以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明を、作業車の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、図1に記載された符号Fの矢印が指し示す方向がトラクタの前側であり、符号Uの矢印が指し示す方向がトラクタの上側である。
又、図2に記載された符号Fの矢印が指し示す方向がトラクタの前側であり、符号Rの矢印が指し示す方向がトラクタの右側である。
図1〜3に示すように、本実施形態に例示されたトラクタは、車体の前後両端にわたる車体フレーム1、駆動可能な操舵輪として機能する左右の前輪2、駆動輪として機能する左右の後輪3、車体フレーム1の前部側に配置された原動部4、車体フレーム1の後部側に搭乗空間と運転部5とを形成するキャビン6、及び、車体フレーム1の後端部に昇降揺動可能に取り付けられた作業装置連結用の3点リンク機構7、などを備えている。
図1に示すように、トラクタは、原動部4に配置されたエンジン8、エンジン8からの動力を断続するペダル操作式の主クラッチ9、主クラッチ9を経由した動力を走行用と作業用とに分岐して変速する変速伝動ユニット(図示せず)、及び、左右の後輪3に作用する左右のサイドブレーキ(図示せず)、などが備えられている。エンジン8には、コモンレールシステムを備えた電子制御式のディーゼルエンジンが採用されている。
図3に示すように、3点リンク機構7は、車体に備えられた電子油圧制御式の昇降駆動ユニット10の作動によって上下方向に揺動駆動される。図示は省略するが、3点リンク機構7には、ロータリ耕耘装置、プラウ、ディスクハロー、カルチベータ、サブソイラ、播種装置、及び、散布装置、などの作業装置が連結される。そして、3点リンク機構7に連結された作業装置がロータリ耕耘装置などの駆動式である場合は、車体の後部から取り出された作業用の動力が外部伝動軸など介して作業装置に伝達される。
図1、図3に示すように、運転部5には、左右の前輪2の手動操舵を可能にする手動操舵用のステアリングホイール11、主変速レバー12、副変速レバー13、前後進切り換え用のシャトルレバー14、作業装置の高さ位置を設定する昇降レバー15、作業装置の昇降を指令する昇降スイッチ、旋回上昇スイッチ、後進上昇スイッチ、PTOスイッチ、主クラッチ9の操作を可能にするクラッチペダル16、及び、左右のサイドブレーキの操作を可能にする左右のブレーキペダル(図示せず)、などの各種の人為操作具とともに、運転座席17などが備えられている。ステアリングホイール11は、全油圧式のパワーステアリングユニット(以下、PSユニットと称する)18などを介して左右の前輪2に連係されている。
図1〜2、図4〜5に示すように、キャビン6は、左右のフロントピラー21、左右のセンタピラー22、左右のリアピラー23、各ピラー21〜23に支持されたルーフ24、キャビン6の前面を形成するフロントパネル25、左右のセンタピラー22に開閉揺動可能に支持された左右のドアパネル26、キャビン6の後部側面を形成する左右のサイドパネル27、及び、キャビン6の後面を形成するリアパネル28、などを備えている。
図1〜2、図4〜6に示すように、ルーフ24は、各ピラー21〜23に連接されたルーフフレーム29、ルーフフレーム29から後方に延出するリアカバー30、ルーフフレーム29の下部に取り付けられた樹脂製のインナルーフ31、ルーフフレーム29の上部とリアカバー30の上部とに取り付けられた樹脂製のアウタルーフ32、及び、リアカバー30を後方から囲むようにルーフフレーム29の後部に取り付けられた補助フレーム33、などを備えている。ルーフ24は、リアカバー30及びインナルーフ31とアウタルーフ32との間に内部空間34が形成されている。内部空間34には、搭乗空間の空気調節を可能にする空調ユニット(図示せず)、及び、ラジオ(図示せず)、などが収納されている。
ルーフフレーム29は、左右のフロントピラー21にわたるフロントビーム35、左右いずれかのフロントピラー21とリアピラー23とにわたる左右のサイドビーム36、及び、左右のリアピラー23にわたるリアビーム37、などを備えて平面視略矩形状に形成されている。
左右のフロントピラー21は、車体におけるホイールベースLの中央部よりも車体前側に配置されている。左右のフロントピラー21は、正面視においては上半部の上側ほど車体の左右中央側に位置し、かつ、側面視においては上半部の上側ほど車体の前後中央側に位置するように上半部が湾曲している。左右のセンタピラー22は、正面視においては上側ほど車体の左右中央側に位置し、かつ、側面視においては上側ほど車体の前後中央側に位置するように湾曲している。左右のリアピラー23は、正面視においては上側ほど車体の左右中央側に位置し、かつ、側面視においては略垂直姿勢になるように湾曲している。
各パネル25〜28には、対応するピラー21〜23などに沿って湾曲するガラス製又は透明アクリル樹脂製などの曲面パネルが採用されている。
上記の構成により、キャビン6の下半部においては、運転座席17に着座した運転者の手足による各種の操作が行い易い広い空間を確保しながら、キャビン6の上半部においては、居住性を損なわない程度でルーフフレーム29の前後幅及び左右幅を狭くすることができる。その結果、搭乗空間での操作性及び居住性を低下させることなく、キャビン上部の小型軽量化による車体の安定性の向上を図ることができる。
図3に示すように、車体には、車体の走行に関する制御を行う走行制御部40A、及び、作業装置に関する制御を行う作業制御部40B、などを備えたメインの電子制御ユニット(以下、メインECUと称する)40が搭載されている。メインECU40は、前述した電子油圧制御式の昇降駆動ユニット10、エンジン用の電子制御ユニット(図示せず)、電子制御式の主変速装置41、電子制御式の前後進切換装置42、電子制御式のPTOクラッチ43、左右のサイドブレーキの自動操作を可能にする電子油圧式のブレーキ操作ユニット44、及び、車速を含む車内情報を取得する車内情報取得ユニット45、などに、CAN(Controller Area Network)などの車内LAN又は通信線を介して通信可能に接続されている。メインECU40などの電子制御ユニットは、CPU及びEEPROMなどを有するマイクロプロセッサを備えている。走行制御部40Aは、車体の走行に関する制御を可能にする各種の制御プログラムなどを有している。作業制御部40Bは、作業装置に関する制御を可能にする各種の制御プログラムなどを有している。
主変速装置41、前後進切換装置42、及び、PTOクラッチ43は、走行用の動力を有段階で変速する副変速装置(図示せず)、及び、作業用の動力を有段階で変速するPTO変速装置(図示せず)、などとともに変速伝動ユニットに備えられている。主変速装置41には、走行用の動力を無段階で変速する静油圧式の無段変速装置が採用されている。
前後進切換装置42は、走行用の動力を断続する走行クラッチを兼ねている。
車内情報取得ユニット45には、前述した昇降スイッチ、旋回上昇スイッチ、後進上昇スイッチ、及び、PTOスイッチ、などの各種のスイッチ類、並びに、エンジン8の出力回転数を検出する回転センサ、副変速装置の出力回転数を車速として検出する車速センサ、主変速レバー12の操作位置を検出する主変速センサ、副変速レバー13の操作位置を検出する副変速センサ、シャトルレバー14の操作位置を検出するシャトルセンサ、昇降レバー15の操作位置を検出する昇降センサ、昇降駆動ユニット10における左右のリフトアーム(図示せず)の上下揺動角度を作業装置の高さ位置として検出する高さセンサ、及び、前輪2の舵角を検出する舵角センサ、などの各種のセンサ類が含まれている。
走行制御部40Aは、回転センサの出力と車速センサの出力と主変速センサの出力と副変速センサの出力とに基づいて、車速が、エンジン回転数と主変速レバー12の操作位置と副変速レバー13の操作位置とから求めた制御目標車速に達するように、主変速装置41のトラニオン軸(図示せず)を操作する車速制御を行う。これにより、運転者は、主変速レバー12を任意の操作位置に操作することにより、車速を任意の速度に変更することができる。
走行制御部40Aは、シャトルセンサの出力に基づいて、シャトルレバー14の操作位置に応じた伝動状態に前後進切換装置42を切り換える前後進切り換え制御を行う。これにより、運転者は、シャトルレバー14を前進位置に操作することにより、車体の進行方向を前進方向に設定することができる。運転者は、シャトルレバー14を後進位置に操作することにより、車体の進行方向を後進方向に設定することができる。
作業制御部40Bは、昇降センサの出力と高さセンサの出力とに基づいて、昇降レバー15の操作位置に応じた高さ位置に作業装置が位置するように昇降駆動ユニット10の作動を制御するポジション制御を行う。これにより、運転者は、昇降レバー15を任意の操作位置に操作することにより、作業装置の高さ位置を任意の高さ位置に変更することができる。
作業制御部40Bは、昇降スイッチの手動操作によって昇降スイッチが上昇指令状態に切り換えられると、昇降スイッチからの上昇指令と高さセンサの出力とに基づいて、作業装置が予め設定された上限位置まで上昇するように昇降駆動ユニット10の作動を制御する上昇制御を行う。これにより、運転者は、昇降スイッチを上昇指令状態に切り換えることにより、作業装置を上限位置まで自動的に上昇させることができる。
作業制御部40Bは、昇降スイッチの手動操作によって昇降スイッチが下降指令状態に切り換えられると、昇降スイッチからの下降指令と昇降センサの出力と高さセンサの出力とに基づいて、作業装置が昇降レバー15によって設定された作業高さ位置まで下降するように昇降駆動ユニット10の作動を制御する下降制御を行う。これにより、運転者は、昇降スイッチを下降指令状態に切り換えることにより、作業装置を作業高さ位置まで自動的に下降させることができる。
作業制御部40Bは、旋回上昇スイッチの手動操作によって旋回連動上昇制御の実行が選択された場合は、前輪2の舵角を検出する舵角センサの出力に基づいて、前輪2の舵角が畦際旋回用の設定角度に達したことを検知したときに、前述した上昇制御を自動的に行う。これにより、運転者は、旋回連動上昇制御の実行を選択しておくことにより、畦際旋回の開始に連動して、作業装置を上限位置まで自動的に上昇させることができる。
作業制御部40Bは、後進上昇スイッチの手動操作によって後進連動上昇制御の実行が選択された場合は、シャトルセンサの出力に基づいて、シャトルレバー14の後進位置への手動操作を検知したときに、前述した上昇制御を自動的に行う。これにより、運転者は、後進連動上昇制御の実行を選択しておくことにより、後進走行への切り換えに連動して、作業装置を上限位置まで自動的に上昇させることができる。
作業制御部40Bは、PTOスイッチの手動操作によってPTOスイッチの操作位置が入り位置に切り換えられると、この入り位置への切り換えに基づいて、作業用の動力が作業装置に伝達されるようにPTOクラッチ43を入り状態に切り換えるクラッチ入り制御を行う。これにより、運転者は、PTOスイッチを入り位置に操作することによって作業装置を作動させることができる。
作業制御部40Bは、PTOスイッチの手動操作によってPTOスイッチの操作位置が切り位置に切り換えられると、この切り位置への切り換えに基づいて、作業用の動力が作業装置に伝達されないようにPTOクラッチ43を切り状態に切り換えるクラッチ切り制御を行う。これにより、運転者は、PTOスイッチを切り位置に操作することによって作業装置を停止させることができる。
作業制御部40Bは、PTOスイッチの手動操作によってPTOスイッチの操作位置が自動位置に切り換えられると、前述した上昇制御の実行に連動して前述したクラッチ切り制御を自動的に行い、又、前述した下降制御の実行に連動して前述したクラッチ入り制御を自動的に行う。これにより、運転者は、PTOスイッチを自動位置に操作しておくことにより、作業装置の上限位置への自動上昇に連動して作業装置を停止させることができ、又、作業装置の作業高さ位置への自動下降に連動して作業装置を作動させることができる。
図1〜3に示すように、このトラクタは、運転モードの選択を可能にする選択スイッチ50、及び、車体の自動運転を可能にする自動運転用の電子制御システム51、を備えている。又、このトラクタは、運転モードとして、手動運転モードと自動運転モードと協調運転モードとを備えている。電子制御システム51は、前述したメインECU40、左右の前輪2の自動操舵を可能にする自動操舵ユニット52、車体の位置及び方位を測定する測位ユニット53、及び、車体の周囲を監視する監視ユニット54、などを備えている。
図3に示すように、自動操舵ユニット52は、前述したPSユニット18によって構成されている。PSユニット18は、手動運転モードが選択された場合は、ステアリングホイール11の回動操作に基づいて左右の前輪2を操舵する。又、PSユニット18は、自動運転モード又は協調運転モードが選択された場合は、メインECU40からの制御指令に基づいて左右の前輪2を操舵する。
上記の構成により、自動操舵専用のステアリングユニットを備えることなく、左右の前輪2を自動で操舵することができる。又、PSユニット18の電気系に不具合が生じた場合は、搭乗者による手動操舵に簡単に切り換えることができ、車体の運転を継続することができる。
図1〜4、図6に示すように、測位ユニット53は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の一例である周知のGPS(Global Positioning System)を利用して車体の位置及び方位を測定する衛星航法装置55を備えている。GPSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS)やRTK−GPS(Real Time Kinematic GPS)などがあるが、本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK−GPSが採用されている。
衛星航法装置55は、GPS衛星(図示せず)から送信された電波と、既知位置に設置された基準局(図示せず)から送信された測位データとを受信する衛星航法用のアンテナユニット56を備えている。基準局は、GPS衛星からの電波を受信して得た測位データを衛星航法装置55に送信する。衛星航法装置55は、GPS衛星からの電波を受信して得た測位データと、基準局からの測位データとに基づいて、車体の位置及び方位を求める。
アンテナユニット56は、GPS衛星からの電波の受信感度が高くなるように、車体の最上部に位置するキャビン6のルーフ24に取り付けられている。そのため、GPSを利用して測定した車体の位置及び方位には、車体のヨーイング、ピッチング、又は、ローリングに伴うアンテナユニット56の位置ズレに起因した測位誤差が含まれている。
そこで、車体には、上記の測位誤差を取り除く補正を可能にするために、3軸のジャイロスコープ(図示せず)と3方向の加速度センサ(図示せず)とを有して車体のヨー角、ピッチ角、ロール角、などを計測する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)57が備えられている。慣性計測装置57は、前述したアンテナユニット56の位置ズレ量を求め易くするために、アンテナユニット56の内部に備えられている。アンテナユニット56は、平面視において車体におけるトレッドTの中央部でホイールベースLの中央部に位置するように、キャビン6のルーフ24における前部上面の左右中央箇所に取り付けられている(図2参照)。
上記の構成により、少なくとも、平面視においては慣性計測装置57の取り付け位置が車体の重心位置に近くなる。これにより、慣性計測装置57が計測したヨー角などを、車体の重心位置からの慣性計測装置57の位置ズレ量に基づいて補正するための演算が簡単になり、よって、慣性計測装置57の計測結果を迅速に正しく補正することができる。つまり、慣性計測装置57による車体のヨー角などの計測を迅速に精度良く行うことができる。
これにより、衛星航法装置55が車体の位置及び方位を測定する場合において、車体のヨーイング、ピッチング、又は、ローリングに起因して、アンテナユニット56に位置ズレが生じたときは、このときのアンテナユニット56の位置ズレ量を、慣性計測装置57が計測する車体のヨー角、ピッチ角、ロール角、などから迅速に精度良く求めることができる。そして、衛星航法装置55が計測した車体の位置及び方位に含まれるアンテナユニット56の位置ズレに起因した測位誤差を、慣性計測装置57の計測結果から求められるアンテナユニット56の位置ズレ量に基づいて迅速に精度良く求めることができ、この測位誤差を衛星航法装置55の測定結果から取り除く補正を迅速かつ適正に行える。
その結果、全地球航法衛星システムを利用した車体の位置及び方位の測定を、より簡単かつ迅速に精度良く行うことができる。
図3に示すように、メインECU40は、車体の自動運転を可能にする各種の制御プログラムなどを有する自動運転制御部40Cを備えている。自動運転制御部40Cは、選択スイッチ50の人為操作によって自動運転モード又は協調運転モードが選択された場合に、車体を自動で運転する自動運転制御を行う。自動運転制御部40Cは、自動運転モードでの自動運転制御においては、車体が予め設定された圃場の目標走行経路を設定速度で自動走行しながら適正に作業を行うように、目標走行経路及び測位ユニット53の測位結果などに基づいて、走行制御部40A及び作業制御部40Bなどに各種の制御指令を適切なタイミングで送信する。走行制御部40Aは、自動運転制御部40Cからの各種の制御指令及び車内情報取得ユニット45の各種取得情報などに基づいて、主変速装置41及び前後進切換装置42などに各種の制御指令を適切なタイミングで送信して主変速装置41及び前後進切換装置42などの作動を制御する。作業制御部40Bは、自動運転制御部40Cからの各種の制御指令及び車内情報取得ユニット45の各種取得情報などに基づいて、昇降駆動ユニット10及びPTOクラッチ43などに各種の制御指令を適切なタイミングで送信して昇降駆動ユニット10及びPTOクラッチ43などの作動を制御する。
目標走行経路は、圃場での手動運転による作業走行時に走行した走行経路、及び、畦際旋回開始地点などが、測位ユニット53の測位結果などに基づいてデータ化されたものであってよい。又、目標走行経路は、圃場での手動運転によるティーチング走行時に走行した走行経路、及び、畦際旋回開始地点などが、測位ユニット53の測位結果などに基づいてデータ化されたものであってよい。
図1〜5に示すように、監視ユニット54は、車体に対する至近距離内(例えば1m以内)での障害物の接近を検出する障害物検出モジュール58、車体に対する近距離(例えば10m以内)での障害物の接近を検出する前後3個のレーザスキャナ59、障害物との接触を回避する接触回避制御を行う接触回避制御部40D、車体の周囲を撮影する4台の監視カメラ60、監視カメラ60が撮影した画像を処理する画像処理装置61、などを備えている。
図1〜3、図5に示すように、障害物検出モジュール58は、車体に対する至近距離内において障害物を探査する8個のソナー62、及び、各ソナー62からの探査情報に基づいて車体に対する至近距離内に障害物が接近したか否かの判別処理を行う2台の探査情報処理装置63、を備えている。8個のソナー62は、車体の前方と左右両側方とが探査対象領域になるように、車体の前端部と左右両端部とに分散して配置されている。各ソナー62は、それらの探査で得た探査情報を対応する探査情報処理装置63に送信する。各探査情報処理装置63は、対応する各ソナー62における超音波の発信から受信までの時間に基づいて、車体に対する至近距離内に障害物が接近したか否かの判別処理を行い、この判別結果を接触回避制御部40Dに出力する。
これにより、自動運転中の車体の前方又は左右の横側方において障害物が車体に対する至近距離内に異常接近した場合は、この障害物の接近が障害物検出モジュール58によって検出される。又、車体の後端部にはソナー62が備えられていないことにより、障害物検出モジュール58が、車体の後部に昇降可能に取り付けられた作業装置を障害物として誤検出することが回避されている。
ちなみに、障害物検出モジュール58は、例えば、車体が自動運転によって畦に向かって走行しているとき、又は、車体が自動運転によって畦際で畦に沿って走行しているときに、畦が車体に対する至近距離内に異常接近した場合は、この畦を障害物として検出する。又、移動体が車体に対する至近距離内に異常接近した場合は、この移動体を障害物として検出する。
図示は省略するが、各レーザスキャナ59は、約270度程度の最大検出角度を有して障害物の探知を行う探知部、及び、探知部からの探知情報を処理する処理部、などを備えている。探知部は、探知対象領域にレーザ光線を照射して反射光を受け取る。処理部は、レーザ光線の照射から受光までの時間に基づいて、車体に対する近距離において障害物が接近しているか否かなどを判別し、判別結果を接触回避制御部40Dに出力する。前側の左右のレーザスキャナ59は、車体の前方と左右両側方とが探知対象領域に設定されている。後側の単一のレーザスキャナ59は、車体の後方が探知対象領域に設定されている。
図3に示すように、接触回避制御部40Dは、接触回避制御の実行を可能にする制御プログラムなどを有してメインECU40に備えられている。接触回避制御部40Dは、各レーザスキャナ59の判別結果に基づいて、車体に対する近距離での障害物の接近を確認したときに、自動運転制御部40Cの制御作動に優先して、各レーザスキャナ59及び各探査情報処理装置63の判別結果に基づいて前述した接触回避制御を行う。そして、接触回避制御部40Dは、接触回避制御を行うことにより、車体が障害物に接触する虞を回避する。接触回避制御部40Dは、接触回避制御の実行中に、各レーザスキャナ59の判別結果に基づいて、車体に対する近距離内に障害物が存在しないことを確認したときに、接触回避制御を終了するとともに、自動運転制御部40Cの制御作動に基づく自動運転を再開させる。
図1〜5に示すように、各監視カメラ60には、広角の可視光用CCDカメラが採用されている。各監視カメラ60は、車体の周囲を漏れなく撮影するために、キャビン6のルーフ24における前後左右の各端部に分散して配置されている。
画像処理装置61は、各監視カメラ60からの映像信号を処理して、車体前方画像、車体右方画像、車体左方画像、車体後方画像、及び、車体の真上から見下ろしたような俯瞰画像、などを生成して、搭乗空間の表示ユニット64などに送信する。表示ユニット64は、液晶パネル64Aに表示される各種の操作スイッチ(図示せず)の人為操作などに基づいて、液晶パネル64Aに表示される画像などを切り換える制御部64B、などを有している。
上記の構成により、手動運転モードにおいては、運転者は、画像処理装置61からの画像を液晶パネル64Aに表示させることにより、運転中の車体の周辺状況や作業状況を容易に視認することができる。これにより、運転者は、作業の種類などに応じた良好な車体の運転を容易に行うことができる。又、自動運転モード又は協調運転モードにおいて管理者が車体に搭乗する場合は、管理者は、画像処理装置61からの画像を液晶パネル64Aに表示させることにより、自動運転中又は協調運転中の車体の周辺状況や作業状況を容易に視認することができる。そして、管理者は、自動運転中又は協調運転中に車体周辺又は作業状況などにおいて異常を視認した場合は、その異常の種類や程度などに応じた適切な処置を速やかに行うことができる。
図1〜6に示すように、電子制御システム51は、各種の情報を他車などとの間で無線通信する通信モジュール65、及び、他車からの情報などに基づいて協調運転制御を行う協調運転制御部40E、を備えている。協調運転制御部40Eは、協調運転制御の実行を可能にする制御プログラムなどを有してメインECU40に備えられている。
自動運転制御部40Cは、協調運転モードでの自動運転制御においては、車体が予め設定された併走用の目標走行経路を設定速度で自動走行しながら適正に作業を行うように、併走用の目標走行経路及び測位ユニット53の測位結果などに基づいて、走行制御部40A及び作業制御部40Bなどに各種の制御指令を適切なタイミングで送信する。
協調運転制御部40Eは、協調運転制御において車間距離判定処理と車間距離適正化処理を行う。協調運転制御部40Eは、車間距離判定処理においては、自車の併走用の目標走行経路、測位ユニット53の測位結果、他車の併走用の目標走行経路、及び、他車の位置情報、などに基づいて、先行する他車と自車との進行方向での車間距離、及び、先行する他車と自車との併走方向での車間距離、などが適正であるか否かを判別する。そして、いずれかの車間距離が適正でない場合に、その車間距離が適正になるように、自動運転制御部40Cの制御作動に優先して車間距離適正化処理を行う。
車間距離適正化処理において、協調運転制御部40Eは、進行方向での車間距離が適正距離よりも短い場合は、走行制御部40Aに減速指令を出力することにより、走行制御部40Aの制御作動によって主変速装置41を減速作動させて、進行方向での車間距離を適正距離に復帰させる。そして、協調運転制御部40Eは、進行方向での車間距離が適正距離に復帰するのに伴って、自動運転制御部40Cの制御作動に基づく自動運転を再開させることにより、車速を通常走行用の設定速度まで上昇させて進行方向での車間距離を適正距離に維持する。
又、協調運転制御部40Eは、進行方向での車間距離が適正距離よりも長い場合は、走行制御部40Aに増速指令を出力することにより、走行制御部40Aの制御作動によって主変速装置41を増速作動させて、進行方向での車間距離を適正距離に復帰させる。そして、協調運転制御部40Eは、進行方向での車間距離が適正距離に復帰するのに伴って、自動運転制御部40Cの制御作動に基づく自動運転を再開させることにより、車速を通常走行用の設定速度まで低下させて進行方向での車間距離を適正距離に維持する。
一方、協調運転制御部40Eは、併走方向での車間距離が適正距離よりも長い場合は、走行制御部40Aに他車側への操舵指令を出力することにより、走行制御部40Aの制御作動によって左右の前輪2を他車側に操舵させて、併走方向での車間距離を適正距離に復帰させる。そして、協調運転制御部40Eは、併走方向での車間距離が適正距離に復帰するのに伴って、自動運転制御部40Cの制御作動に基づく自動運転を再開させることにより、車体の進行方向を通常走行用の進行方向に戻して併走方向での車間距離を適正距離に維持する。
又、協調運転制御部40Eは、併走方向での車間距離が適正距離よりも短い場合は、走行制御部40Aに他車から離れる側への操舵指令を出力することにより、走行制御部40Aの制御作動によって左右の前輪2を他車から離れる側に操舵させて、併走方向での車間距離を適正距離に復帰させる。そして、協調運転制御部40Eは、併走方向での車間距離が適正距離に復帰するのに伴って、自動運転制御部40Cの制御作動に基づく自動運転を再開させることにより、車体の進行方向を通常走行用の進行方向に戻して併走方向での車間距離を適正距離に維持する。
これにより、自車を、先行する他車に対して、進行方向での車間距離と併走方向での車間距離とを適正に維持しながら自動で適正に併走させることができる。
図1〜6に示すように、通信モジュール65は、周波数帯が異なる3本の通信アンテナ66〜68と通信情報処理装置69とを備えている。各通信アンテナ66〜68は、通信感度を高めるためにキャビン6の上端部に配置されている。通信情報処理装置69は、防水性及び防塵性などを高めるためにルーフ24の内部空間34に配置されている。
3本の通信アンテナ66〜68のうち、周波数帯が最も高い第1通信アンテナ66は、情報量の多い画像情報を、他車の通信モジュール65などとの間で無線通信する。その次に周波数帯が高い第2通信アンテナ67は、画像情報を除いた車速などの車内情報を、他車の通信モジュール65などとの間で無線通信する。周波数帯が最も低い第3通信アンテナ68は、作業走行の開始指令及び停止指令などの各種の情報を遠隔操作具70との間で無線通信する。
第1通信アンテナ66は、ルーフ24における補助フレーム33の左前端部に第1支持具71を介して取り付けられている。第2通信アンテナ67は、補助フレーム33の右前端部に第2支持具72を介して取り付けられている。第3通信アンテナ68は、ルーフ24における上面の左前部に第3支持具73を介して取り付けられている。ちなみに、キャビン6における左側のフロントピラー21の上端部には、ラジオ用の受信アンテナ74が取り付けられている。
図3に示すように、通信情報処理装置69には、車内情報取得ユニット45、各レーザスキャナ59、画像処理装置61、及び、各探査情報処理装置63、などがメインECU40を介して通信可能に接続されている。
これにより、車内情報取得ユニット45が取得した車速などの車内情報、各レーザスキャナ59及び各探査情報処理装置63からの監視情報、及び、画像処理装置61からの監視画像情報、などを、それぞれ専用の通信アンテナ66〜68を介して他車などに良好に通信することができ、協調走行する他車と共有することができる。そして、共有する車内情報と監視情報と監視画像情報とを有効利用することにより、協調走行する他車と連動した車速調整、及び、協調走行する他車と連動した障害物との接触回避、などが行い易くなる。その結果、協調走行する他車との接触などをより確実に回避することができる。
具体的には、前述した協調運転モードにおいて、いずれかのレーザスキャナ59が車体に対する近距離での障害物の接近を探知したときは、接触回避制御部40Dが、接触回避制御を開始するとともに、走行制御部40Aに加えて協調運転制御部40Eにも減速指令を出力する。そして、この減速指令を、協調運転制御部40Eが通信モジュール65を介して他車に送信する。その後、その減速指令に基づく減速走行状態においては、協調運転制御部40Eが、車速センサによって検出された車速を読み取り、読み取った車速を、通信モジュール65を介して他車に送信する。又、減速指令に基づく低速走行状態において、障害物検出モジュール58が車体に対する至近距離内での障害物の存在を検出したときは、接触回避制御部40Dが、走行制御部40A及び作業制御部40Bに加えて協調運転制御部40Eにも緊急停止指令を出力する。そして、この緊急停止指令を、協調運転制御部40Eが通信モジュール65を介して他車に送信する。又、減速指令に基づく減速走行状態において、各レーザスキャナ59が車体に対する近距離での障害物の接近を探知しなくなったときは、接触回避制御部40Dが、走行制御部40Aに加えて協調運転制御部40Eにも増速指令を出力する。そして、この増速指令を、協調運転制御部40Eが通信モジュール65を介して他車に送信する。その後、その増速指令に基づく増速走行状態においては、協調運転制御部40Eが、車速センサによって検出された車速を読み取り、読み取った車速を、通信モジュール65を介して他車に送信する。
一方、前述した協調運転モードにおいて、他車から減速指令及び他車の車速が送信されたときは、この減速指令及び車速を通信モジュール65が受信して協調運転制御部40Eに出力する。そして、協調運転制御部40Eが、その減速指令及び車速を走行制御部40Aに出力して、走行制御部40Aに、車速を通常走行用の設定速度から他車の車速まで低下させる減速制御を行わせる。この減速制御による減速走行状態において、他車から緊急停止指令が送信されたときは、この緊急停止指令を通信モジュール65が受信して協調運転制御部40Eに出力する。そして、協調運転制御部40Eが、その緊急停止指令を走行制御部40A及び作業制御部40Bに出力して、走行制御部40A及び作業制御部40Bに、車体及び作業装置を緊急停止させる緊急停止制御を行わせる。又、減速制御による減速走行状態において、他車から増速指令及び他車の車速が送信されたときは、この増速指令及び車速を通信モジュール65が受信して協調運転制御部40Eに出力する。そして、協調運転制御部40Eが、その増速指令及び車速を走行制御部40Aに出力して、走行制御部40Aに、他車の増速に応じて車速を通常走行用の設定速度まで上昇させる増速制御を行わせる。
これにより、前述した協調運転モードにおいて、例えば、後続車の協調運転制御部40Eが、通信モジュール65の無線通信により、先行車からの減速指令及び他車の車速を受信すると、これらの受信情報を自車(後続車)の走行制御部40Aに出力し、この出力情報に基づく走行制御部40Aの減速制御により、後続車の車速を減速後の先行車の車速と同じにすることができる。そして、この協調低速状態において、後続車の協調運転制御部40Eが、通信モジュール65の無線通信により、先行車からの増速指令及び他車の車速を受信すると、これらの受信情報を自車の走行制御部40Aに出力し、この出力情報に基づく走行制御部40Aの増速制御により、後続車の車速を増速後の先行車の車速と同じにすることができる。又、協調低速状態において、後続車の協調運転制御部40Eが、通信モジュール65の無線通信により、先行車からの緊急停止指令を受信すると、これらの受信情報を自車の走行制御部40Aに出力し、この出力情報に基づく走行制御部40A及び作業制御部40Bの緊急停止制御により、後続車を先行車に連動して緊急停止させることができる。その結果、先行車が障害物に衝突することを防止することができるとともに、この先行車の緊急停止に起因して後続車が先行車に衝突する虞を回避することができる。
更に、前述した協調運転モードにおいて、他車から他車の車速及び周辺画像などの他車情報が送信されたときは、この他車情報を通信モジュール65が受信して協調運転制御部40Eに出力し、協調運転制御部40Eが、その他車情報を表示ユニット64に出力する。表示ユニット64は、液晶パネル64Aに表示される他車情報表示用の操作スイッチ(図示せず)が操作されて、他車情報の表示が選択されている場合は、他車の車速及び周辺画像などの他車情報を液晶パネル64Aに表示する。
これにより、例えば、協調走行する各トラクタの運行を管理する管理者が先行車に搭乗して運転する場合は、その先行車における他車情報表示用の操作スイッチを操作して他車情報の表示を選択することにより、先行車を運転しながら、協調走行する他車の運行状況や周囲状況を容易に監視して把握することができる。
図1〜2、図4〜5に示すように、監視ユニット54は、多数のLEDを有して各監視カメラ60の撮影対象箇所を照明する6台の照明灯75を備えている。これにより、夜間作業においても各監視カメラ60による車体周囲の撮影を良好に行うことができる。そして、この周囲画像を協調走行する他車と共有して有効利用することにより、視認性が低下する夜間作業においても、協調走行する他車との車速調整、又は、協調走行する他車と連動した障害物との接触回避、などが行い易くなる。
図1、図3に示すように、遠隔操作具70は、手動操作された場合に自動運転による作業走行の開始指令を出力する開始スイッチ70A、手動操作された場合に自動運転による作業走行の停止指令を出力する停止スイッチ70B、開始指令や停止指令などの各種の情報を処理する情報処理部70C、第3通信アンテナ68との間で無線通信する通信アンテナ70D、及び、ランプ又はブザーなどからなる報知器70E、などを備えている。
自動運転制御部40Cは、自動運転モード又は協調運転モードが選択された状態での車体の走行停止中に、通信モジュール65を介して遠隔操作具70の開始スイッチ70Aからの開始指令を受け取った場合は、接触回避制御部40Dが接触回避制御の実行中か否かを判別する。そして、接触回避制御の実行中である場合は、自動運転制御部40Cは、車体の運転開始が不可能であることを知らせるための報知指令を、通信モジュール65を介して遠隔操作具70に送信する。遠隔操作具70は、自動運転制御部40Cからの報知指令を受け取ると、情報処理部70Cが、その報知指令に基づいて報知器70Eを作動させて、車体の運転開始が不可能であることを管理者に知らせる。又、接触回避制御の実行中でない場合は、自動運転制御部40Cは、開始指令に基づいて、作業走行の開始に関する各種の制御指令を、走行制御部40A及び作業制御部40Bなどに適切なタイミングで送信して車体の作業走行を開始させる。
自動運転制御部40Cは、車体の自動運転による作業走行中に、通信モジュール65を介して遠隔操作具70の停止スイッチ70Bからの停止指令を受け取った場合は、停止指令に基づいて、作業走行の停止に関する各種の制御指令を、走行制御部40A及び作業制御部40Bなどに適切なタイミングで送信して車体の作業走行を緊急停止させる。
上記の構成により、管理者が車体に搭乗せずに車体の自動運転による作業走行を開始させる場合は、管理者は、遠隔操作具70の開始スイッチ70Aを操作することにより、車体に搭乗することなく車体の自動運転による作業走行を開始させることができる。又、管理者が車体に搭乗せずに車体の自動運転による作業走行を停止させる場合は、管理者は、遠隔操作具70の停止スイッチ70Bを操作することにより、車体に搭乗することなく車体の自動運転による作業走行を停止させることができる。
図2、図5〜6に示すように、第3通信アンテナ68の下方には、第3通信アンテナ用のグランドプレーン76が配置されている。グランドプレーン76は、ルーフ24の内部空間34に収納されている。第3通信アンテナ68は、グランドプレーン76の中心上方に配置されている。
この構成により、グランドプレーン76によって第3通信アンテナ68の電波利得を高めることができ、これにより、第3通信アンテナ68の小型化を図ることができる。そして、この小型化により、第3通信アンテナ68の通信感度を高めるために、第3通信アンテナ68をキャビン6におけるルーフ24の上面に取り付けるようにしても、第3通信アンテナ68を含めた車体の全高を低く抑えることができる。又、グランドプレーン76をルーフ24の内部空間34に収納することにより、グランドプレーン76をルーフ24の外部に備える場合に比較して、第3通信アンテナ68とグランドプレーン76とをキャビン6のルーフ24にコンパクトに備えることができる。
その結果、第3通信アンテナ68を含む車体の全高が高くなることを抑制しながら、第3通信アンテナ68の通信性能を高めることができる。
図2、図5〜7に示すように、グランドプレーン76は、電波利得を高める上で好適な面を有する平面視四角形の金属板によって構成されている。そして、グランドプレーン76の前端部が、ルーフ24におけるルーフフレーム29のフロントビーム35に、支持プレート77を介して連結されている。又、グランドプレーン76の右端部が、アンテナユニット56を支持するルーフフレーム29の支持台78に連結具79を介して連結されている。グランドプレーン76の中央箇所には、ルーフ24のアウタルーフ32及び第3通信アンテナ用の第3支持具73を支持する支持部76Aが備えられている。
つまり、グランドプレーン76は、ルーフフレーム29のフロントビーム35に連結されるとともに、アウタルーフ32及び第3支持具73を介して第3通信アンテナ68を支持している。これにより、グランドプレーン76を、アウタルーフ32及び第3通信アンテナ68を支持する支持部材に兼用することができる。その結果、部品点数の削減による構成の簡素化などを図ることができる。
図2、図4、図6〜7に示すように、ルーフ24は、アウタルーフ32における上面の左前部に、第3支持具73とグランドプレーン76の支持部76Aとがボルト連結される第1連結部24Aを備えている。第1連結部24Aには、ボルト連結用の左右の第1貫通孔24aが形成され、左右の第1貫通孔24aにはゴムスリーブ80が嵌め込まれている。各ゴムスリーブ80は、第3支持具73とグランドプレーン76の支持部76Aとが第1連結部24Aにボルト連結されるのに伴って、アウタルーフ32の上面と第3支持具73の底面とに密接する上側フランジ部80Aと、アウタルーフ32の内面とグランドプレーン76の上面とに密接する下側フランジ部80Bとを有している。
上記の構成により、第3支持具73とグランドプレーン76とがアウタルーフ32の第1連結部24Aにボルト連結された状態では、ゴムスリーブ80の上側フランジ部80Aがアウタルーフ32の上面と第3支持具73の底面とに密接し、又、ゴムスリーブ80の下側フランジ部80Bがアウタルーフ32の内面とグランドプレーン76の上面とに密接する。これにより、雨水や洗浄水などが、第1連結部24Aの各第1貫通孔24aからキャビン6の内部に浸入することが防止される。
つまり、上下のフランジ部80A,80Bを有する左右のゴムスリーブ80が防水部材を兼ねることから、部品点数の削減による構成の簡素化を図りながらキャビン6の内部への浸水を防止することができる。
図7に示すように、ルーフ24の第1連結部24Aにおける左右の第1貫通孔24aは、下部側が下側フランジ部80Bの入り込みを許容するように拡径されている。各第1貫通孔24aには、ボルト連結時におけるゴムスリーブ80の適正な変形を許容し、かつ、ボルトネジ込み量を制限するスペーサ81が、ゴムスリーブ82とともに嵌め込まれている。そして、ゴムスリーブ80及びスペーサ81の作用により、ボルト連結部の緩みを防止している。
図2、図4、図6、図8に示すように、キャビン6のルーフ24は、アウタルーフ32の上面における前部側の左右中央箇所に、アンテナユニット用の第2連結部24Bが形成されている。第2連結部24Bは、その上面が水平に形成されている。第2連結部24Bには、ボルト連結用の4つの第2貫通孔24bが形成され、各第2貫通孔24bにはゴムスリーブ82が嵌め込まれている。各ゴムスリーブ82は、アンテナユニット56が第2連結部24Bにボルト連結されるのに伴って、アウタルーフ32の上面とアンテナユニット56の底面とに密接する上側フランジ部82Aを有している。
上記の構成により、アンテナユニット56がアウタルーフ32の第2連結部24Bにボルト連結された状態では、ゴムスリーブ82の上側フランジ部82Aが、アウタルーフ32の上面とアンテナユニット56の底面との間に位置することにより、車体側の振動がアンテナユニット56に伝わり難くなる。そして、ゴムスリーブ82の上側フランジ部82Aが、アウタルーフ32の上面とアンテナユニット56の底面とに密接することにより、雨水や洗浄水などが、第2連結部24Bの各第2貫通孔24bからキャビン6の内部に浸入することが防止される。
つまり、上側フランジ部82Aを有する4個のゴムスリーブ82が防振部材と防水部材とを兼ねることから、部品点数の削減による構成の簡素化を図りながら、アンテナユニット56を防振支持することができるとともに、キャビン6の内部への浸水を防止することができる。
図6、図8に示すように、アウタルーフ32の第2連結部24Bは、ルーフフレーム29の支持台78にボルト連結される連結部を兼ねている。つまり、アンテナユニット56は、アウタルーフ32とともに支持台78に共締め連結されている。これにより、組み付け工数の削減による組み付け性の向上が図られている。
図8に示すように、各ゴムスリーブ82は、アウタルーフ32及びアンテナユニット56が支持台78にボルト連結されるのに伴って、支持台78の上面とアウタルーフ32の内面とに密接する下側フランジ部82Bを有している。ルーフ24の第2連結部24Bにおける各第2貫通孔24bは、下面側が下側フランジ部82Bの入り込みを許容するように拡径されている。各第2貫通孔24bには、ボルト連結時におけるゴムスリーブ82の適正な変形を許容し、かつ、ボルトネジ込み量を制限するスペーサ83が、ゴムスリーブ82とともに嵌め込まれている。
上記の構成により、アンテナユニット56の防振性を高めることができるとともに、キャビン6の内部への浸水をより確実に防止することができる。又、ゴムスリーブ82及びスペーサ83の作用により、ボルト連結部の緩みを防止することができる。
図1〜2、図4、図6に示すように、ルーフ24は、アンテナユニット56の周辺となるアウタルーフ32における前部側の上面が前下がり傾斜する第1傾斜面24Dに形成されている。ルーフ24は、アウタルーフ32における後部側の上面が後下がり傾斜する第2傾斜面24Eに形成されている。ルーフ24は、アウタルーフ32の左右両端箇所において、ルーフ24の前後両端にわたる前後長さを有して上方に膨出する左右の膨出縁部24Fを備えている。ルーフ24は、アウタルーフ32における前部側の上面に、ルーフ上の水がアンテナユニット56を迂回するようにルーフ上の水を左右の膨出縁部24Fに向けて案内する水切り溝24Gを備えている。水切り溝24Gは、第1傾斜面24Dにおけるアンテナユニット56よりも高位側の位置にて左右の膨出縁部24Fにわたる左右向きの第1溝部24Gaと、第1溝部24Gaの左右の端部からルーフ24における前端縁の左右両端部に向けて左右の膨出縁部24Fを横切る左右の第2溝部24Gbとを有している。
上記の構成により、アウタルーフ32における前部側の上面に降りかかった雨水や洗浄水などは、第1傾斜面24Dの案内作用によってアンテナユニット側に向けて流れる途中において、第1溝部24Gaに流れ込んで第1溝部24Gaの案内作用を受けるようになり、この案内作用によって左右の膨出縁部24Fに向けて流れ易くなる。そして、左右の膨出縁部24Fに向けて流れた雨水や洗浄水などは、その多くが、左右の第2溝部24Gbの案内作用を受けて、左右の膨出縁部24Fを横切りながらルーフ24における前端縁の左右両端部に向けて流れた後、左右の膨出縁部24Fの車体横外側に位置する前端縁の左右両端部からルーフ24の下方に流れ落ちる。
又、アウタルーフ32における後部側の上面に降りかかった雨水や洗浄水などは、第2傾斜面24Eの案内作用を受けてルーフ24の後端縁に向けて流れた後、ルーフ24の後端縁から下方に流れ落ちる。
これにより、ルーフ24の上面に降りかかった雨水や洗浄水などを、ルーフ24の左右中央に位置するアンテナユニット56に向けて流れ難くすることができる。その結果、雨水や洗浄水などがアンテナユニット56に悪影響を及ぼす虞、及び、アンテナユニット56の取り付け箇所からルーフ内に浸入する虞を回避することができる。
又、雨天での作業走行中においては、ルーフ24の上面に降りかかった雨水の多くが、ルーフ24における前端縁の左右両端部、又は、ルーフ24の後端縁からルーフ24の下方に流れ落ちることから、ルーフ24から流れ落ちる雨水に起因した前方視認性の低下を効果的に抑制することができる。
図4、図6に示すように、ルーフ24は、アウタルーフ32の上面のうちの左右の膨出縁部24Fの間に位置する左右中央側の面領域においては、左右中央側ほど上側に位置するように湾曲形成されている。これにより、ルーフ24の上面に降りかかった雨水や洗浄水などを、ルーフ24の左右中央に位置するアンテナユニット56に向けて更に流れ難くすることができる。その結果、雨水や洗浄水などがアンテナユニット56に悪影響を及ぼす虞、及び、アンテナユニット56の取り付け箇所からルーフ内に浸入する虞をより効果的に回避することができる。
図2、図4、図8に示すように、ルーフ24は、アンテナユニット56に隣接する第1傾斜面24Dの高位側箇所に、アンテナユニット56に対するコネクタ接続用の凹部24Hが形成されている。
この構成により、ルーフ24におけるアンテナユニット56の周辺に第1傾斜面24Dを形成して、アンテナユニット56の周辺での水捌けを良好にしながらも、ルーフ24の上面にアンテナユニット取り付け用の台座を膨出形成することなく、アンテナユニット56に対するコネクタ84の接続を行い易くすることができる。
図1〜2、図4、図8に示すように、ルーフ24は、アンテナユニット56に接続されたケーブル85と第3通信アンテナ68に接続されたケーブル86とをルーフ24の下方に位置決め案内する左右の案内溝24Kを備えている。左右の案内溝24Kは、第1傾斜面24Dに形成された第1案内部24Kaと、左右の膨出縁部24Fに形成された第2案内部24Kbとを有している。
上記の構成により、アンテナユニット用のケーブル85と第3通信アンテナ用のケーブル86とを、ルーフ24の上面から上方にはみ出させることなく、左右の案内溝24Kに沿ってルーフ24の上面側からルーフ24の下方に向けて配索することができる。これにより、アンテナユニット用のケーブル85及び第3通信アンテナ用のケーブル86が、ルーフ24の上面から浮きがって他物に引っ掛かる虞を回避することができる。
又、ルーフ24の上面にケーブル挿通用の貫通孔を形成する必要がないことから、ケーブル挿通用の貫通孔からの浸水を防止する防水部材が不要になる。その結果、部品点数の削減による構成の簡素化などを図ることができる。
図4に示すように、ルーフ24の上面には、各ケーブル85,86の案内溝24Kからの浮き上がりを阻止する左右の押え板87が着脱可能に備えられている。これにより、アンテナユニット用のケーブル85及び第3通信アンテナ用のケーブル86が、ルーフ24の上面から浮きがって他物に引っ掛かる虞をより確実に回避することができる。
図4、図8に示すように、水切り溝24Gは、水の案内性を高めるために、コネクタ接続用の凹部24H及びケーブル用の案内溝24Kよりも深く形成されている。又、水切り溝24Gは、第1溝部24Gaの左右両端側に左右の案内溝24Kが連接されることにより、第1溝部24Gaの左右中央側がケーブル用の案内溝に兼用されている。
〔別実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明に関する代表的な別実施形態を例示する。
〔1〕作業車は、以下に例示する構成が採用されていてもよい。
例えば、作業車は、左右の後輪3に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車は、左右の前輪2及び左右の後輪3に代えて左右のクローラを備えるフルクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車は、エンジン8の代わりに電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車は、エンジン8と電動モータとを備えるハイブリッド仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車は、運転モードとして自動運転モードを備えていれば、手動運転モードと協調運転モードとのいずれか一方又は双方を備えていなくてもよい。
〔2〕キャビン6のルーフ24は、リアカバー30を備えずに、インナルーフ31とアウタルーフ32との間に内部空間34が形成される構成であってもよい。
〔3〕キャビン6のルーフ24は、その上面の全体が前下がり傾斜又は後下がり傾斜するように構成されていてもよい。
〔4〕アンテナユニット56を、後下がり傾斜するルーフ24の後部側に備えて、ルーフ24におけるアンテナユニット周辺の上面が、後下がり傾斜する第2傾斜面24Eとなるように構成してもよい。この構成においては、第2傾斜面24Eに水切り溝24Gを形成することにより、雨水や洗浄水などがアンテナユニット56に悪影響を及ぼす虞などを回避することができる。
〔5〕水切り溝24Gは、その案内作用を受けたルーフ上の水が、アンテナユニット56を迂回しながら左右の膨出縁部24Fに向かうように、左右の膨出縁部24Fの間のみに形成されていてもよい。