JP3751408B2 - 魚介・畜肉類乾燥品の製造方法及び魚介・畜肉類乾燥品 - Google Patents

魚介・畜肉類乾燥品の製造方法及び魚介・畜肉類乾燥品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、魚介・畜肉類を単独で、又はソースもしくは他の食品素材と共に乾燥処理するための方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
即席食品等に使用する魚介・畜肉類乾燥品は、乾燥処理により、復元した際にどうしても食感に変化が生じ、通常の調理品に比べ、弾力感、柔らかさ等の食感が劣るという問題があった。
このような問題を解決するためには、乾燥品の乾燥収縮を少なくし、湯戻りを良くすることが必須の条件であり、予め魚介・畜肉類を前処理する方法が各種提案されている。
このような方法としては、従来から行われているリン酸水溶液に浸漬処理する方法の他に、例えば、特開昭51−101145号公報、特開昭53−86050号公報には、乳糖、ブドウ糖、ソルビトール等の糖類水溶液あるいはクエン酸水溶液に常圧又は加圧下で浸漬処理する方法が、特開昭53−115847号公報には、グルコース食塩復塩水溶液に浸漬後、水切りし乾燥する方法が、特開平7−255425号公報には、缶詰め製造時の熱処理工程で芯温が80〜150 ℃となる温度で加熱処理して得られた缶詰め肉を凍結乾燥する方法が開示されている。
しかしながら、これらの何れの方法も効果の点で十分満足できものではない。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記のような現状に鑑み、乾燥による組織崩壊や収縮を防ぎ、復元時に本来の弾力や柔らかさを備えた魚介・畜肉類乾燥品を得るべく鋭意検討した結果、予め魚介・畜肉類をマグネシウム塩処理することが極めて有効であることを見出し、本発明を完成したものである。
即ち本発明は、湯戻し後に食される魚介・畜肉類乾燥品の製造方法であって、魚介・畜肉類を単独で、又はソースもしくは他の食品素材と共に真空凍結乾燥処理する前に、予め該魚介・畜肉類を乳酸マグネシウム、酢酸マグネシウム及びクエン酸マグネシウムより選ばれる1種又は2種以上を 0.2 20 重量%含有する水溶液に浸漬処理することを特徴とする魚介・畜肉類乾燥品の製造方法、及び
湯戻し後に食される魚介・畜肉類乾燥品の製造方法であって、魚介・畜肉類を単独で、又はソースもしくは他の食品素材と共に真空凍結乾燥処理する前に、予め該魚介・畜肉類を塩化マグネシウム及び/又は硫酸マグネシウムを 0.2 20 重量%含有し、かつ炭素数1〜8の有機酸もしくはその塩(ナトリウム又はカリウム)を 0.5 10 重量%含有する水溶液に浸漬処理することを特徴とする魚介・畜肉類乾燥品の製造方法、及び
上記方法で製造され、マグネシウム塩をマグネシウムとして 0.1 〜5重量%含有し、かつ炭素数1〜8の有機酸もしくはその塩(ナトリウム又はカリウム)を 0.05 〜5重量%含有することを特徴とする魚介・畜肉類乾燥品である。
【0004】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の対象となる魚介類とは、鮭、鰯、タラ、マグロ、カツオ等の魚;ホタテ貝、ハマグリ、アサリ等の貝類;海老、イカ、タコ、カニ等である。
また、本発明の対象となる畜肉類とは、牛、馬、豚、羊、鳥等の一般的な畜肉に限らず、鹿、猪等の獣肉を含む食肉を意味する。
【0005】
本発明では、乾燥処理に先立ち、予め魚介・畜肉類をマグネシウム塩処理することを特徴とする。
本発明で用いられるマグネシウム塩としては、例えば塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム等があり、これらの1種又は2種以上が使用される。
【0006】
マグネシウム塩処理の具体的方法としては、マグネシウム塩の水溶液を用いた浸漬、インジェクション、タンブリング又はスプレー等により行われる。この内、浸漬は簡便で且つ効果が高いので好ましい。
浸漬の場合、マグネシウム塩水溶液の濃度は、0.2 〜20重量%、特に0.5 〜10重量%であることが好ましい。濃度が高過ぎると苦みがでるおそれがあり、濃度が低過ぎると所望の効果が発揮されないおそれがある。尚、マグネシウム塩水和物の場合、水和部分を除いたマグネシウム塩として計算する。
浸漬時間は、浸漬温度が高い程短く、低い程長くなる。浸漬温度が高い場合、例えばボイルする時は、30秒〜5分が好ましく、20℃の場合は10分〜3時間が好ましい。浸漬温度が低い場合、例えば5℃の時は30分〜72時間が好ましい。但し、これらはあくまで目安であって、浸漬濃度や被処理物の大きさにより、浸漬温度や浸漬時間は適宜変更することができる。
インジェクション、タンブリング、スプレー等による方法は常法に従えば良く、又、被処理物の大きさにより、適宜濃度、温度、時間を設定することができる。
【0007】
本発明において、魚介・畜肉類乾燥品中のマグネシウム塩の量は、マグネシウムとして0.1 〜5重量%、好ましくは0.2 〜2重量%である。含有量が0.1 重量%未満では効果が充分に得られず、5重量%を越えると苦みが生ずる傾向がある。特に好ましい範囲は、魚介類の場合、0.3 〜5重量%であり、畜肉類の場合、0.1 〜2重量%である。ここで規定する魚介・畜肉類乾燥品中のマグネシウムの量とは、添加により生じた量であり、魚介・畜肉類自体に本来含まれているマグネシウム量は含まないものとする。
【0008】
尚、本発明では、上記マグネシウム塩水溶液中に、更に無機酸塩(ナトリウム又はカリウム)、または有機酸もしくはその塩(ナトリウム又はカリウム)を配合することが、本発明の効果を向上させる意味から好ましい。
無機酸塩(ナトリウム又はカリウム)としては、食塩、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、メタリン酸塩など、有機酸もしくはその塩(ナトリウム又はカリウム)としては、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウムなどの炭素数1〜8、好ましくは炭素数2〜6の有機酸の塩が挙げられる。炭素数が8を越えるものは分子が大きくなり過ぎて内部まで作用し難くなる傾向がある。特にリン酸塩、ピロリン酸塩、有機酸もしくはその塩が好ましく、更に有機酸もしくはその塩が最も好ましい。これらの使用量は、マグネシウム塩水溶液中、0.5 〜10重量%、特に1〜5重量%程度でよい。
【0009】
又、本発明において、魚介・畜肉類乾燥品中の上記無機酸塩、または有機酸もしくはその塩の量は、0.05〜5重量%、好ましくは0.1 〜2重量%である。含有量が0.05重量%未満では効果が充分に得られず、5重量%を越えると酸味が生ずる傾向がある。
【0010】
上記の如きマグネシウム塩処理された魚介・畜肉類は、単独で、又は各種ソースもしくは他の食品素材と共に乾燥処理される。乾燥処理は常法と同様で良く、真空凍結乾燥、真空乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、マイクロ波乾燥、氷温乾燥より選ばれる1種以上の手法により行えばよい。特に、真空凍結乾燥の前処理に適用した場合、本発明の効果が顕著である。
【0011】
尚、ここでソースとは、水分が主体の調味成分であり、スープ、タレ等も含むものであって、単独でも流動性を有し、具材中で連続相を構成するものである。尚、魚介・畜肉類をソースと共に乾燥処理する場合、ソースに前記マグネシウム塩等を添加しておき、乾燥処理することにより、対象とする魚介・畜肉類にマグネシウム塩等を含有させることもできる。又、他の食品素材とは、併用される野菜類等であり、魚介・畜肉類と他の食品素材を共に使用する場合の例としては、シチュー、カレー等がある。
【0012】
本発明の乾燥食品は、常温流通後、最終消費者により、再加熱後、食される。ここで、再加熱とは、湯戻しが一般的である。
【0013】
【実施例】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されない。尚、マグネシウム量の測定は、常法に従って、原子吸光分析法により行った。
実施例1〜2、比較例1〜2
(比較例1)
ブラックタイガーのカラをむき、沸騰した湯で2分間ボイルした。これを流水で短時間内に冷却した後、トレイに並べ−20〜−40℃に急速凍結し、通常の方法で真空凍結乾燥を行った。
乾燥後(水分5重量%)のブラックタイガー中のマグネシウム量は0.2 重量%であった(ブラックタイガー自体が含有するマグネシウム)。また、クエン酸は検出されなかった。
(比較例2)
ブラックタイガーのカラをむき、2%ピロリン酸ナトリウム水溶液(10℃)に30分間浸漬した後、沸騰した湯で2分間ボイルした。これを流水で短時間内に冷却した後、トレイに並べ−20〜−40℃に急速凍結し、通常の方法で真空凍結乾燥を行った。
乾燥後(水分5重量%)のブラックタイガー中のマグネシウム量は0.2 重量%であった(ブラックタイガー自体が含有するマグネシウム)。また、クエン酸は検出されなかった。
(実施例1)
ブラックタイガーのカラをむき、5%塩化マグネシウム水溶液(10℃)に30分間浸漬した後、沸騰した湯で2分間ボイルした。これを流水で短時間内に冷却した後、トレイに並べ−20〜−40℃に急速凍結し、通常の方法で真空凍結乾燥を行った。
乾燥後(水分5重量%)のブラックタイガー中のマグネシウム量は2重量%であった。また、クエン酸は検出されなかった。
(実施例2)
ブラックタイガーのカラをむき、2%ピロリン酸ナトリウム・2%塩化マグネシウム水溶液(10℃)に30分間浸漬した後、沸騰した湯で2分間ボイルした。これを流水で短時間内に冷却した後、トレイに並べ、通常の方法で熱風乾燥を行った。
乾燥後(水分5重量%)のブラックタイガー中のマグネシウム量は1.5 重量%であった。また、クエン酸は検出されなかった。
【0014】
実施例3〜4、比較例3
(比較例3)
豚ロース薄切り肉(2×3cm程度)をソルビトール5%及びDE7のデキストリンを10%含有する溶液に30分間浸漬した後、沸騰した湯で3分間ボイルした。これを流水で短時間内に冷却した後、トレイに並べ−20〜−40℃に急速凍結し、通常の方法で真空凍結乾燥を行った。
乾燥後(水分5重量%)の豚肉中のマグネシウム量は0.04重量%であった(豚肉自体が含有するマグネシウム)。また、クエン酸は検出されなかった。
(実施例3)
豚ロース薄切り肉(2×3cm程度)を2%塩化マグネシウム・2%クエン酸3ナトリウム水溶液(5℃、pH6.8 )に60分間浸漬した後、沸騰した湯で3分間ボイルした。これを流水で短時間内に冷却した後、トレイに並べ−20〜−40℃に急速凍結し、通常の方法で真空凍結乾燥を行った。
乾燥後(水分5重量%)の豚肉中のマグネシウム量は0.3 重量%であった。また、クエン酸量は0.5 重量%であった。
(実施例4)
豚ロース薄切り肉(2×3cm程度)を5%塩化マグネシウム水溶液(10℃)に30分間浸漬した後、沸騰した湯で2分間ボイルした。これを流水で短時間内に冷却した後、トレイに並べ、通常の方法で減圧乾燥を行った。
乾燥後(水分5重量%)の豚肉中のマグネシウム量は0.5 重量%であった。また、クエン酸は検出されなかった。
実施例5
(実施例5)
鮭を0.5 %乳酸マグネシウム水溶液(5℃)に1時間浸漬した後、沸騰した湯で2分間ボイルした。別にクリームソースを作成し、これと混合した。専用の個食トレイに一食分づつ充填し、−20〜−40℃に急速凍結し、通常の方法で真空凍結乾燥を行った。
乾燥後(水分5重量%)の鮭中のマグネシウム量は0.6 重量%であった。また、クエン酸は検出されなかった。
【0015】
作成した夫々のサンプルを、沸騰した湯で3分間戻した後、5名の専門パネルにより官能評価を行った。結果を表1に示す。評価基準は下記の通りである。
〔弾力感〕
◎;食肉本来の弾力がある
○;やや弾力がある
△;あまり弾力がない
×;全く弾力がない
〔柔らかさ〕
◎;食肉本来の柔らかさがある
○;やや柔らかい
△;やや固い
×;パサついて固い
【0016】
【表1】
Figure 0003751408

Claims (3)

  1. 湯戻し後に食される魚介・畜肉類乾燥品の製造方法であって、魚介・畜肉類を単独で、又はソースもしくは他の食品素材と共に真空凍結乾燥処理する前に、予め該魚介・畜肉類を乳酸マグネシウム、酢酸マグネシウム及びクエン酸マグネシウムより選ばれる1種又は2種以上を 0.2 20 重量%含有する水溶液に浸漬処理することを特徴とする魚介・畜肉類乾燥品の製造方法。
  2. 湯戻し後に食される魚介・畜肉類乾燥品の製造方法であって、魚介・畜肉類を単独で、又はソースもしくは他の食品素材と共に真空凍結乾燥処理する前に、予め該魚介・畜肉類を塩化マグネシウム及び/又は硫酸マグネシウムを 0.2 20 重量%含有し、かつ炭素数1〜8の有機酸もしくはその塩(ナトリウム又はカリウム)を 0.5 10 重量%含有する水溶液に浸漬処理することを特徴とする魚介・畜肉類乾燥品の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造方法で製造され、マグネシウム塩をマグネシウムとして 0.1 〜5重量%含有し、かつ炭素数1〜8の有機酸もしくはその塩(ナトリウム又はカリウム)を 0.05 〜5重量%含有することを特徴とする魚介・畜肉類乾燥品。
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