JP6409617B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂及び成形体 - Google Patents

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Description

本発明はポリカーボネート樹脂に関する。詳しくは、薄肉成形性、硬度、強度、熱安定性のバランスに優れる芳香族ポリカーボネート樹脂、及びそれを射出成形してなる成形体に関する。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械強度、電気特性、寸法安定性に優れていることより例えば、自動車部材、電気電子・OA機器、情報・通信機器、家庭用電化機器、住宅材料、その他の工業分野における部品製造材料等に幅広い分野で使用されている。
しかしながら、芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐熱性が高い非晶性樹脂であるため成形加工温度が高く、溶融流動性が低いという欠点を有していた。近年、自動車分野では部品の大型化、一体化が進んでいる。一方で、電気電子機器分野では部品の軽薄短小化が進んでいるため、この分野での芳香族ポリカーボネート樹脂の使用においては、芳香族ポリカーボネート樹脂の成形性の向上が課題であった。
また、近年、芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性が優れることより、光学材料として液晶導光板、光ディスク基板等にも幅広く利用されているが、このような薄肉成形体を成形する場合も成形性が不十分であることから、芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性の改良が要求されている。
これに対して、従来から様々な検討が行われている。例えば、特許文献1には、粘度平均分子量(Mv)が10000〜30000のビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネートを用いた導光板が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法において、効率よく導光板を製造するために、成形性を上げるべく、芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を下げていくと、得られる導光板の強度が著しく低下するという問題があった。
また、一般的に、導光板には、表面に光の入出をコントロールする凹凸パターンが形成されるが、特許文献1に記載の方法による導光板では、表面硬度が弱いために、その表面が他の部材とこすれると、表面の凹凸パターンが摩耗し、光の入出をコントロールする機能が著しく低下するという欠点も有していた。
特許文献2では、ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂と、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物として、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用いた特定の構造を有するポリカーボネート樹脂とを配合したポリカーボネート樹脂組成物を用いた導光板が提案されている。
特開2004−109162号公報 特開2014−228767号公報
しかしながら、特許文献2に記載のポリカーボネート樹脂組成物を用いて、ライトガイドなどの成形体にように、薄肉部分が存在する場合、成形が困難である場合があった。また、成形時の加工温度を上げると、得られる成形体の色相が悪化したり、熱安定性が不十分であるため、高温での成形時に物性低下が発生する恐れがある、という問題があった。本発明は、上記課題に鑑み薄肉成形性、硬度、強度、熱安定性のバランスに優れる芳香族ポリカーボネート樹脂及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、並びに高い強度と表面硬
度に優れる成形体を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定の芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を薄肉成形して成形する場合、そのポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量と末端水酸基量が、流動性、強度に相関している点に着目して、それらをある特定範囲にコントロールした芳香族ポリカーボネート樹脂が、ライトガイドなどの成形体を成形する際に、成形性が高く、折り曲げ強度にも優れる成形体が得られることを見出した。そして、その芳香族ポリカーボネート樹脂及び/又はその芳香族ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物で成形された成形体は、高温での成形でも物性低下が抑制されており、成形体としての強度や硬度が維持できることも見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[8]に存する。
[1] 少なくとも下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂であって、粘度平均分子量(Mv)が10000〜20000であり、末端水酸基量が、10〜700ppmであることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂。
Figure 0006409617
[2] 前記粘度平均分子量(Mv)が10000〜16500であることを特徴とする[1]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
[3] JIS(1999年度版) K7210 付属書Cに準拠し、高化式フローテス
ターを用いて、240℃、160kgfの条件で測定した流れ値(Q値)が、8〜50(単位:10−2cm/sec)であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
[4] 前記末端水酸基量が、10〜500ppmであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
[5] 溶融エステル交換法で得られることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
[6] 前記[1]〜[5]のいずれか1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂と、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤及び輝度向上剤からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の剤を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[7] 前記[1]〜[5]のいずれか1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂及び/または前記[6]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなる成形体。[8] 前記成形体が導光板である、[7]に記載の成形体。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂によれば、薄肉成形性、硬度、強度、熱安定性のバランスに優れるポリカーボネート樹脂材料を提供することができる。このような芳香族ポリカーボネート樹脂は、導光板のような薄肉成形体を得ようとした場合においても、強度と硬度のバランスに優れる成形体を生産性高く得ることができ産業上極めて利用価値が高い。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、「部」とは、特に断りのない限り、質量基準に基づく質量部を表す。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、少なくとも下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂であって、粘度平均分子量(Mv)が10000〜20000、末端水酸基量が、10〜700ppmであることを特徴とする。
Figure 0006409617
この特徴により、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は従来のポリカーボネート樹脂、例えば、上記範囲の粘度平均分子量(Mv)と同等の分子量を持つビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂などに比べ、流動性が高く、成形性に優れることから効率よく強度の高い成形体を得ることができる。
<1.芳香族ポリカーボネート樹脂>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、少なくとも上記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物、具体的には、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、“ビスフェノールC”又は“BPC”と略記することがある)を必須成分とする芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物とを重合することによって得られる。
また本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、上述のビスフェノールCに由来する構造単位のみで構成されるポリマー(ホモポリマー)でも、ビスフェノールCとは異なるその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を1種類以上含む共重合体(コポリマー)であってもよい。共重合体の場合は、上述のビスフェノールCに由来する構造単位を含んでいれば、それとは異なるその他のジヒドロキシ化合物としては、任意の組合せ、及び任意の比率で含んでいてもよい。また、共重合形態としては、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等、種々の共重合形態を選択することができる。
上記その他のジヒドロキシ化合物としては、特に制限はなく、分子骨格内に芳香環を含む芳香族ジヒドロキシ化合物であっても、芳香環を有さない脂肪族ジヒドロキシ化合物であってもよい。また、種々の特性付与の為に、N(窒素)、S(硫黄)、P(リン)、Si(ケイ素)等のヘテロ原子やヘテロ結合が導入されたジヒドロキシ化合物であってもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂において、ビスフェノールCに由来する構造単位とビスフェノールCとは異なるその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を1種類以上含む共重合体(コポリマー)の場合は、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の芳香族ポリカーボネート樹脂中の含有率については、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の効果を阻害しない範囲であれば特に制限はないが、例えば、ビスフェノールCとの合計量に対し、通常0〜80モル%、好ましくは0〜60モル%、より好ましくは、
0〜50モル%、さらに好ましくは0〜30モル%、特に好ましくは0〜20モル%である。
上述のビスフェノールCとは異なるその他のジヒドロキシ化合物として、好適に使用されるものは、耐熱性、熱安定性、強度の観点より、芳香族ジヒドロキシ化合物である。このような芳香族ジヒドロキシ化合物としては、具体的には以下のものが挙げられる。1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ
メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;等が挙げられる。
これらの中でもビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に色相、耐衝撃性、耐熱性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)がさらに好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、脂肪族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、デカン−1,10−ジオール等のアルカンジオール類;
シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタン−1,3−ジオール等のシクロアルカンジオール類;
2,2’−オキシジエタノール(即ち、エチレングリコール)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6−ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’−ビフェニルジメタノール、4,4’−ビフェニルジエタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
1,2−エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2−エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−エポキシシクロヘキサン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2,3−エポキシノルボルナン、1,3−エポキシプロパン等の環状エーテル類;等が挙げられる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、上述のビスフェノールC及び/又は任意で選択されるその他のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、カーボネート形成性化合物とを重縮合することによって得られる。カーボネート形成性化合物の例を挙げると
、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート形成性化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、下記式(2)で表される化合物であればよく、アリールカーボネート類、ジアルキルカーボネート類やジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
Figure 0006409617
式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜30のアルキル基またはアリール基、アリールアルキル基を表す。以下、R及びRが、アルキル基、アリールアルキル基のときジアルキルカーボネートと称し、アリール基のときジアリールカーボネートと称すことがある。なかでもジヒドロキシ化合物との反応性の観点よりR及びRは、共にアリール基であることが好ましく、下記式(3)で表されるジアリールカーボネートでることがより好ましい。
Figure 0006409617
式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数4〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基であり、p及びqはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。
このようなカーボネートエステルとしては、具体的にはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と称する場合がある。)、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−フルオロフェニル)カーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4−ジフルオロフェニル)カーボネート、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチルフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート等の(置換)ジアリールカーボネートが挙げられるが、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。なお、これらのカーボネートエステルは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、前記のカーボネートエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好まし
くは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
これらカーボネートエステル(前記の置換したジカルボン酸又はジカルボン酸エステルを含む。以下同じ。)は、通常、ジヒドロキシ化合物と重合させる際に、原料のジヒドロキシ化合物に対して過剰に用いられる。すなわち、カーボネートエステルは、ジヒドロキシ化合物に対して、1.01〜1.30倍量(モル比)、好ましくは1.02〜1.20倍量(モル比)で用いられる。モル比が小さすぎると、得られるポリカーボネート樹脂の末端OH基が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が大きすぎると、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有するポリカーボネート樹脂の生産が困難となったり、樹脂中のカーボネートエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品としたときの臭気の原因となる場合がある。
<芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造する方法としては、従来から知られている重合法により製造することができ、その重合法としては、特に限定されるものではない。重合法の例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。以下、これらの方法のうち特に好適なものについて具体的に説明する。
界面重合法
まず、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、原料のジヒドロキシ化合物(式(1)で示される芳香族ジヒドロキシ化合物を必須成分として含む)とカーボネート形成性化合物(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
原料のジヒドロキシ化合物(式(1)で示される芳香族ジヒドロキシ化合物を必須成分として含む)及びカーボネート形成性化合物は、前述のとおりである。なお、カーボネート形成性化合物の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶
液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、原料のジヒドロキシ化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
重合触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分子量調節剤としては、特に限定されないが、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、中でも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的には例えば、フェノール、o−n−ブチルフェノール、m−n−ブチルフェノール、p−n−ブチルフェノール、o−イソブチルフェノール、m−イソブチルフェノール、p−イソブチルフェノール、o−t−ブチルフェノール、m−t−ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、o−n−ペンチルフェノール、m−n−ペンチルフェノール、p−n−ペンチルフェノール、o−n−ヘキシルフェノール、m−n−ヘキシルフェノール、p−n−ヘキシルフェノール、p−t−オクチルフェノール、o−シクロヘキシルフェノール、m−シクロヘキシルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、o−n−ノニルフェノール、m−ノニルフェノール、p−n−ノニルフェノール、o−クミルフェノール、m−クミルフェノール、p−クミルフェノール、o−ナフチルフェノール、m−ナフチルフェノール、p−ナフチルフェノール;2、5−ジ−t−ブチルフェノール;2、4−ジ−t−ブチルフェノール;3、5−ジ−t−ブチルフェノール;2、5−ジクミルフェノール;3、5−ジクミルフェノール;p−クレゾール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール、平均炭素数12〜35の直鎖状又は分岐状のアルキル基をオルト位、メタ位又はパラ位に有するモノアルキルフェノール;9−(4−ヒドロキシフェニル)−9−(4−メトキシフェニル)フルオレン;9−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−9−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン;4−(1−アダマンチル)フェノールなどが挙げられる。これらのなかでは、p−t−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール及びp−クミルフェノールが好ましく用いられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分子量調節剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、原料のジヒドロキシ化合物(式(1)で示される芳香族ジヒドロキシ化合物を必須成分として含む)100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
反応の際に、反応基質(反応原料)、反応媒(有機溶媒)、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート形成性化合物としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤は原料のジヒドロキシ化合物(式(1)で示される芳香族ジヒドロキシ
化合物を必須成分として含む)とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は、特に限定されないが、通常0〜40℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
溶融エステル交換法
次に、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、カーボネートエステルと原料のジヒドロキシ化合物(式(1)で示される芳香族ジヒドロキシ化合物を必須成分として含む)とのエステル交換反応を行う。
原料のジヒドロキシ化合物(式(1)で示される芳香族ジヒドロキシ化合物を必須成分として含む)、及びカーボネートエステルは、上述の通りである。
原料のジヒドロキシ化合物(式(1)で示される芳香族ジヒドロキシ化合物を必須成分として含む)とカーボネートエステルとの比率は所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、カーボネートエステルを等モル量以上用いることが好ましく、中でも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
溶融エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は、特に限定されず、従来から公知のものを使用できる。例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
溶融エステル交換法において、反応温度は、特に限定されないが、通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は、特に限定されないが、通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
反応形式は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし中でも、芳香族ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いても良い。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体、リン含有賛成化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
触媒失活剤の使用量は、特に限定されないが、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは8当量以下である。さらには、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下である。
<芳香族ポリカーボネート樹脂に関する物性>
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)で、10000〜20000であることを特徴とする。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)として、好ましくは11000以上、より好ましくは12000以上であり、また、好ましくは16500以下、より好ましくは15000以下である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることにより本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性が良好なものとなり、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を上記範囲に制御する際には、粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて混合し、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)を制御してもよい。
なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83、から算出される値を意味する。また極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
Figure 0006409617
芳香族ポリカーボネート樹脂の流れ値(Q値)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、1999年度版のJIS K7210付属書
Cに準拠し、高化式フローテスターを用いて、240℃、160kgfの条件で測定した流れ値(Q値)が、8〜50(単位:10−2cm/sec)であることが好ましい。なお、より好ましくはQ値が10以上であり、更により好ましくは15以上であり、特に好ましくは20以上である。また、一方、Q値は、より好ましくは45以下であり、更により好ましくは40以下であり、特に好ましくは35以下である。流れ値は、芳香族ポリカーボネート樹脂の高剪断時の溶融粘度を表し、成形性の指標として用いられる。つまり、流れ値が前記範囲の下限値未満の場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性(成形性)が発現しない恐れがある。一方、前記範囲の上限値を超える場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の機械強度が著しく低下する恐れがある。
芳香族ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の特徴を損なわない範囲であれば特に制限はないが、通常90℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上であり、また通常150℃以下、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下である。Tgが前記範囲の下限値未満の場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性が著しく劣る。一方、前記範囲の上限値を超える場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹
脂組成物の成形性が著しく低下するためやはり好ましくない。
芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量は、10〜700ppmである。また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量として、好ましくは50ppm以上であり、より好ましくは100ppm以上であり、一方で、好ましくは600ppm以下、より好ましくは500ppm以下である。末端水酸基量が、前記範囲の下限値以上であれば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の色相、生産性をより向上させることができ、また前記範囲の上限値以下であれば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性、湿熱安定性をより向上させることができる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量は、公知の任意の方法によって上記範囲に調整することができる。例えば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂をエステル交換反応によって重縮合して製造する場合は、カーボネートエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率;エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を上記範囲に調整することができる。なお、この操作により、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調整することもできる。
カーボネートエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端水酸基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を界面重合法にて製造する場合には、分子量調整剤(末端停止剤)の配合量を調整することにより、末端水酸基量を任意に調整することができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、芳香族ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
<芳香族ポリカーボネート樹脂組成物>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上述の芳香族ポリカーボネート樹脂と、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤及び輝度向上剤からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の剤とを含有することを特徴とする。
熱安定剤
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる熱安定剤としては、従来から熱可塑性樹脂に配合する公知のものであれば特に制限されないが、例えばリン系熱安定剤、イオウ系熱安定剤が挙げられるが、なかでのリン系安定剤が本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の初期色相、滞留熱安定性が優れる傾向にあるため好ましい。
リン系熱安定剤の具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、熱安定性、湿熱安定性の観点より、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイトが特に
好ましく、有機ホスファイト化合物が最も好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、アデカ社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
リン系安定剤の含有量は、特に限定されないが、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量以下、より好ましくは0.5質量部以下である。リン系安定剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、リン系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、湿熱安定性の低下、射出成形時にガスが出やすくなる可能性がある。
酸化防止剤
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には酸化防止剤を含有することも好ましい。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる酸化防止剤としては、従来から熱可塑性樹脂に配合する公知のものであれば特に制限されないが、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−ter
t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、アデカ社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
なお、酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
酸化防止剤の含有量は、特に限定されないが、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、より好ましくは0.1%質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、フェノール系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、射出成形時にガスが出やすくなる可能性がある。
離型剤
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤を含有することも好ましい。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる離型剤としては、従来から熱可塑性樹脂に配合する公知のものであれば特に制限されないが、例えば脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も包含する用語として使用される。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパル
ミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は、単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。
なお、上述した離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
離型剤の含有量は、特に限定されないが、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離形剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
輝度向上剤
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、輝度向上剤を含有することも好ましい。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる輝度向上剤としては、従来ポリカーボネート樹脂に配合する公知のものであれば特に制限されないが、例えばポリアルキレングリコールまたはその脂肪酸エステル、脂環式エポキシ化合物、低分子量アクリル樹脂、低分子量スチレン系樹脂等が好ましく挙げられる。
ポリアルキレングリコールとしては、アルキレングリコールの単独重合物、共重合物及びその誘導体が含まれる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの炭素数が2〜6のポリアルキレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのランダム又はブロック共重合物、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのグリセリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのモノブチルエーテルなどの共重合物等が挙げられる。
中でも好ましくは、オキシエチレン単位を有する重合体、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物及びそれらの誘導体である。
また、ポリアルキレングリコールの数平均分子量は、通常500〜500000、好ましくは1000〜100000、より好ましくは1,000〜50000である。
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルの脂肪酸エステルとしては、直鎖状又は分岐状脂肪酸エステルのいずれも使用でき、脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。また、一部の水素原子がヒドロキシル基などの置換基で置換されたものも使用できる。
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数10以上の1価又は2価の脂肪酸、例えば、1価の飽和脂肪酸、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチレン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸や、炭素数10以上の1価の不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、セトレイン酸、エルカ酸などの不飽和脂肪酸、また炭素数10以上の二価の脂肪酸、例えば、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸及びデセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸である。これらの脂肪酸は1種又は2種以上組み合せて使用できる。前記脂肪酸には、1つ又は複数のヒドロキシル基を分子内に有する脂肪酸も含まれる。
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、ポリエチレングリコールモノパルミチン酸エステル、ポリエチレングリコールジパルミチン酸エステル、ポリエチレングリコールモノステアリン酸エステル、ポリエチレングリコールジステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(モノパルミチン酸・モノステアリン酸)エステル、ポリプロピレングリコールモノパルミチン酸エステル、ポリプロピレングリコールジパルミチン酸エステル、ポリプロピレングリコールモノステアリン酸エステル、ポリプロピレングリコールジステアリン酸エステル、ポリプロピレングリコール(モノパルミチン酸・モノステアリン酸)エステル等が挙げられる。
輝度向上剤の含有量は、特に限定されないが、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、好ましくは0.01〜1質量部である。より好ましい含有量は0.02質量部以上、さらに好ましくは0.03質量部以上であり、特に0.9質量部以下であり、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.7質量部以下、特には0.6質量部以下である。0.01質量部を下回ると、色相や黄変の改善が十分でない場合があり、1質量部を超えると、色調の悪化、光線透過率の低下を招く可能性がある。
その他の成分
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果及び所望の諸物性を著しく阻害しない範囲で、上述したもの以外にその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、好ましくは、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、各種樹脂添加剤などが挙げられ、より好ましくは、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂である。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂としては、上述に例示したジヒドロキシ化合物に由来するポリカーボネート樹脂から任意に選択することができるが、なかでも芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましく、ビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネート樹脂がより好ましい。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂を含有する場合は、芳香族ポリカーボネート樹脂及び本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂の合計100質量%基準で、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。その他の樹脂を上記の範囲よりも多く用いた場合は、表面硬度、強度が低下する場合がある。
その他の樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、フェニルメタクリレートーメチルメタクリレート共重合体等のアクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂、無水マレイン酸変性ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;テルペン樹脂;等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含有する場合は、特に限定されないが、芳香族ポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂以外の樹脂の合計100質量%基準で、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。その他の樹脂を上記の範囲よりも多く用いた場合は、表面硬度、耐擦傷性、耐衝撃性、透明性が低下する場合がある。
樹脂添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、難燃剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
<芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、芳香族ポリカーボネート樹脂と必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造時に、重合終了後の溶融樹脂に直接添加剤を添加し、混練しても良い。このように添加する際には、重合終了後、溶融樹脂を押出機に直接導入し、添加剤を配合し、溶融混練しペレット化する方法が好ましい。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
<成形体>
本発明の成形体は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂または、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られるものであり、中でも射出成形して得られる成形体であることが好ましい。
また、本発明の成形体の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形体の用途
に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等、また特殊な形状のもの等、各種形状のものが挙げられる。また、例えば表面に凹凸を有していたり、三次元曲面を有する立体的な形状のものであってもよい。
成形体の製造方法は、特に限定されず、ポリカーボネート樹脂について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。
成形体の例を挙げると、電気電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器等の部品が挙げられる。これらの中でも、特に電気電子機器、OA機器、情報端末機器、家電製品、照明機器等の部品へ用いて好適である。
なかでも優れた流動性(成形性)と、透明性、強度を活かして光学部品、特に液晶ディスプレイ(LCD)を中心とするディスプレイ部材に好ましく用いることができる。このようなディプレイ部材の中でも、ディスプレイ装置に搭載される光を導くバックライトユニットの内部に設置される導光板に好適に用いることができる。
<導光板>
本発明の導光板は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形して得られることを特徴とする。具体的には、通常、キャビティに凹凸部が形成された射出成形用金型を用い、凹凸部を転写しつつ射出成形することで製造できる。なお、射出成形用金型のキャビティに凹凸部を設ける方法としては、入れ子に凹凸部を形成する方法が簡便で好ましい。
光反射面に通常設けられるライトガイドの凹凸パターンとしては、特に制限はなく、ドットタイプ、プリズムタイプ、反射グルーブタイプ等いずれのものでもよい。
本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂材料は、高い溶融流動性を備え、薄肉成形性に優れるため、射出成形用金型のキャビティに形成された細かい凹凸を良好に転写することができる。また熱安定性にも優れるため、高温条件や、例えば200mm/sec以上、特には500mm/sec以上の高速で射出成形した場合にも成形品中にヤケやゲルを発生させることなく、充填することができる。
導光板の形状は、一方から入射した光を、他方へ効率よく導くことができる形状であれば特に制限はないが、板状、棒状及びこれらを組み合わせた形状であることが好ましい。
導光板が板状である場合は、その厚みは、通常0.1〜10mmであり、好ましくは0.3〜5mm、さらに好ましくは0.3〜3mmである。導光板の厚みが上記上限値を超えると、樹脂の収縮によりドット、プリズム等の凹凸パターンが付与された光反射面の凹凸パターンが崩れたり、出光側の表面にヒケが生じるなどして十分な光量が確保できない場合がある。また、厚みが上記下限値未満の場合は、導光板自体の形状剛性が低下しやすくなり、変形により目的とする発光面を確保しにくくなる場合がある。また、出向面側を凸状に湾曲させた形状や、光源から離れるに従って肉厚を徐減させた形状は、光の進行方向に対してプリズムが重なって存在しているようなプリズムの干渉を抑制しやすい傾向にあるのでより好ましい。
導光板のライトガイドに設ける凹凸パターンは、目的とする発光量に合わせ、任意の深さ、角度、幅及びピッチで設ければよいが、光源からの距離が離れるに伴い生ずる光量の減衰や、プリズムの干渉による反射面への入射光量の低下を抑制するために、凹凸パターンは、光源から離れるに従って、その深さが順次深く、そのピッチが順次細かく又はその幅が順次広くなっていることが好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、表面硬度に優れるため、それから得られる成形体の中でも、導光板は、導光板上に形成された凹凸パターンが他の部材とこすれることによって摩耗するのが抑制されるという特徴も持つ。このような効果により、組み立て時、使用時に渡って設計通りの導光性能を維持することができる。
また、導光板が板状である場合は、出光側の表面は平面であることが好ましいが、その表面に曲率を持たせることもできる。ライトガイドの表面に曲率を持たせる場合、その曲率は100R以上、好ましくは500R以上、さらに好ましくは1000R以上である。出光側の表面曲率が上記下限値未満の場合は、凹凸パターンが付与された反射面にて反射された光が、出光側の表面全域に行き渡らず、発光むらが生じる場合がある。
さらに、本発明の導光板は、他方面から反射された光を拡散させるために、導光板の出光側の表面が、マット状やシボ状であってもよい。この場合、出光側表面の表面粗さは、JIS B0601 2001規格に準拠して測定されるRaの値として、好ましくは0.01〜2μm、より好ましくは0.02〜1.5μm、さらに好ましくは0.05〜1μmである。表面粗さが上記上限値を超えると、表面における光拡散度合いが大きくなりすぎて発光量が少なくなる恐れがあり、上記下限値未満であると、光拡散効果が期待できない場合がある。
本発明の導光板は、この導光板に向けて光を射出する光源を少なくとも備えることにより、液晶テレビ、携帯電話や携帯端末等の各種携帯機器のバックライトユニット等に使用できる。光源としては、LEDが好ましいが、有機EL、蛍光ランプ、冷陰極管なども使用できる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
[原料]
実施例、比較例に使用した原料は以下の通りである。
ジヒドロキシ化合物
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(本州化学工業株式会社製)(以下、BPC と略記する。)
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(三菱化学株式会社製)(以下、BPAと略記する。)
4,4−ジヒドロキシジフェニルメタン(東京化成工業株式会社製)(以下、BPFと略記する)
カーボネート形成性化合物
ジフェニルカーボネート(三菱化学株式会社製)(以下、DPCと略記する。)
[芳香族ポリカーボネート樹脂の製造]
反応器攪拌機、反応器加熱装置、反応器圧力調整装置を付帯した内容量150mlのガラス製反応器に、原料のジヒドロキシ化合物と、ジフェニルカーボネートを下記表1に示
す割合で投入し、次に触媒として、炭酸セシウムを下記表1に示す割合で添加して混合物を調製した。なお、炭酸セシウムは、ジヒドロキシ化合物1molに対するmol配合量を(単位:μmol/mol)で記載した。
次に、ガラス製反応器内を約100Pa(0.75Torr)に減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応器の内部を窒素置換した。窒素置換後、反応器外部温度を220℃にし、反応器の内温を徐々に昇温させ、混合物を溶解させた。その後、100rpmで撹拌機を回転させた。そして、反応器の内部で行われるジヒドロキシ化合物とDPCのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応器内の圧力を絶対圧で101.3kPa(760Torr)から13.3kPa(100Torr)まで減圧した。
続いて、反応器内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールをさらに留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応器外部温度を250℃に昇温すると共に、40分間かけて反応器内圧力を絶対圧で13.3kPa(100Torr)から399Pa(3Torr)まで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。その後、さらに、反応器外部温度を表1中に「最終重合温度」として記載の温度に昇温、反応器内の絶対圧を30Pa(約0.2Torr)まで減圧し、重縮合反応を行った。反応器の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。このときの重合時間を表1に「最終重合時間」として示す。
次いで、反応器内を、窒素により絶対圧で101.3kPaに復圧の上、ゲージ圧で0.2MPaまで昇圧し、反応器の槽底からポリカーボネート樹脂をストランド状で抜き出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た後、回転式カッターを使用してペレット化した。
[試験片の作成]
上記ペレットを100℃で5時間乾燥した後、日本製鋼所社製J5S型射出成形機を用い、シリンダー設定温度260℃、金型温度40℃、スクリュー回転数100rpmの条件下にて、48mm×15mm×1mm厚の平板状試験片及び、25mm×4mm×1mm厚の測定部を持つダンベル試験片を射出成形した。
[流れ値(Q値)評価]
1999年度版 JISK7210 付属書Cに記載の方法にてペレットの流れ値(Q値)を評価した。測定は島津製作所社製CFT−500A型フローテスターを用いて、穴径1.0mmφ、長さ10mmのダイを用い、試験温度240℃、試験力160kg/cm2、余熱時間420secの条件で排出された溶融樹脂量(単位:10−2cm/sec)を測定した。
末端水酸基濃度と粘度平均分子量の測定法は、上述に記載の方法で測定した。
[鉛筆硬度]
上記記載の方法で得られた平板状試験片(1mm厚)につき、JIS K5600−5−4に準拠し、鉛筆硬度試験機(東洋精機株式会社製)を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
[強度評価]
材料強度は、上記ダンベル試験片を用いて、折り曲げ強度にて評価した。1mm厚のダンベル試験片の測定部の端から12.5mmの部分までを固定し、片側に150°折り曲げ、次にその状態から逆方向に300°(もとに状態から逆方向に150°)に折り曲げることを繰り返して破断するまでの回数を測定した。なお、測定は5回実施し、平均値を
求めた。この試験において破断までの回数が大きいほど薄肉成形品とした場合にも製品強度が向上することがわかる。
[熱安定性評価]
熱安定性の評価は、上述の流れ値評価と同様の手法で、測定温度280℃、予熱時間420secの条件で、フローテスター中で樹脂を熱滞留したのちに排出し、得られたサンプルの粘度平均分子量(Mv)を測定した。次に、測定前の粘度平均分子量[Mv]からの低下率を求め熱安定性の指標とした。この粘度平均分子量(Mv)低下率(単位:%)が小さいほど、熱安定性が高く、高温条件で射出成形した際にも、物性低下が抑制されることがわかる。
Figure 0006409617

Claims (8)

  1. 下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物(ビスフェノールC)に由来する構
    造単位、及び、 2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン又は4,4 ’−
    ジヒドロキシジフェニルメタンに由来する構造単位からなる芳香族 ポリカーボネート樹
    脂であって、
    前記芳香族ポリカーボネート樹脂中のビスフェノールCに由来する構造単位とビスフェ
    ノールCとは異なるその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の合計量に対する前
    記その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有率が、0〜60%であり
    粘度平均分子量(Mv)が10000〜20000であり、末端水酸基量が、10〜7
    00ppmであることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂 。
    Figure 0006409617
  2. 前記粘度平均分子量(Mv)が10000〜16500であることを特徴とする請求項
    1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
  3. JIS(1999年度版) K7210 付属書Cに準拠し、高化式フローテスターを
    用いて、240℃、160kgfの条件で測定した流れ値(Q値)が、8 〜50(単位
    :10−2cm/sec)であることを特徴とする請求項1または2に記載の芳香族ポ
    リカーボネート樹脂。
  4. 前記末端水酸基量が、100 〜500ppmであることを特徴とする請求項1〜3の
    いずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
  5. 溶融エステル交換法で得られることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の
    芳香族ポリカーボネート樹脂。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂と、熱安定剤、酸化
    防止剤、離型剤、紫外線吸収剤及び輝度向上剤からなる群より選ばれる少なくとも1種類
    以上の剤を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂及び/または請求項
    6に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなる成形体。
  8. 前記成形体が導光板である、請求項7に記載の成形体。
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