パンチ及びダイによってプレス成形を行う際、ブランクは、ダイのパンチ側の縁に向かって引き込まれる。プレス方向から見て、ダイのパンチ側の縁がブランクの引き込まれる方向に凸に湾曲して延在する湾曲部を含み、ブランクがこの湾曲部に向かって引き込まれるプレス成形を伸びフランジ成形という。伸びフランジ成形では、ブランクがダイのパンチ側の縁に向かって引き込まれるにしたがって、ブランクのうち湾曲部に向かって引き込まれる部分は、引き込まれる方向を横断する方向に引き伸ばされる。一方、ダイのパンチ側の縁が湾曲部に隣接する真直部を含んでいる場合、ブランクのうち真直部に向かって引き込まれる部分は、引き込まれる方向を横断する方向に引き伸ばされない。ブランクは、ダイのパンチ側の縁における湾曲部と、当該湾曲部の両端部のそれぞれを通るダイのパンチ側の縁の垂線とで囲まれる領域において引き伸ばされる。これらのことは当業者にとって技術常識である。
しかしながら、本発明者等は、ブランクの縁については上記の引き伸ばしに該当しない引き伸ばしが生じることに気が付いた。以下、図12を参照して具体的に説明する。
図12は、通常のプレス成形に用いられるパンチ91及びダイ92、並びにプレス成形されるブランク200をプレス方向に対して垂直な平面に投影した図である。図12に示すように、ダイ92のパンチ91側の縁920は、パンチ91側に突出した凸部921を含んでいる。この凸部921は、湾曲部921aと、湾曲部921aの両側に設けられた真直部921bとを含んでいる。ブランク200の縁201は、ダイ92のパンチ91側の縁920に向かって凹に湾曲して延在する湾曲部211(図12中の太線)と、湾曲部211に隣接する直線部212とを含んでいる。
図12において矢印A1で示すように、プレス成形中、ブランク200の縁201は、ダイ92のパンチ91側の縁920に向かって引き込まれる。具体的には、ブランク200の縁201の各部は、ダイ92の縁920の法線方向又は垂線方向に引き込まれる。ブランク200がダイ92の縁920における真直部921bに向かって引き込まれる場合、ブランク200の縁201は実質的に変形しない。一方、ブランク200の縁201の湾曲部211がダイ92の縁920における湾曲部921aに向かって引き込まれるとき、プレス成形の前後で比較すると、ブランク200の縁201における湾曲部211の線長が伸びている。図12には、プレス成形中のブランク200の縁201’を破線で示し、プレス成形中のブランク200の縁201’における湾曲部211の線長を両矢印A2で示している。プレス成形により、ブランク200の縁201における湾曲部211の線長が拡大するため、ブランク200の縁201は湾曲部211で割れるおそれがある。
ブランク200の縁201の割れの課題は、湾曲部211がダイ92の縁920の凸部921の内側にあるときに発生する。より具体的には、凸部921と、凸部921の両端部920aのそれぞれを通るダイ92の縁920の垂線La,Lbとで囲まれる領域S1にブランク200の縁201の湾曲部211がある場合、プレス成形中にブランク200の縁201の引き伸ばしが発生し、縁201の割れが生じやすい。とりわけ、ブランク200の縁201とダイ92のパンチ91側の縁920とのダイ92の縁920の延在方向の垂線上の間隔において、ブランク200の湾曲部211の一方端部211aとダイ92の縁920との間隔w1が、ブランク200の湾曲部211の他方端部211bとダイ92の縁920との間隔w2と異なるとき、プレス成形中にブランク200の縁201のうちの湾曲部211が不均一に引き伸ばされ、湾曲部211に割れが生じやすい。そこで、本発明者等は、ブランク200の割れ、特に縁201の割れを抑制するため、ブランク200の縁201のうちプレス成形中に引き伸ばされて板厚が減少する部分に対して板厚方向に圧縮応力を加えることを着想し、実施形態に係るプレス成形品の製造方法を完成させた。
実施形態に係るプレス成形品の製造方法は、ダイとブランクホルダとでブランクを挟むこと、及び、パンチでブランクをプレス方向に押し込むことを備える。プレス方向から見たとき、ダイのパンチ側の縁は、パンチ側に突出したダイ縁凸部を含み、ダイ縁凸部は、パンチ側に凸に湾曲し且つ曲率半径400mm以下で延在するダイ縁湾曲部を含む。プレス方向から見たとき、ブランクの縁は、パンチ側に凹に湾曲し且つ曲率半径400mm以下で延在するブランク縁湾曲部を含み、ブランク縁湾曲部とダイの縁とのダイの縁の延在方向の垂線上の間隔は、ブランク縁湾曲部の一方端部と他方端部とで異なり、ブランクホルダはダイとともにブランクの縁の一部を挟む。プレス方向から見たとき、ブランクホルダのパンチ側の縁は、ダイの縁に向かって凸の形状を有し、ダイの縁とブランクホルダの縁とのダイの縁の延在方向の垂線上の間隔は、ブランクホルダの縁に沿って変化する。プレス方向から見たとき、ブランクホルダの縁と、ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁とのブランクの当該縁の延在方向の垂線上の間隔は、ブランクの縁に沿って変化する。プレス方向から見たとき、この間隔は、ブランク縁湾曲部で最も大きい(第1の構成)。
プレス方向から見てダイのパンチ側の縁が凸部(ダイ縁凸部)を含み、このダイ縁凸部が湾曲部(ダイ縁湾曲部)を含み、ブランクの縁がパンチ側に凹んだ湾曲部(ブランク縁湾曲部)を含む場合、ブランクがダイ縁湾曲部に向かって引き込まれるにしたがってブランクの縁の板厚は薄くなる。より具体的には、ブランクの縁とダイのパンチ側の縁とのダイの縁の延在方向の垂線上の間隔において、ブランク縁湾曲部の一端部とダイの縁との間隔が、ブランク縁湾曲部の他端部とダイの縁との間隔と異なる場合、プレス成形においてブランク縁湾曲部が不均一に引き伸ばされ、ブランク縁湾曲部の板厚が減少する。
これに対して、第1の構成に係るプレス成形品の製造方法では、プレス方向から見たとき、ブランクホルダがダイとともにブランクの縁の一部を挟み、且つ、ブランクホルダの縁は、ダイの縁に向かって凸の形状を有し、ダイの縁とブランクホルダの縁とのダイの縁の延在方向の垂線上の間隔は、ブランクホルダの縁に沿って変化し、さらに、ブランクホルダのパンチ側の縁と、ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁との間隔がブランク縁湾曲部で最大となっている。そのため、ダイ縁凸部の近傍までダイ縁凸部に引き込まれるブランク縁湾曲部をダイ及びブランクホルダで挟持して、プレス成形の終盤までブランク縁湾曲部に対して板厚方向に圧縮応力を加えることができる。これにより、プレス成形品の製造において、ブランクの割れ、より具体的にはブランクの縁の割れの発生を抑制することができる。
第1の構成において、プレス方向から見て、ブランクホルダのパンチ側の縁と、ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁との間隔は、ブランクの縁の延在方向に沿って変化している。より具体的には、ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁において、ブランクホルダの縁との間隔が最大となる箇所がブランク縁湾曲部に存在し、当該箇所以外でブランクホルダの縁との間隔が小さくなっている。そのため、プレス成形の際、ブランクのうちブランクホルダの縁とブランク縁湾曲部との間隔が最大となる箇所では成形の終盤までダイ及びブランクホルダによってブランクが押圧される一方、当該間隔が最大となる箇所に隣接する箇所では成形の終盤までブランクが押圧されない。これにより、プレス成形の際、ブランクの縁のうちブランクホルダの縁との間隔が大きく確保されている箇所、つまり板厚減少が想定されている箇所に他の箇所から材料を流入させることができ、ブランクの縁の板厚減少を緩和することができる。よって、ブランクの縁の割れの発生をさらに抑制することができる。
上記プレス成形品の製造方法において、ダイ縁凸部は、ダイ縁湾曲部のみからなっていてもよい(第2の構成)。
上記プレス成形品の製造方法において、プレス方向から見たとき、ダイ縁凸部は、ダイ縁湾曲部、及びダイ縁湾曲部の一方側に連続して設けられ且つ400mmよりも大きな曲率半径で延在するダイ縁真直部からなっていてもよい(第3の構成)。
上記プレス成形品の製造方法において、プレス方向から見たとき、ダイ縁凸部は、ダイ縁湾曲部、及びダイ縁湾曲部の両側それぞれに連続して設けられ且つ400mmよりも大きな曲率半径で延在するダイ縁真直部からなっていてもよい(第4の構成)。
上記プレス成形品の製造方法において、プレス方向から見たとき、ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁の線長は、ブランク縁湾曲部の線長の0.67倍以上2.50倍以下であってもよい(第5の構成)。この場合、ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁の全てが、ブランク縁湾曲部であることが好ましい(第6の構成)。あるいは、ブランク縁湾曲部の全てが、ブランクホルダとダイとに挟まれていることが好ましい(第7の構成)。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
<第1実施形態>
[プレス成形装置]
図1は、第1実施形態に係るプレス成形品の製造方法で用いられるプレス成形装置100の模式的な斜視図である。図1に示すように、プレス成形装置100は、パンチ10と、ダイ20と、ブランクホルダ30とを備える。図1では仮想線CLに対して片側のダイ20のみを示しているが、ダイ20は、パンチ10の両側に配置されていてもよい。これらのダイ20は、別体であってもよいし、一体に形成されていてもよい。本実施形態では、これらのダイ20の間の空間をダイ穴と称することがある。ブランクホルダ30は、ダイ20の各々に対応して設けられている。
パンチ10及びブランクホルダ30は、ダイ20に対してプレス方向Pに相対移動可能なように構成されている。プレス成形装置100では、例えば流体圧シリンダ等の駆動機構(図示略)により、パンチ10及びブランクホルダ30がプレス方向Pに移動してもよいし、ダイ20がプレス方向Pに移動してもよい。ブランクホルダ30は、例えばクッション等の駆動機構(図示略)により、パンチ10に対してプレス方向Pに相対移動可能となっている。特に限定されるものではないが、プレス方向Pは、例えば鉛直方向である。プレス方向Pが鉛直方向であれば、後述するブランク200(図4A)をパンチ10とダイ20の間に載置しやすい。
図2は、図1に示すプレス成形装置100の縦断面図である。プレス成形装置100の縦断面とは、プレス方向Pに平行且つパンチ10の長手方向に対して垂直な平面でプレス成形装置100を切断したときの断面である。プレス成形装置100の縦断面上でプレス方向Pに垂直な方向をプレス成形装置100の幅方向という。図2では、図1と同様、プレス成形装置100のうち、仮想線CLに対して片側の部分のみを示す。仮想線CLは、例えば、プレス成形装置100の幅方向の中心線である。
図2に示すように、パンチ10は、パンチ頂面11と、パンチ肩12と、パンチ側面13とを含んでいる。
パンチ頂面11は、プレス方向Pに対して交差する面である。パンチ頂面11は、プレス方向Pに対して垂直であってもよい。パンチ頂面11は、プレス成形装置100の縦断面視で、実質的に幅方向に延びている。パンチ肩12は、パンチ頂面11の端部に連続する。パンチ肩12は、プレス成形装置100の縦断面視で、例えば実質的に円弧状を有している。パンチ肩12が尖っているとプレス成形時にパンチ肩12でブランク200(図4A)を切断してしまうおそれがあるからである。パンチ肩12の曲率半径は、1.0mm以上であってもよい。パンチ側面13は、パンチ肩12を介してパンチ頂面11に接続されている。パンチ側面13は、プレス成形装置100の縦断面視で、パンチ肩12からプレス方向Pに延在している。プレス成形装置100の縦断面視で、パンチ側面13は、プレス方向Pと平行であってもよいし、プレス方向Pに対して傾いていてもよい。
ダイ20は、板押さえ面21と、ダイ肩22と、ダイ側面23とを含む。ダイ20の板押さえ面21は、例えば、プレス方向Pに対して実質的に垂直な平坦面である。ダイ肩22は、プレス成形装置100の縦断面視で、板押さえ面21のパンチ10側の端部に連続する。ダイ肩22は、プレス成形装置100の縦断面視で、例えば実質的に円弧状を有している。ダイ肩22が尖っているとプレス成形時にダイ肩22でブランク200(図4A)を切断してしまうおそれがあるからである。ダイ肩22の曲率半径は、1.0mm以上であってもよい。ダイ側面23は、ダイ肩22を介して板押さえ面21に接続されている。ダイ側面23は、プレス成形装置100の縦断面視で、ダイ肩22からプレス方向Pに延在している。ダイ側面23は、パンチ側面13に対応する形状を有している。
ブランクホルダ30は、プレス成形装置100の幅方向においてパンチ10の外側に配置されている。また、ブランクホルダ30は、ダイ20とプレス方向Pに対向するように配置されている。ブランクホルダ30は、板押さえ面31と、ホルダ肩32と、ホルダ側面33とを含む。
ブランクホルダ30の板押さえ面31は、ダイ20の板押さえ面21とプレス方向Pに対向する。板押さえ面31は、例えば、プレス方向Pに対して実質的に垂直な平坦面である。ホルダ肩32は、プレス成形装置100の縦断面視で、板押さえ面31のパンチ10側の端部に連続する。ホルダ側面33は、ホルダ肩32を介して板押さえ面31に接続されている。ホルダ側面33は、プレス成形装置100の縦断面視で、ホルダ肩32からプレス方向Pに延在している。ホルダ側面33は、プレス成形装置100の幅方向においてパンチ側面13と対向する。
プレス成形装置100は、縦断面視で幅中心線CLに対して対称な形状であってもよいが、幅中心線CLに対して非対称な形状であってもよい。
図3は、プレス方向Pから見たときのパンチ10、ダイ20、及びブランクホルダ30の関係を模式的に示す図である。言い換えると、図3は、プレス方向Pに対して垂直な平面に投影されたときのパンチ10、ダイ20、及びブランクホルダ30を示す模式図である。図3では、パンチ10の縁14を点線で示し、ダイ20の縁24を一点鎖線で示し、ブランクホルダ30の縁34を破線で示している。ダイ20とブランクホルダ30とを区別しやすくするため、ブランクホルダ30にはハッチングを付与している。また、図3では、パンチ10の縁14が一点鎖線で示されている。図3におけるパンチ10の縁14は、ダイ20の板押さえ面21と同一平面上にあるパンチ側面13である。
図3に示すように、プレス方向Pから見たとき、パンチ10のダイ20側の縁14は、ダイ20のパンチ10側の縁24に沿って延在している。ダイ20の縁24はダイ肩22である。パンチ10の縁14は、ダイ20の縁24に対応する形状を有する。例えば、プレス方向Pから見て、パンチ10の縁14は、全体にわたりダイ20の縁24と実質的に平行である。プレス方向Pから見たときのパンチ10の縁14とダイ20の縁24との間のクリアランスは、パンチ10とダイ20のプレス方向Pの相対的な動作を阻害しないように、プレス成形の素材であるブランクの板厚以上である。プレス方向Pから見たとき、ダイ20の縁24は、パンチ10側に突出したダイ縁凸部240を含んでいる。ダイ縁凸部240は、ダイ縁湾曲部241と、ダイ縁真直部242,243とを含んでいる。
ダイ縁湾曲部241は、プレス方向Pから見たとき、パンチ10側に凸に湾曲している。ダイ縁湾曲部241は、プレス方向Pから見たとき、曲率半径400mm以下で延在している。ダイ縁湾曲部241は、一定の曲率半径を有するものであってもよいし、曲率半径が変化するものであってもよい。本開示において、プレス方向Pから見たとき、ダイ20の縁24(ダイ縁凸部240)上に5.0mm間隔で配置した各点について、当該点とその両隣に位置する点との3点を通る円弧の曲率半径を測定し、曲率半径が400mm以下である区間をダイ縁湾曲部241、400mmよりも大きな曲率半径を有する区間を非湾曲部(真直部)とみなす。
ダイ縁真直部242,243は、ダイ縁湾曲部241の両端に連続して設けられている。プレス方向Pから見て、ダイ縁真直部242,243は、ダイ縁湾曲部241から遠ざかるにつれて互いに離れるようにダイ縁湾曲部241から延在している。プレス方向Pから見たとき、ダイ縁真直部242,243は、ダイ縁湾曲部241の両端の接線上に位置していてもよい。
ブランクホルダ30は、例えば、ダイ20の縁24のうち一部の領域のみに対応するように設けられる。プレス方向Pから見たとき、ブランクホルダ30は、その少なくとも一部がダイ縁凸部240内に配置されていることが好ましい。より好ましくは、ブランクホルダ30は、プレス方向Pから見たとき、ダイ縁湾曲部241に対応する位置に配置されている。本実施形態において、ブランクホルダ30は、プレス方向Pから見たとき、パンチ10に向かうにつれて実質的に先細りとなる形状を有する。図3に示す例において、ブランクホルダ30は、プレス方向Pから見て概略三角形状を有している。ただし、ブランクホルダ30の形状は、これに限定されるものではない。
本実施形態において、ブランクホルダ30のパンチ10側の縁34は、プレス方向Pから見て、ダイ20の縁24(例えばダイ縁凸部240又はダイ縁湾曲部241)に向かって凸の形状を有している。プレス方向Pから見たとき、ダイ20の縁24とブランクホルダ30の縁34との間隔は、ブランクホルダ30の縁34に沿って変化する。すなわち、ダイ20の縁24とブランクホルダ30の縁34との間隔は、ダイ20の縁24の全長にわたって一定ではない。この間隔は、プレス方向Pから見たときのダイ20の縁24の延在方向の垂線上における、ダイ20の縁24とブランクホルダ30の縁34との間隔である。言い換えると、この間隔は、プレス方向Pから見て、湾曲部241の法線方向又は真直部242,243の垂線方向における、ダイ20の縁24からブランクホルダ30の縁34まで距離である。ダイ20の縁24の延在方向の垂線とは、プレス方向Pから見たときのダイ肩22(図2)のパンチ10側の縁に対する垂線又は法線である。ダイ20の縁24の延在方向の垂線は、プレス成形装置100(図1及び図2)を用いてブランクを成形する際に、ブランクがダイ穴に向かって引き込まれる方向と概ね一致する。ブランクホルダ30の縁34は、プレス方向Pから見たときのホルダ肩32(図2)のパンチ10側の縁である。
図3に示す例では、プレス方向Pから見たとき、ダイ20の縁24とブランクホルダ30の縁34との間隔は、ダイ縁湾曲部241から遠ざかるほど大きくなっている。
[プレス成形品の製造方法]
次に、プレス成形装置100を用いたプレス成形品の製造方法について、図4A~図4Hを用いて説明する。
図4Aに示すように、プレス成形品の製造に当たり、まずブランク200を準備する。ブランク200は、例えば、圧延鋼板にブランキングを施して得ることができる。ブランク200は、例えば、目的のプレス成形品を展開した形状に形成されている。すなわち、ブランク200は、目的のプレス成形品を展開した形状の縁201を有する。目的のプレス成形品を展開した形状は、例えばプレス成形を解析する有限要素解析ソフトの成形品の形状から成形前のブランク形状を導出する機能を用いて得ることができる。ブランク200は、鋼板であってもよい。ブランク200は、好ましくは高張力鋼板である。ブランク200の引張強さは、例えば440MPa以上である。ブランク200の引張強さは、590MPa以上であってもよいし、780MPa以上であってもよい。ブランク200の引張強さは、980MPa以上であってもよいし、1180MPa以上であってもよいし、1300MPa以上であってもよい。ブランク200の板厚は、例えば、0.4mm以上6.0mm以下であってもよいし、1.0mm以上4.0mm以下であってもよい。
プレス成形品の製造方法は、ダイ20とブランクホルダ30とでブランク200を挟むこと、及び、パンチ10でブランク200をプレス方向Pに押し込むことを含む。
図4Bに示すように、まず、パンチ10及びブランクホルダ30と、ダイ20との間にブランク200を配置する。例えば、パンチ頂面11及びブランクホルダ30の板押さえ面31にブランク200を載置する。あるいは、ダイ20の板押さえ面21(図2)にブランク200を載置してもよい。
パンチ10及びブランクホルダ30と、ダイ20との間にブランク200を配置した後、図4Cに示すように、ブランクホルダ30とダイ20とをプレス方向Pにおいて相対的に接近させ、ダイ20の板押さえ面21とブランクホルダ30の板押さえ面31とでブランク200を挟んで押さえる。
ここで、図4Dに示すように、プレス方向Pから見たときのダイ20、ブランクホルダ30、及びブランク200の関係を説明する。図4Dは、プレス成形の前にプレス方向Pに対して垂直な平面に投影されたときのダイ20、ブランクホルダ30、及びブランク200を示す模式図である。図4Dでは、ダイ20の縁24を一点鎖線で示し、ブランクホルダ30の縁34を破線で示し、ブランク200の縁201を実線で示している。図4Dでは、パンチ10を省略している。
プレス方向Pから見て、ブランク200の縁201は、ダイ20の縁24と概ね同じ方向に延在している。ブランク200の縁201は、ブランク縁湾曲部211(図4Dの太線部)と、ブランク縁直線部212,213とを含んでいる。ブランク縁直線部212,213は、ブランク縁湾曲部211の両端に連続して設けられている。具体的には、ブランク縁湾曲部211とダイ20の縁24との間隔wは、ブランク縁湾曲部211の延在方向に沿って変化している。すなわち、ブランク縁湾曲部211とダイ20の縁24との間隔wは、ブランク縁湾曲部211の全長にわたって一定ではない。この間隔wは、プレス方向Pから見たときのダイ20の縁24の延在方向の垂線上における、ブランク縁湾曲部211とダイ20の縁24との間隔である。言い換えると、間隔wは、プレス方向Pから見て、ダイ20の湾曲部241の法線方向又は真直部242,243の垂線方向における、ブランク縁湾曲部211からダイ20の縁24までの距離である。ブランク縁湾曲部211とダイ20の縁24との間隔wは、ブランク縁湾曲部211の一方端部211aと他方端部211bとで異なっている。図4Dに示す例では、ブランク縁湾曲部211の一方端部211aとダイ20の縁24との間隔w1は、ブランク縁湾曲部211の他方端部211bとダイ20の縁24との間隔w2よりも大きい。
また、ブランク縁直線部212はダイ縁真直部242に対して平行に延在し、ブランク縁直線部213はダイ縁真直部243に対して平行に延在している。ブランク縁直線部212とダイ縁真直部242との間隔は、ブランク縁直線部213とダイ縁真直部243との間隔よりも大きい。ただし、ブランク縁直線部212がダイ縁真直部242に対して傾斜していてもよい。ブランク縁直線部213がダイ縁真直部243に対して傾斜していてもよい。
図4Dに示す例において、ブランク縁湾曲部211は、例えば、プレス方向Pから見たとき、ダイ縁湾曲部241に対応する位置に配置されている。ブランク縁湾曲部211は、プレス方向Pから見たとき、パンチ10(図3)側に凹に湾曲している。ブランク縁湾曲部211は、プレス方向Pから見たとき、曲率半径400mm以下で延在している。ブランク縁湾曲部211は、一定の曲率半径を有するものであってもよいし、曲率半径が変化するものであってもよい。本開示において、プレス方向Pから見たとき、ブランク200の縁201上に5.0mm間隔で配置した各点について、当該点とその両隣に位置する点との3点を通る円弧の曲率半径を測定し、曲率半径が400mm以下である区間をブランク縁湾曲部211、400mmよりも大きな曲率半径を有する区間を非湾曲部(直線部)とみなす。
プレス方向Pから見て、ブランク縁直線部212,213は、ブランク縁湾曲部211から遠ざかるにつれて互いに離れるようにブランク縁湾曲部211から延在している。プレス方向Pから見たとき、ブランク縁直線部212,213は、ブランク縁湾曲部211の両端部211a,211bの接線上に位置していてもよい。
プレス方向Pから見たとき、ブランク縁湾曲部211は、2本の垂線La,Lbとダイ縁凸部240とに囲まれた領域S1の中に配置されている。垂線La,Lbは、プレス方向から見たとき、ダイ縁凸部240の両端部240a,240bのそれぞれを通るダイ縁凸部240に対する垂線である。本実施形態では、ダイ縁凸部240の一方端部240aは、ダイ縁湾曲部241に連続するダイ縁真直部242の端部であり、ダイ縁凸部240の他方端部240bは、ダイ縁湾曲部241に連続するダイ縁真直部243の端部である。例えば、ブランク縁湾曲部211は、プレス方向Pから見て、ダイ縁凸部240の両端部240a,240bを通る1本の直線とダイ縁凸部240とに囲まれた領域の中に配置されていてもよい。
ブランク縁湾曲部211とダイ20の縁24との間隔wが、ブランク縁湾曲部211の一方端部211aと他方端部211bとで異なっているとき、図12に示すような変形が発生する。図12に示すような変形に対処するため、本実施形態では、以下のようにダイ20及びブランク200に対してブランクホルダ30が配置されている。
プレス方向Pから見て、ブランクホルダ30は、ダイ20とともにブランク200の縁201の一部を挟むように配置されている。より具体的には、プレス成形において、ブランクホルダ30は、ダイ20とともにブランク縁湾曲部211の少なくとも一部を挟む。例えば、ブランクホルダ30の縁34は、ブランク縁湾曲部211と同様に、ダイ縁凸部240とその垂線La,Lbとに囲まれた領域S1の中に配置される。プレス方向Pから見たとき、ブランクホルダ30の縁34の少なくとも一部は、ダイ縁凸部240とブランク縁湾曲部211との間に配置されている。
本実施形態では、プレス方向Pから見たとき、ブランク200の縁201は、ブランク縁湾曲部211の両端部211a,211bでブランクホルダ30のパンチ10(図4C)側の縁34と交差している。このため、ブランク縁湾曲部211の全てが、ブランクホルダ30とダイ20とに挟まれている。また、ブランクホルダ30とダイ20とで挟まれたブランク200の縁201の全ては、ブランク縁湾曲部211である。
プレス方向Pから見たとき、ブランクホルダ30のパンチ10(図3)側の縁34と、ブランクホルダ30とダイ20とに挟まれたブランク200の縁201との間隔dは、ブランク200の縁201に沿って変化する。すなわち、ブランクホルダ30の縁34とブランク200の縁201のうちブランクホルダ30とダイ20とに挟まれた部分との間隔dは、当該部分の全長にわたって一定ではない。間隔dは、プレス方向Pから見たときのブランク200の縁201の延在方向の垂線上における、ブランクホルダ30の縁34とブランク200の縁201との間隔である。言い換えると、間隔dは、プレス方向Pから見て、ブランク200の縁201の垂線方向又は法線方向における、ブランクホルダ30の縁34からブランク200の縁201までの距離である。
プレス方向Pから見たとき、ブランクホルダ30の縁34とブランク200の縁201との間隔dは、ブランク縁湾曲部211で最も大きい。すなわち、プレス方向Pから見て、ブランク200の縁201のうちブランクホルダ30とダイ20とに挟まれた部分において、ブランクホルダ30の縁34との間隔が最大である位置を選んでブランク200の縁201の垂線を引くと、当該垂線はブランク縁湾曲部211を通ることになる。
プレス方向Pから見て、ブランクホルダ30とダイ20とに挟まれたブランク200の縁201の線長は、例えば、ブランク縁湾曲部211の線長の0.67倍以上2.50倍以下とすることができる。ここでの各線長は、プレス成形前のブランク200における線長である。ブランク縁湾曲部211の線長、つまりブランク縁湾曲部211の延在方向における長さは、挟み角θとブランク縁湾曲部211の曲率半径の積とすることができる。挟み角θは、プレス方向Pから見て、ブランク縁湾曲部211の両端部211a,211bの接線がなす角である。挟み角θは、1/3π(rad)以上2/3π(rad)以下であってもよい。ブランク縁湾曲部211の曲率半径が変化する場合、ブランク縁湾曲部211の曲率半径は、例えば、上述のように5.0mm間隔で測定された曲率半径の平均値とすることができる。
図4Dに示す例では、プレス方向Pから見たとき、ブランクホルダ30のパンチ側の縁34と、ブランクホルダ30とダイ20とに挟まれたブランク200の縁201との間隔dは、ブランク縁湾曲部211の底部において最大となっている。間隔dは、ブランク縁湾曲部211の底部から遠ざかるにつれて小さくなっている。すなわち、間隔dは、ブランクホルダ30とダイ20とに挟まれたブランク200の縁201の範囲内で変化している。ただし、間隔dは、必ずしもブランク縁湾曲部211の底部で最大となる必要はない。
図4Eに示すように、ダイ20とブランクホルダ30とでブランク200を挟んだ状態のまま、さらに、ダイ20とパンチ10とをプレス方向Pに相対的に接近させる。これにより、ブランク200がダイ20側(ダイ穴)にパンチ10で押し込まれる。ブランク200は、パンチ10による押し込みに伴い、ダイ穴に向かって引き込まれる。このパンチ10による押し込みに伴い、ブランク200の縁201がダイ穴に向かって引き込まれる。図4Eでは、ブランク200が引き込まれる方向を矢印Dで示している。本実施形態の例では、ブランク200の縁201がダイ20とブランクホルダ30との間から完全に引き出された後にパンチ10による押し込み(成形)を完了している。
パンチ10による押し込みが完了したとき、ブランク200は、例えば図4Fに示すプレス成形品300に成形される。プレス成形品300は、天板301と、稜線部302と、壁303とを含んでいる。
図4Fに示す例において、プレス成形品300の天板301の垂直方向から見た平面視で、天板301の側縁には、幅方向の内側に凹となる部分が設けられている。天板301は、長手方向の中央部の幅が長手方向の両端部の幅よりも小さくなるように形成されている。すなわち、天板301は、平面視で長手方向の中央部が内側にくびれた形状に形成されている。天板301は、全体として平坦な形状を有していてもよいし、その一部に凹凸形状を有していてもよい。天板301には、貫通孔が形成されていてもよい。
天板301の幅方向の側縁には、稜線部302が連続して設けられている。壁303は、稜線部302を介して天板301の側縁に接続されている。壁303は、稜線部302に連続し、天板301から起立するように設けられている。稜線部302及び壁303は、天板301の側縁に沿って延在している。図4Fに示す例では、壁303の高さは一定ではない。具体的には、壁303の高さは、天板301の側縁の一部で低くなっている。壁303のうち高さの低くなっている部分は、上記ブランク縁直線部213の部分に対応している。この場合、プレス成形装置100を用いたプレス成形後に壁303の一部をトリミングして、壁303の高さを揃えてもよい。
上述したように、図4Eに示す例では、ブランク200の縁201がダイ20とブランクホルダ30との間から完全に引き出された後にパンチ10による押し込み(成形)を完了している。ただし、図4Gに示すように、ブランク200の縁201がダイ20とブランクホルダ30とで挟まれたままの状態で、成形完了としてもよい。この場合のプレス成形品300は、図4Hに示すように、天板301と、稜線部302と、壁303と、フランジ304を含んでいる。壁303の高さは、天板301の側縁に沿って一定であり、フランジ304は、壁303から張り出している。フランジ304の張り出し量は、一定ではなく、一部で小さくなっている。フランジ304のうち張り出し量の小さくなっている部分は、上記ブランク縁直線部213の部分に対応している。
プレス成形品300の引張強さは、例えば440MPa以上である。プレス成形品300の引張強さは、590MPa以上であってもよいし、780MPa以上であってもよい。プレス成形品300の引張強さは、980MPa以上であってもよいし、1180MPa以上であってもよいし、1300MPa以上であってもよい。プレス成形品300の板厚は、例えば、0.4mm以上6.0mm以下であってもよいし、1.0mm以上4.0mm以下であってもよい。
プレス成形品300は、例えば、自動車部品として使用することができる。プレス成形品300は、自動車のボディ部品、シャシ部品、又はパネル部品であってもよい。ボディ部品としては、例えば、サイドシル、ルーフサイドレール、フロントピラー、センターピラー、ロックピラー、キックリーンフォース、サイドメンバー等が挙げられる。シャシ部品は、例えばサスペンションのアーム部品又はリンク部品である。アーム部品又はリンク部品としては、例えば、サブフレーム、ロアアーム、アッパーアーム、トレーリングアーム等が挙げられる。パネル部品としては、ドアインナーパネル、サイドパネル、フロアパネル等を挙げることができる。
本実施形態では、プレス成形品300のブランクホルダ30で局所的に押さえた箇所に押圧痕あるいは擦過痕といった加工痕が残る。これらの加工痕はプレス成形品の機械特性に悪影響を及ぼすものではない。例えば、図4Fのプレス成形品300では、フランジ303の図中では露出していない裏側に加工痕が残る。
[効果]
プレス方向Pから見たとき、ブランク縁湾曲部211が、ダイ縁凸部240の両端部240a,240bのそれぞれを通る2本の垂線La,Lbとダイ縁凸部240とに囲まれた領域S1の中に配置され、ブランク縁湾曲部211とダイ20の縁24との間隔wが、ブランク縁湾曲部211の一方端部211aと他方端部211bとで異なる場合、ブランク200がダイ縁湾曲部241に向かって引き込まれるにしたがって、ブランク縁湾曲部211の線長が不均一に拡大し、その板厚が不均一に減少する。しかしながら、本実施形態に係るプレス成形品の製造方法では、ブランクホルダ30の縁34は、ダイ20の縁24に向かって凸の形状を有し、ダイ20の縁24とブランクホルダ30の縁34との間隔は、ブランクホルダ30の縁34に沿って変化し、さらに、ブランクホルダ30のパンチ10側の縁34と、ブランクホルダ30とダイ20とに挟まれたブランク200の縁201との間隔dが、ブランク縁湾曲部211で最大となっている。そのため、パンチ10によってブランク200をダイ穴に押し込んで成形する際、成形の終盤までブランク縁湾曲部211を挟持して板厚方向に圧縮応力を加えることができる。これにより、プレス成形品300の製造において、ブランク200の割れ、特にブランク200の縁201の割れの発生を抑制することができる。
ブランク200をプレス成形品300に成形する際、成形の終盤までブランク縁湾曲部211を押圧し続けるためには、ダイ縁湾曲部241の近傍までダイ20とブランクホルダ30とによってブランク縁湾曲部211を押圧することが望ましい。一方、材料の流入という観点では、ブランク200の板厚減少部の周囲をダイ20とブランクホルダ30とで押圧しなければ、ブランク200の板厚減少部に材料が流れ込み、ブランク200の板厚の減少を緩和することができる。そこで、本実施形態では、ブランクホルダ30の縁34と、ブランクホルダ30とダイ20とに挟まれたブランク200の縁201との間隔dを縁201の延在方向に沿って変化させている。間隔dは、ブランク縁湾曲部211で最大となっている。これにより、プレス成形の際、ブランク200の縁201のうち間隔dが最大となるブランク縁湾曲部211の箇所では成形の終盤までダイ20とブランクホルダ30とでブランク200が押圧される一方、ブランク縁湾曲部211に隣接する箇所では成形の終盤までブランク200が押圧されない。そのため、ブランク縁湾曲部211に対し、板厚方向に圧縮応力を与えることができるとともに材料を流入させることができる。したがって、ブランク200の縁201の割れの発生を抑制することができる。
本実施形態において、プレス方向Pから見たとき、ブランクホルダ30とダイ20とに挟まれたブランク200の縁201の線長は、ブランク縁湾曲部211の線長の0.67倍以上2.50倍以下であることが好ましい。これにより、ブランク200の割れを効果的に抑制することができる。
<第2実施形態>
図5Aは、第2実施形態に係るプレス成形品の製造方法で用いられるプレス成形装置100Aに関する図であり、プレス方向Pから見たときのダイ20A、ブランクホルダ30、及びブランク200Aの関係を模式的に示す図である。言い換えると、図5Aは、プレス成形の前にプレス方向Pに対して垂直な平面に投影されたときのダイ20A、ブランクホルダ30、及びブランク200Aを示す模式図である。図5Aでは、ダイ20Aの縁24を一点鎖線で示し、ブランクホルダ30の縁34を破線で示し、ブランク200Aの縁201を実線で示している。また、ブランク200Aの縁201においてブランク縁湾曲部211の範囲を理解しやすくするため、ブランク縁湾曲部211を太線で示している。図5Aでは、パンチが省略されている。
本実施形態のプレス成形装置100Aは、第1実施形態のプレス成形装置100(図1~図3)と基本的に同一の構成を有する。ただし、本実施形態のプレス成形装置100Aは、ダイ20Aの縁24及びブランク200Aの縁201の形状において第1実施形態のプレス成形装置100と異なる。
図5Aに示すように、プレス方向Pから見たとき、ダイ20Aの縁24は、ダイ縁凸部240Aを含んでいる。ダイ縁凸部240Aは、ダイ縁湾曲部241と、ダイ縁真直部243からなる。ダイ縁真直部243は、ダイ縁湾曲部241の一方側に連続して設けられている。なお、プレス成形品の成形に実質的に関与しないが、ダイ縁凸部240Aは、第1実施形態のダイ縁凸部240と同様に、ダイ縁湾曲部241に対してダイ縁真直部243と反対側に連続するダイ縁真直部242(図3及び図4D)を含んでいてもよい。
ブランク200Aの縁201は、ダイ縁凸部240Aと対応するように設けられる。具体的には、ブランク200Aの縁201は、ブランク縁湾曲部211と、ブランク縁直線部213とを含んでいる。ブランク200Aの縁201は、さらにブランク縁側部214を含んでいる。ブランク縁側部214は、ブランク縁湾曲部211の一方端部211aからダイ縁凸部240Aの一端部240Aaに向かって延在している。ブランク縁直線部213は、第1実施形態のブランク200Aと同様に、ブランク縁湾曲部211の他方端部211bに連続して設けられている。ブランク縁湾曲部211とダイ20の縁24との間隔wは、ブランク縁湾曲部211の一方端部211aと他方端部211bとで異なっている。ブランク200Aにおいて、ブランク縁湾曲部211は、ダイ縁凸部240Aの両端部240Aa,240Abのそれぞれを通る2本の垂線La,Lbとダイ縁凸部240Aとに囲まれた領域S1の中に配置されている。
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、ブランク縁湾曲部211の全てがブランクホルダ30とダイ20Aとに挟まれる。また、ブランクホルダ30とダイ20Aとで挟まれたブランク200Aの縁201の全てがブランク縁湾曲部211である。ただし、必ずしもブランク縁湾曲部211の全てがブランクホルダ30とダイ20Aとに挟まれなくてもよい。また、必ずしもブランクホルダ30とダイ20Aとで挟まれたブランク200Aの縁201の全てがブランク縁湾曲部211でなくてもよい。ブランクホルダ30及びダイ20Aは、ブランク縁湾曲部211の少なくとも一部を挟むように構成されていればよい。
第1実施形態と同様に、プレス方向Pから見たとき、ブランク200Aの縁201の延在方向の垂線上における、ブランクホルダ30のパンチ側の縁34と、ブランクホルダ30とダイ20Aとに挟まれたブランク200Aの縁201との間隔dは、ブランク200Aの縁201に沿って変化する。この間隔dは、ブランク縁湾曲部211で最も大きい。
本実施形態におけるプレス成形装置100Aを用いた製造方法であっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
[変形例]
図5Bは、第2実施形態に係るプレス成形品の製造方法で用いられる変形例のプレス成形装置100Bに関する図であり、プレス方向Pから見たときのダイ20B、ブランクホルダ30、及びブランク200Bの関係を模式的に示す図である。言い換えると、図5Bは、プレス成形の前にプレス方向Pに対して垂直な平面に投影されたときのダイ20B、ブランクホルダ30、及びブランク200Bを示す模式図である。図5Bでは、ダイ20Bの縁24を一点鎖線で示し、ブランクホルダ30の縁34を破線で示し、ブランク200Bの縁201を実線で示している。また、ブランク200Bの縁201においてブランク縁湾曲部211の範囲を理解しやすくするため、ブランク縁湾曲部211を太線で示している。図5Bでは、パンチが省略されている。
図5Bに示すように、プレス方向Pから見たとき、ダイ20Bの縁24は、ダイ縁凸部240Bを含んでいる。ダイ縁凸部240Bは、ダイ縁湾曲部241と、ダイ縁真直部242,243からなる。ダイ縁真直部242,243は、ダイ縁湾曲部241の両端に連続して設けられている。ダイ縁真直部243は、第1実施形態のダイ縁真直部243(図3及び図4D)と比較して短い。なお、プレス成形品の成形に実質的に関与しないが、ダイ縁凸部240Bのダイ縁真直部243は、第1実施形態のダイ縁真直部243と同様の長さであってもよい。
ブランク200Bの縁201は、ダイ縁凸部240Bと対応するように設けられる。具体的には、ブランク200Bの縁201は、ブランク縁湾曲部211と、ブランク縁直線部212とを含んでいる。ブランク200Bの縁201は、さらにブランク縁側部215を含んでいる。ブランク縁側部215は、ブランク縁湾曲部211の他方端部211bからダイ縁凸部240Bの他端部240Bbに向かって延在している。ブランク縁直線部212は、第1実施形態のブランク200Aと同様に、ブランク縁湾曲部211の一方端部211aに連続して設けられている。ブランク縁湾曲部211とダイ20の縁24との間隔wは、ブランク縁湾曲部211の一方端部211aと他方端部211bとで異なっている。
本変形例におけるプレス成形装置100Bを用いた製造方法であっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係るプレス成形品の製造方法で用いられるプレス成形装置100Cに関する図であり、プレス方向Pから見たときのダイ20C、ブランクホルダ30、及びブランク200Cの関係を模式的に示す図である。言い換えると、図6は、プレス成形の前にプレス方向Pに対して垂直な平面に投影されたときのダイ20C、ブランクホルダ30、及びブランク200Cを示す模式図である。図6では、ダイ20Cの縁24を一点鎖線で示し、ブランクホルダ30の縁34を破線で示し、ブランク200Cの縁201を実線で示している。また、ブランク200Cの縁201においてブランク縁湾曲部211の範囲を理解しやすくするため、ブランク縁湾曲部211を太線で示している。図6では、パンチが省略されている。
本実施形態のプレス成形装置100Cは、第1実施形態のプレス成形装置100(図1~図3)と基本的に同一の構成を有する。ただし、本実施形態のプレス成形装置100Cは、ダイ20Cの縁24及びブランク200Cの縁201の形状において第1実施形態のプレス成形装置100と異なる。
図6に示すように、プレス方向Pから見たとき、ダイ20Cの縁24は、ダイ縁凸部240Cを含んでいる。ダイ縁凸部240Cは、ダイ縁湾曲部241のみで構成されている。なお、プレス成形品の成形に実質的に関与しないが、ダイ縁凸部240Cは、第1実施形態のダイ縁凸部240と同様に、ダイ縁湾曲部241の両端に連続するダイ縁真直部242,243(図3及び図4D)を含んでいてもよい。
ブランク200Cの縁201は、ダイ縁凸部240Cと対応するように設けられる。具体的には、ブランク200Aの縁201は、ブランク縁湾曲部211を含んでいる。ブランク200Cの縁201は、さらにブランク縁側部214,215を含んでいる。ブランク縁側部214は、ブランク縁湾曲部211の一方端部211aからダイ縁凸部240Cの一端部240Caに向かって延在している。ブランク縁側部215は、ブランク縁湾曲部211の他方端部211bからダイ縁凸部240Cの他端部240Cbに向かって延在している。ブランク縁湾曲部211とダイ20の縁24との間隔wは、ブランク縁湾曲部211の一方端部211aと他方端部211bとで異なっている。ブランク200Cにおいて、ブランク縁湾曲部211は、ダイ縁凸部240Cの両端部240Ca,240Cbのそれぞれを通る2本の垂線La,Lbとダイ縁凸部240Cとに囲まれた領域S1の中に配置されている。
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、ブランク縁湾曲部211の全てがブランクホルダ30とダイ20Cとに挟まれる。また、ブランクホルダ30とダイ20Cとで挟まれたブランク200Cの縁201の全てがブランク縁湾曲部211である。ただし、必ずしもブランク縁湾曲部211の全てがブランクホルダ30とダイ20Cとに挟まれなくてもよい。また、必ずしもブランクホルダ30とダイ20Cとで挟まれたブランク200Cの縁201の全てがブランク縁湾曲部211でなくてもよい。ブランクホルダ30及びダイ20Cは、ブランク縁湾曲部211の少なくとも一部を挟むように構成されていればよい。
第1実施形態と同様に、プレス方向Pから見たとき、ブランク200Cの縁201の延在方向の垂線上における、ブランクホルダ30のパンチ側の縁34と、ブランクホルダ30とダイ20Cとに挟まれたブランク200Cの縁201との間隔dは、ブランク200Cの縁201に沿って変化する。この間隔dは、ブランク縁湾曲部211で最も大きい。
本実施形態におけるプレス成形装置100Cを用いた製造方法であっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態に係るプレス成形品の製造方法で用いられるプレス成形装置100Dに関する図であり、プレス方向Pから見たときのダイ20、ブランクホルダ30D、及びブランク200の関係を模式的に示す図である。言い換えると、図7は、プレス成形の前にプレス方向Pに対して垂直な平面に投影されたときのダイ20、ブランクホルダ30D、及びブランク200を示す模式図である。図7では、ダイ20の縁24を一点鎖線で示し、ブランクホルダ30Dの縁34Dを破線で示し、ブランク200の縁201を実線で示している。また、ブランク200の縁201においてブランク縁湾曲部211の範囲を理解しやすくするため、ブランク縁湾曲部211を太線で示している。図7では、パンチが省略されている。
本実施形態のプレス成形装置100Dは、第1実施形態のプレス成形装置100(図1~図3)と基本的に同一の構成を有する。ただし、本実施形態のプレス成形装置100Dは、ブランクホルダ30Dにおいて第1実施形態のプレス成形装置100と異なる。本実施形態におけるブランクホルダ30Dの幅は、第1実施形態におけるブランクホルダ30(図4D)と比較すると小さい。ブランクホルダ30Dの幅とは、ダイ縁凸部240の両端部240a,240bを通る直線が延びる方向におけるブランクホルダ30Dの長さである。
図7に示すように、プレス方向Pから見たとき、ブランクホルダ30Dのパンチ側の縁34Dは、ブランク200の縁201と交差している。具体的には、ブランクホルダ30Dの縁34Dは、ブランク縁湾曲部211及びブランク縁直線部213と交差している。このため、プレス成形では、ブランク縁湾曲部211の一部がブランクホルダ30Dとダイ20とに挟まれることになる。また、ブランクホルダ30Dとダイ20とで挟まれたブランク200の縁201の一部がブランク縁湾曲部211である。この場合であっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
<第5実施形態>
図8は、第5実施形態に係るプレス成形品の製造方法で用いられるプレス成形装置100Eに関する図であり、プレス方向Pから見たときのダイ20、ブランクホルダ30E、及びブランク200の関係を模式的に示す図である。言い換えると、図8は、プレス成形の前にプレス方向Pに対して垂直な平面に投影されたときのダイ20、ブランクホルダ30E、及びブランク200を示す模式図である。図8では、ダイ20の縁24を一点鎖線で示し、ブランクホルダ30Eの縁34Eを破線で示し、ブランク200の縁201を実線で示している。また、ブランク200の縁201においてブランク縁湾曲部211の範囲を理解しやすくするため、ブランク縁湾曲部211を太線で示している。図8では、パンチが省略されている。
本実施形態のプレス成形装置100Eは、第1実施形態のプレス成形装置100(図1~図3)と基本的に同一の構成を有する。ただし、本実施形態のプレス成形装置100Eは、ブランクホルダ30Eにおいて第1実施形態のプレス成形装置100と異なる。本実施形態におけるブランクホルダ30Eの幅は、第4実施形態と同様に、第1実施形態におけるブランクホルダ30(図4D)よりも小さくなっている。
図8に示すように、プレス方向Pから見たとき、ブランクホルダ30Eのパンチ側の縁34Eは、ブランク200の縁201と交差している。具体的には、ブランクホルダ30Eの縁34Eは、ブランク縁湾曲部211の両端部211a,211bそれぞれの近くでブランク縁湾曲部211と交差している。このため、プレス成形では、ブランク縁湾曲部211の一部が、ブランクホルダ30Eとダイ20とに挟まれる。また、ブランクホルダ30Eとダイ20とで挟まれたブランク200の縁201の全てがブランク縁湾曲部211となる。ブランクホルダ30Eとダイ20とで挟まれたブランク200の縁201の全てがブランク縁湾曲部211となるためには、ブランク縁湾曲部211の延在長さがブランク200の縁201のうちブランクホルダ30Eとダイ20とに挟まれる部分の延在長さ以上であればよい。本実施形態では、ブランク縁湾曲部211の延在長さがブランク200の縁201のうちブランクホルダ30Eとダイ20とに挟まれる部分の延在長さよりも大きい。
本実施形態におけるプレス成形装置100Eを用いた製造方法であっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。特に、本実施形態では、ダイ縁凸部240の幅に対してブランクホルダ30Eの幅が小さい。このような場合、ブランクホルダ30Eとダイ20とで挟まれたブランク200の縁201の全てをブランク縁湾曲部211とすることにより、プレス成形時におけるブランク縁湾曲部211の板厚減少及び割れを抑制する効果を高めることができる。
<第6実施形態>
図9は、第6実施形態に係るプレス成形品の製造方法で用いられるプレス成形装置100Fに関する図であり、プレス方向Pから見たときのダイ20、ブランクホルダ30F、及びブランク200の関係を模式的に示す図である。言い換えると、図9は、プレス成形の前にプレス方向Pに対して垂直な平面に投影されたときのダイ20、ブランクホルダ30F、及びブランク200を示す模式図である。図9では、ダイ20の縁24を一点鎖線で示し、ブランクホルダ30Fの縁34Fを破線で示し、ブランク200の縁201を実線で示している。また、ブランク200の縁201においてブランク縁湾曲部211の範囲を理解しやすくするため、ブランク縁湾曲部211を太線で示している。図9では、パンチが省略されている。
本実施形態のプレス成形装置100Fは、第5実施形態と同様に、第1実施形態のプレス成形装置100(図1~図3)と基本的に同一の構成を有する。ただし、本実施形態におけるブランクホルダ30Fの幅は、第4実施形態におけるブランクホルダ30Fの幅よりも大きい。
図9に示すように、プレス方向Pから見たとき、ブランクホルダ30Fのパンチ側の縁34Fは、ブランク200の縁201と交差している。具体的には、ブランクホルダ30Fの縁34Fは、ブランク縁湾曲部211の両端部211a,211bの近傍でブランク縁直線部212,213と交差している。ブランク縁湾曲部211の延在長さは、ブランク200の縁201のうちブランクホルダ30Fとダイ20とに挟まれる部分の延在長さ未満である。本実施形態では、ブランク縁湾曲部211の全てが、ブランクホルダ30Fとダイ20とに挟まれている。
本実施形態におけるプレス成形装置100Fを用いた製造方法であっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。本実施形態では、ダイ縁凸部240の幅に対してブランクホルダ30Fの幅が比較的大きい。このような場合、ブランク縁湾曲部211の全てをブランクホルダ30Fとダイ20とで挟むことにより、プレス成形時におけるブランク縁湾曲部211の板厚減少及び割れを抑制する効果を高めることができる。
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
本実施形態に係るプレス成形品の製造方法では、上記実施形態で説明したものに限らず、種々の形状のパンチ、ダイ、及びブランクホルダを使用することができる。パンチ、ダイ、及びブランクホルダを用いてプレス成形をする際に、ブランクホルダのパンチ側の縁とブランクの縁とが適切な配置関係になればよい。すなわち、プレス方向Pから見たときに、ブランクホルダのパンチ側の縁と、ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁との間隔がブランクの縁に沿って変化し、且つブランク縁湾曲部で最大となればよい。パンチ、ダイ、及びブランクホルダを用いてプレス成形をする際に、ダイのパンチ側の縁とブランク縁湾曲部とが適切な配置関係になればよい。すなわち、ブランク縁湾曲部とダイの縁との間隔は、ブランク縁湾曲部の一方端部と他方端部とで異なっていればよい。
例えば、既存のプレス成形装置を改造して本開示に係るプレス成形品の製造方法を実施する場合、既存のプレス成形装置に設けられているブランクホルダの板押さえ面にプレートを設置することもできる。既存のプレス成形装置では、プレス方向から見たとき、ダイのパンチ側の縁のほぼ全体にわたってブランクホルダのパンチ側の縁が対向し、且つ、ブランクホルダの縁とダイの縁との間隔が一定である。このような既存のプレス成形装置において、ブランクホルダの板押さえ面上にプレートを設置する。これにより、プレス方向から見たときのプレートのパンチ側の縁をブランクホルダの縁とみなすことができる。プレス方向から見て、プレートのパンチ側の縁とブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁とのブランクの縁の延在方向の垂線上の間隔は、ブランクの縁に沿って変化し、且つブランク縁湾曲部で最も大きい。これにより、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。また、プレートの代わりにブランクホルダの板押さえ面を削り出す等して凸部を形成してもよい。この場合、ブランクホルダの板押さえ面に形成された凸部の縁をブランクホルダの縁とみなすことができる。
上記第1実施形態では、プレス成形装置100の幅方向においてパンチ10の両側に、ダイ20及びブランクホルダ30が設けられる例を説明した。しかしながら、プレス成形装置100の幅方向においてパンチ10の一方側のみに、ダイ20及びブランクホルダ30が設けられていてもよい。あるいは、プレス成形装置100の幅方向においてパンチ10の一方側にブランクホルダ30を設け、他方側にブランクホルダ30A~30Eのいずれかを設けることもできる。ブランクホルダの数や位置は、例えばダイ縁湾曲部241の数や位置に応じ、適宜変更することが可能である。
図10及び図11に示すように、上記第1実施形態におけるプレス成形装置100は、さらに、パンチ10とプレス方向Pに対向するパッド50を備えていてもよい。プレス成形品の製造において、パッド50は、パンチ10に対してプレス方向Pに相対的に接近し、パンチ10上のブランク200を押さえることができる。同様に、他の実施形態におけるプレス成形装置100A,100B,100C,100D,100Eも、パッド50を備えることができる。
以下、実施例によって本開示をさらに詳しく説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
本発明者等は、プレス成形解析を実施し、ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁の領域に対するブランク縁湾曲部の領域の適切な割合を検討した。本発明者等は、プレス方向から見て、ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁の長さ(線長)を、ブランクの縁に含まれるブランク縁湾曲部の延在長さ(線長)との比で表現することとした。
本解析において、プレス方向から見たときのブランク縁湾曲部は、一定の曲率半径で延在することとした。ブランク縁湾曲部の延在長さ(線長)は、ブランク縁湾曲部の両端部の接線が交差する角度(挟み角)θ(図4D)とブランク縁湾曲部の曲率半径との積とした。
ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁の線長/ブランク縁湾曲部の線長が1.0よりも小さければ、ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁の全てがブランク縁湾曲部であり、ブランク縁湾曲部の一部がブランクホルダとダイとに挟まれることを意味する。一方、ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁の線長/ブランク縁湾曲部の線長が1.0よりも大きければ、ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁の一部がブランク縁湾曲部であり、ブランク縁湾曲部が全てブランクホルダとダイとに挟まれることを意味する。ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁の線長/ブランク縁湾曲部の線長が1.0であれば、ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁の全てがブランク縁湾曲部であり、且つブランク縁湾曲部が全てブランクホルダとダイとに挟まれることを意味する。
本発明者等は、成形後のプレス成形品のフランジの縁における損傷の大きさを、以下の式で表されるダメージ値Iで表現した。また、本発明者等は、通常の絞り成形に対するダメージ値Iの低減率(%)で本開示による効果の大きさを評価した。
プレス成形解析は、ブランクの縁をダイとブランクホルダとの間から引き抜いて成形を終了する場合と、ブランクの縁をダイとブランクホルダとの間に挟んだまま成形を終了する場合とについて実施した。また、プレス方向から見たときのダイの縁の湾曲部の挟み角θが60°、90°、及び120°の場合について解析を実施した。
図13に、ダイとブランクホルダとの間からブランクを引き抜いて成形を終了した場合の解析結果を示す。図14には、ダイとブランクホルダとの間にブランクを挟んだままで成形を終了した場合の解析結果を示す。図13及び図14からわかるように、本開示によるプレス成形を行った場合、通常の絞り成形よりもダメージ値Iが低減した。ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁の線長/ブランク縁湾曲部の線長が0.67以上2.50以下である場合、通常の絞り成形に対するダメージ値Iの低減率が顕著に向上した。
したがって、プレス方向から見たとき、ブランクホルダとダイとに挟まれたブランクの縁の線長は、ブランクの縁に設けられたブランク縁湾曲部の線長の0.67倍以上2.50倍以下であることが好ましいといえる。