JP6466264B2 - ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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Description

本発明はポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関し、詳しくは、透明性に優れ、かつ複屈折が小さく耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びそれを成形した成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、電気絶縁性、寸法安定性等に優れ、これらの特性のバランスも良好であることから、各種の分野で広く使用されている。特にビスフェノールAを原料としたポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性及び耐熱性に優れ、軽く割れにくいという利点があることから、ガラスの代替材料として、自動車部品や建材、またレンズ等の光学部品に採用されている。また、近年では、スマートホン等の各種携帯端末、タブレット型パソコン、カーナビやカーオーディオ、携帯ゲーム機、デジタルカメラ等に利用される液晶表示装置の液晶表示パネル用部材、特にタッチパネルのカバー部材としても大いに利用されている。
タッチパネルのカバー部材等においては、複屈折が大きいと位相差ムラが発生し、表示像のカラーバランスやコントラストの低減を引き起こしやすい。また、複屈折が大きい状態では、特に偏光サングラスをかけて画面を見ると、ブラックアウトして視認不可となる問題がある。ビスフェノールAを原料とするポリカーボネート樹脂は、複屈折が大きく、この問題が顕著である。
そこで、本発明者は、特許文献1にて、ポリカーボネート樹脂に、α,β−不飽和ジカルボン酸又はその無水物を共重合成分とするスチレン系樹脂を特定量配合することにより、複屈折や外観不良等の問題が解決できることを提案した。
しかしながら、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂に、α,β−不飽和ジカルボン酸又はその無水物を共重合成分とするスチレン系樹脂を配合しただけでは、耐衝撃性が不十分であるという問題点が見いだされた。
特願2013−257596号
本発明の目的(課題)は、透明性に優れ、かつ複屈折が小さく、さらに耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供することにある。
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂に対し、ポリカーボネート樹脂の屈折率より高い屈折率のスチレン系樹脂と、ポリカーボネート樹脂の屈折率より低い屈折率のスチレン系樹脂、及び、ハイインパクトポリスチレンをそれぞれ特定量で含有するポリカーボネート樹脂組成物が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物および成形品を提供する。
[1]ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、ポリカーボネート樹脂(A)の屈折率より高い屈折率を有するスチレン系樹脂(B1)とポリカーボネート樹脂(A)の屈折率より低い屈折率を有するスチレン系樹脂(B2)を(B1)と(B2)の合計で40〜100質量部及びハイインパクトポリスチレン(C)を0.1〜5質量部含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
[2]スチレン系樹脂(B1)とスチレン系樹脂(B2)の質量比が、2:8〜8:2である上記[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[3]スチレン系樹脂(B1)が、多分岐状ポリスチレンである上記[1]又は[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[4]スチレン系樹脂(B2)が、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体である上記[1]又は[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[5]ポリカーボネート樹脂(A)の屈折率をnA、スチレン系樹脂(B1)の屈折率をnB1としたとき、nB1−nAが0より大で0.05以下である上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[6]スチレン系樹脂(B2)の屈折率をnB2としたとき、nA−nB2が0より大で0.05以下である上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[7]nB1−nB2が0より大で0.1以下である上記[1]〜[6]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[8]ハイインパクトポリスチレン(C)の屈折率が、スチレン系樹脂(B2)の屈折率より低い上記[1]〜[7]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[9]ハイインパクトポリスチレン(C)の屈折率をnCとしたとき、nB2−nCが0.01〜0.1の範囲にある上記[1]〜[8]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[10]nA−nCが0.01〜0.1の範囲にある上記[1]〜[9]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[11]上記[1]〜[10]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、透明性に優れ、かつ複屈折が小さく、さらに耐衝撃性に優れる。通常、ポリカーボネート樹脂に屈折率差がある他の樹脂を配合することは透明性の観点からは望ましくはないものであるが、本発明では、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A)に、ポリカーボネート樹脂より高い屈折率のスチレン系樹脂(B1)と、ポリカーボネート樹脂の屈折率より低い屈折率のスチレン系樹脂(B2)、及び、ハイインパクトポリスチレン(C)を前記特定量で含有することにより、透明性を十分良好に保ちながら、低い複屈折と高い耐衝撃性を達成することができる。
このため、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、各種の光学的用途、例えば、スマートホン等の各種携帯端末、タブレット型パソコン、カーナビやカーオーディオ、携帯ゲーム機、デジタルカメラ等に利用される液晶表示装置の液晶表示パネル用部材、特にタッチパネルのカバー部材に好適に使用できる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、ポリカーボネート樹脂(A)の屈折率より高い屈折率を有するスチレン系樹脂(B1)とポリカーボネート樹脂(A)の屈折率より低い屈折率を有するスチレン系樹脂(B2)を(B1)と(B2)の合計で40〜100質量部及びハイインパクトポリスチレン(C)を0.1〜5質量部含有することを特徴とする。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物が含有するポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A)である。
ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A)は、原料のジヒドロキシ化合物として、ビスフェノールA、すなわち2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとカーボネート前駆体とから製造されるものである。
ポリカーボネート樹脂(A)の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)は、ビスフェノールA以外の他のジヒドロキシ化合物を併用した共重合ポリカーボネート樹脂であってもよい。ビスフェノールA以外の他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、以下のような芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル等が挙げられる。
共重合ポリカーボネート樹脂とする場合は、ビスフェーノールA由来の成分が50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、中でも90質量%以上、特には95質量%以上であることが好ましい。
またポリカーボネート樹脂(A)は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。
・ポリカーボネート樹脂の製造方法
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
以下、これらの方法のうち、特に好適なものについて具体的に説明する。
界面重合法
まず、ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。
界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体は、前述のとおりである。なお、カーボネート前駆体の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限はないが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、ビスフェノール化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
重合触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤としては、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、中でも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的に、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等のアルキル基置換フェノール;イソプロぺニルフェノール等のビニル基含有フェノール;エポキシ基含有フェノール;o−ヒドロキシ安息香酸、2−メチル−6−ヒドロキシフェニル酢酸等のカルボキシル基含有フェノール;等が挙げられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤の使用量は、ジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、樹脂組成物の熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
反応の際に、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート前駆体としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤はジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
溶融エステル交換法
次に、ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。
溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
ジヒドロキシ化合物は、前述の通りである。
一方、炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物;ジフェニルカーボネート;ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。中でも、ジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートがより好ましい。なお、炭酸ジエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの比率は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが好ましく、中でも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
ポリカーボネート樹脂では、その末端水酸基量が熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす傾向がある。このため、公知の任意の方法によって末端水酸基量を必要に応じて調整してもよい。エステル交換反応においては、通常、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率;エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を調整したポリカーボネート樹脂を得ることができる。なお、この操作により、通常は得られるポリカーボネート樹脂の分子量を調整することもできる。
炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端水酸基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
溶融エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は任意のものを使用できる。なかでも、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
溶融エステル交換法において、反応温度は通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
溶融重縮合反応は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし、ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いてもよい。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
触媒失活剤の使用量は、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは5当量以下である。更には、ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは20ppm以下である。
ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A)の屈折率は、通常1.585であるが、1.580〜1.590の範囲にあることが好ましい。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂(A)、スチレン系樹脂(B1)、スチレン系樹脂(B2)及びハイインパクトポリスチレン(C)等の各樹脂の屈折率は、JIS K7142に準拠し、温度23±℃、湿度50±5%RH、589nmナトリウムD線にて測定される値である。
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、16,000〜28,000であることが好ましい。粘度平均分子量がこの範囲であると、成形性が良く、且つ機械的強度の大きい成形品が得られやすく、16,000を下回ると、耐面衝撃性が著しく低下しやすく、28,000を超えると溶融粘度が増大し射出成形が困難となりやすい。ポリカーボネート樹脂(A)の分子量の下限は、より好ましくは17,000、さらに好ましくは18,000であり、その上限はより好ましくは27,000である。
なお、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下である。これによりポリカーボネート樹脂の滞留熱安定性及び色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂単独(ポリカーボネート樹脂単独とは、ポリカーボネート樹脂の1種のみを含む態様に限定されず、例えば、モノマー組成や分子量が互いに異なる複数種のポリカーボネート樹脂を含む態様を含む意味で用いる。)で用いてもよい。さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;光学的性質を改良するためにポリスチレン等のオレフィン系構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1500以上、好ましくは2000以上であり、また、通常9500以下、好ましくは9000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)全体の30質量%以下とすることが好ましい。
[スチレン系樹脂(B)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)より高い屈折率のスチレン系樹脂(B1)と、ポリカーボネート樹脂(A)の屈折率より低い屈折率のスチレン系樹脂(B2)を含有する。
[スチレン系樹脂(B1)]
スチレン系樹脂(B1)は、ポリカーボネート樹脂(A)の屈折率より高い屈折率を有するスチレン系樹脂である。前記したように、ポリカーボネート樹脂(A)の屈折率は、通常1.585で、1.580〜1.590の範囲にあることが好ましいので、スチレン系樹脂(B1)はこれより高い屈折率を有する。スチレン系樹脂(B1)の屈折率は、ポリカーボネート樹脂(A)の屈折率をnA、スチレン系樹脂(B1)の屈折率をnB1としたとき、nB1−nAが0より大で0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.04以下、さらに好ましくは0.03以下、特に好ましくは0.02以下である。
スチレン系樹脂(B1)は、ポリカーボネート樹脂(A)より高い屈折率を有するものであれば、各種のスチレン系樹脂を使用することができる。スチレン系樹脂の屈折率を調整するには、公知の各種の方法で可能であり、例えば、スチレン系単量体とこれに共重合する単量体の種類と共重合割合を調整する方法が挙げられ、モノマー構成単位の分子屈折と分子容から屈折率の計算値を推定することもできる。また、市販品の中からかかる屈折率を有するスチレン系樹脂を選択して使用することもできる。
スチレン系樹脂(B1)は、スチレン系単量体と必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル単量体及びゴム質重合体より選ばれる1種以上を重合して得られる樹脂である。
スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレン等のスチレン誘導体が挙げられ、特にスチレンが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
スチレン系単量体と共重合可能な他のビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;フェニルアクリレートベンジルアクリレート等のアクリル酸のアリールエステル;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート等のアクリル酸のアルキルエステル;フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アリールエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル;グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有メタクリル酸エステル;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα、β−不飽和カルボン酸及びその無水物が挙げられる。好ましくは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルである。
これらのビニル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
スチレン系樹脂(B1)として好ましいものとしては、多分岐状ポリスチレンまた多分岐状ポリスチレンを含有するポリスチレン樹脂が挙げられる。多分岐状ポリスチレンは、例えば特開2015−4015、特開2012−116875、特開2009−256502、特開2007−291264、特開2003−292707、特開2002−37823号公報等にも記載されるように、分岐構造を有している多分岐状のスチレン系共重合体であり、分岐の構造としては、ランダム分岐型構造、星形構造又はポンポン型構造等がある。スチレン系樹脂に分岐を導入する方法として、有機過酸化物を用いる方法、多官能モノマーを用いる方法、イオン架橋による方法又は多分岐状マクロモノマーを用いる方法があるが、多分岐状マクロモノマーを用いて、星形(star)構造とポンポン(pom−pom)型とが共存する分子構造を有すスチレン系樹脂が好ましい。
多分岐状ポリスチレンはスチレン系単量体、多分岐状マクロモノマーを共重合することが好ましい。また、この際、脂肪族不飽和カルボン酸エステルを共重合することが好ましい。
このためのスチレン系単量体としては、スチレン又はその誘導体を用いることができる。スチレン誘導体としては、例えば、メチルスチレン、α−メチルスチレン等のアルキル置換スチレン、ブロモスチレン、α−ブロモスチレン等のハロゲン置換スチレンが挙げられる。
多分岐状マクロモノマーとしては、複数の分岐を有し、かつ、スチレン系単量体と共重合可能な脂肪族不飽和結合を有するモノマーを用いることができる。多分岐状マクロモノマーは、例えば、特開2011−202064号公報に示される方法により得ることができる。
多分岐状マクロモノマーとして、例えば、デンドリマー、ハイパーブランチポリマー、多分岐ポリエーテルポリオールに(メタ)アクリル基を導入したマクロモノマー、1分子中に活性メチレン基と、臭素、塩素、メチルスルホニルオキシ基又はトシルオキシ基等とを有するAB2型モノマーを求核置換反応させて得られる多分岐状の自己縮合型重縮合体を前駆体として、該重縮合体中に残存する未反応の活性メチレン基又はメチン基を、クロロメチルスチレン、ブロモメチルスチレン等と求核置換反応させることによって重合性二重結合を導入して得られる多分岐状マクロモノマー等を好適に用いることができる。
多分岐状マクロモノマーの質量平均分子量は、特に限定されず、好ましくは1000〜15000程度である。
脂肪族不飽和カルボン酸エステルとして、例えば、(メタ)アクリル酸エステル誘導体が挙げられ、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜12のアルキルアルコールとのエステル類、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとのエステル類、(メタ)アクリル酸と脂環式アルコールとのエステル類等が挙げられる。これらの内から少なくとも1種が選択される。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はこれに対応するメタクリルを意味する。この中でも、(メタ)アクリル酸ブチル又は(メタ)アクリル酸エチルが好ましく、アクリル酸ブチル又はアクリル酸エチルがより好ましい。
脂肪族不飽和カルボン酸エステル単位を含有する際の含有量は、好ましくは0.5〜3.5質量%であり、0.6〜3.3質量%であることがより好ましく、0.9〜2.5質量%であることがさらに好ましい。
多分岐状ポリスチレンまた多分岐状ポリスチレンを含有するポリスチレン樹脂の製造方法としては特に制限はなく、スチレン系単量体及び多分岐状マクロモノマーを重合する。この際、脂肪族不飽和カルボン酸エステルを共重合してもよい。また、スチレン系単量体及び多分岐状マクロモノマーを重合して作製された重合体に、脂肪族不飽和カルボン酸エステルを用いて作製した重合体を、ドライブレンドや混練により混合してスチレン系樹脂を調製することもできる。
重合反応には公知のスチレンの重合方法を使用することができ、特に限定されないが、塊状重合、懸濁重合又は溶液重合が好ましい。重合開始剤を使用せずに熱重合させることもできるが、慣用のラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。また、重合に必要な懸濁剤や乳化剤などのような重合助剤は、通常のポリスチレンの製造に使用される慣用のものを使用できる。
このような多分岐状ポリスチレン、または多分岐状ポリスチレンを含有するスチレン系樹脂としては、DIC社製の商品名「ハイブランチHP−100」、「ハイブランチHP−100F−1」、「ハイブランチHP−100F−2」、「ハイブランチXC−540HB」、「ハイブランチHP−780AN」等が挙げられ、これらから選択して使用することもできる。
[スチレン系樹脂(B2)]
スチレン系樹脂(B2)は、ポリカーボネート樹脂(A)の屈折率より低い屈折率を有するスチレン系樹脂である。スチレン系樹脂(B2)は、ポリカーボネート樹脂(A)の屈折率、通常1.585、好ましくは1.580〜1.590よりも高い屈折率を有する。スチレン系樹脂(B2)の屈折率は、ポリカーボネート樹脂(A)の屈折率をnA、スチレン系樹脂(B2)の屈折率をnB2としたとき、nA−nB2が0より大で0.05以下であるであることが好ましく、より好ましくは0.04以下、さらに好ましくは0.03以下である。
また、スチレン系樹脂(B1)の屈折率(nB1)は、スチレン系樹脂(B2)の屈折率(nB2)より大であることが好ましく、nB1−nB2が0より大で0.1以下であることがより好ましい。
スチレン系樹脂(B2)は、ポリカーボネート樹脂(A)より低い屈折率を有するものであれば、各種のスチレン系樹脂を使用することができる。スチレン系樹脂の屈折率を調整するには、前記したように公知の各種の方法で可能であり、また、市販品の中からかかる屈折率を有するスチレン系樹脂を選択して使用することもできる。
スチレン系樹脂(B2)は、スチレン系単量体と必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル単量体及びゴム質重合体より選ばれる1種以上を重合して得られる樹脂である。
スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレン等のスチレン誘導体が挙げられ、特にスチレンが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
スチレン系単量体と共重合可能な他のビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;フェニルアクリレートベンジルアクリレート等のアクリル酸のアリールエステル;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート等のアクリル酸のアルキルエステル;フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アリールエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル;グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有メタクリル酸エステル;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸及びその無水物が挙げられる。好ましくは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルである。
これらのビニル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
スチレン系樹脂(B2)として好ましいものとしては、スチレンまたは置換スチレンのスチレン系単量体に(メタ)アクリル酸エステルを共重合した共重合体である。
スチレン系単量体は上記した通りであり、中でもスチレンが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル類としてはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜18のアルキルエステル類、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリレートおよびアクリロニトリルなどのニトリル基含有(メタ)アクリル化合物などを挙げることができる。
なお、(メタ)アクリレート等の表記はメタクリレートおよびアクリレートのいずれをも含むことを示し、(メタ)アクリル酸エステルの表記はメタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルのいずれをも含むことを示す。
スチレン系樹脂(B2)としては、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が好ましい。
スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルを構成単位としたスチレン系樹脂は、前述の単量体を重合開始剤の存在下、溶液重合、バルク重合および懸濁重合などの任意の方法で重合して得ることができる。また、溶液重合で得られるスチレン系樹脂とバルク重合および/または懸濁重合で得られるスチレン系樹脂とをブレンドすることによっても得ることができる。
スチレン系樹脂(B2)の質量平均分子量は、GPC測定による標準ポリスチレン換算において5×10〜5×10が好ましい。
スチレン系樹脂(B1)とスチレン系樹脂(B2)の含有量は、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、(B1)と(B2)の合計で40〜100質量部である。40質量部を下回ると、ポリカーボネート樹脂由来の複屈折が大きくなり、100質量部を上回ると、スチレン系樹脂由来の複屈折が大きくなり、また耐衝撃性が低くなる。好ましい含有量は、50質量部以上であり、90質量部以下である。
また、スチレン系樹脂(B1)とスチレン系樹脂(B2)の含有量の割合は、(B1):(B2)の質量比で、2:8〜8:2であることが好ましく、3:7〜7:3がより好ましく、さらに好ましくは4:6〜6:4である。
[ハイインパクトポリスチレン(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物はハイインパクトポリスチレン(C)を含有する。ハイインパクトポリスチレン(HIPS)はゴム強化スチレン系樹脂であり、ゴム成分が含まれるポリスチレン系樹脂であれば良く、スチレン系単量体の単独重合体中にゴム成分が含まれているもの、スチレン系単量体と共重合可能な他のビニル単量体との共重合体中にゴム成分が含まれているもの等、いずれも好適に用いることができる。ゴム成分は、これらスチレン系単独重合体又は共重合体中にゴム成分が粒子状になって分散していても、あるいは、スチレン系単独重合体又は共重合体にゴム成分をグラフト重合しているもの、あるいは、これらにさらにスチレン系単独重合体又は共重合体を配合したもの等の、いずれであってもよい。ハイインパクトポリスチレン(C)中のスチレン系単量体の割合は、ハイインパクトポリスチレン(C)の全体100質量%中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。
スチレン系単量体は、前記したのと同様であり、特にスチレンが好ましい。
スチレン系単量体と共重合可能な他のビニル単量体としては、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステル化合物を好ましく挙げることができる。シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。特に好適な(メタ)アクリル酸エステル化合物としてはメチルメタクリレートを挙げることができる。
シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステル化合物以外のスチレン系単量体と共重合可能な他のビニル単量体としては、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸およびその無水物があげられる。
ゴム成分としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(例えば、スチレン・ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、並びに(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびブタジエンの共重合体など)、エチレンとα−オレフィンとの共重合体(例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン・ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体など)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(例えばエチレン・メタクリレート共重合体、およびエチレン・ブチルアクリレート共重合体など)、エチレンとプロピレンと非共役ジエンターポリマー(例えば、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体など)、アクリル系ゴム(例えば、ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、およびブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの共重合体など)等が含まれていることが好ましい。中でもより好適であるのは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、またはジエン系共重合体であり、特にポリブタジエンがゴム成分として含まれていることが好ましい。
なお、本発明において、ハイインパクトポリスチレン(C)は、前記したスチレン系樹脂(B1)と(B2)とは異なるものであり、スチレン系樹脂(B1)と(B2)からはハイインパクトポリスチレン(C)は除外される。
ハイインパクトポリスチレン(C)の屈折率(nC)は、スチレン系樹脂(B2)の屈折率(nB2)より小さいことが好ましく、nB2−nCが0.01〜0.1の範囲にあることがより好ましい。また、ハイインパクトポリスチレン(C)の屈折率(nC)は、ポリカーボネート樹脂(A)の屈折率(nA)より小さいことが好ましく、nA−nCが0.01〜0.1の範囲にあることがより好ましい。
ハイインパクトポリスチレンの屈折率を調整するには、公知の各種の方法で可能であり、例えば、スチレン系単量体とこれに共重合する単量体の種類と共重合割合を調整する方法が挙げられる。また、市販品の中から所望の屈折率を有する樹脂を選択して使用することもできる。
ハイインパクトポリスチレン(C)の含有量は、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.1〜5質量部と少量である。5質量部を超えると、透明性が低下し、0.1質量部を下回ると、耐衝撃性向上効果が無くなる。好ましい含有量は4質量部以下であり、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下、特に好ましくは1.5質量部以下であり、また、好ましくは0.15質量部以上である。
[熱安定剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、熱安定剤を含有することが好ましい。熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
なお、熱安定剤は、1種のみで含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)、スチレン系樹脂(B1)、スチレン系樹脂(B2)及びハイインパクトポリスチレン(C)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。熱安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
[離型剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。また、数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。脂肪族炭化水素は単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましく、ポリエチレンワックスが特に好ましい。
なお、離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)、スチレン系樹脂(B1)、スチレン系樹脂(B2)及びハイインパクトポリスチレン(C)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が上記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が上記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
[その他の成分]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外のその他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、上記した樹脂以外の樹脂、上記した以外の各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
樹脂添加剤としては、例えば、難燃剤、滴下防止剤、充填材、紫外線吸収剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A)、スチレン系樹脂(B1)、スチレン系樹脂(B2)及びハイインパクトポリスチレン(C)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。二軸混練押出機を使用する場合は、炭素繊維(B)はサイドフィードすることが好ましい。
溶融混練の温度は特に制限されないが、240〜320℃の範囲であることが好ましい。
[成形品]
上記したポリカーボネート樹脂組成物(ペレット)は、各種の成形法で成形して成形品とされる。
成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。
成形体を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ−ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。
中でも、成形は射出成形法により行われることが好ましく、例えば、射出成形機、超高速射出成形機、射出圧縮成形機等の公知の射出成形機を用いて射出成形される。射出成形時における射出成形機のシリンダー温度は、好ましくは240〜340℃であり、より好ましくは、260〜300℃である。また、射出成形時の射出速度は、好ましくは10〜1,000mm/秒であり、より好ましくは10〜500mm/秒である。
[成形体]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の成形体は、電気電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、各種容器、照明機器等の部品等に好適に用いられる。これらの中でも、特に電気電子機器、OA機器、情報端末機器、家電製品、照明機器等の部品へ用いて好適であり、電気電子機器等の部品に用いて特に好適である。
電気電子機器としては、例えば、カーナビ、パソコン、ゲーム機、テレビ、電子ペーパーなどのディスプレイ装置、プリンター、コピー機、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、DVD等のディスプレイ機器、携帯電話、タブレット型携帯機器、タッチパネル式携帯機器等が挙げられる。なかでも、タブレット型端末あるいはタッチパネル式端末に代表される携帯機器に好適に用いることができる。
中でも、成形品は、透明性に優れ、かつ複屈折が小さく耐衝撃性に優れるので、スマートホン等のタブレット型の各種携帯端末、タブレット型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーションやカーオーディオ等の液晶表示パネル用部材、特にタッチパネル用のカバー部材として特に好適である。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
以下の実施例及び比較例に使用した各原料成分は、以下の表1のとおりである。
(実施例1〜8、比較例1〜9)
上記表1に記載した各成分を、下記の表2〜3に示す割合(全て質量部にて表示)にて配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製TEX30HSST)を用いて、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hrにて押出機上流部のバレルより押出機にフィードし、溶融混練してポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
[透明性]
ヘイズ測定(単位:%):
上記の製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55−60H」)を用い、シリンダー設定温度260℃、金型温度80℃、スクリュー回転数100rpm、射出速度100mm/秒の条件下にて、90mm×50mm×2mm厚の平板状試験片を射出成形した。得られた平板状試験片について、日本電色工業(株)製のNDH−2000型ヘイズメーターでヘイズ(単位:%)を測定した。
透明性の評価として、以下の基準で判定を行った。
ヘイズ10%未満:○
ヘイズ10%以上:×
[複屈折]
平均レターデーションの測定(単位:nm)
上記の製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業社製のSE100DU型射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、スクリュー回転数100rpm、充填速度0.4sの条件で射出成形し、45mm×60mm×2mm厚の平板状試験片を成形した。ワイドレンジ2次元複屈折評価システム(フォトニックラティス社製、型式:WPA−100)を用いた3波長測定(波長523,543,575nm)により、得られた試験片の反ゲート部分45mm×60mm四方における位相差をエリア解析し、その平均値(単位:nm)を求めた。
複屈折の評価として、以下の基準で判定を行った。
100nm未満:○
100nm以上:×
[耐衝撃性]
ノッチなしシャルピー衝撃値の測定(単位:kJ/m
上記の製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥した後、住友重機械工業社製のSG75Mk−II型射出成形機を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形を行い、ISO多目的試験片(3mm厚)を作製した。得られた試験片を室温(23℃)条件下でISO−179規格に基づき、シャルピー衝撃試験(ノッチ無し)を行い、耐衝撃値を求めた。
耐衝撃性の評価として、以下の基準で判定を行った。
100kJ/m以上:○
100kJ/m未満:×
以上の評価結果を以下の表2〜3に示す。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、透明性に優れ、かつ複屈折が小さく耐衝撃性に優れるので、特に電気電子機器、OA機器、情報端末機器、家電製品、照明機器等の部品に好適に利用でき、産業上の利用性は非常に高いものがある。

Claims (4)

  1. ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、ポリカーボネート樹脂(A)の屈折率より高い屈折率を有するスチレン系樹脂(B1)とポリカーボネート樹脂(A)の屈折率より低い屈折率を有するスチレン系樹脂(B2)を(B1)と(B2)の合計で40〜100質量部及びハイインパクトポリスチレン(C)を0.1〜5質量部含有し、
    スチレン系樹脂(B1)とスチレン系樹脂(B2)の質量比が2:8〜8:2であり、
    スチレン系樹脂(B1)が多分岐状ポリスチレンであり、
    ポリカーボネート樹脂(A)の屈折率をnA、スチレン系樹脂(B1)の屈折率をnB1、スチレン系樹脂(B2)の屈折率をnB2としたとき、nB1−nAが0より大で0.05以下、nA−nB2が0より大で0.05以下であり、
    ハイインパクトポリスチレン(C)の屈折率をnCとしたとき、nB2−nCが0.01〜0.1、nA−nCが0.01〜0.1の範囲にあることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. スチレン系樹脂(B2)が、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. nB1−nB2が0より大で0.1以下である請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
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