JP6846931B2 - 高脂血症を処置するためのpcsk9阻害剤の使用 - Google Patents

高脂血症を処置するためのpcsk9阻害剤の使用 Download PDF

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Description

本発明は、脂質およびリポタンパク質レベル上昇に関連する疾患および障害の治療的処置の分野に関する。より具体的には、本発明は、スタチン非応答性である患者、スタチン治療で制御不良である患者、スタチンに不耐性である患者、またはスタチン治療に対する有害反応歴を有する患者を含む、スタチン治療を受けていない高脂血症を有する患者を処置するためのPCSK9阻害剤の使用に関する。
高コレステロール血症、詳細には低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール(LDL−C)レベルの増加は、アテローム性動脈硬化症および冠動脈心疾患(CHD)発症の大きなリスクとなる(非特許文献1)。低密度リポタンパク質コレステロールは、コレステロール低下治療の主要標的とされており、妥当な代替治療エンドポイントとして受け入れられている。LDL−CレベルとCHD事象との強い直接的関係のため、LDL−Cレベルを低減させることがCHDリスクを低減させることは、非常に多くの研究によって立証されており;LDL−Cが1mmol/L(約40mg/dL)低減するごとに、心血管疾患(CVD)死亡率および罹病率は22%低下される。LDL−Cの低減が大きいほど事象の大きな低減が生じ、集中スタチン処置の標準スタチン処置に対する比較データは、心血管(CV)リスクが非常に高い患者ではLDL−Cレベルが低いほどその便益が大きいことを示唆している。
現行のLDL−C低下薬はとしては、スタチン、コレステロール吸収阻害剤(例えば、エゼチミブ[EZE])、フィブラート、ナイアシンおよび胆汁酸封鎖剤が挙げられる。生活習慣の改善および従来の薬物処置は、コレステロールレベルの低減に奏効することが多いが、全ての患者がそのようなアプローチで推奨標的コレステロールレベルを達成できるとは限らない。家族性高コレステロール血症(FH)などの様々な状態は、従来の治療の積極的な使用にもかかわらずLDL−Cレベルが低下しにくいようである。具体的には、コレステロール合成の阻害および肝LDL受容体のアップレギュレーションによってLDL−Cを低減させるスタチンでの処置は、LDL受容体が存在しないまたは欠損している患者には殆ど効果がないことがある。さらに、多くの患者は、スタチン非応答性であり、スタチン治療で制御不良であり、スタチンを耐容できず、および/またはスタチン関連副作用のため処方された治療スタチンレジメンを順守しない。高コレステロール血症は殆どが無症候性であるため、この障害を管理するために使用される薬剤のあらゆる不快な作用が患者コンプライアンスを弱める。いくつかのコホート研究において、1年の時点での報告されているスタチン治療順守率は26%〜85%の範囲であり、順守率の急速な低下が最初の数カ月以内に概して観察される。
したがって、患者のLDL−Cを低下させるための代替選択肢が当技術分野において必要とされている。
Sharrettら、2001、Circulation 104:1108〜1113
本発明は、例えば原発性高脂血症を含む、高脂血症を処置する方法を提供する。より詳細には、本発明の方法は、スタチン非応答性である患者、スタチン治療で制御不良である患者、スタチンに不耐性である患者、またはスタチン治療に対する有害反応歴を有する患者を含む、スタチン治療を受けていない高脂血症を有する患者の処置に有用である。
1つの態様によると、本発明の方法は、スタチン治療を受けていない患者にPCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上を投与することを含む。高脂血症を有する患者は、スタチン非応答性であるため、スタチン治療で制御不良であるため、スタチンに不耐性であるため、スタチン治療に対する有害反応歴を有するため、または何らかの他の理由のため、スタチン治療を受けていないことがある。
別の態様によると、本発明は、患者の高脂血症を処置する方法であって、PCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上を患者に投与することを含み、該患者のバックグラウンドスタチン治療が該PCSK9阻害剤の初回用量の投与前にまたは投与と同時に中止される前記方法を含む。
1つの態様によると、高脂血症を有する患者は、非家族性高コレステロール血症、ヘテロ接合性もしくはホモ接合性家族性高コレステロール血症、または混合型脂質異常症を有する患者を含む。特定の態様において、高脂血症を有する患者は、2型糖尿病も有する。
いくつかの実施形態において、PCSK9阻害剤は、一切の他の脂質修飾治療不在下で、単剤治療として患者に投与される。いくつかの実施形態において、PCSK9阻害剤は、他の非スタチン脂質修飾治療と併用して患者に投与される。
1つの態様によると、本発明の方法は、スタチン不耐性であるまたはスタチン治療に対する有害反応歴を有する患者にPCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上を投与することを含む。スタチン治療に対する有害反応の例としては、例えば、骨格筋痛、不快感、脱力および/または筋痙攣が挙げられる。したがって、特定の実施形態によると、本発明は、骨格筋痛、不快感、脱力または筋痙攣を誘導することなく患者の血清LDL−Cレベルを低減させる方法であって、例えば、患者のスタチン治療レジメンを中止することおよび該患者にPCSK9阻害剤を投与することによる前記方法を提供する。
本発明は、スタチン不耐性患者の血清LDL−Cレベルを低減させる方法であって、スタチンに不耐性であるまたはスタチン治療に対する有害反応歴を有する、中等度の、高いまたは非常に高い心血管リスクを有する患者を選択すること、および該患者にPCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上を投与することによる前記方法も提供する。
本発明は、スタチンに不耐性であるまたはスタチン治療に対する有害反応歴を有する患者の高脂血症を処置する方法であって、毎日の治療スタチンレジメン中に始まったまたは増した骨格筋関連症状を以前に経験したことがある、中等度の、高いまたは非常に高い心血管リスクを有する患者を選択すること、および該患者にPCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上を投与することによる前記方法も提供する。特定の実施形態によると、患者は、少なくとも2つの別個の毎日の治療スタチンレジメン(例えば、毎日の治療スタチンレジメンの少なくとも1つはスタチンの最低承認1日用量である)中に始まったまたは増した骨格筋関連症状を以前に経験したことがあることに基づいて選択される。
本発明は、スタチン治療を受けていない高脂血症を有する患者の処置に使用するための、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物も提供する。
1つの実施形態は、それを必要としている患者における高コレステロール血症を処置する方法であって、(a)スタチンに不耐性であるまたはスタチン治療に対する有害反応歴を有する患者を選択すること;および(b)該患者にPCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上を投与することを含む前記方法を提供する。
別の実施形態は、骨格筋痛、不快感、脱力または筋痙攣を誘導することなく患者の血清LDL−Cレベルを低減させる方法であって、(a)1種またはそれ以上のスタチンの最低承認1日用量の摂取中に始まったまたは増した骨格筋関連症状を経験したことがある患者を選択すること;および(b)該患者にPCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上を投与することを含み;それによって、骨格筋痛、不快感、脱力または筋痙攣を誘導することなく該患者の血清LDL−Cレベルを低減させる前記方法を提供する。
別の実施形態は、高コレステロール血症のスタチン不耐性患者の血清LDL−Cレベルを低減させる方法であって、(a)スタチンに不耐性であるまたはスタチン治療に対する有害反応歴を有する、中等度の、高いまたは非常に高い心血管リスクを有する患者を選択すること;および(b)該患者にPCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上を投与することを含む前記方法を提供する。
別の実施形態は、スタチンに不耐性であるまたはスタチン治療に対する有害反応歴を有する患者における高コレステロール血症を処置する方法であって、(a)毎日の治療スタチンレジメン中に始まったまたは増した骨格筋関連症状を以前に経験したことがある、中等度の、高いまたは非常に高い心疾患リスクを有する患者を選択すること;および(b)該患者にPCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上を投与することを含む前記方法を提供する。
いくつかの実施形態において、患者は、少なくとも2つの別個の毎日の治療スタチンレジメン中に始まったまたは増した骨格筋関連症状を以前に経験した。いくつかの実施形態において、毎日の治療スタチンレジメンの少なくとも1つは、スタチンの最低承認1日用量である。いくつかの実施形態において、毎日の治療スタチンレジメンの少なくとも1つは、ロバスタチン5mg/日、アトルバスタチン10mg/日、シンバスタチン10mg/日、ロバスタチン20mg/日、プラバスタチン40mg/日、フルバスタチン40mg/日、およびピタバスタチン2mg/日からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、PCSK9阻害剤は、スタチン治療不在下で患者に投与される。
1つの実施形態は、スタチンに不耐性である高コレステロール血症患者のスタチン使用量を削減しつつ、該患者の血清LDL−Cレベルを低減させる方法であって、(a)毎日の治療スタチンレジメンを受けているまたはを受けていた、スタチンに不耐性であるまたはスタチン治療に対する有害反応歴を有する患者を選択すること;(b)該患者の毎日の治療スタチンレジメンを中止すること;および(c)該患者にPCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上を投与することを含む前記方法を提供する。
いくつかの実施形態において、患者は、PCSK9阻害剤の投与前または投与時に、約70mg/dLより高い血清低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)レベルと定義される高コレステロール血症を示す。いくつかの実施形態において、患者は、PCSK9阻害剤の投与前または投与時に、約100mg/dLより高い血清低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)レベルと定義される高コレステロール血症を示す。
いくつかの実施形態において、患者は、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(heFH)を有する。いくつかの実施形態において、患者は、家族性高コレステロール血症でない(非FH)型の高コレステロール血症を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PCSK9阻害剤の投与前または投与時に、1%以上かつ5%未満の算定10年致死性心血管疾患リスクSCOREと定義される中等度の心血管リスクを有する。いくつかの実施形態において、患者は、PCSK9阻害剤の投与前または投与時に、5%以上の算定10年致死性心血管疾患リスクSCOREと定義される高い心血管リスクを、(i)中等度慢性腎疾患、(ii)標的臓器障害を有さない1型糖尿病、(iii)標的臓器障害を有さない2型糖尿病、および/または(iv)heFHのうち1つまたはそれ以上と共に有する。いくつかの実施形態において、患者は、PCSK9阻害剤の投与前または投与時に、(i)記録された冠動脈心疾患;(ii)虚血性脳卒中;(iii)末梢性脳卒中;(iv)末梢動脈疾患(PAD);(v)一過性脳虚血発作(TIA);(vi)腹部大動脈瘤;(vii)症状のない>50%の頸動脈閉塞;(viii)頸動脈内剥離;(ix)頸動脈ステント術;(x)腎動脈狭窄;(xi)腎動脈ステント術;(xii)標的臓器障害を有する1型糖尿病;および/または(xiii)標的臓器障害を有する2型糖尿病うちの1つまたはそれ以上と定義される非常に高い心血管リスクを有する。
いくつかの実施形態において、PCSK9阻害は、PCSK9に特異的に結合する抗体または抗原結合タンパク質である。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1/6を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖および軽鎖CDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2、3、4、7、8および10を有する重鎖および軽鎖CDRアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号6のアミノ酸配列を有するLCVRを含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2、3、4、7、8および10を有する重鎖および軽鎖CDRアミノ酸配列を含む抗体と同じ、PCSK9上のエピトープと結合する。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2、3、4、7、8および10を有する重鎖および軽鎖CDRアミノ酸配列を含む抗体とPCSK9との結合について競合する。
いくつかの実施形態において、PCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合タンパク質は、約75mgの用量で2週間に1回の頻度で患者に投与される。いくつかの実施形態において、5用量またはそれ以上の用量の後に測定される患者のLDL−Cが<70mg/dLである場合、約75mg用量が維持される。いくつかの実施形態において、5用量またはそれ以上の用量の後に測定される患者のLDL−Cが≧70mg/dLのままである場合、約75mg用量が中止され、その後、PCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が、約150mgの用量で2週間に1回の頻度で患者に投与される。いくつかの実施形態において、PCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合タンパク質は、約150mgの用量で2週間に1回の頻度で患者に投与される。
いくつかの実施形態において、PCSK9阻害剤は、非スタチン脂質修飾治療と併用して患者に投与される。幾つかの実施形態において、非スタチン脂質修飾治療は、エゼチミブ、フィブラート、ナイアシン、オメガ3脂肪酸、および胆汁酸樹脂からなる群から選択される治療薬を含む。
いくつかの実施形態において、前記方法は、1つまたはそれ以上の脂質成分の血清レベルを改善し、これは、(a)患者の低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の少なくとも35%の低減;(b)患者のアポリポタンパク質B(アポB)の少なくとも25%の低減;(c)患者の非高密度リポタンパク質コレステロール(非HDL−C)の少なくとも30%の低減;(d)患者の総コレステロールの少なくとも20%の低減;および(e)患者のリポタンパク質a(Lp(a))の少なくとも15%の低減からなる群から選択される。
1つの実施形態は、高コレステロール血症のスタチン不耐性患者の1つまたはそれ以上の脂質成分の血清レベルを改善する方法であって、(a)スタチンに不耐性であるまたはスタチン治療に対する有害反応歴を有する、中等度の、高いまたは非常に高い心血管リスクを有する患者を選択すること;および(b)抗PCSK9抗体の複数の用量を1用量当たり約75〜150mgの投薬量で2週間に約1回の投薬頻度で該患者に投与することを含み、抗PCSK9抗体での約24週間の処置後の、1つまたはそれ以上の脂質成分の血清レベルの改善が、(a)患者の低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の少なくとも35%の低減;(b)患者のアポリポタンパク質B(アポB)の少なくとも25%の低減;(c)患者の非高密度リポタンパク質コレステロール(非HDL−C)の少なくとも30%の低減;(d)患者の総コレステロールの少なくとも20%の低減;および(e)患者のリポタンパク質a(Lp(a))の少なくとも15%の低減からなる群から選択される前記方法を提供する。
本発明の別の実施形態は、それを必要としている患者における高コレステロール血症を処置する方法であって、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物を単剤治療として該患者に投与することを含み、ここで、該組成物は隔週投与され、該患者は別の脂質修飾治療を同時に用いておらず、それによって該患者における高コレステロール血症を処置する前記方法を提供する。
本発明の別の実施形態は、それを必要としている患者のLDL−Cを低減させる方法であって、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物を単剤治療として該患者に投与することを含み、ここで、該組成物は隔週投与され、該患者は別の脂質修飾治療を同時に用いておらず、それによって該患者のLDL−Cを低減させる前記方法を提供する。
本発明の別の実施形態は、患者の低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)レベルを一定に維持する方法であって、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物を約75mgの初期用量で単剤治療として該患者に投与することを含み、ここで、該組成物は隔週投与され、該患者は別の脂質修飾治療を同時に用いておらず、それによって該患者のLDL−Cレベルを一定に維持する前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、PCSK9阻害剤は、患者に少なくとも24週間投与され、患者のLDL−Cレベルは、20週間、一定に維持される。
単剤治療としてのPCSK9阻害剤の投与を提供するいくつかの実施形態において、患者は、スタチンに不耐性であるか、またはスタチン治療に対する有害反応歴を有する。いくつかの実施形態において、患者は、少なくとも2つの別個の毎日の治療スタチンレジメン中に始まったまたは増した骨格筋関連症状を以前に経験した。いくつかの実施形態において、毎日の治療スタチンレジメンの少なくとも1つは、スタチンの最低承認1日用量である。いくつかの実施形態において、毎日の治療スタチンレジメンの少なくとも1つは、ロバスタチン5mg/日、アトルバスタチン10mg/日、シンバスタチン10mg/日、ロバスタチン20mg/日、プラバスタチン40mg/日、フルバスタチン40mg/日、およびピタバスタチン2mg/日からなる群から選択される。
単剤治療としてのPCSK9阻害剤の投与を提供するいくつかの実施形態において、患者は、PCSK9阻害剤の投与前または投与時に、約70mg/dLより高い血清低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)レベルと定義される高コレステロール血症を示す。
単剤治療としてのPCSK9阻害剤の投与を提供するいくつかの実施形態において、患者は、PCSK9阻害剤の投与前または投与時に、約100mg/dLより高い血清低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)レベルと定義される高コレステロール血症を示す。
単剤治療としてのPCSK9阻害剤の投与を提供するいくつかの実施形態において、患者は、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(heFH)を有する。単剤治療としてのPCSK9阻害剤の投与を提供するいくつかの実施形態において、患者は、家族性高コレステロール血症でない(非FH)型の高コレステロール血症を有する。いくつかの実施形態において、患者は、PCSK9阻害剤の投与前または投与時に、1%以上かつ5%未満の算定10年致死性心血管疾患リスクSCOREと定義される中等度の心血管リスクを有する。いくつかの実施形態において、患者は、PCSK9阻害剤の投与前または投与時に、5%以上の算定10年致死性心血管疾患リスクSCOREと定義される高い心血管リスクを、(i)中等度慢性腎疾患、(ii)標的臓器障害を有さない1型糖尿病、(iii)標的臓器障害を有さない2型糖尿病、および/または(iv)heFHのうちの1つまたはそれ以上と共に有する。いくつかの実施形態において、患者は、PCSK9阻害剤の投与前または投与時に、(i)記録された冠動脈心疾患;(ii)虚血性脳卒中;(iii)末梢性脳卒中;(iv)末梢動脈疾患(PAD);(v)一過性脳虚血発作(TIA);(vi)腹部大動脈瘤;(vii)症状のない>50%の頸動脈閉塞;(viii)頸動脈内剥離;(ix)頸動脈ステント術;(x)腎動脈狭窄;(xi)腎動脈ステント術;(xii)標的臓器障害を有する1型糖尿病;および/または(xiii)標的臓器障害を有する2型糖尿病うちの1つまたはそれ以上と定義される非常に高い心血管リスクを有する。
単剤治療としてのPCSK9阻害剤の投与を提供するいくつかの実施形態において、PCSK9阻害は、PCSK9に特異的に結合する抗体または抗原結合タンパク質である。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1/6を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖および軽鎖CDRを含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2、3、4、7、8および10を有する重鎖および軽鎖CDRアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号6のアミノ酸配列を有するLCVRを含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2、3、4、7、8および10を有する重鎖および軽鎖CDRアミノ酸配列を含む抗体と同じ、PCSK9上のエピトープと結合する。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2、3、4、7、8および10を有する重鎖および軽鎖CDRアミノ酸配列を含む抗体とPCSK9との結合について競合する。
単剤治療としてのPCSK9阻害剤の投与を提供するいくつかの実施形態において、PCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合タンパク質は、約75mgの用量で2週間に1回の頻度で患者に投与される。いくつかの実施形態において、5用量またはそれ以上の用量の後に測定される患者のLDL−Cが<70mg/dLである場合、約75mg用量が維持される。いくつかの実施形態において、5用量またはそれ以上の用量の後に測定される患者のLDL−Cが≧70mg/dLのままである場合、約75mg用量が中止され、その後、PCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が約150mgの用量で2週間に1回の頻度で患者に投与される。いくつかの実施形態において、PCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合タンパク質は、約150mgの用量で2週間に1回の頻度で患者に投与される。
単剤治療としてのPCSK9阻害剤の投与を提供するいくつかの実施形態において、前記方法は、1つまたはそれ以上の脂質成分の血清レベルを改善し、これは、(a)患者の低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の少なくとも35%の低減;(b)患者のアポリポタンパク質B(アポB)の少なくとも25%の低減;(c)患者の非高密度リポタンパク質コレステロール(非HDL−C)の少なくとも30%の低減;(d)患者の総コレステロールの少なくとも20%の低減;および(e)患者のリポタンパク質a(Lp(a))の少なくとも15%の低減からなる群から選択される。
1つの実施形態は、患者の遊離PCSK9レベルを低減させる方法であって、抗PCSK9抗体または抗原結合タンパク質を含む医薬組成物を約75mgの用量で単剤治療として該患者に投与することを含み、ここで、該組成物は隔週投与され、該患者は別の脂質低下治療を同時に用いておらず、それによって該患者の遊離PCSK9レベルを低減させる前記方法を提供する。
1つの実施形態は、それを必要としている患者の1つまたはそれ以上の脂質成分の血清レベルを改善する方法であって、抗PCSK9抗体の複数の用量を1用量当たり約75〜150mgの投薬量で2週間に約1回の投薬頻度で単剤治療として該患者に投与することを含み、ここで、該患者は別の脂質修飾治療を同時に用いておらず、抗PCSK9抗体での約24週間の処置後の、1つまたはそれ以上の脂質成分の血清レベルの改善は(a)患者の低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の少なくとも35%の低減;(b)患者のアポリポタンパク質B(アポB)の少なくとも25%の低減;(c)患者の非高密度リポタンパク質コレステロール(非HDL−C)の少なくとも30%の低減;(d)患者の総コレステロールの少なくとも20%の低減;および(e)患者のリポタンパク質a(Lp(a))の少なくとも15%の低減からなる群から選択される前記方法を提供する。
本発明の他の実施形態は、後に続く詳細な説明の再考から明らかになるであろう。
実施例2に記載の治験の研究デザインを示す図である。プロトコールは、アップタイトレーションに≧100mg/dLのLDL−C閾値を求めるものであったが、この研究では盲検下で≧70mg/dLの閾値を適用した。図の底部に沿った矢印は、評価時を示す。EOT、処置の終了;EZE、エゼチミブ;LDL−C、低密度リポタンパク質コレステロール;NCEP ATP III TCP、ナショナルコレステロール教育プログラム成人治療パネルIII;Q2W、隔週;W、週。 実施例2に記載の治験の患者内訳を示す図である。継続を非常に困難にしたライフイベント。ITT、治療企図。 実施例2に記載の治験についての研究時点に対するLDL−Cレベル(mg/dL)(オントリートメント解析)を示すグラフである。第12週および第24週データ点の上の値は、ベースラインからのLS平均(SE)変化%を示す。LDL−C、低密度リポタンパク質コレステロール;LS、最小二乗;SE、標準誤差。 実施例2に記載の治験においてmAb316P(アリロクマブ)で処置した患者のベースラインから第12週(図4A)および第24週(図4B)まで、ならびにエゼチミブで処置した患者のベースラインから第12週(図4C)および第24週(図4D)までの、LDL−Cの変化率の分布(オントリートメント集団)を示す4グラフの群の図である。 図4−1の続き。 実施例2に記載の治験についての人口統計(図5A)および他のベースライン特性による(図5B)、第24週におけるLDL−Cのベースラインからの変化率のサブグループ解析(ITT集団)を示す2チャートの群の図である。 図5−1の続き。 実施例2に記載の治験におけるmAb316P処置患者の平均LDL−Cレベル(図6A)、CtroughおよびCfollow−upmAb316P(アリロクマブ)濃度(図6B)ならびに遊離PCSK9レベル(図6C)をアップタイトレーション状態に従って例証する一連のグラフを示す図である。Ctrough値は、以前の注射の14±6日後に得た;Cfollow−up値は、最終注射の>21日後に得た。三角形は、第12週にアップタイトレーションを受けた群を表す。四角形は、第12週にアップタイトレーションを受けていない群を表す。 図6−1の続き。 本明細書中の実施例3に記載の治験を例証する研究流れ図である。「REGN727」は、本明細書中でアリロクマブまたはmAb316Pと呼ぶ抗体の呼称である。
本発明を説明する前に、本発明は説明する特定の方法および実験条件に限定されないことを理解すべきである。そのような方法および条件は変わることがあるからである。本明細書において用いる専門用語は、特定の実施形態の説明を目的にしたものに過ぎず、限定的することを意図したものでないことも理解すべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるからである。
定義
別段の定義がない限り、本明細書において用いる全ての専門および科学用語は、当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈による別段の明白な指図がない限り、複数の指示内容も含む。
用語「約」または「おおよそ」は、特定の列挙されている数値に関して用いる場合、その値が、列挙されている値から1%以下変動することがあることを意味する。例えば、本明細書において用いる場合、「約100」という表現は、99および101、ならびに間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
用語「投与する」または「投与」は、粘膜、皮内、静脈内、皮下、筋肉内送達および/または本明細書に記載のもしくは当技術分野において公知の任意の他の物理的送達方法などによって、体外に存在する物質(例えば、本発明の製剤)を患者に注射するまたは別様に物理的に送達する行為を指す。疾病またはその症状が処置されているとき、物質の投与は、概して疾患またはその症状の発現後に行われる。疾病またはその症状が予防されているとき、物質の投与は、概して疾患またはその症状の発現前に行われる。
用語「組成物」および「製剤」は、指定成分(例えば、抗PCSK9抗体)を場合により指定量で含有する製品はもちろん、指定成分の、場合により指定量での、組合せの結果として直接的または間接的に得られる任意の製品も包含することを意図したものである。
用語「賦形剤」は、薬物のための希釈剤、ビヒクル、保存薬、結合剤、安定剤などとして一般に用いられる不活性物質を指し、タンパク質(例えば、血清アルブミンなど)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、グリシン、ヒスチジンなど)、脂肪酸およびリン脂質(例えば、アルキルスルホネート、カプリレートなど)、界面活性剤(例えば、SDS、ポリソルベート、非イオン性界面活性剤など)、糖類(例えば、スクロース、マルトース、トレハロースなど)ならびにポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトールなど)を含むが、これらに限定されない。Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)Mack Publishing Co.、Easton、Pa.も参照されたい。前記参考文献は、参照によってその全体が本明細書に組み入れられている。
ペプチドまたはポリペプチドとの関連で、用語「断片」は、完全長未満のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチドを指す。そのような断片は、例えば、アミノ末端でのトランケーションから生じることもあり、カルボキシ末端でのトランケーションから生じることもあり、および/またはアミノ酸配列からの残基の内部欠失から生じることもある。断片は、例えば、選択的RNAスプライシングの結果として生じることもあり、またはインビボプロテアーゼ活性の結果として生じることもある。特定の実施形態において、PCSK9断片は、PCSK9ポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも50、少なくとも100アミノ酸残基、連続する少なくとも125アミノ酸残基、連続する少なくとも150アミノ酸残基、連続する少なくとも175アミノ酸残基、連続する少なくとも200アミノ酸残基、または連続する少なくとも250アミノ酸残基のアミノ酸配列を含む、ポリペプチドを含む。特異的実施形態において、PCSK9ポリペプチドの断片、またはPCSK9抗原と特異的に結合する抗体の断片は、完全長ポリペプチドまたは抗体の少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つの機能を保持する。
用語「医薬的に許容される」は、動物での使用、さらに特にヒトでの使用が、連邦もしくは州政府の監督官庁によって承認されていること、または米国薬局方、欧州薬局方または他の一般に認知されている薬局方に記載されていることを意味する。
用語「予防する」、「予防すること」および「予防」は、本明細書において提供する治療または治療の組合せ(例えば、予防薬と治療薬の組合せ)の投与の結果として生じる、PCSK9媒介疾患および/またはそれに関連した症状の発症、再発、発現または伝播の完全または部分的阻害を指す。
用語「PCSK9抗原」は、抗体が特異的に結合する、PCSK9ポリペプチドの部分を指す。PCSK9抗原は、抗体が特異的に結合するPCSK9ポリペプチドまたはその断片の、類似体または誘導体も指す。いくつかの実施形態において、PCSK9抗原は、単量体PCSK9抗原または三量体PCSK9抗原である。エピトープに寄与するPCSK9ポリペプチドの領域は、該ポリペプチドの連続したアミノ酸であることもあり、または該エピトープは、該ポリペプチドの連続していない2つまたはそれ以上の領域からの寄せ集めであることもある。このエピトープは、抗原の三次元表面特徴部であることもあり、またはそうでないこともある。免疫応答を惹起することができる、PCSK9抗原の表面に局在する領域が、PCSK9エピトープである。このエピトープは、抗原の三次元表面特徴部であることもあり、またはそうでないこともある。
用語「ヒトPCSK9」、「hPCSK9」または「hPCSK9ポリペプチド」および同様の用語は、配列番号198のアミノ酸配列を含むポリペプチド(「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」を本明細書では同義で用いている)および関連ポリペプチド(そのSNP変異体を含む)を指す。関連ポリペプチドは、対立遺伝子変異体(例えば、SNP変異体);スプライス変異体;断片;誘導体;置換、欠失および挿入変異体;融合ポリペプチド;ならびに種間相同体、好ましくは、PCSK9活性を保持する、および/または抗PCSK9免疫応答を生じさせるのに十分なものであるものを含む。抗PCSK9免疫学的応答を生じさせるのに十分なものである、PCSK9の可溶性形態も包含する。当業者には分かるであろうが、抗PCSK9抗体は、PCSK9ポリペプチド、ポリペプチド断片、抗原、および/またはエピトープと結合することができる。エピトープは、より大きい抗原の一部であり、そのより大きい抗原は、より大きなポリペプチド断片の一部であり、そしてまたそのより大きいポリペプチド断片は、より大きいポリペプチドの一部であるからである。hPCSK9は、三量体(ネイティブ)または単量体(変性)形態で存在することができる。
用語「PCSK9媒介疾患」、「PCSK9媒介状態」および「PCSK9媒介障害」は同義で用いており、PCSK9、例えばhPCSK9、に完全にもしくは部分的に起因する、またはPCSK9、例えばhPCSK9、の結果である、任意の疾患を指す。特定の実施形態において、PCSK9は、異常に(例えば高度に)発現される。いくつかの実施形態において、PCSK9は、異常にアップレギュレートされる。他の実施形態では、正常な、異常なまたは過剰な細胞シグナル伝達がPCSK9のPCSK9リガンドとの結合によって引き起こされる。特定の実施形態において、PCSK9リガンドは、PCSK9受容体である。特定の実施形態において、PCSK9媒介疾患または状態は、総コレステロールレベル上昇;低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)レベル上昇;高脂血症;脂質異常症;高コレステロール血症、特に、スタチンによって制御されていない高コレステロール血症、高コレステロール血症、例えば家族性高コレステロール血症または非家族性高コレステロール血症、およびスタチンによって制御されていない高コレステロール血症;アテローム性動脈硬化症;ならびに心血管疾患からなる群から選択される。
用語「被験者」および「患者」は、同義で用いている。本明細書で用いる場合、被験者は、好ましくは哺乳動物、例えば非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)または霊長類(例えば、サルおよびヒト)、最も好ましくはヒトである。1つの実施形態において、被験者は、PCSK9媒介疾患を有する哺乳動物、好ましくはヒトである。別の実施形態において、被験者は、PCSK9媒介疾患を発症するリスクがある哺乳動物、好ましくはヒトである。
用語「治療薬」は、PCSK9媒介疾患および/またはそれに関連した症状の処置、管理または改善に使用することができる任意の薬剤を指す。特定の実施形態において、用語「治療薬」は、本発明のPCSK9抗体を指す。特定の他の実施形態において、用語「治療薬」は、本発明のPCSK9抗体以外の薬剤を指す。好ましくは、治療薬は、PCSK9媒介疾患またはそれに関連した1つもしくはそれ以上の症状の処置、管理または改善に、有用であることが公知である、使用されたことがある、または現在使用されている薬剤である。
用語「治療」は、PCSK9媒介疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症または高コレステロール血症)の予防、管理、処置および/または改善に使用することができる任意のプロトコール、方法および/または薬剤を指す。特定の実施形態において、用語「治療」(複数および単数)は、医療関係者などの当業者に公知のPCSK9媒介疾患の予防、管理、処置および/または改善に有用な生物学的治療、支持的治療および/または他の治療を指す。
用語「処置する」、「処置」および「処置すること」は、1つまたはそれ以上の治療の投与(1つまたはそれ以上の予防または治療薬の投与を含むが、これらに限定されない)の結果として生じる、PCSK9媒介疾患の進行、重症度および/または継続期間の低減または改善を指す。特異的実施形態において、そのような用語は、PCSK9のPCSK9リガンドとの結合の低減または阻害を指す。
本明細書に記載のものと同様または等価の任意の方法および材料を本発明の実施の際に使用することができるが、好ましい方法および材料を次に説明する。本明細書において言及する全ての出版物は、それら全体が説明のために参照によって本明細書に組み入れられている。
患者選択
本発明は、とりわけ、スタチン非応答性である患者、スタチン治療で制御不良である患者、スタチンに不耐性である患者またはスタチン治療に対する有害反応歴を有する患者を含む、スタチン治療を受けていない高脂血症を有する患者の処置に有用な、方法および組成物を含む。
本発明の方法は、PCSK9媒介疾患または状態、例えば、高脂血症または関連障害(例えば、アテローム性動脈硬化症)を有する、または発症するリスクがある患者を選択すること、およびPCSK9阻害剤を含む医薬組成物をこれらの患者に投与することを含む。例えば、患者が、例えばヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(heFH)、ホモ接合性家族性高コレステロール血症(hoFH)、常染色体優性高コレステロール血症(ADH、例えば、PCSK9遺伝子の1つまたはそれ以上の機能獲得型突然変異に関連するADH)、非家族性高コレステロール血症(非FH)、脂質異常症、および混合型脂質異常症などの、高脂血症状態と診断された、または高脂血症状態を発症するリスクがあると識別された場合、その患者を本発明の方法での処置に選択することができる。特定の態様において、処置すべき患者には、LDLアフェレーシスが指示される。特定の態様において、高脂血症を有する患者は、2型糖尿病も有する。特定の態様において、処置すべき患者は、高コレステロール血症と診断され、スタチン不耐性であるか、スタチン非応答性であるか、またはスタチンで制御されない。本明細書において用いる場合、高脂血症は、原発性高脂血症、二次性高脂血症、およびフレドリクソン表現型クラスI〜Vを含む。
本明細書において用いる場合、「それを必要としている患者」という表現は、高脂血症の1つもしくはそれ以上の症状もしくは徴候を示す、または高脂血症と診断された、または別様に全血清コレステロール、LDL、トリグリセリド、VLDL、リポタンパク質(a)[Lp(a)]の低減による便益があるであろう、またはHDLの増加による便益があるであろう、ヒトまたは非ヒト動物を意味する。
本発明の方法は、現在スタチン治療を受けていない患者を選択することを含む。本明細書において用いる場合、スタチン治療は、HMG−CoAレダクターゼの阻害剤であり、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチンなどを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、PCSK9阻害剤の用量が患者に投与され、PCSK9阻害剤の初回用量の投与前または投与と同時に、患者の以前の(または「バックグラウンド」)スタチン治療は中止される。
特定の実施形態によると、中等度の、高い、または非常に高いCVリスクを有することに基づいて患者を選択することができる。CVリスク度は、ESC/EAS Guidelines for the Management of Dislipidaemias、European Heart Journal、2100;32:1769〜1818(本明細書では「ESC/EAS 2011」と呼ぶ)(この参考文献の開示は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられている)に示されているように、欧州心臓学会(ESC)および欧州アテローム性動脈硬化症学会(EAS)の脂質異常症管理のための特別委員会によって定義された算定10年致死性心血管疾患(CVD)リスクSCORE値によって評価し、表現することができる。本明細書において用いる場合、「中等度のCVリスク」は、1%以上かつ5%未満の算定10年致死性CVDリスクSCOREを意味する。本明細書において用いる場合、「高いCVリスク」は、5%以上の算定10年致死性CVDリスクSCORE、および/または中等度腎疾患(CKD)、および/または標的臓器障害を有さない1型もしくは2型糖尿病、および/またはheFHを意味する。本明細書において用いる場合、「非常に高いCVリスク」は、記録された冠動脈心疾患(CHD)歴、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患(PAD)、一過性脳虚血発作(TIA)、腹部大動脈瘤、症状のない50%より大きい頸動脈閉塞、頸動脈内剥離もしくは頸動脈ステント術、腎動脈狭窄、腎動脈ステント術、および/または標的臓器障害を有する1型もしくは2型糖尿病を意味する。
特定の実施形態によると、冠動脈心疾患(CHD)歴を有することに基づいて患者を選択することができる。本明細書において用いる場合、「CHD歴」(または「記録されたCHD歴」)は、(i)急性心筋梗塞(MI);(ii)無症候性MI;(iii)不安定狭心症;(iv)冠動脈血行再建術(例えば、経皮的冠動脈形成術[PCI]もしくは冠動脈バイパス移植術[CABG]);および/または(v)侵襲的もしくは非侵襲的検査(例えば、冠動脈造影法、トレッドミルを使用する負荷テスト、負荷心エコー検査または核イメージング)によって診断された臨床的に有意なCHDのうちの1つまたはそれ以上を含む。
特定の実施形態によると、年齢(例えば、40、45、50、55、60、65、70、75または80歳より高齢)、人種、出身国、性別(男性または女性)、運動習慣(例えば、運動する習慣のある人、運動しない人)、他の既存の病状(例えば、II型糖尿病、高血圧など)および現在の投薬状態(例えば、現在摂取しているβ遮断薬、ナイアシン、エゼチミブ、フィブラート、オメガ3脂肪酸、胆汁酸樹脂など)からなる群から選択される1つまたはそれ以上の追加のリスク因子を有することに基づいて患者を選択することができる。
本発明の方法は、スタチン治療を受けていない患者にPCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上を投与することを含む。高脂血症を有する患者は、スタチン非応答性であるため、スタチン治療で制御不良であるため、スタチンに不耐性であるため、スタチン治療に対して有害反応歴を有するため、または何らかの他の理由のため、スタチン治療を受けていないこともある。
生活習慣の改善および従来の薬物処置は、コレステロールレベルの低減に奏効することが多いが、全ての患者がそのようなアプローチで推奨標的コレステロールレベルを達成できるとは限らない。家族性高コレステロール血症(FH)などの様々な状態は、従来の治療の積極的使用にもかかわらず、LDL−Cが低下しにくいようである。ホモ接合性およびヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(hoFH、heFH)は、早発性アテローム硬化性血管疾患に関連する状態である。しかし、hoFHと診断された患者は、大部分が従来の薬物治療に不応答性であり、持てる処置の選択肢は限られている。具体的には、コレステロール合成の阻害および肝LDL受容体のアップレギュレーションによってLDL−Cを低減させるスタチンでの処置は、LDL受容体が存在しないまたは欠損している患者には殆ど効果がないことがある。スタチンの最大用量で処置された、遺伝子型でhoFHが確認された患者において、わずか約20%にも満たない平均LDL−C低減が最近報告された。このレジメンにエゼチミブ10mg/日を追加した結果、合計27%のLCL−Cレベル低減となったが、このレベルでさえ最適には程遠い。同様に、多くの患者は、スタチン非応答性であるか、またはスタチン治療で制御不良である。
いくつかの態様において、本発明の方法は、「スタチン不耐性」または「スタチンに不耐性」である患者にPCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上を投与することを含む。本明細書において用いる場合、患者は、毎日のスタチン治療レジメン中に始まりまたは増し、スタチン治療を中止すると停止した1つまたはそれ以上の有害反応の経験歴を有する場合、「スタチン不耐性」または「スタチンに不耐性」とみなされる。特定の実施形態において、有害反応は、本質的に骨格筋のもの、例えば、骨格筋痛、鈍痛、脱力または筋痙攣(例えば、筋肉痛、ミオパチー、横紋筋融解など)である。特定の実施形態において、有害反応は、運動または労作後に起こるまたは激化される骨格筋痛または鈍痛である。スタチン関連有害反応は、スタチン投与と相関する肝、胃腸および精神症状も含む。特定の実施形態によると、患者は、少なくとも2つの異なる別個の毎日のスタチン治療レジメンに関連する骨格筋関連症状歴を有する場合、「スタチン不耐性」または「スタチンに不耐性」と判断される。特定の実施形態によると、患者は、1種またはそれ以上のスタチンの最低承認1日用量に対して1つまたはそれ以上のスタチン関連有害反応を示す場合、「スタチン不耐性」または「スタチンに不耐性」である。特定の実施形態において、患者は、最低承認錠剤サイズの7倍の累積週間スタチン用量を耐容できない場合、「スタチン不耐性」または「スタチンに不耐性」である。本発明の他の実施形態によると、患者は、低用量スタチン治療を耐容できるが(例えば、標的LDL−Cレベルに達するように)用量が増加されると症状を発症する場合、「スタチン不耐性」または「スタチンに不耐性」である。
本発明によると、「少なくとも2種の異なる別個のスタチンの摂取に関連する骨格筋関連症状歴」は、スタチン治療中に始まりまたは増し、スタチン治療を中止すると停止した、骨格筋関連疼痛、鈍痛、脱力および/または筋痙攣を含む。本発明に関連して、スタチン不耐性に関連する例示的スタチン治療としては、ロバスタチン5mg/日、アトルバスタチン10mg/日、シンバスタチン10mg/日、ロバスタチン20mg/日、プラバスタチン40mg/日、フルバスタチン40mg/日、およびピタバスタチン2mg/日からなる群から選択される、毎日の治療スタチンレジメンを挙げることができる。
本発明の方法で処置することができる患者は、1つまたはそれ以上の他の非スタチン脂質修飾治療を受けていることもある。あるいは、彼らは、他の脂質修飾治療を受けていないこともあり、この場合のPCSK9阻害剤の投与は、単剤治療と記載することもある。本明細書において用いる場合、「単剤治療」としてのPCSK9阻害剤の使用は、一切の他の併用脂質修飾治療が不在の状態を意味する。
高脂血症を処置するおよび血清LDL−Cレベルを低減させる方法
特定の実施形態によると、本発明の方法によって処置可能である患者は、高コレステロール血症を含む高脂血症を有する(本明細書では「高コレステロール血症患者」と呼ぶこともある)。「高コレステロール血症」は、本明細書において用いる場合、患者の心血管リスク(「CVリスク」)に依存して、70mg/dL以上の血清LDL−C濃度、または100mg/dL以上の血清LDL−C濃度を含む。例えば、非常に高いCVリスクを有する患者(本明細書中の他の箇所で定義する通り)については、患者の血清LDL−C濃度が約70mg/dL以上である場合、その患者は高コレステロール血症を有するとみなされる。中等度のまたは高いCVリスクを有する患者(本明細書中の他の箇所で定義する通り)については、患者の血清LDL−C濃度が約100mg/dL以上である場合、その患者は高コレステロール血症を有するとみなされる。
高コレステロール血症は、本発明では、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(heFH)、ホモ接合性家族性高コレステロール血症(hoFH)、常染色体優性高コレステロール血症(ADH、例えば、PCSK9遺伝子の1つまたはそれ以上の機能獲得型突然変異に関連するADH)はもちろん、家族性高コレステロール血症とは異なる高コレステロール血症(非FH)の発生も含む。
本発明は、患者の血清LDL−Cレベルを低減させる方法を含む。患者は、高コレステロール血症のスタチン不耐性患者であり、または血清LDL−Cの低減が有益もしくは望ましいと判断される任意の他の患者である。同様に、本発明は、骨格筋痛、不快感、脱力または筋痙攣を誘導することなく患者の血清LDL−Cレベルを低減させる方法を含む。この文脈で用いる場合の「血清LDL−Cレベルを低減させること」は、患者の血清LDL−Cレベルを少なくとも10%(例えば、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%またはそれ以上)減少させることを意味する。
スタチン使用量を削減するまたは低減させる方法
本発明は、とりわけ、高コレステロール血症患者、例えばスタチンに不耐性である高コレステロール血症患者を含む、高脂血症を有する患者のスタチン使用量の削減または低減に有用な、方法および組成物を含む。本発明のこの態様による方法は、(a)毎日の治療スタチンレジメンを受けているまたはを受けていた、スタチンに不耐性であるまたはスタチン治療に対する有害反応歴を有する患者を選択すること;および(b)該患者の毎日の治療スタチンレジメンを中止するまたは低減させること;および(c)該患者にPCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上を投与することを含む。本発明のこの態様の特定の実施形態によると、患者の毎日の治療スタチンレジメンは、PCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上の患者への投与を含む処置の治療コース開始時または開始直前に完全に中止されることもある。他の実施形態において、患者の毎日の治療スタチンレジメンは、PCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上の患者への投与を含む処置の治療コース開始時または開始直前に漸減されることもある。本発明のこの態様に関連して、スタチンレジメンの漸減は、患者に投与するスタチンの量を低減させることおよび/または患者へのスタチンの投与頻度を減少させることを含むこともある。本発明のこの態様によるスタチンレジメンの漸減は、患者がスタチンの代わりにPCSK9阻害剤を受けているときに該患者によるスタチン使用量の完全削減をもたらすこともある。この点において、患者によるスタチン使用量を低減させるまたは削減する上に、PCSK9阻害剤の投与によって患者の高コレステロール血症の適切な処置をなお可能にすることにより、患者に対するスタチンの有害作用は低減または削減される。
治療効能
本発明の方法は、LDL−C、アポB100、非HDL−C、総コレステロール、VLDL−C、トリグリセリド、Lp(a)および/またはレムナントコレステロールからなる群から選択される1つまたはそれ以上の脂質成分の血清レベルの低減と、アポA−1の増加をもたらす。
本発明の特定の実施形態によると、一切の他の脂質修飾治療不在下での、高コレステロール血症を有する患者へのPCSK9阻害剤を含む医薬組成物の投与は、ベースラインからの少なくとも約25%、30%、40%、45%、50%、60%もしくはそれ以上の血清低密度リポタンパクコレステロール(LDL−C)の平均低減率;ベースラインからの少なくとも約25%、30%、40%、50%、60%もしくはそれ以上のアポB100の平均低減率;ベースラインからの少なくとも約25%、30%、40%、50%、60%もしくはそれ以上の非HDL−Cの平均低減率;ベースラインからの少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%もしくはそれ以上の総コレステロールの平均低減率;および/またはベースラインからの少なくとも約2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%もしくはそれ以上のアポA−1の平均増加率をもたらすことになる。上に記載したような様々な脂質パラメータの低減率は、本明細書において開示するPCSK9阻害剤の投与を含む治療レジメン(例えば、2週間に1回投与される75mgもしくは150mg mAb316P、または他の同様の投与レジメン;例えば、本明細書中の実施例2を参照されたい)の開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30週間またはそれ以上で達成することができる。
特定の特異的実施形態によると、本発明は、一切の他の脂質修飾治療不在下で、高コレステロール血症患者の血清LDL−Cレベルを低減させる方法を含む。本発明のこの態様による方法は、(a)中等度の心血管リスクがあり、いずれの他の脂質修飾治療も受けていない、100mg/dL(2.59mmol/L)〜190mg/dL(4.9mmol/L)の間のLDL−Cを有する患者を選択すること;および(b)抗PCSK9抗体の複数の用量を1用量当たり約75〜150mgの投薬量で2週間に約1回の投薬頻度で該患者に投与することを含み、この場合、抗PCSK9抗体での約24週間の処置後、患者は、ベースラインから約47%のLDL−Cレベルの低減、ベースラインから約41%の非HDL−Cレベルの低減、ベースラインから約37%のアポBレベルの低減、および/またはベースラインから約30%の総コレステロールレベルの低減からなる群から選択される1つまたはそれ以上の脂質パラメータ改善を示す。本発明のこの態様による方法は、抗PCSK9抗体での処置開始前または開始と同時に患者のバックグラウンド脂質修飾治療を中止することを含むこともある。
本発明の方法は、LDL−C、アポB100、非HDL−C、総コレステロール、VLDL−C、トリグリセリド、Lp(a)および/またはレムナントコレステロールからなる群から選択される1つまたはそれ以上の脂質成分の血清レベルの低減をもたらす。例えば、本発明の特定の実施形態によると、スタチンに不耐性であるまたはスタチン治療に対する有害反応歴を有する、高コレステロール血症を有する患者(本明細書では「高コレステロール血症のスタチン不耐性患者」とも呼ぶ)へのPCSK9阻害剤を含む医薬組成物の投与は、ベースラインからの少なくとも約25%、30%、40%、45%、50%、60%もしくはそれ以上の血清低密度リポタンパクコレステロール(LDL−C)の平均低減率;ベースラインからの少なくとも約25%、30%、40%、50%、60%もしくはそれ以上のアポB100の平均低減率;ベースラインからの少なくとも約25%、30%、40%、50%、60%もしくはそれ以上の非HDL−Cの平均低減率;ベースラインからの少なくとも約10%、15%、20%、30%、35%もしくはそれ以上の総コレステロールの平均低減率;ベースラインからの少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%もしくはそれ以上のVLDL−Cの平均低減率;ベースラインから少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%もしくはそれ以上のトリグリセリド(例えば、空腹時トリグリセリド);および/またはベースラインから少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%もしくはそれ以上のLp(a)の平均低減率をもたらすことになる。上に記載したような様々な脂質パラメータの低減率は、本明細書において開示するPCSK9阻害剤の投与を含む治療レジメン(例えば、2週間に1回投与される75mgもしくは150mg mAb316P、または他の同様の投与レジメン;例えば、本明細書中の実施例3を参照されたい)の開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30週間またはそれ以上で達成することができる。
特定の特異的実施形態によると、本発明は、高コレステロール血症のスタチン不耐性患者の血清LDL−Cレベルを低減させる方法を含む。本発明のこの態様による方法は、(a)スタチンに不耐性であるまたはスタチン治療に対する有害反応歴を有する、中等度の、高いまたは非常に高い心血管リスクを有する患者を選択すること;および(b)抗PCSK9抗体の複数の用量を1用量当たり約75〜150mgの投薬量および2週間に約1回の投薬頻度で該患者に投与することを含み、この場合、抗PCSK9抗体での約24週間の処置後、患者は、ベースラインからの約45%のLDL−Cレベルの低減、ベースラインからの約40%の非HDL−Cレベルの低減、ベースラインからの約36%のアポBレベルの低減、および/またはベースラインからの約26%のLp(a)レベルの低減からなる群から選択される1つまたはそれ以上の脂質パラメータ改善を示す。本発明のこの態様による方法は、抗PCSK9抗体での処置開始前または開始と同時に患者のバックグラウンドスタチン治療を中止することを含むことがある。
PCSK9阻害剤
本発明の方法は、PCSK9阻害剤を含む治療用組成物を患者に投与することを含む。本明細書において用いる場合、「PCSK9阻害剤」は、ヒトPCSK9と結合し、またはヒトPCSK9と相互作用し、かつインビボまたはインビトロでPCSK9の正常な生物学的機能を阻害する、任意の薬剤である。PCSK9阻害剤のカテゴリーの非限定的な例としては、小分子PCSK9アンタゴニスト、ペプチドベースのPCSK9アンタゴニスト(例えば、「ペプチボディ」分子)、およびヒトPCSK9に特異的に結合する抗体または抗体の抗原結合断片が挙げられる。
用語「ヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型」または「ヒトPCSK9」または「hPCSK9」は、本明細書において用いる場合、配列番号197で示される核酸配列によってコードされ、配列番号198のアミノ酸配列を含むPCSK9、またはその生物活性断片を指す。
用語「抗体」は、本明細書において用いる場合、4本のポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合によって相互に連結されている2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖、を含む免疫グロブリン分子、およびその多量体(例えば、IgM)を指すことを意図したものである。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVと略記する)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、C1、C2およびC3、を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVと略記する)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(C1)を含む。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と称する、より保存される領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称する超可変性の領域にさらに細分することができる。各VおよびVは、3つのCDRおよび4つのFRからなり、これらは、アミノ末端からカルボキシ末端へ次の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本発明の種々の実施形態において、抗PCSK9抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であることもあり、または天然にもしくは人工的に修飾されていることもある。アミノ酸コンセンサス配列は、2つまたはそれ以上のCDRの並行分析に基づいて定義することができる。
用語「抗体」は、本明細書において用いる場合、完全抗体分子の抗原結合断片も含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などの用語は、本明細書において用いる場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する任意の天然に存在する、酵素的に得ることができる、合成の、または遺伝子改変ポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、タンパク質消化、または抗体可変および場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む組換え遺伝子改変法などの、任意の好適な標準的技法を用いて完全抗体分子から得ることができる。そのようなDNAは、公知でありおよび/または例えば商業的供給源、DNAライブラリー(例えばファージ−抗体ライブラリーを含む)から容易に調達することができ、または合成することができる。DNAをシークエンシングし、化学的にまたは分子生物学技法の使用によって操作して、例えば、1つもしくはそれ以上の可変および/もしくは定常領域を好適な高次構造に配置すること、またはコドンを導入すること、システイン残基を生成すること、アミノ酸を修飾する、付加させるまたは欠失させることなどができる。
抗原結合断片の非限定的な例としては、(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)一本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域(例えば、単離された相補性決定領域(CDR)、例えばCDR3ペプチド)を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位、または拘束FR3−CDR3−FR4ペプチドが挙げられる。他の改変分子、例えば、ドメイン特異的抗体、シングルドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、サメ可変IgNARドメインも、本明細書において用いる場合の「抗原結合断片」という表現に包含される。
抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの可変ドメインを概して含むことになる。可変ドメインは、いずれのサイズまたはアミノ酸組成のものであり、一般的には、1つもしくはそれ以上のフレームワーク配列に隣接しているまたは1つもしくはそれ以上のフレームワーク配列とインフレームである少なくとも1つのCDRを含むことになる。Vドメインと会合しているVドメインを有する抗原結合断片の場合、VおよびVドメインは、互いに対してあらゆる好適な配置で位置することができる。例えば、可変領域は、二量体であり、V−V、V−VまたはV−V二量体を含有することがある。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体VまたはVドメインを含有することもある。
特定の実施形態において、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合で連結されている少なくとも1つの可変ドメインを含有することがある。本発明の抗体の抗原結合断片内で見つけることができる可変および定常ドメインの非限定的、例示的高次構造としては、(i)V−C1;(ii)V−C2;(iii)V−C3;(iv)V−C1−C2;(v)V−C1−C2−C3;(vi)V−C2−C3;(vii)V−C;(viii)V−C1;(ix)V−C2;(x)V−C3;(xi)V−C1−C2;(xii)V−C1−C2−C3;(xiii)V−C2−C3;および(xiv)V−Cが挙げられる。上に列挙した例示的高次構造のいずれかを含む、可変および定常ドメインのいずれの高次構造においても、可変および定常ドメインは、互いに直接連結されていることもあり、または完全もしくは部分ヒンジもしくはリンカー領域によって連結されていることもある。ヒンジ領域は、少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれ以上)のアミノ酸からなることがあり、その結果、単一ポリペプチド分子内の隣接した可変および/または定常ドメイン間の柔軟なまたはやや柔軟な連鎖となる。さらに、本発明の抗体の抗原結合断片は、互いにおよび/または1つもしくはそれ以上の単量体VもしくはVドメインと非共有結合で(例えば、ジスルフィド結合によって)会合している、上に列挙したいずれかの可変および定常ドメイン高次構造のホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含むことがある。
完全抗体分子と同様に、抗原結合断片は、単一特異性であることもあり、または多重特異性(例えば、二重特異性)であることもある。抗体の多重特異性抗原結合断片は、各可変ドメインが別個の抗原にまたは同じ抗原上の異なるエピトープと特異的に結合できる、少なくとも2つの異なる可変ドメインを概して含むことになる。本明細書において開示する例示的二重特異性抗体形式を含む、いずれの多重特異性抗体形式も、当技術分野において利用可能な常例的技法を用いる本発明の抗体の抗原結合断片との関連での使用に適応させることができる。
抗体の定常領域は、補体を固定し、細胞依存性細胞傷害を媒介する抗体の能力に重要である。したがって、抗体が細胞傷害を媒介することが望ましいかどうかに基づいて抗体のアイソタイプを選択することができる。
用語「ヒト抗体」は、本明細書において用いる場合、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を含むことを意図したものである。とはいえ、本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によってまたはインビボでの体細胞突然変異によって誘導された突然変異)を、例えば、CDR、特にCDR3に含むことがある。しかし、用語「ヒト抗体」は、本明細書において用いる場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体を含むことを意図したものではない。
用語「組換えヒト抗体」は、本明細書において用いる場合、組換え手段によって製造、発現、生成または単離される全てのヒト抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体(さらに下で説明する)、組換え体から単離された抗体、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリー(下でさらに説明する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子が遺伝子導入されている動物(例えばマウス)から単離された抗体(例えば、Taylorら(1992)Nucl.Acids Res.20:6287〜6295を参照されたい)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって製造、発現、生成もしくは単離された抗体を含むことを意図したものである。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する。しかし、特定の実施形態において、そのような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列が遺伝子導入された動物を使用する場合にはインビボ体細胞突然変異)に付されるので、該組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VおよびV配列に由来し、ヒト生殖細胞系VおよびV配列と類縁の配列だが、インビボでヒト抗体生殖細胞系レパートリー内に天然に存在できない配列である。
ヒト抗体は、2つの形態で存在することができ、これらの形態がヒンジ異質性に関連する。一方の形態の場合、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって一緒に保持されている、おおよそ150〜160kDaの安定した4鎖構築物を含む。第2の形態の場合、二量体は鎖間ジスルフィド結合によって連結されておらず、約75〜80kDaの分子が、共有結合でカップリングされた軽鎖と重鎖で形成され、構成される(ハーフ抗体(half-antibody))。これらの形態は、アフィニティー精製後でさえ分離することが極めて難しかった。
様々なインタクトIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造の違いに、これに限定されるものではないが、起因する。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一アミノ酸置換は、第2の形態の出現を、ヒトIgG1ヒンジを使用して概して観察されるレベルに、有意に低減させることができる(Angalら(1993)Molecular Immunology 30:105)。本発明は、例えば生産の際、所望の抗体形態の収率を向上させるために望ましいことがある、ヒンジ、C2またはC3領域に1つまたはそれ以上の突然変異を有する抗体を包含する。
「単離された抗体」は、本明細書において用いる場合、その天然環境の少なくとも1つの成分から同定および分離および/または回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの成分から分離もしくは除去された抗体、またはその抗体が天然に存在するもしくは天然に生産される組織もしくは細胞から分離もしくは除去された抗体は、本発明では「単離された抗体」である。単離された抗体は、組換え細胞内の生体内原位置の抗体も含む。単離された抗体は、少なくとも1工程の精製または単離工程に付された抗体である。特定の実施形態によると、単離された抗体には、他の細胞物質および/または化学物質が実質的にないこともある。
用語「特異的に結合する」またはこれに類する用語は、抗体またはその抗原結合断片が、生理条件下で比較的安定している抗原との複合体を形成することを意味する。抗体が抗原と特異的に結合するかどうかを判定する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。例えば、PCSK9「に特異的に結合する」抗体は、本発明に関連して用いる場合、表面プラズモン共鳴アッセイで測定して、約1000nM未満、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満のKで、PCSK9またはその一部に結合する抗体を含む。しかし、ヒトPCSK9に特異的に結合する単離された抗体は、他の(非ヒト)種からのPCSK9分子などの、他の抗原への交差反応性を有する。
本発明の方法に有用な抗PCSK9抗体は、該抗体が由来する対応する生殖細胞系配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域に1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含むことがある。そのような突然変異は、本明細書において開示するアミノ酸配列を例えば公開抗体配列データベースから入手できる生殖細胞系配列と比較することによって、容易に突き止めることができる。本発明は、本明細書において開示するアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体およびそれらの抗原結合断片の使用を含む方法であって、1つまたはそれ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が、該抗体が由来する生殖細胞系配列の対応する残基に、または別のヒト生殖細胞系配列の対応する残基に、または対応する生殖細胞系残基の保存的アミノ酸置換に突然変異される(このような配列交換を本明細書ではまとめて「生殖細胞系突然変異」と呼ぶ)前記方法を含む。当業者は、本明細書において開示する重鎖および軽鎖可変領域配列で出発して、1つもしくはそれ以上の個々の生殖細胞系突然変異またはそれらの組合せを含む多数の抗体および抗原結合断片を容易に生産することができる。特定の実施形態では、Vおよび/またVドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基の全てが、抗体が由来する元の生殖細胞系配列中で見つけられる残基に復帰突然変異される。他の実施形態では、特定の残基のみ、例えば、FR1の最初の8アミノ酸中もしくはFR4の最後の8アミノ酸中で見つけられる突然変異残基のみ、またはCDR1、CDR2もしくはCDR3内で見つけられる突然変異残基のみが、元の生殖細胞系配列に復帰突然変異される。他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDR残基の1つまたはそれ以上が、異なる生殖細胞系配列(すなわち、抗体が当初由来した生殖細胞系配列とは異なる生殖細胞系配列)の対応する残基に突然変異される。さらに、本発明の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内に、2つまたはそれ以上の生殖細胞系突然変異の何らかの組合せ、例えば、特定の個々の残基は特定の生殖細胞系配列の対応する残基に突然変異されるが、元の生殖細胞系配列とは異なる特定の他の残基は維持されるか、または異なる生殖細胞系配列の対応する残基に突然変異される組合せを含有することもある。1つまたはそれ以上の生殖細胞系突然変異を含有する抗体および抗原結合断片は、ひとたび得てしまえば、1つまたはそれ以上の所望の特性、例えば、結合特異性改善、結合親和性増加、(場合によって)アンタゴニストまたはアゴニストとしての生物学的特性改善または向上、免疫原性低減などについて容易に試験することができる。この一般的手法で得られる抗体および抗原結合断片の使用は、本発明に包含される。
本発明は、1つまたはそれ以上の保存的置換を有する本明細書において開示するHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のいずれかについての変異体を含む抗PCSK9抗体の使用を含む方法も含む。例えば、本発明は、例えば、本明細書において開示するHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のいずれかと比較して10またはそれ以下、8またはそれ以下、6またはそれ以下、4またはそれ以下などの保存的アミノ酸置換を有する、HCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列を有する抗PCSK9抗体の使用を含む。
用語「表面プラズモン共鳴」は、本明細書において用いる場合、例えばBIAcore(商標)システム(Biacore Life Sciences devision of GE Healthcare、Piscataway、NJ)を使用してバイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度変化の検出によりリアルタイム相互作用を分析することができる光学現象を指す。
用語「K」は、本明細書において用いる場合、特定の抗体−抗原相互作用の平衡解離定数を指すことを意図したものである。
用語「エピトープ」は、パラトープとして公知の抗体分子の可変領域内の特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原が1つより多くのエピトープを有することもある。それ故、抗体によって、結合する抗原領域が異なることもあり、有する生物学的効果が異なることもある。エピトープは、高次構造であることもあり、または線状であることもある。高次構造エピトープは、直鎖状ペプチド鎖の異なるセグメントからの空間的に隣り合って並ぶアミノ酸によって生成される。線状エピトープは、ポリペプチド鎖内の隣接したアミノ酸残基によって生成されるものである。特定の状況では、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基またはスルホニル基部分を含むことがある。
特定の実施形態によると、本発明の方法において使用される抗PCSK9抗体は、pH依存性結合特性を有する抗体である。本明細書において用いる場合、「pH依存性結合」という表現は、抗体またはその抗原結合断片が、「中性pHと比較して酸性pHでPCSK9との結合低減」を示すことを意味する(本開示では、両方の表現を同義で用いることがある)。例えば、「pH依存性結合特性を有する」抗体は、酸性pHでより中性pHでのほうが高い親和性でPCSK9に結合する抗体およびそれらの抗原結合断片を含む。特定の実施形態において、本発明の抗体およびそれらの抗原結合断片は、酸性pHでより中性pHでのほうが少なくとも3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100倍またはそれ以上高い親和性でPCSK9に結合する。
本発明のこの態様によると、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体は、親抗PCSK9抗体と比較して1つまたはそれ以上のアミノ酸変異を有することがある。例えば、pH依存性結合特性を有する抗PCSK9抗体は、例えば、親抗PCSK9抗体の1つまたはそれ以上のCDR内に、1つまたはそれ以上のヒスチジン置換または挿入を有することがある。それ故、本発明の特定の実施形態に従って、親抗体の1つまたはそれ以上のCDRの1つまたはそれ以上のアミノ酸のヒスチジン残基での置換を除いて親抗PCSK9抗体のCDRアミノ酸配列と同一であるCDRアミノ酸配列(例えば、重鎖および軽鎖CDR)を含む抗PCSK9抗体を投与することを含む方法を提供する。pH依存性結合を有する抗PCSK9抗体は、親抗PCSK9抗体の単一のCDR内に、または親抗PCSK9抗体の複数(例えば、2、3、4、5もしくは6)のCDR全体にわたって分布している、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上のヒスチジン置換を有することがある。例えば、本発明は、親抗PCSK9抗体のHCDR1に1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換、HCDR2に1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換、HCDR3に1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換、LCDR1に1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換、LCDR2に1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換、および/またはLCDR3に1つもしくはそれ以上のヒスチジン置換を含む、pH依存性結合を有する抗PCSK9抗体の使用を含む。
本明細書において用いる場合、「酸性pH」という表現は、6.0またはそれ以下(例えば、約6.0未満、約5.5未満、約5.0未満など)のpHを意味する。「酸性pH」という表現は、約6.0、5.95、5.90、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0またはそれ以下のpH値を含む。本明細書において用いる場合、「中性pH」という表現は、約7.0〜約7.4のpHを意味する。「中性pH」という表現は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35および7.4のpH値を含む。
本発明に関連して使用することができる抗PCSK9抗体の非限定的な例としては、アリロクマブ、エボロクマブ、ボコシズマブ、またはそれらの抗原結合部分を含む。
ヒト抗体の製造
トランスジェニックマウスでヒト抗体を産生する方法は当技術分野において公知である。任意のそのような公知の方法を本発明に関連して使用して、ヒトPCSK9と特異的に結合するヒト抗体を作製することができる。
VELOCIMMUNE(商標)技術(例えば米国特許第6,596,541号、Regeneron Pharmaceuticalsを参照されたい)、またはモノクローナル抗体の任意の他の公知産生方法を用いて、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、PCSK9に対する高親和性キメラ抗体を、最初に単離する。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、マウスが抗原刺激に応答してヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を生産するように、内在性マウス定常領域遺伝子座に作動可能に連結されたヒト重鎖および軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの産生を含む。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、ヒト重鎖および軽鎖定常領域をコードするDNAに作動可能に連結させる。その後、完全ヒト抗体を発現することができる細胞においてそのDNAを発現させる。
一般には、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスに、対象とする抗原を感作させ、抗体を発現しているマウスからリンパ細胞(例えば、B細胞)を回収する。リンパ細胞を骨髄腫細胞株と融合させて不死ハイブリドーマ細胞株を製造することができ、そのようなハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし、選択して、対象とする抗原に特異的な抗体を生産するハイブリドーマ細胞株を同定する。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、重鎖および軽鎖の望ましいアイソタイプ定常領域に連結させることができる。そのような抗体タンパク質を、CHO細胞などの細胞において生産することができる。あるいは、抗原特異的キメラ抗体をコードするDNA、または重鎖および軽鎖の可変ドメインを、抗原特異的リンパ球から直接単離することができる。
ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体を最初に単離する。当業者に公知の標準的手順を用いて、抗体を特性評価し、親和性、選択性、エピトープなどをはじめとする所望の特定について選択する。マウス定常領域を所望のヒト定常領域で置換して、本発明の完全ヒト抗体、例えば野生型または修飾IgG1またはIgG4、を産生させる。選択される定常領域は具体的な用途によって変わることがあるが、高親和性抗原結合特性および標的特異性が可変領域にある。
一般に、本発明の方法で使用することができる抗体は、固相に固定された抗原または溶液相中の抗原と結合させることによって測定したとき、上で説明したような高い親和性を有する。マウス定常領域を所望のヒト定常領域で置換して、本発明の完全ヒト抗体を産生させる。選択される定常領域は具体的な用途によって変わることがあるが、高親和性抗原結合特性および標的特異性が可変領域にある。
本発明の方法に関連して使用することができる、PCSK9に特異的に結合するヒト抗体または抗体の抗原結合断片の具体的な例としては、配列番号1および11からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有する、重鎖可変領域(HCVR)に含有された3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)を含む任意の抗体または抗原結合断片が挙げられる。あるいは、本発明の方法に関連して使用することができる、PCSK9に特異的に結合するヒト抗体または抗体の抗原結合断片の具体的な例としては、配列番号37、45、53、61、69、77、85、93、101、109、117、125、133、141、149、157、165、173、181および189からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有する、重鎖可変領域(HCVR)に含有された3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)を含む任意の抗体または抗原結合断片が挙げられる。抗体または抗原結合断片は、配列番号6および15からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有する、軽鎖可変領域(LCVR)に含有された3つの軽鎖CDR(LCVR1、LCVR2、LCVR3)を含むことがある。あるいは、抗体または抗原結合断片は、配列番号41、49、57、65、73、81、89、97、105、113、121、129、137、145、153、161、169、177、185および193からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するか、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似の配列を有する、軽鎖可変領域(LCVR)に含有された3つの軽鎖CDR(LCVR1、LCVR2、LCVR3)を含むこともある。
2アミノ酸配列間の配列同一性は、最良配列アラインメントを用いて参照アミノ酸配列、すなわち配列番号で特定されるアミノ酸配列、の全長にわたって、および/または2アミノ酸配列間の最良配列アラインメント領域にわたって判定され、この場合、最良配列アラインメントは、当技術分野において公知のツール、例えばAlignで、標準設定、好ましくは、EMBOSS::needle、行列:Blosum62、ギャップ開始10.0、ギャップ伸長0.5を用いて得ることができる。
本発明の特定の実施形態において、抗体または抗原結合タンパク質は、配列番号1/6および11/15からなる群から選択される重鎖可変領域アミノ酸配列と軽鎖可変領域アミノ酸配列の対(HCVR/LCVR)からの6つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む。あるいは、本発明の特定の実施形態において、抗体または抗原結合タンパク質は、配列番号37/41、45/49、53/57、61/65、69/73、77/81、85/89、93/97、101/105、109/113、117/121、125/129、133/137、141/145、149/153、157/161、165/169、173/177、181/185および189/193からなる群から選択される重鎖可変領域アミノ酸配列と軽鎖可変領域アミノ酸配列の対(HCVR/LCVR)からの6つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む。
本発明の特定の実施形態において、本発明の方法で使用することができる抗PCSK9抗体または抗原結合タンパク質は、配列番号2/3/4/7/8/10(mAb316P[「REGN727]または「アリロクマブ」とも呼ばれる])および12/13/14/16/17/18(mAb300N)(米国特許出願公開第2010/0166768号を参照されたい)および12/13/14/16/17/18から選択されるHCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3アミノ酸配列を有し、ここで、配列番号16は、アミノ酸残基30のロイシンのヒスチジンでの置換(L30H)を含む。
本発明の特定の実施形態において、抗体または抗原結合タンパク質は、配列番号1/6および11/15からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。特定の例示的実施形態において、抗体または抗原結合タンパク質は、配列番号1のHCVRアミノ酸配列および配列番号6のLCVRアミノ酸配列を含む。特定の例示的実施形態において、抗体または抗原結合タンパク質は、配列番号11のHCVRアミノ酸配列および配列番号15のLCVRアミノ酸配列を含む。特定の例示的実施形態において、抗体または抗原結合タンパク質は、アミノ酸残基30のロイシンのヒスチジンでの置換(L30H)を含む、配列番号11のHCVRアミノ酸配列および配列番号15のLCVRアミノ酸配列を含む。
医薬組成物および投与方法
本発明は、医薬組成物に含有されているPCSK9阻害剤を患者に投与することを含む方法を含む。本発明の医薬組成物は、好適な担体、賦形剤、および好適な転移、送達、耐性などをもたらす他の薬剤を用いて製剤化される。多くの適切な製剤を全ての薬剤師に公知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PAにおいて見つけることができる。これらの製剤としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、(カチオン性またはアニオン性)脂質含有ビヒクル(例えば、LIPOFECTIN(商標))、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルジョン、エマルジョンカルボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカルボワックスを含有する半固体混合物が挙げられる。Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」、PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238〜311も参照されたい。
様々な送達システム、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへの封入、突然変異型ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wuら、1987、J.Biol.Chem.262:4429〜4432を参照されたい)は公知であり、本発明の医薬組成物を投与するためにそれらを使用することができる。投与方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。組成物を任意の適便な経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮内層または粘膜皮膚内層(例えば、経口粘膜、直腸および腸粘膜など)による吸収によって投与することができ、他の生物活性薬剤と一緒に投与することができる。
本発明の医薬組成物は、標準的な針および注射器で皮下または静脈内送達することができる。加えて、皮下送達に関しては、ペン型送達デバイスを本発明の医薬組成物の送達に容易に利用される。そのようなペン型送達デバイスは、再使用可能であることもあり、または使い捨てであることもある。再使用可能なペン型送達デバイスには、医薬組成物を収容している交換可能カートリッジが一般に利用される。カートリッジ内の医薬組成物の全てを投与してしまい、カートリッジが空になったら、空のカートリッジを容易に廃棄することができ、医薬組成物を収容している新たなカートリッジと容易に交換することができる。その後、そのペン型送達デバイスを再使用することができる。使い捨てペン型送達デバイスには、交換可能カートリッジがない。もっと正確に言えば、使い捨てペン型送達デバイスには医薬組成物が予め充填されており、該医薬組成物は該デバイスの貯液部に保持されている。貯蔵部の医薬組成物が空になったら、デバイス全体を廃棄する。
非常に多くの再使用可能ペン型および自己注射器送達デバイスが本発明の医薬組成物の皮下送達に利用される。例としては、ほんの数例を挙げると、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、ならびにOPTICLIK(商標)(sanofi−aventis、Frankfurt、Germany)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物の皮下送達に利用される使い捨てペン型送達デバイスの例としては、ほんの数例を挙げると、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi−aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)オートインジェクター(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park IL)が挙げられるが、これらに限定されない。
特定の状況では、医薬組成物を制御放出システムで送達することができる。1つの実施形態では、ポンプを使用することがある(Langer、上掲;Sefton、1987、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照されたい)。別の実施形態では、高分子材料を使用することができる;Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編集)、1974、CRC Pres.、Boca Raton、Floridaを参照されたい。さらに別の実施形態では、制御放出システムを組成物の標的のすぐそばに配置することができ、したがって全身用量のほんの一部のみ要する(例えば、Goodson、1984、Medical Applications of Controlled Release、上掲、第2巻、115〜138頁を参照されたい)。他の制御放出システムは、Langer、1990、Science 249:1527〜1533による総説で論じされている。
注射用製剤としては、静脈内、皮下、皮内および筋肉内注射、点滴注入などのための剤形を挙げることができる。これらの注射用製剤を公知の方法によって製造することができる。例えば、注射用製剤は、例えば、注射剤に従来使用されている滅菌水性媒体または油性媒体に上で説明した抗体またはその塩を溶解する、懸濁させるまたは乳化させることによって、製造することができる。注射剤のための水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコースおよび他の補助剤を含有する等張溶液などがあり、これらは、適切な可溶化剤、例えばアルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO−50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加体)]などと併用されることもある。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、ダイズ油が利用され、これらは、可溶化剤、例えば安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用されることもある。好ましくは、このようにして製造された注射剤は、適切なアンプルに充填される。
有利には、上で説明した経口または非経口使用用の医薬組成物は、活性成分の用量を合わせることに適している単位用量での剤形に製造される。単位用量でのそのような剤形としては、例えば、錠剤、ピル、カプセル、注射剤(アンプル)、坐剤などが挙げられる。
本発明の方法に関連して使用することができる抗PCSK9抗体を含む例示的医薬製剤は、例えば米国特許出願公開第2013/0189277号に記載されており、この特許文献の開示は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられている。
投薬量
本発明の方法に従って患者に投与されるPCSK9阻害剤(例えば、抗PCSK9抗体)の量は、一般に治療有効量である。本明細書において用いる場合、「治療有効量」という句は、LDL−C、アポB100、非HDL−C、総コレステロール、VLDL−C、トリグリセリド、Lp(a)およびレムナントコレステロールからなる群から選択される1つまたはそれ以上のパラメータの(ベースラインから少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%またはそれ以上の)検出可能な低減をもたらすPCSK9阻害剤の量を意味する。
抗PCSK9抗体の場合、治療有効量は、抗PCSK9抗体約0.05mg〜約600mg、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約75mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mgまたは約600mgであることができる。特定の実施形態において、治療有効量は、抗PCSK9抗体75mgである。特定の実施形態において、治療有効量は、抗PCSK9抗体150mgである。
個々の用量に含有される抗PCSK9抗体の量を患者体重1キログラム当たりの抗体のミリグラム(すなわち、mg/kg)によって表すことができる。例えば、抗PCSK9抗体を患者に約0.0001〜約10mg/(患者体重のkg)の用量で投与することができる。
併用治療
本発明の特定の実施形態によると、1つまたはそれ以上の非スタチン脂質修飾治療をPCSK9阻害剤と併用して患者に投与することができる。そのような非スタチン脂質修飾治療の例としては、例えば、(1)コレステロール吸収阻害剤を阻害する薬剤(例えば、エゼチミブ);(2)リポタンパク質異化作用を増加させる薬剤(例えば、ナイアシンおよび徐放性ナイアシンを含む、ニコチン酸);(3)フィブリン酸、(4)胆汁酸封鎖剤および/または(5)コレステロール削減に関与するLXR転写因子の活性化剤(例えば、22−ヒドロキシコレステロール)が挙げられる。
投与レジメン
本発明の特定の実施形態によると、PCSK9阻害剤(すなわち、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物)の複数の用量を被定義時間にわたって(例えば、毎日の治療スタチンレジメンの代わりに)患者に投与することができる。本発明のこの態様による方法は、PCSK9阻害剤の複数の用量を患者に逐次的に投与することを含む。本明細書において用いる場合、「逐次的に投与すること」は、PCSK9阻害剤の各用量を患者に異なる時点で、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日、数週間または数カ月)隔てた異なる日に投与することを意味する。本発明は、患者のPCSK阻害剤の単一初回用量、その後、PCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上の第2の用量、場合によりその後、PCSK9阻害剤の1用量またはそれ以上の第3の用量を逐次的に投与することを含む方法を含む。
用語「初回用量」、「第2の用量」および「第3の用量」は、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物の個々の用量の投与についての時系列を指す。したがって、「初回用量」は、処置レジメンの開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも呼ばれ)であり;「第2の用量」は、初回用量後に投与される用量であり、「第3の用量」は、第2の用量後に投与される用量である。初回、第2および第3の用量は、全て同じ量のPCSK9阻害剤を含有することもあるが、一般には投与頻度の点から互いに異なることがある。しかし、特定の実施形態において、初回、第2および/または第3の用量に含有されるPCSK9阻害剤の量は、処置の過程で互いに変動する(例えば、必要に応じて上方または下方調整される)。特定の実施形態では、2用量またはそれ以上の(例えば、2、3、4または5)用量が「負荷用量」として処置レジメンの開始時に投与され、その後、より低頻度で投与される後続の用量(例えば、「維持用量」)が投与される。
本発明の例示的実施形態によると、各第2および/または第3の用量は、直前の用量の1〜26週間(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5週間またはそれ以上)後に投与される。「直前の用量」という句は、本明細書において用いる場合、複数の投与の順序に関して、介在する用量のない順序的にまさにその次の用量の投与の前に患者に投与される抗原結合分子の用量を意味する。
本発明のこの態様による方法は、PCSK9阻害剤の任意の数の第2および/または第3の用量を患者に投与することを含む。例えば、特定の実施形態では、単一の第2の用量のみ患者に投与される。他の実施形態では、2またはそれ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上の)第2の用量が患者に投与される。同様に、特定の実施形態では、単一の第3の用量のみ患者に投与される。他の実施形態では、2またはそれ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上の)第3の用量が患者に投与される。
複数の第2の用量を含む実施形態において、各々の第2の用量は、他の第2の用量と同じ頻度で投与されることがある。例えば、各々の第2の用量は、直前の用量の1〜2、4、6、8週間またはそれ以上後に患者に投与されることがある。同様に、複数の第3の用量を含む実施形態において、各々の第3の用量は、他の第3の用量と同じ頻度で投与されることがある。例えば、各々の第3の用量は、直前の用量の1〜2、4、6、8週間またはそれ以上後に患者に投与されることがある。あるいは、第2および/または第3の用量が患者に投与される頻度は、処置レジメンの過程を通して様々であることができる。投与頻度は、臨床検査に従って個々の患者の必要に応じて医師によって処置の過程で調整されることもある。
本発明の特定の実施形態によると、抗PCSK9抗体約75mgを含む医薬組成物の複数の用量が2週間に1回の頻度で患者に投与される。
本発明の特定の実施形態によると、抗PCSK9抗体約150mgを含む医薬組成物の複数の用量が2週間に1回の頻度で患者に投与される。
本発明の特定の実施形態によると、抗PCSK9抗体約75mgを含む医薬組成物の複数の用量が4週間に1回の頻度で患者に投与される。
本発明の特定の実施形態によると、抗PCSK9抗体約150mgを含む医薬組成物の複数の用量が4週間に1回の頻度で患者に投与される。
本発明は、アップタイトレーションオプション(本明細書では「用量修飾」とも呼ぶ)を含む投与レジメンを含む。本明細書において用いる場合、「アップタイトレーションオプション」は、PCSK9阻害剤の特定の数の用量を受けた後に患者が1つまたはそれ以上の被定義治療パラメータの指定された低減を達成しなかった場合、PCSK9阻害剤の用量がそれ以降増加されることを意味する。例えば、抗PCSK9抗体の75mg用量の患者への2週間に1回の頻度での投与を含む治療レジメンの場合、8週間(すなわち、第0週、第2週、第4週、第6週および第8週に投与された5用量)後、患者が70mg/dL未満の血清LDL−C濃度を達成しなかった場合には、抗PCSK9抗体の用量は、例えば、それ以降(例えば、第10週もしくは第12週またはそれ以降に開始する)、2週間に1回投与される150mgに増加される。
特定の実施形態において、抗PCSK9抗体は、例えば少なくとも3用量にわたって、約75mgの用量で、隔週、患者に投与される。
特定の実施形態では、抗PCSK9抗体は、例えば少なくとも3用量にわたって、約150mgの用量で、隔週、患者に投与される。
いくつかの実施形態において、抗体は、12週間にわたって、約75mgの用量で、隔週、患者に投与され、第8週に患者のLDL−C値が100mg/dl未満であり、LDL−Cの30%低減であった場合、用量は75mgで2週間ごとのままである。
他の実施形態において、抗体は、12週間にわたって、約75mgの用量で、隔週、患者に投与され、第8週に患者のLDL−C値が100mg/dl以上であった場合、用量は約150mgまで、隔週、アップタイトレーションされる。
いくつかの実施形態において、抗体は、12週間にわたって、約75mgの用量で、隔週、患者に投与され、第8週に患者のLDL−C値が70mg/dl未満であり、LDL−Cの30%低減であった場合、用量は75mgで2週間ごとのままである。
別の実施形態において、抗体は、約300mgの用量で4週間ごとに患者に投与される。
さらなる実施形態において、抗体は、約300mgの用量で4週間ごとに合計3用量にわたって患者に投与され、第8週に患者が所定の処置目標を達成しなかった、または患者がLDL−Cのベースラインからの少なくとも30%低減を有さなかった場合、用量は、さらに36週間、2週間ごとの150mgに変更される。
特定の実施形態において、抗PCSK9抗体は、約150mgの用量で4週間ごとに少なくとも3用量にわたって患者に投与される。
いくつかの実施形態において、抗体は、約150mgの用量で12週間にわたって4週間ごとに患者に投与され、第8週に患者のLDL−C値が100mg/dl未満であり、LDL−Cの30%低減であった場合、用量は150mgで4週間ごとのままである。
他の実施形態において、抗体は、約150mgの用量で12週間にわたって4週間ごとに患者に投与され、第8週に患者のLDL−C値が100mg/dl以上であった場合、用量は約300mgまで、隔週、アップタイトレーションされる。
いくつかの実施形態において、抗体は、約150mgの用量で12週間にわたって4週間ごとに患者に投与され、第8週に患者のLDL−C値が70mg/dl未満であり、LDL−Cの30%低減であった場合、用量はさらに12週間、4週間ごとの150mgのままである。
別の実施形態において、抗体は、約300mgの用量で4週間ごとに患者に投与される。
さらなる実施形態において、抗体は、約300mgの用量で4週間ごとに合計3用量にわたって患者に投与され、第8週に患者が所定の処置目標を達成しなかったか、または患者がLDL−Cのベースラインからの少なくとも30%低減を有さなかった場合、用量は、さらに36週間、2週間ごとの150mgに変更される。
以下の実施例は、本発明の方法および組成物の作製および使用方法の完全な開示および説明を当業者に与えるために提示するものであり、本発明者らが自分達の発明と考える範囲を限定することを意図したものではない。用いる数値(例えば、量、温度など)に関して正確を期すように努めたが、多少の実験的誤差および偏差を考慮すべきである。別段の指示がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
ヒトPCSK9に対するヒト抗体の産生
ヒト抗PCSK9抗体を米国特許8,062,640号に記載されているように産生させた。以下の実施例で使用する例示的PCSK9阻害剤は、「REGN727」または「アリロクマブ」としても公知の「mAb316P」と称するヒト抗PCSK9抗体である。mAb316Pは、次のアミノ酸配列特性を有する:配列番号5を含む重鎖および配列番号9を含む軽鎖;配列番号1を含む重鎖可変領域(HCVR)および配列番号6を含む軽鎖可変領域(LCVR);配列番号2を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号3を含むHCDR2、配列番号4を含むHCDR3、配列番号7を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号8を含むLCDR2、および配列番号10を含むLCDR3。
高コレステロール血症を有する患者のエゼチミブでの単剤治療に対する抗PCSK9抗体(「mAb316P」)での単剤治療:24週、二重盲検、無作為化第3相試験の結果背景
高コレステロール血症、詳細には低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)レベルの増加は、西欧諸国における死亡および身体障害の主因である、アテローム性動脈硬化症およびCHDの発症の大きなリスクとなる。LDL−Cは、コレステロール低下治療の主要標的とされており、妥当な代替エンドポイントとして受け入れられている。主としてスタチンでの3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリル−CoAレダクターゼ(HMG CoA)阻害によってLDL−Cレベルを低減させることが、LDL−CレベルとCHDイベントとの強い直接的関係のためCHDリスクを低減させることは、非常に多くの研究によって立証されており;LDL−Cが1mmol/L(約40mg/dL)低減するごとに、心血管疾患(CVD)死亡率および罹病率は22%低下される。
3つの第1相研究をmAb316Pで行い、安全性、耐容性およびPK/PDプロファイルを評価した。2つの研究は、スタチン治療が指示されなかったLDL−C>100mg/dLを有する健常被験者において行った単回用量投与であった(一方の研究は0.3mg〜12mg/kgの用量のIV投与を用い、もう一方の研究は50mg〜250mgの用量のSC投与を用いた)。第3の研究は、(家族性または非家族性)高コレステロール血症患者において、アトルバスタチンの10mg〜40mg/日の安定した用量へのアドオンとして、または単剤治療として、50mg、100mg、150mgおよび200mgの単回〜複数回SC投与を用いて行った。
これらの第1相研究の結果は、健常被験者および患者にIVまたはSC投与いずれかによって投与したmAb316Pが一般に全ての用量で十分に耐容されたことを示し;治療創発的有害事象(TEAE)は、用量関連性を示さなかった。薬物に関連した有害事象(AE)のいずれのパターンも確認されなかった。これらの第1相研究全てにおいて、MAb316Pの投与は、ベースラインから60%までのLDL−Cの急速で実質的な持続的低減を誘導した。これらの低減の大きさおよび継続時間は、投与した用量に明らかに関連していた。第3の研究において、家族性高コレステロール血症患者における結果と非家族性高コレステロール血症患者における結果が類似していたことにも留意すべきである。全体としては、これら3つの第1相研究において合計109名の被験者をmAb316Pの少なくとも1用量に曝露した。
3つの第2相研究も行った。これらの研究の結果は、以前に報告した。
序論
本実施例では、第3相治験を行って、単剤治療として投与した時のmAb316Pの効能および安全性を評価した。
この研究の目的は、被験薬mAb316Pを単剤治療として使用したときの効果の大きさおよび安全性プロファイルに関する情報を提供することであった。mAb316Pについての単独の効能および安全性に関するデータを得ることは、mAb316Pをスタチンへのアドオンとして使用したときに得られるデータと比較してみるために重要である。
この研究のもう1つの目的は、スタチン不耐性患者におけるmAb316Pの評価を裏付ける単剤治療データを提供することであった。スタチンが不適切または耐容されないと考えられるときに単剤治療として使用することができる現行のLDL−C低下薬としては、エゼチミブ、ナイアシン、および胆汁酸封鎖剤が挙げられる。単剤治療として使用できる可能性のあるこれらの選択肢は、約20%LDL−C低減に関連する。
この研究に選択した対照アームは、エゼチミブ1日10mg POであった。これによって、日常的臨床診療で利用できる処置選択肢(すなわち、エゼチミブ)とmAb316Pを比較する研究ができた。
この特異的研究に着手して、中等度CVリスクを有し、LDL−Cが100mg/dL(2.59mmol/L)〜190mg/dL(4.9mmol/L)の間である患者において、単剤治療としてのmAb316P 75mgおよび/または150mg Q2Wが、エゼチミブと比較してLDL−Cの統計的に有意で臨床的に意義のある低減を生じさせることを立証した。
研究対象集団
単剤治療研究のための研究対象集団は、LDL−Cが100mg/dL(2.59mmol/L)〜190mg/dL(4.9mmol/L)の間である患者であった。
この研究には、SCOREチャートに基づいてCVD死の10年リスク≧1%かつ<5%によって定義されるような中等度CVリスクを有し、確立されたCHDまたはCHD相当リスクを有さない患者を組み入れた。SCOREなどのリスクチャートは、臨床または前臨床疾患の徴候がない見掛けは健常な人のリスク推定を助長することを目的としたものである。SCOREは、総コレステロール、年齢、性別、喫煙および収縮期BPに基づいてCV死の10年リスクを測定するものである。このリスクレベルは、非スタチン対照実薬(active comparator)での単剤治療研究に即して適切であると考えた。
24週間の二重盲検研究処置継続期間で患者100名(1群当たり患者50名)のサンプルサイズは、両側有意性レベル0.05で、25%の共通SDおよび評価不能の主要エンドポイント5%を仮定して、ベースラインから第24週までのLDL−Cの平均変化率の20%の処置差を検出することを意図したものであった。
用量の選択
全ての患者を最初に75mg Q2Wで処置し、8週間の処置後にLDL−Cレベルが100mg/dL以上のままであった患者のみを第12週以降、150mg Q2Wにアップタイトレーションした。
用量、投薬頻度およびアップタイトレーションアプローチの選択は、CV疾患低減の観点から最高の便益をもたらすために必要なLDL−C低減、および低いLDL−C値についての潜在的安全性考慮事項に基づく。2つの用量設定研究の結果に基づいて、Q2W投薬レジメンは投与間隔を通して一定したLDL−C低下を維持し、150mg Q2Wの投薬によって第12週に最大効能が得られると予想される。しかし、多くの患者について、150mg Q2W用量で観察されるほどの効果は標的LDL−C目標の達成に必要ないことがあり、より低い用量での開始を試みることもある。用量反応モデルを使用して、LDL−Cのベースラインからおおよそ50%低減をもたらすために75mg Q2Wを選択した:全ての患者を最初に75mg Q2Wで処置し、8週間の処置後にLDL−Cレベルが100mg/dL以上のままであった患者のみを(第12週に)150mg Q2Wに用量アップタイトレーションした。この処置計画で、原発性高コレステロール血症を有する大部分の患者は彼らの標的LDL−Cレベルを達成し、25mg/dL未満のレベルに達する患者は殆どいないと予想された。
第2相研究からの予備PKデータは、mAb316Pへの曝露が二重盲検処置期間後の8週間の追跡調査期間中に減少し、mAb316Pの血清総濃度が、非常に低レベルでだが、依然として検出可能であることを示した。したがって、十分に低く有効でない血清mAb316P濃度を保証するために、8週間の追跡調査期間(すなわち、最終投与後10週間)の間、患者を追跡した。mAb316Pの効果を減弱するスタチンバックグラウンドはないので、この試験における薬物動態の結果は重要である。
研究目的
この単剤治療研究の主要目的は、中等度の心血管(CV)リスクのある高コレステロール血症を有する患者においてエゼチミブ(EZE)10mg/日と比較して単剤治療としての2週間ごと(Q2W)のmAb316Pによる24週間の処置後の低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の低減を立証することであった。
この単剤治療研究の副次的目的は、次の通りであった。(1)12週間の処置後、EZEと比較してmAb316P 75mgのLDL−Cに対する効果を評価すること。(2)他の脂質パラメータ(すなわち、アポB、非HDL−C、総C、Lp(a)、HDL−C、TGレベルおよびアポA−1レベル)に対するmAb316Pの効果を評価すること。(3)MAb316Pの安全性および耐容性を評価すること。(4)抗MAb316P抗体の発生を評価すること。(5)MAb316Pの薬物動態(PK)を評価すること。
研究デザイン
これは、高コレステロール血症と10年リスクスコア(SCORE)21%かつ<5%とを有する患者においてmAb316Pの効能および安全性を評価するための、無作為化、二重盲検、並行群間、ダブルダミー、エゼチミブ対照、釣り合いのとれた(1:1、mAb316P:エゼチミブ)、多施設、多国籍研究であった。無作為化をDM状態に従って階層化した。無作為化後、患者は、24週間にわたって隔週の二重盲検研究処置(mAb316Pまたはプラセボ)および毎日のエゼチミブまたはエゼチミブのプラセボ POを受けた。mAb316Pに無作為化された患者には第8週のLDL−Cレベルに依存して第12週に用量アップタイトレーションを行うこともあった。二重盲検処置期間(DBTP)の最終訪問後8週間、患者を追跡した。この研究デザインを図1に示す。
プロトコールの説明
この研究は、スクリーニング、二重盲検処置および追跡調査の3期間からなった。
スクリーニング期間−患者(または別の指定された者、例えば配偶者、親族など)がmAb316Pのプラセボを自己注射/注射するためのトレーニングを受ける中間訪問を含む、継続期間2週間以下。研究への患者の無作化を可能にするために適格性評価を行った。治験責任医師には、無作為化訪問前に追加の自己注射トレーニングを必要とする患者にmAb316Pのプラセボの第2のトレーニング用キットを与える選択権があった。患者または治験責任医師は、患者に自宅または研究実施施設で注射させることを選択することができた。
二重盲検処置期間(DBTP)−24週間の無作為化、二重盲検、ダブルダミー研究処置期間。二重盲検期間中の初回注射は、無作為化当日[第0週[D1]−V3)に、研究への無作為化のためのIVRS/IWRSへのコール後できる限り速やかに、実施施設で行った。後続の注射は、患者(自己注射)または別の指定された者(例えば、配偶者、親族など)が患者の好む場所(自宅など)で行った。mAb316Pに無作為化された患者は、無作為化(V3)から第12週(V6)まで(すなわち、第0、2、4、6、8および10週)mAb316P 75mgの用量+毎日のエゼチミブのプラセボ POを受けた。第12週訪問(V6)時にこれらの患者は、盲検下、(1)第8週LDL−Cが<100mg/dL(1.81mmol/L)であった場合、(第12週以降、第22週の最終注射まで)mAb316P 75mg 隔週を継続した、または(2)第8週LDL−Cが2100mg/dL(1.81mmol/L)であった場合、(第12週以降、第22週の最終注射まで)mAb316P 150mg 隔週への用量アップタイトレーションを受けた。エゼチミブに無作為化された患者は、無作為化(V3)から第24週(V8)まで隔週注射されるmAb316Pプラセボ+毎日のエゼチミブ10mg POを受けた。
追跡調査期間−二重盲検処置期間終了後8週間の期間。
研究参加継続期間
研究継続期間は、2週間以下のスクリーニング期間と、効能および安全性評価のための24週間の二重盲検処置期間と、DBTPの最終訪問後の全ての患者についての8週間の処置後追跡調査期間とを含んだ。したがって、患者1名当たりの研究継続期間は、約34週間であった。
患者選択
この研究の標的集団は、系統的冠動脈リスク推定(SCORE)に基づいて10年リスクスコア≧1%かつ<5%で定義される中等度の心血管(CV)リスクがあり、署名された文書によるインフォームドコンセントを同封した、高コレステロール血症を有する患者であった。
上記組み入れ基準を全て満たした患者を、下記の3つのサブセクションに分類して番号を付けた下記の除外基準についてスクリーニングした。
A.研究方法論に関連した除外基準
1.第2週(スクリーニング、V1)に、LDL−C<100mg/dLまたは>190mg/dL(それぞれ、<2.59mmol/Lまたは>4.9mmol/L)。
2.次のように定義される確立されたCHDまたはCHD相当リスク歴:(A)記録されたCHD歴(次の1つまたはそれ以上を含む):(1)急性心筋梗塞(MI);(2)無症候性MI;(3)不安定狭心症;(4)冠動脈血行再建術(例えば、経皮的冠動脈形成術[PCI]または冠動脈バイパス移植術[CABG]);(5)侵襲的または非侵襲的検査(例えば、冠動脈造影法、トレッドミルを使用する負荷テスト、負荷心エコー検査または核イメージング)によって診断された臨床的に有意なCHD;(B)CHD相当リスクは、非冠動脈型の動脈硬化性疾患:(1)症候性末梢動脈疾患;(2)腹部大動脈瘤;または(3)一過性脳虚血発作もしくは虚血性脳卒中および「侵襲的もしくは非侵襲的検査(例えば、動脈造影法もしくは超音波)による臨床的に有意な頸動脈閉塞」、の臨床所見を含む。
3.リスクSCORE≧5%または(下に列挙するような)何らかの追加のリスク因子に関連するDMを有する患者:(1)記録された足関節・上腕血圧指数≦0.90歴;(2)記録された微量アルブミン尿症もしくは顕性アルブミン尿症歴(30)またはタンパク質が>2+であるスクリーニング訪問(−第2週))時の試験紙法による尿検査歴;または(3)記録された前増殖性網膜症もしくは増殖性網膜症歴または網膜症のレーザー処置歴。
4.スクリーニング訪問(−第2週、V1)から4週間以内のまたはスクリーニング訪問と無作為化訪問の間の、用量>1000mg/日での、スタチン、ニコチン酸、胆汁酸結合封鎖剤、腸コレステロール吸収(ICA)阻害剤(すなわち、エゼチミブ)またはオメガ3脂肪酸の使用。
5.スクリーニング訪問(−第2週、V1)から6週間以内のまたはスクリーニング訪問と無作為化訪問の間の、フィブラートの使用。
6.スクリーニング訪問(−第2週)前少なくとも4週間のまたはスクリーニング訪問と無作為化訪問の間の、安定した用量/量でなかった脂質に作用することができる栄養補助食品または市販の治療薬の使用。
7.スクリーニング訪問(−第2週)から4週間以内のまたはスクリーニング訪問と無作為化訪問の間の、紅色酵母米製品の使用。
8.予定されたPCI、CABG、頸動脈または末梢血行再建を研究中に受けように計画されている。
9.スクリーニング訪問(−第2週、V1)または無作為化訪問(第0週)時の収縮期血圧(BP)>160mmHgまたは拡張期BP>100mmHg。
10.過去12カ月以内のニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスIIIまたはIV心不全歴。
11.出血性脳卒中の既往歴
12.スクリーニング訪問(−第2週)時に18歳または法律上成人、いずれか高い方の年齢未満。
13.スクリーニング訪問(−第2週)前にコレステロール低下食についての事前指導を受けていない患者。
14.新たに(無作為化訪問[第0週]前3カ月以内に)診断された糖尿病または制御不良(スクリーニング訪問[−第2週]時にHbA1>8.5%)の糖尿病。
15.血清脂質またはリポタンパク質に影響を及ぼすことが公知の何らかの臨床的に有意な制御されていない内分泌疾患の存在。注記:甲状腺ホルモン補充治療を受けている患者は、投薬量がスクリーニング前少なくとも12週間安定しており、TSHレベルがスクリーニング訪問時に中央検査室の正常範囲内であった場合、組み入れることができる。
16.スクリーニング訪問(−第2週)前12カ月以内の肥満外科手術歴。
17.スクリーニング訪問(−第2週)前2カ月以内の変動>5kgによって定義される不安定な体重。
18.ホモ接合性またはヘテロ接合性家族性高コレステロール血症の既往歴
19.PCSK9機能喪失(すなわち、遺伝子突然変異または配列変異)の既往歴
20.無作為化訪問(第0週)前少なくとも6週間の、安定したレジメンで下垂体/副腎疾患のための補充治療として使用した場合を除く、全身性コルチコステロイドの使用。注記:局所的、関節内、鼻、吸入および眼科的ステロイド治療は、「全身性」とみなされず、許可された。
21.レジメンがスクリーニング訪問(−第2週)前の過去6週間安定しており、研究中にそのレジメンを変更する計画がない場合を除く、連続エストロゲンまたはテストステロンホルモン補充治療の使用。
22.不適切に処置された基底細胞皮膚癌、扁平細胞皮膚癌または子宮頸部上皮内癌を除く、過去5年以内の癌歴
23.HIV陽性の既往歴
24.1カ月以内または5半減期以内、いずれか長いほう、にMAb316Pトレーニング用プラセボキット以外の何らかの被験薬を摂取した患者
25.MAb316Pまたは何らかの他の抗PCSK9治療の何らかの治験に以前に参加したことがある患者
26.スクリーニング期間中に同意を撤回する患者(継続する意思がないまたは再訪問しない患者)
27.条件/状況、例えば、(1)治験責任医師または任意の治験補助医師の判断で、研究の安全な完了を妨げるもしくはエンドポイントの評価を制約することになる、スクリーニング時に特定される何らかの臨床的に有意な異常、例えば重大な全身性疾患、余命の短い患者;または(2)治験責任医師または任意の治験補助医師によって何らかの理由でこの研究に不適切とみなされる患者、例えば、(a)予定された訪問などの特定のプロトコール要件を満たすことができないと判断される患者;(b)患者もしくは治験責任医師により長期間の注射を投与もしくは耐容することができないと判断される患者;(c)治験責任医師もしくは任意の治験補助医師、薬剤師、研究コーディネーター、プロトコールの実施に直接関与する他の研究スタッフもしくは親族など;または(d)治験責任医師が研究継続期間に患者の参加を限定もしくは制限することになると感じる、実際のまたは予測される何らかの他の条件(例えば、地理的、社会的条件)の存在。
28.(無作為化第0週検査を含まない)スクリーニング期間中の検査所見:(1)B型肝炎表面抗原もしくはC型肝炎抗体についての検査陽性(再帰検査によって確認される);(2)出産可能な女性における血清ベータ−hCGもしくは尿妊娠検査陽性(第0週を含む);(3)トリグリセリド>400mg/dL(>4.52mmol/L)(1回の再検査を許可する);(4)4変数MDRD研究方程式に従ってeGFR<60mL/分/1.73m(中央検査室によって算定される);(5)ALTもしくはAST>3×ULN(1回の再検査を許可する);(6)CPK>3×ULN(1回の再検査を許可する);または(7)TSH<LLNもしくは>ULN。
B.バックグラウンド治療に関連した除外基準
29.それぞれの国の製品表示に示されている通りの対照実薬(エゼチミブ)に対する全ての禁忌または使用についての警告/注意(適宜)
C.MAb316Pに関連した除外基準
30.モノクローナル抗体治療に対する既知過敏症
31.妊娠しているまたは授乳中の女性
32.受胎調整の有効な避妊法を用いていない出産可能な女性および/または妊娠について検査する意思がないもしくは検査することができない女性
注記:出産可能な女性は、スクリーニングおよび無作為化訪問時に妊娠検査陰性が確認されていなければならない。彼女たちは、この研究を通して有効な避妊法を用いなければならず、指定訪問時に尿妊娠検査を繰り返すことに同意しなければならない。適用される避妊方法は、ヒト治験実施のための非臨床的安全性研究および薬剤の市販承認に関するガイダンスの覚書に従って、非常に有効な受胎調整方法の基準を満たさなければならない。閉経後女性は、少なくとも12カ月間、無月経でなければならない。
研究処置
被験薬(IMP)および投与
滅菌mAb316P薬物を75mg/mLと150mg/mLの両方の濃度で体積1mLとして自己注射器に供給した。mAb316Pの滅菌プラセボは、自己注射器にタンパク質を体積1mLとして加えたことを除いて、mAb316Pと同じ処方で製造した。
オーバーカプセル化されたエゼチミブ10mg錠剤。エゼチミブカプセルのプラセボ。
mAb316P IMPを自己注射によって投与することができ、または別の指定された人(例えば、配偶者、親族など)が投与することができた。使用した自己注射器は、患者に提供したシャープコンテナに廃棄された。
患者にmAb316P IMPを冷蔵庫で保管するように頼んだ。投与前に、IMPを取り出して室温の安全な場所に約30〜40分間、置かなければならなかった。その後、できる限り速やかにIMPを投与すべきであった。
二重盲検処置期間中、mAb316PまたはmAb316Pのプラセボを隔週、皮下投与し、この投与を第0週に開始して、二重盲検処置期間終了2週間前の最終注射(第22週)まで継続した。
理想的にはMAb316P IMP注射を隔週、ほぼ同じ時刻に皮下投与した;しかし±3日のウィンドウ期を有することは許容可能であった。
エゼチミブ10mgカプセルまたはエゼチミブのプラセボカプセルを1日1回、ほぼ同じ時刻に食物と共にまたは食物なしで経口摂取した。
研究エンドポイント
主要効能エンドポイント
主要効能エンドポイントは、次のように定義される、ベースラインから第24週までの算定LDL−Cの変化率であった:100×(第24週における算定LDL−C値−ベースラインでの算定LDL−C値)/ベースラインでの算定LDL−C値。
ベースライン算定LDL−C値は、初回二重盲検注射日と初回カプセル摂取の間の最早期と定義される初回二重盲検IMPの前に得た最後のLDL−Cレベルであった。
第24週における算定LDL−Cは、第24週時間ウィンドウ内および主要効能期間中に得たLDL−Cレベルであった。主要効能期間は、初回二重盲検IMPから、最終二重盲検IMP注射の最大21日後、または第24週分析ウィンドウの上限、いずれか早いほう、までの期間と定義した。
(予定されたまたは予定外の、空腹時のまたは空腹時でない)全ての算定LDL−C値を用いて、上記定義に従って必要に応じて主要効能エンドポイントについての値を得ることができる。
副次的効能エンドポイント
重要な副次的効能エンドポイント
(1)ベースラインから第12週までの算定LDL−Cの変化率:第12週における算定LDL−Cが第12週分析ウィンドウ内および12週間の効能期間中に得たLDL−Cレベルであったことを除いて、上記と同様の定義および規則。12週間の効能期間は、初回二重盲検IMPから、第6訪問再補給IVRSコンタクト、または最後の二重盲検IMP注射の最大21日後、いずれか早いほう、までの期間と定義した。第6訪問再補給IVRSコンタクトの日に採集した血液サンプルは、タイトレーション前とみなした。
(2)ベースラインから第24週までのアポBの変化率。主要エンドポイントについてのものと同じ定義および規則。
(3)ベースラインから第24週までの非HDL−Cの変化率。主要エンドポイントについてのものと同じ定義および規則。
(4)ベースラインから第24週までの総Cの変化率。主要エンドポイントについてのものと同じ定義および規則。
(5)ベースラインから第12週までのアポBの変化率。ベースラインから第12週までの算定LDL−Cの変化率についてのものと同じ定義および規則。
(6)ベースラインから第12週までの非HDL−Cの変化率。ベースラインから第12週までの算定LDL−Cの変化率についてのものと同じ定義および規則。
(7)ベースラインから第12週までの総Cの変化率。ベースラインから第12週までの算定LDL−Cの変化率についてのものと同じ定義および規則。
(8)主要エンドポイントについて用いた定義および規則を用いて、第24週にLDL−C目標<100mg/dl(2.59mmol/L)に達する患者の割合。
(9)主要エンドポイントについて用いた定義および規則を用いて、第24にLDL−C目標<70mg/dl(1.81mmol/L)に達する患者の割合。
(10)ベースラインから第24週までのLp(a)の変化率。主要エンドポイントについてのものと同じ定義および規則。
(11)ベースラインから第24週までのHDL−Cの変化率。主要エンドポイントについてのものと同じ定義および規則。
(12)ベースラインから第12週までのHDL−Cの変化率。ベースラインから第12週までの算定LDL−Cの変化率についてのものと同じ定義および規則。
(13)ベースラインから第12週までのLp(a)の変化率。ベースラインから第12週までの算定LDL−Cの変化率についてのものと同じ定義および規則。
(14)ベースラインから第24週までの空腹時TGの変化率。主要エンドポイントについてのものと同じ定義および規則。
(15)ベースラインから第12週までの空腹時TGの変化率。ベースラインから第12週までの算定LDL−Cの変化率についてのものと同じ定義および規則。
(16)ベースラインから第24週までのアポA−1の変化率。主要エンドポイントについてのものと同じ定義および規則。
(17)ベースラインから第12週までのアポA−1の変化率。ベースラインから第12週までの算定LDL−Cの変化率についてのものと同じ定義および規則。
他の副次的効能エンドポイント
(18)第12週にLDL−C<100mg/dL(2.59mmol/L)に達する患者の割合。
(19)第12週にLDL−C<70mg/dL(1.81mmol/L)に達する患者の割合。
(20)ベースラインから第12および24週までのLDL−Cの絶対変化(mg/dLおよびmmol/L)。
(21)ベースラインから第12週まで、そして第24週までのアポB/アポA−1比の変化。
(22)第12週および第24週にアポB<80mg/dL(0.8g/L)である患者の割合。
(23)第12および24週に非HDL−C<100mg/dL(2.59mmol/L)である患者の割合。
(24)第12および24週にLDL−C<70mg/dL(1.81mmol/L)である、および/またはLDL−Cの?50%低減(LDL−C?70mg/dL[1.81mmo/L]の場合)を有する、患者の割合。
効能評価方法
脂質パラメータ
総C、HDL−C、TG、アポB、アポA−1およびLp(a)を直接測定した。全ての訪問(−第1週および追跡調査訪問を除く)時にフリードワルドの式を用いてLDL−Cを算定した。TG値が400mg/dL(4.52mmol/L)を超えていた場合には、中央検査室は、それを算定せずに(ベータ定量法によって)LDL−Cを再帰的に測定した。非HDL−Cは、総CからHDL−Cを減算することによって算定した。アポB/アポA−1比を算定した。
安全性エンドポイント−観察期間
安全性データの観察は、次の通りであった:
処置前期間:処置前観察期間は、インフォームドコンセント署名から二重盲検IMPの初回投与までと定義した。
TEAE間:TEAE観察期間は、二重盲検IMPの初回用量から二重盲検IMP注射の最終用量+70日(10週間)までの期間と定義した。二重盲検IMP注射中止後10週間まではMAb316Pの残留効果が予想されるからである。
処置後期間:処置後観察期間は、TEAE期間終了翌日に開始して研究終了までの期間と定義した。
安全性エンドポイント−安全性検査室
臨床検査データは、検尿および血液分析、血液学(RBC数、赤血球分布幅(RDW)、網状赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板、WBC数と白血球百分率数)、標準的化学(グルコース、ナトリウム、カリウム、塩化物、重炭酸塩、カルシウム、リン、尿窒素、クレアチニン、尿酸、総タンパク質、LDH、アルブミン、γ−グルタミルトランスフェラーゼ[γGT])、C型肝炎抗体、肝パネル(ALT、AST、ALPおよび総ビリルビン)、およびCPKからなった。
安全性エンドポイント−バイタルサイン測定:バイタルサインは、座位でのHR、収縮期および拡張期BPを含んだ。
他のエンドポイント抗MAb316P抗体評価:抗mAb316P抗体は、抗体状態(陽性/陰性)および抗体力価を含んだ。
サンプリング時間:抗mAb316P抗体判定用の血清サンプルをこの研究を通して定期的に採取した。予定された最初のサンプルを無作為化訪問時、IMP注射前(投与前)に得た。
追跡調査訪問時に抗mAb316P抗体について240以上の力価を有する患者には、最終用量の6〜12カ月後の、そしてその後は力価が240未満に戻るまで約3〜6カ月ごとの、追加の抗体サンプルがあった。研究の盲検性を維持するために、240未満の力価を有した患者に追跡調査訪問時に研究後抗mAb316P抗体のサンプル収集を依頼した。
サンプリング手順:体積五(5)mlの血液を各抗mAb316P抗体サンプルのために採集した。
生物学的分析法:全ての抗mAb316P抗体(ADA:抗薬物抗体)サンプルを分析した。
妥当性が検証されている、非定量的、力価ベースの架橋イムノアッセイを用いて、抗mAb316P抗体サンプルを分析した。このアッセイは、サンプル中の抗MAb316P抗体の初期スクリーニング、薬物特異性に基づく確認アッセイ、および力価の測定を含んだ。検出の下限は、おおよそ1.5ng/mLであった。
ADAアッセイで陽性であったサンプルを、妥当性が検証されている、非定量的、競合リガンド結合アッセイを用いて、中和抗体について評価した。モノクローナル陽性対照中和抗体に基づく検出の下限は、390ng/mLであった。
hs−CRP:ベースラインから第12週および第24週までのhs−CRPの変化率。
HbA1C:ベースラインから第12週および第24週までのHbA1cの絶対変化(%)。
EQ−5D患者質問票:EQ−5Dは、臨床および経済評価のための健康についての単純で一般的な尺度を提供するためにEuroQol Groupによって開発された健康状態の標準化された尺度である。健康に関連した生活の質の尺度としてのEQ−5Dは、移動の程度、身の回りの管理、普段の活動、痛み/不快感、不安/ふさぎ込みという5つの観点によって健康を定義する。各観点は、次の3つの回答(3つの重症度順序レベル)の1つをとることができる:「問題なし」(1)「多少問題あり」(2)「かなり問題あり」(3)。健康状態全般は5桁の数で定義される。この5つの観点での分類によって定義される健康状態を対応するインデックススコアに変換することができ、このインデックススコアは、健康状態を数値で表すものであり、0は「死亡」を表し、1は「完全な健康」を表す。1つまたはそれ以上の観点に対する回答が欠けている場合、インデックススコアは欠けていることになる。
EQ−5D変数は、各EQ−5D項目の回答、インデックススコア、およびベースラインからのインデックススコアの変化を含んだ。
薬物動態:薬物動態変数は、全血清mAb316P濃度を含んだ。必要に応じて、全および遊離PCSK9濃度を同じPKサンプルから測定することができた。
サンプリング時間:全mAb316P濃度の血清サンプルを、第0週(無作為化訪問)時およびその後、追跡調査期間終了までの数回の訪問時のIMP(投与前)前に採集した。吸収相に関する情報を収集するために、第22週IMP注射の5日(±2)後、または被験者がオントリートメントである任意の後続のIMP注射の5日(±2日)後、任意選択のPKサンプルを採集した。
サンプリング手順:体積五(5)mlの血液を各PKサンプルのために採集した。
生物学的分析法:全mAb316P濃度(すなわち、遊離mAb316P、およびPCSK9:mAb316P複合体中に存在するmAb316P)の判定のために、妥当性が検証されている酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて全てのPKサンプルを分析した。このアッセイの定量下限(LLQ)は、0.078μg/mLである。
必要に応じて、全および遊離PCSK9レベルの判定のために、妥当性が検証されているELISAを用いてPKサンプルを分析することができた。LLQは、全PCSK9アッセイについては0.156μg/mLであり、遊離PCSK9アッセイについては0.0312μg/mLである。
研究手順
第1日/第0週(無作為化訪問)後の全ての訪問について、特定の日数の時間枠を許可した。第12および24週の訪問についてのウィンドウ期は±3日であり、ならびに二重盲検処置期間および追跡調査期間中の全ての他の実施施設訪問についてのウィンドウ期は±7日であった。無作為化訪問(第1日/第0週)および注射トレーニングのためのスクリーニング訪問(−第1週)には+3日のウィンドウ期を許可した。
採血:脂質パラメータ(すなわち、総C、LDL−C、HDL−C、TG、非HDL−C、アポB、アポA−1、アポB/アポA−1比、Lp[a])の判定のための採血は、この研究を通して全ての実施施設訪問について午前中、空腹状態(すなわち、一晩、少なくとも10〜12時間絶食し、喫煙を自制する)で行うべきである。採血前48時間以内のアルコール摂取および24時間以内の激しい身体運動をやめさせた。
検査室検査:血液学;化学;肝パネル(正常範囲より高い全ビリルビン値の場合、抱合型ビリルビンと非抱合型ビリルビンへの区別が自動的に行われることになる);クレアチンホスホキナーゼ(CPK);B型肝炎表面抗原;C型肝炎抗体(検査陽性を再帰検査で確認した);および血清妊娠検査を含む、検査データを収集し、中央検査室に送った。
採尿:尿分析−尿試験紙を中央検査室で行い、pH、比重について、ならびに血液、タンパク質、グルコース、ケトン、硝酸塩、白血球エステラーゼ、ウロビリノーゲンおよびビリルビンの存在について評価した。尿試験紙が異常であった場合には、標準顕微鏡検査を行うことにする。
他のエンドポイント評価方法:全ての他の血液パラメータは、この研究の間、中央検査室が測定した。採血前48時間以内のアルコール摂取および24時間以内の激しい身体運動をやめさせた。この研究を通して中央検査室が血糖パラメータ(HbA1cおよび血清グルコース)を定期的に測定した。炎症性パラメータ、hs−CRP用の血液サンプルをこの研究を通して定期的に採集した。
薬物動態サンプル:mAb316P濃度の評価用の血清サンプルをこの研究を通して定期的に採取した。
健康診断:全身の健康診断を行うべきであった。
血圧(BP)/心拍数:BPは、標準化された条件下で、ほぼ同じ時刻に、同じ腕で、同じ器具で(患者が少なくとも5分間、座位で心地よく安静にした後)測定すべきである。値をe−CRFで記録しなければならなかった:収縮期BPと拡張期BPの両方を記録すべきである。初回スクリーニング訪問時にはBPを両腕で測定すべきである。最高拡張期圧を有する腕をこの訪問時に決定することにし、この研究を通してこの腕でBPを測定すべきである。この最高値をe−CRFに記録することにする。心拍数は、BPの測定時に測定することにする。
心電図:12リードECGは、少なくとも10分安静にした後、仰臥位で行うべきである。
体重および身長:体重は、下着または極軽い衣類を着用し、靴を履いていない、膀胱を空にした患者で得るべきである。
統計解析
1処置アーム当たり患者45名のサンプルサイズは、以前のmAb316P試験(McKenneyら、「Safety and efficacy of a monoclonal antibody to proprotein convertase subtilisin/kexin type 9 serine protease, SAR236553/REGN727, in patients with primary hypercholesterolemia receiving ongoing stable atorvastatin therapy」、J Am Coll Cardiol、第59巻、2344〜2353頁(2012))に基づいて25%の共通標準偏差(SD)を仮定して、5%の有意性で、両側t検定を用いて、ベースラインから第24週までのLDL−C変化率に関してmAb316Pとエゼチミブ間で20%の平均差を検出するために95%検出力を有するように算定した。
主要エンドポイントは、治療企図(ITT)集団において評価し、この集団は、ベースラインにおいておよび第4〜24週の計画された時点の1つにおいて少なくとも1つの算定LDL−C値を有した全ての無作為化患者を含んだ。オントリートメント解析(修正ITTまたはmITTに対応する)も行い、これは、研究処置の初回用量と、最終注射の最大21日後まで、または最後のカプセル摂取の3日後まで、いずれか早いほう、との間の期間と定義されるオントリートメントでベースラインにおけるおよび第4〜24週の計画された時点の1つにおける少なくとも1つのLDL−C値を有した全ての無作為化および処置患者を含んだ。
欠測データは、混合効果モデル反復測定(mixed effect model with repeated measures)(MMRM)アプローチ(Siddiquiら、「MMRM vs.LOCF:a comprehensive comparison based on simulation study and 25 NDA datasets」、J Biopharm Stat、第19巻、227〜246頁(2009);National Research Council、「The Prevention and Treatment of Missing Data in Clinical Trials」、Panel on Handling Missing Data in Clinical Trials.Committee on National Statistics、Division of Behavioral and Social Sciences and Education、2010、Washington,DC:The National Academies Press;Andersenら、「On the practical application of mixed effects models for repeated measures to clinical trial data」、Pharm Stat.、第12巻、7〜16頁(2013))によって考慮した。ITT解析のために、第4〜24週の計画された時点(第4、8、12、16および24週を意味する)での全ての入手可能な測定値を、状態がオンまたはオフトリートメントであれば何れも、MMRMで用いた。1つのMMRMモデルをLDL−Cのために用いて、第24および12週における最小二乗平均推定値および処置アーム間比較を得た。このモデルに関するさらなる詳細を下で与える。オントリートメント解析のために、第4〜24週の計画された時点での全ての入手可能なオントリートメント測定値(すなわち、最終注射の最大21日後/最終カプセルの3日後、いずれか早いほう、まで)をMMRMモデルで用いた。ITT解析の場合と同じように、1つのモデルを用いて、オントリートメント解析についての第24および12週における推定値および比較を得た。Lp(a)およびトリグリセリド以外の連続する重要な副次的エンドポイントを主要エンドポイントと同様に解析した。副次的エンドポイントおよびサブグループ解析のための統計的方法論の説明を下で与える。
安全性解析は、全ての無作為化および処置患者を含んだ。安全性データを記述統計学によって解析した。全ての統計解析は、SAS(登録商標)バージョン9.2またはそれ以降のバージョン(SAS Institute Inc.、Cary、NC)を使用して行った。
混合効果モデル反復測定(MMRM)
MMRMは、処置群(mAb316P対エゼチミブ)、時点(第4、8、12、16および24週)および処置/時点相互作用の固定カテゴリー効果、ならびにベースライン低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)値およびベースライン値/時点相互作用の連続固定共変量を含んだ。このモデルからのアウトプットは、両方の処置群についての第24週におけるベースライン調整最小二乗(LS)平均推定値とそれらの対応する標準誤差(SE)であった。適切な定数定義文を用いて、これらの推定値間の差を両側5%アルファレベルで検定した。一次解析のロバスト性を評価するために、および群間のオントリートメント結果を比較するために、オントリートメントで収集したLDL−C値にもMMRMモデルを適用した。
サブグループ解析
様々なサブグループにわたって処置効果の均一性を評価するために、処置/サブグループ因子、時点/サブグループ因子および処置/時点/サブグループ因子相互作用の項ならびにサブグループ因子の項を一次MMRMモデルに加えた。対象とするサブグループは、ボディーマスインデックス(BMI)≧30kg/m;性別;地域(北米、西欧);年齢≧65歳;ベースラインLDL−C(≧130または≧160mg/dL);ベースライン高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)<40mg/dL;ベースライン空腹時トリグリセリド≧150mg/dL;ベースラインリポタンパク質(a)[Lp(a)]≧30mg/dL;およびベースライン遊離プロタンパク質転化酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)レベル(中央値より下/上)を含んだ。
重要な副次的エンドポイントの統計解析
重要な副次的エンドポイントを解析するために、階層法を用いて第1種過誤を制御し、多重性を処理した。上に与えた指示を順次用いて、治療企図集団に関して副次的効能エンドポイントを検定した。Lp(a)およびトリグリセリドを除いて、連続する重要な副次的エンドポイント(第12週における副次的エンドポイントを含む)は、処置群、第24週までの計画された時点および処置/時点相互作用の固定カテゴリー効果、ならびに対応するベースライン値およびベースライン値/時点相互作用の連続固定共変量を用いて、主要エンドポイントの場合と同じMMRMモデルを使用して、解析した。Lp(a)およびトリグリセリド(非ガウス分布を有する)ならびに2値エンドポイント(LDL−C<100mg/dLおよび<70mg/dLである患者の割合)は、欠測値を処理するための多重代入法アプローチを用いて解析した。Lp(a)およびトリグリセリドについては、多重代入法の後、効果として処置群および対応するベースライン値を用いるロバスト回帰モデルを続けた。2値エンドポイントについては、多重代入法の後、効果として処置群および共変量として対応するベースライン値を用いるロジスティック回帰を続けた。オントリートメント値を用いて上で説明したのと同じ統計アプローチを用いて、重要な副次的エンドポイントの感度解析を適用した。
結果
スクリーニングした患者204名のうち、103名がこの研究の適格基準を満たし、彼らを無作為化した(mAb316Pアームに52名およびエゼチミブアームに51名;図2)。ベースライン特性および脂質パラメータは、2つの研究アームにわたって一般に均等に分布していた(表1)。合計4名(mAb316Pアームの3名およびエゼチミブアームの1名)の患者は、スクリーニング時に糖尿病を有すると特定された。平均ベースラインLDL−Cレベルは、mAb316Pアームでは141.1mg/dL(3.65mmol/L)およびエゼチミブアームでは138.3mg/dL(3.58mmol/L)であった(表1)。
mAb316Pアームの患者14名を第12週に盲検下で150mg Q2W投与レジメンにアップタイトレーションした。彼らの第8週LDL−Cは、≧70mg/dLであり;これらの患者のうち1名だけは、LDL−C>100mg/dLを有したからであった。平均ベースラインLDL−C値は、mAb316P 150mg Q2Wへのアップタイトレーションを受けた患者では153.2mg/dL(3.96mmol/L)であり、アップタイトレーションを受けていない患者では134.7mg/dL(3.48mmol/L)であった。患者をアップタイトレーションしたか否かに従って他の脂質値のベースライン値を表2に示す。
全体的としては、mAb316Pアームの患者44/52名(85%)およびエゼチミブアームの患者44/51(86%)が24週間の処置期間を完了した(図2)。研究処置中止の主な理由は、両方の処置アームにおいてTEAEであった(図2)。処置を時期尚早に中止した患者15名のうち、mAb316Pアームの患者3名(6%)およびエゼチミブアームの患者5名(10%)は、第24週における算定LDL−C値を有さなかった。
各アームの患者48名(エゼチミブアームでの94%、mAb316Pアームでの92%)は、全ての注射について自己注射した。エゼチミブアームの患者3名およびmAb316Pアームの4名は、一部の注射については自己注射し、他の注射についてはそうするように別の人に頼んだ。全ての注射を行うように別の人に頼んだ患者はいなかった。
無作為化された全ての患者は、彼らの割り付けられた薬物を少なくとも1用量は受け、治療企図(ITT)および安全性集団に組み入れられた(図2)。各処置アームからの患者1名は、一切の無作為化後LDL−C測定を行う前に処置から離脱し、そのためこの患者をオントリートメント解析から除外した。しかし、彼らは研究を続け、オフトリートメントだが24週間の研究期間終了前に得たLDL−C測定値を有したため、彼らをITT解析に組み入れた。
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効能結果
主要効能解析(ITT解析)についての、ベースラインから第24週までのLDL−Cの最小二乗(LS)平均(SE)低減率は、エゼチミブ群での16(3)%に対してmAb316P群では47(3)%であり、−32(4)%の統計的に有意なLS平均(SE)群間差(P<0.0001)があった(表3)。オントリートメント解析からの結果は、ITT解析からのものに類似していた:ベースラインから第24週までのLS平均(SE)LDL−C低減は、mAb316Pおよびエゼチミブそれぞれで、54(2)%対17(2)%(P<0.0001)であった(表3)。
第12週において、mAb316Pアームの全ての患者が75mg Q2Wを受けていた場合、LDL−Cレベルは、ITT解析でエゼチミブでの20(3)%に対してmAb316Pでは48(3)%であり、−28(4)%の群間LS平均(SE)差があった(P<0.0001)。第12週におけるオントリートメント解析での対応するLDL−C低減は、エゼチミブでの20(2)%に対してmAb316Pでは53(2)%であり、−33(3)%の群間LS平均(SE)差があった。
図3は、mAb316Pおよびエゼチミブで処置した患者についての研究期間にわってのLDL−Cレベルの経時変化を示す。ここにオントリートメント値を示す。脱落による交絡が一切ない薬物効果の持続性を理解することがその目的であるからである。mAb316Pを受けた患者ではベースラインから第4週までのLDL−Cに劇的な降下があり、ロバストなLDL−C低減が第4週から第24週の処置期間終了まで維持された。MMRMモデルでの処置と時点間の相互作用の統計解析は有意でなく、これは、(図3で例証するように)エゼチミブに対してmAb316PのLDL低下効果の経時的安定性を示唆していた。
アップタイトレーション前、第12週にLDL−C低減≧50%を有する患者の推定割合は、エゼチミブアームでの患者の3%と比較してmAb316Pアームでは58%であった(ITT)。オントリートメント解析での対応する値は、mAb316Pアームでは65%およびエゼチミブアームでは2%であった。全ての患者は、処置に曝露されているときにmAb316Pに応答した(オントリートメント集団)(図4)。
LDL−C≧100mg/dLではなく≧70mg/dLに基づくアップタイトレーションの主要効能パラメータに対する影響を推定するために、LDL−C値<100mg/dLを有するにもかかわらずアップタイトレーションを受けた患者13名についてのアップタイトレーション後のLDL−C値を除外して、追加の解析を行った;この解析によって、全体的ITT解析に類似した結果を得た(表4)。
アポB、総コレステロールおよび非HDL−Cに関するベースラインからの低減率は、第24週ではエゼチミブに対してmAb316Pついてのほうが有意に大きく、ITT解析とオントリートメント解析で類似していた(表5)。Lp(a)、TGの中等度の低減およびHDL−Cの増加が両方の研究処置後に観察され、mAb316Pアームとエゼチミブアーム間に差はなかった(表5)。
サブグループ解析は、様々なパラメータについてITT集団ではエゼチミブに対してmAb316P効能に大きな差がないことを示唆していた(図5)。
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安全性結果
少なくとも1つのTEAEを経験した患者の総百分率は、mAb316Pアームでは69%およびエゼチミブアームでは78%であった(表6)。死亡はなかった。2件のSAEがTEAE期間に報告された:mAb316P 75mg Q2Wを3カ月間受けた、心房細動および慢性閉塞性肺疾患歴を有する患者1名は、肺塞栓症を経験した;研究処置を中止し、患者を入院させ、そこで彼は回復した。関節炎の病歴を有するエゼチミブアームの患者1名は、関節窩侵食を経験し、この患者を手術(肩関節形成術)のために入院させた。この患者は病院で回復し、この研究を完了した。治験責任医師は、いずれのSAEも研究処置に関連したものではないとみなした。いずれかの処置アームの5%またはそれ以上の患者に起こったTEAEを表6に示す。
患者9名(mAb316Pアームの患者5名[10%]およびエゼチミブアームの4名[8%])は、1つまたはそれ以上のTEAE後、研究処置を時期尚早に中止した。エゼチミブ群において中止につながったTEAEは、患者1名での痛風、患者1名での疲労、背部痛および頻尿、患者1名での腹部疝痛および注射部位反応、ならびに患者1名での鮮明な夢であった。mAb316P群において中止につながったTEAEは、患者1名での肺塞栓症、患者1名での、悪心、疲労、頭痛および紅潮、患者1名での関節痛(全身性疼痛)、患者1名での注射部位反応、ならびに他の患者1名での下痢であった。
TEAEの最も一般的なクラスは、感染症(42.3%mAb316P対39.2%エゼチミブ)、主として呼吸器感染症であった。筋肉関連TEAEは、mAb316P患者のうちの2名(4%)およびエゼチミブ患者のうちの2名(4%)に起こった。正常上限の10倍を超えるクレアチニンキナーゼレベル上昇がエゼチミブ群の患者1名で報告された(表6)。患者3名(mAb316P群の患者1名[2%]およびエゼチミブ群の患者2名[4%])は、局所注射部位反応を経験した。これらの事象は、軽度のものであった。mAb316Pアームの患者は、逐次的注射後に局所注射部位反応の3回の発症を経験した。mAb316P 75mg Q2Wで処置した患者3名は、少なくとも1つのLDL−C値<25mg/dLを経験した;低いLDL−Cレベルに関連する特別な安全性の懸念は、これら3名の患者では認められなかった。
バイタルサイン(血圧、心拍数)の異常を示した患者は、エゼチミブ群には殆どおらず(2名またはそれ以下)、mAb316P群には全くいなかった。加えて、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの正常上限の3倍を超える増加はなかった(表6)。血糖≧126mg/dL(7mmol/L)を有した患者は、mAb316Pアームにおけるほうがエゼチミブアームにおけるより多かった(患者6名対患者1名;表6)。処置期間中に高血糖を経験したmAb316Pアームの患者6名は、スクリーニングまたはベースライン時に異常な空腹時グルコースを有し、血糖の変化に関しても、HbA1cに関しても、スクリーニングから第24週までの変化にいずれのパターンも観察されなかった(表7)。
治療創発的抗薬物抗体は、mAb316Pアームの患者6名(12%)に見られ、エゼチミブアームの患者では観察されなかった。全ての抗薬物抗体陽性患者について、力価は低く(用いたアッセイで、≦240)、mAb316P薬物動態、LDL−C効果または安全性に影響を及ぼすことがあるいずれの中和抗薬物抗体も検出されなかった。
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これは、mAb316Pの初めての第3相研究であり、mAb316Pの最初の単剤治療研究であり、75mg Q2W投与レジメンを用いる初めての研究であった。MAb316Pは、エゼチミブと比較して単剤治療で24週間の処置にわたって優れた効能を明示した。エゼチミブ10mg/日についての20%と比較してmAb316P 75mg Q2Wを受けた患者では第12週(アップタイトレーション前)に48%のLDL−C低減がITT解析で観察された。オントリートメントであった患者についての対応する低減は、エゼチミブでの20%に対してmAb316P 75mg Q2Wでは53%であった。
MAb316P効能は、LDL−CおよびPCSK9レベルならびに人口統計をはじめとするベースラインパラメータを通して一貫していた。実際、全てのmAb316P処置患者は、オントリートメント解析で単剤治療での75mg Q2Wに応答した。MAb316P単剤治療は、第4〜24週の持続的LDL低下効果を示した。
LDL−Cの顕著な低減と一致して、mAb316Pは、総コレステロール、アポBおよび非HDL−Cのロバストな低減ももたらした。MAB316Pは、エゼチミブアームにおける12%と比較して、本研究ではLp(a)を18%低減させる結果となった。
MAb316Pは、エゼチミブに匹敵する耐容性および安全性を明示した。筋肉関連AEは、両方の処置アームにおいて類似した頻度で起こった(mAb316P患者の4%およびエゼチミブ患者の4%)。さらに、mAb316P処置患者における抗薬物抗体の発生は少なかった。
要約すると、これは、PCSK9阻害剤の初めての6カ月継続、第3相二重盲検評価である。約50%のLDL−Cの低減が単剤治療集団において12週間でのmAb316P 75mg Q2Wアームで観察され、これは、エゼチミブアームで観察されたもの(20%)より実質的に大きかった。この研究は、第2相試験からの安全性観察を広げ、使用および耐容性を制限するように見える安全性シグナルの証拠は一切ない。これは、注射関連AEを殆どもたらさない(mAb316P患者の<2%およびエゼチミブ患者の<4%)、使い捨て自己注射器を利用するPCSK9に対する注射用モノクローナル抗体の最初の無作為化対照試験でもあった。
薬物動態結果
mAb316P単剤治療を受けた患者のmAb316P濃度と遊離PCSK9濃度とLDL−C濃度との関係を評価した。遊離PCSK9およびLDL−Cの変化をエゼチミブアームでも評価した。
血清mAb316Pおよび遊離PCSK9レベルを、妥当性が検証されている酵素結合免疫吸着アッセイを用いて判定した。
第12週より前に中止しなかったmAb316P処置アームの患者46名に関して薬物動態分析を行った(表8)。mAb316P処置患者46名のうち、患者32名は、第8週にLDL−C<70mg/dLを達成し、mAb316P 75mg Q2Wで維持し、患者14名は、mAb316P 150mg Q2Wにアップタイトレーションした。
ベースラインLDL−Cレベルは、mAb316Pアップタイトレーションを受けていない患者と比較してmAb316Pアップタイトレーションを受けた患者でのほうが大きかった(P=0.044)(表9)。アップタイトレーションを受けていない群では、第4週に観察されたLDL−C低減が第24週まで持続された(表6A)。相対的にアップタイトレーションを受けていない群ほどではないにせよ、アップタイトレーションを受けた群でも第4週までにLDL−Cレベルが低減された(図6A)。mAb316PでのLDL−Cの低減は、mAb316P用量を第12週にアップタイトレーションした(図6A)かどうかに関わらず第12および24週で同様であり、エゼチミブでより一貫して大きかった(表9)。
血清mAb316Pレベルは、全ての患者が75mg用量を受けた場合、最初の12週間の間はアップタイトレーションを受けた群とアップタイトレーションを受けていない群とで同様であり、それから第12週にアップタイトレーションを受けた患者においてほぼ倍増した(図6B;表9)。
ベースライン遊離および全PCSK9レベルは、アップタイトレーションを受けていない群およびエゼチミブ群と比較してアップタイトレーションを受けた群でのほうがわずかに大きかった(表9)。遊離PCSK9レベルは、アップタイトレーションを受けていない群では第4週に最低点に達し;遊離PCSK9レベルは、アップタイトレーションを受けた群でも第4〜12週に低減されたが、アップタイトレーションを受けていない群より2〜3倍高かった(図6C;表9)。第12週におけるmAb316P 150mg Q2Wへのアップタイトレーションは、遊離PCSK9レベルのさらなる抑制と関連し;低減は第24週まで維持された(図6C;表9)。エゼチミブ群では、遊離PCSK9レベルは、ベースラインから第12週までは比較的不変のままであったが、第24週に低減された(表9)。全PCSK9レベルは、mAb316Pでの処置後に増加したが、エゼチミブでの処置後には増加しなかった(表9)。これは、おそらく、抗体:PCSK9複合体が遊離PCSK9より長い半減期を有したためである。
第24週までmAb316P 75mg Q2W単剤治療で維持された患者では、遊離PCSK9レベルが第4週までに最大限に低減され;LDL−C低下効能は、第4週から第24週まで維持された。第12週にmAb316P 150mg Q2Wへのアップタイトレーションを受けた患者では、mAb316P血清濃度が予想通り増加し、遊離PCSK9レベルのさらなる減少はなく、LDL−Cに対するさらなる効果も殆どなかった。これらの結果は、mAb316P 75mg Q2Wでの単剤治療が、スタチンまたは他の脂質修飾治療を受けていない殆どの患者において24週間にわたっての遊離PCSK9の遮断およびLDL−C低下効能の維持に十分であることを示唆している。mAb316Pの標的媒介クリアランスは遊離PCSK9へのmAb316Pの結合によって加速されるので、患者が、遊離PCSK9を増加させる併用スタチンまたは他の脂質修飾剤を受けている臨床の場では、mAb316Pのより高い用量が求められることもある。
本発明の範囲は、本明細書に記載する特定の実施形態によって限定されない。実際、本明細書に記載するものに加えて、本発明の様々な修飾形態が、上述の説明および添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような修飾形態は、添付の特許請求の範囲の範囲に入ることが意図される。
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スタチンに不耐性である原発性高コレステロール血症を有する患者における抗PCSK9抗体(「mAb316P」)の効能および安全性についての無作為化、二重盲検研究
序論
本研究の目的は、スタチンに不耐性である原発性高コレステロール血症(heFHおよび非FH)を有する患者のLDL−Cを低減させる抗PCSK9抗体(REGN727またはアリロクマブとしても公知の、「mAb316P」)の能力をエゼチミブ(EZE)と比較して評価することであった。
高い治療順守およびスタチン耐性を有する高度に選択された患者群を参加させる治験での筋肉関連症状は、観察研究での所見によって証明されるように、診療所における筋肉痛の真の有病率を示さないことがある。筋肉関連悪性事象(AE)の発生率のこの食い違いは、複数の薬物に伴うAEを経験している一部の患者にはあまり重要でないことがあり、これがスタチンに対する真の不耐性を表さないこともある。したがって、スタチンだけに関するAEを有するのではなく複数の薬物に関するAEを有することがある患者を考慮するために、十分な数の患者をスクリーニングし、本研究の単盲検プラセボ導入期に登録して、患者250名(100:100:50;mAb316P:EZE:アトルバスタチン)の二重盲検処置期間サンプルサイズを確保した。
24週間の二重盲検研究処置継続期間での患者250名(100:100:50;mAb316P:EZE:アトルバスタチン)のサンプルサイズは、効能に関する情報を得ること、一般には安全事象、全ての骨格筋関連事象、および特に骨格筋事象に関連した離脱に関する記述経験を積むことを意図したものであった。非スタチン代替物のみを使用するとLDL−C目標到達に至ることがより難しい集団として、中等度の、高いまたは非常に高いCVリスクを有するスタチン不耐性患者をこの研究に組み入れた。CVリスクの定義は、既存のガイドラインに基づく(例えば、The Task Force for the management of dyslipidaemias of the European Society of Cardiology[ESC]and the European Atherosclerosis Society[EAS]、ESC/EAS Guidelines for the management of dislipidaemias.European Heart Journal 2011;32:1769〜1818;Expert Panel on Detection,Evaluation,and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults.Executive summary of the Third Report of the National Cholesterol Education Program[NCEP]Expert Panel on Detection,Evaluation,and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults[Adult Treatment Panel III]、JAMA 2001;285:2486〜2497を参照されたい)。
2週間のウォッシュアウト期間を用いることによって、比較アームに対するバックグラウンド治療の効果の持ち越しが確実にないようにした。
4週間のプラセボ導入期間を用いて、プラセボを含む他の薬物に対する筋肉関連症状を発症する可能性のある患者を除外した。
mAb316Pの第2相研究からの予備薬物動態データは、mAb316Pへの曝露が二重盲検処置期間後の8週間の追跡調査期間中に減少し、mAb316Pの血清濃度が、非常に低レベルでだが、依然として検出可能であることを示した。それ故、十分に低い、有効でない、血清mAb316P濃度を保証するために、8週間の追跡調査期間(すなわち、最終投与後10週間)の間、患者を追跡した。
エゼチミブはスタチンを耐容することができない患者に対する現行の標準的治療であるので、エゼチミブを対照実薬として使用し、この研究の主要目的は、EZEと比較してmAb316Pについての24週後のLDL−C低減を評価することであった。この研究に選択された集団が本当にスタチン不耐性集団であることを、骨格筋関連AEに起因する中止の発生率および頻度を評価することによって判定するために、対照薬としてアトルバスタチンも含めた(FungおよびCrook、Cardiovasc.Ther.2012 Oct、30(5):e212〜218)。
mAb316Pの2用量を本研究において使用した:隔週、(Q2W)皮下投与される75mgおよび150mg。用量の選択は、第1および第2相プログラムからのデータに基づいた。用量、投薬頻度およびアップタイトレーションアプローチの選択は、CVD低減の観点から最高の便益をもたらすために必要なLDL−C低減、および低いLDL−C値に関する潜在的安全性考慮事項にも基づく。
Q2W投薬レジメンは、投与間隔を通して一定のLDL−C低下を維持し、150mg Q2Wの投薬によって第12週に最大効能が得られると予想される。しかし、多くの患者について、150mg Q2W用量で観察されるほどの効果はLDL−C目標の達成に必要ないことがあり、処置をより低い用量で開始することもある。それ故、本研究では、全ての患者を最初に75mg Q2Wで処置し、高いおよび非常に高いCVリスクを有し、かつLDL−C≧70mg/dLであった患者ならびに中等度のCVリスクを有し、かつ8週間の処置後にLDL−C≧100mg/dlであった患者だけを、第12週に150mg Q2Wへの用量アップタイトレーションに付した。
本研究の開始時に入手できた臨床データに基づいて、mAb316Pでの処置は、有意なLDL−C低下効果を明示し、一般に、非家族性高コレステロール血症またはヘテロ接合性家族性高コレステロール血症を有する患者集団において十分に耐容された。LDL−C低下に関する効能は、総C、アポB、非HDL−CおよびアポB/アポA−1比、ならびにHDL−C、TGおよびLp(a)についての陽性傾向に関する一貫した結果と関連していた。mAb316Pが他の心血管(CV)リスク因子、例えば体重、血圧、グルコースまたはC反応性タンパク質に悪影響を及ぼす証拠はなかった。
研究目的
この研究の主要目的は、スタチンに不耐性である原発性高コレステロール血症(heFHおよび非FH)を有する患者において、24週間後に、mAb316PによるLDL−Cの低減を、EZE 10mg 経口的に1日1回(PO QD)と比較して立証することであった。
この研究の副次的目的は、(1)12週間の処置後に、LDL−Cに対するmAb316P 75mgの効果をEZEと比較して評価すること;(2)他の脂質パラメータ(例えば、アポB、非HDL−C、総C、Lp(a)、HDL−C、TGレベルおよびアポA−1レベル)に対するmAb316Pの効果を評価すること;(3)骨格筋関連AEの発生率および処置離脱率の特性評価を含めて、mAb316Pの安全性および耐容性を評価すること;および(4)抗mAb316P抗体の発生を評価することであった。
研究デザイン
本研究は、スタチンに不耐性である、原発性高コレステロール血症および中等度の、高いまたは非常に高いCVリスクを有する患者における、無作為化、二重盲検、ダブルダミー、実薬対照、並行群、多国籍、他施設研究であった。研究デザインを図7に示す。
スタチン不耐性は、スタチン治療中に始まりまたは増し、スタチン治療を中止すると停止した、筋挫傷または外傷に起因するもの以外の、骨格筋関連症状、例えば疼痛、鈍痛、脱力または筋痙攣に起因する最低承認1日用量での少なくとも2種の以前のスタチンに対する耐容不能と定義した。
この研究は、スクリーニング;ウォッシュアウト;単重盲検プラセボ導入;二重盲検処置;および追跡調査の5期間からなった。
(1)スクリーニング:
スクリーニングは、おおよそ1週間続いた(−第7週)。スクリーニングで開始して処置訪問終了までの研究継続期間を通して、ナショナルコレステロール教育プログラム成人治療パネルIII(NCEP−ATP III)生活改善療法(TLC)食と等価の安定した食事を続けることを患者に依頼した。
(2)ウォッシュアウト:
全てのスクリーニング組み入れおよび除外基準を満たした患者は、EZE、スタチン(非承認用量またはレジメンを使っている患者について)および紅色酵母米の2週間(−第6週〜−第4週)に入った。
(3)単盲検プラセボ導入:
ウォッシュアウト後、患者は、mAb316Pのプラセボ Q2W(合計2用量)+EZE/アトルバスタチンカプセルのプラセボ PO QD(28用量)での4週間の処置からなる、4週間(−第4週〜第0週)の単盲検(患者のみが処置に対して盲検化される)プラセボ導入期間に入った。
単盲検プラセボ導入期間中に筋挫傷または外傷に起因するもの以外の骨格筋関連AEを経験しなかった患者のみが、下で説明する二重盲検処置期間に入るのに適格であった。
4週間の単盲検プラセボ導入期間中に筋挫傷または外傷に起因するもの以外の骨格筋関連AEを経験した患者には治療を中止するように指導し、該患者を研究から離脱させた。
単盲検プラセボ導入期間(−第4週)の初回予定訪問時に患者(または彼らの介護者)にmAb316Pのプラセボを収容している単盲検自己注射器を使用する研究対象薬物の投与について指導し、該患者はその診療所で(−第4週に)初回用量を自己投与した。単盲検プラセボ導入期間中の(−第2週における)研究対象薬物の第2の用量は、患者または介護者がmAb316Pのプラセボの第2の単盲検自己注射器を使用して自宅で投与した。患者は、プラセボ導入期間中、4週間にわたってEZE/アトルバスタチンカプセルのプラセボ QDを摂取した。
(4)二重盲検処置:
全ての組み入れ基準を満たし、かつ4週単盲検プラセボ導入期間中に除外基準(筋挫傷または外傷に起因するもの以外の骨格筋関連AEを経験したことを含む)をいずれも満たさなかった患者を、次のいずれかを受けるように無作為化した:(A)mAb316P 75mg SC Q2W+EZE/アトルバスタチンのプラセボ PO QD;または(B)EZE 10mg PO QD+mAb316Pのプラセボ SC Q2W;または(C)アトルバスタチン20mg PO QD+mAb316Pのプラセボ SC Q2W。
エゼチミブ10mgおよびアトルバスタチン20mgをEZE/アトルバスタチンのプラセボとマッチするようにカプセルでオーバーカプセル化して、二重盲検を確実なものにした。エゼチミブ10mg、アトルバスタチン20mgおよびプラセボは、互いに見分けがつかなかった。
記録された心筋梗塞(MI)または虚血性卒中歴(イエス/ノー)によって無作為化を階層化した。
二重盲検処置期間の初回注射は、無作為化当日(第0週[第1日]−第4訪問)に、研究への無作為化のための自動音声応答システム(IVRS)/ウェブ自動応答システム(IWRS)へのコール後できる限り速やかに、実施施設で行った。後続の注射は、患者(自己注射)または指定された介護者(例えば、配偶者、親族など)が患者の好む場所(例えば、自宅または職場)で投与した。患者は、実施施設をQ2W再訪問して研究担当者によって投与される注射を受けることを選んでもよかった。mAb316Pに無作為化された患者は、無作為化から第12週まで(第0、2、4、6、8および10週)、研究対象薬物75mgを受けた。
第12週訪問時、患者は、第8週における彼らのLDL−CおよびベースラインCVリスク(本明細書中の他の箇所で定義する)に基づいて、mAb316P 75mg Q2Wを受け続けたか、または以下のような彼らの用量アップタイトレーションを受けた:
(A)非常に高いCVリスクを有する患者は、盲検下、(i)彼らの第8週LDL−Cが<70mg/dL(1.81mmo/L)であった場合、第12週以降、第22週の最終注射までmAb316P 75mg Q2Wを受け続けた;または(ii)彼らの第8週LDL−Cが≧70mg/dL(1.81mmo/L)であった場合、第12週以降、第22週の最終注射までmAb316P 150mg Q2Wにアップタイトレーションされる用量を受けた。
(B)高いまたは中等度のCVリスクを有する患者は、盲検下、(i)彼らの第8週LDL−Cが<100mg/dL(2.59mmo/L)であった場合、第12週以降、第22週の最終注射までmAb316P 75mg Q2Wを受け続けた;または(ii)彼らの第8週LDL−Cが≧100mg/dL(2.59mmo/L)であった場合、第12週以降、第22週の最終注射までmAb316P 150mg Q2Wにアップタイトレーションされる用量を受けた。
(5)追跡調査:
二重盲検処置期間の終了後、または研究処置の時期尚早の中止後、8週間にわたって患者を追跡した。
研究を通して:
患者に、この研究を通して(EZE、スタチン、紅色酵母米、およびフィブラート[フェノフィブラート以外]での)彼らのバックグラウンド脂質修飾治療(LMT)を受け続けるように指導した。
許可されるLMTは、(該当する場合)、治験責任医師の判断に従って最優先事項(中央検査室によって報告されるTG警告を含むが、これに限定されない)がそのような変更を是認する異例の状況がなければ、スクリーニングから処置訪問終了まで(用量を含めて)安定していた。
患者ごとの最大研究継続期間は、おおよそ39週間(9カ月)以下:スクリーニングに1週間以下;ウォッシュアウトに2週間;単盲検プラセボ導入に4週間;二重盲検処置に24週間;および追跡調査に8週間であった。研究終了は、プロトコールごとに予定された通りの、最後の患者の最後の実施施設訪問と定義した。
患者選択
少なくとも患者250名(100:100:50;mAb316P:EZE:アトルバスタチン)が二重盲検処置期間内の無作為化に適格であることを保証するために、十分な数の患者をスクリーニングし、単盲検プラセボ導入期間に登録した。
研究対象集団:研究対象集団は、スタチンに不耐性である、高コレステロール血症(heFHまたは非FH)および中等度の、高いまたは非常に高いCVリスクを有する患者からなった。中等度のCVリスクは、算定10年致死性CVDリスクSCORE≧1かつ<5%(ESC/EAS 2011)と定義した。高いCVリスクは、算定10年致死性CVリスクSCORE≧5%(ESC/EAS 2011)、中等度慢性腎疾患(CKD)、標的臓器障害を有さない1型もしくは2型糖尿病、またはheFHと定義した。非常に高いCVリスクは、記録されたCHD歴、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患(PAD)、一過性脳虚血発作(TIA)、腹部大動脈瘤、症状のない>50%の頸動脈閉塞、頸動脈内剥離もしくは頸動脈ステント術、腎動脈狭窄、腎動脈ステント術、標的臓器障害を有する1型または2型糖尿病と定義した。
記録されたCHD歴は、以下のものの1つまたはそれ以上の発生と定義した:(i)急性MI;(ii)無症候性MI;(iii)不安定狭心症;(iv)冠動脈血行再建術(例えば、経皮的冠動脈形成術[PCI]もしくは冠動脈バイパス移植術[CABG]);および/または(v)侵襲的もしくは非侵襲的検査(例えば、冠動脈造影法、トレッドミルを使用する負荷テスト、負荷心エコー検査もしくは核イメージング)によって診断された臨床的に有意なCHD。
組み入れ基準:本研究に適格であるには、患者は、原発性高コレステロール血症(heFHまたは非FH)を、中等度の、高いまたは非常に高い心血管リスク、およびスタチン不耐性歴とともに有さなければならなかった。
heFHの診断は、遺伝子型判定または臨床基準いずれかによって行った。遺伝子型判定を受けなかった患者についての臨床診断は、確診/確定診断である必要があり、サイモン・ブルーム基準に基づくこともあり、またはWHO/Dutch Lipid Network基準に基づくこともあった。中等度の、高い、および非常に高いCVリスクは、上で定義した通りであった。
スタチン不耐性の定義:スタチン治療中に始まりまたは増し、スタチン治療を中止すると停止した、筋挫傷または外傷に起因するもの以外の、骨格筋関連症状、例えば疼痛、鈍痛、脱力または筋痙攣に起因する最低承認1日用量での少なくとも2種の以前のスタチンに対する耐容不能。
除外基準:以下の基準(下に項目A、BおよびCでサブカテゴリー分けしたもの)のいずれかを満たす見込みのある患者は、この研究から除外した:
A.研究方法論に関連した除外基準:
1.スクリーニング訪問(−第7週)時の算定血清LDL−C<70mg/dL(1.81mmol/L)および非常に高いCVリスク(本明細書中の他の箇所で定義する通り);
2.スクリーニング訪問(−第7週)時の算定血清LDL−C<100mg/dL(2.59mmol/L)および高いまたは中等度のCVリスク(本明細書中の他の箇所で定義する通り);
3.スクリーニング訪問(−第7週)時の10年致死性CVDリスクSCORE<1%;
4.スクリーニング訪問(−第7週)前4週間以内の、最低承認1日用量以上であるスタチンの使用;
5.4週間の単盲検プラセボ導入中の、筋挫傷または外傷に起因するもの以外の、骨格筋関連有害事象(AE)経験;
6.スクリーニング(−第7週)時、単盲検プラセボ導入期間(−第4週)の開始時、または第1日/第0週における、筋挫傷または外傷に起因するもの以外の、骨格筋関連AEの経験;
7.スクリーニング訪問(−第7週)の前またはスクリーニングから無作為化までのいずれか該当するときに、少なくとも4週間の脂質修飾治療(LMT)および/または少なくとも6週間のフェノフィブラートのいずれか該当するものの安定した投与を受けていない;
8.スクリーニング訪問(−第7週)から6週間以内のフェノフィブラート以外のフィブラートの使用;
9.スクリーニング訪問(−第7週)前少なくとも4週間の、またはスクリーニング訪問と無作為化訪問の間の、安定していなかった用量/量での、脂質に作用することが公知の栄養補助食品または市販の治療薬の使用;
10.スクリーニング訪問(−第7週)から研究訪問終了(第32週)までの紅色酵母米の使用;
11.スクリーニング訪問から研究訪問終了(第32週)までの、用量が安定しているように計画されていない鎮痛薬の使用;
12.線維筋痛の診断;
13.重篤神経障害性疼痛歴;
14.スタチン不耐性の症状と混同されることがある症状に関連するリウマチ性疾患(例えば、関節リウマチ)歴;
15.スタチン治療以外のLMTでの処置中に始まりまたは増し、LMTを中止すると停止した、筋肉痛またはミオパチー歴;
16.発作性障害の既往歴;
17.以前の移植手術歴;
18.筋肉内投与を必要とする薬物、または研究中の計画された筋肉内注射の使用;
19.スタチン関連ミオパチー以外の、ミオパチーの既往歴;
20.横紋筋融解症歴(クレアチンキナーゼ>10,000IU/Lを伴う臓器障害の形跡と定義される);
21.血清脂質またはリポタンパク質に影響を及ぼすことが公知の何らかの臨床的に有意な制御されていない内分泌疾患の存在。[注記:甲状腺ホルモン補充治療を受けている患者は、チロキシンの投薬量がスクリーニング前少なくとも12週間安定しており、甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルがスクリーニング訪問(−第7週)時に中央検査室の正常範囲内であった場合、組み入れることを許可した];
22.スクリーニング訪問(−第7週)前12カ月以内の肥満外科手術歴;
23.スクリーニング訪問(−第7週)前2カ月以内の不安定な体重(変動>5kg);
24.PCSK9機能喪失(例えば、遺伝子突然変異または配列変異)の既往歴;
25.ホモ接合性FHの既往歴;
26.新たに(無作為化訪問[第0週/第1日]前3カ月以内に)診断された糖尿病または制御不良の(ヘモグロビンA1c[HbA1c]>8.5%)糖尿病;
27.無作為化前少なくとも6週間の、安定したレジメンで下垂体/副腎疾患のための補充治療として使用した場合を除く、全身性コルチコステロイドの使用。注記:局所的、関節内、鼻、吸入および眼科的ステロイド治療は、「全身性」とみなさず、許可した;
28.レジメンがスクリーニング訪問(−第7週)前の6週間安定しており、研究中にそのレジメンを変更する計画がない場合を除く、エストロゲンまたはテストステロン治療の使用;
29.スクリーニング訪問(−第7週)前2カ月以内に血漿交換処置を受けた履歴、または研究中に血漿交換を受ける計画;
30.スクリーニング訪問(−第7週)時または無作為化時(第0週/第1日)の収縮期血圧>160mmHgまたは拡張期血圧>100mmHg;
31.スクリーニング訪問(−第7週)前3カ月以内の、心筋梗塞(MI)、入院につながる不安定狭心症、冠動脈バイパス移植術(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PCI)、制御されていない心不整脈、頸動脈手術またはステント留置術、脳卒中、一過性脳虚血発作、頸動脈血行再建術、末梢血管疾患のための血管内手術または外科的介入歴;
32.リハビリテーションまたは運動プログラムに現在参加している患者;
33.過去12カ月以内のニューヨーク心臓協会クラスIIIまたはIV心不全歴;
34.スクリーニング訪問(−第7週)時に18歳または法律上成人、いずれか高い方の年齢未満;
35.スクリーニング訪問(−第7週)前にコレステロール低下食についての事前指導を受けていない;
36.出血性脳卒中の既往歴;
37.不適切に処置された基底細胞皮膚癌、扁平細胞皮膚癌、または子宮頸部上皮内癌を除く、過去5年以内の癌歴;
38.HIV陽性の既往歴;
39.1カ月または5半減期、いずれか長いほう、以内の何らかの活性被験薬の使用;
40.mAb316P(アリロクマブ)または何らかの他の抗PCSK9モノクローナル抗体の何らかの治験への以前の参加;
41.条件/状況、例えば、(A)治験責任医師または任意の治験補助医師の判断で、研究の安全な完了を妨げるもしくはエンドポイントの評価を制約することになる、スクリーニング時に特定される何らかの臨床的に有意な異常、例えば、重体な全身性疾患、余命の短い患者;(B)治験責任医師または任意の治験補助医師によって何らかの理由でこの研究に不適切とみなされること、例えば、(i)予定された訪問などの特定のプロトコール要件を満たすことができないと判断されること;(ii)患者または治験責任医師により長期間の注射を投与または耐容することができないと判断されること;(iii)治験担当医師または任意の治験補助医師、薬剤師、研究コーディネーター、他の研究スタッフ、またはプロトコールの実施に直接関与する他の研究スタッフまたは親族など、(iv)治験責任医師が研究継続期間に患者の参加を限定もしくは制限することになると感じる、実際のまたは予測される何らかの他の条件(例えば、地理的、社会的条件)の存在;
42.(無作為化検査を含まない)スクリーニング期間中の検査所見:(A)B型肝炎表面抗原および/またはC型肝炎抗体についての検査陽性;(B)出産可能な女性における血清ベータ−hCGまたは尿妊娠検査陽性;(C)TG>400mg/dL(>3.95mmol/L)(1回の再検査を許可する);(D)4変数MDRD研究方程式に従ってeGFR<30mL/分/1.73m(中央検査室によって算定される);(E)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)>3×正常上限(ULN)(1回の再検査を許可する);(F)CPK>2×ULN;(G)TSH<中央検査室の正常低減(LLN)または>ULN;(H)ビタミンD3<20ng/mL[50nmol/L];
B.対照実薬または他の研究対象薬物に関連した除外基準:
43.それぞれの国の製品表示に示されている通りの他の研究対象薬物(アトルバスタチンおよびEZE)に対する全ての禁忌または使用についての警告/注意(適宜);
C.活性薬剤(mAb316P)に関連した除外基準:
44.モノクローナル抗体治療に対する既知過敏症;
45.妊娠しているまたは授乳中の女性;
46.受胎調整の有効な避妊法を用いていない出産可能な女性および/または妊娠について検査する意思がないもしくは検査することができない女性。
この研究から時期尚早に中止した患者を補充しなかった。
研究処置
研究処置は、腹部、大腿部、または上腕外側部に投与される、自動注射器に供給された、mAb316Pまたはプラセボの75または150mg用量用の、1mLの単一皮下(SC)注射であった。二重盲検処置期間(第0〜24週)中、以下のものを受けるように適格患者を無作為化した:(1)mAb316P 75mg SC 2週間に1回(Q2W)+エゼチミブ(EZE)/アトルバスタチンのプラセボ 経口的に1日1回(PO
QD);または(2)EZE10mg PO QD+mAb316Pのプラセボ SC Q2W;または(3)アトルバスタチン20mg PO QD+mAb316Pのプラセボ SC Q2W。
エゼチミブ10mgおよびアトルバスタチン20mgをEZE/アトルバスタチンのプラセボとマッチするようにカプセルでオーバーカプセル化して、二重盲検を確実なものにした。エゼチミブ10mg、アトルバスタチン20mgおよびプラセボは、互いに見分けがつかなかった。第0週に開始して二重盲検処置期間終了2週間前の最終注射(第22週)まで続くSC注射Q2Wによって、研究対象薬物を投与した。
二重盲検研究対象薬物の初回注射は、患者をこの研究に無作為化した後、できる限り速やかに、治験実施施設で投与した。初回注射後30分間、治験実施施設で患者を観察した。患者/介護者が後続の注射を診療所外で投与スケジュールに従って投与した。診療所研究訪問が投薬と重なる日に、全ての研究評価を行い、全ての検査室サンプルを収集した後、研究対象薬物の用量を投与した。
理想的には研究対象薬物をほぼ同じ時刻にQ2W SC投与した;しかし、±3日のウィンドウ期を有することは許容可能と判断した。その時刻は、患者の好みに基づいた。
注射が7日より長く遅れるか、注射を完全にし忘れた場合、追加の注射剤を投与せずに研究対象薬物投与の当初のスゲジュールに戻るように患者に指導した。遅れが、し忘れた日から7日以下だった場合、遅れた注射剤を投与し、その後、当初の投薬スケジュールを再開するように患者に指導した。患者は、研究実施施設スタッフに注射剤を投与させることおよび彼らの注射のために実施施設をQ2W再訪問することを選んでもよかった。EZE/アトルバスタチンのプラセボ、EZE 10mgまたはアトルバスタチンのプラセボ20mgカプセルを1日1回、経口摂取した。研究対象薬物の輸送、保管、製造および投与についての詳細な指示は、実施施設によって患者/介護者に与えられることになる。
用量修正(「アップタイトレーションオプション」)
第12週訪問時、患者は、第8週における彼らのLDL−CおよびベースラインCVリスク(本明細書中の他の箇所で定義する)に基づいて、以下のように、mAb316P 75mg Q2Wを受け続けたか、または彼らの用量をアップタイトレーションした:
(A)非常に高いCVリスクを有する患者は、盲検下、(1)彼らの第8週LDL−Cが<70mg/dL(1.81mmo/L)であった場合、第12週以降、第22週の最終注射までmAb316P 75mg Q2Wを受け続けた;または(2)彼らの第8週LDL−Cが≧70mg/dL(1.81mmo/L)であった場合、第12週以降、第22週の最終注射までmAb316P 150mg Q2Wにアップタイトレーションされる用量を受けた。
(B)高いまたは中等度のCVリスクを有する患者は、盲検下、(1)彼らの第8週LDL−Cが<100mg/dL(2.59mmo/L)であった場合、第12週以降、第22週の最終注射までmAb316P 75mg Q2Wを受け続けた;または(2)彼らの第8週LDL−Cが≧100mg/dL(2.59mmo/L)であった場合、第12週以降、第22週の最終注射までmAb316P 150mg Q2Wにアップタイトレーションされる用量を受けた。
注射トレーニング
単盲検プラセボ導入期間の(−第4週における)初回予定訪問中に、患者にmAb316Pのプラセボを収容している単盲検自己注射器を使用する研究対象薬物の投与について指導し、患者はその診療所で初回用量を自己投与した。単盲検プラセボ導入期間中の(−第2週における)研究対象薬物の第2の用量は、患者または介護者がmAb316Pのプラセボの第2の単盲検自己注射器を使用して自宅で投与した。
二重盲検処置期間の初回注射は、実施施設で無作為化当日(第0週[第1日]−第4訪問)に、研究への無作為化後できる限り速やかに、患者が無作為化されたキットからの自動注射を使用して投与した。後続の注射は、患者(自己注射)がもしくは指定の介護者が投与したか、または患者には、実施施設をQ2W再訪問して研究担当者によって投与される注射を受ける選択肢があった。研究対象薬物を注射するように計画された全ての患者および介護者は、注射剤を投与する前に研究スタッフによるトレーニングを受けた。
被験治療
滅菌mAb316P薬品を、ヒスチジン、pH6.0、ポリソルベート20およびスクロース中、75mg/mLまたは150mg/mLの濃度で、自己注射器に供給した。mAb316Pにマッチするプラセボを、タンパク質を加えたことを除いてmAb316Pと同じ処方で自己注射器に供給した。エゼチミブ10mgおよびアトルバスタチン20mgをEZE/アトルバスタチンのプラセボとマッチするようにカプセルでオーバーカプセル化して、二重盲検を確実なものにした。エゼチミブ10mg、アトルバスタチン20mgおよびプラセボは、互いに見分けがつかなかった。
バックグラウンド処置
患者には、スクリーニング訪問(−第7週)前に少なくとも4週間(フェノフィブラートについては6週間)、安定したLMTを受けている必要があった。患者に、この研究を通して(EZE、スタチン、紅色酵母米、およびフィブラート[フェノフィブラート以外]での)彼らのバックグラウンドLMTを受け続けるように指導した。無作為化後に得たサンプルからの脂質プロファイル値を盲検化した。患者のバックグラウンドLMTは、スクリーニング訪問(−第7週)から研究訪問終了(第32週)まで変更しなかった。この間の用量調整、中止または他のLMT(禁忌LMTを含む)の開始は、治験責任医師の判断に従って最優先事項がそのような変更を是認する異例の状況がなければ、行わなかった。
要約すると、バックグラウンドLMTをスクリーニングから追跡調査訪問まで修正しなかった。この研究で許可される他のバックグラウンド処置は、胆汁酸結合封鎖剤(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム);ニコチン酸;フェノフィブラート;およびオメガ3脂肪酸(≧1000mg/日)を含んだ。
無作為化
2:2:1の比と置換ブロック無作為化を用いて、患者を二重盲検研究処置期間中にmAb316P、EZEまたはアトルバスタチンを受けるように無作為化した。記録されたMIまたは虚血性の卒中歴[イエス/ノー]に従って無作為化を階層化した。
盲検化
単盲検プラセボ導入。単盲検プラセボ導入については、単盲検デザインに従って、研究対象患者のみが処置に対して盲検のままであり;治験責任医師は研究処置に対して盲検化しなかった。mAb316Pのプラセボを自動注射器に供給した。EZE/アトルバスタチンの経口プラセボをカプセルに供給して盲検を保った。
二重盲検処置期間。二重盲検処置期間については、mAb316PおよびmAb316Pのプラセボをあらゆる点で等しくマッチした自己注射器に供給し、包装し、あらゆる点で等しいラベルを貼って盲検を保った。エゼチミブおよびアトルバスタチンをEZE/アトルバスタチンのプラセボとマッチするようにカプセルでオーバーカプセル化して、二重盲検を確実なものにした。エゼチミブ10mg、アトルバスタチン20mgおよびプラセボは、互いに見分けがつかなかった。
各二重盲検処置キットにコンピュータプログラムによって生成された番号を有するラベルを貼った。処置キット番号は、1日24時間、週7日利用可能である集中処置割付システムによって、患者無作為化時およびその後の予定された患者訪問時に治験責任医師が取得した。
二重盲検デザインに従って、研究対象患者、治験責任医師および研究実施施設担当者は、研究処置に対して盲検のままであり、特別に定義された状況下以外、無作為化(処置コード)にアクセスすることができなかった。
中央研究室によって分析された、無作為化訪問後に得た血液サンプルからの脂質パラメータ値を実施現場に伝達しなかったので、彼らは、獲得したLDL−Cレベルに基づいて彼らの患者の処置群を推定することができなかった。スポンサーの運営チームは、無作為化後、最終データベースロックが行われた後まで、脂質パラメータにアクセスすることはできなかった。患者がアップタイトレーションの基準を満たした場合、実施現場およびスポンサー運営チームを75mg〜150mgの用量アップタイトレーションに対して盲検化した。薬物ナンバリングシステムでコード化された盲検研究対象薬物キットを使用した。盲検を維持するために、これらのコードと製品ロット番号をリンクさせるリストには、研究実施に関与する個人は、アクセスできなかった。
抗薬物抗体(ADA)結果を実施現場に伝達せず、スポンサー運営チームは、最終データベースロック後まで患者個人識別に関連する結果にアクセスすることができなかった。追跡調査訪問時に抗mAb316P抗体について240以上の力価を有した患者には、最終投与の6〜12カ月後に得た、そしてその後は力価が240未満に戻るまで約3〜6カ月ごとに得た、追加の抗体サンプルがあった。研究の盲検性を維持するために、240未満の力価を有した患者に追跡調査訪問時に研究後抗mAb316P抗体のサンプル収集を依頼した。
併用薬物
患者の福祉のために必要と考えられ、研究対象薬物に干渉する可能性が低いと考えられる場合、併用薬(研究中、禁忌とされるもの以外)を治験責任医師の裁量で、安定した用量で(可能な場合)与えてもよい。いずれの他の併用薬も必要に応じて許可し、記録した。
脂質に作用する可能性がある栄養補助食品または市販の治療薬は、スクリーニング訪問(−第7週)前少なくとも4週間安定した用量で使用され、スクリーニング訪問から研究終了(第32週)まで維持される場合にのみ許可した。そのような栄養補助食品または市販の治療薬の例としては、用量<1000mgでのオメガ3脂肪酸、植物スタノール、例えばベネコールに見られるもの、アマニ油、およびサイリウムが挙げられる。
初回スクリーニング訪問から追跡調査訪問までの禁忌併用薬は、次の物を含んだ:スタチン;フェノフィブラート以外のフィブラート;EZE;および紅色酵母米製品。
研究エンドポイント
ベースライン特性は、標準人口統計学(例えば、年齢、人種、体重、身長など)、各患者についての病歴および薬歴を含む疾患特性を含んだ。スタチン、用量、および「スタチン不耐性」の診断につながった実際の骨格筋関連事象に関する履歴情報を、病歴/手術歴の一部として収集した。
主要効能エンドポイント 主要効能エンドポイントは、次のように定義した、ベースラインから第24週までの算定LDL−Cの変化率であった:100×(第24週における算定LDL−C値 − ベースラインでの算定LDL−C値)/ベースラインでの算定LDL−C値。ベースライン算定LDL−C値は初回二重盲検研究対象薬物注射前に得た最後のLDL−Cレベルであったので、各患者についてのベースラインLDL−C値が必要であった。
第24週における算定LDL−Cは、第24週分析ウィンドウ内および主要効能期間中に得たLDL−Cレベルであった。主要効能期間は、初回二重盲検研究対象薬物注射から、最終二重盲検研究対象薬物注射の最大21日後、または第24週分析ウィンドウの上限、いずれか早いほう、までの期間と定義した。
(予定されたまたは予定外の、空腹時のまたは空腹時でない)全ての算定LDL−C値を用いて、上記定義に従って必要に応じて主要効能エンドポイントについての値を得た。時点を測定値に割り付けるために用いた分析ウィンドウは、統計解析計画書(SAP)で定義した。
副次的効能エンドポイント:本研究の副次的エンドポイントは、以下のものを含んだ:
(1)ベースラインから第12週までの算定LDL−Cの変化率:第12週における算定LDL−Cは、12週間の分析ウィンドウ内および12週間の効能期間中に得たLDL−Cレベルであった。12週間の効能期間は、二重盲検研究対象薬物の初回注射から、第6訪問コンタクト、または研究対象薬物の最終二重盲検注射の最大21日後、いずれか早いほう、までの期間と定義する。
(2)ベースラインから第24週までのアポBの変化率。
(3)ベースラインから第24週までの非HDL−Cの変化率。
(4)ベースラインから第24週までの総Cの変化率。
(5)ベースラインから第12週までのアポBの変化率。
(6)ベースラインから第12週までの非HDL−Cの変化率。
(7)ベースラインから第12週までの総Cの変化率。
(8)主要エンドポイントのために用いた定義および規則を用いて、(第24週における算定LDL−C値がLDL−C目標に達する患者数/修正治療企図[mITT]集団の患者数)*100と定義した、第24週にLDL−C目標に達する患者の割合;例えば、非常に高いCVリスクの場合はLDL−C<70mg/dL(1.81mmol/L)、または中等度のもしくは高いCVリスクを有する患者についてはLDL−C<100mg/dL(2.59mmol/L)。
(9)第24週にLDL−C<70mg/dL(1.81mmol/L)に達する患者の割合。
(10)ベースラインから第24週までのLp(a)の変化率。
(11)ベースラインから第24週までのHDL−Cの変化率。
(12)ベースラインから第12週までのHDL−Cの変化率。
(13)ベースラインから第12週までのLp(a)の変化率。
(14)ベースラインから第24週までの空腹時TGの変化率。
(15)ベースラインから第12週までの空腹時TGの変化率。
(16)ベースラインから第24週までのアポA−1の変化率。
(17)ベースラインから第12週までのアポA−1の変化率。
(18)(第12週における算定LDL−C値がLDL−C目標に達する患者数/mITT集団の患者数)*100と定義した、第12週にLDL−C目標に到達する患者の割合;例えば、非常に高いCVリスクの場合はLDL−C<70mg/dL(1.81mmol/L)、および中等度のまたは高いCVリスクを有する患者についてはLDL−C<100mg/dL(2.59mmol/L)。
(19)第24週にLDL−C<100mg/dL(2.59mmol/L)に達する患者の割合。
(20)第12週にLDL−C<100mg/dL(2.59mmol/L)に達する患者の割合。
(21)第12週にLDL−C<70mg/dL(1.81mmol/L)に達する患者の割合。
(22)ベースラインから第12および24週までの算定LDL−C(mg/dLおよびmmol/L)の絶対変化。
(23)ベースラインから第12および24週までのアポB/アポA−1比の変化。
(24)第12および24週にアポB<80mg/dL(0.8mmol/L)である患者の割合。
(25)第12および24週に非HDL−C<100mg/dLである患者の割合。
(26)第12および24週に算定LDL−C<70mg/dL(1.81mmol/L)である、および/または算定LDL−Cの≧50%低減(算定LDL−C≧70mg/dL[1.81mmo/L]の場合)を有する、患者の割合。
他のエンドポイント:(1)この研究を通して評価した抗mAb316P抗薬物抗体状態(陽性/陰性)および力価;(2)ベースラインから第24週までの高感受性C反応性タンパク質(hs−CRP)の変化率;(3)ベースラインから第24週までのHbA1cの絶対変化(%)。
研究手順
全ての検査室サンプルは、研究対象薬物の用量を投与する前に収集した。脂質パネルの血液サンプルは、全ての来院について午前中、空腹状態(すなわち、一晩、少なくとも10時間絶食し、喫煙を自制する)で収集した。採血前48時間以内のアルコール摂取および24以内の激しい身体運動をやめさせた。注記:患者が空腹状態でない場合、血液サンプルを収集せず、血液サンプルを絶食(少なくとも10時間)条件下で採取しなければならないことを念のため知らせて後日(またはできるだけこの日付の近々に)新たな予約を入れた。
総C、HDL−C、TG、アポB、アポA−1、およびLp(a)は、所定のスケジュールに従って中央検査室が直接測定した。全ての訪問(−第15週および追跡調査訪問を除く)時にフリードワルドの式を用いて低密度リポタンパク質コレステロールを算定した。TG値が400mg/dL(4.52mmol/L)を超えていた場合には、中央検査室は、それを算定せずに(ベータ定量法によって)LDL−Cを測定した。非HDL−Cは、総CからHDL−Cを減算することによって算定した。アポB/アポA−1比を算定した。
脂質パネル(空腹時):脂質パネル(総C、TG、HDL−C、および算定LDL−C)のための血液サンプルを少なくとも10時間の絶食後、予め指定された時点で採集した。
特殊脂質パネル(空腹時):特殊脂質パネル(アポB、アポA−1、アポB/アポA−1比、およびLp[a])のための血液サンプルを少なくとも10時間の絶食後、予め指定された時点で採集した。
血圧および心拍数:血圧および心拍数を予め指定された時点で評価する。好ましくは、標準化された条件下で、ほぼ同じ時刻に、同じ腕で、同じ器具で(患者が少なくとも5分間、座位で心地よく安静にした後)、血圧を測定した。初回スクリーニング訪問時には血圧を両腕で測定した。最高拡張期圧を有する腕をこの訪問時に決定し、この研究を通してこの腕で血圧を測定した。この最高値を電子症例報告書(eCRF)に記録した。心拍数は、血圧の測定時に測定した。
健康診断:身長および体重を含めて、綿密で完全な健康診断をスクリーニング訪問(第1訪問)時に行った。体重を含む健康診断を予め指定された時点で行った。
体重および身長:体重は、下着または極軽い衣類を着用し、靴を履いていない、膀胱を空にした患者で得た。好ましくは、同じスケールをこの研究を通して使用した。可能な場合、較正済みバランススケールの使用を推奨した。
心電図:心電図は、採血が必要な訪問中に採血する前に行った。標準12リードECGを予め指定された時点で行った。少なくとも10分安静にした後、仰臥位で、12リードECGを行った。この研究を通して各ECG記録のために電極をできる限り同じ位置に配置した。ECGを治験責任医師が現地で解釈した。各トレースをスクリーニング記録トレースと比較して分析した。
検査室検査:全ての検査室サンプルは、研究対象薬物の用量を投与する前に収集した。検査室検査用のサンプルを予め指定された時点で収集し、研究中に中央検査室が分析した。
結果
被験者内訳
合計519名の患者をこの研究のためにスクリーニングし、そのうちの患者361名(69.6%)はスクリーニングを完了し、単盲検プラセボ導入期間に入った。単盲検プラセボ導入期間に入った患者については、患者47名(13%)がプラセボ処置を時期尚早に中止し、そのうちの患者29名(8%)は、骨格筋関連有害事象に起因して中止した(すなわち、指定除外基準を満たした)。したがって、患者314名(87%)は導入期間を完了し、二重盲検期間への無作為化に適格であった。
合計314名の患者を(63名をアトルバスタチン群に、125名をエゼチミブ群に、および126名をmAb316P群に)無作為化し、無作為化されたが「他」の理由(必要プロトコール訪問のスケジューリングについての懸念)に起因して研究処置を受けなかった患者がエゼチミブ群に1名だけいた。したがって、安全性集団は、患者313名を含んだ。この患者は、以降のいずれの評価にも再訪問せず、それ故、ITT集団に組み入れなかった。さらに、患者もう3名を、患者(エゼチミブ群の)1名はベースラインLDL−C値の欠如に起因して、および他の2名(アトルバスタチン群の1名とエゼチミブ群の1名)はベースライン後評価の欠如に起因して、ITT集団から除外した。最後に、さらなる患者9名(アトルバスタチン群の2名、エゼチミブ群の4名、およびmAb316P群の3名)をオントリートメントベースライン後評価の欠如に起因してmITT集団から除外した。
第1段階データカットオフ時点で、研究中の患者の状態は、次の通りであった:
患者220名(70.1%):アトルバスタチン群の42名(66.7%)、エゼチミブ群の82名(65.6%)およびmAb316P群の96名(76.2%)は、24週間の二重盲検処置期間を完了した。
患者93名(29.6%):アトルバスタチン群の21名(33.3%)、エゼチミブ群の42名(33.6%)およびmAb316P群の30名(23.8%)は、二重盲検処置期間を完了する前に研究処置を時期尚早に中止した。患者70名(22.3%):アトルバスタチン群の16名(25.4%)、エゼチミブ群の31名(24.8%)およびmAb316P群の23名(18.3%)は、有害事象に起因して研究処置を時期尚早に中止した。患者2名(3.2%)は、プロトコールコンプライアンス不良に起因して研究処置を時期尚早に中止し、両方の患者がアトルバスタチン群の者であった。患者21名(6.7%):アトルバスタチン群の3名(4.8%)、エゼチミブ群の11名(8.8%)およびmAb316P群の7名(5.6%)は、様々な他の理由に起因して研究処置を時期尚早に中止した。
患者281名(89.5%)に少なくとも1つの非盲検mAb316P処置を投与した。したがって、これらの患者をOLE集団に組み入れる。
患者9名(3.2%)は、このKRMについてのデータカットオフ時点でOLE期間の研究処置を中止し、これらの患者のうち8名(2.8%)は、有害事象に起因して中止した。
OLE集団の残りの患者272名(96.8%)は継続しており、OLE期間の研究処置を受けている。
研究に登録した患者のベースライン特性を表10に要約する。
Figure 0006846931
ベースライン脂質パラメータを表11に要約する。
Figure 0006846931
効能結果
プラセボ導入を患者87.0%(314名/361名)が完了した。一般に、人口統計的特性、ベースライン疾患特性、スタチン不耐性質問票、ベースライン効能脂質パラメータ、LMT歴およびバックグラウンドLMT使用は、3つの研究処置群の各々に無作為化された患者間で同等であった。患者の15パーセントは、ヘテロ接合性FHを有した。平均ベースラインLDL−Cは、アトルバスタチン群では187.3mg/dL、エゼチミブ群では194.2mg/dL、およびmAb316P群では191.1mg/dLであった。合計で、無作為化患者の89.5%が非盲検継続投与に入った。
上記プロトコールで指定の統計的階層的検定順に(0.05有意性レベルで制御した複数の検定での)二重盲検期間効能エンドポイント解析結果を表12に示す。主要効能解析および重要な副次的効能解析を行って、mAb316P処置患者をエゼチミブ処置患者と比較した。明確にするために、ITT解析は、ITT集団の患者について定義したものであり、研究処置投与状態にかかわらず全ての分析ウィンドウ内の全てのエンドポイント評価を含む(すなわち、処置後評価を含む)。オントリートメント解析は、mITT集団の患者について定義したものであり、初回二重盲検研究対象薬物(カプセルまたは注射、いずれか早いほう)から、最終二重盲検研究対象薬物注射の21日後、または最終カプセル摂取の3日後、いずれか早いほう、までの全てのエンドポイント評価を含む(すなわち、効能処置期間中の評価を含む)。注記:結果は、階層的検定順に、p値が≦0.05である場合、統計的に有意である。
Figure 0006846931
Figure 0006846931
mAb316Pで処置した患者についての第24週におけるLS平均LDL−C値は、−84mg/dLのベースラインからのLDL−Cレベルの変化(すなわち、−45.0%)を表す、108.5mg/dLであった。これに対して、EZEで処置した患者についての第24週におけるLS平均LDL−C値は、−33mg/dLのベースラインからのLDL−Cレベルの変化(すなわち、−14.6%)を表す、159.9mg/dLであった。mAb316P処置患者についての第24週におけるLDL−Cの、エゼチミブ処置患者についての第24週におけるLDL−Cに対するLS平均差%は、−30.4%であった(SE=3.1、p<0.0001)。
mAb316P患者52名(41.9%)は、第24週にLDL−C目標に達したが、EZE患者は、5名(4.4%)のみ第24週にLDL−C目標に達した(p値<0.0001)。この解析を目的として、LDL−C目標を非常に高リスクの患者については70mg/dL未満、中等度および高リスクの患者については100mg/dL未満と定義した。加えて、mAb316P患者54名/109名(49.5%)を(第8週LDL−Cレベルに基づいて)第12週に75mg Q2Wから150mg Q2Wへのアップタイトレーションに付した。
選択された副次的脂質パラメータ(非HDL−C、アポBおよびLp(a))の第24週における低減の要約を表13に示す。
Figure 0006846931
主要効能エンドポイント、および重要な副次的エンドポイントの3分の2より多くが、階層的検定手順に従ってmAb316P処置患者に有利になる統計的に有意な便益を達成した。
安全性結果
合計313名の患者を無作為化し、これらの患者は二重盲検研究処置の少なくとも部分的用量を受け(安全性集団)、患者281名は、OLE研究処置を受けた(OLE集団)。治療創発的SAEは、合計29名の患者、具体的には、アトルバスタチン処置群の患者7名(11.1%)、エゼチミブ処置群の患者10名(8.1%)、およびmAb316P処置群の患者12名(9.5%)において起こった。エゼチミブ処置群の非心臓性胸痛を報告した患者4名(3.2%)を唯一の例外として、3つの処置群の各々について、いずれの事象の基本語での報告も1件以下であった。
合計70名(22.4%)の患者は、TEAEに起因して研究処置を時期尚早に中止した。具体的には、アトルバスタチン処置群の患者16名(25.4%)、エゼチミブ処置群の患者31名(25.0%)、およびmAb316P処置群の患者23名(18.3%)は、研究処置を早期に中止した。早期中止の原因となる最も一般的な事象は、筋骨格および結合組織障害SOCに含まれ(アトルバスタチン群の患者14名[22.2%]、エゼチミブ処置群の患者26名[21.0%]およびmAb316P群の患者20名[15.9%])、最も高頻度に報告された基本語は筋肉痛であった。
中間解析時に患者死亡は報告されなかった。
TEAEは、アトルバスタチン処置群の患者54名(85.7%)、エゼチミブ処置群の患者100名(80.6%)、およびmAb316P処置群の患者104名(82.5%)において起こった。いずれかの処置群の患者の≧5%に起こったTEAEは、− 鼻咽頭炎(アトルバスタチン/エゼチミブ/mAb316Pそれぞれについて3.2%/8.1%/6.3%);− 上気道感染症(アトルバスタチン/エゼチミブ/mAb316Pそれぞれについて3.2%/4.0%/5.6%;− 頭痛(アトルバスタチン/エゼチミブ/mAb316Pそれぞれについて6.3%/4.8%/4.8%);− 錯感覚(アトルバスタチン/エゼチミブ/mAb316Pそれぞれについて6.3%/0/3.2%);− 関節痛(アトルバスタチン/エゼチミブ/mAb316Pそれぞれについて7.9%/7.3%/5.6%);− 背部痛(アトルバスタチン/エゼチミブ/mAb316Pそれぞれについて7.9%/5.6%/4.0%);− 筋痙攣(アトルバスタチン/エゼチミブ/mAb316Pそれぞれについて11.1%/7.3%/4.0%);− 筋力低下(アトルバスタチン/エゼチミブ/mAb316Pそれぞれについて6.3%/1.6%/0.8%);− 筋肉痛(アトルバスタチン/エゼチミブ/mAb316Pそれぞれについて27%/23.4%/24.6%);および− 疲労(アトルバスタチン/エゼチミブ/mAb316Pそれぞれについて7.9%/3.2%/4.8%)である。
mAb316P群で患者頻度≧5%であり、mAb316P群での頻度がアトルバスタチンおよびEZE処置群両方と比較して高かったSOCは、以下の通りであった:「精神障害」は、アトルバスタチン処置群での患者2名(3.2%)およびEZE処置群での患者5名(4.0%)に対して、mAb316P処置群では患者9名(7.1%)において起こった。最もよく見られる事象は、mAb316P処置群での不眠症の報告5件(4.0%)対アトルバスタチン処置群でのそのような事象1件(1.6%)対エゼチミブ処置群でのそのような報告2件(1.6%)であった。「耳および迷路障害」は、アトルバスタチン処置群での患者1名(1.6%)およびEZE処置群での患者4名(3.2%)に対して、mAb316P処置群では患者8名(6.3%)に起こった。最もよく見られる事象は、mAb316P処置群でのめまいの報告6件(4.8%)対アトルバスタチン処置群でのそのような報告1件(1.6%)対エゼチミブ処置群でのそのような報告2件(1.6%)であった。「心臓障害」は、アトルバスタチン処置群での患者2名(3.2%)およびEZE処置群での患者6名(4.8%)に対して、mAb316P処置群では患者10名(7.9%)に起こった。最もよく見られる事象は、mAb316P処置群での動悸の報告4件(3.2%)対アトルバスタチン処置群でのそのような報告0件対エゼチミブ処置群でのそのような報告2件(1.6%)であった。「臨床検査」は、アトルバスタチン処置群での患者3名(4.8%)およびEZE処置群での患者7名(5.6%)に対して、mAb316P処置群では患者9名(7.1%)に行った。mAb316P処置群と比較してアトルバスタチンおよびEZE処置群両方における頻度が高いたった1つのSOCが骨格筋および結合組織障害であった。
特に対象とするTEAE(AESI)についての結果を、被定義SMQまたはCMQ基本語分類によって提示する:治療創発的注射部位反応(ISR)は、アトルバスタチン処置群の患者1名(1.6%)、エゼチミブ処置群の患者6名(4.8%)、およびmAb316P処置群の患者6名(4.8%)において起こった。「過敏症」のMedDRA SMQによって識別される、全身アレルギー性TEAEは、アトルバスタチン処置群の患者4名(6.3%)、エゼチミブ処置群の患者9名(7.3%)、およびmAb316P処置群の患者12名(9.5%)において起こった。治療創発的神経性AEは、アトルバスタチン処置群の患者8名(12.7%)、エゼチミブ処置群の患者4名(3.2%)、およびmAb316P処置群の患者11名(8.7%)において起こった。最もよく見られる基本語は、錯感覚(アトルバスタチン/エゼチミブ/mAb316Pそれぞれについて6.3%/0/3.2%)および筋力低下(アトルバスタチン/エゼチミブ/mAb316Pそれぞれについて6.3%/1.6%/0.8%)であった。治療創発的神経認知障害は、アトルバスタチン処置群の患者0名、エゼチミブ処置群の患者2名(1.6%)、およびmAb316P処置群の患者3名(2.4%)において起こった。
判定のために識別される心血管事象を有する患者については、患者1名(0.8%)が非致死性MIの陽性判定を受け、この患者は、mAb316P処置群の者であった。
連続する2つの算定LDL−C測定値が25mg/dL未満である患者の頻度に関しては、3つの処置群のいずれにも患者は存在しなかった。
骨格筋関連TEAEをこの研究については2回、具体的には、骨格筋関連CRFを用いて収集した事象およびCMQ(プロトコール付属書において定義する通り)によって再度収集した事象について定義した。合計99名(31.6%)の患者、具体的には、アトルバスタチン処置群の患者25名(39.7%)、エゼチミブ処置群の患者40名(32.3%)、およびmAb316P処置群の患者34名(27.0%)が、CMQ基本語を報告した。骨格筋関連事象の原因となる、CMQによって定義される最も多く見られる基本語は、筋肉痛(アトルバスタチン/エゼチミブ/mAb316Pそれぞれについて27%/23.4%/24.6%)、筋痙攣(アトルバスタチン/エゼチミブ/mAb316Pそれぞれについて11.1%/7.3%/4.0%)および筋力低下(アトルバスタチン/エゼチミブ/mAb316Pそれぞれについて6.3%/1.6%/0.8%)であった。これらの全てが骨格筋および結合組織障害SOCに含まれる。
早期に処置を中止する結果となる治療創発的骨格筋関連事象は、患者55名(17.6%)、具体的には、アトルバスタチン処置群の患者13名(20.6%)、エゼチミブ処置群の患者23名(18.5%)、およびmAb316P処置群の患者19名(15.1%)において報告された。治療創発的重篤骨格筋関連事象は、いずれの処置群においても報告されなかった。TEAE骨格筋関連事象に起因する患者死亡は、いずれの処置群においても報告されなかった。
結論
本研究は、骨格筋関連症状に起因する少なくとも2種の異なるスタチン(最低用量でのものを含む)に対する不耐性歴を有する患者を評価した。mAb316P、エゼチミブまたはアトルバスタチン20mgを受けるように患者を無作為化した(キャリブレータアーム)。この研究で処置した患者は、最初にこの試験に入ったとき、非常に高いLDL−Cレベル(平均で187〜193.5mg/dLの間)を有した。臨床診療では、患者の10〜25パーセントがスタチンに対する不耐性を報告する。
本研究は、mAb316P処置患者におけるベースライン算定LDL−Cからの変化率の低減(LS平均=−45.0%)がエゼチミブ処置患者(LS平均=−14.6%)と比較して統計的に有意であり、処置群間のLS平均差が−30.4%であるという、ITT集団における主要効力エンドポイントを達成した。重要な副次的効能エンドポイントの3分の2より多くに関して、この研究は、mAb316P処置患者においてエゼチミブ処置患者と比較して統計的に有意な便益を達成した。この研究から入手できるデータに基づいて、スタチンに不耐性である原発性高コレステロール血症(heFHおよび非FH)を有する患者におけるmAb316Pの皮下投与は、一般に安全であり、十分に耐容された。mAb316P処置患者についての骨格筋関連AE率のほうが、いずれの対照群においても低く、この差は、アトルバスタチン20mgで処置した患者において統計的に有意であると判定された(初回骨格筋AEまでの時間によって評価して、p=0.042)。さらに、mAb316P処置患者についての骨格筋関連AEの研究離脱率は、2つの対照群より低かった。全ての処置群間で同様のAE率(mAb31682.5パーセント、エゼチミブ 81パーセント、アトルバスタチン 86パーセント)が本研究において観察された。最もよく見られるAEは、筋肉痛(25パーセント mAb316、23パーセント エゼチミブ、27パーセント アトルバスタチン)、鼻咽頭炎(6パーセント mAb316、8パーセント エゼチミブ、3パーセント アトルバスタチン)、関節痛(6パーセント mAb316、7パーセント エゼチミブ、8パーセント アトルバスタチン)、および上気道感染症(6パーセント mAb316、4パーセント エゼチミブ、3パーセント アトルバスタチン)であった。
本発明の範囲は、本明細書に記載する特定の実施形態によって限定されない。実際、本明細書に記載するものに加えて、本発明の様々な修飾形態が、上述の説明および添付の図面から当業者に明らかになるだろう。そのような修飾形態は、添付の特許請求の範囲の範囲に入ることが意図される。

Claims (12)

  1. スタチンに不耐性であるか又はスタチン治療に対する有害反応歴を有する患者の高コレステロ−ル血症の処置において使用するための、ヒトPCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を75mgまたは150mg含む医薬組成物であって、該抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号6のアミノ酸配列を有するLCVRを含み、スタチン治療の不在下で投与される、前記医薬組成物であり、そしてここで
    75mgの抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物の用量が、2週間に1回の頻度で投与され、
    (a)患者のLDL−Cレベルが70mg/dLより低い場合に、抗体またはその抗原結合断片の75mgの用量が維持され、または、
    (b)患者のLDL−Cレベルが70mg/dLに等しいかそれより高い場合に、抗体またはその抗原結合断片の75mgの用量は中止され、抗体またはその抗原結合断片を150mg含む医薬組成物の用量が、2週間に1回の頻度で投与される、
    前記医薬組成物
  2. 患者は、1種またはそれ以上のスタチンの最低承認1日用量を摂取中に始まったまたは増した骨格筋関連症状を以前に経験した、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 患者は、少なくとも2つの別個の毎日の治療スタチンレジメン中に始まったまたは増した骨格筋関連症状を以前に経験した、請求項1に記載の医薬組成物。
  4. 毎日の治療スタチンレジメンの少なくとも1つは、
    (a)スタチンの最低承認1日用量である;または
    (b)ロバスタチン5mg/日、アトルバスタチン10mg/日、シンバスタチン10
    mg/日、ロバスタチン20mg/日、プラバスタチン40mg/日、フルバスタチン40mg/日、およびピタバスタチン2mg/日からなる群から選択される、
    請求項3に記載の医薬組成物。
  5. 患者は、抗体またはその抗原結合断片の投与前または投与時に、70mg/dLより高い、または100mg/dLより高い、血清低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)レベルと定義される高コレステロール血症を示す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  6. 患者は、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(heFH)を有する、または家族性高コレステロール血症でない(非FH)型の高コレステロール血症を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  7. 患者は、中等度の、高い、または非常に高い心血管リスクを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  8. 患者は、抗体またはその抗原結合断片の投与前または投与時に、
    (a)1%以上かつ5%未満の算定10年致死性心血管疾患リスクSCOREと定義される中等度の心血管リスク;
    (b)(i)中等度慢性腎疾患、(ii)標的臓器障害を有さない1型糖尿病、(iii)標的臓器障害を有さない2型糖尿病、および/または(iv)heFHのうちの1つまたはそれ以上と共に、5%以上の算定10年致死性心血管疾患リスクSCOREと定義される高い心血管リスク;または
    (c)(i)記録された冠動脈心疾患;(ii)虚血性脳卒中;(iii)末梢性脳卒中;(iv)末梢動脈疾患(PAD);(v)一過性脳虚血発作(TIA);(vi)腹部大動脈瘤;(vii)症状のない>50%の頸動脈閉塞;(viii)頸動脈内剥離;(ix)頸動脈ステント術;(x)腎動脈狭窄;(xi)腎動脈ステント術;(xii)標的臓器障害を有する1型糖尿病;および/または(xiii)標的臓器障害を有する2型糖尿病のうちの1つまたはそれ以上と定義される非常に高い心血管リスク;
    を有する、請求項7に記載の医薬組成物。
  9. 抗体またはその抗原結合断片は、非スタチン脂質修飾治療と併用して患者に投与される、請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  10. 非スタチン脂質修飾治療は、エゼチミブ、フィブラート、ナイアシン、オメガ3脂肪酸、および胆汁酸樹脂からなる群から選択される治療薬を含む、請求項に記載の医薬組成物。
  11. (a)患者の低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の少なくとも35%の低減;
    (b)患者のアポリポタンパク質B(アポB)の少なくとも25%の低減;
    (c)患者の非高密度リポタンパク質コレステロール(非HDL−C)の少なくとも30%の低減;
    (d)患者の総コレステロールの少なくとも20%の低減;および
    (e)患者のリポタンパク質a(Lp(a))の少なくとも15%の低減
    からなる群から選択される、1つまたはそれ以上の脂質成分の血清レベルを改善する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  12. スタチンに不耐性であるまたはスタチン治療に対する有害反応歴を有する、中等度の、高いまたは非常に高い心血管リスクを有する患者における高コレステロ−ル血症の処置に
    おいて使用するための、ヒトPCSK9に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を75mgまたは150mg含む医薬組成物であって、
    ここで、抗体またはその抗原結合断片を75mg含む医薬組成物の用量が、2週間に1回の頻度で投与され、そしてここで
    (a)患者のLDL−Cレベルが70mg/dLより低い場合に、抗体またはその抗原結合断片75mgの用量が維持され、または
    (b)患者のLDL−Cレベルが70mg/dLに等しいかまたはそれより高場合に、抗体またはその抗原結合断片の75mgの用量は中止され、抗体またはその抗原結合断片を150mg含む医薬組成物用量、2週間に1回の頻度で投与され
    ここで、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号6のアミノ酸配列を有するLCVRを含み、
    そしてここで、抗体またはその抗原結合断片での24週間の処置後の、1つまたはそれ以上の脂質成分の血清レベルの改善は、
    (i)患者の低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の少なくとも35%の低減;
    (ii)患者のアポリポタンパク質B(アポB)の少なくとも25%の低減;
    (iii)患者の非高密度リポタンパク質コレステロール(非HDL−C)の少なくとも30%の低減;
    (iv)患者の総コレステロールの少なくとも20%の低減;および
    (v)患者のリポタンパク質a(Lp(a))の少なくとも15%の低減
    からなる群から選択される、前記医薬組成物。
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