JP6961388B2 - 畜肉又は魚介類用マスキング剤、畜肉又は魚介類用マスキング組成物、及び畜肉又は魚介類の不快臭のマスキング方法 - Google Patents
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本発明の第1態様に係る畜肉又は魚介類用マスキング剤は、細胞内容物が除去された酵母細胞を有効成分として含有し、前記酵母細胞が、前記細胞内容物が除去された後、酵素及び乳化剤で処理された酵母細胞である。
本発明の一実施形態に係る畜肉又は魚介類用マスキング剤は、細胞内容物が除去された酵母細胞を有効成分として含有する。
畜肉原料全般における不快臭:例えば、畜肉の脂質が酸化されて過酸化脂質となることを主な原因とする酸化臭等
牛肉原料由来の不快臭:例えば、アルデヒド、テルペン類(例えば、ヘキサナール、フィトール等)を主な原因物質とする牧草臭、アルデヒド類(例えば、メチオナール等)を主な原因物質とする牛肉臭等
豚肉原料由来の不快臭:例えば、アルデヒド類(例えば、2−ノネナール等)を主な原因物質とする脂肪臭、脂肪酸類(例えば、3−メチルブタン酸等)を主な原因物質とする豚肉臭等
鶏肉原料由来の不快臭:例えば、アルデヒド類(例えば、2−ノネナール等)を主な原因物質とする脂肪臭、ピリジン類(例えば、2−ペンチルピリジン等)を主な原因物質とする鶏肉臭等
羊肉原料由来の不快臭:例えば、アルデヒド類(例えば、ヘキサナール等)を主な原因物質とする牧草臭、脂肪酸類(例えば、4−メチルオクタン酸等)を主な原因物質とするマトン臭等
動物の臓物原料由来の不快臭:例えば、アルデヒド類(例えば、2,4−ヘプタジエナール等)を主な原因物質とするレバー臭等
魚介類原料全般における不快臭:例えば、トリメチルアミンを主な原因物質とする生臭さ、魚の脂質が酸化されて生じる過酸化脂質を主な原因物質とする酸化臭等。
これに対し、実施例において後述するように、本実施形態の畜肉又は魚介類用マスキング剤は、畜肉又は魚介類の風味を損なわずに、これらの不快臭を低減することができる。
本実施形態の畜肉又は魚介類用マスキング剤は、畜肉及び魚介類の不快臭より強い酵母細胞由来の良好な香りを上乗せする、畜肉及び魚介類の不快臭に酵母細胞由来の臭い物質を合わせて良好な香りとする、又は、不快臭を酵母細胞で包み込む等により、畜肉及び魚介類の不快臭を感じにくくさせることができる。
実施例において後述するように、酵母細胞の添加量が上記範囲内であることにより、効果的に不快臭をマスキングすることができる。
以下に、本実施形態の畜肉又は魚介類用マスキング剤の構成成分について、詳細を説明する。
本実施形態の畜肉又は魚介類用マスキング剤において、酵母細胞としては、酵母の内容物を除去した後(酵母エキスを抽出した後)の酵母細胞(酵母細胞の細胞壁、細胞膜等の酵母の骨格部分)を用いることができる。したがって、従来廃棄されていた、酵母エキスを抽出した後の酵母細胞を有効利用することができる。
本実施形態の畜肉又は魚介類用マスキング剤に用いられる酵母細胞は、風味改善処理が行われたものであってもよい。風味改善処理としては、例えば、プロテアーゼ処理、セルラーゼ処理、ヘミセルラーゼ処理等の酵素処理が挙げられる。
風味改善処理において、上述した、プロテアーゼ、セルラーゼ又はヘミセルラーゼを反応させる工程の前若しくは後の酵母細胞に、乳化剤を添加する工程を更に行ってもよい。乳化剤で酵母細胞を処理することにより、例えば、苦み、渋み、えぐ味等の異味をさらに低減させることができる。
本実施形態の畜肉又は魚介類用マスキング組成物は、上述の畜肉又は魚介類用マスキング剤と塩基性化合物とを含有する。
塩基性化合物としては、食品に添加することが認められている化合物が挙げられ、より具体的には、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
また、本実施形態の畜肉又は魚介類用マスキング組成物は、さらに、本実施形態の効果を損なわない範囲において他の食品添加物を添加することもできる。
本発明の一実施形態に係る畜肉又は魚介類の不快臭のマスキング方法は、畜肉又は魚介類に細胞内容物が除去された酵母細胞を添加する添加工程を備える方法である。
以下に、本実施形態の畜肉及び魚介類の不快臭のマスキング方法の工程について、詳細を説明する。
添加工程としては、例えば、畜肉又は魚介類に前記酵母細胞を含む溶液を浸漬する浸漬工程や、畜肉又は魚介類を挽き、前記酵母細胞を直接混合させる混合工程等が挙げられる。
前記浸漬工程である場合、まず、細胞内容物が除去された酵母細胞を含む溶液を調製する。
酵母細胞としては、上述の畜肉又は魚介類用マスキング剤にて例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、本実施形態の畜肉又は魚介類の不快臭のマスキング方法に用いられる酵母細胞は、酵素又は乳化剤で処理された酵母細胞であることが好ましく、酵素及び乳化剤で処理された酵母細胞であることがより好ましい。
実施例において後述するように、酵母細胞の添加量が上記範囲内であることにより、効果的に不快臭をマスキングすることができる。
浸漬する温度としては、畜肉及び魚介類が傷まない温度であればよく、例えば0℃以上10℃以下であればよく、例えば0℃以上4℃以下であればよい。具体的には、後述の実施例に示すとおり、調製された溶液に畜肉又は魚介類が浸漬された状態で、冷蔵庫等の低温保管庫に貯蔵すればよい。
本発明の一実施形態に係る畜肉又は魚介類の加工食品は、上述の畜肉又は魚介類用マスキング剤を含む。
畜肉の加工食品として具体的には、例えば、焼肉、焼き豚、焼き鳥、ステーキ、ローストビーフ、ハンバーグ、ミートボール、ミートローフ、豚カツ、チキンカツ、から揚げ、メンチカツ、豚の角煮、牛丼の具、親子丼の具、シュウマイの具、餃子の具、肉まんの具、ハム、ソーセージ、コンビーフ、畜肉の佃煮、乾燥肉、レバーパテ、モツ煮込み、畜肉をベースにしたスープ等の畜肉の加工品が挙げられ、これらに限定されない。
魚介類の加工食品として具体的には、例えば、焼き魚、から揚げ、魚フライ、煮魚、かまぼこ、つみれ、ちくわ、はんぺん、魚肉ソーセージ、干物、燻製、塩辛、魚介類の佃煮、魚介類をベースにしたスープ等の魚介類の加工食品等が挙げられ、これらに限定されない。
畜肉又は魚介類用マスキング剤として、酵母細胞1(商品名「モイステックスSTD」、富士食品工業株式会社製)、酵母細胞2(商品名「DYP−SY−02」、富士食品工業株式会社製)及び酵母細胞含有製剤(商品名「魚用ミートテンダライザー」、富士食品工業株式会社製)を用いた。
なお、「モイステックスSTD」は、パン酵母から酵母エキスを抽出した後の酵母細胞をプロテアーゼ及び乳化剤で処理し、さらに加工処理したものである。
また、「DYP−SY−02」は、パン酵母から酵母エキスを抽出した後、酵素処理等を行わずにそのまま乾燥させた酵母細胞である。
また、「魚用ミートテンダライザー」は、炭酸水素ナトリウム66.4部、上記「モイステックスSTD」17質量部、酵母エキス11.6質量部、及び炭酸ナトリウム5質量部を混合したものである。
さらに、対照として、「モイステックスSTD」の製造時に、パン酵母から酵母エキスを抽出後に、酵母細胞を洗浄した際に排出される洗浄液(以下、単に「洗浄液」と称する場合がある。)を用いた。
(1)アジ及びサバの切り身の調理
アジ及びサバの骨取り原料を解凍し、以下の表1に示す配合で酵母細胞を含む溶液に、冷蔵庫内にて18時間浸漬した。
次いで、液切りし、急速凍結して、半凍結の状態で約60g(アジは3等分、サバは2等分)の大きさにカットした。
次いで、完全凍結して、その状態のまま焼成した。焼成条件は、スチームコンベクションを用いて、温度250℃、時間10分、食材の芯温が約80℃となるように設定した。
焼成されたアジ、サバについて、臭いを以下の評価基準に従い、官能評価した。結果を表1に示す。
<不快臭の評価基準>
○:不快臭がない。
×:不快臭がある。
また、試験区2、3、5及び6の酵母細胞1及び酵母細胞含有製剤を用いたアジ及びサバは、柔らかくしっとりした食感であった。
(1)サバの切り身の調理
サバの骨取り原料を解凍し、半解凍の状態で約60g(2等分)の大きさにカットした。次いで、以下の表2に示す配合で酵母細胞を含む溶液に、冷蔵庫内にて一晩浸漬した。次いで、液切りし、真空包装した。次いで、真空包装されたサバを沸騰したお湯に入れて、湯せんで10分間ボイルした。
ボイルされたサバについて、臭いを以下の評価基準に従い、官能評価した。結果を表2に示す。
<臭いの評価基準>
○:不快臭がない。
×:不快臭がある。
(1)サバの切り身の調理
サバの骨取り原料を解凍し、半解凍の状態で約60g(2等分)の大きさにカットした。次いで、以下の表3に示す配合で酵母細胞を含む溶液に、冷蔵庫内にて一晩浸漬した。次いで、液切りし、真空包装した。次いで、真空包装されたサバを沸騰したお湯に入れて、湯せんで10分間ボイルした。
訓練されたパネラー3人にて、ボイルされた直後のサバの臭いを評価した。なお、臭いの評価として、不快臭のうち、特に酸化臭を以下の評価基準に従い、官能評価した。結果を表3に示す。なお、酸化臭とは、魚に含まれる金属イオンにより脂質の酸化が促進されて過酸化脂質となり、この過酸化が分解することで発生する臭いである。
<臭いの評価基準>
○:酸化臭がない。
×:酸化臭がある。
(1)サバの切り身の調理
サバの骨取り原料を解凍し、半解凍の状態で約60g(2等分)の大きさにカットした。次いで、以下の表4に示す配合で酵母細胞を含む溶液に、冷蔵庫内にて一晩浸漬した。次いで、液切りし、真空包装した。次いで、真空包装されたサバを沸騰したお湯に入れて、湯せんで10分間ボイルした。
ボイルされたサバの臭いを以下の評価基準に従い、官能評価した。結果を表4に示す。
<臭いの評価基準>
○:不快臭がない。
×:不快臭がある。
この違いは、酵母細胞1は、乳化剤及び酵素処理を施されていることで、サバの風味を改善する効果を有するため、サバの呈味が強められたためであると推察された。
(1)サケの切り身の調理
サケの骨取り原料を解凍し、半解凍の状態で約60g(2等分)の大きさにカットした。次いで、以下の表5に示す配合で酵母細胞を含む溶液に、冷蔵庫内にて一晩浸漬した。
次いで、液切りし、急速凍結した。次いで、解凍して焼成した。焼成条件は、スチームコンベクションを用いて、温度250℃、時間7分、食材の芯温が約80℃となるように設定した。
焼成されたサケについて、臭いを以下の評価基準に従い、官能評価した。結果を表5に示す。
<不快臭の評価基準>
○:不快臭がない。
×:不快臭がある。
また、試験区1の酵母細胞含有製剤無添加のサケと比較して、試験区2の酵母細胞含有製剤を用いたサケは、パサつきが抑制されて、柔らかい食感であった。また、試験区1と比較して、試験区2では、皮から身を剥がす際の身離れが良好であった。また、試験区1と比較して、試験区2では、焼成後に生成されるカードが減少し、色合いが鮮やかであった。
なお、「カード」とは、サケ等魚に含まれる可溶性タンパク質が加熱処理した際に、凝固して白色の豆腐状になったものを意味する。
(1)牛シマチョウの調理
牛シマチョウ原料を解凍し、約20gずつにカットした。次いで、以下の表6に示す配合で酵母細胞を含む溶液に、2時間タンブリング処理し、さらに冷蔵庫内にて一晩浸漬した。
次いで、液切りし、フライパンにて2分間焼成した。
焼成された牛シマチョウについて、臭いを以下の評価基準に従い、官能評価した。結果を表6に示す。
<不快臭の評価基準>
○:不快臭がない。
×:不快臭がある。
(1)シーズンドポークの調理
シーズンドポークに下記表7に示す配合で塩を添加し、ミキサーで2分間撹拌した。
なお、「シーズンドポーク」とは、アメリカ産豚肉のピクニック(豚のカタの肉、きめがやや粗く、色が他の部位に比べてやや濃い目)等をひき肉状にし、調味したものを意味する。定率関税に分類されるものでは、一片の肉塊が10g未満で、胡椒の含有率が0.3%を超え、且つ、官能検査により適度の味覚を有するものを示す。このとき、胡椒の中に含まれるピペリンの平均含有量5%を基準に判定される。
レンジで温め直したシーズンドポークについて、臭いを以下の評価基準に従い、官能評価した。結果を表7に示す。
<不快臭の評価基準>
◎:不快臭がなく、美味しさを感じる。
○:不快臭がない。
△:不快臭がないが、酵母細胞の臭いを感じる。
×:不快臭がある。
また、食感及び風味については、試験区2〜5では柔らかい食感で、肉の脂の甘みが感じられた。さらに、試験区6では酵母細胞1の添加量が多いため酵母細胞そのものの味が感じられた。総合的な観点から、美味しさとしては、試験区3、4が不快臭を低減しながら、最も食感及び風味が優れていた。
Claims (3)
- 細胞内容物が除去された酵母細胞を有効成分として含有し、
前記酵母細胞が、前記細胞内容物が除去された後、酵素及び乳化剤で処理された酵母細胞である、畜肉又は魚介類用マスキング剤。 - 請求項1に記載の畜肉又は魚介類用マスキング剤と塩基性化合物とを含有する、畜肉又は魚介類用マスキング組成物。
- 畜肉又は魚介類に細胞内容物が除去された酵母細胞を添加する添加工程を備え、
前記酵母細胞が、前記細胞内容物が除去された後、酵素及び乳化剤で処理された酵母細胞であり、
畜肉又は魚介類100質量部あたりの、前記酵母細胞の添加量が、0.1質量部以上5.0質量部未満である、畜肉又は魚介類の不快臭のマスキング方法。
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