JP2018044128A - ディスプレイ用成形品及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面硬度と耐衝撃性、及び透明性と低複屈折性に優れ、視認性に優れたディスプレイ用成形品及びその製造方法を提供する。【解決手段】下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(A1)及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A2)の合計100質量部に対し、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物またはその誘導体を共重合成分とするスチレン系共重合体(B)10〜100質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物の押出成形体からなることを特徴とするディスプレイ用成形品。【化1】【選択図】なし

Description

本発明は、ディスプレイ用成形品及びその製造方法に関し、詳しくは、表面硬度と耐衝撃性、及び透明性と低複屈折性に優れ、視認性に優れたディスプレイ用成形品及びその製造方法に関する。
液晶ディスプレイは今や一般的に使用され、例えば、スマートホン等のタブレット型の各種携帯端末、タブレット型パーソナルコンピューター、自動車用のカーナビやカーオーディオ等に広く利用されている。
本出願人は、特許文献1にて、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンに代表される二価フェノール由来のポリカーボネート樹脂(A)にスチレン系樹脂(B)を含有するポリカーボネート樹脂組成物を射出成形した静電容量型タッチパネルが、複屈折や外観不良の問題がなく、タッチ表面の硬度が高く、視認に要する時間を短縮でき、手指の触覚で入力可能な操作性に優れることを提案した。
特開2015−143985号公報
しかしながら、例えば携帯電話などのディスプレイ前面板等は、近年益々薄肉軽量化されており、これらを射出成形して製造することは難しくなりつつある。
本発明の目的(課題)は、薄肉のフィルムやシートが成形できる押出成形において、表面硬度と耐衝撃性、及び透明性と低複屈折性に優れ、視認性に優れたディスプレイ用成形品及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定のポリカーボネート樹脂を組み合わせた上で、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物等を共重合成分とするスチレン系共重合体、好ましくはさらに特定のグラフト共重合体を含有するポリカーボネート樹脂組成物を押出成形することにより、表面硬度と耐衝撃性、及び透明性と低複屈折性に優れ、視認性に優れたディスプレイ用成形品が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、以下のディスプレイ用成形品及びその製造方法を提供する。
[1]下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(A1)及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A2)の合計100質量部に対し、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物またはその誘導体を共重合成分とするスチレン系共重合体(B)10〜100質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物の押出成形体からなることを特徴とするディスプレイ用成形品。
(一般式(1)中、Rはメチル基、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
のいずれかを示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子Cと結合し、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の脂環式炭化水素を形成する基を示す。)
[2]さらに、ポリカーボネート重合体主鎖にビニル系重合体セグメントを側鎖とするグラフト共重合体(C)を、ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)の合計100質量部に対し、3〜50質量部を含有する上記[1]に記載の成形品。
[3]スチレン系共重合体(B)中のα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体の量が、1〜35質量%である上記[1]に記載の成形品。
[4]ポリカーボネート樹脂(A1)とポリカーボネート樹脂(A2)の含有量の質量比(A1)/(A2)が、0.5〜10である上記[1]に記載の成形品。
[5]前記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(A1)及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A2)の合計100質量部に対し、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系共重合体(B)10〜100質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物を押出成形することを特徴とするディスプレイ用成形品の製造方法。
本発明の成形品は、表面硬度と耐衝撃性、及び透明性と低複屈折性に優れ、視認性に優れるので、ディスプレイ用の成形品に好適であり、本発明の製造方法によれば、かかる成形品を安定して容易に製造することができる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
本発明のディスプレイ用成形品は、前記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(A1)及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A2)の合計100質量部に対し、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物またはその誘導体を共重合成分とするスチレン系共重合体(B)10〜100質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物の押出成形体からなることを特徴とする。
また、本発明のディスプレイ用成形品の製造方法は、前記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(A1)及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A2)の合計100質量部に対し、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系共重合体(B)10〜100質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物を押出成形することを特徴とする。
[ポリカーボネート樹脂(A1)]
本発明に使用するポリカーボネート樹脂(A1)は、下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂である。
(一般式(1)中、Rはメチル基、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
のいずれかを示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子Cと結合して置換基を有していてもよい炭素数6〜12の脂環式炭化水素を形成する基を示す。)
上記一般式(1)において、Rはメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であるが、R及びRは特には水素原子であることが好ましい。
また、Xは、
である場合、R及びRの両方がメチル基であるイソプロピリデン基であることが好ましく、また、Xが、
の場合、Zは、上記一般式(1)中の2個のフェニル基と結合する炭素原子Cと結合して、炭素数6〜12の二価の脂環式炭化水素基を形成するが、二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。置換されたものとしては、これらのメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シキロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5−トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A1)としての好ましい具体例としては、以下のイ)〜ニ)のポリカーボネート樹脂が挙げられる。
イ)2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン構造単位を有するもの、即ちRがメチル基、RとRが水素原子、Xがイソプロピリデン基である構造単位を有するもの、
ロ)2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン構造単位、即ちRがメチル基、RとRが水素原子、Xがシクロドデシリデン基である構造単位を有するもの。
ハ)2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン構造単位、即ちRがメチル基、RとRがメチル基、Xがイソプロピリデン基である構造単位を有するもの、
ニ)2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン構造単位、即ちRがメチル基、RとRが水素原子、Xがシクロヘキシリデン基である構造単位を有するもの、
これらの中で、より好ましくは上記イ)、ロ)またはハ)、さらに好ましくは上記イ)またはロ)、特には上記イ)のポリカーボネート樹脂が好ましい。
これらポリカーボネート樹脂(A1)は、それぞれ、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを、ジヒドロキシ化合物として使用して製造することができる。
ポリカーボネート樹脂(A1)は、上記一般式(1)以外の他のカーボネート単位を有する共重合ポリカーボネート樹脂であってもよい。他のカーボネート単位のため原料のジヒドロキシ化合物としては、例えば、以下のような芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル等が挙げられる。
共重合ポリカーボネート樹脂とする場合は、上記一般式(1)で表される構造単位が50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、中でも90質量%以上、特には95質量%以上であることが好ましい。
またポリカーボネート樹脂(A1)は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂(A1)とポリカーボネート樹脂(A2)とは、異なる樹脂であって、ポリカーボネート樹脂(A1)は、共重合単位としてビスフェノールA由来単位を含んでいる場合でも、上記一般式(1)で表される構造単位を有する限り、ポリカーボネート樹脂(A1)として扱われる。ポリカーボネート樹脂(A1)がビスフェノールA由来のカーボネート構造単位を共重合成分を含有する場合、ポリカーボネート樹脂(A1)中のビスフェノールA由来の成分は50モル%未満であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、中でも10質量%以下、特には5質量%以下であることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A1)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂(A1)の粘度平均分子量(Mv)は、16,000〜28,000であることが好ましい。粘度平均分子量がこの範囲であると、成形性が良く、機械的強度が大きく、耐擦傷性のよいディスプレイ用成形品が得られやすく、16,000を下回ると、耐面衝撃性が著しく低下しやすいためディスプレイ用成形品としての使用が難しくなりやすく、28,000を超えると溶融粘度が増大し押出成形が困難となりやすくなったり、所定の溶融粘度にするために押出機のシリンダー温度を上昇させ、樹脂温度を低下させた際、押出成形品が黄色化したり、ゲル状異物等が発生したりし、成形品の外観が損なわれやすくなる。ポリカーボネート樹脂(A1)の分子量の下限は、より好ましくは17,000、さらに好ましくは18,000、特に好ましくは20,000であり、その上限はより好ましくは27,000である。
なお本明細書において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてジクロロメタンを使用し、ウベローデ粘度計を使用し、温度20℃での極限粘度([η])(単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式:η=1.23×10−40.83の式から算出される値を意味する。
ポリカーボネート樹脂(A1)を製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。これらの中でも、界面重合法、溶融エステル交換法が好ましい。
[ポリカーボネート樹脂(A2)]
本発明に使用するビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A2)は、原料のジヒドロキシ化合物として、ビスフェノールA、すなわち2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとカーボネート前駆体とから製造されるものである。
ポリカーボネート樹脂(A2)は、ビスフェノールA以外の他のジヒドロキシ化合物を併用した共重合ポリカーボネート樹脂であってもよい。ビスフェノールA以外の他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、以下のような芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル等が挙げられる。
共重合ポリカーボネート樹脂とする場合は、ビスフェノールA由来の成分が50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、中でも90質量%以上、特には95質量%以上であることが好ましい。
またポリカーボネート樹脂(A2)は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。
ポリカーボネート樹脂(A2)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂(A2)の粘度平均分子量(Mv)は、15,000〜30,000であることが好ましい。粘度平均分子量がこの範囲であると、成形性が良く、機械的強度が大きく、耐擦傷性のよいディスプレイ用成形品が得られやすく、15,000を下回ると、耐面衝撃性が著しく低下しやすいためディスプレイ用成形品としての使用が難しくなりやすく、30,000を超えると溶融粘度が増大し押出成形が困難となりやすくなったり、所定の溶融粘度にするために押出機のシリンダー温度を上昇させ、樹脂温度を低下させた際、押出成形品が黄色化したり、ゲル状異物等が発生したりし、成形品の外観が損なわれやすくなる。ポリカーボネート樹脂(A1)の分子量の下限は、より好ましくは16,000、さらに好ましくは17,000であり、その上限はより好ましくは28,000である。
ポリカーボネート樹脂(A2)を製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。
ポリカーボネート樹脂(A1)とポリカーボネート樹脂(A2)の含有量は、(A1)と(A2)の含有量の質量比(A1)/(A2)で、0.5〜10であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂(A1)の質量比が、10を超えると低温での耐衝撃性が低下しやすく、0.5を下回ると鉛筆硬度が低くなったり、耐摩耗性が悪くなったりする。好ましい質量比(A1)/(A2)は、1〜9であり、より好ましくは1〜8である。
[α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物またはその誘導体を共重合成分とするスチレン系共重合体(B)]
本発明において使用するα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物またはその誘導体を共重合成分とするスチレン系共重合体(B)としては、スチレン系単量体とα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物またはその誘導体を共重合したスチレン系共重合体である。共重合の形態は制限はなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等、いかなるものであってもよい。
スチレン系単量体としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−ブチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン等で例示されるアルキル置換スチレンや、又はクロロスチレンや、ブロモスチレン等のハロゲン化スチレンが挙げられる。これらの中ではスチレンが最も好ましい。
スチレン系共重合体の共重合成分であるα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物またはその誘導体としては、(無水)マレイン酸及びこの炭素数1〜20のアルキル又はグリコールのエステル、N−マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド等のマレイミド、クロロ(無水)マレイン酸等のマレイン酸ハライド並びに(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸及びこれらの酸ハライド、アミド、イミド、炭素数1〜20のアルキル又はグリコールのエステル等が例示される。ここで「(無水)」とは、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物又はα,β−不飽和ジカルボン酸であることを示す。これらの中でも、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物又はα,β−不飽和ジカルボン酸が好ましく、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物がより好ましい。
スチレン系単量体とα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物またはその誘導体との共重合成分との組み合わせは、種々の組み合わせが可能であるが、スチレンと無水マレイン酸との組み合わせによるスチレンと無水マレイン酸共重合体が最も好ましい。
スチレン系共重合体(B)は、公知の塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法で製造されたものを用いることができる。これらの重合方法においては、必要な所定の成分を予め重合時に仕込む方法をとっても良いし、後から所定成分を逐次添加をする方法を用いても良い。また、重合反応後に、共重合体成分について、アミド化やイミド化等を行ったものを使用しても差し支えない。
スチレン系共重合体(B)の質量平均分子量は、30000〜350000であることが好ましく、より好ましくは35000〜300000であり、40000〜270000であることがさらに好ましい。
スチレン系共重合体(B)において使用されるα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物またはその誘導体の量は、スチレン系共重合体(B)100質量%中、1〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜30質量%である。
スチレン系共重合体(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)の合計100質量部に対し、10〜100質量部である。このような範囲でスチレン系共重合体(B)を含有するポリカーボネート樹脂組成物は複屈折が改善され、これを押出成形して得たディスプレイ用成形品は耐擦傷性に優れ、複屈折が生じにくく、視認性に優れたディスプレイ用成形品となる。
スチレン系共重合体(B)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)の合計100質量部に対し、20質量部以上であり、より好ましくは25質量部以上、また、好ましくは80質量部以下であって、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。
[ポリカーボネート重合体主鎖にビニル系重合体セグメントを側鎖とするグラフト共重合体(C)]
本発明においては、さらに、ポリカーボネート重合体主鎖にビニル系重合体セグメントを側鎖とするグラフト共重合体(C)を含有することが好ましい。
グラフト共重合体(C)は、ポリカーボネート重合体主鎖とビニル系重合体セグメントから構成される。ポリカーボネート重合体主鎖は、上記したポリカーボネート樹脂(A1)、(A2)と同様の製法、即ち界面重合法、ピリジン法、クロロホルメ−ト法等溶液法や溶融エステル交換法で製造される。ポリカーボネート重合体主鎖の粘度平均分子量は2000〜100000が好ましく、5000〜50000がさらに好ましく、6000〜30000が特に好ましい。
ポリカーボネート重合体主鎖の製造に使用する二価フェノ−ル系化合物として好ましいものは、具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エ−テル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン等が例示される。
ポリカーボネート重合体主鎖は、反応性の不飽和末端基を有するポリカーボネート重合体を用いることも好ましい。この不飽和末端基を有するポリカーボネート重合体の製法は、分子量調整剤または末端停止剤として、二重結合を有する一官能化合物を用い、上記したような方法で製造される。
不飽和末端基を導入するための二重結合を有する一官能基化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、9−デセン酸、9−ウンデセン酸などの不飽和カルボン酸、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、ソルビン酸クロライド、アリルアルコ−ルクロロホルメート、イソプロペニルフェノールクロロホルメートまたはヒドロキシスチレンクロロホルメートなどの酸クロライドまたはクロロホルメート;イソプロペニルフェノ−ル、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシフェニルマレイミド、ヒドロキシ安息香酸アリルエステルまたはヒドロキシ安息香酸メチルアリルエステルなどの不飽和酸を有するフェノール類等が挙げられる。これらの化合物は従来の末端停止剤と併用してもよいものであり、上記した二価フェノール系化合物1モルに対して、通常、1〜25モル%、好ましくは1.5〜10モル%の範囲で使用される。
ポリカーボネート重合体主鎖は、分岐化剤を、二価フェノール系化合物に対して好ましくは0.01〜3モル%、特に0.1〜1モル%の範囲で併用して分岐化ポリカーボネート重合体とすることも好ましい。このような分岐化剤としては、フロログリシン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、1,3,5−トリ(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノ−ル、α,α’,α”−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼンなどで例示されるポリヒドロキシ化合物、および3,3−ビス(4−ヒドロキシアリ−ル)オキシインド−ル(即ち、イサチンビスフェノ−ル)、5−クロルイサチン、5,7−ブロムイサチン、5−ブロムイサチンなどが例示される。
グラフト共重合体(C)を構成するビニル系重合体セグメントとは、好ましくは、スチレン、核置換スチレン、α−置換スチレンなどの芳香族ビニル単量体、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル単量体、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド単量体からなる群から選択される1種以上の単量体を重合して得られるビニル系重合体セグメントが挙げられる。
グラフト共重合体(C)中のビニル系重合体セグメントの数平均重合度は10〜5000が好ましく、100〜2000がさらに好ましい。
グラフト共重合体(C)中のポリカーボネート重合体の割合は、5〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がさらに好ましく、50〜80質量%が特に好ましい。ビニル系重合体セグメントは95〜5質量%が好ましく、70〜10質量%がさらに好ましく、50〜20質量%が最も好ましい。
グラフト共重合体(C)を製造する際のグラフト化法は、一般によく知られている連鎖移動法、電離性放射線照射法等いずれの方法によってもよい。
グラフト共重合体(C)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)の合計100質量部に対し、3〜50質量部である。このような範囲でグラフト共重合体(C)を含有することで、複屈折が改善され、これを押出成形して得たディスプレイ用成形品は複屈折が生じにくく、視認性に優れたディスプレイ用成形品となる。
グラフト共重合体(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)の合計100質量部に対し、より好ましくは4質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、また、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましく30質量部以下、特に好ましくは25質量部以下である。
特に、グラフト共重合体(C)を含有することで、押出成形時に生起しやすいポリカーボネート樹脂(A1、A2)とスチレン系共重合体(B)の相分離を抑制し、ドメインサイズを小さくすることができるため、押出した際の透明性の低下、特にヘイズの上昇を低減させ、視認性は低下することなく、また、低複屈折性は低下することなく、耐衝撃性(裂け性)を向上させることができる。このため、グラフト共重合体(C)を含有する場合には、スチレン系共重合体(B)の含有量を多くしてヘイズや視認性、低複屈折性をより向上させることが可能となる。
したがって、グラフト共重合体(C)の含有量を、ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)の合計100質量部に対し、3〜50質量部、好ましくは4〜40質量部とし、スチレン系共重合体(B)は10〜100質量部、好ましくは10〜80質量部とすることが好ましい。
[その他の成分]
さらに、必要に応じて、上記以外のその他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、上記した以外の樹脂、各種樹脂添加剤などが挙げられる。
樹脂添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
[熱安定剤]
熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
なお、熱安定剤は、1種のみで含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。熱安定剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
[酸化防止剤]
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
なお、酸化防止剤は、1種のみで含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
[離型剤]
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
なお、上述した離型剤は、1種のみで含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、ポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製(商品名、以下同じ)「シーソーブ701」、「シーソーブ702」、「シーソーブ703」、「シーソーブ704」、「シーソーブ705」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、ADEKA社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、BASF社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、耐候性の改良効果が乏しく、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こしやすい。
なお、紫外線吸収剤は、1種のみで含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造]
ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A1)、(A2)及びスチレン系共重合体(B)、並びに、必要に応じて配合されるグラフト共重合体(C)等のその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
[ディスプレイ用成形品の押出成形]
本発明のディスプレイ用成形品は、上記したポリカーボネート樹脂組成物を押出成形することにより製造される。具体的には、上述の方法等で調製したポリカーボネート樹脂組成物をペレット化した後、これを押出成形する方法、または溶融混練して得られたポリカーボネート樹脂組成物を、ペレット化せずに直接、押出成形する方法などが、好ましい例として挙げられる。
ペレット化されたポリカーボネート樹脂を使用する場合には、該ペレットを好ましくは約60〜130℃で、2〜10時間程度乾燥した後、押出成形に供するとよい。乾燥条件は、好ましくは約70〜120℃で、2〜10時間である。
ペレット化された、または溶融状態のポリカーボネート樹脂組成物は、通常、脱揮装置付き押出機で特定の形状に押出成形される。
続いて、シリンダーとダイス温度を好ましくは240〜320℃、より好ましくは250〜310℃として、好ましくはロール温度40〜140℃程度でシート状或いは平板状に成形する。
ディスプレイ用成形品は、例えば5μm〜8mm厚程度のシート状或いは平板状であって、好ましくは10μm〜7mm、さらに好ましくは15μm〜6mmである。
[ディスプレイ用成形品]
このようにして得られる本発明のディスプレイ用成形品は、表面硬度と耐衝撃性、及び透明性と低複屈折性に優れ、視認性に優れる。
本発明のディスプレイ用成形品は、スマートホン等のタブレット型の各種携帯端末、パーソナルコンピューター、ゲーム機、カーナビゲーションやカーオーディオ等の液晶ディスプレイ或いは有機ELディスプレイ、フラットパネルディスプレイ等の表示装置のディスプレイ前面板或いはカバーとして特に好適に用いることができる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
以下の実施例及び比較例に使用した各原料成分は、以下の表1のとおりである。
なお、上記ポリカーボネート樹脂(A1)として使用したポリカーボネート樹脂(A1−1)及びポリカーボネート樹脂(A1−2)は、それぞれ以下の製造例1及び2により製造した。
<製造例1:ポリカーボネート樹脂(A1−1)の製造>
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「BPC」と記す。)26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.79モル(5.74kg)を、撹拌機及び溜出凝縮装置付きのSUS製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(CsCO)を、BPC1モルに対し1.5×10−6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを溜出させた。
次に、反応器内を60分かけて温度を284℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに60分間反応を続け重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の攪拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は289℃、攪拌動力は1.00kWであった。
次に、溶融状態のままの反応液を2軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp−トルエンスルホン酸ブチルを2軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を2軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断してカーボネート樹脂のペレットを得た。
得られたポリカーボネート樹脂(A1−1)の物性は、以下の通りであった。
鉛筆硬度:2H
粘度平均分子量(Mv):26000
<製造例2:ポリカーボネート樹脂(A1−2)の製造>
BPC26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.79モル(5.74kg)を、撹拌機および溜出凝縮装置付きのSUS製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。 次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(CsCO)を、BPC1モルに対し1.5×10−6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを溜出させた。
次に、反応器内を60分かけて温度を284℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに60分間反応を続け重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の攪拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は289℃、攪拌動力は0.75kWであった。 次に、溶融状態のままの反応液を2軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp−トルエンスルホン酸ブチルを2軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を2軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断してポリカーボネート樹脂のペレットを得た。
得られたポリカーボネート樹脂(A1−2)の物性は、以下の通りであった。 鉛筆硬度:2H 粘度平均分子量(Mv):22000
(実施例1〜33、比較例1〜2)
上記表1に記載した各成分を、下記の表2以下に示す割合(全て質量部にて表示)にて配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製TEM−26SX)を用いて、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hrにて押出機上流部のバレルより押出機にフィードし、溶融混練してポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを100℃で6時間乾燥し、先端に幅が20cmのTダイを据え付けた単軸押出機(池貝製FS40)を用い、シリンダーとTダイ温度280℃、鏡面仕上げの引取りロール温度40℃にて、押出成形を行い、厚さ150μmと2mmの平板上シートをそれぞれ作成した。
(比較例3)
得られたペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55−60H」)を用い、シリンダー設定温度280℃、金型温度80℃、スクリュー回転数100rpm、射出速度200mm/秒の条件下にて、90mm×50mm×2mm厚の平板状試験片を射出成形した。一方、90mm×50mm×150μm厚の平板状試験片を射出成形しようとしたが、金型内に樹脂が充填せず、不可能であった。
[MVR(メルトボリュームレイト)]
上記で得られたペレットを100℃で4時間以上乾燥した後、ISO1133に準拠して、測定温度300℃、測定荷重1.2kgf(11.8N)の条件で、MVR(単位:cm/10分)測定した。
[鉛筆硬度]
前記で得られた厚さ2mmの平板状試験片を用い、JIS K5600−5−4に準拠し、鉛筆硬度試験機(東洋精機株式会社製)を用いて、750g荷重にて鉛筆硬度を測定した。
[シャルピー衝撃強度]
前記で得られたペレットを100℃で6時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55−60H」)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、スクリュー回転数100rpmの条件にて、射出速度50mm/secで射出成形したISO多目的試験片(3mm厚)について、ノッチなしシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。
[落球衝撃試験]
前記で得られた厚さ2mmの平板状試験片に、直径6cm、重さ1.05kgの鉄球を、1.8mの高さから落下させ、試験片の割れの状態を判定した。割れが無いものを「○」、ひび割れたものを「×」とした。
[透明性評価:ヘイズ]
前記で得られた厚さ2mmの平板状試験片を用い、日本電色工業社製のNDH−4000型ヘイズメーターでヘイズ(単位:%)を測定した。
[液晶パネル視認性]
前記で得られた厚さ150μmと2mmの平板状試験片を、液晶パネルと平行に10cm離して設置し、液晶パネルに文字を表示し、平板状試験片から平行に20cm離れた距離から液晶パネルを目視し、視認性を判定した。はっきりと視認できるものを「○」、できないものを「×」とした。
[レターデーションの測定]
前記で得られた厚さ2mmの平板状試験片を用い、ワイドレンジ2次元複屈折評価システム(フォトニックラティス社製、型式:WPA−100)を用いた3波長測定(波長523,543,575nm)により、位相差(単位:nm)を測定した。
以上の評価結果を以下の表2以下に示す。
本発明のディスプレイ用成形品は、表面硬度と耐衝撃性、及び透明性と低複屈折性に優れ、視認性に優れるので、また、本発明の製造方法によれば、かかる成形品を安定して容易に製造することができるので、産業上の利用性は高いものがある。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(A1)及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A2)の合計100質量部に対し、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物またはその誘導体を共重合成分とするスチレン系共重合体(B)10〜100質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物の押出成形体からなることを特徴とするディスプレイ用成形品。
    (一般式(1)中、Rはメチル基、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
    のいずれかを示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子Cと結合し、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の脂環式炭化水素を形成する基を示す。)
  2. さらに、ポリカーボネート重合体主鎖にビニル系重合体セグメントを側鎖とするグラフト共重合体(C)を、ポリカーボネート樹脂(A1)及び(A2)の合計100質量部に対し、3〜50質量部を含有する請求項1に記載の成形品。
  3. スチレン系共重合体(B)中のα,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体の量が、1〜35質量%である請求項1に記載の成形品。
  4. ポリカーボネート樹脂(A1)とポリカーボネート樹脂(A2)の含有量の質量比(A1)/(A2)が、0.5〜10である請求項1に記載の成形品。
  5. 前記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(A1)及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A2)の合計100質量部に対し、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸無水物或いはその誘導体を共重合成分とするスチレン系共重合体(B)10〜100質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物を押出成形することを特徴とするディスプレイ用成形品の製造方法。
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