以下では、図面を参照しながら本発明に係る接合構造及び接合方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
(第1実施形態)
図1に示されるように、第1実施形態に係る接合構造1は、例えば、複数の第1コンクリート部材10及び複数の第2コンクリート部材20を備えた構造物Sに設けられる。第1コンクリート部材10及び第2コンクリート部材20は、例えば、それぞれ柱及び梁である。
図1及び図2に示されるように、接合構造1は第1コンクリート部材10と第2コンクリート部材20を接合する。例えば、第2コンクリート部材20の鉛直上方に第1コンクリート部材10が設けられる。第1コンクリート部材10及び第2コンクリート部材20は、例えば、共にプレキャスト部材であり、予め工場で製造されたプレキャストコンクリートである。
第1コンクリート部材10は、直方体状を成す第1プレキャストブロック11と、第1プレキャストブロック11に埋め込まれた第1鉄筋12とを備えている。第2コンクリート部材20は、第1プレキャストブロック11及び第1鉄筋12と同様の第2プレキャストブロック21と第2鉄筋22とを備えている。第1プレキャストブロック11は、例えば、鉛直下方に向けられる第1端面11aを有し、第2プレキャストブロック21は、鉛直上方に向けられる第2端面21aを有する。第1端面11aと第2端面21aとが連結することによって接合構造1が構築される。
第1コンクリート部材10は、第1端面11aから第1プレキャストブロック11の内側に延びる第1凹部13を有し、第2コンクリート部材20は、第2端面21aから第2プレキャストブロック21の内側に延びる第2凹部23を有する。第1凹部13において第1鉄筋12が突出しており、第2凹部23において第2鉄筋22が突出している。
第1プレキャストブロック11は、第1プレキャストブロック11の側面11bから第1プレキャストブロック11の内側に延びる第1穴部14及び第2穴部15を有する。第1穴部14は、第2穴部15よりも第1端面11aから離れた位置に設けられる。第1穴部14及び第2穴部15のそれぞれは、第1プレキャストブロック11の内部において第1凹部13に連通している。
第1凹部13の内面13Aは、第1穴部14に連続する底面13aと、底面13aから第2穴部15にまで延びる第1側面13bと、第1側面13bから第1端面11aにまで延びる第2側面13cとを含む。底面13aからは第1鉄筋12が延び出しており、第1鉄筋12は、第1側面13b及び第2側面13cに沿うと共に第1端面11aに向かって延びている。
第1側面13bと第2側面13cとの間には、段差部13dが設けられる。段差部13dよりも底面13a側に第1側面13bが設けられており、段差部13dよりも第1端面11a側に第2側面13cが設けられている。第2側面13cは、第1側面13bよりも拡径されている。第2コンクリート部材20の第2凹部23の内面23Aは、第2鉄筋22が延び出す底面23aと、底面23aから第2端面21aにまで延びる側面23bとを含む。第2鉄筋22は、側面23bに沿って延び出している。
また、第1鉄筋12は第1端面11aからは突出しておらず、第2鉄筋22は第2端面21aから突出していない。すなわち、第1鉄筋12は第1凹部13の内側に位置しており、第2鉄筋22は第2凹部23の内側に位置している。このように第1鉄筋12及び第2鉄筋22が端面11a,21aから突出しないことにより、第1コンクリート部材10と第2コンクリート部材20の接合時に、突出した鉄筋が邪魔になることを防止できる。よって、第1コンクリート部材10及び第2コンクリート部材20の接合をスムーズに行うことが可能となる。
更に、接合構造1は、凹部13,23の内側に配置されると共に鉄筋12,22が挿入される筒状のスリーブ30と、スリーブ30の内面31及び鉄筋12,22の外面12a,22aの間に充填される第1グラウト材41と、スリーブ30の外面32及び凹部13の内面13Aの間に充填される第2グラウト材42と、スリーブ30及び第2コンクリート部材20の間に介在する封止材43とを備える。
スリーブ30は、第1コンクリート部材10と第2コンクリート部材20との間に介在する。スリーブ30は、第1鉄筋12及び第2鉄筋22を包囲して第1鉄筋12及び第2鉄筋22の接続を確保する継手である。スリーブ30は外面32から突出するフランジ部33を備える。
スリーブ30のフランジ部33の一方側が第1凹部13に挿入される第1挿入部30aとされると共に、スリーブ30のフランジ部33の他方側が第2凹部23に挿入される第2挿入部30bとされる。例えば、第1挿入部30aは第1コンクリート部材10及び第2コンクリート部材20の間から第1凹部13の段差部13d付近にまで延びており、第2挿入部30bは第1コンクリート部材10及び第2コンクリート部材20の間から第2凹部23の底面23a付近にまで延びている。
更に、スリーブ30は、スリーブ30の内外を貫通する挿入穴35を有する。挿入穴35は、第1グラウト材41を充填する後述のパイプP(図8参照)の挿入用、及び後述する固定部材50(図6参照)の挿入用として用いられる。スリーブ30は、接合構造1の施工前には第1凹部13に配置される。このとき、スリーブ30は、第1コンクリート部材10の脱落防止孔である第2穴部15及び挿入穴35に挿通される固定部材50によって第1凹部13に固定される。
挿入穴35は、例えば、フランジ部33の上に形成される。フランジ部33の下には封止材43が配置され、封止材43はフランジ部33と第2コンクリート部材20の第2端面21aとの間に介在する。これにより、スリーブ30の外側の部分において、フランジ部33が第2凹部23を覆うと共に封止材43が第2凹部23を封止する。
封止材43は、可撓性部材(又は弾性部材)であってもよい。この場合、封止材43は、スリーブ30の自重によって圧縮され、スリーブ30と第2コンクリート部材20とに密着して潰れた状態となる。この封止材43により、スリーブ30と第2コンクリート部材20の間の隙間が封止されるので、当該隙間からの第1グラウト材41の漏れが抑制される。なお、封止材43は硬質の材料によって構成されていてもよいが、封止材43が可撓性部材(又は弾性部材)である場合には、スリーブ30の衝撃を封止材43によって緩和しうると共に、封止材43が変形してスリーブ30及び第2コンクリート部材20に密着するため第1グラウト材41の漏れをより確実に抑制することが可能となる。
第1グラウト材41は、例えば、高強度のグラウト材であり、第2グラウト材42の強度よりも高い強度を備えた充填材である。第1グラウト材41の強度は、2本の鉄筋12,22の接合を確保可能な強度とされている。一方、第2グラウト材42の強度は、第1プレキャストブロック11の強度、又は第2プレキャストブロック21の強度と同程度である。
次に、本実施形態に係るコンクリート部材の接合方法について説明する。以下では、柱である第1コンクリート部材10と、梁である第2コンクリート部材20とを接合する接合方法の一例について説明する。この接合方法は、現場打設部分を設けないで第1コンクリート部材10及び第2コンクリート部材20を架設する手順を含んでいる。まず、図3(a)及び図3(b)に示されるように、第2コンクリート部材20を揚重機によって所定の高さに吊り上げ、第2コンクリート部材20の一端を第1コンクリート部材10に横方向に差し込む。
次に、図4(a)及び図4(b)に示されるように、第1コンクリート部材10を揚重機によって吊り上げて(第1コンクリート部材を吊り上げる工程)、第1コンクリート部材10の下端の各第1凹部13にスリーブ30を配置する。このとき、各第1凹部13において突出している各第1鉄筋12をスリーブ30に挿入した状態でスリーブ30を各第1凹部13の内側に入れ込む(スリーブを配置する工程)。なお、スリーブ30を第1凹部13に配置する前に、スリーブ30のフランジ部33の下面に封止材43を固定しておいてもよい。
続いて、図5(a)及び図5(b)に示されるように、第1コンクリート部材10を第2コンクリート部材20の第2端面21aの上に降ろし、第2凹部23の鉛直上方に各第1凹部13を対向させる(第1凹部を対向させる工程)。このとき、第2コンクリート部材20に対して第1コンクリート部材10を水平移動させる。そして、各第1凹部13が第2コンクリート部材20の各第2凹部23の直上に位置するように、第2コンクリート部材20に対する第1コンクリート部材10の位置合わせを行う(第1コンクリート部材の位置合わせを行う工程)。
また、スリーブ30を第1凹部13に入れ込むときには、図6に示されるように、固定部材50によってスリーブ30を第1凹部13に固定する(スリーブを固定する工程)。固定部材50は、例えば、外面に雄螺子が形成された落下防止ネジであり、挿入穴35の内面に雌ネジが形成されていてもよい。この場合、第1凹部13にスリーブ30を配置した状態において、挿入穴35の高さを第2穴部15の高さに合わせ、第1コンクリート部材10の側面11bから固定部材50を第2穴部15及び挿入穴35に挿入し、挿入穴35の内面の雌ネジに固定部材50をねじ込むことにより、スリーブ30を第1凹部13に固定する。
次に、図7及び図8に示されるように、固定部材50を挿入穴35及び第2穴部15から引き抜いてスリーブ30を鉛直下方に移動させる。すなわち、スリーブ30が第1凹部13及び第2凹部23に跨るようにスリーブ30を移動し、第1鉄筋12及び第2鉄筋22をスリーブ30に挿入する(スリーブに挿入する工程)。固定部材50を挿入穴35から引き抜くと、スリーブ30は自重で落下し、フランジ部33の下の封止材43が第2コンクリート部材20の第2端面21aに当接することにより、スリーブ30の位置が確定する。すなわち、スリーブ30が移動すると、スリーブ30の挿入穴35の高さは、第1コンクリート部材10及び第2コンクリート部材20の間に形成された間隙Kの高さに一致する。
封止材43が第2端面21aに載せられた状態において、第1コンクリート部材10及び第2コンクリート部材20の間に形成された間隙Kに、第1グラウト材41を充填するパイプPを挿入する。具体的には、パイプPの挿入前までにパイプPの先端又は挿入穴35に逆流防止弁45を配置し(逆流防止弁を配置する工程)、スリーブ30の内部空間とパイプPの内部空間との間に逆流防止弁45が位置するように、挿入穴35にパイプPを挿入する。
挿入穴35にパイプPを挿入した後には、パイプPに第1グラウト材41を注入し、スリーブ30の内面31と第1鉄筋12の外面12a及び第2鉄筋22の外面22aとの間に第1グラウト材41を充填する(第1グラウト材を充填させる工程)。パイプPからスリーブ30の内側に注入された第1グラウト材41は、第2凹部23の底面23aに落下する。その後、第1グラウト材41の液面は底面23aから徐々に上昇する。
第1グラウト材41の液面は、スリーブ30の外側及びスリーブ30の内側の両方において上昇する。スリーブ30の外側における第1グラウト材41の液面は、第2端面21aの高さに達すると、封止材43にせき止められる。一方、スリーブ30の内側における第1グラウト材41の液面は、第2端面21aの高さに達してもせき止められず更に上昇する。
スリーブ30の内側における第1グラウト材41の液面がスリーブ30の上端30cに達すると、第1グラウト材41が上端30cからスリーブ30の外側に回り込み、第1グラウト材41はスリーブ30の外側において落下する。スリーブ30の外側において落下する第1グラウト材41は、間隙Kから視認される。間隙Kを視認してスリーブ30の外側における第1グラウト材41の落下を確認することにより、第1グラウト材41が十分に充填されていることを把握する(第1グラウト材の充填を確認する工程)。
第1グラウト材41の充填後は、パイプPを間隙Kから引き抜く。このとき、逆流防止弁45をパイプPに配置した場合にはパイプPと共に逆流防止弁45が引き抜かれ、逆流防止弁45を挿入穴35に配置した場合には逆流防止弁45は挿入穴35に残存する。また、図9に示されるように、パイプPを間隙Kから引き抜くと共に、間隙Kに型枠Fを配置する(型枠を配置する工程)。その後、固定部材50が挿入されていた第2穴部15からパイプP等によって第2グラウト材42を第1凹部13に注入する。このとき、第2グラウト材42は、フランジ部33に落下して間隙Kに充填される。
図2に示されるように、第2グラウト材42は、間隙Kに充填された後、スリーブ30の外面32及び第1凹部13の第2側面13cの間にも充填される(第2グラウト材を充填する工程)。外面32及び第2側面13cの間において第2グラウト材42の液面は上昇する。この第2グラウト材42の液面は、スリーブ30の上端30cの高さに達しても更に上昇し、第1鉄筋12の外面12a及び第1側面13bの間において更に上昇する。
第2グラウト材42の液面が第1穴部14の高さに達すると、第2グラウト材42は第1穴部14に進入し、その後、第1穴部14から第2グラウト材42が外部に露出する。この第2グラウト材42を視認して第2グラウト材42の充填を確認することにより、第2グラウト材42が十分に充填されていることを把握する(第2グラウト材の充填を確認する工程)。以上のように第2グラウト材42が充填され、第2グラウト材42が硬化した後に、接合構造1が完成する。
次に、本実施形態に係る接合構造1及び接合方法の作用効果について説明する。
本実施形態に係る接合構造1及び接合方法では、第1コンクリート部材10の第1凹部13と第2コンクリート部材20の第2凹部23に跨るように配置されると共に、第1コンクリート部材10の第1鉄筋12及び第2コンクリート部材20の第2鉄筋22が挿入される筒状のスリーブ30を備える。更に、接合構造1は、スリーブ30の内面31と第1鉄筋12及び第2鉄筋22の外面12a,22aとの間に充填される第1グラウト材41と、スリーブ30の外面32と第1凹部13の内面13Aとの間に充填される第2グラウト材42とを備える。
よって、第1グラウト材41と第2グラウト材42とを打ち分けることができる。従って、第1グラウト材41と第2グラウト材42の種類を変更することができるので、第1グラウト材41及び第2グラウト材42の種類に応じて必要十分な接合強度を確保することができると共に、第1グラウト材41及び第2グラウト材42にかかるコストを抑えることができる。
また、図6に示されるように、スリーブ30は、スリーブ30を第1凹部13に固定する固定部材50が引っ掛けられる挿入穴35を有する。よって、第1凹部13にスリーブ30を配置するときに、スリーブ30の挿入穴35に固定部材50を引っ掛けることにより、第1凹部13にスリーブ30を固定させることができる。従って、スリーブ30を移動させる前に第1凹部13におけるスリーブ30の位置を安定させることができるので、スリーブ30を効率よく移動させることができる。その結果、2つのコンクリート部材10,20の接合の作業を効率よく行うことができる。
また、スリーブ30は、第2凹部23を覆うように第2端面21aに載せられるフランジ部33を有する。よって、スリーブ30が移動するときにフランジ部33が第2端面21aに載せられて第2凹部23を覆うので、スリーブ30をより効率よく移動させることができる。また、フランジ部33が第2端面21aに載せられたときにスリーブ30の移動が完了したことを把握することができる。従って、2つのコンクリート部材10,20の接合の作業をより効率よく行うことができる。
また、接合構造1は、スリーブ30と第2コンクリート部材20との間に介在する封止材43を備える。よって、スリーブ30の移動によってスリーブ30が第2コンクリート部材20に接触するときに、スリーブ30と第2コンクリート部材20との間に封止材43が介在する。従って、スリーブ30と第2コンクリート部材20との間におけるグラウト材(第1グラウト材41)の流出を封止材43によって抑制することができる。
また、第1グラウト材41の強度は、第2グラウト材42の強度よりも高い。従って、スリーブ30の内面31と第1鉄筋12及び第2鉄筋22の外面12a,22aとの間に充填される第1グラウト材41の強度は、スリーブ30の外面32と第1凹部13の内面13Aとの間に充填される第2グラウト材42の強度よりも高い。
よって、第1グラウト材41の強度が高いことにより、第1鉄筋12及び第2鉄筋22の接合強度を高めることができる。更に、第2グラウト材42の強度が相対的に低いことにより、第2グラウト材42にかかるコストを低減させることができる。従って、高い接合強度を確保しつつコストを抑えることができる。
本実施形態に係る接合方法は、図8に示されるように、パイプPへの第1グラウト材41の逆流を防止する逆流防止弁45を配置する工程を備える。よって、スリーブ30にパイプPを挿入し、パイプPに第1グラウト材41を注入するときに、逆流防止弁45によって第1グラウト材41の逆流が防止される。従って、第1グラウト材41の注入時における第1グラウト材41の逆流を防止することができるので、第1グラウト材41を充填させる作業を効率よく行うことができる。よって、2つのコンクリート部材10,20の接合の作業を効率よく行うことができる。
また、この接合方法は、図6に示されるように、スリーブ30を第1凹部13に固定した後に、第2凹部23の鉛直上方に第1凹部13を対向させる工程を備える。よって、第2端面21aの鉛直上方に第1凹部13を対向させる場合において、スリーブ30の挿入穴35に固定部材50を挿入することにより、第1凹部13にスリーブ30を確実に固定させることができる。
従って、第2コンクリート部材20の鉛直上方に第1コンクリート部材10を接合させるときに第1凹部13にスリーブ30が固定されるので、その後、スリーブ30の固定を解除してスリーブ30を自重で鉛直下方に移動させることにより、スリーブ30の移動を効率よく行うことができる。よって、接合の作業の更なる効率化に寄与する。
また、この接合方法では、スリーブ30が移動すると、スリーブ30の挿入穴35の高さは、第1コンクリート部材10及び第2コンクリート部材20の間に形成された間隙Kの高さに一致する。よって、パイプPを間隙K及び挿入穴35に容易に挿入することができる。従って、パイプPの挿入を容易に行うことができるので、作業を一層効率よく行うことができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る接合構造及び接合方法について図10〜図13を参照しながら説明する。以降では、第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。図10に示されるように、第2実施形態では、スリーブ30とは形状が異なるスリーブ70が設けられる。
スリーブ70は、その外面72にスリーブ70の径方向外側に突出する突出部71を備えており、突出部71とフランジ部73の間に、固定部材50が挿入される挿入穴75が設けられる。挿入穴75の内面には、固定部材50が螺合する雌ネジが形成されていてもよい。フランジ部73は、注入される第1グラウト材41が通る注入穴73aを有する。注入穴73aは、フランジ部73において上下に貫通している。
第2実施形態に係る接合方法について説明する。まず、スリーブ70を第1コンクリート部材10の第1凹部13に配置すると共に、挿入穴75に固定部材50を引っ掛けることによりスリーブ70を第1凹部13に固定する(スリーブを第1凹部に固定する工程)。次に、図11に示されるように、固定部材50を引き抜いてスリーブ70を自重で落下させ、第1凹部13及び第2凹部23に跨るようにスリーブ70を移動させて第1鉄筋12及び第2鉄筋22をスリーブ70に挿入する(第1鉄筋及び第2鉄筋をスリーブに挿入する工程)。
続いて、挿入穴75にパイプPを挿入し、パイプPから挿入穴75に第1グラウト材41を注入する。このとき、第1グラウト材41は、挿入穴75から注入穴73aに入り込み注入穴73aからスリーブ70の外面72に沿って下方に移動する。下方に移動して底面23aに第1グラウト材41が到達すると、その後、第1グラウト材41の液面が上昇する。
第1実施形態と同様、スリーブ70の外側の第1グラウト材41は封止材43によってせき止められるが、スリーブ70の内側の第1グラウト材41はスリーブ70の上端70cにまで達する。スリーブ70の内側の第1グラウト材41は、スリーブ70の上端70cに達した後、スリーブ70の外面72に回り込む。そして、外面72から下方に移動する第1グラウト材41を間隙Kから視認することにより、第1グラウト材41の充填を確認する。その後、図12に示されるように、型枠Fを間隙Kに配置し、第1実施形態と同様に第2グラウト材42を充填させた後に、第2実施形態の接合構造が完成する。
以上、第2実施形態に係る接合構造及び接合方法において、スリーブ70は、図10に示されるように、スリーブ70を第1凹部13に固定する固定部材50が引っ掛けられる挿入穴75を有する。よって、スリーブ70を移動させる前に第1凹部13におけるスリーブ70の位置を安定させることができるので、第1実施形態と同様の効果が得られる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る接合構造81及び接合方法について図13〜図16を参照しながら説明する。図13に示されるように、接合構造81は、第1コンクリート部材90及びスリーブ100の構成が前述した各実施形態と異なっている。第1コンクリート部材90は、第1凹部13とは異なる形状の第1凹部93を有する第1プレキャストブロック91を備える。
第1凹部93の内面93Aは、第1穴部14に連続する底面93aと、底面93aから第1プレキャストブロック91の第1端面91aにまで延びる第1側面93bとを含む。第1凹部93は、段差部13dに相当する構成を有しない。すなわち、第1凹部93の第1側面93bの径は、第1凹部93の長手方向(鉛直方向)に沿って一定とされており、第2凹部23の側面23bの径と同程度とされている。スリーブ100は、フランジ部33,73に相当する構成を有さず、スリーブ100の径はスリーブ100の長手方向に沿って一定とされている。また、スリーブ100は、前述と同様、固定部材50が引っ掛けられる挿入穴35を有する。
次に、第3実施形態に係る接合方法について説明する。まず、図14に示されるように、スリーブ100の軸線方向(長手方向又は鉛直方向)の端部100aに封止材43を取り付ける。そして、封止材43を下に向けてスリーブ100を第1凹部93に挿入すると共に、第1凹部93において突出する第1鉄筋92をスリーブ100に挿入する。
このとき、スリーブ100の挿入穴35に固定部材50を挿入し、固定部材50を挿入穴35にねじ込み、固定部材50を挿入穴35に引っ掛けることによってスリーブ100を第1凹部93に固定する(スリーブを第1凹部に固定する工程)。続いて、図15に示されるように、固定部材50によるスリーブ100の固定を解除してスリーブ100を落下させることにより、スリーブ100を移動してスリーブ100に第1鉄筋92及び第2鉄筋22を挿入する。
スリーブ100を落下させるとスリーブ100の端部100aに取り付けられた封止材43が第2凹部23の底面23aに当接する。ところで、スリーブ100の挿入穴35の高さは、底面23aからの第2端面21aの高さより若干高い程度とされている。よって、封止材43が底面23aに当接すると、挿入穴35の高さは、第1コンクリート部材90及び第2コンクリート部材20の間に形成された間隙Kの高さに一致する。よって、間隙KにパイプPを挿入してパイプPを挿入穴35に挿し込んだ後に、パイプPからスリーブ100の内側に第1グラウト材41を注入する(第1グラウト材を充填する工程)。
注入された第1グラウト材41は、スリーブ100の内側において下方に移動し、スリーブ100の端部100a(下端)に向かって流れ込む。端部100aと底面23aの間には封止材43が介在しているので、端部100aに流れ込んだ第1グラウト材41は、封止材43によってスリーブ100の外側への移動が抑制される。従って、スリーブ100の内側において第1グラウト材41の液面が上昇する。
第1グラウト材41の液面がスリーブ100の上端100cまで達すると、第1グラウト材41は上端100cからスリーブ100の外側に流れ込み、スリーブ100の外面102に沿って下方に移動する。この下方に移動する第1グラウト材41を間隙Kから視認することにより、第1グラウト材41が充填されたことを確認する(第1グラウト材の充填を確認する工程)。
第1グラウト材41の充填が完了した後には、図16に示されるように、型枠Fを間隙Kに設置する(型枠を設置する工程)。そして、第2穴部15から第1凹部93に第2グラウト材42を充填する(第2グラウト材を充填する工程)。図13に示されるように、第2グラウト材42は、スリーブ100の外面102と第1凹部93の内面93Aと第2凹部23の内面23Aとの間に充填される。
そして、第1穴部14から外部に露出した第2グラウト材42を視認して第2グラウト材42の充填を確認することにより、第2グラウト材42が十分に充填されていることを確認する(第2グラウト材の充填を確認する工程)。このように、第2グラウト材42が充填され、第2グラウト材42が硬化した後に、接合構造81が完成する。
以上、第3実施形態に係る接合構造81及び接合方法では、スリーブ100が挿入穴35を有する。従って、図14に示されるように、挿入穴35に固定部材50を引っ掛けて固定部材50でスリーブ100を第1凹部93に固定することにより、スリーブ100の位置を安定させることができる。よって、前述した各実施形態と同様の効果が得られる。
また、第1コンクリート部材90の第1凹部93の径は、第1凹部93の長手方向(鉛直方向)に沿って一定とされている。更に、スリーブ100は、フランジ部を有しておらず、スリーブ100の径はスリーブ100の長手方向に沿って一定とされている。従って、第3実施形態に係る第1コンクリート部材90及びスリーブ100は、形状を単純化することができる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る接合構造及び接合方法について図17〜図19を参照しながら説明する。図17(a)及び図17(b)に示されるように、第4実施形態の接合構造は、第1コンクリート部材120がPC板(プレキャスト板)である。第1コンクリート部材120は、前述した各実施形態と同様に、複数の第1鉄筋12及び複数の第1凹部13を備える。この接合方法では、まず第1コンクリート部材120を揚重機によって吊り上げて、第1コンクリート部材120の下部に位置する各第1凹部13にスリーブ30を固定する。このとき、各スリーブ30に各第1鉄筋12を挿入する。
続いて、図18(a)及び図18(b)に示されるように、第1コンクリート部材120が所定の高さ(第2コンクリート部材20の第2端面21aに接する程度の高さ)に位置するように第1コンクリート部材120を吊り下げる。そして、第1コンクリート部材120を水平方向に移動させて各スリーブ30の位置を第2コンクリート部材20の各第2凹部23の位置に合わせる。
その後、図19に示されるように、前述の各実施形態と同様、スリーブ30を下方に移動させ第1グラウト材41及び第2グラウト材42の充填を行い各グラウト41,42を硬化させて、接合構造111が完成する。以上、第4実施形態のように、PC板である第1コンクリート部材120を備えた接合構造111を構築することも可能である。
(第5実施形態)
続いて、第5実施形態に係る接合構造及び接合方法について図20〜図22を参照しながら説明する。図20(a)及び図20(b)に示されるように、第5実施形態の接合構造の第1コンクリート部材140はPC板であると共に、第1コンクリート部材140の第1凹部143が欠き込みとされている。第1凹部143には、複数本の第1鉄筋142が突出している。
第5実施形態に係る接合方法では、第1コンクリート部材140を揚重機によって吊り上げて、第1コンクリート部材140の下部に位置する第1凹部143に設けられた各第1鉄筋142にスリーブ30を挿入し、スリーブ30を第1凹部143に固定する。そして、図21(a)及び図21(b)に示されるように、第1コンクリート部材140が所定の高さに位置するように第1コンクリート部材140を吊り下げ、第1コンクリート部材140を水平方向に移動させることにより、各スリーブ30の位置を第2コンクリート部材20の各第2凹部23の位置に合わせる。
その後、図22に示されるように、各スリーブ30を下方に移動させ、第1グラウト材41及び第2グラウト材42の充填及び硬化を行うことによって、接合構造131が完成する。この第5実施形態のように、第1コンクリート部材140の第1凹部143が複数の第1鉄筋142を露出する欠き込みであっても、前述の各実施形態と同様の効果が得られる。
以上、本発明に係る接合構造及び接合方法の実施形態について説明したが、本発明は、前述した各実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、接合構造の各部、及び接合方法の各工程は、上記の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
一形態に係る接合構造は、第1コンクリート部材と第2コンクリート部材とが接合される接合構造であって、第1コンクリート部材は、第1コンクリート部材の一端に位置する第1端面と、第1端面から第1コンクリート部材の内側に延びる第1凹部と、第1凹部において突出する第1鉄筋と、を有し、第2コンクリート部材は、第1端面に対向する第2端面と、第2端面から第2コンクリート部材の内側に延びる第2凹部と、第2凹部において突出する第2鉄筋と、を有し、第1凹部及び第2凹部に跨るように配置されて第1鉄筋及び第2鉄筋が挿入される筒状のスリーブと、スリーブの内面と第1鉄筋の外面及び第2鉄筋の外面との間に充填される第1グラウト材と、スリーブの外面と第1凹部の内面及び第2凹部の内面との間に充填される第2グラウト材と、を備え、第1グラウト材の強度は、第2グラウト材の強度よりも高い。
他の形態に係る接合構造は、第1コンクリート部材と第2コンクリート部材とが接合される接合構造であって、第1コンクリート部材は、第1コンクリート部材の下端に位置する第1端面と、第1端面から第1コンクリート部材の上側に延びる第1凹部と、第1凹部において突出する第1鉄筋と、を有し、第2コンクリート部材は、第1端面に対向する第2端面と、第2端面から第2コンクリート部材の下側に延びる第2凹部と、第2凹部において突出する第2鉄筋と、を有し、第1凹部及び第2凹部に跨るように配置されて第1鉄筋及び第2鉄筋が挿入される筒状のスリーブと、スリーブの内面と第1鉄筋の外面及び第2鉄筋の外面との間に充填される第1グラウト材と、スリーブの外面と第1凹部の内面及び第2凹部の内面との間に充填される第2グラウト材と、を備える。
また、前述の実施形態では、雄ネジが形成された固定部材50を挿入穴35に形成された雌ネジにねじ込むことによって固定部材50をスリーブ30に引っ掛けて固定する例について説明した。しかしながら、固定部材及び挿入穴の形状は上記の例に限定されず適宜変更可能である。例えば、断面非円形の棒状の固定部材を断面非円形の挿入穴に挿入することにより、固定部材をスリーブに引っ掛けて固定させてもよい。
また、前述の実施形態では、第1コンクリート部材及び第2コンクリート部材が予め工場で製造されたプレキャストコンクリートである例について説明した。しかしながら、第1コンクリート部材及び第2コンクリート部材は、プレキャストコンクリートでなくてもよい。
また、前述の実施形態では、第1グラウト材41の強度が第2グラウト材42の強度よりも高い例について説明したが、第1グラウト材及び第2グラウト材の強度の関係は、上記の例に限定されない。例えば、第1グラウト材の種類と第2グラウト材の種類とが互いに同一であってもよい。
また、前述の各実施形態では、第2コンクリート部材の鉛直上方に第1コンクリート部材が接合される接合構造について説明したが、第1コンクリート部材及び第2コンクリート部材が接合される方向は鉛直方向でなくてもよい。例えば、第1コンクリート部材と第2コンクリート部材とを水平方向に接続する接合構造及び接合方法であってもよい。更に、前述の実施形態では、構造物Sに設けられる接合構造について説明したが、接合構造が設けられる構造物の構成は適宜変更可能である。