(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。先ず、本実施形態の制御装置80が適用されたV型8気筒の内燃機関100の概略構成について説明する。なお、以下の説明において単に上流、下流というときは、吸気や排気の流れ方向における上流、下流を示すものとする。
図1に示すように、内燃機関100は、4つの気筒11aを有する第1バンク11と、第1バンク11に対してクランクシャフト35を挟んで反対側の4つの気筒21aを有する第2バンク21とを備えている。なお、図1では、第1バンク11の4つの気筒11aのうちの1つのみを図示し、第2バンク21の4つの気筒21aのうちの1つのみを図示している。また、第1バンク11の4つの気筒11aが第1気筒群を構成し、第2バンク21の4つの気筒21aが第2気筒群を構成する。
内燃機関100は、外部から吸気を導入する吸気通路41を備えている。吸気通路41には、当該吸気通路41を通過する吸気の量を調整するためのスロットルバルブ33が設けられている。
吸気通路41は、スロットルバルブ33よりも下流側において第1吸気管42及び第2吸気管43に分岐している。第1吸気管42は、第1バンク11の気筒11aに接続されている。なお、図示は省略するが、第1吸気管42は、下流側が4つに分岐しており、分岐した各管が第1バンク11の4つの気筒11aにそれぞれ接続されている。また、第2吸気管43は、第2バンク21の気筒21aに接続されている。なお、図示は省略するが、第2吸気管43は、下流側が4つに分岐しており、分岐した各管が第2バンク21の4つの気筒21aにそれぞれ接続されている。
第1バンク11の気筒11a及び第2バンク21の気筒21aには、気筒11a及び気筒21aから排気を排出するための排気通路48が接続されている。排気通路48は、上流側の部分が第1排気管46及び第2排気管47に分岐している。第1排気管46は、第1バンク11の気筒11aに接続されている。なお、図示は省略するが、第1排気管46は、上流側が第1バンク11の各気筒11aに接続されるように4つに分岐しており、これら分岐した管が途中で1つの管に合流している。第1排気管46には、第1バンク11の気筒11aから排出された排気の空燃比AF1を検出する第1空燃比センサ51が設けられている。第1空燃比センサ51は、第1排気管46における合流部分よりも下流側に位置している。第1排気管46における第1空燃比センサ51よりも下流側には、排気中の一酸化炭素や窒素酸化物を浄化するための第1触媒36が設けられている。
第2排気管47は、第2バンク21の気筒21aに接続されている。なお、図示は省略するが、第2排気管47は、上流側が第2バンク21の各気筒21aに接続されるように4つに分岐しており、これら分岐した管が途中で1つの管に合流している。第2排気管47には、第2バンク21の気筒21aから排出された排気の空燃比AF2を検出する第2空燃比センサ52が設けられている。第2空燃比センサ52は、第2排気管47における合流部分よりも下流側に位置している。第2排気管47における第2空燃比センサ52よりも下流側には、排気中の一酸化炭素や窒素酸化物を浄化するための第2触媒37が設けられている。
第1バンク11の各気筒11aの内部には、当該気筒11a内で往復動作する第1ピストン17が設けられている。第1ピストン17は、コネクティングロッド34を介してクランクシャフト35におけるクランクピン35aに連結されている。クランクピン35aは、クランクアーム35bを介してクランクシャフト35の回転中心であるクランクジャーナル35cに連結されている。
第2バンク21の各気筒21aの内部には、当該気筒21a内で往復動作する第2ピストン27が設けられている。第2ピストン27は、コネクティングロッド34を介してクランクシャフト35におけるクランクピン35aに連結されている。クランクピン35aは、クランクアーム35bを介してクランクシャフト35の回転中心であるクランクジャーナル35cに連結されている。
内燃機関100には、第1吸気管42の気筒11aに対する開口を開閉するための吸気弁31が設けられている。また、内燃機関100には、第2吸気管43の気筒21aに対する開口を開閉するための吸気弁31が設けられている。
内燃機関100には、第1排気管46の気筒11aに対する開口を開閉するための排気弁32が設けられている。また、内燃機関100には、第2排気管47の気筒21aに対する開口を開閉するための排気弁32が設けられている。
内燃機関100には、第1バンク11の気筒11aの内部に燃料を供給する第1燃料噴射弁としての第1筒内噴射弁16が設けられている。第1筒内噴射弁16は、その先端が第1バンク11の気筒11a内を向いており、燃料を気筒11aの内部に直接噴射する。第1筒内噴射弁16は、通電されることで開弁する電磁式の噴射弁である。第1筒内噴射弁16は、当該第1筒内噴射弁16の弁体が全開に至るフルリフト噴射、及び当該第1筒内噴射弁16の弁体が全開に至らないパーシャルリフト噴射の2種類のリフト噴射で燃料噴射が可能になっている。フルリフト噴射は、第1筒内噴射弁16の弁体が全開位置に変位するまで通電し、その後に通電を停止して燃料噴射を停止する。一方、パーシャルリフト噴射は、第1筒内噴射弁16の弁体が全開位置まで変位するよりも前に通電を停止して燃料噴射を停止する。本実施形態では、合計4つの第1筒内噴射弁16によって第1バンク11の各気筒11aに燃料を供給する。
第1筒内噴射弁16には、フルリフト噴射で燃料噴射可能な最小の燃料噴射量である最小フルリフト噴射量QFminが存在する。最小フルリフト噴射量QFminは、第1筒内噴射弁16の弁体が全開に至るまでの通電時間や第1筒内噴射弁16に供給される燃料の圧力等によって決まる。また、第1筒内噴射弁16には、パーシャルリフト噴射で燃料噴射可能な最小の燃料噴射量である最小パーシャルリフト噴射量QPminが存在する。最小パーシャルリフト噴射量QPminは、第1筒内噴射弁16の弁体が適切に開弁するための通電時間や第1筒内噴射弁16に供給される燃料の圧力等によって決まる。
内燃機関100には、第2バンク21の気筒21aの内部に燃料を供給する第2燃料噴射弁としての第2筒内噴射弁26が設けられている。第2筒内噴射弁26は、その先端が第2バンク21の気筒21a内を向いており、燃料を気筒21aの内部に直接噴射する。第2筒内噴射弁26は、通電されることで開弁する電磁式の噴射弁である。第2筒内噴射弁26は、当該第2筒内噴射弁26の弁体が全開に至るフルリフト噴射、及び当該第2筒内噴射弁26の弁体が全開に至らないパーシャルリフト噴射の2種類のリフト噴射で燃料噴射が可能になっている。フルリフト噴射は、第2筒内噴射弁26の弁体が全開位置に変位するまで通電し、その後に通電を停止して燃料噴射を停止する。一方、パーシャルリフト噴射は、第2筒内噴射弁26の弁体が全開位置まで変位するよりも前に通電を停止して燃料噴射を停止する。本実施形態では、合計4つの第2筒内噴射弁26によって第2バンク21の各気筒21aに燃料を供給する。
第2筒内噴射弁26には、フルリフト噴射で燃料噴射可能な最小の燃料噴射量である最小フルリフト噴射量QFminが存在する。最小フルリフト噴射量QFminは、第2筒内噴射弁26の弁体が全開に至るまでの通電時間や第2筒内噴射弁26に供給される燃料の圧力等によって決まる。また、第2筒内噴射弁26には、パーシャルリフト噴射で燃料噴射可能な最小の燃料噴射量である最小パーシャルリフト噴射量QPminが存在する。最小パーシャルリフト噴射量QPminは、第2筒内噴射弁26の弁体が適切に開弁するための通電時間や第2筒内噴射弁26に供給される燃料の圧力等によって決まる。
なお、第2筒内噴射弁26は第1筒内噴射弁16と同一仕様であり、第1筒内噴射弁16の最小フルリフト噴射量QFmin及び第2筒内噴射弁26の最小フルリフト噴射量QFminとは同一である。また、同様に、第1筒内噴射弁16の最小パーシャルリフト噴射量QPmin及び第2筒内噴射弁26の最小パーシャルリフト噴射量QPminは同一である。
第1筒内噴射弁16及び第2筒内噴射弁26には、制御装置80が電気的に接続されている。制御装置80は、第1筒内噴射弁16に、当該第1筒内噴射弁16から噴射される燃料の量を制御するための第1駆動信号S1を出力する。また、制御装置80は、第2筒内噴射弁26に、当該第2筒内噴射弁26から噴射される燃料の量を制御するための第2駆動信号S2を出力する。
制御装置80には、第1空燃比センサ51によって検出される第1バンク11の気筒11aから排出された排気の空燃比AF1を示す信号が入力される。また、制御装置80には、第2空燃比センサ52によって検出される第2バンク21の気筒21aから排出された排気の空燃比AF2を示す信号が入力される。
制御装置80には、クランク角センサ53によって検出されるクランクシャフト35の回転数を示す信号が入力される。また、制御装置80には、アクセルセンサ54によって検出されるアクセルペダルの踏み込み量を示す信号が入力される。制御装置80には、水温センサ55によって検出される内燃機関100の冷却水の温度を示す信号が入力される。また、制御装置80には、エアフローメータ56によって検出される吸気通路41を通過する吸気の量を示す信号が入力される。制御装置80には、スロットルポジションセンサ57によって検出されるスロットルバルブ33の開度であるスロットル開度を示す信号が入力される。また、制御装置80には、外気温センサ58によって検出される車両の外部の気温を示す信号が入力される。制御装置80には、燃圧センサ59によって検出される第1筒内噴射弁16及び第2筒内噴射弁26に供給する燃料の圧力を示す信号が入力される。
制御装置80は、内燃機関100の運転状態に応じて、1回の燃焼サイクルで要求される燃料量の基本量である基本噴射量Eを算出する噴射量算出部81を備えている。具体的には、噴射量算出部81は、クランクシャフト35の回転数、アクセルペダルの踏み込み量、エアフローメータ56によって検出される吸気の量、スロットル開度、目標の空燃比である目標空燃比、目標のトルクである目標トルク等の各種パラメータに基づいて、基本噴射量Eを算出する。
また、制御装置80は、噴射量算出部81が算出した基本噴射量Eを補正して第1筒内噴射弁16から噴射される燃料の量である第1補正噴射量Yaを算出し、噴射量算出部81が算出した基本噴射量Eを補正して第2筒内噴射弁26から噴射される燃料の量である第2補正噴射量Ybを算出する噴射量補正部82を備えている。具体的には、噴射量補正部82は、第1バンク11の気筒11aから排出された排気の空燃比AF1に基づいて、基本噴射量Eを補正して第1バンク11の各気筒11aについての第1補正噴射量Yaを算出する。また、噴射量補正部82は、第2バンク21の各気筒21aから排出された排気の空燃比AF2に基づいて、基本噴射量Eを補正して第2バンク21の気筒21aについての第2補正噴射量Ybを算出する。つまり、本実施形態では、噴射量補正部82は、第1バンク11及び第2バンク21の排気の状態に基づいて、第1補正噴射量Ya及び第2補正噴射量Ybを算出する。
制御装置80は、1回の燃焼サイクルにおける燃料噴射回数を決定する噴射回数決定部83を備えている。噴射回数決定部83は、内燃機関100の運転状態に応じて、1回の燃焼サイクルに要求される量の燃料を1回の燃料噴射で噴射する単独噴射か、1回の燃焼サイクルに要求される量の燃料を複数回の燃料に分割して噴射する分割噴射かのいずれかに決定する。すなわち、内燃機関100の第1筒内噴射弁16及び第2筒内噴射弁26は、噴射回数決定部83によって1回の燃焼サイクルに要求される燃料量を複数回の燃料に分割して噴射する分割噴射が可能になっている。また、噴射回数決定部83は、分割噴射を決定した場合、その噴射回数も決定する。なお、本実施形態では、分割噴射における最大の噴射回数は3回である。噴射回数決定部83は、基本噴射量E、第1補正噴射量Ya、第2補正噴射量Yb、クランクシャフト35の回転数、アクセルペダルの踏み込み量、内燃機関100の冷却水の温度、エアフローメータ56によって検出される吸気の量、スロットル開度、車両の外部の気温等の各種パラメータに基づいて、燃料噴射回数を決定する。
また、噴射回数決定部83は、内燃機関100の運転状態に応じて、1回の燃焼サイクルにおける各回の燃料噴射を、フルリフト噴射及びパーシャルリフト噴射のいずれかのリフト噴射によって燃料噴射を実行するかを決定する。具体的には、噴射回数決定部83は、基本噴射量E、第1補正噴射量Ya、第2補正噴射量Yb、燃料噴射回数、クランクシャフト35の回転数、アクセルペダルの踏み込み量、内燃機関100の冷却水の温度、吸気の量、スロットル開度、車両の外部の気温等の各種パラメータに基づいて、各回の燃料噴射のリフト噴射の種別を決定する。
次に、図2及び図3を参照して、制御装置80が行う燃料噴射回数の算出処理について説明する。なお、制御装置80は、燃料噴射回数の算出処理を、内燃機関100が駆動しているときに、所定の制御周期で繰り返し実行する。
図2及び図3に示すように、ステップS11において、噴射量算出部81(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態に応じて、1回の燃焼サイクルで要求される燃料量の基本量である基本噴射量Eを算出する。上述したように、噴射量算出部81は、クランクシャフト35の回転数、アクセルペダルの踏み込み量、エアフローメータ56によって検出される吸気の量、スロットル開度、目標空燃比、目標トルク等の各種パラメータに基づいて、基本噴射量Eを算出する。なお、基本噴射量Eは、第1筒内噴射弁16及び第2筒内噴射弁26における最小フルリフト噴射量QFminよりもある程度大きな噴射量が算出されるようになっている。
また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態及び基本噴射量Eに基づいて、基本の燃料噴射回数である基本噴射回数CTを決定する。具体的には、例えば、基本噴射量Eが一定量以上であって内燃機関100の負荷が比較的に低いときには、噴射回数決定部83は、噴射回数3回の分割噴射を決定する。また、例えば、内燃機関100の負荷が比較的に高いときには、噴射回数決定部83は、噴射回数1回、すなわち単独噴射を決定する。その後、制御装置80は、処理をステップS12に進める。
ステップS12において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、基本噴射量E、及び基本噴射回数CTに基づいて、基本噴射量Eを各噴射に分割する比率である分割比率を算出する。例えば、基本噴射回数CTが3回である場合、基本噴射量Eの分割比率として、噴射タイミングの早い順から「7:2:1」といった比率を算出する。また、基本噴射回数CTが1回である場合には、1回の噴射で基本噴射量Eを噴射するように分割比率を算出する。そして、制御装置80は、処理をステップS13に進める。
ステップS13において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、基本噴射量E、基本噴射回数CT、及び分割比率に基づいて、基本噴射回数CTにおける各回の燃料噴射時期を算出する。例えば、基本噴射回数CTが3回である場合、各噴射における噴射開始時期及び噴射終了時期をそれぞれ算出する。また、基本噴射回数CTが1回である場合には、その1回の噴射における噴射開始時期及び噴射終了時期を算出する。
さらに、噴射回数決定部83(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、基本噴射量E、基本噴射回数CT、及び分割比率に基づいて、基本噴射回数CTにおける各回の燃料噴射を、フルリフト噴射及びパーシャルリフト噴射のいずれかのリフト噴射によって燃料噴射を実行するかを決定する。すなわち、基本フルリフト噴射回数CF及び基本パーシャルリフト噴射回数CPを仮決定する。例えば、基本噴射回数CTが3回である場合、3回全てをフルリフト噴射にする、前半の2回の噴射をフルリフト噴射にし、最後の1回の噴射をパーシャルリフト噴射にする、というように決定する。また、噴射回数決定部83は、少なくとも1回のフルリフト噴射が含まれるように、リフト噴射の種別を決定する。したがって、基本噴射回数CTが1回である場合には、基本フルリフト噴射回数CFが1回に決定され、基本パーシャルリフト噴射回数CPが0回に決定される。
噴射回数決定部83は、上記のようにリフト噴射の種別を決定するにあたり、基本噴射量E、分割比率、燃圧センサ59によって検出される燃料の圧力等に基づいて、最小フルリフト噴射量QFmin以上の噴射量になる燃料噴射をフルリフト噴射に決定する。また、噴射回数決定部83は、基本噴射量E、分割比率、燃圧センサ59によって検出される燃料の圧力等に基づいて、最小パーシャルリフト噴射量QPmin以上、最小フルリフト噴射量QFmin未満の噴射量になる燃料噴射をパーシャルリフト噴射に決定する。そして、制御装置80は、処理をステップS14に進める。
ステップS14において、噴射量補正部82(制御装置80)は、第1バンク11の気筒11aから排出された排気の空燃比AF1に基づいて、基本噴射量Eを補正して第1バンク11の各気筒11aについての第1補正噴射量Yaを算出する。具体的には、噴射量補正部82は、第1空燃比センサ51が検出した空燃比AF1が目標空燃比に近づくように、基本噴射量Eを補正して第1補正噴射量Yaを算出する。同様に、噴射量補正部82(制御装置80)は、第2バンク21の気筒21aから排出された排気の空燃比AF2に基づいて、基本噴射量Eを補正して第2バンク21の各気筒21aについての第2補正噴射量Ybを算出する。具体的には、噴射量補正部82は、第2空燃比センサ52が検出した空燃比AF2が目標空燃比に近づくように、基本噴射量Eを補正して第2補正噴射量Ybを算出する。なお、噴射量補正部82は、基本噴射量Eに基づいて算出される第1補正噴射量Ya及び第2補正噴射量Ybが第1筒内噴射弁16及び第2筒内噴射弁26における最小フルリフト噴射量QFmin以上の噴射量となるように補正する。そして、制御装置80は、処理をステップS15に進める。
ステップS15において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、基本噴射回数CTが2回以上であるか否かを判定する。ステップS15において、基本噴射回数CTが2回以上でない場合(S15:NO)、制御装置80は、処理をステップS16に進める。
ステップS16において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、燃料噴射回数DTを1回に決定する。また、基本噴射回数CTが1回であるときには、その1回の燃料噴射のリフト噴射の種別がステップS13においてフルリフト噴射に決定されている。そのため、噴射回数決定部83は、そのままフルリフト噴射回数DFを1回に決定する。また、噴射回数決定部83は、パーシャルリフト噴射回数DPを0回に決定する。その後、今回の燃料噴射回数の算出処理は終了する。一方、ステップS15において、基本噴射回数CTが2回以上である場合(S15:YES)、制御装置80は、処理をステップS21に進める。
ステップS21において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、最小フルリフト噴射量QFmin及び基本フルリフト噴射回数CFと、最小パーシャルリフト噴射量QPmin及び基本パーシャルリフト噴射回数CPとに基づいて、第1補正噴射量Yaが基本噴射回数CTで噴射可能か否かを判定する。なお、第1筒内噴射弁16の最小フルリフト噴射量QFmin及び最小パーシャルリフト噴射量QPminは、燃圧センサ59によって検出される燃料の圧力等から算出される。
具体的には、噴射回数決定部83は、以下の条件を満たすか否かを判定する。
条件(1):第1補正噴射量Ya≧(最小フルリフト噴射量QFmin×基本フルリフト噴射回数CF)+(最小パーシャルリフト噴射量QPmin×基本パーシャルリフト噴射回数CP)
上記の条件(1)を満たす場合、噴射回数決定部83は、基本噴射回数CTを、第1補正噴射量Yaについての燃料噴射回数として仮決定する。例えば、基本噴射回数CTが3回である場合には、第1補正噴射量Yaについての燃料噴射回数を3回に仮決定する。
一方、上記の条件(1)を満たさない場合、噴射回数決定部83は、基本噴射回数CTよりも1回分少ない燃料噴射回数を、第1補正噴射量Yaについての燃料噴射回数として仮決定する。例えば、基本噴射回数CTが3回である場合には、第1補正噴射量Yaについての燃料噴射回数を2回に仮決定する。
また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、最小フルリフト噴射量QFmin及び基本フルリフト噴射回数CFと、最小パーシャルリフト噴射量QPmin及び基本パーシャルリフト噴射回数CPとに基づいて、第2補正噴射量Ybが基本噴射回数CTで噴射可能か否かを判定する。なお、第2筒内噴射弁26の最小フルリフト噴射量QFmin及び最小パーシャルリフト噴射量QPminは、燃圧センサ59によって検出される燃料の圧力等から算出される。
具体的には、噴射回数決定部83は、以下の条件を満たすか否かを判定する。
条件(2):第2補正噴射量Yb≧(最小フルリフト噴射量QFmin×基本フルリフト噴射回数CF)+(最小パーシャルリフト噴射量QPmin×基本パーシャルリフト噴射回数CP)
上記の条件(2)を満たす場合、噴射回数決定部83は、基本噴射回数CTを、第2補正噴射量Ybについての燃料噴射回数として仮決定する。例えば、基本噴射回数CTが3回である場合には、第2補正噴射量Ybについての燃料噴射回数を3回に仮決定する。
一方、上記の条件(2)を満たさない場合、噴射回数決定部83は、基本噴射回数CTよりも1回分少ない燃料噴射回数を、第2補正噴射量Ybについての燃料噴射回数として仮決定する。例えば、基本噴射回数CTが3回である場合には、第2補正噴射量Ybについての燃料噴射回数を2回に仮決定する。
ステップS21において、上記の条件(1)及び条件(2)を共に満たす場合(S21:YES)、制御装置80は、処理をステップS22に進める。例えば、基本噴射回数CTが3回である場合には、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数及び第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数が共に3回であると、処理がステップS22に進む。
ステップS22において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、基本噴射回数CTを、燃料噴射回数DTとして決定する。すなわち、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数及び第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数が基本噴射回数CTと同じである場合には、仮決定した第1補正噴射量Yaについての燃料噴射回数及び第2補正噴射量Ybについての燃料噴射回数を、燃料噴射回数DTに決定する。すなわち、第1補正噴射量Yaを噴射するための第1燃料噴射回数と、第2補正噴射量Ybを噴射するための第2燃料噴射回数とが同一になる。そして、制御装置80は、処理をステップS29に進める。
ステップS29において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、基本フルリフト噴射回数CFを、フルリフト噴射回数DFとして決定する。また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、基本パーシャルリフト噴射回数CPを、パーシャルリフト噴射回数DPとして決定する。そして、第1燃料噴射回数の各回の燃料噴射のリフト噴射の種別と、第2燃料噴射回数の各回の燃料噴射のリフト噴射の種別とがそれぞれ同一になる。すなわち、第1燃料噴射回数及び第2燃料噴射回数としてN(ただし、Nは2以上の整数)回の噴射回数を決定した場合、最後の噴射であるN回目の燃料噴射のリフト噴射の種別が同一になる。その後、制御装置80は、処理をステップS31に進める。
一方、ステップS21において、上記の条件(1)及び条件(2)の少なくとも一方を満たしていない場合(S21:NO)、制御装置80は、処理をステップS23に進める。すなわち、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数と第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数とが異なる場合には、処理がステップS23に進む。また、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数と第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数とが同じであっても、これらが基本噴射回数CTとが異なる場合には、処理がステップS23に進む。
ステップS23において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、基本噴射回数CTから燃料噴射回数を1回減少させて、燃料噴射回数DTとする。したがって、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数及び第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数の一方が他方に比べて少ない場合には、仮決定した燃料噴射回数が多くなっている他方の燃料噴射回数が、一方に合わせて減少する。こうして第1補正噴射量Yaを噴射するための第1燃料噴射回数と、第2補正噴射量Ybを噴射するための第2燃料噴射回数とを同一にする。その後、制御装置80は、処理をステップS25に進める。
ステップS25において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、第1補正噴射量Ya、及び燃料噴射回数DTに基づいて、第1補正噴射量Yaを各噴射に分割する比率である分割比率を算出する。例えば、燃料噴射回数DTが2回である場合には、第1補正噴射量Yaの分割比率として、噴射タイミングの早い順から「7:3」といった比率を算出する。また、燃料噴射回数DTが1回である場合には、1回の噴射で第1補正噴射量Yaを噴射するように分割比率を算出する。
また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、第2補正噴射量Yb、及び燃料噴射回数DTに基づいて、第2補正噴射量Ybを各噴射に分割する比率である分割比率を算出する。例えば、燃料噴射回数DTが2回である場合には、第2補正噴射量Ybの分割比率として、噴射タイミングの早い順から「7:3」といった比率を算出する。また、燃料噴射回数DTが1回である場合には、1回の噴射で第2補正噴射量Ybを噴射するように分割比率を算出する。そして、制御装置80は、処理をステップS26に進める。
ステップS26において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、第1補正噴射量Ya、燃料噴射回数DT、及び分割比率に基づいて、第1補正噴射量Yaについての各回の燃料噴射時期を算出する。例えば、燃料噴射回数DTが2回である場合、各噴射における噴射開始時期及び噴射終了時期をそれぞれ算出する。また、燃料噴射回数DTが1回である場合には、その1回の噴射における噴射開始時期及び噴射終了時期を算出する。
また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、第2補正噴射量Yb、燃料噴射回数DT、及び分割比率に基づいて、第2補正噴射量Ybについての各回の燃料噴射時期を算出する。例えば、燃料噴射回数DTが2回である場合、各噴射における噴射開始時期及び噴射終了時期をそれぞれ算出する。また、燃料噴射回数DTが1回である場合には、その1回の噴射における噴射開始時期及び噴射終了時期を算出する。
噴射回数決定部83(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、第1補正噴射量Ya、燃料噴射回数DT、及び分割比率に基づいて、第1補正噴射量Yaについての各回の燃料噴射を、フルリフト噴射及びパーシャルリフト噴射のいずれかのリフト噴射によって燃料噴射を実行するかを決定する。すなわち、第1補正噴射量Yaについてのフルリフト噴射回数DF及びパーシャルリフト噴射回数DPを決定する。例えば、燃料噴射回数DTが2回である場合、2回全てをフルリフト噴射にする、前半の1回の噴射をフルリフト噴射、後半の1回の噴射をパーシャルリフト噴射にする、というように決定する。
また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、第2補正噴射量Yb、燃料噴射回数DT、及び分割比率に基づいて、第2補正噴射量Ybについての各回の燃料噴射を、フルリフト噴射及びパーシャルリフト噴射のいずれかのリフト噴射によって燃料噴射を実行するかを決定する。ここで、第2補正噴射量Ybについての各回の燃料噴射のリフト噴射の種別は、第1燃料噴射回数の各回の燃料噴射のリフト噴射の種別と同一にする。すなわち、第1燃料噴射回数及び第2燃料噴射回数としてN(ただし、Nは2以上の整数)回の噴射回数を決定した場合、最後の噴射であるN回目の燃料噴射のリフト噴射の種別も同一になる。そして、第2補正噴射量Ybについてのフルリフト噴射回数DF及びパーシャルリフト噴射回数DPは、第1補正噴射量Yaについてのフルリフト噴射回数DF及びパーシャルリフト噴射回数DPとそれぞれ同一に決定される。その後、制御装置80は、処理をステップS27に進める。
ステップS27において、噴射量補正部82(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、燃料噴射回数DT、及び第1バンク11の気筒11aから排出された排気の空燃比AF1に基づいて、第1補正噴射量Yaを再度算出する。このとき、燃料噴射回数はステップS23で算出した燃料噴射回数DTで固定し、分割比率はステップS25で算出した分割比率で固定する。また、各回の燃料噴射のリフト噴射の種別は、ステップS26で決定したリフト噴射の種別に固定する。その上で、内燃機関100に求められる目標トルクを満たすように、第1補正噴射量Yaを算出する。なお、第1補正噴射量Yaを再度算出する理由としては、燃料噴射回数DTが算出した基本噴射回数CTから変わる場合やリフト噴射の種別が変わる場合には、1回の燃焼サイクルにおいて第1バンク11の気筒11aで必要な燃料量が変わり得るからである。
また、噴射量補正部82(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、燃料噴射回数DT、及び第2バンク21の気筒21aから排出された排気の空燃比AF2に基づいて、第2補正噴射量Ybを再度算出する。このとき、燃料噴射回数はステップS23で算出した燃料噴射回数DTで固定し、分割比率はステップS25で算出した分割比率で固定する。また、各回の燃料噴射のリフト噴射の種別は、ステップS26で決定したリフト噴射の種別に固定する。その上で、内燃機関100に求められる目標トルクを満たすように、第2補正噴射量Ybを算出する。なお、第2補正噴射量Ybを再度算出する理由としては、燃料噴射回数DTが算出した基本噴射回数CTから変わる場合やリフト噴射の種別が変わる場合には、1回の燃焼サイクルにおいて第2バンク21の気筒21aで必要な燃料量が変わり得るからである。そして、制御装置80は、処理をステップS31に進める。
ステップS31において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、第1バンク11におけるフルリフト噴射のうち、要求される燃料噴射量が最も小さいフルリフト噴射を選択する。そして、噴射回数決定部83(制御装置80)は、そのフルリフト噴射に要求される燃料噴射量である要求最小フルリフト噴射量が最小フルリフト噴射量QFmin以上であるか否かを判定する。この判定を行う理由としては、補正された第1補正噴射量Yaが基本噴射量Eよりも小さくなり、それに伴って各回の燃料の噴射量が小さくなることがあるからである。そして、この場合、第1バンク11におけるフルリフト噴射の要求最小フルリフト噴射量は、分割比率等が変化しなくても、最小フルリフト噴射量QFminよりも小さくなることがある。
すなわち、噴射回数決定部83は、以下の条件を満たすか否かを判定する。
条件(3):第1バンク11におけるフルリフト噴射の要求最小フルリフト噴射量≧最小フルリフト噴射量QFmin
また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、第1バンク11におけるパーシャルリフト噴射のうち、要求される燃料噴射量が最も小さいパーシャルリフト噴射を選択する。そして、噴射回数決定部83(制御装置80)は、そのパーシャルリフト噴射に要求される燃料噴射量である要求最小パーシャルリフト噴射量が最小パーシャルリフト噴射量QPmin以上であるか否かを判定する。この判定を行う理由としては、補正された第1補正噴射量Yaが基本噴射量Eよりも小さくなり、それに伴って各回の燃料の噴射量が小さくなることがあるからである。そして、この場合、第1バンク11におけるパーシャルリフトの要求最小パーシャルリフト噴射量は、分割比率等が変化しなくても、最小パーシャルリフト噴射量QPminよりも小さくなることがある。
すなわち、噴射回数決定部83は、以下の条件を満たすか否かを判定する。
条件(4):第1バンク11におけるパーシャルリフト噴射の要求最小パーシャルリフト噴射量≧最小パーシャルリフト噴射量QPmin
ステップS31において、上記の条件(3)及び条件(4)を共に満たす場合(S31:YES)、制御装置80は、処理をステップS41に進める。一方、ステップS31において、上記の条件(3)及び条件(4)の少なくとも一方を満たしていない場合(S31:NO)、制御装置80は、処理をステップS33に進める。
ステップS33において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、上記の条件(3)及び条件(4)を共に満たすように第1バンク11の分割比率を再度算出する。再度算出される分割比率は、前回算出された分割比率と可能な限り近い分割比率になるように算出される。また、再度算出される分割比率は、前回算出された分割比率の大きい比率のものが小さくなり、前回算出された分割比率の小さい比率のものが大きくなるように算出される。例えば、前回算出された分割比率が「7:3」であって、分割比率を「6:4」や「5:5」にすることで上記の条件(3)及び条件(4)を共に満たす場合、噴射回数決定部83は、再度算出する分割比率を、変更前の「7:3」に近い「6:4」とする。そして、制御装置80は、処理をステップS41に進める。
ステップS41において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、第2バンク21におけるフルリフト噴射のうち、要求される燃料噴射量が最も小さいフルリフト噴射を選択する。そして、噴射回数決定部83(制御装置80)は、そのフルリフト噴射に要求される燃料噴射量である要求最小フルリフト噴射量が最小フルリフト噴射量QFmin以上であるか否かを判定する。この判定を行う理由としては、補正された第2補正噴射量Ybが基本噴射量Eよりも小さくなり、それに伴って各回の燃料の噴射量が小さくなることがあるからである。そして、この場合、第2バンク21におけるフルリフト噴射の要求最小フルリフト噴射量は、分割比率等が変化しなくても、最小フルリフト噴射量QFminよりも小さくなることがある。
すなわち、噴射回数決定部83は、以下の条件を満たすか否かを判定する。
条件(5):第2バンク21におけるフルリフト噴射の要求最小フルリフト噴射量≧最小フルリフト噴射量QFmin
また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、第2バンク21におけるパーシャルリフト噴射のうち、要求される燃料噴射量が最も小さいパーシャルリフト噴射を選択する。そして、噴射回数決定部83(制御装置80)は、そのパーシャルリフト噴射に要求される燃料噴射量である要求最小パーシャルリフト噴射量が最小パーシャルリフト噴射量QPmin以上であるか否かを判定する。この判定を行う理由としては、補正された第2補正噴射量Ybが基本噴射量Eよりも小さくなり、それに伴って各回の燃料の噴射量が小さくなることがあるからである。そして、この場合、第2バンク21におけるパーシャルリフトの要求最小パーシャルリフト噴射量は、分割比率等が変化しなくても、最小パーシャルリフト噴射量QPminよりも小さくなることがある。
すなわち、噴射回数決定部83は、以下の条件を満たすか否かを判定する。
条件(6):第2バンク21におけるパーシャルリフト噴射の要求最小パーシャルリフト噴射量≧最小パーシャルリフト噴射量QPmin
ステップS41において、上記の条件(5)及び条件(6)を共に満たす場合(S41:YES)、制御装置80は、今回の燃料噴射回数の算出処理を終了する。一方、ステップS41において、上記の条件(5)及び条件(6)の少なくとも一方を満たしていない場合(S41:NO)、制御装置80は、処理をステップS43に進める。
ステップS43において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、上記の条件(5)及び条件(6)を共に満たすように第2バンク21の分割比率を再度算出する。再度算出される分割比率は、前回算出された分割比率と可能な限り近い分割比率になるように算出される。また、再度算出される分割比率は、前回算出された分割比率の大きい比率のものが小さくなり、前回算出された分割比率の小さい比率のものが大きくなるように算出される。例えば、前回算出された分割比率が「7:3」であって、分割比率を「6:4」や「5:5」にすることで上記の条件(5)及び条件(6)を共に満たす場合、噴射回数決定部83は、再度算出する分割比率を、変更前の「7:3」に近い「6:4」とする。そして、制御装置80は、今回の燃料噴射回数の算出処理を終了する。
次に、本実施形態の作用について説明する。
図4(a)に示すように、噴射量算出部81(制御装置80)がある量の基本噴射量Eを算出したとする。また、この基本噴射量Eに対して、噴射回数決定部83(制御装置80)が基本噴射回数CTとして「3」を決定し、基本フルリフト噴射回数CFとして「3」(基本パーシャルリフト噴射回数CPは「0」)を決定したとする。
ここで、仮に、第1筒内噴射弁16と第2筒内噴射弁26との間に個体差があったり、経年劣化等によって両者の燃料噴射特性に差が生じたりすると、第1筒内噴射弁16から実際に噴射される燃料量と、第2筒内噴射弁26から実際に噴射される燃料量との間に差が生じることがある。その結果、第1バンク11側の第1空燃比センサ51から検出される空燃比AF1と、第2バンク21側の第2空燃比センサ52から検出される空燃比AF2との間にも差が生じる。すると、図4(b)に示すように、第1バンク11の気筒11aから排出された排気の空燃比AF1に基づいて算出される第1補正噴射量Yaと、第2バンク21の気筒21aから排出された排気の空燃比AF2に基づいて算出される第2補正噴射量Ybとに差が生じる。なお、図4(b)では、基本噴射量Eに対する補正量を誇張して描いている。
図4(c)に示すように、噴射回数決定部83(制御装置80)は、第1補正噴射量Yaが基本噴射回数CTの「3」で噴射可能か否かを判定する。ここで、基本噴射回数CTの3回の噴射全てがフルリフト噴射に決定されているため、噴射回数決定部83は、3回分の最小フルリフト噴射量QFminの総量と、第1補正噴射量Yaとを比較する。そして、第1補正噴射量Yaは3回分の最小フルリフト噴射量QFminの総量以上になっているため、基本噴射回数CTの「3」を、第1補正噴射量Yaについての燃料噴射回数としての「3」に仮決定する。
また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、第2補正噴射量Ybが基本噴射回数CTの「3」で噴射可能か否かを判定する。ここで、基本噴射回数CTの3回の全てがフルリフト噴射に決定されているため、噴射回数決定部83は、3回分の最小フルリフト噴射量QFminの総量と、第2補正噴射量Ybとを比較する。そして、第2補正噴射量Ybは3回分の最小フルリフト噴射量QFminの総量未満になっているため、噴射回数決定部83は、基本噴射回数CTの3回よりも1回分少ない燃料噴射回数である「2」を、第2補正噴射量Ybについての燃料噴射回数としての「2」に仮決定する。
ここで、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数の「3」と、第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数の「2」とが異なっている。仮に、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数の「3」、及び第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数の「2」に基づいて実際に燃料噴射を行うと、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとの燃焼状態がアンバランスになり、例えば、振動や騒音等が発生する。
これに対して、本実施形態では、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数である「3」と、第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数である「2」とが異なっている場合、図4(d)に示すように、基本噴射回数CTの3回から燃料噴射回数を1回減少させて、燃料噴射回数DTを「2」とする。これにより、第1補正噴射量Yaを噴射するための第1燃料噴射回数と、第2補正噴射量Ybを噴射するための第2燃料噴射回数とが同一になる。
このように本実施形態では、第1バンク11の第1補正噴射量Yaと第2バンク21の第2補正噴射量Ybとに差が生じたとしても、第1バンク11の第1燃料噴射回数と第2バンク21の第2燃料噴射回数とが同一になる。そのため、第1燃料噴射回数と第2燃料噴射回数とが相違することで、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとの燃焼状態がアンバランスになることを抑制できる。その結果、第1バンク11及び第2バンク21の燃焼状態がアンバランスになることに伴って振動や騒音等が発生することを抑制できる。
また、本実施形態では、第1補正噴射量Yaを噴射するための第1燃料噴射回数と、第2補正噴射量Ybを噴射するための第2燃料噴射回数とを同じにするにあたって、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数及び第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数のどちらかの燃料噴射回数が増大することがない。そのため、燃料噴射回数の増大に伴って、第1筒内噴射弁16や第2筒内噴射弁26から燃料噴射される1回当たりの燃料噴射量が少なくなりにくい。これにより、第1筒内噴射弁16や第2筒内噴射弁26からの1回当たりの燃料噴射量が過度に小さいことに起因して、第1筒内噴射弁16や第2筒内噴射弁26からの燃料噴射量がばらつくことを抑制できる。
図4(e)に示すように、第1補正噴射量Yaを各噴射に分割する比率である分割比率として、噴射回数決定部83(制御装置80)が噴射タイミングの早い順から「7:3」といった比率を算出したとする。また、第1補正噴射量Yaについての各回の燃料噴射におけるリフト噴射の種別として、噴射回数決定部83(制御装置80)が燃料噴射回数DTの2回の噴射を全てフルリフト噴射に決定したとする。すなわち、フルリフト噴射回数DFとして「2」(基本パーシャルリフト噴射回数CPは「0」)を決定したとする。
噴射回数決定部83(制御装置80)は、第2補正噴射量Ybを各噴射に分割する比率である分割比率として、噴射タイミングの早い順から「7:3」といった比率を算出したとする。また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、第2補正噴射量Ybについての各回の燃料噴射におけるリフト噴射の種別を、第1燃料噴射回数の各回の燃料噴射のリフト噴射の種別と同一にする。すなわち、第1燃料噴射回数及び第2燃料噴射回数としてN(ただし、Nは2以上の整数)回の噴射回数を決定した場合、最後の噴射であるN回目の燃料噴射のリフト噴射の種別も同一になる。
ここで、第1バンク11の第1燃料噴射回数及び第2バンク21の第2燃料噴射回数が同一のN回(ただし、Nは2以上の整数)であったとしても、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとの燃焼状態がアンバランスになることがある。具体的には、第1バンク11及び第2バンク21について、燃料噴射から燃焼までの時間が比較的短く、燃焼状態に影響を与えやすいN回目の燃料噴射における燃料の噴霧状態の差が過度に大きいと、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとの燃焼状態がアンバランスになることがある。特に、N回目の燃料噴射のリフト噴射の種別として、第1バンク11及び第2バンク21の一方の燃料噴射がフルリフト噴射に決定され、第1バンク11及び第2バンク21の他方の燃料噴射がパーシャルリフト噴射に決定された場合には、N回目の燃料噴射における燃料の噴霧状態の差が大きくなりやすい。
これに対して、本実施形態では、燃料噴射から燃焼までの時間が比較的短く、燃焼状態に影響を与えやすいN回目の燃料噴射については、リフト噴射の種別が異なる場合に比べて、第1バンク11の燃料噴射における燃料の噴霧状態と第2バンク21の燃料噴射における燃料の噴霧状態との差が小さくなることを期待できる。その結果、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとの燃焼状態がアンバランスになることをより適切に抑制できる。
図4(e)に示すように、噴射量補正部82(制御装置80)は、空燃比AF1に基づいた第1補正噴射量Ya及び空燃比AF2に基づいた第2補正噴射量Ybを再度算出する。なお、図4(e)では、前回算出された第1補正噴射量Yaと再度算出された第1補正噴射量Yaとを同じ大きさで図示している。また、図4(e)では、前回算出された第2補正噴射量Ybと再度算出された第2補正噴射量Ybとを同じ大きさで図示している。
噴射回数決定部83(制御装置80)は、第1バンク11におけるフルリフト噴射の要求最小フルリフト噴射量が最小フルリフト噴射量QFmin以上であるか否かを判定する。具体的には、第1補正噴射量Yaの分割比率として算出された「7:3」のフルリフト噴射の噴射量のうちの最小のフルリフト噴射量である第1補正噴射量Ya×0.3が、最小フルリフト噴射量QFmin以上であるか否かを判定する。そして、第1補正噴射量Ya×0.3は最小フルリフト噴射量QFmin以上であるため、図4(f)に示すように、第1補正噴射量Yaの分割比率が「7:3」に決定される。
図4(e)に示すように、噴射回数決定部83(制御装置80)は、第2バンク21におけるフルリフト噴射の要求最小フルリフト噴射量が最小フルリフト噴射量QFmin以上であるか否かを判定する。具体的には、第2補正噴射量Ybの分割比率として算出された「7:3」のフルリフト噴射の噴射量のうちの最小のフルリフト噴射量である第2補正噴射量Yb×0.3が、最小フルリフト噴射量QFmin以上であるか否かを判定する。
そして、第2補正噴射量Yb×0.3は最小フルリフト噴射量QFmin未満であるため、噴射回数決定部83は、第2補正噴射量Ybの分割比率が前回算出された分割比率と可能な限り近い分割比率になるように算出する。具体的には、図4(f)に示すように、第2バンク21におけるフルリフト噴射の要求最小フルリフト噴射量が最小フルリフト噴射量QFminと同じになるように分割比率を再度算出し、第2補正噴射量Ybの分割比率が「6:4」となる。
本実施形態の効果をまとめると次のとおりである。
(1)本実施形態では、第1バンク11の第1補正噴射量Yaと第2バンク21の第2補正噴射量Ybとに差が生じたとしても、第1バンク11の第1燃料噴射回数と第2バンク21の第2燃料噴射回数とが同一になる。そのため、第1燃料噴射回数と第2燃料噴射回数とが相違することで、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとの燃焼状態がアンバランスになることを抑制できる。その結果、第1バンク11及び第2バンク21の燃焼状態がアンバランスになることに伴って振動や騒音等が発生することを抑制できる。
(2)本実施形態では、第1燃料噴射回数及び第2燃料噴射回数としてN回の噴射回数を決定した場合、最後の噴射であるN回目の燃料噴射のリフト噴射の種別も同一になる。そのため、燃料噴射から燃焼までの時間が比較的短く、燃焼状態に影響を与えやすいN回目の燃料噴射については、リフト噴射の種別が異なる場合に比べて、第1バンク11の燃料噴射における燃料の噴霧状態と第2バンク21の燃料噴射における燃料の噴霧状態との差が小さくなることを期待できる。その結果、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとの燃焼状態がアンバランスになることをより適切に抑制できる。
(3)本実施形態では、第1補正噴射量Yaを噴射するための第1燃料噴射回数と、第2補正噴射量Ybを噴射するための第2燃料噴射回数とを同じにするにあたって、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数及び第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数のどちらかの燃料噴射回数が増大することがない。そのため、燃料噴射回数の増大に伴って、第1筒内噴射弁16や第2筒内噴射弁26から燃料噴射される1回当たりの燃料噴射量が少なくなりにくい。これにより、第1筒内噴射弁16や第2筒内噴射弁26からの1回当たりの燃料噴射量が過度に小さいことに起因して、第1筒内噴射弁16や第2筒内噴射弁26からの燃料噴射量がばらつくことを抑制できる。
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態を図5〜図7にしたがって説明する。なお、本実施形態の制御装置80、及び制御装置80が適用された内燃機関100の構成は第1実施形態と同様であり、制御装置80が行う燃料噴射回数の算出処理が異なる。
まず、図5及び図6を参照して、制御装置80が行う燃料噴射回数の算出処理について説明する。なお、以下の第2実施形態の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、具体的な説明を省略又は簡略化する。
図5及び図6に示すように、ステップS21において、上記の条件(1)及び条件(2)の少なくとも一方を満たしていない場合(S21:NO)、制御装置80は、処理をステップS123に進める。すなわち、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数と第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数とが異なる場合には、処理がステップS123に進む。また、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数と第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数とが同じであっても、これらが基本噴射回数CTとが異なる場合には、処理がステップS123に進む。
ステップS123において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、基本フルリフト噴射回数CFから燃料噴射回数を1回減少させて、フルリフト噴射回数DFとする。また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、基本パーシャルリフト噴射回数CPから燃料噴射回数を1回増加させて、パーシャルリフト噴射回数DPとする。そして、噴射回数決定部83(制御装置80)は、基本噴射回数CTを、燃料噴射回数DTとして決定する。したがって、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数及び第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数の一方が他方に比べて少ない場合には、仮決定した燃料噴射回数が少なくなっている一方の燃料噴射回数が、他方に合わせて増加する。こうして第1補正噴射量Yaを噴射するための第1燃料噴射回数と、第2補正噴射量Ybを噴射するための第2燃料噴射回数とを同一にする。その後、制御装置80は、処理をステップS125に進める。
ステップS125において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、第1補正噴射量Ya、燃料噴射回数DT、フルリフト噴射回数DF、及びパーシャルリフト噴射回数DPに基づいて、第1補正噴射量Yaを各噴射に分割する比率である分割比率を算出する。例えば、燃料噴射回数DTが3回である場合には、第1補正噴射量Yaの分割比率として、噴射タイミングの早い順から「7:2:1」といった比率を算出する。そして、噴射回数決定部83は、第1補正噴射量Yaの分割比率が「7:2:1」である場合、例えば、前半の2回の噴射をフルリフト噴射にし、最後の1回の噴射をパーシャルリフト噴射にする、というように第1燃料噴射回数の各回の燃料噴射のリフト噴射の種別を決定する。
また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、第2補正噴射量Yb、燃料噴射回数DT、フルリフト噴射回数DF、及びパーシャルリフト噴射回数DPに基づいて、第2補正噴射量Ybを各噴射に分割する比率である分割比率を算出する。例えば、燃料噴射回数DTが3回である場合には、第2補正噴射量Ybの分割比率として、噴射タイミングの早い順から「7:2:1」といった比率を算出する。
また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、第1燃料噴射回数の各回の燃料噴射のリフト噴射の種別と、第2燃料噴射回数の各回の燃料噴射のリフト噴射の種別とをそれぞれ同一にする。例えば、第1燃料噴射回数の各回の燃料噴射のリフト噴射の種別について前半の2回の噴射がフルリフト噴射、最後の1回の噴射がパーシャルリフト噴射にされている場合、第2燃料噴射回数の各回の燃料噴射のリフト噴射の種別について、前半の2回の噴射をフルリフト噴射にし、最後の1回の噴射をパーシャルリフト噴射にするように決定する。こうして第1燃料噴射回数及び第2燃料噴射回数としてN(ただし、Nは2以上の整数)回の噴射回数を決定した場合、最後の噴射であるN回目の燃料噴射のリフト噴射の種別が同一になる。その後、制御装置80は、処理をステップS126に進める。
ステップS126において、噴射回数決定部83(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、第1補正噴射量Ya、燃料噴射回数DT、フルリフト噴射回数DF、パーシャルリフト噴射回数DP、及び分割比率に基づいて、第1補正噴射量Yaについての各回の燃料噴射時期を算出する。例えば、燃料噴射回数DTが3回である場合、各噴射における噴射開始時期及び噴射終了時期をそれぞれ算出する。
また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、第2補正噴射量Yb、燃料噴射回数DT、フルリフト噴射回数DF、パーシャルリフト噴射回数DP、及び分割比率に基づいて、第2補正噴射量Ybについての各回の燃料噴射時期を算出する。例えば、燃料噴射回数DTが3回である場合、各噴射における噴射開始時期及び噴射終了時期をそれぞれ算出する。その後、制御装置80は、処理をステップS127に進める。
ステップS127において、噴射量補正部82(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、燃料噴射回数DT、フルリフト噴射回数DF、パーシャルリフト噴射回数DP、及び第1バンク11の気筒11aから排出された排気の空燃比AF1に基づいて、第1補正噴射量Yaを再度算出する。このとき、燃料噴射回数はステップS123で算出したフルリフト噴射回数DF及びパーシャルリフト噴射回数DPで固定し、分割比率はステップS125で算出した分割比率で固定する。また、各回の燃料噴射のリフト噴射の種別は、ステップS125で決定したリフト噴射の種別に固定する。その上で、内燃機関100に求められる目標トルクを満たすように、第1補正噴射量Yaを算出する。なお、第1補正噴射量Yaを再度算出する理由としては、フルリフト噴射回数DF及びパーシャルリフト噴射回数DPが算出した基本フルリフト噴射回数CF及び基本パーシャルリフト噴射回数CPから変わる場合やリフト噴射の種別が変わる場合には、1回の燃焼サイクルにおいて第1バンク11の気筒11aで必要な燃料量が変わり得るからである。
また、噴射量補正部82(制御装置80)は、内燃機関100の運転状態、燃料噴射回数DT、フルリフト噴射回数DF、パーシャルリフト噴射回数DP、及び第2バンク21の気筒21aから排出された排気の空燃比AF2に基づいて、第2補正噴射量Ybを再度算出する。このとき、燃料噴射回数はステップS123で算出したフルリフト噴射回数DF及びパーシャルリフト噴射回数DPで固定し、分割比率はステップS125で算出した分割比率で固定する。また、各回の燃料噴射のリフト噴射の種別は、ステップS125で決定したリフト噴射の種別に固定する。その上で、内燃機関100に求められる目標トルクを満たすように、第2補正噴射量Ybを算出する。なお、第2補正噴射量Ybを再度算出する理由としては、フルリフト噴射回数DF及びパーシャルリフト噴射回数DPが算出した基本フルリフト噴射回数CF及び基本パーシャルリフト噴射回数CPから変わる場合やリフト噴射の種別が変わる場合には、1回の燃焼サイクルにおいて第2バンク21の気筒21aで必要な燃料量が変わり得るからである。そして、制御装置80は、処理をステップS31に進める。
次に、本実施形態の作用について説明する。
図7(a)に示すように、噴射量算出部81(制御装置80)がある量の基本噴射量Eを算出したとする。また、この基本噴射量Eに対して、噴射回数決定部83(制御装置80)が基本噴射回数CTとして「3」を決定し、基本フルリフト噴射回数CFとして「3」(基本パーシャルリフト噴射回数CPは「0」)を決定したとする。
ここで、仮に、第1筒内噴射弁16と第2筒内噴射弁26との間に個体差があったり、経年劣化等によって両者の燃料噴射特性に差が生じたりすると、第1筒内噴射弁16から実際に噴射される燃料量と、第2筒内噴射弁26から実際に噴射される燃料量との間に差が生じることがある。その結果、第1バンク11側の第1空燃比センサ51から検出される空燃比AF1と、第2バンク21側の第2空燃比センサ52から検出される空燃比AF2との間にも差が生じる。すると、図7(b)に示すように、第1バンク11の気筒11aから排出された排気の空燃比AF1に基づいて算出される第1補正噴射量Yaと、第2バンク21の気筒21aから排出された排気の空燃比AF2に基づいて算出される第2補正噴射量Ybとに差が生じる。なお、図7(b)では、基本噴射量Eに対する補正量を誇張して描いている。
図7(c)に示すように、噴射回数決定部83(制御装置80)は、第1補正噴射量Yaが基本噴射回数CTの「3」で噴射可能か否かを判定する。ここで、基本噴射回数CTの3回の噴射全てがフルリフト噴射に決定されているため、噴射回数決定部83は、3回分の最小フルリフト噴射量QFminの総量と、第1補正噴射量Yaとを比較する。そして、第1補正噴射量Yaは3回分の最小フルリフト噴射量QFminの総量以上になっているため、基本噴射回数CTの「3」を、第1補正噴射量Yaについての燃料噴射回数としての「3」に仮決定する。
また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、第2補正噴射量Ybが基本噴射回数CTの「3」で噴射可能か否かを判定する。ここで、基本噴射回数CTの3回の全てがフルリフト噴射に決定されているため、噴射回数決定部83は、3回分の最小フルリフト噴射量QFminの総量と、第2補正噴射量Ybとを比較する。そして、第2補正噴射量Ybは3回分の最小フルリフト噴射量QFminの総量未満になっているため、噴射回数決定部83は、基本噴射回数CTの3回よりも1回分少ない燃料噴射回数である「2」を、第2補正噴射量Ybについての燃料噴射回数としての「2」に仮決定する。
ここで、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数の「3」と、第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数の「2」とが異なっている。仮に、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数の「3」、及び第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数の「2」に基づいて実際に燃料噴射を行うと、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとの燃焼状態がアンバランスになり、例えば、振動や騒音等が発生する。
これに対して、本実施形態では、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数である「3」と、第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数である「2」とが異なっている場合、図7(d)に示すように、基本フルリフト噴射回数CFの3回から燃料噴射回数を1回減少させて、フルリフト噴射回数DFを「2」とする。また、噴射回数決定部83は、基本パーシャルリフト噴射回数CPの0回から燃料噴射回数を1回増加させて、パーシャルリフト噴射回数DPを「1」とする。そして、噴射回数決定部83は、基本噴射回数CTの「3」を、燃料噴射回数DTの「3」として決定する。これにより、第1補正噴射量Yaを噴射するための第1燃料噴射回数と、第2補正噴射量Ybを噴射するための第2燃料噴射回数とが同一になる。
このように本実施形態では、第1バンク11の第1補正噴射量Yaと第2バンク21の第2補正噴射量Ybとに差が生じたとしても、第1バンク11の第1燃料噴射回数と第2バンク21の第2燃料噴射回数とが同一になる。そのため、第1燃料噴射回数と第2燃料噴射回数とが相違することで、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとの燃焼状態がアンバランスになることを抑制できる。その結果、第1バンク11及び第2バンク21の燃焼状態がアンバランスになることに伴って振動や騒音等が発生することを抑制できる。
また、本実施形態では、第1補正噴射量Yaを噴射するための第1燃料噴射回数と、第2補正噴射量Ybを噴射するための第2燃料噴射回数とを同じにするにあたって、第1補正噴射量Yaについて仮決定した燃料噴射回数及び第2補正噴射量Ybについて仮決定した燃料噴射回数のどちらかの燃料噴射回数が減少することがない。そのため、燃料噴射回数の減少に伴って、燃料濃度の異なる燃料層が成層されなくなることがない。これにより、第1バンク11の気筒11a及び第2バンク21の気筒21aにおいて、燃料濃度の異なる燃料層を成層することができる。
図7(e)に示すように、第1補正噴射量Yaを各噴射に分割する比率である分割比率として、噴射回数決定部83(制御装置80)が噴射タイミングの早い順から「7:2:1」といった比率を算出したとする。また、第1補正噴射量Yaについての各回の燃料噴射におけるリフト噴射の種別として、噴射回数決定部83(制御装置80)が燃料噴射回数DTの3回の噴射のうち、前半の2回の噴射をフルリフト噴射にし、最後の1回の噴射をパーシャルリフト噴射に決定したとする。
噴射回数決定部83(制御装置80)は、第2補正噴射量Ybを各噴射に分割する比率である分割比率として、噴射タイミングの早い順から「7:2:1」といった比率を算出したとする。また、噴射回数決定部83(制御装置80)は、第2補正噴射量Ybについての各回の燃料噴射におけるリフト噴射の種別を、第1燃料噴射回数の各回の燃料噴射のリフト噴射の種別と同一にする。すなわち、第1燃料噴射回数及び第2燃料噴射回数としてN(ただし、Nは2以上の整数)回の噴射回数を決定した場合、最後の噴射であるN回目の燃料噴射のリフト噴射の種別も同一になる。
ここで、第1バンク11の第1燃料噴射回数及び第2バンク21の第2燃料噴射回数が同一のN回(ただし、Nは2以上の整数)であったとしても、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとの燃焼状態がアンバランスになることがある。具体的には、第1バンク11及び第2バンク21について、燃料噴射から燃焼までの時間が比較的短く、燃焼状態に影響を与えやすいN回目の燃料噴射における燃料の噴霧状態の差が過度に大きいと、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとの燃焼状態がアンバランスになることがある。特に、N回目の燃料噴射のリフト噴射の種別として、第1バンク11及び第2バンク21の一方の燃料噴射がフルリフト噴射に決定され、第1バンク11及び第2バンク21の他方の燃料噴射がパーシャルリフト噴射に決定された場合には、N回目の燃料噴射における燃料の噴霧状態の差が大きくなりやすい。
これに対して、本実施形態では、燃料噴射から燃焼までの時間が比較的短く、燃焼状態に影響を与えやすいN回目の燃料噴射については、リフト噴射の種別が異なる場合に比べて、第1バンク11の燃料噴射における燃料の噴霧状態と第2バンク21の燃料噴射における燃料の噴霧状態との差が小さくなることを期待できる。その結果、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとの燃焼状態がアンバランスになることをより適切に抑制できる。
図7(e)に示すように、噴射量補正部82(制御装置80)は、空燃比AF1に基づいた第1補正噴射量Ya及び空燃比AF2に基づいた第2補正噴射量Ybを再度算出する。なお、図7(e)では、前回算出された第1補正噴射量Yaと再度算出された第1補正噴射量Yaとを同じ大きさで図示している。また、図7(e)では、前回算出された第2補正噴射量Ybと再度算出された第2補正噴射量Ybとを同じ大きさで図示している。
噴射回数決定部83(制御装置80)は、第1バンク11におけるフルリフト噴射の要求最小フルリフト噴射量が最小フルリフト噴射量QFmin以上であるか否かを判定する。具体的には、第1補正噴射量Yaの分割比率として算出された「7:2:1」のフルリフト噴射の噴射量のうちの最小のフルリフト噴射量である第1補正噴射量Ya×0.2が、最小フルリフト噴射量QFmin以上であるか否かを判定する。また、第1補正噴射量Yaの分割比率として算出された「7:2:1」のパーシャルリフト噴射の噴射量のうちの最小のパーシャルリフト噴射量である第1補正噴射量Ya×0.1が、最小パーシャルリフト噴射量QPmin以上であるか否かを判定する。そして、第1補正噴射量Ya×0.2は最小フルリフト噴射量QFmin以上であり、第1補正噴射量Ya×0.1は最小パーシャルリフト噴射量QPmin以上であるため、図7(f)に示すように、第1補正噴射量Yaの分割比率が「7:2:1」に決定される。
図7(e)に示すように、噴射回数決定部83(制御装置80)は、第2バンク21におけるフルリフト噴射の要求最小フルリフト噴射量が最小フルリフト噴射量QFmin以上であるか否かを判定する。具体的には、第2補正噴射量Ybの分割比率として算出された「7:2:1」のフルリフト噴射の噴射量のうちの最小のフルリフト噴射量である第2補正噴射量Yb×0.2が、最小フルリフト噴射量QFmin以上であるか否かを判定する。
そして、第2補正噴射量Yb×0.2は最小フルリフト噴射量QFmin未満であるため、噴射回数決定部83は、第2補正噴射量Ybの分割比率が前回算出された分割比率と可能な限り近い分割比率になるように算出する。具体的には、図7(f)に示すように、第2バンク21におけるフルリフト噴射の要求最小フルリフト噴射量が最小フルリフト噴射量QFminと同じになるように分割比率を算出し、第2補正噴射量Ybの分割比率が「5:4:1」となる。なお、第2補正噴射量Ybの分割比率として算出された「7:2:1」のパーシャルリフト噴射の噴射量のうちの最小のパーシャルリフト噴射量である第2補正噴射量Yb×0.1は最小パーシャルリフト噴射量QPmin以上であるため、そのパーシャルリフト噴射の分割比率は維持される。
本実施形態の効果をまとめると、上記の(1)及び(2)の効果に加えて、次の(4)の効果がある。
(4)本実施形態では、第1補正噴射量Yaを噴射するための第1燃料噴射回数と、第2補正噴射量Ybを噴射するための第2燃料噴射回数とを同じにするにあたって、どちらかの燃料噴射回数が減少することがない。したがって、第1バンク11の気筒11a及び第2バンク21の気筒21aにおいて、燃料濃度の異なる複数の燃料層を成層することができる。
なお、上記の実施形態は、以下のように変更できる。
・上記の第1実施形態及び第2実施形態における燃料噴射回数の決定に関する技術は、V型8気筒の内燃機関100以外にも適用できる。例えば、制御装置80は、直列4気筒の内燃機関にも適用できる。ここで、直列4気筒のうちの2つの気筒から排出される排気の状態に基づいて第1補正噴射量Yaを算出している場合、当該2つの気筒が第1気筒群を構成する。また、直列4気筒のうちの残り2つの気筒から排出される排気の状態に基づいて第2補正噴射量Ybを算出している場合、当該2つの気筒が第2気筒群を構成する。
・上記の第1実施形態及び第2実施形態において、第1燃料噴射弁として、第1筒内噴射弁16に加えて、第1吸気管42に燃料を噴射する第1ポート噴射弁を備えていてもよい。すなわち、合計4つの第1筒内噴射弁16及び合計4つの第1ポート噴射弁によって第1バンク11の各気筒11aに燃料を供給する。また、第2燃料噴射弁として、第2筒内噴射弁26に加えて、第2吸気管43に燃料を噴射する第2ポート噴射弁を備えていてもよい。すなわち、合計4つの第2筒内噴射弁26及び合計4つの第2ポート噴射弁によって第2バンク21の各気筒21aに燃料を供給する。この場合には、第1筒内噴射弁16及び第1ポート噴射弁によって、1回の燃焼サイクルに要求される量の燃料を複数回の燃料に分割して噴射する分割噴射ができればよい。また、第2筒内噴射弁26及び第2ポート噴射弁によって、1回の燃焼サイクルに要求される量の燃料を複数回の燃料に分割して噴射する分割噴射ができればよい。例えば、1回の燃焼サイクルにおいて、第1筒内噴射弁16から2回の燃料噴射がされ、第1ポート噴射弁から1回の燃料噴射がされて、第1バンク11の気筒11aに燃料が供給された場合には、第1燃料噴射回数は合計3回になる。
・上記の第1実施形態及び第2実施形態において、第1燃料噴射弁として第1ポート噴射弁を備えているときには、第1筒内噴射弁16を省略できる。また、第2燃料噴射弁として第2ポート噴射弁を備えているときには、第2筒内噴射弁26を省略できる。この場合には、第1ポート噴射弁によって、1回の燃焼サイクルに要求される量の燃料を複数回の燃料に分割して噴射する分割噴射ができればよい。また、第2ポート噴射弁によって、1回の燃焼サイクルに要求される量の燃料を複数回の燃料に分割して噴射する分割噴射ができればよい。
・上記の第1実施形態及び第2実施形態において、噴射量補正部82は、第1バンク11及び第2バンク21の吸気の状態に基づいて、第1補正噴射量Ya及び第2補正噴射量Ybを算出してもよい。例えば、燃料を貯蔵する燃料タンク内の燃料蒸気を第1吸気管42や第2吸気管43に戻す場合、戻された燃料蒸気量が第1バンク11側と第2バンク21側とで異なることもあり得る。この場合、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとで、1回の燃焼サイクルに要求される燃料の量が異なることもある。そこで、燃料蒸気を第1吸気管42や第2吸気管43に戻す場合には、燃料蒸気量等の吸気の状態に基づいて第1補正噴射量Ya及び第2補正噴射量Ybを算出してもよい。また、クランクケース内のブローバイガスを第1吸気管42や第2吸気管43に戻す場合、戻されたブローバイガス量が第1バンク11側と第2バンク21側とで異なることもあり得る。この場合、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとで、1回の燃焼サイクルに要求される燃料の量が異なることもある。そこで、ブローバイガスを第1吸気管42や第2吸気管43に戻す場合には、ブローバイガス量等の吸気の状態に基づいて第1補正噴射量Ya及び第2補正噴射量Ybを算出してもよい。なお、このように第1バンク11及び第2バンク21の吸気の状態に基づいて第1補正噴射量Ya及び第2補正噴射量Ybを算出する場合には、第1バンク11及び第2バンク21の排気の状態に基づかなくてもよい。
・上記の第1実施形態及び第2実施形態において、第1筒内噴射弁16及び第2筒内噴射弁26は、フルリフト噴射のみで燃料噴射が可能になっていてもよい。
・上記の第1実施形態及び第2実施形態において、第1燃料噴射回数の各回の燃料噴射のリフト噴射の種別と、第2燃料噴射回数の各回の燃料噴射のリフト噴射の種別とがそれぞれ同一になっていなくてもよい。この場合にも、第1燃料噴射回数及び第2燃料噴射回数としてN(ただし、Nは2以上の整数)回の噴射回数を決定した場合、最後の噴射であるN回目の燃料噴射のリフト噴射の種別のみが同一になっていれば、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとの燃焼状態がアンバランスになることをある程度抑制できる。
・また、第1燃料噴射回数及び第2燃料噴射回数としてN(ただし、Nは2以上の整数)回の噴射回数を決定した場合、最後の噴射であるN回目の燃料噴射のリフト噴射の種別が同一になっていなくてもよい。例えば、第1バンク11の第1燃料噴射回数と第2バンク21の第2燃料噴射回数とを同一にすることで、第1バンク11の気筒11aと第2バンク21の気筒21aとの燃焼状態がアンバランスになることを十分に抑制できるのであれば、N回目の燃料噴射のリフト噴射の種別が必ずしも同一になっていなくてもよい。
・上記の第1実施形態及び第2実施形態において、分割噴射における最大の噴射回数は適宜変更できる。