以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の警報器を詳細に説明する。図1には、本発明の一実施形態の警報器100の主要な構成要素がブロック図で概略的に示されている。また、図2Aおよび図2Bには、警報器100の外観の一例が、正面図および側面図で示されている。
図1に示されるように、本実施形態の警報器100は、電源部1と、少なくとも2つの状態を有し、警報器100の外部からの操作により状態を遷移させるスイッチ2と、警報器100の動作モードを設定する動作モード制御部3と、を備えている。警報器100は、複数の動作モードを有し、周囲環境の変化を報知する。警報器100は、さらに、警報器100の動作を全体的に制御する制御部4と、制御部4にそれぞれ接続されている検知部6および報知部7を備えている。また、本実施形態の警報器100は、動作モード制御部3に接続されている記憶装置8を備えている。電源部1は、動作モード制御部3や、制御部4などの警報器100の内部回路に電力を供給する。図1では、電源部1以外の構成要素間の接続が明瞭となるように、電源部1と他の構成要素との接続を示す線が図示されていないが、電源部1は、動作モード制御部3や制御部4などの電力供給を要する各構成要素に接続されている。動作モード制御部3は、後述されるように、電源部1からの電力供給の開始時から停止時までのスイッチ2に対する操作に少なくとも基づいて、電源部1からの電力供給の再開時の動作モードを所定の第1動作モードに設定するように構成されている。また、本実施形態の警報器100の電源部1は、商用電源に接続される電源プラグ1aを含んでいる。
本実施形態では、電源部1は、商用電源からの電力を供給する。そのため、電源部1は、電源プラグ1aを備えている。電源部1は、たとえば、商用電源から供給される交流電力を所望の電圧の直流電力に変換するインバータや、警報器100内の消費電流が変動する場合でも一定の電圧を供給するように備えられる電圧レギュレータなどによって構成され得る。しかし、電源部1は、本実施形態のように商用電源からの電力を供給するものに限定されず、乾電池などの一次電池やバッテリなどの二次電池を備え、インバータなどを介さずに警報器100の内部回路に電力を供給するものでもよい。また、その場合、電源部1は、電源プラグ1aを備えていなくてもよい。
検知部6は、主に、警報器100の周囲の監視対象領域の物理現象を監視して監視データを出力する各種のセンサから構成される。各種のセンサは、たとえば、一酸化炭素(CO)ガス、メタンガス(CH4)またはプロパンガス(C3H8)を検知する各種ガスセンサ、サーミスタなどからなる温度センサ、湿度センサ、または煙センサ、臭気センサなどであってよく、1つまたは複数個のセンサで検知部6が構成されていてもよい。検知部6は制御部4によってその動作が制御され得る。
報知部7は、たとえば、発光ダイオード、ブザーおよび/またはスピーカーなどの、ユーザーなどへの報知手段により構成され、光の放射、鳴動、および/または音響を発することにより警報を発する。また、報知部7は、警報を発する以外にも、警報器100の状態や、警報を発するに至らない監視領域の環境に関する情報をユーザーなどに伝えるために動作してもよい。
制御部4は、好ましくは、演算機能、比較機能、記憶機能などを有し、警報器100の動作を全体的に制御する。すなわち、制御部4は、通常の監視モードにおいて、検出部6による周囲環境の監視から、報知部7による異常の報知にいたる動作を全体的に制御する。制御部4は、たとえば、市販のマイコンやASICなどの半導体装置などを含み、内蔵されたプログラムに沿って動作するように構成されている。また、制御部4は、動作モード制御部3によって設定される警報器100の動作モードに従って、内蔵されたプログラムのうちから実行すべきプログラムを選択し、選択したプログラムに規定された処理を実行するように構成されている。さらに、制御部4は、スイッチ2の状態の変化に応じて所定の処理を実行する。たとえば、制御部4は、スイッチ2の状態の変化に基づく入力信号に応じた出力信号を出力するように構成された、個々の半導体装置などからなる電気回路を有していてもよく、スイッチ2の状態に応じた処理を規定するプログラムに沿って動作するように構成されていてもよい。
記憶装置8は、半導体メモリや、磁気ディスクまたは光ディスクなどの任意の記憶媒体により構成され、特に、電源部1からの電力供給が停止されても記憶内容を保持し得る不揮発性メモリで構成される。たとえば、記憶装置8は、SRAMやフラッシュメモリなどの半導体メモリである。記憶装置8は、マイコンなどの内部のフラッシュメモリであってもよい。記憶装置8には、少なくとも、スイッチ2に対する操作に関する情報が記憶される。
スイッチ2は、少なくとも2つの状態をとり得る、動作モード制御部3および制御部4に対する入力手段である。スイッチ2は、たとえば、ユーザーなどに直接操作される、押しボタン式やトグル式またはスライド式などの任意の回路開閉器である。その場合、スイッチ2は、回路を閉じている状態(たとえば第1状態)と、回路を開放している状態(たとえば第2状態)との2つの状態を有し得る。たとえば、スイッチ2の一端である第1端子が動作モード制御部3および制御部4に接続され、他端である第2端子が、グランドラインに接続される。その場合、スイッチ2が第1状態にあるときには、動作モード制御部3および制御部4にグランド電位が入力される。そして、スイッチ2が第2状態にある場合は、動作モード制御部3および制御部4のスイッチ2に接続されている端子は開放状態となる。
また、スイッチ2は、ユーザーなどの間接的な操作によって状態を遷移させるものでもよい。たとえば、スイッチ2は、警報器100に設けられたスイッチ2以外の入力手段(図示せず)の操作に応じて出力レベルを変化させる任意の回路素子などであってもよい。その場合、スイッチ2は、スイッチ2を構成する回路素子が、たとえば論理値としてのLoレベルを出力する状態と、Hiレベルを出力する状態との2つの状態をとり得る。また、スイッチ2は、このような他の入力手段の操作に応じて記憶内容を変化させる記憶素子などであってもよい。たとえば、4ビットの容量の記憶素子は、「0000」から、「1111」までの24個の状態をとり得る。スイッチ2がこのような記憶素子である場合、スイッチ2は、動作モード制御部3などからの要求に応じて、他の入力手段の操作に応じて保持している記憶内容を動作モード制御部3などに対して出力してもよい。
スイッチ2は、警報器100に自己点検の実施を指示するためにユーザーなどに操作される点検スイッチであってもよい。すなわち、制御部4が、スイッチ2の状態の変化に応じて所定の点検手順が規定された点検プログラムを実行するように構成されていてもよい。たとえば、制御部4は、検知部6や報知部7に点検用の信号を送信し、検知部6や報知部7から適切な応答があるか否かを判断し、報知部7などを動作させることによってその判断結果をユーザーなどに知らせる。制御部4は、複数の点検プログラムを有していてもよく、スイッチ2が操作される態様に応じて、実行する点検プログラムを選択してもよい。この点については、図9Bなどを参照して後述する。
動作モード制御部3は警報器100の動作モードを設定する。特に動作モード制御部3は、前述のように、電源部1からの電力供給の開始時から停止時までのスイッチ2に対する操作に少なくとも基づいて、電源部1からの電力供給の再開時の動作モードを所定の第1動作モードに設定する。換言すると、動作モード制御部3は、電源部1から電力が供給されている間になされたスイッチ2に対する操作に基づいて、すなわち、電力が供給されている間のスイッチ2の状態の変化の履歴に基づいて、その電力供給の停止後に電力供給が再開された時の警報器100の動作モードを所定の第1動作モードに設定する。
このように、本実施形態では、スイッチ2の現時点での状態だけでなく、以前の電力供給の開始から停止までの間のスイッチ2の状態の履歴も、警報器100に特定の動作(本実施形態では電力供給再開時の動作モードの設定)を指示するために用いられ得る。スイッチ2は、前述のように、たとえば現時点での状態が第1状態のときに自己点検を警報器100に実施させ、たとえば第2状態のときに自己点検を実施させないためにも用いられ得る。すなわち、本実施形態によれば、最も少ない場合で単に2つの状態しかとり得ないスイッチ2を、電力供給の開始および停止の操作と組み合わせることで、警報器100に対する少なくとも2つよりも多い種類の動作や処理の実行を指示するために利用することができる。多くのスイッチを警報器に設けることが困難な場合でも、ユーザーなどが、多様な種類の処理の実行を警報器に指示することができる。
動作モード制御部3は、制御部4と同様に、演算機能や比較機能を有し、たとえば、市販のマイコンやASICなどの半導体装置などにより構成され得る。たとえば、動作モード制御部3は、マイコンなどに内蔵されたプログラムに規定された手順を実行することにより、スイッチ2に対して為された操作に基づいて警報器100の動作モードを所定の第1動作モードに設定する。動作モード制御部3および制御部4は、同一の半導体装置内の異なる構成要素によって構成されてもよく、1つの半導体装置の構成要素が、ある時間枠において動作モード制御部3として機能し、別の時間枠で制御部4として機能してもよい。
動作モード制御部3は、電力供給の再開時に、記憶装置8の記憶内容を参照してもよい。前述のように、記憶装置8は、不揮発性メモリによって構成され、記憶装置8には、少なくともスイッチ2に対する操作に関する情報が記憶される。従って、動作モード制御部3は、記憶装置8の記憶内容を参照することにより、以前の電力供給中のスイッチ2の状態の履歴を知ることができる。そして、その知り得たスイッチ2の状態の履歴に少なくとも基づいて、警報器100の動作モードを、所定の第1動作モードに設定する。たとえば、動作モード制御部3は、電源部1からの電力供給の停止時にスイッチ2が所定の第1状態にあるときだけ、電力供給の再開時の動作モードを所定の第1動作モードに設定するように構成されてもよい。なお、「所定の第1状態」は、たとえば、スイッチ2が前述の回路開閉器で構成されている場合、回路が閉じられている状態であってもよく、回路が開放されている状態であってもよい。また、スイッチ2がデジタル回路の回路素子である場合、「所定の第1状態」は、Loを出力する状態であってもよく、Hiを出力する状態であってもよい。スイッチ2のどのような状態を「第1状態」として扱うかは、動作モード制御部3が実行する手順を規定するプログラムに記述され得る。
「所定の第1動作モード」は、警報器100がとり得る複数の動作モードのうちの任意の1つの動作モードである。警報器100がとり得る動作モードとしては、通常の周囲環境の監視モードの他、前述の警報器100の自己点検モード、検知部6や報知部7を所定の状態に設定する状態設定モード、および、ユーザーによる付加の選択が可能なように備えられる特定の報知機能の付加と解除とを切り換える機能付加切換モードなどが例示される。また、警報器100は、外部機器(たとえば、図3に示される外部機器200)との通信機能を有していてもよく、警報器100は、とり得る動作モードとして、外部機器との通信の準備モード、および、実際に外部機器との通信を行う通信モードなどを有していてもよい。この場合、「所定の第1動作モード」は、外部機器との通信の準備モードや通信モードであってもよい。通常の監視モード以外のこれらの動作モードは、それぞれ、通常の監視モードと時間的に分離して警報器100に対して設定されてもよく、監視モードと共に同じ時間枠で並行して設定されてもよい。
なお、通信の「準備モード」は、警報器100と外部機器との間で行われる通信に用いられる通信規格に応じて設けられる動作モードであり、伝送されるべき情報の送受信の前に必要となる処理および/または設定を行うモードである。たとえば、通信の「準備モード」は、特定の通信機器との回線(リンク)の設定、信頼性の高い無線通信を行うために必要な相手方の機器に対する認証処理や各機器内での相手方の機器の登録処理、および/または、相手方の機器の状態などに応じた各機器内の状態設定などが行われるモードである。通信の「準備モード」において、互いのID番号や暗号化キーの交換が行われてもよい。たとえば、警報器100がBluetooth(登録商標)を用いて通信を行う場合には、通信の「準備モード」において所謂ペアリングが行われる。
図2Aおよび図2Bに示されるように、警報器100は、略直方体状に形成されている筐体101を有し得る。筐体101内に、図1に示される各構成要素が収められ得る。筐体101の材料は特に限定されないが、筐体101は、たとえば、難燃性の合成樹脂によって形成され得る。筐体101には、警報器100が通電状態であることや、外部環境が異常状態にあることを視覚的に報知する表示部71、および、筐体101内で発せられた警報音などを放出する放音部72が設けられている。表示部71や放音部72は、前述の報知部7による報知機能を担っている。警報器100が有し得る筐体101の形状は、図2Aおよび図2Bに示される形状に限定されるものではなく、警報器100は、全体として略直方体以外の形状であってもよい。
筐体101には、さらに、警報器100のユーザーなどに操作される操作部2aが備えられている。操作部2aは、筐体101における、表示部71などが設けられる正面F側から押下され得るように、筐体101に設けられている。本実施形態の警報器100が図2Aおよび図2Bに示される筐体101を有する場合、操作部2aが押下されることにより、前述のスイッチ2の状態が切り替えられてもよい。図2Aおよび図2Bに示される筐体101を有する警報器100では、ユーザーは、電力供給の再開時に警報器100が第1動作モードに設定されるように、電力供給の再開時の前の電力供給の開始から停止までの間に操作部2aを操作することができる。また、スイッチ2が警報器100に点検の実施を指示するために操作される点検スイッチでもある場合は、ユーザーは、操作部2aの操作によって、警報器100に点検を実施させることができる。
筐体101の、図2Aおよび図2B上、下側の端面から延びる電源コードによって、電源プラグ1aが、筐体101内に収容されている電源部1(図1参照)の他の構成要素と接続されている。警報器100では、動作モード制御部3によって動作モードが設定される電力供給の再開時における電力供給の再開、およびこの再開時の前の電力供給の停止時における電力供給の停止が、電源プラグ1aの商用電源のコンセントへの挿抜により行われてもよい。また、別途電源スイッチなどが設けられて、電力の供給および停止が、その電源スイッチの操作によって切り替えられるようにしてもよい。なお、電源プラグ1aの商用電源のコンセントへの挿抜により電力供給の開始と停止が行われる方が、別途電源スイッチなどが設けられて、電力の供給と停止とがその電源スイッチの操作によって安易に切り換えられ得る場合よりも、ユーザーの誤操作によって警報器100が意図せずに所定の第1動作モードに設定されるのを少なくすることができる。また、警報器100が電池式の警報器であり、電源部1が電池を備える場合には、電池の装着によって電力供給の「開始」が行われてもよい。この場合、電源部1からの電力供給の「停止」は、電池の取り外しによって行われてもよい。
図3には、図2Aに示される筐体101を有し、前述のように通信機能を有する本実施形態の警報器100が、通信回線Cで接続されている外部機器200と共に示されている。外部機器200としては、警報器100の検知対象である都市ガスまたはLPGの使用量を計量するガスメータに配される無線通信機や、警報器100が備えていない検知対象(たとえば二酸化炭素など)を検知する機能を有する外部の検知器などが例示される。たとえば、前述の所定の第1動作モードが通信の準備モードである場合、そのモード中に、警報器100と外部機器200との間での通信に必要な互いの認証処理などが行われ、通信回線Cが設定される。その後、伝送されるべき情報が、通信回線Cを介して警報器100と外部機器200との間で送受信される。たとえば、外部機器200がガス管の閉栓が可能なガスメータに配される無線通信機である場合、警報器100は、ガス漏れを検知したときに、通信回線Cを介してガス管の閉栓を外部機器200に指示してもよい。また、外部機器200が外部の検知器である場合、警報器100は、通信回線Cを介して外部機器200から検知結果を受信し、必要に応じて警報を発してもよい。なお、警報器100は、通信機能を有する場合、通信の準備モードにおいて必要な処理や設定を行い、警報器100内の信号と通信可能な信号との間の相互変換を実施して外部機器200との間で信号を送受信する通信部(図示せず)を備えていてもよい。
つぎに、本実施形態の警報器100の動作を図4〜7を参照しながら説明する。図4には、本実施形態の警報器の動作の一例を示すフローチャートが示されている。
図4に示されるように、警報器100では、電源部1(図1参照)からの電力供給が開始または再開される(ステップS0)と、ステップS0での電力供給開始前の電力供給時の電力の供給開始から停止までの間に、スイッチ2が所定の操作をされたかどうかが、動作モード制御部3(図1参照)によって判断される(ステップS1)。この判断方法については後述する。ステップS1の判断が肯定的(ステップS1で“Y”、以下、肯定的判断結果は、単に「Y」とも称される)であると、動作モード制御部3は、警報器100を第1動作モード、たとえば、外部機器との通信の準備モードに設定する(ステップS2)。そして、制御部4(図1参照)によって、第1動作モードにおいて実行することが規定されている所定の処理が実行される(ステップS3)。ステップS1の判断が否定的(ステップS1で“N”、以下、否定的判断結果は、単に「N」とも称される)である場合は、ステップS2およびS3は実行されない。すなわち、ステップS1の判断結果が「N」の場合、警報器100は、第1動作モードに設定されず、第1動作モードにおける所定の処理も実行されない。その後、ステップS4において、記憶装置8(図1参照)の記憶内容が消去される。この目的や作用は後述される。
電力供給の開始または再開(以下、特にいずれかに限定する必要が無い場合は、電力供給の開始または再開は、単に「開始など」や「開始(再開)」とも記述される)に伴う処理はステップS4で終了し、その後、警報器100は、通常の監視モードで動作する。なお、周囲環境の監視が行われる監視モードは、電力供給の開始などに伴って第1動作モードなどの他の動作モードと並行して設定されてもよい。また、第1動作モードのような電力供給の開始などに伴って設定される動作モードの終了後に警報器100が監視モードに移行されてもよい。
警報器100の内部回路に電力が供給されている間、スイッチ2の状態が動作モード制御部3または制御部4によって監視され、スイッチ2の状態が遷移したかどうかが判断される(ステップS5)。ステップS5の判断が「N」の場合は、ループAでステップS5が繰り返される。ステップS5の判断が「Y」である場合、遷移後のスイッチ2の状態が記憶装置8に書き込まれる(ステップS6)。図4に示される例では、ステップS7で、スイッチ2の状態に応じて規定されている所定の処理が、制御部4によって実行される。たとえば、警報器100の点検が実行される。その後、ループBで警報器100の制御はステップS5に戻される。
ステップS5およびS6によって、記憶装置8に、スイッチ2への操作履歴がスイッチ2の状態の変化として記憶される。図5には、記憶装置8に記憶される情報の一例が、記憶領域00〜03について概念的に示されている。図5に示される例は、スイッチ2が、ユーザーなどの操作によって、第1状態から第2状態、再度第1状態、そして第3状態へと状態を遷移させたことが記憶されていることを示している。なお、図5は、少なくとも3つの状態をとり得るスイッチ2についての例である。このように、スイッチ2の状態の遷移に応じてその状態を記憶しながら、電源部1からの電力供給が停止されるまで警報器100の動作が継続される。電力供給の停止時には、不揮発性メモリによって構成される記憶装置8内に、電力供給の停止までのスイッチ2の操作履歴が記憶されている。
動作モード制御部3は、前述のステップS1で、この記憶装置8の記憶内容を参照することによって、スイッチ2が所定の操作をされたかどうかを判断することができる。記憶装置8の記憶内容は、前述のように、ステップS5の前にステップS4において消去される。電力供給の開始(再開)の度に、その電力供給の開始から停止までのスイッチ2の操作履歴が、新たに記憶装置8に記憶される。
電力供給の再開時に警報器100が第1動作モードに設定される、電力供給の再開前の電力の供給開始から停止までの間のスイッチ2に対する「所定の操作」は、特に限定されない。たとえば、電力供給の開始時に特定の状態であることであってもよいし、前述のように、電力供給の停止時に特定の状態(たとえば第1状態)であることであってもよい。また、特定の遷移パターンが「所定の操作」として規定されてもよい。図6には、電力供給の停止時にスイッチ2が第1状態にあるときだけ、電力供給の再開時に警報器100が第1動作モードに設定される、警報器100の動作のフローチャートが例示されている。
図6に示されるように、電力供給の開始(再開)の後、ステップS1において、前回の電力供給の停止時にスイッチ2が第1状態にあったかどうかが、動作モード制御部3によって判断される。前回の電力供給中には、スイッチ2が第1状態へと遷移するのに伴って所定の内容が記憶装置8の所定の記憶領域に書き込まれるため、動作モード制御部3は、記憶装置8を参照することによってこのような判断をすることができる。記憶装置8への所定の内容の書き込みについて、以下に説明する。
電力の供給中、スイッチ2の状態が監視され(ステップS5)、スイッチ2が第1状態へと遷移したと判断されると、記憶装置8の所定の記憶領域(たとえば、図5の記憶領域00)に所定の内容(たとえば“1”)が書き込まれる(ステップS6)。その後もスイッチ2の監視は継続され(ステップS7)、スイッチ2が第1状態以外の状態に遷移したと判断されると、記憶装置8の所定の記憶領域の記憶内容が消去される(ステップS8)。図6の例では、スイッチ2の第1状態以外の状態への遷移に伴って、制御部4によって所定の処理、たとえば警報器100の点検などが実行される(ステップS9)。そしてループBで警報器100の制御はステップS5に戻される。
ステップS5およびステップS7での判断が「N」の場合、ループA1またはループA2で、ステップS5またはステップS7がそれぞれ繰り返される。ステップS6、S8およびS9での処理は警報器100の内部の動作のため極めて短時間に行われる。従って、電力供給の停止という人為的な操作は、現実的には、ステップS5またはステップS7の反復中に行われる。ステップS5の反復中に電力供給が停止された場合は、その停止時にスイッチ2は第1状態以外の状態にあり、かつ、記憶装置8の所定の領域には所定の内容は書き込まれていない。一方、ステップS7の反復中に電力供給が停止された場合は、その停止時にスイッチ2は第1状態にあり、記憶装置8の所定の領域には所定の内容が書き込まれている。従って、動作モード制御部3は、電力供給の再開時に、記憶装置8の所定の記憶領域を参照することにより、直前の電力供給の停止時にスイッチ2が第1状態にあったかどうかを判断することができる。
本実施形態では、動作モード制御部3は、電力供給の開始時から停止時までのスイッチ2に対する操作に加えて、その電力供給の停止時の後の電力供給の再開時のスイッチ2の状態に基づいて、電力供給の再開時の警報器100の動作モードを所定の第1動作モードに設定するように構成されていてもよい。図7には、そのように制御される警報器100の他の例における動作のフローチャートが、図4に示されるステップS0〜S4までの処理を抜粋して示されている。
図7に示される例は、ステップS1とステップS2との間にステップS1Aが実施される点において、図4に示される例と異なっている。すなわち、図7に示される例では、ステップS1の判断結果が「Y」である場合、ステップS2の前に、さらに、現時点、すなわち、電力供給の再開(今回の電力供給の開始)時のスイッチ2の状態が所定の状態にあるか否かが判断される(ステップS1A)。ステップS1Aにおける判断基準の「所定の状態」には、スイッチ2のとり得る任意の状態が適用され得る。
動作モード制御部3は、ステップS1Aの判断結果が「Y」の場合に警報器100の動作モードを所定の第1動作モードに設定する(ステップS2)。ステップS1Aの判断結果が「N」であった場合には、ステップS2およびステップS3は実行されずに警報器100の制御はステップS4へと進められる。図7の例と異なり、ステップS1Aの判断結果が「N」であった場合に、警報器100の動作モードが第1動作モード以外の他の動作モードへ設定されてもよく、動作モードの設定以外の別の処理が実施されてもよい。すなわち、前回の電力供給中のスイッチ2の操作履歴に加えて、電力供給の再開時のスイッチ2の状態を警報器100の動作モードを第1動作モードに設定するか否かの判断基準に加えることによって、より多様な処理や動作を、スイッチ2を用いて警報器100に指示することができる。
つぎに、本発明の他の実施形態の警報器について、図8、図9Aおよび図9Bを参照して説明する。図8には、他の実施形態の一例の警報器110の主要な構成要素がブロック図で概略的に示されている。図9Aおよび図9Bには、警報器110の動作の一例を示すフローチャートが示されている。
図8に示されるように、本実施形態の警報器110は、動作モード制御部3がタイマ回路3aを含んでいる点で、前述の一実施形態の警報器100と異なっている。また、図8に示される例では、制御部4は第2タイマ回路4aを含んでいる。これらを除いて、警報器110の主要な構成要素は前述の一実施形態の警報器100の構成要素と同様である。警報器100の構成要素と同様の構成要素については、図8に同じ符号が付され、その説明は適宜省略される。
タイマ回路3aおよび第2タイマ回路4aは、特定の時点からの経過時間をカウントする。タイマ回路3aおよび第2タイマ回路4aは、動作モード制御部3や制御部4を構成するマイコンなどに備えられている計時機能を有する機能ブロックであってもよく、マイコンなどと別に備えられるカウンタICなどであってもよく、個々のゲート素子などを組み合わせて形成されたクロックカウンタなどであってもよい。なお、タイマ回路3aおよび第2タイマ回路4aは、図8の例と異なり動作モード制御部3や制御部4と別個に設けられてもよく、タイマ回路3aおよび第2タイマ回路4aが同一の回路素子などを共用していてもよい。
本実施形態では、動作モード制御部3が、電力供給の開始時から所定の時間内にスイッチ2が所定の第1状態へと操作され、かつ、電力供給の停止時までスイッチ2が第1状態にあるときだけ、電力供給の再開時の動作モードを所定の第1動作モードに設定するように構成されている。たとえば、電力供給の開始から所定の時間が経過して警報器110が通常の監視モードにあるときに電力の供給が誤って停止された場合に、その後の電力供給の再開時に警報器110が意図せずに第1動作モードに設定されることが防がれ得る。タイマ回路3aは、電力供給の開始時からの経過時間の計時に用いられる。また、図8の例では、制御部4は、スイッチ2における1つの状態遷移から次の状態遷移までの経過時間に応じてそれぞれ定められた複数個の種類の処理を実行する。第2タイマ回路4aは、スイッチ2の状態遷移後の経過時間の計時に用いられる。
図9Aおよび図9Bに示される警報器110の動作の例では、ステップS1において、電力供給の開始からスイッチ2の第1状態への遷移までの時間が判断基準に含まれている点、ならびに、ステップS0A、S5A、S6A、S9A〜S9C、S91〜S93およびS10を含んでいる点が、前述の図6に示される例と異なっている。主にこれらのステップについて、以下に説明する。なお、図9A中の結合子Iは図9B中の結合子Iに繋がり、図9B中の結合子IIは図9A中の結合子IIに繋がっている。
図9Aに示されるように、電力供給が開始(再開)されると、まず、ステップS0Aで、タイマ回路3aがリセットされ、すなわち、タイマ回路3aがカウント値ゼロの状態に設定され、タイマ回路3aのカウント動作がスタートする。タイマ回路3aによる、電力供給開始後の経過時間の計時が開始される。
ステップS1で、前回の電力供給の開始から所定の時間内にスイッチ2が第1状態へと操作され、かつ、電力供給の停止時にスイッチ2が第1状態にあったかどうかが、動作モード制御部3によって判断される。前回の電力供給中には、スイッチ2が電力供給の開始から所定の時間以内に第1状態へと遷移されたときに所定の内容が記憶装置8の所定の記憶領域に書き込まれる。従って、動作モード制御部3は、記憶装置8を参照することによってステップS1における判断をすることができる。記憶装置8への所定の内容の書き込みについて、以下に説明する。
電力の供給中、スイッチ2の状態が監視され(ステップS5)、スイッチ2が第1状態へと遷移したと判断されると、ステップS5Aで、タイマ回路3aによって計時された時間が所定の時間PT1以内であるかどうかが判断される。「所定の時間PT1」には、任意の時間が設定され得る。そして、ステップS5Aでの判断結果が「Y」の場合だけ、記憶装置8の所定の記憶領域(たとえば、図5の記憶領域00)に所定の内容(たとえば“1”)が書き込まれる(ステップS6)。図9Bの例では、ステップS6Aにて第2タイマ回路4aがスタートされるが、この点については、ステップS9A〜S9C、S91〜S93およびS10と共に後述される。
その後もスイッチ2の監視は継続され(ステップS7)、スイッチ2が第1状態以外の状態に遷移したと判断されると、記憶装置8の所定の領域の記憶内容が消去される(ステップS8)。そして、ステップS9A〜S9C、S91〜S93およびS10を経て、警報器110の制御はステップS5に戻される。ステップS5およびステップS7での判断が「N」の場合、ループA1またはループA2でステップS5またはステップS7がそれぞれ繰り返される。
前述の図6に示される例と同様に、電力供給の停止という人為的な操作は、現実的には、ステップS5またはステップS7の反復中に行われる。ステップS5の反復中に電力供給が停止されたときは、その停止時にスイッチ2は第1状態以外の状態にあり、記憶装置8の所定の領域には所定の内容は書き込まれていない。一方、ステップS7の反復中に電力供給が停止されたときは、その停止時にスイッチ2は第1状態にあり、そして、電力供給の開始から所定の時間以内にスイッチ2が第1状態に遷移したときだけ、記憶装置8の所定の領域に所定の内容が書き込まれている。従って、動作モード制御部3は、電力供給の再開時に、記憶装置8の所定の記憶領域を参照することによって、直前の電力供給の開始から所定の時間内にスイッチ2が第1状態へと操作され、かつ、電力供給の停止時にスイッチ2が第1状態にあったかどうかを判断することができる。
なお、図9Bに示されるステップS5Aは省略されてもよい。ステップS5Aの代わりに、たとえば、ステップS5でスイッチ2が第1状態に遷移したと判断されたときに、その時点でタイマ回路3aによって計時されている、電力供給の開始時からの経過時間が記憶装置8に記憶されてもよい。この場合、動作モード制御部3は、記憶装置8に記憶されている経過時間、および前述の所定の記憶領域の記憶内容に基づいて、ステップS1での判断を適切に行うことができる。
前述のように、図8、図9Aおよび図9Bに示される例では、警報器110は第2タイマ回路4aを備えており、ステップS6A、S9A〜S9C、S91〜93およびS10が実行される。図9Aおよび図9Bに示されるように、ステップS5でスイッチ2が第1状態に遷移したと判断されると、ステップS6Aにて、第2タイマ回路4aのカウント動作がスタートする。すなわち、スイッチ2が第1状態へと操作されてからの経過時間が第2タイマ回路4aによって計時される。
そして、ステップS7でスイッチ2が第1状態以外の状態に遷移したと判断されると、スイッチ2が第1状態に遷移してから第1状態以外の状態に遷移するまでの時間に応じた処理が、制御部4によって実行される。すなわち、ステップS9A〜S9Cにおいて、第2タイマ回路4aによって計時された経過時間が、所定の時間PT21〜PT23と順次比較される。なお、図9Bの例において、所定の時間PT21〜PT23は、PT21<PT22<PT23である。ステップS9Aの判断結果が「Y」の場合、制御部4は所定の第1処理を実行する(ステップS91)。ステップS9Aでの判断結果が「N」で、ステップS9Bの判断結果が「Y」の場合、制御部4は所定の第2処理を実行する(ステップS92)、ステップS9Bでの判断結果が「N」で、ステップS9Cの判断結果が「Y」の場合、制御部4は所定の第3処理を実行する(ステップS93)。
ステップS91〜S93のいずれかでの所定の処理の実行後、第2タイマ回路4aがカウント値ゼロの状態にリセットされる(ステップS10)。図9Bの例では、ステップS9Cの判断結果が「N」の場合は、更なる処理が行われることなく、ステップS10で第2タイマ回路4aがリセットされる。すなわち、所定の時間PT23より長くスイッチ2が第1状態を維持している場合は、その後にスイッチ2が第1状態以外の状態に遷移しても特定の処理は実施されない。たとえば、床付近の壁面などに設置された警報器110の前に何らかの物品が一定時間放置され、プッシュボタン型のスイッチ2がその物品によって押し込まれた場合などに、意図せずに特定の処理が実行されるのが防がれ得る。
ステップS10の終了後、警報器110の制御はステップS5に戻される。図9Bは、所定の時間として3つの時間が規定されている例であるが、3つ以外の数の所定の時間が規定され、各所定の時間に対して第2タイマ回路4aによって計時された経過時間が比較され、そして、その経過時間に応じて予め定められた処理が実行されてもよい。
第2タイマ回路4aによって計時された経過時間、すなわち、スイッチ2が第1状態を維持していた時間に応じてステップS91などで実施される所定の処理としては、前述のような警報器の点検が例示される。たとえば、前述の第1〜第3の処理は、それぞれ、各センサ機能の点検の実施であってもよく、音声を発することによる、ガス漏れや、異常な温湿度もしくは乾燥状態についての報知機能の点検の実施であってもよい。また、前述の第1〜第3の処理は、警報器110の点検処理ではなく、ユーザーによる選択が可能なように備えられているオプション機能の付加と解除との切換え処理などであってもよい。スイッチ2が第1状態を維持していた時間に応じて実施される処理は任意であり、これらに限定されない。
なお、図8、図9Aおよび図9Bは、本実施形態の警報器の一例である警報器110のブロック図や、その動作の一例のフローチャートに過ぎず、本実施形態の警報器は、たとえば第2タイマ回路4aを含んでいなくてもよく、ステップS6A、S9A〜S9C、S91〜S93およびS10が実行されなくてもよい。
さらに、実施形態の警報器は、図4、6、7、9Aおよび9Bそれぞれに示されたフローチャート同士が組み合わされた処理フローで動作してもよく、各フローチャート中に示された各ステップの一部が省略された処理フローで動作してもよい。
たとえば、第1態様として、実施形態の警報器100、110では、動作モード制御部3は、電源部1からの電力供給の停止時にスイッチ2が所定の第1状態にあるときに、電力供給の再開時の警報器の動作モードを、外部機器200との通信の準備モードである縁組モードに設定してもよい。ここで、スイッチ2は、外部からの操作が継続している間だけ閉状態をとり得る自動復帰型の押しボタン式回路開閉器であってもよく、所定の第1状態はスイッチ2の閉状態であってもよい。また、電力供給の停止および開始(再開)は、電源プラグのコンセントへの挿抜により行われてもよい。従って、電力の供給中にスイッチ2が押下された状態で電源プラグがコンセントから抜かれ、再度コンセントに差し込まれた場合に、警報器100、110の動作モードが縁組モードに設定されてもよい。なお、スイッチ2は、警報器100、110の点検スイッチを兼ねていてもよい。また、縁組モードでは、外部機器200と警報器100、110との間で、パケット交換が行われ、相手方の機器の認証や登録処理が行われてもよい。さらに、他の実施形態の警報器110は、電力供給の開始から所定の時間以内にスイッチが第1状態に遷移された時だけ、電力の再開時に縁組モードに設定されてもよい。
また、第2態様として、前述の第1態様の警報器100、110において、動作モード制御部3は、前述の電力供給の停止時にスイッチ2が第1状態にあり、かつ、電力供給の再開時にスイッチ2が第1状態以外の所定の状態にあるときだけ、電力供給の再開時に警報器100、110を縁組モードに設定してもよい。従って、電力の供給中にスイッチ2が押下された状態で電源プラグがコンセントから抜かれ、スイッチ2の押下を止めた上で電源プラグが再度コンセントに差し込まれた場合に、警報器100、110の動作モードが縁組モードに設定されてもよい。
以上のように、実施形態の警報器によれば、たとえば1つのスイッチを介して、ユーザーなどが、多様な種類の処理の実行を警報器に指示することができる。すなわち、スイッチは、そもそも単独で操作されることによって、前述のように、自己点検の実施や、警報発動時のブザーなどの鳴動の停止、および、オプション機能の付加や解除などを指示するために用いられ得るが、前述の各実施形態によれば、さらに、電力供給の開始および停止とスイッチの操作とを組み合わせることで、スイッチを用いてより多様な動作や処理を警報器に指示することができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
また、上記実施形態では、説明の便宜上、実施形態の警報器の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、警報器の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。