JP6874426B2 - モールドの製造方法、物品の製造方法及び物品 - Google Patents
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Description
また、本発明は、得られる物品の反射防止性能、防眩性に優れる物品の製造方法を提供することにある。
更に、本発明は、反射防止性能、防眩性に優れる物品を提供することにある。
[1]下記工程(a)〜工程(f)を順次含み、下記工程(a)〜工程(f)における処理液を、複数の酸を混合した同種の液体とし、細孔である第1の凹部、及び前記細孔より大きいサイズの第2の凹部を形成するモールドの製造方法。
工程(a):処理液中にアルミニウム基材を浸漬する工程。
工程(b):アルミニウム基材を定電圧で陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する第1の酸化皮膜形成工程。
工程(c):酸化皮膜の一部を除去し、残存する酸化皮膜の下部に前記第2の凹部を形成する酸化皮膜除去工程。
工程(d):アルミニウム基材を定電圧で陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する第2の酸化皮膜形成工程。
工程(e):酸化皮膜の一部を除去して細孔の孔径を拡大処理する孔径拡大処理工程。
工程(f):前記工程(d)と前記工程(e)とを交互に繰り返す工程。
[2]複数の酸が、シュウ酸及びリン酸を含む、[1]に記載のモールドの製造方法。
[3][1]または[2]に記載の製造方法で得られたモールドの表面に形成された複数の細孔及び前記第2の凹部からなる微細凹凸構造を、物品の表面に転写する、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。
また、本発明の物品の製造方法は、得られる物品の反射防止性能、防眩性に優れる。
更に、本発明の物品は、反射防止性能、防眩性に優れる。
本発明のモールドの製造方法は、下記工程(a)〜工程(f)を順次含み、下記工程(a)〜工程(f)における処理液を同種の液体とする。
工程(a):処理液中にアルミニウム基材を浸漬する工程。
工程(b):アルミニウム基材を陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する第1の酸化皮膜形成工程。
工程(c):酸化皮膜の一部を除去する酸化皮膜除去工程。
工程(d):アルミニウム基材を定電圧で陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する第2の酸化皮膜形成工程。
工程(e):酸化皮膜の一部を除去して細孔の孔径を拡大処理する孔径拡大処理工程。
工程(f):前記工程(d)と前記工程(e)とを交互に繰り返す工程。
処理液は、工程(a)〜工程(f)の各工程の目的を達成するものであれば限定されない。処理液は、工程(a)〜工程(f)の各工程の目的を達成することから、複数の酸が好ましく、酸化皮膜の形成に寄与する酸(以下、「第1の酸」ということがある)と、酸化皮膜を溶解、即ち、酸化皮膜に形成された細孔を拡大するエッチングに有用な酸(以下、「第2の酸」ということがある)とを組み合わせたものが好ましい。
工程(c)における処理液の目的は、酸化皮膜の一部を除去することである。
工程(d)における処理液の目的は、陽極酸化により細孔を有する酸化皮膜を形成することである。
工程(e)における処理液の目的は、酸化皮膜の一部を除去し、酸化皮膜に形成された細孔を拡大することである。
工程(f)における処理液の目的は、工程(d)と工程(e)と同様である。
第1の酸としては、例えば、シュウ酸、硫酸等が挙げられる。
第2の酸としては、例えば、リン酸等が挙げられる。
複数の酸の組成と温度は、陽極酸化時の細孔の深化とエッチング時の細孔径の拡大速度に影響を与える。第2の酸の濃度を高くしたり、処理液の温度を高くしたりすると、エッチング時の細孔径の拡大速度が速くなり、短時間で細孔を拡大することができる。一方、細孔径の拡大速度が速くなる分、細孔径の制御が困難となる。したがって、アルミニウム基材の表面に、所望の形状、所望の細孔径を有する細孔を形成させるためには、複数の酸の組成と温度を制御することが重要である。
第1の酸がシュウ酸であり、第2の酸がリン酸であり、陽極酸化時の処理液の温度が4℃以上20℃未満の場合、処理液中のリン酸の濃度は、0.05mol/l〜3mol/lが好ましく、0.1mol/l〜2mol/lがより好ましい。処理液中のリン酸の濃度が0.05mol/l以上であると、酸化皮膜の溶解が十分速く、モールドの生産性に優れる。また、処理液中のリン酸の濃度が3mol/l以下であると、酸化皮膜の除去速度と細孔径の拡大速度とを制御しやすい。
第1の酸がシュウ酸であり、第2の酸がリン酸であり、陽極酸化時の処理液の温度が20℃以上35℃未満の場合、処理液中のリン酸の濃度は、0.02mol/l〜2.5mol/lが好ましく、0.05mol/l〜1.5mol/lがより好ましい。処理液中のリン酸の濃度が0.02mol/l以上であると、酸化皮膜の溶解が十分速く、モールドの生産性に優れる。また、処理液中のリン酸の濃度が2.5mol/l以下であると、酸化皮膜の除去速度と細孔径の拡大速度とを制御しやすい。
第1の酸が硫酸であり、第2の酸がリン酸であり、陽極酸化時の処理液の温度が30℃以下の場合、処理液中のリン酸の濃度は、0.02mol/l〜3mol/lが好ましい。処理液中のリン酸の濃度が0.02mol/l以上であると、酸化皮膜の溶解が十分速く、モールドの生産性に優れる。また、処理液中のリン酸の濃度が3mol/l以下であると、酸化皮膜の除去速度と細孔径の拡大速度とを制御しやすい。
ここで、同種の液体を用いるとは、例えば、シュウ酸とリン酸とを混合したものを処理液として用いる場合、工程(a)〜工程(f)のいずれの工程においても、シュウ酸とリン酸とを混合したものを処理液として用いることをいう。
工程(a)は、処理液中にアルミニウム基材を浸漬する工程である。
研磨方法としては、例えば、機械研磨、化学研磨、化学機械研磨、羽布研磨、電解研磨等が挙げられる。これらの研磨方法は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの研磨方法の中でも、加工後の平滑性に優れることから、機械研磨、化学機械研磨が好ましく、化学機械研磨がより好ましい。
工程(b)は、アルミニウム基材を陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する第1の酸化皮膜形成工程である。即ち、工程(b)は、処理液中でアルミニウム基材の陽極酸化を行う工程である。アルミニウム基材の表面の一部又は全部を処理液に浸漬して陽極酸化を行うことによって、処理液に浸漬した部分に酸化皮膜を形成することができる。
酸化皮膜の厚さは、電解放出型走査電子顕微鏡等で観察することができる。
ここで、最高電圧とは、工程(b)における電圧の最高値を意味し、工程(b)の終了時の電圧と一致する。
工程(c)は、酸化皮膜の一部を除去する酸化皮膜除去工程である。酸化皮膜の一部を除去するためには、アルミニウム基材に電圧を実質的に印加せず、アルミニウム基材を処理液に浸漬したまま保持すればよい。工程(b)の後に電圧の印加を中断して、同じ反応槽中で、複数の酸を混合した処理液にアルミニウム基材を保持することで、工程(b)で形成された酸化皮膜の一部を溶解、除去することができる。
本発明において、「電圧を実質的に印加しない」とは、アルミニウム基材に印加する電圧を0Vとすることだけでなく、アルミニウム基材に電流が流れず酸化皮膜の形成が進まない程度まで電圧を低下させることを含む。
工程(b)において形成された酸化皮膜を溶解、除去することにより、酸化皮膜底部にピンホールが形成され、アルミニウム基材と処理液が接触し、アルミニウムを溶解し始め、細孔より大きいサイズの第2の凹部が形成される。このとき、処理液の酸化皮膜の溶解速度がアルミニウム基材の溶解速度より大きい場合、酸化皮膜がすべて除去される前に、第2の凹部が形成される。
工程(d)は、アルミニウム基材を定電圧で陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する第2の酸化皮膜形成工程である。即ち、工程(d)は、処理液中でアルミニウム基材の陽極酸化を行う工程である。アルミニウム基材の表面の一部又は全部を処理液に浸漬して陽極酸化を行うことによって、処理液に浸漬した部分に酸化皮膜を形成することができる。
酸化皮膜の厚さは、電解放出型走査電子顕微鏡等で観察することができる。
ここで、最高電圧とは、工程(d)における電圧の最高値を意味し、工程(d)の終了時の電圧と一致する。
工程(e)は、酸化皮膜の一部を除去して細孔の孔径を拡大処理する孔径拡大処理工程である。酸化皮膜の一部を除去して細孔の孔径を拡大処理するためには、アルミニウム基材に電圧を実質的に印加せず、アルミニウム基材を処理液に浸漬したまま保持すればよい。工程(d)の後に電圧の印加を中断して、同じ反応槽中で、複数の酸を混合した処理液にアルミニウム基材を保持することで、工程(d)で形成された酸化皮膜の一部を溶解、除去し、細孔の孔径を拡大することができる。
処理液中の第2の酸の濃度が0.05mol/l以上0.5mol/l未満で、工程(e)における保持温度が20℃以上35℃未満の場合、工程(e)における保持時間は、30分〜180分が好ましく、45分〜160分が好ましい。工程(e)における保持時間が30分以上であると、細孔をテーパー形状とすることができる。また、工程(e)における保持時間が180分以下であると、モールドの生産性に優れる。
処理液中の第2の酸の濃度が0.5mol/l以上で、工程(e)における保持温度が20℃以上35℃未満の場合、工程(e)における保持時間は、5分〜120分が好ましく、10分〜100分が好ましい。工程(e)における保持時間が5分以上であると、細孔をテーパー形状とすることができる。また、工程(e)における保持時間が120分以下であると、モールドの生産性に優れる。
工程(f)は、工程(d)と工程(e)とを交互に繰り返す工程である。
工程(f)の最後は、細孔の孔径が連続的に変化するテーパー形状を形成することができ、得られる微細凹凸構造を表面に有する物品の反射防止性能に優れることから、工程(d)の細孔径拡大処理で終わることが好ましい。
図1は、本発明のモールドの製造方法における工程の一例を示す模式的断面図である。以下、図1を用いて本発明のモールドの製造方法を具体的に説明するが、本発明のモールドの製造方法は、図1に示す工程に限定されるものではない。
次に、処理液に浸漬させたまま、細孔発生点16が形成されたアルミニウム基材10に電圧を印加する(工程(d))。これにより、図1(C)に示すように、アルミニウム基材10が陽極酸化されて、複数の細孔12を有する酸化皮膜14が再び形成される。そして、アルミニウム基材10への電圧の印加を中断し、処理液に浸漬させたままアルミニウム基材10を保持する(工程(e))。これにより、図1(D)に示すように、形成された酸化皮膜14の一部が除去されて、細孔12の孔径が拡大する。
その後、処理液に浸漬させたまま、電圧を印加する工程(d)と、電圧の印加を中断して保持する工程(e)とを交互に繰り返す(工程(f))。これにより、図1(E)に示すように、細孔12の形状を開口部から深さ方向に孔径が連続的に収縮するテーパー形状とすることができる。その結果、周期的な複数の細孔12からなる酸化皮膜14がアルミニウム基材10の表面に形成されたモールド18を得ることができる。
このように、工程(a)〜工程(f)の各工程で同種の処理液を用いるので、アルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成する陽極酸化工程、酸化皮膜の一部を除去する酸化皮膜除去工程、酸化皮膜に形成された細孔を拡大するエッチング工程のすべて工程を、1つの反応槽中で行うことができ、製造設備が簡略化されると共に、モールドの生産性に優れる。
細孔(第1の凹部)の形状としては、例えば、略円錐形状、角錐形状、釣鐘形状、円柱形状等が挙げられる。これらの細孔の形状の中でも、得られる微細凹凸構造を表面に有する物品の反射防止性能に優れることから、円錐形状、角錐形状、釣鐘形状等のように、深さ方向と直交する方向の細孔断面積が最表面から深さ方向に連続的に減少する形状が好ましく、円錐形状、角錐形状、釣鐘形状がより好ましい。
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、物品の生産性に優れることから、本発明のモールドの製造方法で得られたモールドの表面に硬化性組成物を供給し、硬化性組成物を硬化させて物品を得る方法が好ましい。具体的には、物品の生産性に優れることから、本発明のモールドの製造方法で得られたモールドの表面に硬化性組成物を、モールドと基材との間に挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて物品を得る方法が好ましい。
基材の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン、メチルメタクリレート−スチレン共重合体等のスチレン樹脂;セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルスルフォン樹脂;ポリスルフォン樹脂;ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、脂環式ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリウレタン樹脂;ガラス等が挙げられる。これらの基材の材料の中でも、光透過性、取り扱い性に優れることから、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂がより好ましい。
硬化性組成物は、物品の生産性に優れることから、活性エネルギー線により硬化する組成物が好ましい。
活性エネルギー線としては、例えば、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等が挙げられる。これらの活性エネルギー線の中でも、硬化性組成物の硬化性に優れることから、紫外線、電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
重合性化合物としては、例えば、分子中にラジカル重合性結合及びカチオン重合性結合の少なくとも1種を含むモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。これらの重合性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリル、メタクリル又はその両方をいう。
硬化性組成物の硬化の際に光硬化反応を用いる場合、重合開始剤として光重合開始剤を用いるとよい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの光重合開始剤の中でも、硬化性組成物の硬化性に優れることから、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが好ましく、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドがより好ましい。
熱重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;前記有機過酸化物にN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等のアミンを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。これらの熱重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの熱重合開始剤の中でも、反応温度が適度であることから、有機過酸化物、アゾ系化合物が好ましく、アゾ系化合物がより好ましい。
硬化性組成物は、重合性化合物、重合開始剤以外に、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。
他の添加剤としては、例えば、離型剤、非反応性のポリマー、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物、帯電防止剤、防汚性向上のためのフッ素化合物等の添加剤、微粒子、少量の溶媒等が挙げられる。これらの他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化性組成物は、連続転写性を向上することができることから、離型剤を含むことが好ましい。
離型剤は、硬化性組成物の硬化物とモールド表面との離型性を向上するものであり、硬化性組成物との相溶性があれば、特に限定されない。
硬化性組成物は、硬化物の分子量を制御することができることから、非反応性のポリマーを含むことが好ましい。
非反応性のポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン、セルロース系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの非反応性のポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの非反応性のポリマーの中でも、(メタ)アクリル系モノマーの硬化物と屈折率が近いことから、アクリル樹脂が好ましい。
硬化性組成物は、硬化物の機械強度に優れることから、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物を含むことが好ましい。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、例えば、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。これらの活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
微細凹凸構造を表面に有する物品は、ロータス効果により、その表面が疎水性の材料から形成されていれば超撥水性が得られ、その表面が親水性の材料から形成されていれば超親水性が得られる。
疎水性の材料の原料は、撥水性に優れることから、フッ素含有化合物、シリコーン系化合物が好ましい。
親水性の材料の原料は、親水性に優れることから、少なくとも親水性モノマーを含むことが好ましく、耐擦傷性、耐水性付与に優れることから、更に架橋可能な多官能モノマーを含むことがより好ましい。親水性モノマーと架橋可能な多官能モノマーとは、同一であってもよく異なっていてもよい。
具体的には、親水性の材料の原料は、耐擦傷性に優れることから、4官能以上の多官能(メタ)アクリレート、2官能以上の親水性(メタ)アクリレート、必要に応じて、単官能モノマーを含むことが好ましい。
本明細書において、硬化性組成物の粘度は、回転式E型粘度計を用い、25℃にて測定した値とする。
本発明のモールドの製造方法で得られたモールドの表面に硬化性組成物を、モールドと基材との間に挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて物品を得る方法は、物品の生産性に優れることから、図2に示す製造装置を用いることが好ましい。
図2は、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造装置を示す模式的断面図である。以下、図2を用いて微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法を説明するが、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、図2に限定されるものではない。
表面に微細凹凸構造の反転構造を設けたロール状のモールド20と、ロール状のモールド20の回転に同期してロール状のモールド20の表面に沿って移動する帯状の基材42との間に、タンク22から硬化性組成物38を供給する。ロール状のモールド20と、空気圧シリンダ24によってニップ圧が調整されたニップロール26との間で、基材42と硬化性組成物38とをニップし、硬化性組成物38を、基材42とロール状のモールド20との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状のモールド20の凹部内に充填する。ロール状のモールド20の外側に設置された活性エネルギー線照射装置28から、基材42を通して硬化性組成物38に活性エネルギー線を照射し、硬化性組成物38を硬化させることによって、ロール状のモールド20の表面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層44を形成する。
剥離ロール30により、表面に硬化樹脂層44が形成された基材42をロール状のモールド20から剥離することによって、微細凹凸構造を表面に有する物品40が得られる。
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法により、例えば、図3に示す微細凹凸構造を表面に有する物品が得られる。以下、図3を用いて本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法により得られる微細凹凸構造を表面に有する物品を説明するが、本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法により得られる微細凹凸構造を表面に有する物品は、図3に限定されるものではない。
第1の凸部の形状としては、例えば、略円錐形状、角錐形状、釣鐘形状、円柱形状等が挙げられる。これらの第1の凸部の形状の中でも、得られる微細凹凸構造を表面に有する物品の反射防止性能に優れることから、円錐形状、角錐形状、釣鐘形状等のように、高さ方向と直交する方向の凸部断面積が最頂部から深さ方向に連続的に増加する形状が好ましく、円錐形状、角錐形状、釣鐘形状がより好ましい。
第1の凸部は、微細な複数の第1の凸部が合一して1つの凸部となったものであってもよい。
本明細書において、第1の凸部は、前述した細孔(第1の凹部)を転写した凸部とする。
本明細書において、第2の凸部は、前述した第2の凹部を転写した凸部とする。
微細凹凸構造を表面に有する物品は、反射防止性能、防眩性能、撥水性能、親水性能等の種々の性能を有する。
微細凹凸構造を表面に有する物品がシート状又はフィルム状の場合、反射防止膜として、例えば、テレビ、携帯電話のディスプレイ等の画像表示装置、展示パネル、メーターパネル等の対象物の表面に貼り付けたり、インサート成形したりして用いることができる。また、撥水性能を活かして、風呂場の窓や鏡、太陽電池部材、自動車のミラー、看板、メガネのレンズ等、雨、水、蒸気等に曝されるおそれのある対象物の部材としても用いることができる。
微細凹凸構造を表面に有する物品が立体形状の場合、用途に応じた形状の透明基材を用いて反射防止物品を製造しておき、これを上記対象物の表面を構成する部材として用いることもできる。
対象物が画像表示装置である場合、その表面に限らず、その前面板に対して、微細凹凸構造を表面に有する物品を貼り付けてもよいし、前面板そのものを、微細凹凸構造を表面に有する物品から構成することもできる。例えば、イメージを読み取るセンサーアレイに取り付けられたロッドレンズアレイの表面、FAX、複写機、スキャナ等のイメージセンサーのカバーガラス、複写機の原稿を置くコンタクトガラス等に、微細凹凸構造を表面に有する物品を用いても構わない。また、可視光通信等の光通信機器の光受光部分等に、微細凹凸構造を表面に有する物品を用いることによって、信号の受信感度を向上させることもできる。
また、上述した用途以外にも、例えば、光導波路、レリーフホログラム、光学レンズ、偏光分離素子等の光学用途、細胞培養シート等の用途にも用いることができる。
実施例・比較例で得られたモールドの第1の凹部の平均間隔・平均深さ、実施例・比較例で得られた物品の第1の凸部の平均間隔・平均高さを、電解放出型走査電子顕微鏡(機種名「JSM−6701F」、日本電子(株)製)を用い、加速電圧3.0kVの条件で、無作為に10点測定し、これらの値を平均した値とした。
実施例・比較例で得られた物品を、JIS Z8722に準拠し、分光光度計(機種名「UV−2450」、(株)島津製作所製)を用い、反射率を3点測定し、これらの値を平均した値を測定値とし、下記評価基準にて評価した。
A:反射率が1.00未満であった。
B:反射率が1.00以上であった。
実施例・比較例で得られた物品を、ISO13468−1に準拠し、ヘイズメーター(機種名「NDH2000」、日本電色工業(株)製)を用い、ヘイズを3点測定し、これらの値を平均した値を測定値とし、下記評価基準にて評価した。
A:ヘイズが1.0以上30.0以下であった。
B:ヘイズが1.0未満又は30.0超であった。
実施例・比較例で得られた物品に対し、輝度8000cd/m2の蛍光灯を45°の方向から照射し、−45°の方向から反射像を目視にて観察し、下記評価基準にて評価した。
A:蛍光灯の輪郭をほぼ視認することができない。
B:蛍光灯の輪郭を明確に視認することができる。
(モールドの製造)
アルミニウムを外径205mm、内径155mm、幅350mmの円筒状に切断し、被加工面の算術平均粗さRaが0.03μm以下となるように表面に鏡面切削加工を行い、その後、被加工面の算術平均粗さRaが0.002μm以下となるように表面に鏡面研磨加工を行い、円筒状のアルミニウム基材を得た。
次いで、アルミニウム基材を40Vで600秒間陽極酸化し、アルミニウム基材の表面に細孔を有する酸化皮膜を形成した。(工程(b))
次いで、表面に酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材への電圧の印加を中断し、処理液中に120分間保持させて酸化皮膜を溶解、除去し、陽極酸化の細孔発生点となる窪みを露出させると共に、第2の凹部を形成させた。
次いで、アルミニウム基材を40Vで60秒間陽極酸化し、アルミニウム基材の表面に細孔を有する酸化皮膜を形成した。(工程(d))
次いで、表面に酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材への電圧の印加を中断し、処理液中に25分間保持させて酸化皮膜の一部を溶解、除去すると共に、酸化皮膜の孔径を拡大させた。(工程(e))
次いで、工程(d)と工程(e)とを更に交互に4回繰り返し、最後に工程(e)を行った。(工程(f))
尚、工程(a)〜工程(f)のすべて工程を、同じ反応槽で行った。また、工程(d)と工程(e)は、各合計5回行った。
得られたモールドは、第1の凹部の平均間隔100nm、第1の凹部の平均深さ200nm、第2の凹部の平均直径1.5μm、第2の凹部の平均深さ1.5μmであった。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート25質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート25質量部、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート25質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート25質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン1質量部、ビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)?フェニルフォスフィンオキサイド0.5質量及びポリオキシエチレンアルキル(12〜15)エーテルリン酸0.1質量部を混合し、硬化性組成物を得た。
得られたロール状のモールドを、図2に示す製造装置に設置した。ロール状のモールドと、ロール状のモールドの回転(速度7m/分)に同期してロール状のモールドの表面に沿って移動する帯状の基材(商品名「A4300」、東洋紡(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)との間に、タンクから得られた硬化性組成物を供給する。ロール状のモールドと、空気圧シリンダによってニップ圧が調整されたニップロールとの間で、基材と硬化性組成物とをニップし、硬化性組成物を、基材とロール状のモールドとの間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状のモールドの凹部内に充填する。ロール状のモールドの外側に設置された紫外線照射装置(出力240W/cm)から、基材を通して硬化性組成物に紫外線を照射し、硬化性組成物を硬化させることによって、ロール状のモールドの表面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を形成する。
剥離ロールにより、表面に硬化樹脂層が形成された基材をロール状のモールドから剥離することによって、微細凹凸構造を表面に有する物品が得られた。
得られた物品は、第1の凸部の平均間隔100nm、第1の凸部の平均高さ200nm、第2の凸部の平均直径1.5μm、第2の凸部の平均高さ1.5μmであった。
得られた物品の評価結果を、表2に示す。
工程(a)〜工程(f)の条件を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に操作を行い、微細凹凸構造を表面に有する物品を得た。
得られた物品の評価結果を、表2に示す。
工程(a)における処理液の温度を15.7℃に調温、工程(a)〜工程(b)で用いた処理液を0.3mol/lのシュウ酸水溶液、工程(c)で用いた処理液を1.8質量%のクロム酸水溶液と6質量%のリン酸水溶液とを混合した水溶液、工程(c)における処理液の温度を70℃に調温した以外は、実施例1と同様に操作を行い、微細凹凸構造を表面に有する物品を得た。
得られた物品は、第1の凸部の平均間隔100nm、第1の凸部の平均高さ200nm、で、第2の凸部は存在しなかった。
尚、工程(a)〜工程(b)で用いた反応槽と、工程(c)で用いた反応槽と、工程(d)〜工程(f)で用いた反応槽とで、それぞれ異なる反応槽を用いた。
得られた物品の評価結果を、表2に示す。
また、実施例1〜4で得られた物品は、第1の凸部と第2の凸部とを有するため、反射防止性能、防眩性に優れた。一方、比較例1で得られた物品は、工程(c)において第2の凹部を形成されず、第1の凸部のみを有するため、反射防止性能に優れるものの、防眩性に劣った。
12 細孔
14 酸化皮膜
16 細孔発生点
18 モールド
20 ロール状のモールド
22 タンク
24 空気圧シリンダ
26 ニップロール
28 活性エネルギー線照射装置
30 剥離ロール
38 硬化性組成物
40 微細凹凸構造を表面に有する物品
42 基材
44 硬化樹脂層
46 凸部
Claims (3)
- 下記工程(a)〜工程(f)を順次含み、下記工程(a)〜工程(f)における処理液を、複数の酸を混合した同種の液体とし、モールドの表面に細孔である第1の凹部、及び前記細孔より大きいサイズの第2の凹部を有する、モールドの製造方法。
工程(a):処理液中にアルミニウム基材を浸漬する工程。
工程(b):アルミニウム基材を定電圧で 陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する第1の酸化皮膜形成工程。
工程(c):酸化皮膜の一部を除去し、残存する酸化皮膜の下部に前記第2の凹部を形成する酸化皮膜除去工程。
工程(d):アルミニウム基材を定電圧で陽極酸化して細孔を有する酸化皮膜を形成する第2の酸化皮膜形成工程。
工程(e):酸化皮膜の一部を除去して細孔の孔径を拡大処理する孔径拡大処理工程。
工程(f):前記工程(d)と前記工程(e)とを交互に繰り返す工程。 - 複数の酸が、シュウ酸及びリン酸を含む、請求項1に記載のモールドの製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法で得られたモールドの表面に形成された複数の細孔及び前記第2の凹部からなる微細凹凸構造を、物品の表面に転写する、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。
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