JP6876887B1 - 浸漬剤並びに魚介類加工品及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム及び塩化カリウムを含有する未加熱の魚介類用浸漬剤である。また本発明は、貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム、塩化カリウム及び水を含有する浸漬液で、未加熱状態の魚介類を浸漬処理してなる魚介類加工品を提供する。貝殻焼成カルシウム100質量部に対し、骨焼成カルシウムの量が10質量部以上900質量部以下であることが好ましい。貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムの合計100質量部に対し、塩化カリウムの量が30質量部以上5000質量部以下であることも好ましい。

Description

本発明は、浸漬剤並びに魚介類加工品及びその製造方法に関する。
従来、エビなどの魚介類は加熱処理すると、水分が失われて収縮し、加熱処理前の状態から明らかなサイズダウンを招く。また加熱処理の種類によっては、魚介類の食感が硬く繊維感が強いものに変化する。このため、歩留を向上させて魚介類のサイズをより大きく保持すること、及び/又は食感を良好にする等の目的で、水に保水剤を分散又は溶解させた浸漬液に加熱前の魚介類を浸漬させることが行われている。保水剤の代表的なものとして、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸カリウムなどの炭酸塩が広く用いられている(例えば、特許文献1)。
一方、歩留向上などを目的とした魚介類の浸漬剤の成分として、焼成カルシウムや酸化カルシウムなどのカルシウム含有成分を用いることが知られている(例えば特許文献2及び3)。
特開2002−51693号公報 特開平9−98746号公報 特開2007−14248号公報
特許文献1に記載の通り、炭酸塩は浸漬液を構成する保水剤として、食感及び歩留の向上に有効である。しかしながら、近年、食品へのニーズは多岐化している。特に食品の安全性意識の高まりなどから、添加剤について特定のものを用いないことを求める種々の要求が生まれている。加熱前の魚介類を処理する浸漬剤に対しても、炭酸塩を用いないとの要求が存在する。
特許文献2及び3に記載の浸漬剤は炭酸塩を用いていない。しかし、特許文献2の浸漬剤では、歩留の向上や食感向上の効果は十分なものではなかった。特許文献3記載の浸漬剤はトランスグルタミナーゼを必須とし、温度管理等の取扱い容易性の点で問題があった。
従って、本発明の課題は、炭酸水素ナトリウム及び炭酸カリウムなどの炭酸塩を用いなくても、歩留の向上や食感向上の高い効果が得られ、且つ取扱の容易な浸漬剤、魚介類加工品及びその製造方法を提供することにある。
本発明は上記課題を解決するために見出されたものであり、貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム及び塩化カリウムを含有する、未加熱魚介類用の浸漬剤を提供するものである。
また本発明は貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム、塩化カリウム及び水を含有する浸漬液で、未加熱状態の魚介類を浸漬処理してなる魚介類加工品を提供するものである。
また本発明は貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム、塩化カリウム及び水を分散する浸漬液に未加熱状態の魚介類を浸漬する工程を有する、魚介類加工品の製造方法を提供するものである。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の浸漬剤は、貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム及び塩化カリウムを含有する。本発明者はこれら3成分を組み合わせることで、炭酸塩を用いなくても、炭酸塩を用いた場合と同程度に魚介類の歩留向上及び食感向上の効果が得られることを見出した。
本発明の浸漬剤は固体状であってもよく、液体状であってもよい。固体状である場合、粉末状又はブロック状等のいずれの形態でもよいが、粉末状が分散性の点で好ましい。液体状である場合は、水を含有することが好ましい。本発明の浸漬剤は、液体状の場合はそのままで加熱前の魚介類を浸漬させる浸漬液としてもよい。また本発明の浸漬剤は、固体状又は濃縮液状の場合には水を添加して未加熱の魚介類を浸漬させる浸漬液とする。なお前記でいう液体状及び濃縮液状はいずれも、固体が分散した分散液を含むものである。以下に記載する浸漬液中の含有量は、浸漬液中に沈殿物が存在する場合、当該沈殿物の量も含めた値である。なお、以下で記載する浸漬剤における成分組成比は、特に断りがなければ、未加熱状態の魚介類を浸漬させる浸漬液についても当てはまる。以下では、本発明の浸漬剤及び本発明に用いる浸漬液をまとめて「浸漬剤及び浸漬液」とも記載する。以下本発明に用いる浸漬液を以下「本発明の浸漬液」と記載する場合がある。また本明細書において、「未加熱魚介類用」とは未加熱状態の魚介類を浸漬処理するために用いるという意味を指す。
貝殻焼成カルシウムは一般に、炭酸カルシウムを主成分とする貝殻が焼成されて炭酸カルシウムから二酸化炭素が放出され主成分が酸化カルシウムとなったものをいう。貝殻の焼成温度は通常800℃以上、好ましくは800℃〜1500℃である。貝殻としては、牡蠣、ホタテ、サザエ、ハマグリが知られているが、通常ホタテ貝が用いられる。固体状の浸漬剤中の貝殻焼成カルシウム中の酸化カルシウムの割合は例えば85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。貝殻焼成カルシウム中の酸化カルシウムは、水と反応すると水酸化カルシウムとなる。一般に、貝殻焼成カルシウムは、鉱物由来の酸化カルシウムと比較し、水との反応性に違いがある。鉱物系は激しく反応して発熱温度が高い一方、貝殻焼成カルシウムは水との反応がマイルドであり、発熱温度が比較的低い。そのため本発明の浸漬剤は貝殻焼成カルシウムの代わりに鉱物由来の酸化カルシウムを用いる場合に比して、安全で取扱の容易な浸漬剤として使用することができる。本発明は、貝殻焼成カルシウムの構成成分が酸化カルシウムである場合、及び、水酸化カルシウムである場合の両方を含むものである。従って、本明細書においては、水と非接触の状態の酸化カルシウムが主成分である貝殻焼成カルシウムも、水と混合した状態の水酸化カルシウムが主成分である貝殻焼成カルシウムも、いずれも「貝殻焼成カルシウム」と称する。
本発明では貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムを組み合わせた浸漬剤とすることで、特に歩留を高めやすく、魚介類の繊維感を効果的に抑制でき、柔らかな食感を有する魚介類加工品を得ることができる。骨焼成カルシウムは、魚骨又は獣骨を焼成したものであり、主成分はリン酸カルシウムである。焼成温度は800℃以上であることが好ましく、より好ましくは1000℃以上である。骨焼成カルシウムにおけるリン酸カルシウムの割合は90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
浸漬剤及び浸漬液において、骨焼成カルシウムの量は、貝殻焼成カルシウム100質量部に対し、10質量部以上900質量部以下であることが貝殻焼成カルシウムと骨焼成カルシウムを組み合わせることによる食感改善及び歩留まり改善の両立効果が得やすい点で好ましく、10質量部以上800質量部以下であることがより好ましく、40質量部以上250質量部以下であることがより好ましく、80質量部以上120質量部以下であることが特に好ましい。
本発明の浸漬剤及び浸漬液は幅広い魚介類、及び幅広い加熱方法に対応可能である。エビについていえば、エビはボイルすると、水分がエビから抜けやすく、硬い食感となりやすい傾向がある。このためボイルエビについては浸漬剤を用いない場合に比して柔らかい食感を求める声が強い。一方で、エビフライ等の油調の場合には、油調の際に表面付近で油分が水と交代することにより、エビが蒸された状態となるためにボイルエビに比べて柔らかい食感になりやすいが、一方で、浸漬剤を用いない場合、十分な歩留まりは得られない。このため、油調えびについては、適度な歯ごたえや繊維感のある食感を得ながら、歩留まりを高めることを求められる声が強い。とりわけ、伸ばし(「伸ばし加工」と記載する場合もある)という、エビの筋を切断してエビの形が加熱により曲がらないように整える前処理をしたエビを油調する場合、そのような要望が存在することが多い。なお、伸ばしは通常、エビの腹側の少なくとも一部(例えば第1腹節〜第4腹節)において、エビの長手方向に対して交差する切れ目を複数入れて、背側から押圧することにより行う。浸漬処理の前後のいずれに行ってもよいが、通常浸漬処理の前に行うことが作業効率から一般的である。
本発明の浸漬剤及び浸漬液は、ボイル及び油調のいずれの場合においても、求められる食感を有する加熱済みエビを提供できる。いずれの場合においても、貝殻焼成カルシウムと骨焼成カルシウムとの比率に係る上記の数値範囲は食感及び歩留まりの両立を図る観点から好ましいものである。例えば、ボイルエビを得る場合には、浸漬剤及び浸漬液における骨焼成カルシウム/貝殻焼成カルシウムの質量比率が1/10以上であることが、不自然に水っぽい食感や味を確実に防ぐ点で好ましく、9以下であることが歩留向上及びプリッとした食感を得やすい点で好ましい。また、油調エビを得る場合には、骨焼成カルシウム/貝殻焼成カルシウムの質量比率が1/10以上であることが、適度に繊維感のある食感を得やすい点で好ましく、9以下であることは、歩留向上の点で好ましい。
また貝殻焼成カルシウムと骨焼成カルシウムとの比率に係る上記の数値範囲は、魚類の場合には、歩留向上と、柔らかい食感が得やすく、魚介類がホタテにおいても、歩留向上と、貝柱の繊維がほぐれやすい食感が得やすい点、魚介類がイカである場合においても、歩留向上と、歯切れの良い食感(保水による筋組織の膨張による噛み切りやすさ)が得やすい点で好ましい。
貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムの合計量は、魚介類を浸漬させる浸漬液中、0.01質量%以上であることが、歩留向上及び食感向上の効果が得やすい点で好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。場合によっては0.1質量%以上であることが歩留向上及び食感向上の効果が得やすく、また風味の点で好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。一方、貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムの合計量は、魚介類を浸漬させる浸漬液中、5.0質量%以下であることが適度な食感が得やすい点及びこれらの浸漬剤成分の使用量を抑制して浸漬液及び浸漬処理のコストを低減する点で好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましい。コスト面では貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムの合計量は、魚介類を浸漬させる浸漬液中、2.5質量%以下であることが特に好ましく、2.0質量%以下であることが最も好ましい。
また歩留向上及び食感向上の点から、浸漬液中の貝殻焼成カルシウムの量は、魚介類を浸漬させる浸漬液中、0.005質量%以上3.0質量%以下であることが好ましく、0.025質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましい。0.1質量%以上又は0.15質量%以上であってもよい。同様の観点から、浸漬液中の骨焼成カルシウムの量は、魚介類を浸漬させる浸漬液中、0.01質量%以上3.0質量%以下であることが特に好ましく、0.12質量%以上1.8質量%以下であることが特に好ましい。
貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムの合計量は、浸漬剤及び浸漬液の固形分中3.0質量%以上であることが、歩留向上及び食感向上の効果が高い浸漬剤が製造しやすい点、及び浸漬剤の価格低減の点で好ましく、40.0質量%以下であることがより好ましい。なお、ここでいう固形分とは、水の量を除いた成分の合計量を指す。
本発明では、貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムに塩化カリウムを組み合わせることで、歩留が向上し、炭酸塩を用いた場合と同等の柔らかな自然な弾力の食感を得ることができる。例えばエビを浸漬処理した場合であればボイルエビに望ましいとされるプリッとした食感を得ることができる。また、エビを油調した場合に望ましいとされる自然な繊維感や歯ごたえある食感も得ることができる。また、サバ等の魚類のとろみのある食感やイカの柔らかい食感や歯ごたえ、ホタテ貝の自然な柔らかさやほぐれやすい食感も得ることができる。この効果を一層高めるために、浸漬剤及び浸漬液における塩化カリウムの量は、貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムの合計100質量部に対し、30質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましく、100質量部以上であることが特に好ましい。また塩化カリウムに由来する苦味を容易に抑制できる点や歩留向上の点から、貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムの合計100質量部に対し、塩化カリウムの量は5000質量部以下であることが好ましく、とりわけ4000質量部以下であることが好ましく、2000質量部以下であることが特に好ましい。
ボイルエビの場合において柔らかい食感が特に得やすい点で、浸漬剤及び浸漬液において、貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムの合計100質量部に対し、塩化カリウムの量は、600質量部以下であることが好ましく、400質量部以下であることがより好ましく、240質量部以下であることが最も好ましい。
また、浸漬処理後のエビを油調する場合、特に伸ばし加工をしたエビを油調する場合には、浸漬剤及び浸漬液において、貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムの合計100質量部に対し、塩化カリウムの量が、30質量部以上、特に200質量部以上5000質量部以下であることが貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムの量を抑制して食感の向上と歩留向上を一層容易に図ることができる事(例えば伸ばしによるエビへの浸漬剤成分の浸透しやすさの利点を得ながら食感の向上と歩留向上を図ることができる事)や、適度な歯ごたえのある食感が容易に得やすい点で好ましい。
魚介類が魚類、貝柱、イカである場合は、浸漬剤及び浸漬液において、貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムの合計100質量部に対し、塩化カリウムの量が150質量部以上2000質量部以下であることが好ましい。上記の範囲は、特に、魚類の場合には、歩留向上と、柔らかい食感が得やすく、魚介類がホタテにおいても、歩留向上と、貝柱の繊維がほぐれやすい食感が得やすい点、魚介類がイカである場合においても、歩留向上と、歯切れの良い食感(保水による筋組織の膨張による噛み切りやすさ)が得やすい点で好ましい。
得られる魚介類加工品の呈味性及び食感並びに歩留向上の点から、塩化カリウムは、魚介類加工品を浸漬させる浸漬液中の量としては、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上2.5質量%以下であることが更に一層好ましい。
本発明の浸漬剤及び浸漬液は塩味を得て、食感並びに歩留向上に加えて呈味性を高める点から更に塩化ナトリウムを含有することが好ましい。呈味性及び食感並びに歩留のバランスに優れた浸漬剤とする点から、塩化ナトリウムは、貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムの合計100質量部に対し、30質量部以上6000質量部以下であることが好ましく、75質量部以上4000質量部以下であることがより好ましく、300質量部以下又は200質量部以下であってもよい。
本発明の浸漬剤及び浸漬液は、貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム及び塩化カリウム並びに必要に応じて含有される塩化ナトリウムに加えて、これら4成分以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう。)を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば有機酸塩、アミノ酸、糖類等が挙げられる。本発明の浸漬剤において、取り扱い容易性の点から、貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム及び塩化カリウム並びに塩化ナトリウム以外の成分の量は合計で浸漬剤の固形分中50質量%以下であることが好ましい。
本発明の浸漬剤及び浸漬液は炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸カリウムなどの炭酸塩(特に無機炭酸塩)を実質的に非含有であることが、炭酸塩を用いずとも食感及び歩留を高めることができるという本発明の効果の意義が高いため好ましい。実質的に非含有であるとは、炭酸塩の量が、浸漬剤の固形分中1質量%以下であることを意味することが好ましく、0.1質量%以下であることを意味することがより好ましく、0質量%であることを意味することが最も好ましい。本明細書において、炭酸塩とは炭酸イオンを有する塩だけでなく、炭酸水素イオンを含む塩、つまり炭酸水素塩をも含む。なお、炭酸塩はこれを魚介類処理用の浸漬剤が含有する場合、当該浸漬剤を用いた食品に「pH調整剤」の表示を行う必要がある場合がある。「pH調整剤」の表示は消費者が敬遠する場合があることから、本発明の浸漬剤が炭酸塩を含有しないことは「pH調整剤」の表示を回避して前記の消費者のニーズに対応する観点でも好ましい。
本発明の浸漬剤及び浸漬液は、有機酸及び/又はリン酸塩(但し骨焼成カルシウムに含まれるリン酸塩を除く)を非含有であってもよい。浸漬剤が有機酸又は前記リン酸塩を含有する場合も、該浸漬剤を用いた食品に「pH調整剤」の表示を行う必要が生じる場合がある。この点に関し、本発明の浸漬剤では、有機酸及び/又はリン酸塩を含有せずとも食感や歩留向上を図ることができる。有機酸としては、コハク酸や酢酸、アスコルビン酸などが挙げられる。ここでいうリン酸塩には縮合リン酸塩及びオルトリン酸塩の両方が含まれる。
本発明の浸漬剤及び浸漬液はトランスグルタミナーゼを実質的に含有しないことが好ましい。トランスグルタミナーゼの活性を得るためには、未加熱状態の魚介類を浸漬させる浸漬液について所定温度以上の温度設定が必要であること等、トランスグルタミナーゼは取扱いにくいためである。本発明の浸漬剤及び浸漬液の固形分中トランスグルタミナーゼは0.0005質量%以下であることが好ましく、0.0001質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが特に好ましい。上記と同様の理由から本発明の浸漬剤は酵素を実質的に含有しないことが好ましい。本発明の浸漬剤中の酵素の量は、0.001質量%以下であることが好ましく、0.0005質量%以下であることがより好ましく、0.0001質量%以下であることが更に一層好ましく、0質量%であることが特に好ましい。また本発明の浸漬液の固形分中、酵素の量は、0.001質量%以下であることが好ましく、0.0005質量%以下であることがより好ましく、0.0001質量%以下であることが更に一層好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
本発明の浸漬剤は、魚介類を浸漬させる浸漬液の状態における15℃以上25℃以下のpHが11.0以上であることが、歩留向上及び食感向上効果が得やすい点で好ましい。前記のpHは13.5以下であることが浸漬剤成分の使用量を低減でき浸漬液・浸漬処理のコストを低減できる点と食感向上効果との兼ね合いの点から好ましい。これらの点から、前記のpHは12.0以上13.5以下であることが好ましく、12.5以上13.5以下であることがより好ましい。15℃から25℃のpHが上記下限以上又は上記範囲内であるとは、15℃以上25℃以下のいずれかの温度のpHが該当すればよく、その場合15℃以上25℃以下の別の温度のpHが該当しなくてもよい。特に20℃でのpHが上記範囲であることが好ましい。
本発明の浸漬剤からなる浸漬液は、水100質量部に対し、貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム及び塩化カリウムを、その3成分の合計量が0.35質量部以上17.0質量部以下となるように混合させて用いられることが、食感向上及び歩留向上効果に優れた浸漬液とする点で好ましく、1.0質量部以上9.0質量部以下の量で混合することが特に好ましく、2,0質量部以上5.0質量部以下の量で混合することが特に好ましく、2.5以下の量で混合することが最も好ましい。3.0質量部以上又は4.5質量部以上であってもよい。
本発明の浸漬剤及び浸漬液は、未加熱状態の魚介類に対して適用される。魚介類としては、エビ、スジコやタラコ等の魚卵、サバ、サケ、ニシン、サンマ、アジ、マグロ、タラ、ウナギなどの魚類、ホタテガイ、カキなどの貝類、イカなどの軟体類等が挙げられるが、歩留向上及び食感向上効果に優れる点で、エビ、魚類、二枚貝類,軟体類が好ましく、エビ、サバなどの回遊性の魚類、ホタテ貝、イカなどがより好ましく、エビ、サバ、ホタテガイ、イカが特に好ましい。回遊性の魚類としては、サバのほか、マグロ、サンマ、サケ、マスが挙げられる。エビは頭部及び殻が除去されたものであることが、本発明の食感向上及び歩留向上の効果に優れる点で好ましく、可食部を食べ易くする点で好ましい。更に、エビは頭部及び殻を有しない状態、つまりムキエビであることが本発明の食感向上及び歩留向上の効果に優れる点で好ましい。エビの種類としてはクルマエビ属、ロブスター属、ウチワエビ属、ヨシエビ属、イセエビ属、タラバエビ属、ミノエビ属、コウライエビ属等が知られているがいずれの種類であってもよい。魚介類が未加熱状態であるとは、例えば60℃以上の加熱処理が施されていないことを指し、50℃以上の加熱処理が施されていないことが好ましく、40℃以上の加熱処理が施されていないことが特に好ましい。未加熱状態の魚介類は、収穫又は漁獲後に冷凍され解凍したものであってもよく、収穫又は漁獲後に冷凍工程を経ずに得られたものであってもよい。
本発明の浸漬剤は、貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム及び塩化カリウムを一剤中に含有するものであってもよく、二剤以上の剤に分けて含有するものであってもよい。ただし、本発明の浸漬剤は、加熱前の魚介類を浸漬させる浸漬液中に貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム及び塩化カリウムを含有させるものである。上述した浸漬剤中における貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム、塩化カリウム及び塩化ナトリウムについて上記で述べた好ましい比率は全て、魚介類を浸漬させる浸漬液中の貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム、塩化カリウム及び塩化ナトリウムの好ましい比率に該当する。また上記で述べた浸漬剤中におけるその他の成分の例及びその好ましい量は、全て、浸漬液におけるその他の成分の例及びその好ましい量に該当する。
以下、本発明の浸漬剤による魚介類加工品の好ましい製造方法について説明する。
本製造方法は、本発明の浸漬剤である浸漬液又は本発明の浸漬剤を含む浸漬液に、未加熱状態の魚介類を浸漬させるものである。浸漬剤及び浸漬液の組成については上述した本発明の浸漬剤の説明が全て該当する。また魚介類については上述した説明がすべて該当する。
本製造方法では、貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム、塩化カリウム及び水を含む浸漬液に未加熱状態の魚介類を浸漬させる。浸漬液の温度は0℃以上10℃以下であることが魚介類の保存性や処理効率の点で好ましく、0℃以上5℃以下であることがより好ましい。また浸漬時間は20分以上が浸漬剤による歩留向上及び食感向上効果がより一層得やすい点で好ましく、24時間以下が作業効率の点で好ましい。この観点から、浸漬時間は20分以上6時間以下がより一層好ましい。
本製造方法では、本発明の浸漬剤による浸漬処理の処理前又は処理後に別の浸漬剤による浸漬処理を施してもよい。しかしながら、処理コストの低減の点及び鮮度低下の点からそのような処理は行わないことが好ましい。また、本発明の浸漬剤による浸漬処理の後に魚介類の表面に付着した浸漬剤を水で洗浄する処理は行ってもよく、行わなくてもよい。
浸漬後の魚介類はそのまま冷凍して流通及び/又は保存してもよく、チルド状態で流通及び/又は保存してもよいが、未加熱状態で流通及び/又は保存する場合には、冷凍されることが保存性の点で好ましい。冷凍温度は−40℃〜−18℃であることが好ましい。未加熱状態の冷凍品又はチルド品は、加熱用に供されることが、本発明の加熱調理後の歩留向上及び食感向上の効果を得られる点で好ましい。或いは浸漬後の魚介類は加熱後に冷凍又はチルド状態で流通及び/又は保存してもよい。
以上の工程により得られる魚介類加工品は炭酸塩を含有せずとも、更には「pH調整剤」の表示が必要となる指定添加物を含有せずとも歩留及び繊維感が抑制された柔らかくプリッとした食感から、油調する、煮る、蒸す、焼く等の各種の加熱調理に使用でき、冷凍食品、レンジ加熱用食品、ダイエット用食品、フライ等の油調商品、チルド食品等の各種加工食品の製造原料として用いることができる。また、本発明の魚介類加工品は冷凍又はチルド状態でそのまま製品として販売されてもよい。
更に本発明では、貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム、及び塩化カリウムを含む浸漬液で未加熱状態の魚介類を処理してなる魚介類加工品を提供するものである。浸漬液については上記で説明した事項が全て該当する。浸漬処理済みの魚介類加工品は通常チルド状態又は冷凍状態であり、冷凍状態であることが保存性の点で好ましい。また魚介類加工品は加熱済みの状態であってもよいが、未加熱状態であることが、種々の用途に適用できる点で好ましい。魚介類加工品は加熱用であることが本発明の食感向上及び歩留向上の効果が発揮されるため好ましい。
上述した通り、本発明者は貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム、及び塩化カリウムを含む浸漬液で未加熱状態の魚介類を処理してなる魚介類加工品は、これを加熱することで、炭酸塩を含む浸漬剤を用いた場合と同等に歩留が高くなり、また柔らかく自然な弾力の食感に優れた魚介類が得られることを知見した。しかしながら、魚介類中における貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム、及び塩化カリウムの存在を立証することは、現在の分析技術では難しく、また炭酸塩の不存在を確認することも難しい。
一方で魚介類加工品の技術分野において、製品サイクルは短く、出願は早期を要する。この事情を鑑み、出願人は、本発明の魚介類加工品について「貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム、及び塩化カリウムを含む浸漬液で未加熱状態の魚介類を処理してなる」ことを特許請求の範囲に記載することとした。以上の通り、本発明の魚介類加工品には不可能・非実際的事情が存在する。なお本発明の魚介類加工品は、「pH調整剤」の表示を有しないことが好ましい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。以下の各表における浸漬液組成の「%」は「質量%」を示す。
以下のいずれの実施例・比較例の浸漬状態においても、浸漬液は魚介類の表面全体と接触する状態で行った。
浸漬液のpHは、浸漬処理前にpH METER D-21(メーカー:堀場アドバンステクノ)を用いて20℃にて測定した。参考例1として、一般的な炭酸塩含有アルカリ製剤を用いた。また、貝殻焼成カルシウムとしては、ホタテ貝の焼成物(酸化カルシウム含量91質量%以上)を用いた。骨焼成カルシウムとしては魚骨(魚骨中の鱈骨の割合が97質量%以上)の焼成物(リン酸三カルシウム含量95質量%以上)を用いた。
(ボイルエビ評価1)
(実施例1〜8、比較例1〜8、参考例1)
下記の表1又は表2に記載する組成の浸漬液を調製した。
エビとして解凍した未加熱のバナメイエビを用い、頭部、外殻、肢部及び尾を除去し、真水で洗浄した。洗浄後のエビを、エビの1.1倍重量である、上記で調製した浸漬液(水温5℃)に3時間浸漬させた。真水で洗浄後、芯温−18℃で凍結し、冷凍保管した。
冷凍したエビを冷水中で解凍させた後、95℃以上の水槽中で2分間加熱し、室温で3分以上放冷した。表面の水気を切ったエビを喫食し、下記方法にて繊維感の強さ及びプリッとした食感の有無を評価した。また、下記方法にて歩留を評価した。結果を表1及び表2に示す。
<歩留>
歩留については、エビに対して十分な水切りを実施した後、その重量を測定し、以下に示す式より浸漬歩留、加熱歩留、総歩留を算出し、エビの浸漬処理効果を評価した。
浸漬歩留(%)=100×浸漬後重量(g)/浸漬前重量(g)
加熱歩留(%)=100×加熱後重量(g)/浸漬後、加熱前の解凍したエビの重量(g)
総歩留(%)=100×加熱後重量(g)/浸漬前重量(g)
なお歩留評価として、総歩留が85%以上を〇、75%以上85%未満を△、75%未満を×として評価した。
<食感>
食感は、健常な成人3人の被験者(男性2名、女性1名、平均年齢44.7歳)が以下の基準で喫食し、下記基準で評価させた。得られた評価点の平均点について4.0点超を◎、3.5点超〜4.0点以下を〇、3.0点超〜3.5点以下を△、3.0点以下を×として評価した。
5点:参考例1に比べて繊維感がなく、プリッとした食感。
4点:参考例1に比べて同程度の繊維感と、プリッとした食感。
3点:参考例1に比べてやや硬く繊維感が残り、プリッとした食感に乏しいが、エビ身中の保水は感じられる。
2点:参考例1に比べて硬く繊維感は残るが、エビ身中の保水がやや感じられる。
1点:参考例1に比べて硬く繊維感の強い食感で、保水が感じられない。
Figure 0006876887
Figure 0006876887
<結果>
表1及び表2に示す通り、ボイルエビでは加熱歩留が低くなりやすく、これにより硬い食感となりやすいため、浸漬処理を施すことでより柔らかな食感となることが求められる。
表1に示す通り、各実施例では浸漬歩留、加熱歩留、総歩留が参考例1と同等程度であり、参考例1と同等に繊維感が抑制されており、またプリッとした食感も得られた。一方表1及び表2に示す通り、各比較例では浸漬歩留、加熱歩留、総歩留が参考例1から大きく劣り、参考例1に比べて繊維感が残っており、またプリッとした食感は得られなかった。
上記結果から、炭酸塩を有する浸漬剤と同等の歩留及び食感を得るために、貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム及び塩化カリウムの配合が有効であることが示された。
(ボイルエビ評価2)
上記表1、表2における実施例2、比較例5及び参考例1の浸漬液について、(ボイルエビ評価1)と同様の方法にてエビの浸漬及び加熱を行った。ボイル後のエビを健常な成人10人の被験者(男性6名、女性4名、平均年齢40.9歳)に喫食させ、以下の基準で食感及び食味を評価させた。
10名の評価点の平均値について「プリッとした食感」「軟質性」「呈味性」について、4.0点超をA、3.5点超〜4.0点以下をB、3.0点超〜3.5点以下をC、3.0点以下をDとして評価した。結果を表3に示す。
(プリッとした食感評価基準)
5点:参考例1よりもプリッとした食感が良好である。
4点:参考例1と同等のプリッとした食感を感じる。
3点:参考例1よりもプリッとした食感が弱と感じる。
2点:参考例1よりもプリッとした食感が明らかに弱い。
1点:プリッとした食感がない。
(軟質性評価基準)
5点:参考例1よりも非常に柔らかいと感じる。
4点:参考例1と同等の柔らかさを感じる。
3点:参考例1よりやや劣るが柔らかく感じる。
2点:参考例1よりは硬いが、食用に問題はないと感じる。
1点:参考例1よりも硬く、食用に問題がある。
(呈味性の評価基準)
5点:異味を感じず、非常に良好であると感じる。
4点:異味を感じず、良好であると感じる。
3点:異味を感じず、やや良好であると感じる。
2点:若干の異味を感じ、美味しさを感じない。
1点:異味を感じ、不味く感じる。
Figure 0006876887
<結果>
表3に示す通り、実施例2はプリッとした食感、柔らかさ及び呈味性の各評価項目において参考例1と同等以上の評価が得られた。これに比べて、比較例5は、プリッとした食感に劣るものであった。
(油調エビ評価)
(実施例9〜13、比較例9、10、参考例2)
下記の表4に記載の組成の浸漬液を調製した。
エビとして未加熱のバナメイエビを用い、一晩冷蔵庫に入れて解凍した後、頭部、外殻、肢部及び背腸を除去し、真水で洗浄し、伸ばし工程をした。エビを、エビと同重量の浸漬液(水温5℃)に1時間浸漬させた。真水で洗浄、水切り後、芯温−18℃で凍結し、冷凍保管した。伸ばし工程はエビの第1腹節から第4腹節までの各腹節に一か所ずつ、エビの長手方向と略直交する切れ目を入れ、背側から押圧することにより行った。
冷凍したエビを冷水中で解凍させた後、打ち粉(加工澱粉が80質量%以上)、バッター液(加工澱粉及び小麦粉の合計割合が80質量%以上であるバッター粉と、水とを質量比1:3で混合したもの)、パン粉をこの順で付け後、−40℃の冷凍庫に入れて急速凍結した。冷凍状態のまま170℃で3分間油調した後、10分間立てて油切りした。得られたエビを喫食し、エビの繊維感の強さ及び歯ごたえを評価した。また、下記方法にて歩留を評価した。結果を表4に示す。
<歩留>
歩留については、浸漬前重量及び浸漬後重量は十分な水切りをしたエビの重量を測定した。加熱後重量は加熱後のエビに対して10分間の油切りを実施した後、衣を含むエビの重量を測定した。加熱前重量としては、衣付着後、加熱前の冷凍状態における、衣を含むエビの重量を測定した。これらを用い、以下に示す式より浸漬歩留、加熱歩留、総歩留を算出し、エビの浸漬処理効果を評価した。なお、衣率は、(加熱前重量−浸漬後重量)/加熱前重量×100(%)である。
浸漬歩留(%)=100×浸漬後重量(g)/浸漬前重量(g)
加熱歩留(%)=100×加熱後重量(g)/加熱前重量(g)
総歩留(%)=100×加熱後重量(g)/浸漬前重量(g)
また、総歩留が285%未満が×、285%以上295%未満が△、295%以上が〇として評価した。
健常な成人4人の被験者(男性3名、女性1名、平均年齢40.3歳)が以下の基準で喫食し、平均点を表に記載した。
(エビの繊維感)
5点:参考例2に比べてとてもエビの繊維感が強い。
4点:参考例2に比べてエビの繊維感が強い。
3点:参考例2とエビの繊維感が同程度である。
2点:参考例2に比べて、エビの繊維感が少ない。
1点:参考例2に比べてエビの繊維感が大幅に少ない。
(歯ごたえ)
5点:参考例2に比べて歯ごたえがとてもある。
4点:参考例2に比べて歯ごたえがある。
3点:参考例2と歯ごたえが同程度である。
2点:参考例2に比べて歯ごたえが少ない。
1点:参考例2に比べて歯ごたえが非常に少ない。
Figure 0006876887
表4に示す通り、油調エビでは加熱歩留が比較的高く、これにより柔らかな食感となりやすいため、浸漬処理を施すことでより適度な硬さを有する食感となることが求められる。
表4に示す通り、油調の場合には、貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム、塩化カルシウムを組み合わせた浸漬液を用いた各実施例では、炭酸塩含有浸漬液である参考例2と同等の適度なエビの繊維感及び歯ごたえのある食感を得つつ、参考例2に比して高い歩留を得た。なお骨焼成カルシウムを用いない比較例9は食感改善効果に劣る結果となった。
(実施例14〜18)
下記表5に記載した組成の浸漬液及び表4の参考例2の組成の浸漬液を用いて実施例9と同様に加熱エビを得、各工程における歩留及び加熱したエビの食感を評価した。なお官能評価は、健常な成人4人の被験者(男性3名、女性1名、平均年齢43.3歳)にて上記実施例9と同様の方法にて行った。結果を表5に示す。
Figure 0006876887
表5より、表4から焼成カルシウムや塩化カリウムの量比等の組成を変更した場合も、油調するエビを本発明の浸漬剤により前処理した場合、従来の炭酸塩浸漬剤と同等以上の歩留と、適度な繊維感等といった食感が得られることが判る。
(参考例3、実施例19及び20)
表6に記載の浸漬液を調製した。
サバとして、三枚おろしされ未加熱状態で冷凍されたサバの切り身を用いた。サバを解凍した後、真水で洗浄後、水切りした。サバの1重量倍の浸漬液(水温5℃)に3時間浸漬させた。真水で洗浄、水切り後、スチ―ムコンベクション(ホットエアー)で7分間、300℃で加熱した。その間、芯温80℃以上であった。得られた加熱サバについて、以下の基準で食感を評価した。また、下記方法にて歩留を評価した。結果を表6に示す。
(食感評価)
〇:参考例3と同程度の柔らかい食感を持っている。
△:参考例3と比べ、やや劣るが柔らかい食感を持っている。
×:参考例3と比べ、明らかに硬く柔らかい食感を持っていない。
Figure 0006876887
(参考例4,5、実施例21)
表7に記載の浸漬液を調製した。
イカとして未加熱状態で冷蔵されたスルメイカを用いた。イカについて、耳、足及び内臓を除去した胴を縦に半分に切って更に短冊状に切った後、真水で洗浄した。洗浄後のイカを、イカと同重量の浸漬液(水温5℃)に3時間浸漬させた。浸漬状態において、浸漬液はイカの表面全体と接触する状態であった。真水で洗浄、水切り後、90℃以上の沸騰水で2分間ボイルした後、水切りした。得られた加熱イカについて、以下の基準で食感を評価した。また、下記方法にて歩留を評価した。結果を表7に示す。
(食感評価)
〇:参考例4と同程度の柔らかい食感と歯切れの良さを持っている。
△:参考例4と比べ、やや劣るが柔らかい食感と歯切れの良さを持っている。
×:参考例4と比べ、硬く柔らかい食感を持っておらず、歯切れも悪い。
歩留については、イカに対して十分な水切りをした後、その重量を測定し、以下に示す式より浸漬歩留、加熱歩留、総歩留を算出し、イカの浸漬処理効果を評価した。
浸漬歩留(%)=100×浸漬後重量(g)/浸漬前重量(g)
加熱歩留(%)=100×加熱後重量(g)/加熱前重量(g)
総歩留(%)=100×加熱後重量(g)/浸漬前重量(g)
Figure 0006876887
(参考例6,7、実施例22)
表8に記載の浸漬液を調製した。
ホタテとして無加熱で冷凍されたホタテガイ貝柱を用いた。ホタテガイを解凍した後、真水で洗浄した。洗浄後のホタテを、6/10重量倍の浸漬液(水温5℃)に3時間浸漬させた。浸漬状態において、浸漬液はホタテの表面全体と接触する状態であった。真水で洗浄、水切り後、芯温−18℃で凍結し、真空パックして、冷凍保管した。冷凍したホタテを真空パックのまま流水にあて解凍させた後、スチームコンベクション(コンビ水蒸気)で5分間、100℃で加熱した。得られたホタテについて、以下の基準で食感を評価した。また、下記方法にて歩留を評価した。結果を表8に示す。なお、参考例6及び7の食感は同等であった。
(食感評価)
〇:参考例6および参考例7と同程度の柔らかい食感を持っている。
△:参考例6および参考例7と比べ、やや劣るが柔らかい食感と歯切れの 良さを持っている。
×:参考例6および参考例7と比べ、明らかに硬く柔らかい食感を持っていない。
歩留については、浸漬後のホタテに対して十分な水切りをし、加熱後のホタテに対して水気を切り、5分放冷を実施した後、その重量を測定し、以下に示す式より浸漬歩留、加熱歩留、総歩留を算出し、ホタテの浸漬処理効果を評価した。
浸漬歩留(%)=100×浸漬後重量(g)/浸漬前重量(g)
加熱歩留(%)=100×加熱後重量(g)/加熱前重量(g)
総歩留(%)=100×加熱後重量(g)/浸漬前重量(g)
Figure 0006876887
(参考例8、実施例23、24)
浸漬液組成を表9に変更したほかは表6の実施例と同様の手順でサバの浸漬、加熱を行い、歩留を測定した。また得られた加熱サバを以下の基準で評価した。結果を表9に示す。表6と表9とも合わせ、サバは、総歩留が高くなるほど、とろみのある食感となった。
(食感評価)
◎:参考例8よりも柔らかく、ほぐれやすい。
〇:参考例8と同程度の柔らかさとほぐれやすさ。
△:参考例8よりもやや硬くややほぐれにくい。
×:参考例8よりも硬くほぐれにくい。
Figure 0006876887
(参考例9、実施例25〜27)
浸漬液組成を表10に変更したほかは表7の実施例と同様の手順でイカの浸漬、加熱を行い、歩留を測定した。結果を表10に示す。また加熱したイカを健常な成人4人の被験者(男性3名、女性1名、平均年齢42.5歳)に喫食させ、参考例9を基準とした柔らかさ、歯切れについて、以下の基準で評価させた評価点の平均点を合せて表10に示す。
(柔らかさ評価基準)
5点 参考例9よりも柔らかい。
4点 参考例9よりもやや柔らかい。
3点 参考例9と同程度
2点 参考例9よりもやや硬い。
1点 参考例9よりも硬い。
(歯切れ評価基準)
5点 参考例9よりも歯切れがよい。
4点 参考例9よりもやや歯切れがよい。
3点 参考例9と同程度
2点 参考例9よりもやや歯切れが悪い。
1点 参考例9よりも歯切れが悪い。
Figure 0006876887
(参考例10、実施例28、29)
浸漬液組成を表11の記載のものに変更したほかは表8の実施例と同様の手順でホタテの浸漬、加熱を行い、歩留を測定した。結果を表11に示す。また加熱したホタテを健常な成人4人の被験者(男性4名、女性1名、平均年齢42.0歳)に喫食させ、参考例10を基準とした柔らかさ、ほぐれやすさについて、下記の基準で評価させた評価点の平均点を合せて表11に示す。
(柔らかさ評価基準)
5点 参考例10よりも柔らかい。
4点 参考例10よりもやや柔らかい。
3点 参考例10と同程度
2点 参考例10よりもやや硬い。
1点 参考例10よりも硬い。
(ほぐれやすさ評価基準)
5点 参考例10よりもほぐれやすい。
4点 参考例10よりもややほぐれやすい。
3点 参考例10と同程度
2点 参考例10よりもややほぐれにくい。
1点 参考例10よりもほぐれにくい。
Figure 0006876887
表7〜11から判る通り、サバ等の魚類や、イカ、ホタテ等、エビ以外の魚介類についても、本発明の浸漬剤により、炭酸塩浸漬剤と同等又はそれ以上の歩留及び食感を得ることができる。
本発明は、炭酸塩を用いなくても魚介類の歩留及び食感を向上させることができ、取扱の容易な浸漬剤を提供できる。また炭酸塩を用いなくても歩留及び食感が向上した魚介類加工品及びその製造方法を提供できる。

Claims (3)

  1. 貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム及び塩化カリウムを含有する、未加熱魚介類用の浸漬剤であって、
    貝殻焼成カルシウム100質量部に対し、骨焼成カルシウムの量が10質量部以上900質量部以下であり、
    貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムの合計100質量部に対し、塩化カリウムの量が30質量部以上5000質量部以下であり、貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムの合計量が、浸漬剤の固形分中3.0質量%以上50.0質量%以下である、浸漬剤。
  2. 更に塩化ナトリウムを含有する、請求項に記載の浸漬剤。
  3. 貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム、塩化カリウム及び水を含有する浸漬液に未加熱状態の魚介類を浸漬する工程を有する、魚介類加工品の製造方法であって、
    前記の浸漬液が、水100質量部に対し、貝殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム及び塩化カリウムを合計0.35質量部以上17.0質量部以下の量で混合したものであり、貝殻焼成カルシウム100質量部に対し、骨焼成カルシウムの量が10質量部以上900質量部以下であり、
    貝殻焼成カルシウム及び骨焼成カルシウムの合計100質量部に対し、塩化カリウムの量が30質量部以上5000質量部以下である、魚介類加工品の製造方法。
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