本発明の樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、着色剤及び溶剤を含有し、前記着色剤として、臭素基を有するジケトピロロピロール顔料、C.I.ピグメントレッド177及び黄色の着色剤を含有し、全着色剤に占める前記黄色の着色剤の割合が、5〜50質量%であることを特徴とする。
本発明の樹脂組成物は、着色剤として臭素基を有するジケトピロロピロール顔料、C.I.ピグメントレッド177及び黄色の着色剤を含有することが必要である。全着色剤に占める黄色の着色剤の割合が、5〜50質量%とすることにより、高い透過率でありながら黄味の赤色が表示可能となる。さらに、臭素基を有するジケトピロロピロールを含有することにより、黄味の赤色が表示可能でありながら、高いコントラスト比を達成することができ、さらにリタデーションの絶対値を小さくすることができる。また、C.I.ピグメントレッド177を含有することにより、黄味の赤色表示でも薄膜化が可能となる。
本発明の樹脂組成物は、上記3種類の顔料以外の着色剤を含めた全着色剤に占める黄色の着色剤の割合が、5〜50質量%であることが必要であるが、この値は15〜40質量%であることが好ましい。全着色剤に占める黄色の着色剤の割合が、5質量%未満であると、形成した着色画素の透過率が低下し、さらには色度(y)が小さくなって、黄味の赤色が表示できなくなる。一方で、全着色剤に占める黄色の着色剤の割合が50質量%を超えると、厚膜化しなければ高色純度が達成できなくなる。
樹脂組成物の着色画素の色純度は、CIE1931XYZ表色系色度(x、y)、すなわち、標準条件として周知のC光源を用いて測定したCIE1931XYZ表色系における色度座標(x、y)のxと、膜厚との関係から評価することができる。赤色の樹脂組成物は通常、着色画素の膜厚が厚くなるほど、xが増大して高色純度となる。
樹脂組成物が赤色の場合は、xを一定にした場合の膜厚、又は、膜厚を一定にした場合のx、のいずれかから色純度を評価することができ、一定のxにおける膜厚が薄いほど、又は、一定の膜厚におけるxが大きいほど、着色画素は薄膜かつ高色純度であるといえる。
樹脂組成物が含有する臭素基を有するジケトピロロピロール顔料とは、下記一般式(1)で表される化合物をいう。
(一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して、水素原子、臭素原子、塩素原子又は1価の置換基を表し、少なくとも1つは臭素原子を表す。)
一般式(1)で表されるジケトピロロピロール顔料は、R1、R2、R3及びR4のうち、少なくとも1つが臭素原子であることが必要である。そのようなジケトピロロピロール顔料の中でも、R1及びR2のうち、1つが臭素原子であり、かつ1つが水素原子であり、かつR3及びR4のうち、1つが臭素原子又は塩素原子であり、かつ1つが水素原子である、一般式(2)又は一般式(3)で表されるジケトピロロピロール顔料が好ましい。
R1、R2、R3及びR4における1価の置換基としては、例えば、シアノ基、−CF3、−R5、−OR5、−SR5、−SOR5、−SO2R5、−NR5COR6、−CONR6R7、−SO2NHR6 、−SO2NR6R7、−SO2NH(R5)NR6R7又は−CONH2が挙げられる。
R5は、炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有しても構わないフェニル基、置換基を有しても構わないナフチル基、又は、置換基を有しても構わないアラルキル基を表し、該アルキル基に含まれる−CH2−は、−NR8−、−O−、−S−、−SO−又は−SO2−で置き換わっていても構わない。
R6及びR7はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、臭素原子、塩素原子、置換基を有しても構わないフェニル基、置換基を有しても構わないナフチル基、又は、置換基を有しても構わないアラルキル基を表し、該アルキル基に含まれる−CH2−は、−NR8−、−O−、−S−、−SO−又は−SO2−で置き換わっていても構わない。
R5、R6及びR7は、一緒になって炭素数2〜8のアルカンジイル基を形成してもよく、該アルカンジイル基に含まれる−CH2−は、−NR8−、−O−、−S−、−SO−又は−SO2−で置き換わっていても構わない。R8は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基を表す。炭素数1〜8のアルキル基は、直鎖上でも分岐上でも構わない。そのようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基又は2−エチルヘキシル基が挙げられる。
置換基を有しても構わないフェニル基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルバモイル基、スルファモイル基又は炭素数1〜4のアルコキシル基を有するフェニル基が挙げられる。より具体的には、例えば、フェニル基、p-メチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基又は3−カルバモイルフェニル基が挙げられる。
置換基を有しても構わないアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、4−メチルベンジル基、4−tert−ブチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−ニトロベンジル基又は2,4−ジクロロベンジル基が挙げられる。
炭素数2〜8のアルカンジイル基としては、例えば、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基又はオクタン−1,8−ジイル基が挙げられる。
−OR5としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基又はペンチルオキシ基が挙げられる。
−SR5としては、例えば、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、プロピルスルファニル基、ブチルスルファニル基又はペンチルスルファニル基が挙げられる。
−SOR5としては、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基又はペンチルスルフィニル基、ヘキシルスルフィニル、ヘプチルスルフィニル基又はオクチルスルフィニルが挙げられる。
−SO2R5としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基又はペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル、ヘプチルスルホニル基又はオクチルスルホニル基が挙げられる。
−NR5COR6としては、例えば、N−アセチルアミノ基、N−プロピオニルアミノ基、N−ベンゾイルアミノ基又はN−メチル−N−アセチルアミノ基が挙げられる。
−CONR5R6としては、例えば、N−メチルアミノカルボニル基、N−メチルアミノカルボニル基、N,N−ジメチルアミノカルボニル基、N,N−ジメチルアミノカルボニル基、N,N−エチルメチルアミノカルボニル基又はN,N−エチルメチルカルボニル基が挙げられる。
全着色剤に占める臭素基を有するジケトピロロピロール顔料の割合は、25〜80質量%であることが好ましく、35〜65質量%であることがより好ましく、45〜65質量%であることがさらに好ましい。全着色剤に占める臭素基を有するジケトピロロピロール顔料の割合が25質量%以上であると、コントラスト比を良好に維持できる。一方で、全着色剤に占める臭素基を有するジケトピロロピロール顔料の割合が80質量%以内であると、色度(y)が大きくなり、黄味の赤色が確実に表示できる。また、全着色剤に占める臭素基を有するジケトピロロピロール顔料の割合が25〜80質量%であると、黄味の赤色の表示が可能となり、かつ、リタデーションの絶対値を小さくすることができる。
樹脂組成物が含有するC.I.ピグメントレッド177とは、4,4'−ジアミノ−1,1'−ビアントラセン−9,9',10,10'−テトラオン、4,4'−ジアミノ−[1,1'−ビアントラセン]−9,9',10,10'−テトラオン、4,4'−ジアミノ−1,1'−ビアントラキノン、4,4'−ビ[1−アミノ−9,10−アントラキノン]である。
全着色剤に占めるC.I.ピグメントレッド(以下、「PR」)177の割合は、5〜25質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。全着色剤に占めるPR177の割合が5質量%以上であると、コントラスト比が向上し、さらなる薄膜化が可能となる。一方で、全着色剤に占めるPR177の割合が25質量%以内であると、透過率が向上し、さらに色度(y)が大きくなって、黄味の赤色が確実に表示できる。
本発明の樹脂組成物が含有する黄色の着色剤としては、例えば、有機顔料、無機顔料又は染料が挙げられるが、着色画素の透過率を高めるため、有機顔料又は染料が好ましい。
黄色の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(以下、「PY」)12、PY13、PY17、PY20、PY24、PY83、PY86、PY93、PY95、PY109、PY110、PY117、PY125、PY129、PY137、PY138、PY139、PY147、PY148、PY150、PY153、PY154、PY166、PY168又はPY85が挙げられるが、色純度、透過率及びコントラスト比を高めるためには、PY129、PY138、PY139又はPY150が好ましく、PY138又はPY150がより好ましく、PY150がさらに好ましい。
さらに、全着色剤に占める黄色の着色剤の割合が、20〜40質量%であり、かつ、臭素基を有するジケトピロロピロール顔料の割合が、45〜65質量%であり、かつ、PR177の割合が、10〜20質量%であるとき、膜厚、色純度、コントラスト比、透過率及びリタデーションの絶対値、全ての特性において高い水準で良好な値を得ることができるため好ましい。
本発明の樹脂組成物は、臭素基を有するジケトピロロピロール顔料、PR177及び黄色の着色剤以外の着色剤を含有しても構わない。
樹脂組成物が含有する場合がある、その他の着色剤としては、例えば、臭素基を有するジケトピロロピロール顔料、PR177及び黄色の着色剤以外の有機顔料、無機顔料又は染料が挙げられるが、着色画素の透過率を高めるため、有機顔料又は染料が好ましい。
赤色顔料としては、例えば、PR9、PR48、PR97、PR122、PR123、PR144、PR149、PR166、PR168、PR179、PR180、PR192、PR209、PR215、PR216、PR217、PR220、PR223、PR224、PR226、PR227、PR228、PR240又はPR254が挙げられる。
本発明の樹脂組成物がPR254を含有する場合には、薄膜化の観点から、全着色剤に占めるPR254の割合は、5〜20質量%であることが好ましい。
オレンジ色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ(以下、「PO」)13、PO31、PO36、PO38、PO40、PO42、PO43、PO51、PO55、PO59、PO61、PO64、PO65又はPO71が挙げられる。緑色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリ−ン(以下、「PG」)7、PG10、PG36又はPG58が挙げられる。青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(以下、「PB」)15:3、PB15:4、PB15:6、PB21、PB22、PB60又はPB64が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(以下「PV」)19、PV23、PV29、PV30、PV37、PV40又はPV50が挙げられる(以上、番号はいずれもカラーインデックスNo.)。
これらの顔料は、必要に応じて、ロジン処理、酸性基処理又は塩基性処理等の表面処理がされていても構わず、分散剤として顔料誘導体が添加されていても構わない。
染料の形態としては、例えば、油溶性染料、酸性染料、直接染料、塩基性染料、媒染染料は酸性媒染染料が挙げられる。また、上記染料をレーキ化して用いたり、染料と含窒素化合物との造塩化合物としても構わない。
赤色、緑色、青色、紫色又は黄色の染料としては、例えば、直接染料、酸性染料又は塩基性染料が挙げられる。これら染料の具体例としては、例えば、アゾ系染料、ベンゾキノン系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、シアニン系染料、スクアリリウム系染料、クロコニウム系染料、メロシアニン系染料、スチルベン系染料、ジアリールメタン系染料、トリアリールメタン系染料、フルオラン系染料、スピロピラン系染料、フタロシアニン系染料、インジゴ系染料、フルギド系染料、ニッケル錯体系染料又はアズレン系染料が挙げられる。染料は樹脂組成物中に溶解させても、顔料のように粒子として分散させても構わない。
熱、光、酸、アルカリ又は有機溶剤等に対する耐性を高めるため、塩基性染料は、有機スルホン酸若しくは有機カルボン酸等の有機酸又は過塩素酸とからなる造塩化合物であることが好ましく、トビアス酸等のナフタレンスルホン酸又は過塩素酸とからなる造塩化合物であることがより好ましい。
その耐性を高めるため、酸性染料及び直接染料は、四級アンモニウム塩、一〜三級アミン又はスルホンアミドとからなる造塩化合物であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物に占める全着色剤の割合は、全固形分に対して10〜60質量%が好ましく、20〜55質量%がより好ましい。全固形分に占める全着色剤の割合が10質量%以上であると、高色純度が達成し易くなる。一方で、全固形分に占める全着色剤の割合が60質量%以内であると、現像時の溶解時間が短くなり、パターニングが容易となる。ここで全固形分とは、樹脂組成物における、溶媒以外の全成分をいう。
着色剤として顔料を含有する本発明の樹脂組成物は、顔料、アルカリ可溶性樹脂及び溶剤、並びに、適宜追加される分散剤を、分散機により分散して顔料分散液を調製した後、その他の構成成分及び種々の添加剤を加えることによって製造される。顔料は、予めその粉体に溶剤等を添加して、分散機により剪断応力を印加し、二次粒子(粒子径は1〜50μm程度)を微細化しておく必要がある。剪断応力を印加するための分散機としては、例えば、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、3本ロールミル又はアトライター等が挙げられるが、分散効率に優れるビーズミルが好ましい。ビーズミルで用いる分散ビーズとしては、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ又はガラスビーズが挙げられるが、ジルコニアビーズが好ましい。
上記の分散剤としては、例えば、顔料の中間体若しくは誘導体等の低分子分散剤又は高分子分散剤が挙げられる。顔料の誘導体としては、例えば、顔料の適度な湿潤や安定化に資する、顔料骨格のアルキルアミン変性体、カルボン酸誘導体又はスルホン酸誘導体が挙げられるが、微細顔料の安定化に顕著な効果を有する、顔料骨格のスルホン酸誘導体が好ましい。
高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル、ポリアルキルアミン、ポリアリルアミン、ポリイミン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリイミド若しくはポリアミドイミド等のポリマー、又は、これらの共重合体が挙げられる。
中でも、塩基性基を有する高分子分散剤が好ましい。塩基性基を有する、市販品の高分子分散剤としては、例えば、ソルスパース(登録商標;アビシア社製)、EFKA(登録商標;エフカ社製)、アジスパー(登録商標;味の素ファインテクノ社製)又はBYK(登録商標;ビックケミー社製)が挙げられるが、中でもソルスパース(登録商標)24000、EFKA(登録商標)4300、4330若しくは4340、アジスパー(登録商標)PB821若しくはPB822又はBYK161〜163、2000、2001、6919若しくは21116が好ましい。高分子分散剤の添加量は、顔料に対して2〜100質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。高分子分散剤の添加量が2質量%未満であると、良好な顔料分散安定性が得られない場合があり、100質量%を超えると、アルカリ現像性が低下する場合がある。
本発明の樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含有する。ここでアルカリ可溶性樹脂とは、共重合成分として不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む樹脂をいう。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル系アルカリ可溶性樹脂、ポリシロキサン系アルカリ可溶性樹脂又はポリアミック酸が挙げられる。なお、本発明の樹脂組成物は、アルカリ可溶性基を有しないアクリル系樹脂、アルカリ可溶性基を有しないポリシロキサン系樹脂又はアルカリ可溶性基を有しないエポキシ系樹脂等のアルカリ可溶性基を有しない樹脂を含有しても構わない。
本発明の樹脂組成物が含有するアルカリ可溶性樹脂を適宜選択することで、樹脂組成物に感光性を付与することができる。
樹脂組成物に感光性を付与する場合の代表的なアルカリ可溶性樹脂としては、アクリル系アルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
ここでアクリル系アルカリ可溶性樹脂とは、共重合成分として不飽和カルボン酸を含むアクリル系樹脂をいう。共重合成分となる不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸若しくはビニル酢酸等のモノカルボン酸又はイタコン酸、マレイン酸若しくはフマル酸等のジカルボン酸あるいはそれらの酸無水物が挙げられるが、メタクリル酸が共重合成分として含まれることが好ましい。
不飽和カルボン酸以外の共重合成分となる、不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸nープロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソ−ブチル、メタクリル酸イソ−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ペンチル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート若しくはイソボルニル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸アルキルエステル、アミノエチルアクリレート等の不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル、グリシジルアクリレート若しくはグリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸グリシジルエステル又はフタル酸モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)等の多価カルボン酸モノエステルが挙げられる。
不飽和カルボン酸又はその誘導体以外の共重合成分としては、露光及び現像の際の感度向上のため、エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物が含まれることが好ましい。ここでエチレン性不飽和基としては、アクリル基又はメタクリル基が好ましい。
不飽和カルボン酸又はその誘導体以外の共重合成分としては、現像密着性の向上のため、さらにトリシクロデカン骨格又はジシクロペンタジエン骨格を有するエチレン性不飽和化合物が含まれることがより好ましい。トリシクロデカン骨格又はジシクロペンタジエン骨格を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート又はトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
アクリル系アルカリ可溶性樹脂は、上記以外のエチレン性不飽和化合物を共重合成分として含んでも構わない。そのようなエチレン性不飽和化合物としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン若しくはα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、酢酸ビニル若しくはプロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル若しくはα−クロルアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、1,3−ブタジエン若しくはイソプレン等の脂肪族共役ジエン、それぞれの末端にアクリロイル基若しくはメタクリロイル基を有するポリスチレン又はポリメチルアクリレート、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート若しくはポリシリコーン等のマクロモノマーが挙げられる。
アクリル系アルカリ可溶性樹脂は、露光及び現像の際の感度向上のため、側鎖にビニル基、アリル基、アクリル基又はメタクリル基のようなエチレン性不飽和基を有することが好ましい。アクリル系アルカリ可溶性樹脂の側鎖にエチレン性不飽和基を導入する方法としては、例えば、アクリル系アルカリ可溶性樹脂が有するカルボキシル基又は水酸基に対し、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物又はアクリル酸若しくはメタクリル酸クロライドを付加反応させる方法が挙げられる。ここでエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、グリシジル基又は脂環式エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。より具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、α−エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテル、N−(3,5−ジメチル−4−グリシジル)ベンジルアクリルアミド又は(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アクリル系アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(以下、「Mw」)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算したもの)は、3千〜20万が好ましく、5千〜10万がより好ましい。Mwが3千未満であると、十分な塗布膜の強度が得られない。一方で、Mwが20万を超えると、現像性が悪化する。また(B)アクリル系アルカリ可溶性樹脂の酸価は、適度なアルカリ現像性を得るため、20〜200(mg/KOH/g)が好ましく、30〜150(mg/KOH/g)がより好ましい。
本発明の樹脂組成物が感光性を有する場合には、感光性を付与する成分として、さらに多官能モノマー及び/又は光重合開始剤を含有することが好ましい。
多官能モノマーとは、分子中に2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物をいう。多官能モノマーとしては、ラジカル重合が容易である、アクリル基を有する多官能モノマーが好ましい。
アクリル基を有する多官能モノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、アジピン酸1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート若しくはアルキッド変性(メタ)アクリレート等のオリゴマー、又は、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート若しくは9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンが挙げられる。
光重合開始剤とは、光(紫外線又は電子線を含む)により分解及び/又は反応し、ラジカルを発生させる化合物をいう。光重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル系化合物、α−アミノアセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、オキサントン系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、カルバゾール系化合物、トリアジン系化合物、リン系化合物又はチタノセン系化合物が挙げられる。
より具体的には、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−,1−(O−アセチルオキシム)、エタノン,1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9H−カルバゾール−3−イル〕−,1−(O−アセチルオキシム)、オプトマー(商標登録)N−1919、NCI−831若しくはNCI−930(以上、いずれも(株)ADEKA社製)又はIRGACURE(商標登録)OXE01若しくはOXE02(以上、いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)が挙げられるが、特に高感度である、N−1919、OXE−02、NCI−930又はNCI−831が好ましい。
さらに芳香族又は脂肪族の第3級アミン等の増感補助剤を添加すると、さらに感度を向上させることができ、好ましい。
樹脂組成物が含有する樹脂及び多官能モノマーの合計量に対する光重合開始剤の割合は、ラジカル硬化を十分なものとし、残存した光重合開始剤の溶出を抑制して耐溶剤性を確保するため、0.01〜40質量%が好ましく、0.1〜30質量%がより好ましい。
本発明の樹脂組成物を非感光性とする場合には、例えば、アルカリ可溶性樹脂としてポリアミック酸を用いることができる。ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させて合成することができる。
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、脂肪族系又は脂環式系のテトラカルボン酸二無水物を用いることができるが、より具体的には、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物又は1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオンが挙げられる。
芳香族系のテトラカルボン酸二無水物を用いると、耐熱性の良好な着色画素を形成可能なポリアミック酸を得ることができる。芳香族系のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3”,4,4”−パラターフェニルテトラカルボン酸二無水物又は3,3”,4,4”−メタターフェニルテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
フッ素系のテトラカルボン酸二無水物を用いると、短波長領域での透明性が良好な着色画素を形成可能なポリアミック酸を得ることができる。フッ素系のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物が挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、脂肪族系又は脂環式系のジアミンを用いることができるが、より具体的には、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン又は4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルが挙げられる。
芳香族系のジアミンを用いると、耐熱性の良好な着色画素を形成可能なポリアミック酸を得ることができる。芳香族系のジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、4,4”−ジアミノターフェニル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン又はビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンが挙げられる。
フッ素系のジアミンを用いると、短波長領域での透明性が良好な着色画素を形成可能なポリアミック酸を得ることができる。フッ素系のジアミンとしては、例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。
また、ジアミンの一部として、シロキサンジアミンを用いると、着色画素と無機基板との接着性が向上する。全ジアミンに占めるシロキサンジアミンの割合は、1〜20モル%が好ましい。シロキサンジアミンとしては、例えば、ビス−3−(アミノプロピル)テトラメチルシロキサンが挙げられる。
ポリアミック酸の合成は、極性有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを混合して反応させるのが一般的であり、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との混合比によって、得られるポリアミック酸の重合度を調整することができる。
本発明の樹脂組成物が含有する溶剤は、樹脂組成物が同じく含有するアルカリ可溶性樹脂の種類等に応じて、適宜選択することができる。例えば本発明の樹脂組成物がポリアミック酸を含有する場合には、ポリアミック酸を溶解する溶剤を選択することができる。ポリアミック酸を溶解する溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド若しくはN,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系極性溶媒、又は、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン若しくはε−カプロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
また、本発明の樹脂組成物がアクリル系アルカリ可能性樹脂を含有する場合には、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール若しくはプロピレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール又はプロピレングリコール誘導体、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)、アセト酢酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート若しくは3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等の脂肪族エステル類、エタノール若しくは3−メチル−3−メトキシブタノール等の脂肪族アルコール類、あるいは、シクロペンタノン若しくはシクロヘキサノン等のケトン類を選択することができる。
さらには、2種類以上の溶剤を適宜組み合わせた、混合溶剤を選択することも好ましい。この場合には、副溶剤として、アルカリ可能性樹脂に対する貧溶媒を用いても構わない。そのような混合溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドンとシクロペンタノンとの混合物が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、その他の添加剤を含有しても構わない。その他の添加剤としては、例えば、密着改良剤、界面活性剤、重合禁止剤、有機酸、有機アミノ化合物又は硬化剤が挙げられる。
密着改良剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン又は3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
全固形分に占める密着改良剤の割合は、樹脂の凝集を抑制しながら現像密着性を確保するため、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等の陰イオン界面活性剤、ステアリルアミンアセテート若しくはラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド若しくはラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル若しくはソルビタンモノステアレート等の非イオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤が挙げられる。
全固形分に占める界面活性剤の割合は、樹脂組成物の塗布性を適度なものとしつつ、表面均一性を向上させるため、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン系又はカテコール系の重合禁止剤が挙げられる。ヒドロキノン系の重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ヒドロキノン又は2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ヒドロキノンが挙げられ、カテコール系の重合禁止剤としては、例えば、カテコール又はtert−ブチルカテコールが挙げられる。
全固形分に占める重合禁止剤の割合は、0.01〜0.5質量%が好ましい。重合禁止剤の割合が0.01質量%未満であると、樹脂組成物の経時安定性が不十分となる場合がある。一方で、重合禁止剤の割合が0.5質量%を超えると、極性溶媒浸漬時に感度の低下により膜表面が浸食され、シミが発生し易くなる場合がある。
本発明の樹脂組成物は、スピンコーターの回転数を調整して、C光源を使用して測定したCIE1931XYZ表色系色度(x、y)において、x=0.660となる着色画素を形成したとき、0.335≦y≦0.340であることが好ましく、0.336≦y≦0.339であることがより好ましい。色度(y)が0.335未満であると、黄味の赤色が表示できなくなる場合がある。一方で、色度(y)が0.340を超えると、厚膜化しなければ高色純度が達成できない場合がある。
本発明の樹脂組成物は、スピンコーターの回転数を調整して、加熱処理(本キュア)後の膜厚が2.5μmとなる着色画素を形成したとき、厚み方向位相差(Rth)の絶対値が、10.0nm以下であることが好ましく、5.0nm以下であることがより好ましい。厚み方向位相差の絶対値が10.0nmを越えると、着色画素を形成したとき、画素端部から光漏れが発生するため、好ましくない。
なお、厚み方向位相差(Rth)は(Nxy−Nnz)×dから算出される値である。
Nxy:光の振動方向が着色画素の膜面と平行な場合の屈折率
Nz:光の振動方向が着色画素の膜面と垂直な場合の屈折率
d:着色画素の膜厚
本発明のカラーフィルター基板は、本発明の樹脂組成物を硬化してなる着色画素を具備することを特徴とする。
カラーフィルター基板の構成要素となる基板としては、例えば、石英ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス若しくは表面をシリカコートしたソーダライムガラス等の無機ガラスの板又は有機プラスチックのフィルム若しくはシートが挙げられる。なお、本発明のカラーフィルター基板を備える表示装置が反射型の表示装置である場合は、不透明な基板であっても構わない。
樹脂組成物を基板上に塗布する方法としては、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーター、インクジェット印刷法若しくはスクリーン印刷法、基板を溶液中に浸漬する方法又は溶液を基板に噴霧する方法が挙げられる。
感光性の樹脂組成物を用いる場合には、例えば、樹脂ブラックマトリックスが形成された基板上に感光性樹脂組成物を塗布し、減圧乾燥を行い、80〜130℃の熱風オーブン又はホットプレートでプリベークを行い、樹脂組成物の塗布膜を形成することができる。
次に、プロキシミティ露光機、スキャン露光装置、プロジェクション露光機又はステッパー等によりフォトマスクを介して、紫外線等により選択的に露光を行う。
その後、0.02〜1質量%の水酸化カリウム又はテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ現像液に20〜300秒浸漬することにより、未露光部を除去する。得られた塗布膜パターンを180〜300℃の熱風オーブン又はホットプレートで5〜60分加熱処理することで、着色画素を形成することができる。
非感光性の樹脂組成物を用いる場合には、例えば、該組成物の塗布膜上にさらにフォトレジスト膜を形成してから、露光及び現像してパターニングすることで、所望のパターンの着色画素を形成することができる。
着色画素の色毎に作製した着色樹脂組成物を使用して、上記のようなパターニング工程を赤の着色画素、緑の着色画素及び青の着色画素について順次行うことにより、カラーフィルター基板が作製できる。なお、各色のパターニング順序は特に限定されない。
本発明のカラーフィルター基板の着色画素の膜厚は、1.5〜3.0μmが好ましく、高色純度を達成しながら高いコントラスト比及び透過率を維持するため、1.8〜2.8μmがより好ましい。膜厚が1.5μm以上であると、光の吸収が大きくなり、カラーフィルター基板の色純度を高くし易い。一方で、膜厚が3.0μm以内であると、カラーフィルター基板の平坦性、パターン加工性、及び、信頼性の低下等の、様々な問題が生じ難くなる。
本発明の樹脂組成物、及び、本発明のカラーフィルター基板の着色画素が含有する着色剤の種類は、例えば、レーザーラマン分光法(Ar+レーザー(457.9nm))を用いて得られたスペクトルと、既知の着色剤のスペクトルと、を比較することにより、同定することができる。また、MALDI質量分析装置又は飛行時間型二次イオン質量分析計で得られたマススペクトルの分子イオンピークと、計算によって得られる分子量と、を比較することにより、同定することもできる。
本発明の樹脂組成物、及び、本発明のカラーフィルター基板の着色画素が含有する着色剤の量は、MALDI質量分析装置又は飛行時間型二次イオン質量分析計を用いて、質量分析を行うことにより定量することができ、得られた各着色剤の質量から、全着色剤に占める特定の着色剤の割合(質量%)等を求めることができる。
上記の着色画素を覆うように、平坦化層が形成されていても構わない。平坦化層の形成に使用する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリルエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂又はポリイミド樹脂が挙げられる。平坦化層の膜厚としては、0.5〜5.0μmがより好ましく、1.0〜3.0μmがさらに好ましい。
本発明のカラーフィルター基板には、さらに透明電極が形成されていても構わない。透明電極としては、例えば、アルミ、クロム、タンタル、チタン、ネオジム若しくはモリブデン等の金属膜、又は、Indium−Tin−Oxide(ITO)若しくはIndium−Zinc−Oxide(InZnO)等の膜が挙げられる。
本発明のカラーフィルター基板には、必要に応じて、スペーサーや配向膜が形成されていても構わない。
本発明のカラーフィルター基板は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ又は電子ペーパー等の表示装置の構成要素とすることができる。すなわち、本発明の表示装置は、本発明のカラーフィルター基板を具備することを特徴とする。
本発明の表示装置の製造方法の一例として、液晶表示装置の製造方法を以下に示す。カラーフィルター基板とアレイ基板とを、それらの基板上に設けられた液晶配向膜及びセルギャップ保持のためのスペーサーを介して、対向させて貼り合わせる。なお、アレイ基板上に薄膜トランジスタ(TFT)素子若しくは薄膜ダイオード(TFD)素子、走査線又は信号線等を設けることで、TFT液晶表示装置又はTFD液晶表示装置を製造することができる。次に、シール部に設けられた注入口から液晶を注入した後に、注入口を封止する。さらに、バックライトを取り付け、ICドライバー等を実装することにより、液晶表示装置が完成する。なお、バックライトとしては、2波長LED、3波長LED又はCCFL等を用いることができるが、液晶表示装置の色再現範囲が拡大でき、かつ消費電力を低く押さえられることから、3波長LEDが好ましい。
以下に本発明をその実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。ここで、実施例1〜5は比較例17〜21、実施例11は比較例22、実施例15は比較例23と読み替えるものとする。
(アクリル系アルカリ可溶性樹脂(A)の合成)
500mLの三口フラスコに、33gのメタクリル酸メチル(0.3mol)、33gのスチレン(0.3mol)、34gのメタクリル酸(0.4mol)、3gの2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(0.02mol)及び150gのPGMEAを仕込み、90℃で2時間撹拌してから内温を100℃に昇温して、さらに1時間反応させた。得られた反応溶液に、33gのメタクリル酸グリシジル(0.2mol)、1.2gのジメチルベンジルアミン(0.009mol)及び0.2gのp−メトキシフェノール(0.002mol)を添加して、90℃で4時間撹拌し、反応終了時に50gのPGMEAを添加して、アクリル系アルカリ可溶性樹脂(A)のPGMEA溶液(固形分濃度40質量%)を得た。アクリル系アルカリ可溶性樹脂(A)の酸価は80.0(mg/KOH/g)であり、Mwは22000であった。
(臭素基を有するジケトピロロピロール顔料(S−1)の合成)
窒素雰囲気下の500mLの三口フラスコに、176.3gの無水tert−アミルアルコール(2.0mol)及び114.7gのナトリウム−tert−アミルアルコキシド(1.1mol)を仕込み、撹拌しながら内温を100℃に昇温して反応させ、アルコラート溶液を調製した。
別の500mLの三口フラスコに、84.9gのコハク酸ジイソプロピル(0.4mol)及び145.6gの4−ブロモベンゾニトリル(0.8mol)を仕込み、撹拌しながら内温を85℃に昇温して溶解させ、混合溶液を調製した。
上記のアルコラート溶液が入った三口フラスコの内温を100℃にして撹拌しながら、上記の混合溶液を、3時間かけて滴下した。滴下終了後、内温90℃で12時間加熱撹拌し、懸濁液を得た。
さらに別の500mLの三口フラスコに、640gのメタノール(20.0mol)、720gの水(40.0mol)及び300gの酢酸(10.0mol)を仕込み、内温を−10℃に冷却しながら撹拌して、混合物を得た。
上記の混合物が入った三口フラスコの内温を−5℃以下に保って高速撹拌しながら、上記の懸濁液を、3時間かけて滴下した。滴下終了後さらに7時間撹拌してから、濾液の着色及び塩の析出が無くなるまで、反応液の洗浄及び濾過を行った。集めた濾液を80℃で24時間乾燥させ、得られた固形物を粉砕して、一般式(2)で表される臭素基を有するジケトピロロピロール顔料(S−1)を112g得た。
(臭素基を有するジケトピロロピロール顔料(S−2)の合成)
窒素雰囲気下の500mLの三口フラスコに、176.3gの無水tert−アミルアルコール(2.0mol)及び114.7gのナトリウム−tert−アミルアルコキシド(1.1mol)を仕込み、撹拌しながら内温を100℃に昇温して反応させ、アルコラート溶液を調製した。
別の500mLの三口フラスコに、88.2gの無水tert−アミルアルコール(1.0mol)、92.7gの一般式(4)で表される化合物(0.3mol)、及び53.8gの4−シアノビフェニル(0.3mol)を仕込み、撹拌しながら内温を85℃に昇温して溶解させ、混合溶液を調製した。
上記のアルコラート溶液が入った三口フラスコの内温を100℃にして撹拌しながら、上記の混合溶液を、3時間かけて滴下した。滴下終了後、内温90℃で12時間加熱撹拌し、懸濁液を得た。
さらに別の500mLの三口フラスコに、640gのメタノール(20.0mol)及び300gの酢酸(10.0mol)を仕込み、内温を−10℃に冷却しながら撹拌して、混合物を得た。
上記の混合物が入った三口フラスコの内温を−5℃以下に保って高速撹拌しながら、上記の懸濁液を、3時間かけて滴下した。滴下終了後さらに7時間撹拌してから、濾液の着色及び塩の析出が無くなるまで、反応液の洗浄及び濾過を行った。集めた濾液を80℃で24時間乾燥させ、得られた固形物を粉砕することにより、一般式(5)で表される臭素基を有するジケトピロロピロール顔料(S−2)を87g得た。
(臭素基を有するジケトピロロピロール顔料(S−3)の合成)
53.8gの4−シアノビフェニルを47.8gの4−tert−ブチルベンゾニトリル(0.3mol)に変更した以外は、臭素基を有するジケトピロロピロール顔料(S−2)と同様の方法で合成を行い、一般式(6)で表される臭素基を有するジケトピロロピロール顔料(S−3)を81g得た。
(臭素基を有するジケトピロロピロール顔料(S−4)の合成)
53.8gの4−シアノビフェニルを80.7gのN,N−ジブチル−3−シアノベンズアミド(0.3mol)に変更した以外は、臭素基を有するジケトピロロピロール顔料(S−2)と同様の方法で合成を行い、一般式(7)で表される臭素基を有するジケトピロロピロール顔料(S−4)を90g得た。
(臭素基を有するジケトピロロピロール顔料(S−5)の合成)
53.8gの4−シアノビフェニルを74.1gの4−(オクチルチオ)ベンゾニトリル(0.3mol)に変更した以外は、臭素基を有するジケトピロロピロール顔料(S−2)と同様の方法で合成を行い、一般式(8)で表される臭素基を有するジケトピロロピロール顔料(S−5)を85g得た。
(顔料分散液(B−1)の調製)
10質量部の臭素基を有するジケトピロロピロール顔料(S−1)、高分子分散剤である12.5質量部のDISPER BYK(登録商標)21116(固形分40質量%のPGMEA溶液;ビックケミージャパン(株)製)、12.5質量部のアクリル系アルカリ可溶性樹脂(A)及び65質量部のPGMEAを混合し、循環式ビーズミル分散機(ダイノーミルKDL−A;ウィリー・エ・バッコフェーン(株)製)を用いて直径0.3mmのジルコニアビーズを使用して、3200rpm、3時間の分散処理を行い、顔料分散液(B−1)を調製した。
(顔料分散液(B−2)〜(B−10)の調製)
顔料を表1に示す顔料に変更した以外は、顔料分散液(B−1)と同様の方法で、顔料分散液(B−2)〜(B−10)を調製した。
(樹脂組成物(R−1)の調製)
45質量部の顔料分散液(B−1)、10質量部の顔料分散液(B−8)、45質量部の顔料分散液(B−9)、アクリル基を有する多官能モノマーである4.14質量部のジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(カヤキュア(登録商標)DPHA;日本化薬(株)製)、光重合開始剤である0.92質量部のオキシムエステル型カルバゾール系化合物(アデカアークルズ(登録商標)NCI−831;(株)ADEKA製)、密着改良剤である0.78質量部のビニルトリメトキシシラン(KBM1003;信越化学(株)製)、界面活性剤である0.07質量部のBYK(登録商標)−333(ビックケミージャパン(株)製)、重合禁止剤である0.02質量部の2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ヒドロキノン(和光純薬工業(株)製)及び66.84質量部のPGMEAを混合して、樹脂組成物(R−1)を調製した。
(樹脂組成物(R2)〜(R31)の調製)
顔料分散液を表2に示す顔料分散液に変更した以外は、(樹脂組成物(R−1)と同様の方法で、樹脂組成物(R2)〜(R31)を調製した。
(実施例1)
無アルカリガラス基板(ガラス厚み0.7mm)上に、スピンコーター(1HD2型;ミカサ(株)製)を用いて、本キュア後の着色画素の色度が、C光源を使用して測定したCIE1931XYZ表色系色度(x、y)においてx=0.660になるように回転数を調整して樹脂組成物(R−1)を塗布し、90℃のオーブン(PERFECTOVEN PV−210;ダバイエスペック(株)製)内で10分間セミキュアした。
得られた塗布膜を、高精細なフォトマスクを介して、紫外線露光機(PEM−6M;ユニオン光学(株)製;コリメーションアングルθ=2°、i線(365nm)照度=30mW/cm2)を用いて、50mJ/cm2で露光した。次に、0.3質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム及び0.3質量%のエマルゲン(登録商標)A−60(花王(株)製)を含有する23℃の水溶液を用い、自動現像装置(AD−2000;ミカサ(株)製)を用いて1分間シャワー現像した後、純水でリンスして風乾し、幅が25μmのストライプパターンを得た。さらに、230℃のオーブン内で30分間本キュアし、硬化を行うことにより、着色画素を作製した。
また、コントラスト比(CR)評価用の基板は、フォトマスクを介さないで露光したこと以外は、上記と同様の方法で作製した。
また、厚み方向位相差(Rth)評価用の基板は、本キュア後の膜厚が2.5μmになるようにスピンコーターの回転数を調製し、フォトマスクを介さないで露光した以外は、上記と同様の方法で作製した。
上記の方法で作製した基板について、C光源を使用して測定したCIE1931XYZ表色系色度(x、y)においてx=0.660の着色画素の色度及び膜厚、コントラスト比(CR)、並びに、膜厚が2.5μmのときの着色画素の厚み方向位相差(Rth)をそれぞれ測定し、以下のA.〜E.の基準で判定をした。
着色画素の色度は、高精細CF基板光学検査装置(LCF−100MA_SF;大塚電子(株)製)を用いて、光源がC光源の時のCIE1931XYZ表色系色度(x、y、Y)を測定した。
着色画素の膜厚は、表面段差計(サーフコム1400D;東京精密(株)製)を用いて測定した。
コントラスト比は、偏光子と検光子との間に基板を置き、偏光子と検光子とが平行な時の光線透過率(I1)と、偏光子と検光子とが直行したときの光線透過率(I2)を測定し、光線透過率比(I1/I2)から算出した。偏光子及び検光子には、NPF(登録商標)−G1220DUN(日東電工(株)製)を使用した。光源としては、熱陰極管を用いたバックライトユニット(FL8A−EX/70;明拓工業(株)製)を使用し、色彩輝度計としては、BM−5A(トプコン(株)製)を使用した。
厚み方向位相差(Rth)は、プリズムカプラ測定装置(PC−2010;メトリコン製)で、光源には632.8nmのHeNeレーザー光を使用することにより、Nxy及びNzを測定し、(Nxy−Nnz)×dから算出した。
Nxy:光の振動方向が着色画素の膜面と平行な場合の屈折率
Nz:光の振動方向が着色画素の膜面と垂直な場合の屈折率
d:着色画素の膜厚。
上記の評価において、以下のように判定した。
A. 色再現範囲を拡大し、黄味の赤色を表示するための色度(y)
◎:0.336≦y≦0.340
○:0.335≦y<0.336
×:y<0.336、0.340<y。
B. 透過率の指標である色度(Y)
◎:19.8≦Y
○:19.5≦Y≦19.8
×:Y<19.5。
C. 着色力の指標である膜厚(t)
◎:t≦2.8μm
○:2.8μm<t≦3μm
×:3μm<t。
D. コントラスト比(CR)
◎:8000≦CR
○:7000≦CR<8000
×:CR<7000。
E.厚み方向位相差(Rth)
◎:−5nm≦Rth≦5nm
○:−10nm≦Rth<−5nm、5nm<Rth≦10nm
×:Rth<−10nm、10nm<Rth。
(実施例2〜15及び比較例1〜16)
表2に示す樹脂組成物をそれぞれ用いて、実施例1と同様の評価をした。結果を表3に示す。