JP2013043908A - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品 - Google Patents

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章人 岡元
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Abstract

【課題】耐薬品性に優れ、表面硬度が高く且つ硬度低下の少ないポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品を提供する。
【解決手段】芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を61〜99質量%とポリエステル樹脂(B)を39〜1質量%(ただし、(A)と(B)の合計は100質量%)含有し、上記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、
芳香族ビニル系単量体(c1)、シアン化ビニル単量体(c2)、メタクリル酸メチル単量体(c3)及び共重合可能なその他の単量体(c4)から選ばれた単量体を、(c1)、(c2)、(c3)を必須成分としてグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(C)1〜30質量部、
アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系共重合体(D)1〜20質量部、
鉛筆硬度がFより高いポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)を10〜60質量部を含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品に関し、詳しくは、耐薬品性に優れ、表面硬度が高く且つ硬度低下の少ない芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、強靭で耐衝撃性や電気的特性に優れ、しかも、得られる成形品は寸法安定性等にも優れることから、電気・電子機器のハウジング類、自動車用内装部品類、または、精密成形部品類の製造用原料樹脂として広く使用されている。特に、家電機器、電子機器、液晶ディスプレイ表示機器の筐体等においては、その美麗な外観を活かし、商品価値の高い商品が得られる。
しかし、ポリカーボネート樹脂は、耐薬品性に問題があり、有機溶媒に接触するとクラックが発生したり、特に塩基性の化合物の存在下ではポリカーボネート樹脂の加水分解が起きやすく成形品表面が白濁し表面光沢が低下する等の欠点を有しており、用途によってはこれが大きな問題となる。例えば、自動車の内装のセンターコンソールパネル、カーナビケーション、あるいはまた、パソコンや携帯端末(電話)等では、ユーザー側で艶出し剤やクリーナー等を使用することもあるが、これらが有機溶剤や塩基性化合物を含む場合には逆に表面外観を損ってしまう可能性がある。
そこで、ポリカーボネート樹脂のこのような欠点を解消するために、芳香族ポリカーボネート樹脂にポリエチレンテレフタレート樹脂を配合して耐薬品性を改良することが提案されている(特許文献1)。しかし、このような単にポリエステル樹脂を配合したものは、耐衝撃性が十分ではない。
そこで、特許文献2には、芳香族ポリカーボネート樹脂にポリエステル樹脂とアクリルエラストマーとを配合して、耐衝撃性を改善する方法が提案されている。しかしながら、この樹脂組成物は、硬度と耐薬品性がある程度向上するものの、そのいずれにも十分優れたポリカーボネート樹脂材料というには不十分である。
さらに、特許文献3には、ポリカーボネート樹脂10〜60質量%とポリエステル樹脂90〜40質量%からなる基材樹脂100質量部に、アクリル系樹脂0.1〜10質量部及び衝撃補強剤1〜30質量部からなるポリエステル/ポリカーボネートアロイ樹脂組成物が提案され、耐衝撃性、耐熱性、射出成形表面の外観に優れることが記載されている。しかしながら、本発明者らの検討によれば、射出成形品の初期外観は必ずしも十分ではなく、耐熱性が著しく低下し、成形品のヒケが目立つ問題があった。
このように、今までに提案された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、耐薬品性と表面硬度の両方に十分優れるといえるものではなかった。
特公昭36−14035号公報 特公昭62−37671号公報 特開2010−144173号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、耐薬品性に優れ、表面硬度が高く且つ硬度低下の少ない芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、それからなる成形品、および成形品の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、芳香族ビニル系単量体(c1)、シアン化ビニル単量体(c2)、メタクリル酸メチル単量体(c3)及び共重合可能なその他の単量体(c4)から選ばれた単量体を、(c1)、(c2)及び(c3)を必須成分としてグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(C)と、アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系樹脂(D)と、特定の硬度を有するポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)と、さらにポリエステル樹脂(B)とを、ポリカーボネート樹脂(A)にそれぞれ特定量組み合わせて配合することにより、耐薬品性に優れ、表面硬度が高く且つ硬度低下の少ない芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が初めて得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂成形品を提供する。
[1]芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を61〜99質量%とポリエステル樹脂(B)を39〜1質量%(ただし、(A)と(B)の合計は100質量%)含有し、上記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、
芳香族ビニル系単量体(c1)、シアン化ビニル単量体(c2)、メタクリル酸メチル単量体(c3)及び共重合可能なその他の単量体(c4)から選ばれた単量体を、(c1)、(c2)、(c3)を必須成分としてグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(C)を1〜30質量部、
アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系共重合体(D)を1〜20質量部、
鉛筆硬度がFより高いポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)を10〜60質量部
含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[2]アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系共重合体(D)が、アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン−メチルメタアクリレート系共重合体であることを特徴とする上記[1]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[3]ポリエステル樹脂(B)が、ポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする上記[1]または[2]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[4]コア/シェル型グラフト共重合体系エラストマー(F)を、前記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、1〜10質量部含有することを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[5]紫外線吸収剤(G)を、前記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、0.1〜1質量部含有することを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物から得られたポリカーボネート樹脂成形品。
[7]成形品が、携帯端末機器用またはカーナビゲーション用筐体であることを特徴とする上記[6]に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
[8]成形品が、自動車内装用部品であることを特徴とする上記[6]に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、耐薬品性に優れ、表面硬度が高く且つ硬度低下が少なく、高光沢で、外観や耐衝撃性にも優れるポリカーボネート樹脂材料であるので、表面に塗装を要しない無塗装品としても通用するレベルのポリカーボネート樹脂成形品を提供することができる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
[1.概要]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を61〜99質量%とポリエステル樹脂(B)を39〜1質量%(ただし、(A)と(B)の合計は100質量%)含有し、上記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、
芳香族ビニル系単量体(c1)、シアン化ビニル単量体(c2)、メタクリル酸メチル単量体(c3)及び共重合可能なその他の単量体(c4)から選ばれた単量体を、(c1)、(c2)及び(c3)を必須成分としてグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(C)を1〜30質量部、
アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系共重合体(D)を1〜20質量部、鉛筆硬度がFより高いポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)を10〜60質量部
含有することを特徴とする。
[2.芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、その種類に制限は無く、また、1種のみを用いてもよく、2種以上を、任意の組み合わせ及び任意の比率で、併用してもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、一般式−(−O−X−O−C(=O)−)−で示される炭酸結合を有する基本構造の重合体である。式中、Xは、一般には炭化水素であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂とは、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素であるポリカーボネート樹脂をいう。芳香族ポリカーボネートは、各種ポリカーボネートのなかでも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、優れている。
芳香族ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限は無いが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなる芳香族ポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしても良い。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いても良い。また芳香族ポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、芳香族ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単独重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このような芳香族ポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、以下のとおりである。
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;等が挙げられる。
これらのなかでもビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、なかでもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
・芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。以下、これらの方法のうち特に好適なものについて、具体的に説明する。
・・界面重合法
まず、芳香族ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによって芳香族ポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体は、前述のとおりである。なお、カーボネート前駆体のなかでもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;等が挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、なかでも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になるようにコントロールするために、ビスフェノール化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、なかでも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、なかでも1:2.5以下とすることが好ましい。
重合触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分子量調節剤としては、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノール等の脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、なかでも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的に、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等のアルキル基置換フェノール;イソプロパニルフェノール等のビニル基含有フェノール;エポキシ基含有フェノール;o−オキシン安息香酸、2−メチル−6−ヒドロキシフェニル酢酸等のカルボキシル基含有フェノール;等が挙げられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分子量調節剤の使用量は、ジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
反応の際に、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート前駆体としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤はジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
・・溶融エステル交換法
次に、芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
ジヒドロキシ化合物は、前述の通りである。
一方、炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物;ジフェニルカーボネート;ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート等が挙げられる。なかでも、ジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、ジフェニルカーボネートが特に好ましい。なお、炭酸ジエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの比率は所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが好ましく、なかでも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
芳香族ポリカーボネート樹脂では、その末端水酸基量が、熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす傾向がある。このため、公知の任意の方法によって末端水酸基量を必要に応じて調整してもよい。エステル交換反応においては、通常、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率、エステル交換反応時の減圧度等を調整することにより、末端水酸基量を調整した芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。なお、この操作により、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調整することもできる。
炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端水酸基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類等が挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
溶融エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は任意のものを使用できる。なかでも、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
溶融エステル交換法において、反応温度は通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
溶融重縮合反応は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし、芳香族ポリカーボネート樹脂及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いても良い。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体等が挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
触媒失活剤の使用量は、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは5当量以下である。更には、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは20ppm以下である。
本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、粘度平均分子量[Mv]で10,000〜40,000であることが好ましい。粘度平均分子量が10,000未満では、機械的強度が十分ではなくなる傾向があり、粘度平均分子量が40,000を超えると、流動性が悪く成形性が悪くなる傾向にある。粘度平均分子量は、より好ましくは16,000〜40,000であり、さらに好ましくは18,000〜30,000である。分子量をこのような範囲に調節するには、後記するような分子量調節剤の量を制御する等の公知の方法で可能である。
ここで、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83から算出される値を意味する。また極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
Figure 2013043908
・芳香族ポリカーボネート樹脂に関するその他の事項
芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下である。これにより本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の滞留熱安定性及び色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造された芳香族ポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、芳香族ポリカーボネート樹脂の重量に対する、末端水酸基の重量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)にて行われる。
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、芳香族ポリカーボネート樹脂の1種のみを含む態様に限定されず、モノマー組成、分子量、末端水酸基濃度等が異なる芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して使用してもよい。また、芳香族ポリカーボネート樹脂に他の熱可塑性樹脂を混合したアロイ(混合物)として組み合わせて用いてもよい。
さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、芳香族ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;光学的性質を改良するためにポリスチレン等のオレフィン系構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500以上、好ましくは2,000以上であり、また、通常9,500以下、好ましくは9,000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
さらにポリカーボネート樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。前記の使用済みの製品としては、例えば、光学ディスク等の光記録媒体;導光板;自動車窓ガラス、自動車ヘッドランプレンズ、風防等の車両透明部材;水ボトル等の容器;メガネレンズ;防音壁、ガラス窓、波板等の建築部材等が挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
[3.ポリエステル樹脂(B)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いるポリエステル樹脂(B)としては、ジカルボン酸類又はその反応性誘導体からなるジカルボン酸成分と、ジオ−ル類又はそのエステル誘導体からなるジオ−ル成分とを主成分とする縮合反応により得られる重合体又は共重合体であるが、好ましくは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、これを脂肪族ジオールを主とするアルコールと重縮合反応させて得られる熱可塑性ポリエステル樹脂を用いる。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエ−テルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4’−p−タ−フェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸等が挙げられ、これらの置換体(例えば、5−メチルイソフタル酸などのアルキル基置換体など)や反応性誘導体(例えばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチルなどのアルキルエステル誘導体など)等を用いることもできる。
これらのうち、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及びそれらのアルキルエステル誘導体がより好ましく、テレフタル酸及びそのアルキルエステル誘導体が特に好ましい。これら芳香族ジカルボン酸は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよく、該芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等の1種以上併用することも可能である。
ジオ−ル類としては、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、トリエチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、デカメチレングリコ−ル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオ−ル等の脂肪族ジオ−ル類;1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,3−シクロヘキサンジメタノ−ル、シクロヘキサンジオ−ル、トランス−又はシス−2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオ−ル等の脂環族ジオ−ル類;p−キシレンジオ−ル、ビスフェノ−ルA、テトラブロモビスフェノ−ルA、テトラブロモビスフェノ−ルA−ビス(2−ヒドロキシエチルエ−テル)等の芳香族ジオ−ル類等を挙げることができ、これらの置換体も使用することができる。
これらのうち、耐熱性、寸法安定性等の点から、脂肪族ジオ−ルが好ましく、エチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ルがより好ましく、エチレングリコ−ルが特に好ましい。
ジオールは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、ジオ−ル成分として、分子量400〜6,000の長鎖ジオ−ル類、すなわちポリエチレングリコ−ル、ポリ−1,3−プロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル等の1種以上を上記ジオ−ル類と併用して共重合させてもよい。
また、ポリエステル樹脂には、パラヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸や、その他のカルボン酸、上記ジオール以外のアルコールを共重合させることができ、本発明ではこのような共重合樹脂を用いることもできる。しかしながら、このような共重合成分は少量であるのが好ましく、ポリエステル樹脂(B)の80質量%以上、更には90質量%以上が、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールからの成分であるのが好ましい。また芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールは、それぞれその80モル%以上、更には90モル%以上を1種類の化合物が占めるのが好ましい。
このようなポリエステル樹脂の好ましい具体例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。これらは共重合成分を含有していてもよい。本発明では、これらのなかでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)を用いるのが好ましく、また両者を併用するのも好ましい。なお併用する場合には、その比率はPET:PBT=1:1〜1:8(質量比)が好ましい。
ポリエチレンテレフタレートの製造するための重合触媒としては、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、スズ化合物、チタン化合物などが知られているが、本発明ではゲルマニウム化合物を触媒として重合したものを用いるのが好ましい。他の触媒で重合したものを用いると、最終的に得られるポリカーボネート樹脂との組成物の熱安定性及びリサイクル性が低下する傾向がある。触媒として用いるゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム酸化物、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトライソプロポキシドなどのゲルマニウムアルコキシド、水酸化ゲルマニウムおよびそのアルカリ金属塩、ゲルマニウムグリコレート、塩化ゲルマニウム、酢酸ゲルマニウムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、二酸化ゲルマニウムを用いるのが、得られるポリエチレンテレフタレートの耐溶剤性および熱安定性の点から好ましい。
ゲルマニウム触媒は、生成するポリエチレンテレフタレート中に、ゲルマニウム原子として15ppm〜40ppmとなるように用いるのが好ましい。15ppm未満では重合反応の進行が遅く、40ppmをこえると樹脂中に残存したゲルマニウム化合物によって副反応を生じることがある。
ポリブチレンテレフタレートとしては、チタン化合物を主触媒とし、1族金属化合物や2族金属化合物を助触媒として重合したものを用いるのが好ましい。チタン化合物としては、例えば、酸化チタン、四塩化チタン等の無機チタン化合物類;テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート類;テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート類等が挙げられる。なかでもチタンアルコラート類を用いるのが好ましい。最も好ましいのはテトラアルキルチタネート類、特にテトラブチルチタネートである。
チタン化合物は、生成するポリブチレンテレフタレート中に、チタン原子換算で20ppm〜50ppm、特に30〜40ppmとなるように用いるのが好ましい。チタン化合物の使用量が多過ぎると、生成するポリブチレンテレフタレートの色調や耐加水分解性が低下したり、チタン触媒の失活による溶液ヘイズや異物増加が生ずる場合がある。逆に少な過ぎてもポリブチレンテレフタレートの重合性が低下しやすい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に使用するポリエステル樹脂(B)の分子量としては、フェノールとテトラクロロエタンの混合溶媒(質量比=50/50)中、30℃で測定される固有粘度(Iv)が0.4〜2.0であるのが好ましい。固有粘度が0.4未満のものを用いたのでは樹脂組成物の機械的強度が劣り、逆に2.0を越えるものでは成形性が低下する傾向がある。ポリエステル樹脂の好ましい固有粘度は0.6〜1.2である。
なお、ポリエステル樹脂(B)としては、バージン品だけでなく、使用済みの製品から再生されたもの、いわゆるマテリアルリサイクルされたものも用いることもでき、また、成形に際しての不良品、スプルー、ランナーなどから再生されたものを用いることもでき、ポリエステル樹脂(B)は、このようなリサイクル材を用いることも好ましい。
[4.芳香族ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の含有割合]
本発明において、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の含有割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が少なく、ポリエステル樹脂(B)が多過ぎると、ポリエステル樹脂の結晶化により白化が著しくなり、又、成形品のヒケが目立つため外観が劣り、また、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)本来の機械的強度、耐熱性、成形加工性等が損なわれる。ポリエステル樹脂(B)が少な過ぎると、耐薬品性の改善効果が見られない。
したがって、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計を100質量%として、61〜99質量%であり、ポリエステル樹脂(B)は39〜1質量%である。好ましい含有割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が68〜99質量%、さらには79〜98質量%、ポリエステル樹脂(B)は32〜1質量%、さらには21〜2質量%となるように用いることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物中の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計の含有量は、樹脂組成物の全樹脂成分100質量%中、40〜90質量%程度、特に45〜80質量%程度であることが好ましい。これらの樹脂成分の含有量が少な過ぎると成形性や耐衝撃性が損なわれるおそれがあり、多過ぎると相対的に他の成分の含有量が少なくなり、目的とする耐薬品性と硬度が得られない場合がある。
[5.グラフト共重合体(C)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ビニル系単量体(c1)、シアン化ビニル単量体(c2)、メタクリル酸メチル単量体(c3)及び共重合可能なその他の単量体(c4)から選ばれた単量体を(c1)、(c2)、(c3)を必須成分としてグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(C)(以下、重合体(C)または(C)成分もしくは成分(C)ということがある。)を、上記ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対し、1〜30質量部含有する。
含有量が1質量部未満の場合は、ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性を維持する効果が充分に得られず、使用割合が30質量部を超える場合は、ポリカーボネート樹脂の硬度が低下する傾向にあるため好ましくない。
本発明における芳香族ビニル系単量体(c1)としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン及びo,p−ジクロロスチレン等が挙げられ、剛性や耐衝撃性の面からスチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。また、これらの単量体は単独で用いるだけでなく、2種以上を併用して用いることができる。
シアン化ビニル単量体(c2)としては、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等が挙げられる。また、これらの単量体は単独で用いるだけでなく、2種以上を併用して用いることができる。
共重合可能なその他の単量体(c4)から選ばれた単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート及びベンジルアクリレート等のアクリル酸エステル、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート及びベンジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド、N−フェニルマレイミド及びN−シクロヘキシルマレイミド等のα−またはβ−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物、アクリルアミド及びメタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド等が挙げられる。また、これらの単量体は単独で用いるだけでなく、2種以上を併用して用いることができる。
本発明における芳香族ビニル系単量体(c1)、シアン化ビニル単量体(c2)、メタクリル酸メチル単量体(c3)及び共重合可能なその他の単量体(c4)の割合としては、芳香族ビニル系単量体(c1)15〜90質量%、シアン化ビニル単量体(c2)2〜60質量%、メタクリル酸メチル単量体(c3)8〜60質量%及び共重合可能なその他の単量体(c4)0〜70質量%であることが好ましい。これの範囲を外れると、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と後述の鉛筆硬度がFより高いポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)の相溶性に劣るため外観が損なわれたり、流動性と耐衝撃性、鉛筆硬度のバランスに欠ける傾向がある。
[6.アクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系共重合体(D)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、アクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系共重合体(D)(以下、重合体(D)または(D)成分もしくは成分(D)ということがある。)を、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対し、1〜20質量部含有する。
このような重合体(D)を、前記のグラフト共重合体(C)及び後記するポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)と共に、このような量で配合することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の優れた硬度と光沢を維持した耐薬品性のバランスを達成することができる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に使用するアクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系共重合体(D)は、少なくともアクリロニトリルとエチレンとプロピレンとスチレンを共重合して得られる熱可塑性共重合体である。
アクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系共重合体(D)は、さらに他のビニル単量体を使用しても良く、他に使用するビニル単量体としては、メタクリロニトリル等の他のシアン化ビニル、1−ブテン等のオレフィン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン等のスチレン誘導体、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン、(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、これらは、2種以上を追加混合して使用することもできる。
以上のうち、好ましい追加の(共)重合用ビニル単量体としては、
CH=CR−COOR(式中、Rは水素原子またはメチル基を、Rはアルキル基を示す。)で表されるアクリレートまたはメタクリレート化合物が挙げられ、Rのアルキル基としては、炭素数が1〜8のものが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。これらは単独でも、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、メタアクリル酸メチル、すなわちメチルメタアクリレートを使用したアクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン−メチルメタアクリレート系共重合体が特に好ましい。
アクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系共重合体(D)は、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合あるいは塊状・懸濁重合等の方法により製造され、また共重合反応で使用する開始剤、連鎖移動剤等は必要に応じて、公知のものが使用可能である。
上記したアクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系共重合体(D)を使用することにより、高硬度でかつ高光沢の組成物とすることができ、かつ流動性、耐衝撃性を低下させることなく、これらのバランスの取れた、優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物とすることが可能になる。
アクリルニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系共重合体(D)の含有量は、上記ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対し、1〜20質量部であり、好ましくは3〜10質量部である。含有量が1質量部未満の場合は、ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性を維持する効果が充分に得られず、使用割合が20質量部を超える場合は、ポリカーボネート樹脂の硬度が低下する傾向にあるため好ましくない。
[7.ポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)]
本発明に使用するポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)(以下、重合体(E)または(E)成分もしくは成分(E)ということがある。)としては、メチルメタアクリレート系モノマーを使用した重合体または共重合体であって、上記した重合体(D)と同じもの以外であり、鉛筆硬度がFより高いものであれば、いずれも使用できる。
重合体成分(E)は、メチルメタアクリレート系単量体を主な構成単位として有するものであり、具体的には、アルキル基の炭素数が通常1〜18のメタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルの単独重合、両者の共重合、メタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルと共重合可能なビニル系単量体とを共重合してなるものが好ましい。アルキル基の炭素数が19以上であると、共重合反応が難しくなる。
このようなメタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
また、これらと共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。メタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルと、それと共重合可能なビニル系単量体との好ましい混合割合は、メタクリル酸アルキルを40〜95質量%とアクリル酸アルキル5〜60質量%、および共重合可能な他の単量体0〜30質量%である。
特に、本発明に使用されるポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)として好ましいのは、アルキル基の炭素数が1〜18、特には1〜8の、メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルを、必要により上記ビニル系単量体とを、共重合してなるメタクリル酸メチル−アクリル酸メチル系共重合体である。
また、ポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)としては、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルと共重合し得る1分子当たり2個以上の非共役2重結合を有する多官能性単量体を、好ましくは0.1〜20重量%程度加えて、共重合させて製造した架橋タイプのものであってもよい。
2個以上の非共役2重結合を有する多官能性単量体は、主として弾性体成分を架橋させ、架橋弾性体とするために用いられるものである。その具体例としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタアクリレート等が挙げられる。なかでも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が、好ましく挙げられる。
ポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)は、上記した単量体を懸濁重合させることにより製造できる。例えば、ポリビニルアルコールを分散剤として懸濁させて重合を行い、ろ過、洗浄、篩がけ、乾燥することにより得られる。
本発明において、ポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)としては、その表面硬度が鉛筆硬度で「F」より高いものを使用する。重合体(E)がFより高い鉛筆硬度を有することで、本発明の樹脂組成物を成形品とした場合に擦過しても擦過痕が残らず、成形品は耐擦傷性に優れる。
なお、本発明において、鉛筆硬度は、JIS K5400に準じて測定され、具体的には実施例に詳記した方法により測定される。
ポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)の鉛筆硬度は、好ましくはF以上であり、H以上であることがより好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが特に好ましい。
このような硬度の重合体(E)は、使用する単量体の種類、その使用割合、分子量等を適宜調整することにより可能であり、また市販品の中から選定することも可能である。
ポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対し、10〜60質量部であり、好ましくは13〜60質量部である。ポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)の使用割合が10質量部未満の場合は、ポリカーボネート樹脂の高硬度および高光沢を向上させる効果が充分に得られず、使用割合が60質量部を超える場合は、ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性等が低下する傾向にあり、さらにはポリカーボネート樹脂とポリメチルメタアクリレート系(共)重合体が層状に剥離しやすくなるため好ましくない。
[8.コア/シェル型グラフト共重合体系エラストマー(F)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性や表面外観の点から、コア/シェル型グラフト共重合体系エラストマー(F)を含有することが好ましい。コア/シェル型グラフト共重合体系エラストマー(F)を含有することで、ポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性や外観を改良することができる。
コア/シェル型グラフト共重合系エラストマーとしては、とりわけブタジエン含有ゴム、ブチルアクリレ−ト含有ゴム、2−エチルヘキシルアクリレ−ト含有ゴム、シリコ−ン系ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム性重合体をコア層とし、その周囲に、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、及び芳香族ビニル化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体成分を共重合して形成されたシェル層からなるコア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。上記コア/シェル型グラフト共重合体において、ゴム成分を40質量%以上含有するものが好ましく、60質量%以上含有するものがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸は、10質量%以上含有するものが好ましい。
これらコア/シェル型グラフト共重合体系エラストマーの好ましい具体例としては、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリルゴム共重合体(MA)、メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−(アクリル・シリコーンIPNゴム)共重合体等が挙げられる。このようなゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
このようなコア/シェル型グラフト共重合体系エラストマーとしては、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製の「パラロイド(登録商標、以下同じ)EXL2602」、「パラロイドEXL2603」、「パラロイドEXL2633」、「パラロイドEXL2655」、「パラロイドEXL2311」、「パラロイドEXL2313」、「パラロイドEXL2315」、「パラロイドKM330」、「パラロイドKM336P」、「パラロイドKCZ201」、三菱レイヨン社製の「メタブレン(登録商標、以下同じ)C−223A」、「メタブレンE−901」、「メタブレンS−2001」、「メタブレンSRK−200」、カネカ社製の「カネエース(登録商標、以下同じ)M−511」、「カネエースM−600」、「カネエースM−400」、「カネエースM−580」、「カネエースMR−01」等が挙げられる。
コア/シェル型グラフト共重合体系エラストマーの好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。1質量部より少ないと、耐衝撃性向上効果は不十分であり、10質量部を超えると、ポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品の外観不良や耐熱性の低下が生じやすい。含有量の下限は、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは4質量部以上であり、また、含有量の上限は、より好ましくは9質量部以下、さらに好ましくは8質量部以下である。
[9.紫外線吸収剤(G)]
本発明の組成物には、紫外線吸収剤(G)を配合するのが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物等の有機紫外線吸収剤等が挙げられる。これらのうち、有機紫外線吸収剤が好ましく、中でもベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製(商品名、以下同じ)「シーソーブ701」、「シーソーブ702」、「シーソーブ703」、「シーソーブ704」、「シーソーブ705」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、アデカ社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
紫外線吸収剤(G)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、また、その上限は好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。なお、紫外線吸収剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
[10.その他の添加剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、安定剤、酸化防止剤、離型剤、充填材、染顔料、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
・安定剤(H)
安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸等のリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウム等の酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛等第1族または第10族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物等が挙げられる。
なかでも、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の有機ホスファイトが好ましい。
安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。安定剤が少なすぎると熱安定効果が不十分となる可能性があり、安定剤が多すぎると効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・酸化防止剤(I)
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
・離型剤(J)
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族又は脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等が生じる可能性がある。
・染顔料(K)
染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料等が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青等の珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青等のフェロシアン系顔料等が挙げられる。
有機顔料および有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の縮合多環染顔料;キノリン系、アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料等が挙げられる。
これらの中では、熱安定性の点から、酸化チタン、カーボンブラック、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系染顔料等が好ましい。
なお、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。また、染顔料は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメチルメタアクリレート系樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
染顔料の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して、通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。染顔料の含有量が多すぎると耐衝撃性が十分でなくなる可能性がある。
[11.ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、グラフト共重合体(C)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系共重合体(D)、ポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)、並びに、必要に応じて配合される上記したその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等の各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダー等の混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
[12.成形方法]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、ペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して成形品を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、シートやフィルム、異型押出成形品、ブロー成形品あるいは射出成形品等にすることもできる。
成形方法の例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法等が挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。成形品の形状、模様、色彩、寸法等に制限はなく、その成形品の用途に応じて任意に設定すればよい。
[13.成形品]
本発明の組成物を成形した成形品は、高硬度かつ高光沢で、耐衝撃性のバランスに優れた樹脂組成物であるので、カーナビゲーションやカーオディオの筐体;インストルメントパネル、コンソールボックス、センターコンソールパネル、センタークラスター、メータークラスター等の自動車内装部品;フラットディプレイパネル、パソコン、モバイルコンピュータ、PDA、多機能携帯電話(スマートフォン)、テレビ、ビデオ、プリンター、ファックス等の電気・電子・OA機器用部品や筐体として好適に使用することができる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
なお、実施例及び比較例で用いた測定・評価法は、以下のとおりである。
[1.初期外観評価]
表面外観:
後述の方法で成形した3mm厚の平板試験片を、目視にて以下の5段階の基準で判定し、外観の評価を行った。
◎ : 極めて良好
○ : 良好
△ : シルバーの発生、層剥離の発生、色ムラなどが少し見られる。
× : シルバーの発生、層剥離の発生、色ムラなどがあり、光沢性に劣る。
××:シルバーの発生、層剥離の発生、色ムラなどが多く、光沢性に非常に劣る。
[2.耐薬品性試験後の外観評価]
後述の方法で成形した3mm厚の平板試験片の表面に、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トリエタノールアミン(TEA)をスプレー塗布し、熱風循環型乾燥機中、60℃で24時間熱処理した後、表面を中性洗剤(ライオン(株)製商品名「ママレモン」)で洗い流し、目視にて上記と同じの基準で判定し、外観の評価を行った。
[3.色差ΔE]
上記耐薬品性試験後の平板試験片について、JIS Z7829、JIS Z8722規格の方法に準じて反射法により耐薬品性試験前後の色相差(ΔE)を測定した。測定にはスガ試験機(株)製の多光源分光測色計(MSC−5N−GV5)を用いた。光源系はC/2条件、光束はΦ30mmの条件で行った。ΔEの値が小さいほど外観の変化が少なく耐薬品性に優れている。
[4.表面硬度評価]
鉛筆硬度:
後述の方法で成形した3mm厚の平板試験片に、JIS K5400に準じ、5回の引掻き試験を行い硬度の評価を行った。なお、表中、「鉛筆硬度」と表記する。
[5.光沢度]
後述の方法で成形した3mm厚の平板試験片に、JIS Z8741規格の方法に準じて光沢度の測定を行った。測定には日本電色工業(株)の光沢計(VG2000)を用いた。角度は60°の条件で行った。耐薬品性試験後の光沢度の値が高いほど耐薬品性に優れている。
(実施例1〜12、比較例1〜12)
後記各材料を後記各表の含有量(特に明記しない場合は全て質量部)で、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製二軸押出機(TEX30XCT)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度260℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂組成物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
[試験片の成形]
得られたペレットを、80℃で5時間乾燥後、射出成形機(名機製作所製「M150AII−SJ」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度75℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形を行い、50×90×3mm厚の平板試験片を作製した。
これら試験片に対する測定結果を、後記表1〜4に示した。
使用した使用材料は以下のとおりである。なお、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、ポリメチルメタアクリレート系共重合体(E)およびその他の共重合体(M−1)、(M−2)として使用した各材料の鉛筆硬度は、上記[4.表面硬度評価]と同様にして測定した。
[使用材料]
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂:
三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製
商品名「ユーピロン(登録商標)S−3000」
粘度平均分子量 22,000、鉛筆硬度 2B
(B)ポリエステル樹脂:
(B−1)ポリブチレンテレフタレート
三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製
商品名「ノバデュラン(登録商標)5010L」、
Iv値=1.00(30℃雰囲気中フェノール:テトラクロロエタン=1:1)
鉛筆硬度 2B
(B−2)ポリエチレンテレフタレート
三菱化学(株)製
商品名「ノバペックス(登録商標)GG900D」
Iv値=1.06(30℃雰囲気中フェノール:テトラクロロエタン=1:1)
鉛筆硬度 2B
(C)アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体:
ユーエムジー・エービーエス(株)製商品名「S900N」
表中、「AN/St/MMA」と表記する。
(D)アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン共重合体(AES):
ユーエムジー・エービーエス(株)製商品名「E700N」
表中、「AES」と表記する。
(C)+(D)の混合物(AN/St/MMA/AES):
アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体33質量%、アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン共重合体17質量%、アクリル系共重合体50質量%を含有する混合物。鉛筆硬度 2H
表中、「AN/St/MMA/AES」と表記する。
(E)メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体:
三菱レイヨン(株)製商品名「アクリペットVH001」、鉛筆硬度 2H
表中、「PMMA」と表記する。
(F)コア/シェル型グラフト共重合体系エラストマー
(F−1)アクリル酸アルキル重合体(コア)/メタクリル酸アルキル重合体(シェル)から成るコア/シェル型共重合体:
ローム・アンド・ハース(株)製商品名「パラロイドEXL−2315」
(F−2)ブタジエン重合体(コア)/アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体(シェル)から成るコア/シェル型共重合体:
ローム・アンド・ハース(株)製商品名「パラロイドEXL−2633」
(F−3)ジメチルシロキサン重合体とアクリル酸アルキル重合体から成る複合ゴム(コア)/メタクリル酸アルキル重合体(シェル)から成るコア/シェル型共重合体:
三菱レイヨン(株)製商品名「メタブレンS−2001」
(G)紫外線吸収剤:
2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール
シプロ化成(株)製商品名「シーソーブ709」
(H)リン系熱安定剤:
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
旭電化工業(株)製商品名「アデカスタブ2112」
(I)フェノール系酸化防止剤:
ペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製商品名「イルガノックス1010」
(J)離型剤:
ペンタエリスリトールテトラステアレート
コグニスジャパン(株)製商品名「ロキシオールVPG861」
(K)着色剤:カーボンブラック
三菱化学(株)製商品名「#900」
(L)加水分解抑制剤:
モノステアリルアシッドホスフェートとジステアリルアシッドホスフェートの混合物
(株)ADEKA製商品名「アデカスタブAX−71」
また、本発明の共重合体成分(B)、(C)、(D)の規定を満たさない共重合体成分として、以下の(M−1)、(M−2)を比較例において使用した。
(M−1)メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体:
電気化学工業(株)製商品名「デンカTPポリマー TH−23」、鉛筆硬度 3B
(M−2)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体:
旭化成(株)製商品名「スタイラック(登録商標)T9701」、鉛筆硬度 3B
Figure 2013043908
Figure 2013043908
Figure 2013043908
Figure 2013043908
上記実施例と比較例の結果から、以下のことが分かる。
実施例1〜12(表1、表2)は、(A)〜(G)成分の配合比率を本発明の規定の範囲内で変更したものであるが、いずれも表面硬度はH、F、HBであり、(C)、(D)、(E)成分を処方していない比較例11〜12(表4)の表面硬度2Bに比べ、格段に高上していることが分かる。
また比較例1は本発明の範囲外の(E)成分、比較例2〜5及び7は本発明の範囲外の(A)、(B)成分を使用しているため、初期外観に劣ることがわかる。さらに比較例6、8〜10は本発明の範囲外の(A)、(B)成分を使用しているため、薬品性試験後の外観に劣ることがわかる。
したがって、上記の実施例及び比較例から、耐薬品性に優れ、高硬度かつ高光沢で、外観に優れた樹脂組成物あるいは成形品は、本発明の構成によりはじめて得られるものであることが確認された。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、耐薬品性に優れ、表面硬度が高く且つ硬度低下の少ないポリカーボネート樹脂材料であるので、これを成形した製品は、カーナビゲーションやカーオディオの筐体、インストルメントパネル、コンソールボックス、センタークラスター、メータークラスター等の自動車内装部品、フラットディプレイパネル、パソコン、PDA、多機能情報端末、タブレット型コンピュータ(端末)、高機能携帯電話(スマートフォン)テレビ、ビデオ、カメラ、プリンター、FAX等の電気・電子・OA機器筐体等の広範囲の分野に利用でき、産業上の利用性は非常に高い。

Claims (8)

  1. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を61〜99質量%とポリエステル樹脂(B)を39〜1質量%(ただし、(A)と(B)の合計は100質量%)含有し、上記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、
    芳香族ビニル系単量体(c1)、シアン化ビニル単量体(c2)、メタクリル酸メチル単量体(c3)及び共重合可能なその他の単量体(c4)から選ばれた単量体を、(c1)、(c2)、(c3)を必須成分としてグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(C)を1〜30質量部、
    アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系共重合体(D)を1〜20質量部、
    鉛筆硬度がFより高いポリメチルメタアクリレート系(共)重合体(E)を10〜60質量部
    含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン系共重合体(D)が、アクリロニトリル−エチレンプロピレン−スチレン−メチルメタアクリレート系共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. ポリエステル樹脂(B)が、ポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. コア/シェル型グラフト共重合体系エラストマー(F)を、前記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、1〜10質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 紫外線吸収剤(G)を、前記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、0.1〜1質量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物から得られたポリカーボネート樹脂成形品。
  7. 成形品が、携帯端末機器用またはカーナビゲーション用筐体であることを特徴とする請求項6に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
  8. 成形品が、自動車内装用部品であることを特徴とする請求項6に記載のポリカーボネート樹脂成形品。
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