以下、本開示の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る逆走検知システム1の適用例を示す説明図である。逆走検知システム1は、走行する車両(走行車両)3の車線変更が許容された複数の車線を含む道路2において、予め定められた走行方向(図1中の矢印X1、X2の向きを参照)と逆方向に走行する逆走車を検知するためのシステムである。図1では、道路2の流入口4から道路2に進入した車両5が走行方向を誤って逆走車3Bとなった例を示している。
道路2は、走行車線2Aおよび追い越し車線2Bを含む片側2車線の道路から構成されるが、これに限らず3車線以上を含む構成も可能である。また、道路2は、走行する車両の車線変更が許容された複数の車線を含む限りにおいて、高速道路や一般道を含め任意の道路とすることができる。さらに、図1では、説明の便宜上、逆走検知システム1を道路2の片側(図1中の上側)にのみ適用しているが、反対側の車線にも同様に適用可能である。
また、道路2を走行する車両3については、予め定められた正規の走行方向に向けて走行する通常の車両を順走車3Aと称し、その走行方向とは逆方向に走行する車両を逆走車3Bと称することにより、それらを必要に応じて区別する。なお、逆走検知システム1で検知される車両3の大きさには特段の制約はないが、本開示では、説明の便宜上、小型車(例えば、全長3.4m)および大型車(全長7.0m)に関して説明する。以下では、特に明示しない場合、車両3は小型車であるものとする。
逆走検知システム1は、各車線2A、2Bをそれぞれ走行する車両3を検知する車両感知器11と、走行中の順走車3Aを撮影可能な順走車用カメラ12と、走行中の順走車3Aの運転者等に対して交通情報(逆走車3Bの存在に関する情報を含む)を表示する順走車用情報表示板13と、走行中の逆走車3Bを撮影可能な逆走車用カメラ14と、走行中の逆走車3Bの運転者等に対して警告情報(逆走していることを報知する情報を含む)を表示する逆走車用警告表示板15と、を備える。それらの逆走検知システム1の各構成要素は、道路2の各車線の周辺に配置され、後に詳述する交通管制センター20における複数の情報機器と通信可能に接続されている。
車両感知器11は、道路2の周辺に設置され、走行する車両3を検出するための公知の構成を有する。車両感知器11には、道路2に配置されたセンサ群S(ここでは、全てループコイル)が付設されている。本開示では、車両感知器11は、センサ群Sの出力(ここでは、インダクタンス変化)に基づき走行する車両3を検出するループコイル式のトラフィックカウンターである。
なお、車両感知器11としては、ループコイル式に限らず、少なくとも道路2を走行する車両3を公知のセンサにより検知可能な限りにおいて、任意の方式の車両感知器を採用することが可能である。例えば、車両感知器11として、路面に向けて間欠的に発射された超音波の反射波に基づいて車両を検知する超音波式車両感知器や、走行する車両3の赤外線を感知する赤外線式車両感知器、光(近赤外線等)を利用する光学式車両感知器(光ビーコン)等を用いることもできる。また、車両感知器11としては、車両を検知するための専用の機器に限定されるものではなく、所定の機能の発揮により結果的に走行する車両3を検知可能な任意の機器を採用することが可能である。例えば、車両感知器11として、道路を通行する車両との通信に基づき当該車両を検知可能な公知の通信機器(例えば、車両に搭載された車載器との無線通信によって走行位置の履歴等の情報を取得可能な無線通信装置)を用いることもできる。
センサ群Sは、走行方向に所定の間隔をおいて走行車線2Aの路面下にそれぞれ配置された上流及び下流センサ(第1センサ)S1、S3と、走行方向に所定の間隔をおいて追い越し車線2Bの路面下にそれぞれ配置された上流及び下流センサ(第2センサ)S2、S4とから構成される。ただし、センサ群Sを構成するセンサの数や配置は適宜変更することが可能である。
順走車用カメラ12は、公知の撮影機能や通信機能を有するビデオカメラであり、順走車3Aのフロント側を撮影可能なように配置される。また、逆走車用カメラ14は、逆走車3Bのフロント側を撮影可能なように配置されることを除けば、順走車用カメラ12と同様に構成することができる。なお、順走車用カメラ12は省略してもよい。
順走車用情報表示板13は、順走車3Aの運転者等が視認可能な向きに配置されたLED式電光掲示板である。ただし、順走車用情報表示板13としては、LED式電光掲示板に限らず任意の表示装置(デジタルサイネージ等)を用いることが可能である。また、逆走車用警告表示板15は、逆走車3Bの運転者等が視認可能な向きに配置されることを除けば、順走車用情報表示板13と同様に構成することができる。
図2は、逆走検知システム1の概略構成を示すブロック図である。逆走検知システム1において、車両感知器11は、付設されたセンサ群Sが接続されるセンサ接続部21と、センサ群Sの出力から複数の車両検出波形を含む車両検知信号を生成する感知ユニット22と、感知ユニット22によって生成された車両検知信号の情報処理を行う情報処理部23と、情報処理部23の情報処理に必要な車両検知信号等の各種情報を記憶するメモリ24と、交通管制センター20の情報機器と通信するための公知の通信ネットワーク25に接続される通信インタフェース(I/F)26と、を備える。ここで、車両検知信号は、車両検出波形に対応する複数の検知パルスを含む車両の検知パターンを構成する。
図示は省略するが、センサ接続部21は、センサとしてのループコイルが接続されるトランス等の公知の構成を含む。また、感知ユニット22は、トランスを介してループコイルに接続された発振回路、増幅器、及び発振回路の出力から車両検知信号を生成するための波形生成回路等の公知の構成を含む。感知ユニット22により生成された車両検知信号は、メモリ24に順次記憶される。
情報処理部23は、メモリ24に記録された車両検知信号から走行する車両3を検知する公知の処理を実行する車両検知機能27と、メモリ24に記録された車両検知信号から走行する車両3中に存在する逆走車3Bをリアルタイムで検知する処理(以下、「逆走検知処理」という。)を実行する逆走検知機能28と、を有している。情報処理部23の車両検知機能27および逆走検知機能28は、情報処理部23を構成するプロセッサ(図示せず)が、それぞれ車両検知用プログラムおよび逆走検知用プログラムを実行することにより実現することができる。
情報処理部23は、後に詳述する逆走検知処理において、走行車線2Aにおける上流及び下流センサS1、S3の出力に基づく車両検知信号(第1車両検知信号)と、走行車線2Aに隣接する追い越し車線2Bにおける上流及び下流センサS2、S4の出力に基づく車両検知信号(第2車両検知信号)とをメモリ24から取得し、それらの車両検知信号(少なくとも一方)における複数の検知パルスを含む検知パターンに基づき、走行車線2Aおよび追い越し車線2Bの少なくとも一方を走行する逆走車が存在するか否かを判定する。
なお、逆走検知処理は、必ずしも車両感知器11において実施される必要はなく、例えば、車両感知器11と通信可能に接続されたコンピュータ等のプロセッサを備えた他の情報機器が、車両感知器11から必要な情報を取得することにより、車両感知器11と同様の逆走検知機能を実行する構成も可能である。
車両感知器11は、通信ネットワーク25を介することなく専用ケーブルを介して逆走車用警告表示板15と通信可能に接続されており、後に詳述するように、逆走車3Bが検知された場合には、交通管制センター20における情報機器(後述する中央制御装置31等)による命令を必要とすることなく走行中の逆走車3Bの運転者等に対する逆走情報(警告情報等)を逆走車用警告表示板15に表示させることが可能である。これにより、逆走車3Bの運転者等に走行方向の誤りを迅速に認識させることができる。一方、順走車用情報表示板13の情報表示については、交通管制センター20における情報機器によって管理される。
順走車用カメラ12および逆走車用カメラ14は、通信ネットワーク25を介して交通管制センター20の情報機器と通信可能に接続されており、撮影した画像(動画像または静止画像)は、映像データとして交通管制センター20に順次送信する。
交通管制センター20には、交通管理処理を実行する中央制御装置31と、交通管理処理に関する各種情報を表示する交通管制表示モニタ32と、順走車用カメラ12および逆走車用カメラ14から受信した全ての車両映像データ33を蓄積する車両映像蓄積装置34と、車両映像データ33から逆走車検出時刻等にて切出した逆走車映像を逆走映像データ35として蓄積する逆走映像蓄積装置36と、それら各装置を通信ネットワーク25に接続するための通信インタフェース(I/F)37と、が設けられている。また、交通管制センター20には、オペレータが車両映像データ33および逆走映像データ35を閲覧するための閲覧用端末38、39が設けられている。
中央制御装置31は、交通管理処理として、地域ごとの交通管制を行うべく車両感知器11から収集した情報(車両感知器情報)などに基づいて、信号機を制御する交通信号制御や、道路維持(メンテナンス)のための統計情報収集等を行うことができる。また、中央制御装置31は、交通管理処理として、車両感知器情報(逆走情報を含む)や信号制御実績の情報に基づいて、逆走に関する警告・警戒情報や、渋滞区間などに関する交通情報(渋滞情報を含む)を生成して、この交通情報を車両の運転者に提供することもできる。
また、中央制御装置31は、通信ネットワーク25を介して逆走車用警告表示板15を制御することができる。このとき、車両感知器11において、逆走車が存在すると判定した場合に、逆走車用警告表示板15に逆走車の運転者に対する警告を表示するように、逆走車が存在する旨の通知を中央制御装置31に対して行う。
また、交通管制センター20には、交通予測装置40が設けられている。交通予測装置40は、各地点に設置された車両感知器11などから実測された交通情報を収集してその交通情報を蓄積し、その蓄積された交通情報に基づき対象地点における現在の交通情報を予測(推定)し、その予測された交通情報を車両感知器11に送信する。なお、車両感知器11は、交通予測装置40と接続されていない場合に、過去に自装置で実測されて自装置に蓄積された交通情報から現在の交通情報を推定する機能を備えている。
図3は走行状況に応じた車両3の車両検知信号41の第1の例を示す説明図であり、図4はセンサ上を車両が通行するのに応じて出現する検知パルスの説明図である。
図3では、走行車線2Aの上流及び下流センサS1、S3ならびに追い越し車線2Bの上流及び下流センサS2、S4の出力に基づく車両検知信号41が示されている。車両検知信号41における数値「1」は、車両3の検知状態を示し、また、数値「0」は、車両3の非検知状態を示す。ここでは、各数値は車両検知の各サンプリング周期における代表値であり、1つのサンプリング周期時間の経過に相当する。また、図3では、車両検知信号41の各領域42−46における走行状況を、「(A)順走車の直進」、「(B)順走車の車線変更」、「(C)順走車の直進」、「(D)逆走車の直進」、「(E)逆走車の車線変更」として示す。なお、本開示では、説明の便宜上、実際の車両検知信号(検知パルスの幅や、検知パルス間隔等)を改変したものを示している。
図3において、車両検知信号41の領域42に含まれる検知パルスは、(A)順走車3Aの直進に相当する。より詳細には、走行車線2Aにおける車両3が上流センサS1の検知領域(ここでは、図4中の走行方向長さL1で示す領域)を通過する際の上流センサS1のON状態を示す検知パルスPU1が、車両検知信号41の上流センサにおいて連続する3つの「1」に相当し、また、車両3が下流センサS3の検知領域を通過する際の下流センサS3のON状態を示す検知パルスPU2が、車両検知信号41の下流センサにおいて連続する3つの「1」に相当する。以下、車両検知信号41における検知パルスと数値「0」、「1」の関係は上述の場合と概ね同様である。
また、車両検知信号41の領域43、領域44は、(B)順走車3Aの車線変更に相当する。より詳細には、走行車線2Aにおいて先行する1台目の順走車3Aは、上流センサS1の検知領域を通過した後に車線変更し、追い越し車線2Bにおける下流センサS4の検知領域を通過する。また、後続の追い越し車線2Bにおける2台目の順走車3Aは、上流センサS2の検知領域を通過した後に車線変更し、走行車線2Aにおける下流センサS3の検知領域を通過する。
また、車両検知信号41の領域45は、(C)順走車3Aの直進に相当する。ただし、ここでは、上述の(A)の小型車の場合とは異なり、順走車3Aが大型車である場合を示している。大型車の全長は、上流センサS1、S2と下流センサS3、S4との間隔L2(図4参照)よりも大きいため、領域45における車両検知信号41は、上流センサS2および下流センサS4の検知状態(検知パルス)が一部重複しているタイミング(時刻)が存在する。
また、車両検知信号41の領域46は、(D)逆走車3Bの直進に相当する。より詳細には、走行車線2Aにおける逆走車3Bは、順走車3Aとは逆に下流センサS4および上流センサS2の順で通過する。
また、車両検知信号41の領域47は、(E)逆走車3Bの車線変更に相当する。より詳細には、追い越し車線2Bを走行する逆走車3Bは、下流センサS4の検知領域を通過した後に車線変更し、走行車線2Aにおける上流センサS1の検知領域を通過する。
図5はセンサの検知結果に基づく正常走行の判別例を示す説明図であり、図6はセンサの検知結果に基づく異常走行または不明走行(不明車、逆走車候補)の判別例を示す説明図である。
なお、以下の説明では、図4に示した上流センサS1、S2の検知パルスの立ち上がりを「A」として上流センサS1、S2の検知領域への車両3の進入を示し、上流センサS1、S2の検知パルスの立ち下がりを「B」として上流センサS1、S2の検知領域の車両3の通過を示し、下流センサS3、S4の検知パルスの立ち上がりを「C」として下流センサS3、S4の検知領域への車両3の進入を示し、下流センサS3、S4の検知パルスの立ち下がりを「D」として下流センサS3、S4の検知領域の車両3の通過を示す。
図5において、「センサ出力」の欄には、正常走行におけるセンサ出力の6つの類型(「ABCD」、「ABCAD」、「ABCABD」、「ACBD」、「ACBAD」、「ACBABD」)が示されている。また、それらセンサ出力の各類型に対応して、「車両タイプ」の欄には、車両のタイプ(ここでは、小型車または大型車)が示され、また、「走行状況推定」の欄には、推定される走行状況が示されている。
例えば、センサ出力「ABCD」は、上流センサのON状態を示す検知パルスPU11および下流センサのON状態を示す検知パルスPU12が順次出力された場合を示している。より詳細には、センサ出力「ABCD」は、上流センサ(S1またはS2)の検知パルスPU11の立ち上がり「A」、上流センサの検知パルスPU11の立ち下がり「B」、下流センサ(S3またはS4)の検知パルスPU12の立ち上がり「C」、及び下流センサの検知パルスPU12の立ち下がり「D」が順に検出された場合を示している(以下、同様。)。このようなセンサ出力は、順走車3A(小型車)が上流センサおよび下流センサを順次正常に通過したことによると推定される。
また例えば、センサ出力「ABCAD」は、上流センサのON状態を示す検知パルスPU13および下流センサのON状態を示す検知パルスPU14が順次出力され、かつ検知パルスPU14の後に上流センサのON状態を示す更なる検知パルスPU15が出力された場合を示している。このようなセンサ出力は、1台目の順走車3A(小型車)が上流センサおよび下流センサを順次正常に通過し、かつ2台目の順走車3A(小型車)が上流センサの検知領域に正常に進入したことによると推定される。
また例えば、センサ出力「ACBD」は、上流センサのON状態を示す検知パルスPU16および下流センサのON状態を示す検知パルスPU17が順次出力された場合を示している。このようなセンサ出力は、順走車3A(大型車)が上流センサおよび下流センサを順次正常に通過したことによると推定される。この場合、検知対象が大型車であるため、上流センサがOFF状態(「B」)となる前に下流センサがON状態(「C」)となっている。
このように、車両感知器11による逆走検知処理では、検知パルスの立ち上がりおよび立ち下がりのタイミング(「A」、「B」、「C」、「D」)の情報に基づき、正常走行する車両3(順走車3A)を判別することが可能である。なお、センサ出力「ABCABD」、「ACBAD」、及び「ACBABD」についても、上述の「ABCD」等の場合と同様である。
また、図6において、「センサ出力」の欄には、帰属を特定できない検知パルスが出力される異常走行におけるセンサ出力の4つの類型(「CAD」、「ACD」、「CABD」、「CD」)および検知パルスが適正なタイミングで出力されない不明走行(不明車、逆走車候補)におけるセンサ出力の4つの類型(「ABACD」、「ABACBD」、「CDAB(DCBA)」、上記以外)が示されている。また、それらセンサ出力の各類型に対応して、「要因」の欄には、異常走行または不明走行と判別されたセンサに関する要因が示され、また、「走行状況推定」の欄には、推定される走行状況が示されている。
例えば、センサ出力「CAD」は、1台目の車両3を検知する際にセンサのチャタリングが生じ、1台目の車両3を上流センサで検知せずに、後続の2台目の車両3を検知(検知パルスPU21参照)したと推定される。このようなセンサ出力からは、2台目の順走車3A(小型車)が上流センサに正常に進入したことのみが推定されるため、これにより、検知パルスPU22(CD検知パルス)のデータは廃棄すべきデータとして処理される(当面の順走車3Aの車両検知信号からは除外される。)。
なお、センサ出力「ACD」については、センサ出力「CAD」の場合よりも早く2台目の順走車3A(小型車)が上流センサに正常に進入したことを除けば、センサ出力「CAD」の場合と同様である。
また例えば、センサ出力「ABACD」は、正常走行として判別不能な車両検知信号を示している。この場合、上流センサのON状態を示す検知パルスPU23および下流センサのON状態を示す検知パルスPU24が順次出力されているが、両パルスの時間間隔が大きく同一の車両3としては推定されない。このようなセンサ出力からは、2台目の順走車3A(小型車)が上流センサに正常に進入したこと(検知パルスPU25参照)のみが推定され、検知パルスPU23、PU24は、不明車に帰属する(順走車3Aに帰属しない)ものとして処理される。
また例えば、センサ出力「ABACBD」は、正常走行として判別不能な検知パターンであって、1台目の車両3を上流センサが検知(検知パルスPU26参照)した直後に後続の2台目の車両3が上流センサに検知(検知パルスPU27参照)されたことを示している。この場合、2台目の車両3に対する検知パルスPU27の後に下流センサの検知パルスPU28が出力されているが、検知パルスPU26、PU27、PU28は、全て不明車に帰属する(順走車3Aに帰属しない)として処理される。
また例えば、センサ出力「CDAB」は、正常走行として判別不能な検知パターンを示している。この場合、下流センサの検知パルスPU29の後に上流センサの検知パルスPU30が出力されているため、検知パルスPU29、PU30は、逆走車候補に帰属するとして処理される。
また例えば、センサ出力が上記以外の場合に、正常走行として判別不能な検知パターンであって、1台目の車両3の下流センサによる検知パルスが検知されない場合には、1台目の車両3の上流センサの検知パルスPU31と、2台目の車両3の上流センサの検知パルスPU32の時間間隔T1が所定の閾値(ここでは、3秒)以上であって、2台目の車両3の下流センサによる検知までに1台目の車両3が下流センサに検知されない場合には、2台目の車両3の上流センサの検知パルスPU32の後の下流センサの検知パルスP33を含め、検知パルスPU31、PU32、PU33は、全て不明車に帰属する(順走車3Aに帰属しない)ものとして処理される。
このように、車両感知器11による逆走検知処理では、検知パルスの立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングの情報に基づき、正常走行以外の異常走行または不明走行として定義された車両3(逆走車3Bの候補を含む)を判別することが可能である。なお、センサ出力「CABD」及び「CD」についても、上述の「CAD」等の場合と同様である。
車両感知器11(情報処理部23)は、逆走検知処理として、車線毎の車両検知信号から順走車3A(すなわち、順走車3Aに相当する検知パルスの組み合わせ。以下、同様。)を検出する第1順走処理と、複数の車線の車両検知信号をマージした車両検知信号から順走車3Aを検出する第2順走処理と、車線毎の車両検知信号から逆走車3B(逆走車候補)を検出する第1逆走処理と、複数の車線の車両検知信号をマージした車両検知信号から逆走車3B(逆走車候補)を検出する第2逆走処理とを実行することができる。以下、それらの各処理の詳細について説明する。
図7は図3に示した検知パルスに関する第1順走処理(車線毎の順走処理)における判定結果の例を示す説明図であり、図8は第1順走処理に続く第2順走処理(車線マージ後の順走処理)における判定結果の例を示す説明図であり、図9は第2順走処理に続く第1逆走処理(車線毎の逆走処理)における判定結果の例を示す説明図であり、図10は第1逆走処理に続く第2逆走処理(車線マージ後の逆走処理)における判定結果の例を示す説明図である。
なお、図7−図10において、車両検知信号と共に(すなわち、各検知パルスを構成するデータに対応して)示された判定結果については、図5に示した正常走行に該当するものを「正」と表示し、図6に示した異常走行における廃棄対象に該当するものを「廃」と表示し、図6に示した不明走行における不明車に該当するものを「不」と表示し、図6に示した不明走行における逆走車候補に該当するものを「逆」と表示している。本開示では、「廃」および「不」が付された検知パルスのデータの取扱いに差はないため、それらは、「正」または「逆」が付された検知パルスに該当しないことを意味する(他の図においても同様。)。
図7に示すように、第1順走処理では、走行車線2Aの車両検知信号41Aおよび追い越し車線2Bの車両検知信号41Bにおける検知パルス(またはそれらを含む検知パターン。以下、同様。)についてそれぞれ車線毎に判定がなされる。走行車線2Aの車両検知信号41Aでは、図3の場合と同様に領域42の検知パルスについて正常走行と判定される。一方、領域51、53の検知パルスについては不明車との判定がなされ、また、領域52の検知パルスについては、廃棄対象と判定される。
また、追い越し車線2Bの車両検知信号41Bでは、図3の場合と同様に領域45の検知パルスについて正常走行(大型の順走車3A)との判定がなされる。一方、領域55、58の検知パルスについては不明車との判定がなされ、また、領域54、56、57の検知パルスについては、廃棄対象と判定される。
図8に示すように、第2順走処理では、まず、第1順走処理後の走行車線2Aの車両検知信号41Aおよび追い越し車線2Bの車両検知信号41Bのマージ処理がなされ、マージ後の車両検知信号41Cが生成される。このとき、マージ処理の対象となる車両検知信号41A、41Bでは、上述の第1順走処理で正常走行と判定された検知パルス(領域42、45)が処理対象から除外(ここでは、消去)されている。
マージ後の車両検知信号41Cでは、走行車線2Aの領域51および追い越し車線2Bの領域54の検知パルスを含む領域61の検知パルスについて正常走行との判定がなされ、同様に、走行車線2Aの領域52および追い越し車線2Bの領域55の検知パルスを含む領域62の検知パルスについて正常走行と判定される。このように第2順走処理では、判定対象車両の車線変更によって不明車または廃棄対象と判定されていた検知パルスをマージ後の車両検知信号41Cにおいて正常走行と判定することが可能となる。これにより、逆走車候補の判定対象からそれらの新たに正常走行と判定された検知パルスを除外できるため、逆走車候補の判定精度が向上する。
なお、マージ後の車両検知信号41Cにおいて、領域53、56−58は第1順走処理の判定結果と同様(不明車または廃棄対象)である。
このように、第2順走処理では、マージ後の車両検知信号41Cにおける検知パターンに基づき順走車3Aの存在を判定するため、走行車両の車線変更が許容された複数の車線2A、2Bを含む道路2において、車両感知器11のセンサ群Sからの出力に基づく逆走車候補の検知精度を向上させることが可能となる。
図9に示すように、第1逆走処理では、走行車線2Aの車両検知信号41Aおよび追い越し車線2Bの車両検知信号41Bにおける検知パルスについてそれぞれ車線毎に判定がなされる。このとき、車両検知信号41A、41Bでは、上述の第2順走処理で正常走行と判定された検知パルス(領域61、62)が処理対象からさらに除外されている。また、この第1逆走処理(第2逆走処理も同様)では、上流センサのデータと下流センサのデータとを逆転させる(すなわち、上流センサの検知パルスを下流センサのものとして扱う一方、下流センサの検知パルスを上流センサのものとして扱う)ことにより、上述の第1順走処理における正常走行を判定するのと同じ手順で逆走車候補を判定することが可能となる。
走行車線2Aの車両検知信号41Aでは、図8の領域53に相当する領域153の検知パルスについて廃棄対象と判定され、また、図8の領域56に相当する領域156の検知パルスについて不明車との判定がなされる。一方、図8の領域57、58の検知パルスを含む領域65の検知パルスについて逆走車候補と判定される。
図10に示すように、第2逆走処理では、まず、第1逆走処理後の走行車線2Aの車両検知信号41Aおよび追い越し車線2Bの車両検知信号41Bのマージ処理がなされ、マージ後の車両検知信号41Cが生成される。このとき、マージ処理の対象となる車両検知信号41A、41Bでは、上述の第1逆走処理で正常走行と判定された検知パルス(領域65)が処理対象から除外されている。
マージ後の車両検知信号41Cでは、走行車線2Aの領域53および追い越し車線2Bの領域54の検知パルスを含む領域66の検知パルスについて逆走車候補と判定される。
このように第2逆走処理では、判定対象車両の車線変更によって不明車または廃棄対象と判定されていた検知パルスをマージ後の車両検知信号41Cにおいて逆走車候補と判定することが可能となる。また、第2逆走処理では、マージ後の車両検知信号41Cにおける検知パターンに基づき逆走車3Bの存在を判定するため、走行車両の車線変更が許容された複数の車線2A、2Bを含む道路2において、車両感知器11のセンサ群Sからの出力に基づく逆走車候補の検知精度を向上させることが可能となる。
図11は走行状況に応じた車両3の車両検知信号41の第2の例を示す説明図である。車両検知信号41の第2の例に関し、以下で特に言及しない事項については、図3に示した第1の例の場合と同様とする。なお、図11において、車両検知信号41の領域68および領域69における走行状況を、「(B1)順走車の車線変更」として示す。
図11は、(B1)順走車3Aの車線変更の形態において図3の場合とは異なる。車両検知信号41の領域68には、走行車線2Aにおいて先行する1台目の順走車3Aが上流センサS1を通過した後に車線変更し、さらに下流センサS3、S4の双方の検知領域を通過したことによる検知パルスが含まれる。また、車両検知信号41の領域69には、後続の追い越し車線2Bにおける2台目の順走車3Aが上流センサS2の通過と略同時に車線変更し、さらに、走行車線2Aの上流センサS1および下流センサS3の双方の検知領域を通過したことによる検知パルスが含まれる。
図12は図11に示した検知パルスに関する第1順走処理(車線毎の順走処理)における判定結果の例を示す説明図であり、図13は第1順走処理に続く第2順走処理(車線マージ後の順走処理)における判定結果の例を示す説明図であり、図14は第2順走処理に続く第1逆走処理(車線毎の逆走処理)における判定結果の例を示す説明図であり、図15は第1逆走処理に続く車線毎の統計情報処理における判定結果の例を示す説明図である。
図12に示すように、第1順走処理では、図7の場合と同様に、走行車線2Aの車両検知信号41Aおよび追い越し車線2Bの車両検知信号41Bにおける検知パルスについてそれぞれ車線毎に判定がなされる。走行車線2Aの車両検知信号41Aでは、領域71−73の検知パルスについて正常走行と判定される。一方、領域74の検知パルスについては廃棄対象と判定され、また、領域75の検知パルスについては、不明車と判定される。
また、追い越し車線2Bの車両検知信号41Bでは、領域76の検知パルスについて正常走行と判定される。一方、領域78、81の検知パルスについては不明車と判定され、また、領域77、79、80の検知パルスについては、廃棄対象と判定される。
図13に示すように、第2順走処理では、図8の場合と同様に、まず、第1順走処理後の走行車線2Aの車両検知信号41Aおよび追い越し車線2Bの車両検知信号41Bのマージ処理がなされ、マージ後の車両検知信号41Cが生成される。このとき、マージ処理の対象となる車両検知信号41A、41Bでは、上述の第1順走処理で正常走行と判定された検知パルス(領域71−73、76)が処理対象から除外されている。
この場合、マージ後の車両検知信号41Cでは、領域75、77、78、80−82は、第1順走処理の判定結果と同様(不明車または廃棄対象)である。なお、領域82は、領域74および領域79における検知パルスが統合されたものである。
図14に示すように、第1逆走処理では、図9の場合と同様に、走行車線2Aの車両検知信号41Aおよび追い越し車線2Bの車両検知信号41Bにおける検知パルスについてそれぞれ車線毎に判定がなされる。
走行車線2Aの車両検知信号41Aでは、図13の領域74および領域75に相当する領域85の検知パルスについて逆走車候補と判定され、また、図13の領域77、78に相当する領域86および図13の領域80、81に相当する領域87の検知パルスについてそれぞれ逆走車候補と判定される。一方、図13の領域79に相当する領域179の検知パルスについては不明車と判定される。
なお、上述の場合と同様に、第1逆走処理の後にさらに第2逆走処理を実行することが可能であるが、ここでは、逆走車候補とされずに残っているのは領域179の検知パルスのみであるため、第2逆走処理の説明を省略する。
ここで、図14に示した第1逆走処理では、領域86、87の検知パルスについてそれぞれ逆走車候補であるとの判定がなされたが、図15に示すように、逆走検知システム1では、それら逆走車候補の判定精度を向上させるための車線毎の統計情報処理を実行することが可能である。
車線毎の統計情報処理では、領域86、87において逆走車候補と判定された上流センサおよび下流センサによる検知パルスの時間間隔L3、L4について、統計情報処理によって予め求められた統計値との比較が実行される。
そのような統計値としては、例えば、道路2を走行する前後の車両(順走車3A)の時間間隔の計測値を統計処理したもの(例えば、平均値や中間値などに基づく時間間隔の閾値、または平均値や中間値などを基準とする規定時間幅)を用いることができ、上流センサおよび下流センサによる検知パルスの時間間隔が統計値を外れた場合(例えば、閾値よりも大きい場合、または、規定時間幅から外れた場合)には、両検知パルスは別車両に帰属すると判定される。
図15では、時間間隔L3が統計値から外れた(すなわち、領域86の検知パルスは別車両に帰属する)と判定された場合を示しており、これにより、上述の第1逆走処理の領域86に関する判定結果(逆走車候補)は取り消される。一方、時間間隔L4は、統計値に適合すると判定されたため、上述の第1逆走処理の領域87に関する判定結果(逆走車候補)は維持される。
図16は走行状況に応じた車両3の車両検知信号41の第3の例を示す説明図である。車両検知信号41の第3の例に関し、以下で特に言及しない事項については、図3に示した第1の例または図11に示した第2の例の場合と同様とする。
逆走検知処理では、逆走車を検知すると、逆走車の運転者に対して逆走車用警告表示板15を用いて逆走の警告を通知する。このとき、警告相手の混同を避けるため、センサS1−S4からそれほど離れていない地点に逆走車用警告表示板15を設置して、車両3がセンサS1−S4を通過してから短時間の間に逆走の警告を逆走車用警告表示板15に表示する。このため、逆走車がセンサS1−S4の設置地点から逆走車用警告表示板15の設置地点に到達するまでの限られた時間内に逆走検知処理を終了する必要がある。
一方、逆走検知処理では、処理対象時間が予め設定されており、上流側の検知パルス(上流センサS1,S2の検知パルス)の立ち上がりを起点とした処理対象時間内に抽出された上流側の検知パルスと下流側の検知パルス(下流センサS3,S4の検知パルス)とを同一の車両によるものとして関係づけることで、それらの検知パルスを1台の車両(順走車)の正常走行を表すもの(順走パルス)として処理する。この処理対象時間は、センサS1−S4の設置地点から逆走車用警告表示板15の設置地点までの距離と、逆走車の想定される最高速度とから、逆走車の運転手が確実に逆走車用警告表示板15を視認できる表示開始タイミングとなるような標準値が設定されている。このため、道路の混雑により車両3の速度が遅くなると、処理対象時間内に車両3が下流センサS3,S4に到達できないことから、処理対象時間内に下流側の検知パルスが得られないため、順走車を適切に処理できなくなることで、逆走車の誤検知が発生する。
そこで、車両の速度が遅い場合、すなわち、道路が混雑している場合には、逆走車の検知を中断することも考えられるが、本開示の実施形態においては、処理対象時間を延長する制御が行われる。
図16では、領域201,202,203の検知パルスは、(A)走行車線における順走車の直進に相当し、領域204,205,206の検知パルスは、(C)追い越し車線における順走車の直進に相当する。このうち、領域201の検知パルスでは、車両の速度が遅いため、領域201に含まれる上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとが別々のタイミングで抽出される場合がある。すなわち、上流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした処理対象時間で上流側の検知パルスのみが抽出され、その後の処理対象時間で下流側の検知パルスが抽出される場合がある。この場合、上流側の検知パルスは不明車と判定される(不明パルス)。一方、下流側の検知パルスは廃棄対象と判定され(廃棄パルス)、領域208のように後続の順走車による検知パルスと組み合わされて逆走車と誤検知される可能性がある。
なお、道路が混雑している場合には車両の速度が遅くなるため、逆走検知処理の時間的な余裕が大きくなるため、処理対象時間を長くしても支障はない。また、例えば、非混雑状態(自由流)に採用される処理対象時間の標準値を0.7秒とすると、混雑状態(渋滞)で採用される処理対象時間の延長値は3秒とする。
図17は交通状況に関する設定テーブルを示す説明図である。図18は処理対象時間に関する設定テーブルを示す説明図である。
逆走検知処理では、対象とする道路の現在の交通状況を車線ごとに判定し、その判定結果に応じて処理対象時間を設定する。具体的には、車線ごとの現在の交通状況に応じて、処理対象時間を標準値および延長値のいずれかに設定する。なお、逆走車用警告表示板15が接続されていない場合には、処理対象時間として延長値を設定して、交通路状況に応じて変更しないようにしてもよい。
図17に示すように、交通状況に関する設定テーブルには、現在の交通状況を判定するための基準となる閾値が登録されている。具体的には、交通状況が、自由流、混雑、渋滞、および重渋滞の4つの混雑レベルにレベル分けされ、車線の混雑度に関する評価値(平均速度、占有率、連続回数)ごとに、交通状況をレベル分けする閾値が登録されている。この設定テーブルを参照することで、車両の平均速度や道路の占有率や連続回数に基づき、混雑レベル(自由流、混雑、渋滞、重渋滞)が設定される。なお、混雑レベルでは、自由流、混雑、渋滞、重渋滞の順に混雑度が増す。
また、交通状況に関する設定テーブルでは、別の混雑レベルから各混雑レベルに遷移する際の判定の閾値(IN)と、各混雑レベルから別の混雑レベルに遷移する際の判定の閾値(OUT)とが別々に登録されており、これにより各混雑レベルの判定でヒステリシス制御が行われ、混雑レベルが必要以上に頻繁に変化することを避けて安定した制御を行うことができる。
なお、交通状況は対象とする道路に応じて異なるため、交通状況に関する設定テーブルの登録内容(閾値など)は、対象とする道路に応じて適宜に設定すればよい。
また、図18に示すように、処理対象時間に関する設定テーブルには、車線ごとの現在の交通状況と処理対象時間との関係が登録されている。具体的には、車線ごとの交通状況に応じて、道路全体の交通状況を表すモードが登録されており、さらに、そのモードごとに処理対象時間(標準値、延長値)が登録されている。図18に示す例は、片側2車線の場合であり、2つの車線(第1車線、第2車線)の各交通状況の組み合わせによるパターンごとに処理対象時間(標準値、延長値)が登録されている。この設定テーブルを参照することで、車線ごとの現在の交通状況に基づき、道路全体の現在の交通状況を表すモードが選択され、そのモードに対応する処理対象時間(標準値、延長値)が設定される。
この処理対象時間に関する設定テーブルでは、両方の車線の混雑度を統合して道路全体の混雑度を判断して、処理対象時間の延長の要否を判定するようにしている。例えば、パターン「1」では、第1車線および第2車線の交通状況が共に自由流であり、この場合、道路全体の交通状況は自由流と判断して、処理対象時間を標準値に設定する。また、パターン「5」では、第1車線の交通状況が渋滞で、第2車線の交通状況が混雑であり、この場合、道路全体の交通状況は渋滞と判断して、処理対象時間を延長値に設定する。
なお、車線ごとの交通状況と道路全体の交通状況との関係は対象とする道路に応じて異なるため、処理対象時間に関する設定テーブルの登録内容(車線ごとの交通状況の組み合わせパターンに応じた処理対象時間など)は、対象とする道路に応じて適宜に設定すればよい。
ここで、図19、図20、図21、図22、図23は、処理対象時間を延長しないために逆走車の誤検知が発生する場合の例であり、図24、図25、図26は、処理対象時間を延長することで逆走車の誤検知を回避できる場合の例である。
なお、ここでは、主に順走車の直進を判定する第1順走処理(車線毎の順走処理)について説明するが、第1順走処理に続いて、順走車の車線変更を判定する第2順走処理、逆走車の直進を判定する第1逆走処理、逆走車の車線変更を判定する第2逆走処理が順次行われる。また、各処理では、処理対象時間内に取得した検知パルスが、順走車の直進、順走車の車線変更、逆走車の直進、逆走車の車線変更にそれぞれ該当すると判定されると、その検知パルスを除去する、すなわち、次の処理対象から除外し、これにより判定対象とする検知パルスがなくなると、その処理対象時間における次の処理(第2順走処理、第1逆走処理、第2逆走処理)は省略される。
処理対象時間を延長しない場合、図19に示すように、第1順走処理(車線毎の順走処理)において、走行車線における上流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした処理対象時間内で上流側の検知パルス(領域211)のみが抽出される。この場合、処理対象時間内で下流側の検知パルスが抽出されないため、上流側の検知パルス(領域211)は不明車と判定される(不明パルス)。
次に、図20に示すように、第1順走処理(車線毎の順走処理)において、追い越し車線2Bにおける上流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした処理対象時間内で上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとが抽出される。この場合、領域212のように上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとが組み合わされて正常走行と判定され、順走パルスとして削除処理が行われる。
次に、図21に示すように、第1順走処理(車線毎の順走処理)において、走行車線における下流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした処理対象時間内で下流側の検知パルス(領域214)のみが抽出される。この場合、下流側の検知パルスは廃棄対象と判定される(廃棄パルス)。
次に、図22に示すように、第1順走処理(車線毎の順走処理)において、走行車線における上流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした処理対象時間内で上流側の検知パルス(領域215)のみが抽出される。この場合、上流側の検知パルスは不明車と判定される(不明パルス)。
次に、図23に示すように、第1逆走処理(車線毎の逆走処理)において、領域216のように、廃棄対象と判定された下流側の検知パルス(廃棄パルス)と、不明車と判定された上流側の検知パルス(不明パルス)とが組み合わされて、逆走車と判定され、逆走車の誤検知が発生する。
一方、処理対象時間を延長した場合、図24に示すように、第1順走処理(車線毎の順走処理)では、走行車線における上流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした処理対象時間内で上流側の検知パルスと共に下流側の検知パルスが抽出される。この場合、領域221のように上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとが組み合わされて正常走行と判定され、順走パルスとして削除処理が行われる。
次に、図25に示すように、第1順走処理(車線毎の順走処理)において、追い越し車線における上流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした処理対象時間内で上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとが抽出される。この場合、領域222のように上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとが組み合わされて正常走行と判定され、順走パルスとして削除処理が行われる。このとき、同一車両判定処理(車長判定処理)が行われ、上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとが同一車両条件を満たせば、順走パルスとして削除処理が行われる。
ここで、同一車両判定処理(車長判定処理)では、上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとを組み合わが同一の車両によるものであるか否かを判定する。具体的には、次式のように車長を推定し、その車長が0より大きい値(正数)であることを同一車両条件とする。なお、センサ幅は、センサの検知領域の車線方向の長さである。
車長=車速×上流側検知時間−上流センサ幅>0m
したがって、車長が0より大きい値でない、すなわち、0以下の値(0または負数)である場合には、上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとが同一の車両によるものではなく、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとの組合せは不適切であるため、順走車でないと判定する。
なお、上流側検知時間は、上流側の検知パルスの時間(立ち上がりから立ち下がりまでのオン時間)、すなわち、上流側の検知状態が継続した時間である(図4参照)。また、車速は次式により算出すればよい。
上流側の車速=(上流センサ幅+センサ間距離)÷(上流側検知時間+非検知時間)
ここで、非検知時間は、上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとの間の時間(上流側の検知パルスの立ち下がりから下流側の検知パルスの立ち上がりまでのオフ時間)、すなわち、上流側の検知状態と下流側の検知状態との間の非検知状態が継続した時間である。
次に、図26に示すように、第1順走処理(車線毎の順走処理)において、走行車線における上流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした処理対象時間内で上流側の検知パルスと共に下流側の検知パルスが抽出される。この場合、領域223のように上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとが組み合わされて正常走行と判定され、順走パルスとして削除処理が行われる。これにより、処理対象時間を延長しない場合の例(図23参照)のように、逆走車と判定されないため、逆走車の誤検知は発生しない。
図27は走行状況に応じた車両3の車両検知信号41の第4の例を示す説明図である。車両検知信号41の第4の例に関し、以下で特に言及しない事項については、図16に示した第3の例の場合と同様とする。
上述の第3の例(図24、図25、図26参照)では処理対象時間を延長することで逆走車の誤検知を回避するようにしたが、車両の速度が遅すぎる場合には、処理対象時間を延長しても適切に処理できない場合がある。
図27では、領域231の検知パルスは、(A2)走行車線2Aにおける順走車の低速での直進に相当し、領域232の検知パルスは、(B4)走行車線2Aと追い越し車線2Bとの間での順走車の高速での車線変更に相当し、領域233の検知パルスは、(C)追い越し車線2Bにおける順走車の直進に相当する。
このうち、(A2)順走車の低速での直進に相当する領域231の検知パルスでは、車両の速度が遅過ぎるため、処理対象時間を延長しても、領域231に含まれる上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとが別々のタイミングで抽出される場合がある。すなわち、上流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした処理対象時間で上流側の検知パルスのみが抽出され、その後の処理対象時間で下流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした下流側の検知パルスが抽出される場合がある。この場合、上流側の検知パルスは不明パルスとなり、下流側の検知パルスが廃棄パルスとなり、後続の順走車による検知パルスと組み合わされて逆走車と誤検知される可能性がある。
また、(B4)順走車の高速での車線変更に相当する領域232の検知パルスでは、走行車線における上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとの組み合わせで正常走行(順走車)と判定されることで、追い越し車線における下流側の検知パルスが残るため、領域234のように後続の順走車による検知パルスと組み合わされて逆走車と誤検知される可能性がある。
そこで、車両の速度が遅い場合、すなわち、道路が混雑している場合には、処理対象時間を延長すると共に、不明廃棄関係付け処理が行われる。この不明廃棄関係付け処理では、廃棄パルス、すなわち、上流側の検知パルスと関係付けができない下流側の検知パルスが見つかり、さらに、その直前に不明パルスがあると、上流側の検知パルス(不明パルス)と下流側の検知パルス(廃棄パルス)との組み合わせが、同一の車両によるものか否かを判定する同一車両判定処理を行い、ここで、同一車両条件が成立すると、正常走行(順走車)と判定され、順走パルスとして削除処理される。
図28は走行状況に関する設定テーブルを示す説明図である。図29は車線変更処理モードに関する設定テーブルを示す説明図である。
順走車が高速で車線変更する場合には、順走車が低速で車線変更する場合より、車両が2つの車線に跨がった状態でセンサS1−S4の設置地点を通過する可能性が高くなる。そして、車両が2つの車線に跨がった状態でセンサS1−S4の設置地点を通過する場合、2つの車線における上流センサS1,S2の双方で検知パルスが同時に抽出され、また、2つの車線における下流センサS3,S4の双方で検知パルスが同時に抽出される。
そこで、逆走検知処理では、対象とする道路の現在の交通状況を車線ごとに判定し、その判定結果に応じた車線変更処理モードを選択して、その車線変更処理モードで規定された方法で車線変更の判定が行われる。
図28に示すように、走行状況に関する設定テーブルには、現在の車両の走行状況を判定するための基準となる閾値が登録されている。具体的には、走行状況が、低速と高速との2通りにレベル分けされ、車両の走行状況に関する評価値(平均速度、占有率)ごとに、走行状況をレベル分けする閾値が登録されている。この設定テーブルを参照することで、車両の平均速度や道路の占有率に基づき、走行状況のレベル(低速、高速)が設定される。なお、平均速度や道路の占有率は一例であり、交通量(通過台数)等であってもよい。
なお、車両の走行状況は対象とする道路に応じて異なるため、設定テーブルの登録内容(閾値など)は、対象とする道路に応じて管理者が適宜に設定すればよい。
また、図29に示すように、車線変更処理モードに関する設定テーブルには、走行状況のレベル(低速、高速)に応じた車線変更処理モード(1、2)が登録されている。また、各車線変更処理モードには、許可する複数の車線変更パターンが登録されている。この設定テーブルを参照することで、各車線の現在の走行状況に応じて、車線変更処理モードが選択され、その車線変更処理モードで許可された車線変更パターンで順走車の車線変更が判定される。
車線変更パターンには、隣接する2つの車線(自車線、隣接車線)において同時検知、すなわち、検知パルスが重複するもの(1−1,1−2)と、隣接する2つの車線(自車線、隣接車線)において単独検知、すなわち、検知パルスが重複しないもの(2)とがある。ここで、自車線(対象車線)は、処理対象時間の起点となる検知パルスが得られた車線であり、隣接車線は、自車線(対象車線)に隣接する車線である。
なお、図29では、走行車線2A(自車線)から追い越し車線2B(隣接車線)への車線変更の場合のみ示しているが、これとは逆に、追い越し車線2B(自車線)から走行車線2A(隣接車線)への車線変更の場合もある。
図30は不明廃棄関係付けモードに関する設定テーブルを示す説明図である。
逆走検知処理では、車両の速度が遅いことが原因で、上流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした処理対象時間内に下流側の検知パルスを得られないため、逆走車の誤検知が発生する。このとき、上流側の検知パルスは不明パルスとなり、その後の処理対象時間で抽出された下流側の検知パルスは廃棄パルスとなる。不明廃棄関係付け処理では、不明パルスと廃棄パルスとを関係付けて1台の車両として処理することで、廃棄パルスが残ることで発生する逆走車の誤検知を回避することができる。また、不明廃棄関係付け処理の際に、上流側の検知パルス(不明パルス)と下流側の検知パルス(廃棄パルス)とが同一の車両によるものか否かを判定する同一車両判定処理が行われる。
図30に示すように、不明廃棄関係付けモードに関する設定テーブルには、地点の特殊性と、各車線の交通状況とに応じて、不明廃棄関係付けモードごとの処理内容が登録されている。不明廃棄関係付けモードごとの処理内容としては、直進車(第1順走処理)に関しては、不明廃棄関係付けモードに関係なく常に、不明廃棄関係付け処理を行う。また、車線変更車(第2順走処理)に関しては、不明廃棄関係付け処理を行うか否かが、不明廃棄関係付けモード(1−3)ごとに登録されている。また、不明廃棄関係付け処理の際に同一車両判定処理を行うか否かが、不明廃棄関係付けモード(1−3)ごとに登録されている。この設定テーブルを参照することで、対象とする地点の不明廃棄関係付けモードが選択され、選択された不明廃棄関係付けモードに応じて、車線変更車を対象とした不明廃棄関係付け処理の要否が判定され、また、同一車両判定の要否が判定される。
ここで、下流側の近くにジャンクションやサービスエリアに向かう分岐路がある地点では、その分岐路に進入可能な特定の車線に車両が集中することで、その車線が残りの車線より混雑する。そこで、このような対象とする地点の特殊性が反映されるように、不明廃棄関係付けモードに関する設定テーブルには、地点の特殊性に応じた種別(通常、特殊1−3)が設定され、その地点の種別ごとに不明廃棄関係付けモードが登録されている。なお、対象とする地点の種別は、現地の状況に応じて管理者が適切なものを選択すればよい。
また、交通状況(自由流、混雑、渋滞、重渋滞)は、上述の交通状況に関する設定テーブル(図17参照)を用いて判定すればよい。なお、交通状況の「常時」は、交通状況(自由流、混雑、渋滞、重渋滞)に関係しないことを表す。したがって、例えば対象地点が通常である場合には、交通状況に関係なく常に、不明廃棄関係付けモード「1」が選択され、不明廃棄関係付け処理を、直進車(第1順走処理)では行うが、車線変更車(第2順走処理)では行わない。
また、処理対象時間内に上流側の検知パルスと共に下流側の検知パルスが得られた場合でも、下流側の検知パルスの全てが処理対象時間に含まれず、処理対象時間内に下流側の検知パルスの一部のみが得られる場合がある。この場合、下流側の検知パルスが不完全な状態で同一車両判定処理が行われることで、誤判定が発生する場合がある。このため、同一車両判定処理は、下流側の検知パルスの立ち下がりに関係しない判定方法が採用され、具体的には、上流側の検知パルスの立ち上がりおよび立ち下がりと下流側の検知パルスの立ち上がりとを用いた車長判定が行われる。
ここで、図31、図32、図33、図34、図35、図36、は、処理対象時間を延長すると共に不明廃棄関係付け処理を行うことで逆走車の誤検知が発生しないようにした場合の例である。
図31に示すように、第1順走処理(車線毎の順走処理)において、走行車線における上流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした処理対象時間内で上流側の検知パルス(領域241)のみが抽出される。この場合、車両の速度が遅すぎるために対象期間を延長しても、処理対象時間内で下流側の検知パルスが抽出されないため、上流側の検知パルスは不明車と判定される(不明パルス)。
次に、図32に示すように、第1順走処理(車線毎の順走処理)において、走行車線における下流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした処理対象時間内で下流側の検知パルス(領域243)のみが抽出される。この場合、下流側の検知パルスは廃棄対象と判定される(廃棄パルス)。
次に、廃棄対象と判定された下流側の検知パルス(廃棄パルス)と、その直前にある不明車と判定された上流側の検知パルス(不明パルス)とを対象にして、不明廃棄関係付け処理が行われる。この不明廃棄関係付け処理では、領域244のように上流側の検知パルス(不明パルス)と下流側の検知パルス(廃棄パルス)との組み合わせが、同一の車両によるものか否かが判定される(同一車両判定処理)。ここで、同一車両条件が成立すると、正常走行(順走車)と判定され、順走パルスとして削除処理される。なお、上述の第3の例(図25参照)において第1順走処理で行われる同一車両判定処理(車長判定処理)と同様に、上流側検知時間から推定される車長に関する同一車両条件で判定を行えばよい。
このとき、廃棄パルス(下流側の検知パルス)は削除されるが、不明パルス(上流側の検知パルス)は処理対象ではないため削除しないことも可能である。廃棄パルス(下流側の検知パルス)を放置すると、後続車による上流側の検知パルスと組み合わされることで、逆走車の誤検知が発生する場合があるが、不明パルスが残っても、逆走車の誤検知は発生しないため、不明パルスは放置しても支障はない。このため、下流側の検知パルスが処理対象に含まれる処理タイミングで、下流側の検知パルスを適切に除去処理する必要がある。
次に、図33に示すように、第1順走処理(車線毎の順走処理)において、走行車線における上流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした処理対象時間内で上流側の検知パルス(領域245)と共に下流側の検知パルス(領域246)が抽出される。この場合、上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとを対象にして同一車両判定処理(車長判定処理)が行われる。このとき、下流側の検知パルスが不完全であるため、上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとの組み合わせから推定される車長が異常値となり、直進状態の順走車と判定されない。
次に、図34に示すように、第1順走処理(車線毎の順走処理)において、追い越し車線(隣接車線)における下流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした処理対象時間内で下流側の検知パルス(領域247)のみが抽出される。この場合、追い越し車線における上流側の検知パルスがないため、追い越し車線の下流側の検知パルスは廃棄対象と判定される。
次に、図35に示すように、第2順走処理(隣接車線をマージした順走処理)において、走行車線2Aの車両検知信号41Aと追い越し車線2Bの車両検知信号41Bとがマージされ、マージ後の車両検知信号41Cが生成される。そして、マージ後の車両検知信号41Cから、領域248のように上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとが抽出され、且つ、同一車両判定処理(車長判定処理)により、2つの検知パルスの組み合わせが同一の車両によるものと判定されることで、これらの検知パルスが正常走行と判定されて順走パルスとして削除処理される。
次に、図36に示すように、第1順走処理(車線毎の順走処理)において、追い越し車線における上流側の検知パルスの立ち上がりを起点とした処理対象時間内で上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとが抽出される。この場合、領域249のように上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとが組み合わされて正常走行と判定され、これらの検知パルスが順走パルスとして削除処理される。
図37は逆走検知システム1の動作の流れを示すフロー図であり、図38は車両感知器11による交通情報取得処理の流れを示すフロー図であり、図39は車両感知器11による逆走検知処理の流れを示すフロー図であり、図40は車両感知器11による設定処理の流れを示すフロー図である。
図37に示すように、逆走検知システム1が起動すると、車両感知器11による逆走検知処理が開始される(ST101)。そこで、複数車線(ここでは、走行車線2A、追い越し車線2Bの2車線)におけるセンサ群Sにて車両3を検知し、生成した車両検知信号をメモリ24に記録する(ST102)。このステップST102における車両検知信号の生成およびそのメモリ24への記録は、逆走検知システム1の主要機器(車両感知器11、センサ群S等)の電源がOFFされる(ST103:Yes)まで繰り返し実行される。
図38に示すように、車両感知器11による交通情報取得処理では、自装置が交通予測装置40と接続されていない場合には(ST201:No)、個別の車両情報から車線毎の交通情報(平均速度、占有率など)を生成し(ST202)、生成した交通情報がメモリ24に格納される(ST204)。一方、自装置が交通予測装置40と接続されている場合には(ST201:Yes)、交通予測装置40から車線毎の交通情報を受信し(ST203)、受信した交通情報がメモリ24に格納される(ST204)。これらの処理は、逆走検知システム1の主要機器の電源がOFFされる(ST205:Yes)まで繰り返し実行される。
なお、車両感知器11で交通情報を生成する場合には、過去に自装置で計測した交通情報がメモリ24に蓄積され、そのメモリ24に蓄積された交通情報から現在もしくは将来(例えば数分後)の交通情報を推定する。交通予測装置40で現在の交通情報を予測する場合には、各車両感知器11で計測した交通情報が各車両感知器11から交通予測装置40に提供され、交通予測装置40では、各車両感知器11から収集した計測地点の交通情報に基づき、逆走検知処理の対象地点の交通情報を予測(推定)する。そして、車両感知器においては、この交通情報を受信し、将来(例えば数分後)の交通情報を推定することも可能である。
図39に示すように、車両感知器11による逆走検知処理では、まず、各種の設定事項に関する設定情報を初期化する処理が行われる(ST301)。次に、対象地点の交通情報などに基づき、各種の設定事項に関する設定情報を変更設定する処理が行われる(ST302)。この設定処理には、処理対象時間、車線変更処理モード、不明廃棄関係付けモードを設定する処理が含まれる。
次に、上述のように、第1順走処理(ST303)、第2順走処理(ST304)、第1逆走処理(ST305)、第2逆走処理(ST306)が順次実行される。これらの処理は、逆走検知システム1の主要機器の電源がOFFされる(ST307:Yes)まで繰り返し実行される。
なお、ステップST303−ST306の処理については、それらのうち1以上の処理を省略した構成も可能である。さらに、必要に応じてステップST303−ST306の処理の順序を変更することも可能である。ただし、順走車の存在に関する判定を先に実行することにより、逆走車の検知精度をより向上させることが可能となる。
図40に示すように、車両感知器11による設定処理では、まず、現在の交通状況に関する交通情報をメモリ24から取得する(ST401)。そして、その交通情報に基づき、現状の処理対象時間が現在の交通状況に合致しない場合には(ST402:No)、処理対象時間を変更する処理が行われる(ST403)。また、現状の車線変更処理モードが現在の交通状況に合致しない場合には(ST404:No)、車線変更処理モードを変更する処理が行われる(ST405)。また、現状の不明廃棄関係付けモードが現在の交通状況に合致しない場合には(ST406:No)、不明廃棄関係付けモードを変更する処理が行われる(ST407)。
図41、図42、図43、及び図44は、それぞれ図39中の第1順走処理(ST303)、第2順走処理(ST304)、第1逆走処理(ST305)、第2逆走処理(ST306)の詳細を示すフロー図であり、図45は、図41中の走行状況再判定処理(ST506)の詳細を示すフロー図である。
図41に示すように、第1順走処理(車線毎の順走車の判別処理)では、メモリ24に一旦記録された1つの対象車線に関する車両検知信号が順次読み出され(ST501)、車両検知信号から検知パルスが抽出される(ST502)。続いて、それら抽出された検知パルスの組み合わせから車両3の走行状況が判定される(ST503)。そして、走行状況の判定が未了の他の車線が存在する場合には(ST504:No)、ステップST301に戻り、他の車線について同様の処理が実行される。また、全ての車線について走行状況の判定が完了しても(ST504:Yes)、検知パルスの起点(車両検知信号が「0」から「1」に変化したタイミング)からの経過時間が所定の処理対象時間未満であれば(ST505:Yes)、ステップST501に戻る。そして、経過時間が処理対象時間以上となると(ST505:No)、走行状況再判定処理が実行される(ST506)。
図45に示すように、走行状況再判定処理(不明廃棄パルス関係付け処理)では、廃棄パルス(廃棄対象と判定された検知パルス)の直前に不明パルス(不明車と判定された検知パルス)がある場合に(ST901:Yes)、同一車両判定に用いられる評価値(車長、時間Ta、時間Tb等)を算出する(ST902)。そして、算出した評価値に基づいて同一車両判定が行われる(ST903)。すなわち、上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとの組み合わせが同一の車両によるものか否かが判定される。ここで、上流側の検知パルスと下流側の検知パルスとの組み合わせが同一の車両によるものである場合には(ST903:Yes)、対象車両が順走車と判定され、検知パルスが除去される(ST904)。
図42に示すように、第2順走処理(車線変更の順走車の判別処理)では、まず、上述の第1順走処理で取得された車両検知信号に基づき当該第1順走処理で正常走行(順走車3A)と判定された車両の検知パルスを除外した1つの対象車線および隣接車線に関する車両検知信号がそれぞれ生成される(ST601)。
次に、生成された対象車線およびその隣接車線に関する車両検知信号がマージされ、そのマージ後の車両検知信号から検知パルスが抽出される(ST602)。次に、車線変更処理モードが、隣接車線の同時検知を許可するモード、すなわち、対象車線と隣接車線との双方の車線の検知パルスが重複する車線変更パターンで順走車の車線変更を判定する設定であるか否かが判定される(ST603)。
ここで、隣接車線の同時検知を許可するモードでない場合には(ST603:No)、隣接車線での単独検知時に、検知パルスの組合せから車両3の走行状況が判定される(ST605)。一方、隣接車線の同時検知を許可するモードである場合には(ST603:Yes)、次に、同時検知があるか否かが判定される(ST604)。ここで、同時検知がある場合には(ST604:Yes)、隣接車線での同時検知時に、検知パルスの組合せから車両3の走行状況が判定される(ST606)。一方、同時検知がない場合には(ST404:No)、隣接車線での単独検知時に、検知パルスの組合せから車両3の走行状況が判定される(ST605)。
その後、対象車線について他の隣接車線が存在するか否かが判定され(ST607)、他の隣接する車線が存在する場合(ST607:No)には、再びステップST601に戻り、同様の処理が実行される。一方、他の隣接車線が存在しない場合(ST607:Yes)には、走行状況が判定されていない他の車線が存在するか否かが判定され(ST608)、最終的に、全ての車線について走行状況の判定が完了すると(ST608:Yes)、第2順走処理は終了する。
図43に示すように、第1逆走処理(直進状態の逆走車の判別処理)では、まず、上述の第2順走処理で取得された車両検知信号に基づき当該第2順走処理で正常走行(順走車3A)と判定された車両の検知パルスを除外した1つの対象車線に関する車両検知信号が生成される(ST701)。続いて、ステップST501で生成された車両検知信号における上流センサのデータと下流センサのデータとを逆転させた車両検知信号が生成される(ST702)。そこで、ステップST502で生成された車両検知信号から検知パルスが抽出され(ST703)、さらに、それら抽出された検知パルスの組み合わせから車両3の走行状況が判定される(ST704)。
次に、逆走車誤検知抑制処理(図47参照)が行われる(ST705)。この逆走車誤検知抑制処理では、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものであるか否かを判定する同一車両判定処理が行われ、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものでないと判定されると、その判定理由に応じて誤検知抑制フラグが0とは異なる値に設定される。そして、ステップST704の判定によって逆走車候補が検知され、且つ、逆走車誤検知抑制処理の結果、すなわち、誤検知抑制フラグに基づき、対象車両が逆走検知の対象であるか否か、すなわち、誤検知抑制フラグが0であるか否かが判定される(ST706)。
ここで、ステップST704の判定によって逆走車候補が検知され、且つ、対象車両が逆走検知の対象である場合には(ST706:Yes)、対象車両(逆走車候補)を逆走車に決定して、車両感知器11は、外部機器に逆走情報(逆走車の存在を知らせる情報)を通知する(ST707)。ここでは、ステップST707において逆走車用警告表示板15に逆走情報を表示することにより、周辺の順走車3Aの運転者等に逆走情報が通知される。ただし、これに限らず、車両感知器11は、例えば、公知の無線通信ネットワークを介して、周辺の順走車3Aの車載器や、運転者が利用する携帯無線端末に対して逆走情報を通知してもよい。
次に、走行状況が判定されていない他の車線が存在するか否かが判定され(ST708)、最終的に、全ての車線について走行状況の判定が完了すると(ST708:Yes)、第1逆走処理は終了する。
一方、逆走車候補が検知されない場合や、対象車両が逆走検知の対象でない場合、すなわち、誤検知抑制フラグが0でない場合には(ST706:No)、ステップST707の処理は省略されて、ステップST708に進む。
図44に示すように、第2逆走処理(車線変更状態の逆走車の判別処理)では、まず、上述の第1逆走処理で取得された車両検知信号に基づき当該第1逆走処理で逆走車候補と判定された車両の検知パルスを除外した1つの対象車線およびその隣接車線に関する車両検知信号がそれぞれ生成される(ST801)。続いて、その生成された対象車線およびその隣接車線に関する車両検知信号がマージされ、そのマージ後の車両検知信号から検知パルスが抽出される(ST802)。さらに、それら抽出された検知パルスの組み合わせから車両3の走行状況が判定される(ST803)。
次に、逆走車誤検知抑制処理(図47参照)が行われる(ST804)。この逆走車誤検知抑制処理では、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものであるか否かを判定する同一車両判定処理が行われ、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものでないと判定されると、その判定理由に応じて誤検知抑制フラグが0とは異なる値に設定される。そして、ステップST804の判定によって逆走車候補が検知され、且つ、逆走車誤検知抑制処理の結果、すなわち、誤検知抑制フラグに基づき、対象車両が逆走検知の対象であるか否か、すなわち、誤検知抑制フラグが0であるか否かが判定される(ST805)。
ここで、ステップST804の判定によって逆走車候補が検知され、且つ、対象車両が逆走検知の対象である場合には(ST805:Yes)、対象車両(逆走車候補)を逆走車に決定して、車両感知器11は、上述のステップST506と同様に、外部機器に逆走情報を通知する(ST806)。
次に、対象車線について他の隣接車線が存在するか否かが判定され(ST807)、他の隣接する車線が存在する場合(ST807:No)には、再びステップST801に戻り、同様の処理が実行される。一方、他の隣接する車線が存在しない場合(ST807:Yes)には、走行状況が判定されていない他の車線が存在するか否かが判定され(ST808)、最終的に、全ての車線について走行状況の判定が完了すると(ST808:Yes)、第2逆走処理は終了する。
一方、逆走車候補が検知されない場合や、対象車両が逆走検知の対象でない場合、すなわち、誤検知抑制フラグが0でない場合には(ST805:No)、ステップST806の処理は省略されて、ステップST807に進む。
図46はセンサ上を車両(順走車)が通行するのに応じて出現する検知パルスの説明図である。図47は図43中の逆走車誤検知抑制処理(ST705)および図44中の逆走車誤検知抑制処理(ST804)の概要を示すフロー図である。
車両感知器11では、同一の車両によるものと想定される下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとを組み合わせて逆走車を検知する際に、逆走車の誤検知を抑制するため、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものであるか否かを判定する同一車両判定処理が行われ、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものでないと判定されると、逆走車でないと判定する。
なお、図46には逆走処理で行われる同一車両判定処理の場合を示しており、車両(逆走車)が下流センサS3,S4で検知された後に上流センサS1,S2で検知される。また、同一車両判定処理は逆走処理の他に順走処理でも行われ、この場合、車両(逆走車)が上流センサS1,S2で検知された後に下流センサS3,S4で検知される(図4参照)。
同一車両判定処理では、時間判定処理と、速度判定処理と、車長判定処理と、加速度判定処理と、が行われる。また、同一車両判定処理では、図46に示すように、まず、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとに基づき、下流側検知時間Taと、非検知時間Tbと、上流側検知時間Tcと、が算出される。下流側検知時間Taは、下流側の検知パルスの時間(立ち上がりから立ち下がりまでのオン時間)、すなわち、下流側の検知状態が継続した時間である。上流側検知時間Tcは、上流側の検知パルスの時間(立ち上がりから立ち下がりまでのオン時間)、すなわち、上流側の検知状態が継続した時間である。非検知時間Tbは、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとの間の時間(下流側の検知パルスの立ち下がりから上流側の検知パルスの立ち上がりまでのオフ時間)、すなわち、下流側の検知状態と上流側の検知状態との間の非検知状態が継続した時間である。
時間判定処理では、下流側検知時間Taと非検知時間Tbとの関係、および上流側検知時間Tcと非検知時間Tbとの関係に基づき、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものであるか否かを判定する。すなわち、下流側検知時間Taと非検知時間Tbとの関係、および上流側検知時間Tcと非検知時間Tbとの関係が異常でない場合、具体的には、下流側検知時間Taが非検知時間Tbより大きく(Ta>Tb)、かつ、上流側検知時間Tcが非検知時間Tbより大きい場合に(Tc>Tb)、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものであると判定する。
ここで、下流側検知時間Ta、非検知時間Tb、および上流側検知時間Tcは次式のように算出される。
下流側検知時間Ta=(下流側の検知パルス数)×サンプリング周期
上流側検知時間Tc=(上流側の検知パルス数)×サンプリング周期
非検知時間Tb=(下流側の検知パルスの立ち下りから上流側の検知パルスの立ち上がりまでの間における非検知パルス数)×サンプリング周期
また、上流センサと下流センサとはさほど離れていないため、上流センサ通過時と下流センサ通過時とで車速の変化が十分に小さい。このため、ほぼ等速度で車両が走行していると想定する。また、センサの検知対象の車両は、軽自動車の車長(3m)以上の車長の車両である。また、下流センサ幅および上流センサ幅は1.5m、センサ間距離は5.5mとする。この場合、各値は次式のような関係になる。
下流側検知時間Ta×車速=下流センサ幅+車長=1.5m+3m=4.5m
上流側検知時間Tc×車速=上流センサ幅+車長=1.5m+3m=4.5m
非検知時間Tb×車速=センサ間距離−車長=5.5m−3m=2.5m
したがって、常に、Ta×車速はTb×車速より大きく、且つTc×車速はTb×車速より大きくなる。すなわち、常に、Ta>Tb、且つTc>Tbとなる。
したがって、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものであるための条件は、次式のようになる。
Ta>Tb、且つ、Tc>Tb
この同一車両条件を満たさない場合は、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものでなく、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとの組み合わせは不適切であるため、逆走車でないと判定する。
車速判定処理では、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとの組合せから推定される車速に基づき、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものであるか否かを判定する。具体的には、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとの組合せから推定される車速が、センサの検出範囲内にある、すなわち、異常値でない場合に、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一車両によるものであると判定する。
ここで、車両は、下流センサに到達してから上流センサに到達するまでの時間(時間Ta+時間Tb)で、下流センサ幅とセンサ間距離とを加算した距離を走行するため、車速は次式のように下流側検知時間Taおよび非検知時間Tbから求めることができる。
車速=(下流センサ幅+センサ間距離)÷(Ta+Tb)
=(1.5m+5.5m)÷(Ta+Tb)
一方、下流センサには車両を検出できる速度範囲があり、車両がその速度範囲より遅い場合や速い場合には、下流センサで車両を検知できず、車両が通行しても検知パルスを取得することができない。そのため、常に、車速は検知可能最小値(1km/h)以上であり、且つ検知可能最大値(160km/h)以下となる。
したがって、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものであるための条件は、次式のようになる。
車速≧下限値(検知可能最小値)、且つ、車速≦上限値(検知可能最大値)
この同一車両条件を満たさない場合は、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものでなく、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとの組み合わせは不適切であるため、逆走車でないと判定する。
車長判定処理では、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとの組合せから推定される車長に基づき、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものであるか否かを判定する。具体的には、下流側の検知パルスから求めた車長と、上流側の検知パルスから求めた車長とが共に、0より大きい値(正数)である、すなわち、異常値でない場合に、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一車両によるものであると判定する。
ここで、車速と車長とは次式のような関係になる。
車速=(下流センサ幅+下流側の検知パルスから求めた車長)÷下流側検知時間Ta
車速=(上流センサ幅+上流側の検知パルスから求めた車長)÷上流側検知時間Tc
この式より、車長は次式により求められる。すなわち、車長は、下流側の検知パルスの立ち上がりから上流側の検知パルスの立ち上がりまでの時間(2つの検知パルスの立ち上がり間隔:Ta+Tb)と、その間に車両が移動した距離とから求められる。
下流側の検知パルスから求められる車長
=車速×下流側検知時間Ta−下流センサ幅
上流側の検知パルスから求められる車長
=車速×上流側検知時間Tc−上流センサ幅
なお、車速は上述の車速判定処理と同様に次式により算出すればよい。
下流側の車速=(下流センサ幅+センサ間距離)÷(Ta+Tb)
上流側の車速=(上流センサ幅+センサ間距離)÷(Ta+Tb)
一方、車長は速度から算出しているため、大きな誤差が含まれる可能性がある。そのため、確実な判定結果が得られるように、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものであるための条件は、次式のようになる。
下流側の検知パルスから求めた車長>0m、
且つ、上流側の検知パルスから求めた車長>0m
この同一車両条件を満たさない場合は、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものでなく、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとの組み合わせは不適切であるため、逆走車でないと判定する。
加速度判定処理では、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとの組合せから推定される加速度に基づき、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものであるか否かを判定する。具体的には、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとの組合せから推定される加速度が、車両に発生可能な範囲から外れていない、すなわち、異常値でない場合に、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一車両によるものであると判定する。
ここで、センサ間距離は短く、車両が下流センサに到達してから上流センサを通過するまでの間に加速度を急激に変化させることは難しいため、車両に発生する加速度は一定と考えられる。したがって、次式のように、車両が下流センサに到達してから上流センサを通過するまでの間に車両に発生した加速度は、速度の変化量、すなわち、初速度(下流センサ上での速度)から到達速度(上流センサ上での速度)から減算した値を、所要時間、すなわち、下流側検知時間Taと非検知時間Tbとを加算した値で除算することで算出される。
初速度(下流側センサ通過速度)=(下流センサ幅+車長)÷下流側検知時間Ta
到達速度(上流側センサ通過速度)=(上流センサ幅+車長)÷上流側検知時間Tc
加速度=(到達速度−初速度)÷(下流側検知時間Ta+非検知時間Tb)
また、車長は上述の車長判定処理で取得した車長を採用すればよい。また、車両が大型車と小型車とのいずれであるかを判定して、大型車および小型車の車長に関する統計情報に基づき、車長を設定するようにしてもよい。すなわち、車両が大型車である場合には大型車の平均車長を採用し、車両が小型車である場合には小型車の平均車長を採用する。また、上流センサと下流センサとで車両が同時に検知された否かに応じて、車両が大型車と小型車とのいずれであるかを判定することができる。
一方、車両に発生する加速度には可能な範囲があり、減速時(ブレーキ操作時)の加速度(減速度)が下限値より小さくなることはなく、また、加速時(アクセル操作時)の加速度が上限値より大きくなることはない。したがって、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものであるための条件は、次式のようになる。
減速時の加速度(減速度)>下限値、または、加速時の加速度<上限値
なお、公道走行が認められている一般的な車両では、例えば、下限値が−0.8Gとなり、上限値が0.6Gとなる。
この同一車両条件を満たさない場合は、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとが同一の車両によるものでなく、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとの組み合わせは不適切であるため、逆走車でないと判定する。
図47に示すように、逆走車誤検知抑制処理(同一車両判定処理)では、まず、誤検知抑制フラグがクリア(初期化)される(ST1001)。
次に、下流側の検知パルスと上流側の検知パルスとに基づき、下流側検知時間Ta、非検知時間Tb、および上流側検知時間Tcを算出する処理が行われる(ST1002)。そして、算出された下流側検知時間Ta、非検知時間Tb、および上流側検知時間Tcに基づき、時間判定処理が行われ、判定条件(同一車両条件)を満たすか否か、すなわち、下流側検知時間Taおよび上流側検知時間Tcが共に非検知時間Tbより大きいか否かが判定される(ST1003)。ここで、判定条件を満たさない場合には(ST1003:No)、誤検知抑制フラグに「00000001」が加算される(ST1004)。
次に、下流側検知時間Ta、非検知時間Tb、およびセンサ間距離に基づき、車速を算出する処理が行われる(ST1005)。そして、算出された車速に基づき、車速判定処理が行われ、判定条件(同一車両条件)を満たすか否か、すなわち、車速が下限値(検知可能最小値)以上であり、且つ、車速が上限値(検知可能最大値)以下であるか否かが判定される(ST1006)。ここで、判定条件を満たさない場合には(ST1006:No)、誤検知抑制フラグに「00000010」が加算される(ST1007)。
次に、下流側検知時間Ta、上流側検知時間Tc、センサ幅、および車速に基づき、車長を算出する処理が行われる(ST1008)。そして、算出された車長に基づき、車長判定処理が行われ、判定条件(同一車両条件)を満たすか否か、すなわち、下流側の検知パルスから求めた車長(上流側車長)と、上流側の検知パルスから求めた車長(下流側車長)とが共に、0より大きい値(正数)であるか否かが判定される(ST1009)。ここで、判定条件を満たさない場合には(ST1009:No)、誤検知抑制フラグに「00000100」が加算される(ST1010)。
次に、下流側検知時間Ta、上流側検知時間Tc、センサ幅、および車速に基づき、加速度を算出する処理が行われる(ST1011)。そして、算出された加速度に基づき、加速度判定処理が行われ、判定条件(同一車両条件)を満たすか否か、すなわち、減速時の加速度(減速度)が下限値より大きいか、または、加速時の加速度が上限値より小さいか否かが判定される(ST1012)。ここで、判定条件を満たさない場合には(ST1012:No)、誤検知抑制フラグに「00001000」が加算される(ST1013)。
このように、逆走車誤検知抑制処理では、時間判定処理、車速判定処理、車長判定処理および加速度判定処理の判定結果に応じて桁数の異なる値が誤検知抑制フラグに加算される。このため、例えば、すべての判定項目で、判定条件(同一車両条件)を満たさない場合には、誤検知抑制フラグは「00001111」となる。このように誤検知抑制フラグを設定することにより、判定をやり直さなくても、どの項目で同一車両でないと判定されたかを事後に適宜なタイミングで確認することができる。
以上、本開示を特定の実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態はあくまでも例示であって、本開示はこれらの実施の形態によって限定されるものではない。上述の例では、走行車線2Aおよび追い越し車線2Bからなる片側2車線の道路2について説明したが、逆走検知システム1は、片側3車線以上の道路2についても同様に適用可能である。その場合でも、上述のマージ処理等は、片側2車線の場合と同様に、3車線以上の車線における対象車線およびその各隣接車線に対して順次実行することが可能である。なお、上記実施の形態に示した本開示に係る逆走検知装置および逆走検知システムならびに逆走検知方法の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。