JP6884068B2 - 刺激硬化性ゲル - Google Patents

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Description

本発明は、刺激により硬化する刺激硬化性ゲルに関する。
ハイドロゲル(以下、ゲルと略称することがある)は架橋された親水性高分子と水からなるマテリアルであり、従来から高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer(SAP))、コンタクトレンズ、ドラッグデリバリー基材、衝撃吸収材料、制振・防音材料など生活、医療、食品、土木など多岐の用途で利用されている。しかし、従来のゲルは機械的強度が低く、応用範囲が限られるという問題があった。これを解決するため、2種類の水溶性高分子の網目構造が相互に侵入したダブルネットワークゲルなどが提案されている(特許文献1)。
近年、3Dプリンターに代表されるAdditive Manufacturingと言われる材料の造形手法の開発が活発になっており、これらに適応した材料への要求が高まってきている。特に3Dプリンターにゲルを対応させるには活性エネルギー線などの刺激により一段階で素早く硬化するといった「刺激硬化性」が求められる。さらに医療分野では、刺激硬化性ゲルを用いて患者の患部で硬化させて治療する方法(特許文献2)や、3Dプリンターを用いて手術練習等に用いる臓器モデルや再生医療用の精密スキャホールド(非特許文献1)の製造などへの応用が期待されている。
前記ダブルネットワークゲルは強度と柔軟性を兼ね備えた従来にないゲルを製造できるため、例えば3Dプリンター用ゲルとしても活用できる。しかし、ダブルネットワークゲルは重合を終えたゲルをモノマー溶液で膨潤させなければならないことや、モノマーを重合させるため硬化性に欠けるなど、3Dプリンターへの適用性に問題があった。
以上のダブルネットワークゲルの課題を解決するため、ゲルに架橋ゲル粒子を添加することにより刺激硬化性を向上させる試みがなされている。これはダブルネットワークゲルを構成する二種類の親水性高分子のうち第一の親水性高分子からなる架橋ゲル微粒子を製造し、この架橋ゲル微粒子と第二の親水性高分子を構成するモノマーを混合してゲル化させる方法である(特許文献3〜5、非特許文献2〜4)。この方法であれば一段階でダブルネットワークゲルが製造できるため、3Dプリンターへの適用性もより高いと考えられる。このような考えから、架橋ゲル粒子を添加したゲルを3Dプリンターに応用することも最近提案された(特許文献6、非特許文献5)。
国際公開第2003/093337号 特表2008−510021号公報 特開2008−163055号公報 特開2010−260929号公報 特開2015−96560号公報 特開2017−26680号公報 特表平10−513408号公報 特表2002−506813号公報
Chemical Reviews 116(2016)1496-1539 Macromolecules 44(2011)7775-7781 Macromolecules 45(2012)5218-5228 Macromolecules 45(2012)9445-9451 Journal of Solid Mechanics and Materials Engineering 7(2013)163-168
特許文献3〜6、非特許文献2〜5に記載されるゲルにおいて架橋ゲル微粒子とモノマーを混合することにより一段階で機械的強度に優れるダブルネットワークゲルを製造することが可能となったが、モノマーを重合させるため硬化性には依然として課題が残っていた。加えてモノマーとしてアクリルアミドを使用することが多く、このモノマー自体の毒性が非常に高いことから、医療用途に使用できないなどの課題もあった。
一方、架橋性基を有する水溶性ポリマー(以下、マクロマーと略称することがある)は前記モノマーと比較すると毒性が低く、医療用途を含む種々の用途に使用されている(特許文献7、特許文献8)。しかし、マクロマーを硬化させるだけでは機械的強度が低いゲルしか製造できないという課題があった。
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、硬化性と安全性に優れ、機械的強度が高く、広範な用途に適用可能な刺激硬化性ゲルを提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討を行った結果、架橋性基を有する水溶性ポリマーに重合体粒子を添加することにより、ダブルネットワーク化が十分に起こらなくても機械的強度の高いゲルが得られることを見出し、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
[1]架橋性基を有する水溶性ポリマーおよびガラス転移温度が25℃以下である重合体粒子(x)を含む刺激硬化性ゲル;
[2]架橋性基が、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルフェニル基およびこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]の刺激硬化性ゲル;
[3]架橋性基の導入率が、架橋性基を有する水溶性ポリマーの繰り返し単位に対して0.01〜10mol%である、上記[1]又は[2]の刺激硬化性ゲル;
[4]重合体粒子(x)の平均粒子径が0.01〜10μmである、上記[1]〜[3]のいずれかの刺激硬化性ゲル;
[5]刺激が活性エネルギー線、熱および混合から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]〜[4]のいずれかの刺激硬化性ゲル;
[6]重合体粒子(x)が被覆重合体粒子である、上記[1]〜[5]のいずれかの刺激硬化性ゲル;
に関する。
本発明によれば、硬化性と安全性に優れ、機械的強度が高く、広範な用途に適用可能な刺激硬化性ゲルが得られる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは「メタクリル」と「アクリル」との総称を意味する。
本発明の刺激硬化性ゲルには、架橋性基を有する水溶性ポリマーおよびガラス転移温度が25℃以下である重合体粒子(x)が含まれる。
本発明における刺激硬化性とは、活性エネルギー線、熱および混合から選ばれる少なくとも1種の刺激により硬化することを指す。前記架橋性基を有する水溶性ポリマーは光重合開始剤又は熱重合開始剤の添加により、それぞれ活性エネルギー線又は熱を刺激として硬化させることが可能である。また熱重合開始剤のうちレドックス系重合開始剤の場合は、過酸化物系重合開始剤と還元剤の混合を刺激として硬化させることも可能である。
なお、本明細書において活性エネルギー線とは、光線、電磁波、粒子線およびこれらの組み合わせを意味する。光線としては遠紫外線、紫外線(UV)、近紫外線、可視光線、赤外線などが挙げられ、電磁波としてはX線、γ線などが挙げられ、粒子線としては電子線(EB)、プロトン線(α線)、中性子線などが挙げられる。硬化速度、照射装置の入手性、価格等の観点から、これらの活性エネルギー線の中でも紫外線、電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
<架橋性基を有する水溶性ポリマー>
架橋性基を有する水溶性ポリマーは、基材となる水溶性ポリマーの側鎖や末端に架橋性基を含有するものを指す。架橋性基を有する水溶性ポリマーの基材となる水溶性ポリマーとしては合成ポリマーおよび天然ポリマーを問わず利用できる。
(水溶性ポリマー)
合成ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略称することがある)、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド)、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。これらの合成ポリマーは水溶性を損なわない範囲で他のモノマーと共重合されていてもよい。他のモノマーの含有率は合成ポリマーを構成する全構造単位に対して50mol% 未満であることが好ましく、30mol%未満であることがより好ましい。
合成ポリマーのうち、例えばポリアクリルアミド、ポリ(N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N,N−ジエチルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)等のポリ(メタ)アクリルアミド誘導体;およびポリビニルピロリドンなど、アミノ基、水酸基、およびカルボキシル基などの架橋性基の導入のための官能基を含有しない合成ポリマーは、架橋性基の導入のための官能基を有するモノマー、例えばヒドロキシエチルメタクリレートやメタクリル酸などと共重合し、架橋性基の導入のための官能基を側鎖に導入する必要がある。架橋性基の導入のための官能基を有するモノマーの含有率は合成ポリマーを構成する全構造単位に対して20mol%未満であることが好ましく、10mol%未満であることがより好ましい。
天然ポリマーとしては水溶性多糖類および水溶性タンパク質が利用できる。水溶性多糖類の例としては、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アガロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体;グアーガム、カラギーナン、寒天、キトサン、ジェランガム、デキストラン、デンプン、ヒアルロン酸、プルラン、ヘパリンなどが挙げられる。また、水溶性タンパク質の例としてはコラーゲン、ゼラチン、アルブミンなどが挙げられる。
以上に例示した水溶性多糖類のうち、例えばアルギン酸はカルシウムイオンを添加することによりゲル化する。また、アガロース、ジェランガム、ゼラチンなども熱水に溶解し、冷却することでゲル化する。このように天然ポリマー自体のゲル化特性を活用することも可能であるが、硬化のための刺激の選択や成形の自由度、3Dプリンターへの適用を考慮すると架橋性基が天然ポリマーに結合していることが必須である。
(架橋性基)
架橋性基としては水中でも高効率な反応が期待できるビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルフェニル基およびこれらの誘導体が挙げられる。本発明におけるビニル基には不飽和炭化水素だけでなく、アリル基、ビニルエステル基をも含む。また不飽和炭化水素のうち、反応性を考慮すると末端二重結合を有する不飽和炭化水素が好ましい。
このような架橋性基は水溶性ポリマーの側鎖や末端官能基、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、1,2−ジオール基、1,3−ジオール基などを介して導入できる。水酸基やアミノ基に対しては、例えばアクリル酸無水物やグリシジルメタクリレートを塩基存在下で反応させることにより(メタ)アクリロイルオキシ基を導入可能である。即ち、水酸基に対してはエステル化により(メタ)アクリロイルオキシ基、アミノ基に対してはアミド化により(メタ)アクリロイルアミノ基を導入できる。水酸基やアミノ基に対しては、例えばアリルグリシジルエーテルを塩基存在下で反応させることによりビニル基の一種であるアリルエーテル基も導入できる。アミノ基に対しては、例えばアジピン酸ジビニルを塩基存在下で反応させることによりビニル基の一種であるビニルエステル基を導入できる。カルボキシル基に対しては、例えばグリシジルメタクリレートを酸性条件で反応させることでエステル化によりメタクリロイルオキシ基を導入できる。さらに1,2−ジオール基や1,3−ジオール基に対しては、例えばアクロレイン、5−ノルボルネン−2−カルボキシアルデヒドや7−オクテナールなどを酸触媒存在下で反応させることでアセタール化によりビニル基を導入可能である。同様にアセタール化により、3−ビニルベンズアルデヒドや4−ビニルベンズアルデヒドなどを反応させることでビニルフェニル基を、N−(2,2−ジメトキシエチル)(メタ)アクリルアミドなどを反応させることで(メタ)アクリロイルアミノ基を導入することが可能である。水溶性ポリマーへの架橋性基の導入は例示された反応以外も用いることができ、2種類以上の反応を組み合わせて使用してもよい。
架橋性基を有する水溶性ポリマーとしては、架橋性基を有するPVA;架橋性基を有するポリアクリルアミド、ポリ(N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N,N−ジエチルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)等のポリアクリルアミド誘導体;架橋性基を有するポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;架橋性基を有するポリエチレングリコール;架橋性基を有する水溶性セルロース誘導体が好ましく、架橋性基が(メタ)アクリル基、ビニル基および(メタ)アクリロイルアミノ基であることが好ましい。
但し、前記架橋性基のうちビニル基を用いると硬化しにくい場合があるため、例えば1分子内に2つ以上のチオール基を有するポリチオールを、ビニル基を有する水溶性ポリマーに添加して、チオール−エン反応を利用してもよい。前記ポリチオールとしては水溶性を示すものが好ましく、例えば3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール、ジチオスレイトール、ポリエチレングリコールジチオールおよびマルチアームポリエチレングリコールの末端チオール化物などが挙げられる。チオール−エン反応はビニル基とチオール基が1対1で反応するため、チオール基がビニル基に対して等モル以下となるように前記のポリチオールを添加することが必要である。この添加量であればゲル強度などを制御するため任意に前記ポリチオールの添加量を制御できる。
架橋性基の導入率は、架橋性基を有する水溶性ポリマーの繰り返し単位に対して好ましくは10mol%以下、より好ましくは5mol%以下、さらに好ましくは3mol%以下である。また、好ましくは0.01mol%以上、より好ましくは0.1mol%以上である。架橋性基の導入率が高くなりすぎると、硬化後のゲルの機械的強度が向上する一方で非常に脆くなる。
本発明における合成ポリマーおよび天然ポリマーともにポリマー鎖に含まれる繰り返し単位数である重合度については特に限定されるものではなく、種々の重合度のものが利用できる。しかし、合成ポリマーおよび天然ポリマーともに重合度が小さすぎると硬化した際のゲルが脆くなる傾向がある。また、合成ポリマー、天然ポリマーともに重合度が高くなりすぎると水溶液粘度が高くなり、加工が困難になる傾向がある。従って、合成ポリマーおよび天然ポリマーの重合度は4以上が好ましく、9以上がより好ましく、14以上がさらに好ましい。また、30000以下が好ましく、10000以下がより好ましく、5000以下がさらに好ましい。
ここで本発明における重合度は、極限粘度[η]を測定し、Mark−Houink式から計算された粘度平均分子量をポリマー鎖に含まれる繰り返し単位の分子量で除することで求めることができる。例えば、水溶性ポリマーとして例示したPVAの重合度は、JISK6726:1994年に準じて測定される。すなわち、PVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求められる。
重合度=([η]×10/8.29)(1/0.62)
本発明における架橋性基を有する水溶性ポリマーはイオン性基を含有することが好ましく、その含有率はポリマーの繰り返し単位に対して20mol%以下であることが好ましい。イオン性基を20mol%超含有すると吸水力が高くなり、ゲル強度や寸法安定性が低下することがある。
<重合体粒子(x)>
重合体粒子(x)を構成する重合体は一種の単量体単位からなる重合体でもよく、複数種の単量体単位からなる共重合体でもよい。また、複数の重合体の混合物であってもよい。
前記単量体としては、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリル酸およびその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;酢酸ビニル、n−プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;エテン、プロペン、n−ブテン、イソブテン等のモノオレフィン;臭化ビニル、臭化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化エチレン;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸およびその塩;マレイン酸エステル、イタコン酸エステル等の不飽和ジカルボン酸エステル;トリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン;インデン、テトラヒドロインデン等のインデン類;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;チイラン、チエタン等の環状スルフィド;アジリジン、アゼチジン等の環状アミン;1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、スピロオルソエステル等の環状アセタール;2−オキソザリン、イミノエーテル等の環状イミノエーテル;β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン;などが挙げられる。
これらの中でも、生産性の観点から共役ジエン、芳香族ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体が好ましい。
重合体粒子(x)のガラス転移温度は、本発明の刺激硬化性ゲルへの外的応力を効率的に緩和および/又は散逸させるため、25℃以下であり、0℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましい。また、−80℃以上であることが好ましい。なお本明細書において、ガラス転移温度は示差走査熱量測定によって求めることができる。
架橋性基を有する水溶性ポリマーを硬化させた場合、本発明の刺激硬化性ゲルのように内部にガラス転移温度が25℃以下である重合体粒子(x)が含まれると、ゲルに外的な応力がかかった際に重合体粒子(x)が犠牲的に変形することで応力を緩和および/又は崩壊し、応力を散逸することでゲルに発生する微小なクラックの進展を止めることができる。このため、ゲル全体が崩壊することを防ぎ、ゲルの強靭性が増すと推測している。
ガラス転移温度が25℃以下である重合体粒子(x)は、この条件を満たすものであれば特に限定されないが、架橋性基を有する水溶性ポリマーと水溶媒中で混合させるため、水に分散できることが好ましい。重合体粒子(x)としては例えばアクリル粒子のように室温以上にガラス転移温度を持つ硬質粒子や、特開2004−285203号公報に記載のイオン性基を含有する架橋アクリルアミドゲル粒子を添加すると刺激硬化性ゲルの弾性率や破断強度自体の向上が見られる場合があるが、柔軟性を向上させることが難しい。
本発明の重合体粒子(x)としては、水への分散性の観点から、表面が界面活性剤等により親水化された重合体粒子、および被覆重合体粒子が好ましく、被覆重合体粒子がより好ましい。被覆重合体粒子の具体例としては、後述するような重合体粒子(x)の少なくとも一部を被覆する重合体被膜(y)を有する被覆重合体粒子が挙げられる。
(被覆重合体粒子)
重合体粒子(x)は、重合体粒子(x)の少なくとも一部を被覆する重合体被膜(y)を有する被覆重合体粒子であることが好ましい。重合体被膜(y)を構成する重合体は一種の単量体単位からなる重合体でもよく、複数種の単量体単位からなる共重合体でもよい。また、複数の重合体の混合物であってもよい。
前記単量体としては、重合体粒子(x)において挙げたものが挙げられ、好ましいものも同様である。
重合体被膜(y)のガラス転移温度は、粒子同士の融着を防止することや水への分散安定性の観点から、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましい。また、250℃以下であることが好ましい。
被覆重合体粒子における重合体被膜(y)の含有率は、本発明の刺激硬化性ゲルへの外的応力を効率的に緩和および/又散逸させる観点から、被覆重合体粒子全体の重量に基づいて、1wt%以上が好ましく、3wt%以上がより好ましく、5wt%以上がさらに好ましい。また、80wt%以下であることが好ましく、60wt%以下であることがより好ましく、50wt%以下であることがさらに好ましい。
また、重合体被膜(y)は重合体粒子(x)の全体を被覆するものであることが好ましい。
重合体粒子(x)の平均粒子径、および重合体粒子(x)が被覆重合体粒子の場合は重合体被膜(y)も含む被覆重合体粒子全体の平均粒子径は、好ましくは0.01〜10μmであり、より好ましくは0.02〜1μmであり、さらに好ましくは0.04〜0.5μmである。平均粒子径が大きい場合は、ゲル自体が白濁して透明性が失われる傾向があり、かつ、粒子が沈降し易くなるが、少量の含有量であってもゲル強度の向上が期待できる。一方、平均粒子径が小さい場合は、ゲル強度の向上のためには含有量を増やす必要があるが、高い透明性を有するゲルが得られる傾向がある。
なお、本発明における平均粒子径とは、後述する動的光散乱測定装置で測定した平均分散粒子径を指す。
(重合体粒子(x)の製造方法)
重合体粒子(x)の製造方法は特に限定されないが、例えば乳化重合、懸濁重合、樹脂の自己乳化や機械的乳化などにより製造することができる。
重合体粒子(x)の製造方法にかかる乳化重合においては、通常乳化剤を用いる。かかる乳化剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、高級脂肪酸ナトリウム、ロジン系ソープ等のアニオン系界面活性剤;アルキルポリエチレングリコール、ノニルフェノールエトキシレート等のノニオン系界面活性剤;塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン系界面活性剤;コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン等の両性界面活性剤等を用いることができる。また部分けん化PVA(けん化度70〜90mol%)、メルカプト基変性PVA(けん化度70〜90mol%)、β−ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物塩、(メタ)アクリル酸エチルコポリマーなどの高分子界面活性剤を用いることも可能である。ここで、前記高分子界面活性剤は乳化重合終了後に重合体粒子(x)を被覆する重合体被膜(y)と同様に機能することができる。これら乳化剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。かかる乳化剤の使用量は、水に対して0.01〜40wt%が好ましく、0.05〜20wt%がより好ましい。
前記製造方法にかかる乳化重合においては、通常ラジカル重合開始剤を用いる。かかるラジカル重合開始剤としては、水溶性無機系重合開始剤、水溶性アゾ系重合開始剤、油溶性アゾ系重合開始剤、有機過酸化物などが挙げられる。また、ラジカル重合開始剤としてレドックス系重合開始剤を用いてもよい。
水溶性無機系重合開始剤としては、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどが挙げられる。水溶性アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2−2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などが挙げられる。
油溶性アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、ジメチル2,2−アゾビス(イソブチレート)などが挙げられる。
有機過酸化物としては、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジベンジルパーオキシド等のジアシルパーオキシド;1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド;ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキシド;2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン等のパーオキシケタール;1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーオキシエステル;ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン等のパーオキシカーボネートなどが挙げられる。
前記ラジカル重合開始剤の使用量は、水に対して0.0001〜1wt%が好ましく、0.001〜0.5wt%がより好ましい。
また、生産性の観点から、レドックス系重合開始剤を用いてもよく、該レドックス系重合開始剤としては、前記有機過酸化物と遷移金属塩の併用が好ましい。
有機過酸化物と併用する遷移金属塩としては、例えば、硫酸鉄(II)、チオ硫酸鉄(II)、炭酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)、水酸化鉄(II)、酸化鉄(II)等の鉄化合物;硫酸銅(I)、チオ硫酸銅(I)、炭酸銅(I)、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、水酸化銅(I)、酸化銅(I)等の銅化合物、又はそれらの水和物などが使用できる。
これらのうち、生産性の観点から、クメンヒドロパーオキシドと鉄化合物との併用が好ましく、クメンヒドロパーオキシドと硫酸鉄(II)の水和物との併用がより好ましい。
また、前記ラジカル重合開始剤とともに還元剤を用いてもよい。かかる還元剤としては、塩化第一鉄、硫酸第一鉄等の鉄化合物;硫酸水素ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のナトリウム塩;アスコルビン酸、ロンガリット、亜ジオチン酸ナトリウム、トリエタノールアミン、グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マルトース等の有機系還元剤などが挙げられる。このうち、鉄化合物と有機系還元剤を併用することが好ましい。
かかる還元剤の使用量は、水に対して0.0001〜1wt%の範囲が好ましく、0.001〜0.5wt%の範囲がより好ましい。
前記製造方法において、乳化重合の系内に必要に応じて金属イオンキレート剤を添加してもよい。具体的には、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム等の金属イオンキレート剤が挙げられる。
前記製造方法において、乳化重合の系内に必要に応じて増粘抑制剤として電解質を添加してもよい。具体的には、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム等の電解質が挙げられる。前記製造方法において、乳化剤と増粘抑制剤とを併用する場合、増粘抑制剤の使用量は、乳化液中のミセルの安定性の観点から、乳化剤に対して20wt%以下が好ましく、10wt%以下がより好ましく、5wt%以下が更に好ましい。
前記還元剤、金属イオンキレート剤および電解質は、重合反応中に添加してもよいが、乳化重合当初から水中に添加しておくことが好ましい。
前記製造方法において、乳化重合の系内に必要に応じて連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン等のメルカプタン;メルカプト酢酸、メルカプト酢酸2−エチルヘキシル、メルカプト酢酸メトキシブチル、β−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸メチル、β−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、β−メルカプトプロピオン酸3−メトキシブチル、メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール等のチオール類;α−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動定数の大きい炭化水素化合物などが使用できる。
水溶性のラジカル重合開始剤を用いる場合は水溶液として添加すればよいが、水に難溶なラジカル重合開始剤を用いる場合は、水および乳化剤を用いてラジカル重合開始剤の乳化液をあらかじめ調製し、これを添加してもよい。この場合、使用する乳化剤は乳化重合で用いるものと同じでもよいし、異なっていてもよい。また、2種以上の乳化剤を組み合わせてもよい。
乳化重合の重合温度は、通常0〜100℃の範囲が好ましく、重合率を高める観点から、50〜90℃が望ましい。
本発明において、乳化重合後の乳化液をそのまま使用してもよいし、塩析、酸析、凍結、溶剤添加等の公知の方法により重合体粒子(x)を回収して用いてもよい。またこうして回収した重合体粒子(x)をさらに洗浄、再沈殿、スチームストリッピング等の公知の方法によって精製してもよい。
本発明において、重合体粒子(x)の劣化を抑制する観点から、乳化重合後の乳化液、又は回収処理後や精製処理後の重合体粒子(x)に老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤は、重合反応後の重合体粒子(x)の回収処理や精製処理における劣化を抑制する観点からは、乳化重合後の乳化液に老化防止剤を添加した後、重合体粒子(x)を回収処理又は精製処理をしてもよい。また、得られた重合体粒子(x)の使用中の劣化を抑制する観点からは、重合体粒子(x)の回収処理後や精製処理後の重合体粒子(x)に、老化防止剤を添加してもよい。ただし、老化防止剤を乳化重合後の乳化液に加えた場合は、重合体粒子(x)の回収処理又は精製処理によって、添加した老化防止剤が除去されることがあるため、重合体粒子(x)の回収処理後や精製処理後に再度添加することが望ましい。
老化防止剤としては、一般的な材料を使用することができる。具体的には、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルフェノール、モノ(又はジ、又はトリ)(α−メチルベンジル)フェノール等のフェノール系化合物;2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のビスフェノール系化合物;2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール等のベンズイミダゾール系化合物;6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンの反応物、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体等のアミン−ケトン系化合物;N−フェニル−1−ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等の芳香族二級アミン系化合物;1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−チオ尿素、トリブチルチオ尿素等のチオウレア系化合物などが使用できる。
また、重合体粒子(x)の製造方法としては、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、イソブチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体、ハロゲン化イソブチレン−イソプレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の部分水素添加物、ポリクロロプレン等のゴムなどの重合体を予め製造しておき、これらを水中に乳化又は懸濁させてスプレードライ等により取り出す方法によっても製造することができる。ガラス転移温度が25℃以下の重合体粒子を前記方法によって製造すると粒子同士が融着して水などに再分散しにくくなるため、乳化剤として例えば高分子界面活性剤である部分けん化PVAなどを用いて乳化させることが好ましい方法である。
<共存モノマー>
本発明の刺激硬化性ゲルには、さらに共存モノマーが含まれていてもよい。共存モノマーとしては水溶性のラジカル重合性モノマーである2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニルピリジン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
<架橋剤>
本発明の刺激硬化性ゲルには、さらに架橋剤が含まれていてもよい。架橋剤としては特に水溶性を示すものが好ましく、ラジカル重合性の不飽和基を2個以上有するN,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
<無機微粒子>
本発明の刺激硬化性ゲルには、水不溶性の無機微粒子が含まれていてもよい。水不溶性の無機微粒子としては、例えば沈降シリカ、ゲル状シリカ、気相法シリカ、コロイダルシリカ等のシリカ;アルミナ、ヒドロキシアパタイト、ジルコニア、酸化亜鉛、チタン酸バリウム等のセラミック;ゼオライト、タルク、モンモリロナイト等の鉱物;硫酸カルシウム等の石膏;酸化カルシウム、酸化鉄等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;ケイソウ土、土壌、粘土、砂、砂利などが挙げられる。これらの無機微粒子は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。水不溶性の無機微粒子を添加することで、ゲルに高い機械物性や磁性などの機能を付与することができる。また、無機微粒子を含む成形された刺激硬化性ゲルを乾燥、さらには焼結などを行うことにより成形された無機焼結体を得ることも可能である。
無機微粒子の刺激硬化性ゲルへの含有量は特に制限されないが、好ましくは99.5wt%以下、より好ましくは99wt%以下、さらに好ましくは95wt%以下である。さらに無機微粒子の添加効果を得るためには、無機微粒子の含有量は0.01wt%以上、より好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.1%以上である。
<未硬化ゲル溶液>
本発明の刺激硬化性ゲルは、前記架橋性基を有する水溶性ポリマーおよび前記重合体粒子(x)を溶媒中で混合することにより未硬化ゲル溶液を調製し、前記硬化方法により架橋性基を有する水溶性ポリマーを硬化し、ゲル化させることで得られる。
前記未硬化ゲル溶液における架橋性基を有する水溶性ポリマーの濃度は、未硬化ゲル溶液に対して1wt%以上が好ましく、3wt%以上がより好ましく、5wt%以上がさらに好ましい。また、70wt%以下が好ましく、60wt%以下がより好ましく、50wt%以下がさらに好ましい。架橋性基を有する水溶性ポリマーの濃度が1wt%未満では得られるゲルの強度が低く、70wt%を越えると未硬化ゲル溶液の粘度が高く成形が困難になる傾向がある。
前記未硬化ゲル溶液における重合体粒子(x)の含有量は、架橋性基を有する水溶性ポリマーに対して1wt%以上が好ましく、5wt%以上がより好ましい。また、300wt%以下が好ましく、200wt%以下がより好ましい。重合体粒子(x)の含有量が1wt%以上であればゲルの強靭性が増す傾向があり、300wt%以下であれば架橋性基を有する水溶性ポリマーの硬化を阻害せずにゲルを形成できる傾向がある。
前記未硬化ゲル溶液の溶媒としては水が好ましい。さらに、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、等のモノアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールなどの水溶性溶媒を混合して使用してもよい。
前記未硬化ゲル溶液には、重合開始剤が含まれることが好ましい。未硬化ゲル溶液に重合開始剤として熱重合開始剤および/又は光重合開始剤を添加し、所定の型枠等に流し込んだ後、刺激を与えることにより、本発明の刺激硬化性ゲルが得られる。また3Dプリンターのように材料押出堆積法やインクジェット法を用いる場合は、未硬化ゲル溶液をシリンジやプリンターヘッドから吐出した後に刺激により硬化させ、所望の形状に成形することが可能である。さらに光造形法では光重合開始剤を含む未硬化ゲル溶液をバスタブ型の容器に入れ、光造形することで所望の形状に成形することが可能である。
熱重合開始剤としては、ラジカル重合で一般的なアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤が使用できるが、透明性や物性に優れたゲルを得るためには気体を発生しない過酸化物系重合開始剤が好ましい。また、還元剤と組み合わせたレドックス系重合開始剤を使用してもよい。前記のとおり、レドックス系重合開始剤であれば過酸化物系重合開始剤と還元剤の混合という刺激により硬化させることが可能である。
未硬化ゲル溶液に水溶媒を用いる場合は、水溶性の高い過酸化物系重合開始剤が好ましい。具体的には、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの無機過酸化物が挙げられる。レドックス系重合開始剤として組み合わせる還元剤としては既知の還元剤が使用できるが、これらの中でも水溶性の高いN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ハイドロサルファイトナトリウムなどが好ましい例として挙げられる。
既に述べたように、気体を発生しない過酸化物系重合開始剤が好ましく使用されるが、特にゲルの透明性や物性が問われない場合は水溶性のアゾ系重合開始剤を用いてもよい。具体的には、例えば2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩(商品名「VA−044」、和光純薬工業(株)製)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物(商品名「VA−044B」、和光純薬工業(株)製)、2,2’−アゾビス[2−メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩(商品名「V−50」、和光純薬工業(株)製)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物(商品名「VA−057」、和光純薬工業(株)製)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](商品名「VA−061」、和光純薬工業(株)製)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](商品名「VA−086」、和光純薬工業(株)製)、2,2’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)(商品名「V−501」、和光純薬工業(株)製)などが挙げられる。
光重合開始剤としては、紫外線(UV)や可視光線などの光線によって重合を開始させるものであれば特に問題なく使用できるが、水溶性を示すものが好ましい。具体的には、例えばα−ケトグルタル酸、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名「Irgacure2959」、BASF社製)、フェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸リチウム塩(商品名「L0290」、東京化成工業(株)製)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](商品名「VA−086」、和光純薬工業(株)製)、エオジンYなどが挙げられる。
光重合開始剤を含む未硬化ゲル溶液を硬化させる場合、未硬化ゲル溶液は光吸収剤を含んでいてもよい。光吸収剤は、光造形法の3Dプリンターによる造形の際に精密性を確保するために必要となることが多い。光吸収剤としては、水溶性を示すものであれば特に限定されないが、ケミプロ化成(株)製「KEMISORB111」、「KEMISORB11S」やBASF社製「Tinuvin477−DW」、「UVA805」、「Tinuvin1130」などが挙げられる。
光重合開始剤を含む未硬化ゲル溶液を硬化させる場合、未硬化ゲル溶液はさらに重合禁止剤を含んでいてもよい。重合禁止剤としては水溶性を示すヒドロキノンやp−メトキシフェノールなどが例示できるが、これ以外の重合禁止剤も利用できる。重合禁止剤を添加することにより未硬化ゲル溶液の保存安定性を高めることができる。
前記未硬化ゲル溶液には、本発明の効果を損なわない範囲内で、色素、防腐剤、防黴剤などの添加剤が含まれていてもよい。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明の刺激硬化性ゲルはそのまま使用することもできるが、水などの溶媒に浸漬して平衡膨潤状態にした後に使用してもよい。浸漬操作によって未反応原料や非架橋ポリマー成分を除去する効果も期待できる。未反応原料や非架橋ポリマー成分を更に除きたい場合は、溶媒を交換して浸漬操作を繰り返せばよい。しかし、本発明の刺激硬化性ゲルは架橋性基を有する水溶性ポリマーを用いるため、そのまま使用しても通常モノマーが示す毒性をほとんど示さないという特長がある。
本発明の刺激硬化性ゲルの用途としては、例えば紙おむつや生理用品などの衛生用品、コンタクトレンズや創傷被覆材などの体外で使用する医療機器、衝撃吸収材料、制振・防音材料などに限らず、医療機器の表面コーティングや人工臓器などのより高度な医療機器、現場施工が必要な土壌改良材などの土木・建築用材料、保水材料などの農業用資材、オンディマンドで成形する3Dプリンター用の硬化性原料などが挙げられる。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
本実施例および比較例において使用した各成分は以下の通りである。
(単量体)
・アクリル酸n−ブチル:日本触媒(株)製
・トリメチロールプロパントリメタクリレート:商品名「ライトエステルTMP」、共栄社化学(株)製
・アリルメタクリレート:東京化成工業(株)製
・ジシクロペンタニルメタクリレート:商品名「ファンクリルFA−513M」、日立化成(株)製
・ブタジエン:JSR(株)製
・スチレン:キシダ化学(株)製
(水溶性ポリマー)
・ポリビニルアルコール:商品名「PVA117」、(株)クラレ製
・ポリビニルアルコール:商品名「PVA105」、(株)クラレ製
(架橋剤)
・N,N’−メチレンビスアクリルアミド:東京化成工業(株)製
(連鎖移動剤)
・ドデシルメルカプタン:アルドリッチジャパン(株)製
(乳化剤)
・商品名「エレミノールJS−20」三洋化成工業(株)製
・メルカプト基変性PVA:(株)クラレ製
・ラウリル硫酸ナトリウム:商品名「エマール2FG」、花王(株)製
(ラジカル重合開始剤)
・ペルオキソ二硫酸ナトリウム:和光純薬工業(株)製
・過酸化水素水溶液:和光純薬工業(株)製
・クメンヒドロパーオキシド:商品名「パークミルH−80」、日油(株)製
(遷移金属塩)
・硫酸鉄(II)(7水和物):和光純薬工業(株)製
(金属イオンキレート剤)
・エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム:関東化学(株)製
(増粘抑制剤)
・塩化ナトリウム:和光純薬工業(株)製
・酢酸ナトリウム:和光純薬工業(株)製
(老化防止剤)
・オリゴマー型ヒンダードフェノール:商品名「セロゾールK-840」、中京油脂(株)製
(溶媒)
・イオン交換水:電気伝導率0.08×10−4S/m以下のイオン交換水
実施例および比較例において、各種分析条件は以下に示す方法に従って行った。
[乳化液中の平均分散粒子径]
重合体粒子(x)の乳化液(0.1mL)とイオン交換水(10mL)の混合液を動的光散乱測定装置(装置名:FPAR−1000、大塚電子(株)製)を用いて粒子の粒度分布を体積基準で測定し、メディアン径を平均分散粒子径として測定した。
[架橋性基を有する水溶性ポリマーの重合度]
下記合成例において得られた架橋性基を有する水溶性ポリマーの重合度は、JISK6726:1994年に準じて測定した。
[架橋性基の導入率]
下記合成例において得られた架橋性基を有する水溶性ポリマーの架橋性基の導入率は、プロトンNMRにより測定した。架橋性基のシグナルと水溶性ポリマーのシグナルの積分値の比から導入率が求められる。
(プロトンNMR測定条件)
装置:日本電子株式会社製 核磁気共鳴装置「JNM−ECX400」
温度:25℃
実施例および比較例における評価は、以下に示す方法に従って行った。
[刺激硬化性]
下記実施例および比較例により作製したゲルについて、一体感のあるゲルを形成したものは「○」、弱いが何とか一体感を示すゲルを形成したものは「△」、全体が硬化せずゲルとして取り扱えないものは「×」とした。
[ゲルの引張強度の評価]
実施例1〜7および比較例1〜5で得られたゲルの引張強度を次の手順により測定した。特開2015−004059号公報に記載された方法に従ってJISK−6251−3規格のダンベルカッターを用いて、2mm厚で作成した各ゲルシートから試験片を切り出した。食紅を使用して試験片に標点を2つ付け、ノギスでその標点間距離を測定した。マイクロメータを使用して、試験片の幅と厚みを測定した。イーストン社製引張試験機に試験片をセットして、画像データを取得しながら破断応力および破断歪を測定した。なお、1%、100%の歪に対応するそれぞれの応力から簡易的に初期弾性率を求めた。結果を表2に示す。
[合成例1]
(アクリル酸n−ブチル(BA)/ジシクロペンタニルメタクリレート(TCDMA)粒子)
(工程1)
乾燥させた2Lの耐圧重合槽にイオン交換水240g、「エレミノールJS−20」91.368g、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.08gを添加した後、30分間窒素ガスにてバブリングすることで脱酸素処理を行い、水溶液を得た。
該水溶液を60℃に昇温した後、重合体粒子(x)を形成する単量体混合物(アクリル酸n−ブチル:トリメチロールプロパントリメタクリレート:アリルメタクリレート=360:1.8:3.6(重量比))365.4gを脱酸素処理した後、10mL/分の速度で連続的に添加した。
(工程2)
総単量体転化率が99wt%を超えたことを確認した時点で、前記工程1で得られた乳化液に、重合体被膜(y)を形成するジシクロペンタニルメタクリレート45gを脱酸素処理した後、10mL/分の速度で連続的に添加した。
(工程3)
総単量体転化率が99wt%を超えたことを確認した時点で、前記工程2で得られた乳化液を100℃に昇温し、2時間撹拌することで残留重合開始剤の分解処理を行った。重合槽を25℃まで冷却して、被覆重合体粒子(BA/TCDMA粒子)の乳化液を取り出した。乳化液中の平均分散粒子径は47.4nm、固形分濃度は28wt%であった。重合体粒子(x)のガラス転移温度は−55℃であった。
[合成例2]
(BA/メルカプト基変性PVA粒子)
(工程1)
乾燥させた2Lのガラス製重合槽に、メルカプト基変性PVA(重合度500、けん化度88mol%)の2wt%水溶液537.12g、硫酸鉄(II)(7水和物)0.0059g、酢酸ナトリウム0.145gを添加し、1規定硫酸水溶液でpH5.0に調整した後、30分間窒素ガスにてバブリングすることで脱酸素処理を行い、水溶液を得た。
該水溶液を70℃に昇温した後、アクリル酸n−ブチル133.16g、ドデシルメルカプタン0.66gからなる混合物を脱酸素処理した後、一括で添加した。この後0.9wt%過酸化水素水溶液86.74gを2.48mL/分の速度で連続的に添加し、40分間かけて添加が終了するまで攪拌しながら重合を行った。
(工程2)
前記工程1で得られた乳化液に、1規定硫酸水溶液でpH5.0に調整したメルカプト基変性PVAの10wt%水溶液107.42gを脱酸素処理した後、一括で添加した。続いて、アクリル酸n−ブチル133.16g、ドデシルメルカプタン0.66gからなる混合物を脱酸素処理した後、一括で添加した。この後0.9wt%過酸化水素水溶液86.74gを2.48mL/分の速度で連続的に添加し、40分間かけて添加が終了するまで攪拌しながら重合を行った。
(工程3)
前記工程2で得られた乳化液に、工程2と同様の操作を行った。
(工程4)
前記工程3で得られた乳化液に、工程3と同様の操作を行った後、4時間攪拌し、総単量体転化率が99.5%を超えたことを確認した時点で、重合槽を25℃まで冷却して、重合体粒子(BA/メルカプト基変性PVA粒子)の乳化液を取り出した。乳化液中の平均分散粒子径は306.3nm、固形分濃度は33wt%であった。重合体粒子(x)のガラス転移温度は−55℃であった。
[合成例3]
(ブタジエン/スチレン粒子)
クメンヒドロパーオキシド3.45g、ラウリル硫酸ナトリウム3.75g、イオン交換水150gからなる乳化液に脱酸素処理を行い、ラジカル重合開始剤乳化液を得た。
乾燥させた0.5Lの耐圧重合槽にイオン交換水200g、ラウリル硫酸ナトリウム5g、硫酸鉄(II)(7水和物)0.032g、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム0.02g、塩化ナトリウム0.2gを添加した後、30分間窒素ガスにてバブリングすることで脱酸素処理を行い、水溶液を得た。
該水溶液を60℃に昇温した後、脱酸素処理した重合体粒子(x)を形成するブタジエン78gを添加した。次いで、前記ラジカル重合開始剤乳化液を0.02mL/分の速度で連続的に添加することで重合を開始した。単量体転化率が95wt%を超えたことを確認した時点で、得られた乳化液に前記ラジカル重合開始剤乳化液を0.02mL/分の速度でフィードしながら、脱酸素処理した重合体被膜(y)を形成する単量体混合物(ブタジエン:スチレン:トリメチロールプロパントリメタクリレート=2.8:19:0.2(重量比))22gを1.7mL/分の速度で連続的に添加した。単量体混合物の添加後、単量体転化率が95wt%を超えたことを確認した時点で、前記ラジカル重合開始剤乳化液の添加を停止させ、重合停止剤であるヒドロキノンの脱酸素水溶液を添加した。重合槽を25℃まで冷却して、被覆重合体粒子(ブタジエン/スチレン粒子)の乳化液を取り出した。
なお、重合開始から重合停止剤添加までの重合時間は10時間であった。該乳化液に老化防止剤としてK−840を0.5g添加し、乳化液中の平均分散粒子径は48nm、固形分濃度は34wt%であった。重合体粒子(x)のガラス転移温度は−76℃であった。
[合成例4]
[架橋性基を有する水溶性ポリマーの合成1]
40g(モノマー繰り返し単位:911mmol)の「PVA117」を1Lのジムロート冷却管を備えたセパラブルフラスコに入れ、350mLのDMSOを加えてメカニカルスターラーにて攪拌を開始した。ウオーターバスにより80℃まで温度を上昇させて、攪拌を4時間続けた。PVAが溶解したことを目視で確認し、加熱攪拌しながらメタクリル酸ビニル1.2g(10.8mmol)を直接加え、さらに80℃で3時間攪拌した。放冷後、2Lのメタノール中に攪拌しながら反応溶液を注ぎいれた。攪拌を止め、1時間そのまま放置した。得られた固体を回収した後、さらに1Lのメタノールに1時間浸漬して洗浄した。この洗浄作業を合計3回行った。回収した固体を室温で一晩真空乾燥してメタクリロイルオキシ化PVAを得た。メタクリロイルオキシ基導入率はPVAのモノマー繰り返し単位に対して1.2mol%であった(以下、MA−PVA117(1.2)と略称する)。同じ方法を用いて、PVAの重合度およびメタクリロイルオキシ基導入率を種々変更したメタクリロイルオキシ化PVAを製造した(表1)。
Figure 0006884068

注1)けん化度は約98.0〜99.0mol%
注2)PVA重合度は、JISK6726:1994年に準拠して測定した
[合成例5]
[架橋性基を有する水溶性ポリマーの合成2]
60g(モノマー繰り返し単位:1.36mol)の「PVA117」を1Lのジムロート冷却管を備えたセパラブルフラスコに入れ、540mLのイオン交換水を加えてメカニカルスターラーにて攪拌を開始した。ウオーターバスにより80℃まで温度を上昇させて、攪拌を4時間続けた。PVAが溶解したことを目視で確認し、40℃まで温度を低下させた。40℃で攪拌しながら5−ノルボルネン−2−カルボキシアルデヒド2.5g(20.5mmol)、10vol%硫酸水溶液22mLを直接加え、さらに40℃で4時間攪拌した。放冷後、1規定NaOH水溶液を80mL添加して中和し、分画分子量3500の透析膜に入れて脱塩した(5Lのイオン交換水に対して4回実施)。2Lのメタノール中に攪拌しながら脱塩後の水溶液を注ぎいれ、1時間そのまま放置した。得られた固体を回収した後、さらに1Lのメタノールに1時間浸漬して洗浄した。回収した固体を室温で一晩真空乾燥してノルボルネン化PVAを得た。ノルボルネン導入率はPVAのモノマー繰り返し単位に対して1.3mol%であった(以下、Nor−PVA117(1.3)と略称する)。
[実施例1]
20gのMA−PVA117(1.2)に80mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間攪拌しながら溶解した。このMA−PVA溶液15gに合成例1のBA/TCDMA粒子の乳化液(固形分濃度28wt%)を4.5g、イオン交換水を10.5g加えて攪拌した。続けて、水溶性光重合開始剤である「Irgacure2959」を0.1wt%となるように加えて未硬化ゲル溶液を作製した。
次いで、2mm厚のスペーサーを挟み込んだガラス板間にこの溶液を流し込み、GSユアサ製メタルハライドランプを用いて145mW/cmにて30秒(照射エネルギー量:1200mJ/cm)の紫外線(UV)を照射したところ十分に硬化し、強靭な一体感のあるゲルが得られた。
[実施例2]
実施例1で作製したMA−PVA溶液15gに合成例1のBA/TCDMA粒子の乳化液(固形分濃度28wt%)を9g、イオン交換水を6g加えて攪拌した。続けて、水溶性光重合開始剤である「Irgacure2959」を0.1wt%となるように加えて未硬化ゲル溶液を作製した。この溶液を実施例1と同様にUVを照射したところ十分に硬化し、強靭な一体感のあるゲルが得られた。
[実施例3]
MA−PVA117(1.2)に代わってMA−PVA117(0.6)を使用した以外は実施例1と同様にUVを照射したところ十分に硬化し、強靭な一体感のあるゲルが得られた。
[実施例4]
実施例1で作製したMA−PVA溶液15gに合成例2のBA/メルカプト基変性PVA粒子の乳化液(固形分濃度33wt%)を0.9g、イオン交換水を14.1g加えて攪拌した。続けて、レドックス系重合開始剤である30mgの過硫酸アンモニウム(APS)およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を45μL添加して攪拌した。
レドックス系重合開始剤を添加した後、迅速に2mm厚のスペーサーを挟み込んだガラス板間にこの溶液を流し込み、1時間室温で硬化させたところ十分に硬化し、強靭な一体感のあるゲルが得られた。
[実施例5]
実施例1で作製したMA−PVA溶液15gに合成例3のブタジエン/スチレン粒子の乳化液(固形分濃度34wt%)を4g、イオン交換水を11g加えて攪拌した。続けて、水溶性光重合開始剤である「Irgacure2959」を0.1wt%となるように加えて未硬化ゲル溶液を作製した。この溶液を実施例1と同様にUVを照射したところ十分に硬化し、強靭な一体感のあるゲルが得られた。
[実施例6]
20gのMA−PVA117(1.2)および10gのMA−PVA105(1.2)に70mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間攪拌しながら溶解した。このPVA溶液15gに合成例1のBA/TCDMA粒子の乳化液(固形分濃度28wt%)を9g、イオン交換水を6g加えて攪拌した。続けて、水溶性光重合開始剤である「Irgacure2959」を0.1wt%となるように加えて未硬化ゲル溶液を作製した。この溶液を実施例1と同様にUVを照射したところ十分に硬化し、強靭な一体感のあるゲルが得られた。
[実施例7]
20gのNor−PVA117(1.3)に80mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間攪拌しながら溶解した。このNor−PVA溶液15gに合成例1のBA/TCDMA粒子の乳化液(固形分濃度28wt%)を4.5g、イオン交換水を10.5g、チオール基を有するポリチオールとして3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオールを80mg加えて攪拌した。続けて、水溶性光重合開始剤である「Irgacure2959」を0.1wt%となるように加えて未硬化ゲル溶液を作製した。この溶液を実施例1と同様にUVを照射したところ十分に硬化し、強靭な一体感のあるゲルが得られた。
[比較例1]
10gのMA−PVA117(1.2)に90mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間攪拌しながら溶解した。これに光重合開始剤として0.1wt%の「Irgacure2959」を加え、実施例1と同様にUVを照射したところ十分に硬化し、一体感のあるゲルが得られた。
[比較例2]
MA−PVA117(1.2)に代えて、MA−PVA117(0.6)を使用した以外は比較例1と同様にUVを照射したところ十分に硬化し、一体感のあるゲルが得られた。
[比較例3]
10gのMA−PVA117(1.2)に90mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間攪拌しながら溶解した。この溶液を実施例4と同様に硬化させたところ十分に硬化し、一体感のあるゲルが得られた。
[比較例4]
特許文献6を参考に第1のポリマーと第2のポリマーから形成される相互侵入型ゲルを以下のように作製した。1mol/Lの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、0.04mol/LのN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)、および光重合開始剤として0.001mol/Lのα−ケトグルタル酸を含む水溶液100mLにUVを7時間照射して重合を行い、架橋度4mol%のポリAMPSゲル(PAMPSゲル)を得た。得られたPAMPSゲルを熱乾燥機に1日入れて乾燥させ、乳鉢に入れて粉砕することでPAMPSゲルの微粒子を得た(以下、第1のポリマーと称することがある)。
一方、N,N−ジメチルアクリルアミド(DAAm)1mol/Lに対し、架橋剤としてDAAmに対して0.01mol%のMBAAと、水溶性光重合開始剤としてモノマー溶液に対して0.1wt%の「Irgacure2959」とを含むモノマー溶液を作製した(以下、第2のポリマーを形成するモノマー溶液と称することがある)。
第1のポリマーと第2のポリマーを形成するモノマー溶液との比率が重量比で1:30となるような量で、第2のポリマーを形成するモノマー溶液に、第1のポリマーの微粒子を投入した。この溶液を実施例1と同様にUVを照射したところ、全体が硬化せず一体感のあるゲルが得られなかった。
[比較例5]
比較例5では比較例4にて製造した第1のポリマーと第2のポリマーから形成される相互侵入型ゲルをレドックス系重合開始剤により作製した。1mol/LのDAAmに対し、架橋剤としてDAAmに対して0.01mol%のMBAAを含むモノマー溶液を作製した。比較例2で作製した第1のポリマーとこのモノマー溶液との比率が重量比で1:30となるような量で混合した。この溶液を実施例4と同様に硬化させたところ、弱いが何とか一体感を示すゲルが得られた。
実施例および比較例における架橋性基を有する水溶性ポリマー、モノマー、重合体粒子、重合開始剤の組成および刺激硬化性の評価結果を表2に示す。
Figure 0006884068
本発明によれば、硬化性と安全性に優れ、機械的強度が高い刺激硬化性ゲルが得られるため、例えば紙おむつや生理用品などの衛生用品、コンタクトレンズや創傷被覆材などの体外で使用する医療機器、衝撃吸収材料、制振・防音材料などに限らず、医療機器の表面コーティングや人工臓器などのより高度な医療機器、現場施工が必要な土壌改良材などの土木・建築用材料、保水材料などの農業用資材、オンディマンドで成形する3Dプリンター用の硬化性原料など様々な分野への展開が期待される。

Claims (5)

  1. 架橋性基を有するポリビニルアルコールおよびガラス転移温度が25℃以下である重合体粒子(x)を含む刺激硬化性ゲルであって、
    前記刺激が活性エネルギー線および熱から選ばれる少なくとも1種である、刺激硬化性ゲル
  2. 架橋性基が、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルフェニル基およびこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の刺激硬化性ゲル。
  3. 架橋性基の導入率が、架橋性基を有するポリビニルアルコールの繰り返し単位に対して0.01〜10mol%である、請求項1又は2に記載の刺激硬化性ゲル。
  4. 重合体粒子(x)の平均粒子径が0.01〜10μmである、請求項1〜3のいずれかに記載の刺激硬化性ゲル。
  5. 重合体粒子(x)が被覆重合体粒子である、請求項1〜のいずれかに記載の刺激硬化性ゲル。
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