JP2020118869A - 画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】トナーを加熱フィルムから除去することが簡易な構成で実現可能な画像形成装置の提供。【解決手段】画像形成ジョブの後回転時、制御部はヒータの温度を急激に上昇させる前に(S7)、ヒータの温度を下げ加熱フィルムの温度を低下させる(S5)。それから、設定時間に亘って定着ローラ及び加熱フィルム並びに加圧ローラを空回転させる(S6)。これにより、画像形成ジョブの終了時に「加熱フィルムの温度≦定着ローラの温度」の状態であっても、「加熱フィルムの温度>定着ローラの温度」の状態へと移行させてから加熱フィルムの温度を急激に上昇させることができ、また加熱フィルムと定着ローラの温度差をより大きくできる。即ち、加熱フィルムから定着ローラや加圧ローラへトナーを転移させることが可能な温度条件を確保でき、もってトナーを記録材に転移させて加熱フィルムをクリーニングすることが簡易な構成で実現できる。【選択図】図5

Description

本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリあるいは複合機などの電子写真技術を用いた画像形成装置に関する。
画像形成装置は、未定着のトナー像が形成された記録材に対し熱と圧力を加えることにより、記録材にトナー像を定着させる定着装置を備えている。定着装置として、定着ローラと、定着ローラに当接して加圧するための加圧ローラと、定着ローラの外周面に当接して定着ローラを加熱するための加熱フィルムとを備えた外部加熱定着方式のものが提案されている(特許文献1)。この定着装置では、定着ローラと加圧ローラとの間に形成される定着ニップ部を、記録材が加圧及び加熱された状態で挟持搬送されることにより、記録材にトナー像が定着される。
定着ニップ部では上記のように記録材が加圧及び加熱された状態で挟持搬送されるが故に、トナーが記録材から定着ローラに付着することがある。そして、記録材に対するトナー像の定着処理が繰り返し行われた場合に、定着ローラは蓄熱性が高く加熱フィルムに比較して高温状態に維持されやすいために、定着ローラに付着したトナーが相対的に低温の加熱フィルムに移動して蓄積されることがある。こうして加熱フィルムがトナーにより汚れてしまうと、加熱フィルムの熱が定着ローラに伝わり難くなり、定着ローラが十分に加熱されなくなる。定着ローラが十分に加熱されなければ、トナーの定着性が劣化することに起因した画像不良(所謂、定着不良)が生じ得る。また、加熱フィルムに蓄積されたトナーが記録材に移動して、画像不良を生じさせ得る。そこで、特許文献1に記載の装置では、加熱フィルムに電圧を印加する電圧印加手段を設け、加熱フィルムの表面電位(詳しくは極性)を制御することにより定着ローラから加熱フィルムへのトナーの移動を抑制するようにしている。
特開2012−128262号公報
しかしながら、上述したように、電圧印加手段により加熱フィルムの表面電位(極性)を制御した場合であっても、定着ローラと加熱フィルムとの相対的な表面温度の関係によっては、トナーが定着ローラから加熱フィルムに移動することが生じていた。そこで、加熱フィルムに移動したトナーを除去するために、クリーニングウェブなどを用いることが考えられるが、最近の小型化の要望からクリーニングウェブを配置するスペースがなく、またコスト低減の要望からクリーニングウェブを設けるのは望ましくない。そこで、外部加熱定着方式の場合に、加熱フィルムにトナーが移動したとしても、トナーが蓄積される前に加熱フィルムからトナーを除去することが実現可能なものが望まれていたが、未だそのようなものは提案されていない。
本発明は上述の問題に鑑みてなされたもので、外部加熱定着方式の定着装置を用いる場合に、定着ローラから加熱フィルムに移動したトナーを加熱フィルムから除去することが容易に実現可能な画像形成装置の提供を目的とする。
本発明の画像形成装置は、記録材にトナー像を形成する画像形成ユニットと、記録材に形成されたトナー像を記録材に定着させる定着装置とを備えた画像形成装置であって、弾性層を有し、回転する定着ローラと、前記定着ローラに当接して前記定着ローラとの間で記録材にトナー像を定着させるための定着ニップ部を形成し、回転して前記定着ニップ部で記録材を挟持搬送する加圧ローラと、前記定着ローラよりも高い放熱性を有し、前記定着ローラに当接し回転する無端状の加熱フィルムと、前記加熱フィルムを加熱する加熱部材と、画像形成ジョブにおける最後の記録材が前記定着ニップ部を通過した後に、前記加熱部材の温度を画像形成ジョブ中の温度よりも下げ、前記定着ローラの温度が前記加熱フィルムの温度よりも低い状態で、所定時間に亘り前記加熱部材の温度を画像形成ジョブ中の温度よりも上げるクリーニングモードを実行可能な制御手段と、を備える、ことを特徴とする。
本発明によれば、外部加熱定着方式の定着装置の構成で、定着ローラから加熱フィルムに移動されたトナーを、加熱フィルムから定着ローラへと転移させ加熱フィルムから除去することが容易に実現できる。
本実施形態の画像形成装置の構成を示す概略図。 本実施形態の定着装置を示す断面図。 制御部について説明するための制御ブロック図。 定着ローラが冷えた状態で画像形成ジョブが開始された場合のヒータの温度、加熱フィルムの温度、定着ローラの温度の時間推移を示す図。 クリーニング処理を示すフローチャート。 YMCK画像データの濃度信号値の検出方法について説明するための図。 YMCK画像データの濃度信号値の総和と加熱フィルムの汚れ濃度との関係を示すグラフ。 通紙枚数と加熱フィルムの汚れ濃度との関係を示すグラフ。 画像の搬送方向長さと加熱フィルムの汚れ濃度との関係を示すグラフ。 画像の搬送方向長さについて説明するための図。 本実施形態における加熱フィルムの温度と定着ローラの温度との関係を示すグラフ。 ハーフトーン処理について説明するための制御ブロック図。 ハーフトーン処理の種類ごとのドット印字パターンを示す図。 ハーフトーン処理を行った場合の通紙枚数と加熱フィルムの汚れ濃度との関係を示すグラフ。 枚数カウント処理を示すフローチャート。 比較例における加熱フィルムの温度と定着ローラの温度との関係を示すグラフ。
<画像形成装置>
本実施形態について説明する。まず、本実施形態の画像形成装置について図1を用いて説明する。図1に示す画像形成装置100は、装置本体100a内に4色(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック)の画像形成部PY、PM、PC、PKを中間転写ベルト8に対向させて配置した、中間転写タンデム方式のカラー画像形成装置である。記録材Sとしては、例えば普通紙、厚紙、ラフ紙、凹凸紙、コート紙等の用紙、OHPシート、プラスチックフィルム、布など、といった様々な種類のシート材が挙げられる。以下では、記録材Sとして用紙を用いた場合を例に説明する。なお、本実施形態の場合、後述する画像形成部PY〜PK、一次転写ローラ5、中間転写ベルト8、二次転写内ローラ66、二次転写外ローラ67により、記録材Sにトナー像を形成する画像形成ユニット200が構成されている。
画像形成装置100の記録材の搬送プロセスについて説明する。記録材Sは、カセット62内に積載される形で収納されており、給紙ローラ63により画像形成タイミングに合わせて1枚ずつ搬送パス64に給紙される。なお、不図示の手差しトレイや記録材載置装置などに積載された記録材Sが、1枚ずつ搬送パス64に給紙されてもよい。記録材Sは搬送パス64の途中に配置されたレジストローラ65へ搬送されると、レジストローラ65により記録材Sの斜行補正やタイミング補正が行われた後に二次転写部T2へと送られる。二次転写部T2は、対向する二次転写内ローラ66及び二次転写外ローラ67により形成される転写ニップ部である。二次転写部T2では記録材Sが挟持搬送されて、二次転写外ローラ67に対し二次転写電圧が印加されることにより、トナー像が中間転写ベルト8から記録材Sへ二次転写される。
上記した二次転写部T2までの記録材Sの搬送プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部T2まで送られて来る画像の形成プロセスについて説明する。まず、画像形成部PY〜PKについて説明する。ただし、画像形成部PY〜PKは、現像装置4Y、4M、4C、4Kで用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外、ほぼ同一に構成される。そこで、以下では代表してイエローの画像形成部PYを例に説明し、その他の画像形成部PM、PC、PKについては説明を省略する。
<画像形成部>
図1に示すように、画像形成部PYは、感光ドラム1Yを囲んで、帯電装置2Y、現像装置4Y、一次転写ローラ5Y、及びドラムクリーニング装置6Yが配置されている。像担持体としての感光ドラム1Yは、装置本体100aに回転可能に支持されたドラム状の電子写真感光体であって、不図示のモータにより図1において時計回り(図中矢印R1方向)に回転される。回転された感光ドラム1Yの表面は、帯電装置2Yにより予め表面を一様に帯電され、その後、画像情報の信号(例えばYMCK画像データ)に基づいて駆動される露光装置3によって静電潜像が形成される。具体的には、露光装置3の内部に設けられたレーザーチップが、制御部300から指示された露光量で、帯電後の感光ドラム1Yの表面にレーザー光を照射する。露光装置3によりレーザー光が照射された部分では、帯電によって感光ドラム1Yの表面に保持されていた電荷が除去されるので、静電潜像が形成される。本実施形態では、露光装置3の露光量の出力を変更することで、トナー像の画像濃度を制御できる。
即ち、制御部300には、図示を省略したが、LANケーブル等の通信回線を介して接続された外部のパーソナルコンピュータや、載置された原稿を読み取る原稿読取装置などから画像信号が入力される。制御部300に入力される画像信号は、例えば、R(レッド)、G(グリーン)、及びB(ブルー)の3つの色成分を有するRGB画像データである。制御部300は、入力されたRGB画像データをY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)及びK(ブラック)の4つの色成分を有するYMCK画像データに変換する。このYMCK画像データでは、それぞれの画素について各色の色成分が濃度として表さられる。例えば、モノクロのYMCK画像データにおいて、ある画素がブラックである場合はK成分の濃度信号値が100%、ある画素が薄いグレーである場合はK成分の濃度信号値が20%という具合である。制御部300は、変換したYMCK画像データに基づき露光装置3を駆動して感光ドラム1Yに静電潜像を形成する。
そして、感光ドラム1Y上に形成された静電潜像は、現像装置4Yによるトナー現像を経てトナー像として可視像化される。その後、一次転写ローラ5Yにより所定の圧力及び一次転写電圧が与えられ、感光ドラム1Y上に形成されたトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。即ち、一次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト8を挟んで感光ドラム1Yに対向配置され、感光ドラム1Yと中間転写ベルト8との間にトナー像の一次転写部を形成する。一次転写部では、一次転写ローラ5Yに一次転写電圧が印加されることで、トナー像が感光ドラム1Yから中間転写ベルト8へ一次転写される。一次転写後の感光ドラム1Y上に僅かに残る転写残トナーは、ドラムクリーニング装置6Yにより除去され、再び次の作像プロセスに備える。
無端状の中間転写ベルト8は、テンションローラ10、二次転写内ローラ66、及び張架ローラとしてのアイドラローラ7a、7bによって張架され、図中矢印R2方向へと移動するように駆動される。本実施形態の場合、二次転写内ローラ66は中間転写ベルト8を駆動する駆動ローラを兼ねている。上述の画像形成部PY〜PKにより処理される各色の作像プロセスは、中間転写ベルト8上に一次転写された中間転写ベルト8の回転方向上流側の色のトナー像上に順次重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト8上に形成され、二次転写部T2へと搬送され得る。二次転写部T2を通過した後の転写残トナーは、転写クリーナ装置11によって中間転写ベルト8から除去される。
以上、それぞれ説明した搬送プロセス及び作像プロセスをもって、二次転写部T2において記録材Sとフルカラートナー像のタイミングが一致し、中間転写ベルト8から記録材Sにトナー像が二次転写される。その後、画像形成ユニット200によりトナー像が形成された記録材Sは定着装置30へと搬送され、定着装置30により加圧及び加熱されることにより、トナー像が記録材S上に溶融固着される。定着装置30によりトナー像が定着された記録材Sは、排紙ローラ69により排紙トレイ601上に排出される。
<定着装置>
次に、本実施形態の定着装置30について、図2を用いて説明する。本実施形態の定着装置30は、定着ローラ32の表面を加熱フィルム33によって外部から加熱する外部加熱定着方式の定着装置である。外部加熱定着方式の場合、定着ローラ32を表面から加熱するので、消費電力を抑えつつ定着ローラ32の表面を素早く目標温度に到達させることができる。図2に示すように、定着装置30は、加圧ローラ31と、定着ローラ32と、加熱フィルム33と、ヒータ35とを備えている。
加圧ローラ31は、装置本体に回転自在に設けられる。また、加圧ローラ31は定着ローラ32に当接して、定着ローラ32を加圧し得るように配置されている。定着ローラ32と加圧ローラ31とを当接させ加圧させることにより、定着ローラ32と加圧ローラ31との間で記録材Sを加圧した状態で通過させてトナー像を加熱定着可能な定着ニップ部N1が形成される。加圧ローラ31としては、例えば金属製の回転軸(芯金)の外周にシリコーンゴム、フッ素ゴム、フッ素樹脂等の弾性層を有するものや、弾性層の外周にさらにPTFE、PFA、FEP等のフッ素樹脂からなる離型層を有するものなどを用いてよい。
なお、定着ローラ32に当接して加圧するための部材としては、ここに示した加圧ローラ31のようなローラ部材に限らず、内側にバックアップ部材を有する無端状のフィルム部材であってもよい。バックアップ部材は、フィルム部材と定着ローラ32とを当接させ加圧させることにより定着ニップ部N1が形成されるように、フィルム部材を回転可能に支持する。バックアップ部材は、定着ニップ部N1の長手方向(定着ローラ32の回転軸線方向)の熱伝導率を良くするために、長手方向に延設された金属製部材であるのが好ましい。こうした場合には、例えば定着ニップ部N1に最大でA3サイズの記録材Sを通紙させることが可能な定着装置30において、B5サイズやA5サイズのような小サイズの記録材Sを連続で通紙しても、定着ローラ32の長手方向の熱の分布を均すことができる。つまり、定着ローラ32のうち記録材Sが通過しない長手方向端部側の領域(非通紙部などと呼ばれる)における温度上昇(昇温)を抑制できる。
定着ローラ32は、定着ニップ部N1にて記録材Sに形成された未定着のトナー像Tと接触する回転体であり、定着ニップ部N1にて未定着のトナー像Tを加熱する。定着ローラ32は、内側から金属製の芯金、弾性層として蓄熱性が高いシリコーンゴム、フッ素ゴムなどのゴム層、PTFE、PFA、FEP等のフッ素樹脂からなる離型層が設けられており、直径が例えば18mmに形成されている。定着ローラ32はモータM1に接続され、モータM1によって回転される。なお、本実施形態の場合、加圧ローラ31は定着ローラ32に従動回転する。記録材Sは、これら回転する加圧ローラ31と定着ローラ32とにより定着ニップ部N1を挟持搬送される。
定着ローラ32の外周面には、加熱回転体として無端且つ薄膜状のフィルム部材である加熱フィルム33が当接している。定着ローラ32と加熱フィルム33とを当接させることにより、定着ローラ32と加熱フィルム33との間に熱を伝達させるための加熱ニップ部N2が形成される。加熱フィルム33は、加圧ローラ31と同様に定着ローラ32に従動回転する。本実施形態の場合、加熱フィルム33は定着ローラよりも放熱性が高い(言い換えれば、蓄熱性が低い)。加熱フィルム33の内側には、加熱部材としてのヒータ35が設けられている。ヒータ35は、加熱フィルム33に対する長手方向の位置ズレやヒータ35自体の割れを防止するために、ヒータホルダ34に保持されている。押圧部材としてのヒータホルダ34は、加熱フィルム33を内周面側から加熱ニップ部N2に向けて押圧している。また、ヒータホルダ34には、ヒータ35の温度を検出するための例えばサーミスタなどの温度センサ36が設けられている。ヒータ35により加熱フィルム33が加熱されると、加熱ニップ部N2にて加熱フィルム33を介して定着ローラ32へとヒータ35の熱が伝達される。こうして、定着ローラ32が加熱されるようになっている。
なお、本実施形態の場合、ヒータ35は最大加熱温度が250℃程度のセラミックヒータを用いた。これは、最大温度がより高いヒータを用いると、ヒータ自体のコストが高いことに加え、ヒータホルダ34や加熱フィルム33などが熱によって溶けてしまうのを避けるべく、それらをコストのより高い溶け難い部材で形成する必要が生じるからである。
<制御部>
図1に示すように、画像形成装置100は制御部300を備えている。制御部300について、図2を参照しながら図3を用いて説明する。ただし、制御部300には図示した以外にも画像形成装置100を動作させるためのモータや電源等の各種機器が接続されているが、ここでは発明の本旨でないのでそれらの図示及び説明を省略する。
制御手段としての制御部300は、画像形成動作などの本画像形成装置100の各種制御を行うものであり、例えばCPU301(Central Processing Unit)と、メモリ302とを有する。メモリ302は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などにより構成されている。メモリ302は、画像形成装置100を制御するための各種プログラムや、後述の制御テーブル(表5参照)などの各種データが記憶される。CPU301はメモリ302に記憶されている各種プログラムを実行可能であり、各種プログラムを実行して画像形成装置100を動作させ得る。本実施形態の場合、CPU301は、メモリ302に記憶されている「画像形成ジョブ処理(プログラム)」(不図示)や「クリーニング処理(プログラム)」(後述する図5参照)を実行可能である。また、CPU301は例えば記録材Sの枚数をカウントするカウンタ機能や、時間を計測する計時機能などとして機能し得る。本実施形態の場合、CPU301は画像形成ジョブ中にトナー像を形成した記録材Sの枚数をカウント可能であり、カウントした記録材Sの枚数をメモリ302に記憶させ得る。なお、メモリ302は、各種プログラムの実行に伴う演算処理結果などを一時的に記憶することもできる。
制御部300には入出力インタフェースを介して、操作部401が接続されている。操作部401は、利用者による画像形成ジョブなどの各種プログラムの開始指示や各種データ入力などが行われる、例えば操作パネルなどである。操作部401からは、例えば画像形成ジョブの開始指示や後述するハーフトーン処理の種類の入力などが行える。
画像形成ジョブとは、記録材Sに画像形成するプリント信号に基づいて、画像形成開始してから画像形成動作が完了するまでの一連の動作のことである。即ち、画像形成を行うにあたり必要となる予備動作(所謂、前回転)を開始してから、画像形成工程を経て、画像形成を終了するにあたり必要となる予備動作(所謂、後回転)が完了するまでの一連の動作のことである。具体的には、プリント信号を受けた後の前回転時(画像形成前の準備動作)から、後回転(画像形成後の動作)までのことを指し、画像形成期間、紙間を含む。
操作部401から画像形成ジョブの開始指示がなされた場合、CPU301はメモリ302に記憶されている「画像形成ジョブ処理」を実行する。CPU301は、「画像形成ジョブ処理」の実行に基づいて画像形成装置100を制御する。その際に、定着ローラ32の表面温度が、記録材Sに載り得る未定着のトナー像Tのトナー量が最大のときに定着に必要な熱量が不足しない所望の温度となるように、ヒータ35はCPU301によって温調制御される。CPU301は、画像形成せずに画像形成ジョブの入力を待機している待機状態においてジョブ入力を受け付けた場合に、ヒータ35の通電をオンにし、定着ローラ32の表面温度が所望の温度となるように、ヒータ35の入力電圧を制御する。CPU301は、温度センサ36の検出結果に基づいて、ヒータ35の入力電圧を制御する。
一例として、ヒータ35の制御温度が180℃未満のとき、定着ニップ部N1での定着ローラ32の表面温度は100℃未満という低い温度となる。このとき、定着ニップ部N1にてトナー像Tに十分な熱量が与えられないので、トナーが溶かされきれずに記録材Sに定着しない虞がある。また、ヒータ35の制御温度が250℃のとき、定着ニップ部N1での定着ローラ32の表面温度が130℃という高い温度になる。このとき、定着ニップ部N1にてトナー像Tに過剰な熱量が供給されるため、トナーを溶かしすぎてしまう(ホットオフセットなどと呼ばれる)。これにより、定着ニップ部N1を通過したトナーの一部が記録材Sでなく定着ローラ32の表面に付着してしまう虞がある。そして、定着ローラ32の表面に付着したトナーが、定着ローラ32が1周した以降に記録材Sに汚れとして転移する虞がある(ホットオフセットによる画像不良)。そこで、CPU301は上記したような定着不良やホットオフセットによる画像不良を発生させないように、画像形成ジョブ中のヒータ35の温調制御として、例えばヒータ35の温度を180℃以上250℃未満に維持するようにしている。なお、CPU301はヒータ35の通電のオン、オフを繰り返すことにより温調制御するとしてもよい。そして、入力済みのジョブに対応する定着処理が全て終了したら、CPU301はヒータ35への通電をオフして、定着装置30を待機状態へと移行する。
<加熱フィルムのトナー汚れについて>
ところで、外部加熱定着方式の定着装置30の場合、定着ローラ32が蓄熱されている状態で記録材Sへの定着が繰り返されると、定着ローラ32に付着したトナーが加熱フィルム33に移動して、加熱フィルム33にトナー汚れが生じる場合がある。以下、加熱フィルム33にトナー汚れが生じるメカニズムについて、図2を参照して説明する。
上述したように、定着ローラ32の表面温度は、画像形成ジョブ中、記録材Sに載り得る未定着のトナー像Tのトナー量が最大のときに定着に必要な熱量が不足しない所望の温度となるように制御されている。そのため、記録材Sのある領域において、トナーの載り量が少ない画像(例えば、濃度の低いハーフトーン画像など)が形成された場合、その画像に対しては過定着気味となる。その場合、上述したホットオフセットによる画像不良ほどではないが、ホットオフセットと同様の原理で定着ローラ32にトナーが付着してしまう。
そして、加熱フィルム33は蓄熱層(ゴム層)を有せず且つ膜厚が薄いので、放熱性が高く、ほとんど蓄熱しない。他方、定着ローラ32は蓄熱層(ゴム層)を有することから、画像形成ジョブに伴う記録材Sの連続通紙に伴い蓄熱しやすい。ここで、定着ローラ32が蓄熱された状態で50枚の記録材Sを連続通紙した場合における、加熱フィルム33の表面温度と定着ローラ32の表面温度とを表1に示す。なお、以下の説明では、加熱フィルム33の回転方向に関し、非接触部分を含む加熱ニップ部N2近傍の上流側領域を上流部N3、非接触部分を含む加熱ニップ部N2近傍の下流側領域を下流部N5、それ以外の加熱ニップ部N2の中央領域を中央部N4と記す。
Figure 2020118869
表1に示すように、上流部N3において、加熱フィルム33の温度は80℃となり、定着ローラ32の温度は110℃になる。つまり、加熱フィルム33の方が温度の低い状態になる。中央部N4は、ヒータ35が加熱フィルム33に接触しているので、ヒータ35により急速に加熱される。そのため、中央部N4において、加熱フィルム33の温度は目標温度である120℃に達している。中央部N4における加熱フィルム33の温度が120℃となるとき、加熱フィルム33を介してヒータ35からの熱を受ける定着ローラ32の温度は116℃になる。なお、定着ローラ32の温度は瞬間的に120℃近くまで温度上昇し得るが、蓄熱性が高い故に116℃付近までしか上昇しない。ただし、記録材Sの通紙枚数が増えるに連れて定着ローラ32の蓄熱量も増えるため、連続通紙を続けるにつれて、中央部N4での定着ローラ32の温度は120℃に到達する。下流部N5ではヒータ35から離れるため、放熱性が高い加熱フィルム33の温度が110℃まで瞬時に下がってしまう。他方、定着ローラ32は蓄熱層があるために放熱量が少なく、下流部N5でもその温度は114℃までしか下がらない。こうして、下流部N5では、定着ローラ32の温度よりも加熱フィルム33の温度の方が低くなる。
上記のようにして定着ローラ32に付着したトナーは、温度が高い方から低い方へと移動しやすい。そのため、下流部N5では定着ローラ32に付着していたトナーが加熱フィルム15へと移動してしまう。ただし、表1に示した温度関係の場合、中央部N4では加熱フィルム33の温度よりも定着ローラ32の温度の方が低いことから、下流部N5にて加熱フィルム33に移動したトナーが中央部N4にて再び定着ローラ32に移動し得る。しかしながら、上述したように、連続通紙を続けるにつれて中央部N4での定着ローラ32の温度は120℃に到達する。そうなると、中央部N4では加熱フィルム33に付着したトナーが再び定着ローラ32に移動するという現象が起こりにくくなる。また、定着ローラ32の蓄熱が進むと、下流部N5での加熱フィルム33と定着ローラ32との温度差も大きくなるため、より加熱フィルム33側にトナーが移動しやすくなる。
以上のようにして、定着装置30に連続通紙される記録材Sの枚数が増えると、定着ローラ32の温度が上がる。これにより、定着ローラ32に付着したトナーが加熱フィルム33側に移動しやすくなるため、加熱フィルム33にトナーが蓄積されていく。
<記録材のトナー汚れについて>
こうして加熱フィルム33にトナーが蓄積されていると、定着ローラ32が冷えた状態で例えば画像形成ジョブが入力されたような場合に、当該ジョブの1枚目の記録材Sにトナーが移動してトナー汚れとなる虞がある。例えば、画像形成ジョブの終了後に次の画像形成ジョブの開始指示がされず、画像形成せずにジョブ入力を待つ待機状態が長い場合には、ヒータ35のオフ状態が続くので、定着ローラ32が冷えた状態となる。ここで言う定着ローラ32が冷えた状態とは、例えば定着ローラ32の温度が室温に馴染んだ状態である。図4に、室温が25℃、湿度が50%の環境にある画像形成装置100において、定着ローラ32が冷えた状態で画像形成ジョブが開始された場合のヒータ35の温度(C1)、加熱フィルム33の温度(C2)、定着ローラ32の温度(C3)の時間推移を示す。なお、加熱フィルム33の温度(C2)と定着ローラ32の温度(C3)は、加熱ニップ部N2(中央部)での温度である。
図中C1に示すように、ヒータ35の温度が室温と同温(25℃)である場合に、ヒータ35に対し100%の電力供給を行うと、ヒータ35は数秒で最大温度の250℃に到達する。そして、図中C2、図中C3に示すように、ヒータ35の温調制御が開始されるまではヒータ35はオフ状態(電力未供給状態)であることから、加熱フィルム33と定着ローラ32の温度は共に室温と同じ約25℃である。ヒータ35に対し電力供給が行われると、加熱フィルム33はヒータ35からの熱を受けて素早く昇温する。他方、定着ローラ32は蓄熱層や芯金に熱が伝わるので、定着ローラ32の温度は加熱フィルム33に比べてゆっくりと上昇する。そして、ヒータ35が最大温度である250℃へ向けて上昇し、加熱フィルム33の温度が120℃に達しても、定着ローラ32の温度は105℃程度までしか上昇しない。
制御部300は、待機状態におけるジョブ入力に応じて、ヒータ35をオンにして温調制御を開始する。待機状態におけるジョブ入力から当該ジョブの1枚目の記録材Sが出力されるまでの時間を短縮するために、制御部300は、加熱フィルム33が120℃に達するタイミングで1枚目の記録材Sの先端が定着ニップ部N1に突入するように記録材Sを搬送させる。このとき、図4に示すように、定着ローラ32の温度は加熱フィルム33の温度よりも低いために、加熱フィルム33にトナーが蓄積していると、トナーが加熱フィルム33から定着ローラ32へと移動し得る。
表2に、図4に示した場合に関し、次の画像形成ジョブ時における1枚目の記録材Sの先端が定着ニップ部Nに到達した際の加熱ニップ部N2における、加熱フィルム33の温度と定着ローラ32の温度とを示す。
Figure 2020118869
表2に示すように、上流部N3では加熱フィルム33の温度が80℃であり、定着ローラ32の温度が66℃である。それ故、加熱フィルム33に蓄積されているトナーが定着ローラ32に移動し得る。中央部N4では、加熱フィルム33の温度が目標温度である120℃になる。これに対し、定着ローラ32が冷めた状態から加熱された場合に、定着ローラ32の温度は105℃までしか上昇しない。したがって、中央部N4においても、定着ローラ32の温度が加熱フィルム33の温度よりも低いため、加熱フィルム33に蓄積されているトナーが定着ローラ32に移動し得る。下流部N5では、加熱フィルム33がヒータ35から離れて放熱されやすいので、加熱フィルム33の温度が110℃まで低下する。また、定着ローラ32の温度は103℃程度に低下する。こうして下流部N5においても、定着ローラ32の温度が加熱フィルム33の温度よりも低いため、加熱フィルム33に蓄積されているトナーが定着ローラ32に移動し得る。
そして、加圧ローラ31はヒータを有しておらず、また放熱される面積が定着ローラ32に比べて定着ニップ部N1の分だけ大きいことから、加圧ローラ31の温度は定着ローラ32と同じか定着ローラ32よりも低くなる。それ故、加熱フィルム33から定着ローラ32へ移動したトナーが、定着ローラ32から加圧ローラ31へと移動し得る。即ち、下流部N5においては「加熱フィルム33の温度>定着ローラ32の温度」になり、定着ニップ部N1においては「定着ローラ18>加圧ローラ19」になる。そのため、加熱フィルム33に蓄積していたトナーが定着ローラ32側に移動し、さらには加圧ローラ31にも移動し得る。そうであるから、1枚目の記録材Sが定着ニップ部N1を通過する際に、記録材Sに多量のトナーが移動してしまい、トナー汚れとして目立ってしまう。
加熱フィルム33に蓄積されたトナーに起因して、記録材Sに画像不良として目立つほどのトナー汚れが生じるのを防止するためには、加熱フィルム33にトナーが蓄積されたとしても、都度トナーを除去できるようにすればよい。そこで、加熱フィルム33の表面を例えばクリーニングウェブなどのクリーニング部材を用いて摺擦させて、トナーを除去することが考えられる。しかし、新たにクリーニング部材を配置する場合、最近の小型化の要望からクリーニング部材を配置するスペースがなく、またコスト低減の要望からクリーニング部材を設けるのは望ましくない。これは、クリーニング部材の他に、加熱フィルム33にクリーニング部材を適切に摺擦させるための部材がさらに必要となるからである。
<記録材にトナーを転移させるための制御の概要>
そこで、別の方法が考えられる。加熱フィルム33に蓄積したトナーは、上述したように温度の高い方から低い方へと移動し得ることから、この特性を利用し、加熱フィルム33にトナーが蓄積される前に、トナーを定着ローラ32や加圧ローラ31へ移動させ記録材Sに転移させればよい。ただし、記録材Sに転移させるトナーは、ユーザが視認できない程度の量に抑制する必要がある。そのため、画像形成ジョブの後回転時に、加熱フィルム33の温度と定着ローラ32の温度を制御して、トナーを定着ローラ32や加圧ローラ31へ移動させ、次の画像形成ジョブの1枚目の記録材Sにトナーを転移させるとよい。
ここで、次の画像形成ジョブの1枚目の記録材Sにトナーを転移させるための制御について概要を説明する。この制御では、加熱フィルム33に付着したトナーを定着ローラ32や加圧ローラ31へ移動させ、最終的に次の画像形成ジョブの1枚目の記録材Sに転移させる。上述したように、加熱ニップ部N2(特に下流部N5)における温度関係を「加熱フィルム33の温度>定着ローラ32の温度」にすると、加熱フィルム33に付着されたトナーを定着ローラ32に移動させることができる。また、加圧ローラ31の温度と定着ローラ32の温度とは、定着ローラ32の温度が高い関係になるため、定着ローラ32へトナーを移動させれば、加圧ローラ31にトナーが移動される。この特性を利用して、加熱フィルム33からトナーを除去させるために、画像形成ジョブの後回転時に「加熱フィルム33の温度>定着ローラ32の温度」にする。
具体的に図16を用いて説明する。図16は本実施形態に対する比較例であり、加熱ニップ部N2(中央部)での加熱フィルム33の温度と定着ローラ32の温度を示したグラフである。ここでは、定着ローラ32の温度として、50枚の記録材Sを連続して通紙した画像形成ジョブを行った場合と、120枚の記録材Sを連続して通紙した画像形成ジョブを行った場合とを示している。なお、図16において、時刻t1〜t2と時刻t3〜t4は記録材Sが定着ニップ部N1を通過している通紙中を示し、時刻t2〜t3は記録材Sが定着ニップ部N1を通過していない紙間を示す。
図16に示すように、時刻t4以降の画像形成ジョブの後回転において時刻t5のときに、ヒータ35の温度を急激に最大温度の250℃へと上昇させることにより、加熱フィルム33の温度を130℃へ急上昇させている。表3に、画像形成ジョブとして50枚の記録材Sに連続して出力した後に急激にヒータ35の温度を上昇させた場合における、加熱フィルム33の温度と定着ローラ32の温度を示す。
Figure 2020118869
ヒータ35の温度を急激に上昇させると、中央部N4における加熱フィルム33の温度は130℃へ急上昇する。その際に、中央部N4における定着ローラ32の温度は115℃となるため、「加熱フィルム33の温度>定着ローラ32の温度」になっている。下流部N5では、加熱フィルム33が放熱により120℃まで下降する。そして、定着ローラ32の温度も加熱フィルム33よりも下がりにくいが、113℃まで低下する。その結果、図16に示すように、ヒータ35の温度を上げた時刻t5以降、「加熱フィルム33の温度>定着ローラ32の温度」が維持されて、加熱フィルム33から定着ローラ32へとトナーが移動し得る。なお、この場合に、加熱フィルム33と定着ローラ32の温度差が大きいほど、加熱フィルム33から定着ローラ32へとトナーが移動しやすいことから、加熱フィルム33と定着ローラ32の温度差はより大きい方がよい。
<問題点>
しかしながら、画像形成ジョブにおける記録材Sの通紙枚数が増えるに連れ、定着ローラ32に熱が蓄えられる。即ち、連続通紙を続けると、連続通紙中の紙間でヒータ35から加熱フィルム33を介して受けた熱が蓄熱層(ゴム層)に蓄熱され、定着ローラ32の温度が上がる。例えば120枚の記録材Sが連続して通紙される画像形成ジョブを行った場合は、図16に示すように、定着ローラ32の温度が加熱フィルム33の温度よりも高くなり得る(ここでは120℃以上)。この場合に、ヒータ35の温度を上げて加熱フィルム33の温度を130℃へ上昇させると、それに伴い定着ローラ32の温度が130℃以上に上がってしまい、「加熱フィルム33の温度≦定着ローラ32の温度」となりやすい。そうなると、加熱フィルム33から定着ローラ32へトナーが移動されない。つまり、次の画像形成ジョブの1枚目の記録材Sにトナーを転移させることが難しくなる。表4に、画像形成ジョブとして連続して120枚の記録材Sに出力してから、ヒータ35の温度を急激に上昇させた場合における、加熱フィルム33の温度と定着ローラ32の温度を示す。
Figure 2020118869
上記のように、ヒータ35の温度を急激に上昇させることにより、中央部N4における加熱フィルム33の温度は130℃へ急上昇する。その際に、上流部N3における加熱フィルム33の温度は102℃になる。しかし、定着ローラ32の温度は紙間での蓄熱の影響で、139℃と加熱フィルム33の温度よりも高い温度である。中央部N4では、加熱フィルム33が瞬時に142℃まで上昇するが、定着ローラ32も蓄熱の影響により145℃まで上昇してしまう。また、下流部N5では放熱の影響により加熱フィルム33の温度は132℃まで下降するが、定着ローラ32は放熱し難いために、定着ローラ32の温度は143℃までしか下がらない。この場合、上流部N3から下流部N5に亘り「加熱フィルム33の温度≦定着ローラ32の温度」になることから、加熱フィルム33から定着ローラ32へトナーが移動せず、加熱フィルム33に付着したままになる。そのため、待機状態を経ずに次の画像形成ジョブが開始され続け、加熱フィルム33にトナーが蓄積し続けてしまう。
以上、述べたように、画像形成ジョブにおける連続して出力した記録材Sの通紙枚数によっては、ヒータ35の温度を急激に上昇させても、ヒータ35の最大温度の関係から「加熱フィルム33の温度>定着ローラ32の温度」とならないことがある。その場合、加熱フィルム33から定着ローラ32へトナーが移動せず、次の画像形成ジョブにおいて1枚目の記録材Sにユーザが視認できない程度の量のトナーを転移させることが難しくなる。
<クリーニング処理>
上記点に鑑み、本実施形態では、画像形成ジョブにおける最後の記録材Sが定着ニップ部N1を通過した後の、画像形成ジョブの後回転時にヒータ35の温度を急激に上昇させ、「加熱フィルム33の温度>定着ローラ32の温度」の関係となるようにしている。以下、本実施形態のクリーニング処理(クリーニングモード)について、図2及び図3を参照しながら図5乃至図11を用いて説明する。図5に示すクリーニング処理は、制御部300(詳しくはCPU301)により画像形成ジョブの実行にあわせて開始される。
図5に示すように、制御部300は、定着ニップ部N1を通過した記録材Sの枚数(枚数カウント)をカウントし、メモリ302に記憶させる(S1)。制御部300は、画像形成ジョブを終了するか否かを判定する(S2)。画像形成ジョブを終了しない場合(S2のNo)、制御部300は記録材Sの枚数をカウントする処理を続ける。画像形成ジョブを終了する場合(S2のYes)、制御部300はステップS3の処理へ進む。
ここで、上記した記録材Sの枚数カウントについて説明する。本実施形態の場合、定着ニップ部N1を記録材Sが通過する毎に記録材Sの枚数をカウントすればよいが、これに限らない。YMCK画像データの濃度信号値の総和(%)が20〜60%で形成されている画像を有する場合にのみ、枚数カウントをカウントするようにしてよい。これは、YMCK画像データの濃度信号値の総和(%)が加熱フィルム33へのトナー付着量を左右するからである。
本実施形態の場合、YMCK画像データは1画素あたりのY、M、C、及びKの各色成分の濃度を、単色での最大濃度を100%とするときの1画素あたりの各色成分の濃度(%)で表す濃度信号値を有する。このYMCK画像データの濃度信号値の検出方法について、図6を用いて説明する。制御部300(図3参照)は、YMCK画像データを所定の領域ごとに分析し、各領域毎にYMCK画像データの濃度信号値の総和(%)を検出する。
例えば、図6では左上端部を基準位置とし、測定パッチn(ここでは1画素分の領域)を主走査方向に1つずつずらしながら、各測定パッチにおけるYMCK画像データの濃度信号値の総和(%)を検出する。なお、本実施形態では画素数単位で検出しているが、測定パッチnの大きさは適宜に設定してよい。例えば、図6における1画素を複数組み合わせた領域を1つの測定パッチnとしてもよい。
YMCK画像データの濃度信号値の総和とは、1画素あたりの各色成分の濃度信号値(%)の平均値であり、これは1枚の記録材Sに形成されたトナー像の平均濃度に相当する。本実施形態では、記録材Sへのトナーの載り量を制御するために、制御部300はYMCK画像データにおける1画素あたりの4つの色成分の濃度信号値が最大で200%になるように、RGB画像データをYMCK画像データに変換している。即ち、YMCK画像データでの濃度信号値の総和が200%となる時、記録材Sに形成するトナー像のトナー載り量が最大となる。
<加熱フィルムへのトナー付着量について>
ここで、YMCK画像データの濃度信号値と加熱フィルム33へのトナー付着量との関係について、図2を参照しながら図7及び図8を用いて説明する。図7は、YMCK画像データの濃度信号値の総和(%)に対応する未定着のトナー像が形成された記録材Sを連続して120枚通紙した場合における、加熱フィルム33の汚れ濃度を示している。上記したように、定着ローラ32の温度が上昇し続け、「加熱フィルム33の温度≦定着ローラ32の温度」になることで、加熱フィルム33上にトナーが付着してしまう。このトナー付着量は、YMCK画像データの濃度信号値の総和(%)つまり画像の平均濃度によって変動する。図7に示す汚れ濃度は、加熱フィルム33の表面において、トナーの付着していない領域の反射濃度を基準とし、トナーが付着した領域の反射濃度の濃度との差分値である。図7から理解できるように、YMCK画像データの濃度信号値の総和が「30〜50%」である場合に汚れ濃度が「0.15」以上となっており、YMCK画像データの濃度信号値の総和が40%前後でトナー付着量が多くなることが分かる。
図8は、上記のように加熱フィルム33にトナーが付着しやすいYMCK画像データの濃度信号値の総和が40%の記録材Sを通紙した場合における、通紙枚数と加熱フィルム33の汚れ濃度との関係を示すグラフである。図8に示すように、YMCK画像データの濃度信号値の総和が40%の記録材Sを120枚通紙した結果によれば、85枚までは汚れ濃度が「0.15」未満である。汚れ濃度が「0.15」未満である場合、加熱フィルム33からトナーが記録材Sに転移したとしても、ユーザが視認できないレベルである。しかし、YMCK画像データの濃度信号値の総和が40%の記録材Sを「86枚」以上通紙した場合には、汚れ濃度が「0.15」以上となる。
本実施形態の場合、加熱フィルム33の汚れ濃度が「0.15」(汚れ発生閾値と呼ぶ)以上であると、記録材Sにトナーが転移した場合に、ユーザが視認できるほどの画像不良として目立つ。したがって、YMCK画像データの濃度信号値の総和が30%以下の場合には、例え記録材Sにトナーが転移してもユーザに視認されない量のトナーが加熱フィルム33に蓄積される程度である。他方、YMCK画像データの濃度信号値の総和が60%以上の場合には、トナー同士の接触面積が増え結合力が上がるために、記録材Sにトナーが転移し難くなる。そこで、本実施形態では、YMCK画像データの濃度信号値の総和つまり画像の平均濃度が「20〜60%」(所定範囲)である記録材Sを、枚数カウントのカウント候補としている。
上述したように、本実施形態では、YMCK画像データの濃度信号値の総和が「20〜60%」である画像を形成する記録材Sが連続通紙されると、記録材Sにトナーが転移した場合に、ユーザが視認できるほどの画像不良として目立つ。また、その際に記録材Sの搬送方向(副走査方向とも呼ぶ)における画像の長さによっても、加熱フィルム33の汚れ濃度に影響を与えることがわかっている。図9に、画像の搬送方向長さと加熱フィルム33の汚れ濃度との関係を示した。図9中に示す点αは例として1枚の記録材Sにおいて、YMCK画像データの濃度信号値が40%固定で画像形成され、画像の搬送方向長さが80mmである場合に、40枚の記録材Sを連続通紙した場合の汚れ濃度を示している。また、図9の横軸は、YMCK画像データの濃度信号値が40%の画像の搬送方向長さを示す。なお、記録材Sの搬送方向に交差する幅方向の画像長さは例えば1mmに固定している。
図9中に示す点αでは、40枚の記録材Sを連続通紙すると、汚れ濃度が「0.15」以上となる。これは、上記したように記録材Sにトナーが転移した場合に、ユーザが視認できるほどの画像不良として目立つ汚れ濃度である。そこで、本実施形態では、YMCK画像データの濃度信号値が「20〜60%」であり、且つ搬送方向長さが所定長さ以上である画像を有する場合の記録材Sをカウントするようにしている。本実施形態では、所定長さを80mmとした。
ここで、画像の搬送方向長さについて、図10を用いて説明する。搬送方向長さが例えば80mmの画像(濃度信号値の総和が20〜60%)を有する場合、その記録材Sはカウントされる。また、搬送方向長さが累積で80mm以上となる複数の画像(例えば、20mmと60mmの2つの画像を有する場合、その記録材Sはカウントされる。即ち、本実施形態では、搬送方向に連続して80mm以上となる画像を有する記録材Sである場合、あるいは搬送方向と交差する幅方向において同一線上に合計80mm以上となる複数の画像を有する記録材Sである場合は、カウントされるようにしている。これに対し、搬送方向長さが60mmである画像を有する場合、あるいは搬送方向長さが累積で80mm未満となる複数の画像を有する記録材Sである場合は、カウントされないようにしている。
図5の説明に戻り、制御部300は、カウントした記録材Sの枚数(枚数カウント)をメモリ302から読み出す(S3)。そして、制御部300は、読み出した枚数カウントが所定枚数以上(閾値以上)であるか否かを判定する(S4)。枚数カウントが所定枚数未満(閾値未満)である場合(S4のNo)、制御部300はステップS7の処理へジャンプする。この場合、制御部300はヒータ35の温度を画像形成ジョブ中の温度よりも下げることなく(S5参照)、ヒータ35の温度を画像形成ジョブ中の温度よりも上げる(S7参照)。他方、枚数カウントが所定枚数以上である場合(S4のYes)、制御部300は、ヒータ35の温度を画像形成ジョブ中の温度(目標温度)よりも低い温度に低下させる(S5)。この際に、制御部300はメモリ302に記憶されている表5に示す制御テーブルに従ってヒータ35の温度を設定する。
Figure 2020118869
表5に示すように、本実施形態では、枚数カウントが21〜60枚であればヒータ35を「−5℃」下げ、枚数カウントが61〜100枚であればヒータ35を「−10℃」下げ、枚数カウントが101枚以上であればヒータ35を「−15℃」下げる。即ち、クリーニングモード時に、記録材Sの枚数が第一枚数である場合にヒータ35の温度を第一温度に下げ、記録材Sの枚数が第一枚数よりも多い第二枚数である場合にヒータ35の温度を第一温度よりも低い第二温度に下げる。このように、枚数カウントが大きいほど、ヒータ35を低下させる温度が大きくなるようにしている。
なお、表5に示す制御テーブルは、例えば所定の環境条件(温度範囲など)毎に制御温度や後述の空回転時間の異なるテーブルがメモリ302に記憶されていてもよい。その場合、例えば低温環境(例えば10℃)に対応するテーブルの制御温度は、高温環境(例えば35℃)に対応するテーブルの制御温度よりも小さい値が規定される。また、例えば低温環境(例えば10℃)に対応するテーブルの空回転時間は、高温環境(例えば35℃)に対応するテーブルの空回転時間よりも短い時間が規定される。
制御部300は、ヒータ35の温度を下げてから、枚数カウントに応じた設定時間に亘って定着ローラ32及び加熱フィルム33並びに加圧ローラ31を空回転させたか否かを判定する(S6)。制御部300は、枚数カウントに応じた設定時間に亘って空回転させるまで処理を待機する(S6のNo)。この際に、制御部300はメモリ302に記憶されている表5に示す制御テーブルに従って回転時間を設定する。表5に示すように、本実施形態では、枚数カウントが21〜40枚であれば空回転時間を10秒に、枚数カウントが41〜60枚であれば空回転時間を20秒に、枚数カウントが61〜80枚であれば空回転時間を30秒に設定する。また、枚数カウントが81〜100枚であれば空回転時間を50秒に、枚数カウントが101枚以上であれば空回転時間を60秒に設定する。即ち、クリーニングモード時に、ヒータ35の温度を下げてからヒータ35の温度を上げるまでの時間を、記録材Sの枚数が第一枚数である場合に第一時間とし、記録材Sの枚数が第一枚数よりも多い第二枚数である場合に第一時間よりも長い第二時間とする。そして、定着ローラ32及び加熱フィルム33並びに加圧ローラ31を設定時間に亘って空回転させてから(S6のYes)、制御部300はステップS7の処理へ進む。
制御部300は、ヒータ35の温度を最大温度に設定することで、ヒータ35の温度を上昇させて加熱フィルム33の温度を急激に上昇させる(S7)。そして、制御部300は、ヒータ35の温度を最大温度に設定してから所定時間内(例えば2秒)に、次の画像形成ジョブの入力があるか否かを判定する(S8)。所定時間内に次の画像形成ジョブの入力がある場合(S8のYes)、制御部300は所定時間経過後にヒータ35の温度を最大温度から画像形成ジョブ中の温度に戻し(S9)、本クリーニング処理を終了する。それまで、次の画像形成ジョブの開始を待機する。他方、所定時間内に次の画像形成ジョブの入力がなかった場合(S8のNo)、制御部300はヒータ35をオフして待機状態に移行する(S10)。
このように、本実施形態では、クリーニングモードにおいて、ヒータ35の温度を最大温度に設定し急激に上昇させる前に、ヒータ35の温度を下げたうえで、定着ローラ32及び加熱フィルム33並びに加圧ローラ31を設定時間に亘って空回転させる。これにより、加熱フィルム33と定着ローラ32の温度関係が「加熱フィルム33の温度>定着ローラ32の温度」となってから、ヒータ35の温度が最大温度に上昇されることになる。
具体的に図11を用いて説明する。図11は、加熱ニップ部N2(中央部)での加熱フィルム33の温度と定着ローラ32の温度を示すグラフである。ここでは、定着ローラ32の温度として、120枚の記録材Sを連続して通紙した画像形成ジョブを行った場合を示している。なお、図11において、時刻t1〜t2と時刻t3〜t4は記録材Sが定着ニップ部N1を通過している通紙中を示し、時刻t2〜t3は記録材Sが定着ニップ部N1を通過していない紙間を示す。
図11に示すように、時刻t4以降の画像形成ジョブの後回転において時刻t5のときに、ヒータ35の温度を急激に最大温度の250℃へと上昇させることにより、加熱フィルム33の温度を130℃へ急上昇させている。本実施形態の場合も、120枚の記録材Sが連続して通紙される画像形成ジョブの後回転の開始時点(時刻t4)では、図16に示した比較例と同様に、定着ローラ32の温度が加熱フィルム33の温度よりも高くなっている(120℃以上)。ここで、比較例のように、ヒータ35の温度を上げて加熱フィルム33の温度を上昇させても、既に述べたように「加熱フィルム33の温度≦定着ローラ32の温度」となり、加熱フィルム33から定着ローラ32へトナーが移動されない。
図16に示した比較例に対し、本実施形態の場合は、上記のように、ヒータ35の温度を下げることで加熱フィルム33の温度を低下させる。そして、ヒータ35の温度を下げてから設定時間(時刻t4〜t5)に亘って定着ローラ32及び加熱フィルム33(並びに加圧ローラ31)を空回転させてから、ヒータ35の温度を急激に上昇させる。設定時間に亘って定着ローラ32及び加熱フィルム33(並びに加圧ローラ31)を空回転させることで、加熱フィルム33や加圧ローラ31が定着ローラ32から熱を奪い放熱する。そうすると、「加熱フィルム33の温度≦定着ローラ32の温度」の状態から「加熱フィルム33の温度>定着ローラ32の温度」の状態になるまで、定着ローラ32の温度と加熱フィルム33の温度が共に低下する。そして、その後に加熱フィルム33の温度が急上昇することになる。それ故、図11に示すように、ヒータ35の温度を上げた時刻t5以降は、「加熱フィルム33の温度>定着ローラ32の温度」の状態が維持されることから、加熱フィルム33から定着ローラ32さらには加圧ローラ31へとトナーが移動し得る。こうして、加熱フィルム33にトナーが蓄積され難くなる。そして、次の画像形成ジョブにおける1枚目の記録材Sにユーザが視認できない程度にトナーが移転される。
以上のように、本実施形態では画像形成ジョブの後回転時に、ヒータ35の温度を急激に上昇させる前に、ヒータ35の温度を下げて加熱フィルム33の温度を低下させる。それから、設定時間に亘って定着ローラ32及び加熱フィルム33並びに加圧ローラ31を空回転させる。こうしたヒータ35の温度制御と空回転時間の調整を行うことで、「加熱フィルム33の温度>定着ローラ32の温度」の状態でヒータ35の温度を急激に上昇させることができ、またその状態が維持される。即ち、画像形成ジョブの終了時には、加熱フィルム33にトナーが蓄積しやすい「加熱フィルム33の温度≦定着ローラ32の温度」の状態であっても、「加熱フィルム33の温度>定着ローラ32の温度」の状態へと移行される。また、その際に加熱フィルム33と定着ローラ32の温度差をより大きくできる。こうして、定着ローラ32や加圧ローラ31を介して記録材Sへトナーを転移させることが可能な温度条件を確保できるので、もってトナーを記録材Sに転移させて加熱フィルム33をクリーニングすることが簡易な構成で実現できる。
[他の実施形態]
ところで、本実施形態の画像形成装置100では、上述したようにRGB画像データをYMCK画像データに変換している。その場合、YMCK画像データを用い、例えば写真やイラストなどの画像では濃度階調性を重視して画像処理したり、あるいは文字やテキストなどの画像では細かい部分のシャープネス性を重視して画像処理することが可能である(ハーフトーン処理と呼ぶ)。このハーフトーン処理が行われた場合には、ハーフトーン処理の種類(後述の誤差拡散、高線数スクリーン、低線数スクリーン)によって、加熱フィルム33へのトナーの付着量が変わり得る。以下、説明する。
ハーフトーン処理について、図12を用いて説明する。制御部300(図3参照)では、RGB画像データを色変換テーブル212にてYMCK画像データに変換し、YMCK画像データをハーフトーン処理する(ハーフトーン処理部213と呼ぶ)。制御部300(詳しくはハーフトーン処理部213)は誤差拡散処理部214と多値スクリーン部215とを有し、ハーフトーン処理(ディザ処理とも呼ぶ)として印刷条件に応じて誤差拡散処理もしくは多値スクリーン処理を実行する。本実施形態の場合、ハーフトーン処理部213は誤差拡散、高線数スクリーン、低線数スクリーンの3種類の画像処理を行い得る。そして、制御部300は、ハーフトーン処理された後のYMCK画像データに基づいて画像形成を行う。
図13に、ハーフトーン処理の種類ごとに、隣接する4つの単位面積の領域におけるドット印字パターンを示す。図13に示すように、誤差拡散、高線数スクリーン、低線数スクリーンでは、単位面積当たりのドット印字パターンにおけるドット面積が異なる。低線数スクリーンは濃度安定性を向上させるため、隣接するドット面積を大きくして安定して転写できるように画像処理を行うものである。写真などのグラフィックスやイメージ画像に適しており、飛散しやすい面積の小さいドットよりもトナー同士の保持力と記録材Sとの付着力が増すため、例えば1回の画像形成ジョブで複数枚の同一の写真を印刷した場合などに、色味の違いが発生しにくくできる。高線数スクリーンは隣接するドット面積が低線数スクリーンに比べ小さい分、文字や細線などのテキスト画像に適しており、細かいエッジ部や文字の画質を向上し得る。高線数スクリーンは、小線数スクリーンよりもドット面積が小さい(ドット数は多くなる)。誤差拡散は低線数スクリーン、高線数スクリーンと元画像データの画像パターンが干渉して異常画像が生じやすい場合、例えばコピー印刷時などに、異常画像が生じるのを抑制するための画像処理である。即ち、低線数スクリーンや高線数スクリーンなどの場合には、原稿が持つ周期や画像パターンに影響を受けて、スクリーンとの干渉によって異常画像が生じやすい。誤差拡散の場合には、これを抑制できる。誤差拡散は、さらに高線数スクリーンよりもドット面積が小さい。
加熱フィルム33に付着され得るトナーは、上記したハーフトーン処理の種類によってトナー付着量に差が生じ得る。このハーフトーン処理の影響による加熱フィルム33へのトナーの付着しやすさについて、図14を用いて説明する。図14は、YMCK画像データの濃度信号値の総和が40%固定で各ハーフトーン処理にて、120枚の記録材Sに連続通紙した場合における、通紙枚数と加熱フィルム33に付着しているトナーに起因する汚れ濃度との関係を示す。
図14から理解できるように、低線数スクリーンの場合には、85枚まで汚れが生じない(汚れ発生閾値「0.15」を下回っている)。高線数スクリーンの場合には、65枚まで汚れが生じない。他方、誤差拡散の場合には、51枚で汚れが生じ得る。即ち、誤差拡散よりも高線数スクリーンや低線数スクリーンなどのハーフトーン処理は加熱フィルム33に付着するトナー付着量が少なく、トナーの付着量は「誤差拡散>高線数スクリーン>低線数スクリーン」の関係になっている。これは、低線数スクリーンのようなドット面積が大きくドット数が少ないハーフトーン処理の場合には、トナー同士の接触面積が広いことに伴い未定着トナーと記録材Sとの接触面積も広く、トナー付着力が十分に確保でき、記録材Sから離れ難いからである。他方、誤差拡散のようなドット面積が小さくドット数が多いハーフトーン処理の場合には、トナー同士の接触面積が狭いことに伴い未定着トナーと記録材Sとの接触面積も狭くなり、トナー付着力が小さく、記録材Sから離れやすくなるからである。
上記のように、ハーフトーン処理の種類により加熱フィルム33に付着するトナー付着量は異なる。この点に鑑み、記録材Sの枚数カウントを行う場合には、ハーフトーン処理の種類によって枚数カウンタに加算するカウント値を変えるのが好ましい(つまり、重み付け)。以下、こうした処理を実行する枚数カウント処理について、図2及び図3を参照しながら図15を用いて説明する。図15に示す枚数カウント処理は、上述した「クリーニング処理」の枚数カウント(図5のS1参照)の代わりに実行すればよい。
図15に示すように、制御部300は、RGB画像データを変換したYMCK画像データに基づき、YMCK画像データの濃度信号値の総和が例えば20〜60%に該当する画像を有するか否かを判定する(S21)。YMCK画像データの濃度信号値の総和が例えば20〜60%に該当する画像を有していない場合(S21のNo)、制御部300は枚数カウンタのカウントを行わずに本枚数カウント処理を終了する。他方、YMCK画像データの濃度信号値の総和が例えば20〜60%に該当する画像を有する場合(S21のYes)、制御部300はハーフトーン処理の種類に応じた枚数カウントを実行する(S22〜S26)。本実施形態では、画像形成ジョブ中に1枚の記録材に形成されたトナー像の所定面積当たりのドット面積が第一面積である場合に、第一加算数を加算する。そして、所定面積当たりのドット面積が第一面積より小さい第二面積である場合に、前記第一加算数よりも大きい第二加算数を加算する。
具体的に、ハーフトーン処理として誤差拡散を行う場合(S22のYes)、制御部300は枚数カウンタに「+3」を加算する(S26)。ハーフトーン処理として高線数スクリーンを行う場合(S23のYes)、制御部300は枚数カウンタに「+2」を加算する(S25)。ハーフトーン処理として低線数スクリーンを行う場合あるいはハーフトーン処理を行わない場合(S23のNo)、制御部300は枚数カウンタに「+1」を加算する(S26)。
なお、1枚の記録材Sが複数のハーフトーン処理された画像を有する場合は、ドット印字パターンの数が多いものを採用してよい。例えば、1枚の記録材Sが誤差拡散の画像と高線数スクリーンの画像を有する場合、誤差拡散を採用して枚数カウンタに「+3」を加算すればよい。
以上のように、本実施形態ではクリーニング処理時にハーフトーン処理に応じて枚数カウンタのカウント値に重み付けするようにしたので、ハーフトーン処理に応じた加熱フィルム33のトナー付着量を予測することが可能となる。こうした場合、加熱フィルム33にトナーを付着させにくい画像を記録材Sに形成する画像形成ジョブが繰り返されたとしても、トナー付着量が少ないような場合には加熱フィルム33のクリーニングを行わない(図5のS4参照)。これにより、上述したように、トナーを記録材Sに転移させて加熱フィルム33をクリーニングすることが簡易な構成で実現できるという効果に加え、画像形成装置100のダウンタイムを抑制し得るという効果が得られる。また、加熱フィルム33をクリーニングするための空回転の増加によって、定着ローラ32及び加熱フィルム33並びに加圧ローラ31が摩耗するのを抑制し得る。
なお、上述した実施形態では、各色の感光ドラム1Y〜1Kから中間転写ベルト8に各色のトナー像を一次転写した後に、記録材Sに各色の複合トナー像を一括して二次転写する構成の画像形成装置を説明したが、これに限らない。例えば、感光ドラムとの間でニップ部が形成された搬送ベルトに搬送される記録材に対し、感光ドラムと搬送ベルトを挟んで対向配置された転写ローラへの電圧印加により、感光ドラム上のトナー像を直接転写する直接転写方式の画像形成装置であってもよい。また、単色のトナー像を形成可能な画像形成装置(例えば、モノクロ機など)であってもよい。
30…定着装置、31…加圧ローラ、32…定着ローラ、33…加熱フィルム、34…押圧部材(ヒータホルダ)、35…加熱部材(ヒータ)、100…画像形成装置、200…画像形成ユニット、300…制御手段(制御部)、N1…定着ニップ部、S…記録材

Claims (9)

  1. 記録材にトナー像を形成する画像形成ユニットと、記録材に形成されたトナー像を記録材に定着させる定着装置とを備えた画像形成装置であって、
    弾性層を有し、回転する定着ローラと、
    前記定着ローラに当接して前記定着ローラとの間で記録材にトナー像を定着させるための定着ニップ部を形成し、回転して前記定着ニップ部で記録材を挟持搬送する加圧ローラと、
    前記定着ローラよりも高い放熱性を有し、前記定着ローラに当接し回転する無端状の加熱フィルムと、
    前記加熱フィルムを加熱する加熱部材と、
    画像形成ジョブにおける最後の記録材が前記定着ニップ部を通過した後に、前記加熱部材の温度を画像形成ジョブ中の温度よりも下げ、前記定着ローラの温度が前記加熱フィルムの温度よりも低い状態で、所定時間に亘り前記加熱部材の温度を画像形成ジョブ中の温度よりも上げるクリーニングモードを実行可能な制御手段と、を備える、
    ことを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記制御手段は、前記クリーニングモード時、画像形成ジョブ中にトナー像を形成した記録材の枚数が閾値以上である場合に、前記加熱部材の温度を画像形成ジョブ中の温度よりも下げる、
    ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記制御手段は、前記クリーニングモード時、前記記録材の枚数が閾値未満である場合、前記加熱部材の温度を画像形成ジョブ中の温度よりも下げることなく、前記加熱部材の温度を画像形成ジョブ中の温度よりも上げる、
    ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
  4. 前記制御手段は、前記クリーニングモード時、前記記録材の枚数が第一枚数である場合に前記加熱部材の温度を第一温度に下げ、前記記録材の枚数が前記第一枚数よりも多い第二枚数である場合に前記加熱部材の温度を前記第一温度よりも低い第二温度に下げる、
    ことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
  5. 前記制御手段は、前記クリーニングモード時、前記加熱部材の温度を下げてから前記加熱部材の温度を上げるまでの時間を、前記記録材の枚数が第一枚数である場合に第一時間とし、前記記録材の枚数が前記第一枚数よりも多い第二枚数である場合に前記第一時間よりも長い第二時間とする、
    ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  6. 前記制御手段は、画像形成ジョブ中にトナー像を形成した記録材の枚数をカウント可能であり、画像形成ジョブ中に1枚の記録材に形成されたトナー像の平均濃度が所定範囲である場合に、前記記録材の枚数をカウントする、
    ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  7. 前記制御手段は、前記記録材の枚数をカウントする際に、画像形成ジョブ中に1枚の記録材に形成されたトナー像の所定面積当たりのドット面積が第一面積である場合に第一加算数を加算し、前記所定面積当たりのドット面積が第一面積より小さい第二面積である場合に前記第一加算数よりも大きい第二加算数を加算する、
    ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
  8. 前記制御手段は、前記クリーニングモード時に次の画像形成ジョブの開始を受け付けた場合、前記加熱部材の温度が画像形成ジョブ中の温度よりも上げられてから前記加熱部材の温度が画像形成ジョブ中の温度に下げられるまで、次の画像形成ジョブの開始を待機する、
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  9. 前記加熱フィルムを内周面側から前記定着ニップ部に向けて押圧する押圧部材を備え、
    前記加熱部材は、前記加熱フィルムの内周面に当接するように前記押圧部材に設けられている、
    ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
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