JP2016216686A - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】鉛筆硬度が高く耐擦傷性に優れ、複屈折や外観不良の問題がなく、光線透過率、成形品外観、耐落球衝撃性等の耐衝撃性、耐薬品性、流動性に優れ、またタッチパネル等にしたときの視認性にも優れるポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(B)30〜110質量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】

【選択図】なし

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物に関し、詳しくは、鉛筆硬度が高く耐擦傷性に優れ、複屈折や外観不良の問題がなく、光線透過率、成形品外観、耐落球衝撃性等の耐衝撃性、耐薬品性及び流動性に優れたポリカーボネート樹脂組成物に関する。
ポリカーボネート樹脂は、機械的強度、電気的特性、透明性などに優れ、エンジニアリングプラスチックとして、電気・電子機器分野、自動車分野等様々な分野において幅広く利用されている。特に近年、その透明性、耐衝撃性、低比重の特徴を活かし、ガラス代替への検討が進められている。
特に、従来ガラス基板が用いられてきたスマートフォンや、カーナビ、カーオーディオ等の自動車内装部品、テレビ等の大型ディスプレイ等のタッチパネルや液晶ディスプレイは、そのデザインの多様化や機能向上のため、曲面(3D)形状や、複雑な形状が求められており、ポリカーボネート樹脂基板化することよって、従来のガラス基材ではできなかった形状にする検討がなされている。
しかしながら、曲面(3D)や複雑な形状等の所望の形状を付与するためには、射出成形法が一般的に用いられるが、射出成形法では、ゲート部や凹凸部などにおいて溶融樹脂の流動状態に変化が生じ、せん断により複屈折が生じやすくなり、位相差ムラが発生しやすい。そのようなポリカーボネート基材をタッチパネルや液晶ディスプレイに組み込むと、表示像のカラーバランスやコントラストの低減を引き起こしやすく、また肉眼でも表面に虹模様が見えたり、偏光サングラスをかけて画面を見ると虹模様が濃く出たり、ブラックアウトするなどして視認性に影響するといった問題があった。
このような複屈折を低減するために様々な手法が検討されており、例えば、正の複屈折特性をもつポリカーボネート樹脂と、負の複屈折特性をもち、ポリカーボネート樹脂と屈折率の近い樹脂をブレンドする技術が提案されている。しかしながら、このような技術を採用した場合、ブレンドする樹脂のTg差によって、特に低速射出時に、成形品の表面に、外観不良の原因となるスジが発生しやすく、良好な外観とするには高速射出が必要となり、成形条件が限定されるといった問題があった。
加えて、ポリカーボネート樹脂基材は、表面硬度が低く耐擦傷性が劣り、手で触れることによる表面傷付きや擦れの問題があった。この問題を解消するために、ハードコート等の表面保護層を設け耐擦傷性を向上させる方法も知られているが、製品歩留まり、コスト、環境負荷等の観点から、このような加工処理を必要としない、十分に高い表面硬度を有する基材を製造可能な、樹脂材料の提供が望まれている。
さらに、タッチパネルは人の手指で操作されるため、手指に塗られるハンドクリーム、虫よけ剤等に対する耐性が要求され、特に自動車用のカーナビやカーオーディオ等のタッチパネルは、車内に置かれる芳香剤に対する耐性も要求される。しかし、ポリカーボネート樹脂は耐薬品性に劣るため、このような用途には使用できない場合が多かった。そして、耐薬品性が求められる用途に使用する場合にも、上記のような理由からハードコート等の表面保護層を設ける必要があり、コスト、製品歩留まり、環境負荷等の観点から、このような加工処理を必要としない材料が求められている。
ポリカーボネート樹脂の耐薬品性を向上させる技術としては、例えば、特許文献1に、芳香族ポリカーボネート樹脂にアクリルエラストマーとポリエステル樹脂を配合する方法が提案されている。しかしながら、この樹脂組成物は、透明性は低下してしまい、また硬度及び耐薬品性も必ずしも十分満足できるというものではなかった。
そして、製品の軽量化の要求に伴い、タッチパネルに用いられるカバーパネル等の部品もより薄肉のものが求められる。そのため、それら部品に用いる樹脂材料には、高い流動性が求められるのも現状である。
このように、タッチパネル等の各種表示装置の部材には、高い透明性を維持しつつ、耐擦傷性、低複屈折性、成形品外観、耐薬品性、流動性及び落下に耐える耐衝撃性にも優れることが要求される。
特公昭62−37671号公報
本発明の目的(課題)は、鉛筆硬度が高く耐擦傷性に優れ、複屈折や外観不良の問題がなく、光線透過率、成形品外観、耐落球衝撃性等の耐衝撃性、耐薬品性、流動性にも優れ、またタッチパネルにしたときの複屈折によるブラックアウト等の問題がなく、視認性にも優れるポリカーボネート樹脂材料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定のポリカーボネート樹脂に、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂を含有するポリカーボネート樹脂組成物が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、以下の通りである。
[1]下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(B)30〜110質量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
(一般式(1)中、Rはメチル基、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
のいずれかを示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子(C)と結合し、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の脂環式炭化水素を形成する基を示す。)
[2]ポリカーボネート樹脂組成物中のα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体の量が、1〜15質量%である、上記[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[3]スチレン系樹脂(B)中のα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体の量が、1〜35質量%である、上記[1]又は[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[4]ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が、20,000〜27,000である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[5]さらに、ポリカーボネート樹脂(A)以外のポリカーボネート樹脂(C)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、80質量部以下の割合で含有する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形体。
[7]成形体のコア部において、スチレン系樹脂(B)相の長さが10μm以下である、上記[6]に記載の成形体。
[8]意匠面にウエルド部が存在しない、上記[6]又は[7]に記載の成形体。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、鉛筆硬度が高く耐擦傷性に優れ、複屈折や外観不良の問題がなく、光線透過率、成形品外観、耐落球衝撃性等の耐衝撃性、耐薬品性及び流動性に優れ、また、タッチパネルや液晶表示機器にしたときの視認性にも優れる。
従って、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、特にタッチパネルや液晶表示機器のカバー部材として特に好適に使用できる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
[概要]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、前記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(B)30〜110質量部を含有することを特徴とする。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物が含有するポリカーボネート樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂(A)により、優れた表面硬度、耐擦傷性、視認性、外観、耐薬品性及び流動性が達成できる。
(一般式(1)中、Rはメチル基、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
のいずれかを示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子(C)と結合して置換基を有していてもよい炭素数6〜12の脂環式炭化水素を形成する基を示す。)
上記一般式(1)において、Rはメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であるが、R及びRは特には水素原子であることが好ましい。
また、Xは、
である場合、R及びRの両方がメチル基であるイソプロピリデン基であることが好ましく、また、Xが、
の場合、Zは、上記一般式(1)中の2個のフェニル基と結合する炭素原子Cと結合して、炭素数6〜12の二価の脂環式炭化水素基を形成するが、二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。置換されたものとしては、これらのメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シキロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5−トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)としての好ましい具体例としては、以下のイ)〜ニ)のポリカーボネート樹脂が挙げられる。
イ)2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン構造単位を有するもの、即ちRがメチル基、RとRが水素原子、Xがイソプロピリデン基である構造単位を有するもの、
ロ)1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン構造単位、即ちRがメチル基、RとRが水素原子、Xがシクロドデシリデン基である構造単位を有するもの。
ハ)2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン構造単位、即ちRがメチル基、RとRがメチル基、Xがイソプロピリデン基である構造単位を有するもの、
ニ)1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン構造単位、即ちRがメチル基、RとRが水素原子、Xがシクロヘキシリデン基である構造単位を有するもの、
これらの中で、より好ましくは上記イ)、ハ)またはニ)、さらに好ましくは上記イ)またはハ)、特には上記イ)のポリカーボネート樹脂が好ましい。
これらポリカーボネート樹脂(A)は、それぞれ、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを、ジヒドロキシ化合物として使用して製造することができる。
ポリカーボネート樹脂(A)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)は、一般式(1)で表される構造単位以外のカーボネート構造単位を有することもでき、例えば、下記一般式(2)で表される構造単位(例えば、ビスフェノールA由来の構造単位)、あるいは後記するような他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有していてもよい。この際の一般式(1)で表される構造単位以外の構造単位の共重合量は、通常60モル%以下であり、50モル%以下が好ましく、より好ましくは40モル%以下、さらには30モル%以下であることが好ましい。
(一般式(2)のXは、前記一般式(1)と同義である。)
上記一般式(2)で表されるポリカーボネート構造単位の好ましい具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、即ち、ビスフェノールA由来のカーボネート構造単位である。
他のジヒドロキシ化合物としては、例えば以下のような芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、16,000〜28,000であることが好ましい。粘度平均分子量がこの範囲であると、成形性が良く、機械的強度が大きく、耐擦傷性のよい成形品が得られやすく、16,000を下回ると、耐面衝撃性が著しく低下しやすいため、例えばタッチパネルや液晶表示機器のカバー等としての使用が難しくなりやすく、28,000を超えると溶融粘度が増大し射出成形が困難となりやすい。ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量の下限は、より好ましくは17,000、さらに好ましくは18,000、特に好ましくは20,000であり、その上限はより好ましくは27,000、さらに好ましくは26,000である。
なお本明細書において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてジクロロメタンを使用し、ウベローデ粘度計を使用し、温度20℃での極限粘度([η])(単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式:η=1.23×10−40.83の式から算出される値を意味する。
ポリカーボネート樹脂(A)を製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。これらの中でも、界面重合法、溶融エステル交換法が好ましい。
[α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(B)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物が含有するα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(B)としては、スチレン系単量体とα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合したスチレン系樹脂である。共重合の形態は制限はなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等、いかなるものであってもよい。
スチレン系単量体としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−ブチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン等で例示されるアルキル置換スチレンや、又はクロロスチレンや、ブロモスチレン等のハロゲン化スチレンが挙げられる。これらの中ではスチレンが最も好ましい。
スチレン系樹脂の共重合成分であるα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体としては、(無水)マレイン酸及びこの炭素数1〜20のアルキル又はグリコールのエステル、N−マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド等のマレイミド、クロロ(無水)マレイン酸等のマレイン酸ハライド並びに(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸及びこれらの酸ハライド、アミド、イミド、炭素数1〜20のアルキル又はグリコールのエステル等が例示される。ここで「(無水)」とは、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物又はα,β−不飽和ジカルボン酸であることを示す。これらの中でも、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物又はα,β−不飽和ジカルボン酸が好ましく、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物がより好ましい。
スチレン系単量体とα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体との共重合成分との組み合わせは、種々の組み合わせが可能であるが、スチレンと無水マレイン酸との組み合わせによるスチレンと無水マレイン酸共重合体が最も好ましい。
スチレン系樹脂(B)は、公知の塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法で製造されたものを用いることができる。これらの重合方法においては、必要な所定の成分を予め重合時に仕込む方法をとっても良いし、後から所定成分を逐次添加をする方法を用いても良い。また、重合反応後に、共重合体成分について、アミド化やイミド化等を行ったものを使用しても差し支えない。
スチレン系樹脂(B)の質量平均分子量は、30,000〜350,000であることが好ましく、より好ましくは35,000〜300,000であり、40,000〜270,000であることがさらに好ましい。
スチレン系樹脂(B)において使用されるα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体の量は、スチレン系樹脂(B)100質量%中、1〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜30質量%である。
α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、30〜110質量部である。このような範囲でスチレン系樹脂(B)を含有する本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、複屈折が改善され、これを射出成形して得た成形体は鉛筆硬度が高く耐擦傷性に優れ、光線透過率と耐衝撃性、成形品外観、耐落球衝撃性、耐薬品性、流動性に優れ、タッチパネルや液晶表示機器のカバー等にした場合のゲート部や凹凸部においても複屈折が生じにくい。
スチレン系樹脂(B)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、40質量部以上であり、より好ましくは45質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、また、好ましくは105質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは90質量部以下、特に好ましくは80質量部以下である。スチレン系樹脂(B)の含有量が上記下限値未満であると、耐芳香剤性等の耐薬品性、流動性が低下する。また、複屈折が高くなり、例えば、タッチパネルのカバーパネルとした際に視認性が低下する。一方、含有量が上記上限値を超えても、耐芳香剤性等の耐薬品性や耐衝撃性が低下する。
[ポリカーボネート樹脂(A)以外のポリカーボネート樹脂(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)以外の他のポリカーボネート樹脂(C)を含有することが好ましい。
このようなポリカーボネート樹脂(C)としては、好ましくは前記した一般式(2)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂が挙げられる。
前記一般式(2)で表されるポリカーボネート構造単位の好ましい具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールA由来の構造単位を有するポリカーボネート樹脂である。
ポリカーボネート樹脂(C)は、一般式(2)で表わされる構造単位以外のカーボネート構造単位を有することもでき、他のジヒドロキシ化合物由来のカーボネート構造単位を有していてもよい。一般式(2)で表わされる構造単位以外の構造単位の共重合量は、通常50モル%未満が好ましく、より好ましくは40モル%以下、さらには30モル%以下、特には20モル%以下であり、10モル%以下、なかでも5モル%以下が最も好ましい。
他のジヒドロキシ化合物としては、前記一般式(1)で示されるもの以外の、例えば以下のような芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、4,4’−(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)を製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。これらの中でも、界面重合法、溶融エステル交換法が好ましい。
ポリカーボネート樹脂(C)を用いる場合の含有割合は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、80質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、さらに好ましくは40質量部以下である。また、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、さらに好ましくは20質量部以上である。このような含有割合とすることにより、高い表面硬度、耐擦傷性、耐薬品性及び流動性を維持しながら、落球衝撃等の優れた耐衝撃性、低いヘイズ等の優れた透明性と優れた耐熱性とを達成することがより容易となる。
また、ポリカーボネート樹脂(C)の粘度平均分子量は、12,000〜30,000であることが好ましく、14,000〜28,000がより好ましく、15,000〜26,000がさらに好ましく、15,000〜24,000が特に好ましい。粘度平均分子量がこの範囲であると、成形性が良く、且つ落球衝撃等の耐衝撃性に優れた成形体が得られやすく、12,000を下回ると、耐衝撃性が低下し使用が困難となりやすく、30,000を超えると溶融粘度が増大し、流動性が低下し、射出成形または押出成形が困難となりやすい。
なお、粘度平均分子量の定義は、前述の通りである。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記したポリカーボネート樹脂(A)、他のポリカーボネート樹脂(C)及びα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(B)以外にその他の樹脂成分を含有してもよい。その他の樹脂としては、例えば、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体が共重合していないスチレン系樹脂が好ましく挙げられる。このようなスチレン系樹脂としては、ポリスチレン樹脂が好ましい。また、表面硬度の点から、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリル系樹脂を含有してもよい。
これらその他の樹脂を含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは70質量部以下であり、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂組成物中のα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体の量が、1〜15質量%であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂組成物中のα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体の量をこのような範囲とすることで、さらにポリカーボネート樹脂(A)及び(C)とスチレン系樹脂(B)の相溶性が良好となり、樹脂間の剥離や白濁、スジ状の外観不良を抑制することが出来る。
ポリカーボネート樹脂組成物中のα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体量は、より好ましくは2質量%以上であり、3質量%以上であることがさらに好ましく、4質量%以上であることが特に好ましい。また、より好ましくは12質量%以下であり、10質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以下であることが特に好ましい。
[その他の成分]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外のその他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、上記した以外の樹脂、各種樹脂添加剤などが挙げられる。
樹脂添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
・熱安定剤
熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
なお、熱安定剤は、1種のみで含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)、必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(C)及びその他の樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。熱安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
なお、酸化防止剤は、1種のみで含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)、必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(C)及びその他の樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・離型剤
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
なお、上述した離型剤は、1種のみで含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)、必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(C)及びその他の樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
・紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、ポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製(商品名、以下同じ)「シーソーブ701」、「シーソーブ702」、「シーソーブ703」、「シーソーブ704」、「シーソーブ705」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、ADEKA社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、BASF社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)、必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(C)及びその他の樹脂成分100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.05質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、耐候性の改良効果が乏しく、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こしやすい。
なお、紫外線吸収剤は、1種のみで含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A)及びα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(B)、並びに、必要に応じて配合されるポリカーボネート樹脂(C)及びその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
[成形体]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記したポリカーボネート樹脂組成物をペレタイズしたペレットを、射出成形法等の各種の成形法で成形して各種の成形体を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接成形して、成形体にすることもできる。さらに、押出成形法等により、シート、フィルム、積層体を成形することもできる。
[押出成形]
シート、フィルムを成形する場合は、例えば、溶融押出法、溶液キャスティング法(流延法)等を採用することができる。溶融押出法の具体的な方法は、例えば、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を押出機に定量供給して、加熱溶融し、Tダイの先端部から溶融樹脂をシート状に鏡面ロール上に押出し、複数のロールにて冷却しながら引き取り、固化した時点で適当な大きさにカットするか巻き取る方式が用いられる。溶液キャスティング法の具体的な方法は、例えば、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を塩化メチレンに溶解した溶液(濃度5〜40%)を鏡面研磨されたステンレス板上にTダイから流延し、段階的に温度制御されたオーブンを通過させながらフィルムを剥離し、更に剥離し、溶媒を除去した後、冷却して巻き取る方式が用いられる。
また、共押出法やラミネート機やプレス機で熱圧着する熱圧着法により積層体とすることもできる。積層体とする場合は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物が表層となるように、積層することが好ましい。その場合、積層する相手の基材としては、特に限定はないが、表層との接着性、透明性、耐衝撃性等の機械的物性の観点から、ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂が好ましく用いられる。
積層体とする場合、表層の厚みは、通常5〜500μmの範囲であり、好ましくは10〜300μm、より好ましくは15〜200μm、さらに好ましくは20〜100μmである。表層の厚みが薄すぎると擦り傷等の傷が基材のポリカーボネート樹脂層まで達し十分な耐擦傷性が得られない場合があり、また厚すぎると耐衝撃性が低下しやすくなる。
基材の厚みは、表層よりも厚いことが好ましく、通常50μm〜3mmの範囲であり、好ましくは100μm〜2mm、より好ましくは300μm〜1.5mm、さらに好ましくは400μm〜1mmである。基材の厚みが薄すぎると、十分な耐衝撃性が得られない場合があり、厚すぎると十分な表面硬度が得られない場合がある。
積層体の総厚みは、通常100μm〜3.5mm、好ましくは200μm〜3mm、より好ましくは300μm〜2mm、さらに好ましくは500μm〜1mmである。総厚みが薄すぎると十分な剛性が得られにくく、また破れやすくなる可能性があり、厚すぎると、例えば、共押出による積層体の製造時に、冷却ロール上で積層体表面が冷却されても内部が後から冷却されてしまい、内部収縮により積層体の表面が粗くなる場合がある。
積層体の表層、基材、総厚みを適切に調整することにより、表面硬度、透明性、耐衝撃性等の機械的物性に優れた積層体とすることができる。
また、優れた耐光(候)性を付与するために、積層体に、好ましくは積層体の表層に紫外線吸収剤を含有させることも効果的である。紫外線吸収剤としては、任意のものを用いることができるが、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系、トリアジン系およびシュウ酸アニリド系の紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤の含有量は、表層の樹脂成分100質量部に対し、通常0.05〜5質量部であり、好ましくは0.1〜4質量部、より好ましくは0.3〜3質量部、さらに好ましくは0.5〜2質量部、特に好ましくは0.7〜1質量部である。
[射出成形]
射出成形法を採用する場合、例えば、射出成形機、超高速射出成形機、射出圧縮成形機等の公知の射出成形機を用いて射出成形される。
射出成形時における射出成形機のシリンダー温度は、好ましくは240〜340℃であり、より好ましくは260〜300℃である。また、射出成形時の射出速度は、好ましくは10〜1,000mm/秒であり、より好ましくは10〜500mm/秒である。
このようにして得られる本発明のポリカーボネート樹脂組成物の成形体は、好ましくは、成形体コア部(成形体表面から深さ100μm以上の部分)の、スチレン系樹脂(B)相の長さが10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。ここでスチレン系樹脂(B)相の長さとは、スチレン系樹脂(B)相の最大長さ(各ドメインの長さ方向の両端を結ぶ最長直線距離)をいう。
さらに、スチレン系樹脂(B)相の面積は、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることが特に好ましい。
このようなモルフォロジーを有することにより、外観が極めて良好となり、複屈折(リターデーション)が小さくなり、また耐衝撃性が良好となる傾向にある。
スチレン系樹脂(B)相が長く、面積も大きくなる要因のひとつに、成形体中のウエルド部の有無が関係すること、そして、この長く大きなスチレン系樹脂(B)相の存在によって、外観や複屈折の問題が発生しやすくなることが、本発明者の検討によって初めて明らかとなった。このような理由から、タッチパネルのカバーパネル等の実製品を製造する際には、意匠面にウエルド部が存在しないように、ゲート数、ゲート位置等の金型調整や、意匠面以外の部分にウエルド部を形成させる等の成形条件の調整を行うことが望ましい。なお、意匠面とは、本発明の樹脂組成物からなる部材を含む最終製品において、外部から認識できる面をいい、例えば、液晶パネル、タッチパネル等の各種表示(ディスプレイ)装置用の部材の場合はそのディスプレイ部にかかる面をいう。
成形体のモルフォロジーは、光学顕微鏡、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)などにより観察することができ、好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される。
具体的には、SEM装置を用い、成形体を1kVの加速電圧下で、倍率10,000倍の反射電子像により観察される。
スチレン系樹脂(B)相の長さ、面積は、反射電子像で得られた像に対し、コントラストを強調あるいは、明暗の調整または両方の調整を施すことにより読み取ることができる。
[成形体モルフォロジーの好ましい制御法]
本発明の成形体は、前記したような特異なモルフォロジー構造を有することによって、外観に優れ、複屈折も低減し、また耐衝撃性により優れる成形体が得られる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、押出機等の溶融混練機を用いた溶融混練法により製造することが好ましいが、ポリカーボネート樹脂組成物の原料各成分を混合して、単に混練するだけでは、本発明で規定するモルフォロジー構造を安定して形成することは難しく、特別の方法により混練することが推奨される。
以下に、好ましいモルフォロジー構造を安定して形成するための好ましい製造方法について、説明する。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の溶融混練方法としては、押出機を用いることが好ましい。押出機としては、一軸押出機、二軸押出機、多軸押出機などがあるが、一軸押出機または二軸押出機が好ましい。多軸押出機では、混練時の樹脂温度が上がり、樹脂が黄変したり、劣化したりする可能性があり好ましくない。成形体としたときのスチレン系樹脂(B)相の長さ、面積を本発明の範囲とするためには二軸押出機が最も好ましい。
また、本発明で用いる押出機としては、ベント式であるものが好ましい。ベントの数は1箇所でも2箇所以上であってもよい。製造中のベントの減圧度は、−0.01MPa以下が好ましく、−0.05MPa以下がさらに好ましく、−0.1MPa以下が最も好ましい。ベント減圧度が高すぎると、樹脂内部からの脱揮が不十分となり、ストランドに気泡が生じてストランド切れが起こる虞があり好ましくない。ベント減圧度が低すぎると樹脂がベントアップしやすくなり、安定的な製造が困難となる虞があり好ましくない。
押出機のスクリューのL/Dとしては、10〜80が好ましく、より好ましくは15〜70、さらに好ましくは20〜60である。押出機のスクリューのL/Dが小さすぎると混練不足となり、成形体としたときのスチレン系樹脂(B)相の長さ、面積が大きくなる虞があり好ましくない。押出機のスクリューのL/Dが大きすぎると、押出機内での滞留時間が長くなったり、樹脂温度が上昇しすぎたりするため、ポリカーボネート樹脂組成物が黄変したり、ヤケ異物が増えたりする虞があり好ましくない。
押出機のスクリュー構成としては、ニーディングユニットを有している構造が好ましい。ニーディングユニットとしては1か所もしくは2か所が好ましい。ニーディングユニットが無いと混練不足となりやすく、成形体としたときのスチレン系樹脂(B)相の長さ、面積が大きくなる可能性がある。らせん状のニーディングユニットが3つ以上あると、押出機内での滞留時間が長くなったり、樹脂温度が上昇しすぎたりするため、ゲル状異物や焼けが生成する虞があり好ましくない。
押出機のスクリューの末端周速としては、1m/min以上が好ましく、2m/min以上がさらに好ましく、3m/min以上が最も好ましい。また12m/min以下が好ましく、10m/min以下がより好ましく、8m/min以下が最も好ましい。押出機のスクリューの末端周速が低すぎると混練不足となりやすく、成形体としたときのスチレン系樹脂(B)相の長さ、面積が大きくなる可能性がある。また押出機のスクリューの末端周速が高すぎると、樹脂温度が上がりすぎる場合があり、ポリカーボネート樹脂組成物が黄変したり、ヤケ異物が増えたりする虞があり好ましくない。
押出機内のポリカーボネート樹脂組成物の滞留時間としては、10min以下が好ましく、5min以下がさらに好ましく、3min以下が最も好ましい。また0.5min以上が好ましく、1min以上が更に好ましく、2min以上が最も好ましい。押出機内のポリカーボネート樹脂組成物の滞留時間が短すぎると、混練不足となり、成形体としたときのスチレン系樹脂(B)相の長さ、面積が大きくなる虞があり好ましくない。押出機内のポリカーボネート樹脂組成物の滞留時間が長すぎると、樹脂温度が上がりすぎる場合があり、ポリカーボネート樹脂組成物が黄変したり、ヤケ異物が増えたりする虞があり好ましくない。
本発明で用いる押出機には、フィルターを用いることが好ましい。フィルターとしては、キャンドルフィルター、リーフフィルター、スクリーンチェンジャー式メッシュフィルターなどが好適に用いられる。
溶融混練時の樹脂温度としては、押出機の出口における樹脂温度で340℃以下であることが好ましく、320℃以下であることがより好ましく、300℃以下がさらに好ましく、通常240℃以上、好ましくは260℃以上である。樹脂温度が高すぎるとポリカーボネート樹脂組成物が黄変したり、ヤケ異物が増えたりする虞があり好ましくない。樹脂温度が低すぎると混練不足となり、成形体としたときのスチレン系樹脂(B)相の長さ、面積が大きくなる虞があり好ましくない。
溶融混練時の吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数Ns(rpm)との比Q/Nsは0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.2以上がさらに好ましい。また2以下が好ましく、1.8以下が好ましく、1.5以下がさらに好ましい。この値が小さすぎると、樹脂温度が高くなりすぎたり、滞留時間が長くなりすぎるため、ポリカーボネート樹脂組成物が黄変したり、ヤケ異物が増えたりする虞があり好ましくない。またこの値が大きすぎると、成形体としたときのスチレン系樹脂(B)相の長さ、面積が大きくなる虞があり好ましくない。
ダイノズルにおけるポリカーボネート樹脂組成物のせん断速度は、10〜10,000sec−1であることが好ましく、50〜5,000sec−1であることがより好ましく、70〜1,000sec−1であることがさらに好ましい。せん断速度が低すぎるとストランドが切れやすくなったり、太さが不均一となることがあり、ペレット形状が安定しない虞があり好ましくない、またせん断速度が高すぎると、スチレン系樹脂(B)相が再凝集し、成形体としたときのスチレン系樹脂(B)相の長さ、面積が大きくなる虞があり好ましくない。かかるせん断速度は、一般的に樹脂組成物の吐出量とダイノズルの断面の形状より決定されるものであり、例えば、ダイノズルの断面が円形の時は、
γ=4Q/πrにより算出することができる。ここで、γはせん断速度(sec−1)、Qはダイノズル1本当たりの樹脂組成物の吐出量(cc/sec)、rはダイノズル断面の半径(cm)をそれぞれ表す。
ダイノズルからストランド状に押し出された樹脂組成物は、ペレタイザー等により切断しペレット形状とするが、本発明においては、切断時のストランドの表面温度が60〜150℃、特に70〜110℃となるようにストランドを冷却することが好ましい。通常、空冷、水冷等の方法により冷却されるが、冷却効率の点で、水冷することが好ましい。かかる水冷にあたっては、水を入れた水槽中にストランドを通して冷却すればよく、水温と冷却時間を調整することにより、所望のストランド表面温度とすることができる。このようにして製造されたペレットの形状は、円柱状の場合は、径が好ましくは1〜8mm、より好ましくは2〜6mm、さらに好ましくは3〜5mm、長さが好ましくは1〜10mm、より好ましくは2〜6mm、さらに好ましくは3〜5mmである。
射出成形において、上記した好ましいモルフォロジー構造を有する成形体とするためには、例えば、射出成形機のスクリュー構成、スクリューやシリンダー内壁の加工、ノズル径、金型構造等の成形機条件の選択、可塑化、計量、射出時等の成形条件の調整、成形材料への他成分の添加等、種々の方法が挙げられる。特に、可塑化、計量、射出時の条件として、例えば、シリンダー温度、背圧、スクリュー回転数、射出速度等を調整することが好ましい。例えば、シリンダー温度を調整する場合は、好ましくは250〜330℃、より好ましくは260〜300℃に設定する。背圧を調整する場合は、好ましくは1〜10MPa、より好ましくは2〜8MPaに設定する。スクリュー回転数を調整する場合は、好ましくは20〜500rpm、より好ましくは50〜300rpmに設定する。射出速度を調整する場合は、好ましくは10〜500mm/sec、より好ましくは20〜200m/sec、さらに好ましくは50〜150mm/secに設定することが好ましい。
成形品形状としては、ゲートの数は3か所以下が好ましく、2か所以下が更に好ましく、1か所が最も好ましい。ゲート数が多いと複屈折が生じやすくなり視認性が低下する虞があり好ましくない。
また、ゲート位置は成形品の1辺もしくは隣り合う2辺に設置されることが好ましく、1辺に設置されることが好ましい。設置片が多すぎる若しくは隣り合う片にしない場合は、複屈折が生じやすくなり視認性が低下する虞があり好ましくない。また、ゲート位置は成形品の短片に設置されることが好ましい。
また、ゲート厚みは0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がさらに好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上が最も好ましい。また5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。ゲート厚みが上記範囲以外の場合は、複屈折が生じやすくなり視認性が低下する虞があり好ましくない。
また、成形品の厚みは0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がさらに好ましく、1mm以上がより好ましく、1.5mm以上が最も好ましい。また5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。ゲート厚みが上記範囲以外の場合は複屈折が生じやすくなり視認性が低下する虞があり好ましくない。
また、ゲート形状は、サイドゲート、ピンポイントゲート、サブマリンゲート、ダイレクトゲートなどが好ましが、サイドゲートが最も好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いて得られる射出成形体や、シート、フィルム、積層体には、必要に応じてハードコート層を設けることもできる。ハードコート層は、透明性を損なうことなく、十分な密着性を有するものであれば、材質、積層方法等において特に限定されるものではなく、例えば、シリコーン系、アクリル系、シラザン系、ウレタン系などの種々のハードコート剤を使用することができる。
ハードコート層を積層する塗装手段としては、噴霧コート法、フローコート法、ディッピング法、ロールコート法、バーコート法等の任意の方法を用いればよく、塗料性状の観点から、ロールコート法、バーコート法がより好ましい。また、ハードコート層は、用途に応じて片面のみに形成しても両面に積層してもよい。
ハードコート層の厚みは通常1〜20μmであり、好ましくは1.5〜15μm、より好ましくは2〜10μmである。ハードコート層の厚みが1μmより薄くなると十分な耐擦傷性が得られず、また20μmより厚くなると、硬化収縮によって生じる反りが大きくなり、OA機器や電子機器のディスプレイカバーパネルやタッチパネル等の用途に適さない場合がある。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体は、上記したように、鉛筆硬度が高く耐擦傷性に優れ、複屈折の問題がなく、光線透過率と耐衝撃性、成形品外観、耐落球衝撃性、耐薬品性に優れるので、例えば、液晶パネル、タッチパネル等の各種表示(ディスプレイ)装置の構成部材等、特にはタッチパネルや液晶表示機器のカバーに好適である。また、多機能携帯端末、スマートフォン、PDA、タブレット型端末、パソコン、タブレット型パソコン、カーナビゲーションやカーオーディオ等の保護カバーや前面パネル等が、また例えば、次世代電力計の表示部のカバー等にも好ましく使用できる。
特に、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、タッチパネル、特には、静電容量型タッチパネルのカバーパネルに好適に使用できる。本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、射出成形してもスジ等の外観不良の問題が発生し難いため、射出成形により所望の形態に成形可能である。
[静電容量型タッチパネル]
静電容量方式のタッチパネルには、表面型と投影型等があり、いずれも指先と導電膜の間での静電容量の変化を捉えて位置を検出する。
表面型は、基本的には、カバーパネル、導電膜、ガラス等の透明基板の3層から成り、導電膜は透明基板の上に張り付き、透明基板の四隅には電極が設けられて、導電膜によって均一な電界が形成される。指が画面に触れると駆動回路からの微弱電流が隅の端子、導電膜、カバーパネルをすり抜けて、指を経由して大地を含む周辺環境と駆動回路との間で閉回路を構成する。駆動回路側で四隅の端子の電流量の比率を計測することで指の位置を判別できる。
投影型は、基本的には、カバーパネルとその下の電極層、さらに制御ICを搭載する基板層から構成される。電極層にはITO等の透明電極によって縦横2層からなる多数のモザイク状電極パターンがガラスや樹脂の基板上に配置される。指が触れるとその付近の電極の静電容量の変化を縦横2つの電極列から知ることで位置を精密に判別できる。縦と横に走る多数の電極列によって、多点検出が可能となる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物が好適に用いられるカバーパネルは、タッチセンサの位置を触覚で認知可能とするために、凸部及び/又は凹部を有することも好ましい。カバーパネルは、基本的には、好ましくは0.5〜8mm厚の平板状であって、厚みは好ましくは1〜5mm、さらに好ましくは1.5〜4mmである。そして、その表面にタッチパネルのキー位置に対応した凸部または凹部が形成されることが好ましい。凸部または凹部の高さ又は深さとしては、例えば0.1〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜3mm、さらに好ましくは0.5〜2mmである。
この凹部又は凸部は、射出成形の際、金型の一部の表面に形成された凹凸部によって付与されることが好ましい。凸部(又は凹部)の高さ(又は深さ)としては、例えば0.1〜5mm、より好ましくは0.2〜3mm、さらに好ましくは0.5〜2mmであるが、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いることにより、このような段差を有するカバーパネルを、複屈折や外観不良の問題なしに射出成形することができる。なお、上記の凸部(又は凹部)の高さ(又は深さ)とは、高さ(又は深さ)方向の最も長い高さ(又は深さ)をいう。
カバーパネルの表面に好ましく付与される凸部又は凹部の形状に特に限定はない。凸部又は凹部における、カバーパネル厚み方向の凸部又は凹部形状としては、例えば、略半円形、略半楕円形、略半長円形、略三角形、略長方形、略正方形、円弧形状、テーパー形状、テーパー形状と円弧形状とを組み合わせた形状等が挙げられる。凸部又は凹部における、カバーパネル厚み方向と垂直な平面方向の形状としては、例えば、略円形、略半円形、略楕円形、略半楕円形、略長円形、略半長円形、略三角形、略長方形、略正方形等が挙げられる。
また、1つの凸部又は凹部の面積は、好ましくは1〜400mm、より好ましくは25〜350mm、さらに好ましくは50〜300mmである。凸部又は凹部の形状、面積を上記のようなものとすることにより、カバーパネル表面を手で触った際に、キー位置を認識しやすく好ましい。
このようにして得られるカバーパネルは、表面の耐擦傷性が良好であり、耐薬品性に優れるため、ハードコート等の表面保護層を設ける等の加工処理をしなくとも実使用に十分に耐えられ、コスト及び製品歩留まりの点で有利である。但し、勿論、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いてなるカバーパネルである限り、このような加工が施されたカバーパネルも、好適であることはいうまでもない。
上記の通り、本発明においては、ハードコート等の表面保護層を設けなくとも、十分な耐擦傷性と耐薬品性を有するカバーパネル等の成形体を得ることができるが、さらに高い耐擦傷性、耐薬品性が求められる場合には、上述したように、ハードコート等の表面保護層を設けてもよい。表面保護層の厚みは、通常は1〜50μmであり、好ましくは3〜20μm、より好ましくは5〜15μmである。
上記の表面保護層は、単層でもよいが、保護機能を高めるため、耐候性を高めるために2層以上の多層構造としてもよい。
上記で得られたカバーパネルは、前述したように、電極層や制御ICを搭載する基板層等と共に組み立てられ、特に、カバーパネルが凸部及び/又は凹部を有する場合は、タッチセンサの位置が触覚で認知可能となる静電容量型タッチパネルとなる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物が好適に用いられる静電容量型タッチパネルは、スマートフォン等のタブレット型の各種携帯端末、タブレット型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーションやカーオーディオ等に好適であり、また、カバーパネルが凸部及び/又は凹部を有する場合、視認に要する時間を短縮し操作可能であるので、自動車用や、あるいは目の不自由な人向けとして特に好適である。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
以下の実施例及び比較例に使用した各原料成分は、以下の表1のとおりである。
なお、上記ポリカーボネート樹脂(A)として使用したポリカーボネート樹脂(A1)及びポリカーボネート樹脂(A2)は、それぞれ以下の製造例1及び2により製造した。
<製造例1:ポリカーボネート樹脂(A1)の製造>
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「BPC」とも記す。)26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.79モル(5.74kg)を、撹拌機及び溜出凝縮装置付きのSUS製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(CsCO)を、BPC1モルに対し1.5×10−6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを溜出させた。
次に、反応器内を60分かけて温度を284℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに60分間反応を続け重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の攪拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は289℃、攪拌動力は1.00kWであった。
次に、溶融状態のままの反応液を2軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp−トルエンスルホン酸ブチルを2軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を2軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断してカーボネート樹脂のペレットを得た。
得られたポリカーボネート樹脂(A1)の物性は以下の通りであった。
鉛筆硬度:2H
粘度平均分子量(Mv):26,000
<製造例2:ポリカーボネート樹脂(A2)の製造>
BPC26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.79モル(5.74kg)を、撹拌機および溜出凝縮装置付きのSUS製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(CsCO)を、BPC1モルに対し1.5×10−6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを溜出させた。
次に、反応器内を60分かけて温度を284℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに60分間反応を続け重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の攪拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は289℃、攪拌動力は0.75kWであった。
次に、溶融状態のままの反応液を2軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp−トルエンスルホン酸ブチルを2軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を2軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断してポリカーボネート樹脂のペレットを得た。
得られたポリカーボネート樹脂(A2)の物性は以下の通りであった。
鉛筆硬度:2H
粘度平均分子量(Mv):22,000
(実施例1〜6、比較例1〜8)
上記表1に記載した各成分を、下記表2及び表3に示す割合(全て質量部にて表示)にて配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、真空ベントが1箇所設置された二軸押出機(日本製鋼所製TEX30HSST、L/D=38)の押出機上流部のバレルより押出機にフィードし、溶融混練後、水冷槽にて冷却後ストランドカッターにてカッティングすることによりポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。この時、二軸押出機のスクリューはニーディングユニットが途中2箇所設置されているものを使用した。二軸押出機の運転条件としては、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量30kg/hr(Q/Ns=0.2)、スクリューの末端周速6.4m/min、真空ベント減圧度−0.13MPa、ダイノズルにおけるせん断速度445sec−1にて実施し、その際押出機出口の樹脂温度は272℃であった。また、押出機上流部に材料投入開始から押出機先端ダイスから樹脂が出てくる時間を計測することにより滞留時間を測定すると2.3minであった。また、ストランドカッターに入る直前のストランドの表面温度は95℃であった。
[鉛筆硬度]
上記ペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55−60H」)を用い、シリンダー設定温度280℃、金型温度80℃、スクリュー回転数100rpm、射出速度200mm/秒、背圧5MPaの条件下にて、90mm×50mm×3mm厚の平板状試験片(サイドゲート、ゲート箇所短辺側中央1箇所、ゲート厚み3mm)を射出成形した。
得られた平板状試験片につき、JIS K5600−5−4に準拠し、鉛筆硬度試験機(東洋精機社製)を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
[流れ値(Q値、単位:×0.01cc/sec)]
上記の製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥した後、高架式フローテスターを用いて、280℃、荷重160kgfの条件下で樹脂組成物の単位時間あたりの流出量(Q値、単位:×0.01cc/sec)を測定し、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。
[平均レターデーション測定用試験片の成形]
上記の製造方法で得られたペレットを100℃、5時間乾燥後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55−60H」)を用い、シリンダー設定温度280℃、金型温度80℃、スクリュー回転数100rpm、射出速度200mm/秒、成形サイクル40秒の条件、背圧5MPaで射出成形を行い、平均レターデーション測定用の平板状試験片(90mm×60mm×厚み2mm)及び段部の平均レターデーション測定用として90mm×50mmで厚みが2mm及び3mmである二段プレート(サイドゲート、ゲート箇所短辺側中央1箇所、ゲート厚み3mm)を射出成形した。
[平均レターデーションの測定(単位:nm)]
ワイドレンジ2次元複屈折評価システム(フォトニックラティス社製、型式:WPA−100)を用いた3波長測定(波長523,543,575nm)により、上記の方法で得られた平均レターデーション測定用の平板状試験片(90mm×60mm×厚み2mm)の45mm×60mm四方の反ゲート部分における位相差をエリア解析し、その平均値(単位:nm)を求めた。
[段部の平均レターデーションの測定(単位:nm)]
ワイドレンジ2次元複屈折評価システム(フォトニックラティス社製、型式:WPA−100)を用いた3波長測定(波長523,543,575nm)により、上記の方法で得られた厚み2mm及び3mmの二段プレートの2mm厚部と3mm厚部間の境界線の中央から2mm厚部の10mm×10mm四方の領域における位相差をエリア解析し、その平均値(単位:nm)を求めた。
[透明性評価]
全光線透過率:
上記の製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製のNEX80型射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、スクリュー回転数100rpm、射出速度200mm/秒、成形サイクル35秒、背圧5MPaの条件で射出成形し、平板状試験片(90mm×50mm×3mm厚、サイドゲート、ゲート箇所短辺側中央1箇所、ゲート厚み3mm)を成形し、JIS K6361−1(1997)に準じ、日本電色工業社製のNDH−2000型ヘイズメーターで全光線透過率(単位:%)を測定した。
[ヘイズ(単位:%)]
前記方法で得られた段部の平均レターデーション測定用の二段プレート(90mm×50mmで厚みが2mm及び3mm)の2mm厚部につき、日本電色工業社製のNDH−4000型ヘイズメーターでヘイズ(単位:%)を測定した。
[タッチパネルの視認性]
上記の方法で得られた段部の平均レターデーション測定用の二段プレート(90mm×50mmで厚みが2mm及び3mm)を、スマートフォンのタッチパネル上に、段部分が画面中央になるよう重ねて置いた。この二段プレートを重ねて置いたタッチパネルの上50cmの距離から、平行ニコルの状態にした偏光板を目に近づけた状態で、画面に表示される文字の視認性を評価した。画面の中央部90mm×40mmに表示される23行、14列の文字(322個)のうち、90%以上がはっきりと視認出来るものを「A」、75%以上90%未満がはっきりと視認出来るものを「B」、60%以上75%未満がはっきり視認できるものを「C」、はっきりと視認可能なものが60%未満の場合を「D」と判定した。
[低速射出時の成形品外観]
上記の製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業社製のSE100DU型射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、スクリュー回転数100rpm、射出速度50mm/秒、背圧5MPaの低速条件で射出成形し、長さ45mm、幅60mm、厚み2mmの試験片(サイドゲート、ゲート箇所短辺側中央1箇所、ゲート厚み2mm)を成形した。
得られた試験片を目視にて観察し、以下の基準に従い外観評価の判定を行った。
○:スジが観察されず、外観良好。
×:スジ(白スジ等)があり、外観不良。
[シャルピー衝撃強度]
上記の方法で得られたペレットを100℃、5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55−60H」)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、スクリュー回転数100rpm、射出速度50mm/sec、背圧5MPaの条件で射出成形したISO多目的試験片(3mm厚)について、ノッチなしシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。
[落球衝撃試験]
前記の製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製のNEX80型射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル35秒、射出速度200mm/秒、背圧5MPaの条件で射出成形し、平板状試験片(100mm×100mm×2mm厚、サイドゲート、ゲート箇所中央一箇所、ゲート厚み2mm)を成形した。得られた試験片に、直径6cm、重さ1.05kgの鉄球を、1.8mの高さから落下させ、試験片の割れの状態を次の基準で評価した。評価結果が△以上のものが、実製品として問題ないレベルといえる。
○:割れ無し、△:ひび割れ有り、×:割れ有り
[耐薬品性]
耐芳香剤性:
上記方法で得られた平均レターデーション測定用の平板状試験片(90mm×60mm×厚み2mm)の試験片の表面に、市販の車用芳香剤(ダイヤケミカル社製、商品名「グレースメイトポピー No.2002(柑橘系)」)を塗布した後、85℃で96時間保持し、試験片の外観を次の基準で評価した。
○:白濁無し、△:白濁少し有り、×:白濁有り
耐虫よけ剤性:
上記方法で得られた平均レターデーション測定用の平板状試験片(90mm×60mm×厚み2mm)の試験片の表面に、虫よけ剤等を構成する薬品4種等量混合液(4−メトキシけい皮酸2−エチルヘキシル、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシル、サリチル3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、N,N,−ジエチル−m−トルアミド)を塗布した後、85℃で96時間保持し、試験片の外観を次の基準で評価した。
○:白濁無し、△:白濁少し有り、×:白濁有り
[スチレン系樹脂(B)相の長さ、面積]
上記方法で得られた平均レターデーション測定用の平板状試験片(90mm×60mm×厚み2mm)の厚み方向の中心部(試験片断面の深さ1000μm)から、Leica社製「UC7」を用い、ダイヤモンドナイフで厚み100nmの薄切片を切り出した。得られた超薄切片を、四酸化ルテニウムで80分染色後、これを日立ハイテク社製走査型電子顕微鏡「SU8020」を用い、1kVの加速電圧で、樹脂組成物流動方向に平行な断面をSEM観察した。
同様な測定を上記試験片中の5か所について実施し、観察されたスチレン系樹脂(B)相の長さ、面積を測定した。長さが10μmを超えるスチレン系樹脂(B)相が存在しない場合を「なし」、存在する場合を「あり」と、表2、3中に記載した。面積については、50μmを超えるスチレン系樹脂(B)相が存在しない場合を「なし」、存在する場合を「あり」と表2、3中に記載した。
以上の評価結果を以下の表2及び表3に示す。
表2の結果から明らかなように、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、鉛筆硬度、平均レターデーション、透明性(全光線透過率、ヘイズ)、視認性、成形品外観、耐衝撃性(落球衝撃、シャルピー衝撃)、耐薬品性及び流動性の全てをバランスよく満足する。
また、ポリカーボネート樹脂(C)を特定の割合で含有させることにより、耐衝撃性をより向上させ、ヘイズをより低くすることができる(実施例4〜6)。特に、ポリカーボネート樹脂(A)として粘度平均分子量26,000のものを使用し、スチレン系樹脂(B)とポリカーボネート樹脂(C)とを特定の割合で含有する実施例4は、鉛筆硬度、平均レターデーション、透明性(全光線透過率、ヘイズ)、視認性、成形品外観、耐衝撃性(落球衝撃、シャルピー衝撃)及び耐薬品性の全てを、最もバランスよく満足することがわかる。
一方、表3の結果から、本発明の要件を満たさない比較例1〜8の樹脂組成物は、上記効果のいずれかが劣ることがわかる。
例えば、スチレン系樹脂(B)を含有しない比較例1は、流れ値(Q値)が小さく流動性に劣り、平均レターデーション、タッチパネルの視認性、耐芳香剤性が悪い。
ポリカーボネート樹脂(A)の代わりにポリカーボネート樹脂(C)のみを用いた比較例3、4は、鉛筆硬度が低く、低速射出時の成形品外観、耐虫よけ剤性にも劣る。特に比較例4は、ヘイズが高く透明性が悪化し、タッチパネルの視認性も低下する。
スチレン系樹脂(B)の含有量が多すぎる比較例5、6は、耐芳香剤性が低下する。
スチレン系樹脂(B)の含有量が少なすぎる比較例7、8は、平均レターデーションが悪く、耐芳香剤性等の耐薬品性も低下する。比較例8は、流動性も低下する。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、鉛筆硬度が高く耐擦傷性に優れ、複屈折や外観不良の問題がなく、耐薬品性及び流動性に優れ、実使用に耐えうる十分な耐衝撃性と透明性を有し、またタッチパネル等にしたときの視認性にも優れるので、液晶パネル、タッチパネル等の各種表示(ディスプレイ)装置の構成部材、特にはタッチパネルや液晶パネルカバーに、また、多機能携帯端末、スマートフォン、PDA、タブレット型端末、パソコン、タブレット型パソコン、カーナビゲーションやカーオーディオ等の保護カバーや前面パネル等にも好適であり、産業上の利用性は高いものがある。

Claims (8)

  1. 下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系樹脂(B)30〜110質量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
    (一般式(1)中、Rはメチル基、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
    のいずれかを示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子(C)と結合し、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の脂環式炭化水素を形成する基を示す。)
  2. ポリカーボネート樹脂組成物中のα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体の量が、1〜15質量%である、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. スチレン系樹脂(B)中のα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体の量が、1〜35質量%である、請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が、20,000〜27,000である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. さらに、ポリカーボネート樹脂(A)以外のポリカーボネート樹脂(C)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、80質量部以下の割合で含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形体。
  7. 成形体のコア部において、スチレン系樹脂(B)相の長さが10μm以下である、請求項6に記載の成形体。
  8. 意匠面にウエルド部が存在しない、請求項6又は7に記載の成形体。
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