JP6884068B2 - 刺激硬化性ゲル - Google Patents
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Description
[1]架橋性基を有する水溶性ポリマーおよびガラス転移温度が25℃以下である重合体粒子(x)を含む刺激硬化性ゲル;
[2]架橋性基が、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルフェニル基およびこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]の刺激硬化性ゲル;
[3]架橋性基の導入率が、架橋性基を有する水溶性ポリマーの繰り返し単位に対して0.01〜10mol%である、上記[1]又は[2]の刺激硬化性ゲル;
[4]重合体粒子(x)の平均粒子径が0.01〜10μmである、上記[1]〜[3]のいずれかの刺激硬化性ゲル;
[5]刺激が活性エネルギー線、熱および混合から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]〜[4]のいずれかの刺激硬化性ゲル;
[6]重合体粒子(x)が被覆重合体粒子である、上記[1]〜[5]のいずれかの刺激硬化性ゲル;
に関する。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは「メタクリル」と「アクリル」との総称を意味する。
なお、本明細書において活性エネルギー線とは、光線、電磁波、粒子線およびこれらの組み合わせを意味する。光線としては遠紫外線、紫外線(UV)、近紫外線、可視光線、赤外線などが挙げられ、電磁波としてはX線、γ線などが挙げられ、粒子線としては電子線(EB)、プロトン線(α線)、中性子線などが挙げられる。硬化速度、照射装置の入手性、価格等の観点から、これらの活性エネルギー線の中でも紫外線、電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
架橋性基を有する水溶性ポリマーは、基材となる水溶性ポリマーの側鎖や末端に架橋性基を含有するものを指す。架橋性基を有する水溶性ポリマーの基材となる水溶性ポリマーとしては合成ポリマーおよび天然ポリマーを問わず利用できる。
合成ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略称することがある)、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド)、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。これらの合成ポリマーは水溶性を損なわない範囲で他のモノマーと共重合されていてもよい。他のモノマーの含有率は合成ポリマーを構成する全構造単位に対して50mol% 未満であることが好ましく、30mol%未満であることがより好ましい。
架橋性基としては水中でも高効率な反応が期待できるビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルフェニル基およびこれらの誘導体が挙げられる。本発明におけるビニル基には不飽和炭化水素だけでなく、アリル基、ビニルエステル基をも含む。また不飽和炭化水素のうち、反応性を考慮すると末端二重結合を有する不飽和炭化水素が好ましい。
重合度=([η]×103/8.29)(1/0.62)
重合体粒子(x)を構成する重合体は一種の単量体単位からなる重合体でもよく、複数種の単量体単位からなる共重合体でもよい。また、複数の重合体の混合物であってもよい。
前記単量体としては、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリル酸およびその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;酢酸ビニル、n−プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;エテン、プロペン、n−ブテン、イソブテン等のモノオレフィン;臭化ビニル、臭化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化エチレン;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸およびその塩;マレイン酸エステル、イタコン酸エステル等の不飽和ジカルボン酸エステル;トリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン;インデン、テトラヒドロインデン等のインデン類;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;チイラン、チエタン等の環状スルフィド;アジリジン、アゼチジン等の環状アミン;1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、スピロオルソエステル等の環状アセタール;2−オキソザリン、イミノエーテル等の環状イミノエーテル;β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン;などが挙げられる。
これらの中でも、生産性の観点から共役ジエン、芳香族ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体が好ましい。
本発明の重合体粒子(x)としては、水への分散性の観点から、表面が界面活性剤等により親水化された重合体粒子、および被覆重合体粒子が好ましく、被覆重合体粒子がより好ましい。被覆重合体粒子の具体例としては、後述するような重合体粒子(x)の少なくとも一部を被覆する重合体被膜(y)を有する被覆重合体粒子が挙げられる。
重合体粒子(x)は、重合体粒子(x)の少なくとも一部を被覆する重合体被膜(y)を有する被覆重合体粒子であることが好ましい。重合体被膜(y)を構成する重合体は一種の単量体単位からなる重合体でもよく、複数種の単量体単位からなる共重合体でもよい。また、複数の重合体の混合物であってもよい。
前記単量体としては、重合体粒子(x)において挙げたものが挙げられ、好ましいものも同様である。
また、重合体被膜(y)は重合体粒子(x)の全体を被覆するものであることが好ましい。
なお、本発明における平均粒子径とは、後述する動的光散乱測定装置で測定した平均分散粒子径を指す。
重合体粒子(x)の製造方法は特に限定されないが、例えば乳化重合、懸濁重合、樹脂の自己乳化や機械的乳化などにより製造することができる。
前記ラジカル重合開始剤の使用量は、水に対して0.0001〜1wt%が好ましく、0.001〜0.5wt%がより好ましい。
有機過酸化物と併用する遷移金属塩としては、例えば、硫酸鉄(II)、チオ硫酸鉄(II)、炭酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)、水酸化鉄(II)、酸化鉄(II)等の鉄化合物;硫酸銅(I)、チオ硫酸銅(I)、炭酸銅(I)、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、水酸化銅(I)、酸化銅(I)等の銅化合物、又はそれらの水和物などが使用できる。
これらのうち、生産性の観点から、クメンヒドロパーオキシドと鉄化合物との併用が好ましく、クメンヒドロパーオキシドと硫酸鉄(II)の水和物との併用がより好ましい。
かかる還元剤の使用量は、水に対して0.0001〜1wt%の範囲が好ましく、0.001〜0.5wt%の範囲がより好ましい。
本発明の刺激硬化性ゲルには、さらに共存モノマーが含まれていてもよい。共存モノマーとしては水溶性のラジカル重合性モノマーである2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニルピリジン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
本発明の刺激硬化性ゲルには、さらに架橋剤が含まれていてもよい。架橋剤としては特に水溶性を示すものが好ましく、ラジカル重合性の不飽和基を2個以上有するN,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
本発明の刺激硬化性ゲルには、水不溶性の無機微粒子が含まれていてもよい。水不溶性の無機微粒子としては、例えば沈降シリカ、ゲル状シリカ、気相法シリカ、コロイダルシリカ等のシリカ;アルミナ、ヒドロキシアパタイト、ジルコニア、酸化亜鉛、チタン酸バリウム等のセラミック;ゼオライト、タルク、モンモリロナイト等の鉱物;硫酸カルシウム等の石膏;酸化カルシウム、酸化鉄等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;ケイソウ土、土壌、粘土、砂、砂利などが挙げられる。これらの無機微粒子は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。水不溶性の無機微粒子を添加することで、ゲルに高い機械物性や磁性などの機能を付与することができる。また、無機微粒子を含む成形された刺激硬化性ゲルを乾燥、さらには焼結などを行うことにより成形された無機焼結体を得ることも可能である。
無機微粒子の刺激硬化性ゲルへの含有量は特に制限されないが、好ましくは99.5wt%以下、より好ましくは99wt%以下、さらに好ましくは95wt%以下である。さらに無機微粒子の添加効果を得るためには、無機微粒子の含有量は0.01wt%以上、より好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.1%以上である。
本発明の刺激硬化性ゲルは、前記架橋性基を有する水溶性ポリマーおよび前記重合体粒子(x)を溶媒中で混合することにより未硬化ゲル溶液を調製し、前記硬化方法により架橋性基を有する水溶性ポリマーを硬化し、ゲル化させることで得られる。
(単量体)
・アクリル酸n−ブチル:日本触媒(株)製
・トリメチロールプロパントリメタクリレート:商品名「ライトエステルTMP」、共栄社化学(株)製
・アリルメタクリレート:東京化成工業(株)製
・ジシクロペンタニルメタクリレート:商品名「ファンクリルFA−513M」、日立化成(株)製
・ブタジエン:JSR(株)製
・スチレン:キシダ化学(株)製
(水溶性ポリマー)
・ポリビニルアルコール:商品名「PVA117」、(株)クラレ製
・ポリビニルアルコール:商品名「PVA105」、(株)クラレ製
(架橋剤)
・N,N’−メチレンビスアクリルアミド:東京化成工業(株)製
(連鎖移動剤)
・ドデシルメルカプタン:アルドリッチジャパン(株)製
(乳化剤)
・商品名「エレミノールJS−20」三洋化成工業(株)製
・メルカプト基変性PVA:(株)クラレ製
・ラウリル硫酸ナトリウム:商品名「エマール2FG」、花王(株)製
(ラジカル重合開始剤)
・ペルオキソ二硫酸ナトリウム:和光純薬工業(株)製
・過酸化水素水溶液:和光純薬工業(株)製
・クメンヒドロパーオキシド:商品名「パークミルH−80」、日油(株)製
(遷移金属塩)
・硫酸鉄(II)(7水和物):和光純薬工業(株)製
(金属イオンキレート剤)
・エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム:関東化学(株)製
(増粘抑制剤)
・塩化ナトリウム:和光純薬工業(株)製
・酢酸ナトリウム:和光純薬工業(株)製
(老化防止剤)
・オリゴマー型ヒンダードフェノール:商品名「セロゾールK-840」、中京油脂(株)製
(溶媒)
・イオン交換水:電気伝導率0.08×10−4S/m以下のイオン交換水
重合体粒子(x)の乳化液(0.1mL)とイオン交換水(10mL)の混合液を動的光散乱測定装置(装置名:FPAR−1000、大塚電子(株)製)を用いて粒子の粒度分布を体積基準で測定し、メディアン径を平均分散粒子径として測定した。
下記合成例において得られた架橋性基を有する水溶性ポリマーの重合度は、JISK6726:1994年に準じて測定した。
下記合成例において得られた架橋性基を有する水溶性ポリマーの架橋性基の導入率は、プロトンNMRにより測定した。架橋性基のシグナルと水溶性ポリマーのシグナルの積分値の比から導入率が求められる。
(プロトンNMR測定条件)
装置:日本電子株式会社製 核磁気共鳴装置「JNM−ECX400」
温度:25℃
下記実施例および比較例により作製したゲルについて、一体感のあるゲルを形成したものは「○」、弱いが何とか一体感を示すゲルを形成したものは「△」、全体が硬化せずゲルとして取り扱えないものは「×」とした。
実施例1〜7および比較例1〜5で得られたゲルの引張強度を次の手順により測定した。特開2015−004059号公報に記載された方法に従ってJISK−6251−3規格のダンベルカッターを用いて、2mm厚で作成した各ゲルシートから試験片を切り出した。食紅を使用して試験片に標点を2つ付け、ノギスでその標点間距離を測定した。マイクロメータを使用して、試験片の幅と厚みを測定した。イーストン社製引張試験機に試験片をセットして、画像データを取得しながら破断応力および破断歪を測定した。なお、1%、100%の歪に対応するそれぞれの応力から簡易的に初期弾性率を求めた。結果を表2に示す。
(アクリル酸n−ブチル(BA)/ジシクロペンタニルメタクリレート(TCDMA)粒子)
(工程1)
乾燥させた2Lの耐圧重合槽にイオン交換水240g、「エレミノールJS−20」91.368g、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.08gを添加した後、30分間窒素ガスにてバブリングすることで脱酸素処理を行い、水溶液を得た。
該水溶液を60℃に昇温した後、重合体粒子(x)を形成する単量体混合物(アクリル酸n−ブチル:トリメチロールプロパントリメタクリレート:アリルメタクリレート=360:1.8:3.6(重量比))365.4gを脱酸素処理した後、10mL/分の速度で連続的に添加した。
総単量体転化率が99wt%を超えたことを確認した時点で、前記工程1で得られた乳化液に、重合体被膜(y)を形成するジシクロペンタニルメタクリレート45gを脱酸素処理した後、10mL/分の速度で連続的に添加した。
総単量体転化率が99wt%を超えたことを確認した時点で、前記工程2で得られた乳化液を100℃に昇温し、2時間撹拌することで残留重合開始剤の分解処理を行った。重合槽を25℃まで冷却して、被覆重合体粒子(BA/TCDMA粒子)の乳化液を取り出した。乳化液中の平均分散粒子径は47.4nm、固形分濃度は28wt%であった。重合体粒子(x)のガラス転移温度は−55℃であった。
(BA/メルカプト基変性PVA粒子)
(工程1)
乾燥させた2Lのガラス製重合槽に、メルカプト基変性PVA(重合度500、けん化度88mol%)の2wt%水溶液537.12g、硫酸鉄(II)(7水和物)0.0059g、酢酸ナトリウム0.145gを添加し、1規定硫酸水溶液でpH5.0に調整した後、30分間窒素ガスにてバブリングすることで脱酸素処理を行い、水溶液を得た。
該水溶液を70℃に昇温した後、アクリル酸n−ブチル133.16g、ドデシルメルカプタン0.66gからなる混合物を脱酸素処理した後、一括で添加した。この後0.9wt%過酸化水素水溶液86.74gを2.48mL/分の速度で連続的に添加し、40分間かけて添加が終了するまで攪拌しながら重合を行った。
前記工程1で得られた乳化液に、1規定硫酸水溶液でpH5.0に調整したメルカプト基変性PVAの10wt%水溶液107.42gを脱酸素処理した後、一括で添加した。続いて、アクリル酸n−ブチル133.16g、ドデシルメルカプタン0.66gからなる混合物を脱酸素処理した後、一括で添加した。この後0.9wt%過酸化水素水溶液86.74gを2.48mL/分の速度で連続的に添加し、40分間かけて添加が終了するまで攪拌しながら重合を行った。
前記工程2で得られた乳化液に、工程2と同様の操作を行った。
前記工程3で得られた乳化液に、工程3と同様の操作を行った後、4時間攪拌し、総単量体転化率が99.5%を超えたことを確認した時点で、重合槽を25℃まで冷却して、重合体粒子(BA/メルカプト基変性PVA粒子)の乳化液を取り出した。乳化液中の平均分散粒子径は306.3nm、固形分濃度は33wt%であった。重合体粒子(x)のガラス転移温度は−55℃であった。
(ブタジエン/スチレン粒子)
クメンヒドロパーオキシド3.45g、ラウリル硫酸ナトリウム3.75g、イオン交換水150gからなる乳化液に脱酸素処理を行い、ラジカル重合開始剤乳化液を得た。
乾燥させた0.5Lの耐圧重合槽にイオン交換水200g、ラウリル硫酸ナトリウム5g、硫酸鉄(II)(7水和物)0.032g、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム0.02g、塩化ナトリウム0.2gを添加した後、30分間窒素ガスにてバブリングすることで脱酸素処理を行い、水溶液を得た。
該水溶液を60℃に昇温した後、脱酸素処理した重合体粒子(x)を形成するブタジエン78gを添加した。次いで、前記ラジカル重合開始剤乳化液を0.02mL/分の速度で連続的に添加することで重合を開始した。単量体転化率が95wt%を超えたことを確認した時点で、得られた乳化液に前記ラジカル重合開始剤乳化液を0.02mL/分の速度でフィードしながら、脱酸素処理した重合体被膜(y)を形成する単量体混合物(ブタジエン:スチレン:トリメチロールプロパントリメタクリレート=2.8:19:0.2(重量比))22gを1.7mL/分の速度で連続的に添加した。単量体混合物の添加後、単量体転化率が95wt%を超えたことを確認した時点で、前記ラジカル重合開始剤乳化液の添加を停止させ、重合停止剤であるヒドロキノンの脱酸素水溶液を添加した。重合槽を25℃まで冷却して、被覆重合体粒子(ブタジエン/スチレン粒子)の乳化液を取り出した。
なお、重合開始から重合停止剤添加までの重合時間は10時間であった。該乳化液に老化防止剤としてK−840を0.5g添加し、乳化液中の平均分散粒子径は48nm、固形分濃度は34wt%であった。重合体粒子(x)のガラス転移温度は−76℃であった。
[架橋性基を有する水溶性ポリマーの合成1]
40g(モノマー繰り返し単位:911mmol)の「PVA117」を1Lのジムロート冷却管を備えたセパラブルフラスコに入れ、350mLのDMSOを加えてメカニカルスターラーにて攪拌を開始した。ウオーターバスにより80℃まで温度を上昇させて、攪拌を4時間続けた。PVAが溶解したことを目視で確認し、加熱攪拌しながらメタクリル酸ビニル1.2g(10.8mmol)を直接加え、さらに80℃で3時間攪拌した。放冷後、2Lのメタノール中に攪拌しながら反応溶液を注ぎいれた。攪拌を止め、1時間そのまま放置した。得られた固体を回収した後、さらに1Lのメタノールに1時間浸漬して洗浄した。この洗浄作業を合計3回行った。回収した固体を室温で一晩真空乾燥してメタクリロイルオキシ化PVAを得た。メタクリロイルオキシ基導入率はPVAのモノマー繰り返し単位に対して1.2mol%であった(以下、MA−PVA117(1.2)と略称する)。同じ方法を用いて、PVAの重合度およびメタクリロイルオキシ基導入率を種々変更したメタクリロイルオキシ化PVAを製造した(表1)。
[架橋性基を有する水溶性ポリマーの合成2]
60g(モノマー繰り返し単位:1.36mol)の「PVA117」を1Lのジムロート冷却管を備えたセパラブルフラスコに入れ、540mLのイオン交換水を加えてメカニカルスターラーにて攪拌を開始した。ウオーターバスにより80℃まで温度を上昇させて、攪拌を4時間続けた。PVAが溶解したことを目視で確認し、40℃まで温度を低下させた。40℃で攪拌しながら5−ノルボルネン−2−カルボキシアルデヒド2.5g(20.5mmol)、10vol%硫酸水溶液22mLを直接加え、さらに40℃で4時間攪拌した。放冷後、1規定NaOH水溶液を80mL添加して中和し、分画分子量3500の透析膜に入れて脱塩した(5Lのイオン交換水に対して4回実施)。2Lのメタノール中に攪拌しながら脱塩後の水溶液を注ぎいれ、1時間そのまま放置した。得られた固体を回収した後、さらに1Lのメタノールに1時間浸漬して洗浄した。回収した固体を室温で一晩真空乾燥してノルボルネン化PVAを得た。ノルボルネン導入率はPVAのモノマー繰り返し単位に対して1.3mol%であった(以下、Nor−PVA117(1.3)と略称する)。
20gのMA−PVA117(1.2)に80mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間攪拌しながら溶解した。このMA−PVA溶液15gに合成例1のBA/TCDMA粒子の乳化液(固形分濃度28wt%)を4.5g、イオン交換水を10.5g加えて攪拌した。続けて、水溶性光重合開始剤である「Irgacure2959」を0.1wt%となるように加えて未硬化ゲル溶液を作製した。
次いで、2mm厚のスペーサーを挟み込んだガラス板間にこの溶液を流し込み、GSユアサ製メタルハライドランプを用いて145mW/cm2にて30秒(照射エネルギー量:1200mJ/cm2)の紫外線(UV)を照射したところ十分に硬化し、強靭な一体感のあるゲルが得られた。
実施例1で作製したMA−PVA溶液15gに合成例1のBA/TCDMA粒子の乳化液(固形分濃度28wt%)を9g、イオン交換水を6g加えて攪拌した。続けて、水溶性光重合開始剤である「Irgacure2959」を0.1wt%となるように加えて未硬化ゲル溶液を作製した。この溶液を実施例1と同様にUVを照射したところ十分に硬化し、強靭な一体感のあるゲルが得られた。
MA−PVA117(1.2)に代わってMA−PVA117(0.6)を使用した以外は実施例1と同様にUVを照射したところ十分に硬化し、強靭な一体感のあるゲルが得られた。
実施例1で作製したMA−PVA溶液15gに合成例2のBA/メルカプト基変性PVA粒子の乳化液(固形分濃度33wt%)を0.9g、イオン交換水を14.1g加えて攪拌した。続けて、レドックス系重合開始剤である30mgの過硫酸アンモニウム(APS)およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を45μL添加して攪拌した。
レドックス系重合開始剤を添加した後、迅速に2mm厚のスペーサーを挟み込んだガラス板間にこの溶液を流し込み、1時間室温で硬化させたところ十分に硬化し、強靭な一体感のあるゲルが得られた。
実施例1で作製したMA−PVA溶液15gに合成例3のブタジエン/スチレン粒子の乳化液(固形分濃度34wt%)を4g、イオン交換水を11g加えて攪拌した。続けて、水溶性光重合開始剤である「Irgacure2959」を0.1wt%となるように加えて未硬化ゲル溶液を作製した。この溶液を実施例1と同様にUVを照射したところ十分に硬化し、強靭な一体感のあるゲルが得られた。
20gのMA−PVA117(1.2)および10gのMA−PVA105(1.2)に70mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間攪拌しながら溶解した。このPVA溶液15gに合成例1のBA/TCDMA粒子の乳化液(固形分濃度28wt%)を9g、イオン交換水を6g加えて攪拌した。続けて、水溶性光重合開始剤である「Irgacure2959」を0.1wt%となるように加えて未硬化ゲル溶液を作製した。この溶液を実施例1と同様にUVを照射したところ十分に硬化し、強靭な一体感のあるゲルが得られた。
20gのNor−PVA117(1.3)に80mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間攪拌しながら溶解した。このNor−PVA溶液15gに合成例1のBA/TCDMA粒子の乳化液(固形分濃度28wt%)を4.5g、イオン交換水を10.5g、チオール基を有するポリチオールとして3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオールを80mg加えて攪拌した。続けて、水溶性光重合開始剤である「Irgacure2959」を0.1wt%となるように加えて未硬化ゲル溶液を作製した。この溶液を実施例1と同様にUVを照射したところ十分に硬化し、強靭な一体感のあるゲルが得られた。
10gのMA−PVA117(1.2)に90mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間攪拌しながら溶解した。これに光重合開始剤として0.1wt%の「Irgacure2959」を加え、実施例1と同様にUVを照射したところ十分に硬化し、一体感のあるゲルが得られた。
MA−PVA117(1.2)に代えて、MA−PVA117(0.6)を使用した以外は比較例1と同様にUVを照射したところ十分に硬化し、一体感のあるゲルが得られた。
10gのMA−PVA117(1.2)に90mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間攪拌しながら溶解した。この溶液を実施例4と同様に硬化させたところ十分に硬化し、一体感のあるゲルが得られた。
特許文献6を参考に第1のポリマーと第2のポリマーから形成される相互侵入型ゲルを以下のように作製した。1mol/Lの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、0.04mol/LのN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)、および光重合開始剤として0.001mol/Lのα−ケトグルタル酸を含む水溶液100mLにUVを7時間照射して重合を行い、架橋度4mol%のポリAMPSゲル(PAMPSゲル)を得た。得られたPAMPSゲルを熱乾燥機に1日入れて乾燥させ、乳鉢に入れて粉砕することでPAMPSゲルの微粒子を得た(以下、第1のポリマーと称することがある)。
一方、N,N−ジメチルアクリルアミド(DAAm)1mol/Lに対し、架橋剤としてDAAmに対して0.01mol%のMBAAと、水溶性光重合開始剤としてモノマー溶液に対して0.1wt%の「Irgacure2959」とを含むモノマー溶液を作製した(以下、第2のポリマーを形成するモノマー溶液と称することがある)。
第1のポリマーと第2のポリマーを形成するモノマー溶液との比率が重量比で1:30となるような量で、第2のポリマーを形成するモノマー溶液に、第1のポリマーの微粒子を投入した。この溶液を実施例1と同様にUVを照射したところ、全体が硬化せず一体感のあるゲルが得られなかった。
比較例5では比較例4にて製造した第1のポリマーと第2のポリマーから形成される相互侵入型ゲルをレドックス系重合開始剤により作製した。1mol/LのDAAmに対し、架橋剤としてDAAmに対して0.01mol%のMBAAを含むモノマー溶液を作製した。比較例2で作製した第1のポリマーとこのモノマー溶液との比率が重量比で1:30となるような量で混合した。この溶液を実施例4と同様に硬化させたところ、弱いが何とか一体感を示すゲルが得られた。
Claims (5)
- 架橋性基を有するポリビニルアルコールおよびガラス転移温度が25℃以下である重合体粒子(x)を含む刺激硬化性ゲルであって、
前記刺激が活性エネルギー線および熱から選ばれる少なくとも1種である、刺激硬化性ゲル。 - 架橋性基が、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルフェニル基およびこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の刺激硬化性ゲル。
- 架橋性基の導入率が、架橋性基を有するポリビニルアルコールの繰り返し単位に対して0.01〜10mol%である、請求項1又は2に記載の刺激硬化性ゲル。
- 重合体粒子(x)の平均粒子径が0.01〜10μmである、請求項1〜3のいずれかに記載の刺激硬化性ゲル。
- 重合体粒子(x)が被覆重合体粒子である、請求項1〜4のいずれかに記載の刺激硬化性ゲル。
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