JP6859769B2 - フィルム積層体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インサート成形により、ポリカーボネート樹脂フィルムとポリカーボネート樹脂との積層体を製造する方法に関するものであり、特に、通常の射出成形条件では十分な層間接着性を得ることができない特定のポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してフィルム積層体を製造するに当たり、射出成形温度を抑えた上で、層間接着性に優れたフィルム積層体を製造する方法に関する。
本発明はまた、このフィルム積層体の製造方法を用いたタッチパネル用カバーなどのディスプレイ用カバーの製造方法に関する。
自動車用のカーナビやカーオーディオ等のタッチパネルにおいて、ポリカーボネートをカバーパネルに使用すると、特に偏光サングラスをかけて見ると、射出成形時の樹脂流動による分子配向や内部応力による複屈折で発生する虹模様やブラックアウト(黒く見えてディスプレイの画像が見えない状態)によって視認が困難となる問題がある。また、オン/オフ等の操作ボタンをタッチパネル内に組み込むために、これらの操作ボタン部分を凸部としたり又は反対に凹部としたりすることが行われている。
このような凹部又は凸部を形成したタッチパネル用カバーを射出成形により製造しようとすると、凹部又は凸部の段差部分において、溶融樹脂の流動状態に変化が生じ、せん断によりさらに複屈折を生じやすくなり、表示像のカラーバランスやコントラストの低減といった問題を引き起こす。
従来、この問題を解決するものとして、特定のポリカーボネート樹脂に、α,β−不飽和ジカルボン酸成分を共重合成分としたスチレン系樹脂を配合したポリカーボネート樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
しかし、本願発明者が、特許文献1に記載のポリカーボネート樹脂組成物を、通常のビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂よりなるフィルムを装填した金型内に射出成形するインサート成形によりフィルム積層体を製造しようとしたところ、金型内に装填したフィルムも射出樹脂も共にポリカーボネート樹脂組成物よりなるものであるにもかかわらず、層間密着性が乏しく、層間接着強度の高い積層体を得ることができないことが判明した。
なお、従来、インサート成形の温度条件については、射出する溶融樹脂の温度を相手樹脂(金型内にインサートされた樹脂)の融点の関係で規定したり(特許文献2)、射出樹脂温度Trと相手樹脂のガラス転移温度Tgとの関係をTr≧Tg+130(℃)とすること(特許文献3)が提案されているが、金型内に装填された樹脂フィルムの表面温度を制御する提案はなされていない。
射出する溶融樹脂の温度を高くすることにより、樹脂フィルムとの密着性を高め、接着強度の高いフィルム積層体を製造することも考えられるが、射出樹脂温度を高くすることは樹脂の劣化を引き起こすため、樹脂温度を抑えた上で、接着強度を高める技術が望まれる。
特開2015−143985号公報 特開平7−9484号公報 特開平10−278069号公報
本発明は、特許文献1に記載されるポリカーボネート樹脂組成物をポリカーボネート樹脂フィルムが装填された金型内に射出成形するインサート成形によりフィルム積層体を製造するに当たり、射出成形温度を抑えた上で、層間接着性に優れたフィルム積層体を製造する方法と、この方法を用いたディスプレイ用カバーの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく種々検討した結果、金型内に断熱層を設けると共に、インサート成形の際のフィルムの表面温度を特定の条件とすることで、高強度に接着できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 溶融した下記ポリカーボネート樹脂組成物(A)を、下記ポリカーボネート樹脂組成物(B)からなるフィルム(以下、「フィルム(B)」と称す。)を装填した金型内の該フィルム(B)表面に射出成形することにより、該ポリカーボネート樹脂組成物(A)よりなる層とポリカーボネート樹脂組成物(B)よりなる層とが積層されたフィルム積層体を製造する方法において、該フィルム(B)を、断熱層を介して該金型内に装填し、該ポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出成形温度を(280+a)℃(但し、aは−30〜20の数)とし、かつ、該フィルム(B)の表面温度を(40−a)℃以上120℃以下として射出成形することを特徴とするフィルム積層体の製造方法。
ポリカーボネート樹脂組成物(A):下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対して、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物又はその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(ii)30〜230質量部を含有するポリカーボネート系樹脂組成物
Figure 0006859769
(一般式(1)中、Rはメチル基、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
Figure 0006859769
のいずれかを示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子(C)と結合し、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の脂環式炭化水素を形成する基を示す。)
ポリカーボネート樹脂組成物(B):下記一般式(2)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(iii)を樹脂成分中に90質量%以上含有するポリカーボネート樹脂組成物
Figure 0006859769
(一般式(2)中のXは、前記一般式(1)におけると同義である。)
[2] 前記断熱層は、少なくとも一部が樹脂で構成されていることを特徴とする[1]に記載のフィルム積層体の製造方法。
[3] 前記断熱層を構成する材料の密度ρ(kg/m)、比熱C(J/kg・K)、熱伝導率λ(W/m・K)の積(ρ・C・λ)が1.5×10〜3.0×10の範囲であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のフィルム積層体の製造方法。
[4] [1]ないし[3]のいずれかに記載のフィルム積層体の製造方法によりフィルム積層体を製造する工程を有するディスプレイ用カバーの製造方法。
本発明によれば、特定のポリカーボネート樹脂に、α,β−不飽和ジカルボン酸成分を共重合成分とするスチレン系樹脂を配合したポリカーボネート樹脂組成物の溶融樹脂を射出するインサート成形によりフィルム積層体を製造するに当たり、射出成形温度を抑えた上で、層間接着性に優れたフィルム積層体を製造することができる。
本発明のフィルム積層体の製造方法は、特にタッチパネル等のディスプレイ用カバーの製造に好適である。
本発明のフィルム積層体の製造方法の実施の形態の一例を示す模式的な断面図である。
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、本明細書において、「シート」と「フィルム」とは同義であり、シートの中でも比較的厚さの薄いものをフィルムと称し、シートはフィルムを包含するものとする。
よって、以下の説明において、「フィルム」は「シート」であってもよい。
また、本明細書において、「ポリカーボネート樹脂」を「PC」と略記する場合がある。
本発明のフィルム積層体の製造方法は、溶融した特定のポリカーボネート樹脂組成物(A)を、特定のポリカーボネート樹脂組成物(B)からなるフィルム(以下、「フィルム(B)」と称す。)を装填した金型内のフィルム(B)表面に射出成形することにより、ポリカーボネート樹脂組成物(A)よりなる層(以下、「ポリカーボネート樹脂層(A)」と称す場合がある。)とポリカーボネート樹脂組成物(B)よりなる層(以下、「ポリカーボネート樹脂層(B)」と称す場合がある。)とが積層されたフィルム積層体を製造する方法において、フィルム(B)を、断熱層を介して金型内に装填し、ポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出成形温度を(280+a)℃(但し、aは−30〜20の数)とし、かつ、フィルム(B)の表面温度を(40−a)℃以上120℃以下として射出成形することを特徴とする。
具体的には、図1(a),(b)に示す通り、金型1A,1Bの一方(図1(a)では金型1A)に断熱層4を設け、この断熱層4を介してフィルム(B)2を装填し、その後型締めして、ポリカーボネート樹脂組成物(A)の溶融樹脂3を金型1A,1Bのキャビティ内に射出して成形する。これにより、図1(b)のように、ポリカーボネート樹脂層(B)2Aとポリカーボネート樹脂層(A)3Aとが積層一体化されたフィルム積層体10を得る。なお、断熱層4のフィルム(B)2との当接面側には、射出成形後、フィルム積層体10を取り出す際の断熱層4とポリカーボネート樹脂層(B)2Aとの離型性を良好なものとするために、図1(a)に示すように、離型フィルム4Aを設けてもよい。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂組成物(A),(B)の組成や断熱層4、離型フィルム4Aの材料等については後述する。
本発明では、このようなインサート成形において、ポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出成形温度を(280+a)℃(但し、aは−30〜20の数)とし、かつ、フィルム(B)の表面温度を(40−a)℃以上120℃以下として射出成形する。
[射出成形条件]
ポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出成形温度(ここで、射出成形温度とは、射出成形時に射出成形機のシリンダーから射出される溶融樹脂の温度である。)が300℃を超えると(即ち、aが20を超える)、ポリカーボネート樹脂組成物(A)中の特にポリカーボネート樹脂が劣化しやすくなり、劣化により形成されるポリカーボネート樹脂層(A)に黄変等の問題が生じ、高品質のフィルム積層体を得ることができない。
射出成形温度が250℃より低いと(即ち、aが−30未満)、層間接着性に優れたフィルム積層体を得ることができない。従って、射出成形温度は(280+a)℃(但し、aは−30〜20の数)とする。
また、射出成形時の金型内のフィルム(B)の表面温度が低すぎると層間接着性に優れたフィルム積層体を得ることができず、高過ぎると、射出成形時の温度条件を下げる本発明の目的を達成し得ない。
このため、射出成形時のフィルム(B)の表面温度は(40−a)℃以上120℃以下とする。表面温度は好ましくは(60−a)℃以上であり、好ましくは110℃以下である。
なお、射出成形時のフィルム(B)の表面温度は、金型内に挿入した温度センサ等により確認することができる。
本発明は、金型内に断熱層を設け、フィルム(B)を断熱層を介して金型内に装填することで、上記表面温度(40−a)℃以上120℃以下の範囲で射出成形時のフィルム(B)の表面温度を下げても、高い層間接着性を得ることができることに特徴を有する。
本発明において、フィルム(B)を断熱層を介して金型内に装填することで、射出成形時のフィルム(B)の表面温度を下げても、高い層間接着性を得ることができるメカニズムは、以下のように考えられる。
“Heat Transfer”(J.HTSJ,Vol.47,No.201)の第47頁〜第49頁に記載されるように、2つの物体が接した場合の接触面温度は、各々の物体の温度、熱伝導率等のパラメーターから算出することができ、この文献に記載の式に基づいて、図1(a)のように断熱層を設けた場合のフィルム(B)にポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出樹脂が接触するときの温度Tを、
:ポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出成形温度(溶融樹脂温度)(℃)
ρ:ポリカーボネート樹脂組成物(A)の密度(kg/m
:ポリカーボネート樹脂組成物(A)の比熱(J/kg・K)
λ:ポリカーボネート樹脂組成物(A)の熱伝導率(W/m・K)
:金型の表面温度(℃)
ρ:断熱層の密度(kg/m
:断熱層の比熱(J/kg・K)
λ:断熱層の熱伝導率(W/m・K)
として求める計算式は、下記式(I)の通りとなる。なお、ここで、フィルム(B)の厚さは、断熱層の厚さに比べてごく薄いため、断熱層の表面温度=フィルム(B)の表面温度とする。
Figure 0006859769
一方、断熱層を用いずに、フィルム(B)を直接金型面に装填した場合のフィルム(B)にポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出樹脂が接触するときの温度Tは、
ρ:溶融樹脂接触面の金型材質の密度(kg/m
:溶融樹脂接触面の金型材質の比熱(J/kg・K)
λ:溶融樹脂接触面の金型材質の熱伝導率(W/m・K)
とすると、下記式(II)の通りとなる。なお、ここで、フィルム(B)の厚さはごく薄いため、溶融樹脂接触面の金型材質の表面温度=フィルム(B)の表面温度とする。
Figure 0006859769
層間接着性の高いフィルム積層体を得るためのフィルム(B)にポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出樹脂が接触するときの温度Tは170℃以上(例えば170〜200℃)ということが実験的に求められているが、金型(通常SUS等の金属製)の密度ρ、比熱C、熱伝導率λは、ポリカーボネート樹脂等の樹脂に比べて非常に大きく(ρ・C・λ>>ρ・C・λ)、式(II)で算出されるフィルム(B)の表面温度Tと式(I)で算出されるフィルム(B)の表面温度Tを、共に170℃以上とするためには、式(I)の方が、式(II)に比べて、同一のTにおいて、Tを小さくできることが分かる。
このようなことから、本発明では、金型とフィルム(B)との間に断熱層を介在させることで、十分な層間接着性を得るための実際のフィルム(B)の表面温度を下げることができ、射出成形時の温度条件を抑えた上で層間接着性に優れたフィルム積層体を得ることができる。
本発明による上記効果を有効に得る上で、断熱層は、少なくともその一部、好ましくは全部が樹脂よりなることが好ましく、特に断熱層を構成する樹脂は、熱伝導率が0.2Wm・K以下のものが好ましく、密度ρ(kg/m)、比熱C(J/kg・K)、熱伝導率λ(W/m・K)の積(ρ・C・λ)が、ポリカーボネート樹脂の値(通常2.51×10程度:40℃〜100℃)に近似したもの、例えば、1.5×10〜3.0×10、特に2.0×10〜3.0×10の範囲にあるものが好ましい。
なお、本発明において、その他の射出成形条件には特に制限はなく、ポリカーボネート樹脂組成物を用いる通常の射出成形条件を採用することができる。例えば、ポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出速度は通常10〜100mm/sec、型締め時の保圧力は通常10〜100MPa、保圧時間は通常5〜30sec程度である。
[ポリカーボネート樹脂組成物(A)]
本発明で用いるポリカーボネート樹脂組成物(A)は、以下に示すポリカーボネート樹脂(i)(以下「ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂」と称す場合がある。)100質量部に対し、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(ii)を30〜230質量部含有するものである。
<ポリカーボネート樹脂(i)>
ポリカーボネート樹脂組成物(A)に含まれるポリカーボネート樹脂(i)は、下記一般式(1)で表される構造単位(以下「構造単位(1)」と称す場合がある。)を有するポリカーボネート樹脂である。
Figure 0006859769
(一般式(1)中、Rはメチル基、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
Figure 0006859769
のいずれかを示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子(C)と結合して置換基を有していてもよい炭素数6〜12の脂環式炭化水素を形成する基を示す。)
上記一般式(1)において、Rはメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であるが、R及びRは特には水素原子であることが好ましい。
また、Xは、
Figure 0006859769
である場合、R及びRの両方がメチル基であるイソプロピリデン基であることが好ましく、また、Xが、
Figure 0006859769
の場合、Zは、上記一般式(1)中の2個のフェニル基と結合する炭素原子Cと結合して、炭素数6〜12の二価の脂環式炭化水素基を形成するが、二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。Zが置換基を有する場合、その置換基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シキロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5−トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
構造単位(1)としての好ましい具体例としては、以下のイ)〜ニ)が挙げられる。
イ)2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンに由来する構造単位。即ち一般式(1)において、Rがメチル基、RとRが水素原子、Xがイソプロピリデン基である構造単位。
ロ)2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンに由来する構造単位。即ち一般式(1)において、Rがメチル基、RとRが水素原子、Xがシクロドデシリデン基である構造単位。
ハ)2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンに由来する構造単位。即ち一般式(1)において、Rがメチル基、RとRがメチル基、Xがイソプロピリデン基である構造単位。
ニ)2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンに由来する構造単位。即ち一般式(1)において、Rがメチル基、RとRが水素原子、Xがシクロヘキシリデン基である構造単位。
これらの中で、構造単位(1)としてはより好ましくは上記イ)、ロ)またはハ)、さらに好ましくは上記イ)またはロ)、特には上記イ)が好ましい。
上記の構造単位(1)を有するポリカーボネート樹脂(i)は、それぞれ、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを、原料ジヒドロキシ化合物として使用して製造することができる。
ポリカーボネート樹脂(i)は、構造単位(1)以外の構造単位を有していてもよく、例えば、下記一般式(2)で表される構造単位(以下「構造単位(2)」と称す場合がある。)、あるいは後記するような他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有していてもよい。この場合、ポリカーボネート樹脂(i)中の構造単位(1)以外の構造単位の共重合量は、通常60モル%以下であり、50モル%以下が好ましく、より好ましくは40モル%以下、さらには30モル%以下であることが好ましい。
Figure 0006859769
(一般式(2)中のXは、前記一般式(1)におけると同義である。)
上記構造単位(2)の好ましい具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、即ち、ビスフェノールA由来のカーボネート構造単位が挙げられる。
他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル等の芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(i)の粘度平均分子量(Mv)は、16,000〜28,000であることが好ましい。粘度平均分子量がこの範囲であると、成形性が良く、機械的強度が大きいフィルム積層体が得られやすい。粘度平均分子量(Mv)が16,000を下回ると、耐面衝撃性が著しく低下しやすいためタッチパネル用カバーとしての用途に好ましくなく、28,000を超えると溶融粘度が増大し射出成形が困難となる傾向がある。ポリカーボネート樹脂(i)の粘度平均分子量(Mv)の下限は、より好ましくは17,000、さらに好ましくは18,000、特に好ましくは20,000であり、その上限はより好ましくは27,000である。
なお本明細書において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてジクロロメタンを使用し、ウベローデ粘度計を使用し、温度20℃での極限粘度([η])(単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式:η=1.23×10−40.83の式から算出される値を意味する。
ポリカーボネート樹脂(i)を製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。これらの中でも、界面重合法、溶融エステル交換法が好ましい。
ポリカーボネート樹脂(i)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
<スチレン系樹脂(ii)>
α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体(以下、これらを「α,β−不飽和ジカルボン酸成分」と称す場合がある。)を共重合成分とするスチレン系樹脂(ii)は、スチレン系単量体とα,β−不飽和ジカルボン酸成分を共重合したスチレン系樹脂である。共重合の形態は制限はなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等、いかなるものであってもよい。
スチレン系単量体としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−ブチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン等で例示されるアルキル置換スチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等のハロゲン化スチレンが挙げられる。これらの中ではスチレンが最も好ましい。スチレン系単量体は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
スチレン系樹脂の共重合成分であるα,β−不飽和ジカルボン酸成分としては、(無水)マレイン酸及びこの炭素数1〜20のアルキル又はグリコールのエステル、N−マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド等のマレイミド、クロロ(無水)マレイン酸等のマレイン酸ハライド並びに(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸及びこれらの酸ハライド、アミド、イミド、炭素数1〜20のアルキル又はグリコールのエステル等が例示される。ここで「(無水)」とは、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物又はα,β−不飽和ジカルボン酸であることを示す。これらの中でも、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物又はα,β−不飽和ジカルボン酸が好ましく、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物がより好ましい。これらのα,β−不飽和ジカルボン酸成分は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
スチレン系単量体とα,β−不飽和ジカルボン酸成分との組み合わせは、種々の組み合わせが可能であるが、スチレンと無水マレイン酸との組み合わせが好ましい。即ち、スチレン系樹脂(ii)としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体が最も好ましい。
スチレン系樹脂(ii)において使用されるα,β−不飽和ジカルボン酸成分の量、即ち、スチレン系樹脂(ii)中のα,β−不飽和ジカルボン酸成分に由来する構造単位の含有量は、スチレン系樹脂(ii)100質量%中、1〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜30質量%である。
スチレン系樹脂(ii)は、公知の塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法で製造されたものを用いることができる。これらの重合方法においては、必要な所定の成分を予め重合時に仕込む方法を用いてもよいし、後から所定成分を逐次添加をする方法を用いてもよい。また、重合反応後に、共重合体成分について、アミド化やイミド化等を行ったものを使用しても差し支えない。
スチレン系樹脂(ii)の質量平均分子量(Mw)は、30,000〜350,000であることが好ましく、より好ましくは35,000〜300,000であり、40,000〜270,000であることがさらに好ましい。
なお、ここで、スチレン系樹脂(ii)の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値である。
スチレン系樹脂(ii)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)中のスチレン系樹脂(ii)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対し、30〜230質量部である。このような範囲でスチレン系樹脂(ii)を含有するポリカーボネート樹脂組成物(A)は複屈折が改善され、これを射出成形して得られるフィルム積層体は凸部(又は凹部)の段差部分においても複屈折が生じにくく、凸部又は凹部を有しながらも優れたタッチパネル等のディスプレイ用カバーとなる。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)中のスチレン系樹脂(ii)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対し、40質量部以上であり、より好ましくは60質量部以上、また、好ましくは200質量部以下であって、より好ましくは170質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下、特に好ましくは110質量部以下、最も好ましくは90質量部以下である。
また、ポリカーボネート樹脂組成物(A)は、ポリカーボネート樹脂組成物(A)中のα,β−不飽和ジカルボン酸成分の量が、1〜15質量%であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂組成物(A)中のα,β−不飽和ジカルボン酸成分の量をこのような範囲とすることで、ポリカーボネート樹脂(i)及び必要に応じて配合される後述のポリカーボネート樹脂(iii)とスチレン系樹脂(ii)との相溶性がより良好となり、樹脂間の剥離や白濁、スジ状の外観不良を抑制することが出来る。この量は、上記した、α,β−不飽和ジカルボン酸成分を共重合成分とするスチレン系樹脂(ii)以外の他の樹脂を含有する場合においても同じである。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)中のα,β−不飽和ジカルボン酸成分の量は、より好ましくは3質量%以上であり、4質量%以上であることがさらに好ましく、また、より好ましくは12質量%以下であり、10質量%以下であることがさらに好ましい。
<その他のポリカーボネート樹脂>
ポリカーボネート樹脂組成物(A)は、落球衝撃等の耐衝撃性やヘイズ等の透明性の点から、上記ポリカーボネート樹脂(i)以外のその他のポリカーボネート樹脂を含有することが好ましく、ポリカーボネート樹脂(i)以外のその他のポリカーボネート樹脂としては、後述のフィルム(B)を構成するポリカーボネート樹脂組成物(B)に含まれるポリカーボネート樹脂(iii)の1種又は2種以上が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)がポリカーボネート樹脂(iii)を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対し、50質量部以下であることが好ましく、45質量部以下であることがより好ましく、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは25質量部以上である。このような含有割合とすることにより、高い表面硬度、耐擦傷性及び耐薬品性を維持しながら、落球衝撃等の優れた耐衝撃性、低いヘイズ等の優れた透明性と優れた耐熱性を達成することがより容易となる。
<その他の樹脂>
ポリカーボネート樹脂組成物(A)は、ポリカーボネート樹脂及びスチレン系樹脂(ii)以外のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては、例えば、α,β−不飽和ジカルボン酸成分が共重合していないスチレン系樹脂が好ましく挙げられる。このようなスチレン系樹脂としては、ポリスチレン樹脂が好ましい。また、表面硬度の点から、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリル系樹脂を含有してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)がこれらその他の樹脂を含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対し、好ましくは70質量部以下であり、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。
<その他の成分>
ポリカーボネート樹脂組成物(A)は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外のその他成分、例えば各種樹脂添加剤を含有していてもよい。
樹脂添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
・熱安定剤
熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
これらの熱安定剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)が熱安定剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)、スチレン系樹脂(ii)及び必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(iii)等のその他の樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。熱安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)が酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)、スチレン系樹脂(ii)及び必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(iii)等のその他の樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・離型剤
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸が挙げられる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
これらの離型剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)が離型剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)、スチレン系樹脂(ii)及び必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(iii)等のその他の樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
・紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、ポリカーボネート樹脂組成物(A)の透明性や機械物性が良好なものになる。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には、シプロ化成社製(商品名、以下同じ)「シーソーブ701」、「シーソーブ702」、「シーソーブ703」、「シーソーブ704」、「シーソーブ705」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、ADEKA社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、BASF社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)が紫外線吸収剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)、スチレン系樹脂(ii)及び必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(iii)等のその他の樹脂成分100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、耐候性の改良効果が乏しく、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こしやすい。
<ポリカーボネート樹脂組成物(A)の製造方法>
ポリカーボネート樹脂組成物(A)の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(i)及びスチレン系樹脂(ii)、並びに、必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(iii)等のその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
[ポリカーボネート樹脂層(A)]
上記のポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出成形で形成されるポリカーボネート樹脂層(A)の厚さは、1〜10mm、特に2〜5mmであることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂層(A)の厚さが上記下限以上であると、十分な機械的強度を得ることができ、また、低複屈折化の観点から好ましい。ポリカーボネート樹脂層(A)の厚さが上記上限以下であると、軽量化、コストの観点から好ましい。
[ポリカーボネート樹脂組成物(B)]
本発明で用いるフィルム(B)を構成するポリカーボネート樹脂組成物(B)は、下記一般式(2)で表される構造単位(構造単位(2))を有するポリカーボネート樹脂(iii)を樹脂成分中に90質量%以上含有するものである。
Figure 0006859769
(一般式(2)中のXは、前記一般式(1)におけると同義である。)
構造単位(2)を有するポリカーボネート樹脂(iii)の好ましい具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールA由来の構造単位を有するビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(iii)は、構造単位(2)以外の構造単位を有することもでき、例えば、他のジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位を有していてもよい。この場合、ポリカーボネート樹脂(iii)中の構造単位(2)以外の構造単位の共重合量は、50モル%未満が好ましく、より好ましくは40モル%以下、さらには30モル%以下、特には20モル%以下であり、10モル%以下、なかでも5モル%以下が最も好ましい。
他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位としては、前記構造単位(1)以外の、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、4,4’−(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−5−トリメチルシクロヘキサン等の芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(iii)の粘度平均分子量(Mv)は、12,000〜30,000であることが好ましく、14,000〜29,000がより好ましく、15,000〜28,000がさらに好ましい。粘度平均分子量(Mv)がこの範囲であると、成形性が良く、且つ落球衝撃等の耐衝撃性に優れたフィルムが得られやすく、12,000を下回ると、耐衝撃性が低下し使用が困難となりやすく、30,000を超えると溶融粘度が増大し、フィルム成形が困難となりやすい。
なお、粘度平均分子量(Mv)の定義は、前述の通りである。
ポリカーボネート樹脂(iii)を製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。これらの中でも、界面重合法、溶融エステル交換法が好ましい。
ポリカーボネート樹脂(iii)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(B)は、その樹脂成分中にポリカーボネート樹脂(iii)を90質量%以上含有するものであり、この割合は好ましくは95質量%以上であり、特に樹脂成分全てがポリカーボネート樹脂(iii)であることが、得られるフィルム(B)の透明性、耐衝撃性の観点から好ましい。
なお、ポリカーボネート樹脂組成物(B)は、前述のポリカーボネート樹脂組成物(A)が含有していてもよい各種の樹脂添加剤として例示したものを、前述の好適含有量の範囲で含有していてもよい。
また、ポリカーボネート樹脂組成物(B)は、前述のポリカーボネート樹脂組成物(A)と同様の方法で製造することができる。
[フィルム(B)]
フィルム(B)は、上記のポリカーボネート樹脂組成物(B)を用いて、常法、例えばTダイ成形等により製造される。
フィルム(B)の厚みには特に制限はないが、薄膜性と取り扱い性及び強度等の兼ね合いから、50〜1000μmであることが好ましく、75〜500μmであることがより好ましい。
なお、フィルム(B)の射出成形面(ポリカーボネート樹脂組成物(A)が射出される面)の反対側の面には、必要に応じてハードコート層や加飾層が形成されていてもよく、加飾印刷等が施されていてもよい。
ハードコート層を形成するためのハードコート剤としては、公知の材料を適宜使用することができ、例えば、シリコーン系、アクリル系、シラザン系、ウレタン系などの種々のハードコート剤を使用することができる。接着性や耐候性を向上させるために、ハードコート剤を塗布する前にプライマー層を設ける2コートタイプのハードコート剤であってもよい。ハードコート剤のコーティング方法としては、特に制限はないが、スプレーコート、ディップコート、フローコート、スピンコート、バーコート、カーテンコート、ダイコート、グラビアコート、ロールコート、ブレードコート及びエアーナイフコート等のいずれの塗工方法によって塗布することもできる。
ハードコート層の厚みは、好ましくは1〜50μm、より好ましくは5〜30μmである。
[断熱層]
断熱層は、前述の通り、少なくとも一部が樹脂よりなることが好ましく、断熱層を構成する材料の密度ρ(kg/m)、比熱C(J/kg・K)、熱伝導率λ(W/m・K)の積(ρ・C・λ)が1.5×10〜3.0×10、特に2.0×10〜3.0×10の範囲であることが好ましい。
上記ρ・C・λの条件を満たす樹脂としては、例えば下記表1に示されるものが挙げられる。
Figure 0006859769
これらのうち、耐熱性の観点からポリカーボネート樹脂やフェノール樹脂、ポリエーテルサルホン、ポリサルホンが好ましい。ただし、熱可塑性樹脂の場合、反りが発生して使用が難しい場合があるため、これらの中では、熱硬化性樹脂、特にフェノール樹脂が好ましい。
断熱層の厚さは、断熱層を設けることによる本発明の効果を確実に得るために、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましい。一方、断熱層の厚さが過度に厚いとフィルムを温めるのに時間がかかり、また冷却にも時間がかかるようになることから、5mm以下、特に3mm以下であることが好ましい。
断熱層は、フィルム(B)の少なくとも一部の金型内壁との間に介在すればよいが、好ましくは、断熱層はフィルム(B)と同面積であり、フィルム(B)は、そのすべての面が金型と直接接触することなく、断熱層を介して金型面に設けられることが好ましい。
なお、断熱層のフィルム(B)と接する面には、射出成形後、断熱層とポリカーボネート樹脂層(B)とを容易に剥離することができるように、必要に応じて離型フィルムを積層して設けてもよい。
この場合、離型フィルムとしては、フィルム(B)と密着後、容易に剥離し得る剥離性を有するものであればよく、特に制限はないが、PET等のポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの樹脂フィルム、グラシン紙、コート紙、セロハンなどのセルロース系シート、或いはこれらのフィルムないしシートの積層体などを用いることができる。離型フィルムとしては、二軸延伸処理により結晶性を高めたものが、剥離性の観点から好ましく、PET等のポリエステル系樹脂や、ポリイミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂のシートやフィルム、特に、PETフィルムが好適に用いられる。
離型フィルムの厚みは、薄膜性、取り扱い性、強度等の面から30〜150μmであることが好ましく、50〜100μmであることがより好ましい。
断熱層は、前述の樹脂材料を常法、例えばTダイ成形することにより製造することができる。
また、離型フィルム付断熱層は、二層押出成形で製造したり、予め成形された断熱層用フィルムに離型フィルムを加熱加圧して一体化することにより製造することができる。
なお、本発明において、断熱層は、SUS等の金型の、フィルム(B)をインサートする面に設けられていればよく、このような断熱層が予め金型内に設けられたものであれば、これをそのまま用いることができる。また、通常の金型内に、予め成形した断熱層用フィルムを配置し、その後、この断熱層用フィルム面にフィルム(B)を配置するようにすることでもできる。
[用途]
本発明により製造されるフィルム積層体は、特にタッチパネル等のディスプレイ用カバーとして有用であり、例えば、スマートホン等のタブレット型の各種携帯端末、タブレット型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーションやカーオーディオ等のタッチパネル用カバーなど、ディスプレイの樹脂カバーとして有用である。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
以下の実施例及び比較例に使用した各原料成分は、以下のとおりである。
ポリカーボネート樹脂(i−1):下記製造例1で製造した2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを原料とするビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂
粘度平均分子量(Mv):26,000
スチレン系樹脂(ii−1):スチレン−無水マレイン酸共重合体(POLYSCOPE社製、商品名:XIRAN 15170)
質量平均分子量(Mw):170,000
無水マレイン酸単位含有量:15質量%
ポリカーボネート樹脂(iii−1):ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ユーピロン(登録商標)S−3000)
粘度平均分子量(Mv):21,000
熱安定剤:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(ADEKA社製、商品名:アデカスタブ2112)
<製造例1:ポリカーボネート樹脂(i−1)の製造>
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「BPC」と記す。)26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.79モル(5.74kg)を、撹拌機及び溜出凝縮装置付きのSUS製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(CsCO)を、BPC1モルに対し1.5×10−6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを溜出させた。
次に、反応器内を60分かけて温度を284℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに60分間反応を続け重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の攪拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は289℃、攪拌動力は1.00kWであった。
次に、溶融状態のままの反応液を2軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp−トルエンスルホン酸ブチルを2軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を2軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断して、粘度平均分子量(Mv)26,000のビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂(i−1)のペレットを得た。
<製造例2:ポリカーボネート樹脂組成物(A)の製造>
ポリカーボネート樹脂(i−1)、スチレン系樹脂(ii−1)、ポリカーボネート樹脂(iii−1)、及び熱安定剤を、以下の割合で配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製TEX30HSST)を用いて、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hrにて押出機上流部のバレルより押出機にフィードし、溶融混練してポリカーボネート樹脂組成物(A)のペレットを得た。
ポリカーボネート樹脂(i−1):100質量部
スチレン系樹脂(ii−1):100質量部
ポリカーボネート樹脂(iii−1):86質量部
熱安定剤:0.03質量部
<製造例3:ポリカーボネート樹脂(iii−1)の成形>
ポリカーボネート樹脂(iii−1)を用いて、Tダイ成形法により、厚さ200μmのフィルム(B)を成形した。
<製造例4:離型フィルム付断熱層用フィルムの形成>
ポリカーボネート樹脂(iii−1)よりなる厚さ2mmの断熱層用シートの表面に、厚さ100μmのPETフィルムよりなる離型フィルムを載せ端部をポリイミドテープで固定し、離型フィルム付断熱層用フィルムとした。
[実施例1]
図1に示すように、離型フィルム付断熱層用フィルムの離型フィルム側がキャビティ側、断熱層用フィルム側が金型面に接するように離型フィルム付断熱層用フィルムを金型にセットした後、更に、フィルム(B)をこの離型フィルム付断熱層用フィルムの離型フィルム面に積層するようにセットし、この状態でポリカーボネート樹脂組成物(A)を射出成形することで、厚み3mmのポリカーボネート樹脂組成物(A)よりなるポリカーボネート樹脂層(A)をフィルム(B)に積層一体成形して、ポリカーボネート樹脂層(A)とポリカーボネート樹脂層(B)のフィルム積層体を製造した。
このとき、ポリカーボネート樹脂組成物(A)の溶融樹脂温度(シリンダー温度)は280℃とし、金型温度を80℃としたところ、金型内のフィルム(B)の表面温度は67℃であった。なお、ポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出速度は15mm/sec、保圧力は25MPa、保圧時間は20secとした。
得られたフィルム積層体を幅15mmに積層したフィルムが貫通するように、カッターナイフで切り込みを入れ、あらかじめフィルム端部が離型されるようにしたフィルム端部を引っ張試験用のつかみ治具でつかみ、プッシュプルゲージを用いてつかみ治具を引っ張ることによりポリカーボネート樹脂層(B)とポリカーボネート樹脂層(A)との間で90°剥離試験を行い、剥離強度を調べた。この剥離強度は5N/15mm以上、特に10N/15mm以上であることが好ましい。なお測定時にプッシュプルゲージに固定したつかみ治具が外れた時、外れた瞬間の強度以上という表現とした。
結果を表2に示す。
また、前述の式(I)において、ρ・C・λ=2.51×10、ρ・C・λ=4.24×10とし、T=67℃、T=280℃を代入して算出したTの計算値(以下「式(I)の計算値T」と称す。)は187℃であった。
[実施例2,3]
ポリカーボネート樹脂組成物(A)の溶融樹脂温度(シリンダー温度)と、金型温度を表2に示す温度としたこと以外は、実施例1と同様にインサート成形を行い、得られたフィルム積層体について同様に剥離試験を行って結果を表2に示した。
また、同様に式(I)の計算値を求め、結果を表2に示した。
[比較例1]
実施例1において、離型フィルム付断熱層用フィルムを用いなかったこと以外は同様にインサート成形を行い、得られたフィルム積層体について同様に剥離試験を行って結果を表2に示した。
Figure 0006859769
表2より、金型内に断熱層を設けてインサート成形を行った実施例1〜3では、インサート成形温度を抑えて層間接着性に優れたフィルム積層体を製造することができることが分かる。
1A,1B 金型
2 フィルム(B)
2A ポリカーボネート樹脂層(B)
3 溶融樹脂
3A ポリカーボネート樹脂層(A)
4 断熱層
4A 離型フィルム
10 フィルム積層体

Claims (4)

  1. 溶融した下記ポリカーボネート樹脂組成物(A)を、下記ポリカーボネート樹脂組成物(B)からなるフィルム(以下、「フィルム(B)」と称す。)を装填した金型内の該フィルム(B)表面に射出成形することにより、該ポリカーボネート樹脂組成物(A)よりなる層とポリカーボネート樹脂組成物(B)よりなる層とが積層されたフィルム積層体を製造する方法において、
    該フィルム(B)を、断熱層を介して該金型内に装填し、
    該ポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出成形温度を(280+a)℃(但し、aは−30〜20の数)とし、かつ、該フィルム(B)の表面温度を(40−a)℃以上120℃以下として射出成形することを特徴とするフィルム積層体の製造方法。
    ポリカーボネート樹脂組成物(A):下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対して、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物又はその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(ii)30〜230質量部を含有するポリカーボネート系樹脂組成物
    Figure 0006859769
    (一般式(1)中、Rはメチル基、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
    Figure 0006859769
    のいずれかを示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子(C)と結合し、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の脂環式炭化水素を形成する基を示す。)
    ポリカーボネート樹脂組成物(B):下記一般式(2)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(iii)を樹脂成分中に90質量%以上含有するポリカーボネート樹脂組成物
    Figure 0006859769
    (一般式(2)中のXは、前記一般式(1)におけると同義である。)
  2. 前記断熱層は、少なくとも一部が樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルム積層体の製造方法。
  3. 前記断熱層を構成する材料の密度ρ(kg/m)、比熱C(J/kg・K)、熱伝導率λ(W/m・K)の積(ρ・C・λ)が1.5×10〜3.0×10の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム積層体の製造方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフィルム積層体の製造方法によりフィルム積層体を製造する工程を有するディスプレイ用カバーの製造方法。
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