JP6881691B2 - プレス成形部品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
絞り成形は、通常、ダイ、パンチ、及びブランクホルダー(しわ押さえ)から成る金型を用いて行われる。絞り成形は、例えば、金属板の周囲をダイとブランクホルダーで押さえた状態で、パンチとダイの距離を近づけることで金属板に絞り加工を施す。
(1- sinθ)/cosθ > 0.95 ・・・(1)
(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) <1.5 ・・・(3)
1.5 ≦(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) <5.0 ・・・(4)
Rd > Rp ・・・(5)
(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) <1.4 ・・・(7)
1.4 ≦(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) <2.00 ・・・(8)
Rd > Rp ・・・(9)
本実施形態は、図1に示すように、天板部1と天板部1に連続する縦壁部2及びフランジ部3を有し、かつ、平面視で見て、天板部1と縦壁部2の境界部5の少なくとも一部が長手方向に向かうにつれて縦壁部2側に変位して凹状に湾曲した湾曲部4を有する部品形状からなるプレス成形部品20を対象とする。このようなプレス成形部品20は、例えば、平面視でL字形状やT字形状となっている部品である。
「長手方向に向かうにつれて縦壁部2側に変位して凹状に湾曲する」とは、天板部1と縦壁部2との間の境界部5が、長手方向に沿って縦壁部2側からみた曲率半径の方が小さくなるように湾曲していることを指す。本明細書では、このような少なくとも一部が長手方向に向かうにつれて縦壁部2側に変位して凹状に湾曲した湾曲部4を有するプレス成形部品20の部品形状を、湾曲含有部品形状10とも記載する。
本実施形態を適用可能な湾曲含有部品形状10の他の例として、図2に示すような、平面視で見てT字形状に湾曲した部品形状を挙げることが出来る。図2の例では、天板部1の幅方向両側が幅方向に張り出すように湾曲して両側にそれぞれ個別に湾曲部4が形成される例である。なお、本実施形態は、天板部1の幅方向一方にだけ縦壁部2が存在するような部品形状であっても適用可能である。
本発明は、このような知見に基づきなされたものである。
ここで、湾曲含有部品形状10における湾曲部4の形状(湾曲内側の形状)について、図3に示すように、断面形状において、縦壁部2の高さをH[mm]、天板部1に対する縦壁部2の傾斜角度をθ[deg]、天板部1と縦壁部2の境界部5のフィレットの曲率半径をRp[mm]、縦壁部2とフランジ部3の境界部6のフィレットの曲率半径をRd[mm]と定義する。また、図4に示すように、平面視における天板部1と縦壁部2の境界部5の湾曲部4での曲率半径をr[mm]と定義する。これらの変数は、成形部品20の湾曲部4の形状を規定する形状パラメータとなる。ここで、天板部1に対する縦壁部2の傾斜角度θとは、図3に示すように、天板部に直交する方向を0度とし、そこから天板部1に対し縦壁部2が開く方向への角度の増加分である。すなわち、傾斜角度θは、裏面側で天板部1と縦壁部2とで形成される鈍角から90度引いた角度である。
まず、本実施形態の第1のプレス成形部品の形状条件は、湾曲部4における傾斜角度θが下記式(1)を満足することを条件とする。
(1- sinθ)/cosθ > 0.95 ・・・(1)
0.85 < (1- sinθ)/cosθ ≦ 0.9 ・・・(2)
「A条件」
下記式(3)を満足する。
(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) ≦1.5・・・(3)
「B条件」
下記式(4)及び式(5)を満足する。
1.5 ≦(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) <5.0・・・(4)
Rd > Rp ・・・(5)
(1- sinθ)/cosθ ≦ 0.85 ・・・(6)
「C条件」
下記式(7)を満足する。
(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) <1.4 ・・・(7)
「D条件」
下記式(8)及び式(9)を満足する。
1.4 ≦(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) <2.0 ・・・(8)
Rd > Rp ・・・(9)
金属板がプレス加工(曲げ加工)されて湾曲含有部品形状10に成形されると、図5に示すように、湾曲部4において、天板部1の縦壁部2寄り部分では長手方向に沿って圧縮変形が発生し、フランジ部3では長手方向に沿って縮み変形が作用する。そして、この天板部1とフランジ部3との変形状態の差に起因して、縦壁部2にしわが発生する。しかし、曲げ加工の条件によっては、天板部1がパッドとパンチにより押さえられているため、図6に示すように、圧縮変形による天板部1の座屈は生じにくく、フランジ部3では、発生する引張変形がなるべく小さくなるように、湾曲部4の縦壁部2Aに隣り合う縦壁部2Bが、せん断変形しながら成形される。この結果、天板部1の圧縮変形及びフランジ部3の引張変形が低減されることで、縦壁部2にしわが発生しにくくなると考えられる。
SDR =(1− sinθ)/cosθ ・・・(10)
すなわち、式(10)で定義されるSDRの値が大きいほど、L字形状内側の湾曲部4に隣り合う縦壁部2でせん断変形が発生しやすいため、湾曲部4の縦壁に発生するしわが小さくなると考えられる。なお、SDRの上限値は1である。
Eindx =(r− H・tanθ)/(r− (H/cosθ))
・・・・式(11)
式(11)で示した伸び変形の指標値Eindxが小さくなるほど、金属板11を成形部品形状にプレス成形した際に、フランジ部3に発生する引張変形が抑制されて、縦壁部2Aに発生するしわが抑制されると考えられる。
1) SDR > 0.95 の場合、全ての幾何学形状において、湾曲部4の縦壁部2にしわが発生しない。
2) 0.85 < SDR ≦ 0.95 の場合は、
Eindx < 1.5 のとき
又は、
1.5 ≦ Eindx < 5.0 かつ Rd > Rp のとき、
湾曲部4の縦壁部2にしわが発生しない。
3) SDR ≦ 0.85 の場合は、
Eindx < 1.4 のとき、
又は、
1.4 ≦ Eindx < 2.0 かつRd > Rp のとき、
湾曲部4の縦壁部2にしわが発生しない。
ここで、上記説明は、プレス成形として曲げ成形を適用した場合を想定して説明している。ただし、曲げ成形に比べ、絞り成形における湾曲部4の縦壁部2でのしわの発生有無の形状条件は緩いため、上記しわが発生しない形状条件は、絞り成形(絞り加工)であっても適用することができる。
ここで、素材となる金属板11は、板の歩留りを考慮すると、成形部品形状を展開した形状を使用することが好ましい。しかし、歩留りが許容される範囲内であれば、部品形状に必要な面積よりも広い面積からなる金属板11を、プレス成形の素材として用いてもよい。
素材の金属板11としては、引張強度が4400MPa以上1800MPa以下の鋼板が好適である。
なお、上記の各式の閾値を決定する際には、素材としての金属板11に引張強度が980MPaの鋼板を適宜使用した。
湾曲部4の形状は、上述のように、縦壁部2の高さH[mm]、天板部1に対する縦壁部2の傾斜角度θ[deg]、天板部1と縦壁部2の境界部5のフィレットの曲率半径Rp[mm]、縦壁部2とフランジ部3の境界部6のフィレットの曲率半径Rd[mm]、及び、平面視における天板部1と縦壁部2の境界部5の湾曲部4での曲率半径r[mm]を形状パラメータとして規定される。
湾曲含有部品形状10を、湾曲部4以外の形状の制約などの他の制約条件を加味して、本実施形態の第1〜第3のプレス成形部品の形状条件のいずれかを満足するように、成形部品20の形状を特定し、プレス加工によって成形部品を製造する。
例えば、天板部1に対する縦壁部2の傾斜角度θで規定されるSDRの値によって、本実施形態の第1のプレス成形部品〜第3のプレス成形部品の形状条件から形状条件を一つ選択する。そして、その選択した形状を満足するように湾曲部4の形状を選定してプレス成形部品20の形状を決定する。
ここで、プレス成形する金属板11は、前工程で予成形された金属板でも良い。また、上記のプレス成形で湾曲含有部品形状10に成形された部品は、最終製品形状となる前の中間部品であっても良い。
本実施形態においては、プレス成形部品20の形状条件を特定するだけで、平面視で見てL字形状やT字形状等を有する部品形状における湾曲部4の縦壁部2にしわが発生することを抑制することが可能となる。
980MPa級冷延鋼板(板厚1.4mm)を素材の金属板とし、湾曲含有部品形状10として、図12に示すようなT字形状を有する部品形状を設定した。この部品形状では、図12の紙面左側に、天板部1の幅方向両側にそれぞれ湾曲部4を有する。
上記部品の幾何学形状の成形解析条件として、以下の条件を採用した。
縦壁部の高さH :60mm
傾斜角度θ :2deg、7deg、12deg
湾曲部4におけるフランジ部3の外縁での長さf:30mm
パンチ肩R(境界部5の曲率半径Rp):10mm
ダイ肩R(境界部6の曲率半径Rd):8mm、12mm、16mm
湾曲部R(湾曲部の曲率半径r):100mm、150mm、200mm
成形解析時のパッド圧力は40ton、パッド31のストロークは75mmとした。また、金型と金属板11の間の摩擦係数は0.12で一定とした。
そして、曲げ加工時の成形下死点よりも15mm手前の時点での金属板11の成形解析結果を目視で観察し、湾曲部4の縦壁部2でしわの発生の有無を調査した。
2 縦壁部
3 フランジ部
4 湾曲部
5 境界部
6 境界部
10 湾曲含有部品形状
11 金属板
20 プレス成形部品
Claims (5)
- 天板部と上記天板部に連続する縦壁部及びフランジ部を有し、かつ、平面視で見て、上記天板部と上記縦壁部との境界部の少なくとも一部が長手方向に向かうにつれて上記縦壁部側に変位して凹状に湾曲した湾曲部を有するプレス成形部品であって、
断面形状において、上記縦壁部の高さをH[mm]、上記天板部に対する上記縦壁部の傾斜角度をθ[deg]、上記天板部と上記縦壁部との境界部の曲率半径をRp[mm]、上記縦壁部と上記フランジ部との境界部の曲率半径をRd[mm]とし、平面視における上記湾曲部での曲率半径をr[mm]と定義したとき、
上記湾曲部は、上記縦壁部の傾斜角度θが下記式(2)を満足し、
更に、上記湾曲部が、下記式(3)を満足するか、下記式(4)及び式(5)を満足することを特徴とするプレス成形部品。
0.85 < (1- sinθ)/cosθ ≦ 0.95 ・・・(2)
(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) <1.5 ・・・(3)
1.5 ≦(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) <5.0 ・・・(4)
Rd > Rp ・・・(5) - 天板部と上記天板部に連続する縦壁部及びフランジ部を有し、かつ、平面視で見て、上記天板部と上記縦壁部との境界部の少なくとも一部が長手方向に向かうにつれて上記縦壁部側に変位して凹状に湾曲した湾曲部を有するプレス成形部品であって、
断面形状において、上記縦壁部の高さをH[mm]、上記天板部に対する上記縦壁部の傾斜角度をθ[deg]、上記天板部と上記縦壁部との境界部の曲率半径をRp[mm]、上記縦壁部と上記フランジ部との境界部の曲率半径をRd[mm]とし、平面視における上記天板部と上記縦壁部との境界部の上記湾曲部での曲率半径をr[mm]と定義したとき、
上記湾曲部は、上記縦壁部の傾斜角度θが下記式(6)を満足し、
更に、上記湾曲部が、下記式(7)を満足するか、下記式(8)及び式(9)を満足することを特徴とするプレス成形部品。
(1- sinθ)/cosθ ≦0.85 ・・・(6)
(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) <1.4 ・・・(7)
1.4 ≦(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) <2.00 ・・・(8)
Rd > Rp ・・・(9) - プレス成形部品を構成する金属板の引張強度が440MPa以上1800MPa以下の鋼板であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載したプレス成形部品。
- 天板部と上記天板部に連続する縦壁部及びフランジ部を有し、かつ、平面視で見て、上記天板部と上記縦壁部との境界部の少なくとも一部が長手方向に向かうにつれて上記縦壁部側に変位して凹状に湾曲した湾曲部を有する部品形状にプレス成形してプレス成形部品を製造する際に、
断面形状において、上記縦壁部の高さをH[mm]、上記天板部に対する上記縦壁部の傾斜角度をθ[deg]、上記天板部と上記縦壁部との境界部の曲率半径をRp[mm]、上記縦壁部と上記フランジ部との境界部の曲率半径をRd[mm]とし、平面視における上記天板部と上記縦壁部との境界部の上記湾曲部での曲率半径をr[mm]と定義したとき、
上記湾曲部における、断面形状での上記天板部に対する上記縦壁部の傾斜角度θが下記式(12)を満足する形状に成形する場合、上記湾曲部を、下記式(13)を満足するか、下記式(14)及び式(15)を満足するように、曲げ加工又は絞り加工にてプレス成形して製造し、
上記湾曲部における、断面形状での上記天板部に対する上記縦壁部の傾斜角度θが下記式(16)を満足する形状に成形する場合、上記湾曲部を、下記式(17)を満足するか、下記式(18)及び式(15)を満足するように、曲げ加工又は絞り加工にてプレス成形して、
上記プレス成形部品を製造することを特徴とするプレス成形部品の製造方法。
0.85 < (1- sinθ)/cosθ ≦ 0.95 ・・・(12)
(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) <1.5 ・・・(13)
1.5 ≦(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) <5.0 ・・・(14)
Rd > Rp ・・・(15)
(1- sinθ)/cosθ ≦0.85 ・・・(16)
(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) <1.4 ・・・(17)
1.4 ≦(r- H・tanθ)/(r- (H/cosθ)) <2.00 ・・・(18) - プレス成形される素材の金属板の引張強度が440MPa以上1800MPa以下の鋼板であることを特徴とする請求項4に記載したプレス成形部品の製造方法。
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