JP6746023B1 - 食肉加工品のマスキング剤及びマスキング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】赤色が濃い肉原料を使用する食肉加工品で発生しうる血液様不快臭ならびに血液様不快臭に起因する劣化臭を軽減するマスキング剤及び当該マスキング剤を用いたマスキング方法を提供する。【解決手段】クエン酸三ナトリウムを含有することを特徴とする、全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える食肉加工品の肉原料に由来する血液様不快臭のマスキング剤を提供する。【選択図】図5

Description

本発明は畜肉等を原料とする食肉加工品の血液様不快臭を軽減するマスキング剤、及び当該マスキング剤を用いたマスキング方法に関する。
食品、特に生鮮食品にはそれぞれ特有のにおいがあり、それが食欲をそそるものとなる一方、不快臭となる場合もある。そして、畜肉臭は魚介類のにおいとは全く異なり、また畜肉臭にもいくつかの種類があることが理解される。
例えば、羊肉等にはくせのある特徴的なにおいがあり、また牛肉では飼料に用いる牧草由来のにおいであるグラス臭があることが知られている。更に、長期保存によって、腐敗していない状態でも生じる劣化臭がある。
畜肉臭のマスキングのために、従来様々な工夫がなされており、調理の際に例えばコショウ、ショウガ、ナツメグ等の香辛料、セージ、タイム、ローズマリー等のハーブ等が使用されることが多い。
畜肉臭に対処し得る方法を開示する先行文献として、例えば特許文献1では、梅肉エキス、梅肉ペースト、梅酢、梅干、青梅の塩漬汁及び梅酒からなる群から選ばれたメンバーを有効成分とする肉類の風味改良剤が開示されている。
また、特許文献2では食肉の消臭方法として生の状態の食肉に、粉末もしくは液状のイワシ筋肉由来ペプチドを、食肉の重量に対して0.5〜20%(w/w)添加する方法が示されている。
特許文献3では肉類の不快臭を低減するための肉臭改善剤であって、ヒマワリ種子抽出物、γ-アミノ酪酸、テアニン、ルチン及びルチン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分、並びに、ヘスぺリジン及びヘスぺリジン誘導体の少なくとも一方を含有する肉臭改善剤が示されている。
特許文献4では、肉類の不快臭を低減化するための肉臭改善剤であって、甘蔗由来のエキスと、ヒマワリ種子抽出物、γ-アミノ酪酸、テアニン、ルチン、ルチン誘導体、ヘスぺリジン及びヘスぺリジン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分と、を含有する肉臭改善剤が示されている。
特許文献5では、畜肉臭のマスキング剤としてグリセリンを有効成分として含有する風味改善剤が示されている。
特許文献6では、畜肉臭のマスキングが可能な剤としてエタノールアミンを有効成分として含有するマスキング剤が示されている。
特許文献7では、細胞内容物が除去された酵母細胞を有効成分として含有する畜肉用マスキング剤が示されている。
特公昭56-43217号公報 特開平6-7118号公報 特許第4643526号 特許第4295301号 特許第6553409号 特開2016-220555号公報 特開2018-191619号公報
ステーキまたは焼肉等用の調味肉、ローストビーフ、ハンバーグなど、赤色が濃い肉原料を使用する食肉加工品では、本来的に血液様の風味を有し、これが該食肉加工品の風味に欠かせない重要な役割を果たす一方、その風味の強度が適度の範囲を超えるとそれ自体が肉独特の生臭さといった不快臭として感じられる他、該食肉加工品の鮮度の低下に伴い血液様不快臭に起因する劣化臭が増大する。
上記の血液様不快臭は、調味や調理等の工夫によってある程度抑えることができるが、経時的に増大するという特徴を有するため、従来報告されたマスキング方法、あるいは風味改良では不十分であった。
本発明者等は上述した現状に鑑み、ステーキまたは焼肉等用の調味肉、ローストビーフ、ハンバーグなど、赤色が濃い肉原料を使用する食肉加工品で発生しうる血液様不快臭ならびにこれに起因する劣化臭を軽減するマスキング剤及び当該マスキング剤を用いたマスキング方法を提供することを目的とする。
上記の通り、特に赤色が濃い肉原料を使用する食肉加工品において発生しうる血液様不快臭、ならびに血液様不快臭に起因する劣化臭を軽減するマスキング方法を検討した結果、原料肉の調味段階、又はその前後の段階で、特定の化合物を添加することで、良好な効果が得られることが見出され、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は以下を提供するものである。
1. クエン酸三ナトリウムを含有することを特徴とする、全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える食肉加工品の肉原料に由来する血液様不快臭のマスキング剤。
2. クエン酸三ナトリウムを全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える食肉加工品の肉原料に対して0.5〜3.0重量%の範囲の量で添加する、上記1に記載のマスキング剤。
3. 肉原料を調味する工程において、又は該調味する工程の前若しくは後の工程において肉原料に添加する、上記1又は2に記載のマスキング剤。
4. 更にトレハロース及び/又はグリシンを含有する、上記1〜3のいずれかに記載のマスキング剤。
5. トレハロース及び/又はグリシンの含有量がクエン酸三ナトリウムの量に対して30〜50重量%、例えば40重量%である、上記4に記載のマスキング剤。
6. 食肉加工品が、加熱工程を経て製造されるか、又は加熱工程を経ずに製造される、上記1〜5のいずれかに記載のマスキング剤。
7. 全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える食肉加工品の肉原料に由来する血液様不快臭のマスキング方法であって、該食肉加工品の製造工程において、該肉原料に請求項1〜6のいずれかに記載のマスキング剤を添加する工程を含む、上記方法。
本発明により、全ヘム色素量が0.2重量%を超える食肉加工品の血液様不快臭に対して、顕著なマスキング効果が得られ、かつ、その効果が持続して血液様不快臭に起因する劣化臭の増大を抑制することができる。
牛肉原料にクエン酸三ナトリウム(C)、トレハロース(T)、グリシン(G)をそれぞれ単独、あるいは組み合わせて添加して製造したローストビーフの検食による官能評価結果を示す。 牛肉原料にクエン酸三ナトリウム(C)、トレハロース(T)、グリシン(G)をそれぞれ単独、あるいは組み合わせて添加して製造したローストビーフをにおい識別装置(FF-2020Sシステム、島津製作所)で分析し、各サンプルについて測定されたエステル系臭気寄与度と同類似度とを相乗した値の結果を示す。 牛肉原料にクエン酸三ナトリウム、トレハロース及び/又はグリシンを組み合わせて添加して製造したハンバーグの検食による官能評価結果を示す。 牛肉原料にクエン酸三ナトリウム、トレハロース及び/又はグリシンを組み合わせて添加して製造したハンバーグをにおい識別装置で分析し、各サンプルについて測定されたエステル系臭気寄与度と同類似度とを相乗した値の結果を示す。 牛肉原料に対して0.75重量%のクエン酸三ナトリウム、0.3重量%トレハロース、及び0.3重量%グリシンを組み合わせて添加した牛調味肉を1〜3日保蔵した後加熱し、検食した官能評価結果を示す。 牛肉原料に対して0.75重量%のクエン酸三ナトリウム、0.3重量%トレハロース、及び0.3重量%グリシンを組み合わせて添加した牛調味肉を1〜3日保蔵した後加熱し、におい識別装置で分析し、各サンプルについて測定されたエステル系臭気寄与度と同類似度とを相乗した値の結果を示す。
<マスキング剤>
上記の通り、特に赤色が濃い畜肉において、血液様不快臭が生じることが知られている。ここで、「血液様不快臭」とは、血液を想起させる不快な風味であって、例えば鉄臭い、血なまぐさいといった風味を包含する。血液様不快臭は、赤色が濃い原料ほど強く、さらにその血液様の臭気に起因する劣化臭も赤色が濃い原料ほど発生しやすいことがわかっている。この赤色が強い原料では、血液由来のヘモグロビンや筋肉色素であるミオグロビンといったヘム色素の含量が多いことが知られている。
原料中のヘモグロビンやミオグロビンの量は全ヘム色素分析により定量が可能である。具体的には、0.7%塩酸-75%アセトンで原料から抽出された溶液の383 nmの吸光度に0.1688を乗じることでヘム色素の含有量(重量%)を求めることができる。この全ヘム色素量はミオグロビン当量で示される。
牛肉、羊肉、馬肉は特に血液様不快臭を生じやすく、品種や部位によって数値の変動はあるが、これらの肉原料の全ヘム色素量は概ね0.2重量%を超える。一方、例えば豚肉における全ヘム色素量はより低い値となっている(和賀,「塩漬食肉製品の色調安定性に係る諸因子の研究」(麻布大学)2017)。全ヘム色素量は、ドリップの流出等がなければ、肉原料の加熱前後で変化しない数値である。
食肉加工品の血液様不快臭は、例えば官能評価によって確認することができる。血液様不快臭は特にレトロネーザルな臭気として感じることができ、訓練されたパネルによる官能評価で判別することができる。
血液様不快臭はまた、におい識別装置(例えばFF-2020Sシステム、島津製作所)を使用して数値化して比較することもできる。
本発明者等は、血液様不快臭は、このにおい識別装置で測定されるエステル系の臭気寄与度と同類似度との相乗値と相関が高く、血液様不快臭の数値化に用いることができることを見出した。尚、上記した通り、食肉加工品の種類によってそれぞれ好ましいとされる特有の風味があり、血液様の風味が必ずしも負の評価とはならないことが理解される。官能評価においては対象となる食肉加工品として好ましいか否かといった観点から評価されるのに対して、におい識別装置では、血液様の臭気不快臭のみに焦点を当てた客観的な数値を得ることができるが、これは必ずしも血液様の風味と識別されるものではない。
本発明者等はこの全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える牛肉原料に対して種々の添加剤を用いて鋭意検討を加えた結果、クエン酸三ナトリウムを適量加えることによって血液様不快臭がマスキングされることを見出した。
すなわち本発明は、クエン酸三ナトリウムを含有することを特徴とする、全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える食肉加工品の肉原料に由来する血液様不快臭のマスキング剤を提供する。マスキング剤は、全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える食肉加工品の肉原料に対して0.5〜3.0重量%の範囲の量でクエン酸三ナトリウムを添加することが好適である。
本発明のマスキング剤を添加することが意図される食肉加工品は、全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える食肉加工品であって、肉原料のみから加工されるもの(例えばステーキ、ローストビーフ等)であっても良く、あるいは肉原料を一部に用いるもの(例えばハンバーグ等)であっても良い。食肉加工品に含まれる全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える場合に、血液様不快臭の発生が問題となり得る。食肉加工品が、加熱工程を経て製造されるものであっても良く、又は加熱工程を経ずに製造されるものであっても良い。
本発明のマスキング剤は、クエン酸三ナトリウムからなるものとしても良く、あるいはクエン酸三ナトリウムを他の添加物と共に含有する混合物の形態であっても良い。例えば本発明のマスキング剤は、食肉加工品への添加のために好適に使用できるように、クエン酸三ナトリウムを含有する溶液、例えば水溶液の形態、あるいは調味料等の他の添加物と共に含有する水溶液若しくはエマルジョンの形態であっても良い。
上記の水溶液もしくはエマルジョンにおけるクエン酸三ナトリウムの濃度は特に限定するものでなく、全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える食肉加工品の肉原料に対して0.5〜3.0重量%の範囲の量でクエン酸三ナトリウムを添加することが可能であれば良い。
本発明者等はさらに、クエン酸三ナトリウムに対しグリシン及び/又はトレハロースを組み合わせることで血液様不快臭のマスキング効果がさらに高まることを見出した。従って、本発明のマスキング剤は更に、クエン酸三ナトリウムに加えてトレハロース及び/又はグリシンを含有するものであり得る。クエン酸三ナトリウム、グリシン及びトレハロースはいずれも食品に対する添加剤として従来より使用されているが、血液様不快臭のマスキング剤としての効果については知られていなかった。
クエン酸三ナトリウムをグリシン及び/又はトレハロースと組み合わせて用いる場合、全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える肉原料に対して0.25〜3.0重量%のクエン酸三ナトリウムをグリシン及び/又はトレハロースと組み合わせて添加することができる。上記の範囲において、血液様不快臭に対する良好なマスキング効果が得られる。
マスキング剤におけるトレハロース及び/又はグリシンの含有量は、限定するものではないが、全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える食肉加工品の肉原料に対してそれぞれ0.1〜1.5重量%の範囲の量であれば良く、クエン酸三ナトリウムの量に対して30〜50重量%、例えば40重量%の量とすることができる。
本発明のマスキング剤は、食肉加工品の加工工程に通常用いられる方法で、例えば原料肉の表面に塗布するか、あるいは水溶液にして原料肉を浸漬するか、また、インジェクションによって原料肉中に注入することができる。化合物の添加は、上記の調味料と別個に行うこともでき、その場合、マスキング剤の添加は調味料による調味の前であっても、調味の後であっても良い。しかしながら、工程の簡略化等を考慮すれば、マスキング剤の添加は調味工程において同時に行うことが好適である。
本発明のマスキング剤は、肉原料を調味する工程において、又は該調味する工程の前若しくは後の工程において肉原料に添加することができる。
食品加工品は、そのまま食することが可能な最終製品として消費者に提供することができ、また、焼肉用など、加熱されることを前提とした調味済みの肉として消費者に提供することもできる。
本発明のマスキング剤は、血液様不快臭をマスキングすることから、その添加によって食肉加工品本来の風味を際立たせ、消費者にとってより好ましい食肉加工品を提供することができる。
<マスキング方法>
本発明は、全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える食肉加工品における肉原料由来の血液様不快臭のマスキング方法であって、該肉原料に対し、クエン酸三ナトリウム、あるいは、クエン酸三ナトリウムにグリシン及び/又はトレハロースを組み合わせてマスキング剤として添加することを特徴とする、上記マスキング方法を提供する。
上記マスキング方法は血液様不快臭に対処する発明であるから、上記マスキング方法によって加工される原料は、ヘム色素が豊富な食肉であって、食用に供される獣鳥の生肉(骨および内蔵を含む)であって良い。本発明において、例えば全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える場合にヘム色素が豊富な食肉であると言う。
上記の通り、化合物は、クエン酸三ナトリウムを含む2種以上の組み合わせであっても良い。具体的には、クエン酸三ナトリウム、及びグリシン;又はクエン酸三ナトリウム、及びトレハロースを含むものであり得る。
また、化合物は、クエン酸三ナトリウムを含む3種の組み合わせであっても良く、具体的には、クエン酸三ナトリウム、グリシン、及びトレハロースを含むものであり得る。
本発明の方法によって製造された食肉加工品は、極めて血液様不快臭が少ない好ましい風味を有し、かつ、血液様不快臭に起因する劣化臭の経時的な増大を抑制することができる。
本発明の方法によって処理された食肉加工品では、におい識別装置(例えばFF-2020Sシステム、島津製作所)で測定した場合、エステル系の臭気寄与度と同類似度との相乗値が無処理の対照品よりも10〜30%低値を示し、血液臭が低減されていることが示された。
以下、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1 組み合わせ試験による効果の確認]
クエン酸三ナトリウム、トレハロース、及び/又はグリシンを含むサンプル溶液を、牛塊肉原料(全ヘム色素量:0.48重量%)に対して10重量%の割合でインジェクションして加え、翌日加熱してローストビーフを製造した。各試験区中の添加物は表1に示す通りであり、表中の%は牛肉原料の重量に対する重量%を表している。尚、加熱条件は特定加熱食肉製品の規格基準で定められた方法のうち、57℃43分以上とした。
このローストビーフを検食による官能評価ならびににおい識別装置FF-2020S(島津製作所)での測定に供した。なお、血液様不快臭は時間が経つほどに増大する傾向があるので、スライス直後ではなく、スライス後、4℃で中3日保管し、4日後に各試験に供した。
Figure 0006746023
官能評価は訓練されたパネル3名でブラインドで行った。評価基準は表2の通りとし、各パネルの評点の平均値を算出した。評点が高い程良好な結果を示す。
Figure 0006746023
官能評価の結果を図1に示す。クエン酸三ナトリウムを単独添加した試験区(C)、クエン酸三ナトリウムにトレハロースを組み合わせた試験区(C+T)、クエン酸三ナトリウムにグリシンを組み合わせた試験区(C+G)、クエン酸三ナトリウムにトレハロースとグリシンを組み合わせた試験区(C+T+G)で、添加物を使用しない対照(NC)に対し有意に好ましい評価結果が得られた。
におい識別装置FF-2020は島津製作所が製造・販売している分析機器で、人間の官能評価と同じように、においの「質」と「強さ」を表現できる。今回、血液様不快臭とそれに起因する劣化臭との相関が高かったエステル系臭気寄与度と類似度との相乗値を指標として評価した。血液様不快臭が高いほど、当該指標値は高い値を示す。
におい識別装置に供するために、官能評価に用いたのと同じ検体5.0 gを秤量し、2リットル容の専用の袋に入れ、袋の上から磨砕した。その後当該専用袋に窒素を2リットル充填し、25℃で1時間静置する。この操作の後、新しい専用袋にヘッドスペースのガスを移し、これをサンプルとして装置分析に供した。
各サンプルについてにおい識別装置で測定したエステル系臭気寄与度と類似度との相乗値を算出した結果を図2に示す。クエン酸三ナトリウムを単独添加した試験区(C)、クエン酸三ナトリウムにトレハロースを組み合わせた試験区(C+T)、クエン酸三ナトリウムにグリシンを組み合わせた試験区(C+G)、クエン酸三ナトリウムにトレハロースとグリシンを組み合わせた試験区(C+T+G)で、添加物を使用しない対照(NC)に対し低い値を示した。
上記の結果から、クエン酸三ナトリウムを単独で添加するか、クエン酸三ナトリウムにトレハロース及び/又はグリシンを組み合わせて添加することで、ローストビーフの血液様不快臭をマスキングできることが示された。
[実施例2 有効濃度範囲に関する検討]
実施例1において、クエン酸三ナトリウムにトレハロース及び/又はグリシンを組み合わせることでクエン酸三ナトリウムを単独で添加するよりもさらに血液様不快臭のマスキング効果が高くなる可能性が示されたことから、濃度を低くした場合にもその効果が得られるか確認することとした。
牛肉ミンチ(全ヘム色素量:0.31重量%)に対し各添加物を加えてハンバーグを製造した。試験区は表3に示す通りである。表中の%は牛肉原料の重量に対する重量%を表している。加熱方法は蒸煮とし、73℃達温とした。なお、ハンバーグネタは整形後、1℃冷蔵庫で静置し、3日後に加熱した。ハンバーグは冷却後、常温にて官能評価ならびににおい識別装置での評価を実施例1と同様にして行った。
Figure 0006746023
官能評価結果を図3に示す。添加物濃度を下げるほど、評点は低下したが、今回設定した最低濃度であっても添加物を使用しない対照(NC)と比較して高い評点であった。
また、におい識別装置の分析結果を図4に示す。官能評価結果と同様、いずれの試験区であってもエステル系臭気寄与度と同類似度との相乗値はNCよりも低かった。
上記の結果より、いずれの試験区でも血液様不快臭を抑制することができたと言え、例えば、クエン酸三ナトリウム0.25重量%にトレハロース0.1重量%及び/又はグリシン0.1重量%を組み合わせて添加することで食肉加工品の血液様不快臭を低減できることが示された。
[実施例3 経時的に増大する不快臭の軽減効果の確認]
厚さ約5 mmにスライスした牛肉(全ヘム色素量:0.31重量%)に下記に示す組成の調味液をまぶし、凍結した。この凍結した調味肉を試験日の−2日(d3)、−1日(d2)、当日(d1)に解凍し、160℃で3分30秒焼成した。この加熱肉は常温まで放冷した後、実施例1と同様に官能評価ならびににおい識別装置での評価に供した。
サンプル
NC:d1、d2、d3
PC:d1、d2、d3
※PC=クエン酸三Na 0.75重量%+トレハロース0.3重量%、グリシン0.3重量%、食塩1.0重量%、加液10重量%
※NC=食塩1.0重量%、加液重量10%
官能評価結果を図5に示す。添加物を使用しない対照(NC)は経日で評点が下がっていったのに対し、クエン酸三ナトリウム、トレハロース及びグリシンを添加したサンプル(PC)では初日からNCよりも高い評点であっただけでなく、経日での劣化も見られなかった。
におい識別装置での分析結果を図6に示す。NCでは経日でやや指標値での増加が見られた。一方、PCでは初日からNCよりも低値を示し、さらにその値が継続した。
従来、畜肉臭に対して用いられたマスキング剤はその風味を一時的に軽減することはできたが、血液様不快臭のように経時的に増大する不快臭を軽減することは難しかった。
本発明は、ヘム色素が豊富な食肉加工品の血液様不快臭を低減し、良好な風味とするためのマスキング剤及びマスキング方法を提供するものであり、消費者にとってより好ましい風味を有する食肉加工品を提供することができる。さらに、経時的に増大する不快臭を軽減することで、商品寿命を延伸し、フードロス削減にも貢献することができる。

Claims (6)

  1. クエン酸三ナトリウムを含有することを特徴とする、全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える牛肉加工品の肉原料に由来する血液様不快臭のマスキング剤であって、クエン酸三ナトリウムの添加量を該肉原料に対して0.5〜3.0重量%の範囲の量で添加する、上記マスキング剤
  2. 肉原料を調味する工程において、又は該調味する工程の前若しくは後の工程において肉原料に添加する、請求項に記載のマスキング剤。
  3. 更にトレハロース及び/又はグリシンを含有する、請求項1又は2に記載のマスキング剤。
  4. トレハロース及び/又はグリシンの含有量がクエン酸三ナトリウムの量に対して30〜50重量%である、請求項に記載のマスキング剤。
  5. 牛肉加工品が、加熱工程を経て製造されるか、又は加熱工程を経ずに製造される、請求項1〜のいずれか1項に記載のマスキング剤。
  6. 全ヘム色素量がミオグロビン当量で0.2重量%を超える牛肉加工品の肉原料に由来する血液様不快臭のマスキング方法であって、該食肉加工品の製造工程において、該肉原料に請求項1〜のいずれか1項に記載のマスキング剤を添加する工程を含む、上記方法。
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