本発明の着色樹脂組成物は、着色剤、バインダー樹脂、多官能モノマー、光重合開始剤および酸化防止剤を含有する。着色剤は、可視光領域において特定の波長帯の光が透過することにより色性能を発現する作用を有する。バインダー樹脂は、着色樹脂組成物の各成分を保持する作用を有する。多官能モノマーおよび光重合開始剤は、紫外線照射によりラジカルを発生して着色樹脂組成物を硬化させ、パターン加工性を付与する作用を有する。酸化防止剤は、画素の黄変を抑制する作用を有する。
本発明の着色樹脂組成物は、酸化防止剤として分子量が900〜2000であるリン系酸化防止剤および下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
一般式(1)中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子、メチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基またはiso−プロピル基を表す。R5は直接結合または炭素原子数1〜10のアルキレン基を表す。nは1〜10の範囲を表し、R6は直接結合、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、>C=O、≡C−CH2−O−CH2−C≡、炭素原子数1〜50のn価の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜35のn価の芳香環含有炭化水素基、炭素原子数2〜35のn価の複素環含有基を表す。ただし、脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基、複素環含有基はいずれも置換基を有してもよく、芳香環または複素環は、他の環と縮環していてもよい。
分子量が900〜2000であるリン系酸化防止剤は、前記一般式(1)で表される化合物とともに存在すると、画素形成後に紫外線照射や加熱処理を行う場合にも画素の黄変を抑制する効果を奏する。リン系酸化防止剤の分子量が900未満であると、画素形成時の加熱処理によりリン系酸化防止剤が昇華するため、画素形成後の黄変を充分に抑制することが困難となる。一方、リン系酸化防止剤の分子量が2000を超えると、着色樹脂組成物中におけるリン系酸化防止剤の相溶性が低く、リン系酸化防止剤が析出しやすいため、画素形成後の黄変を充分に抑制することが困難となる。リン系酸化防止剤の分子量は、1500以下がより好ましい。
酸化防止剤の分子量は、N2レーザー(337nm)を用いたマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)により測定することができる。
前記一般式(1)で表される化合物は、保護基(−CO−O−C4H9)を有するため常温では不活性であり、光ラジカル重合反応を阻害しないため、良好なパターンの形成が可能である。一方、保護基は、着色樹脂組成物を加熱硬化する工程で脱離し、酸化防止剤としての効果を発現するため、パターン加工性を維持しながら、画素形成後に紫外線照射や加熱処理を行う場合にも画素の黄変を抑制する効果を奏する。
本発明の着色樹脂組成物は、分子量が900〜2000であるリン系酸化防止剤および前記一般式(1)で表される化合物を含有することにより、波長350nm以上の照射光に対するパターン加工性が良好であり、画素形成後に紫外線照射や加熱処理を行う場合にも画素の黄変を抑制することができる。分子量が900〜2000であるリン系酸化防止剤のみではパターン加工性または黄変抑制効果が不十分となり、前記一般式(1)で表される化合物のみでは黄変抑制効果が不十分となる。
分子量が900〜2000であるリン系酸化防止剤としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物、トリス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、テトラフェニル(テトラトリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,3’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)3,3’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイトなどが挙げられる。これらの化合物は、例えば、“アデカスタブ(商標登録)”1500((株)ADEKA製)、“ホスタノックス”(商標登録)P−EPQ(クラリアントジャパン(株)製)、JPP−613M(城北化学工業(株)製)などとして販売されている。これらを2種以上含有してもよい。これらのなかでも、画素形成後に紫外線照射や加熱処理を行う場合の画素の黄変をより抑制する観点から、下記一般式(2)で表される化合物、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイトが好ましく、下記一般式(2)で表される化合物がより好ましい。
一般式(2)中、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立して、炭素原子数10〜20のアルキル基を表す。相溶性の観点から、炭素原子数11〜16のアルキル基がより好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、下記構造式(3)〜(9)のいずれかで表される化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。相溶性の観点から下記構造式(3)で表される化合物がより好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物の製造方法としては、例えば、特開昭57−111375、特開平3−173843、特開平6−128195、特開平7−206771、特開平7−252191、特表2004−501128の各公報に記載された方法により製造されたフェノール系化合物と、酸無水物、酸塩化物、Boc化試薬、アルキルハライド化合物、シリルクロライド化合物、アリルエーテル化合物等を反応させる方法などが挙げられる。
本発明の着色樹脂組成物において、分子量が900〜2000であるリン系酸化防止剤の含有量は、分子量が900〜2000であるリン系酸化防止剤と前記一般式(1)で表される化合物の合計含有量100質量部に対して、40〜70質量部が好ましい。分子量が900〜2000であるリン系酸化防止剤の含有量を40質量部以上とすることにより、パターン加工性をより向上させ、画素形成後に紫外線照射や加熱処理を行う場合の画素の黄変をより抑制することができる。一方、分子量が900〜2000であるリン系酸化防止剤の含有量を70質量部以下とすることにより、パターン加工性をより向上させ、画素形成後に紫外線照射や加熱処理を行う場合の画素の黄変をより抑制することができる。
また、分子量が900〜2000であるリン系酸化防止剤と前記一般式(1)で表される化合物の合計含有量は、バインダー樹脂と多官能モノマーの合計含有量100質量部に対して、0.1〜15.0質量部が好ましい。分子量が900〜2000であるリン系酸化防止剤と前記一般式(1)で表される化合物の合計含有量を0.1質量部以上とすることにより、パターン加工性をより向上させ、画素形成後に紫外線照射や加熱処理を行う場合の画素の黄変をより抑制することができる。一方、これらの合計含有量を15.0質量部以下とすることにより、パターン加工性をより向上させ、画素形成後に紫外線照射や加熱処理を行う場合の画素の黄変をより抑制することができる。これらの合計含有量は10.0質量部以下がより好ましい。
本発明の着色樹脂組成物は、分子量が900〜2000であるリン系酸化防止剤および前記一般式(1)で表される化合物以外の酸化防止剤を含有していても構わない。
着色樹脂組成物が含有する場合があるその他の酸化防止剤としては、例えば、イオウ系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。パターン加工性の観点から、イオウ系酸化防止剤が好ましい。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。昇華性の観点から、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)が好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−{3−(3−t-ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
本発明における着色剤としては、例えば、有機顔料、無機顔料、染料などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、着色樹脂組成物の透明性の観点から、有機顔料、染料が好ましい。
有機顔料のうち、赤色顔料としては、例えば、ピグメントレッド(以下、「PR」)9、48、97、122、123、144、149、166、168、177、179、180、192、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254、臭素基を有するジケトピロロピロール顔料などが挙げられる。オレンジ色顔料としては、例えば、ピグメントオレンジ(以下、「PO」)13、PO31、PO36、PO38、PO40、PO42、PO43、PO51、PO55、PO59、PO61、PO64、PO65、PO71などが挙げられる。緑色顔料としては、例えば、ピグメントグリ−ン(以下、「PG」)7、10、36、58などが挙げられる。黄色顔料としては、例えば、ピグメントイエロ−(以下、「PY」)12、13、17、20、24、83、86、93、95、109、110、117、125、129、137、138、139、147、148、150、153、154、166、168、85などが挙げられる。青色顔料としては、例えば、ピグメントブルー(以下、「PB」)15:3、15:4、15:6、16、21、22、60、64などが挙げられる。紫色顔料としては、例えば、ピグメントバイオレット(以下「PV」)19、23、29、30、37、40、50などが挙げられる(以上、番号はいずれもカラーインデックスNo.)。
本発明の着色樹脂組成物の色純度、透過率およびコントラスト比を高めるためには、PR177、PR254、臭素基を有するジケトピロロピロール顔料、PG7、PG36、PG58、PB15:6、PV23、PY129、PY138、PY150を適宜組み合わせることが好ましい。これら顔料は、必要に応じて、ロジン処理、酸性基処理、塩基性処理等の表面処理がされていても構わない。
染料としては、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料などが挙げられる。例えば、アゾ系染料、ベンゾキノン系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、シアニン系染料、スクアリリウム系染料、クロコニウム系染料、メロシアニン系染料、スチルベン系染料、ジアリールメタン系染料、トリアリールメタン系染料、フルオラン系染料、スピロピラン系染料、フタロシアニン系染料、インジゴ系染料、フルギド系染料、ニッケル錯体系染料、アズレン系染料などが挙げられる。これらの中でも、キサンテン系染料が好ましい。キサンテン系染料としては、特開2010−32999号公報に記載のキサンテン染料、特許第4492760号公報に記載のキサンテン染料が好ましい。染料は、着色樹脂組成物中に溶解させても、粒子として分散させても構わない。
熱、光、酸、アルカリまたは有機溶剤等に対する耐性を高めるため、塩基性染料は、有機スルホン酸や有機カルボン酸等の有機酸または過塩素酸とからなる造塩化合物であることが好ましく、トビアス酸等のナフタレンスルホン酸または過塩素酸とからなる造塩化合物であることがより好ましい。
熱、光、酸、アルカリまたは有機溶剤等に対する耐性を高めるため、酸性染料および直接染料は、四級アンモニウム塩、一〜三級アミンまたはスルホンアミドとからなる造塩化合物であることが好ましい。
本発明の着色樹脂組成物において、着色剤の含有量は、着色樹脂組成物の全固形分中、10〜60質量%が好ましい。着色剤の含有量を10質量%以上とすることにより、色純度を向上させることができる。着色剤の含有量は15質量%以上がより好ましい。一方、着色剤の含有量を60質量%以下とすることにより、現像時の溶解時間を短縮することができる。着色剤の含有量は50質量%以下がより好ましい。ここで、全固形分とは、着色樹脂組成物における、溶媒以外の全成分をいう。
本発明の着色樹脂組成物は、バインダー樹脂を含有する。バインダー樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂又はポリシロキサン系樹脂が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。着色樹脂組成物の透明性を高めるため、アクリル系樹脂および/またはシロキサン系樹脂が好ましい。
バインダー樹脂は、アルカリ可溶性基を有することが好ましく、着色樹脂組成物に感光性を付与することができる。アルカリ可溶性基としては、例えば、カルボキシル基などが挙げられる。
アルカリ可溶性基を有するバインダー樹脂としては、不飽和カルボン酸を重合または共重合したアクリル系樹脂が好ましい。不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸等のモノカルボン酸や、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸や、それらの酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸が好ましい。
不飽和カルボン酸と共重合される化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸誘導体、エチレン性不飽和化合物などが挙げられる。不飽和カルボン酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸アルキルエステル、アミノエチルアクリレート等の不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸グリシジルエステル、フタル酸モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)等の多価カルボン酸モノエステルなどが挙げられる。エチレン性不飽和化合物としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、1,3−ブタジエン、イソプレン等の脂肪族共役ジエン、末端にアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するポリスチレンまたはポリメチルアクリレート、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチルアクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート又はトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリシリコーン等のマクロモノマーなどが挙げられる。
アクリル系樹脂は、側鎖にエチレン性不飽和基を有することが好ましく、感度をより向上させることができる。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが好ましい。アクリル系樹脂の側鎖にエチレン性不飽和基を導入する方法としては、例えば、アクリル系樹脂が有するカルボキシル基または水酸基に対し、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物、アクリル酸またはメタクリル酸クロライドを付加反応させる方法が挙げられる。ここで、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、α−エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテル、N−(3,5−ジメチル−4−グリシジル)ベンジルアクリルアミド、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)は、着色樹脂組成物から得られる塗膜の強度を向上させる観点から、3千以上が好ましく、5千以上がより好ましい。一方、現像性を向上させる観点から、Mwは20万以下が好ましく、10万以下がより好ましい。ここで、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めた標準ポリスチレン換算値を指す。
また、バインダー樹脂の酸価は、現像性を向上させる観点から、20mg/KOH/g以上が好ましく、30mg/KOH/g以上がより好ましい。一方、着色剤や多官能モノマーとの相溶性の観点から、アクリル系樹脂の酸価は、200mg/KOH/g以下が好ましく、150mg/KOH/g以下がより好ましい。ここで、バインダー樹脂の酸価は、滴定試薬として0.1mol/LのNaOH/EtOH溶液を用いて、「JIS K2501(2003)」に基づき、電位差滴定法により測定することができる。
バインダー樹脂の含有量は、タック性を抑制する観点から、バインダー樹脂および多官能モノマーの合計含有量100質量部に対して、10.0質量部以上が好ましく、20.0質量部以上がより好ましい。一方、現像性を向上させる観点から、80.0質量部以下が好ましく、70.0質量部以下がより好ましい。
本発明の着色樹脂組成物は多官能モノマーを含有する。多官能モノマーとは、分子中に2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物をいう。ラジカル重合が容易であることから、分子中に2つ以上のアクリル基を有することが好ましく、下記一般式(10)で表される化合物がより好ましい。
一般式(10)中、R12は水素原子またはメチル基を表し、R13は水素原子、メチル基、エチル基、メチロール基、エチロール基または水酸基を表す。R14はメチレン基、エチレン基を表す。mは0〜3の範囲を表し、0〜1の範囲が好ましい。kは2〜3の範囲を表す。R15は炭素原子数1〜20の(m+k)価の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜20の(m+k)価の芳香環含有炭化水素基、炭素原子数2〜20の(m+k)価の複素環含有基を表す。ただし、脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基、複素環含有基はいずれも置換基を有してもよく、芳香環または複素環は、他の環と縮環していてもよい。
上記一般式(10)で表される化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ビス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルプロピルアクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートがより好ましく、加熱による黄変をより抑制することができる。
本発明の着色樹脂組成物は、多官能モノマーとして、前記一般式(10)で表される化合物とともに、その他の多官能モノマーを含有してもよい。その他の多官能モノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、アジピン酸1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、アルキッド変性(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタアクリレート、2,2−ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]エーテル、4,4′−ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]シクロヘキサン、9,9−ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−クロロ−4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジメタアクリレート、ビスクレゾールフルオレンジアクリレート、ビスクレゾールフルオレンジメタアクリレートなどが挙げられる。
また、多官能モノマーはその構造の一部に酸性基を有していてもよい。酸性基を有する多官能モノマーとしては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とから得られる遊離水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート類と、ジカルボン酸類とのエステル化物などが挙げられる。かかる遊離水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート類としては、例えば、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のモノヒドロキシオリゴアクリレート、モノヒドロキシオリゴメタクリレート類などが挙げられる。ジカルボン酸類としては、例えば、マロン酸、こはく酸、グルタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸類などが挙げられる。
多官能モノマー含有量は、塗膜強度を向上させる観点から、バインダー樹脂および多官能モノマーの合計含有量100質量部に対して、30.0質量部以上が好ましく、40.0質量部以上がより好ましい。一方、タック性を抑制する観点から、90.0質量部以下が好ましく、75.0質量部以下がより好ましい。
前記一般式(10)で表される化合物の含有量は、多官能モノマーの合計含有量100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、画素形成後に紫外線照射や加熱処理を行う場合の画素の黄変をより抑制することができる。一方、前記一般式(10)で表される化合物の含有量は、多官能モノマーの合計含有量100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、パターン加工性をより向上させることができる。
本発明の着色樹脂組成物は、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤とは、光(紫外線又は電子線を含む)により分解および/または反応し、ラジカルを発生させる化合物をいう。光重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル系化合物、アルキルフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
オキシムエステル系化合物としては、例えば、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−,1−(O−アセチルオキシム)、エタノン,1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9H−カルバゾール−3−イル〕−,1−(O−アセチルオキシム)、“オプトマー”(商標登録)N−1919、NCI−831、NCI−930(以上、いずれも(株)ADEKA製)、“IRGACURE”(商標登録)OXE01、OXE02、OXE03(以上、いずれもBASFジャパン(株)製)が挙げられる。アルキルフェノン系化合物としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンが挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノンが挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロピルチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。イミダゾール系化合物系化合物としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体が挙げられる。ベンゾチアゾール系化合物としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾールが挙げられる。ベンゾオキサゾール系化合物としては、例えば、2−メルカプトベンゾオキサゾール、アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが挙げられる。チタノセン系化合物としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムが挙げられる。OXE−01またはNCI−930が好ましく、感度をより向上させ、黄変をより抑制することができる。OXE−01および/またはNCI−930にチオキサントン系化合物を組み合わせると、より高感度化するためさらに好ましい。
光重合開始剤の含有量は、光硬化をより進める観点から、バインダー樹脂および多官能モノマーの合計含有量100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。一方、残存した光重合開始剤の溶出を抑制して耐溶剤性を向上させる観点から、45.0質量部以下が好ましく、35.0質量部以下がより好ましい。
本発明の着色樹脂組成物は、溶剤を含有しても構わない。溶剤としては、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
エステル系溶剤としては、例えば、ベンジルアセテート、エチルベンゾエート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエート、マロン酸ジエチル、2−エチルヘキシルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート、シュウ酸ジエチル、アセト酢酸エチル、3−メトキシ−ブチルアセテート、アセト酢酸メチル、エチル−3−エトキシプロピオネート、2−エチルブチルアセテート、イソペンチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸ペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、下記一般式(11)で表される化合物などが挙げられる。これらの中でも、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどの酢酸エステル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネートなどのプロピオン酸エステル系溶剤、下記一般式(11)で表される化合物が好ましく、3−メトキシ−ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、下記一般式(11)で表される化合物がより好ましく、下記一般式(11)で表される化合物がさらに好ましい。
一般式(11)中、R11は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。溶解性の観点から、炭素原子数は1〜2がより好ましい。
上記一般式(11)で表される化合物としては、例えば、シクロヘキシルアセテート、シクロヘキシルプロピネート、シクロヘキシルブチレート、ブタン酸3−メチルシクロヘキシル等が挙げられる。溶解性の観点からシクロヘキシルアセテートが好ましい。
上記一般式(11)で表される化合物の含有量は、画素形成後に紫外線照射や加熱処理を行う場合の画素の黄変をより抑制する観点から、溶剤の合計含有量100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。一方、バインダー樹脂や多官能モノマーとの相溶性の観点から、溶剤の合計含有量100質量部に対して、30.0質量部以下が好ましく、20.0質量部以下がより好ましい。
エーテル系溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。アルコール系溶剤としては、例えば、ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノールが挙げられる。ケトン系溶剤としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられる。また、キシレン、エチルベンゼン、ソルベントナフサなどの溶剤を併用してもよい。
本発明の着色樹脂組成物は、その他の添加剤を含有しても構わない。その他の添加剤としては、例えば、密着改良剤、界面活性剤、重合禁止剤、紫外線硬化助剤、高分子分散剤、増感補助剤などが挙げられる。
密着改良剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン又は3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
密着改良剤の含有量は、着色樹脂組成物と基板との現像密着性を向上させる観点から、バインダー樹脂および多官能モノマーの合計含有量100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。一方、樹脂の凝集を抑制する観点から、バインダー樹脂および多官能モノマーの合計含有量100質量部に対して、30.0質量部以下が好ましく、15.0質量部以下がより好ましい。
界面活性剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などが挙げられる。陰イオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンが挙げられる。陽イオン界面活性剤としては、例えば、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタインが挙げられる。非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレートが挙げられる。フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロブチルスルホン酸塩、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、パーフルオロアルキル基含有トリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基含有リン酸エステル、若しくはパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物が挙げられる。シリコン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
界面活性剤の含有量は、着色樹脂組成物を均一に塗布する観点から、バインダー樹脂および多官能モノマーの合計含有量100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。一方、表面均一性を向上させる観点から、バインダー樹脂および多官能モノマーの合計含有量100質量部に対して、10.0質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン系またはカテコール系の重合禁止剤が挙げられる。ヒドロキノン系重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ヒドロキノン、2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ヒドロキノンが挙げられる。カテコール系重合禁止剤としては、例えば、カテコール、tert−ブチルカテコールが挙げられる。
重合禁止剤の含有量は、着色樹脂組成物の経時安定性を向上させる観点から、バインダー樹脂および多官能モノマーの合計含有量100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましい。一方、着色樹脂組成物のパターン加工性と経時安定性をより向上させる観点から、バインダー樹脂および多官能モノマーの合計含有量100質量部に対して、10.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましい。
紫外線硬化助剤としては、例えば、多官能チオール化合物が挙げられる。多官能チオール化合物としては、例えば、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)などが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)が好ましい。
紫外線硬化助剤の含有量は、着色樹脂組成物と基板との現像密着性を向上させる観点から、バインダー樹脂および多官能モノマーの合計含有量100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。一方、樹脂の凝集を抑制する観点から、バインダー樹脂および多官能モノマーの合計含有量100質量部に対して、10.0質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
高分子分散剤とは、顔料と溶剤の両方に親和性を持つ高分子化合物のことをいう。高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル、ポリアルキルアミン、ポリアリルアミン、ポリイミン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド等またはこれらの共重合体が挙げられる。
中でも、塩基性基を有する高分子分散剤が好ましい。塩基性基を有する高分子分散剤としては、例えば、“ソルスパース”(登録商標)シリーズ(アビシア社製)、“EFKA”(登録商標)シリーズ(エフカ社製)、“アジスパー”(登録商標)シリーズ(味の素ファインテクノ(株)製)、“BYK”(登録商標)シリーズ(ビックケミー社製)が挙げられる。中でも“ソルスパース”24000、“EFKA”4300、4330、4340、“アジスパー”PB821、PB822、“BYK”161〜163、2000、2001、6919、21116が好ましい。
高分子分散剤の含有量は、分散安定性を向上する観点から、顔料の合計量100質量部に対して、2質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。一方、アルカリ現像性を向上させる観点から、顔料の合計量100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。
増感補助剤としては、例えば、芳香族または脂肪族の第3級アミン等が挙げられる。
着色樹脂組成物の色純度は、CIE1931XYZ表色系色度(x,y)、すなわち、標準条件として周知のC光源を用いて測定したCIE1931XYZ表色系における色度座標(x,y)から評価することができる。
本発明の着色樹脂組成物は、加熱後の膜厚が2.5μmとなる塗布膜を形成し、C光源において測定したCIE1931XYZ表色系色度(x、y)が、0.135≦x≦0.150、0.050≦y≦0.100となることが好ましく、高色純度で鮮やかな青色を表示することができる。分子量が900〜2000であるリン系酸化防止剤と前記一般式(1)で表される化合物を組み合わせることにより、黄変の影響が出やすい0.135≦x≦0.150、0.050≦y≦0.100の色度においても、画素形成後に紫外線照射や加熱処理を行う場合にも画素の黄変を抑制することができる。
本発明の着色樹脂組成物は、例えば、着色剤、バインダー樹脂、必要に応じて溶剤およびその他の成分を、分散機により分散して着色剤分散液を調製した後、多官能モノマー、光重合開始剤、酸化防止剤、必要に応じて溶剤およびその他の成分を配合することによって得ることができる。分散機としては、例えば、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、3本ロールミル、アトライター等が挙げられる。これらの中でも、分散効率に優れるビーズミルが好ましい。分散ビーズとしては、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズが挙げられる。これらの中でも、ジルコニアビーズが好ましい。着色剤として顔料を含有する場合、予め顔料の粉体に溶剤等を添加し、分散機により二次粒子(粒子径は1〜50μm程度)を微細化しておくことが好ましい。
本発明のカラーフィルター基板は、本発明の着色樹脂組成物の硬化物から形成された画素を有する。本発明のカラーフィルター基板は、さらに、必要に応じて、基板、ブラックマトリックス、平坦化膜、フォトスペーサー、透明電極、配向膜を有していても構わない。
画素のパターン形状としては、例えば、矩形、ストライプ、正方形、多角形、波型、凹凸のある形状が挙げられる。画素の幅は、開口部面積を大きくして透過率を向上させる観点から、0.5μm以上が好ましく、1μm以上が好ましい。一方、より緻密な画像を表示する観点から、100μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。
画素の膜厚は、高色域を表示する観点から、1.5μm以上が好ましく、1.8μm以上がより好ましい。一方、透過率を向上させる観点から、3.0μm以下が好ましく、2.8μm以下がより好ましい。
カラーフィルター基板における画素の黄変は、紫外線照射と加熱処理前後でのC光源を用いて測定したCIE1931XYZ表色系の三刺激値(X,Y,Z)から評価することができる。
画素の黄変の優劣は、赤色の着色樹脂組成物は(X)の変化、緑色の着色樹脂組成物は(Y)の変化、青色の着色樹脂組成物は(Z)の変化から評価することができる、紫外線照射および加熱処理前後で値の変化が小さい場合は黄変が小さいと判断することができる。
基板としては、例えば、石英ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、表面をシリカコートしたソーダライムガラス等の無機ガラスの板や、有機プラスチックのフィルム、シートが挙げられる。なお、本発明のカラーフィルター基板を備える表示装置が反射型の表示装置である場合は、基板は不透明であっても構わない。
ブラックマトリックス(以下、「BM」)は、画素と、それに隣接する画素との間に、表示画像のコントラストを高めるため形成される。BMは、互いに隣接する画素の一部を重ねることにより形成しても構わないが(色重ねBM)、画素の段差を抑制して表示画像をより良好なものとし、かつ、高い遮光性を得るため、樹脂および遮光材を含有する樹脂BMを別途形成することが好ましい。
樹脂BMを形成する樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シロキサン系樹脂が挙げられるが、耐熱性および有機溶剤耐性の高いポリイミド系樹脂が好ましい。
樹脂BMを形成する遮光材としては、例えば、黒色有機顔料、混色有機顔料、無機顔料が挙げられる。黒色有機顔料としては、例えば、カーボンブラック、樹脂被覆カーボンブラック、ペリレンブラック、アニリンブラックが挙げられる。混色有機顔料としては、例えば、赤、青、緑、紫、黄色、マゼンダ、シアン等の顔料を混合して、疑似黒色化したものが挙げられる。無機顔料としては、例えば、グラファイト、チタン、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、銀等の金属微粒子、金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属窒化物又は金属炭化物が挙げられるが、チタンブラック、窒化チタン、炭化チタン、カーボンブラックが好ましく、チタンブラックがより好ましい。
樹脂BMは、さらに密着改良剤、高分子分散剤、重合開始剤、酸発生剤、塩基発生剤、界面活性剤等を含有しても構わない。
BMの膜厚は、遮光性と抵抗値を向上させる観点から、0.5μm以上が好ましく、0.8μm以上がより好ましい。一方、平坦性を向上させる観点から、膜厚は2.5μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましい。
平坦化膜は、画素やBMを形成した際に発生する段差を平坦化するために形成される。平坦化膜は、画素やBM上の全面に形成してもよいし、平坦化したい部分を選択的に平坦化するため、パターン形成しても構わない。平坦化膜を画素やBM上の全面に形成する場合は熱硬化性樹脂組成物を用い、パターン形成する場合は感光性樹脂組成物を用いることが好ましい。
平坦化膜を形成する樹脂としては、樹脂BMを形成する樹脂として例示したものが挙げられる。
平坦化膜は、さらに密着改良剤、高分子分散剤、重合開始剤、酸発生剤、塩基発生剤、界面活性剤等を含有しても構わない。
平坦化膜の膜厚は、平坦性と画素からの不純物の溶出を抑制する観点から、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。一方、透明性を向上させる観点から、膜厚は3.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましい。
フォトスペーサーはカラーフィルター基板とThin Film Transistor(TFT)基板とのギャップを調整するために形成される。
フォトスペーサーを形成する樹脂としては、樹脂BMを形成する樹脂として例示したものが挙げられる。力学特性、透明性、パターン加工性が良好な、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン系樹脂が好ましい。
フォトスペーサーは、フィラーとして無機酸化物微粒子、金属微粒子、樹脂微粒子を含有してもよく、力学特性を向上させることができる。無機酸化物微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、硫酸バリウム等の微粒子が挙げられる。金属微粒子としては、例えば、金、銀、銅等の微粒子が挙げられる。樹脂微粒子としては、例えば、アクリル、スチレン、シリコーン、フッ素含有ポリマー等の微粒子が挙げられる。
透明電極は、TFT基板の画素電極の対向電極として形成される。液晶ディスプレイにおいては、Vertical Alingnment(VA)方式の場合はCF上への透明電極の形成が必要となるが、In−Plane Switching(IPS)方式やFringe Field Switching(FFS)方式の場合はCF上に透明電極を形成しなくてもよい。
透明電極は、例えば、Indium−Tin−Oxide(ITO)、Indium−Zinc−Oxide(InZnO)などにより形成することが好ましい。
配向膜は、液晶セル中の液晶分子を配向するために形成される。配向膜は、静電気や埃が発生することなく均一な液晶性を実現できることから、光配向法によって形成された光配膜が好ましい。配向膜を形成する樹脂としては、例えば、ポリアミック酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミック酸エステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、シロキサン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂は光照射により光異性化が生じる構造部位として、例えば、アゾベンゼン構造、スチルベン構造を含有してもよい。
配向膜は、さらに密着改良剤、重合開始剤、界面活性剤等を含有しても構わない。
配向膜の膜厚は、液晶配向性を向上させる観点から、0.001μm以上が好ましく、0.005μm以上がより好ましい。一方、透明性を向上させる観点から、膜厚は0.5μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましい。
配向膜は、光配向処理やラビング処理が施されていることが好ましい。光配処理はラビング処理に比べて、異物や静電気による表示ムラを抑制することができるため、歩留まりの観点から、光配向処理された配向膜が好ましい。
本発明のカラーフィルタ基板は、例えば、基板上に、前述の着色樹脂組成物を塗布し、フォトリソグラフィによりパターン形成した後、加熱処理により硬化させて画素を形成することにより得ることが好ましい。カラーフィルタ基板が樹脂BMを有する場合は、画素形成前に、基板上に樹脂BMを形成する組成物を塗布し、パターン形成することが好ましい。カラーフィルタ基板が平坦化膜を有する場合は、画素形成後に、平坦化膜を形成する材料を塗布し、必要に応じてパターン加工を行うことが好ましい。
樹脂BMを形成する組成物の塗布方法およびパターン形成方法としては、後述する着色樹脂組成物の塗布方法およびパターン形成方法が挙げられる。なお、樹脂BMを形成する組成物として非感光性の組成物を用いる場合には、フォトレジストを用いたパターニングを行うことが好ましい。得られた樹脂BMを加熱処理してもかまわない。
画素を形成する着色樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、ディップ法、ロールコーター法、スピナー法、ダイコーティング法、ワイヤーバーコーティング法が挙げられる。得られた塗布膜を減圧乾燥しても構わない。減圧乾燥する場合、乾燥溶媒が減圧チャンバー内壁に再凝縮することを防ぐために、減圧チャンバー内を100℃以下で加熱することが好ましい。減圧乾燥の圧力は、使用する溶剤の蒸気圧以下が好ましく、1〜1000Paが好ましい。減圧乾燥時間は、10〜600秒間が好ましい。また、オーブンやホットプレートを用いた加熱乾燥すなわちセミキュアをしても構わない。セミキュアの条件は、感光性樹脂組成物の成分等により適宜選択することができ、加熱温度は60〜200℃、加熱時間は1〜60分間が一般的である。
塗布膜をフォトリソグラフィによりパターン形成する際、フォトマスクを介して投影露光方式により露光を行うことが好ましい。投影倍率は、1:1投影露光、縮小投影露光のどちらであっても構わない。投影露光方式としては、レンズスキャン露光方式、ミラープロジェクション露光方式、ステッパー露光方式等が挙げられる。これらの中でも、緻密な画素の形成が可能であり、かつ、大面積の基板を短時間で露光できるレンズスキャン露光方式が好ましい。露光に用いられる光としては、例えば、超高圧水銀ランプのg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、g線h線−線を含んだブロードの波長、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)等が挙げられる。
露光後の塗布膜を、アルカリ現像液により現像することが好ましい。アルカリ現像液としては、有機アルカリ現像液、無機アルカリ現像液のどちらも用いることができる。無機アルカリ現像液としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの水溶液などが好適に用いられる。有機アルカリ現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、メタノールアミンなどのアミン系水溶液が好適に用いられる。現像液には現像の均一性を高めるために、界面活性剤を添加することが好ましい。アルカリ性物質の含有量は、未露光部の現像溶解性の観点から、アルカリ現像液中0.02質量%以上が好ましい。一方、露光部のパターン加工性をより向上させる観点から、アルカリ現像液中2.0質量%以下が好ましい。現像液の温度により現像速度が変化するため、現像液温度は18〜40℃の範囲で適宜選択することが好ましい。
現像方法としては、例えば、ディップ現像、シャワー現像、パドル現像などが挙げられる。現像液の温度、流量およびシャワー噴射圧力、現像後の水洗温度、流量およびシャワー噴射圧力条件を適宜選択することが好ましい。基板上の残渣を除去するためには、現像液または水洗水を高圧で噴射することが好ましく、噴出圧力は0.01MPa〜20MPaが好ましい。
得られた塗布膜パターンを加熱処理することにより硬化させ、画素を得ることができる。加熱処理装置としては、熱風オーブン、ホットプレートなどが挙げられる。加熱温度は180〜300℃が好ましく、加熱時間は5〜90分間が好ましい。
画素の色毎に作製した着色樹脂組成物を使用して、上記工程を赤色画素、緑色画素および青色画素について順次行うことにより、カラーフィルター基板を作製することができる。なお、各色のパターニング順序は特に限定されない。
配向膜を形成する組成物の塗布方法としては、着色樹脂組成物の塗布方法が挙げられる。得られた塗布膜に、直線偏光された紫外光を0.5〜10J/cm2(i線換算)露光し、加熱処理することにより、配向膜を得ることができる。加熱処理装置としては、熱風オーブン、ホットプレートなどが挙げられる。加熱温度は100〜300℃が好ましく、加熱時間は5〜90分間が好ましい。
本発明のカラーフィルター基板は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示装置の構成要素とすることができる。すなわち、本発明の表示装置は、本発明のカラーフィルター基板を有する。
本発明の表示装置の一例として、液晶表示装置の構成を以下に示す。
本発明の液晶表示装置は、本発明のカラーフィルター基板とアレイ基板とが、それらの基板上に設けられた液晶配向膜およびセルギャップ保持のためのスペーサーを介して貼り合わされており、カラーフィルター基板とアレイ基板との間に液晶が封入されている。アレイ基板上には、薄膜トランジスタ(TFT)素子または薄膜ダイオード(TFD)素子、走査線、ゲート電極または信号線等が設けられている。また、TFTを覆ってSiN等の無機パッシベーション膜やアクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂等の有機パッシベーション膜が形成されていてもよい。パッシベーション膜上には、ITO等の透明電極が形成されていてもよい。更に、カラーフィルター基板のガラス側には偏光板が形成されている。TFT基板のガラス側には、偏光板、輝度向上フィルム、プリズム板、拡散板、導光板、反射板等が形成されている。さらに、バックライトやICドライバー等が実装されている。バックライトとしては、2波長LED、3波長LEDまたはCCFL等を用いることができるが、液晶表示装置の色再現範囲が拡大でき、かつ消費電力を低く押さえられることから、3波長LEDが好ましい。
本発明の表示装置の製造方法の一例として、液晶表示装置の製造方法を以下に示す。カラーフィルター基板とアレイ基板とを、それらの基板上に設けられた液晶配向膜およびセルギャップ保持のためのスペーサーを介して、対向させて貼り合わせる。次に、シール部に設けられた注入口から液晶を注入した後に、注入口を封止する。次に、偏光板、輝度向上フィルム、プリズム板、拡散板、導光板、反射板を貼り付ける。さらに、バックライトを取り付け、ICドライバー等を実装することにより、液晶表示装置が完成する。
以下に本発明を実施例および比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。まず、各実施例および比較例に用いた成分について説明する。
(アクリル系アルカリ可溶性樹脂溶液(P−1)の合成)
500mLの三口フラスコに、33gのメタクリル酸メチル(0.3mol)、33gのスチレン(0.3mol)、34gのメタクリル酸(0.4mol)、3gの2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(0.02mol)および150gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)を仕込み、90℃で2時間撹拌してから内温を100℃に昇温して、さらに1時間撹拌し、反応溶液を得た。得られた反応溶液に、33gのメタクリル酸グリシジル(0.2mol)、1.2gのジメチルベンジルアミン(0.009mol)および0.2gのp−メトキシフェノール(0.002mol)を添加して、90℃で4時間撹拌した後、50gのPGMEAを添加して、固形分濃度40質量%のアクリル系アルカリ可溶性樹脂(P−1)のPGMEA溶液を得た。アクリル系アルカリ可溶性樹脂(P−1)について、電位差自動滴定装置(AT−510;京都電子工業(株)製)を用い、滴定試薬として0.1mol/LのNaOH/EtOH溶液を用いて、「JIS K2501(2003)」に基づき、電位差滴定法により酸価を測定しところ、酸価は80.0(mg/KOH/g)であった。また、GPC分析装置(HLC−8220;東ソー(株)製)を用い、流動層としてTHFを用いてGPC測定を行い、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めたところ、Mwは22000であった。
(平坦化膜形成用樹脂組成物(O−1)の調製)
上記方法により得られた10.5質量部のアクリル系アルカリ可溶性樹脂溶液(P−1)、多官能モノマーである4.20質量部のジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(“カヤキュア”(登録商標)DPHA;日本化薬(株)製)(以下、「DPHA」)、光重合開始剤である0.42質量部の2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(“イルガキュア”(商標登録)907;BASFジャパン(株)製)(以下、「IC907」)、0.42質量部の1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](“イルガキュア”OXE01;BASFジャパン(株)製)(以下、「OXE01」)、0.42質量部の2,4−ジエチルチオキサントン(“カヤキュア”DETX−S;日本化薬(株)製)(以下、「DETX」)、0.30質量部のビニルトリメトキシシラン(KBM1003;信越化学(株)製)(以下、「KBM1003」)、界面活性剤である0.04質量部のBYK(登録商標)−333(ビックケミージャパン(株)製)、重合禁止剤である0.01質量部の2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ヒドロキノン(以下、「DOHQ」;和光純薬工業(株)製)および83.69質量部のPGMEAを混合して、平坦化膜形成用樹脂組成物(O−1)を調製した。
次に、各実施例および比較例における評価方法について説明する。
(パターン加工性)
厚み0.5mmの無アルカリガラス基板上に、スピンコーター(1HD2型;ミカサ(株)製)を用いて、各実施例および比較例により得られた着色樹脂組成物を塗布し、90℃のオーブン(PERFECTOVEN PV−210;ダバイエスペック(株)製)内で10分間セミキュアして塗布膜を得た。このとき、後述する本キュア後の着色画素の色度が、C光源を使用して測定したCIE1931XYZ表色系色度(x、y)においてx=0.139、y=0.080になるように回転数を調整した。
得られた塗布膜を、幅50μmのストライプパターンが開口されたフォトマスク(HOYA(株)製)を介して、1:1投影露光装置(FX66S;(株)ニコン製)により、i線:365nm、h線:405nmおよびg線:436nmの各波長を含む紫外線を、照度600mW/cm2で、積算光量100mJ/cm2(i線換算)の露光量で露光した。
次に、0.3質量%の水酸化テトラメチルアンモニウムおよび0.3質量%のエマルゲン(登録商標)A−60(花王(株)製)を含有する23℃の水溶液を用い、自動現像装置(AD−2000;ミカサ(株)製)を用いて1分間シャワー現像した後、純水でリンスして風乾し、ストライプパターンを得た。さらに、230℃のオーブン内で30分間本キュアし、硬化を行うことにより、着色画素を作製した。
上記の方法に従って形成した、50μmマスク幅に対応した着色画素のストライプパターンを、光学顕微鏡(BH3−MJL;オリンパス販売(株)製)を用いて倍率500倍で観察し、任意に選択した1つのストライプパターンの線幅Wを測定し、以下の基準で評価した。
◎:49.0μm≦W≦51.0μm
○:48.0μm≦W<49.0μm、51.0μm<W≦52.0μm
×:W<48μm、52μm<W。
(黄変抑制)
前記方法により作製した着色画素が形成された基板を、卓上型表面処理装置(SSP16−110;セン特殊光源(株)製)により、800mJ/cm2の露光量(i線換算)で露光し、スピンコーターを用いて、着色画素を覆うように平坦化膜形成用樹脂組成物(O−1)を塗布し、90℃のオーブン内で10分間セミキュアして塗布膜を得た。得られた塗布膜を、フォトマスクを介さないで露光したこと以外は着色画素の形成と同様の条件により露光および現像した。さらに、230℃のオーブン内で30分間本キュアし、硬化を行うことにより、平坦化膜を作製した。本キュア後の平坦化膜厚(下方に着色画素が存在しない部位)は、1.5μmであった。
上記の方法に従って形成した、平坦化膜に覆われた50μmマスク幅に対応した着色画素のストライプパターンについて、高精細CF基板光学検査装置(LCF−100MA_SF;大塚電子(株)製)を用いて、光源をC光源としてCIE1931XYZ表色系色度(Z1)を測定した。
次に、ランプ式UV照射システム(EX250;HOYA CANDEO OPTRONICS(株)製)のノズル先端を、平坦化膜に覆われた50μmマスク幅に対応した着色画素のストライプパターン表面から5cmの位置に設置し、5.0J/cm2の露光量(i線換算)で露光した。さらに、230℃のオーブン内で30分間加熱後に、試験前に測定した同一箇所を、再度、高精細CF基板光学検査装置により、光源をC光源としてCIE1931XYZ表色系色度(Z2)を測定した。
Zの変化量であるΔZ%を△Z%=(1−Z2/Z1)×100から算出し、以下の基準により評価した。
◎:0.0%≦△Z≦1.0%
○:1.0%<ΔZ≦2.0%
×:2.0%<ΔZ。
(リン系酸化防止剤の分子量)
各実施例および比較例に用いたリン系酸化防止剤の分子量は、MALDI−MS(AXIMA TOF2;(株)島津製作所製;N2レーザー(337nm)、リフレクトロンモード)により測定した。
(実施例1)
顔料である10.86質量部のPB15:6(“リオノール”(登録商標)ブルー 7602;東洋インキ(株)製)、顔料である1.21質量部のPV23(“ホスタパーム”(登録商標)バイオレットRL−COF02;クラリアントジャパン(株)製)、高分子分散剤である13.25質量部のDisper“BYK”(商標登録)21116(固形分40質量%のPGMEA溶液;ビックケミージャパン(株)製)、前記方法により得られた34.88質量部のアクリル系アルカリ可溶性樹脂溶液(P−1)および39.80量部のPGMEAを混合し、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散して、顔料分散液(b−1)を得た。
100質量部の顔料分散液(b−1)、多官能モノマーである8.88質量部のペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの質量比55/45の混合物(“NKエステル”(登録商標)A−TMM−3L;新中村化学工業(株)製)、5.07質量部のペンタエリスリトールテトラアクリレート(“NKエステル”(登録商標)A−TMMT;新中村化学工業(株)製)、光重合開始剤である2.23質量部の1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](“イルガキュア”(商標登録)OXE01;BASFジャパン(株)製)、2.23質量部の2,4−ジエチルチオキサントン(“カヤキュア”(登録商標)DETX−S;日本化薬(株)製)、硬化助剤である0.28質量部のペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(“カレンズMT”(登録商標)PE−1;昭和電工(株)製)、酸化防止剤である0.62質量部のテトラ(C12〜C15アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト(“アデカスタブ”(商標登録)1500;(株)ADEKA製)、0.62質量部の構造式(3)で表される化合物、密着改良剤である1.59質量部のビニルトリメトキシシラン(KBM1003;信越化学(株)製)、界面活性剤である0.21質量部の“BYK”(登録商標)−333(ビックケミージャパン(株)製)、溶剤である47.73質量部のシクロヘキシルアセテートおよび360.90質量部のPGMEAを混合して、着色樹脂組成物−1を調製した。
(実施例2〜12、比較例1〜9)
各成分の種類および量を表1〜3のように変更した以外は、着色樹脂組成物−1と同様の方法で、着色樹脂組成物−2〜21を調製した。
各実施例および比較例の組成の一部および評価結果を表1〜3に示す。なお、表1〜3において、各成分は次の通りである。
A−1:テトラ(C12〜C15アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト(“アデカスタブ”(商標登録)1500;(株)ADEKA製))、分子量:1114
A−2:テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト(“ホスタノックス”(商標登録)P−EPQ;クラリアントジャパン(株)製)、分子量:1035
A−3:テトラフェニル(テトラトリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイトとフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)の混合物(JPP−613M;城北化学工業(株)製)、分子量:1426
A−4:3,9−ビス(オクタデシルオキシ)−2,4,8,10−テトラオクサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(“アデカスタブ”(商標登録)PEP−8;(株)ADEKA製)、分子量:733
A−5:2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス(“アデカスタブ”(商標登録)HP−10、(株)ADEKA製)、分子量:583
A−6:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(“アデカスタブ”(商標登録)2112;(株)ADEKA製)、分子量:647
A−7:ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト(シグマアルドリッチ製)、分子量:2100
B−1:構造式(3)で表される化合物
B−2:2,6−ジ−tert−ブチルー4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジンー2−イルアミノ)フェノール(“IRGANOX”(商標登録)565;BASFジャパン(株)製)
B−3:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](“IRGANOX”(商標登録)1010;BASFジャパン(株)製)
B−4:1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(“IRGANOX”(商標登録)3114;BASFジャパン(株)製)
C−1:ペンタエリスリトールトリアクリレート
C−2:トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート(“NKエステル”(商標登録)A−9300;新中村化学工業(株)製)
C−3:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
D−1:シクロヘキシルアセテート
D−2:PGMEA。