JP6879482B1 - 酸化物除去済部材の製造方法及び酸化物除去装置 - Google Patents

酸化物除去済部材の製造方法及び酸化物除去装置 Download PDF

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Abstract

【課題】酸化物除去の時間を短縮する酸化物除去済部材の製造方法及び酸化物除去装置を提供する。【解決手段】酸化物除去装置1は、チャンバ10と、チャンバ10内の流体を排出する排出部50と、部材Tを加熱する加熱部20と、還元ガスFGを生成する気化器31を有する還元ガス供給部30と、チャンバ10内流体を実質的にすべて排出後、部材Tを加熱しながら、還元ガスFGを1000Pa以上還元ガスFGの飽和蒸気圧未満でチャンバ10内に実質的に充填するように各部50、20、30を制御する制御装置90とを備える。酸化物除去済部材の製造方法は、部材Tをチャンバ10内に導入し、部材Tを所定の温度に加熱し、チャンバ10内の流体を実質的にすべて排出し、その後、チャンバ10内に還元ガスFGを、1000Pa以上、還元ガスFGの飽和蒸気圧未満で実質的に充填して、還元ガスFG雰囲気下で所定の温度に加熱された部材Tの酸化物を還元する。【選択図】図1

Description

本発明は酸化物除去済部材の製造方法及び酸化物除去装置に関し、特に酸化物除去に要する時間を短縮する酸化物除去済部材の製造方法及び酸化物除去装置に関する。
電子部品を基板に実装するリフローはんだ工程において、はんだ付け後のフラックス残渣の洗浄の手間を省くために、ギ酸を用いて基板に存在する酸化物を還元するものがある。このリフローはんだ工程の例として、被接合部材をチャンバ内のキャリアプレートに載置し、チャンバ内の気体を排気し、キャリアガスでバブリングして生成されたギ酸ガスをチャンバ内に供給すると共にヒータをONにしてキャリアプレートの温度ひいては被接合部材の温度を還元温度に上昇させて酸化膜を除去し、キャリアプレートの温度ひいては被接合部材の温度をはんだが溶融する接合温度まで上昇させてはんだ接合を行うものがある(例えば、特許文献1参照。)。
特許第5687755号公報
上述のリフローはんだ工程では、被接合部材をチャンバ内に投入してからはんだ付け製品となってチャンバから取り出すまでに相当の時間を要し、生産性向上のために処理時間の短縮が求められていた。
本発明は上述の課題に鑑み、酸化物を除去する工程を短縮することができる酸化物除去済部材の製造方法及び酸化物除去装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る酸化物除去済部材の製造方法は、例えば図1及び図2を参照して示すと、酸化物を有する部材Tをチャンバ10内に導入する部材導入工程(S1)と;チャンバ10内に導入された部材Tを所定の温度に加熱する加熱工程(S3)と;部材Tが収容されているチャンバ10の内部の流体を、実質的にすべて排出する流体排出工程(S4)と;流体排出工程(S4)の後、チャンバ10内に、酸化物を還元する還元ガスFGを、1000Pa以上、還元ガスFGの飽和蒸気圧未満で、実質的に充填する還元ガス供給工程(S5)と;還元ガスFGの雰囲気下で所定の温度に加熱された部材Tの酸化物を還元する還元工程(S6)とを備える。
このように構成すると、部材の酸化物を還元する速度を上昇させることができ、還元工程の時間を短縮することができて、生産性を向上させることができる。
また、本発明の第2の態様に係る酸化物除去済部材の製造方法は、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様に係る酸化物除去済部材の製造方法において、還元ガスFGがギ酸ガスである。
このように構成すると、比較的低温での酸化物の除去が可能となる。
また、本発明の第3の態様に係る酸化物除去済部材の製造方法は、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る酸化物除去済部材の製造方法において、チャンバ10内の最低温度となる部分の温度を上昇させて還元ガスFGの凝縮を抑制する還元ガス凝縮抑制工程を備える。
このように構成すると、還元ガスの凝縮を抑制しながらチャンバ内の還元ガス濃度を上昇させることができ、還元速度を上昇させることができる。
上記目的を達成するために、本発明の第4の態様に係る酸化物除去装置は、例えば図1に示すように、酸化物を有する部材Tを収容するチャンバ10と;チャンバ10内の流体を排出する排出部50と;チャンバ10内に収容された部材Tを加熱する加熱部20と;酸化物を還元する還元ガスFGを生成する気化器31であって還元ガスFGとなる前の還元用液体FLを導入し加熱することで気化させて還元ガスFGを生成する気化器31を有し、気化器31で生成された還元ガスFGをチャンバ10内に供給する還元ガス供給部30と;部材Tが収容されているチャンバ10の内部の流体を実質的にすべて排出した後、部材Tを加熱しながら、還元ガスFGを1000Pa以上還元ガスFGの飽和蒸気圧未満でチャンバ10内に実質的に充填するように、排出部50、加熱部20、及び還元ガス供給部30を制御する制御装置90とを備える。
このように構成すると、部材の酸化物を還元する速度を上昇させることができ、還元に要する時間を短縮することができて、生産性を向上させることができる。
また、本発明の第5の態様に係る酸化物除去装置は、例えば図1に示すように、上記本発明の第4の態様に係る酸化物除去装置1において、チャンバ10内の圧力を直接又は間接的に検知する圧力検知部18を備え;制御装置90は、圧力検知部18で検知された値があらかじめ決められた値となるようにチャンバ10内の圧力を制御する。
このように構成すると、チャンバ内の圧力を制御することで、チャンバ内での還元ガスの結露を抑制することが可能になる。
また、本発明の第6の態様に係る酸化物除去装置は、例えば図1に示すように、上記本発明の第5の態様に係る酸化物除去装置1において、制御装置90は、気化器31に導入する還元用液体FLの量を調節することにより、チャンバ10内の圧力を制御する。
このように構成すると、チャンバ内部の流体を実質的にすべて排出した後にチャンバに供給される還元ガスの量を適切に調節することにより、チャンバ内の圧力を制御することができる。
また、本発明の第7の態様に係る酸化物除去装置は、例えば図1に示すように、上記本発明の第4の態様乃至第6の態様のいずれか1つの態様に係る酸化物除去装置1において、チャンバ10に取り付けられ、チャンバ10の壁面に対して温度の低下を抑制又は温度を上昇させる壁面温度作用部15を備える。
このように構成すると、還元ガスの凝縮を抑制しながらチャンバ内の還元ガス濃度を維持又は上昇させることができ、還元速度を上昇させることができる。
本発明によれば、部材の酸化物を還元する速度を上昇させることができ、還元に要する時間を短縮することができて、生産性を向上させることができる。
本発明の実施の形態に係る半田付け装置の概略構成を示す模式的系統図である。 接合済部材の製造手順を示すフローチャートである。 接合済部材の製造工程における部材の温度及びチャンバ内の圧力の変化を示すグラフである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係る半田付け装置1を説明する。図1は、半田付け装置1の概略構成を示す模式的系統図である。半田付け装置1は、半田付けに先立って、半田付けの対象となる部材Tが有する酸化物を除去することができるようになっており、酸化物除去装置としても機能する。部材Tは、表面に金属部分を有しており、半田付けは、部材Tの表面の金属部分に対して行われる。部材Tとして、基板や電子部品を適用することができる。フラックスを使用せずに部材Tの半田付けを行う際、部材Tの表面の金属部分の酸化物を除去するために、還元剤で酸化物を還元するとよく、本実施の形態では還元剤としてギ酸を用いることとしている。半田付け装置1は、部材Tの半田付けが行われる空間を形成するチャンバ10と、部材Tを加熱する加熱部20と、チャンバ10内にギ酸ガスFGを供給するギ酸供給部30と、チャンバ10内に不活性ガスとしての窒素ガスNを供給する窒素供給部40と、チャンバ10内の流体を排出する排気部50と、制御装置90とを備えている。
チャンバ10は、前述のように、部材Tの半田付けが行われる空間を形成するものである。チャンバ10は、部材Tを搬入出することができる搬入出口11が形成されている。また、チャンバ10は、搬入出口11を塞ぐことができるように、開閉可能なシャッタ12を有している。チャンバ10は、シャッタ12で搬入出口11を塞ぐことにより、内部の空間を密閉することができるように構成されている。チャンバ10は、内部の空間を所望の圧力(例えば概ね10Pa(絶対圧力))に減圧しても耐えうるような材料や形状が採用されている。チャンバ10は、本実施の形態では直方体に形成されている。チャンバ10は、外側の壁面を覆うように、チャンバヒータ15が設けられている。チャンバヒータ15は、チャンバ10の壁面の温度を所望の温度に上昇させることができると共に所望の温度に維持することができるものであり、壁面温度作用部に相当する。また、チャンバ10には、内部の圧力を検知する圧力検知部としての圧力センサ18が設けられている。
加熱部20は、部材Tに熱を与えて加熱することができるものである。加熱部20は、部材Tが載置されるプレート21と、プレート21を加熱するランプ22とを有している。プレート21は、本実施の形態では板状に形成されており、チャンバ10内に配置されている。プレート21は、部材Tが載置される載置面21tが、載置の安定性の観点から平坦に形成されている。典型的には、載置面21tの裏面も平坦に形成されている。プレート21は、載置面21tの面積が部材Tよりも大きく形成されている。プレート21は、チャンバ10内において、典型的には載置面21tが水平になるように設置されている。しかしながら、プレート21は、載置された部材Tが載置可能な範囲で(載置された部材Tが滑り落ちない範囲で)、水平に対して傾いて(載置面21tが広がる方向が水平方向成分及び鉛直方向成分を有して)いてもよい。ランプ22は、プレート21を介してプレート21に載置された部材Tを加熱することができるように構成されている。ランプ22は、本実施の形態では、プレート21の下方のプレート21に近接した位置のチャンバ10内に配置されている。ランプ22は、本実施の形態では、赤外線ランプの複数本が適宜の間隔をあけてプレート21の裏面に沿って配列されて構成されている。プレート21は、ランプ22が発した熱を部材Tに伝達することができる材料で形成されており、典型的にはグラファイトで形成されているが、熱伝導率が高い金属で形成されていてもよい。ここで、プレート21を介してランプ22から部材Tに伝達される熱量は、部材Tの半田を溶融することができる温度に上昇させることができる熱量であり、プレート21は、典型的には部材T上の半田の融点よりも上昇することができるように構成されている。ランプ22から受熱したプレート21の温度は、無段階で又は段階的に調節することができるように構成されており、上述の半田の融点のほか、ギ酸ガスFGによる部材Tの酸化物の還元に適した還元温度に調節することができるように構成されている。
ギ酸供給部30で取り扱うギ酸は、保存の利便性の観点から液体(ギ酸液FL)の状態でギ酸液容器35に保存され、還元力を発揮させる観点から気体(ギ酸ガスFG)の状態でチャンバ10内に供給されるようにしている。ギ酸は、還元剤として機能するカルボン酸の一種であり、ギ酸ガスFGは還元ガスに相当し、ギ酸液FLは還元用液体に相当し、ギ酸供給部30は還元ガス供給部に相当する。ギ酸供給部30は、ギ酸液FLからギ酸ガスFGを生成する気化器31を有している。気化器31は、本実施の形態では、ギ酸液FLよりも熱容量が大きい金属のブロック32にヒータ33が埋め込まれると共にギ酸流体(ギ酸液FL、ギ酸ガスFG、あるいはこれらの混合流体)が流れる流体流路34が形成され、ヒータ33であらかじめ加熱されたブロック32にギ酸液FLを流入させ、ギ酸液FLが流体流路34を流れる際にブロック32から受熱して気化してギ酸ガスFGが生成されるように構成されている。気化器31は、本実施の形態では、ギ酸ガスFGの出口31dがチャンバ10内に開口するようにブロック32がチャンバ10の外面に取り付けられているが、ブロック32をチャンバ10から離れた位置に設置して、ブロック32に形成されたギ酸ガスFGの出口とチャンバ10とをチューブで接続するように構成してもよい。いずれにしても、気化器31は、生成したギ酸ガスFGをチャンバ10内に供給することができるように配置されている。加熱式の気化器31によってギ酸液FLを気化させてチャンバ10内に供給することで、キャリアガスを用いたバブリングによって生成されたギ酸入りガスに比べて、ギ酸以外の成分がほとんど含まれていない純度の高いギ酸ガスFGをチャンバ10に供給することができるようになっている。
ギ酸液FLが保存されているギ酸液容器35は、ギ酸の影響で腐食することを回避又は抑制することができる材料で形成されているとよく、典型的にはガラスで形成されている。ギ酸液容器35は、ギ酸液FLが瓶に入った状態で市販されている場合にその瓶をそのまま利用することができる。ギ酸液容器35は、ロードセルに載置して用いることで、内部のギ酸液FLの残量管理を行うこととしてもよい。ギ酸液容器35と気化器31とは、供給チューブ36で接続されている。供給チューブ36は、ギ酸液容器35内のギ酸液FLを気化器31に導く流路を構成する管である。供給チューブ36の一端は、ギ酸液容器35の内部に連通して開口するように設けられている。供給チューブ36の他端は、気化器31のギ酸液導入口31eに接続されている。供給チューブ36には、流路を遮断可能な供給仕切弁37が配設されている。ギ酸液容器35には、上述の供給チューブ36のほか、加圧チューブ38が接続されている。加圧チューブ38は、ギ酸液容器35の内部を加圧するための不活性ガス(本実施の形態では窒素ガスN)をギ酸液容器35に導く流路を構成する管である。ここでギ酸液容器35に導入される窒素ガスNは、ギ酸液FLをバブリングするものではなく、ギ酸液FLに混ざることはない。加圧チューブ38の一端は、ギ酸液容器35の内部に連通して開口するように設けられている。加圧チューブ38の他端は、窒素供給部40に接続されている。窒素供給部40とギ酸液容器35との間の加圧チューブ38には、流路を遮断可能な加圧仕切弁39が配設されている。供給仕切弁37及び加圧仕切弁39を開け、加圧チューブ38を介して窒素ガスNをギ酸液容器35の内部に供給してギ酸液容器35の内部を加圧すると、ギ酸液容器35内のギ酸液FLを、供給チューブ36を介して気化器31に移送することができる。
窒素供給部40は、主としてチャンバ10内に窒素ガスNを供給するが、上述のようにギ酸液容器35にも窒素ガスNを供給することができるように構成されている。窒素供給部40は、窒素チューブ41と、窒素弁42と、窒素ブロワ43とを有している。窒素チューブ41は、窒素供給源(不図示)からチャンバ10へ窒素ガスNを導く流路を形成する管である。窒素チューブ41は、一端が窒素供給源(不図示)に接続され、他端がチャンバ10に接続されている。窒素弁42及び窒素ブロワ43は窒素チューブ41に設けられており、本実施の形態では、窒素弁42がチャンバ10の側に、窒素ブロワ43が窒素供給源(不図示)の側に、それぞれ配置されている。窒素弁42は、窒素チューブ41の流路を遮断可能な部材であり、開のときに窒素ガスNの流れを許容し、閉のときに窒素ガスNの流れを遮断するように構成されている。窒素ブロワ43は、窒素ガスNを圧送するように構成されている。窒素弁42と窒素ブロワ43との間の窒素チューブ41には加圧チューブ38の端部が接続されており、窒素ブロワ43で圧送されて窒素チューブ41を流れる窒素ガスNを加圧チューブ38に分配することができるように構成されている。
排気部50は、チャンバ10内の流体(主として気体)をチャンバ10の外に排出するための構成であり、排出部に相当する。排気部50は、排気管51と、排気仕切弁52と、真空ポンプ55と、触媒ユニット56とを有している。排気管51は、チャンバ10の流体を系外に導く流路を形成する管である。排気管51は一端がチャンバ10に接続され、他端が系外に解放されている。排気仕切弁52と、真空ポンプ55と、触媒ユニット56とは、排気管51に設けられており、チャンバ10側から系外の側に向けてこの順で配置されている。排気仕切弁52は、排気管51の流路を遮断可能な部材であり、開のときに流体の流れを許容し、閉のときに流体の流れを遮断するように構成されている。真空ポンプ55は、チャンバ10内の流体を排出することでチャンバ10の内部を負圧にすることができるように構成されている。触媒ユニット56は、チャンバ10から排出された流体(以下「排出流体E」という。)中のギ酸の濃度を、環境に影響を与えない濃度に低下させる機器である。触媒ユニット56は、ギ酸を含むガスの他、酸素を導入し、ギ酸を二酸化炭素と水とに分解するように構成されている。触媒ユニット56には、このようなギ酸の分解反応を促進させる触媒が充填されている。触媒ユニット56は、排出流体E中のギ酸の濃度が、概ね5ppm以下となるように構成されており、0.2ppm未満となるように構成されていると好ましく、触媒の条件を最適化して0ppmとなるように構成されているとより好ましい。
制御装置90は、半田付け装置1の動作を制御する機器である。制御装置90は、チャンバ10のシャッタ12と有線又は無線で電気的に接続されており、シャッタ12の開閉を制御することができるように構成されている。また、制御装置90は、チャンバヒータ15と有線又は無線で接続されており、チャンバヒータ15の出力を制御することができるように構成されている。また、制御装置90は、圧力センサ18と有線又は無線で電気的に接続されており、圧力センサ18で検知された結果を信号として受信することができるように構成されている。また、制御装置90は、加熱部20と有線又は無線で接続されており、制御信号を加熱部20に送信してランプ22からの発熱量(発熱無しを含む)を制御することができるように構成されている。また、制御装置90は、気化器31と有線又は無線で電気的に接続されており、気化器31のヒータ33の起動及び停止を制御することができるように構成されている。また、制御装置90は、供給仕切弁37、加圧仕切弁39、窒素弁42、排気仕切弁52のそれぞれと有線又は無線で電気的に接続されており、各弁の開閉を制御することができるように構成されている。また、制御装置90は、窒素ブロワ43及び真空ポンプ55のそれぞれと有線又は無線で電気的に接続されており、それぞれの起動及び停止を個別に制御することができるように構成されている。
引き続き図2及び図3を参照して、接合済部材の製造方法を説明する。接合済部材は、部材Tの半田付けが行われた後の部材である。以下の説明では、接合済部材を製造する過程で部材Tの酸化物が除去されるため、接合済部材は酸化物除去済部材の一形態といえると共に、接合済部材の製造方法は酸化物除去済部材の製造方法の一形態といえる。図2は、接合済部材の製造手順を示すフローチャートである。図3は、接合済部材の製造工程における部材Tの温度及びチャンバ10内の圧力の変化を示すグラフである。以下に説明する接合済部材の製造方法は、典型的にはこれまで説明した半田付け装置1を用いて行われるが、半田付け装置1以外の装置で行ってもよい。以下の半田付け装置1を用いた接合済部材の製造方法の説明は、半田付け装置1の作用の説明を兼ねている。以下の説明において、半田付け装置1の構成に言及しているときは、適宜図1を参照することとする。
半田付け装置1の停止中は、シャッタ12が閉まっており、窒素ブロワ43及び真空ポンプ55が停止しており、各弁(供給仕切弁37、加圧仕切弁39、窒素弁42、排気仕切弁52)が閉となっている。ギ酸液FL入りのギ酸液容器35として市販のものを利用する場合は、半田付け装置1を作動させる前にギ酸液容器35を接続しておく。半田付け装置1を作動させると制御装置90によって窒素ブロワ43及び真空ポンプ55が起動し、半田付け装置1の作動中は常時窒素ブロワ43及び真空ポンプ55が作動していることとなる。また、本実施の形態では、半田付け装置1を作動させたタイミングで、制御装置90が気化器31のヒータ33を起動することとしている。
次に制御装置90は、チャンバ10のシャッタ12を開け、部材Tをチャンバ10内に導入する(部材導入工程:S1)。シャッタ12の開閉動作は、典型的には、装置の操作者がシャッタ12を開けるボタン(不図示)を押すことにより、制御装置90がシャッタ12の開閉を制御することにより行われる。なお、シャッタ12を開ける際に、排気仕切弁52を開けてチャンバ10内の気体の一部を排気部50から排気するようにすると、シャッタ12を開けてもチャンバ10内の気体が搬入出口11を介してチャンバ10の外に流出することを防ぐことができる。排気部50を介してチャンバ10から排出される気体の流量は、チャンバ10内の気体が搬入出口11から流出しない程度にチャンバ10内を負圧にすることができる流量で足りる。これにより、チャンバ10内にギ酸ガスFGが残存していた場合も、ギ酸ガスFGがそのままチャンバ10の外に流出することを防ぐことができる。部材Tをチャンバ10内に導入したら、制御装置90は、シャッタ12を閉じて、チャンバ10内を密閉する。
次に制御装置90は、排気仕切弁52と窒素弁42とを交互に操作して、チャンバ10内の流体を窒素ガスNで置換する(S2、t0〜t1)。本実施の形態では、排気仕切弁52を開け、チャンバ10内の圧力が100Pa(絶対圧力)程度に減圧されたら排気仕切弁52を閉じ、窒素弁42を開けて窒素ガスNをチャンバ10内に導入したら窒素弁42を閉じる。これを1回〜数回繰り返してチャンバ10内を窒素ガスNで置換する。次いで制御装置90は、加熱部20のランプ22をONにして、窒素ガスNの雰囲気下で部材Tを所定の温度に加熱する(加熱工程:S3、t1〜t2)。所定の温度は、本実施の形態では部材Tの酸化物をギ酸ガスFGで還元するのに適した温度であり、例えば180℃〜220℃(典型的には200℃程度)である。
部材Tを所定の温度に加熱したら、制御装置90は、排気仕切弁52を開にして、チャンバ10内の圧力が50Pa(絶対圧力)程度に減圧されるようにすることで、チャンバ10内の流体を実質的にすべて排出する(流体排出工程:S4、t3)。ここで、チャンバ10内の流体を実質的にすべて排出するとは、後にギ酸ガスFGをチャンバ10内に導入した際にチャンバ10内のギ酸ガスFGが所望の濃度になるようにギ酸ガスFG以外の物質を排出することを意図しており、典型的には、チャンバ10内に存在していた流体(気体+液体)の95%以上、好ましくは99%以上を排出することである。チャンバ10内の流体が実質的にすべて排出されたら、制御装置90は、排気仕切弁52を閉じる。
次に、制御装置90は、供給仕切弁37及び加圧仕切弁39を開け、チャンバ10内の圧力が所定の圧力になるように、チャンバ10内にギ酸ガスFGを実質的に充填する(還元ガス供給工程:S5、T4)。ここで、チャンバ10内にギ酸ガスFGを充填するとは、典型的には、チャンバ10内に他の物質(ギ酸ガスFG以外の物質)が混在していないことである。また、チャンバ10内にギ酸ガスFGを実質的に充填するとは、所望の速度で部材Tの酸化物を還元できるギ酸ガスFGの濃度にチャンバ10内をすることを意図しており、典型的には、チャンバ10内のギ酸ガスFGの濃度が95%以上、好ましくは99%以上の状態である。本実施の形態では、供給仕切弁37及び加圧仕切弁39が開になると、加圧チューブ38を介して窒素ガスNがギ酸液容器35内に供給されてギ酸液容器35内のギ酸液FLが加圧される。加圧されたギ酸液容器35内のギ酸液FLは、供給チューブ36を介してギ酸液導入口31eから気化器31に流入する。このとき、ギ酸液容器35内に供給される窒素ガスNは、ギ酸液FLを圧送するために用いられるだけで、ギ酸液FLに混合されないので、気化器31に流入するギ酸液FLは窒素ガスNが混入されていない純度の高いギ酸液FLになっている。また、気化器31は、あらかじめ起動していたヒータ33の熱によりブロック32が加熱されているため、ギ酸液導入口31eから流入して流体流路34を流れるギ酸液FLがブロック32から受熱して気化し、ギ酸ガスFGとなってギ酸ガス出口31dからチャンバ10内に流入する。このように、本実施の形態では、チャンバ10内の流体を実質的にすべて排出した後に、純度の高いギ酸ガスFGがチャンバ10内に供給されるので、チャンバ10内にギ酸ガスFGが実質的に充填されることとなる。
チャンバ10内にギ酸ガスFGを実質的に充填する工程(S5)において、チャンバ10内の圧力が所定の圧力になるようにするために、制御装置90は、圧力センサ18が検知する圧力が所定の圧力になるように供給仕切弁37の開度及び/又は開閉のタイミングを調節する。このように、本実施の形態では、供給仕切弁37の制御によって気化器31に導入するギ酸液FLの量を調節することで、チャンバ10内の圧力を制御することとしている。また、ここで制御の対象としている所定の圧力は、圧力センサ18の値があらかじめ決められた値となる圧力であり、チャンバ10内におけるギ酸ガスFGの凝縮を回避する観点からギ酸ガスFGの飽和蒸気圧未満であり、後に続く部材Tの酸化物を還元する際の還元速度をできるだけ上昇させる観点から1000Pa(絶対圧力)以上のできるだけ高い圧力(好ましくは2000Pa(絶対圧力)以上又は3000Pa(絶対圧力)以上)とするとよく、6000Pa(絶対圧力)以下とするとチャンバ10内に30℃程度に低下する部分が生じてもギ酸ガスFGの凝縮(液化)を防ぐことができるために好ましく、本実施の形態では、5000Pa(絶対圧力)としている。
チャンバ10内が所定の圧力となるようにギ酸ガスFGがチャンバ10内に実質的に充填されると、所定の温度に加熱された部材Tでは、酸化物の還元が行われる(還元工程:S6、t4〜t5)。本実施の形態では、チャンバ10に存在する物質が実質的にギ酸ガスFGだけとなっているので、従来のようなギ酸ガスがキャリアガスと共にチャンバ内に供給される場合と比較して、還元速度を飛躍的に向上させることができ、部材Tの酸化物を還元するのに要する時間を大幅に短縮することができて、接合済部材の生産性を向上させることができる。本実施の形態では、従来の場合と比較して、概ね1/10の時間で還元工程(S6)を完了させることができる。還元工程(S6)が完了すると、部材Tに存在していた酸化物は還元されて除去されているため、この段階での部材Tは酸化物除去済部材に相当することとなる。
酸化物の還元が終了したら、制御装置90は、チャンバ10内のギ酸ガスFGを窒素ガスNで置換する(S7、t6〜t7)。この工程は、排気仕切弁52を開にして例えばチャンバ10内が50Pa(絶対圧力)程度に減圧されるようにすることでチャンバ10内からギ酸ガスFGを排出した後、排気仕切弁52を閉にすると共に窒素弁42を開にすることでチャンバ10内に窒素ガスNを供給して、行うことができる。このとき、チャンバ10内が概ね200Pa(絶対圧力)となるようにすると、伝熱性の悪化を抑制しつつ後の真空破壊時にボイド圧縮効果を適切に得ることができるため、好ましい。なお、チャンバ10から排出されたギ酸ガスFGを含む排出流体Eは、排気管51を介して触媒ユニット56に導かれ、排出流体E中のギ酸の濃度を環境に影響を与えない濃度まで低下させる処理が行われた後、触媒ユニット56から排出される。
チャンバ10内ギ酸ガスFGを上述の圧力で窒素ガスNに置換したら、制御装置90は、ランプ22の出力を上げて、部材Tを半田の溶融温度に加熱する(S8、t8)。これにより、部材Tの半田が溶融して半田付けが行われる。半田付けが完了したら、制御装置90は、シャッタ12を開ける等により、チャンバ10内の真空を破壊する(S9、t9〜t10)。チャンバ10内の真空を破壊すると、チャンバ10内の圧力が急激に上昇するため、溶融していた半田内に存在し得る気泡等のボイドが気圧に圧縮されて押し出される。その結果、半田は後に冷却されても空洞のない導電性の良好な半田となる。チャンバ10内の真空を破壊したら、制御装置90は、ランプ22をOFFにして部材Tを含むチャンバ10内の冷却を開始し(S10、t11)、溶融していた半田が固化する温度以下に低下したら、部材Tの半田付けが行われたことで完成した接合済部材をチャンバ10から取り出す(S11)。これで、接合済部材の製造が完了する。なお、図2に示すフローにおいて、チャンバ10内に導入したギ酸ガスFGが凝縮するのを防ぐために、必要なタイミングでチャンバヒータ15を作動させることで、チャンバ10内の温度が低下しがちな部分の温度を上昇させてギ酸ガスFGの凝縮温度を超える温度に維持する還元ガス凝縮抑制工程を行ってもよい。還元ガス凝縮抑制工程は、チャンバ10内のギ酸ガスFGの凝縮が予想される場合に行えばよいが、好ましくはギ酸ガスFGがチャンバ10内に存在する期間(工程S5〜S6)に行い、予防的に工程S5〜S6の前及び/又は後に延ばしてもよい。
以上で説明したように、本実施の形態に係るギ酸供給装置1及び接合済部材の製造方法によれば、部材Tの酸化物の還元時にチャンバ10内がギ酸ガスFGで比較的高濃度に充填されるので、部材Tの酸化物の還元速度を従来よりも上昇させることができ、当該還元に要する時間を短縮することができて、接合済部材の生産性を向上させることができる。また、チャンバヒータ15を備えているので、部材Tの酸化物の還元速度をより上昇させるために、チャンバ10内に充填するギ酸ガスFGの圧力を高めにした場合であっても、チャンバ10の温度低下を抑制することができ、ギ酸ガスFGの凝縮を抑制することができる。また、チャンバ10内に充填するギ酸ガスFGの圧力を6000Pa(絶対圧力)以下とした場合は、チャンバ10内に30℃程度に低下する部分が生じてもギ酸ガスFGの凝縮を防ぐことができる。
以上の説明では、壁面温度作用部がチャンバヒータ15であるとしたが、保温材をチャンバ10の外壁に貼付して壁面温度の低下を抑制してもよい。この場合、還元ガス凝縮抑制工程は、半田付け部材の製造過程全体を通して行われていることとなる。なお、ギ酸ガスFGの凝縮が生じない条件下では、壁面温度作用部(及び壁面温度作用部が行う還元ガス凝縮抑制工程)を設けなくてもよい。
以上の説明では、圧力検知部が、チャンバ10内の圧力を直接検知する圧力センサ18であるとしたが、例えば気化器31に供給するギ酸液FLの量を計測してこの計測値からギ酸ガスFGとなってチャンバ10に導入された際の圧力を算出することで間接的に検知する構成としてもよく、その他の間接的に検知する構成を採用してもよい。
以上の説明では、還元ガスとしてギ酸ガスFGを用いることとしたが、ギ酸ガスFG以外のカルボン酸ガスや水素等を用いることとしてもよい。しかしながら、入手容易性や半田付け処理の利便性の観点から還元ガスとしてギ酸ガスFGを用いるのが好ましい。
以上の説明では、本発明の実施の形態に係る半田付け装置及び接合済部材の製造方法を、一例として主に図1乃至図3を用いて説明したが、各部の構成、構造、数、配置、形状、材質などに関しては、上記具体例に限定されず、当業者が適宜選択的に採用したものも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に包含される。
1 半田付け装置
10 チャンバ
15 チャンバヒータ
18 圧力センサ
20 加熱部
30 ギ酸供給部
31 気化器
50 排気部
90 制御装置
FG ギ酸ガス
FL ギ酸液
T 部材

Claims (6)

  1. 酸化物を有する部材をチャンバ内に導入する部材導入工程と;
    前記チャンバ内に導入された前記部材を所定の温度に加熱する加熱工程と;
    前記部材が収容されている前記チャンバの内部の流体を、実質的にすべて排出する流体排出工程と;
    前記流体排出工程の後、前記チャンバ内に、前記酸化物を還元する還元ガスを、1000Pa以上、6000Pa以下で、実質的に充填する還元ガス供給工程と;
    前記還元ガスが実質的に充填された雰囲気下で前記所定の温度に加熱された前記部材の前記酸化物を還元する還元工程とを備え;
    前記還元ガスは、キャリアガスが含まれていない、ギ酸液を気化させたギ酸ガスであり;
    前記チャンバ内に前記還元ガスを実質的に充填した状態は、前記チャンバ内の前記還元ガスの濃度が95%以上の状態である;
    酸化物除去済部材の製造方法。
  2. 前記チャンバ内の最低温度となる部分の温度を上昇させて前記還元ガスの凝縮を抑制する還元ガス凝縮抑制工程を備える;
    請求項1に記載の酸化物除去済部材の製造方法。
  3. 酸化物を有する部材を収容するチャンバと;
    前記チャンバ内の流体を排出する排出部と;
    前記チャンバ内に収容された前記部材を加熱する加熱部と;
    前記酸化物を還元する還元ガスを生成する気化器であって前記還元ガスとなる前の還元用液体を導入し加熱することで気化させてキャリアガスが含まれていない前記還元ガスを生成する気化器を有し、前記気化器で生成された前記還元ガスを前記チャンバ内に供給する還元ガス供給部と;
    前記部材が収容されている前記チャンバの内部の流体を実質的にすべて排出した後、前記部材を加熱しながら、前記還元ガスを1000Pa以上6000Pa以下で前記チャンバ内に実質的に充填するように、前記排出部、前記加熱部、及び前記還元ガス供給部を制御する制御装置とを備え;
    前記還元ガスがギ酸ガスであり、前記還元用液体がギ酸液であり;
    前記還元ガスを前記チャンバ内に実質的に充填した状態は、前記チャンバ内の前記還元ガスの濃度が95%以上の状態である;
    酸化物除去装置。
  4. 前記チャンバ内の圧力を直接又は間接的に検知する圧力検知部を備え;
    前記制御装置は、前記圧力検知部で検知された値があらかじめ決められた値となるように前記チャンバ内の圧力を制御する;
    請求項に記載の酸化物除去装置。
  5. 前記制御装置は、前記気化器に導入する前記還元用液体の量を調節することにより、前記チャンバ内の圧力を制御する;
    請求項に記載の酸化物除去装置。
  6. 前記チャンバに取り付けられ、前記チャンバの壁面に対して温度の低下を抑制又は温度を上昇させる壁面温度作用部を備える;
    請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の酸化物除去装置。
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