JP6853005B2 - ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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Description

本発明はポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関し、詳しくは、爪での耐傷付き性に優れ、鉛筆硬度試験における低硬度での僅かな傷付きも解消する耐擦傷性に優れ、さらに流動性や外観に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、機械的強度、電気的特性、透明性などに優れ、エンジニアリングプラスチックとして、電気電子機器分野、自動車分野等様々な分野において幅広く利用されている。近年、これら用途分野においては、成形加工品の薄肉化、小型化、軽量化が進展し、成形素材のさらなる性能向上が要求され、その中でも高硬度であるポリカーボネート樹脂の開発が望まれるようになり、いくつかの提案がなされている。
例えば、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、即ちビスフェノールC等の従来のビスフェノールAとは異なる特定の構造を有する芳香族ジヒドロキシ化合物を用いて表面硬度に優れたポリカーボネートやコポリカーボネートとする方法(特許文献1、特許文献2)、ジメチルビスフェノールシクロヘキサンタイプのポリカーボネートとビスフェノールAタイプのポリカーボネートとのブレンドによる方法(特許文献3)等が知られている。
特開昭64−069625号公報 特開平08−183852号公報 国際公開第2009/083933号
確かにビスフェノールC系のポリカーボネート樹脂は2Hという高い鉛筆硬度を示すが、これの成形物を実際に製品として使用する場合には、爪で擦ると傷が付きやすい等の耐擦傷性にやや問題があることが分かった。鉛筆硬度自体は耐擦傷性に対する重要な指標であることには相違ないものの、耐擦傷性としてはこれだけでは必ずしも十分とはいえないことが判明した。鉛筆硬度は鉛筆の芯を試料表面に750gの荷重で45°に押し当て、押付けて動かし、引っ掻き傷付きの有無により試料の引っ掻き硬度を鉛筆の芯の硬さ(6B〜HB〜9H)で表わす試験法であるが、ビスフェノールC系のポリカーボネート樹脂が2Hというような高い鉛筆硬度を示す場合であって、2Hより低い硬度の鉛筆で上記測定操作を行うと試験片表面に僅かな傷が入ることがあることが判明した。鉛筆硬度はプラスチックの表面硬さの評価方法として定着しており、このような低鉛筆硬度での僅かな傷の発生がないことが強く要求されることになる。
本発明の目的(課題)は、ビスフェノールC等の従来のビスフェノールAとは異なる特定の構造を有する芳香族ジヒドロキシ化合物を用いたポリカーボネート樹脂において、爪での耐傷付き性に優れ、鉛筆硬度試験における低硬度での僅かな傷付きも解消する、耐擦傷性に優れ、さらに流動性や外観に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供することにある。
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、ポリエチレン系重合体主鎖にビニル系重合体セグメントを側鎖とするグラフト共重合体を、ビスフェノールC等の従来のビスフェノールAとは異なる特定の構造を有する芳香族ジヒドロキシ化合物を用いたポリカーボネート樹脂に特定の量で含有するポリカーボネート樹脂組成物が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物および成形品を提供する。
[1]下記一般式(1)で表される構造単位を含むポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、ポリエチレン系重合体を主鎖としビニル系重合体セグメントを側鎖とするグラフト共重合体(B)0.1〜12質量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
Figure 0006853005
(一般式(1)中、Rはメチル基、R及びRはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を、Xはアルキレン基又はアルキリデン基を示す。)
[2]グラフト共重合体(B)が、ポリエチレン系重合体主鎖にスチレン系重合体セグメントを側鎖とするグラフト共重合体である上記[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[3]グラフト共重合体(B)が、少なくともポリエチレン系重合体セグメント50〜95質量%およびビニル系重合体セグメント5〜50質量%からなるグラフト共重合体である上記[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[4]グラフト共重合体(B)が、さらにポリオルガノシロキサンセグメントを、0.5〜30質量%含有する含有するグラフト共重合体である上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[5]グラフト共重合体(B)が、JIS K7121に準拠し示差走査熱量計(DSC)により測定される吸熱ピークを100℃以下に有する上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[6]さらに、黒色化剤(C)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜5質量部を含有する上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[7]黒色化剤(C)が、黒色染料及び/又はカーボンブラックである上記[6]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[8]さらに、ガラス繊維(D)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、10〜100質量部を含有する上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[9]ガラス繊維(D)が、その長径/短径比で示される扁平率が1.5〜8である扁平ガラス繊維を含有する上記[8]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[10]上記[1]〜[9]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物の成形品。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、従来のビスフェノールA型ではないポリカーボネート樹脂(A)に、上記グラフト共重合体(B)を組み合わせることにより、高い鉛筆硬度を有し、且つ、爪での耐傷付き性に優れ、鉛筆硬度試験における低硬度での僅かな傷付きも解消する優れた耐擦傷性を有する。一方で、上記グラフト共重合体(B)を汎用のビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂に配合しても、ある程度の耐擦傷性は示すものの、爪での耐傷付き性、鉛筆硬度試験における低硬度での僅かな傷付きも解消という本発明のような効果は達成できない。この理由は未だ十分に解明できたわけではないが、一般式(1)のRにメチル基があることにより上記グラフト共重合体(B)の主査骨格であるポリエチレンとの親和性が向上し、ポリカーボネート樹脂(A)と上記グラフト共重合体(B)の相溶性が向上したためではないかと推察している。
そして、このような効果を有する本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、特に車輌内装部品、電子電気機器やOA機器、情報端末機器のハウジング部材等に好適に使用できる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、前記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、ポリエチレン系重合体主鎖にビニル系重合体セグメントを側鎖とするグラフト共重合体(B)0.1〜12質量部を含有することを特徴とする。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
ポリカーボネート樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される構造単位を含むポリカーボネート樹脂である。
Figure 0006853005
(一般式(1)中、Rはメチル基、R及びRはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を、Xはアルキレン基又はアルキリデン基を示す。)
上記一般式(1)において、Rはメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であるが、R及びRは特には水素原子であることが好ましい。
また、Xは、アルキレン基又はアルキリデン基であるが、アルキレン基としては炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。その例としては、メチレン、1,2−エチレン、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、1,6−へキシレン等を挙げることができる。
アルキリデン基としては、炭素数2〜10のアルキリデン基が好ましく、例えばエチリデン、2,2−プロピリデン、2,2−ブチリデン、3,3−ヘキシリデン等を挙げることができる。
Xは、アルキリデン基であるのが好ましく、2,2−プロピリデン基(即ち、イソプロピリデン基)が特に好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)としての好ましい具体例としては、以下のイ)〜ロ)のポリカーボネート樹脂が挙げられる。
イ)2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン構造単位を有するもの、即ち、Rがメチル基、RとRが水素原子、Xがイソプロピリデン基である構造単位を有するもの、
ロ)2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン構造単位、即ちRがメチル基、RとRがメチル基、Xがイソプロピリデン基である構造単位を有するもの、
上記のうち、特に上記イ)のポリカーボネート樹脂が好ましい。
これらポリカーボネート樹脂は、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを、ジヒドロキシ化合物として使用して製造することができる。
ポリカーボネート樹脂(A)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)は、前記一般式(1)で表される構造単位以外のカーボネート構造単位を有するポリカーボネート樹脂であってもよく、例えば、下記一般式(2)で表される構造単位、あるいは後記するような他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有していてもよい。この際の一般式(1)で表される構造単位以外の他の構造単位の共重合量は、通常50モル%未満であり、40モル%以下が好ましく、より好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、特には10モル%以下であることが好ましい。
Figure 0006853005
(式中、Xは前記一般式(1)におけるXと同義である。)
上記一般式(2)で表されるポリカーボネート構造単位の好ましい具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、即ち、ビスフェノールA由来のカーボネート構造単位である。
ポリカーボネート樹脂(A)がビスフェノールA由来のカーボネート構造単位を共重合成分として含有する場合、そのビスフェノールA由来の成分は50モル%未満であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、中でも10質量%以下、特には5質量%以下であることが好ましい。
一般式(2)で表される構造単位以外の他のジヒドロキシ化合物の例としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル等が好ましく挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは19,000〜32,000である。粘度平均分子量がこの範囲にあることで、成形性が良く、機械的強度が大きく、耐擦傷性のよい成形品が得られやすく、19,000を下回ると、樹脂組成物の鉛筆硬度が低くなりやすく、また耐摩耗性が低下しやすく、32,000を超えると溶融粘度が増大し射出成形が困難となりやすい。ポリカーボネート樹脂(A)の分子量の下限は、より好ましくは20,000、さらに好ましくは22,000、特には24,000が好ましく、その上限は好ましくは30,000、より好ましくは28,000である。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量[Mv]は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、以下のSchnellの粘度式から算出される値である。
[η]=1.23×10−4Mv0.83
ポリカーボネート樹脂(A)は、一般式(1)で表される構造単位を含むポリカーボネート樹脂(A)とあるように、一般式(1)で表される構造単位以外の他のカーボネート構造単位を有するポリカーボネート樹脂との混合物であってもよい。かかる他のポリカーボネート樹脂を混合する場合は、両者の合計100質量%基準で、50質量%未満であり、40質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらには20質量%以下であることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)が、一般式(1)で表される構造単位以外の他のポリカーボネート樹脂との混合物である場合の他のポリカーボネート樹脂としては、前記一般式(2)で表されるポリカーボネート構造単位からなるポリカーボネート樹脂が好ましく、その好ましい具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、即ち、ビスフェノールA由来のカーボネート樹脂である。
これは一般式(2)で表される構造単位以外の他のジヒドロキシ化合物由来の構造単位を有する共重合体であってもよく、その例としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル等に由来する単位が好ましく挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)と混合してもよい他のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、15,000〜30,000であることが好ましい。粘度平均分子量がこの範囲にあることで、成形性が良く、機械的強度が大きく、耐擦傷性のよい成形品が得られやすく、15,000を下回ると、樹脂組成物の鉛筆硬度が低くなりやすく、また耐摩耗性が低下しやすく、30,000を超えると溶融粘度が増大し射出成形が困難となりやすい。ポリカーボネート樹脂(A)の分子量の下限は、より好ましくは20,000、さらに好ましくは22,000、特には24,000が好ましく、その上限は好ましくは28,000、より好ましくは26,000である。
ポリカーボネート樹脂の製造方法
本発明に用いるポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
以下、これらの方法のうち、特に好適なものについて具体的に説明する。
界面重合法
まず、ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。
界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体は、前述のとおりである。なお、カーボネート前駆体の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限はないが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、ビスフェノール化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
重合触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤としては、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、中でも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的に、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等のアルキル基置換フェノール;イソプロぺニルフェノール等のビニル基含有フェノール;エポキシ基含有フェノール;o−ヒドロキシ安息香酸、2−メチル−6−ヒドロキシフェニル酢酸等のカルボキシル基含有フェノール;等が挙げられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤の使用量は、ジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、樹脂組成物の熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
反応の際に、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート前駆体としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤はジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
溶融エステル交換法
次に、ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。
溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
ジヒドロキシ化合物は、前述の通りである。
一方、炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物;ジフェニルカーボネート;ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。中でも、ジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートがより好ましい。なお、炭酸ジエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの比率は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが好ましく、中でも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
ポリカーボネート樹脂では、その末端水酸基量が熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす傾向がある。このため、公知の任意の方法によって末端水酸基量を必要に応じて調整してもよい。エステル交換反応においては、通常、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率;エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を調整したポリカーボネート樹脂を得ることができる。なお、この操作により、通常は得られるポリカーボネート樹脂の分子量を調整することもできる。
炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端水酸基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
溶融エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は任意のものを使用できる。なかでも、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
溶融エステル交換法において、反応温度は通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は、通常常圧未満の減圧下で行われ、反応の進行に応じて減圧の状態を調整し、最終的には2mmHg以下の条件とすることが好ましい。具体的操作としては、前記の条件で、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
溶融重縮合反応は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし、ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いてもよい。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
触媒失活剤の使用量は、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは5当量以下である。更には、ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは20ppm以下である。
[グラフト共重合体(B)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物はポリエチレン系重合体を主鎖としビニル系重合体セグメントを側鎖とするグラフト共重合体(B)を含有する。このグラフト共重合体(B)は、ポリエチレン系重合体がグラフト共重合体の主鎖となり、ビニル系単量体を重合したセグメントはグラフト共重合体の側鎖となる。
主鎖を構成するポリエチレン系重合体は、エチレンの単独重合体、又はエチレンを主成分としそれと共重合可能なエチレン以外の他のα−オレフィンとの共重合体のいずれであってもよい。
エチレン以外の他のα−オレフィンとしては炭素原子数が通常3〜20、好ましくは3から12のα−オレフィンであり、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が好ましく挙げられる。
ポリエチレン系重合体が共重合体の場合のα−オレフィン単位の量は、通常0〜50質量%、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらには0〜10質量%であることが好ましい。
ポリエチレン系重合体の分子量は、数平均分子量(Mn)で通常10,000〜600,000程度である。ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)でポリスチレン換算として求められるものを意味する。
ポリエチレン系重合体としては、市販の高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、あるいは高圧ラジカル法によって得られる高圧法低密度エチレン(HPLD)等のいずれであってもよいが、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレンが好ましく、中でも超低密度ポリエチレン(VLDPE)がより好ましい。
低密度ポリエチレンは、密度が通常0.91〜0.94g/cm、好ましくは0.912〜0.935g/cmである。直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.91〜0.94g/cmであるのが、好ましい。超低密度ポリエチレンは、エチレンとα―オレフィンとの共重合体であって、通常密度が0.86〜0.91g/cmの範囲である。高圧法による高圧法低密度ポリエチレンは、密度0.91〜0.94g/cmのものが好ましく挙げられる。
ビニル系重合体セグメントを形成するためのビニル系単量体としては、例えばスチレン系単量体、α,β−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和カルボン酸エステル、不飽和ニトリル系単量体等が好ましく挙げられる。
スチレン系単量体としては、例えばスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
α,β−不飽和カルボン酸としては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等が好ましく挙げられる。
α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル等が好ましく挙げられる。
不飽和ニトリル系単量体としては、アクリロニトリルが好ましく挙げられる。
これらのビニル系単量体の中では、ポリカーボネート樹脂(A)との相溶性が高く、耐擦傷性効果に優れる点で、スチレン系単量体、特にスチレンが好ましく、スチレン単独、あるいはスチレンと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のOH基含有(メタ)アクリレート、あるいはアクリロニトリルと共重合することが好ましい。
また、ビニル系重合体セグメントの分子量は、質量平均分子量で好ましくは5,000〜500,000であることがより好ましい。ここで、質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)でポリスチレン換算として求められるものを意味する。
グラフト共重合体(B)は、さらにポリオルガノシロキサンを含有することも好ましい。ポリオルガノシロキサンを含有する場合は、グラフト共重合体(B)の主鎖あるいは側鎖として有していてもよく、またコア/シェル型等の多層構造を形成するようなグラフト共重合体の一部として含有されていてもよい。
ポリオルガノシロキサンは、特に限定されないが、例えばポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンが代表的であり、ポリジメチルジフェニルシロキサンコポリマー、ポリジメチルフェニルメチルシロキサンコポリマー、ポリメチルフェニルジフェニルシロキサンコポリマー等が挙げられる。中でも、ジアルキルシロキサン単位、特にはジメチルシロキサン単位を構成単位として含有する重合体が好ましい。
また、ポリオルガノシロキサンとしては、ビニル基を含有するシロキサンを構成成分として含有するものが好ましい。ビニル基を含有するシロキサンは、よく知られており、ビニル基を含有し、これにオルガノシロキサンがシロキサン結合を介して結合したものである。
グラフト共重合体(B)中に占めるポリエチレン系重合体セグメントの割合は、50〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは60〜90質量%であり、さらに好ましくは65〜80質量%である。ビニル系重合体セグメントの割合は好ましくは、5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは20〜35質量%である。
また、さらにポリオルガノシロキサンセグメントを含有する場合の含有量は、0.5〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%であり、さらに好ましくは2〜10質量%である。但し、ポリオルガノシロキサンセグメントを含有する場合には、ポリエチレン系重合体セグメント、ビニル系重合体セグメント及びポリオルガノシロキサンセグメントを合わせて100質量%とする。
グラフト共重合体(B)は、JIS K7121に準拠し示差走査熱量計(DSC)により測定される吸熱ピークを100℃以下に有することが好ましい。吸熱ピーク温度を100℃以下であることにより、ポリカーボネート樹脂に配合した際の爪での耐傷付き性、鉛筆硬度試験における低硬度での僅かな傷付き性が良好となり、黒色化剤を入れた場合には、漆黒性も向上するため好ましい。この理由は吸熱ピーク温度が100℃以下にあることにより、ポリカーボネート樹脂との親和性の低いポリエチレン系重合体主鎖がポリカーボネート樹脂分子間に入りやすくなり、ポリカーボネート樹脂との親和性が向上し、ポリカーボネート樹脂層へのグラフト共重合体(B)相の分散良好になるためと推定される。
なお、グラフト共重合体(B)の吸熱ピークは複数あってもよく、複数ある場合でも100℃以下に吸熱ピークを有することが好ましい。吸熱ピーク温度は好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下であり、その下限は通常60℃以上である。
なお、本発明において、グラフト共重合体(B)の吸熱ピークの測定は、JIS K7121に準拠し、セイコーインスツルメント社製の示差型走査熱量計DSC7020を用い、グラフト共重合体(B)のサンプル10mgを、30℃から300℃まで10℃/分で昇温することによる観察することにより行われる。グラフト共重合体(B)としては、吸熱ピークが複数ある場合は、最も低温側の吸熱ピークの温度を測定する。
グラフト共重合体(B)を製造するには、各種の公知のグラフト共重合法のいずれの方法でもよいが、例えば、以下に示す方法による方法が挙げられる。
すなわち、前記ポリエチレン系重合体を水に懸濁させ、そこへ前記ビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物(例えば、t−ブチルペーオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート等)、重合開始剤(例えば、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペーオキシド等)を溶解した混合溶液を加え、次いで、加熱して共重合してグラフト共重合体を製造する方法である。
また、グラフト共重合体(B)は市販されておりこれらを使用することでも可能であり、例えば日油株式会社より「ノフアロイ(登録商標)KAシリーズ」として販売されており、例えば「ノフアロイ KA147」等が利用できる。
グラフト共重合体(B)の含有量は、上記したポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜12質量部、好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。0.1質量部未満の場合、爪での耐傷付き性や、鉛筆硬度試験における低硬度での僅かな傷付きの改良効果が小さくなり、12質量部を超えると、色相の悪化、機械的強度及び耐熱性の低下を招く。
[黒色化剤(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、黒色化剤(C)を含有することも好ましい。ポリカーボネート樹脂組成物による成形品は、その色バリエーションや高級品感の醸成のため、黒色化剤を配合して黒色に、特にピアノブラックといわれる漆黒色調に調色することがよく行われる。本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、グラフト共重合体(B)を含有するが、これに黒色化剤(C)を組み合わせることでピアノブラック性が著しく向上するという特徴を有する。例えば、グラフト共重合体(B)の代わりにポリテトラフルオロエチレンでは透明性が著しく低下し、黒色化剤で調色してもとてもピアノブラックといえるレベルには到達しない。
黒色化剤(C)としては、黒色無機顔料であるカーボンブラックおよび/または黒色染料を好ましく挙げることができる。
黒色化剤(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜5質量部含有するのが好ましく、より好ましくは、0.05〜2質量部、更に好ましくは0.1〜1質量部である。
黒色化剤(C)が、カーボンブラックの場合には、カーボンブラックは、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜5質量部を含有することが好ましく、0.05〜2質量部を含有することがより好ましく、0.1〜1質量部を含有することがさらに好ましい。上記下限未満であると漆黒感が得られにくく、上記上限値を超えると加熱時の熱分解による分子量低下や機械特性の低下が生じ難くなるため好ましい。
黒色化剤(C)が、黒色染料の場合にはポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜1質量部を含有することが好ましく、より好ましくは0.05〜0.8質量部、さらに好ましくは0.1〜0.6質量部である。上記範囲であると深みのある漆黒性を得ることができる。
黒色化剤(C)として、カーボンブラックと黒色染料を併せて用いる場合には、上記した通り、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜5質量部含有するように調整する。
黒色染料は、2種以上の染料の組み合わせで構成されることが好ましい。黒色染料を構成する染料としては、アンスラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、アゾ系、メチン系、キノリン系等の染料が挙げられる。これらの染料を組み合わせて使用することで、特に、より漆黒性に優れる黒色樹脂組成物を得ることが出来る。
黒色染料としては、具体的には次のような染料が例示される。
アンスラキノン系染料としては、Solvent Red 52、Solvent
Red 111、Solvent Red 149、Solvent Red 150、Solvent Red 151、Solvent Red 168、Solvent
Red 191、Solvent Red 207、Disperse Red 22、Disperse Red 60、Disperse Violet 31、Solvent Blue 35、Solvent Blue 36、Solvent Blue
63、Solvent Blue 78、Solvent
Blue 83、Solvent Blue 87、Solvent Blue 94、Solvent Blue 97、Solvent Green 3、Solvent
Green 20、Solvent Green 28、Disperse Violet 28、Solvent Violet 13、Solvent Violet 14、Solvent Violet 36等のカラーインデックスで市販されている染料が挙げられる。
ペリノン系染料としては、Solvent Orange 60、Solvent
Orange 78、Solvent Orange90、 Solvent Violet 29、Solvent Red 135、Solvent Red162、Solvent Red 179等のカラーインデックスで市販されている染料が挙げられる。
ペリレン系染料としては、Solvent Green 3、Solvent Green 5、Solvent Orange 55、Vat Red15、Vat
Orange7、F Orange240、F Red305、F Red339、F
Yellow83等のカラーインデックスで市販されている染料が挙げられる。
アゾ系染料としては、Solvent Yellow 14、Solvent Yellow 16、Solvent Yellow 21、Solvent Yellow 61、Solvent Yellow 81、Solvent Red 23、Solvent Red 24、Solvent Red 27、Solvent Red 8、Solvent Red 83、Solvent Red 84、Solvent Red 121、Solvent Red 132、Solvent Violet21、Solvent Black 21、Solvent Black 23、Solvent Black 27、Solvent Black
28、Solvent Black 31、Solvent Orange37、
Solvent Orange 40、 Solvent Orange 45等のカラーインデックスで市販されている染料が挙げられる。
メチン系染料としては、Solvent Orange 80、Solvent Yellow 93等のカラーインデックスで市販されている染料が、またキノリン系染料としては、Solvent Yellow 33、Solvent Yellow 98、Solvent Yellow 157、Disperse Yellow 54、Disperse Yellow 160等のカラーインデックスで市販されている染料が挙げられる。
黒色染料としては、中でもアンスラキノン系染料とメチン系染料とを用いることが好ましく、中でもアンスラキノン系染料としては、紫、青、緑等の濃色系染料を、そしてメチン系染料としては黄色等の明色系染料を用いることで、深みと清澄感が高く、漆黒性に優れる黒色樹脂組成物が得られるので好ましい。
黒色化剤(C)としては、カーボンブラックと黒色染料は併用して使用することが特に好ましい。併用することでピアノブラック性をより向上できるとともに、成形品の耐光性をより向上させることができる。
[ガラス繊維(D)]
本発明のポリカーボネート樹脂は、ガラス繊維(D)を含有することも好ましい。ガラス繊維を含有することで本発明のポリカーボネート樹脂組成物の剛性を著しく向上させることができる。
ガラス繊維(D)としては常用のものをいずれも用いることができる。
ガラス繊維(D)の平均繊維長は特に限定されないが、例えば0.1〜20mmの範囲で選ぶことが好ましく、0.3〜5mmであることがより好ましい。平均繊維長が0.1mm未満であると、補強効果が十分に発現しない恐れがあり、20mmを超えると、得られるポリカーボネート樹脂組成物の成形が困難になる恐れがある。
ガラス繊維(D)の平均繊維径は特に制限されないが、例えば1〜100μmの範囲で選ぶことが好ましく、より好ましくは2〜50μm、更に好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜20μmである。平均繊維径が1μm未満のガラス繊維は、製造が容易でなく、コスト高になる恐れがあり、一方100μmを超えると、ガラス繊維の引張強度が低下する恐れがある。
ガラス繊維(D)としては、長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.5〜8である扁平断面ガラス繊維を用いるのが、曲げ強度や衝撃強度の点で、また製品の外観、反り等の寸法安定の良さの点でより好ましい。扁平断面ガラス繊維の繊維断面の長径と短径の比(長径/短径)の平均値は、より好ましくは1.6〜7、さらに好ましくは1.7〜6、特に好ましくは1.8〜5である。
また、ガラス繊維(D)は、カップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いることが好ましい。表面処理剤が付着したガラス繊維は、耐久性、耐湿熱性、耐加水分解性、耐ヒートショック性に優れる傾向にあり好ましい。
表面処理剤としては、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には、例えば、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等のシラン系カップリング剤が好ましく挙げられる。これらの中では、アミノシラン系表面処理剤が好ましく、具体的には例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい例として挙げられる。
また、表面処理剤として、ノボラック型等のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等も好ましく挙げられる。中でも、ノボラック型のエポキシ樹脂がより好ましい。
シラン系表面処理剤とエポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いても複数種で用いてもよく、両者を併用することも好ましい。
ガラス繊維(D)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、10〜100質量部であり、好ましくは20〜80質量部、さらに好ましくは30〜60質量部である。
ガラス繊維(D)の含有量がこのような範囲にあって、かつポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)をそれぞれ所定の量で含有することで、流動性が向上し、さらに成形品表面へのガラス浮きを低減できるとともに、爪での耐傷付き性や、鉛筆硬度試験における低硬度での僅かな傷付きを大幅に改良するとすることができる。
[安定剤(E)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、安定剤(E)を含有することが好ましい。本発明における安定剤(E)とは、酸化防止剤、熱安定剤が上げられる。本発明においては、酸化防止剤または熱安定剤の単独での使用でも構わないが、酸化防止剤と熱安定剤の両方を併用することが好ましい。
[酸化防止剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に適用可能な酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。これらは1種のみで含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
上記の中では、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これら2つのフェノール系酸化防止剤は,BASFジャパン株式会社より、「イルガノックス(登録商標、以下同じ)1010」及び「イルガノックス1076」の名称で市販されている。
酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001〜1質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部である。酸化防止剤の含有量が0.001質量部未満の場合は抗酸化剤としての効果が不十分であり、1質量部を超える場合は効果が頭打ちとなり経済的ではない。
[熱安定剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に適用可能な熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、株式会社ADEKA製「アデカスタブ(登録商標、以下同じ)1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業株式会社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、BASFジャパン株式会社製「イルガフォス(登録商標)168」等が挙げられる。
なお、熱安定剤は、1種のみで含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。熱安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
[離型剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤を含有することも好ましい。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。また、数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。脂肪族炭化水素は単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましく、ポリエチレンワックスが特に好ましい。
なお、離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が上記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が上記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
[その他の成分]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外のその他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、上記した樹脂以外の樹脂やエラストマー、上記した以外の各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
他の樹脂添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、難燃剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A)、グラフト共重合体(B)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
溶融混練の温度は特に制限されないが、240〜320℃の範囲であることが好ましく、特に240〜300℃が好ましい。
[成形品]
上記したポリカーボネート樹脂組成物(ペレット)は、各種の成形法で成形して成形品とされる。
成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ−ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。
中でも、成形は射出成形法により行われることが好ましく、例えば、射出成形機、超高速射出成形機、射出圧縮成形機等の公知の射出成形機を用いて射出成形される。射出成形時における射出成形機のシリンダー温度は、好ましくは240〜320℃であり、より好ましくは、250〜300℃、さらに好ましくは260〜280℃である。また、射出成形時の射出速度は、好ましくは10〜1,000mm/秒であり、より好ましくは10〜500mm/秒である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の成形品は、幅広い分野に使用することが可能であり、電子電気機器やその部品、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器などの各種用途に有用であり、特に電子電気機器やOA機器、情報端末機器のハウジング部材、車輌内装部品への適用が期待できる。
電子電気機器やOA機器、情報端末機器のハウジング部材としては、パソコン、ゲーム機、テレビなどのディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳やPDA、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、記録媒体のドライブや読み取り装置などのハウジング部材が挙げられる。
車輌内装部品としては、インナードアハンドル、センターパネル、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、ラゲッジフロアボード、ドアポケット、カーナビゲーションなどのディスプレイハウジングなどが挙げられる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
以下の実施例及び比較例に使用した各原料成分は、以下の表1のとおりである。
Figure 0006853005
上記表1において、ポリカーボネート樹脂(A)として使用した(A1)及び(A2)は、それぞれ以下の製造例1、製造例2により製造した。
<製造例1:ポリカーボネート樹脂(A1)の製造>
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「BPC」と記す。)26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.79モル(5.74kg)を、撹拌機及び溜出凝縮装置付きのSUS製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(CsCO)を、BPC1モルに対し1.5×10−6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを溜出させた。
次に、反応器内を60分かけて温度を284℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに60分間反応を続け重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の攪拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は289℃、攪拌動力は0.75kWであった。
次に、溶融状態のままの反応液を2軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp−トルエンスルホン酸ブチルを2軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を2軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断してカーボネート樹脂のペレットを得た。
得られたポリカーボネート樹脂(A1)の物性は以下の通りであった。
鉛筆硬度:2H
粘度平均分子量(Mv):22,000
<製造例2:ポリカーボネート樹脂(A2)の製造>
BPC26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.79モル(5.74kg)を、撹拌機および溜出凝縮装置付きのSUS製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(Cs2CO3)を、BPC1モルに対し1.5×10−6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを溜出させた。
次に、反応器内を60分かけて温度を284℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに60分間反応を続け重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の攪拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は289℃、攪拌動力は1.00kWであった。
次に、溶融状態のままの反応液を2軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp−トルエンスルホン酸ブチルを2軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を2軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断してポリカーボネート樹脂のペレットを得た。
得られたポリカーボネート樹脂(A2)の物性は以下の通りであった。
鉛筆硬度:2H
粘度平均分子量(Mv):26,000
(実施例1〜10、比較例1〜10)
上記表1に記載した各成分を、下記の表2〜表4に示す割合(全て質量部にて表示)にて配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製TEX30α)を用いて、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量25kg/hrにて押出機上流部のバレルより押出機にフィードし、溶融混練してポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、ガラス繊維はサイドフィードにより供給した。
[単位時間あたり流出量:Q値(単位:×10−2cm/sec)]
上記の方法で得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、JIS K7210付属書Cに記載の方法に準拠し、高架式フローテスターを用いて、280℃の温度、荷重160kgf/cmの条件下で組成物の単位時間あたりの流出量Q値(単位:×10−2cm/sec)を測定し、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。
なお、表中、「Q値」と表記する。
[鉛筆硬度の測定]
上記と同様にして、平板状試験片(90mm×50mm×2mm厚)を作製した。この平板状試験片について、ISO 15184に準拠し、鉛筆硬度試験機(東洋精機株式会社製)を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
[低鉛筆硬度での僅かな傷付きの有無の判定]
上記平板状試験片を用いて、3B〜3Hの各硬度の鉛筆による鉛筆硬度測定を行った際に、僅かな傷付きの発生の有無を目視および顕微鏡(50倍拡大)にて確認し、以下の基準で判定した。
◎:僅かな傷の発生が全く確認されない。
○:目視では僅かな傷が確認できないが、顕微鏡(50倍拡大)では僅かな傷の発生が僅かに確認される。
×:傷の発生が明らかに確認できる。
[爪による傷付き性の評価]
上記平板状試験片(90mm×50mm×2mm厚)の表面に、マニキュアなし無垢の爪の爪先を立てて擦り、以下の目視判定により、爪による傷付き性の評価を行った。
○:強く擦っても傷の発生が全く確認されない。
△:強く擦ると傷が発生することが確認される。
×:傷が発生していることが明らかに確認できる。
[漆黒性評価]
上記平板状試験片(90mm×50mm×2mm厚)の外観を、目視にて観察し、漆黒性の評価を行い、以下の基準で判定した。
○:高い光沢性と深い漆黒性を呈する。
△:光沢性や深い漆黒性が上記に比べやや劣る。やや白っぽい。
×:光沢性や漆黒性が著しく低い。
以上の評価結果を以下の表2〜表4に示す。
Figure 0006853005
Figure 0006853005
Figure 0006853005
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、爪での耐傷付き性に優れ、鉛筆硬度試験における低硬度での僅かな傷付きも解消する、耐擦傷性に優れたポリカーボネート樹脂材料であるので、特に電子電気機器やOA機器、情報端末機器のハウジング部材、車輌内装部品への適用等の部品に好適に利用でき、産業上の利用性は非常に高いものがある。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で表される構造単位を含むポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、ポリエチレン系重合体を主鎖としビニル系重合体セグメントを側鎖とするグラフト共重合体(B)0.1〜12質量部、黒色化剤(C)0.01〜5質量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 0006853005
    (一般式(1)中、Rはメチル基、R及びRはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を、Xはアルキレン基又はアルキリデン基を示す。)
  2. グラフト共重合体(B)が、ポリエチレン系重合体主鎖にスチレン系重合体セグメントを側鎖とするグラフト共重合体である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. グラフト共重合体(B)が、少なくともポリエチレン系重合体セグメント50〜95質量%およびビニル系重合体セグメント5〜50質量%からなるグラフト共重合体である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. グラフト共重合体(B)が、さらにポリオルガノシロキサンセグメントを、0.5〜30質量%含有するグラフト共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. グラフト共重合体(B)が、JIS K7121に準拠し示差走査熱量計(DSC)により測定される吸熱ピークを100℃以下に有する請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 黒色化剤(C)が、黒色染料及び/又はカーボンブラックである請求項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  7. さらに、ガラス繊維(D)を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、10〜100質量部を含有する請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  8. ガラス繊維(D)が、その長径/短径比で示される扁平率が1.5〜8である扁平ガラス繊維を含有する請求項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物の成形品。
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