JP7135937B2 - パネル積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はパネル積層体及びその製造方法に関する。詳しくは、本発明は、低複屈折で耐傷付き性、耐衝撃性に優れ、衝撃により割れた場合でも破片が飛散し難いパネル積層体と、このパネル積層体を製造する方法に関する。
自動車用のカーナビやカーオーディオ等のタッチパネルにおいて、ポリカーボネートをカバーパネルに使用すると、特に偏光サングラスをかけて見ると、分子構造に由来する複屈折性に加え、射出成形時の樹脂流動による分子配向や内部応力による複屈折で発生する虹模様などによって視認が困難となる問題がある。
また、オン/オフ等の操作ボタンをタッチパネル内に組み込むために、これらの操作ボタン部分を凸部としたり又は反対に凹部としたりすることが行われている。
このような凸部又は凹部を形成したタッチパネル用カバーを射出成形により製造しようとすると、凸部又は凹部の段差部分において、溶融樹脂の流動状態に変化が生じ、せん断によりさらに複屈折を生じやすくなり、表示像のカラーバランスやコントラストの低減といった問題を引き起こす。
従来、この問題を解決するものとして、特定のポリカーボネート樹脂に、α,β-不飽和ジカルボン酸成分を共重合成分としたスチレン系樹脂を配合したポリカーボネート樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
しかし、本発明者が、タッチパネル等のディスプレイの樹脂カバー材料として特許文献1記載のポリカーボネート樹脂組成物を検討したところ、通常のポリカーボネート樹脂組成物よりなるものと比較して、耐傷付き性や衝撃強度が低く、衝撃によって割れて破片が飛散しやすいという問題があることが判明した。
従来、ガラスの破損、破損による破片の飛散を防止するために、2枚のガラス板の間にアセタール樹脂を挟んで積層した合わせガラスは広く使用されてきたが、この技術は、樹脂フィルム積層体の飛散防止には適用できない。
また、透光性樹脂フィルムの、防曇性、防霧性及び耐擦傷性を向上させるために、透光性樹脂フィルムにポリウレタン樹脂よりなる透明表面層を形成した積層体(特許文献2)が提案されているが、衝撃により割れた場合の飛散防止についての検討はなされていない。
なお、熱可塑性エラストマー成形品の表面硬度を高める目的で、ハードコート剤を塗布した、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性合成樹脂シートを射出成形用金型に配置した後に、熱可塑性エラストマーを射出して、ハードコート層付き合成樹脂シートの表面層を形成した熱可塑性エラストマー合成樹脂成形品(特許文献3)が提案されているが、この方法は、ポリカーボネート樹脂シートをハードコート層として利用するものであり、ポリカーボネート樹脂の耐傷付き性等の向上、衝撃により割れた場合の飛散防止を課題とする本発明とは、むしろ技術思想が相反する。
特開2015-143985号公報 特開平7-117202号公報 特開平7-205192号公報
本発明は、低複屈折で耐傷付き性、耐衝撃性に優れ、衝撃により割れた場合でも破片が飛散し難いパネル積層体と、このパネル積層体を用いたディスプレイ用カバー、及びこのパネル積層体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく種々検討した結果、特許文献1に記載のポリカーボネート樹脂組成物よりなるパネル本体の一方又は双方の面に熱可塑性エラストマーからなる表面層を設けることにより、耐傷付き性、耐衝撃性を高めると共に、割れによる破片の飛散を抑制できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 下記ポリカーボネート樹脂組成物(A)からなるパネル本体の一方又は双方の面に、熱可塑性エラストマーからなる表面層を有するパネル積層体。
ポリカーボネート樹脂組成物(A):下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対して、α,β-不飽和ジカルボン酸、α,β-不飽和ジカルボン酸無水物又はその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(ii)30~230質量部を含有するポリカーボネート系樹脂組成物
Figure 0007135937000001
(一般式(1)中、Rはメチル基、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
Figure 0007135937000002
のいずれかを示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子(C)と結合し、置換基を有していてもよい炭素数6~12の脂環式炭化水素を形成する基を示す。)
[2] 前記熱可塑性エラストマーが光透過性エラストマーである[1]に記載のパネル積層体。
[3] 前記熱可塑性エラストマーがポリウレタン系熱可塑性エラストマーである[1]又は[2]に記載のパネル積層体。
[4] 前記熱可塑性エラストマーからなる表面層の表面に防汚層が設けられていることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれか記載のパネル積層体。
[5] 当該パネル積層体の一方又は双方の前記熱可塑性エラストマーからなる表面層の表面に反射防止層が設けられていることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載のパネル積層体。
[6] [1]ないし[5]のいずれかに記載のパネル積層体からなるディスプレイ用カバー。
[7] 熱可塑性エラストマーフィルムのインサート成形により[1]ないし[5]のいずれかに記載のパネル積層体を製造することを特徴とするパネル積層体の製造方法。
本発明のパネル積層体は、低複屈折で、耐傷付き性、耐衝撃性に優れ、衝撃により割れた場合でも破片が飛散し難いため、安全性にも優れる。
低複屈折で、耐傷付き性、耐衝撃性、安全性に優れた本発明のパネル積層体は、液晶や有機EL等のディスプレイ用カバー、特にタッチパネル等のディスプレイ用液晶カバーとして有用である。
本発明における90度剥離試験の試験片の作製方法と試験方法を示す説明図である。 実施例における落球試験方法を示す説明図である。
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、本明細書において、「シート」と「フィルム」とは同義であり、シートの中でも比較的厚さの薄いものをフィルムと称し、シートはフィルムを包含するものとする。
よって、以下の説明において、「フィルム」は「シート」であってもよい。
また、本明細書において、「ポリカーボネート樹脂」を「PC」と略記する場合がある。
〔パネル積層体〕
本発明のパネル積層体は、後述のポリカーボネート樹脂組成物(A)よりなるパネル本体の一方又は双方の面に、熱可塑性エラストマーからなる表面層(以下、「熱可塑性エラストマー層」と称す場合がある。)を有することを特徴とする。
ここで、熱可塑性エラストマー層をパネル本体の一方の面にのみ形成する場合、熱可塑性エラストマー層の形成面は、通常本発明のパネル積層体を使用する際に外側表面となる面であり、例えば、前述のディスプレイ用カバーにあっては、この熱可塑性エラストマー層側がディスプレイの外側表面(前面側)となる。
[メカニズム]
本発明のパネル積層体のパネル本体を構成するポリカーボネート樹脂組成物(A) は低複屈折で、ディスプレイ用カバー等に用いた場合の視認性に優れる反面、耐傷付き性は十分ではなく、また衝撃強度が低く、衝撃により割れ易く、割れた場合は破片が飛散し易いという欠点がある。
本発明のパネル積層体では、このポリカーボネート樹脂組成物(A) よりなるパネル本体に対して、熱可塑性エラストマー層を積層することで、耐傷付き性、耐衝撃性を改善することができ、また、割れた場合でも破片を熱可塑性エラストマー層でつなぎとめ、飛散を防止することができる。
[パネル本体]
本発明のパネル積層体のパネル本体(以下、「本発明のパネル本体」と称す場合がある。)はポリカーボネート樹脂組成物(A)からなる。
以下、本発明のパネル本体を形成するポリカーボネート樹脂組成物(A)について説明する。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)は、以下に示すポリカーボネート樹脂(i)(以下「ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂」と称す場合がある。)100質量部に対し、α,β-不飽和ジカルボン酸、α,β-不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(ii)を30~230質量部含有するものである。
<ポリカーボネート樹脂(i)>
ポリカーボネート樹脂組成物(A)に含まれるポリカーボネート樹脂(i)は、下記一般式(1)で表される構造単位(以下「構造単位(1)」と称す場合がある。)を有するポリカーボネート樹脂である。
Figure 0007135937000003
(一般式(1)中、Rはメチル基、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
Figure 0007135937000004
のいずれかを示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子(C)と結合して置換基を有していてもよい炭素数6~12の脂環式炭化水素を形成する基を示す。)
上記一般式(1)において、Rはメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であるが、R及びRは特には水素原子であることが好ましい。
また、Xは、
Figure 0007135937000005
である場合、R及びRの両方がメチル基であるイソプロピリデン基であることが好ましく、また、Xが、
Figure 0007135937000006
の場合、Zは、上記一般式(1)中の2個のフェニル基と結合する炭素原子Cと結合して、炭素数6~12の二価の脂環式炭化水素基を形成するが、二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。Zが置換基を有する場合、その置換基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シキロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5-トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
構造単位(1)としての好ましい具体例としては、以下のイ)~ニ)が挙げられる。
イ)2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンに由来する構造単位。即ち一般式(1)において、Rがメチル基、RとRが水素原子、Xがイソプロピリデン基である構造単位。
ロ)2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカンに由来する構造単位。即ち一般式(1)において、Rがメチル基、RとRが水素原子、Xがシクロドデシリデン基である構造単位。
ハ)2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンに由来する構造単位。即ち一般式(1)において、Rがメチル基、RとRがメチル基、Xがイソプロピリデン基である構造単位。
ニ)2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンに由来する構造単位。即ち一般式(1)において、Rがメチル基、RとRが水素原子、Xがシクロヘキシリデン基である構造単位。
これらの中で、構造単位(1)としてはより好ましくは上記イ)、ロ)またはハ)、さらに好ましくは上記イ)またはロ)、特には上記イ)が好ましい。
上記の構造単位(1)を有するポリカーボネート樹脂(i)は、それぞれ、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを、原料ジヒドロキシ化合物として使用して製造することができる。
ポリカーボネート樹脂(i)は、構造単位(1)以外の構造単位を有していてもよく、例えば、下記一般式(2)で表される構造単位(以下「構造単位(2)」と称す場合がある。)、あるいは後記するような他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有していてもよい。この場合、ポリカーボネート樹脂(i)中の構造単位(1)以外の構造単位の共重合量は、通常60モル%以下であり、50モル%以下が好ましく、より好ましくは40モル%以下、さらには30モル%以下であることが好ましい。
Figure 0007135937000007
(一般式(2)中のXは、前記一般式(1)におけると同義である。)
上記構造単位(2)の好ましい具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、即ち、ビスフェノールA由来のカーボネート構造単位が挙げられる。
他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシフェニルエーテル等の芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(i)の粘度平均分子量(Mv)は、16,000~28,000であることが好ましい。粘度平均分子量がこの範囲であると、成形性が良く、機械的強度が大きい積層体が得られやすい。粘度平均分子量(Mv)が16,000を下回ると、耐面衝撃性が著しく低下しやすいためディスプレイ用カバーとしての用途に好ましくなく、28,000を超えると溶融粘度が増大し射出成形が困難となる傾向がある。ポリカーボネート樹脂(i)の粘度平均分子量(Mv)の下限は、より好ましくは17,000、さらに好ましくは18,000、特に好ましくは20,000であり、その上限はより好ましくは27,000である。
なお本明細書において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてジクロロメタンを使用し、ウベローデ粘度計を使用し、温度20℃での極限粘度([η])(単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式:η=1.23×10-40.83の式から算出される値を意味する。
ポリカーボネート樹脂(i)を製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。これらの中でも、界面重合法、溶融エステル交換法が好ましい。
ポリカーボネート樹脂(i)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
<スチレン系樹脂(ii)>
α,β-不飽和ジカルボン酸、α,β-不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体(以下、これらを「α,β-不飽和ジカルボン酸成分」と称す場合がある。)を共重合成分とするスチレン系樹脂(ii)は、スチレン系単量体とα,β-不飽和ジカルボン酸成分を共重合したスチレン系樹脂である。共重合の形態は制限はなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等、いかなるものであってもよい。
スチレン系単量体としては、例えばスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、o-ブチルスチレン、p-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン等で例示されるアルキル置換スチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等のハロゲン化スチレンが挙げられる。これらの中ではスチレンが最も好ましい。スチレン系単量体は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
スチレン系樹脂の共重合成分であるα,β-不飽和ジカルボン酸成分としては、(無水)マレイン酸及びこの炭素数1~20のアルキル又はグリコールのエステル、N-マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-クロロフェニルマレイミド等のマレイミド、クロロ(無水)マレイン酸等のマレイン酸ハライド並びに(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸及びこれらの酸ハライド、アミド、イミド、炭素数1~20のアルキル又はグリコールのエステル等が例示される。ここで「(無水)」とは、α,β-不飽和ジカルボン酸無水物又はα,β-不飽和ジカルボン酸であることを示す。これらの中でも、α,β-不飽和ジカルボン酸無水物又はα,β-不飽和ジカルボン酸が好ましく、α,β-不飽和ジカルボン酸無水物がより好ましい。これらのα,β-不飽和ジカルボン酸成分は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
スチレン系単量体とα,β-不飽和ジカルボン酸成分との組み合わせは、種々の組み合わせが可能であるが、スチレンと無水マレイン酸との組み合わせが好ましい。即ち、スチレン系樹脂(ii)としては、スチレン-無水マレイン酸共重合体が最も好ましい。
スチレン系樹脂(ii)において使用されるα,β-不飽和ジカルボン酸成分の量、即ち、スチレン系樹脂(ii)中のα,β-不飽和ジカルボン酸成分に由来する構造単位の含有量は、スチレン系樹脂(ii)100質量%中、1~35質量%であることが好ましく、より好ましくは2~30質量%である。
スチレン系樹脂(ii)は、公知の塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法で製造されたものを用いることができる。これらの重合方法においては、必要な所定の成分を予め重合時に仕込む方法を用いてもよいし、後から所定成分を逐次添加をする方法を用いてもよい。また、重合反応後に、共重合体成分について、アミド化やイミド化等を行ったものを使用しても差し支えない。
スチレン系樹脂(ii)の質量平均分子量(Mw)は、30,000~350,000であることが好ましく、より好ましくは35,000~300,000であり、40,000~270,000であることがさらに好ましい。
なお、ここで、スチレン系樹脂(ii)の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値である。
スチレン系樹脂(ii)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)中のスチレン系樹脂(ii)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対し、30~230質量部である。このような範囲でスチレン系樹脂(ii)を含有するポリカーボネート樹脂組成物(A)は複屈折が改善され、これを成形してなるパネル本体を有する本発明のパネル積層体は凸部(又は凹部)の段差部分においても複屈折が生じにくく、凸部又は凹部を有しながらも優れたタッチパネル等のディスプレイ用カバーとなる。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)中のスチレン系樹脂(ii)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対し、40質量部以上であり、より好ましくは60質量部以上、また、好ましくは200質量部以下であって、より好ましくは170質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下、特に好ましくは110質量部以下、最も好ましくは90質量部以下である。
また、ポリカーボネート樹脂組成物(A)は、ポリカーボネート樹脂組成物(A)中のα,β-不飽和ジカルボン酸成分の量が、1~15質量%であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂組成物(A)中のα,β-不飽和ジカルボン酸成分の量をこのような範囲とすることで、ポリカーボネート樹脂(i)及び必要に応じて配合される後述のポリカーボネート樹脂(iii)とスチレン系樹脂(ii)との相溶性がより良好となり、樹脂間の剥離や白濁、スジ状の外観不良を抑制することが出来る。この量は、上記した、α,β-不飽和ジカルボン酸成分を共重合成分とするスチレン系樹脂(ii)以外の他の樹脂を含有する場合においても同じである。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)中のα,β-不飽和ジカルボン酸成分の量は、より好ましくは3質量%以上であり、4質量%以上であることがさらに好ましく、また、より好ましくは12質量%以下であり、10質量%以下であることがさらに好ましい。
<その他のポリカーボネート樹脂>
ポリカーボネート樹脂組成物(A)は、落球衝撃等の耐衝撃性やヘイズ等の透明性の点から、上記ポリカーボネート樹脂(i)以外のその他のポリカーボネート樹脂(iii)を含有することが好ましく、ポリカーボネート樹脂(i)以外のその他のポリカーボネート樹脂(iii)としては、前記した構造単位(2)を有するポリカーボネート樹脂(iii)が挙げられ、その好ましい具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールA由来の構造単位を有するビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(iii)は、構造単位(2)以外の構造単位を有することもでき、例えば、他のジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位を有していてもよい。この場合、ポリカーボネート樹脂(iii)中の構造単位(2)以外の構造単位の共重合量は、50モル%未満が好ましく、より好ましくは40モル%以下、さらには30モル%以下、特には20モル%以下であり、10モル%以下、なかでも5モル%以下が最も好ましい。
ポリカーボネート樹脂(iii)に含まれる他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位としては、前記構造単位(1)以外の、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-5-トリメチルシクロヘキサン等の芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(iii)の粘度平均分子量(Mv)は、12,000~30,000であることが好ましく、14,000~29,000がより好ましく、15,000~28,000がさらに好ましい。粘度平均分子量(Mv)がこの範囲であると、成形性が良く、且つ落球衝撃等の耐衝撃性や引張特性に優れたパネル本体を形成しやすく、12,000を下回ると、耐衝撃性が低下し使用が困難となりやすく、30,000を超えると溶融粘度が増大し、フィルム成形が困難となりやすい。
なお、粘度平均分子量(Mv)の定義は、前述の通りである。
ポリカーボネート樹脂(iii)を製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知
の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリ
ジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を
挙げることができる。これらの中でも、界面重合法、溶融エステル交換法が好ましい。
ポリカーボネート樹脂(iii)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合
わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)がポリカーボネート樹脂(iii)を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂組成物(A)により形成されるパネル本体に要求される特性に応じて、適宜決定される。即ち、ポリカーボネート樹脂組成物(A)がポリカーボネート樹脂(iii)を含むことで、パネル本体の耐衝撃性、透明性、耐熱性が向上すると共に、ポリカーボネート樹脂(iii)はポリカーボネート樹脂(i)よりも安価であることから、積層体の材料コストを低減することができる。この観点からは、ポリカーボネート樹脂組成物(A)は、ポリカーボネート樹脂(iii)を多く含むことが好ましく、この場合、ポリカーボネート樹脂組成物(A)中のポリカーボネート樹脂(iii)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対し、100質量部以上であることが好ましく、110質量部以上であることがより好ましく、120質量部以上であることが更に好ましい。ただし、ポリカーボネート樹脂(iii)の含有量が多過ぎると、ポリカーボネート樹脂(i)による高い表面硬度、耐擦傷性、耐薬品性と、低複屈折性が損なわれるため、ポリカーボネート樹脂(iii)の含有量の上限は、ポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対して700質量部以下であることが好ましく、600質量部以下であることがより好ましく、500質量部以下であることがさらに好ましい。
一方、ポリカーボネート樹脂(i)による高い表面硬度、耐擦傷性を維持することを主目的とする場合は、ポリカーボネート樹脂(iii)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対し、100質量部以下であることが好ましく、95質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることがさらに好ましい。ただし、ポリカーボネート樹脂(iii)を配合することによる耐衝撃性、透明性、耐熱性の向上効果やコスト低減効果を得る上では、ポリカーボネート樹脂(iii)の含有量の下限はポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対して好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。
<その他の樹脂>
ポリカーボネート樹脂組成物(A)は、ポリカーボネート樹脂及びスチレン系樹脂(ii)以外のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては、例えば、α,β-不飽和ジカルボン酸成分が共重合していないスチレン系樹脂が好ましく挙げられる。このようなスチレン系樹脂としては、ポリスチレン樹脂が好ましい。また、表面硬度の点から、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリル系樹脂を含有してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)がこれらその他の樹脂を含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対し、好ましくは70質量部以下であり、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。
<その他の成分>
ポリカーボネート樹脂組成物(A)は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外のその他成分、例えば各種樹脂添加剤を含有していてもよい。
樹脂添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
・熱安定剤
熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
これらの熱安定剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)が熱安定剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)、スチレン系樹脂(ii)及び必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(iii)等のその他の樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。熱安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)が酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)、スチレン系樹脂(ii)及び必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(iii)等のその他の樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・離型剤
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸が挙げられる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6~36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリントリベヘネート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート等が挙げられる。
数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ-トロプシュワックス、炭素数3~12のα-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
これらの離型剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)が離型剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)、スチレン系樹脂(ii)及び必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(iii)等のその他の樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
・紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、ポリカーボネート樹脂組成物(A)の透明性や機械物性が良好なものになる。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が好ましく、特に2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には、シプロ化成社製(商品名、以下同じ)「シーソーブ701」、「シーソーブ702」、「シーソーブ703」、「シーソーブ704」、「シーソーブ705」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、ADEKA社製「LA-32」、「LA-38」、「LA-36」、「LA-34」、「LA-31」、BASF社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)が紫外線吸収剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(i)、スチレン系樹脂(ii)及び必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(iii)等のその他の樹脂成分100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、耐候性の改良効果が乏しく、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こしやすい。
<ポリカーボネート樹脂組成物(A)の製造方法>
ポリカーボネート樹脂組成物(A)の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(i)及びスチレン系樹脂(ii)、並びに、必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(iii)等のその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
<パネル本体の厚さ>
本発明のパネル積層体において、上記のポリカーボネート樹脂組成物(A)よりなるパネル本体の厚さは、1~10mm、特に2~5mmであることが好ましい。
パネル本体の厚さが上記下限以上であると、十分な機械的強度を得ることができ、また、低複屈折化の観点から好ましい。パネル本体の厚さが上記上限以下であると、軽量化、コストの観点から好ましい。
[熱可塑性エラストマー層]
本発明のパネル本体の一方又は双方の面に形成される熱可塑性エラストマー層について説明する。ここで、熱可塑性エラストマーとは、使用温度では加硫されたゴムと同様の性質を持つが、昇温されると熱可塑性樹脂と同様に成形することができ、また、再成形することができるポリマー又はポリマーブレンドからなるものをさす。
熱可塑性エラストマー層を構成する熱可塑性エラストマーは、光透過性エラストマーであることが好ましい。ここで、光透過性とは、パネル本体に積層した熱可塑性エラストマー層の厚みで測定した必要な波長の光の透過率が50%以上であることをさす。必要な波長の光とは、例えば透明性が必要な窓であれば可視光線領域の光が該当する。
また、熱可塑性エラストマー層の熱可塑性エラストマーは、本発明のパネル積層体に良好な耐摩耗性、耐傷付き性を付与できることから、自己修復性を有する熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
本発明で用いる熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系、塩化ビニル系、ポリオレフィン系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、ポリエチレン系などの熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらの1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの熱可塑性エラストマーのうち、後述のインサート成形におけるポリカーボネート樹脂組成物(A)との溶着性、溶融拡散性の観点からは、ポリカーボネート樹脂(i)と相互作用する極性基を有するものが好ましく、そのようなものとしてポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
特に、光透過性でゴム弾性を有し、自己修復性に優れ、また、耐油性、耐候性、耐傷付き性、耐摩耗性に優れることからポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、ポリイソシアネートとポリオール及び鎖延長剤を用い、通常使用されるワンショット法またはプレポリマー法によって合成される。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含むポリオール成分からなる。
ポリウレタン成分のためのイソシアネートとしては、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートが例示される。2種以上のジイソシアネートが併用されてもよい。
脂環式ジイソシアネートとしては、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びトランス-1,4-シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)などが例示される。汎用性及び加工性の観点から、H12MDIなどが好ましい。
芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトルエンジイソシアネート(TDI)などが例示される。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが例示される。
特に、脂環式ジイソシアネートが好ましい。脂環式ジイソシアネートは主鎖に二重結合を有さないので、黄変が抑制される。しかも、脂環式ジイソシアネートは強度に優れる。
一方、ポリオールとしては、カプラクトン系ポリオール、アジペート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、より具体的にはポリラクトン、ポリカプラクトンポリオール、ポリ(エチレンアジペート)ポリオール、ポリ(エチレンスクシネート)ポリオール、ポリ(ブチレンアジペート)ポリオール、ポリ(エチレンセバセート)ポリオール、ポリ(ジエチレンエーテルアジペート)ポリオールなどが挙げられる。
本発明で用いる熱可塑性エラストマーは、JISK7311 A形の方法に基づいて得られたA硬度が、60~99の範囲、JIS K7311 D形の方法に基づいて得られたD硬度が、50~74の範囲であることが、傷等の自己修復性の観点から好ましい。
このようなポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、市販品を用いることができ、例えば、脂環式ジイソシアネートを用いたポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、BASF社製「エラストラン(登録商標)」NY585、NY998などを用いることができる。
上記熱可塑性エラストマーには、前述のポリカーボネート樹脂組成物(A)に配合し得る添加剤として例示した各種の添加剤、例えば離型剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤等を配合してもよい。特に紫外線吸収剤を配合することで、パネル積層体の紫外線劣化を防止して耐候性を高めることができる。また、これらの添加剤をポリカーボネート樹脂組成物(A)に配合すると、ポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出成形時に添加剤に起因してガスが発生し、金型汚染、製品欠陥等の原因となるが、これらの添加剤を熱可塑性エラストマー側に配合しておくことで、この問題を軽減することができる。
熱可塑性エラストマー層をパネル本体の一方の面にのみ設ける場合、前述の通り、熱可塑性エラストマー層は通常、本発明のパネル積層体を使用する際の外側表面となる面に設けられ、衝撃や傷付きからパネル本体を保護すると共に、パネル本体が衝撃で割れた際に破砕が飛散するのを防止する機能を発揮する。
熱可塑性エラストマー層をパネル本体の両面に設ける場合、本発明のパネル積層体を使用する際の裏側(外側表面と反対側の内側表面、内面側)となる面に設けられた熱可塑性エラストマー層は、パネル本体が衝撃で割れた際に破砕が飛散するのをより防止すると共に、パネル積層体の裏側(内面側)に設けられた機器本体等の内容物を外力から保護する緩衝材として機能する。
このような熱可塑性エラストマー層の厚さは、薄過ぎるとこの熱可塑性エラストマー層を形成したことによる耐衝撃性、耐傷付き性の改善効果等、パネル本体を保護する効果を十分に得ることができず、厚過ぎると光透過率が小さくなることから、通常0.01~2mm、特に0.05~1mmであることが好ましい。また、パネル本体の両面に熱可塑性エラストマー層を設ける場合は、外表面側の熱可塑性エラストマー層の厚さは通常0.01~2mm、特に0.05~1mm、裏側の熱可塑性エラストマー層の厚さは通常0.01~2mm、特に0.05~1mmで、パネル本体を含め、合計の厚さが通常1.2~14mm、特に2.1~7mmであることが好ましい。
[その他の層]
本発明のパネル積層体は、パネル本体上に熱可塑性エラストマー層に加えて、更にその他の層が形成されていてもよい。
その他の層としては、これらに限定されるものではないが、反射防止層、防汚層、印刷層、接着層が挙げられる。
<反射防止層>
本発明のパネル積層体は、その一方又は双方の熱可塑性エラストマー層の表面に反射防止層が設けられていてもよく、反射防止層を設けることで光透過性を高めることができる。
反射防止層は、例えば、TiO,ITO,ZrO,Nb等の高屈折材料、MgF,SiO等の低屈折材料を組み合わせて単層又は多層に積層形成することができ、積層方法としては、電子ビーム加熱法、抵抗加熱法、フラッシュ蒸着法等の各種真空蒸着法;プラズマ蒸着法;2極スパッタリング法、直流スパッタリング法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、バイアススパッタリング法等の各種スパッタリング法;DC法、RF法、多陰極法、活性化反応法、HCD法、電界蒸着法、高周波イオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法等の各種イオンプレーティング法;CVD法等が挙げられる。さらに、反射防止層は、ZrOゾル、TiOゾル、Sbゾル、WOゾルのような高屈折率を有する金属酸化物ゾルをコーティング剤やプライマー中に分散させ、塗布・硬化させることによって形成したり、低屈折材料であるフッ素系材料等を同様に分散させたり、高屈折材料と低複屈折材料のコーティングを多層に塗布・硬化することによって形成することもできる。
反射防止層の厚さは、好ましくは1nm~20μm、より好ましくは10nm~10μmである。厚みを上記下限以上とすることにより、反射防止層の耐久性を維持でき、上記上限以下とすることにより、反射防止層にクラックが発生するのを防ぐことができる。
<防汚層>
本発明のパネル積層体の熱可塑性エラストマー層の表面には防汚層を設けてもよい。防汚層を設けることでパネル積層体の表面に付着した汚れ(ヒトの指紋等)を落としやすくなる。防汚層は、その機能を十分に発揮するために、パネル積層体の外側最表面を構成する層であることが好ましい。
防汚層の形成方法としては、真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレート法、スパッタ法、プラズマCVD法等の乾式法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレー法等の湿式法のどちらも使用できる。耐擦傷性の観点から、乾式法を用いることが好ましい。湿式法の場合は架橋性モノマーを硬化させ、3次元架橋による耐薬品性を併せ持つことが望ましい。
防汚層の構成材料は、防汚性、撥水性、撥油性を付与できる材料から適宜選択できる。具体的には、含フッ素化合物、及び/又は含シリコン化合物、及び/又はシリカ等の微粒子等が挙げられる。これらは、防汚性、撥水性および撥油性を付与できれば、特に限定されず使用できる。
防汚層の厚さは、通常2nm~20μmが好ましく、2nm~15μmがより好ましく、2nm~10μmが更に好ましい。
<印刷層>
本発明のパネル積層体には、さらにディスプレイが認識できる範囲内で画像部分の枠などの印刷層(加飾層)を設けることができる。印刷層は、熱可塑性エラストマー層にあらかじめ片面あるいは両面に印刷しておくのが好ましく、さらに印刷済みの熱可塑性エラストマー層をインサート成形によって積層しても良い。また裏面を転写可能な印刷層を備えたフィルムを用いて成形時に転写させても良い。
印刷層は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷など、その他公知の印刷方法で設けられる。印刷層は黒枠印刷などのブラックアウト調などの単色の図柄、あるいは絵柄や文字であってもよい。また、印刷層は部分印刷でも全面ベタ印刷でもよく、部分印刷層とベタ印刷層の両方が設けられていてもよい。また図柄、絵柄ではなく機能性のインク等を印刷してもよい。例えば、導電性を持つインクなどを用いて回路等を形成してもよい。また前述の防汚層や反射層やハードコート層を印刷で形成してもよい。
また、印刷層は本発明のパネル積層体において、以下の箇所の1又は2以上に設けることができる。
(1) 熱可塑性エラストマー層とパネル本体との間
(2) 反射防止層を有する場合、反射防止層と熱可塑性エラストマー層との間、および熱可塑性エラストマー層とパネル本体との間
(3) 防汚層を有する場合、防汚層と熱可塑性エラストマーとの間、および熱可塑性エラストマー層とパネル本体との間
(4) パネル本体の裏面側に反射防止層を有する場合、パネル本体と反射防止層との間(両面インサート成形あるいは裏面に転写成形)
印刷層に用いられる印刷用インクに含有される顔料や溶剤は特に限定されること無く、一般的に利用されるものを適用することができる。特に、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂を含むものは、印刷層を設けた場合においても、本発明のパネル積層体を層間剥離等の支障なく作製することが可能となることから好適である。
<接着層>
本発明のパネル積層体は、パネル本体と熱可塑性エラストマー層との間等、層間に、必要に応じて接着層が介在されていてもよい。
後述のインサート成形により本発明のパネル積層体を製造する場合、一般的にはパネル本体と熱可塑性エラストマー層との間には接着層を設けることなく、良好な密着性で一体成形することが可能であるが、熱可塑性エラストマー層とパネル本体との間に印刷層を有する場合など、熱可塑性エラストマー層とパネル本体との密着強度が低下する傾向があることから、接着層を設けてもよい。
接着層に用いる接着樹脂としては、特に制限はないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ブチラール系樹脂、ゼラチン、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ウレタン系樹脂等の樹脂から適切なものが選択される。これらの樹脂は、必要に応じてTダイ等から溶融押し出しにより、あるいは溶剤に溶解した組成物を塗布あるいは印刷などによって接着層の形成に用いられる。
接着層の厚みは、0.1~50μmが好ましく、さらに好ましくは1~10μmである。接着層が上記範囲より薄い場合には接着層による接着性向上効果が不十分となる傾向にあり、上記範囲を超えると印刷層より厚くなり、印刷による色等が、妨げられる。
<その他の構成層>
本発明のパネル積層体は、パネル本体、熱可塑性エラストマー層、及び必要に応じて設けられる上記の反射防止層、防汚層、印刷層、接着層の他、他の任意の層を有していてもよい。
その他の層としては、例えば、パネル積層体の裏側に設けられる防曇層や印刷層、タッチパネル用のタッチセンサー、液晶パネルと密着させる接着層等が挙げられる。
[パネル積層体の製造方法]
本発明のパネル積層体を製造するには、上記のパネル本体と熱可塑性エラストマー層との積層構造を有するパネル積層体を製造することができる方法であればよく、特に制限はない。
例えば、ポリカーボネート樹脂組成物(A)と熱可塑性エラストマーとを共押出成形することでパネル積層体とすることもできるし、予め成形されたポリカーボネート樹脂組成物(A)よりなるパネル本体の一方の面に熱可塑性エラストマーフィルムをラミネートする方法で得ることもできる。
生産性、パネル本体と熱可塑性エラストマー層との密着性等の観点からは、インサート成形により本発明のパネル積層体を製造することが好ましい。
インサート成形により本発明のパネル積層体を製造する場合、射出成形金型のうちの一方の金型(可動金型)側に熱可塑性エラストマーフィルムを金型表面に沿うように配置し、その後型締めしてポリカーボネート樹脂組成物(A)の溶融樹脂を射出する。これにより、熱可塑性エラストマーフィルムとポリカーボネート樹脂組成物(A)よりなるパネル本体とが積層一体化されたパネル積層体を得ることができる。
ここで使用される熱可塑性エラストマーフィルムとしては市販品を用いることができるが、市販の熱可塑性エラストマーフィルムは、通常、熱可塑性エラストマーフィルムの両面が保護フィルムで被覆された形態で製品化されている。
このような保護フィルム付き熱可塑性エラストマーフィルムを用いる場合、一方の保護フィルムのみを剥離し、一方の保護フィルムは残したままとし、この保護フィルム面側が金型面に当接するように配置して用いることが好ましい。これは以下の理由による。
即ち、熱可塑性エラストマーフィルムは柔軟で自立性が殆どないため、保護フィルムを剥離した状態で金型内に配置しようとすると、多くの場合、熱可塑性エラストマーフィルムのへたりのために、金型表面に密着性よく配置することができず、金型表面と熱可塑性エラストマーフィルムとの間に空気を巻き込み、熱可塑性エラストマーフィルムが一部浮き上ったような状態となる。この状態でポリカーボネート樹脂組成物(A)の溶融樹脂を射出すると、溶融樹脂が金型表面と熱可塑性エラストマーフィルムとの間に回り込み、製品欠陥の原因となる。
これに対して、ある程度剛直な保護フィルムとの積層フィルムとして熱可塑性エラストマーフィルムを用いることにより、金型表面に隙間なく、密着性よく、熱可塑性エラストマーフィルムを配置することができる。
この場合は、インサート成形後に、保護フィルムを剥離すればよい。
熱可塑性エラストマーフィルムの保護フィルムとしては特に制限はないが、射出成形温度に耐え得る耐熱性を有し、機械的強度が高く取り扱い性にも優れることから、二軸延伸ポリエステルフィルムが好ましい。通常この二軸延伸ポリエステルフィルムよりなる保護フィルムの厚さは30~200μm程度である。
反射防止層や印刷層等を設ける場合は、このインサート成形に先立ち予め熱可塑性エラストマーフィルムやパネル本体側にこれらの層を形成しておけばよい。インサート成形後にこれらの層を形成することもできる。
[用途]
本発明のパネル積層体は、特にタッチパネル用カバーとして有用であり、例えば、スマートホン等のタブレット型の各種携帯端末、タブレット型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーションやカーオーディオ等のタッチパネル用カバーなど、ディスプレイの樹脂カバーとして有用である。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
以下の実施例及び比較例に使用した各原料成分は、以下のとおりである。
<製造例1:ポリカーボネート樹脂(i-1)の製造>
2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「BPC」と記す。)26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.79モル(5.74kg)を、撹拌機及び溜出凝縮装置付きのSUS製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(CsCO)を、BPC1モルに対し1.5×10-6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを溜出させた。
次に、反応器内を60分かけて温度を284℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに60分間反応を続け重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の攪拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は289℃、攪拌動力は1.00kWであった。
次に、溶融状態のままの反応液を2軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp-トルエンスルホン酸ブチルを2軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を2軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断して、粘度平均分子量(Mv)26,000のビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂(i-1)のペレットを得た。
<製造例2:ポリカーボネート樹脂組成物(A)の製造>
以下の原料成分を用いて、以下の方法でポリカーボネート樹脂組成物(A)を製造した。
ポリカーボネート樹脂(i-1):上記製造例1で製造した2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンを原料とするビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂
粘度平均分子量(Mv):26,000
スチレン系樹脂(ii-1):スチレン-無水マレイン酸共重合体(POLYSCOPE社製、商品名:XIRAN SZ15170)
質量平均分子量(Mw):170,000
無水マレイン酸単位含有量:15質量%
ポリカーボネート樹脂(iii-1):ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ユーピロン(登録商標)S-3000)
粘度平均分子量(Mv):21,000
Tg=145℃
熱安定剤:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(ADEKA社製、商品名:アデカスタブ2112)
ポリカーボネート樹脂(i-1)、スチレン系樹脂(ii-1)、ポリカーボネート樹脂(iii-1)、及び熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤を、以下の割合で配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製TEX30HSST)を用いて、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hrにて押出機上流部のバレルより押出機にフィードし、溶融混練してポリカーボネート樹脂組成物(A)のペレットを得た。
ポリカーボネート樹脂(i-1):100質量部
スチレン系樹脂(ii-1):100質量部
ポリカーボネート樹脂(iii-1):83.3質量部
熱安定剤:0.09質量部
酸化防止剤:0.29質量部
離型剤:1.14質量部
紫外線吸収剤:0.86質量部
<熱可塑性エラストマーフィルム>
BASF社製ポリウレタン系熱可塑性エラストマー「エラストラン(登録商標)」NY585(JIS K7311によるタイプAのデュロメーターによる硬度(A硬度)が85)よりなる厚さ0.15mmのフィルム(以下「NY585フィルム」と記す。)
BASF社製ポリウレタン系熱可塑性エラストマー「エラストラン(登録商標)」NY998(A硬度98)よりなる厚さ0.15mmのフィルム(以下「NY998フィルム」と記す。)
なお、上記NY585フィルム、NY998フィルムは、いずれも両面が厚さ50および75μmの二軸延伸ポリエステルフィルムよりなる保護フィルムで被覆されているものであるので、一方の厚さ50μmの保護フィルムのみ剥離し、他方の厚さ75μmの保護フィルムを残し、この保護フィルムが金型表面に当接するように配置してインサート成形を行った。
[実施例1,2]
NY585フィルム又はNY998フィルムを金型にセットし、ポリカーボネート樹脂組成物(A)を射出成形して、以下の方法でそれぞれ本発明のパネル積層体(NY585インサートPC,NY998インサートPC)のサンプルを作製し、90度剥離試験、落球試験、及び鉛筆による擦過試験を行った。結果を表1に示す。
なお、ポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出成形時の条件は以下の通りとした。
ポリカーボネート樹脂組成物(A)の溶融樹脂温度(シリンダー温度):280℃
金型温度:80℃
ポリカーボネート樹脂組成物(A)の射出速度:15mm/sec
保圧力:25MPa
保圧時間:20sec
[90度剥離試験方法:密着性]
<試験片の作製>
図1(a)に示す通り、可動側金型1A,固定側1Bのうちの可動側金型1Aの金型面に熱可塑性エラストマーフィルム2を、その下縁部をポリイミドテープ3で貼り付けた状態で装填した。その後型締めして、図1(b)の通り、ポリカーボネート樹脂組成物(A)の溶融樹脂4を金型1A,1Bのキャビティ内に射出して成形し、図1(c)のように、熱可塑性エラストマー層2Aとポリカーボネート樹脂組成物(A)よりなるパネル本体4Aとが一部ポリイミドテープ3を介して積層一体化された積層体サンプル(100mm×150mm×厚さ3mm)10を得た。
この積層体サンプル10のポリイミドテープ3部分は、射出樹脂と密着していないため、剥離試験における剥し口となる。
次いで、得られた積層体サンプル10を、図1(d)のように、ポリイミドテープ3の延在方向と直交する方向に15mm幅の短冊状にナイフで切断して、図1(e)に示す剥離試験用試験片10Aを得た。
<90度剥離試験>
上記の通り作製した試験片10Aを用い、図1(f)の通り、ポリイミドテープ3の剥し口を治具でつかみ、熱可塑性エラストマー層側をパネル本体に対して90°上方に20mm/sの速度で引き上げて15mm幅の試験片10Aの剥離強度(N/15mm)をプッシュアンドプルゲージで測定し、パネル本体と熱可塑性エラストマー層の接着強度とした。
[落球試験方法:飛散防止性]
上記積層体サンプル10の作製方法と同様にして作製した積層体サンプル(100mm×150mm×厚さ3mm)を用い、図2に示す通り、1cmのクリアランスで積層体サンプル10を熱可塑性エラストマー層側を上にして支持台5A,5Bに架け渡し、高さ174cmの上方から重さ3.6kgの錘6を落下させた(落下エネルギー61.4J)。
このときのサンプル10の破壊状態を観察し、独立した(飛び散った)破片が発生する場合を「×」、サンプル10が割れても破片が互いに密着し、飛散しない場合を「○」とした。
[鉛筆による擦過試験方法:耐傷付き性]
ポリイミドテープ3を用いないこと以外は上記積層体サンプル10の作製方法と同様にして作製した積層体サンプル(100mm×150mm×厚さ3mm)の熱可塑性エラストマー層をF、H又は9Hの鉛筆で1000gの加重をかけて擦り、傷が付かないか否かを目視にて確認した。傷が付いて不透明になっている場合を「×」、傷が付かず透明性を維持している場合を「○」とした。
[比較例1]
熱可塑性エラストマーフィルムを用いず、ポリカーボネート樹脂組成物(A)のみを実施例1と同様に射出成形して厚さ3.0mmの単層パネル(PC単体)を成形し、この単層パネルについて上記と同様に飛散防止性と耐傷付き性の評価を行い、結果を表1に示した。
Figure 0007135937000008
表1より、ポリカーボネート樹脂組成物(A)よりなるパネル本体に熱可塑性エラストマー層を有する本発明のパネル積層体は、熱可塑性エラストマー層のないものに比べて、耐傷付き性が著しく良好であり、また、衝撃により割れても破片が飛散し難いことが分かる。
1A,1B 金型
2 熱可塑性エラストマーフィルム
2A 熱可塑性エラストマー層
3 ポリイミドテープ
4 ポリカーボネート樹脂組成物(A)の溶融樹脂
4A パネル本体
5A,5B 支持台
6 錘
10 積層体サンプル
10A 試験片

Claims (6)

  1. 下記ポリカーボネート樹脂組成物(A)からなるパネル本体の一方又は双方の面に、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる表面層を有するパネル積層体。
    ポリカーボネート樹脂組成物(A):下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(i)100質量部に対して、α,β-不飽和ジカルボン酸、α,β-不飽和ジカルボン酸無水物又はその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(ii)30~230質量部を含有するポリカーボネート系樹脂組成物
    Figure 0007135937000009
    (一般式(1)中、Rはメチル基、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
    Figure 0007135937000010
    のいずれかを示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子(C)と結合し、置換基を有していてもよい炭素数6~12の脂環式炭化水素を形成する基を示す。)
  2. 前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーが光透過性エラストマーである請求項1に記載のパネル積層体。
  3. 前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる表面層の表面に防汚層が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパネル積層体。
  4. 当該パネル積層体の一方又は双方の前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる表面層の表面に反射防止層が設けられていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のパネル積層体。
  5. 請求項1ないしのいずれか1項に記載のパネル積層体からなるディスプレイ用カバー。
  6. ポリウレタン系熱可塑性エラストマーフィルムのインサート成形により請求項1ないしのいずれか1項に記載のパネル積層体を製造することを特徴とするパネル積層体の製造方法。
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