JP6409617B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂及び成形体 - Google Patents
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Description
しかしながら、芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐熱性が高い非晶性樹脂であるため成形加工温度が高く、溶融流動性が低いという欠点を有していた。近年、自動車分野では部品の大型化、一体化が進んでいる。一方で、電気電子機器分野では部品の軽薄短小化が進んでいるため、この分野での芳香族ポリカーボネート樹脂の使用においては、芳香族ポリカーボネート樹脂の成形性の向上が課題であった。
これに対して、従来から様々な検討が行われている。例えば、特許文献1には、粘度平均分子量(Mv)が10000〜30000のビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネートを用いた導光板が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法において、効率よく導光板を製造するために、成形性を上げるべく、芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を下げていくと、得られる導光板の強度が著しく低下するという問題があった。
特許文献2では、ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂と、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物として、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用いた特定の構造を有するポリカーボネート樹脂とを配合したポリカーボネート樹脂組成物を用いた導光板が提案されている。
度に優れる成形体を提供することを目的とする。
[1] 少なくとも下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂であって、粘度平均分子量(Mv)が10000〜20000であり、末端水酸基量が、10〜700ppmであることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂。
[3] JIS(1999年度版) K7210 付属書Cに準拠し、高化式フローテス
ターを用いて、240℃、160kgfの条件で測定した流れ値(Q値)が、8〜50(単位:10−2cm3/sec)であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
[4] 前記末端水酸基量が、10〜500ppmであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
[5] 溶融エステル交換法で得られることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
[6] 前記[1]〜[5]のいずれか1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂と、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤及び輝度向上剤からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の剤を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[7] 前記[1]〜[5]のいずれか1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂及び/または前記[6]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなる成形体。[8] 前記成形体が導光板である、[7]に記載の成形体。
なお、本明細書において、「〜」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、「部」とは、特に断りのない限り、質量基準に基づく質量部を表す。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、少なくとも下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂であって、粘度平均分子量(Mv)が10000〜20000、末端水酸基量が、10〜700ppmであることを特徴とする。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、少なくとも上記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物、具体的には、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、“ビスフェノールC”又は“BPC”と略記することがある)を必須成分とする芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物とを重合することによって得られる。
0〜50モル%、さらに好ましくは0〜30モル%、特に好ましくは0〜20モル%である。
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;等が挙げられる。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタン−1,3−ジオール等のシクロアルカンジオール類;
2,2’−オキシジエタノール(即ち、エチレングリコール)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
1,2−エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2−エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−エポキシシクロヘキサン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2,3−エポキシノルボルナン、1,3−エポキシプロパン等の環状エーテル類;等が挙げられる。
、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート形成性化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、下記式(2)で表される化合物であればよく、アリールカーボネート類、ジアルキルカーボネート類やジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
このようなカーボネートエステルとしては、具体的にはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と称する場合がある。)、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−フルオロフェニル)カーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4−ジフルオロフェニル)カーボネート、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチルフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート等の(置換)ジアリールカーボネートが挙げられるが、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。なお、これらのカーボネートエステルは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
くは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造する方法としては、従来から知られている重合法により製造することができ、その重合法としては、特に限定されるものではない。重合法の例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。以下、これらの方法のうち特に好適なものについて具体的に説明する。
まず、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、原料のジヒドロキシ化合物(式(1)で示される芳香族ジヒドロキシ化合物を必須成分として含む)とカーボネート形成性化合物(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
反応に不活性な有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、原料のジヒドロキシ化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
化合物を必須成分として含む)とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は、特に限定されないが、通常0〜40℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
次に、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、カーボネートエステルと原料のジヒドロキシ化合物(式(1)で示される芳香族ジヒドロキシ化合物を必須成分として含む)とのエステル交換反応を行う。
原料のジヒドロキシ化合物(式(1)で示される芳香族ジヒドロキシ化合物を必須成分として含む)とカーボネートエステルとの比率は所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、カーボネートエステルを等モル量以上用いることが好ましく、中でも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
反応形式は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし中でも、芳香族ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)で、10000〜20000であることを特徴とする。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)として、好ましくは11000以上、より好ましくは12000以上であり、また、好ましくは16500以下、より好ましくは15000以下である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることにより本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性が良好なものとなり、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を上記範囲に制御する際には、粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて混合し、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)を制御してもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、1999年度版のJIS K7210付属書
Cに準拠し、高化式フローテスターを用いて、240℃、160kgfの条件で測定した流れ値(Q値)が、8〜50(単位:10−2cm3/sec)であることが好ましい。なお、より好ましくはQ値が10以上であり、更により好ましくは15以上であり、特に好ましくは20以上である。また、一方、Q値は、より好ましくは45以下であり、更により好ましくは40以下であり、特に好ましくは35以下である。流れ値は、芳香族ポリカーボネート樹脂の高剪断時の溶融粘度を表し、成形性の指標として用いられる。つまり、流れ値が前記範囲の下限値未満の場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性(成形性)が発現しない恐れがある。一方、前記範囲の上限値を超える場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の機械強度が著しく低下する恐れがある。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の特徴を損なわない範囲であれば特に制限はないが、通常90℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上であり、また通常150℃以下、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下である。Tgが前記範囲の下限値未満の場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性が著しく劣る。一方、前記範囲の上限値を超える場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹
脂組成物の成形性が著しく低下するためやはり好ましくない。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量は、10〜700ppmである。また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量として、好ましくは50ppm以上であり、より好ましくは100ppm以上であり、一方で、好ましくは600ppm以下、より好ましくは500ppm以下である。末端水酸基量が、前記範囲の下限値以上であれば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の色相、生産性をより向上させることができ、また前記範囲の上限値以下であれば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性、湿熱安定性をより向上させることができる。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を界面重合法にて製造する場合には、分子量調整剤(末端停止剤)の配合量を調整することにより、末端水酸基量を任意に調整することができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、芳香族ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上述の芳香族ポリカーボネート樹脂と、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤及び輝度向上剤からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の剤とを含有することを特徴とする。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる熱安定剤としては、従来から熱可塑性樹脂に配合する公知のものであれば特に制限されないが、例えばリン系熱安定剤、イオウ系熱安定剤が挙げられるが、なかでのリン系安定剤が本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の初期色相、滞留熱安定性が優れる傾向にあるため好ましい。
好ましく、有機ホスファイト化合物が最も好ましい。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には酸化防止剤を含有することも好ましい。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる酸化防止剤としては、従来から熱可塑性樹脂に配合する公知のものであれば特に制限されないが、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、アデカ社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
酸化防止剤の含有量は、特に限定されないが、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、より好ましくは0.1%質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、フェノール系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、射出成形時にガスが出やすくなる可能性がある。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤を含有することも好ましい。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる離型剤としては、従来から熱可塑性樹脂に配合する公知のものであれば特に制限されないが、例えば脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
ミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は、単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
なお、上述した離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
離型剤の含有量は、特に限定されないが、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離形剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、輝度向上剤を含有することも好ましい。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる輝度向上剤としては、従来ポリカーボネート樹脂に配合する公知のものであれば特に制限されないが、例えばポリアルキレングリコールまたはその脂肪酸エステル、脂環式エポキシ化合物、低分子量アクリル樹脂、低分子量スチレン系樹脂等が好ましく挙げられる。
また、ポリアルキレングリコールの数平均分子量は、通常500〜500000、好ましくは1000〜100000、より好ましくは1,000〜50000である。
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数10以上の1価又は2価の脂肪酸、例えば、1価の飽和脂肪酸、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチレン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸や、炭素数10以上の1価の不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、セトレイン酸、エルカ酸などの不飽和脂肪酸、また炭素数10以上の二価の脂肪酸、例えば、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸及びデセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸である。これらの脂肪酸は1種又は2種以上組み合せて使用できる。前記脂肪酸には、1つ又は複数のヒドロキシル基を分子内に有する脂肪酸も含まれる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果及び所望の諸物性を著しく阻害しない範囲で、上述したもの以外にその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、好ましくは、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、各種樹脂添加剤などが挙げられ、より好ましくは、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂である。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
樹脂添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、難燃剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、芳香族ポリカーボネート樹脂と必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造時に、重合終了後の溶融樹脂に直接添加剤を添加し、混練しても良い。このように添加する際には、重合終了後、溶融樹脂を押出機に直接導入し、添加剤を配合し、溶融混練しペレット化する方法が好ましい。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
本発明の成形体は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂または、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られるものであり、中でも射出成形して得られる成形体であることが好ましい。
また、本発明の成形体の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形体の用途
に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等、また特殊な形状のもの等、各種形状のものが挙げられる。また、例えば表面に凹凸を有していたり、三次元曲面を有する立体的な形状のものであってもよい。
なかでも優れた流動性(成形性)と、透明性、強度を活かして光学部品、特に液晶ディスプレイ(LCD)を中心とするディスプレイ部材に好ましく用いることができる。このようなディプレイ部材の中でも、ディスプレイ装置に搭載される光を導くバックライトユニットの内部に設置される導光板に好適に用いることができる。
本発明の導光板は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形して得られることを特徴とする。具体的には、通常、キャビティに凹凸部が形成された射出成形用金型を用い、凹凸部を転写しつつ射出成形することで製造できる。なお、射出成形用金型のキャビティに凹凸部を設ける方法としては、入れ子に凹凸部を形成する方法が簡便で好ましい。
本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂材料は、高い溶融流動性を備え、薄肉成形性に優れるため、射出成形用金型のキャビティに形成された細かい凹凸を良好に転写することができる。また熱安定性にも優れるため、高温条件や、例えば200mm/sec以上、特には500mm/sec以上の高速で射出成形した場合にも成形品中にヤケやゲルを発生させることなく、充填することができる。
導光板が板状である場合は、その厚みは、通常0.1〜10mmであり、好ましくは0.3〜5mm、さらに好ましくは0.3〜3mmである。導光板の厚みが上記上限値を超えると、樹脂の収縮によりドット、プリズム等の凹凸パターンが付与された光反射面の凹凸パターンが崩れたり、出光側の表面にヒケが生じるなどして十分な光量が確保できない場合がある。また、厚みが上記下限値未満の場合は、導光板自体の形状剛性が低下しやすくなり、変形により目的とする発光面を確保しにくくなる場合がある。また、出向面側を凸状に湾曲させた形状や、光源から離れるに従って肉厚を徐減させた形状は、光の進行方向に対してプリズムが重なって存在しているようなプリズムの干渉を抑制しやすい傾向にあるのでより好ましい。
実施例、比較例に使用した原料は以下の通りである。
ジヒドロキシ化合物
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(本州化学工業株式会社製)(以下、BPC と略記する。)
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(三菱化学株式会社製)(以下、BPAと略記する。)
4,4−ジヒドロキシジフェニルメタン(東京化成工業株式会社製)(以下、BPFと略記する)
ジフェニルカーボネート(三菱化学株式会社製)(以下、DPCと略記する。)
[芳香族ポリカーボネート樹脂の製造]
反応器攪拌機、反応器加熱装置、反応器圧力調整装置を付帯した内容量150mlのガラス製反応器に、原料のジヒドロキシ化合物と、ジフェニルカーボネートを下記表1に示
す割合で投入し、次に触媒として、炭酸セシウムを下記表1に示す割合で添加して混合物を調製した。なお、炭酸セシウムは、ジヒドロキシ化合物1molに対するmol配合量を(単位:μmol/mol)で記載した。
上記ペレットを100℃で5時間乾燥した後、日本製鋼所社製J5S型射出成形機を用い、シリンダー設定温度260℃、金型温度40℃、スクリュー回転数100rpmの条件下にて、48mm×15mm×1mm厚の平板状試験片及び、25mm×4mm×1mm厚の測定部を持つダンベル試験片を射出成形した。
1999年度版 JISK7210 付属書Cに記載の方法にてペレットの流れ値(Q値)を評価した。測定は島津製作所社製CFT−500A型フローテスターを用いて、穴径1.0mmφ、長さ10mmのダイを用い、試験温度240℃、試験力160kg/cm2、余熱時間420secの条件で排出された溶融樹脂量(単位:10−2cm3/sec)を測定した。
末端水酸基濃度と粘度平均分子量の測定法は、上述に記載の方法で測定した。
上記記載の方法で得られた平板状試験片(1mm厚)につき、JIS K5600−5−4に準拠し、鉛筆硬度試験機(東洋精機株式会社製)を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
材料強度は、上記ダンベル試験片を用いて、折り曲げ強度にて評価した。1mm厚のダンベル試験片の測定部の端から12.5mmの部分までを固定し、片側に150°折り曲げ、次にその状態から逆方向に300°(もとに状態から逆方向に150°)に折り曲げることを繰り返して破断するまでの回数を測定した。なお、測定は5回実施し、平均値を
求めた。この試験において破断までの回数が大きいほど薄肉成形品とした場合にも製品強度が向上することがわかる。
熱安定性の評価は、上述の流れ値評価と同様の手法で、測定温度280℃、予熱時間420secの条件で、フローテスター中で樹脂を熱滞留したのちに排出し、得られたサンプルの粘度平均分子量(Mv)を測定した。次に、測定前の粘度平均分子量[Mv]からの低下率を求め熱安定性の指標とした。この粘度平均分子量(Mv)低下率(単位:%)が小さいほど、熱安定性が高く、高温条件で射出成形した際にも、物性低下が抑制されることがわかる。
Claims (8)
- 下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物(ビスフェノールC)に由来する構
造単位、及び、 2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン又は4,4 ’−
ジヒドロキシジフェニルメタンに由来する構造単位からなる芳香族 ポリカーボネート樹
脂であって、
前記芳香族ポリカーボネート樹脂中のビスフェノールCに由来する構造単位とビスフェ
ノールCとは異なるその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の合計量に対する前
記その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有率が、0〜60%であり 、
粘度平均分子量(Mv)が10000〜20000であり、末端水酸基量が、10〜7
00ppmであることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂 。
- 前記粘度平均分子量(Mv)が10000〜16500であることを特徴とする請求項
1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。 - JIS(1999年度版) K7210 付属書Cに準拠し、高化式フローテスターを
用いて、240℃、160kgfの条件で測定した流れ値(Q値)が、8 〜50(単位
:10−2cm3/sec)であることを特徴とする請求項1または2に記載の芳香族ポ
リカーボネート樹脂。 - 前記末端水酸基量が、100 〜500ppmであることを特徴とする請求項1〜3の
いずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。 - 溶融エステル交換法で得られることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の
芳香族ポリカーボネート樹脂。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂と、熱安定剤、酸化
防止剤、離型剤、紫外線吸収剤及び輝度向上剤からなる群より選ばれる少なくとも1種類
以上の剤を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂及び/または請求項
6に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなる成形体。 - 前記成形体が導光板である、請求項7に記載の成形体。
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