JP6884601B2 - アルミニウム用熱間圧延油、アルミニウム用熱間圧延クーラント及びアルミニウム圧延板の製造方法 - Google Patents

アルミニウム用熱間圧延油、アルミニウム用熱間圧延クーラント及びアルミニウム圧延板の製造方法 Download PDF

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本発明は、アルミニウム用熱間圧延油、アルミニウム用熱間圧延クーラント及びアルミニウム圧延板の製造方法に関する。
アルミニウム材(アルミニウム及びアルミニウム合金を含む。以下同じ。)の熱間圧延においては、圧延ロールとアルミニウム材との潤滑性の確保や、圧延ロール及びアルミニウム材の冷却等を目的として、アルミニウム用熱間圧延クーラントが使用されている。この種のクーラントは、通常、アルミニウム用熱間圧延油が水中に分散された、水中油滴型のエマルションである。
熱間圧延油には、基油としての精製鉱油、水中に油滴を形成するための乳化剤、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦を低減するための油性剤及び基油等の酸化を抑制するための一次酸化防止剤や二次酸化防止剤等が含まれている。油性剤としては、脂肪酸と多価アルコールとの合成エステルや、天然油脂等が用いられている(例えば、特許文献1)。合成エステルとしては、流通量が多く、安価なオレイン酸などの不飽和脂肪酸のエステルが多用されている。また、天然油脂も、合成エステルと同様の理由により、不飽和脂肪酸を主な構成成分とするものが多用されている。
特開平8−170090号公報
しかし、従来のクーラントを用いて熱間圧延を行うと、基油や乳化剤、油性剤等が徐々に酸化され、ギ酸等の低級脂肪酸の発生を招く。クーラントは、通常、熱間圧延時に減少した分を補充しつつ、複数回に亘って再生利用される。そのため、熱間圧延を繰り返し行うと、クーラント中に低級脂肪酸が蓄積され、圧延設備の鋼材が腐食する、あるいは、エマルションの不安定化により水相と油相とが分離する等の問題が生じるおそれがある。
従来の熱間圧延油には、上述したように、このような酸化を抑制するための一次酸化防止剤や二次酸化防止剤が添加されていることがある。しかし、熱間圧延油中に一次酸化防止剤や二次酸化防止剤を添加した場合であっても、基油や油性剤等の酸化を抑制し、低級脂肪酸の発生量を低減することは難しいのが現状である。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、長期間に亘って酸化を抑制することができるアルミニウム用熱間圧延油、この熱間圧延油を含むアルミニウム用熱間圧延クーラント及びこのクーラントを用いて行うアルミニウム圧延板の製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、多価アルコールと脂肪酸との合成エステルと、フェノール系酸化防止剤及び芳香族アミン系酸化防止剤からなる群より選ばれる1種または2種以上の一次酸化防止剤と、硫黄を含む二次酸化防止剤とを含むアルミニウム用熱間圧延油であって、
上記合成エステルの含有量は1〜30質量%であり、
上記一次酸化防止剤の含有量の合計は0.01〜3.0質量%であり、
上記二次酸化防止剤の含有量は、硫黄として1.0〜3.0質量%であり、
上記多価アルコールは、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールから選ばれる1種または2種以上であり、
上記合成エステル中の全ての脂肪酸に由来する構成単位のうち炭素数6〜24の飽和脂肪酸に由来する構成単位の比率が60mol%以上である、アルミニウム用熱間圧延油にある。
本発明の他の態様は、上記の態様のアルミニウム用熱間圧延油が水中に分散されたアルミニウム用熱間圧延クーラントであって、
1〜10体積%の上記アルミニウム用熱間圧延油を含有しており、
上記アルミニウム用熱間圧延油の油滴は、1〜7μmの体積平均粒径を有している、アルミニウム用熱間圧延クーラントにある。
本発明の更に他の態様は、上記の態様のアルミニウム用熱間圧延クーラントを用いてアルミニウム材の熱間圧延を行う、アルミニウム圧延板の製造方法にある。
上記アルミニウム用熱間圧延油(以下、単に「熱間圧延油」という。)は、上記特定の多価アルコールと、脂肪酸とのエステルである上記合成エステルを含んでいる。また、上記合成エステル中の、全ての脂肪酸に由来する構成単位のうち炭素数6〜24の飽和脂肪酸に由来する構成単位の比率が60mol%以上である。このように、上記特定の飽和脂肪酸に由来する構成単位の比率を60mol%以上とすることにより、低級脂肪酸の発生量を格段に低減し、ひいては上記熱間圧延油の酸化を長期間に亘って抑制することができる。これは、低級脂肪酸の発生にラジカル連鎖反応が関与しており、上記特定の飽和脂肪酸に由来する構成単位の比率を高めることにより、ラジカル生成及びラジカル連鎖反応の進行を抑制することができるためと考えられる。
即ち、合成エステル中に不飽和脂肪酸に由来する構成単位が含まれる場合、圧延時の熱等により、その二重結合が解離してアルキルラジカル(R・)が発生することがある。アルキルラジカルは、空気中の酸素と反応してペルオキシラジカル(ROO・)を生成し、更には、合成エステル等の熱間圧延油の成分から水素を引き抜いてヒドロペルオキシド(ROOH)を生成する。このヒドロペルオキシドは、アルコキシラジカル(RO・)とヒドロキシラジカル(・OH)とに容易に解離する。
そして、これらの反応により生じたラジカルは、熱間圧延油の成分を消費しつつ連鎖的に新たなラジカルを生成する。その結果、熱間圧延油の成分の分解が加速度的に進行し、低級脂肪酸の発生量が増大すると考えられる。
これに対し、上記熱間圧延油においては、上記特定の飽和脂肪酸の比率を上記特定の範囲とすることにより、上述の連鎖反応の起点となる合成エステル中の二重結合の数を十分に低減することができる。それ故、上述の連鎖反応の発生を抑制することができ、ひいては低級脂肪酸の発生量を格段に低減することができると考えられる。
以上のように、上記特定の合成エステルを用いることにより、長期間に亘って上記熱間圧延油の酸化を抑制することができる。
上記アルミニウム用熱間圧延クーラント(以下、単に「クーラント」という。)は、上記熱間圧延油が水中に分散されたエマルションである。上記クーラント中の上記熱間圧延油の含有量及び上記熱間圧延油の油滴の体積平均粒径は、それぞれ、上記特定の範囲内にある。上記クーラントは、かかる構成を有することにより、アルミニウムの熱間圧延用として好適なものとなる。
上記熱間圧延油は、合成エステル以外に、通常、基油及び乳化剤を含有している。基油としては、例えば、ナフテン系やパラフィン系の精製鉱油を使用することができる。
乳化剤としては、例えば、脂肪酸のアミン石鹸、スルフォン酸ソーダ、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤等の、熱間圧延油用として公知の乳化剤を使用することができる。乳化剤の含有量が過度に少ない場合には、クーラントにおいて、上記熱間圧延油と水とが分離するおそれがある。その結果、熱間圧延時の潤滑性が低下し、熱間圧延後における圧延板の板面品質の低下を招くおそれがある。また、乳化剤の含有量が過度に多い場合には、乳化剤が酸化しやすくなる。また、場合によっては、クーラントが油中水滴型、即ち、熱間圧延油中に水が分散したエマルションとなり、潤滑性の低下を招くおそれもある。
これらの問題を回避する観点から、乳化剤の含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましい。
熱間圧延油中の合成エステルの含有量は、1〜30質量%である。合成エステルの含有量を1質量%以上とすることにより、熱間圧延時の潤滑性を適度に高めることができる。その結果、熱間圧延後における圧延板の板面品質の低下を容易に回避することができる。
一方、合成エステルは比較的高価であるため、含有量が多くなると、熱間圧延油のコストの増大を招く。また、合成エステルの含有量が過度に多くなると、熱間圧延時の潤滑性が過度に高くなり、かえって圧延ロールへのアルミニウム材の噛み込み不良等の問題の発生を招くおそれがある。合成エステルの含有量を30質量%以下とすることにより、これらの問題を容易に回避することができる。
合成エステルは、単一の化合物であってもよいが、通常は、脂肪酸に由来する構成単位の構造や、エステル化された水酸基の数が異なる2種以上の化合物の混合物である。合成エステルは、多価アルコールの全ての水酸基がエステル化されたフルエステルであってもよく、多価アルコールの一部の水酸基がエステル化された部分エステルであってもよい。熱間圧延時の潤滑性の観点からは、合成エステル中のフルエステルの比率を高くすることが好ましい。
多価アルコールとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールからなる群より選ばれる1種または2種以上を採用することができる。これらの多価アルコールは、その分子構造中に熱安定性の低い3級C−H(炭素−水素)結合を有しない。そのため、熱間圧延中に、上記多価アルコールに由来する構成単位が熱分解すること等を抑制することができる。
脂肪酸としては、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物を採用することができる。これらの化合物における炭化水素鎖の構造は、直鎖構造、分岐鎖構造または環状構造のいずれであってもよい。
上記熱間圧延油においては、合成エステル中の全ての脂肪酸に由来する構成単位のうち炭素数6〜24の飽和脂肪酸に由来する構成単位の比率が60mol%以上である。炭素数6未満の飽和脂肪酸に由来する構成単位の比率が多くなると、熱間圧延時の潤滑性が低下し、圧延板の板面品質の悪化を招くおそれがある。
また、炭素数24を超える飽和脂肪酸は、比較的高価である。そのため、このような飽和脂肪酸に由来する構成単位の比率が多くなると、合成エステルのコストの増大を招く。不飽和脂肪酸に由来する構成単位の比率が多くなると、上述したように、低級脂肪酸の発生量の増大を招く。
従って、炭素数6〜24の飽和脂肪酸に由来する構成単位の比率を上記特定の範囲とすることにより、潤滑性の低下やコストの増大を回避しつつ、低級脂肪酸の発生量を格段に低減することができる。同様の観点からは、炭素数6〜24の飽和脂肪酸に由来する構成単位の比率を70mol%以上にすることが好ましく、80mol%以上にすることがより好ましく、90mol%以上にすることがさらに好ましい。
また、上記熱間圧延油は、耐酸化性に悪影響を及ぼさない範囲で、油性剤としての脂肪酸や天然油脂を含んでいてもよい。
上記熱間圧延油は、更に、フェノール系酸化防止剤及び芳香族アミン系酸化防止剤からなる群より選ばれる1種または2種以上の一次酸化防止剤を含有しており、該一次酸化防止剤の含有量の合計が0.01〜3.0質量%である。一次酸化防止剤は、上述したラジカル連鎖反応において、アルキルラジカル(R・)やペルオキシラジカル(ROO・)に水素を供与し、自らは安定なラジカルとなることにより、連鎖反応を抑制する作用を有すると考えられる。
一次酸化防止剤の含有量を0.01質量%以上とすることにより、熱間圧延油の酸化をより長期間に亘って抑制することができる。一方、一次酸化防止剤の含有量が過度に多くなると、酸化を抑制する効果の向上が見込めなくなる上、熱間圧延油のコストの増大を招く。従って、一次酸化防止剤の含有量の合計を0.01〜3.0質量%とすることにより、コストの増大を抑制しつつ酸化を抑制する効果をより高めることができる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチルパラクレゾール、4,4’メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’メチレンビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)等を使用することができる。また、芳香族アミン系酸化防止剤としては、例えば、P,P’−ジオクチルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェノチアジン等を使用することができる。
上記熱間圧延油は、更に、硫黄を含む二次酸化防止剤を含有しており、該二次酸化防止剤の含有量は、硫黄として1.0〜3.0質量%である。即ち、上記熱間圧延油の硫黄分は1.0〜3.0質量%であることが好ましい。二次酸化防止剤は、上述したラジカル連鎖反応において、ヒドロペルオキシド(ROOH)をより安定なヒドロキシド(ROH)に分解してアルコキシラジカル(RO・)やヒドロキシラジカル(・OH)の発生を抑制することにより連鎖反応を抑制する作用を有すると考えられる。
二次酸化防止剤の含有量を硫黄として1.0質量%以上とすることにより、熱間圧延油の酸化をより長期間に亘って抑制することができる。一方、二次酸化防止剤の含有量が過度に多くなると、酸化を抑制する効果の向上が見込めなくなる上、熱間圧延油のコストの増大を招く。二次酸化防止剤の含有量を硫黄として1.0〜3.0質量%とすることにより、コストの増大を抑制しつつ酸化を抑制する効果をより高めることができる。
二次酸化防止剤としては、例えば、チオウレア、チアゾール、スルフェンアミド、チウラム、ジチオカルバミン酸塩、キサントゲン酸塩、メルカプタン、スルフィド等の化合物を使用することができる。また、基油としての精製鉱油に硫黄含有成分を含む鉱油を使用する、あるいは、硫黄含有成分を含む鉱油と硫黄含有成分を含まない鉱油とを併用する等の方法により、鉱油中の当該硫黄含有成分を二次酸化防止剤とすることもできる。
上述した一次酸化防止剤及び二次酸化防止剤は、それぞれ単独で熱間圧延油に添加してもよいが、一次酸化防止剤及び二次酸化防止剤の両方を熱間圧延油に添加することがより好ましい。一次酸化防止剤と二次酸化防止剤とを併用することにより、酸化を抑制する効果を相乗的に高めることができ、一次酸化防止剤または二次酸化防止剤を単独で添加した場合に比べて長期間に亘って熱間圧延油の酸化を抑制することができる。
上記クーラントにおける上記熱間圧延油の含有量は、1〜10体積%である。これにより、熱間圧延時の潤滑性を適正な範囲に保つことができる。熱間圧延油の含有量が1体積%未満の場合には、潤滑性が低下し、圧延板の表面品質の悪化を招くおそれがある。一方、熱間圧延油の含有量が多くなると、クーラントのコストの増大を招く。更に、熱間圧延油の含有量が過度に多い場合には、潤滑性が過度に高くなり、かえって圧延ロールへのアルミニウム材の噛み込み不良等の問題の発生を招くおそれがある。これらの問題を回避する観点から、熱間圧延油の含有量は10体積%以下とする。
体積基準の粒度分布に基づく上記クーラント中に存在する熱間圧延油の油滴のメジアン径は、1〜7μmである。これにより、熱間圧延時の潤滑性を適度に高めるとともに、エマルションを安定化させることができる。油滴のメジアン径が1μm未満の場合には、熱間圧延中に、クーラント中の油滴と圧延ロールの表面との間に沸騰膜が生じやすくなる。そのため、圧延ロールへ供給される熱間圧延油の量が不足し、潤滑性の低下を招くおそれがある。一方、油滴のメジアン径が7μmを超える場合には、エマルション中の油滴が浮力によって浮上しやすくなり、場合によっては熱間圧延油と水とが分離するおそれがある。
上述した油滴のメジアン径は、レーザー回折/散乱法により得られた体積基準での粒度分布における累積中位径である。油滴のメジアン径の測定には、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製「LA−950」)を用いることができる。
上記熱間圧延油の実施例について説明する。なお、本発明に係る熱間圧延油は以下の態様に限定されるものではなく、その要旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
また、本例において使用した化合物の略称は以下の通りである。
・多価アルコール
NPG:ネオペンチルグリコール
TMP:トリメチロールプロパン
PE :ペンタエリスリトール
・脂肪酸
C6:ヘキサン酸
C8:オクタン酸
C10:デカン酸
C12:ドデカン酸
C14:テトラデカン酸
C16:ヘキサデカン酸
C18:オクタデカン酸
C20:エイコサン酸
C22:ドコサン酸
C24:テトラコサン酸
C16F1:cis−9−ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)
C18F1:cis−9−オクタデセン酸(オレイン酸)
C18F2:cis−9,cis−12−オクタデカジエン酸(リノール酸)
C18F3:cis−9,cis−12,cis−15−オクタデカトリエン酸(リノレン酸)
参考例1
本例は、合成エステル中の脂肪酸に由来する構成単位の比率及び合成エステルの含有量を種々変更した例である。本例においては、オレイン酸15質量%と、トリエタノールアミン3質量%と、ノニオン系乳化剤5質量%と、表1及び表2に示す含有量の合成エステルとを含み、残部が精製鉱油からなる熱間圧延油(試料1〜42)を作製した。
本例の合成エステルは、表1及び表2に示す多価アルコールと脂肪酸とのエステルである。また、合成エステル中の全ての脂肪酸に由来する構成単位の合計を100mol%としたときの、個々の脂肪酸に由来する構成単位の比率は表1及び表2に示した通りである。なお、精製鉱油中には、硫黄含有成分は含まれていない。
表1及び表2に示す試料を用いて、以下の手順により酸化を抑制する効果の評価を行った。まず、試料5gと、イオン交換水95gと、電解鉄粉1gとを混合し、イオン交換水中に試料の油滴が分散されたエマルションを調製した。密封容器内において、このエマルションを90℃で168時間加熱した後、容器内に生じたギ酸の発生量を測定した。各試料におけるギ酸の発生量(質量ppm)は、表1及び表2に示した通りであった。
Figure 0006884601
Figure 0006884601
表1と表2との比較から理解できるように、試料1〜28(表1参照)は、試料29〜42(表2参照)に比べてギ酸の発生量を格段に低減することができた。これらの結果から、多価アルコールと脂肪酸との合成エステルを含むアルミニウム用熱間圧延油において、上記特定の飽和脂肪酸の比率を60mol%以上とすることにより、低級脂肪酸の発生量を格段に低減し、ひいては熱間圧延油の酸化を長期間に亘って抑制できることが容易に理解できる。
実施例1
本例は、熱間圧延油中に一次酸化防止剤及び/または二次酸化防止剤を添加した例である。本例においては、オレイン酸15質量%と、トリエタノールアミン3質量%と、ノニオン系乳化剤5質量%と、合成エステル30質量%と、表3に示す一次酸化防止剤及び/または二次酸化防止剤とを含み、残部が精製鉱油からなる熱間圧延油(試料59〜86)を作製した。合成エステルとしては、参考例1の試料番号13に使用された合成エステルと同一のものを使用した。
また、試料83〜86については、精製鉱油として、硫黄含有成分を含まない鉱油と、硫黄含有成分を含む鉱油とを併用した。これらの試料においては、表3中の二次酸化防止剤の種類の欄に「硫黄含有鉱油」、含有量の欄に硫黄含有成分を含む鉱油の含有量を記載したが、これらの記載は便宜上のものである。実際には、この鉱油中の硫黄含有成分が二次酸化防止剤として機能する。
表3に示す試料を用いて、参考例1と同様の手順により酸化を抑制する効果の評価を行った。各試料におけるギ酸の発生量は、表3に示した通りであった。
Figure 0006884601
表1と表3との比較から理解できるように、上記特定の合成エステルを含み、更に一次酸化防止剤及び/または二次酸化防止剤を含む試料59〜86(表3参照)は、これらの酸化防止剤を含まない試料(表1参照)よりも更にギ酸の発生量を低減することができた。また、一次酸化防止剤や二次酸化防止剤の含有量が多い試料ほどギ酸の発生量を低減することができた。これらの結果から、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤等の一次酸化防止剤や、硫黄を含む二次酸化防止剤を熱間圧延油中に添加することにより、熱間圧延油の酸化をより長期間に亘って抑制できることが理解できる。
また、表3に示したように、二次酸化防止剤を添加した試料71〜84は、一次酸化防止剤を添加した試料59〜70よりもギ酸の発生量を低減することができた。これらの結果から、二次酸化防止剤は、一次酸化防止剤に比べて酸化を抑制する効果が高いことが理解できる。
更に、一次酸化防止剤と二次酸化防止剤との両方を添加した試料85〜86は、いずれか一方の酸化防止剤のみを添加した試料59〜84よりも更にギ酸の発生量を低減することができた。これらの結果から、一次酸化防止剤と二次酸化防止剤との両方を熱間圧延油中に添加することにより、酸化を抑制する効果を相乗的に高めることができ、一次酸化防止剤または二次酸化防止剤を単独で添加した場合に比べて長期間に亘って熱間圧延油の酸化を抑制できることが理解できる。
参考例2
本例は、上記熱間圧延油が水中に分散しているクーラントの例である。本例においては、参考例1の試料番号13に示した熱間圧延油と水とを混合し、熱間圧延油の含有量の異なる2種のクーラント(表4、試料番号87、88)を調製した。そして、これらのクーラントを用いて、参考例1と同様の手順により酸化を抑制する効果の評価を行った。各試料におけるギ酸の発生量は、表4に示した通りであった。
Figure 0006884601
表4に示したように、上記特定の合成エステルを含む熱間圧延油を水中に分散させたクーラントは、低級脂肪酸の発生量を格段に低減し、ひいては熱間圧延油の酸化を長期間に亘って抑制できることが容易に理解できる。
また、これらのクーラントを用いて熱間圧延を行ったところ、圧延ロールへのアルミニウム材の噛み込み不良等を回避するとともに、表面品質の良好な圧延板を得ることができた。

Claims (3)

  1. 多価アルコールと脂肪酸との合成エステルと、フェノール系酸化防止剤及び芳香族アミン系酸化防止剤からなる群より選ばれる1種または2種以上の一次酸化防止剤と、硫黄を含む二次酸化防止剤とを含むアルミニウム用熱間圧延油であって、
    上記合成エステルの含有量は1〜30質量%であり、
    上記一次酸化防止剤の含有量の合計は0.01〜3.0質量%であり、
    上記二次酸化防止剤の含有量は、硫黄として1.0〜3.0質量%であり、
    上記多価アルコールは、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールから選ばれる1種または2種以上であり、
    上記合成エステル中の全ての脂肪酸に由来する構成単位のうち炭素数6〜24の飽和脂肪酸に由来する構成単位の比率が60mol%以上である、アルミニウム用熱間圧延油。
  2. 請求項1に記載のアルミニウム用熱間圧延油が水中に分散されたアルミニウム用熱間圧延クーラントであって、
    1〜10体積%の上記アルミニウム用熱間圧延油を含有しており、
    体積基準の粒度分布に基づく上記アルミニウム用熱間圧延油の油滴のメジアン径は、1〜7μmである、アルミニウム用熱間圧延クーラント。
  3. 請求項2に記載のアルミニウム用熱間圧延クーラントを用いてアルミニウム材の熱間圧延を行う、アルミニウム圧延板の製造方法。
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