JP6878952B2 - 太陽電池裏面保護用シート - Google Patents

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Description

本技術は、屋外環境で長期間暴露されても粉吹き抑制に優れる太陽光電池裏面保護用シートに関する。
再生可能エネルギーの代表格である太陽電池は、ここ数年の間に一般家庭レベルでの屋根置き型太陽電池の急速な普及により大幅な市場成長を遂げた。加えて、現在においてはフィールド設置型太陽電池であるメガソーラー建設が企業・行政を主体に進行中であり、今後も継続した太陽電池の導入量拡大、市場拡大が見込める。現在主流であるシリコン型太陽電池は、単結晶シリコンや多結晶シリコンなどの無機半導体からなる発電素子をエチレン−酢酸ビニル共重合体(以降EVAと称することがある)などの透明な封止材を用いて固定し、その受光面側を透明ガラス基板、裏面側バックシート(太陽電池裏面保護用シート)と呼ばれる樹脂シートでそれぞれ挟むことで構成されている。
太陽電池は紫外線を含む太陽光が多量に降り注ぐ屋外環境に設置され、自然の気候変化に伴う温湿度変化や雨風といったストレスに長期間晒される。これらストレスから発電素子を保護するため、太陽電池裏面保護用シートとしては安価で耐候性・電気絶縁性に優れ高強度な二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以降、PETと称することがある)が用いられてきた。これまでに、太陽電池の意匠性と光反射特性向上に伴う太陽電池発電量の向上に加え、紫外線曝露によるポリエステル樹脂の分解抑制の観点から、太陽電池裏面保護用シート表面(太陽電池裏面側表層)に紫外線吸収能を持つ白色顔料を多量に含有させた白色ポリエステルフィルム(特許文献1−3)が開発され、現在でも多くの太陽電池裏面保護用シートとして用いられている。
特開2013−010363号公報 国際公開第2013/051661号 特開2012−019070号公報
しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、これら白色顔料を多量に含有させたポリエステルフィルムには、以下の課題があることを見出した。
白色顔料を多量に含有させたポリエステルフィルムが、長期間屋外環境に設置されると、紫外線暴露によってポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂が光分解(UV劣化)する。光分解(UV劣化)したポリエステル樹脂は、低分子化合物にまで分解されることで表層より自然気化すること、または低分子量化した部分が脆化することでフィルムの形として保持できず、風雨などの外力によって流れ落ちることで消失する(ポリエステルフィルムは表層から浸食されて厚みが減っていく)。そのため、白色顔料を多量に含有したポリエステルフィルムにおいては、樹脂内部に埋没していた白色顔料が樹脂表層に突出し、外観(色調)が変化するという問題や、劣化したポリエステル樹脂と共に白色顔料が白粉として脱落する粉吹き現象(白粉発生)という問題が発生する。この白粉発生という問題は、残された太陽電池裏面保護用シートの耐紫外線性の低下に繋がり、太陽電池裏面保護用シートの寿命を低下させることに加え、太陽電池場所付近の環境汚染にもつながる。
特許文献1の場合、製膜時における長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)の延伸温度が高くポリエステル樹脂成分の結晶化が進行し、続く延伸工程において結晶化部位が起点となりシート内に微小の空隙が多く形成され、粉吹き抑制効果が不十分となることがある。
特許文献2の場合、添加される酸化チタンの粒子径が大きく、延伸時に微小の空隙が形成さてやすくなることで、粉吹きを抑制効果が不十分となることがある。また、粒子径が大きくなることで、紫外線に対する粒子の吸収断面積の総和が小さくなりシートの紫外線曝露後の色調変化が悪化することがある。
特許文献3の実施例においては添加される酸化チタンの粒子径が大きいことに加え、製膜時における長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)の延伸倍率が高く、添加粒子周辺に微小の空隙が多く形成されるため、粉吹き抑制効果が不十分となることがある。
これらの課題を鑑みて、本発明では、屋外環境で長期間暴露されても、粉吹きを抑制した太陽電池裏面保護用シートを生産性良く提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明は以下の構成をとる。すなわち
1.少なくとも片側の表層にポリエステル樹脂を主たる構成成分とする層(P1層)を有し、前記ポリエステル樹脂を主たる構成成分とする層(P1層)とポリエステル樹脂を主たる構成成分とする基材層(P2層)を隣接して有しており、P1層を構成するポリエステル樹脂およびP2層を構成するポリエステル樹脂がともに白色顔料を含有し、P1層を構成するポリエステル樹脂の白色顔料含有量が6質量%以上13質量%以下であり、以下(1)を満たすことを特徴とする太陽電池裏面保護用シート。
(1)P1層表面を下記条件でテープ剥離試験を実施し、剥離したテープを下記条件でヘイズメーターにて測定した時のヘイズ値をH0、P1層表面を下記条件で紫外線照射処理を実施した後に下記条件でテープ剥離試験を実施し剥離したテープを下記条件でヘイズメーターにて測定した時のヘイズ値をH1とするとき、式(i)で表されるΔHが5%以上30%以下であること。
式(i)ΔH=H1−H0
《テープ剥離試験条件》
太陽電池裏面保護用シートのP1層側の面に、セキスイセロテープ(登録商標)No.252(積水化学工業(株)製、テープ幅15mm)を貼付け、2kgのゴムローラーを用いて圧着した後、0.12m/分〜0.18m/分の速度で180度剥離させる。
《ヘイズ測定条件》
P1層から剥離したセキスイセロテープ(登録商標)を、JIS−K7105(1981)に基づき、全自動直読ヘイズコンピューターHGM−2DP(スガ試験機(株)製)を用いて、セロテープ(登録商標)の厚さ方向のヘイズ(%)を測定する。3回の測定値の平均をヘイズ値とする。
《紫外線照射処理条件》
太陽電池裏面保護用シートのP1層側の面に試験光が当たるように設置し、アイスーパー紫外線テスターS−W161(岩崎電気(株)製)を用いて、温度60℃、相対湿度50R%、照度150mW/cm2(光源:メタルハライドランプ、波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm、JIS−C−1613に準拠)の条件下で72時間照射を行う。
2.前記P1層の厚みが、前記P1層および前記P2層の合計厚みに対して10%以上30%以下であることを特徴とする1.に記載の太陽電池裏面保護用シート。
3.前記P1層およびP2層に含有する白色顔料がいずれも酸化チタンであり、その個数平均粒子径がいずれも0.1μm以上0.3μm未満であることを特徴とする1.または2.に記載の太陽電池裏面保護用シート。
4.前記P1層を構成するポリエステル樹脂組成物がリン酸とリン酸アルカリ金属塩を含有し、リン元素の含有量P(mol/t)が該ポリエステル樹脂全体に対して1.8mol/t以上5.0mol/t以下であり、Mn、Caの少なくともいずれか1種類の金属元素を含有し、Mn、Ca以外の2価の金属元素の含有量がそれぞれ該ポリエステル樹脂全体に対して5ppm以下であり、前記ポリエステル樹脂全体に対するアルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)とし、前記ポリエステル樹脂全体に対するMn元素含有量とCa元素含有量の合計をM2(mol/t)とするとき、下記式(ii)で求められる、前記ポリエステル樹脂における金属含有量M(mol/t)と、前記リン元素の含有量P(mol/t)とが、下記式(iii)を満たすことを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の太陽電池裏面保護用シート。
式(ii)M=M1/2+M2
式(iii)1.1≦M/P≦3.0
5.前記P1層表面を下記条件でキセノンランプ照射試験を2000時間実施した際の膜厚減少量(ΔL)が5μm以下であることを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の太陽電池裏面保護用シート。
《キセノンランプ照射試験条件》
太陽電池裏面保護用シートをP1層側の面に試験光が当たるように設置し、フィルタとしてインナーに石英ガラス製フィルタ、アウターにデイライトフィルタを搭載したスーパーキセノンウェザーメーター(スガ試験機(株)製)を用いて、JIS−K−7350−2(2008)準拠の下、照射強度180W/m2(300−400nm)、温度(ブラックパネル温度)63℃、相対湿度50%の条件でキセノンランプ照射試験を2000時間行う。本試験ではキセノンランプ照射を継続の下、102分毎に装置内蔵の噴霧装置を用いた噴霧処理を18分間行うというサイクル(1サイクル120分)を1000回繰り返す。
《膜厚減少量測定条件》
太陽電池裏面保護用シートを縦6cm、横7cmの長方形に切り出す。長方形サンプルの中心と中心から縦方向に1.5cm、横方向に2cm離れた4点の計5か所の厚みを厚み計にて測定し、それら5点の厚みの平均値をキセノンランプ照射試験前のシート厚み(L0)とする。
当該長方形サンプルを、上述のキセノンランプ照射試験を2000時間実施した後、上記と同様の方法でシート厚みを測定して、得られた値をキセノンランプ照射試験後のシート厚み(L1)とする。L0、L1を用いて、下記式(9)より、膜厚減少量(ΔL)を求める。
膜厚減少量(ΔL)=L1―L0・・・式(9)
6.1.〜5.のいずれかに記載の太陽電池裏面保護用シートを備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
本発明によれば、屋外環境で長期間暴露されても、粉吹きを抑制した太陽電池裏面保護用シートおよびそれを用いた太陽電池を提供することができる。
本発明の太陽電池裏面保護用シートを用いた太陽電池の構成の一例を模式的に示す断面図である。
本発明の太陽電池裏面保護用シートは、少なくとも片側の表層にポリエステル樹脂を主たる構成成分とする層(P1層)を有し、以下(1)の条件を満たすものである。
(1)P1層表面を下記条件でテープ剥離試験を実施し、剥離したテープを下記条件でヘイズメーターにて測定した時のヘイズ値をH0、P1層表面を下記条件で紫外線照射処理を実施した後に下記条件でテープ剥離試験を実施し剥離したテープを下記条件でヘイズメーターにて測定した時のヘイズ値をH1とするとき、式(i)で表されるΔHが5%以上30%以下であること。
式(i)ΔH=H1−H0
《テープ剥離試験条件》
太陽電池裏面保護用シートのP1層側の面に、セキスイセロテープ(登録商標)No.252(積水化学工業(株)製、テープ幅15mm)を貼付け、2kgのゴムローラーを用いて圧着した後、0.12m/分〜0.18m/分の速度で180度剥離させる。
《ヘイズ測定条件》
P1層から剥離したセキスイセロテープ(登録商標)を、JIS−K7105(1981)に基づき、全自動直読ヘイズコンピューターHGM−2DP(スガ試験機(株)製)を用いて、セロテープ(登録商標)の厚さ方向のヘイズ(%)を測定する。3回の測定値の平均をヘイズ値とする。
《紫外線照射処理条件》
太陽電池裏面保護用シートのP1層側の面に試験光が当たるように設置し、アイスーパー紫外線テスターS−W161(岩崎電気(株)製)を用いて、温度60℃、相対湿度50R%、照度150mW/cm(光源:メタルハライドランプ、波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm、JIS−C−1613に準拠)の条件下で72時間照射を行う。
(P1層(以降、耐候性層と称する場合がある))
まず、本発明の太陽電池裏面保護用シートのP1層は、ポリエステル樹脂を主たる構成成分とする。ここで、ポリエステル樹脂を主たる構成成分とするとは、該P1層を構成する樹脂に対してポリエステル樹脂が50質量%を超えて含有されていることをいう。P1層を構成するポリエステル樹脂としては、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などが挙げられる。また、本発明に用いられるポリエステル樹脂は、1)ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体(以下、「ジカルボン酸成分」と総称する)とジオール成分の重縮合、2)一分子内にカルボン酸もしくはカルボン酸誘導体と水酸基を有する化合物の重縮合、および1)2)の組み合わせにより得ることができる。また、ポリエステル樹脂の重合は常法により行うことができる。
1)において、ジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸類、脂環族ジカルボン酸類、芳香族ジカルボン酸類などのジカルボン酸およびそのエステル誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。脂肪族ジカルボン酸類としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸などが挙げられる。また、脂環族ジカルボン酸類としては、例えば、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸などが挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸などが挙げられる。また、これらは単独で用いても、複数種類用いても構わない。
また、上述のジカルボン酸成分の少なくとも一方のカルボキシ末端に、l-ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類およびその誘導体や該オキシ酸類が複数個連なったものなどを縮合させたジカルボキシ化合物も用いることができる。
次に、ジオール成分としては、例えば、脂肪族ジオール類、脂環式ジオール類、芳香族ジオール類などのジオールおよびこのようなジオールが複数個連なったものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。脂肪族ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオールなどが挙げられる。また、脂環式ジオール類としては、例えば、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどが挙げられる。また、芳香族ジオール類としては、例えば、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。また、上述のジオール成分の少なくとも一方のヒドロキシ末端にジオール類を縮合させて形成されるジヒドロキシ化合物も用いることができる。
2)において、一分子内にカルボン酸もしくはカルボン酸誘導体と水酸基を有する化合物の例としては、l-ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸、およびその誘導体、オキシ酸類のオリゴマー、ジカルボン酸の一方のカルボキシル基にオキシ酸が縮合したものなどがあげられる。
ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分およびジオール成分は、上述した中から1種類ずつを選択して共重合させても良いし、それぞれ複数種を選択して共重合させても良い。
また、P1層を構成するポリエステル樹脂は、単一種でも良いし、2種以上のポリエステル樹脂をブレンドしたものでも良い。
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP1層を構成するポリエステル樹脂は、リン化合物としてリン酸アルカリ金属塩およびリン酸を含有することが好ましい。リン酸アルカリ金属塩としては、例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ニナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウムなどが挙げられる。好ましくはリン酸二水素アルカリ金属塩、リン酸水素二アルカリ金属塩である。また、アルカリ金属元素がNa,Kであるリン酸アルカリ金属塩が長期の耐湿熱性の点から好ましい。特に好ましくはリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムである。
また、本発明の太陽電池裏面保護用シートのP1層を構成するポリエステル樹脂は、リン元素の含有量Pがポリエステル樹脂全体に対して1.8mol/t以上5.0mol/t以下であることが好ましい。また、上記ポリエステル樹脂はMn、Caの少なくともいずれか1種類の金属元素を含有し、それ以外の2価の金属元素の含有量はそれぞれ多くてもポリエステル樹脂全体に対して5ppm以下であることが好ましい。ここで、金属元素とは、原子だけではなく、イオン状態でポリエステル樹脂中に存在するものも含むものとする。なお、一般的には、金属元素は、ポリエステル樹脂中ではイオン状態として存在する。
また、本発明の太陽電池裏面保護用シートのP1層を構成するポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂全体に対するアルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)とし、ポリエステル樹脂全体に対するMn元素含有量とCa元素含有量の合計をM2(mol/t)とするとき、下記(1)式で求められる金属含有量M(mol/t)と、リン元素の含有量P(mol/t)とが、下記式(ii)を満たすことが好ましい。
M=(M1)/2+M2・・・式(ii)
1.1≦M/P≦3.0・・・式(iii)
上述の2価の金属元素とは、化学周期表第3周期までのアルカリ土類金属元素と、第5周期以降の第1族から12族までの元素、およびTiを除く第4周期の遷移金属元素を指す。本発明における金属元素の価数とは、金属原子の電子軌道のうち、最外殻または最外殻に最も近い位置にあるs軌道に存在する電子の個数の合計である。
ポリエステル樹脂に含まれるMn元素、Ca元素は、これらの金属元素を含む金属化合物であることが好ましい。これらの金属化合物はエステル交換反応触媒としての機能を有する。
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP1層を構成するポリエステル樹脂は、Na、Li、Kからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属化合物と、Sb、Ti、Geからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属化合物とを含み、これら金属元素の含有量の合計は、ポリエステル樹脂全体に対して30ppm以上2000ppm以下とすることが好ましい。金属元素の含有量の合計をこの範囲とすることでCOOH末端基量の抑制ができ、耐熱性が向上する。なお、Na、Li、Kはアルカリ金属元素である。またSb、Ti、Geは重合触媒能を有する金属元素であり、重合触媒として機能する。
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP1層を構成するポリエステル樹脂は、上述の通り、リン化合物としてリン酸アルカリ金属塩とリン酸の両方を含有している。このような構成によれば、緩衝作用により、ポリエステルのCOOH末端基の活性が低下し、湿熱雰囲気下での加水分解の進行を抑制する結果、耐湿熱性を大きく向上させることができる。この効果は製膜した太陽電池裏面保護用シートの耐湿熱性を上げるだけではなく、後述の白色顔料を含有させたマスターペレット製造時にも効果を示す。
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP1層を構成するポリエステル樹脂においては、リン元素の含有量Pがポリエステル樹脂全体に対して1.8mol/t以上5.0mol/t以下であることが好ましい。リン元素の含有量Pが1.8mol/t未満であると、リン酸アルカリ金属塩およびリン酸の含有量が充分でないため、湿熱雰囲気下でのCOOH末端基量の増加を抑えることができず、ポリエステル樹脂の加水分解が進行しやすくなり、耐湿熱性の低下を招くおそれがある。またリン元素の含有量Pが5.0mol/tを超えると、リン酸アルカリ金属塩および/またはリン酸の含有量が過剰となる。リン酸アルカリ金属塩が過剰な場合はリン酸アルカリ金属塩が異物化する懸念があり、リン酸が過剰である場合は、リン酸により重合触媒が失活して重合反応が遅延し、COOH末端基量が増加するため、ポリエステル樹脂の耐湿熱性が低下するおそれがある。また、上記ポリエステル樹脂におけるリン酸アルカリ金属塩の含有量は、ポリエステル樹脂全体に対して1.3mol/t以上3.0mol/t以下であることが耐湿熱性の点から好ましい。また、リン酸の含有量は、リン酸アルカリ金属塩に対して、モル数で0.4倍以上1.5倍以下であることが長期的な耐湿熱性の点から好ましい。
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP1層を構成するポリエステル樹脂に含有されるアルカリ金属元素とMn元素、Ca元素は、リン元素を含む化合物またはポリエステルのCOOH末端基と化学結合し、リン化合物による重合触媒の失活を抑制し、COOH末端基の自己触媒作用を抑制して加水分解を抑制する効果をもたらす。アルカリ金属元素は重合触媒の失活の抑制に効果があり、Mn元素、Ca元素は重合触媒の失活抑制と、COOH末端基の自己触媒作用の抑制による加水分解の抑制に効果的である。
一般的に、ポリエステル樹脂中に含有される金属イオンは、COOH末端基を含むカルボニル基と化学結合する。特に金属イオンがCOOH末端基のカルボニル基と化学結合した場合、水分子が存在することでCOOH末端基の自己触媒作用が発現し、それによって加水分解が起こり、ポリエステルが劣化するに至る。この加水分解を抑制するためには、COOH末端基と化学結合する金属イオンと、水分子とを、安定化させることが効果的である。つまり、金属イオンと水分子とを水和せしめることが効果的である。この効果の指標として、金属イオンの水和エンタルピーと金属イオンの半径の積を用いることができる。この積の値が大きい金属元素としてMn、Ca、Alイオンが挙げることができる。これらの金属イオンはより効果的に水分子を安定化させることが可能であり、その結果ポリエステル樹脂の耐湿熱性を向上させることができる。とくに、Mn元素、Ca元素の化合物は、エステル交換反応触媒としての性能が高いため、含有させる金属元素としてより好ましい。
また、リン化合物は、ポリエステル樹脂中で陰イオンとして存在するため、ポリエステル樹脂中にイオン状態で存在する金属元素と化学結合する。リン化合物に由来する陰イオンが、重合触媒に由来する金属元素のイオンと化学結合すると、重合触媒が失活することになる。ポリエステル樹脂中に、重合触媒由来の金属元素以外の金属元素のイオンを存在させることで、重合触媒に由来する金属元素イオンとリン化合物に由来する陰イオンとの化学結合を抑制することができ、重合触媒の失活を抑制できる。ここで、リン化合物による重合触媒失活の抑制またはポリエステル樹脂のCOOH末端基の自己触媒作用の抑制の指標となるのが、上述の(2)式で表されるM/Pである。この式におけるMは、ポリエステル樹脂において、リン化合物に由来する陰イオンと化学結合する、金属元素のイオンの含有量を表すものである。
ただし、ポリエステル樹脂中でリン化合物に由来する陰イオンは2価であるので、2価の金属元素の陽イオンと1:1で相互作用する。そのため、ポリエステル樹脂中で1価の陽イオンとなる金属元素の含有量M1に対しては係数0.5を乗じる必要がある。
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP1層を構成するポリエステル樹脂においては、M/Pが1.1以上3.0以下であることが好ましい。1.1に満たないと、リン化合物量に対する金属元素量が少なすぎて、リン化合物による重合触媒失活の抑制またはポリエステル樹脂のCOOH末端基の自己触媒作用の抑制が充分でないため、重合反応時にCOOH末端基量が増加し、湿熱雰囲気下での加水分解反応の進行を抑えることができず、耐湿熱性が低下する恐れがある。また、M/Pが3.0を超えると、金属元素を含有する化合物が過剰となり、異物化するおそれがある。M/Pを上記の範囲とすることによって、異物が少なく、耐湿熱性に優れたポリエステル樹脂が得られる。M/Pは、より好ましくは、1.15以上1.4以下である。
上述の通り、本発明の太陽電池裏面保護用シートのP1層を構成するポリエステル樹脂において、Mn、Ca以外の2価の金属元素の含有量は、それぞれポリエステル樹脂全体に対して5ppm以下である。Mn元素、Ca元素以外の2価の金属元素の含有量のうちいずれかの金属元素含有量がポリエステル樹脂全体に対して5ppmを超えると、Mn元素、Ca元素による重合触媒の失活抑制効果やCOOH末端基の自己触媒抑制作用を妨げ、耐湿熱性が低下するおそれがある。より好ましくは、Mn元素、Ca元素以外の2価の金属元素の含有量の合計が5ppm以下である。
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP1層を構成するポリエステル樹脂には、本発明の効果が損なわれない範囲で、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、有機系/無機系の易滑剤、有機系/無機系の微粒子、充填剤、核剤、染料、分散剤、カップリング剤等の添加剤が配合されていてもよい。
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP1層を構成する樹脂は、前述のとおりポリエステル樹脂を主たる構成成分とするが、当該ポリエステル樹脂の固有粘度(IV)は0.60dl/g以上0.80dl/g以下であることが好ましい。また、末端カルボキシル基量は25当量/トン以下であることが好ましい。また、該ポリエステル樹脂はポリエチレンテレフタレート(PET)を主たる構成成分とすることが好ましい。ここで、主たる構成成分とは、該ポリエステル樹脂に対して50質量%を超えて含有されていることをいう。P1層を構成する樹脂が、PETを主たる構成成分とする場合、該PETの固有粘度(IV)は0.65dl/g以上が好ましく、より好ましくは0.69dl/g以上である。固有粘度(IV)が0.65dl/g未満の場合、シートの耐湿熱性が悪くなる場合がある。また、固有粘度(IV)が0.80dl/gを超える場合、P1層を製造する際に樹脂の押出性が悪く、シート成型が困難となる場合がある。さらに、固有粘度(IV)が上記範囲を満たしていても、末端カルボキシル基量が25当量/トンを超える場合、P2層との密着性は良くなるが、シートの耐湿熱性が悪くなる場合がある。よって、P1層を構成する樹脂がPETを主たる構成成分とする場合、固有粘度、末端カルボキシル基量を上記範囲とすることによって、成型性、長期耐久性に非常に優れた太陽電池裏面保護用シートとすることが出来る。
本発明の太陽電池裏面保護用シートにおいて、P1層を構成するポリエステル樹脂の数平均分子量は8000〜40000が好ましく、より好ましくは数平均分子量が9000〜30000、更に好ましくは10000〜25000である。ここでいうP1層を構成するポリエステル樹脂の数平均分子量とは、本発明の太陽電池裏面保護用シートからP2層を分離し、ヘキサフルオロイソプロノール(HFIP)に溶解させ、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)で測定、示差屈折率計で検出した値から、標準試料として分子量既知のポリエチレンテレフタレートとジメチルテレフタレートを用いて得られた値である。P1層を構成するポリエステル樹脂の数平均分子量が8000に満たない場合、耐湿熱性や耐熱性などのシートの長期耐久性が落ちる可能性があるため好ましくない。また、40000を超えると、重合が困難であるか重合できたとしても押出機による樹脂の押出が困難となり、製膜が困難となる場合がある。また、本発明の太陽電池裏面保護用シートにおいて、P1層は一軸、もしくは二軸に配向していることが好ましい。P1層が、一軸、もしくは二軸に配向していると、配向結晶化により耐湿熱性や耐熱性などのシートの長期耐久性を向上させることができる。
(白色顔料)
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP1層には、光反射性、光隠蔽性、意匠性、視認性などの特性を付与する目的で白色顔料を含有させることが好ましい。前述の特性に加え紫外線曝露後の色調変化、粉吹き抑制の両方を両立させるためには、P1層を構成する樹脂に対して白色顔料を6質量%以上13質量%以下の範囲で含有させることが好ましい。白色顔料の含有量が6質量%未満では、紫外線照射後の色調変化が悪化する場合があり、また後述する表層ポリエステル樹脂が劣化・分解気化に伴う膜厚減少量が増大する場合がある。13質量%より多いと後述のP2層との密着性が悪化すると共に製膜が困難になる場合がある。より好ましい範囲としては8質量%以上12質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上12質量%以下である。白色顔料としては、例えば、シリカ、リン酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、マイカ、アルミナおよびジルコニア、アルミノケイ酸塩粒子などが好ましく挙げられる。紫外線吸収能、光反射性を両立する観点からは、ルチル型酸化チタンを用いるのがさらに好ましい。
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP1層に含有される白色顔料の平均粒子径は、P1層の紫外線耐久性と粉吹き抑制を両立する観点から0.1μm以上0.3μm未満であることが好ましい。ここで、白色顔料の平均粒子径とは、後述の電界放射走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた測定方法により得られる個数基準平均粒子径のことを指す。白色顔料の平均粒子系が0.1μm未満の場合、白色顔料の凝集力が増加することで後述のマスターペレット及びP1層内の白色顔料分散性が悪化することや白色顔料の触媒活性が高くなりポリエステル樹脂が光触媒反応により分解され、粉吹き抑制が困難になる場合があり、後述する表層ポリエステル樹脂が劣化・分解気化に伴う膜厚減少量が増大する場合がある。また、白色顔料の平均粒子系が0.3μm以上の場合、製膜時の延伸により白色顔料周りに形成される微小な空隙量が増加し、粉吹きの抑制が困難になる場合がある。
(マスターペレット作製方法)
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP1層を構成するポリエステル樹脂に前記の白色顔料を含有させる方法としては、ポリエステル樹脂と白色顔料をベント式二軸混練押出機やタンデム型押出機を用いて、白色顔料をポリエステル樹脂内で溶融混練し分散させたペレット(マスターペレット)を作製する方法が好ましく用いられる。ここで、ポリエステル樹脂に粒子を含有させる際にポリエステル樹脂が熱負荷を受けると、ポリエステル樹脂は熱劣化に加え、ポリエステル樹脂および混練させる白色顔料が含有する僅かな水分による加水分解が起こることで劣化する。そのため、P1層を構成するポリエステル樹脂に含まれる白色顔料量よりも白色顔料含有量が多い高濃度マスターペレットを作製し、それをポリエステル樹脂と混合して希釈し、所望の粒子含有量としたP1層を作製するのが、耐湿熱性および製膜時の熱劣化異物低減の観点から好ましい。
ここで、高濃度の白色顔料マスターペレットを作成する際、白色顔料分散性は溶融混練時のスクリューによるせん断応力に依存する。顔料の凝集力よりも高い力を掛け分散性を上げるためには高せん断応力にて混練することが一つの達成手段であるが、トレードオフとしてポリエステル樹脂へのせん断熱による負荷が大きくなる。また、マスターペレットを一度低濃度にて作成し白色顔料の分散性を確保した後、再度白色顔料を追加添加し希望の濃度まで引き上げる2段階の溶融混練にてマスターペレットを作成することも分散性向上の手法として用いられるが、この手法もポリエステル樹脂への熱負荷が大きくなるため分散性とのトレードオフになる。
本発明の太陽電池裏面保護用シートにおいて、P1層に添加する高濃度マスターペレットの作成方法は、白色顔料の分散性を高める観点から、前述の高せん断混練、および2段階の混練工程を経て作成したマスターペレットを用いることが好ましい。これはマスターペレット時に分散性が低いとP1層中の白色顔料の平均粒子径が分散不良により増大し、延伸に伴う微小な空隙の発生量が多くなるためである。前記空隙の発生は後述する膜厚減少量ΔLの増加にも影響する。
特に、前述の式(1)、(2)を満たすポリエステル樹脂をベース樹脂として使用し、高せん断応力をかけ、2段階の混練工程を経て作成した高濃度白色顔料マスターペレットを作成すると、本発明の太陽電池裏面保護用シート製膜時の異物発生を抑えると共に、P1層内部の空隙発生を抑制することが判明した。
マスターペレットの白色顔料濃度としては、50質量%以下であることが好ましい。50質量%より高濃度にした場合、前述のポリエステル樹脂とマスターペレット製造手法を用いてもP1層内の白色顔料の分散性を向上による粉吹き抑制と製膜時の樹脂劣化異物発生の抑制を両立することは困難であった。
更に耐紫外線性と光隠蔽性、意匠性を向上させるためには、P1層を構成する樹脂にフラーレン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素系材料からなる粒子(以下、カーボン粒子)を0.1質量%以上5質量%以下の範囲で含有するのが好ましい。これによってカーボン粒子による紫外線吸収能と光隠蔽性を活かして、長期に亘って太陽電池裏面保護用シートの劣化による着色を低減するという効果を発揮することができる。
(P2層(以降、基材層と称する場合がある))
本発明の太陽電池裏面保護用シートは、上述したP1層のみからなる単層フィルムであってもよく、P1層以外の層を有する積層フィルムであってもよい。P1層(耐候性層)の片側に、ポリエステル樹脂を主たる構成成分とする基材層(P2層)を隣接して有していることが好ましい。P1層(耐候性層)の片側に、ポリエステル樹脂を主たる構成成分とする基材層(P2層)を隣接することで、成形性を向上させ、かつ、太陽電池裏面保護用シートの電気絶縁性を向上させることが可能となる。
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP2層は、ポリエステル樹脂を主たる構成成分とする。ここで、ポリエステル樹脂を主たる構成成分とするとは、該P2層を構成する樹脂に対してポリエステル樹脂が50質量%を超えて含有されていることをいう。P2層を構成するポリエステル樹脂としては、前述の(P1層)の項に記載のジカルボン酸成分とジオール成分から構成されるものであり、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などが挙げられる。
また、P2層を構成するポリエステル樹脂は、単一種でも良いし、2種以上のポリエステル樹脂をブレンドしたものでも良い。
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP2層を構成する樹脂は、前述のP1と同様にポリエステル樹脂を主たる構成成分とするが、当該ポリエステル樹脂の固有粘度(IV)はP1層の成型性を補助する目的からP1層に比べて固有粘度を低くすることが好ましい。具体的には0.55dl/g以上0.75dl/g以下であることが好ましい。また、末端カルボキシル基量は40当量/トン以下であることが好ましい。また、該ポリエステル樹脂はポリエチレンテレフタレート(PET)を主たる構成成分とすることが好ましい。ここで、主たる構成成分とは、該ポリエステル樹脂に対して50質量%を超えて含有されていることをいう。P2層を構成する樹脂が、PETを主たる構成成分とする場合、該PETの固有粘度(IV)は0.58dl/g以上が好ましく、より好ましくは0.60dl/g以上である。固有粘度(IV)が0.55dl/g未満の場合、前述のP1層と積層した場合であってもシートの耐湿熱性が悪くなる場合がある。固有粘度(IV)が0.80dl/gを超える場合、P2層を製造する際に樹脂の押出性が悪く、シート成型が困難となる場合がある。さらに、固有粘度(IV)が上記範囲を満たしていても、末端カルボキシル基量が35当量/トンを超える場合、P2層のP1層と接しない側に封止材層もしくは封止材易接着層を設ける場合、各層との密着性が良好になる一方で、前述のP1層と積層した場合であってもシートの耐湿熱性が悪くなる場合がある。よって、P2層を構成する樹脂がPETを主たる構成成分とする場合、固有粘度、末端カルボキシル基量を上記範囲とすることによって、シート成型性、長期耐久性に非常に優れた太陽電池裏面保護用シートとすることが出来る。
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP2層に含有されるリン元素量、金属元素量に関して特に制限は無いが、本発明の太陽電池裏面保護用シートの耐湿熱性を向上させる場合、ポリエステル樹脂にP1層の項における重合触媒の項目に記載の元素量を含有するポリエステルを用いることが好ましい。
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP2層には、耐紫外線性、光反射性、光隠蔽性、意匠性、視認性などの特性を付与、もしくはP1層の特性を補助する目的で白色顔料を含有させることが好ましい。P1層を構成する樹脂に対して白色顔料を0.1質量%以上6質量%未満の範囲で含有させることが好ましい。白色顔料の含有量が0.1質量%未満では、光反射性が不足すると共に製膜時に太陽電池裏面保護用シート同士がブロッキングする場合があり、6質量%より多いと製膜時の成形性を向上させることが困難になるとともに電気絶縁性の向上を阻害する場合がある。より好ましい範囲としては0.5質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上2質量%以下である。
白色顔料としてはP1層の項にて記載のものを好適に使用できるが、光反射性を付与する観点からは、ルチル型酸化チタンを用いるのがさらに好ましい。P2層を構成するポリエステル樹脂に前記の白色顔料を含有させる方法としては、ポリエステル樹脂と粒子をベント式二軸混練押出機やタンデム型押出機を用いて、溶融混練し高濃度マスターペレットを作製し、それをポリエステル樹脂と混合して希釈し、所望の粒子含有量としたP2層を作製する手法を用いることが、耐湿熱性の観点から好ましい。ここで、P2層の白色顔料含有量は低いため、マスターペレットに使用する樹脂に関しては特に制限はされない。
(P1層とP2層の厚み比率)
本発明の太陽電池裏面保護用シートが、耐候性層(P1層)と基材層(P2層)を含む場合、下記式(iii)により表されるP1層厚み(d1)とP2層厚み(d2)の和に対するP1層厚み比率(D(%))は10%以上30%以下が好ましい。
D(%)=d1/(d1+d2)・・・式(iii)
本発明の太陽電池裏面保護用シートにおけるD(%)が10%未満の場合、P1層自体の紫外線照射後の色調変化が満足いく場合であっても、隣り合うP2層の紫外線照射後の色調変化が大きくなり、結果としてP1層の色調変化が結果として大きくなる場合がある。また、P1層の厚み比率が30%を超える場合、粒子が多量に含有されるP1層に起因した破れが発生し生産性が低下する場合がある。
本発明の太陽電池裏面保護用シートのP2層は、封止材など他の太陽電池部材との接着性を付与する目的で、積層構造を有してもよい。例えば、予め基材層であるP2層(P21層とする)のP1層と接する側に接着性に優れる層(P22層とする)を設ける手法も好ましく用いられる。その場合、シートの構成は、P1層/P21層/P22層の順で積層され、P2層の厚みは、P21層+P22層で表される。このとき、P21層は、P1層およびP22層を構成する樹脂と接着性が良く、P2層全体(P21層+P22層)におけるポリエステル樹脂の割合が50質量%以上であれば特に限定されない。
(太陽電池裏面保護用シート)
本発明の太陽電池裏面保護用シートは、P1層とP2層を有する構成である場合(P1層/P2層)、P1層のP2層と隣接しない側の面に、例えばガスバリア性、易接着性などの他の機能を持つ層を設けることができる。これらの層を設ける方法としては、P1層と積層する材料をそれぞれ別々に作製し、加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、接着剤を介して貼り合わせる方法(接着法)、その他、積層する材料の形成用材料を溶媒に溶解させ、その溶液をあらかじめ作製していたP1層上に塗布する方法(コーティング法)、硬化性材料をP1層上に塗布した後に電磁波照射、加熱処理などで硬化させる方法、積層する材料をP1層上に蒸着/スパッタする方法、およびこれらを組み合わせた方法などを使用することができる。
本発明の太陽電池裏面保護用シートは、少なくとも片側の表層に以下(1)を満たすP1層を有することが必要である。
(1)P1層表面を下記条件でテープ剥離試験を実施し、剥離したテープを下記条件でヘイズメーターにて測定した時のヘイズ値をH0、P1層表面を下記条件で紫外線照射処理を実施した後に下記条件でテープ剥離試験を実施し剥離したテープを下記条件でヘイズメーターにて測定した時のヘイズ値をH1とするとき、式(i)で表されるΔHが5%以上30%以下であること。
式(i)ΔH=H1−H0
《テープ剥離試験条件》
太陽電池裏面保護用シートのP1層側の面に、セキスイセロテープ(登録商標)No.252(積水化学工業(株)製、テープ幅15mm)を貼付け、2kgのゴムローラーを用いて圧着した後、0.12m/分〜0.18m/分の速度で180度剥離させる。
《ヘイズ測定条件》
P1層から剥離したセキスイセロテープ(登録商標)を、JIS−K7105(1981)に基づき、全自動直読ヘイズコンピューターHGM−2DP(スガ試験機(株)製)を用いて、セロテープ(登録商標)の厚さ方向のヘイズ(%)を測定する。3回の測定値の平均をヘイズ値とする。
《紫外線照射処理条件》
太陽電池裏面保護用シートのP1層側の面に試験光が当たるように設置し、アイスーパー紫外線テスターS−W161(岩崎電気(株)製)を用いて、温度60℃、相対湿度50R%、照度150mW/cm(光源:メタルハライドランプ、波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm、JIS−C−1613に準拠)の条件下で72時間照射を行う。
(1)における紫外線照射処理は、紫外線を含む太陽光が多量に降り注ぐ屋外環境に長期間(約10年相当)暴露される状況の加速試験である。
(1)におけるテープ剥離試験は、ポリエステルフィルムの表面に粘着テープを貼り付けた後、剥離する試験である。剥離した粘着テープには、ポリエステルフィルム表面にある光分解(UV劣化)して白粉化したポリエステル樹脂、および、白粉化には至っていないものの光分解(UV劣化)した結果わずかな外力で白粉化するポリエステル樹脂が付着する。そのため、紫外線照射処理によって白粉が多く発生するポリエステルフィルムをテープ剥離試験すると、剥離した粘着テープには多く白粉が付着し、白粉が多く付着した粘着テープのヘイズは上昇する。したがって、式(i)のΔHが高いほど紫外線照射処理によってポリエステルフィルムの表面に発生する白粉が多いことを表し、ΔHが低いほど紫外線照射処理によってポリエステルフィルムの表面に発生する白粉が少ないことを表す。
本発明の太陽電池裏面保護用シートにおいて、P1層を入射面として紫外線処理試験を行ったときのヘイズ変化量(ΔH)が30%を超える場合、本発明の太陽電池裏面保護用シートを搭載した太陽電池を長期間屋外に置いた際に、紫外光曝露により白粉が発生することで太陽電池裏面保護用シートにおける耐候性層の耐紫外線性の低下に繋がり、太陽電池裏面保護用シートの寿命を低下させることに加え、太陽電池場所付近の環境汚染にもつながる。一方で、ΔHが5%未満とする場合は、ポリエステルフィルム表面の白粉発生は抑制されるものの、ポリエステルフィルムの表面ではなく、ポリエステルフィルムの内部にまで紫外線による影響が及ぶ結果、長期間屋外で使用すると、亀裂や剥がれなどが発生し、太陽電池裏面保護用シートの耐久使用期間が低下する。ΔHは、より好ましくは、8%以上26%以下であり、更に好ましくは8%以上21%以下である。
本発明の太陽電池裏面保護用シートにおいて、ΔHを上記の範囲にする方法は特に制限されるものではない。例えば、ΔHは、P1層に含有する白色顔料の含有量、白色顔料の種類、白色顔料の粒子径、P1層を構成するポリエステル樹脂に含有するM/P、ポリエステルフィルムの製膜条件などにより調整できる。
P1層に含有する白色顔料の含有量は、含有量が多いほどポリエステルフィルムの表層が劣化したときに白粉の発生が多くなるため、ΔHは大きくなる傾向にある。一方で、白色顔料はポリエステルフィルムに照射される紫外線を反射したり吸収したりする特性を有するものであるので、P1層に含有する白色顔料の含有量が少ないと、ポリエステルフィルムの内部まで紫外線による影響が及ぶ結果、長期間屋外で使用すると、亀裂や剥がれなどが発生し、太陽電池裏面保護用シートの耐久使用期間が低下する場合がある。また、白色顔料の種類としては、紫外線吸収能や紫外線反射能(光反射性)を有する白色顔料を用いるとΔHは小さくなる傾向にある。
紫外線吸収能や紫外線反射能(光反射性)を有する白色顔料としては、酸化チタンが挙げられる。アナターゼ型酸化チタンは、紫外線吸収時の光触媒活性が大きく周辺のポリエステル樹脂を光触媒反応により酸化させ劣化を促進するため、ΔHを大きくする傾向がある。一方で、ルチル型酸化チタンは、アナターゼ型に比べ光触媒活性が小さくポリエステル樹脂の光触媒反応による酸化劣化を促進しないため、ΔHを小さくする傾向がある。また、P1層に含有する白色顔料の平均粒子径は、小さすぎると、白色顔料の凝集力が増加することで白色顔料分散性が悪化し粗大粒子が形成されやすくなるため、また、白色顔料の触媒活性が高くなりポリエステル樹脂が光触媒反応による分解が促進されるため、白粉の発生が多くなり、ΔHは高くなる傾向にある。また、P1層に含有する白色顔料の平均粒子径は、大きすぎると、白色顔料を含有したポリエステルフィルムを延伸する際に、白色顔料周りに微小な空隙が形成され、白粉の発生量を多くするため、ΔHは大きくなる傾向にある。P1層に含有する白色顔料の平均粒子径は、0.1μm以上0.3μm以下の範囲であると、ΔHを小さくなる傾向にある。また、P1層を構成するポリエステル樹脂に含有するM/Pが、上述する(iii)式を満たす範囲にあると、ポリエステル樹脂の分解を抑制できるため、ΔHは小さくなる傾向にある。また、ポリエステルフィルムの製膜条件について、白色顔料の周りに空隙ができるとポリエステルフィルムから白色顔料が滑落しやすくなるため、白色顔料の周りに空隙ができるだけ形成しないように製膜すると、ΔHは小さくなる傾向にある。製膜条件の詳細については後述する。
また、本発明の太陽電池裏面保護用シートは、上記の紫外線処理条件で紫外線処理試験を行ったときの色調変化Δbが20未満であることが好ましく、より好ましくは10未満である、さらに好ましくは5未満である。本発明の太陽電池裏面保護用シートにおいて、P1層を入射面として紫外線処理試験を行ったときの色調変化Δbが20以上の場合、本発明の太陽電池裏面保護用シートを搭載した太陽電池を長期間屋外に設置した際に、紫外線に起因する色調変化によって太陽電池の外観が悪くなると共にポリエステル樹脂の紫外線劣化が大幅に進行し、シートの伸度が低下することによるシート表面でのクラック発生に繋がる場合がある。本発明の太陽電池裏面保護用シートにおいて、ΔHを上記の範囲にする方法は特に制限されるものではない。例えば、Δbは、P1層に含有する粒子の種類、P1層を構成するポリエステル樹脂に含有するM/P、P1層内にある空隙の量などにより調整できる。白色顔料の種類としては、紫外線吸収能や紫外線反射能(光反射性)を有する白色顔料を用いるとΔbは小さくなる傾向にある。紫外線吸収能や紫外線反射能(光反射性)を有する白色顔料としては、酸化チタンが挙げられる。ルチル型酸化チタンは、ポリエステル樹脂の劣化を促進しないため、Δbを小さくする傾向がある。一方で、アナターゼ型酸化チタンは、ポリエステル樹脂の劣化を促進するため、Δbを大きくする傾向がある。また、P1層を構成するポリエステル樹脂に含有するM/Pが、上述する(iii)式を満たす範囲にあると、ポリエステル樹脂の分解を抑制できるため、Δbは小さくなる傾向にある。ポリエステルフィルムの製膜条件について、P1層中に空隙があると紫外線を反射する機能を有するため、空隙が形成するように製膜すると、Δbは小さくなる傾向にある。製膜条件の詳細については後述する。
また、本発明の太陽電池裏面保護用シートは、P1層側から、後述する条件におけるキセノンランプ照射試験機を用いて2000時間処理(キセノンランプ照射試験)を実施した際の膜厚減少量(ΔL)が5μm以下であることが好ましい。上記キセノンランプ照射試験は、キセノンランプによる紫外・可視光照射に加え、実環境における雨風ストレスを想定した一定サイクル間隔での噴霧処理を同時に行うものである。本試験は屋外実曝露の加速試験であり、太陽電池モジュールで太陽電池裏面保護用シートを用いた場合での屋外実曝露約20年に相当する。膜厚減少量(ΔL)が5μmより大きい場合、太陽電池裏面保護用シートとして実環境下で使用した際、膜厚の減少による絶縁性の低下が発生し、太陽電池モジュールがシステム電圧に耐えられずに破損する場合がある。より好ましい範囲としては膜厚減少量が3.5μm以下、更に好ましい範囲としては2.5μm以下である。
本発明者らが上述の太陽電池裏面保護用シートの膜厚減少について鋭意検討した結果、膜厚減少は、下記のような機構で発生していると推定している。屋外曝露時、太陽光に含まれる紫外線を太陽電池裏面保護用シートが受けると、表層のポリエステル樹脂が分解劣化・気化することで膜厚の減少が開始する。この膜厚減少は太陽電池裏面保護用シートが内包する白色顔料が表層に露出し、表面の粒子濃度が局所的に増加することで膜厚減少が抑制される。しかし、屋外曝露環境においては雨・風の外的ストレスが存在し、これにより表層に露出した白色粒子の一部が流れ取り除かれることで膜厚減少が再度進行し、長期間の曝露後に膜厚減少量に差が生じる。このため、膜厚減少量は主に太陽電池裏面保護用シートの太陽光曝露面に含有される白色粒子濃度に一定程度依存する。上記に加え、製膜条件の一部やマスターペレットの作製方法も膜厚減少量に一部寄与することが本検討を通じて明らかになった。
本発明の太陽電池裏面保護用シートにおいて、粉吹き抑制に優れた太陽電池裏面保護用シートとすることで、本発明の太陽電池裏面保護用シートを搭載した太陽電池を長期間屋外に置いても環境汚染の小さな太陽電池とすることができる。また、本発明の太陽電池裏面保護用シートにおいて、色調変化抑制に優れた太陽電池裏面保護用シートとすることで、本発明の太陽電池裏面保護用シートを搭載した太陽電池を長期間屋外に置いても外観変化の小さな太陽電池とすることができる。さらに、本発明の太陽電池裏面保護用シートにおいて、膜厚減少量の抑制を両立することで長期間屋外に置いても絶縁性に優れた太陽電池とすることができる。
(太陽電池裏面保護用シートの製造方法)
次に、本発明の太陽電池裏面保護用シートの製造方法について例を挙げて説明する。これは一例であり、本発明は、かかる例によって得られる物のみに限定して解釈されるものではない。
本発明の太陽電池裏面保護用シートの製造方法は、以下の方法で製造することができる。
本発明のポリエステル樹脂は、前述の重合触媒を用いることで、ジカルボン酸もしくはそのエステル誘導体とジオールを前述のエステル交換触媒を用いた周知の方法でエステル交換反応、もしくはエステル化反応させることによって得ることができる。
次に、太陽電池裏面保護用シートの製造方法は、耐候性層であるP1層単膜構成の場合、P1層用原料を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。その他の方法として、P1層用の原料を溶媒に溶解させ、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルトなどの支持体上に押し出して膜状とし、次いでかかる膜層から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)なども使用することができる。
また、太陽電池裏面保護用シートが耐候性層(P1層)および基材層(P2層)からなる積層構造の場合の製造方法は、積層する各層の材料が熱可塑性樹脂を主たる構成とする場合、二つの異なる熱可塑性樹脂を二台の押出機に投入し溶融してから合流させて、口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出法)を好ましく用いることができる。
また、P1層単膜構成体および/またはP1層を含む積層体として一軸もしくは、二軸延伸されたシート基材を選択した場合、その製造方法として、まず、押出機(積層構造の場合は複数台の押出機)に原料を投入し、溶融して口金から押出し(積層構造の場合は共押出)し、冷却した表面温度10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸シートを作製する。
次に、この未延伸シートを70℃以上に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)に延伸し、20〜50℃の温度のロール群で冷却する。本発明の太陽電池裏面保護用シートにおいて、長手方向の延伸部分のロール温度(以下長手方向延伸温度と称することがある)の好ましい範囲としては98℃以下である。98℃を超えるとシート内のポリエステル樹脂の結晶ドメインが成長し、後に行われるテンター内での延伸時にて、結晶部分の延伸性の悪さから白色顔料周辺の微小な空隙が発生しやすくなる。より好ましい範囲としては95℃以下である。下限についてはシートの延伸性を損なわない限り特に制限はないが、使用するポリエステル樹脂のガラス転移温度+5℃が好ましい。また、本発明の太陽電池裏面保護用シート長手方向の延伸倍率の好ましい範囲は2.8倍〜3.5倍である。より好ましい範囲としては3.0倍〜3.5倍である。長手方向の延伸倍率が2.8倍以下であると、延伸による白色顔料周辺の微小な空隙の形成を抑制できる反面、紫外線照射処理後の色調変化が大きくなる場合がある。これは延伸前のシートにおいて凝集状態にある白色顔料が延伸時の応力により分散しすることが抑制されるためである。一方で、延伸倍率が3.5倍を超える場合、延伸に伴うポリエステル樹脂の配向結晶化が進行し、この延伸性の低い配向結晶化部位が起点となり白色顔料周りの微小な空隙の形成が促進され、粉吹きが悪化する。
続いて、シートの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、80〜150℃の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(幅方向)に3〜4倍に延伸する。その後延伸されたシートはテンター内で幅方向に1〜10%の延伸緩和を受けた状態で熱処理を行うことで内部の配向構造の安定化を行う。ここで熱処理温度としては220〜250℃の範囲で行うことが好ましい。熱処理を行うことで配向結晶化したポリエステル樹脂の配向を緩和すると共に、白色顔料周辺に形成された微小な空隙を埋め、粉吹きを抑制することができる。この効果は前述の範囲において温度が高いほうがより大きくなる。一方250℃以上にした場合、配向結晶化の緩和が大きくなることで、配向結晶化により保たれていたシートの耐久性が著しく低下する場合があるため好ましくない。また220℃未満の温度で熱処理を行った場合、上述の効果が得られないため、粉吹きが悪化する。一方で、熱処理温度を高温側にするほどに膜厚減少量は低下する傾向がある。本現象の理由は明らかになっていないが、高温の熱処理を行うことでポリエステル分子鎖が密に集まった結晶構造部分の割合が増加することで、紫外線劣化時も近傍のポリエステル分子鎖と再結合反応を起こし低分子化しにくくなるためと推定している。
二軸延伸する方法としては、上述の様に長手方向と幅方向の延伸とを分離して行う逐次二軸延伸方法の他に、長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸方法のどちらであっても構わない。
(太陽電池)
本発明の太陽電池裏面保護用シートを用いた太陽電池は、従来の太陽電池と比べて耐久性を高めることが可能となる。その構成の例を図1に示す。電気を取り出すリード線(図1には示していない)を接続した発電素子3をEVA樹脂などの透明な封止材4で封止したものに、ガラスなどの透明基板5と、太陽電池裏面保護用シート6(ポリエステル耐候性層1(P1層)とポリエステル基材層2(P2層)によって構成)として貼り合わせて構成されるが、これに限定されず、任意の構成に用いることができる。なお、図1では太陽電池裏面保護用シートは単体での例を示したが、その他必要とされる要求特性に応じて太陽電池裏面保護用シートは他のフィルムを張り合わせた、複合シートとすることも可能である。
ここで、本発明の太陽電池において、太陽電池裏面保護用シートは発電素子3を封止した封止材4の背面に設置される発電素子を保護する役目を担う。ここで太陽電池裏面保護用シートはP2層が封止材4と別途作成した封止材易接着層(図1には示していない)を介して接し、耐候性層P1層が太陽電池の表層に来るように配置することが好ましい。この構成とすることによって、本発明の優れた耐紫外線性(色調変化、粉吹き抑制効果)を生かして、屋外に曝されても長期間にわたり太陽電池裏面保護用シート表面の耐候性層の脱落を抑制することで、太陽電池セルの保護と白粉による太陽電池モジュール設置場所の環境汚染防止を長期間にわたり保つことができる。
発電素子3は、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、結晶シリコン系、多結晶シリコン系、微結晶シリコン系、アモルファスシリコン系、銅インジウムセレナイド系、化合物半導体系、色素増感系など、目的に応じて任意の素子を、所望する電圧あるいは電流に応じて複数個を直列または並列に接続して使用することができる。透光性を有する透明基板5は太陽電池の最表層に位置するため、高透過率のほかに、高耐候性、高耐汚染性、高機械強度特性を有する透明材料が使用される。本発明の太陽電池において、透光性を有する透明基板5は上記特性と満たせばいずれの材質を用いることができ、その例としてはガラス、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(TFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂(CTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂などのフッ素系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、およびこれらの混合物などが好ましく挙げられる。ガラスの場合、強化されているものを用いるのがより好ましい。また樹脂製の透光基材を用いる場合は、機械的強度の観点から、上記樹脂を一軸または二軸に延伸したものも好ましく用いられる。また、これら基材には発電素子の封止材料であるEVA樹脂などとの接着性を付与するために、表面に、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、易接着処理を施すことも好ましく行われる。
ここで、本発明の太陽電池において、太陽電池裏面保護用シートは発電素子3に吸収されなかった太陽光を反射する反射板としての役目を担う。ここで太陽電池裏面保護用シートはP2層において良好な光反射性をもつことで、太陽光を効率よく反射しその一部が発電素子3に再度入射することで太陽電池の発電量が向上させることができる。
発電素子を封止するための封止材4は、発電素子の表面の凹凸を樹脂で被覆し固定し、外部環境から発電素子保護し、電気絶縁の目的の他、透光性を有する基材や裏面保護用シートと発電素子に接着するため、高透明性、高耐候性、高接着性、高耐熱性を有する材料が使用される。その例としては、エチレン−ビニルアセテート共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、およびこれらの混合物などが好ましく用いられる。
以上のように、本発明の太陽電池裏面保護用シートを太陽電池システムに組み込むことにより、従来の太陽電池と比べて外観変化を低減することが可能となる。本発明の太陽電池は、太陽光発電システム、小型電子部品の電源など、屋外用途、屋内用途に限定されず各種用途に好適に用いることができる。
〔特性の測定方法および評価方法〕
(1)ポリマー特性
(1−1)固有粘度(IV)
オルトクロロフェノール100mlに、測定試料(ポリエステル樹脂(原料)又は太陽電池裏面保護用シートのP1層のみを分離したもの)を溶解させ(溶液濃度C(測定試料重量/溶液体積)=1.2g/100ml)、その溶液の25℃での粘度を、オストワルド粘度計を用いて測定した。また、同様に溶媒の粘度を測定した。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式(4)により、[η]を算出し、得られた値をもって固有粘度(IV)とした。
ηsp/C=[η]+K[η]・C ・・・(4)
(ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)―1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)
なお、測定試料を溶解させた溶液に無機粒子などの不溶物がある場合は、以下の方法を用いて測定を行った。
(i)オルトクロロフェノール100mLに測定試料を溶解させ、溶液濃度が1.2g/100mLよりも濃い溶液を作成する。ここで、オルトクロロフェノールに供した測定試料の重量を測定試料重量とする。
(ii)次に、不溶物を含む溶液を濾過し、不溶物の重量測定と、濾過後の濾液の体積測定を行う。
(iii)濾過後の濾液にオルトクロロフェノールを追加して、(測定試料重量(g)−不溶物の重量(g))/(濾過後の濾液の体積(mL)+追加したオルトクロロフェノールの体積(mL))が、1.2g/100mLとなるように調整する。
(例えば、測定試料重量2.0g/溶液体積100mLの濃厚溶液を作成したときに、該溶液を濾過したときの不溶物の重量が0.2g、濾過後の濾液の体積が99mLであった場合は、オルトクロロフェノールを51mL追加する調整を実施する。((2.0g−0.2g)/(99mL+51mL)=1.2g/100mL))
(iv)(iii)で得られた溶液を用いて、25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定し、得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、上記式(3)により、[η]を算出し、得られた値をもって固有粘度(IV)とする。
(1−2)末端カルボキシル基量(表中ではCOOH量と記載する。)
末端カルボキシル基量については、Mauliceの方法に準じて、以下の方法にて測定した。(文献M.J. Maulice, F. Huizinga, Anal.Chim.Acta,22 363(1960))
測定試料(ポリエステル樹脂(原料)または太陽電池裏面保護用シートのP1層のみを分離したもの)2gをo−クレゾール/クロロホルム(重量比7/3)50mLに温度80℃にて溶解し、0.05NのKOH/メタノール溶液によって滴定し、末端カルボキシル基濃度を測定し、当量/ポリエステル1tの値で示した。なお、滴定時の指示薬はフェノールレッドを用いて、黄緑色から淡紅色に変化したところを滴定の終点とした。なお、測定試料を溶解させた溶液に無機粒子などの不溶物がある場合は、溶液を濾過して不溶物の重量測定を行い、不溶物の重量を測定試料重量から差し引いた値を測定試料重量とする補正を実施した。
(1−3)リン量、アルカリ金属元素を除く金属元素量の定量測定方法
理学電機(株)製蛍光X線分析装置(型番:3270)を用いて元素量を測定した。
凍結粉砕した試料8gを、JIS K0119の記載に準じて分析試料とした。試料中の各元素の含有量の定量は、JIS K0119(1999)10.1d)の記載に準じて行った。
(1−4)アルカリ金属量の定量測定方法
試料1gを白金皿にとり、700℃にて1.5hrかけて完全に灰化させ、つぎに灰化物を、体積が50mlになるように0.1Nの塩酸に溶かし、溶液Aを得た。溶液Aに不溶物が無い場合は、これを測定試料として用いた。
一方、溶液Aに不溶物がある場合は、以下の方法によって、測定試料を得た。新たに試料1gを白金皿にとり、700℃にて1.5hrかけて完全に灰化させ、つぎに灰化物を6.5Nの硝酸5mlに溶かし、溶液Bを得た。溶液Bを加熱し、硝酸を蒸発せしめ、残渣を得た。当残渣を、体積が50mlになるように0.1Nの塩酸に溶かし、溶液Bを得た。当該溶液Bを測定試料として用いた。
上記の測定試料を用いて、原子吸光分析法(曰立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度計180−80。フレーム:アセチレン−空気)にて定量を行った。定量は、JIS K0121(1999)9.1a)の記載に準じて行った。
(2)粒子径測定
ミクロトームを用いて、太陽電池裏面保護用シートの表面に対して垂直方向に切削した小片を作成し、その断面を電界放射走査型電子顕微鏡JSM−6700F(日本電子(株)製)を用いて10000倍に拡大観察して撮影した。その断面写真よりP1層中に存在する粒子の粒度分布を画像解析ソフトImage−Pro Plus(日本ローパー(株))を用いて求めた。断面写真は異なる任意の測定視野から選び出し、断面写真中から任意に選び出した2500個以上の粒子の円相当径を測定し個数基準平均粒子径を得た。
(3)白色顔料の構成元素分析
前項(2)記載の方法による電界放出型透過電子顕微鏡観察において、観測されたフィラーに対しJED−2300T(日本電子(株)製、Si<Li>半導体検出器、UTW型)を用いたEDX元素分析およびGATAN GIF“Tridiem”を用いたEELS元素状態分析を行いフィラーの構成元素を特定し、得られたEELSスペクトルと市販の金属化合物のEELSスペクトルを照会することで、P1層およびP2層内に含有されたフィラーの構成を同定した。
(4)白色顔料の含有量分析
太陽電池裏面保護用シートのP1層およびP2層のみを剥離し、各々を熱重量測定(TGA)装置 TGA−50((株)島津製作所製)を用いて窒素雰囲気下で室温から800℃まで20℃/分で昇温を行う。昇温後800℃の状態で1時間保持した後に生じる灰分の質量比率(質量%)について5回測定を行いその平均値を算出する。フィラーを含まないポリエステルフィルムに関しても同様の測定を行い得られる灰分の質量分率(質量%)の5回測定平均値を求める。これら2つの質量分率平均値の差をP1層およびP2層の含有するフィラー濃度(質量%)として求めた。
(5)P1層および、P2層の厚み
ミクロトームを用いて、太陽電池裏面保護用シートの表面に対して垂直方向に切削した小片を作成し、その断面を電界放射走査型電子顕微鏡JSM−6700F(日本電子(株)製)を用いて10000倍に拡大観察して撮影した。その断面写真よりP1層および、P2層の厚みを拡大倍率から逆算して求めた。なお厚みは、異なる測定視野から任意に選んだ計5箇所の断面写真を使用し、その平均値を用いた。
(6)粉吹き評価(紫外線処理試験前後での白粉発生量)
(6−1)白粉量(H値)測定
太陽電池裏面保護用シートをP1層側の面にセキスイセロテープ(登録商標)No.252(積水化学工業(株)製、テープ幅15mm)を貼付け、2kgのゴムローラーを用いて圧着した後、0.12m/分〜0.18m/分の速度で180度剥離させる。太陽電池裏面保護用シートをP1層から剥離させたセロテープ(登録商標)をJIS−K7105(1981)に基づき、全自動直読ヘイズコンピューターHGM−2DP(スガ試験機(株)製)を用いて、セロテープ(登録商標)の厚さ方向のヘイズ(%)を測定し、3回試行における測定値の平均をP1面における白粉量(H0)として求めた。
(6−2)紫外線処理試験前後での白粉発生量(ΔH)
太陽電池裏面保護用シートをP1層側の面に試験光が当たるように設置し、アイスーパー紫外線テスターS−W161(岩崎電気(株)製)を用いて、温度60℃、相対湿度50%、照度150mW/cm(光源:メタルハライドランプ、波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm、JIS−C−1613に準拠)の条件下で72時間照射を行う。紫外線照射試験前後でのP1層側の面の白粉量(H1)を前項(6−1)に従い測定し、次の(5)式より紫外線照射後の白粉発生量(ΔH)を算出した。
紫外線照射後の白粉発生量(ΔH)=H1―H0・・・(5)
H0:紫外線照射前の白粉量(H値)
H1:紫外線照射後の白粉量(H値)。
(7)黄変度(紫外線処理試験前後の色調変化)
(7−1)色調(b値)測定
JIS−Z−8781−4(2013)に基づき、分光式色差計SE−2000(日本電色工業(株)製、光源 ハロゲンランプ 12V4A、0°〜−45°後分光方式)を用いて反射法により太陽電池裏面保護用シートのP1層側面の色調(b値)を測定した。
(7−2)色調変化Δb
太陽電池裏面保護用シートのP1層側の面に前記(6−2)項と同様の紫外線照射試験を行い、試験後の色調(b値)を前記(7−1)項に従い測定し、次の(6)式より紫外線照射後の色調変化(Δb)を算出した。
紫外線照射後の色調変化(Δb)=b1―b0・・・(6)
0:紫外線照射前の色調(b値)
1:紫外線照射後の色調(b値)。
(8)太陽電池モジュールの屋外実暴露試験による外観変化評価
(8−1)太陽電池モジュールの作製
Qcells社製の結晶シリコン型太陽電池セルQ6LPT−G2の表面、裏面の銀電極部分にHOZAN社製フラックスH722をディスペンサーで塗布し、表面、裏面の銀電極の上に155mmの長さに切断した配線材として日立電線社製銅箔SSA―SPS0.2×1.5(20)を表面側のセルの片端から10mm離れたところが配線材の端に、裏面側は表面側と対称になるように乗せ、半田ごてを用いてセル裏面側から半田ごてを接触させて表面、裏面を同時に半田溶着し1セルストリングスを作製した。
作製した1セルストリングスのセルから飛び出している該配線材の長手方向と180mmに切断した取り出し電極として日立電線社製銅箔A―SPS0.23×6.0の長手方向が垂直になるよう置き、該配線材と取り出し電極が重なる部分に該フラックスを塗布して半田溶着を行い、取り出し電極付きストリングスを作製した。
次に、190mm×190mmの旭硝子社製太陽電池用3.2mm厚白板熱処理ガラス、190mm×190mmの500μm厚のEVAシート(酢酸ビニル共重合比率:28mol%)、作製した取り出し電極付きストリングス、190mm×190mmの500μm厚のEVAシート、190mm×190mmに切り出した太陽電池裏面保護用シートをP2層側の面がEVA側に位置するように順に重ねて、該ガラスを真空ラミネーターの熱盤と接触するようにセットし、熱盤温度145℃、真空引き4分、プレス1分、保持時間10分の条件で真空ラミネートを行った。このとき、取り出し電極付きストリングスはガラス面がセル表面側になるようにセットした。
(8−2)屋外実暴露試験
太陽光照射量270MJ/m(波長:280nm〜400nm)の環境下(滋賀県大津市)、南向きに傾斜角度35度で設置された架台に(8−1)記載の太陽電池モジュールをP1層に太陽光が直接当たるように設置し6か月の屋外実暴露試験を行うことで、太陽電池モジュールの白粉発生量(ΔH)、色調変化(Δb)の2項目に関して評価を行った。
(9)屋外実暴露試験前後での白粉発生量
前項(8−2)記載の屋外実暴露前後での太陽電池前モジュールの白粉量(H値)を前記(6−2)項に従い測定し、次の(7)式より白粉発生量(ΔH)を算出した。
紫外線照射後の6白粉発生量(ΔH)=H1(実暴露)―H0(実暴露)・・・(7)
H0(実暴露):屋外実暴露試験前の白粉量(H値)
H1(実暴露):屋外実暴露試験前の白粉量(H値)
得られた白粉発生量(ΔH)から、太陽電池裏面保護用シートの太陽電池モジュールの粉吹きに関して以下のように判定した。
白粉発生量(ΔH)が4%以上15%以下の場合:A
白粉発生量(ΔH)が15%より大きく20%以下の場合:B
白粉発生量(ΔH)が20%より大きく25%以下の場合:C
白粉発生量(ΔH)が4%未満もしくは、25%より大きい場合:D
太陽電池モジュールの光沢度に関する外観変化はA〜Cが良好であり、その中で最もAが優れている。
(10)屋外実暴露試験前後での色調変化Δb
前項(8−2)記載の屋外実暴露前後での太陽電池前モジュールの色調(b値)を前記(7−2)項に従い測定し、次の(8)式より紫外線照射後の色調変化(Δb)を算出した。
紫外線照射後の色調変化(Δb)=b1(実暴露)―b0(実暴露)・・・(8)
b0(実暴露):屋外実暴露試験前の色調(b値)
b1(実暴露):屋外実暴露試験後の色調(b値)
得られた色調変化(Δb)から、太陽電池裏面保護用シートの太陽電池モジュール色調変化を以下のように判定した。
色調変化(Δb)が1.5未満の場合:A
色調変化(Δb)が1.5以上3.5未満の場合:B
色調変化(Δb)が3.5以上7.5未満の場合:C
色調変化(Δb)が7.5以上の場合:D
太陽電池モジュールの色調に関する外観変化はA〜Cが良好であり、その中で最もAが優れている。
(11)シートの成型性
本発明の太陽電池裏面保護用シートを生産時の成型性を以下のように評価した。
問題なくシートを製膜できる:A
シート破れが5000m製膜に1回の頻度で発生する:B
シート破れが2000m製膜に1回の頻度で発生する:C
シート破れが500m製膜に1回の頻度で発生する:D
太陽電池裏面保護用シートの成型性はA〜Cが良好であり、その中で最もAが優れている。
(12)膜厚減少量(ΔL)
(12−1)キセノンランプ照射試験
太陽電池裏面保護用シートをP1層側の面に試験光が当たるように設置し、フィルタとしてインナーに石英ガラス製フィルタ、アウターにデイライトフィルタを搭載したスーパーキセノンウェザーメーター(スガ試験機(株)製)を用いて、JIS−K−7350−2(2008)準拠の下、照射強度180W/m(300−400nm)、温度(ブラックパネル温度)63℃、相対湿度50%の条件でキセノンランプ照射試験を2000時間行う。本試験ではキセノンランプ照射を継続の下、102分毎に装置内蔵の噴霧装置を用いた噴霧処理を18分間行うというサイクル(1サイクル120分)を1000回繰り返す。
(12−2)膜厚測定
太陽電池裏面保護用シートを縦6cm、横7cmの長方形に切り出す。長方形サンプルの中心と中心から縦方向に1.5cm、横方向に2cm離れた4点の計5か所の厚みを厚み計にて測定し、それら5点の厚みの平均値を太陽電池裏面保護用シートの厚みとする。
(12−3)膜厚減少量ΔL
前項(12−2)にて得られた太陽電池裏面保護用シートの厚みをキセノンランプ照射試験前のシート厚み(L0)とする。上記(12−2)で用いた長方形サンプルに対し前項(12−1)に記載のキセノンランプ照射試験(2000時間)を行い、前項(12−1)に記載の方法にて測定したキセノンランプ照射試験後の厚みをキセノンランプ照射試験後のシート厚み(L1)とする。L0、L1を用いて、下記式(9)を用いて算出されるΔLを膜厚減少量とした。
膜厚減少量(ΔL)=L1―L0・・・(9)
(13)長期絶縁性評価
(13−1)部分放電電圧測定
IEC60664/A2:2002に準拠の下、50mm×50mmの大きさに切り出した太陽電池裏面保護用シートについて、P1層側を上側測定面として部分放電電圧試験装置“KPD2050”(菊水電子(株)製)を用い下記条件で部分放電電圧試験実施した。
最大電圧:1.6KV
周波数:50Hz
試験時間:22.0s
テストパターン:Ramp(昇圧10.0s、最大電圧保持2.0s、降圧10.0s)
パルス検出方法・レベル:+50%
消滅電圧測定電荷:50pC
5枚の異なる切り出しサンプルについて測定を行い、前記試験で求められる消滅電圧(V)の平均値を太陽電池裏面保護用シートの部分放電電圧(V0)とした。
(13−2)屋外実曝露後の部分放電電圧
前項(8−2)に記載の屋外実曝露試験で用いた架台に、太陽電池裏面保護用シートのP1層側に太陽光が直接当たるように設置し2年間の屋外実暴露試験を行った。試験後の太陽電池裏面保護用シートを前項(13−1)と同様にして部分放電電圧(V1)を求めた。
(13−3)部分放電電圧低下量ΔV
前項(13−1)で求まる太陽電池裏面保護用シートの部分放電電圧(V0)、前項(13−1)で求まる屋外実曝露試験後の太陽電池裏面保護用シートの部分放電電圧(V1)を用いて、下記式(10)により求まる部分放電電圧低下量(ΔV)を求めた。そ
部分放電電圧低下量(ΔV)=V1―V0・・・(10)
ΔVの数値から太陽電池裏面保護用シートの長期絶縁性を下記の通り評価した。
部分放電電圧低下量(ΔV)が0V以上6V未満:A
部分放電電圧低下量(ΔV)が6V以上8.5V未満:B
部分放電電圧低下量(ΔV)が8.5V以上15V未満:C
部分放電電圧低下量(ΔV)が15V以上:D
太陽電池裏面保護用シートの長期絶縁性はA〜Cが良好であり、その中で最もAが優れている。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。なお、以下において、実施例12は、参考例12と読み替えるものとする。
(ポリエステル系樹脂原料)
1.PET原料1(実施例1〜14、比較例1〜6に用いた)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール57.5質量部、酢酸マンガン0.065質量部(Mn金属元素換算で2.91mol/t)、三酸化アンチモン0.03質量部を150℃、窒素雰囲気下で溶融した。この溶融物を撹拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応を終了した。エステル交換反応終了後、リン酸0.012質量部(1.25mol/t相当)とリン酸二水素ナトリウム2水和物0.027質量部(1.65mol/t相当)をエチレングリコール0.5質量部に溶解したエチレングリコール溶液(pH5.0)を添加した。このときのポリエステル組成物の固有粘度は0.2未満であった。この後、重合反応を最終到達温度285℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度0.52、COOH末端基量15eq./tのポリエチレンテレフタレートを得た。得られたポリエチレンテレフタレートを160
℃で6時間乾燥、結晶化させた。その後、220℃、真空度0.3Torr、8時間の固相重合を行い、固有粘度0.85、COOH末端基量10eq./tのポリエチレンテレフタレート(PET−1)を得た。得られたポリエチレンテレフタレート組成物のガラス転移温度は82℃、融点は255℃であった。
2.PET原料2(比較例7に用いた)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100質量部、ジオール成分としてエチレングリコール100質量部を用い、触媒として酢酸マンガン、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いた以外は上記1.項と同様の操作により固有粘度0.80、COOH末端基量10eq./tのポリエチレンテレフタレート(PET−2)を得た。得られたポリエチレンテレフタレート組成物のガラス転移温度は82℃、融点は255℃であった。
3.PET原料3(実施例1〜14、比較例1〜7に用いた)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100質量部、ジオール成分としてエチレングリコール100質量部を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いた以外は上記1.項と同様の操作により固有粘度0.70、COOH末端基量300eq./tのポリエチレンテレフタレート(PET−3)を得た。得られたポリエチレンテレフタレート組成物のガラス転移温度は82℃、融点は255℃であった。
4.PET−1原料ベース酸化チタンAマスター(実施例1〜12、比較例1〜5、7に用いた)
上記1.項によって得られたPET樹脂(PET−1)100質量部と、平均粒子径0.210μmのルチル型酸化チタンA(TiO−A)25質量部を、ベントした290℃の2軸押出機内(スクリュー:45mm径、回転数200rpm)で溶融混練し、20質量%酸化チタンマスターペレットを作製した。その後、20質量%酸化チタンマスターペレット100質量部とチタン粒子A(TiO−A)60質量部を再度2軸押出機内にて(スクリュー:45mm径、回転数200rpm)で溶融混練し、50質量%PET−1原料ベース酸化チタンAマスターペレット(PET−TiO(1A))を得た。
5.PET−1原料ベース酸化チタンBマスター(実施例13に用いた)
平均粒子径0.090μmのルチル型酸化チタン粒子B(TiO−B)を用いた以外は上記4.項に記載の方法にて50質量%PET−1原料ベース酸化チタンBマスターペレット(PET−TiO(1B))を得た。
6.PET−1原料ベース酸化チタンCマスター(実施例14に用いた)
平均粒子径0.270μmのルチル型酸化チタン粒子C(TiO−C)を用いた以外は上記4.項に記載の方法にて50質量%PET−1原料ベース酸化チタンCマスターペレット(PET−TiO(1D))を得た。
7.PET−1原料ベース酸化チタンDマスター(比較例6に用いた)
平均粒子径0.290μmのルチル型酸化チタン粒子D(TiO−D)を用いた以外は上記4.項に記載の方法にて50質量%PET−1原料ベース酸化チタンCマスターペレット(PET−TiO(1D))を得た。
8.PET−2原料ベース酸化チタンAマスター(比較例7に用いた)
上記2.項によって得られたPET樹脂(PET−2)と、平均粒子径0.210μmのルチル型酸化チタンA(TiO−A)を用いた以外は上記4.項に記載の方法で50質量%PET−1原料ベース酸化チタンAマスターペレット(PET−TiO(2A))を得た。
(実施例1〜12)
180℃で2時間真空乾燥したPET原料(PET−1)とPET−1原料ベース酸化チタンAマスターペレット(PET−TiO(1A))をP1層の原料として、180℃で2時間真空乾燥したPET原料(PET−3)とPET−1原料ベース酸化チタンAマスターペレット(PET−TiO(1A))をP2層原料として、粒子量が表1の濃度となるように調合し280℃の押出機内で溶融混練し、Tダイ口金に導入した。次いで、Tダイ口金よりシート状に溶融押出して表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて、未延伸シートを得た。続いて、該未延伸シートを80℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、表1に記載の「長手方向延伸温度(℃)」に加熱したロールと25℃の温度に調整したロール間で速度差をつけることで長手方向(縦方向)に表1に記載の「長手方向延伸倍率(倍)」にて延伸した後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸シートを得た。
得られた一軸延伸シートの両端をクリップで把持しながらテンター内の80℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に90℃に保たれた加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3.75倍に延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで表1に記載の「熱処理温度(℃)」にて20秒間の熱処理を施し、さらに同温度条件下、4%幅方向に弛緩処理を行った。次いで均一に徐冷を行い、全体厚みが150μmのシートを製膜した。得られたシートの特性を評価したところ固有粘度(IV)、末端カルボキシル基量および、シート厚み、P1層含有の元素量、P1層の断面観察により求められるP1層に含有する白色顔料の平均粒子径、白色顔料の構成元素は表1、2に示す通りであった。
得られた太陽電池裏面保護用シートについて、太陽電池裏面保護用シートとしての特性評価および太陽電池モジュール特性評価を行った。その結果は表2、3に示すとおり、実施例1〜12においてP1層中には平均粒子径が0.1μm以上0.30μm未満の範囲にある酸化チタン(検出元素:Ti、O)からなる白色顔料が6質量%以上13質量%以下の範囲の濃度で含有されており、P1層中に含まれるリン元素の含有量P(mol/t)が該ポリエステル樹脂全体に対して1.8mol/t以上5.0mol/t以下であり、Mn、Caの少なくともいずれか1種類の金属元素を含有し、Mn、Ca以外の2価の金属元素の含有量がそれぞれ該ポリエステル樹脂全体に対して5ppm以下であり、前記ポリエステル樹脂全体に対するアルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)とし、前記ポリエステル樹脂全体に対するMn元素含有量とCa元素含有量の合計をM2(mol/t)とするとき、前記ポリエステル樹脂における金属含有量M(mol/t)を前記リン元素の含有量P(mol/t)で除したときの値M/ Pが1.0以上3.0以下であることを確認した。また、これら実施例1〜12はすべて紫外線照射処理試験後白粉発生量ΔHが5%以上30%以下であることを確認した。中でも実施例1は紫外線処理試験前後での白粉発生量ΔHと色調変化Δb、膜厚減少量ΔLが良好であると同時にシートの成形性も良好であり、該太陽電池裏面保護用シートを用いた太陽電池モジュールは屋外実暴露試験後の粉吹きと色調変化の抑制効果が良好であり、また長期絶縁性に優れることを確認した。
太陽電池用裏面保護シートの製膜条件としては、長手方向延伸倍率を2.8倍(実施例3)および3.5倍(実施例2)に変更した場合、延伸倍率の上昇に正比例して紫外線処理試験前後での色調変化Δbが低下すると共に白粉発生量ΔHが上昇する傾向にあることを確認した。このため(実施例3)では該太陽電池裏面保護用シートを用いた太陽電池モジュールは屋外実暴露試験後の色調変化抑制効果が、(実施例2)では該太陽電池裏面保護用シートを用いた太陽電池モジュールは屋外実暴露試験後の粉吹き抑制効果が低下することを確認した。これは延伸倍率が高くなるにつれ、白色顔料である酸化チタンの分散が良化する一方で、酸化チタン周辺に微小な空隙がより多く発生し、白粉の発生を増加することに由来する。長手方向延伸温度を98℃に変更する(実施例4)と紫外線処理試験前後での白粉発生量ΔHが上昇する傾向にあり、該太陽電池裏面保護用シートを用いた太陽電池モジュールは屋外実暴露試験後の粉吹き効果が低下することを確認した。これは延伸温度上昇によりシート内の結晶化が進行し次いで行われるテンター内での延伸において、結晶化部位増加に伴い延伸性が低下し酸化チタン粒子周辺に微細な空隙が形成されるためであると考えられる。更に、熱処理温度を250℃まで上昇させた場合、白粉発生量は実施例1同等以上に良好になることを確認した。これは熱処理によって延伸時に形成された微小な空隙を2軸延伸ポリエステル樹脂内での僅かな融解と配向緩和によって潰すことができるためであると考えられる。
P1層の酸化チタン濃度に関しては、13質量%に上昇させる(実施例6)と白粉発生の起点となる酸化チタン粒子の個数が増加することで白粉発生量は増加することを確認した。一方で、P1層への酸化チタン添加量を6質量%まで減らした場合(実施例8)、酸化チタン粒子の個数減少に伴い白粉発生量ΔHが減少する一方で、酸化チタンによるP1層内における紫外線吸収効率が低下することにより色調変化Δbが上昇する、および酸化チタン粒子個数の減少により、紫外線隠蔽性が得られるまでに劣化する表層ポリエステル樹脂量が増加することからと膜厚減少量ΔLが増加する傾向にあることを確認した。
上述の延伸条件との組合せを実施したところ、P1層の酸化チタン濃度を13質量%に、長手方向延伸倍率を3.5倍に変更した場合(実施例7)において白粉発生量ΔHが本発明において最大の30%であり、酸化チタン濃度6質量%、延伸倍率を2.8倍、熱処理温度250℃に変更した場合(実施例9)において白粉発生量ΔHは本発明中において最小の5%となった。また、熱処理温度の高温化によりフィルム内の結晶構造の成長が助長され、ポリエステル樹脂の劣化速度が遅くなりと膜厚減少量ΔLが低下する傾向にあることを確認した。
太陽電池裏面保護用シートにおけるP1層比率を10%(実施例10)に変更した場合、P1層の紫外線透過率が上昇することで色調変化Δbが上昇するものの、白粉発生量ΔHは実施例1と同様に良好であることを確認した。一方で、P1積層比率を30%(実施例11)、100%(実施例12)に変更した場合、太陽電池裏面保護用シートの成型性が低下し生産性がP1層比率の上昇に伴い悪化するものの、白粉発生量ΔHは実施例1と同様に良好であることを確認した。
(実施例13、14)
実施例13では、PET−1原料ベース酸化チタンAマスターペレット(PET−TiO(1A))の代わりにPET−1原料ベース酸化チタンBマスターペレット(PET−TiO(1B))を、実施例14では、PET−1原料ベース酸化チタンAマスターペレット(PET−TiO(1A))の代わりにPET−1原料ベース酸化チタンCマスターペレット(PET−TiO(1C))を用いた以外は実施例1と同様にシートを得た。
PET−1原料ベース酸化チタンAマスターペレット(PET−TiO(1A))の代わりにPET−1原料ベース酸化チタンCマスターペレット(PET−TiO(1C))を用いた以外は実施例1と同様にシートを得た。得られたシートの特性を評価したところ固有粘度(IV)、末端カルボキシル基量および、シート厚み、P1層含有の元素量、P1層の断面観察により求められるP1層に含有する白色顔料の平均粒子径、白色顔料の構成元素は表1、2に示す通りであった。
得られた太陽電池裏面保護用シートについて、太陽電池裏面保護用シートとしての特性評価および太陽電池モジュール特性評価を行った。その結果は表2、3に示すとおり、酸化チタンの平均粒子径を0.10μmに変更した場合(実施例13)、酸化チタンの光触媒活性の上昇により白粉発生量ΔHと膜厚減少量ΔLが上昇することを確認した。また、酸化チタンの平均粒子径を0.29μmに変更した場合(実施例14)、P1層に存在する酸化チタンの粒子数は減少するものの、延伸時に発生する空隙の大きさが増大することで白粉発生量ΔHが結果的に上昇することを確認した。
(比較例1〜4)
180℃で2時間真空乾燥したPET原料(PET−1)とPET−1原料ベース酸化チタンAマスターペレット(PET−TiO(1A))をP1層の原料として、180℃で2時間真空乾燥したPET原料(PET−3)とPET−1原料ベース酸化チタンAマスターペレット(PET−TiO(1A))をP2層原料として使用し、酸化チタン含有量及び、製膜条件を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様にシートを得た。得られたシートの特性を評価したところ固有粘度(IV)、末端カルボキシル基量および、シート厚み、P1層含有の元素量、P1層の断面観察により求められるP1層に含有する白色顔料の平均粒子径、白色顔料の構成元素は表1、2に示す通りであった。
得られた太陽電池裏面保護用シートについて、太陽電池裏面保護用シートとしての特性評価および太陽電池モジュール特性評価を行った。その結果は表2、3に示すとおり、長手方向延伸倍率(比較例1)、長手方向延伸温度(比較例2)、熱処理温度(比較例3)、P1層の酸化チタン含有濃度(比較例4)が好ましい範囲から外れる場合、フィルムの紫外線照射処理後の白粉発生量ΔHは著しく低下し、該太陽電池裏面保護用シートを用いた太陽電池モジュールは屋外実暴露試験後の粉吹きと色調変化の抑制効果が著しく低下することを確認した。また比較例4では熱処理温度の低温化によりと膜厚減少量ΔLの低下に伴い長期絶縁性が低下することを確認した。
(比較例5)
180℃で2時間真空乾燥したPET原料(PET−1)とPET−1原料ベース酸化チタンAマスターペレット(PET−TiO(1A))をP1層の原料として、180℃で2時間真空乾燥したPET原料(PET−3)とPET−1原料ベース酸化チタンAマスターペレット(PET−TiO(1A))をP2層原料として使用し、酸化チタン含有量及び、製膜条件を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様にシートを得た。得られたシートの特性を評価したところ固有粘度(IV)、末端カルボキシル基量および、シート厚み、P1層含有の元素量、P1層の断面観察により求められるP1層に含有する白色顔料の平均粒子径、白色顔料の構成元素は表1、2に示す通りであった。
得られた太陽電池裏面保護用シートについて、太陽電池裏面保護用シートとしての特性評価および太陽電池モジュール特性評価を行った。その結果は表2、3に示すとおり、P1層の酸化チタン含有濃度(比較例4)を好ましい範囲の下限から外れる場合、フィルムの紫外線照射処理後の白粉発生量ΔHは下限範囲外になり、粉吹きが抑制できるものの色調変化Δbが著しく悪化し、該太陽電池裏面保護用シートを用いた太陽電池モジュールは屋外実暴露試験後の粉吹きと色調変化の抑制効果を両立することが困難となることを確認した。更に、該太陽電池裏面保護用シートを用いた太陽電池モジュールでは屋外実暴露試験後にシート表面でのクラック発生が確認され、長期絶縁性も著しく低下することが判明した。
(比較例6)
PET−1原料ベース酸化チタンAマスターペレット(PET−TiO(1A))の代わりにPET−1原料ベース酸化チタンDマスターペレット(PET−TiO(1D))を用いた以外は実施例1と同様にシートを得た。得られたシートの特性を評価したところ固有粘度(IV)、末端カルボキシル基量および、シート厚み、P1層含有の元素量、P1層の断面観察により求められるP1層に含有する白色顔料の平均粒子径、白色顔料の構成元素は表1、2に示す通りであった。
得られた太陽電池裏面保護用シートについて、太陽電池裏面保護用シートとしての特性評価および太陽電池モジュール特性評価を行った。その結果は表2、3に示すとおりであり、P1層に含有される酸化チタンの平均粒子径が0.3μmになると太陽電池裏面保護用シートの紫外線照射処理後の白粉発生量ΔHは著しく上昇し、該太陽電池裏面保護用シートを用いた太陽電池モジュールは屋外実暴露試験後の粉吹きと色調変化の抑制効果が著しく低下することを確認した。
(比較例7)
PET−1原料ベース酸化チタンAマスターペレット(PET−TiO(1A))の代わりにPET−2原料ベース酸化チタンAマスターペレット(PET−TiO(2A))を用いた以外は実施例1と同様にシートを得た。得られたシートの特性を評価したところ固有粘度(IV)、末端カルボキシル基量および、シート厚み、P1層含有の元素量、P1層の断面観察により求められるP1層に含有する白色顔料の平均粒子径、白色顔料の構成元素は表1、2に示す通りであった。
得られた太陽電池裏面保護用シートについて、太陽電池裏面保護用シートとしての特性評価および太陽電池モジュール特性評価を行った。その結果は表2、3に示すとおりであり、P1層を構成するポリエステル樹脂におけるリン元素ガ含有量及び、金属元素含有量の比であるM/Pが好ましい範囲から外れることで、太陽電池裏面保護用シートの紫外線照射処理後の白粉発生量ΔHは著しく上昇し、該太陽電池裏面保護用シートを用いた太陽電池モジュールは屋外実暴露試験後の粉吹きと色調変化の抑制効果が著しく低下することを確認した。また、長期絶縁性が低下することが確認された。これは、マスターペレット中における酸化チタンの分散性が低下したことによる影響と推定された。
Figure 0006878952
Figure 0006878952
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本発明の太陽電池裏面保護用シートは、ポリエステル樹脂を分解する紫外線の照射処理試験後であってもポリエステル樹脂表面の分解に伴う白色顔料の脱落(粉吹き)を大きく抑制できる。そのため、該シートを用いることによって、ポリエステル樹脂を分解する紫外線を含む太陽光が強く降り注ぐ屋外環境であっても太陽電池の粉吹きに伴う耐候性の欠落を抑制でき、かつ周囲の環境汚染を誘発しない太陽電池を提供することができる。
1.P1層
2.P2層
3.発電素子
4.封止材
5.透明基板
6.太陽光電池裏面保護用シート

Claims (6)

  1. 少なくとも片側の表層にポリエステル樹脂を主たる構成成分とする層(P1層)を有し、前記ポリエステル樹脂を主たる構成成分とする層(P1層)とポリエステル樹脂を主たる構成成分とする基材層(P2層)を隣接して有しており、P1層を構成するポリエステル樹脂およびP2層を構成するポリエステル樹脂がともに白色顔料を含有し、P1層を構成するポリエステル樹脂の白色顔料含有量が6質量%以上13質量%以下であり、以下(1)を満たすことを特徴とする太陽電池裏面保護用シート。
    (1)P1層表面を下記条件でテープ剥離試験を実施し、剥離したテープを下記条件でヘイズメーターにて測定した時のヘイズ値をH0、P1層表面を下記条件で紫外線照射処理を実施した後に下記条件でテープ剥離試験を実施し剥離したテープを下記条件でヘイズメーターにて測定した時のヘイズ値をH1とするとき、式(i)で表されるΔHが5%以上30%以下であること。
    式(i)ΔH=H1−H0
    《テープ剥離試験条件》
    太陽電池裏面保護用シートのP1層側の面に、セキスイセロテープNo.252(積水化学工業(株)製、テープ幅15mm)を貼付け、2kgのゴムローラーを用いて圧着した後、0.12m/分〜0.18m/分の速度で180度剥離させる。
    《ヘイズ測定条件》
    P1層から剥離したセキスイセロテープを、JIS−K7105(1981)に基づき、全自動直読ヘイズコンピューターHGM−2DP(スガ試験機(株)製)を用いて、セロテープの厚さ方向のヘイズ(%)を測定する。3回の測定値の平均をヘイズ値とする。
    《紫外線照射処理条件》
    太陽電池裏面保護用シートのP1層側の面に試験光が当たるように設置し、アイスーパー紫外線テスターS−W161(岩崎電気(株)製)を用いて、温度60℃、相対湿度50R%、照度150mW/cm2(光源:メタルハライドランプ、波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm、JIS−C−1613に準拠)の条件下で72時間照射を行う。
  2. 前記P1層の厚みが、前記P1層および前記P2層の合計厚みに対して10%以上30%以下であることを特徴とする請求項に記載の太陽電池裏面保護用シート。
  3. 前記P1層およびP2層に含有する白色顔料がいずれも酸化チタンであり、その個数平均粒子径がいずれも0.1μm以上0.3μm未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池裏面保護用シート。
  4. 前記P1層を構成するポリエステル樹脂組成物がリン酸とリン酸アルカリ金属塩を含有し、リン元素の含有量P(mol/t)が該ポリエステル樹脂全体に対して1.8mol/t以上5.0mol/t以下であり、Mn、Caの少なくともいずれか1種類の金属元素を含有し、Mn、Ca以外の2価の金属元素の含有量がそれぞれ該ポリエステル樹脂全体に対して5ppm以下であり、前記ポリエステル樹脂全体に対するアルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)とし、前記ポリエステル樹脂全体に対するMn元素含有量とCa元素含有量の合計をM2(mol/t)とするとき、下記(ii)式で求められる、前記ポリエステル樹脂における金属含有量M(mol/t)と、前記リン元素の含有量P(mol/t)とが、下記(iii)式を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池裏面保護用シート。
    式(ii)M=M1/2+M2
    式(iii)1.1≦M/P≦3.0
  5. 前記P1層表面を下記条件でキセノンランプ照射試験を2000時間実施した際の膜厚減少量(ΔL)が5μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池裏面保護用シート。
    《キセノンランプ照射試験条件》
    太陽電池裏面保護用シートをP1層側の面に試験光が当たるように設置し、フィルタとしてインナーに石英ガラス製フィルタ、アウターにデイライトフィルタを搭載したスーパーキセノンウェザーメーター(スガ試験機(株)製)を用いて、JIS−K−7350−2(2008)準拠の下、照射強度180W/m2(300−400nm)、温度(ブラックパネル温度)63℃、相対湿度50%の条件でキセノンランプ照射試験を2000時間行う。本試験ではキセノンランプ照射を継続の下、102分毎に装置内蔵の噴霧装置を用いた噴霧処理を18分間行うというサイクル(1サイクル120分)を1000回繰り返す。
    《膜厚減少量測定条件》
    太陽電池裏面保護用シートを縦6cm、横7cmの長方形に切り出す。長方形サンプルの中心と中心から縦方向に1.5cm、横方向に2cm離れた4点の計5か所の厚みを厚み計にて測定し、それら5点の厚みの平均値をキセノンランプ照射試験前のシート厚み(L0)とする。
    当該長方形サンプルを、上述のキセノンランプ照射試験を2000時間実施した後、上記と同様の方法でシート厚みを測定して、得られた値をキセノンランプ照射試験後のシート厚み(L1)とする。L0、L1を用いて、下記式(9)より、膜厚減少量(ΔL)を求める。
    膜厚減少量(ΔL)=L1―L0・・・式(9)
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池裏面保護用シートを備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
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