JP2015003979A - ボス穴を有する芳香族ポリカーボネート樹脂成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に特定の(メタ)アクリレート共重合体(B)を配合して表面硬度を改善した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から、表面硬度のみならず、ボス穴のセルフタップ強度、外観にも優れた成形品を提供する。
【解決手段】樹脂成分が、質量平均分子量15,000〜40,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)55〜95質量%と、芳香族(メタ)アクリレート単位(b1)/メチルメタクリレート単位(b2)質量比5〜80/20〜95で、質量平均分子量5,000〜30,000の(メタ)アクリレート共重合体(B)5〜45質量%とからなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の射出成形で得られた、板状部の厚さが1mm以上のボス穴付成形品。該射出成形時の射出速度が5〜100mm/secで、JIS B1007におけるタッピンねじのねじ部においてねじ部2種及び4種の形状を持つ呼び径2mmのねじを用いた時の引掛り率70%のセルフタップ試験における破壊トルクが0.18N・m以上で、JIS K−5600−5−4規格による表面鉛筆硬度がF以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ボス穴を有する芳香族ポリカーボネート樹脂成形品に関するものである。詳しくは、表面硬度、ボス穴のセルフタップ強度が高く、外観にも優れ、各種電気・電子機器の筐体や自動車用部品等に有用なボス穴を有する芳香族ポリカーボネート樹脂成形品に関する。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、耐熱性などに優れ、しかも、得られる成形品は寸法安定性などにも優れることから、電気・電子機器のハウジング類、自動車用部品類、または、光ディスク関連の部品などの精密成形品類の製造用原料樹脂として広く使用されている。特に、家電機器、電子機器、画像表示機器の筐体などにおいては、その美麗な外観を活かし、商品価値の高い製品が得られる。
しかし、芳香族ポリカーボネート樹脂単独の成形品類は、金属製やガラス製などの製品類に比べると表面硬度が低いため、耐擦傷性に劣り、布で拭いたり、手荒に扱った場合は、表面に傷が付き易い欠点を有している。
電気・電子機器の筐体や自動車用部品等に用いられる成形品には、製品の組み立て及びその補強のためのボス穴が設けられている。このようなボス穴を有する成形品では、表面硬度のみならず、ボス穴のセルフタップ強度が十分に高いことが要求される。更には、製品としての外観に優れることも要求される。
従来、芳香族ポリカーボネート樹脂の表面硬度を改善するための技術としては、芳香族ポリカーボネート樹脂に、メチルメタアクリレート等のアクリレートやABS樹脂を配合した耐擦傷性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が多数提案されている。
例えば、特許文献1では、シアン化ビニル化合物−芳香族ビニル化合物共重合体とメチルメタアクリレートを配合することが記載されている。また、特許文献2には、ポリエステル樹脂とABS樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリメチルメタアクリレートからなる樹脂組成物が記載されている。また、特許文献3には、(メタ)アルキルアクリレート−芳香族ビニル−ポリカーボネート樹脂と反応性のあるビニルモノマーからなる共重合体を配合することが記載されている。さらに、特許文献4では、ABS樹脂等のゴム変性グラフト共重合体とポリメチルメタアクリレート等のビニルモノマー共重合体を配合することが提案されている。
しかしながら、これらの特許文献で提案されている芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、機械的特性、硬度、透明性などの物性バランスが共に優れた樹脂組成物とは言いがたい。
この問題を解決し、芳香族ポリカーボネート樹脂が本来有する高い耐熱性と透明性を維持しつつ、表面硬度を改善したものとして、質量平均分子量が15,000〜40,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に、芳香族(メタ)アクリレート単位(b1)とメチルメタクリレート単位(b2)の質量比(b1/b2)が5〜80/20〜95で、質量平均分子量が5,000〜30,000である(メタ)アクリレート共重合体(B)を、所定の割合で配合した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている(特許文献5)。
特開2001−49072号公報 特開2001−234040号公報 特開2008−56798号公報 WO2009/128601号公報 特開2012−25790号公報
特許文献5に記載される芳香族ポリカーボネート樹脂組成物では、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に特定の(メタ)アクリレート共重合体(B)を所定の割合で配合することにより、芳香族ポリカーボネート樹脂の透明性や耐熱性を損なうことなく表面硬度を改善することができるが、この特許文献5においては、ボス穴のセルフタップ強度、射出成形品の外観についての検討はなされていない。
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に特定の(メタ)アクリレート共重合体(B)を配合して表面硬度を改善した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形することにより、表面硬度のみならず、ボス穴のセルフタップ強度も高く、外観にも優れた芳香族ポリカーボネート樹脂成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に、特定の(メタ)アクリレート共重合体(B)を所定の割合で配合して表面硬度を改善した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いてボス穴を有する成形品を射出成形するに当たり、射出速度を制御することにより、ボス穴のセルフタップ強度、外観に優れた射出成形品を得ることができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 質量平均分子量が15,000〜40,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)55〜95質量%と、芳香族(メタ)アクリレート単位(b1)とメチルメタクリレート単位(b2)の質量比(b1/b2)が5〜80/20〜95で、質量平均分子量が5,000〜30,000である(メタ)アクリレート共重合体(B)5〜45質量%とからなる樹脂成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形することにより、厚さ1mm以上の板状部と、該板状部に突設されたボス穴とを一体成形してなる芳香族ポリカーボネート樹脂成形品であって、該射出成形時の射出速度が5〜100mm/secであり、JIS B1007におけるタッピンねじのねじ部においてねじ部2種及び4種の形状を持つ呼び径2mmのねじを用いた時の引掛り率70%のセルフタップ試験における破壊トルクが0.18N・m以上であり、JIS K−5600−5−4規格による表面鉛筆硬度がF以上であることを特徴とするボス穴を有する芳香族ポリカーボネート樹脂成形品。
[2] [1]において、前記ボス穴の高さが6〜10mmであり、外径が3.00〜4.50mm、内径が1.30〜1.70mmで、肉厚が0.65〜1.60mmであることを特徴とするボス穴を有する芳香族ポリカーボネート樹脂成形品。
[3] [1]又は[2]において、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品が、電気・電子機器の筐体、自動車用部品、照明機器の部品、情報端末機器、家電製品、レジャー用品、或いは雑貨類であることを特徴とするボス穴を有する芳香族ポリカーボネート樹脂成形品。
[4] 質量平均分子量が15,000〜40,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)55〜95質量%と、芳香族(メタ)アクリレート単位(b1)とメチルメタクリレート単位(b2)の質量比(b1/b2)が5〜80/20〜95で、質量平均分子量が5,000〜30,000である(メタ)アクリレート共重合体(B)5〜45質量%とからなる樹脂成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形することにより、厚さ1mm以上の板状部と、該板状部に突設されたボス穴とを有する成形品を一体成形する方法であって、該射出成形時の射出速度を5〜100mm/secとして、JIS B1007におけるタッピンねじのねじ部においてねじ部2種及び4種の形状を持つ呼び径2mmのねじを用いた時の引掛り率70%のセルフタップ試験における破壊トルクが0.18N・m以上であり、JIS K−5600−5−4規格による表面鉛筆硬度がF以上である芳香族ポリカーボネート樹脂成形品を得ることを特徴とするボス穴を有する芳香族ポリカーボネート樹脂成形品の製造方法。
本発明によれば、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に特定の(メタ)アクリレート共重合体(B)を配合して表面硬度を改善した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いて、特定の条件で射出成形することにより、表面硬度が高く、ボス穴のセルフタップ強度が高く、また、外観にも優れた芳香族ポリカーボネート樹脂成形品を提供することができる。
本発明のボス穴を有する芳香族ポリカーボネート樹脂成形品は、その優れた外観と、表面硬度、セルフタップ強度から、電気・電子機器の筐体、自動車用部品、照明機器の部品、情報端末機器、家電製品、レジャー用品、雑貨類等に有用である。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
〔概要〕
本発明は、少なくとも、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と、特定の(メタ)アクリレート共重合体(B)とを特定の割合で含有してなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(以下、「本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物」と称す場合がある。)を特定の条件で射出成形して、ボス穴を有する芳香族ポリカーボネート樹脂成形品とするものである。
以下に、まず、本発明に係る射出成形法及び成形品について説明し、次いで本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物について説明する。
〔射出成形法・成形品〕
本発明においては、後述の本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してボス穴を有する成形品を製造するに当たり、樹脂組成物の射出速度を5〜100mm/secとすることを特徴とする。射出成形時の射出速度が100mm/secより高いと、セルフタップ強度の高いボス穴を成形し得ず、成形品の外観も劣るものとなる。射出速度は遅い程、セルフタップ強度が向上し、また、成形品の外観も良好なものとなる傾向があるが、遅すぎると樹脂の流動性が足りずに成形品末端まで樹脂を充填することが出来ないため、射出速度は5mm/sec以上とすることが必要である。
本発明において、射出速度を制御することにより、ボス穴のセルフタップ強度及び成形品外観が改善される作用機構の詳細は明らかではないが、次のように推定される。
即ち、樹脂組成物は、射出成形時における金型内での流動時に、金型内壁との摩擦などに起因して剪断応力を受け、この剪断応力により、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)との界面の密着性が低下して部分的に相分離を起こし、得られる成形品の機械的強度が低下すると共に、パール光沢などが発生して外観が低下する。
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)とは、相溶性に優れ、相分離を起こし難いが、射出速度の高い条件で射出成形を行うと、大きな剪断応力が付与される結果、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)とが相分離することとなる。
これに対して、射出速度を5〜100mm/secとして、通常の射出成形における射出速度よりも遅い射出条件とすることにより、上記の剪断応力を弱め、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)とが分離することによるセルフタップ強度の低下、外観の低下を防止することができる。
本発明において、好ましい射出速度は、成形に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)との配合組成、その他の成分組成によっても異なるが、通常5〜100mm/sec、特に5〜60mm/secとすることが好ましい。
なお、本発明において、その他の射出成形条件には特に制限はないが、射出成形時のシリンダー温度は240〜280℃、金型温度は80〜120℃の範囲で樹脂組成物の成分組成に応じて適宜調整することが、セルフタップ強度及び外観に優れた射出成形品を確実に得る上で好ましい。
本発明のボス穴を有する芳香族ポリカーボネート樹脂成形品は、厚さ1mm以上の板状部とこの板状部から突設するボス穴とが上記のような射出成形により一体成形されてなるものである。
この板状部の厚さについては1mm以上であればよく、特に制限はなく、成形品の用途に応じて適宜決定されるが、製品の薄肉化を図った上で、必要な強度を得るために、板状部の厚さは1〜3mm程度であることが好ましい。ただし、板状部の厚さは何らこの範囲に限定されるものではない。
なお、板状部の厚さが1mmより薄いと流動性が不足し、成形品末端まで樹脂を充填することが出来なくなったり、薄肉部を通過する樹脂の剪断速度が速くなり、白化等の外観不良が起きるため、射出速度5〜100mm/secの射出成形条件では、良好な射出成形品を得ることが困難である。
本発明の成形品に形成されるボス穴の寸法については、成形品の用途に応じて適宜決定されるが、小型の精密機器に用いられる成形品用途として、前記ボス穴の高さが6〜10mmであり、外径が3.00〜4.50mm、内径が1.30〜1.70mmで、肉厚が0.65〜1.60mmのものが挙げられる。ボス穴の肉厚が薄過ぎると、本発明によるセルフタップによるねじ切りを行うことができず、また、本発明に従って、射出成形を行っても十分なセルフタップ強度を得ることができない場合があり、また、製品とした場合のボス穴の強度も不足する場合がある。一方、ボス穴の肉厚を必要以上に厚くすることは、例えば、筐体の場合、他の部品の収容容積を小さくすることになり、また、製品の重量増加にもつながり好ましくない。
なお、板状部に形成されるボス穴の個数には特に制限はなく、用途に応じて、必要な数のボス穴が形成される。また、板状部に複数のボス穴が形成されている場合、これらは、同一寸法である必要はなく、個々に異なっていてもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂成形品のボス穴は、JIS B1007におけるタッピンねじのねじ部においてねじ部2種及び4種の形状を持つ呼び径2mmのねじを用いた時の引掛り率70%のセルフタップ試験における破壊トルクが0.18N・m以上であることを特徴とする。
JIS B1007におけるタッピンねじのねじ部においてねじ部2種及び4種の形状を持つ呼び径2mmのねじを用いた時の引掛り率70%のセルフタップ試験における破壊トルクが0.18N・m未満では、ボス穴としての強度が不十分である。
破壊トルクは0.18N・m以上であればよいが、好ましくは0.23N・m以上である。
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂成形品はその表面硬度が、JIS K−5600−5−4規格による表面鉛筆硬度でF以上、即ちFであるかFより硬いことを特徴とする。
成形品の表面硬度はF以上であればよいが、好ましくはH以上である。
上記の破壊トルクと表面硬度を共に満たす成形品とするためには、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)の配合割合に応じて、射出成形時の射出速度を5〜100mm/secの範囲で上記破壊トルクと表面硬度を満たすように適宜調整すればよい。
即ち、例えば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)との配合割合の範囲において、(メタ)アクリレート共重合体(B)が多い程表面硬度が高くなるが、セルフタップ強度が低下する傾向にあるため、その場合には、射出速度を5〜100mm/secの範囲で下げることが好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂成形品の適用例を挙げると、電気・電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器等の部品が挙げられる。これらの中でも、本発明の成形品は、その優れた透明性を有する成形品外観と、表面硬度、セルフタップ強度から、電気・電子機器の筐体、自動車用部品、照明機器の部品、情報端末機器、家電製品、レジャー用品、雑貨類等に有用である。
前記の電気・電子機器としては、例えば、パソコン、ゲーム機、テレビ、カーナビ、電子ペーパーなどのディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、電池パック、記録媒体のドライブや読み取り装置、携帯ラジオ・オーディオプレーヤー等が挙げられる。なかでも、テレビ、パソコン、カーナビ、電子ペーパー等の筐体の意匠性部品等に好適に用いることができる。
前記の照明機器の部品としては、LED照明、EL照明等のカバー等に好適に用いることができる。
前記の自動車用部品としては、カーオーディオ、カーナビゲーション、各々メーター類、フロントパネルの筐体などが挙げられる。
〔芳香族ポリカーボネート樹脂組成物〕
次に、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と特定の(メタ)アクリレート共重合体(B)とを特定の割合で含む本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物について説明する。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び特定の(メタ)アクリレート共重合体(B)以外に、必要に応じて他の成分を含有していてもよい。
[芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂(A)(以下「(A)成分」と称す場合がある。)は、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。また、溶融法を用いた場合には、末端基のOH基量を調整した芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することができる。
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、上述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を、以下の分岐剤、即ち、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物や、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等の化合物で置換すればよい。これら置換する化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、又は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。
上述した芳香族ポリカーボネート樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、この一価の芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は用途により任意であり、適宜選択して決定すればよいが、成形性、強度等の点から芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリカーボネート(PC)換算の質量平均分子量[Mw]で、15,000〜40,000、好ましくは15,000〜30,000である。この様に、質量平均分子量を15,000以上とすることで機械的強度がより向上する傾向にあり、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、質量平均分子量を40,000以下とすることで流動性の低下がより抑制されて改善される傾向にあり、成形加工性容易の観点からより好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の質量平均分子量は、中でも17,000〜30,000、特に19,000〜27,000であることが好ましい。また質量平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよく、この場合には、質量平均分子量が上記好適範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよい。この場合、混合物の質量平均分子量は上記範囲となることが望ましい。
[(メタ)アクリレート共重合体(B)]
本発明で使用される(メタ)アクリレート共重合体(B)(以下「(B)成分」と称す場合がある。)は、芳香族(メタ)アクリレート単位(b1)とメチルメタクリレート単位(b2)とを含有する。
尚、本発明において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」の一方又は双方をさす。また、「単位」とは、単量体を共重合させて(メタ)アクリレート共重合体を製造する際に用いられる原料単量体に由来する構造部分をさす。
芳香族(メタ)アクリレート単位(b1)を構成する単量体である芳香族(メタ)アクリレートとは、エステル部分に芳香族基を有する(メタ)アクリレートのことを言う。芳香族(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、好ましくはフェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートであり、より好ましくはフェニルメタクリレートである。(メタ)アクリレート共重合体(A)が芳香族(メタ)アクリレート単位(b1)を有することで、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と混合して得られる樹脂組成物の透明性を向上させることができる。
メチルメタクリレート単位(b2)を構成する単量体は、メチルメタクリレートである。メチルメタクリレート単位(b2)は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)とを良分散させる効果を有し、成形品の表面硬度を向上させることができる。
本発明に係る(メタ)アクリレート共重合体(B)は、芳香族(メタ)アクリレート単位(b1)とメチルメタクリレート単位(b2)の質量比(b1/b2)が5〜80/20〜95のもの、即ち、芳香族(メタ)アクリレート単位(b1)5〜80質量%とメチルメタクリレート単位(b2)20〜95質量%とを含有するものである(但し、(b1)と(b2)の合計は100質量%である)。(メタ)アクリレート共重合体(B)中の芳香族(メタ)アクリレート単位(b1)の含有率が5質量%以上でメチルメタクリレート単位(b2)の含有率が95質量%以下であれば、(メタ)アクリレート共重合体(B)の高添加領域において透明性が維持され、芳香族(メタ)アクリレート単位(b1)の含有率が80質量%以下でメチルメタクリレート単位(b2)の含有率が20質量%以上であれば、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)との相容性が高過ぎず、成形品表面への移行性が低下しないため、表面硬度が低下しない。
また、(メタ)アクリレート共重合体(B)の高添加領域において、より一層透明性を維持しつつ高い表面硬度を発現することから、(メタ)アクリレート共重合体(B)は、芳香族(メタ)アクリレート単位(b1)20〜70質量%及びメチルメタクリレート単位(b2)30〜80質量%を含有することが好ましい(但し、(b1)と(b2)の合計は100質量%である)。
(メタ)アクリレート共重合体(B)中の芳香族(メタ)アクリレート単位(b1)の含有率が20質量%以上でメチルメタクリレート単位(b2)の含有率が80質量%以下であれば、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)との相容性が高過ぎず、成形品表面への移行性が低下しないため、表面硬度が低下せず、芳香族(メタ)アクリレート単位(b1)の含有率が70質量%以下でメチルメタクリレート単位(b2)の含有率が30質量%以上であれば、(メタ)アクリレート共重合体(B)の高添加領域において透明性が維持される。
また、(メタ)アクリレート共重合体(B)の質量平均分子量は、5,000〜30,000であり、10,000〜25,000が好ましく、13,000〜20,000が特に好ましい。(メタ)アクリレート共重合体(B)の質量平均分子量が5,000〜30,000において、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)との相溶性が良好であり、表面硬度の向上効果に優れる。
なお、(メタ)アクリレート共重合体(B)の質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、溶媒としてクロロホルムやテトラヒドロフラン(THF)を使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定を行うことができる。なお、分子量はポリスチレン(PS)換算の値である。
本発明で用いる(メタ)アクリレート共重合体(B)を得るための単量体の重合方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等の公知の方法を使用することができる。好ましくは懸濁重合法や塊状重合法であり、さらに好ましくは懸濁重合法である。また、重合に必要な添加剤等は必要に応じて適宜添加することができ、添加剤としては、例えば、重合開始剤、乳化剤、分散剤、連鎖移動剤等が挙げられる。
[樹脂成分]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、樹脂成分として芳香族ポリカーボネート樹脂(A)55〜95質量%と、(メタ)アクリレート共重合体(B)5〜45質量%とを含有する(但し、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)との合計で100質量%である。)。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と、(メタ)アクリレート共重合体(B)との質量割合は、より好ましくは(A)成分が60〜85質量%に対し、(B)成分15〜40質量%であり、特に好ましくは(A)成分65〜80質量%に対し、(B)成分20〜35質量%である。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)との質量割合が上記範囲内であることにより、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に対して(メタ)アクリレート共重合体(B)を配合することによる、透明性を維持しつつ物性バランスを保ち、表面硬度を向上させることができる、という効果を確実に得ることができる。上記範囲より(メタ)アクリレート共重合体(B)が少ないと表面硬度の改善効果が十分ではなく、上記範囲よりも(メタ)アクリレート共重合体(B)の割合が多くなると、セルフタップ強度、成形品外観が低下する傾向にある。
なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、樹脂成分として、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)以外の他の樹脂成分を含有していてもよい。配合し得る他の透明性樹脂成分としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、水添ポリスチレン樹脂、ポリアクリルスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SMA樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、ポリメタクリルメタクリレート樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、(A)成分以外のポリカーボネート樹脂、非晶性ポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、非晶性ポリアミド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、環状ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙られ、好ましくは、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリメタクリルメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよいが、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)とを特定の割合で用いることによる本発明の効果を得るために、これらの他の透明性樹脂成分は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)との合計100質量部に対して20質量部以下とすることが好ましい。
[その他の添加剤]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、リン系熱安定剤、離型剤、ガラス強化材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、帯電防止剤、難燃剤、滴下防止剤などが挙げられる。
<リン系熱安定剤>
リン系熱安定剤は一般的に、樹脂成分を溶融混練する際、高温下での滞留安定性や樹脂成形品使用時の耐熱安定性向上に有効である。
本発明で用いるリン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも3価のリンを含み、変色抑制効果を発現しやすい点で、ホスファイト、ホスホナイト等の亜リン酸エステルが好ましい。
ホスファイトとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)テトラ(トリデシル)4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
また、ホスホナイトとしては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
また、アシッドホスフェートとしては、例えば、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
亜リン酸エステルの中では、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、耐熱性が良好であることと加水分解しにくいという点で、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。
これらのリン系熱安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物がリン系熱安定剤を含む場合、その含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.003質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上であり、通常0.1質量部以下、好ましくは0.08質量部以下、より好ましくは0.06質量部以下である。リン系熱安定剤の含有量が上記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、リン系熱安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
<離型剤>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤を含有していてもよく、離型剤としては、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物が好適に用いられる。
フルエステル化物を構成する脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
一方、フルエステル化物を構成する脂肪族アルコール成分としては、飽和又は不飽和の1価アルコール、飽和又は不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。
なお、上記脂肪族アルコールと上記脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物は、そのエステル化率が必ずしも100%である必要はなく、80%以上であればよい。本発明にかかるフルエステル化物のエステル化率は好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
本発明で用いる脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物は、特に、モノ脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物の1種又は2種以上と、多価脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物の1種又は2種以上とを含有することが好ましく、モノ脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物と、多価脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物との併用により、離型効果を向上させると共に溶融混練時のガス発生を抑制し、モールドデポジットを低減させる効果が得られる。
モノ脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸のフルエステル化物としては、ステアリルアルコールとステアリン酸とのフルエステル化物(ステアリルステアレート)、ベヘニルアルコールとベヘン酸とのフルエステル化物(ベヘニルベヘネート)が好ましく、多価脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物としては、グリセリンセリンとステアリン酸とのフルエステル化物(グリセリントリステアリレート)、ペンタエリスリトールとステアリン酸とのフルエステル化物(ペンタエリスリトールテトラステアリレート)が好ましく、特にペンタエリスリトールテトラステアリレートが好ましい。
なお、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物は、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物等の離型剤を含有する場合、その含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)の合計100質量部に対して通常2質量部以下であり、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が多過ぎると耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等の問題がある。
離型剤として、モノ脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物と、多価脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物とを併用する場合、これらの使用割合(質量比)は、モノ脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物:多価脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物=1:1〜10とすることが、これらを併用することによる上記の効果を確実に得る上で好ましい。
<酸化防止剤>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、所望によって酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤を含有することで、色相劣化や、熱滞留時の機械物性の低下が抑制できる。
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤の市販品としては、例えば、チバ社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、アデカ社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
なお、酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)の合計100質量部に対して、通常0.0001質量部以上、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常3質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下である。酸化防止剤の含有量が上記範囲の下限値未満の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の含有量が上記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
<紫外線吸収剤>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、所望によって紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤を含有することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐候性を向上させることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ701」、「シーソーブ705」、「シーソーブ703」、「シーソーブ702」、「シーソーブ704」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、アデカ社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、チバ・スペシャリティケミカルズ社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
ベンゾフェノン化合物の具体例としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−n−ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられ、このようなベンゾフェノン化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ100」、「シーソーブ101」、「シーソーブ101S」、「シーソーブ102」、「シーソーブ103」、共同薬品社製「バイオソーブ100」、「バイオソーブ110」、「バイオソーブ130」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ10」、「ケミソーブ11」、「ケミソーブ11S」、「ケミソーブ12」、「ケミソーブ13」、「ケミソーブ111」、BASF社製「ユビヌル400」、BASF社製「ユビヌルM−40」、BASF社製「ユビヌルMS−40」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV9」、「サイアソーブUV284」、「サイアソーブUV531」、「サイアソーブUV24」、アデカ社製「アデカスタブ1413」、「アデカスタブLA−51」等が挙げられる。
サリシレート化合物の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、4−tert−ブチルフェニルサリシレート等が挙げられ、このようなサリシレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ201」、「シーソーブ202」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ21」、「ケミソーブ22」等が挙げられる。
シアノアクリレート化合物の具体例としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられ、このようなシアノアクリレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ501」、共同薬品社製「バイオソーブ910」、第一化成社製「ユビソレーター300」、BASF社製「ユビヌルN−35」、「ユビヌルN−539」等が挙げられる。
オギザニリド化合物の具体例としては、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキザリニックアシッドビスアリニド等が挙げられ、このようなオキザリニド化合物としては、具体的には例えば、クラリアント社製「サンデュボアVSU」等が挙げられる。
マロン酸エステル化合物としては、2−(アルキリデン)マロン酸エステル類が好ましく、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類がより好ましい。このようなマロン酸エステル化合物としては、具体的には例えば、クラリアントジャパン社製「PR−25」、チバ・スペシャリティケミカルズ社製「B−CAP」等が挙げられる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、その含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常3質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、さらに好ましくは0.4質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。
なお、紫外線吸収剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
[染顔料]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、所望によって染顔料を含有していてもよい。染顔料を含有することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の隠蔽性、耐候性を向上できるほか、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形品のデザイン性を向上させることができる。
染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
有機顔料及び有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。
これらの中では、熱安定性の点から、酸化チタン、カーボンブラック、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系化合物などが好ましい。
なお、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
また、染顔料は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が染顔料を含有する場合、その含有量は、必要な意匠性に応じて適宜選択すればよいが、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常3質量部以下、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。染顔料の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、着色効果が十分に得られない可能性があり、染顔料の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。
<その他の成分>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上述したもの以外にその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、上記した難燃剤以外のシリコン系難燃剤等の他の難燃剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、摺動性改質剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などの各種樹脂添加剤などが挙げられる。これらの樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
<芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用することができる。
その具体例を挙げると、本発明に係る芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、及び(メタ)アクリレート共重合体(B)、並びに必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの各種混合機を用いて予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
また、例えば、各成分を予め混合せずに、又は、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
上記方法で各成分を予め混合した後、溶融混練する方法としてはバンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどを使用する方法が挙げられる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。なお、以下の説明において[部]とは、特に断らない限り質量基準に基づく「質量部」を表す。
以下の実施例及び比較例で用いた測定・評価法並びに使用材料は、以下の通りである。
[測定・評価法]
<質量平均分子量(Mw)の測定・算出>
まず、標準ポリマーとしてポリスチレン(PS)を使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件にて平均分子量の測定を行った。
装置;Waters社製Alliance
カラム;昭和電工製「Shodex K−805L」(2本)
検出器;UV検出器 254nm
溶離液;クロロホルム
次いで、GPC測定後、ユニバーサルキャリブレーション法により溶出時間とポリカーボネート(PC)の分子量の関係を求めて検量線とした。PCの溶出曲線(クロマトグラム)を検量線の場合と同一の条件で測定し、溶出時間(分子量)とその溶出時間のピーク面積(分子数)とから質量平均分子量を求めた。
質量平均分子量(Mw)は分子量Miの分子数をNiとすると
Mw=Σ(NiMi2)/Σ(NiMi)
で表される。
換算式としては以下の計算式を使用した。計算式中、MPCはPCの分子量、MPSは
PSの分子量を示す。計算式は、以下の極限粘度[η]と分子量Mの関係を表したMark−Houwinkの式から求めたものである。ただし、K、αの値は、PSの場合、K:1.11×10−4,α:0.725、PCの場合、K:3.89×10−4,α:0.700の値を使用した。
MPC=0.47822MPS1.01470
MPS=2.0689MPC0.98551
[η]=KMα
そして、ポリカーボネートの溶出曲線(クロマトグラム)を検量線の場合と同一の条件で測定し、溶出時間(分子量)とその溶出時間のピーク面積(分子数)とから質量平均分子量を求めた。
(メタ)アクリレート共重合体については、溶離液としてTHFを用い、カラムに東ソー製「TSKgel SuperHZM−M (4本)」を用い、PSの検量線から算出した。
<破壊トルク測定>
得られた試験片のボス穴に、引掛り率70%となるねじ(クラウン精密工業社製プラックスM2*6)をトルクドライバーにてねじ込み、ボス穴の割れによる破壊に至るトルクを測定し、破壊トルクとした。
<表面硬度評価>
得られた試験片の板状部に対して、JIS K−5600−5−4に準じ、5回の引掻き試験を行って表面鉛筆硬度の評価を行った。
<外観評価>
得られた試験片の外観を目視観察し、その透明性、白化又はパール光沢の有無を確認し、以下の基準で評価した。
○:透明で、白化もパール光沢もなく、外観に優れる。
×−1:白化があり、外観に劣る。
×−2:パール光沢があり、外観に劣る。
[使用材料]
<芳香族ポリカーボネート樹脂(A)>
三菱エンジニアリングプラスチックス社製 商品名「ユーピロン(登録商標)S−3000」、質量平均分子量:26,800、鉛筆硬度:2B
<(メタ)アクリレート共重合体(B)>
温度計、窒素導入管、還流冷却管、及び攪拌装置を備えた加温可能な反応容器中に、脱イオン水200部、以下の分散剤0.3部、硫酸ナトリウム0.5部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.3部、フェニルメタクリレート15部、メチルメタクリレート84部、メチルアクリレート1部、n−オクチルメルカプタン1.8部を仕込み、反応容器内を窒素で置換し、80℃に昇温した。4時間攪拌後、得られたビーズ状の重合体を水洗、乾燥し、(メタ)アクリレート共重合体(B)を得た。この(メタ)アクリレート共重合体(B)の鉛筆硬度は2Hであり、質量平均分子量は14,000であった。
分散剤:カリウムメタクリレート70部、メチルメタクリレート30部を共重合した重合体と、ナトリウム2−スルホエチルメタクリレート65部、カリウムメタクリレート10部、及びメチルメタクリレート25部を共重合した重合体とを、質量比1:1で混合し、この混合した重合体の10%水溶液を分散剤として用いた。
<リン系熱安定剤>
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト:アデカ社製 商品名「アデカスタブ2112」
<離型剤>
(R−1)ステアリルステアリレート:日油社製 商品名「ユニスターM9676」
(R−2)ペンタエリスリトールテトラステアレート:コグニスジャパン社製 商品名「ロキシオールVPG861」
<酸化防止剤>
ペンタエリストール−テトラキス[3−(3,5−ジーtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]:チバ社製 商品名「イルガノックス1010」
<紫外線吸収剤>
2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール:シプロ化成社製 商品名「シーソーブ709」
<アクリル樹脂>
ポリメチルメタクリレート:三菱レイヨン社製 商品名「アクリペットVH−001」、鉛筆硬度:2H、質量平均分子量:60,000
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、(メタ)アクリレート共重合体(B)、アクリル樹脂として使用した各材料の鉛筆硬度は、前述の<表面硬度評価>と同様にして測定した値である。
[実施例1〜6、比較例1〜9]
<樹脂ペレットの製造>
上記の各成分を、表1,2に示す質量比で配合し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製(TEX30HSST)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度250℃の条件で混練し、ストランド状に押出した溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化して、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
<試験片の作製>
上述の製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(JSW製「J−85AD」)にて、鋼材金型を使用して、表1,2に示す射出速度で、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の条件で射出成形を行って、70mm×44mm×厚さ3mmの板状部に、外径4.2mm、内径1.65mm、肉厚1.275mmで高さ6mmのボス穴が形成された試験片を一体成形した。
各試験片の評価結果を表1,2に示す。
[評価結果]
Figure 2015003979
Figure 2015003979
[考察]
表1(実施例1〜6)より明らかなように、樹脂成分として、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)とを所定の割合で含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出速度5〜100mm/secの範囲内で射出成形して得られた成形品は、ボス穴のセルフタップ強度が高く、また表面硬度も高く、外観にも優れる。
これに対して、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)とを本発明の範囲内で含んでいても、射出速度が本発明の範囲を超えて大きい比較例1〜5では、破壊トルク0.18N・m以上を達成し得ず、また、成形品の外観も劣る。
一方、本発明で用いる(メタ)アクリレート共重合体(B)とは異なるアクリル樹脂を用いた比較例6,7では、本発明の範囲内の射出速度で射出成形を行っても、セルフタップ強度が劣り、また外観も劣る。
樹脂成分として、(メタ)アクリレート共重合体(B)を用いず、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)のみを用いた比較例8,9では、外観は良好であるが、本発明の範囲内の射出速度で射出成形を行っても、セルフタップ強度が低く、表面硬度も低い。
射出速度の破壊トルクとの関係をみると、樹脂成分として芳香族ポリカーボネート樹脂(A)のみを用いた場合(比較例8,9)は、破壊トルクは射出速度に依存せず、低い値でほぼ一定である。
(メタ)アクリレート共重合体(B)とは異なるアクリル樹脂を用いた場合(比較例6,7)でも、射出速度が変わっても破壊トルクに大差はない。これは、元来、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)とアクリル樹脂との相溶性が悪いために、射出速度を下げても、相溶性の悪い状態に変化はなく、破壊トルクは改善されないことによる。
これに対して、実施例1〜6と比較例1〜5との対比から、樹脂成分として芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)とを本発明の範囲内で含む場合は、射出速度を大きくすると十分に相溶していた芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と(メタ)アクリレート共重合体(B)との相分離が起こり、この相分離のために破壊トルクが低下すると共に、外観も劣るものとなることから、射出速度を所定値以下とすることが好ましいことが分かる。

Claims (3)

  1. 質量平均分子量が15,000〜40,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)55〜95質量%と、芳香族(メタ)アクリレート単位(b1)とメチルメタクリレート単位(b2)の質量比(b1/b2)が5〜80/20〜95で、質量平均分子量が5,000〜30,000である(メタ)アクリレート共重合体(B)5〜45質量%とからなる樹脂成分を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形することにより、厚さ1mm以上の板状部と、該板状部に突設されたボス穴とを一体成形してなる芳香族ポリカーボネート樹脂成形品であって、
    該射出成形時の射出速度が5〜100mm/secであり、
    JIS B1007におけるタッピンねじのねじ部においてねじ部2種及び4種の形状を持つ呼び径2mmのねじを用いた時の引掛り率70%のセルフタップ試験における破壊トルクが0.18N・m以上であり、
    JIS K−5600−5−4規格による表面鉛筆硬度がF以上であることを特徴とするボス穴を有する芳香族ポリカーボネート樹脂成形品。
  2. 請求項1において、前記ボス穴の高さが6〜10mmであり、外径が3.00〜4.50mm、内径が1.30〜1.70mmで、肉厚が0.65〜1.60mmであることを特徴とするボス穴を有する芳香族ポリカーボネート樹脂成形品。
  3. 請求項1又は2において、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品が、電気・電子機器の筐体、自動車用部品、照明機器の部品、情報端末機器、家電製品、レジャー用品、或いは雑貨類であることを特徴とするボス穴を有する芳香族ポリカーボネート樹脂成形品。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016204609A (ja) * 2015-04-28 2016-12-08 三菱瓦斯化学株式会社 樹脂組成物及びその成形体
JP2017031313A (ja) * 2015-07-31 2017-02-09 三菱瓦斯化学株式会社 樹脂組成物及びその成形体
JPWO2016114250A1 (ja) * 2015-01-14 2017-10-19 住友化学株式会社 樹脂組成物

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