以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限られるものではない。
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図であり、図2は、実施の形態に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す図である。図1及び図2に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。この画像形成装置1は、感光体上に形成されたC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写体に転写(一次転写)する。次いで、中間転写体上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に転写(二次転写)することにより、画像を形成する。
また、画像形成装置1には、CMYKの4色に対応する感光体を中間転写体の走行方向
に直列配置し、中間転写体に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が
採用されている。
図1及び図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、搬送部50、定着部60、通信部71、記憶部72、及び制御部(制御手段)100を備えている。
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、及びRAM(Random Access Memory)103等を備えている。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。特に、記憶部72には、定着部60における定着処理に用いられる各種データが格納されている。なお、記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)や、ハードディスクドライブで構成される。
また、制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、又はWAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピュータ)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙に画像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11及び原稿画像走査装置(スキャナー)12等を備えている。
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサ12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備えている。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、入力画像データに対して、階調補正、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、及び中間転写ユニット42等を備えている。
Y成分、M成分、C成分、K成分の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、トナーの色を除いて同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、Kを添えて示すこととする。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、ドラムクリーニング装置415、及び滑剤塗布装置416等を備えている。
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo−conductor)である。
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成されることとなる。
現像装置412は、各色成分の現像剤(例えば、小粒径のトナーと磁性体とからなる二成分現像剤)を収容しており、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
なお、現像装置412に収容されるトナーは、ここでは、トナー粒子内にワックスが分散含有されるワックス含有トナー(オイルレストナー)である。このトナーに含まれるワックスの融点は通常110℃以下程度と低い。このワックスには、例えば、パラフィン系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、これらの変性物(例えば、酸化物やグラフと処理物)、高級脂肪酸、及びその金属塩、アミドワックス、エステル系ワックス等の従来公知のワックスを用いることができる。また、より好ましいワックスとして、例えば高級脂肪酸エステルワックスを適用してもよい。
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード(以下、DCLブレード)を有する。一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーは、DCLブレードによって掻き取られ、除去される。
滑剤塗布装置416は、感光体ドラム413の表面に摺接されるローラー状の滑剤塗布ブラシを有する。感光体ドラム413が回転することに伴い、滑剤塗布ブラシに付着した滑剤が感光体ドラム413の表面に塗布される。
中間転写ユニット42は、中間転写体となる中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、二次転写ローラー423、駆動ローラー424、従動ローラー425、及びベルトクリーニング装置426等を備えている。
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、駆動ローラー424及び従動ローラー425に張架される。中間転写ベルト421は、駆動ローラー424の回転により矢印A方向に一定速度で走行する。一次転写ローラー422によって、中間転写ベルト421が感光体ドラム413に圧接されると、中間転写ベルト421に各色トナー像が順次一次転写される。そして、中間転写ベルト421が二次転写ローラー423によって用紙Sに圧接されると、中間転写ベルト421に一次転写されたトナー像が用紙Sに二次転写される。
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接されるベルトクリーニングブレード(以下、BCLブレード)を有する。二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーは、BCLブレードによって掻き取られ、除去される。
このようにして、用紙S上にトナー像が形成される。
トナー像は、定着部60により用紙Sに定着される。定着部60は、搬送されてきた用紙Sを加熱、加圧することにより、用紙Sのトナー像を定着させる。この定着部60は、枠60a内に収容された定着ローラーとしての上加圧ローラー61と、加圧ローラーとしての下加圧ローラー64とを主として含む構成を有する。本実施形態では、定着部60はベルトニップ方式の構成を採用しているが、その詳細な構成については後述する。
搬送部50は、給紙部51、搬送機構52、及び排紙部53等を備えている。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、用紙の坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙(規格用紙、特殊用紙)Sが予め設定された種類ごとに収容される。
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、レジストローラー52a等の複数の搬送ローラーを備えた搬送機構52により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー52aが配設されたレジスト部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されると共に搬送タイミングが調整される。
そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー53aを備えた排紙部53により機外に排紙される。
以下、本実施の形態に係る定着部60の構成について、図3を参照しながら詳細に説明する。図3は、図1に示した定着部60の構成を示す概略図である。
定着部60は、用紙Sを狭持して搬送するための定着ニップ部を形成する加圧部、トナー像が転写された用紙Sに接触して定着温度で加熱する加熱部等を備えた、例えば熱ベルト方式のものである。
この定着部60は、上記した枠60a、上加圧ローラー(定着面側部材)61、及び下加圧ローラー(裏面側部材)64に加えて、定着ベルト(定着面側部材)62と、加熱ローラー63と、張架部材68と、トルク発生部(制動力発生手段)66とを備えている。また、定着部60は、上記構成に制御部100を加えることで、定着装置を構成している。
上加圧ローラー61は、例えば鉄等からなる円柱状の芯金の外周面に、シリコーンゴム等からなる弾性層が形成された構成を有するものである。さらに、弾性層の外周面に、フッ素系樹脂からなる表面離型層が形成される場合もある。このような上加圧ローラー61は、駆動モーターM3によって回転駆動される下加圧ローラー64に定着ベルト62を介して圧接されることで、定着ベルト62と共に下加圧ローラー64に追従して回転自在となっている。
定着ベルト62は、上加圧ローラー61と加熱ローラー63と張架部材68とに掛け回される無端状のベルト部材である。この定着ベルト62は、トナー像が転写された用紙Sに接触して、この用紙Sを所定の温度で加熱する加熱部となる。ここで、所定の温度とは、トナーを溶融するのに必要な熱量を供給しうる温度であり、画像形成される用紙の紙種等によって異なる。
加熱ローラー63は、ハロゲンヒータ等の加熱源631を内蔵しており、この加熱源631によってアルミニウム等からなる円筒状の芯金、及び、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等からなる樹脂層が加熱されて、定着ベルト62を加熱する。また、定着ベルト62の近傍には、定着ベルト62の温度を検出する制御用の温度センサ81(図2参照)が配置される。この制御用の温度センサ81による検出信号は制御部100に出力される。制御部100は、制御用の温度センサによる測定温度が予め設定された温度となるように、加熱ローラー63の加熱源631の出力を制御する(例えばオン/オフ制御)。
なお、定着ベルト62は、例えば耐熱性のポリイミドからなるフィルム基材の外周面に、シリコーンゴム等からなる弾性層と、フッ素系樹脂からなる表面離型層が順に積層した構成を有する。フッ素系樹脂としては、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、PTFE、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)のいずれかを含有する材料であり、最も好ましくは、PFA、PTFE、FEPのいずれかである。これにより、トナー樹脂やトナー粒子に含まれるワックスに対する定着ベルト62表面の離型性も向上し、定着時にトナーが定着ベルト62表面につきにくくなる。
また、定着ベルト62は、電磁誘導加熱(IH:Induction Heating)により加熱されるようになっていてもよい。この場合の定着ベルトの基体は、Ni等の電磁誘導発熱可能な材料で構成されることとなる。
張架部材68は、両端部を回転自在に支持されたローラーであり、両端部の外径が中央部部分よりも大きい逆クラウン形状をなしている。この張架部材68は、上加圧ローラー61と下加圧ローラー64とから離間した所定位置に配置されている。また、張架部材68は移動可能に設けられ、移動することで、定着ベルト62の張力を調整する。なお、この構成に限らず、張架部材68を固定すると共に加熱ローラー63を移動可能に構成することで、定着ベルト62の張力を調整するようにしてもよい。
さらに、定着部60は、切替機構69を備えている。切替機構69は、下加圧ローラー64を上加圧ローラー61に対して付勢する付勢手段を有し、下加圧ローラー64を上加圧ローラー61に対して接離可能としている。なお、接離に関しては制御部100によって制御される。
また、下加圧ローラー64が上加圧ローラー61に対して接続された場合において、下加圧ローラー64は、上加圧ローラー61に押圧されることにより定着ベルト62の外周面に圧接しながら回転することとなり、定着ベルト62と協働して、トナー像が形成された用紙Sを挟持して搬送する定着ニップ部(以下、「ニップ部」という)Nを形成することとなる。なお、下加圧ローラー64には、ハロゲンヒータ等の加熱源が内蔵されていてもよい。
さらに、定着部60は、下加圧ローラー64を回転駆動するための駆動モーターM3を備えている。この駆動モーターM3は制御部100によって制御される。
トルク発生部66は、制御部100によって制御される第1及び第2モーターM1,M2と、第1及び第2モーターM1,M2を駆動するためのモーター基板B1,B2と、ギア機構67とを備えている。このトルク発生部66は、ニップ部Nに搬送される用紙Sが所定の厚紙等である場合、第1及び第2モーターM1、M2とギア機構67とによって、定着ベルト62の表面速度と下加圧ローラー64の表面速度との速度差を設定するために定着ベルト62の回転を妨げる方向の制動力を発生させるものである。定着ベルト62は、駆動モーターM3によって回転駆動される下加圧ローラー64に追従して回転可能となっており、トルク発生部66は、この追従回転を妨げる方向の制動力を発生させることとなる。これにより、定着ベルト62と用紙Sとがスリップすることとなり、光沢メモリが防止されることとなる。
なお、トルク発生部66は、ニップ部Nに搬送される用紙Sが所定の薄紙(例えば坪量81g/m2未満)や塗光紙厚紙などの所定の厚紙である場合、上記制動力を付与せず、定着ベルト62の回転を補助する方向のアシスト力を発生させる。すなわち、トルク発生部66は、定着ベルト62の追従回転を補助方向のアシスト力を発生させることとなる。これにより、用紙Sの皺を防止することとしている。
より詳細に第1及び第2モーターM1,M2は、上加圧ローラー61に対してそれぞれ逆方向のトルクを付与する。例えば第1モーターM1は、下加圧ローラー64に追従して回転する上加圧ローラー61に、搬送方向H1への回転(正回転と称する)に対するブレーキ力D2を発生させるために、正回転とは逆側のトルクを付与する。一方、第2モーターM2は、下加圧ローラー64に追従して回転する上加圧ローラー61を補助するトルクを付与し、上加圧ローラー61を搬送方向H1と同方向へ回転させるアシスト力D1を発生させる。なお、後述するが、本実施形態において第1モーターM1は、ブレーキ力のみならずアシスト力についても発生可能であり、第2モーターM2は、アシスト力のみならずブレーキ力についても発生可能である。
ギア機構部67は、第1及び第2モーターM1,M2のそれぞれの回転を個別に上加圧ローラー61に伝達するために複数のギア群を有し、制動力発生時において両モーターM1、M2のトルクは、これらギア群を介して合成されて上加圧ローラー61に伝達される。
図4は、トルク発生部66により発生させられる制動力を示す図である。図4に示すように、第1及び第2モーターM1,M2のいずれか一方によって発生させられるトルク(ブレーキ力D2)は一定となっており、具体的には、−0.1Nmとなっている。これに対して、第1及び第2モーターM1,M2の他方は制御部100によってPWM(Pulse Width Modulation)制御されることにより発生させられるトルク(アシスト力D1)が可変となっており、その範囲は0Nm〜0.08Nmである(PWM値40%〜70%)。このように、アシスト力D1は、ブレーキ力D2の範囲内の値(すなわちブレーキ力の絶対値よりも小さい値)となっており、双方の力D1,D2の合算の力についても可変となる。この合算された力が上記の制動力であり、この制動力によって、上加圧ローラー61の表面速度(周速)が下加圧ローラー64の表面速度(周速)に対して、0.3%から0.8%遅くされ、定着ベルト62と用紙Sとのスリップが発生することとなる。
一方、ニップ部Nに所定の薄紙等が搬送される場合、制御部100は、第1及び第2モーターM1,M2の一方を停止させ他方を一定のPWM値で動作させる。これにより、所定の薄紙等が搬送される場合には、一定のアシスト力D1が上加圧ローラー61に付与される。
再度、図3を参照する。図3に示すように、本実施形態において定着部60は、さらに制御基板90を備えると共に、ブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2を切り替え可能となっている。図5は、図3に示した定着部60の構成の一部について詳細に示すブロック図である。
図5に示すように、定着部60は、制御部100に接続される制御基板90と、制御基板に接続されるモーター基板B1,B2と、温度センサT1,T2とを備えている。
制御部100は、制動力に付与時において、制御基板90に対して指示信号とセレクト信号とを送信する。セレクト信号は、アシスト力を発生させるモーターM1,M2とブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2とを選択するための信号である。指示信号は、アシスト信号とブレーキ信号とからなる。アシスト信号を入力したモーター基板B1,B2はモーターM1,M2からアシスト力D1を発生させ、ブレーキ信号(後述の図7に示すハイレベルのブレーキ信号)を入力したモーター基板B1,B2はモーターM1,M2からブレーキ力D2を発生させる。なお、アシスト信号には、モーターM1,M2を回転駆動させるための励磁信号と、回転方向を示す回転信号と、上記したアシスト力D1を決定するPWM信号とからなっている。
制御基板90は、制御部100から指示信号とセレクト信号とを入力するものであり、セレクト信号判断部91を備えている。セレクト信号判断部91は、制御部100からのセレクト信号に応じて、ブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2と、アシスト力D1を発生させるモーターM1,M2とを判断するものである。また、セレクト信号判断部91は、指示信号についても入力しており、ブレーキ力D2を発生させると判断したモーターM1,M2を制御するモーター基板B1,B2に対してブレーキ信号を送信し、アシスト力D1を発生させると判断したモーターM1,M2を制御するモーター基板B1,B2に対してアシスト信号を送信する。
さらに、本実施形態においては、セレクト信号に応じて、上記ブレーキ信号の送信先、及びアシスト信号の送信先が切り替えられるようになっている。よって、ブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2についても切替可能となっており、制動力を付与時において発電機として作用してしまうモーターM1,M2が順次変更されることとなり、発熱を各モーターM1,M2に分散させることとなる。
モーター基板B1,B2は、それぞれ同様の構成を有しており、モーター駆動IC92,93と、FETS1a〜S1c,S2a〜S2cとを備えている。第1モーター基板B1のモーター駆動IC92は、FETS1a〜S1cをオンオフ駆動するものである。同様に、第2モーター基板B2のモーター駆動IC93についても、FETS2a〜S2cをオンオフ駆動するものである。
このようなモーター基板B1,B2において、モーター駆動IC92,93は、アシスト信号を入力した場合、FETS1a〜S1c,S2a〜S2cをオンオフ駆動する。これにより、モーターM1,M2の固定子となるコイルL1a〜L1c,L2a〜L2cに順次電流を流し、回転子(不図示)を回転させることとなる。この際、モーター駆動IC92,93は、指示信号内に含まれるPWM信号に応じて、FETS1a〜S1c,S2a〜S2cをオンオフ駆動し、アシスト力D1を調整することとなる。
一方、モーター駆動IC92,93は、ブレーキ信号(後述の図7に示すハイレベルのブレーキ信号)を入力した場合、FETS1a〜S1c,S2a〜S2cのいずれか1つをオンする。これにより、回転子には、その位置を維持する力が作用することとなり、一定のブレーキ力D2が発生することとなる。
温度センサT1,T2は、モーター基板B1,B2のそれぞれに設けられており、第1及び第2モーターM1,M2及び第1及び第2モーターM1,M2を駆動する駆動部品(すなわちモーター駆動IC92,93及びFETS1a〜S1c,S2a〜S2c)の温度を検出するものである。この温度センサT1,T2により検出された温度の情報は、制御部100に入力される。また、温度センサT1,T2は、第1及び第2モーターM1,M2の温度のみを検出するものであってもよいし、駆動部品の温度のみを検出するものであってもよい。
次に、本実施形態に係る定着装置の動作を説明する。図6は、本実施形態に係る定着装置の動作の一例を示すフローチャートである。なお、図6に示す処理は画像形成装置1の電源がオフされるまで、繰り返し実行される。
図6に示すように、制御部100は、まずアシスト力D1を発生させるモーターM1,M2を選択する(S1)。そして、制御部100は、選択内容に応じたセレクト信号を送信し、セレクト信号判断部91は、アシスト力D1を発生させるモーターM1,M2とブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2とを判断する。
次に、制御部100は、ニップ部Nに搬送される用紙Sが所定の紙種であるかを判断する(S2)。すなわち、制御部100は、制動力を付与する必要がある紙種であるかを判断することとなる。ニップ部Nに搬送される用紙Sが所定の紙種でないと判断した場合(S2:NO)、ブレーキ力D1を発生させるモーターM1,M2は切り替えられることなく(S6)、図6に示す処理は終了する。なお、この場合において、制御部100は、アシスト信号と後述の図7に示すロウレベルのブレーキ信号を含む指示信号を送信する。そして、セレクト信号判断部91は、ステップS1において決定されたアシスト力D1を発生させるモーターM1,M2を搭載するモーター基板B1,B2にアシスト信号を送信してアシスト力D1を発生させることとなる。一方、セレクト信号判断部91は、ロウレベルのブレーキ信号を他方のモーター基板B1,B2に送信してブレーキ力D2を発生させないようにする。
一方、ニップ部Nに搬送される用紙Sが所定の紙種である判断した場合(S2:NO)、光沢メモリの解消のため、制動力を付与する必要があることから、制御部100は、アシスト信号及び後述の図7に示すハイレベルのブレーキ信号を含む指示信号を送信し、セレクト信号判断部91は、ステップS1において決定されたアシスト力D1を発生させるモーターM1,M2を搭載するモーター基板B1,B2にアシスト信号を送信してアシスト力D1を発生させることとなる。また、セレクト信号判断部91は、他方のモーター基板B1,B2に対してハイレベルのブレーキ信号を送信してブレーキ力D2を発生させることとなる。
次いで、制御部100は、所定条件が成立しているかを判断する(S3)。ここで、所定条件とは、例えば温度センサT1,T2に検出される温度が所定温度以上であるか否かであったり、所定の紙種の用紙Sがニップ部Nを所定枚数連続して通過したか否かであったりする。
このような所定条件が成立してないと判断した場合(S3:NO)、ブレーキ力D1を発生させるモーターM1,M2は切り替えられることなく(S6)、図6に示す処理は終了する。
一方、所定条件が成立していると判断した場合(S3:NO)、制御部100は、次にニップ部Nに搬送される用紙Sの位置が、ニップ部Nの所定距離(例えば50mm)前であるか判断する(S4)。ニップ部Nの所定距離前でないと判断した場合(S4:NO)、所定距離前であると判断されるまで、この処理が繰り返される。
一方、ニップ部Nの所定距離前であると判断した場合(S4:YES)、制御部100は、ブレーキ力D1を発生させるモーターM1,M2を切り替える(S5)。すなわち、制御部100は、セレクト信号を変更して、現在ブレーキ力D2を発生させるものとして指定されているモーターM1,M2をアシスト力D1を発生させるモーターM1,M2に切り替える。また、制御部100は、現在アシスト力D1を発生させると指定されているモーターM1,M2をブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2に切り替える。そして、図6に示す処理は終了する。
なお、上記のステップS3において所定の紙種の用紙Sがニップ部Nを所定枚数連続して通過したか否かを判断する場合、所定枚数は1枚であることが好ましい。これにより、所定の紙種の用紙Sが1枚搬送される毎に、ブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2が変更されることとなり、複数枚の用紙Sが連続してニップ部Nに搬送される場合において、各モーターM1,M2の温度について均一化を図ることができるからである。
また、上記では、ニップ部Nの所定距離前であると判断した場合(S4:YES)、ブレーキ力D1を発生させるモーターM1,M2が切り替えられる(S5)。この所定距離は、ニップ部Nに用紙Sが無く紙間位置となる距離に設定されている。このため、用紙Sの紙間位置においてブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2が切り替えられることとなる。よって、ブレーキ力D2を付与するモーターM1,M2が変更されて上加圧ローラー61に付与する制動力が不安定となる可能性があるときに、ニップ部Nには用紙Sは存在しないこととなり、光沢メモリを解消できなくなってしまう事態を防止することができる。
次に、本実施形態に係る定着装置の各種信号等を説明する。図7は、本実施形態に係る定着装置の各種信号を示すタイミングチャートである。なお、図7は、所定の紙種の用紙Sがニップ部Nに1枚搬送される毎に、ブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2を切り替える例を示すものとする。
まず、時刻0において、制御部100がハイレベルのセレクト信号を出力しているとする。この場合、セレクト信号判断部91は、例えば第1モーター基板B1にアシスト信号を送信して第1モーターM1からアシスト力D1を発生させるものとし、第2モーター基板B2にブレーキ信号を送信して第2モーターM2からブレーキ力D2を発生させるものとする。
ここで、第1モーター基板B1に送信されるアシスト信号は、上記したように、励磁信号、回転信号、及びPWM信号からなる。なお、図7に示すように、回転信号はロウレベルで固定されている。これは、アシスト力D1を付与する際の回転方向に変更が無いためである。
また、第2モーター基板B2に送信されたハイレベルのブレーキ信号により、第2モーターM2は、回転子がその位置を維持するようになり、ブレーキ力D2を発生させる状態となる。
次いで、時刻t1において1枚目の用紙S(所定の紙種)がニップ部Nに搬送される。このとき、上加圧ローラー61には、アシスト力D1とブレーキ力D2との合成となる制動力が付与されていることから、1枚目の用紙Sについて光沢メモリが解消されることとなる。そして、1枚目の用紙Sがニップ部Nから排出される。
その後、時刻t2において、次にニップ部Nに搬送される用紙S(2枚目の用紙S)の位置が、ニップ部Nの所定距離前に到達したとすると、制御部100は、ロウレベルのセレクト信号を出力する。この場合、セレクト信号判断部91は、例えば第2モーター基板B2にアシスト信号を送信して第2モーターM2からアシスト力D1を発生させるものとし、第1モーター基板B1にブレーキ信号を送信して第1モーターM1からブレーキ力D2を発生させるものとする。
次いで、時刻t3において2枚目の用紙S(所定の紙種)がニップ部Nに搬送される。このとき、上加圧ローラー61には、アシスト力D1とブレーキ力D2との合成となる制動力が付与されていることから、2枚目の用紙Sについても光沢メモリが解消されることとなる。そして、2枚目の用紙Sがニップ部Nから排出される。
その後、時刻t4において、次にニップ部Nに搬送される用紙S(3枚目の用紙S)の位置が、ニップ部Nの所定距離前に到達したとすると、制御部100は、ハイレベルのセレクト信号を出力する。これにより、セレクト信号判断部91は、例えば第1モーター基板B1にアシスト信号を送信して第1モーターM1からアシスト力D1を発生させるものとし、第2モーター基板B2にブレーキ信号を送信して第2モーターM2からブレーキ力D2を発生させるものとする。
次いで、時刻t5において3枚目の用紙S(所定の紙種)がニップ部Nに搬送される。このとき、上加圧ローラー61には、アシスト力D1とブレーキ力D2との合成となる制動力が付与されていることから、3枚目の用紙Sについても光沢メモリが解消されることとなる。そして、時刻t6において枚目の用紙Sがニップ部Nから排出される。
ここで、4枚目の用紙Sが所定の紙種でないとする。このとき、制御基板90は第2モーター基板B2にロウレベルのブレーキ信号を送信する。これにより、第2モーター基板B2は、第2モーターM2によるブレーキ力D2の発生を中止することとなる。すなわち、時刻t7においてニップ部Nに搬送される4枚目の用紙Sについては、アシスト力D1のみを付与することとなり、皺の発生を防止することとなる。
図8は、本実施形態に係る定着装置の各種信号を示すタイミングチャートであって、他の例を示している。図7に示す例において、所定の紙種の用紙Sがニップ部Nに搬送される間(すなわち、時刻t1〜t6)、ブレーキ信号はハイレベルのままとなっていた。このため、第1又は第2モーターM1,M2は、時刻t1〜t6に亘りブレーキ力D2を発生させる状態となっていた。
これに対して、図8に示す例において制御部100は、ニップ部Nに搬送される用紙Sの紙間位置においてブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2をオフし、紙間位置を除く通紙位置においてブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2をオンすることとしている。
すなわち、ブレーキ信号は、ニップ部Nに1枚目の用紙Sが搬送されている時刻t11〜t12においてハイレベルとなり、ニップ部Nに用紙Sがない時刻t12〜t13においてロウレベルとなる。同様に、ブレーキ信号は、2〜4枚目の用紙Sが搬送されている時刻t13〜t14,t15〜t16,t17〜t18においてハイレベルとなり、ニップ部Nに用紙Sがない時刻t12〜t13,t14〜t15,t16〜t17,t18〜においてロウレベルとなる。
このように、複数枚の用紙Sの紙間位置においてブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2をオフするため、上加圧ローラー61に制動力を付与する必要が無いタイミングにおいて、ブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2をオフすることとなり、光沢メモリに解消に支障なく、モーターM1,M2の発熱を抑えることができる。
このようにして、本実施形態に係る定着装置によれば、複数のモーターM1,M2のうち、ブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2を所定の条件に従って切り替えるため、発電機として作用してしまうモーターM1,M2が変更されることとなり、発熱を1つのモーターM1,M2に集中させることがなくなる。従って、制動力を付与して光沢メモリを解消するにあたり、モーターM1,M2が故障してしまう可能性を低減することができる。
また、用紙Sの紙間位置においてブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2を切り替えるため、ブレーキ力D2を付与するモーターM1,M2が変更されて上加圧ローラー61に付与する制動力が不安定となる可能性があるときに、ニップ部Nには用紙Sは存在しないこととなり、光沢メモリを解消できなくなってしまう事態を防止することができる。
また、用紙Sの紙間位置においてブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2をオフし、紙間位置を除く通紙位置においてブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2をオンするため、上加圧ローラー61に制動力を付与する必要が無いタイミングにおいて、ブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2をオフすることとなり、光沢メモリに解消に支障なく、モーターM1,M2の発熱を抑えることができる。
また、1枚の用紙S(所定の紙種)がニップ部Nに搬送される毎に、ブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2を切り替えるため、用紙1枚毎にブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2が変更されることとなり、各モーターM1,M2の温度について均一化を図ることができる。
また、複数のモーターM1,M2及び複数のモーターM1,M2を駆動する駆動部品の温度が所定温度に達する毎に、ブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2を切り替えるため、モーターM1,M2及び駆動部品が高温となり故障してしまう前に適切にブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2を変更することとなる。これにより、ブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2を変更することにより制動力が不安定となってしまう頻度を最低限に抑えつつ、モーターM1,M2が故障してしまう可能性を低減することができる。
また、本実施形態に係る画像形成装置によれば、用紙Sに対してトナー画像を形成する画像形成部40と、画像形成部40にて形成されたトナー画像を用紙Sに定着させる上記の定着装置とを備えるため、モーターM1,M2の故障を防止しつつ画像光沢が向上した印刷物を出力することができる。
以上、本発明に係る定着装置、及び画像形成装置を実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
例えば、上記実施形態において定着装置はベルトニップ式のものを採用しているが、これに限らず、ローラーニップ式のものであってもよい。
さらに、本実施形態において定着装置は画像形成装置1内に収納されているが、これに限らず、後処理装置などの他の装置内に収納されていてもよい。
加えて、上記に示した各種構造、数値等については、上記したものに限られず、適宜変更可能である。
さらには、上記実施形態において定着装置は、ブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2を、2つのモーターM1,M2内で切り替えることしているが、特にこれに限らず、3つ以上のモーター内で切り替えるようにしてもよい。
また、上記実施形態において温度センサT1,T2は、モーターM1,M2及び駆動部品の双方の温度を検出しているが、これに限らず、いずれか一方のみの温度を検出するようになっていてもよい。
また、上記実施形態において制御部100は、温度センサT1,T2の検出温度が所定温度に達したとき、又は、所定枚数の用紙S(所定の紙種)が連続してニップ部Nに搬送されるときに、ブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2を切り替えているが、これに限られるものではない。例えば、ジョブ毎にブレーキ力D2を発生させるモーターM1,M2を切り替えてもよいし、他のタイミングいで切り替えてもよい。
さらに、上記実施形態においては制御基板90を有し、制御部100からのセレクト信号をセレクト信号判断部91にて判断し、アシスト信号とブレーキ信号とをそれぞれのモーター基板B1,B2に送信しているが、これに限らず、制御部100においてアシスト信号とブレーキ信号との送信先を判断し、制御基板90を介することなく、制御部100から直接アシスト信号とブレーキ信号とをそれぞれのモーター基板B1,B2に送信するようにしてもよい。