久試験を行った結果、加圧ローラー64の押圧力を恒常的に650Nとした場合と比較して、耐久性を2倍に伸ばすことができた。具体的には、上述の耐久試験の結果、加圧ローラー64の押圧力を恒常的に650Nとした場合は150K枚の通紙で耐久に問題が発生したが、表1のテーブルを用いて加圧ローラー64の押圧力を可変制御した場合は、300K枚の通紙まで耐久に問題が生じなかった。
また、定着ニップNPにおける用紙Sのスリップ発生のしやすさは、上述した加圧ローラー64の温度の他に、以下のような要因によっても左右されることが判明した。
例えば、用紙Sとして、アンカー効果が発揮されないコート紙などの摩擦係数の低い紙が使用される場合、定着ニップNPにおいてスリップがより発生しやすい。また、用紙Sの厚さが薄くなるほど、定着ニップNP内での面圧が掛かりにくくなり、かつ、紙内部まで温度が上昇しやすくなるため、定着ニップNPにおいてスリップがより発生しやすい。
これに関する実験結果を以下に説明する。
(実験3)
本発明者らは、用紙Sとして、より薄い用紙であるOKトップコート73g/m2を使用した他は、上述の共通条件下で通紙実験を行った。この結果、定着ニップNPでスリップが発生しないようにするためには、各々の用紙枚数時における通紙の際に、上述したOKトップコート85g/m2の場合よりも50N高い圧接力を必要とすることが判明した。
かかる用紙の性質に鑑みると、制御部101は、印刷ジョブの実行時に、使用される用紙Sの種類を示す用紙情報を参照して、薄紙やコート紙などのスリップしやすい用紙を通紙する場合には、上述した表1のテーブルの各値に補正値(本例では50N)を加えて加圧ローラー64の押圧力を制御する。あるいは、制御部101は、表1のテーブルに代えて下記表2のテーブルを使用する。
表2のテーブルは、上記表1のテーブルにおける通紙枚数毎の加圧ローラー64の押圧力を各々50N高くしたものであり、このため、下限値(第1の押圧力)も50N高くなる。このようなテーブルは、用紙の種類毎に、すなわち用紙の種類に応じて複数設けられることができる。
本発明者らは、用紙SとしてOKトップコート73g/m2を使用し、表2に示す数値を用いて加圧ローラー64の耐久試験を行った結果、加圧ローラー64の押圧力を恒常的に700Nとした場合と比較して、定着ローラー64等の耐久性を2倍に伸ばすことができた。具体的には、上述の耐久試験の結果、加圧ローラー64の押圧力を恒常的に700Nとした場合は140K枚の通紙で耐久に問題が発生したが、表2のテーブルを用いて加圧ローラー64の押圧力を可変制御した場合は、280K枚の通紙まで耐久に問題が生じなかった。
また、本発明者らの実験の結果、用紙Sに含まれる水分量が多いほど、かかる水分の蒸発により定着ニップNP内に形成される水蒸気膜の面積が大きくなり、定着ニップNPにおいてスリップが発生しやすくなることが判明した。
用紙Sの水分量に関連して本発明者らが実際に行った実験結果を説明する。
(実験4)
本発明者らは、通紙する用紙Sとして、OKトップコート85g/m2をHH調湿紙として使用した他は、上述した共通条件下で通紙実験を行った。この結果、定着ニップNPでスリップが発生しないようにするためには、各々の用紙枚数時における通紙の際に、同紙のNN調湿紙の場合よりも50N高い圧接力を必要とすることが判明した。
かかる性質を考慮すると、定着ニップNPを通過する前の用紙Sに含まれる水分量に関する値を計測する計測部を設け、制御部101は、かかる計測部の計測値を加味して定着ニップNPのニップ圧を制御することが好ましい。すなわち、制御部101は、印刷ジョブの実行時に、計測部の計測値を参照し、かかる計測値がスリップしやすい値を示す場合には、上述した表1のテーブルの各値に対応する補正値(本例では50N)を加えて加圧ローラー64の押圧力を制御する。あるいは、制御部101は、表1のテーブルに代えて上述した表2のテーブルを使用する。ここで、表1のテーブルに代わって使用されるテーブルは、計測部の計測値の数値範囲等に応じて複数設けられることができる。
計測部のより具体的な構成としては、用紙搬送方向における定着ニップNPの上流側、例えば給紙トレイユニット51a〜51cの近傍あるいは給紙トレイユニット51a〜51cの各々の内部に不図示の温湿度センサーを設ける。この場合、制御部101は、定着ニップNPを通過する用紙Sを、温湿度センサーによる計測値の環境下の調湿紙とみなして、加圧ローラー64の押圧力を制御(調整)する。加えて、制御部101は、給紙トレイユニット51a〜51cに用紙Sが補給されてからの時間を加味して定着ニップNPを通過する用紙Sの水分量を推定し、かかる推定結果に応じて加圧ローラー64の押圧力を制御(調整)してもよい。また、計測部の他の構成例として、用紙Sの抵抗を測定する装置を別途設け、かかる装置の測定値から用紙Sに含まれる水分量を推定し、かかる推定結果に応じて加圧ローラー64の押圧力を制御(調整)してもよい。この場合、制御部101は、印刷ジョブの実行時に、上述した計測部の計測値を参照して、上述したHH調湿紙に相当する水分量の多い用紙を通紙する場合、上述した表1のテーブルの各値に補正値(本例では50N)を加えて加圧ローラー64の押圧力を制御する。あるいは、制御部101は、表1のテーブルに代えて上述した代替的なテーブルを使用する。
本発明者らは、用紙Sとして上記のHH調湿紙を使用し、表2に示す数値を用いて定着ベルト61および加圧ローラー64の耐久試験を行った結果、加圧ローラー64の押圧力を恒常的に700Nとした場合と比較して、耐久性を2倍に伸ばすことができた。具体的には、上述の耐久試験の結果、加圧ローラー64の押圧力を恒常的に700Nとした場合は140K枚の通紙で耐久に問題が発生したが、表2のテーブルを用いて加圧ローラー64を可変制御した場合は、280K枚の通紙まで耐久に問題が生じなかった。
加圧ローラー64の温度を測定する温度センサー等の温度測定部を設ける場合には、加圧ローラー64の実際の温度をリアルタイムで測定できるため、加圧ローラー64の温度の上昇や下降の速度等について考慮する必要はない。他方、上述のように、加圧ローラー64の温度を測定せずにテーブルを用いて加圧ローラー64の押圧力を制御しようとする場合、加圧ローラー64の内部の温まり方、特に、加圧ローラー64の表面温度の降下の態様を考慮した制御を行う必要がある。ここで、加圧ローラー64の表面の温度降下は、直前の印刷ジョブやアイドリング状況に大きく影響を受けることが判明した。これに関し、本発明者らの実験結果を説明する。
(実験5)
本発明者らは、上記構成の定着部60において、最初の印刷ジョブと次の印刷ジョブ(第2ジョブ)との間のインターバル(すなわち加圧ローラー64を放置する時間)を変えて、第2ジョブ実行時における加圧ローラー64の表面温度の降下の態様を調べた。
この結果、インターバルを4分以上とした場合、第2ジョブ実行時における加圧ローラー64の表面温度の下がり方は、ウォームアップ時と変わらなかった。すなわち、加圧ローラー64の表面温度は、通紙枚数が4枚目の時点で平衡状態(100℃)に達した。
これに対して、インターバルを4分未満とした場合には、第2ジョブ実行時における加圧ローラー64の表面温度の下がり方は、ウォームアップ時と比べて、より緩やかになった。具体的には、加圧ローラー64の表面温度は、通紙枚数が4枚目の時点では平衡状態(100℃)に達せず、7枚目の時点で平衡状態(100℃)に達した。インターバルが4分未満である場合に、スリップを発生させないための加圧ローラー64の押圧力の制御の態様を表3に示す。
したがって、制御部101は、印刷ジョブの実行時に、前回の印刷ジョブ終了時からのインターバルが4分未満の場合、表1のテーブルに代えて表3のテーブルを使用して加圧ローラー64の押圧力を制御する。表3のテーブルでは、加圧ローラー64の押圧力を第1の押圧力(この例では500N)に戻す時期(枚数)がより後になっていることが分かる。
このようなテーブルを使用することで、前回の印刷ジョブ終了のタイミング等の印刷ジョブの実行状況に応じて、加圧ローラー64の押圧力を第1の押圧力に戻す時期や態様を変更することができる。なお、表1のテーブルに代えて使用するテーブルを、前回の印刷ジョブ終了のタイミングに応じて複数設けることとしてもよい。例えば、前回の印刷ジョブ終了時からのインターバルが1分未満の場合、2分未満の場合、3分未満の場合には表3と異なる値を登録したテーブルを使用することとしてもよい。
本発明者らは、実際に、表3に示す数値を用いて加圧ローラー64の耐久試験を行った。この耐久試験では、用紙Sを10枚連続で通紙した後に3分間放置することを繰り返し、加圧ローラー64等の耐久に問題が発生するまで用紙Sの通紙を行った。
かかる耐久試験の結果、加圧ローラー64の押圧力を恒常的に650Nとした場合と比較して、加圧ローラー64等の耐久性を大幅に伸ばすことができた。具体的には、上記の耐久試験の結果、加圧ローラー64の押圧力を恒常的に650Nとした場合は150K枚の通紙で耐久に問題が発生したが、表3のテーブルを用いて制御した場合は、280K枚の通紙まで耐久に問題が生じなかった。
(定着ニップNPの好適な構成および実験結果)
さらに、本発明者らが種々の実験を行った結果、定着ニップNPの構成を変えることにより、加圧ローラー64の押圧力を上記表1の値より低くしても用紙のスリップを防止できることを見出した。具体的には、定着ニップNPにおける用紙Sを押圧するピーク圧を、用紙搬送方向における定着ニップNPの中央よりも上流側に設定した場合に、加圧ローラー64の押圧力を表1に示す値よりも低くしても用紙Sのスリップが発生しないことが分かった。
このような定着ニップNPのピーク圧とするために、図3に示すように、押圧部材210を支持する支持部材230の低面に突起部231が設けられている。かかる突起部231は、支持部材230の低面における定着ベルト61の走行方向(用紙搬送方向)上流側の領域に設けられており、支持部材230の軸方向(図3の奥行き方向)に沿って延びている。かかる構成によれば、突起部231により用紙搬送方向における定着ニップNPの中央よりも上流側に支持部材230の押圧力が加わり、定着ニップNPにおける用紙Sを押圧するピーク圧が、用紙搬送方向における定着ニップNPの中央よりも上流側に設定される。
このような構成により、上記表1のテーブルと比較して、通紙枚数毎の加圧ローラー64の押圧力を各々50N低い設定としても、実質的な搬送力を11N以上に確保でき、用紙のスリップを防止できることが判明した。かかる構成を採用した場合に加圧ローラー64の押圧制御で制御部101が使用するテーブルの例を表4に示す。
表1のテーブルと比較して分かるように、定着ニップNPのピーク圧を上流側に設定した場合、加圧ローラー64の押圧力を各通紙枚数時で50N低く設定することが可能となり、また、下限値(第1の押圧力)も50N低い値に設定することができた。このため、定着ニップNPの構成部材の寿命をより長くすることが可能となる。
本発明者らは、実際に、表4に示す数値を用いて加圧ローラー64等の耐久試験を行った結果、表1の数値の場合よりも、耐久性をさらに伸ばすことができた。具体的には、表4のテーブルを用いて制御した場合は、350K枚の通紙まで耐久に問題が生じなかった。
(加圧ローラー64の温度を測定する構成の場合)
上述のように、大型機の場合には、温度センサー等の温度測定部を設けて加圧ローラー64の温度を測定する構成が好ましく適用され得る。かかる構成においても、制御部101は、テーブルを用いて加圧ローラー64の押圧力を制御することができ、この場合、上述した各表における「通紙枚数」の欄には「加圧ローラー温度」の値を登録すればよい。上述した表1に対応するテーブルを表5に示す。
この場合も、制御部101は、上述した用紙の種類(薄紙等)や計測部の計測値によっては、表5のテーブルの「加圧ローラー押圧力」の値に補正値を加えて加圧ローラー64の押圧力を制御することができる。或いは、かかる用紙の種類や計測部の計測値に対応させて、表5のテーブルに代えて使用するテーブルを設けてもよい。
上述した実施の形態では、定着ニップNPの上側に位置する上加圧部材として回転不能なパッドを用いた上パッド方式の構成について説明した。他の例として、上加圧部材としてローラーを用いた構成としてもよい。他方、上述した実施の形態のように定着ニップNPを形成する部材の一方が固定部材(パッド部材)の場合には定着ニップNPの抵抗力が大きくなるため、上述したような定着ニップNPの押圧制御がより有効となる。
上述した実施の形態では、定着ニップNPの下側に位置する下加圧部材がローラーすなわち加圧ローラー64である下ローラー方式の構成について説明した。他の例として、下加圧部材が加圧ベルトである下ベルト方式であってもよく、さらには下パッド方式であってもよい。
上述した実施の形態では、定着ニップNPのニップ圧の制御は、加圧ローラー64側の押圧機構を制御することで行った。定着ニップNPのニップ圧の制御の他の例として、押圧パッド部200側にカム等からなる押圧機構を設け、かかる押圧機構を駆動するモーター等に制御部101から駆動信号を出力することとしてもよい。
以上、詳細に説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、生産性を確保しつつ、用紙のスリップの発生を防止することが可能な定着装置および画像形成装置を提供できる。
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。