JP6865952B2 - 1流体ノズル - Google Patents

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本明細書で開示する技術は、外部から供給される洗浄液を噴射する1流体ノズルに関する。
従来、外部から供給される洗浄液を洗浄対象物に向けて噴射し、飛行中に微粒化した洗浄液の衝突による物理的な作用によって微細な異物を除去する1流体ノズルにおいて、洗浄液流路にテーパ部が設けられているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
図11は特許文献1に記載の洗浄液噴射部(1流体ノズルに相当)のテーパ部を説明するための拡大図である。図11に示すように、特許文献1に記載の洗浄液噴射部200の内部には洗浄液の貯留空間に連通した流通路201が形成されており、その先端部にテーパ部202を介して洗浄液噴射口203が形成されている。当該洗浄液噴射部200ではテーパ部202のテーパ角度(中心軸線に対する傾斜角度)は60度近傍の角度とされている。
特開2002−11387号公報(段落0008及び図3)
ところで、1流体ノズルは洗浄力の更なる向上が望まれている。洗浄力を向上させる方法としては洗浄液の圧力をより高くして粒子速度を上昇させる方法が考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の1流体ノズルは圧力を高くすると1流体ノズルの内部で縮流が生じ易い構造である。一般に縮流が生じると流速の損失が生じ、1流体ノズルから噴射された後の粒子速度が上昇し難いという問題がある。
本明細書では、20MPa〜30MPaなどの超高圧帯でも過度な微粒化を避けて圧力に起因するエネルギーを効率よく液滴の粒子速度の上昇に変換し、それにより洗浄力を向上させることができる1流体ノズルを開示する。
本明細書によって開示される1流体ノズルは、外部から供給される洗浄液を噴射する1流体ノズルであって、洗浄液流路を有するノズル本体を備え、前記洗浄液流路は上流側から下流側に向かって縮径するテーパ部を有し、前記テーパ部のテーパ角度が7.5度〜22.5度の範囲内である。
上記の1流体ノズルによると、テーパ部のテーパ角度を7.5度〜22.5度の範囲内としたので、従来の1流体ノズルのようにテーパ角度が60度近傍の場合に比べ、20MPa〜30MPaの超高圧帯でも縮流を抑制することができる。このため20MPa〜30MPaなどの超高圧帯でも過度な微粒化を避けて圧力に起因するエネルギーを効率よく液滴の粒子速度の上昇に変換することができ、それにより洗浄力を向上させることができる。
また、前記洗浄液流路は前記テーパ部の下流側の端部から円筒状に延びる細管部を有し、前記細管部の長さLを前記細管部の内径Dで除算した比が1〜7の範囲内であってもよい。
上記の1流体ノズルによると、超高圧帯での洗浄力を維持しつつ1流体ノズルを小型化することができる。
また、前記テーパ角度が13度〜17度であってもよい。
上記の1流体ノズルによると、他のテーパ角度に比べて縮流をより抑制することができる。
また、前記テーパ角度が13度〜17度であり、前記細管部の長さLを前記細管部の内径Dで除算した比が3〜5であってもよい。
上記の1流体ノズルによると、テーパ角度が13度〜17度の場合に、粒子速度が遅くならない範囲で細管部の長さを極力短くすることができる。
本明細書によって開示される1流体ノズルによれば、20MPa〜30MPaなどの超高圧帯でも過度な微粒化を避けて圧力に起因するエネルギーを効率よく液滴の粒子速度の上昇に変換することができ、それにより洗浄力を向上させることができる。
実施形態に係る1流体ノズルの斜視図 1流体ノズルの上面図 図2に示すA方向から見た側面図 図2に示すB−B線の断面図 洗浄液流路を拡大して示す断面図 噴射距離100mmのときの平均粒子速度を示すグラフ 噴射距離100mmのときの平均粒子径を示すグラフ 噴射距離100mmのときの洗浄力を示すグラフ 噴射距離60mmのときの洗浄力を示すグラフ 比較例に係る大径部と小径部とが直接接続された1流体ノズルの洗浄液流路を拡大して示す断面図 従来のテーパ部を説明するための拡大図
<実施形態>
実施形態を図1ないし図10によって説明する。以降の説明では前後方向とは図4に示す前後方向を基準とする。また、以降の説明では後側を洗浄液の上流側、前側を下流側とする。
先ず、図1〜図3を参照して、本実施形態に係る1流体ノズルとしての洗浄ノズル1の概略について説明する。洗浄ノズル1は図示しない高圧ポンプによって加圧された超純水などの洗浄液(外部から供給される洗浄液の一例)を噴射してフラットパネルディスプレイ、半導体、プリント基板、精密部品などの洗浄対象物に付着している微細な異物を除去する1流体の洗浄ノズルであり、特に20MPa〜30MPaの超高圧帯で使用されるものである。
(1)洗浄ノズルの構成
図4を参照して、洗浄ノズル1の構成について説明する。洗浄ノズル1は円柱状のノズル本体10と、ノズル本体10を囲むケース11とを備えている。ノズル本体10は超硬やセラミックスなどの高硬度の素材で形成されており、ケース11は金属や樹脂などで形成されている。なお、本実施形態では洗浄ノズル1がケース11を備えている場合を例に説明するが、洗浄ノズル1は必ずしもケース11を備えていなくてもよい。
図5に示すように、ノズル本体10にはノズル本体10を前後方向に貫通する洗浄液流路12が形成されている。洗浄液流路12の後側を向く開口13は洗浄液が流入する流入口であり、前側を向く開口14は洗浄液が噴射される噴射口である。洗浄液流路12は流入口13から前側に向かって縮径するテーパ部15と、テーパ部15の前端から前側に向かって円筒状に延びる細管部16とを有している。テーパ部15は円錐台状(言い換えると円錐の先端部が切り落とされた形状)に形成されている。
テーパ部15を設けた理由は、洗浄液流路12を途中で縮径することにより、圧力に起因するエネルギーを損失することなく流速の上昇に変換し、それにより洗浄液の粒子速度をより上昇させるためである。ここで流量とは、洗浄対象物に洗浄液を噴射するときの1分当たりの噴射量(リットル/分)のことをいう。
ところで、洗浄液流路12を途中で縮径する方法としては、図10に示す比較例のようにテーパ部15を設けず、大径部101と小径部102とを直接接続する方法も考えられる。しかしながら、そのようにすると小径部102に流入した洗浄液に縮流50が生じ、それにより液流れのエネルギー損失が生じて洗浄液の流速が低下し、噴射口14から噴射される洗浄液の粒子速度が上昇し難くなってしまう。
そこで、本願発明者は洗浄液流路12の形状が異なる複数の洗浄ノズルを作成して実験を行った。その結果、テーパ部15を設けると縮流が抑制されること、言い換えると圧力によるエネルギー損失が少ないことを見出した。このため、洗浄ノズル1では大径部101と小径部102とを直接接続するのではなくテーパ部15を設けることによって洗浄液流路12を縮径している。
(2)洗浄ノズルの各部の角度及び寸法比
図5に示すように、本実施形態ではテーパ部15のテーパ角度を13度〜17度としている。前述したように本実施形態では縮流を抑制するためにテーパ部15が設けられているが、縮流が抑制される程度はテーパ部15のテーパ角度によっても異なる。そこで、本願発明者はテーパ角度が異なる複数の洗浄ノズルを作成して実験を行った。その結果、超高圧帯でもテーパ角度を7.5度〜22.5度の範囲内にすると従来のように60度近傍の角度に比べて縮流が抑制され、粒子速度が上昇することを見出した。特に、本願発明者が実験したところでは、テーパ角度が13度〜17度のとき、他のテーパ角度に比べて縮流をより抑制することができた。このため、本実施形態ではテーパ角度を13度〜17度としている。
また、本実施形態では、細管部16の長さLsと細管部16の内径D2との比(=Ls/D2)を3〜5としている。一般に縮流は層流(流体の流線が管軸と平行な規則正しい流れ)に遷移し、その後に乱流(流体が不規則に運動している乱れた流れ)に遷移する。通常、縮流によって生じた液流れのエネルギー損失は乱流に遷移するまでの間にある程度回復するので、乱流では縮流や層流に比べて流速が速くなる。しかしながら、乱流域で噴射するためにはLs/D2を10程度まで大きくする必要があった。
これに対し、本願発明者が実験的にLs/D2を小さくしたところ、Ls/D2が1〜7の範囲内でも噴射挙動が乱流と思われる動きが確認された。ただし、1〜7の範囲内であっても最適なLs/D2はテーパ角度などによって異なり得る。本願発明者が実験したところでは、テーパ角度が13度〜17度の場合は、Ls/D2が3より小さいと3以上の場合に比べて粒子速度が遅くなる傾向があることが確認された。これは、Ls/D2が3より小さいと細管部16が短過ぎて乱流への遷移が間に合っていないからであると考えられる。逆に、Ls/D2を5より大きくしても粒子速度は大きく上昇しないことも確認された。このため、本実施形態では粒子速度が遅くならない範囲で細管部16の長さを極力短くすることができる3〜5を最適なLs/D2とした。
また、本実施形態ではテーパ部15の長さLpと細管部16の長さLsとの比(=Lp/Ls)を1.2〜1.6としている。なお、Lp/Lsは1.2〜1.6に限られるものではない。また、本実施形態では流入口13の径D1と細管部16の長さLsとが同じになっているが、流入口13の径D1と細管部16の長さLsとは必ずしも同じでなくてもよい。
(3)実験結果
次に、図6及び図7を参照して、洗浄ノズル1及び従来の洗浄ノズルについて洗浄液の圧力を変えながら噴射距離が100mmのときの平均粒子速度及び平均粒子径を測定する実験を行った結果について説明する。ただし、ここでいう従来の洗浄ノズルとは洗浄液流路がテーパ部を有していないストレート形状のものであり、洗浄液流路の内径が洗浄ノズル1の流入口13の径D1とほぼ等しいものである。
図6において実線は洗浄ノズル1の平均粒子速度であり、点線は従来の洗浄ノズルの平均粒子速度である。ここで、洗浄対象物にダメージを与えない適切な流量は洗浄対象物によって異なるが、ここでは1.2リットル/分程度が適切な流量である洗浄対象物を想定して説明する。
この実験では圧力を変えながら流量の測定も行った。その結果、従来の洗浄ノズルでは圧力が10.7MPaのときに流量が1.2リットル/分となり、洗浄ノズル1では圧力が22.5MPaのときに流量が1.2リットル/分となった。図6から判るように、同じ流量(ここでは1.2リットル/分)で比較した場合、洗浄ノズル1は従来の洗浄ノズルに比べて平均粒子速度が速くなっている。
図7において実線は洗浄ノズル1の平均粒子径であり、点線は従来の洗浄ノズルの平均粒子径である。図7から判るように、同じ流量(ここでは1.2リットル/分)で比較した場合、洗浄ノズル1は従来の洗浄ノズルに比べて平均粒子径が小さくなっている、すなわち洗浄液がより微粒化している。通常、圧力を高くすると洗浄液が過度に微粒化し、それにより短い噴射距離で失速して平均粒子速度が遅くなってしまうことが懸念される。しかしながら、前述した図6に示すように洗浄ノズル1は従来の洗浄ノズルに比べて平均粒子速度が速くなっていることから、この微粒化は平均粒子速度が遅くなってしまうほどの過度な微粒化ではないことが判る。
次に、図8及び図9を参照して、洗浄ノズル1及び従来のストレート形状の洗浄ノズルを用いて同じ流量(ここでは1.2リットル/分)で洗浄対象物を洗浄する実験を行った結果について説明する。この実験では評価用の基板に所定の粒子を汚れとして疑似的に付着させ、その粒子をどの程度除去できたかを測定することによって行った。
図8は洗浄ノズルと洗浄対象物との距離が100mmのときの実験結果を示している。図8に示すように、従来の洗浄ノズルは除去率が24.9%であったのに対し、洗浄ノズル1は70.1%であった。また、図9は洗浄ノズルと洗浄対象物との距離が60mmのときの実験結果を示している。図9に示すように、従来の洗浄ノズルは除去率が19.4%であったのに対し、洗浄ノズル1は85.4%であった。このように、洗浄ノズル1は同じ流量でも従来のストレート形状の洗浄ノズルに比べて洗浄能力が大幅に向上していることが確認された。
(4)実施形態の効果
以上説明した洗浄ノズル1によると、洗浄液流路12は後側(上流側)から前側(下流側)に向かって縮径するテーパ部15を有しており、テーパ部15のテーパ角度が7.5度〜22.5度の範囲内であるので、テーパ角度が60度近傍の従来の洗浄ノズルに比べ、20MPa〜30MPaの超高圧帯でも縮流を抑制することができる。このため20MPa〜30MPaなどの超高圧帯でも過度な微粒化を避けて圧力に起因するエネルギーを効率よく液滴の粒子速度の上昇に変換することができ、それにより洗浄力を向上させることができる。
更に、洗浄ノズル1によると、細管部16の長さLsを細管部16の内径D2で除算した比であるLs/D2が1〜7の範囲内であるので、従来のようにLs/D2を10程度にする場合に比べ、細管部16を短くすることができる。このため超高圧帯での洗浄力を維持しつつ洗浄ノズル1を小型化することができる。
更に、洗浄ノズル1によると、テーパ角度が13度〜17度であるので、他のテーパ角度に比べて縮流をより抑制することができる。
更に、洗浄ノズル1によると、Ls/D2が3〜5であるので、テーパ角度が13度〜17度の場合に、粒子速度が遅くならない範囲で細管部16の長さを極力短くすることができる。
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態ではテーパ角度を13度〜17度としているが、テーパ角度は13度〜17度以外の角度であってもよい。ただし、縮流を抑制するためには7.5度〜22.5度の範囲内であることが望ましい。
(2)上記実施形態ではLs/D2を3〜5としているが、Ls/D2は3〜5以外であってもよい。ただし、最適なLs/D2はテーパ角度などによって異なり得るので、1〜7の範囲でどの値がLs/D2として最適であるかは実験などによって確認することが望ましい。
(3)上記実施形態では洗浄液として超純水を例に説明したが、洗浄液の種類はこれに限られるものではなく、洗浄対象物に応じて適宜に選択可能である。
1…洗浄ノズル(1流体ノズルの一例)、10…ノズル本体、12…洗浄液流路、15…テーパ部、16…細管部

Claims (3)

  1. 外部から供給される洗浄液を噴射する1流体ノズルであって、
    洗浄液流路を有するノズル本体を備え、
    前記洗浄液流路は、
    上流側から下流側に向かって縮径するテーパ部と、
    前記テーパ部の下流側の端部から連続して円筒状に延びる細管部と、
    前記細管部の下流側の端部において前記細管部の流路断面を絞る噴射口と、
    を有し、
    前記テーパ部のテーパ角度が7.5度〜22.5度の範囲内であり、
    前記細管部の長さLを前記細管部の内径Dで除算した比が3〜5の範囲内である、1流体ノズル。
  2. 前記テーパ角度が13度〜17度である、請求項1に記載の1流体ノズル。
  3. 外部から供給される洗浄液を微粒化して噴射する1流体ノズルであって、
    洗浄液流路を有するノズル本体を備え、
    前記洗浄液流路は上流側から下流側に向かって縮径するテーパ部と、前記テーパ部の下流側の端部から連続して円筒状に延びる細管部と、前記細管部の下流側の端部において前記細管部の流路断面を絞る噴射口と、を有し、
    前記テーパ部のテーパ角度が7.5度〜22.5度の範囲内であり、
    前記細管部の長さLを前記細管部の内径Dで除算した比が3〜5の範囲内であり、
    10MPa〜30MPaの超高圧帯で用いたときに噴射される前記洗浄液について、噴射距離100mmにおける平均粒子径が20μm以上30μm以下の範囲である、1流体ノズル。
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