JP6847582B2 - 液相と微生物細胞加工物を含む分散組成物、および酵母エキスを用いた調味料組成物 - Google Patents

液相と微生物細胞加工物を含む分散組成物、および酵母エキスを用いた調味料組成物 Download PDF

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Description

本発明は、液相と酵素処理した酵母細胞のような微生物細胞加工物とを含み、液相が組成物中に分散されている分散組成物、および酵母エキスと植物油脂類との混合物を加熱して得られた加熱混合物を含む調味料組成物に関する。本発明の分散組成物および調味料組成物は、食品に添加して用いることができる。本発明は食品製造等の分野で有用である。
酵母エキスは、安全・安心な食品素材として、種々の食品において、特徴ある味作りのために使用されている。
酵母エキスに代表される酵母由来物はまた、食品に使用される乳化剤や賦形剤として用いることも検討されてきている。例えば、特許文献1は、酵母エキスが有効成分である食品用乳化剤を提案する。ここでは実施例として、トルラ酵母のツニカーゼ処理エキス(ペプチド18%、RNA30%、食物繊維22.7%)とサラダ油とを混合し、ホモジナイザーで乳化したことが示されている。また特許文献2は、4.5乃至9.0のpHで、水性媒体中で懸濁された食品級酵母物質の、酵母物質を70乃至100℃の温度に加熱し、その温度で8時間乃至2分間維持するかまたは、酵母物質を100乃至200℃の温度に加熱し、その温度で1時間乃至5秒間維持することを含む加熱処理により、マンノ蛋白質を製造する方法が提案し、得られたマンノタンパク質は、食品および飲料における乳化剤として、特にビールの泡を安定化するために有用であると述べている。さらに特許文献3は、香料、色素および機能性物質から選択される少なくとも1 種の成分と、乳化剤および酵母細胞壁画分を含んでなる粉末状混合物を提案する。ここでの酵母細胞壁画分は、粉末素材における賦形剤として用いられている。さらに特許文献4は、食用酵母を培養して得られる培養液中の糖とタンパク質を有する複合体を有効成分として含有してなる乳化剤を提案する。この乳化剤は、コエンザイムQ10のような脂溶性薬物を含有する水溶性組成物を構成するために特に有用である旨が述べられている。
他方、酵母エキスを適宜加工し、香りに関する各種の機能を発揮させることも検討されてきている。例えば、特許文献5〜7は、特定の臭気のマスキングや肉様の風味を付与するためのものとして、酵母エキスと各種油脂とを用いた香味油または調味料組成物を提案する。また特許文献8は、ペプチドと植物性油脂との加熱反応物を含有する、風味改良剤を提案し、このペプチドが酵母菌体由来タンパク質に由来するものであってもよい旨、さらに得られる風味改良剤が動物性油脂の関与する加熱調理風味を飲食品に付与できると述べている。さらに特許文献9は、酵母エキスではなく、焙煎した乾燥酵母細胞壁含有組成物を含有することを特徴とする、焙煎乾燥酵母細胞壁含有組成物を含む組成物を提案し、この組成物が、香ばしい香りおよびナッツのような香りを有し、ごまの風味を付与または増強することができ、また、ナッツの風味を増強できると述べている。さらに特許文献10〜13は、グルタチオン高含有酵母を用いた調味料の製造方法を提案し、得られた調味料が肉様の風味を有するものであると述べている。
特開2012−231747号公報 特開平10−98号公報 特開2004−166636号公報 特開2007−216218号公報 特開2010−81886号公報 特開2006−166873号公報 特開2008−125361号公報 特開2012−170354号公報 特開2014−143966号公報 特開2003−169627号公報 特開2007−259744号公報 特開2010−63364号公報 特開2010−220520号公報
本発明者らは、酵母エキスおよび酵母細胞、特に酵母エキス抽出後の酵母残渣について種々の検討を行ってきた。その中で、酵母細胞においては、酵素処理および乳化剤の添加により、異臭・異味を低減できることを見出し、またそのようにして製造された酵母細胞加工物が、肉軟化効果や揚げ物の衣をサクサクさせる作用があることを見出していた(PCT/JP2015/082560、本願出願時には未公開)。そしてこのような作用は、酵母細胞の油と水との双方を保持する能力(高保水性、高保油性)によるものと考察され、新たな用途への利用が期待された。
今般、本発明者らは、酵母エキスと植物油脂類を混合加熱することで、動物性および油脂以外の植物性素材を用いることなく、ローストした様々な食品様の風味を有する調味料組成物が得られることを見出した。また、この液状の調味料組成物に、分散剤として酵母細胞加工物を添加して混合することで、液相が安定的に分散されたカード状(ペースト状または可塑性を有する半凝固状の分散物)を得た。そしてこのようなカードは、従来の乳化剤を添加して得られるエマルジョン組成物と比較して、香りが失われにくいという効果が期待できることも見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下を提供する。
[1] 液相 と微生物細胞加工物 とを含み、液相が微生物細胞加工物を分散剤として 組成物中に分散されている、分散組成物 。
[2] 液相が香気成分を含有する、1に記載の分散組成物。
[3] 液相が水相および香気成分を含有する油相を含む、2に記載の分散組成物。
[4] カード状である、1〜3のいずれか1項に記載の分散組成物。
[5] 微生物細胞加工物が、酵母細胞加工物である、1〜4のいずれか1項に記載の分散組成物。
[6] 微生物細胞加工物が、酵母エキスを抽出した残渣をプロテアーゼおよび/またはセルラーゼを反応させた加工物である、5に記載の分散組成物。
[7] 液相100重量部に対し、微生物細胞加工物を1〜20重量部 含む、1〜6のいずれか1項に記載の分散組成物。
[8] 加熱した、肉類、種実類または穀類 の香りを有する、1〜7のいずれか1項に記載の分散組成物。
[9] 調味料組成物である、1〜8のいずれか1項に記載の分散組成物。
[10] 液相を分散させるための、微生物細胞加工物。
[11] 酵母エキスと植物油脂類との混合物を加熱して得られた 加熱混合物を含む、食品に、加熱した肉類、種実類または穀類の香りを付与するための調味料組成物。
[12] 酵母エキスと植物油脂類との混合物を加熱して加熱混合物を得る工程を含み、得られた加熱混合物を調味料組成物とする、加熱した肉類、種実類または穀物の香りを有する調味料組成物の製造方法。
[13] 酵母エキスが、プロリン高含有酵母由来の酵母エキスまたはトルラ酵母由来の酵母エキスを含む、12に記載の製造方法。
[14] 植物油脂類が、パーム油、コーン油、米油、菜種油、ごま油、サフラワー油、綿実油、ひまわり油、大豆油、 アーモンド油およびオリーブ油からなる群より選択されるいずれかである、12または13に記載の製造方法。
[15] 酵母エキスと植物油脂類との混合物の加熱が、70〜130℃で10〜180分間行われる、12〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
[16] 液相が11に記載の調味料組成物である、1〜9のいずれか1項に記載の分散組成物。
実験例6で製造した酵母細胞加工物の電子顕微鏡写真。 分散組成物の実施例の写真。左:製造直後、中:製造直後のものをパウチに入れた状態、右:パウチに入れたものの三週間経過後。
%および部は、特に記載した場合を除き、重量を基準としている。数値範囲「X〜Y」は、特に記載した場合を除き、両端の値XおよびYを含む。「Aおよび/またはB」は、特に記載した場合を除き、A、Bのうち少なくとも一方が存在することを指し、AとBの双方が存在する場合も含む。 食品は、固形のもののみならず、飲料およびスープのような液状の経口摂取物も含む。また、そのまま摂取される形態のもの(例えば、調理済みの各種の食品、サプリメント、ドリンク剤)のみならず、食品添加物、発酵調味料組成物、飲料濃縮物も含む。さらに、ヒトのみならず、非ヒト動物(ペット、家畜等)のためのものも含む。食品はまた、一般食品(いわゆる健康食品を含む。)のほか、保健機能食品(機能性表示食品、栄養機能食品、および特定保健用食品を含む。)を含む。微生物細胞加工物の量または比(%、部等)を表す場合は、特に記載した場合を除き、乾燥重量に基づく。酵母エキスについても同様である。
I.液相と微生物細胞加工物とを含む分散組成物
本発明は、液相と微生物細胞加工物とを含み、液相が微生物細胞加工物を分散剤として組成物中に分散されている、分散組成物を提供する。
[液相]
本発明の分散組成物は液相を含む。本発明において液相は、油相、水相またはそれらの混合相であり得る。液相は、食品、化粧品または医薬品として許容される成分からなる限り特に限定されない。液相には、種々の成分を含有させることができる。含有させることができる成分の例は、香気成分、呈味成分、天然香料、合成香料、調合香料、抽出物、色素成分、精油成分、栄養成分、その他保存料などの添加物等である。好ましい液相の例は、油溶性の成分を溶解した油相およびそのような油相と水相との混合物である。好ましい態様の一つにおいては、液相は、後述する酵母エキスと植物油脂類との混合物を加熱して得られた加熱混合物、またはそれを含む、食品に、加熱した肉類、種実類または穀類の香りを付与するための調味料組成物を含む。
[微生物細胞加工物]
本発明の分散組成物は微生物細胞加工物を含む。微生物細胞加工物は、原料微生物細胞に対して、加熱、加圧、乾燥、圧縮、圧搾、抽出(低分子生体成分が取り除かれる)等の加工を施したものであり、電子顕微鏡で観察した場合には細胞の形が確認できるものが好ましいが、微生物細胞そのものではない。微生物細胞加工物は、食品、化粧品または医薬品の素材として許容される種々の微生物の細胞、例えば酵母、ある種のカビ、乳酸菌、ビフィズス菌、枯草菌の細胞に由来し、好ましくは、酵母細胞に由来する。以下では、微生物細胞加工物のうち、酵母細胞加工物を例に説明することがあるが、その説明は、当業者であれば、酵母以外の他の微生物に由来する微生物細胞加工物についても適宜あてはめて理解することができる。
酵母細胞加工物が由来する原料酵母の例としては、食品製造のために用いられるものであれば、特に限定されない。例えば、酒酵母、ワイン酵母、ビール酵母等の慣用されている酵母を用いることができる。より具体的には、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属、ウィリオプシス(Williopsis)属、デバリオマイセス(Debaryomyces)属、ガラクトマイセス(Galactomyces)属、トルラスポラ(Torulaspora)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、およびジゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属からなる群より選択されるいずれかである。酵母は、増殖性が良好であることから、パン製造に用いられているパン酵母、食料や飼料等の製造に用いられているトルラ酵母であることが好ましい。食経験が豊富であることから、サッカロマイセス(Saccharomyces)に属する菌やキャンディダ(Candida)に属する菌であることがより好ましい。サッカロマイセス属の例として、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake)、サッカロマイセス・ベティカス(Saccharomyces beticus)が挙げられる。なお、サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake)とサッカロマイセス・ベティカス(Saccharomyces beticus)は、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の一種として分類される場合もある。キャンディダ属の例として、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・リポリティカ(Candida lypolitica)、キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)、キャンディダ・サケ(Candida sake)が挙げられる。特に好ましい態様の一つにおいては、酵母細胞加工物が由来する原料酵母は、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)またはキャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)である。
原料酵母は、異味または異臭の原因となる物質の存在割合が低いとの観点からは、発酵工程を行う前の酵母であることが好ましい。
酵母細胞加工物は、酵母エキス抽出残渣であってもよい。ここで、酵母エキス抽出残渣とは、酵母から酵母エキスを抽出した後に残ったものをいう。酵母エキスの抽出方法は特に限定されず、熱水処理法、自己消化法、酵素分解法等の抽出方法が挙げられる。酵母エキス抽出残渣からは、通常、主に細胞内部に存在する低分子の生体成分の一部が取り除かれている。
好ましい態様の一つにおいては、酵母細胞加工物は、酵母細胞に、プロテアーゼおよび/またはセルラーゼを反応させたものであり、さらに好ましくは、酵母エキス抽出残渣にプロテアーゼおよび/またはセルラーゼを反応させたものである。理論に拘泥するものではないが、発明者らは、酵母細胞にプロテアーゼを反応させることにより、酵母細胞壁表層のタンパク質を切断するとともに、そのタンパク質に付着している異臭の原因物質である低級アルコール等が除去されることにより、異臭が除去され、酵母細胞加工物の風味が改善されるものと推測している。また、理論に拘泥するものではないが、発明者らは、酵母細胞にセルラーゼを反応させることにより、酵母細胞の細胞壁を構成する多糖類を切断するとともに、細胞壁に結合している異臭の原因物質である低級アルコール等が除去されることにより、酵母細胞加工物の風味が改善されるものと推測している。
プロテアーゼとしては、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、金属プロテアーゼ等が挙げられ、例えば、微生物由来のプロテアーゼ、植物由来のパパイン、ブロメライン等、動物由来のトリプシン、ペプシン、カテプシン等が挙げられる。プロテアーゼはエンド型プロテアーゼであってもエキソ型プロテアーゼであってもよいが、本実施形態の方法による風味改善効果が得られやすい観点から、エンド型プロテアーゼであることが好ましい。
セルラーゼとしては、セルロース等のβ−1,4−グルカンのグリコシド結合を加水分解するものであれば特に限定されず、例えば、トリコデルマ・リーゼ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)等のトリコデルマ属菌;アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus acleatus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等のアスペルギルス属菌;クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム・ジョスイ(Clostridium josui)等のクロストリジウム属菌;セルロモナス・フィミ(Cellulomonas fimi)等のセルロモナス属菌;アクレモニウム・セルロリティクス(Acremonium celluloriticus)等のアクレモニウム属菌;イルペックス・ラクテウス(Irpex lacteus)等のイルペックス属菌;フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)等のフミコーラ属菌;パイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)等のパイロコッカス属菌等の微生物由来のセルラーゼが挙げられる。
プロテアーゼは1種を単独で、または2種以上を混合して酵母細胞と反応させてもよい。セルラーゼについても、1種を単独で、または2種以上を混合して酵母細胞と反応させてもよい。また、プロテアーゼのみまたはセルラーゼのみを酵母細胞と反応させてもよく、プロテアーゼおよびセルラーゼを酵母細胞と反応させてもよい。
プロテアーゼの添加量は、酵母細胞(固形分)1gあたり1〜5000ユニットであることが好ましく、10〜2000ユニットであることがより好ましく、100〜300ユニットであることがさらに好ましい。また、セルラーゼの添加量は、酵母細胞(固形分)1gあたり0.1〜100ユニットであることが好ましく、0.5〜50ユニットであることがより好ましく、1〜20ユニットであることがさらに好ましい。酵素の添加量が少なすぎると十分な風味改善効果が得られにくい。また、酵素の添加量が多すぎるとコスト的に不利になる。プロテアーゼまたはセルラーゼの反応温度および反応時間は、選択した酵素に応じて適宜調整すればよい。反応温度としては、例えば、25〜60℃が挙げられる。また、反応時間としては、例えば1〜10時間が挙げられる。
好ましい態様の一つにおいては、酵母細胞加工物は、プロテアーゼおよび/またはセルラーゼを酵母細胞に反応させる工程の前または後に、乳化剤で処理されたものである。理論に拘泥するものではないが、発明者らは、酵母細胞に乳化剤を添加することにより、苦味、渋み、えぐ味等の異味の原因物質である疎水性アミノ酸等が、水洗浄中に洗い流されやすくなり、酵母細胞加工物においてこれらの異味が低減されるものと推測している。
乳化剤としては、1〜14のHLB値を有するものが好ましい。乳化剤のHLB値は、1〜12であることがより好ましく、1〜7であることがさらに好ましい。具体例としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、サポニン等が挙げられる。また、乳化剤は、1種を単独で、または2種以上を混合して酵母細胞に添加してもよい。乳化剤の添加量は、酵母細胞(湿潤重量)を基準として、0.01〜1重量%であることが好ましく、0.01〜0.1重量%であることがより好ましい。なお、本明細書において、湿潤重量とは、液体(分散媒)を含む酵母細胞の重量を意味する。
特に好ましい態様の一つにおいては、酵母細胞加工物に含まれる酵母細胞は原料酵母の形状の特徴を残しており、具体的には楕円球体であり、その長径は、2〜10μmであり、好ましくは3〜6μmである。また特に好ましい態様の一つにおいて、酵母細胞加工物の成分は、タンパク質含有量が25重量%以上であり、β-グルカン含有量が10重量%以上であり、食物繊維含有量が25重量%以上であり、さらに(RNAを含む)核酸含有量が5重量%以下である。
微生物細胞加工物は、タンパク質と食物繊維が豊富であり、セルロース系食品添加物と植物タンパク質食品の双方の性質を有しうる。そのため高い保水性と高い保油性とを有し、両親媒性であり、油性のものも水性のものも安定的に分散できると考えられる。また微生物細胞加工物は、原料となる細胞自体とは異なり、最表層の一部が加工処理により破壊され、通常は細胞内にある部分が細胞外に露出していると考えられる。具体的には、酵母細胞加工物の場合は、最表層にあるマンナン層の一部が除去されており、グルカン層が一部露出していると考えられる。そのため微生物細胞加工物に含まれる細胞内には細胞外から成分が流入可能であり、その結果細胞外からの香気物質等を封じ込めるという、一種のカプセル様の機能を有すると考えられる。微生物細胞加工物は、この機能によっても各種成分を安定的に保持・分散できると考えられる。
[配合、分散、分散組成物]
液相と微生物細胞加工物との配合比は、組成物全体が均一な外観を有し、かつその状態が安定である限り、特に限定されない。例えば、液相100重量部に対して微生物細胞加工物を、7重量部以上配合することができ、8重量部以上配合することが好ましく、9重量部以上配合することがより好ましく、10重量部以上配合することがさらに好ましい。これより少ない場合、分散はできても長期間の保存において安定でない場合がある。微生物細胞加工物の配合比の上限は経済的な観点等からも定めることができるが、液相100重量部に対して30重量部以下とすることができ、25重量部以下とすることが好ましく、20重量部以下とすることがより好ましく、18重量部以下、15重量部以下、または11重量部以下とすることがさらに好ましい。これより多い場合、組成物中の液相が相対的に少なくなり、液相の機能を十分に発揮できない可能性があるからである。
分散組成物は、液相と微生物細胞加工物とを、既存の単純な撹拌機を用いて混合することにより調製できる。微細な乳化物を得るための高速回転せん断攪拌機、コロイドミル、ホモジナイザー、フロージェットミキサー、超音波乳化機等は特に要しない。
得られた組成物においては、微生物細胞加工物の作用により、液相が組成物中に分散されている。分散されているとは、微細に散らばって存在している状態をいい、分散されていることは組成物全体の外観が均一であることから分かる。上述の様に配合され、調製された分散組成物は、各種の形態であり得るが、典型的には、半固形状(カード状)である。
本発明の分散組成物は、安定であることが好ましい。分散組成物が安定であるとは、一定条件で、例えば室温で1日、好ましくは室温で1週間、より好ましくは室温で1か月の条件で、外観に変化がないこと(すなわち、液相と微生物細胞加工物との分離が起こらないこと)をいう。
一般に、油溶性の成分はそのままでは水性の対象に配合することが困難であるが、本発明の分散組成物とすることにより、水性の対象においても安定に配合できることとなる。また後述するように、微生物細胞加工物に含有される微生物細胞内に液相が流入していると考えられる場合には、液相に含有される成分が細胞内に保持されることにより、より安定で持続的な機能を対象に付与できると考えられる。
本発明は、液相を分散させるための、微生物細胞加工物も提供する。
II.食品に、加熱した肉類、種実類または穀類の香りを付与するための調味料組成物
本発明はまた、酵母エキスと植物油脂類との混合物を加熱して得られた加熱混合物を含む、食品に、加熱した肉類、種実類または穀類の香りを付与するための調味料組成物およびその製造方法を提供する。
[酵母エキス]
本発明に用いることのできる酵母エキスは、食品として摂取できるものであるかぎり、特に限定されない。上で酵母細胞加工物に関して記載した酵母を、酵母エキスのための原料酵母としても使用できる。酵母エキスの原料として特に好ましい酵母は、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)およびトルラ酵母(Candida utilis)である。また、原料酵母からの抽出方法は、熱水抽出、酵素分解抽出、自己消化抽出などの公知の方法で抽出したエキスであれば特に限定されない。酵母エキスであれば、液体、ペースト、粉末、顆粒等の形態は問わない。
好ましい態様の一つにおいて、酵母エキスとしては、プロリン高含有酵母エキスを用いる。プロリン高含有酵母エキスにおけるプロリンの含有量は、3.0重量%以上、好ましくは5.0重量%以上である。また、そのようなプロリン高含有酵母エキスとしては、プロリン含有量が5.0重量%以上であり、かつロイシンの含量が0.40重量%以上であることが好ましく、0.70重量%以上であることがさらに好ましい。なお、ペプチド含有量は60重量%以下であることが好ましい。プロリン高含有酵母エキスとしては、例えば、市販のハイマックスPR(富士食品工業株式会社、プロリン6%)を使用することができる。またプロリン高含有酵母エキスの製造方法は、特許第5363120号を参考にすることができる。
好ましい態様の一つにおいて、酵母エキスとしては、トルラ酵母を原料とするものが用いられる。トルラ酵母エキスは、原料のトルラ酵母から、熱水抽出、酵素分解抽出、自己消化抽出などの方法で抽出したエキスであり、好ましくは酵素分解抽出酵母エキスである。トルラ酵母エキスとしては、トルラ酵母エキス全量に対し、ペプチドが5重量%以上70重量%以下で含まれるものを用いることができ、10重量%以上60重量%以下で含まれるものを用いることがより好ましい。また、酵母エキス全量に対するRNAが、5重量%未満であるものを用いることが好ましく、1重量%未満であるものを用いることがより好ましく、0.5重量%未満であるものを用いることがさらに好ましい。
いずれの場合であっても、使用される酵母エキスは、グルタチオン含有量が低い酵母エキスであることが好ましい。具体的には、酵母エキス全量に対しグルタチオンを5重量%未満、好ましくは3重量%未満含む酵母エキスであることが好ましい。
本発明に使用される酵母エキスは、抽出残渣(酵母壁を含むデブリ)は含まないことが好ましい。
酵母エキスは、加熱処理を施したものであってもよい。後述するように、酵母エキスは、植物油脂類と混合された後に加熱されるが、その工程に供される前に、酵母エキスを加熱処理することができる。ここでの加熱により、最終的に得られる調味料組成物における香気がより優れたものとなりうる。なお、ここでいう酵母エキスの加熱と、後述の酵母エキスと油脂類との混合物状態での加熱は、系の違いにより、成分の反応進行経路・度合が異なると考えられる。なおこのように酵母エキスと植物油脂類との混合物を加熱して加熱混合物を得る工程に供される前に、加熱処理された酵母エキスを、事前加熱処理酵母エキスということがある。
加熱処理酵母エキスは、酵母エキス1重量部を、0.1〜10重量部の水に溶解した後、溶解物を101〜121℃、好ましくは103〜115℃、より好ましくは105〜110℃で加熱処理し、必要に応じ得られた加熱物を乾燥することにより得られる。また、加熱の際に糖類を添加してもよい。加熱処理時間は適宜とすることができるが、例えば10〜120分間であり、好ましくは15〜90分間であり、より好ましくは20〜60分間である。ここでの加熱は複数回行ってもよい。すなわち、得られた乾燥物をさらに水に溶解し、同様の条件による加熱処理を繰り返してもよい。加熱を繰り返すことにより香気の強度を増すことができると考えられる。用いることのできる糖類は、食品、化粧品、または医薬品の素材として使用できる糖類(糖質、炭水化物ということもある。)であれば特に限定されず、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、糖アルコール類、およびこれらの混合物のいずれであってもよい。具体的には、ショ糖、ブドウ糖、麦芽糖、水あめ、還元水あめ、糖蜜、果糖ブドウ液糖等が挙げられる。
[植物油脂類]
植物油脂類とは、植物から得られ、食品、化粧品、または医薬品の素材として使用できる油または脂をいう。本発明に用いることのできる植物油脂類は、特に限定されない。植物油脂類の例は、パーム油、コーン油、米油、菜種油、ごま油、サフラワー油、綿実油、ひまわり油、大豆油、アーモンド油およびオリーブ油からなる群より選択されるいずれかである。好ましい態様の一つにおいては、パーム油および菜種油を用いることができる。
[混合・配合比]
酵母エキスと植物油脂類との配合比は、目的の香りを有する組成物が得られる限り特に限定されないが、本発明者らの検討によると、酵母エキスの配合量が極めて少ない場合であっても、十分な香りを有する組成物が得られることが分かっている。したがって、酵母エキスと植物油脂類との配合比は、重量比で1:1〜100、好ましくは1:2〜50、さらに好ましくは1:5〜30である。
酵母エキスと植物油脂類を混合する際に、さらに水を混合してもよく、水を混合することが好ましい。水の量は、混合物全体に対して、10重量%以上とすることができ、15%以上とすることが好ましく、20重量%以上とすることがより好ましく、30重量%以上とすることがさらに好ましい。水を10重量%以上混合することにより、熱がかかりすぎるのを防ぎ、質の低下(焦げ臭の増大)を抑制することができる。いずれの場合であっても水の混合量の上限値は特に限定されないが、60重量%以下とすることができ、水が多い場合は系内での酵母エキスの濃度が低くなって香気力価が低下することから、50重量%以下とすることが好ましく、40重量%以下とすることがより好ましく、30重量%以下とすることがさらに好ましい。
[加熱工程]
酵母エキスと植物油脂類との混合物を加熱する際、温度は、70〜130℃とすることができる。好ましくは、90〜125℃であり、より好ましくは100〜120℃である。加熱は、温度がいずれの場合であっても、10〜180分間行うことができ、好ましくは30〜120分であり、より好ましくは30〜60分である。
[風味]
得られた組成物は、動物性原料や、植物油脂類以外の植物性原料を用いていないにもかかわらず、加熱した肉類、種実類または穀物の香りを有する。加熱した肉類の香りとは、畜肉、鳥肉、およびその他を含み、具体的には、牛肉、豚肉、馬肉、羊肉、ヤギ肉、クジラ肉、シカ肉、イノシシ肉、イノブタ肉、鶏肉、キジ肉、七面鳥肉、鴨肉、うずら肉、ホロホロ鳥肉、合鴨肉、あひる肉、すずめ肉、はと肉、イナゴ肉、カエル肉、およびすっぽん肉からなる群より選択されるいずれかを加熱した際に生じる香りをいう。本発明の調味料組成物の好ましい態様の一つにおいて賦される香りは、加熱した牛肉、豚肉、または鶏肉の香りである。加熱した種実類の香りとは、ごま、落花生、アーモンド、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、ペカン、カシューナッツ、くるみ、ぎんなん、かぼちゃの種、くり、けし、すいかの種、ひまわりの種、および松の実からなる群より選択されるいずれかを加熱した際に生じる香りをいう。本発明の調味料組成物の好ましい態様の一つにおいて賦される香りは、加熱したごまの香りである。加熱した穀物の香りとは、米(うるち米、もち米を含む。玄米、精白米等の各種を含む。)、小麦、大麦、えん麦、そば、あわ、およびきびからなる群より選択されるいずれか、またはいずれかを主原料として調理または加工した食品(例えば、飯、もち、うどん、パスタ、パン)を加熱した際に生じる香りをいう。本発明の調味料組成物の好ましい態様の一つにおいて賦される香りは、加熱したもちの香りである。
加熱した肉類、種実類または穀物の香りを有するか否か、またその程度は、当業者であれば、官能試験を企画して評価することができる。評価の主体は訓練されたパネラーであることが好ましい。必要に応じ、例えば有効成分を含まない食品等適切な対照を準備し、3〜10段階程度の基準を定め、基準(産業上意義のある基準、例えば7段階目以上を合格とするように定めることができる。)に基づき評価することができる
なお、本発明によって提供される、「酵母エキスと植物油脂類との混合物を加熱して得られた加熱混合物を含む、食品に、加熱した肉類、種実類または穀類の香りを付与するための調味料組成物」は、製造工程であると解される加熱工程によって特定されている。本発明の調味料組成物は、酵母エキスのような天然物に由来するので、多種多様な成分を含んでおり、かつ加熱により相互に反応し、さらに複雑な成分構成になっていると考えられる。そしてそのような成分の相互作用によって目的の香りが生じているものと考えられる。一般に、香りに寄与する成分は微量である。したがって、天然物を原料に含み、加熱により得られた本発明の組成物の組成を分析し、目的の香りに寄与している成分を特定するためには、組成物に含まれる極めて多数の複雑な成分から、微量の成分を特定することになる。また目的の香りが相互作用によって生じる物であれば、特定された微量成分について、種々の組み合わせを試行して逐一香りを確認するという、膨大な数の実験が必要になると考えられる。しかも、実験に際しては他の物質の影響を完全に排除するために、候補となる多数の微量成分のすべてについて、それぞれ高純度に精製する必要がある。そうすると、その構造または特性により直接特定することは、およそ実際的でないと考えられる。
本発明により提供される、加熱した肉類、種実類または穀類の香りを付与するための調味料組成物は、従来技術と比較し、酵母エキスの配合比が低いにも関わらず、十分な香りを有する。また酵母エキスと植物油脂類のみから、肉類、種実類または穀類の香りを生じさせるものである。本発明を用いることにより、好ましい香りを有する食品を得ることができることに加え、格段に原料費を低減させることができ、さらには廃棄物を減量することにもつながると期待できる。
[実験例1:プロリン高含有酵母エキスの製造]
プロリン高含有酵母エキスについては、以下の通り製造した。
日本たばこ産業株式会社の製パン用酵母JT-1株をYPD培地(バクトイーストエキストラクト(DIFCO社)1.0%、バクトペプトン(DIFCO社)2.0%、グルコース2.0%)で対数増殖期まで培養し、集菌・洗浄した後、0.067Mリン酸カリウム液に酵母をけん濁し、攪拌しながら紫外線を2分照射した。その後、プロリンアナログであるアゼチジン-2-カルボキシレート(AZC)(シグマ社)5mg/mlを含む最小培地(イーストニトロゲンベースw/oアミノ酸(DIFCO社)0.67%、グルコース2.0%、寒天2.0%)で32℃5日培養し、147株のAZC耐性株を得た。これらのコロニーをそれぞれさらに50mlのYPD培地で24時間培養した後、遠心分離にて集菌し、凍結乾燥菌体を得た。これら凍結乾燥菌体から菌体内成分を95℃、20分で熱水抽出して、アミノ酸分析機(日立L-8900型)でプロリン値を測定することでプロリンを高蓄積する株AZC66を得た。次いで、AZC66をYPD培地(バクトイーストエキストラクト(DIFCO社)1.0%、バクトペプトン(DIFCO社)2.0%、グルコース2.0%)で対数増殖期まで培養し、集菌・洗浄した後、0.067Mリン酸カリウム液にけん濁し、攪拌しながら紫外線を2分照射した。その後、最小培地(イーストニトロゲンベースw/oアミノ酸(DIFCO社)0.67%、グルコース0.5%、グルタミン酸ナトリウム0.1%、寒天2.0%)で32℃3日培養し、増殖速度の速い200株を得た。この200株を、プロリンを唯一の窒素源とする培地(グルコース0.5%、プロリン0.1%、寒天2.0%)で32℃5日培養し、増殖の遅い株50株を得た。これらのコロニーをそれぞれ50mlのYPD培地で24時間培養した後、遠心分離にて集菌し、凍結乾燥菌体を得た。これら凍結乾燥菌体から菌体内成分を95℃、20分で熱水抽出して、アミノ酸分析機(日立L-8900型)でプロリン値を測定することでプロリンを高蓄積する株AZC66−21を得た。
AZC66−21株をYPD培地1.7Lを含む3L容積ジャーファーメンター(ABLE社製)を用い、培養温度32℃、通気1.6L/分、撹拌650rpmで21.5時間撹拌培養した。培養した酵母菌体は集菌・洗浄し、酵母懸濁液中の乾燥酵母重量が170g/Lとなるように水を添加した。その後、pH8.5に調整し、Alcalase 2.4L FGとFlavourzyme 500 MG(共にNovozyme社製)を乾燥酵母重量当たりそれぞれ2.7ml/kg,2g/kg添加し、60℃、pH非制御下で10時間保持した。その後、85℃、30分で酵素失活処理を行い、次いで固形分分離を行うことで、プロリン高含有酵母エキスを得た。
そのようにして製造したプロリン高含有酵母の遊離アミノ酸組成を表1に示す。
Figure 0006847582
[実験例2:各種酵母エキスを使用した、調味料組成物の製造]
酵母エキスとして、実施例1で製造したプロリン高含有酵母エキスおよび表2に記載の酵母エキスを準備した。
Figure 0006847582
それら酵母エキスを7.5重量部用い、植物油(菜種油)70重量部および水22.5重量部に混合し、混合液体を得た。そのようにして得られた混合液体を105℃で30分或いは120℃で60分間加熱し、調味料組成物を得た。さらに水溶液部と油部に分離し、分離した油部を湯100重量部に対し5重量部浮かべ、熟練したパネラー3人により香りを確認し、好ましいと感じた香りを○、やや好ましい香りを△、不快に感じた香りを×として表した。その結果を表3に示す。
Figure 0006847582
表3に示した通り、プロリン高含有酵母エキス、およびトルラ酵母エキスである市販酵母エキスAを用いた場合に、焼いた畜肉様香や焙煎したごまなどの加熱した食品様の好ましい香気が生じた。
[実験例3:事前加熱処理酵母エキスを使用した、調味料組成物の製造]
酵母エキスとして、プロリン高含有酵母エキスおよび市販酵母エキスAをそれぞれ等量の水に溶解し、さらに1.4重量部の果糖ブドウ糖液糖を添加混合し100重量部とした。溶解物は105〜110℃で30分加熱処理した後、真空乾燥にて乾燥・粉末化し事前加熱処理酵母エキスを得た。それら事前加熱酵母エキスを用い、実施例2と同様に調味料組成物を得た。同様に油部と水部に分離し、香りを確認した。その結果を表4に示す。
Figure 0006847582
表4より、一度加熱処理を行った酵母エキスをさらに食用植物性油脂と混合して加熱した場合には、ローストした食品様の香りはさらに強く呈することが明らかになった。さらに、一度加熱処理を行った酵母エキスにおいては、菜種油およびパーム油のどちらにおいても好ましい香りを呈した。
[実験例4:乳化方法の検討1]
実験例3と同様に、市販酵母エキスAおよびプロリン高含有酵母エキスをそれぞれ水に溶解、果糖ブドウ糖液糖を添加し、110℃で30分加熱した後、真空乾燥にて乾燥・粉末化し、事前加熱処理酵母エキスを2種類得た。そのようにして得られた事前加熱処理酵母エキス2種類を各2重量部と、パーム油45重量部、および水47重量部を混合し、混合液体物を得た。そのようにして得られたる混合液体物を、110℃で30分間加熱した。得られた焼いた肉様の香りを有する加熱混合物を80℃程度まで冷却したのち、乳化剤(シュガーエステルP-1570(三菱化学フーズ社))を3重量部添加し、乳化機により3000rpm・5分間の乳化処理を行った。しかし、安定した乳化には至らず、また、乳化により香気が低減した。
そこで、酵母エキスおよびパーム油の量は変えず、添加する乳化剤の量を3重量部、5重量部、7重量部、10重量部と増加させ乳化を試みたが、安定した乳化には至らなかった。
[実験例5:乳化方法の検討2]
さらに、種々の乳化剤の効果について検討した。表5に記載された各種乳化剤を、実験例4で製造した加熱混合物を冷却したもの97重量部に3重量部添加し同様に乳化を試みた。しかし、どの乳化剤を用いてもなお、安定した乳化物は得られなかった。
Figure 0006847582
[実験例6:酵母細胞加工物の製造]
(製造)
酵母細胞加工物を、以下のように製造した。
原料酵母細胞としては、パン酵母から熱水抽出法によって酵母エキスを抽出することによって生じた酵母エキス残渣(以下では、単に酵母細胞ということがある。)を使用した。まず、酵母細胞に、HLB値が4.1であるグリセリン脂肪酸エステル(SUNSOFT No.8000V、太陽化学社製)を、酵母細胞(湿潤重量)を基準として、0.05重量%添加した。続いて、酵母細胞を90〜92℃で30分間処理し、滅菌した。続いて、冷却後、pHを7.0に調整した。続いて、バチルス・アミロリクエファシエンス由来のエンド型プロテアーゼを、酵母細胞(固形分)1gあたり210ユニット添加し、50℃で6時間反応させた。続いて、酵母細胞を80℃で20分間処理し、酵素を失活させた。続いて、酵母細胞を冷却後、水洗浄を3回行い、ドラム型乾燥機により乾燥させた。続いて、乾燥物を破砕し、50メッシュパスの粉末として、酵母細胞加工物を得た。
次に、得られた酵母細胞加工物の成分分析、電子顕微鏡観察、ならびに保水率および保油率の測定を行った。
(成分分析)
上記で得た酵母細胞加工物の成分分析を行った。分析結果を下表に示す。水分含量は、105℃、3時間の乾燥条件における常圧乾燥重量法により測定した。固形分は、100(%)から水分含量(%)を減じることにより算出した。塩分は、電位差滴定法により測定した。
総窒素量は、ケルダール法により測定した。タンパク質含量は、総窒素量に6.25を乗じることにより算出した。脂質含量は、ソックスレー抽出法により測定した。灰分量は、直接灰化法により測定した。β−グルカン含量は、酵素法により測定した。食物繊維含量は、酵素−重量法により測定した。
Figure 0006847582
(電子顕微鏡観察)
酵母細胞加工物の形態を電子顕微鏡により観察した。具体的には、イオンスパッタ(型番「E−1010」、日立社製)の試料台に走査型電子顕微鏡用カーボン両面テープ(カタログ番号「7322」、日新EM社製)で試料(酵母細胞加工物)を接着し、10Pa、イオン電流15mAの条件で2分間放電して、試料をコーティングした。続いて、走査型電子顕微鏡(型番「S−3000N」、日立社製)を用いて、高真空モード、加速電圧15kVの条件でコーティングした試料を観察した。図1は、試料の電子顕微鏡写真(倍率500倍)である。図1において、粒状に見えるものがそれぞれ酵母の細胞である。その結果、酵母細胞加工物には、細胞の形が残っていることが明らかとなった。
(保水率の測定)
酵母細胞加工物の保水率を測定した。また、対照として、粉末セルロース(商品名「KCフロック」、日本製紙ケミカル社製)、結晶セルロース(商品名「セオラスDX−2」、旭化成ケミカルズ社製)、大豆たんぱく質(商品名「フジプロ−FR」、不二製油株式会社製)の保水率も測定した。
保水率は次のようにして測定した。まず、水分含量10%以下である乾燥試料は10g、水分含量が10%より高いペースト状試料は30g量りとり、100mLの熱水を添加した。続いて、試料を20分間静置し、十分吸水させ、室温まで冷却した。続いて、試料を1000×gで5分間遠心分離し、上清を除去した。続いて、得られた沈殿の湿潤重量を測定した。続いて、得られた沈殿を105℃で4時間乾燥させ、乾燥重量を測定した。
続いて、以下の式により、保水率を算出した。測定結果を表12に示す。
保水率(%)=沈殿の湿潤重量(g)/沈殿の乾燥重量(g)×100
(保油率の測定)
酵母細胞加工物の保油率を測定した。また、対照として、粉末セルロース(商品名「KCフロック」、日本製紙ケミカル社製)、結晶セルロース(商品名「セオラスDX−2」、旭化成ケミカルズ社製)、大豆たんぱく質(商品名「フジプロ−FR」、不二製油株式会社製)の保油率も測定した。
保油率は次のようにして測定した。まず、各試料を2.5g量りとった。これに適量のサラダ油を添加し、ボルテックスミキサーで懸濁した。続いて、試料を1400×gで15分間遠心分離し、上清を除去した。続いて、得られた沈殿の湿潤重量を測定した。続いて、以下の式により、保油率を算出した。測定結果を表12に示す。
保油率(%)=沈殿の湿潤重量(g)/サンプル重量(g)×100
Figure 0006847582
[実験例7:酵母細胞加工物による安定分散化の検討]
実験例4で製造した加熱混合物を冷却したもの87重量部に対し、食塩2重量部、実験例で製造した酵母細胞加工物を11重量部添加し、撹拌しながら25度まで緩慢冷却した。その結果、カード(半固形物、カード1)を得ることができた。また、そのようにして得られたカードは、5人のパネラーで香気力価を確認したところ、乳化剤を用いて製造した不安定な乳化物に比べ、香り立ちが格段によく、香気力価が高いものであった。また、香気だけでなく味質面でも、液部が油脂部と混在している事により、マイルドに低減される事無く、特有の肉様味質を保持していた。
同様に、下表の重量比でカード2および3を調整した。
Figure 0006847582
得られたカードを室温で静置し、1日後、1週間後、1か月後に香気力価を確認した。結果を表7に示す。得られたカードは、室温で長時間にわたり分散状態が保たれ、香気力価にも変化がなく、安定であった。
Figure 0006847582
なお、カード1の写真を図2に示した。図2左は、製造直後の写真であり、中はそれをパウチに入れた状態の写真、右はパウチに入れた物の三週間経過後の写真である。
[ロースト風味調味料の食品への配合例(香味油脂顆粒製造例)]
プロリン高含有酵母エキスと菜種油を用い、105℃、30分の加熱により、実験例2と同様に加熱混合物を得た。得られた加熱混合物を用い、下表の割合でデキストリン、ごま油あるいは加熱混合物を容器に入れてフードプロセッサにより十分に攪拌した。この混合物に対して、フードプロセッサにかけながら、グリセリンを入れてさらに十分に攪拌した。そのまま、この混合物を50℃にて2時間加熱し、乾燥させ、固化させた。その後、9meshのSUS製織り網で押し出すことにより解砕、整粒することにより顆粒状油脂を得た。得られた顆粒状油脂を熱湯に溶かし、5人のパネラーで官能評価を行った。
Figure 0006847582
その結果、ごま油を用いない添加群においても、ごま様の香りを有する、香味油脂顆粒を得ることができた。このように、代替としてごまの様な香りを持つ調味料組成物を用いることにより、同等の風味の製品を作成することができ、またごまアレルゲンフリーの製品とすることもできる。
[香気含有液の酵母細胞加工物による分散物の食品への配合例(ハンバーグ調製例)]
実験例7で製造したカード1を用い、下表の配合比でハンバーグを製造した。
Figure 0006847582
カードを用いることにより、加熱調理・喫食時に良好な風味の生じるハンバーグを作成することができた。これより、牛肉等原料の削減によるコストダウンが期待できる。

Claims (9)

  1. 液相と微生物細胞加工物とを含み、液相が微生物細胞加工物を分散剤として組成物中に分散されている、分散組成物であって、
    液相が水相および油相を含み、
    液相100重量部に対し、微生物細胞加工物を1〜30重量部含み、
    微生物細胞加工物が、酵母エキスを抽出した残渣であり、
    カード状である、分散組成物。
  2. 液相が香気成分を含有する、請求項1に記載の分散組成物。
  3. 液相が水相および香気成分を含有する油相を含む、請求項2に記載の分散組成物。
  4. 微生物細胞加工物が、酵母エキスを抽出した残渣にプロテアーゼおよび/またはセルラーゼを反応させた加工物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分散組成物。
  5. 加熱した、肉類、種実類または穀類の香りを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分散組成物。
  6. 調味料組成物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分散組成物。
  7. プロリンを3.0重量%以上含む酵母由来の酵母エキスと菜種油との混合物を、105℃で30分間または120℃で60分間加熱して得られた加熱混合物を含む、食品に、ごままたは焼いた餅の香りを付与するための調味料組成物。
  8. プロリンを3.0重量%以上含む酵母由来の酵母エキスと菜種油との混合物を105℃で30分間または120℃で60分間加熱して加熱混合物を得る工程を含み、得られた加熱混合物を調味料組成物とする、ごままたは焼いた餅の香りを有する調味料組成物の製造方法。
  9. 液相が、酵母エキスと植物油脂類との混合物を加熱して得られた加熱混合物、または請求項7に記載の調味料組成物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分散組成物。
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