JP6841723B2 - 下枠構造及び建具 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の下枠構造では、下枠は、上壁部、下壁部、室外側壁部、及び室内側壁部を有する角筒状の中空部を備える。ここで、上壁部には、当該上壁部の上面(下枠の上面)の水を中空部内に導く水抜き孔が形成されている。また、下壁部の上面には、室外側に向けて下方に傾斜し、水抜き孔を介して中空部内に浸入した水を室外側に導く傾斜面が設けられている。さらに、室外側壁部には、水抜き孔を介して中空部内に浸入した水を中空部の室外側に排水する排水孔が形成されている。また、中空部には、火災時等の熱により膨張し、水抜き孔や排水孔を閉塞する耐火材が設けられている。
図10において、符号「100」,「200」〜「206」は、上述した障子、下枠構造、下枠、中空部、上壁部、下壁部、室外側壁部、及び室内側壁部をそれぞれ示している。また、符号「204a」は、上述した傾斜面を示している。なお、上述した水抜き孔、排水孔、及び耐火材については、説明の便宜上、図示を省略している。
ところで、従来の下枠構造200では、火災時等の熱によって温度上昇する下枠201の剛性が低くなると、下枠201が障子の荷重を支持しきれなくなって熱塑性変形する虞がある。このように下枠201が変形した場合には、下枠201を含む窓枠と障子100との位置関係が所望の位置関係から外れ、防火性能が低下する可能性がある。ひいては、下枠201の変形に起因して障子100が窓枠から脱落し、防火性能を発揮することができなくなる可能性もある。
しかしながら、下壁部204の上面には、傾斜面204aが形成されている。このため、障子100からの荷重が下枠201(上壁部203)を介して補強材300にかかった時に、当該補強材300は、下壁部204の上面(傾斜面204a)に対して、断面視U字状の開口側の端部301の1点で当接することとなる。すなわち、補強材300は、障子100からの荷重により、長手軸を中心として回転し、所望の姿勢から外れてしまう。したがって、当該補強材300にて障子100の荷重を十分に支持することができず、下枠201の変形を抑制することができないため、防火性能の低下を抑制することができない、という問題がある。
また、突起部は、レールに対して室外側及び室内側にそれぞれ位置する第1,第2突起部を備える。このため、障子からの荷重が下枠(上壁部)を介して補強材にかかった時に、当該補強材は、下壁部の上面に対して第1,第2突起部にて当接する。すなわち、障子からの荷重を下壁部の上面と第1,第2突起部との2つの接点に分散し、当該荷重が下壁部の上面における1点にかかることを回避することができる。したがって、下枠の変形を抑制し、防火性能の低下をさらに抑制することができる。
ところで、中空部の少なくとも一部が固定用ヒレ部(建物躯体)よりも室外側に位置している場合には、当該中空部の少なくとも一部が建物躯体にて支持されない構造となる。このため、火災時等の熱によって温度上昇する下枠の剛性が低くなると、下枠が熱塑性変形し易いものとなる。
本発明によれば、中空部の少なくとも一部が固定用ヒレ部(建物躯体)よりも室外側に位置している構造に本発明に係る下枠構造を採用することで、上述した防火性能の低下を抑制することができるという効果を好適に実現することができる。
本発明では、上対向面は、上述した第1,第2対向面を備える。すなわち、補強材は、第1,第2対向面によりビスホールの外面を覆う。このため、火災時の熱によるビスホールの損傷を補強材にて抑制し、下枠と縦枠との位置関係を所望の位置関係で維持することができる。したがって、防火性能の低下をさらに抑制することができる。
ところで、火災時の熱によりビスホールが損傷した場合には、当該ビスホールよりも室外側の部分において、下枠に対して縦枠が開くこととなる。ここで、当該ビスホールが内障子よりも室外側に位置している場合には、内障子よりも室外側の部分において、下枠に対して縦枠が開くため、下枠及び縦枠を含む窓枠と外障子との間に貫通孔が形成されてしまう。一方、内障子よりも室外側の部分において、下枠に対して縦枠が開くため、窓枠と内障子との間には貫通孔が形成され難い。
本発明では、補強材は、中空部内において、少なくとも外障子の戸先側の端面に位置している。このため、ビスホールにおいて、最も保護する必要のある部分を補強材にて保護し、窓枠と外障子との間に上述した貫通孔が形成されることを抑制することができる。
本発明に係る建具は、上述した下枠構造を備えるため、上述した下枠構造と同様の作用及び効果を奏する。
図1は、本実施の形態に係る建具1を室内側から見た図である。図2は、建具1の縦断面図である。
なお、以下で記載する「見込み方向」は、図2の矢印Arで示すように、建具1の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った平面については、見込み面と称し、見込み方向に直交する平面については、見付け面と称する場合がある。
建具1は、引違い窓で構成され、窓枠2と、外障子3と、内障子4とを備える。
窓枠2は、上枠21、下枠22、図1中、左側に位置する左縦枠23、及び図1中、右側に位置する右縦枠24を四周枠組みすることによって構成され、建物躯体Bの開口部Opの縁部に沿うように取り付けられる。
これら各枠部材21〜24は、アルミニウム等の金属製や塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂製の押出形材であり、全長に亘って略同一の断面形状を有する。
なお、本発明の要部である下枠構造5については後述する。
框体32は、上框33と、下框34と、戸先框35と、召合せ框(図示略)とを框組みすることにより構成され、内部で面材31の外周縁部を保持する。
これら上框33、下框34、戸先框35、及び召合せ框(図示略)は、アルミニウム等の金属製や塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂製の押出形材であり、全長に亘って略同一の断面形状を有する。
そして、上述した外障子3及び内障子4において、戸先框35が左縦枠23に当接するとともに、戸先框45が右縦枠24に当接した場合には、外障子3の召合せ框(図示略)と内障子4の召合せ框46とが互いに係合する。そして、開口部Opは、外障子3及び内障子4にて閉塞される。この状態では、外障子3の召合せ框(図示略)と内障子4の召合せ框46との間は、クレセントCR(図1)によってロック可能である。当該クレセントCRによりロックすることにより、外障子3及び内障子4は、開口部Opを閉塞した状態に保持される。
次に、下枠構造5について説明する。
図3は、図2の一部を拡大した図である。図4は、金属下枠7を上方側から見た図である。図5は、金属下枠7を室外側から見た図である。
下枠構造5は、下枠22の中空部71内に補強材6を設けた構造である。以下、下枠22及び補強材6の構成について順に説明する。
下枠22は、金属下枠7と、2つの樹脂下枠8とを備える。
金属下枠7は、アルミニウム等の金属製の押出形材であり、全長に亘って略同一の断面形状を有する。この金属下枠7は、中空部71と、固定用ヒレ部72とを備える。
上壁部711は、見込み方向に延在した部分である。
この上壁部711の上面711aには、外レール715及び内レール716が見込み方向に並設されている。ここで、外レール715は、外障子3を図1中、左右方向に移動可能に支持するレールである。また、内レール716は、内障子4を図1中、左右方向に移動可能に支持するレールである。
また、上壁部711の下面711bにおいて、外レール715の下方には、下方に突出したビスホール717が設けられている。すなわち、ビスホール717は、内障子4に対して室外側に位置する。このビスホール717は、左縦枠23や右縦枠24と下枠22とをビスにより固定するための部分である。
そして、上壁部711において、外レール715及び内レール716の間には、中空部71内外を連通する水抜き孔718(図4)が下枠22の長手方向に沿って複数、形成されている。
この下壁部712の上面712aは、傾斜面712bと、水平面712cとで構成されている。ここで、傾斜面712bは、水平面712cに対して室内側に位置し、室外側に向けて下方に傾斜した平坦面である。また、水平面712cは、傾斜面712bに連接し、鉛直方向に直交する平坦面である。
室内側壁部714は、室外側に向けて下方に傾斜し、上壁部711及び下壁部712(傾斜面712b)の室内側の端部同士を接続する。
すなわち、固定用ヒレ部72にて下枠22を建物躯体Bに固定した場合には、中空部71の略全ては、建物躯体Bに対して室外側に位置する。
上片部61は、見込み方向に延在した部分であり、補強材6が中空部71内に配設された状態で上壁部711に対向する。具体的に、上片部61は、第1対向部611と、第1対向部611に対して段差部613を介して連設され、第1対向部611よりも高さの低い第2対向部612とを有し、上壁部711の下面711b及びビスホール717の外面に倣うクランク形状を有する。また、上片部61において、水抜き孔718に対向する位置には、当該水抜き孔718を避けるように室外側に向けて切り欠かれた切欠部617(図4)が形成されている。
この下片部63の下面631には、当該下面631から突出した突起部64が設けられている。この突起部64は、第1突起部641と、第1突起部641に対して室内側に位置する第2突起部642との2つ設けられている。これら第1,第2突起部641,642は、補強材6の全長に亘ってそれぞれ設けられており、同一の高さ寸法を有する。
なお、突起部64の機能については後述する。
また、下片部63の上面632には、加熱されることで膨張する熱膨張性部材(加熱発泡材)65が設けられている。この熱膨張性部材65は、上壁部711の水抜き孔718の方向へ膨張するように配置されている。
先ず、作業者は、段差部613及び第2対向部612のL字部分をビスホール717の外面にあてがいつつ、中空部71の端面71aから補強材6を中空部71内に挿入する。そして、作業者は、ネジ等の締結部材Sc2により、第1対向部611を上壁部711に固定する。
この状態では、上片部61の上面614は、外レール715の下方に位置し、当該外レール715を見込み方向に跨ぐように位置付けられる。より具体的に、上面614のうち、第1対向部611の上面615は、上壁部711の下面711bに当接(対向)する。また、上面614のうち、第2対向部612の上面616は、ビスホール717の外面に当接(対向)する。すなわち、上片部61の上面614は、ビスホール717の外面を覆う。そして、補強材6と下壁部712の上面712aとの間には、所定のクリアランスが設けられる。
また、下片部63の下面631は、傾斜面712bと水平面712cとの連接部分を見込み方向に跨ぐように位置付けられる。また、第1突起部641は、外レール715に対して室外側に位置付けられる。さらに、第2突起部642は、外レール715に対して室内側に位置付けられる。
以上説明した上片部61の上面614は、本発明に係る上対向面に相当する。また、第1対向部611の上面615は、本発明に係る第1対向面に相当する。さらに、第2対向部612の上面616は、本発明に係る第2対向面に相当する。また、下片部63の下面631は、本発明に係る下対向面に相当する。さらに、外レール715は、本発明に係るレールに相当する。
次に、突起部64の機能について説明する。
図6ないし図8は、突起部64の機能を説明する図である。なお、図6は、中空部71の端面71aから補強材6を中空部71内に挿入した状態(締結部材Sc2にて固定する前の状態)を示している。図7は、図6の状態において、突起部64が設けられていない場合を例示したものである。図8は、外障子3から下枠22を介して補強材6に伝わる力を示している。
図7に示すように、突起部64が設けられていない場合には、中空部71の端面71aから補強材6を中空部71内に挿入した状態では、下片部63における室内側の端部が傾斜面712bに当接し、下片部63における室外側の端部が水平面712cに当接する。すなわち、第1対向部611の上面615は、上壁部711の下面711bに対して傾斜した状態(平行でない状態)となる。そして、この状態で、締結部材Sc2により、第1対向部611を上壁部711に固定した場合には、下面711bに対して上面615が傾斜した姿勢が維持され、下面711bと上面615との間、及びビスホール717と上面616との間に隙間が生じてしまう虞がある。
以上のように、突起部64は、締結部材Sc2により第1対向部611を上壁部711に固定する前に、下面711bに対して上面615を平行にする機能(以下、第1の機能と記載)を有する。
以上のように、突起部64は、外障子3から下壁部712にかかる荷重を分散する機能(以下、第2の機能と記載)と、外障子3から下壁部712に荷重がかかる位置を制御する機能(以下、第3の機能と記載)を有する。
本実施の形態に係る下枠構造5では、補強材6において、下片部63の下面631には、突起部64が設けられている。このため、外障子3からの荷重が下枠22(上壁部711)を介して補強材6にかかった時に、当該補強材6は、下壁部712の上面712aに対して突起部64にて当接する。すなわち、突起部64により、長手軸を中心とした補強材6の回転を抑制し、当該補強材6を所望の姿勢で維持することができる。したがって、補強材6にて外障子3の荷重を十分に支持することができ、防火性能の低下を抑制することができる。
特に、突起部64に上述した第1の機能を持たせているため、締結部材Sc2により、第1対向部611を上壁部711に固定した場合に、下面711bに上面615を当接(密着)させることができる。したがって、外障子3からの荷重が下枠22(上壁部711)を介して補強材6にかかった時に、補強材6の姿勢を所望の姿勢で維持することができ、防火性能の低下をさらに抑制することができる。
本実施の形態に係る下枠構造5では、上片部61の上面614は、ビスホール717の外面を覆う。また、補強材6は、中空部71内において、外障子3の戸先側の端面71aから召合せ側に延在している。このため、ビスホール717において、最も保護する必要のある部分を補強材6にて保護し、左縦枠23と外障子3との間に上述した貫通孔が形成されることを抑制することができる。
さらに、本実施の形態に係る下枠構造5では、突起部64に上述した第3の機能を持たせている。このため、外障子3から下壁部712に荷重がかかる位置を容易に制御することができ、下枠22の形状の自由度を向上させることができる。
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
上述した実施の形態では、本発明に係る下枠構造を引違い窓に採用していたが、これに限らない。例えば、3枚以上の障子が左右方向にスライドする引違い方式の窓や両袖片引き窓や引き分け窓、枠体内の領域が縦骨により区分けされ、区分けされた一方の領域がFIX窓や壁をなす片引き窓、障子が上下方向にスライド移動する上げ下げ窓、障子が見込み方向に開閉するすべり出し窓、1枚の障子をはめ殺したはめ殺し窓、勝手口ドア、玄関ドア、あるいは、カーテンウォール等、各種の建具に本発明に係る下枠構造を採用しても構わない。
上述した実施の形態に係る下枠構造5では、補強材6に対して、第1,第2突起部641,642の2つの突起部64を設けていたが、本発明に係る突起部の数は、2つに限らず、3つ以上でもよい。また、図9に示した下枠構造5Aで用いた補強材6Aのように、下片部63の室内側の端部に第2突起部642と同様の機能を持たせれば、当該第2突起部642を省略し、第1突起部641の1つのみ設けた構成を採用しても構わない。
Claims (5)
- 建物躯体の開口部に設けられる下枠を有する下枠構造であって、
前記下枠は、中空部を備え、
前記中空部内には、補強材が設けられ、
前記中空部を構成する上壁部の上面には、
障子を移動可能に支持するレールが設けられ、
前記中空部を構成する下壁部の上面は、
室外側に向けて下方に傾斜した傾斜面を有し、
前記補強材は、
前記上壁部の下面に対向する上対向面と、
前記下壁部の上面に対向する下対向面と、
前記下対向面から下方に突出する突起部とを備え、
前記突起部は、
前記レールに対して室外側に位置する第1突起部と、
前記レールに対して室内側に位置する第2突起部とを備える
ことを特徴とする下枠構造。 - 前記下枠には、
見込み方向から締結部材により前記建物躯体に固定される固定用ヒレ部が設けられ、
前記中空部は、
少なくとも一部が前記固定用ヒレ部よりも室外側に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の下枠構造。 - 前記上壁部の下面には、
当該下面から突出するビスホールが設けられ、
前記上対向面は、
前記上壁部の下面に対向する第1対向面と、
前記第1対向面に対して段差を介して連設され、前記ビスホールに対向する第2対向面とを備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の下枠構造。 - 前記下枠にて移動可能に支持される障子は、
外障子と、
前記外障子に対して室内側に位置する内障子とを備え、
前記ビスホールは、
前記内障子に対して室外側に位置し、
前記補強材は、
前記中空部内において、少なくとも前記外障子の戸先側の端面に位置する
請求項3に記載の下枠構造。 - 請求項1〜4のいずれか一つに記載の下枠構造を備える
ことを特徴とする建具。
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