JP4389400B2 - 燃料噴射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多気筒エンジンの各気筒毎の回転速度変動の偏差に応じて、気筒間の回転速度変動を平滑化するように各気筒に対応して取り付けたインジェクタの開弁期間を個別に制御することが可能な燃料噴射装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、多気筒ディーゼルエンジン(以下多気筒エンジンと言う)は、各気筒間の爆発力のバラツキによる各気筒の爆発行程毎の回転速度変動によってエンジン振動が発生する。特に、多気筒エンジンの無負荷状態、つまりアイドル安定状態においては、そのエンジン振動、騒音が運転者(ドライバー)に不快感を与える場合がある。そして、多気筒エンジンの気筒間の回転速度変動は、各気筒毎のインジェクタの個体差による気筒間の燃料噴射量と多気筒エンジンの燃焼要因のバラツキによって発生することが知られている。
【0003】
そこで、多気筒エンジンの気筒間の回転速度変動を減少させて多気筒エンジン全体のエンジン振動を減少させる目的で、多気筒エンジンの各気筒の爆発行程毎の回転速度変動を検出し、気筒間の回転速度変動を平滑化するように、各気筒毎への最適な燃料噴射量を個々に調整する不均量補償制御(FCCB学習制御)が実施されている。この不均量補償制御は、多気筒エンジンのアイドル安定状態を検出している時に、多気筒エンジンの各気筒の爆発行程毎の回転速度変動を検出し、各気筒毎の回転速度変動の検出値と全気筒の回転速度変動の平均値とを比較し、気筒間の回転速度変動を平滑化するように、多気筒エンジンの各気筒への燃料噴射量を補償している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の多気筒エンジンの気筒間の回転速度変動を平滑化するように、各気筒毎への最適な燃料噴射量を個々に調整する不均量補償制御は、一般的に多気筒エンジンのアイドル安定状態を検出している時に、運転者(ドライバー)の不快感を解消する目的で、常時実施されている。すなわち、少なくとも1つの当該気筒の回転速度変動の偏差が所定値以下となって安定した状態でも、気筒間の回転速度変動が平滑化するまで不均量補償制御が実施されるため、僅かな外乱でも各気筒毎への燃料噴射量が更新されてしまう。これにより、各気筒毎への燃料噴射量がいつまでたっても安定せず、アイドル回転数の安定化を妨げてしまうという問題が生じる。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、安定したエンジン回転速度制御を実現することのできる燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、多気筒エンジンの各気筒毎の回転速度変動の偏差が第1所定値以下となった以降は、その当該気筒の回転速度変動の偏差が第2所定値以上となるまでその当該気筒の不均量補償制御を中止し、前回迄に学習記憶した学習記憶量(噴射量補正量)で気筒間の回転速度変動を平滑化するように当該気筒への燃料噴射量を補正するようにしている。すなわち、多気筒エンジンの各気筒毎の回転速度変動の偏差が第1所定値以下となった以降は、その当該気筒の回転速度変動の偏差が第2所定値以上となるまで前回迄に学習記憶した学習記憶量(噴射量補正量)に基づいて、気筒間の回転速度変動を平滑化するように当該気筒に対応して取り付けたインジェクタの開弁期間を個別に制御している。それによって、回転速度変動の偏差が第1所定値以下となった当該気筒の学習記憶量は、僅かな外乱で更新されることはない。したがって、多気筒エンジンの各気筒毎の回転速度変動を安定化させることができるので、安定したエンジン回転速度制御を実現することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明によれば、エンジン回転速度が所定値以下の時に、気筒間の回転速度変動を平滑化するように、各気筒毎への最適な燃料噴射量を個々に調整する不均量補償制御を実行することにより、多気筒エンジンのアイドル安定状態において、多気筒エンジンの各気筒間の爆発力のバラツキによるエンジン振動や騒音を抑えることができる。また、請求項3に記載の発明によれば、車両の走行速度が所定値以下の時に、気筒間の回転速度変動を平滑化するように、各気筒毎への最適な燃料噴射量を個々に調整する不均量補償制御を実行することにより、特に車両の停車状態において、多気筒エンジンの各気筒間の爆発力のバラツキによるエンジン振動や騒音を抑えることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
[実施例の構成]
図1ないし図6は本発明の実施例を示したもので、図1は蓄圧式燃料噴射装置の燃料配管系を示した図で、図2は蓄圧式燃料噴射装置の制御系を示した図である。
【0009】
本実施例の蓄圧式燃料噴射装置は、多気筒ディーゼルエンジン(以下多気筒エンジンと略す)の各気筒に対応して取り付けられた複数のインジェクタ1〜4と、高圧燃料を蓄圧するサージタンクの一種であるコモンレール5と、燃料タンク6から汲み上げた燃料を加圧してコモンレール5に吐出する可変吐出量型高圧供給ポンプ(燃料噴射ポンプ:以下高圧供給ポンプと略す)7と、複数のインジェクタ1〜4および高圧供給ポンプ7を電子制御する電子制御式コントロールユニット(以下ECUと言う)10とを備えた電子制御方式の燃料噴射システムである。
【0010】
複数個(本例では4個)のインジェクタ1〜4は、多気筒エンジンの各気筒の燃焼室内に高圧燃料を噴射供給する燃料噴射ノズルとアクチュエータとしての電磁弁とが一体化された電磁式燃料噴射弁である。そして、各インジェクタ1〜4から多気筒エンジンへの燃料噴射量および燃料噴射時期等は、アクチュエータとしての電磁弁(噴射期間可変手段)11〜14への通電および通電停止をECU10で電子制御することにより決定される。なお、インジェクタ1〜4の開弁時期から閉弁時期までの噴射期間が長い程、各気筒の燃焼室内に噴射される燃料噴射量が多くなり、インジェクタ1〜4の弁体の開弁時期から閉弁時期までの噴射期間が短い程、各気筒の燃焼室内に噴射される燃料噴射量が少なくなる。
【0011】
コモンレール5は、比較的に高い(大気圧の1000倍以上の)圧力(コモンレール圧力)の高圧燃料を蓄える一種のサージタンクで、高圧パイプ8を介して各インジェクタ1〜4に接続されている。なお、各インジェクタ1〜4、コモンレール5および高圧供給ポンプ7から燃料タンク6への燃料のリターン配管9は、コモンレール5内のコモンレール圧力が、限界蓄圧圧力を超えることがないようにプレッシャリミッタ15からも圧力を逃がせるように構成されている。
【0012】
高圧供給ポンプ7は、多気筒エンジンのクランク軸の回転に伴って回転することで、燃料タンク6内の燃料を燃料フィルター16を介在した燃料配管17を経て汲み上げるフィードポンプ(図示せず)を内蔵し、このフィードポンプにより吸い出された燃料を加圧して高圧燃料を圧送するサプライポンプよりなる。この高圧供給ポンプ7には、アクチュエータとしての電磁弁19が取り付けられている。その電磁弁19は、ECU10からの制御信号により電子制御されることにより、高圧供給ポンプ7から燃料配管18を経てコモンレール5への高圧燃料の圧送量を調整することで、各インジェクタ1〜4から多気筒エンジンの燃焼室内に燃料噴射する噴射圧力を変更する噴射圧力可変手段である。
【0013】
ECU10は、本発明の回転速度検出手段、回転速度変動算出手段、噴射量補正量更新記憶手段、第1噴射量補正手段、第2噴射量補正手段に相当するもので、制御処理、演算処理を行うCPU、各種の制御プログラムおよびデータを保存するROM、入力データを保存するRAM、入力回路、出力回路、電源回路およびインジェクタ駆動回路(インジェクタドライブ回路:以下EDUと言う)20等より構成されている。本実施例のEDU20は、ECU10より出力される制御信号(例えば制御パルス信号)を受けて、ECU10で算出された燃料噴射時期(開弁時期)、燃料噴射量(噴射期間)に応じて開弁、閉弁させるように、各インジェクタ1〜4の各電磁弁11〜14への通電状態を制御する。
【0014】
そして、ECU10に入力する基本センサとしては、多気筒エンジンのカム軸の回転角を検出して燃料噴射する気筒を判別するための気筒判別センサ21、多気筒エンジンのクランク軸の回転角を検出するクランク角センサ22、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ23、多気筒エンジンの冷却水温を検出する冷却水温センサ24、多気筒エンジンが吸入する吸入空気の温度を検出する吸気温センサ25、コモンレール5内に蓄圧された高圧燃料の燃料圧力(噴射圧力、コモンレール圧力)を検出する燃料圧センサ26等がある。
【0015】
気筒判別センサ21は、多気筒エンジンのカム軸に対応して回転するシグナルロータ(例えばクランク軸が2回転する間に1回転する回転体)と、このシグナルロータに設けられた各気筒に対応した凸状歯と、この凸状歯の接近と離間によってカム軸回転パルス(気筒判別パルス信号)を発生するピックアップとを備えている。そして、多気筒エンジンの第1気筒♯1の第1ピストンの位置を検出するための基準気筒パルス信号(G)を発生する凸状歯は、他の気筒の凸状歯よりも回転方向の幅が広く設けられているか、あるいは複数の凸状歯よりなる。具体的には、クランク軸回転パルス信号(NE)が2回発生する間隔よりも基準気筒パルス信号(G)は長く設けられ、他の気筒判別パルス信号(G)はクランク軸回転パルス信号(NE)が2回発生する間隔よりも短く設けられている。
【0016】
したがって、気筒判別センサ21は、上述のような構成を採用することにより、カム軸の回転に伴って、図3(a)および図3(b)に示したような波形信号を出力する。つまり、第1気筒♯1の第1ピストンが噴射直前の位置に達した時に幅広の基準気筒パルス信号(G)または複数の基準気筒パルス信号(G)が出力され、その後に、第3気筒♯3の第3ピストンが噴射直前の位置に達した時に幅狭の気筒判別パルス信号(G)が出力され、第4気筒♯4の第4ピストンが噴射直前の位置に達した時に幅狭の気筒判別パルス信号(G)が出力され、第2気筒♯2の第2ピストンが噴射直前の位置に達した時に幅狭の気筒判別パルス信号(G)が出力される。
【0017】
クランク角センサ22は、本発明の回転速度検出手段に相当するもので、多気筒エンジンのクランク軸に対応して回転するシグナルロータ(例えばクランク軸が1回転する間に1回転する回転体)と、このシグナルロータに多数形成されたクランク角検出用の凸状歯と、これらの凸状歯の接近と離間によってクランク軸回転パルス信号(NEパルス信号:NE)を発生するピックアップとを備えている。そのシグナルロータには、基準気筒パルス信号(G)の発生直後の位置に幅広の欠歯信号(D)を発生させるための欠歯(凸状歯が1つ欠けた部分)が形成されている。この欠歯は、180°対向した位置にも形成されており、第1気筒♯1の第1ピストンを検出する基準気筒パルス信号(G)の発生直後と、第4気筒♯4の第4ピストンを検出する気筒判別パルス信号(G)の発生直後に、欠歯信号(D)が発生するように設けられている。
【0018】
したがって、クランク角センサ22は、上述のような構成を採用することにより、クランク軸の回転に伴って、図3(a)および図3(b)に示したような波形信号を出力する。つまり、第1気筒♯1の第1ピストンの位置を判別するための基準気筒パルス信号(G)が出力された直後と、第4気筒♯4の第4ピストンの位置を判別するための気筒判別パルス信号(G)が出力された直後に欠歯信号(D)を発生する以外は、所定角度で連続した幅狭のクランク軸回転パルス信号(NE)を繰り返して出力する。
【0019】
ここで、ECU10は、多気筒エンジンの定常運転時には、気筒判別センサ21より入力した気筒判別パルス信号(G)およびクランク角センサ22より入力したクランク軸回転パルス信号(NE)を基準にして、インジェクタ1〜4の燃料噴射時期(開弁時期)や燃料圧送ポンプの吐出量(燃料圧送期間)を算出することで、最適な噴射圧力(目標圧力)に保持するように高圧供給ポンプ7の電磁弁19への通電タイミングを制御する。また、ECU10は、多気筒エンジンの運転状態、つまりクランク角センサ22より入力したクランク軸回転パルス信号(NE)より検出(演算)したエンジン回転数(NE)とアクセル開度センサ23より入力したアクセル開度(ACCP)と冷却水温センサ24より入力した冷却水温(THW)と吸気温センサ25より入力した吸気温度(THA)とから燃料噴射量を算出し、算出した燃料噴射量を達成するために、運転状態毎にコモンレール5内の燃料圧力から算出された噴射量指令値に応じて、各インジェクタ1〜4の電磁弁11〜14を個別に駆動することで、多気筒エンジンが運転される。
【0020】
ここで、本実施例のECU10は、多気筒エンジンのアイドル安定状態の時に、多気筒エンジンの各気筒の爆発行程毎の回転速度変動を検出し、多気筒エンジンの各気筒毎の回転速度変動の検出値と全気筒の回転速度変動の平均値とを比較し、多気筒エンジンの気筒間の回転速度変動を平滑化するように、多気筒エンジンの各気筒毎への最適な燃料噴射量を個々に調整する不均量補償制御(FCCB学習制御)を実施するように構成されている。
【0021】
具体的には、クランク角センサ22より入力したクランク軸回転パルス信号の間隔時間を計算することで、多気筒エンジンの各気筒の爆発行程毎の瞬時回転速度を算出し、BTDC90°CA〜ATDC90°CA間のクランク軸回転パルス信号の間隔時間の最大値を当該気筒の瞬時回転速度の最低回転速度(以下最低回転数と言う:Nl)として読み込む。また、BTDC90°CA〜ATDC90°CA間のクランク軸回転パルス信号の間隔時間の最小値を当該気筒の瞬時回転速度の最高回転速度(以下最高回転数と言う:Nh)として読み込む。
【0022】
そして、これらの計算を各気筒毎に行った後に、各気筒毎の最高回転数(Nh)と各気筒毎の最低回転数(Nl)との気筒毎回転数差分(ΔNk)を算出する。これにより、多気筒エンジンの各気筒毎の回転速度変動の検出値を算出する。そして、多気筒エンジンの全気筒の回転数差分(ΣΔNk)の平均値を算出する。つまり、多気筒エンジンの全気筒の回転速度変動を平均化して、全気筒の回転速度変動の平均値を算出した後に、各気筒毎の回転速度変動の検出値と全気筒の回転速度変動の平均値から各気筒毎の回転速度変動の偏差(dΔNk)を算出する。そして、多気筒エンジンの各気筒間の回転速度変動が平滑化するように、多気筒エンジンの各気筒毎への燃料噴射量を補正している。
【0023】
[実施例の噴射量制御方法]
次に、本実施例の蓄圧式燃料噴射装置の噴射量制御方法を図1ないし図6に基づいて簡単に説明する。ここで、図4および図5は蓄圧式燃料噴射装置の噴射量制御方法を示したフローチャートである。
【0024】
イグニッションスイッチが投入(IG・ON)されると、図4のルーチンが起動する。先ず、各種センサからエンジンパラメータを取り込む。具体的には、気筒判別パルス信号(G)、クランク軸回転パルス信号(NE)、アクセル開度(ACCP)、冷却水温(THW)や吸気温度(THA)等を読み込む(エンジン回転速度検出手段:ステップS1)。
【0025】
次に、クランク角センサ22より入力したクランク軸回転パルス信号(NE)の間隔時間を計測することによって算出されるエンジン回転数(NE)と、アクセル開度センサ23より入力したアクセル開度(ACCP)と、冷却水温センサ24より入力した冷却水温(THW)と、吸気温センサ25より入力した吸気温度(THA)から、多気筒エンジンの各気筒の燃焼室内に噴射する各気筒毎のインジェクタ(INJ)1〜4の噴射量指令値(基本制御量:q)を算出する(噴射量演算手段:ステップS2)。次に、気筒判別センサ21より入力した気筒判別パルス信号(G)とクランク角センサ22より入力したクランク軸回転パルス信号(NE)とから、燃料を噴射する気筒を判別する(気筒判別手段:ステップS3)。
【0026】
次に、多気筒エンジンの各気筒毎の回転速度変動を検出するアイドル安定状態(エンジン回転数が所定値以下、例えば850rpm程度のアイドル回転数)に有るか否かを判別する(アイドル安定状態検出手段:ステップS4)。この判定結果がYESの場合、つまりアイドル安定状態で有ると判別した場合には、多気筒エンジンの各気筒毎の最高回転数(Nh)と各気筒毎の最低回転数(Nl)との気筒毎回転数差分(ΔNk)を算出する。つまり、多気筒エンジンの各気筒毎の回転速度変動の検出値を算出する(回転速度変動検出手段:ステップS5)。次に、多気筒エンジンの全気筒の回転数差分(ΣΔNk)の平均値を算出する。つまり、多気筒エンジンの全気筒の回転速度変動の平均値を算出する(ステップS6)。次に、多気筒エンジンの各気筒毎の回転速度変動の検出値と全気筒の回転速度変動の平均値から各気筒毎の回転速度変動の偏差(dΔNk)を算出する(回転速度変動算出手段:ステップS7)。
【0027】
次に、多気筒エンジンの各気筒毎の回転速度変動の偏差(dΔNk)が第1所定値β以下に収束済み(f=1)であるか否かを判別する(ステップS8)。この判定結果がNOの場合には、各気筒毎の回転速度変動の偏差(dΔNk)が第1所定値β(後述のαよりも小さい値)以下か否かを判別する(ステップS9)。この判定結果がNOの場合には、各気筒毎の回転速度変動の偏差(dΔNk)が収束状態に無いとして、偏差収束フラグをリセット(f=0)する(ステップS10)。
【0028】
次に、ステップS7で算出した値から今回の当該気筒の噴射量補正量(Δqk)を算出し(ステップS11)、当該気筒の前回までの噴射量補正量(ΣΔqki-1)と今回の噴射量補正量(Δqk)を更新(加算)し、記憶する(噴射量補正量更新記憶手段:ステップS12)。次に、基本制御量に学習記憶量を反映させる。つまり、ステップS2で算出したインジェクタ1〜4の噴射量指令値(基本制御量:q)にステップS12の噴射量補正量(学習記憶量:ΣΔqki)を加算し(第1噴射量補正手段:ステップS13)、ステップS13での噴射量制御量(q)を開弁指令値、閉弁指令値に変換し、開弁指令値、閉弁指令値を出力段にセットする(ステップS14)。
【0029】
ここで、噴射量指令値に噴射量補正量を増量する場合には、各気筒毎のインジェクタ1〜4の開弁時期(電磁弁11〜14の通電開始時期)を一定にし、各気筒毎のインジェクタ1〜4の閉弁時期(電磁弁11〜14の通電終了時期)のみを遅角させるようにして開弁期間(噴射期間)を長くする噴射量補正制御を行う。また、噴射量指令値に噴射量補正量を減量する場合には、各気筒毎のインジェクタ1〜4の開弁時期(電磁弁11〜14の通電開始時期)を一定にし、各気筒毎のインジェクタ1〜4の閉弁時期(電磁弁11〜14の通電終了時期)のみを進角させるようにして開弁期間(噴射期間)を短くする噴射量補正制御を行う。
【0030】
また、ステップS9の判定結果がYESの場合には、偏差収束状態として偏差収束フラグをセット(f=1)し(ステップS15)、前回迄の噴射量補正量(学習記憶量:ΣΔqki)を取り出して今回の噴射量補正量とし(第2噴射量補正手段:ステップS16)、前述のステップS13以降の処理を実行する。つまり、回転速度変動の偏差(dΔNk)が第1所定値β以下に安定している当該気筒の前回迄の噴射量補正量(学習記憶量:ΣΔqki)を取り出して今回の噴射量補正量として噴射量補正を行う。
【0031】
また、ステップS8の判定結果がYESの場合には、多気筒エンジンの各気筒毎の回転速度変動の偏差(dΔNk)が第2所定値α以上か否かを判別する。つまり、回転速度変動の偏差(dΔNk)が第1所定値β以下に安定している当該気筒の回転速度変動の偏差(dΔNk)が第2所定値α以上か否かを判別する(ステップS17)。この判定結果がYESの場合には、前述のステップS10以降の処理を実行し、また、ステップS17の判定結果がNOの場合には、前述のステップS16以降の処理を実行する。
【0032】
また、ステップS4の判定結果がNOの場合には、記憶してある噴射量補正量(学習記憶量:ΣΔqki)を取り出し(ステップS18)、エンジンパラメータに応じた補正係数{K=f(NE,q)}を算出し(ステップS19)、ステップS18、S19で算出した値から学習記憶量を修正して(ステップS20)、今回の学習記憶量として、前記同様、ステップS13以降の処理を実行する。
【0033】
[実施例の効果]
図6は学習制御する前(初期)の各気筒毎の回転速度変動の偏差(dΔNk)と気筒毎の噴射量補正量(学習記憶量:ΣΔqki)および学習後の各気筒毎の回転速度変動の偏差(dΔNk)と気筒毎の噴射量補正量(学習記憶量:ΣΔqki)を示した図である。
【0034】
学習制御する前(初期)の各気筒毎の回転速度変動の偏差(dΔNk)は、気筒♯1が第2所定値+αよりも大きく、気筒♯3が第2所定値−αよりも大きく、気筒♯4が第2所定値+αよりも大きく、気筒♯2が第2所定値−αよりも大きいが、学習制御後は、気筒♯1が第2所定値+αよりも小さくなり、気筒♯3が第2所定値−αよりも小さくなり、気筒♯4が第2所定値+αよりも小さくなり、気筒♯2が第2所定値−αよりも小さくなっている。ここで、本実施例の蓄圧式燃料噴射装置における不均量補償制御(FCCB学習制御)は、多気筒エンジンの各気筒毎の回転速度変動の偏差(dΔNk)が第1所定値β以下で一旦完了し、再学習は各気筒毎の回転速度変動の偏差(dΔNk)が第2所定値α以上となったら学習後の状態から再実施される。なお、α>βである。
【0035】
以上のように、本実施例の蓄圧式燃料噴射装置の噴射量制御方法においては、多気筒エンジンの気筒毎の回転速度変動の偏差(dΔNk)が第1所定値(β)以下となった以降は、その当該気筒の回転速度変動の偏差(dΔNk)が第2所定値(α)以上となるまで、当該気筒の不均量補償制御(FCCB学習制御)を中断し、つまり第1所定値(β)以下となって回転速度変動が比較的に安定した当該気筒の学習記憶量(噴射量補正量)をホールド(学習終了)し、前回迄に学習記憶した学習記憶量(噴射量補正量)で当該気筒への燃料噴射量を算出するようにしている。つまり、前回迄に学習記憶した学習記憶量(噴射量補正量)に基づいて、当該気筒のインジェクタの開弁・閉弁時期を決定することで、僅かな外乱で当該気筒の噴射量補正量が更新されることはない。
【0036】
したがって、各気筒毎のインジェクタの個体差による気筒間の燃料噴射量と多気筒エンジンの燃焼要因のバラツキによって多気筒エンジンの気筒間の回転速度変動が発生しても、多気筒エンジンの各気筒毎の回転速度変動を安定化させることができるので、安定した回転数制御、特に安定したアイドル回転数制御を実現することができる。特に、多気筒エンジンの無負荷状態、つまりアイドル安定状態におけるエンジン振動や騒音を低減できるので、エンジン振動や騒音によって運転者(ドライバー)に不快感を与えることはない。
【0037】
[他の実施例]
本実施例では、本発明を、高圧供給ポンプ7により加圧された高圧燃料を蓄圧するコモンレール5を備えた多気筒ディーゼルエンジン用電子制御方式の蓄圧式燃料噴射装置に適用した例を説明したが、本発明を、コモンレールを持たず、分配型燃料噴射ポンプまたは列型燃料噴射ポンプとインジェクタ(燃料噴射ノズル)を組み合わせた多気筒ディーゼルエンジン用電子制御方式燃料噴射装置に適用しても良い。
【0038】
本実施例では、多気筒エンジンとして4気筒のディーゼルエンジンを適用した例を説明したが、多気筒エンジンとして2気筒、6気筒または8気筒以上のディーゼルエンジンを採用しても良い。また、多気筒エンジンとして2気筒以上のガソリンエンジンを採用しても良い。この場合には、電磁式燃料噴射弁としてのインジェクタは、各気筒の吸気ポートよりも上流側の吸気管に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】蓄圧式燃料噴射装置の燃料配管系を示した概略構成図である(実施例)。
【図2】蓄圧式燃料噴射装置の制御系を示したブロック図である(実施例)。
【図3】(a)、(b)は気筒判別センサおよびクランク角センサの出力波形を示した図である(実施例)。
【図4】蓄圧式燃料噴射装置の噴射量制御方法を示したフローチャートである(実施例)。
【図5】蓄圧式燃料噴射装置の噴射量制御方法を示したフローチャートである(実施例)。
【図6】(a)は初期の各気筒毎の回転速度変動の偏差と気筒毎の噴射量補正量を示した図で、(b)は学習後の各気筒毎の回転速度変動の偏差と気筒毎の噴射量補正量を示した図である(実施例)。
【符号の説明】
1 インジェクタ
2 インジェクタ
3 インジェクタ
4 インジェクタ
10 ECU(回転速度検出手段、回転速度変動算出手段、噴射量補正量更新記憶手段、第1噴射量補正手段、第2噴射量補正手段)
11 電磁弁
12 電磁弁
13 電磁弁
14 電磁弁
21 気筒判別センサ
22 クランク角センサ(回転速度検出手段)
23 アクセル開度センサ
24 冷却水温センサ
25 吸気温センサ
26 燃料圧センサ
Claims (3)
- (a)多気筒エンジンの各気筒に対応して取り付けられたインジェクタと、
(b)前記多気筒エンジンの各気筒の爆発行程毎の最高回転速度と最低回転速度を検出する回転速度検出手段と、
(c)前記各気筒の爆発行程毎の最高回転速度と最低回転速度とから、各気筒毎の回転速度変動を検出し、
各気筒毎の回転速度変動の検出値と全気筒の回転速度変動の平均値とから、各気筒毎の回転速度変動の偏差を算出する回転速度変動算出手段と、
(d)前記各気筒毎の回転速度変動の偏差に応じて、気筒間の回転速度変動を平滑化するように各気筒毎の学習記憶量を更新し記憶する噴射量補正量更新記憶手段と、
(e)前記各気筒毎の回転速度変動の偏差が第1所定値以下になるまで、今回学習記憶した各気筒毎の学習記憶量を用いて前記気筒間の回転速度変動を平滑化するように、前記各気筒毎への燃料噴射量を個々に補正する第1噴射量補正手段と、
(f)前記各気筒毎の回転速度変動の偏差が前記第1所定値以下となった時点で、前記各気筒毎の回転速度変動の偏差が前記第1所定値よりも大きい第2所定値以上となるまで、前回迄に学習記憶した各気筒毎の学習記憶量を用いて前記気筒間の回転速度変動を平滑化するように、前記各気筒毎への燃料噴射量を個々に補正する第2噴射量補正手段と
を備えたことを特徴とする燃料噴射装置。 - 請求項1に記載の燃料噴射装置において、
エンジン回転速度が所定値以下の時に、前記気筒間の回転速度変動を平滑化するように、各気筒毎への最適な燃料噴射量を個々に調整する不均量補償制御を実行することを特徴とする燃料噴射装置。 - 請求項1または請求項2に記載の燃料噴射装置において、
車両の走行速度が所定値以下の時に、前記気筒間の回転速度変動を平滑化するように、各気筒毎への最適な燃料噴射量を個々に調整する不均量補償制御を実行することを特徴とする燃料噴射装置。
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