以下、本発明の実施の形態に係るドリッパー等を、図面を参照しつつ説明する。なお、各具体例等の相互で同一の部分や相当する部分には同一の符号を付して重複説明を適宜省略する。
図1にドリッパー1の外観を開封前状態(支持体3の折り畳み状態)で示し、図2にドリッパー1の外観を開封後状態(支持体3の筒状の開状態)で示す。図1はドリッパー1の背面図であり、図2はカップ17上にセットされたドリッパー1の背面側斜視図である。ドリッパー1は、被抽出成分を有する内容物18(図2)が封入された袋状のフィルター2と、そのフィルター2が内部に位置する状態で折り畳み可能に形成された筒状の支持体(スリーブ状の台紙)3と、を有する2重構造の構成になっている。このドリッパー1は、支持体3が折り畳み可能であることから携帯に適しており、廃棄の容易な材料で構成可能な簡易構造を有することから使い捨てに適している。つまり、携帯可能な使い捨てタイプでありながら、例えばドリップコーヒーを簡易に淹れることができるという長所を有している。
被抽出成分を有する内容物18(図2;例えば、レギュラーコーヒー粉,紅茶の葉,緑茶の葉等)は、袋状のフィルター2内に予め封入されている。そして、内容物18がドリッパー1の使用前にフィルター2からこぼれ出ないように、支持体3を介した超音波シールにより、フィルター2の開口9aが剥離可能に閉じられている。図1中に、超音波シールによるシール範囲24を示す。
フィルター2の材料としては、袋状にする際の加工性を考慮して、熱接着性を素材に有するシート材料、片面(袋状にしたときの最内層)に熱接着性を有するシート材料等を用いることが好ましい。例えば、ポリオレフィン系(ポリエチレン,ポリプロピレン等),ポリエステル系等の材料からなる透水性不織布、ポリオレフィン系(ポリエチレン,ポリプロピレン等),ポリエステル系等の熱可塑性樹脂を片面(袋状にしたときの最内層)に含有する多層構造の濾紙等が挙げられる。袋状の加工は、上記シート材料を2つ折り又はガセット折りすることにより重ね合わせ、所定形状に熱接着し、裁断・型抜きすることにより行われる。
フィルター2を所定の形状に保ちながら、カップ17(図2)上にセットすることを可能としているのが、筒状の支持体3である。この支持体3は、図2に示すように、一方の開口7aを構成する第1開口部7と、他方の開口8aを構成する第2開口部8と、を有しており、支持体3を折り畳み状態(図1)から筒状の開状態(図2)にするとフィルター2が開口するように、第1開口部7にフィルター開口部9が取り付けられている。このフィルター2の取り付けは、支持体3内にフィルター2を挿入し、支持体3の第1開口部7の縁でフィルター開口部9の一部を外側へ折り返し、その折り返し部分を支持体3の外面に貼り着けることにより行われる。このようにフィルター2を取り付けると、使用時に支持体3を筒状の開状態にした際、フィルター2が大きく開口して注湯やドリップに適した状態となる。
支持体3は、図3に示す1枚のブランク板3Aの折り曲げ,接着等により形成されている。図3は支持体3の展開図であり、ブランク板3Aは、板状のシート材料を展開図(図3)のように打ち抜くことにより形成される。ブランク板3Aの材質は特に限定されるものではないが、例えば、耐水カード紙,アイボリー紙等の厚紙や両面(特に支持体3の内側面)に樹脂(ポリエチレン等)が塗布された厚紙を、シート材料として用いることができる。なお、樹脂が塗布された厚紙でブランク板3Aを構成すると、支持体3に熱湯や湯気がかかっても、その剛性の低下を防止することができる。
支持体3は内側表面にポリエチレン層を有することが好ましく、内側表面と外側表面にポリエチレン層を有することが更に好ましい。支持体3の内側表面にポリエチレン層を配置する場合、ブランク板3Aは少なくとも片面にポリエチレン層を有することが必要とされる。したがってブランク板3Aには、厚紙(耐水カード紙,アイボリー紙等)の少なくとも片面にポリエチレンが塗布されたシート材料を用いることが好ましく、厚紙の両面にポリエチレンが塗布されたシート材料を用いることが更に好ましい。
図6に、積層構造の異なる2つのタイプの支持体3の具体例を模式的に示す。図6(A)は、両面コートタイプのブランク板3Aからなる支持体3の要部断面構造を示しており、図6(B)は、片面コートタイプのブランク板3Aからなる支持体3の要部断面構造を示している。図6(A)に示す支持体3は、紙層P0と、紙層P0の内側表面に形成されたポリエチレン層P1と、紙層P0の外側表面に形成されたポリエチレン層P2と、の3層からなる積層構造を有している。図6(B)に示す支持体3は、紙層P0と、紙層P0の内側表面に形成されたポリエチレン層P1と、の2層からなる積層構造を有している。
図6(A),(B)のいずれの支持体3も、少なくとも内側表面にポリエチレン層P1を有しているため、支持体3の外側表面からの超音波シールにより、支持体3の内側表面とフィルター2の外側表面とを短時間で剥離可能に接着することができる。つまり、ポリエチレン層P1は接着層として機能する。ポリエチレン層P1での接着状態により、輸送時等におけるフィルター2の動きが支持体3で抑えられるため、フィルター2の動きに起因する外れや破れを防止することができる。さらに、支持体3に湯気,熱湯,コーヒー等がかかっても、ポリエチレン層P1の耐水性によって支持体3の剛性の低下を防止することができる。
また、図6(A)に示す支持体3は、外側表面にもポリエチレン層P2を有しているため、ポリエチレン層P2の耐水性によって支持体3の剛性の低下を更に効果的に防止することができる。
ブランク板3A(図3)は、折り曲げ線Lを境界とする3つの部分、つまり前面板4と背面板5と糊代片6とで構成されている。折り曲げ線Lの具体例としては、リード罫,押し罫,切り罫,ミシン罫等の罫線が挙げられる。図8に、ミシン罫(ミシン目)からなる折り曲げ線Lの一例を示す。折り曲げ線Lは、複数のカット部C1〜C5と複数の非カット部U1〜U6とからなっており、全体として上下対称に形成されている。カット部C1〜C5は、切れ刃で同一サイズに構成されている。また、非カット部U1,U6は同一サイズに構成されており、非カット部U2〜U5は同一サイズに構成されている。非カット部U1,U6は非カット部U2〜U5よりも長くなっており、非カット部U1〜U6のうち相対的に長い非カット部U1が、カット部C1〜C5よりもフィルター2の開口9a(図2)の近く(つまり、第1開口部7の開口7a側)に位置している。フィルター2の開口9aを剥離可能に閉じるシール範囲24(図1)は、非カット部U1の範囲内に位置し、かつ、カット部C1〜C5のいずれとも重ならないように位置している。
前面板4と背面板5には(図3)、T字形状の切り込み14と、V字形状の切欠き15と、扇形状の孔16と、凹部Nと、が左右対称にそれぞれ設けられている。切り込み14は、支持体3の第2開口部8(図1,図2)に相当する部分に位置しており、切欠き15は、支持体3の第1開口部7(図1,図2)に相当する部分に位置しており、孔16は第1,第2開口部7,8に相当する部分の中間に位置している。なお、支持体3内にフィルター2を取り付ける際、孔16を通してフィルター2を押さえることにより、支持体3に対するフィルター2の相対的な位置ズレを効果的に抑えることができる。
支持体3の第2開口部8(図1,図2)に相当する部分には、図3に示すように、突出部11と脚部13が複数形成されている。つまり、各折り曲げ線Lの位置とその貼り合わせ位置(図1,図2中の重なり部分20)に突出部11が形成されており、2本の折り曲げ線Lの位置の中間に脚部13が形成されている。同一の切り込み14で2つの脚部13が形成されており、各脚部13の突出部11側には凹部Nが形成されている。この凹部Nと切り込み14との組み合わせによって、ブランク板3Aを形成する際のシート材料の無駄を抑えながら、脚部13が支持体3の第2開口部8側に屈曲した形状に形成されている。
支持体3を組み立てる際には、まず、前面板4と背面板5との境界の折り曲げ線Lに沿ってブランク板3Aを折り曲げて、前面板4と背面板5とが重なった状態にする。次に、前面板4と糊代片6との境界の折り曲げ線Lに沿ってブランク板3Aを折り曲げて、糊代片6が背面板5に重なった状態とする。その状態で背面板5に糊代片6を接着すると、ブランク板3Aは筒状となって折り畳み状態の支持体3が得られる。背面板5に対する糊代片6の接着は、ブランク板3Aの両端を重ねることにより形成した重なり部分20に、接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)を3箇所の接着範囲22(図1)に塗布することにより行われる。
上記のようにして筒状化された支持体3内には、フィルター2が設けられる。支持体3に対するフィルター2の取り付けは、前述したように、支持体3内にフィルター2を挿入し、支持体3の第1開口部7の縁でフィルター開口部9の一部を外側へ折り返し、その折り返し部分を支持体3の外面に接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)で貼り付けることにより行われる(支持体3の上端部の2点)。
各折り曲げ線Lに沿ったブランク板3Aの折り曲げによって、各折り曲げ線Lの位置に折り目M(図1,図2)が形成される。折り畳み状態の支持体3(図1)に対して、左右の折り目Mを互いに近づく方向に押圧すると、平坦だった筒状部分が、略直方体形状になるように起立する。図9は、そのように起立させたときのドリッパー1を前面板4側から見た状態で示している。略直方体形状に起立させたときの支持体3では、上下方向に延びる角部において、切欠き15の下端と孔16の上端及び下端に力が集中して、切欠き15と折り目19と孔16とに沿った略S字形状の外郭G(外郭位置から少し離して破線で示す。)が、前面板4と背面板5のそれぞれで2箇所ずつ生じ易くなる。つまり、起立状態のドリッパー1において、切欠き15の前面板4中央側の斜めの輪郭部分15aと、切欠き15の下端から扇型の孔16の上端までをつなぐ略直線状で外向きに形成される折り目19と、扇形の孔16の上端から下端までをつなぐ円弧状の輪郭部分16aと、を正面側から見ると、略S字形状の外郭Gが認識できるようになる。
上記のように略S字形状の外郭Gが形成されるように構成すると、ブランク板3Aを簡単に折り曲げることができる。この折り曲げにより、各折り目M(図1,図2)の位置に対角を形成するようにして、支持体3の第1開口部7及び第2開口部8で略六角形の開口7a,8aが形成される。そして、支持体3が筒状の開状態(図2)になるとともに、フィルター開口部9においても略六角形の開口9aが形成される。このようにしてドリッパー1の形態が安定化されるため、カップ17上にドリッパー1を安定した状態で載置することが可能となる。なお、ドリッパー1を大容量化するために、フィルター2の底部をガセット折りにすることが好ましい。
上述のようにして組み立てられた支持体3の第2開口部8には、開口8aを介して対向する1対の突出部11と、開口8aを介して対向する2対の脚部13と、が形成されている。折り曲げ線Lに沿ったブランク板3Aの折り曲げにより、支持体3が筒状の開状態になると、突出部11と脚部13は、第2開口部8の所定位置に配置される。つまり、支持体3の折り畳み状態(図1)における両側の折り曲げ位置(折り目Mの形成位置)には突出部11が設けられ、2つの突出部11の間には脚部13が設けられる。突出部11と脚部13が支持体3の第2開口部8にバランス良く配置されるため、ドリッパー1は重心が全体的に低くなって安定化される。
開口9aからフィルター2内に内容物18を入れ、重なり部分20での接着剤による接着の範囲22外で、支持体3を介した超音波シールを行うことにより、フィルター2の開口9aを剥離可能に閉じると、開封前状態のドリッパー1(図1)が得られる。このようにフィルター2の開口9aを剥離可能に閉じる接着は、ドリッパー1の使用時にフィルター2を開封するまでの仮接着である。
図4における(A)の平面図と(B)の正面図(超音波シール装置は図示省略)に、超音波シール装置を用いてフィルター2に超音波シール処理を施している様子を模式的に示す。超音波シールは、フィルター2に対して超音波振動エネルギーを作用させる超音波ホーン(シールバー)31と、フィルター2に対して位置決めを行うアンビル(受け治具)32と、を備えた超音波シール装置を用いて行われる。
例えば、表面に微小突起が千鳥状に形成された超音波ホーン31又はアンビル32を使用して、その微小突起が支持体3の背面側(重なり部分20が位置する側)に接するように充填シールを行うことが好ましい。そのようにすれば、支持体3の前面板4側(包装の顔の側)に傷を付けることなく、超音波シール処理を行うことができる。前面板4に超音波シールの痕跡が残らないので、前面板4を美麗な状態に保つことができ、ドリッパー1の外観及び安定生産と消費者のユーザビリティーとの両立が可能になる。
アンビル32には、ブランク板3Aの重なり部分20に対応するように(ブランク板3Aの1枚分の逃げ加工として)ザグリ32aが形成されている。シール範囲24内には支持体3の重なり部分20が存在しているが(図1,図4(B))、超音波ホーン31で支持体3がアンビル32に押し付けられても(図4(A))、重なり部分20ではブランク板3Aの1枚分がザグリ32a内に入るため、フィルター2が重なり部分20で強く押圧されることはない。これにより、シール強度の均一性を得ることができるため、ブランク板3Aの重なり部分20では、フィルター2が開封時に破れるきっかけとなるような強いシール部分は生じない。
接着範囲22に関しても同様である。支持体3を筒状に保持するための接着剤による接着範囲22がいずれもシール範囲24から外れて位置しているため、接着剤の不安定な厚みでフィルター2が強く押圧されることはない。つまり、支持体3において、図1,図4(B)に示すように、超音波シールによるシール範囲24と、接着剤による接着範囲22と、が重ならないように配置されているため、接着剤の不安定な厚みでフィルター2が強く押圧されることがない。結果として、フィルター2に対して超音波振動エネルギーが部分的に強く作用することがないため、シール強度の均一性を得ることができ、例えば、フィルター2同士が強くシールされたり支持体3の内側表面(ポリエチレン層P1)に対してフィルター2の外側表面が強くシールされたりすることがない。したがって、接着剤による接着範囲22では、フィルター2が開封時に破れるきっかけとなるような強いシール部分が生じないので、小型のドリッパー1でも、フィルター2開封時の内容物18の飛散やフィルター2の破れを防止することができる。
支持体3に対するフィルター2のシールが適度の強度を有するものであれば、そのシールをフィルター2の安定化に利用することができる。つまり、超音波シールにより、ドリッパー1の使用前のフィルター2を支持体3で安定的に保持することが可能である。例えば、支持体3の内側表面の状態をコーティングで調整したり、超音波シールの処理時間を調整したり、接着範囲を調整したりすれば、支持体3に対してフィルター2を適度の強度でシールすることができる。
図6(A)に示す支持体3を用いた場合、その内側表面にはポリエチレン層P1が形成されているため、支持体3を介して超音波シールを行うことにより(図4)、支持体3の内側表面とフィルター2の外側表面とを短時間で剥離可能に接着することができる。つまり、支持体3の外側表面から超音波シールを行うことにより、フィルター2の開口9aを剥離可能に閉じる(充填シール工程)とともに、支持体3の内側表面とフィルター2の外側表面とを剥離可能に接着することができる。1つの工程で2つの接着作業を同時に行うことができるため、高い生産効率を達成することができる。なお、ドリッパー1の使用時には、支持体3を筒状の開状態にする必要があるため、フィルター2は支持体3から剥離されることになる。したがって、上記剥離可能な接着は、輸送時等におけるフィルター2の動きを支持体3で抑えて、それに起因するトラブルを防止するための仮接着である。
超音波シールの処理時間が長いと、フィルター2の開口9aを閉じている接着力が強くなって、フィルター開封時に内容物18が飛散したりフィルター2が破れたりする可能性が高くなる。また、アンビル32のザグリ32a等の跡が支持体3の前面板4に付いてしまって外観が悪くなるおそれもある。超音波シールの処理時間が短いと、支持体3の内側表面とフィルター2の外側表面との接着力が弱くなって、輸送時等においてフィルター2が動き易くなり、フィルター2が外れたり破れたりする可能性が高くなる。
フィルター2とポリエチレン層P1との接着は、フィルター2と紙層P0との接着よりも短い時間で、適正な強さの接着力により完了するため、フィルター2の開口9aを閉じている接着力が強くなりすぎることはなく、支持体3の内側表面とフィルター2の外側表面との接着力が弱くなることもない。したがって、フィルター2の動きに起因する外れや破れを防止することができ、フィルター開封時の内容物18の飛散やフィルター2の破れも防止することができる。つまり、フィルター2の開口9aを剥離可能に閉じるときの接着力と、支持体3の内側表面とフィルター2の外側表面とを剥離可能に接着するときの接着力と、を適正にバランスさせて、輸送適性と開口適性とを両立させることが可能になる。
図7に、フィルター2が支持体3の片側に仮接着されたドリッパー1を模式的に示す。支持体3の一方の内側表面とフィルター2の外側表面とは仮接着しているが、支持体3の他方の内側表面とフィルター2の外側表面とは非接着状態にある。支持体3の外側表面から超音波シールを行った場合、支持体3の内側表面とフィルター2の外側表面との剥離可能な接着は、支持体3が折り畳み状態にあるときの折り目Mを境界とする片側(支持体3及びフィルター2に対して超音波振動エネルギーが強く作用する側)のみに発生し易い。図4に示すように超音波シールを行った場合には、図7に示すように背面板5と糊代片6の側(図4中の超音波ホーン31の側)のみに発生し易く、そのなかでもブランク板3Aの重なり部分20でより一層発生し易い。
上記のようにフィルター2が支持体3の片側に仮接着された状態では、支持体3の第1開口部7に対するフィルター開口部9の接着点(支持体3の上端部の2点)の他に、支持体3の内側表面とフィルター2の外側表面との仮接着の接着点が追加されて、支持体3に対してフィルター2が3点で保持されることになる。その接着状態により、輸送時等におけるフィルター2の動きを支持体3で効果的に抑えることができ(輸送適性の改善)、また、生産効率が非常に良くなるにも関わらず、ドリッパー1の開封作業は容易になる(開口適性の改善)。
フィルター2が支持体3の片側に仮接着された状態では、フィルター2のシール範囲24に過剰に偏った力がかかっているかどうかの判断(つまり生産時の良品の判断)が容易になる。支持体3の他方の側にもフィルター2が部分的に仮接着した状態(4点での保持状態)になっていてもよいが、その場合、フィルター2の開口9aを閉じている接着力が強くなりすぎる傾向になる。例えば、過剰に偏った超音波シールを行った場合、完全な非接着状態にはならず、特に重なり部分20で仮接着が発生し、その偏りが更に過剰になると、重なり部分20以外でも仮接着が発生する。結果として、フィルター2の開口適性の改善が困難になる。
フィルター2が支持体3の片側に仮接着されていると、フィルター2が支持体3の両側に仮接着されている場合よりも、閉じているフィルター開口部9にかかる負荷が小さくなる。例えば、折り畳み状態の支持体3が輸送時等において(例えば商品の搬送中)、折り目Mの位置に衝撃(つまり、左右の折り目Mを互いに近づく方向に押圧する衝撃)を受けても、フィルター2は支持体3の片側に仮接着されているため、フィルター2と支持体3との非接着状態の隙間によって衝撃は吸収される。その結果、開口9aを閉じている仮接着は影響を受けにくくなって、ドリッパー1の使用前にフィルター2が開封されることを防止することができる。また、超音波シールの処理時間を調整することにより、フィルター2が支持体3の片側のみに仮接着されるようにすると、アンビル32のザグリ32a等の跡(ザグリ32aの角で生じる傷)が支持体3の前面板4に付いて外観が悪くなることを防止することができる。したがって、支持体3の内側表面とフィルター2の外側表面との剥離可能な接着状態は、支持体3が折り畳み状態にあるときの折り目Mを境界とする片側のみに存在することが好ましい。
図7に示すように、フィルター2の開口9a(図2)を剥離可能に閉じるシール範囲24と、フィルター2と支持体3とを剥離可能に接着する仮接着範囲26と、は一致している。このため、フィルター2と支持体3との剥離可能な接着は、フィルター2の開口9aを剥離可能に閉じるシール範囲24内において行われる。仮接着範囲26が内容物18から離れた位置にあり、しかも仮接着に接着剤(ホットメルト接着剤等)を使用する必要がないことから、衛生面での問題を危惧する必要がなく、例えばコーヒーの味や風味等が影響を受ける可能性もない。また、コーヒー充填時の工程が増えないというメリットもある。
図7に示すように、支持体3の外側表面からの超音波シールにより、支持体3が折り畳み状態にあるときの折り目Mの部分(つまり、仮接着範囲28)において、支持体3の内側表面同士は剥離可能に接着されている。支持体3はフィルター2よりも余裕を持って小さめに構成されているため、支持体3の外側表面から超音波シール(シール範囲24)を行うと、支持体3の左右の折り目Mの位置からフィルター2までの間(仮接着範囲28)で、支持体3の内側表面同士を剥離可能に接着することができる。
仮接着範囲28で支持体3の内側表面同士が仮接着されていると、仮接着範囲28での仮接着が無い場合よりも、閉じているフィルター2の開口9aにかかる負荷が小さくなる。例えば、折り畳み状態の支持体3が輸送時等において折り目Mの位置に衝撃(つまり、左右の折り目Mを互いに近づく方向に押圧する衝撃)を受けても、仮接着範囲28で支持体3の内側表面同士が仮接着されているため、フィルター2の開口9aを閉じている仮接着は影響を受けにくくなる。したがって、ドリッパー1の使用前にフィルター2が開封されることを防止することができる。
ブランク板3A(図3)は、ポリエチレン層P1,P2(図6)でコーティングされていると、折り曲げにくくなる。その折り曲げを容易にするため、図8に示すように、折り曲げ線Lをカット部C1〜C5と非カット部U1〜U6とで構成することが好ましい。このようなミシン目からなる折り曲げ線Lを用いれば、支持体3が折れ曲がり易くなるため、ドリッパー1の開封を容易に行うことが可能になる。また、カット部C1〜C5と非カット部U1〜U6が全体として上下対称に形成されているため、支持体3は更に折れ曲がり易くなる。したがって、ドリッパー1の開封を更に容易に行うことが可能になる。
折り曲げ線Lの位置には折り目Mが形成されるため、シール範囲24(図1)は折り曲げ線Lと交差することになる。シール範囲24がカット部C1〜C5のいずれかで折り曲げ線Lと交差すると、支持体3が超音波ホーン(シールバー)31で押さえられることにより、支持体3の強度がカット部C1〜C5で低下して破れ易くなる。これを回避するため、図8に示すように、シール範囲24は非カット部U1の範囲内に位置し、かつ、カット部C1〜C5のいずれとも重ならないように位置している。支持体3の折り目Mは、カット部C1〜C5で折り曲げの応力を緩和する役割を持っているため、ドリッパー1を使用する際、カップ17に合うサイズに支持体3を折り目Mで臨機応変に折り曲げて、安定した固定状態(図2)とすることが可能になる。
カット部C1〜C5よりもフィルター2の開口9a(図2)の近くに位置している非カット部U1は、余裕を持って相対的に長く形成されている。このため、シール範囲24が非カット部U1の範囲から外れることを効果的に防ぐことができる。つまり、超音波ホーン31が多少上下に位置ズレしても対応できるように、最も上の非カット部U1は長く形成されている。したがって、折り曲げ線Lでの支持体3の強度低下による破れを効果的に防ぐことができる。
ドリッパー1の使用時、例えばコーヒーを淹れる際には、フィルター2を開封し、支持体3を折り畳み状態(図1)から筒状の開状態(図2)にしてフィルター2を開口させた後、カップ17上にドリッパー1を載置する。開口9aからフィルター2内に熱湯を注ぐと、抽出されたコーヒーがフィルター2を通過してカップ17内に溜まることになる。孔16からカップ17内の様子が見えるので、熱湯を注ぎながらカップ17内のコーヒー量を容易に確認することができる。このようにして、開口9aからフィルター2内に所定量の熱湯を注ぐことにより、フィルター2内の内容物18から所望の成分が抽出された飲料(コーヒー,紅茶,緑茶等)をカップ17内に得ることができる。
上記のように支持体3が筒状の開状態にあるドリッパー1をカップ17上に載置すると、図2に示すように、突出部11はカップ17の縁の内側に位置することになり、脚部13は第2開口部8よりも外側に位置することになり、脚部13の先端部分はカップ17の縁の外側に位置することになる。折り畳み状態(図1)に戻ろうとする支持体3の復元力によって、カップ17の内側に位置する突出部11と、カップ17の外側に位置する脚部13と、でカップ17の縁が内外から強く押さえ込まれるため、大容量のドリッパー1でも安定した状態に保持される。
脚部13の屈曲した形状(例えば、屈曲位置での係止)により支持体3の移動がカップ17の縁で制限されるので、カップ17の存在無しにドリッパー1の位置が固定されることはない。つまり、カップ17の縁が第2開口部8から脚部13の屈曲位置までの範囲内にあれば、ドリッパー1の形状を開状態に保ちながら、ドリッパー1をカップ17上にセットすることができる。したがって、カップ17の多様性(様々なカップサイズやカップ形状等)に幅広く対応することが可能である。なお、カップサイズ・カップ形状に応じて、突出部11がカップ17の縁の外側に位置するようにドリッパー1をカップ17上にセットしてもよく、突出部11を省略して脚部13のみでドリッパー1をカップ17上にセットしてもよい。
前述したように、この実施の形態によれば、超音波シールによるシール範囲24と、接着剤による接着範囲22と、が重ならないように配置されているため、接着剤の不安定な厚みでフィルター2が強く押圧されることがない。結果として、フィルター2に対して超音波振動エネルギーが部分的に強く作用することがないため、フィルター2同士が強くシールされたり支持体3内面に対してフィルター2外面が強くシールされたりすることがない。したがって、小型のドリッパー1でも、フィルター2開封時の内容物18の飛散やフィルター2の破れを防止することができる。
図5の正面図に、シール範囲24と接着範囲22との位置関係の具体例を示す。図5(A)は、前述した具体例(図1)を示している。つまり、背面板5の重なり部分20に設けられた3箇所の接着範囲22が、いずれもシール範囲24から外れて位置する具体例(3点ホットメルトタイプ)である。図5の(B)〜(D)は、背面板5の重なり部分20に設けられた2箇所の接着範囲22が、いずれもシール範囲24から外れて位置する具体例(2点ホットメルトタイプ)である。いずれの具体例も、超音波シールによるシール範囲24と、接着剤による接着範囲22と、が重ならないように配置されているため、超音波シールに対する接着剤の厚みの影響は生じない。
前述したように、この実施の形態によれば、支持体3が内側表面にポリエチレン層P1を有しているため、支持体3の外側表面からの超音波シールにより、支持体3の内側表面とフィルター2の外側表面とが剥離可能に接着された状態を短時間で安定的に得ることができる。その接着状態により、輸送時等におけるフィルター2の動きが支持体3で抑えられるため、フィルター2の動きに起因する外れや破れを防止することができる。また、支持体3の外側表面からの超音波シールにより、フィルター2の開口9aが剥離可能に閉じられているため、シール強度の安定化によって、フィルター開封時の内容物18の飛散やフィルター2の破れを防止することができる。したがって、支持体3に対するフィルター2の取り付け状態に関して良好な輸送適性を有し、かつ、フィルター開口9aのシール強度に関して良好な開口適性を有するドリッパー1を実現することが可能である。
また、支持体3の内側表面とフィルター2の外側表面との剥離可能な接着状態が、支持体3が折り畳み状態にあるときの折り目Mを境界とする片側のみに存在しているため、閉じているフィルター開口部9にかかる負荷が小さくなる。その安定した接着状態により、輸送時等におけるフィルター2の動きが支持体3で抑えられるため、フィルター2の動きに起因する外れや破れを防止することができる。また、支持体3の外側表面からの超音波シールにより、フィルター2の開口9aが剥離可能に閉じられているため、シール強度の安定化によって、フィルター開封時の内容物18の飛散やフィルター2の破れを防止することができる。したがって、支持体3に対するフィルター2の取り付け状態に関して良好な輸送適性を有し、かつ、フィルター開口9aのシール強度に関して良好な開口適性を有するドリッパー1を実現することが可能である。
この実施の形態では、支持体3が折り畳み状態にあるときの折り目Mを形成する折り曲げ線Lが、カット部C1〜C5と非カット部U1〜U6とからなっているため、開封及び折り畳みのための折り曲げを容易に行うことができる。フィルター開封時の折り曲げが容易になることから内容物18の飛散を防止することが可能になる。また、充填シール工程における折り畳みが容易になるため生産効率の向上が可能となり、支持体3とフィルター2との充分な密着によりフィルター開口において安定したシール強度を得ることも可能となる。したがって、安定した形態及びフィルター状態を保持するとともに、開封及び折り畳みの容易なドリッパー1を実現することが可能である。
以下、本発明を実施したドリッパー等を、実施例を挙げて更に具体的に説明する。
表1に、ドリッパー1の実施例1,2及び参考例1,2におけるフィルター2の開口適性と外観の評価結果を示す。実施例1,2及び参考例1,2に用いられている筒状の支持体3は、同じ形状のブランク板3Aからなっており、その内部には袋状のフィルター2が配置されている。実施例1及び参考例1の支持体3は、内側表面と外側表面の両面にポリエチレン層P1,P2が形成されており(PE両面コート紙)、実施例2及び参考例2の支持体3は、内側表面の片面のみにポリエチレン層P1が形成されている(PE片面コート紙)。
フィルター2と支持体3とが剥離可能に接着するまで、折り畳まれた状態の支持体3(実施例1,2及び参考例1,2)の外側表面から超音波シールを行って、フィルター2の開口適性と前面側の外観を5人で評価した。開口適性は全ての支持体3で良好であったが、実施例1,2が参考例1,2よりも開口適性が良好である答えた人数が5人であったため、実施例1,2の輸送適性を最も良好◎と判定し、参考例1,2の輸送適性を良好○と判定した。また、実施例1,2では前面側外観を最も良好◎と判定し、参考例1,2ではザグリ32aのエッジの跡が表れていたため少し劣る△と判定した。