JP6885021B2 - オレンジ色ジルコニア焼結体及びその製造方法 - Google Patents

オレンジ色ジルコニア焼結体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明はオレンジ色を呈するジルコニア焼結体に関する。特に、装飾部材等の外装部材として適した強度を有し、なおかつ、鮮やかなオレンジ色を呈するジルコニア焼結体に関する。
装飾部材や電子機器材料の外装部品への使用のため、着色剤を含むジルコニア焼結体、いわゆる着色ジルコニア焼結体が求められている。これまで、着色ジルコニア焼結体として、オレンジ色系統の色調を呈するジルコニア焼結体が検討されている。
例えば、特許文献1には、酸化プラセオジウムや酸化エルビウムを着色剤とするオレンジ色ジルコニア焼結体が報告されている。
さらに、酸化プラセオジウム等は高価であるため、比較的安価な着色剤を用いたオレンジ色ジルコニア焼結体が検討されている。特許文献2及び3には、ガラス相を共存させることでオレンジ色を発現するジルコニア焼結体が開示されている。特許文献2では、3〜20重量%の酸化イットリウムや酸化セリウム等の安定剤、0.1〜5重量%の酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び酸化イットリウムを含むガラス相を形成する粉末、並びに、0.01〜10重量%の酸化銅を含むジルコニア粉末を焼成することで得られたオレンジ色ジルコニア焼結体が報告されている。特許文献3では、3〜20重量%の酸化イットリウム等の安定剤、0.1〜5重量%の酸化ケイ素等のガラス相を形成する粉末、及び1〜6重量%の酸化セリウムを含むジルコニア粉末を焼成することで得られたオレンジ色ジルコニア焼結体が報告されている。
酸化セリウムを4〜20mol%含有するジルコニア粉末を、還元性雰囲気中で熱処理した後、300℃/秒以上の冷却速度で冷却することで得られた橙色ジルコニア焼結体が開示されている(特許文献4)。
特開2011−020872号公報 特開平11−322418号公報 特開WO2014/177714号公報 特開平6−92638号公報
特許文献2及び3で開示されたオレンジ色ジルコニア焼結体に含まれるガラス相はジルコニアの粒界強度を低下させ破壊源となる。そのため、ガラス相を含む焼結体は壊れやすいものであった。また、特許文献4の橙色ジルコニア焼結体は熱処理条件及び冷却速度が色調に与える影響が強すぎるため、個体間のばらつきが大きかった。更には、その製造において300℃/秒以上の冷却速度を可能とする設備環境を必要とするため、製造コストが著しく高くなるものであった。
これらの課題に鑑み、本発明は三価セリウムの発色を利用したジルコニア焼結体であって、オレンジ色を呈するジルコニア焼結体を提供することを目的とする。
本発明者らは、酸化セリウムを着色剤としてオレンジ色を呈色するジルコニア焼結体について検討した。その結果、酸化セリウムを着色剤とするオレンジ色ジルコニア焼結体においては、アルミニウム化合物を共存させることでジルコニア焼結体が均一で鮮やかなオレンジ色を呈することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] CeO換算で0.3mol%以上4mol%未満のセリウム酸化物、2mol%以上6mol%未満のイットリア、2重量%以上20重量%以下のアルミニウム酸化物、及び残部がジルコニアであり、該セリウム酸化物が三価セリウムを含み、なおかつ、該ジルコニアの結晶構造が正方晶を含むことを特徴とするジルコニア焼結体。
[2] 前記アルミニウム酸化物がスピネル(MgAl)、ランタンアルミネート(LaAl1119)及び酸化アルミニウムからなる群の少なくとも1種である上記[1]に記載のジルコニア焼結体。
[3] ジルコニアの結晶粒子の平均結晶粒径が2μm以下である上記[1]又は[2]に記載のジルコニア焼結体。
[4] L表色系において、明度Lが35以上、色相aが30以上、及び、色相bに対する色相aの比が0.7≦a/b<0.9である上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のジルコニア焼結体。
[5] 2mol%以上6mol%未満のイットリア、CeO換算で0.3mol%以上4mol%未満のセリウム酸化物、及び2重量%以上20重量%以下のアルミニウム酸化物を含み、残部がジルコニアである成形体を還元雰囲気中で焼結する焼結工程、を有することを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のジルコニア焼結体の製造方法。
[6] 前記焼結工程が、成形体を常圧焼結して一次焼結体を得る一次焼結工程、及び、一次焼結体を熱間静水圧プレス処理する二次焼結工程からなる上記[5]に記載の製造方法。
[7] 上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のジルコニア焼結体を含む部材。
[8] 上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のジルコニア焼結体と、Ti、Pr、Nd、Eu、Tb、Ho、Er、Yb及びGdからなる群のいずれか1種以上の元素を含有するジルコニア焼結体とからなるジルコニア複合焼結体。
以下、本発明のジルコニア焼結体について説明する。
本発明のジルコニア焼結体(以下、「本発明の焼結体」ともいう。)は、イットリアを含有する。イットリウムはジルコニアを着色することなく安定化剤として機能する。イットリアの含有量は、2mol%以上6mol%未満であり、2mol%以上5mol%以下、更には2mol%以上4mol%以下であることが好ましい。イットリア含有量が2mol%未満では、製造時や水熱条件下で焼結体の破壊が生じやすくなる。一方、イットリア含有量が6mol%以上では、焼結体の強度が低下する。イットリア含有量は2.5mol%以上3.5mol%以下であってもよい。
本発明の焼結体は、ジルコニアを着色することなく安定化剤として機能する化合物、例えば、カルシア又はマグネシアの少なくともいずれかを含んでいてもよい。
本発明の焼結体は、セリウム酸化物を含有する。セリウムはジルコニアの安定化剤と機能し、なおかつ、ジルコニア中でセリウムが三価セリウム(Ce3+)となることでオレンジ系統の呈色を示す。本発明の焼結体のセリウム酸化物の含有量は、CeO換算で0.3mol%以上4mol%未満、更には0.5mol%以上3mol%以下、更には0.5mol%以上2.5mol%以下である。0.3mol%未満であると三価セリウムの呈色が弱すぎオレンジ系統の呈色が得られない。一方、セリウム酸化物が4mol%以上であると焼結体が黒味を帯びるため、鮮やかなオレンジ色の焼結体が得られなくなる。特に好ましいセリウム酸化物の含有量として0.6mol%以上1.6mol%以下、更には0.6mol%以上1.2mol%以下を挙げることができる。
セリウム酸化物の含有量(mol%)は、CeO/(ZrO+Y+CeO+Al)で求められる。
本発明の焼結体は三価セリウム(Ce3+)含む。三価セリウムが多いほど、ジルコニア焼結体はよりオレンジ色に近い色調となる。そのため、本発明の焼結体に含まれるセリウム酸化物は、三価セリウムを多く含むことが好ましく、セリウム酸化物中の全セリウムに対する三価セリウムのモル割合が50%以上、更には60%以上、また更には70%以上、また更には80%以上であることが好ましい。
本発明の焼結体を800℃以上の酸化雰囲気下で焼成することにより、以下の式で示す反応が生じ、酸化雰囲気の焼成により三価セリウムが酸化される。
1/2Ce+ 1/4O → CeO
従って、焼成前後の焼結体重量の増加分を、本発明の焼結体に含まれる三価セリウムの量とみなすことができる。そのため、本発明において、三価セリウムのモル割合は以下の式から求めることができる。
Ce3+(mol%) = [{(W−W)/W}×4]/MCe×100。
上記式においてWは本発明の焼結体の重量(g)、Wは酸化雰囲気下で焼成後の焼結体の重量(g)、Wは酸素の物質量(32.0g/mol)、及び、MCeは焼結体のセリウム含有量(mol)である。なお、Wを求める際の酸化雰囲気下での焼成の条件は、Wの重量増加が平衡に達する条件であればよい。好ましい焼成条件として、大気中、1050℃以上1400℃以下、1時間以上10時間以下の常圧焼結を挙げることができる。焼結体中のセリウム含有量は、例えばICP測定等の組成分析により求めればよい。なお、組成や重量その測定誤差に由来し、上式から求められる三価セリウムのモル割合が100%を超える場合がある。この場合、全てのセリウムが三価セリウムとなっているとみなせるため、三価セリウムのモル割合は100%とすればよい。
本発明の焼結体はアルミニウム酸化物を含有する。アルミニウム酸化物はジルコニアとは別の結晶粒子として存在する。本発明の焼結体において、ジルコニアの結晶粒子と、アルミニウム酸化物の結晶粒子とが共存することで、アルミニウム酸化物の結晶粒子が、ジルコニアの結晶粒子中の三価セリウムの発色を適度に反射することができる。アルミニウム酸化物の結晶粒子は焼結体中で凝集せず、さらには不規則に分散した状態で存在することが好ましい。アルミニウム酸化物の結晶粒子が不規則に分散することで、三価セリウムの呈色が複雑に反射される。これにより本発明の焼結体全体が均一で鮮やかなオレンジ色を呈する安定した色調となる。アルミニウム酸化物の結晶粒子は分散していることが好ましいため、本発明の焼結体において、アルミニウム酸化物の結晶粒子同士が粒界を形成していないこと、が挙げられる。
本発明の焼結体が含有するアルミニウム酸化物は、結晶粒径が0.05μm以上3.0μm以下、更には0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましい。アルミニウム酸化物の結晶粒子の形状は球状、略球状、多面体状及び不定形状からなる群の少なくとも1種であることを挙げることができ、三価セリウムの反射を均一にするため、球状又は略球状の少なくともいずれかであることが好ましい。
アルミニウム酸化物の含有量は、2重量%以上20重量%以下である。アルミニウム酸化物の含有量は、焼結体重量に対し、アルミニウム酸化物を酸化アルミニウム(Al)として換算した重量の割合として求めればよい。アルミニウム酸化物の含有量が2重量%未満であると、アルミニウム酸化物による光の散乱が起こりにくく、オレンジ色とは異なる赤色系の色調となる。一方、アルミニウム酸化物が20重量%を超えると、焼結体中のアルミニウム酸化物の結晶粒子が多くなりすぎる。これにより、過剰な光の反射が生じ、焼結体の色調が白くぼけた黄色系の色調となる。アルミニウム化合物の含有量が増えると、機械的強度が高くなる傾向があるため、好ましいアルミニウム酸化物の含有量として3重量%以上15重量%以下、更には5重量%以上15重量%以下、また更には5重量%以上10重量%以下が挙げられる。
アルミニウム酸化物はアルミニウムを含む酸化物であり、酸化アルミニウム(アルミナ:Al)と同様な色調を有するものであればよい。本発明の焼結体が含有するアルミニウム酸化物として、アルミニウムを含む複合酸化物又は酸化アルミニウム(Al)の少なくともいずれか、更にはスピネル(MgAl)、ランタンアルミネート(LaAl1119)及び酸化アルミニウムからなる群の少なくとも1種、また更には酸化アルミニウムが挙げられる。
本発明の焼結体は色調に影響を与えない程度の不純物を含んでいてもよい。しかしながら、本発明の焼結体は色調に影響に与える元素を含んでいないことが好ましく、銅酸化物、シリカ及びチタニアを含んでいないことが好ましく、本発明の焼結体は銅酸化物、シリカ及びチタニアの含有量が、それぞれ、焼結体重量に対して0.1重量%未満、更には0.05重量%以下、また更には銅酸化物、シリカ及びチタニアを含まないことが好ましい。組成分析による誤差を考慮すると、本発明の焼結体は、銅酸化物、シリカ及びチタニアの含有量が0.001重量%以下であることが好ましい。銅酸化物は三価セリウムの色調を大きく変えてしまうため、焼結体の色調がオレンジ色とは異なる色調となりやすい。シリカは焼結体中で粗大粒を形成しやすい。焼結体中に形成されたシリカの粗大粒は、目視で観察できる大きさの白色斑点となる。これにより、均一なオレンジ色の色調を有するジルコニア焼結体が得られなくなる。さらに、焼結体がシリカを含有するすることで、焼結体中に破壊源となるガラス相が生成しやすくなる。これにより焼結体の強度が低下しやすくなるため、本発明の焼結体はガラス相を含まないことが好ましい。さらに、シリカとアルカリ金属とが共存すると、ガラス相がより生成しやすくなるため、本発明の焼結体はリチウム、ナトリウム、カリウム。ルビジウム及びセシウムからなる群のアルカリ金属を含む酸化物、更にはリチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群のいずれか1種以上を含む酸化物、更にはリチウムを含む酸化物を含まないことが好ましい。測定誤差や不可避不純物に由来するアリカリ金属を考慮すると本発明の焼結体のアルカリ金属含有量は、焼結体重量に対して、酸化物換算で0.1重量%未満、更には0.05重量%以下であることが好ましい。
また、チタニアは還元雰囲気で焼結することで黒色が生じる。そのため、チタニアを含有すると黒味を帯びた色調となるため、鮮やかなオレンジ色を呈するジルコニア焼結体が得られない。なお、チタニアの黒色化を解消するために焼結体を再酸化することが知られている。しかしながら、本発明の焼結体においては、再酸化により、三価セリウムが酸化される。これにより、焼結体がオレンジ色とは異なる色調となる。
本発明の焼結体の結晶構造は正方晶を含み、結晶構造の主相が正方晶であることが好ましい。また、本発明の焼結体の結晶構造は、正方晶及び立方晶の混晶であってもよい。正方晶は光学的に異方性を有する結晶構造である。正方晶を含むことにより、光が反射されやすくなるため、焼結体の色調が透明感を有さず、明確なオレンジ色を呈する。さらに、結晶構造の主相が正方晶であることによって、本発明の焼結体が高い強度を有する。
本発明の焼結体の、ジルコニアの結晶粒子の平均結晶粒径(以下、単に「平均結晶粒径」ともいう。)は2μm以下、更には1μm以下であることが好ましい。ジルコニアの結晶粒子の平均結晶粒径が2μm以下であることで、装飾品等の部材として使用するのに十分な強度となる。
本発明において、ジルコニアの平均結晶粒径は、本発明の焼結体の走査型顕微鏡(以下、「SEM」とする。)観察図で観察される200個以上のジルコニアの結晶粒子の結晶径をインターセプト法で求め、これを平均することにより求めることができる。
本発明の焼結体は、ジルコニアの結晶粒子とアルミニウム酸化物の結晶粒子とからなるが、SEM観察図において両者を明確に区別することができる。図1は本発明の焼結体のSEM観察図である。図1中、(1)はジルコニアの結晶粒子であり、(2)はアルミニウム酸化物の結晶粒子である。SEM観察図において、アルミニウム酸化物の結晶粒子は濃色の結晶粒子として観察でき、ジルコニアの結晶粒子はアルミニウム酸化物の結晶粒子と比較すると、より薄色の結晶粒子として確認することができ、本発明の焼結体はジルコニア結晶粒子中にアルミニウム酸化物の結晶粒子が分散した結晶組織を有する。さらには、倍率10,000〜50,000倍のSEM観察像においてガラス相が観察されない。
本発明の焼結体は、オレンジ色ジルコニア焼結体であり、特に鮮やかなオレンジ色を呈する。鮮やかなオレンジ色の色調はL表色系において、明度Lが35以上、色相aが30以上、及び、色相bに対する色相aの比が0.7≦a/b<0.9であることが挙げられる。
明度L値が大きくなると色調は明るくなり、反対にL値が小さくなると色調は暗くなる。また、色相aは赤から緑の色調を示し、a値が大きいほど赤い色調が強くなり、値が小さいほど緑の色調が強くなる。一方、b値は黄色から青の色調を示し、b値が大きいほど黄色の色調が強くなり、b値が小さいほど青の色調が強くなる。また、a*/b*は0.7以上、0.9未満であることが好ましい。a*/b*がこの範囲であることで、黄色味や赤味を帯びていないオレンジの色調となる。本発明の焼結体は、上記の明度L、色相a又はa/bのいずれかを満たすものではなく、上記の明度L、色相a及びa/bを満たすことで、その呈色がオレンジに近い色調ではなく、オレンジ色の色調となる。
本発明の焼結体の好ましい色調として、35≦L≦70、30≦a≦60及び0.7≦a/b<0.9、更には40≦L≦70、35≦a≦60及び0.7≦a/b≦0.82、また更には45≦L≦70、40≦a≦60及び0.7≦a/b≦0.8であることが挙げられる。特に鮮明なオレンジ色の色調として、45≦L≦70、35≦a≦45及び0.7≦a/b≦0.77を挙げることができる。
本発明の焼結体は、焼結体表面の反射光により、鮮やかなオレンジ色の呈色を示す。したがって、反射光が強いほど、オレンジ色の呈色が鮮やかになる。本発明は、特に三価セリウムが吸収する波長の光以外の光に対する反射率が高いものほど鮮やかなオレンジ色になりやすい。そのため、本発明の焼結体は波長720nmの光に対する反射率が40%以上、更には50%以上、また更には60%以上であることが好ましい。焼結体に入射した光の散乱や減衰を考慮すると、本発明の焼結体は、波長720nmの光に対する反射率が40%以上75%以下、更には45%以上75%以下、また更には50%以上75%以下であることが挙げられる。
本発明において、色調及び反射率はJIS Z8722の方法に準じた方法により測定することができる。色調及び反射率は、正反射光を除去し、拡散反射光を測定するSCE方式で求めることで、より目視に近い状態で色調及び反射率を評価することができる。
本発明の焼結体は、二軸曲げ強度が700MPa以上、更には1000MPa以上、また更には1200MPa以上であることが好ましい。各種部材としての使用及び加工性の観点から、二軸曲げ強度は2500MPa以下であればよい。特に好ましい二軸曲げ強度として800MPa以上2500MPa以下、更には1000MPa以上2200MPa以下を挙げることができる。
本発明における二軸曲げ強度は、ISO/DIS 6872に準じた方法により測定することができる。二軸曲げ強度はISO/DIS 6872に準じ、なおかつ、試料厚みを1mmとして測定することが好ましい。
より審美性の高い焼結体とするため、本発明の焼結体は、本発明のジルコニア焼結体と組成が異なるジルコニア焼結体と、本発明のジルコニア焼結体とからなるジルコニア複合焼結体(以下、単に「複合焼結体」ともいう。)としてもよい。
複合焼結体は、本発明の焼結体と組成が異なるジルコニア焼結体(以下、「カラー焼結体」ともいう。)と、本発明の焼結体とが界面を有することが好ましい。複合焼結体は、本発明の焼結体とカラー焼結体とが焼結している、すなわち、本発明の焼結体の結晶粒子と、カラー焼結体の結晶粒子とが結合した結晶粒子構造を有する。これによって界面が形成される。色調の異なるジルコニア焼結体同士が界面を形成することで、該界面が亀裂やひずみなどの欠陥を有さない接合面となる。これにより、界面が破壊の起点とならなくなり、複合焼結体がジルコニア焼結体本来の強度が求められる部材としても使用することができる。
このように、複合焼結体は、本発明の焼結体とカラー焼結体とを結合材により接着したものや、嵌合などの物理的な方法で両者を組み合わせたものとは異なる。
本発明において、界面はSEMなどの電子顕微鏡観察により得られる電子像又は光学顕微鏡による観察から確認することができる。本発明の焼結体とカラー焼結体とは異なる色調を有する。光学顕微鏡観察において、色調の変化している部分をもって界面を確認することができる。また、本発明の焼結体とカラー焼結体は異なる着色成分を含有する。着色成分の相違により電子像が異なる色調を有するため、当該色調変化部分をもって界面を確認することができる。
複合焼結体は、倍率500倍以下のSEM観察により得られる二次電子像又は反射電子像のいずれかの電子像や、光学顕微鏡観察により観察できる、界面及びその近傍の空隙(以下、「隙間」ともいう。)を有さないことが好ましい。隙間がないことで界面を起点とする破壊が生じにくくなり、複合焼結体の機械的強度が高くなりやすい。
高級感を有するために、複合焼結体は、目視又は光学顕微鏡で観察できる本発明の焼結体と、カラー焼結体との色調が混合した色調を呈する部分(以下、「色滲み」ともいう。)を有さないことが好ましい。
複合焼結体は、本発明の焼結体とカラー焼結体のいずれか一方のジルコニア焼結体が、他方のジルコニア焼結体の表面に模様を形成していることが好ましい。模様は、本発明の焼結体とカラー焼結体との界面、本発明の焼結体及びカラー焼結体が同一の表面に露出することで形成される。複合焼結体は、従来と比べてより微細な模様を形成することができる。これより、更に意匠性が高くなるだけでなく、より広い用途で使用される部材となる複合焼結体を提供することができる。
本発明において、模様とは、本発明の焼結体又はカラー焼結体のいずれか一方のジルコニア焼結体の一部に形成された、他方のジルコニア焼結体による線図、図形又はこれらの組合せである。具体的な線図として実線、破線、波線などの線形、数字や文字などを例示することができ、図形として丸状、多面体形状などの幾何学的形状などを例示することができる。
複合焼結体は、本発明の焼結体とカラー焼結体との界面、本発明の焼結体及びカラー焼結体が同一表面に露出して模様を形成していればよく、本発明の焼結体の表面にカラー焼結体が模様を形成していてもよく、一方、カラー焼結体の表面に本発明の焼結体が模様を形成してもよい。
複合焼結体は、本発明の焼結体とカラー焼結体を含むジルコニア焼結体であって、本発明の焼結体とカラー焼結体との凹凸部が積層して界面を形成するように焼結してなり、なおかつ、凹凸部が積層した部分の断面が同一表面に露出した構造を有することで、模様を有するジルコニア焼結体とすることができる。
さらに、本発明の焼結体とカラー焼結体との凹凸部を任意の形状及び大きさとすることで、任意の形状及び大きさの模様を表現することができる。
複合焼結体に含まれるカラー焼結体は、本発明の焼結体と異なる組成を有するジルコニア焼結体であればよく、本発明の焼結体と異なる色調を有するジルコニア焼結体であればよい。本発明の焼結体は三価セリウム、すなわち還元状態のセリウムを含有する。したがって、カラー焼結体は着色剤として還元状態における呈色の再現性が高い元素を含有することが好ましい。好ましいカラー焼結体として、Ti、Pr、Nd、Eu、Tb、Ho、Er、Yb及びGdからなる群のいずれか1種以上の元素(以下、「着色元素」ともいう。)を含有するジルコニア焼結体を挙げることができる。還元雰囲気に晒された場合、例えば、Tiは黒色、Prは緑色、Erはピンク色、及び、Euは白から薄黄色を呈する。特に好ましいカラー焼結体として、Ti又はEuの少なくとも1種の元素、更にはTiを含むジルコニア焼結体が挙げられる。
着色元素を含むカラー焼結体と本発明の焼結体とからなる複合焼結体は高級感を備えた審美性を有することに加え、これを製造する際の色調の再現性が高くなりやすい。したがって、より工業的な製造に適した複合焼結体とすることができる。
カラー焼結体が含有する着色元素は、酸化物換算で0重量%以上40重量%以下、更には0重量%以上10重量%以下、また更には0重量%以上5重量%以下、また更には0重量%超5重量%含有していればよい。
カラー焼結体は、ジルコニアを着色することなく安定化剤として機能する化合物、例えば、イットリア、カルシア及びマグネシアからなる群の少なくとも1種を含んでいてもよい。安定化剤の含有量は、2mol%以上6mol%未満、更には2mol%以上5mol%以下、また更には2mol%以上4mol%以下であることが好ましい。
特に好ましい複合焼結体として、本発明のジルコニア焼結体と、Ti、Pr、Nd、Eu、Tb、Ho、Er、Yb及びGdからなる群のいずれか1種以上の元素、更にはTi又はEuの少なくともいずれか、また更にはTiを含有するジルコニア焼結体とからなるジルコニア複合焼結体を挙げることができる。
次に、本発明の焼結体の製造方法について説明する。
本発明の焼結体は、2mol%以上6mol%未満のイットリア、CeO換算で0.3mol%以上4mol%未満のセリウム酸化物、及び、2重量%以上20重量%以下のアルミニウム酸化物を含み、残部がジルコニアである成形体(以下、「オレンジ色成形体」ともいう。)を還元雰囲気中で焼結する焼結工程、を有することを特徴とするジルコニア焼結体の製造方法、により製造することができる。
焼結工程に供するオレンジ色成形体は、2mol%以上6mol%未満のイットリア、CeO換算で0.3mol%以上4mol%未満のセリウム酸化物、及び2重量%以上20重量%以下のアルミニウム酸化物、残部がジルコニアである。より好ましいオレンジ色成形体の組成として、2mol%以上4mol%以下のイットリア、CeO換算で0.5mol%以上1.5mol%以下のセリウム酸化物、及び5重量%以上15重量%以下のアルミニウム酸化物、残部がジルコニアであることが挙げられる。
オレンジ色成形体の形状は任意であり、円板状、柱状、板状、球状及び略球状からなる群の少なくとも1種が例示できる。
オレンジ色成形体は、イットリア、セリウム酸化物、アルミニウム酸化物及びジルコニアを上記の組成で含む原料粉末を任意の方法で混合及び成形して得られる。
ジルコニアの原料粉末は、易焼結性の粉末であることが好ましい。好ましいジルコニアの原料粉末の物性として、2mol%以上6mol%未満のイットリアを含有すること、BET比表面積が5m/g以上20m/g以下、更には5m/g以上17m/g以下であること、及び、純度が99.6%以上、更には99.8%以上であることが挙げられる。
セリウム酸化物の原料粉末は平均粒子径が3μm以下、更には2μm以下、また更には1μm以下であることが好ましい。特に好ましいセリウム酸化物の原料粉末として、酸化セリウム粉末、更には純度99%以上の酸化セリウム粉末、また更には純度99.9%以上の酸化セリウム粉末が挙げられる。
アルミニウム酸化物の原料粉末は、形状が略球状又は板状の少なくともいずれかの粉末であることが好ましい。アルミニウム酸化物の原料粉末がこの様な形状をすることで、オレンジ色成形体中で凝集せず、なおかつ、不規則に分散しやすくなる。アルミニウム酸化物の原料粉末が略球状である場合、平均粒子径は1μm以下、更には0.5μm以下であることが好ましい。また、アルミニウム酸化物の原料粉末が板状の場合、厚みは0.5μm以下、更には0.3μm以下であり、なおかつ、長径に対する厚み(厚み/長径)が0.1以下、更には0.06以下であることが好ましい。板状のアルミニウム酸化物の原料粉末として、長径が1μm以上3μm以下、及び、厚みが0.05μm以上0.2μm以下の酸化アルミニウム粉末が例示できる。
焼結工程に供するオレンジ色成形体は、これらの原料粉末を混合して得られた混合粉末を成形して得られたものであることが好ましい。
原料粉末の混合方法は、イットリア、ジルコニア、酸化セリウム、及びアルミニウム酸化物が十分に混合され、混合粉末が得られる方法であればよい。好ましい混合方法として、湿式混合、更にはボールミル又は攪拌ミルの少なくともいずれかによる混合方法が挙げられ、水又はアルコールのいずれか、イットリア、ジルコニア、酸化セリウム、及びアルミニウム酸化物とを混合したスラリーを粉砕混合する方法がより好ましい。
混合粉末の成形方法は、所望の形状に成形できる方法であればよく、金型プレス、冷間静水圧プレス、スリップキャスティング及びインジェクションモールディングからなる群の少なくとも1種を挙げることができ、金型プレス又は冷間静水圧プレスの少なくともいずれかであことが好ましい。
焼結工程では、オレンジ色成形体を還元雰囲気中で焼結する。還元雰囲気中での焼結により、オレンジ色成形体に含まれるセリウム酸化物が還元されると共に、ジルコニア焼結体の緻密化が進行する。これにより、鮮やかなオレンジ色を呈するジルコニア焼結体が得られる。
焼結は、セリウム酸化物中に三価セリウムの生成が進行し、なおかつ、焼結体の相対密度が99%以上となる条件で行えばよい。このような焼結として、還元雰囲気中、1400℃以上1600℃以下で焼結することが挙げられる。
なお、焼結体の相対密度は、実測密度及び理論密度から以下に式により求めることができる。
相対密度(%)= 実測密度(g/cm)/理論密度(g/cm)×100
実測密度はアルキメデス法により測定すればよい。また、焼結体の理論密度は、以下の式から求めることができる。
理論密度(g/cm)= ρZr×VZr+ρAl×VAl+ρCe×VCe
上記式において、ρZrはジルコニアの理論密度(g/cm)、ρAlは酸化アルミニウムの理論密度(3.98g/cm)、及び、ρCeは酸化セリウムの理論密度(7.22g/cm)である。VZr、VAl及びVCeは、それぞれ焼結体中のジルコニア、酸化アルミニウム、及び酸化セリウムの体積割合であり、以下の式により求めることができる。
Zr=(WZr/ρZr)/(WZr/ρZr+WAl/ρAl+WCe/ρCe
Al=(WAl/ρAl)/(WZr/ρZr+WAl/ρAl+WCe/ρCe
Ce=(WZr/ρCe)/(WZr/ρZr+WAl/ρAl+WCe/ρCe
なお、Wzrはジルコニアの重量、WAlは酸化アルミニウムの重量、WCeは酸化セリウムの重量であり、ジルコニアの理論密度(ρZr)は、以下の値を用いればよい。
2mol%Y含有ジルコニア :6.11g/cm
3mol%Y含有ジルコニア :6.09g/cm
4mol%Y含有ジルコニア :6.08g/cm
焼結工程は、オレンジ色成形体を常圧焼結して一次焼結体を得る一次焼結工程、及び当該一次焼結を還元雰囲気で焼結する二次焼結工程を有する焼結工程(以下、「二段焼結法」ともいう。)であることが好ましい。三価セリウムの生成に先立って緻密化させることで、生産性高く焼結体を製造することができる。
好ましい焼結工程である二段焼結法として、オレンジ色成形体を常圧焼結して一次焼結体を得る一次焼結工程、及び、一次焼結体を熱間静水圧プレス(以下、「HIP」ともいう。)処理する二次焼結工程を有する焼結工程(以下、「加圧焼結法」ともいう。)、を挙げることができる。加圧焼結法では、一次焼結工程で焼結体を適度に緻密化し、二次焼結工程で残留気孔の排除と三価セリウムの生成を行うことが好ましい。残留気孔の排除及び三価セリウムの生成を同時に進行させることにより安定したオレンジの色調及び高い焼結体強度が得られる。
加圧焼結法における一次焼結工程では、オレンジ色成形体を常圧焼結する。これにより、HIP処理に供する一次焼結体を得る。なお、常圧焼結とは焼結時に成形体に対して外的な力を加えず単に加熱することにより焼結する方法である。
一次焼結工程は、得られる一次焼結体の相対密度は95%以上であり、かつ、ジルコニアの結晶粒子の平均結晶粒径が2μm以下となる条件でオレンジ色成形体を焼結することが好ましい。このような一次焼結体とすることで、次いで行うHIP処理により緻密化が促進しやすくなる。
一次焼結体は、相対密度が95%以上、更には97%以上、また更には99%以上であることが好ましい。なお、一次焼結体の相対密度は100%以下であればよい。相対密度が計算上100%であった場合であっても、焼結体中には微細な気孔が残留している。二次焼結工程により、このような残留気孔を排除することができる。また、一次焼結体のジルコニアの結晶粒子の平均結晶粒径は2μm以下、更には1.5μm以下、また更には1μm以下であること好ましい。
HIP処理に供するための一次焼結体を得るための一次焼結工程の条件として以下の条件を挙げることができる。
一次焼結温度:1250℃以上1600℃以下、更には1300℃以上1500℃以下
焼結雰囲気 :酸化雰囲気、還元雰囲気及び真空雰囲気からなる群の少なくとも1種、更には酸化雰囲気、また更には大気雰囲気
さらに、一次焼結は、1000℃から一次焼結温度までの昇温速度を250℃/h以下、更には200℃/h以下とすることが好ましい。1000℃以上の昇温速度を250℃/h以下とすることで、オレンジ色成形体内部の気孔が排除されやすくなる。より好ましい昇温速度として100℃/h以下、更には50℃/h以下を挙げることができる。
さらに、一次焼結温度で保持した後、一次焼結温度から1000℃までの降温速度は50℃/h以上、更には100℃/h以上であることが好ましい。1000℃までの降温速度がこの範囲であることで、一次焼結工程で余熱による焼結の進行が生じにくくなる。これにより結晶粒径が均一になりやすくなる。
加圧焼結法における二次焼結工程では、一次焼結体の残留気孔の排除と、三価セリウムの生成を同時に行う条件でHIP処理すればよい。
HIP処理の温度は1300℃以上1475℃未満、更には1350℃以上1450℃以下、また更には1350℃以上1400℃以下であることが好ましい。1350℃以上とすることでは三価セリウムが生成しやすくなる。一方、HIP処理温度が1475℃未満とすることで、ジルコニアの還元による黒色化が生じにくくなる。加圧焼結法において、HIP処理の温度は一次焼結温度以下であってもよく、HIP処理の温度が一次焼結の温度よりも低くてもよい。
HIP処理の圧力は50MPa以上200MPa以下、更には100MPa以上175MPa以下であることが好ましい。圧力を50MPa以上とすることで一次焼結体から粒界気孔の除去が促進される。一方、200MPa以下であればジルコニア焼結体の緻密化が進む。
HIP処理は還元雰囲気で行う。これにより三価セリウムが生成する。還元雰囲気は還元性ガス、例えば、水素又は一酸化炭素の少なくともいずれかを含有する圧力媒体とすればよい。また、圧力媒体として非酸化性ガスを用い、なおかつ、一次焼結体を還元性の容器や加熱源に配置して、還元雰囲気としてもよい。非酸化性ガスとしてアルゴン又は窒素の少なくともいずれかを挙げることができる。また、還元性の容器や加熱源として、黒鉛製容器やカーボンヒーターなど、カーボン製部材を挙げることができる。
HIP処理を還元雰囲気で行うために、一次焼結体は還元性の容器に配することが好ましい。還元性の容器として、例えば、カーボン製の通気孔を有する蓋付容器を挙げることができる。通気性のある容器を用いることにより、一次焼結体近傍に存在する微量な酸素が取り除かれ、三価セリウムの生成が促進される。
本発明の製造方法においては、焼結工程後に酸化雰囲気下で焼結する工程、を有さないことが好ましい。本発明の製造方法では、オレンジ色成形体を還元雰囲気で焼結することにより、三価セリウムを生成させる。HIP処理などの還元雰囲気下でのジルコニア焼結体の焼結では、ジルコニアの還元により、焼結体が黒味を帯びる場合がある。通常、還元雰囲気での焼結後に酸化雰囲気で焼結すること、いわゆるアニール処理をすることにより、当該黒味は取り除かれる。しかしながら、本発明の製造方法で得られる焼結体は三価セリウムにより鮮やかなオレンジ色を呈する。アニール処理した場合、ジルコニアと併せて三価セリウムが酸化される。これにより、三価セリウムが四価セリウムとなり、アニール処理後の焼結体が鮮やかなオレンジ色を呈色することができなくなる。
カラー焼結体と本発明の焼結体とからなる複合焼結体を製造する場合、焼結工程に供する成形体を、オレンジ色成形体と異なる組成を有する成形体(以下、「カラー成形体」ともいう。)とオレンジ色成形体とからなる複合成形体とすればよい。
好ましいカラー成形体として、Ti、Pr、Nd、Eu、Tb、Ho、Er、Yb及びGdからなる群のいずれか1種以上の元素(着色元素)を含有するジルコニア成形体を挙げることができる。特に好ましいカラー成形体として、Ti又はEuの少なくともいずれか、更にはTiを含むジルコニア成形体が挙げられる。より具体的なカラー成形体として、
着色元素を含むカラー成形体とオレンジ色成形体とからなる複合成形体を同時に焼結することで、同質な素材感を有し、高級感を有する審美性を有する複合焼結体を得ることができる。
カラー成形体が含有する着色元素は、酸化物換算で0重量%以上40重量%以下、更には0重量%以上10重量%以下、また更には0重量%以上5重量%以下、また更には0重量%超5重量%含有していればよい。
カラー成形体は、ジルコニアを着色することなく安定化剤として機能する化合物、例えば、イットリア、カルシア及びマグネシアからなる群の少なくとも1種を含んでいてもよい。安定化剤の含有量は、2mol%以上6mol%未満、更には2mol%以上5mol%以下、また更には2mol%以上4mol%以下であることが好ましい。
複合成形体は、オレンジ色成形体とカラー成形体とが接触するように成形された成形体であればよく、オレンジ色成形体又はカラー成形体のいずれか一方の成形体を得、当該成形体上に他方の成形体を成形することで得られた成形体であることが好ましい。
複合成形体として、例えば、カラー成形体を得、当該成形体上にオレンジ色成形体の原料を充填し、両者を同時に成形することで得られた複合成形体、オレンジ色成形体を得、当該成形体上にカラー成形体の原料を充填し、両者を同時に成形することで得られた複合成形体、いずれか一方の成形体の原料を成形型に充填し、その上に他方の成形体の原料を充填し、これを同時に成形して得られた複合成形体を挙げることができる。
複合成形体の形状は任意であり、円板状、柱状、板状、球状及び略球状からなる群の少なくとも1種が例示できる。また、オレンジ色成形体又はカラー成形体の一方の成形体に凹凸を設け、当該凹凸上に他方の成形体を成形することで、文字や線図等の模様を形成させてもよい。
焼結工程後に得られた複合焼結体は、任意の方法により加工して、本発明の焼結体を含む部材又は本発明の複合焼結体を含む部材とすればよい。
本発明により、本発明は三価セリウムの発色を利用したジルコニア焼結体であって、オレンジ色を呈するジルコニア焼結体を提供することができる。そのため、本発明の焼結体はオレンジ色を必要とする様々な形状、及び大きさの部材に使用することができる。
実施例6のジルコニア焼結体の走査型電子顕微鏡観察図(図中スケールは1μm) 実施例6のジルコニア焼結体の粉末X線回折図 ジルコニア焼結体の反射率(a:実施例6、b:比較例1)
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明の焼結体及び粉末の特性測定方法を以下に説明する。
(実測密度の測定)
焼結体の実測密度はアルキメデス法により測定した。
(相対密度の測定)
焼結体の相対密度は、実測密度及び理論密度から以下に式により求めた。
相対密度(%)= 実測密度(g/cm)/理論密度(g/cm)×100
また、焼結体の理論密度は、以下の式から求めた。
理論密度(g/cm)= ρZr×VZr+ρAl×VAl+ρCe×VCe
上記式において、ρZrはジルコニアの理論密度(g/cm)、ρAlは酸化アルミニウムの理論密度(3.98g/cm)、及び、ρCeは酸化セリウムの理論密度(7.22g/cm)である。
また、VZr、VAl及びVCeは、それぞれ焼結体中のジルコニア、酸化アルミニウム、及び酸化セリウムの体積割合であり、以下の式により求めた。
Zr=(WZr/ρZr)/(WZr/ρZr+WAl/ρAl+WCe/ρCe
Al=(WAl/ρAl)/(WZr/ρZr+WAl/ρAl+WCe/ρCe
Ce=(WZr/ρCe)/(WZr/ρZr+WAl/ρAl+WCe/ρCe
なお、Wzrはジルコニアの重量、WAlは酸化アルミニウムの重量、WCeは酸化セリウムの重量であり、ジルコニアの理論密度は、以下の値を用いた。
2mol%Y含有ジルコニア :6.11g/cm
3mol%Y含有ジルコニア :6.09g/cm
4mol%Y含有ジルコニア :6.08g/cm
(色調及び反射率の測定)
JIS Z8722に準じた方法により、焼結体試料の色調を測定した。測定には、一般的な色差計(装置名:Spectrophotometer SD 3000、日本電色工業社製)を用いた。測定条件は以下のとおりとし、正反射光を除去し、拡散反射光を測定するSCE方式で色調及び反射率を求めた。
光源 : D65光源
視野角 : 10°
焼結体試料には両面鏡面研磨し、表面粗さRa=0.02μm以下とした厚み1mmの焼結体としたものを用いた。
さらに、試料厚み1mmの焼結体試料の、波長720nmの光に対する反射率をもって反射率の値とした。
(二軸曲げ強度)
ISO/DIS6872に準拠した方法により、焼結体試料の二軸曲げ強度を測定した。測定には、直径16mm、厚さ1mmの円柱形状の焼結体試料を用いた。測定は各焼結体試料について3回行い、その平均値をもって二軸曲げ強度とした。
(平均結晶粒径)
焼結体試料のジルコニアの結晶粒子の平均結晶粒径はインターセプト法により測定した。鏡面研磨した後の焼結体試料を熱エッチングし、その表面を走査型顕微鏡にて20,000倍で観察した。得られたSEM観察図からインターセプト法(k=1.78)によりジルコニアの結晶粒子の平均粒子径を測定した。測定したジルコニアの結晶粒子の粒子数は200個以上とした。
実施例1
(原料粉末の調製)
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末(東ソー製、TZ−3YS;比表面積7m/g、純度99.8%以上)48.5g、平均粒子径0.8μmの酸化セリウム粉末(純度99.9%)0.5g、及び、平均粒子径0.3μmの略球状の酸化アルミニウム粉末(純度99.9%以上)1.0gとエタノールを混合してスラリーとした。得られたスラリーを直径10mmのジルコニア製ボールを用いたボールミルにより24時間混合粉砕し、混合粉末を得た。混合粉末を大気中、110℃で乾燥した後、篩分けにより凝集粒径500μm以下の粉末を得、これを原料粉末とした。
(一次焼結)
原料粉末を圧力50MPaで金型プレスすることにより成形した後、圧力200MPaの冷間静水圧プレスで処理することで、直径20mm、厚さ3mmの円柱状の成形体を得た。得られた成形体は、昇温速度を100℃/h、大気中、焼結温度1450℃で2時間焼結することで一次焼結した後、降温速度を200℃/hとして一次焼結体を得た。得られた一次焼結体の相対密度は99.1%であった。
(HIP処理)
一次焼結体を、カーボン製蓋付きルツボに配置した後、これを1400℃、150MPa、及び保持時間1時間でHIP処理することでジルコニア焼結体を得た。圧力媒体には純度99.9%のアルゴンガスを用いた。HIP装置はカーボンヒーター及びカーボン断熱材を備えた装置を用いた。本実施例のジルコニア焼結体はオレンジ色を呈していた。得られたジルコニア焼結体の評価結果を表1及び2に示す。本実施例のオレンジ色焼結体の三価セリウムのモル割合は95%であった。
実施例2
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末48.0g、酸化セリウム粉末0.5g、及び、酸化アルミニウム粉末1.5gを用いて混合粉末を得たこと、及び一次焼成温度を1400℃とした以外は実施例1と同様な方法でジルコニア焼結体を得た。一次焼結体の相対密度は98.2%であった。ジルコニア焼結体の評価結果を表1及び2に示す。本実施例のオレンジ色焼結体の三価セリウムのモル割合は98%であった。
実施例3
一次焼結の焼結温度を1450℃としたこと以外は実施例2と同様な方法でジルコニア焼結体を得た。一次焼結体の相対密度は98.8%であった。ジルコニア焼結体の評価結果を表1及び2に示す。本実施例のオレンジ色焼結体の三価セリウムのモル割合は100%であった。
実施例4
一次焼結の焼結温度を1500℃としたこと以外は実施例2と同様な方法でジルコニア焼結体を得た。一次焼結体の相対密度は99.2%であった。ジルコニア焼結体の評価結果を表1及び2に示す。本実施例のオレンジ色焼結体の三価セリウムのモル割合は100%であった。
実施例5
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末47.0g、酸化セリウム粉末0.5g、及び、酸化アルミニウム粉末2.5gを用いて混合粉末を得たこと以外は実施例1と同様な方法でジルコニア焼結体を得た。一次焼結体の相対密度は98.7%であった。ジルコニア焼結体の評価結果を表1及び2に示す。本実施例のオレンジ色焼結体の三価セリウムのモル割合は90%であった。
実施例6
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末44.5g、酸化セリウム粉末0.5g、及び、酸化アルミニウム粉末5.0gを用いて混合粉末を得たこと以外は実施例1と同様な方法でジルコニア焼結体を得た。一次焼結体の相対密度は98.2%であった。ジルコニア焼結体の評価結果を表1及び2に示す。本実施例のオレンジ色焼結体の三価セリウムのモル割合は100%であった。
本実施例のジルコニア焼結体のSEM観察図を図1に示す。本実施例のジルコニア焼結体の微細組織において、アルミナの結晶粒子はいずれの結晶粒径も1μm以下の0.2μm以上0.8μm以下であり、その形状は略球状であった。また、アルミナの結晶粒子同士による粒界形成がないことが確認できた。さらに、ジルコニアの平均結晶粒径は0.64μmであることが確認できた。
本実施例のジルコニア焼結体のXRDパターンを図3に示す。当該XRDパターンより、本実施例のジルコニア焼結体の結晶構造は正方晶を主相とし、なおかつ、立方晶と正方晶の混晶であることが確認できた。
さらに、本実施例のジルコニア焼結体の反射率を図4に示す。反射率は、波長650nmにおいて64.5%、波長700nmにおいて70.7%、及び、波長720nmにおいて71.0%であり、高い反射率を示すことが確認できた。また、波長520nmの反射率は6.4%、波長550nmにおいて14.7%であり、三価セリウムによる強い光の吸収が確認できた。
実施例7
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末49.3g、酸化セリウム粉末0.25g、及び、酸化アルミニウム粉末0.5gを用いて混合粉末を得たこと以外は実施例1と同様な方法で一次焼結体、及び、本比較例のジルコニア焼結体を得た。一次焼結体の相対密度は99.7%であった。ジルコニア焼結体の評価結果を表1及び2に示す。
Figure 0006885021
いずれの一次焼結体の組成も原料粉末の組成と同一であり、相対密度は98%以上であった。さらに、一次焼結体はいずれも黄色を呈していた。当該色調は、四価セリウムの吸収に基づく色調である。
Figure 0006885021
得られたジルコニア焼結体は、いずれも鮮やかなオレンジ色を呈色していた。これより、いずれのジルコニア焼結体も三価セリウムを含んでいることが確認できた。いずれのジルコニア焼結体も、結晶構造は主に正方晶であり、正方晶と立方晶との混相であった。HIP処理前後の重量減少量から計算したセリアの還元率(全セリウム中の3価セリウム量)は90%以上であった。
比較例1
4mol%イットリア含有ジルコニア粉末49.5g、酸化セリウム粉末0.68gを用いて混合粉末を得たこと以外は実施例1と同様な方法で一次焼結体、及び、本比較例のジルコニア焼結体を得た。ジルコニア焼結体の評価結果を表3及び4に示す。
比較例2
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末49.0g、酸化セリウム粉末0.5g、及び、酸化アルミニウム粉末0.5gを用いて混合粉末を得たこと以外は比較例1と同様な方法で原料粉末、一次焼結体及びジルコニア焼結体を得た。ジルコニア焼結体の評価結果を表3及び4に示す。
Figure 0006885021
Figure 0006885021
比較例1で得られた焼結体の色調は赤茶色系の色調を呈し、比較例2で得られた焼結体の色調は鮮やかな赤色を呈しており、いずれもオレンジ色とは異なる色調であった。
比較例3
酸化アルミニウム粉末の代わりにシリカ粉末を0.5g使用したこと以外は実施例1と同様な方法で原料粉末、一次焼結体及びジルコニア焼結体を得た。得られた一次焼結体の相対密度は99.0%であった。ジルコニア焼結体の評価結果を表5及び6に示す。得られたジルコニア焼結体は、オレンジ色の色調を呈しているものの、目視で確認できる白色斑点が点在したものであった。さらに、本比較例ジルコニア焼結体は、本発明の焼結体と比べ、二軸曲げ強度が低いものであった。
Figure 0006885021
Figure 0006885021
実施例8
以下に示す方法で、オレンジ色ジルコニア焼結体と黒色ジルコニア焼結体とからなる複合焼結体及びこれよりなる部材を作製した。
(オレンジ色ジルコニア原料粉末)
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末(東ソー製、TZ−3YS;比表面積7m/g)44.5g、平均粒子径0.8μmの酸化セリウム粉末0.5g、平均粒子径0.3μmの略球状の酸化アルミニウム粉末5.0g及びエタノールを混合してスラリーとした。得られたスラリーを直径10mmのジルコニア製ボールを用いたボールミルにより24時間混合粉砕し、混合粉末を得た。混合粉末を大気中、110℃で乾燥した後、篩分けにより凝集粒径500μm以下の粉末を得、これをオレンジ色ジルコニア原料粉末とした。
(黒色ジルコニア原料粉末)
3mol%イットリア含有ジルコニア粉末(東ソー製、TZ−3YS)48.4g、高純度酸化チタン(昭和電工製)1.5g、平均粒子径0.3μmの略球状の酸化アルミニウム粉末(純度99.9%以上)0.13g及びエタノールを混合してスラリーとしたこと以外は、オレンジ色ジルコニア原料粉末と同様な方法で凝集粒径500μm以下の粉末を得、これを黒色ジルコニア原料粉末とした。
(成形体の作製)
黒色ジルコニア原料粉末を室温で一軸プレス成形した。一軸プレス成形は、一方に縦15mm×横15mm、幅3mmの十字型の凸部を有する直径約20mmの円柱状の金型でプレスすることで行った。これにより、一方の表面に十字型の凹部模様を有する直径20mmの円板状の一次成形体を得た。得られた一次成形体上にオレンジ色ジルコニア原料粉末を充填し、一次成形体及びオレンジ色ジルコニア原料粉末を同時に一軸プレス成形した。一軸プレス後の成形体を冷間静水圧プレス(CIP)処理することで二次成形体を得た。CIP処理の圧力は200MPaとし、CIP処理による成形温度は室温以下とした。
(焼成及びHIP処理)
二次成形体を、大気中、昇温速度100℃/h、焼成温度1500℃及び焼結時間2時間で焼成することで一次焼結体を得た。
得られた一次焼結体をカーボン製容器に配置した後、純度99.9%のアルゴンガスの雰囲気下で、HIP温度1400℃、HIP圧力150MPa、及び保持時間1時間でHIP処理することにより、HIP処理体を得た。当該HIP処理体を本実施例の複合焼結体とした。本実施例の複合焼結体におけるオレンジ色ジルコニア焼結体の組成及び色調を表7に示し、黒色ジルコニア焼結体の組成及び色調を表8に示した。
(部材加工)
オレンジ色ジルコニア焼結体からなる十字模様が表面に確認できるまで、本実施例の複合焼結体の黒色ジルコニア焼結体側を研削及び研磨した。その後、オレンジ色ジルコニア焼結体側を研削及び研磨して、複合焼結体の厚みを調整し、縦12mm×横12mm、幅3mmの十字模様を有する直径16mm×厚み2mmの複合焼結体からなる部材とした。複合焼結体中のオレンジ色ジルコニア焼結体と黒色ジルコニア焼結体との界面には隙間がなく、目視での色滲みは観察されなかった。
Figure 0006885021
Figure 0006885021
実施例9
以下に示す方法で、オレンジ色ジルコニア焼結体と黒色ジルコニア焼結体とからなる複合焼結体及びこれよりなる部材を作製した。
(オレンジ色ジルコニア原料粉末)
実施例8のオレンジ色ジルコニア原料粉末と同様な組成となるように、3mol%イットリア含有ジルコニア粉末(東ソー製、TZ−3YS;比表面積7m/g)、平均粒子径0.8μmの酸化セリウム粉末、平均粒子径0.3μmの略球状の酸化アルミニウム粉末及びエタノールを混合、混合粉砕、乾燥した後、篩分けにより凝集粒径500μm以下の粉末を得た。このジルコニア粉末の含有量が48容積%となるように、アクリルバインダーとジルコニア粉末とを混合し、射出成形用オレンジ色ジルコニア原料とした。
(黒色ジルコニア原料粉末)
実施例8の黒色ジルコニア原料粉末と同様な組成となるように、3mol%イットリア含有ジルコニア粉末(東ソー製、TZ−3YS)、高純度酸化チタン(昭和電工製)、平均粒子径0.3μmの略球状の酸化アルミニウム粉末及びエタノールを混合してスラリーとしたこと以外は、オレンジ色ジルコニア原料粉末と同様な方法で射出成形用黒色ジルコニア原料を得た。
(射出成形)
得られた原料を使用し、表面が黒色ジルコニア焼結体であり、該表面にオレンジ色ジルコニア焼結体からなる数字模様を有するベゼルリングを作製した。
射出成型用オレンジ色ジルコニア原料を圧力100MPaで射出成形して、表面にローマ数字の1から12の形状の凸部を有する輪形状のオレンジ色ジルコニアからなる一次成形体を得た。
得られた一次成形体上に、射出成型用黒色ジルコニア原料を射出成形により圧力100MPaで二次成形して、オレンジ色ジルコニアからなる一次成形体の表面を黒色ジルコニア成形体で被覆した二次成形体を得た。
得られた二次成形体を脱脂処理し、脱脂体を得た。脱脂条件は、大気中、昇温速度2.5℃/h、脱脂温度450℃、及び、脱脂時間4時間とした。
次に、得られた脱脂体を、大気中、昇温速度100℃/h、焼結温度1450℃、焼結時間2時間で焼成し、一次焼結体とした。
得られた一次焼結体をHIP処理してHIP処理体を得た。HIP処理条件は、温度1400℃、圧力150MPa、保持時間1時間とした。なお、圧力媒体には純度99.9%のアルゴンガスを用い、一次焼結体はカーボン製容器に設置した。
得られたHIP処理体をマシニングセンタで加工し、オレンジ色ジルコニアから成る数字模様と黒色ジルコニアジルコニアとを同一表面に露出させ、これを研磨した。これにより、オレンジ色の数字模様を有する黒色のベゼルリングを得た。得られたベゼルリングは色滲みや隙間を有さず、審美性の高い部材であった。
本発明のジルコニア焼結体は、高密度でなおかつオレンジ色で、厚みによらず安定した色相を呈する審美性に優れた焼結体であり、傷のつかない高級感のある宝飾品、装飾部材等の部材、例えば、時計部品、携帯用電子機器の外装部品等の様々な部材へ利用することができる。
(1)・・・ジルコニアの結晶粒子
(2)・・・アルミナの結晶粒子

Claims (8)

  1. CeO換算で0.3mol%以上4mol%未満のセリウム酸化物、2mol%以上6mol%未満のイットリア、2重量%以上20重量%以下のアルミニウム酸化物、及び残部がジルコニアであり、該セリウム酸化物中の全セリウムに対する三価セリウムのモル割合が50%以上であり、なおかつ、該ジルコニアの結晶構造が正方晶を含むことを特徴とするジルコニア焼結体。
  2. 前記アルミニウム酸化物がスピネル(MgAl)、ランタンアルミネート(LaAl1119)及び酸化アルミニウムからなる群の少なくとも1種である請求項1に記載のジルコニア焼結体。
  3. ジルコニアの結晶粒子の平均結晶粒径が2μm以下である請求項1又は2に記載のジルコニア焼結体。
  4. 表色系において、明度Lが35以上、色相aが30以上、及び、色相bに対する色相aの比が0.7≦a/b<0.9である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体。
  5. 2mol%以上6mol%未満のイットリア、CeO換算で0.3mol%以上4mol%未満のセリウム酸化物、及び2重量%以上20重量%以下のアルミニウム酸化物を含み、残部がジルコニアである成形体を還元雰囲気中で焼結する焼結工程、を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体の製造方法。
  6. 前記焼結工程が、成形体を常圧焼結して一次焼結体を得る一次焼結工程、及び、一次焼結体を熱間静水圧プレス処理する二次焼結工程からなる請求項5に記載の製造方法。
  7. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体を含む部材。
  8. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のジルコニア焼結体と、Ti、Pr、Nd、Eu、Tb、Ho、Er、Yb及びGdからなる群のいずれか1種以上の元素を含有するジルコニア焼結体とからなるジルコニア複合焼結体。
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