JP6840641B2 - フォームドミルクの官能特性を評価する方法 - Google Patents

フォームドミルクの官能特性を評価する方法 Download PDF

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Description

本発明は、フォームドミルクの官能特性を評価する方法に関する。
コーヒーや紅茶等を喫食する際には、カプチーノやカフェラテ等の飲料に代表されるように、液状乳を起泡させてフォームドミルクを調製して食品に添加することがある。このフォームドミルクは、液状乳に、空気を含有させて起泡させることにより調製されるものであるが、液状乳を起泡させる方法として、液状乳を機械的に撹拌することによって起泡させる方法(撹拌式)、液状乳に高圧蒸気を吹き込むことによって起泡させる方法(蒸気式)、及びステンレス製のメッシュ等を液状乳の液面に複数回押し込むことによって気泡を注入して起泡させる方法(送気式)等が知られている。このなかで蒸気式により調製されたフォームドミルクは、特にスチームミルク又はスチームドミルクと呼ばれる。
ここで、フォームドミルクにおける泡沫の量や安定性、気泡サイズといった特性は、フォームドミルクの調製方法、及び原料となる液状乳の組成や製造条件によって、異なることが知られている。例えば、非特許文献1では、液状乳の脂肪含量、殺菌温度、及び起泡時の温度等の条件が、起泡された泡沫の量や泡沫の安定性、気泡のサイズ等のフォームドミルクの理化学的性質に影響を与えることが記載されている。
また、非特許文献2でも同様に、液状乳の均質処理の有無等の条件が、起泡された泡沫の量や泡沫の安定性、気泡のサイズといった特性に影響を与えることが記載されている。
ところで、近年の嗜好性の多様化に伴い、フォームドミルクに求められる食感や風味も多様化している。食品用途又は食品の商品企画や商品の方向性等の目的に応じてフォームドミルクの食感や風味を変える場合もあり、様々な要望に応じたフォームドミルクを迅速に提供することが望まれている。
食品の食感や風味を検討する場合、通常、理化学的特性の評価又は官能特性の評価のいずれかを少なくとも行っている。
しかしながら、従来、牛乳から調製したフォームドミルクの理化学的特性を調査したことはあるが、官能特性にまで踏み込んで調査した例はなかったのが実情である。
K. Oetjen et al., Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects, Vol.420, 2014, pp.280-285 S. Kamath et al., International Dairy Journal, Vol.18, 2008, pp.994-1002
本発明者等は、フォームドミルクの官能特性が、フォームドミルクの調製方法のみならず、原料となる液状乳の製造条件(具体的には、組成及び/又は製法条件)によっても異なることに着目した。すなわち、本発明者等は、要望に応じたフォームドミルクを得るために、フォームドミルク用原料となる液状乳に着目することにした。しかし、そのためには、フォームドミルクの原料となる液状乳の製造条件と、フォームドミルクの官能特性との相関関係を十分に理解する必要がある。
フォームドミルクの特性を理解するにあたっては、上述の非特許文献1及び2のような、フォームドミルクの理化学的特性を評価する方法を利用することが考えられる。しかしながら、フォームドミルクが泡沫の食感や風味を提供するものである以上、理化学的特性の評価のみでは十分に評価できない領域が存在するため、フォームドミルクの官能特性を適切に評価する必要性が存在する。
ところが、フォームドミルクの官能特性を評価することについては、統一された手順や方法がないのが現状である。
そこで、本発明者等は、フォームドミルクの官能特性評価方法を検討した。具体的には、本発明者等は、定量的記述分析法(QDA法)を用いて、フォームドミルクの官能特性(特性表現用語)を検討した結果、「泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ、弾力、泡の溶けやすさ、加熱臭、甘味、及び濃厚感」の7つの官能特性(各15段階評価)を決定した。
この官能特性のうち、泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ、弾力、泡の溶けやすさは、フォームドミルクに対するヒトの食感に基づく特性ともいえる。また、この官能特性のうち、加熱臭、甘味、濃厚感は、フォームドミルクに対するヒトの嗅覚・味覚に基づく特性ともいえる。
しかし、前記要望に応じたフォームドミルクを製造することができるように、官能特性を細分化したとしても、この官能特性を適切に評価することができる試料、特に安定して均一な品質の試料を複数提供できる試料の調製方法、が重要となってくる。
フォームドミルクの官能特性を評価する場合には、少量の液状乳から調製したフォームドミルクで実施できる理化学的特性の評価とは異なり、複数のヒトが喫食して評価するため、喫食に必要な数と量のフォームドミルクを提供すると共に、これらを均一な品質に調製しておく必要がある。
しかしながら、フォームドミルクの官能特性を評価するための試料(以下、「評価用試料」ともいう)は、ある程度まとまった数と量を調製しようとすると、フォームドミルクの評価用試料の出来上がりの品質にバラつきが生じやすい。また、蒸気式や送気式によるフォームドミルクの調製方法では、蒸気又は空気の吹込み方などにある程度の熟練が必要であり、調製する主体の技量に依存する傾向が高いため、これもまたフォームドミルクの評価用試料の品質にバラつきが生じ易い。
さらに、フォームドミルクは、調製した直後から気泡が合一して生じる泡沫層と気泡を含まない液状層とへの分離が開始して不均一な状態になってしまうため、フォームドミルクの評価用試料を均一な品質の状態で喫食することが難しく、それゆえに評価のバラつきが生じやすいという事情も存在する。
また、本発明者等は、フォームドミルクの官能特性を評価する際に、フォームドミルクの調製をルーチンワーク的に行うことで、原料となる液状乳の違いに起因する官能特性の差を検討することに重点をおくことができ、これによって評価方法が簡略化できると考えたが、この場合でも、安定して均一な品質の試料を多数提供できる試料の調製方法が重要となってくる。
しかしながら、従来のフォームドミルクの評価用試料は、出来上がりの品質にバラつきが生じやすく、かつ調製後に不均一な状態になりやすいことから、適切な官能評価を行うことが困難であったという実情があった。また、適切な官能評価を行うための、均一な品質の試料を安定して複数提供できる試料調製方法が確立されていなかったという実情もあった。
そこで、本発明者等は、斯様な実情に鑑み、当該実情を解決するためには、同じ液状乳からまとまった数と量の試料を調製した場合でも、これら全てのフォームドミルクの評価用試料が均一な品質であり、このようなフォームドミルクの評価用試料で官能評価をする必要があると考えた。
さらに、本発明者等は、均一な品質の評価用試料を用いてフォームドミルクの官能特性を適切に評価することができれば、この原料となる液状乳の製造条件(組成及び/又は製法条件)を適宜変更しながら、要望に応じたフォームドミルクを得るために原料となる液状乳の組成や製造条件を適切に設計したり、複数の液状乳から良好な液状乳を適切に選択したりすることも可能になると考えた。
よって、本技術は、食品に使用するフォームドミルクの官能特性を適切に評価できる方法を提供することを主目的とする。
そして、本発明者等が研究を進めた結果、食品に使用するフォームドミルクの官能特性を適切に評価することができる評価用試料であって、起泡された状態が安定化しているかつ均一な品質の官能評価用の試料を安定して複数提供することができることを見出した。
さらに、本技術は、均一な品質の官能評価用の試料を安定して提供することができるので、フォームドミルクの官能特性(評価項目)が細分化されても、適切に評価することができる。なお、本明細書において、均一な品質の試料の「均一な品質」とは、官能特性の評価のバラつきが少なく適切に行うことができる試料のことをいう。
また、後記実施例に示すように、本発明者等は、液状乳の製造条件(組成及び/又は製法条件)が、当該液状乳から調製したフォームドミルクの評価用試料(泡沫層部分)の官能特性に影響を及ぼすことを見出した。すなわち、本発明者等は、フォームドミルクの官能特性を適切に評価でき、かつこの評価結果とフォームドミルクの原料となる液状乳の製造条件とに関連性があることも見出した。
このことにより、本技術の官能評価方法の結果を、原料となる液状乳の組成条件(脂肪含量調整、タンパク含量調整等の成分調整条件)、殺菌条件(殺菌方式、殺菌温度等)、及び均質条件(均質圧力、均質温度等)等の製造条件の検討にフィードバックすることで好適な製造条件を設定することが可能となる。
斯様にして、要望に応じたフォームドミルクを得るために、本技術の評価方法の結果に基づき、フォームドミルク用の液状乳の製造条件を設計したり、好適なフォームドミルク用液状乳を選択したりすることができることも見出した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕 以下の(1)〜(3)の工程を含むフォームドミルクの官能特性を評価する方法:
(1)撹拌機構付き容器にて液状乳を撹拌して起泡させたフォームドミルクを得る起泡工程、
(2)前記フォームドミルクが泡沫層と液状層とに分離するまで静置し、分離した泡沫層を回収して評価用試料として得る分離工程、
(3)前記評価用試料を官能評価する評価工程。
〔2〕 前記官能特性は、泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ、弾力、泡の溶けやすさ、加熱臭、甘味、及び濃厚感からなる群から選択される1種又は2種以上である、前記〔1〕記載の評価方法。
〔3〕 前記起泡工程は、撹拌機構付き容器を一定に傾けて液状乳を撹拌して起泡させたフォームドミルクを得る起泡工程である、前記〔1〕又は〔2〕記載の評価方法。
〔4〕 前記評価方法は、前記分離工程前であり、前記起泡工程後に、1つのフォームドミルクを複数の試料容器に分注する分注工程を含む、前記〔1〕〜〔3〕の何れか1項記載の評価方法。
〔5〕 前記起泡工程において、前記液状乳を少なくとも60秒間撹拌して起泡させる、前記〔1〕〜〔4〕の何れか1項記載の評価方法。
〔6〕 前記分離工程において、泡沫層と液状層とに分離するまで少なくとも120秒間静置する、前記〔1〕〜〔5〕の何れか1項記載の評価方法。
〔7〕 前記評価方法は、異なる複数の液状乳を使用してフォームドミルクの官能特性を評価する方法であり、前記評価工程後にさらに、フォームドミルクの官能特性に基づいて原料となる液状乳を選定する選定工程を含む、前記〔1〕〜〔6〕の何れか1項記載の評価方法。
〔8〕 前記〔7〕の評価方法に基づいて選定された液状乳の製造条件を設定し、当該製造条件にてフォームドミルク用液状乳を製造する方法であって、
前記製造条件が、液状乳の組成、液状乳の殺菌方式、液状乳の殺菌温度、液状乳の殺菌時間、液状乳の均質圧力、液状乳の均質温度及び液状乳の均質処理時間からなる群から選択される1種又は2種以上の製造条件である、製造方法。
〔9〕 前記フォームドミルクの官能特性の評価が、食感に基づく評価及び/又は嗅覚・味覚に基づく評価であり、かつ、以下の(1)〜(3)の何れかから選択される製造条件による製造工程を含む、前記〔8〕記載の製造方法:
(1)前記製造条件のうちの殺菌方式が、食感の評価、及び嗅覚・味覚の評価に基づいて決定される殺菌方式である、
(2)前記製造条件のうちの殺菌温度が、嗅覚・味覚の評価に基づいて決定される殺菌温度である、
(3)前記製造条件のうちの均質圧力が、食感の評価、及び嗅覚・味覚の評価に基づいて決定される均質圧力条件である。
〔10〕 前記フォームドミルクの官能特性の評価が、泡のきめ細やかさ、泡の滑らかさ、弾力、泡の溶けやすさ、加熱臭、甘味及び濃厚感からなる群から選択される1種又は2種以上の評価であり、かつ、以下の(1)〜(3)の何れかから選択される製造条件による製造工程を含む、前記〔8〕記載の製造方法:
(1)前記製造条件のうちの殺菌方式が、泡のきめ細やかさ、泡の滑らかさ及び加熱臭の評価に基づいて決定される殺菌方式である、
(2)前記製造条件のうちの殺菌温度が、甘味の評価に基づいて決定される殺菌温度である、
(3)前記製造条件のうちの均質圧力が、泡のきめ細やかさ、泡の滑らかさ、弾力、泡の溶けやすさ及び濃厚感の評価に基づいて決定される均質圧力である。
本技術によれば、食品に使用するフォームドミルクの官能特性を適切に評価できる方法を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
本技術のフォームドミルクの調製に使用する撹拌機構付き容器の傾きの概略図である。
次に、本発明の好ましい実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
1.フォームドミルクの官能特性評価方法
本技術の第一の態様は、フォームドミルクの官能特性を評価する方法である。
後記実施例に示すように、本技術の評価方法に用いる評価用試料は、フォームドミルクの泡沫層部分であり、液状乳より調製して得られた評価用試料によって均一な状態で官能評価を行うことができることを明らかにしている。さらに、原料として使用する液状乳の製造条件(組成及び/又は製法条件)が、当該液状乳から調製した評価用試料の官能特性に影響を及ぼしていることを明らかにしている。
ところで、本発明者等は、フォームドミルクは実際に喫食される際においても泡沫層と液状層に分離し、例えば、カプチーノや紅茶等の飲料にフォームドミルクを添加する際には、泡沫層は飲料上部に層状に形成される一方で、液状層は飲料自体と混ざり合うことに着目し、食品に添加したフォームドミルクの食感及び風味は泡沫層部分に強く影響することから、本技術においては、フォームドミルクの泡沫層を官能評価用試料(評価対象)とした。このことにより、実際にフォームドミルクが喫食される状態を反映した評価方法といえる。すなわち、評価用試料の官能特性は、喫食する際のフォームドミルクの官能特性とみなすことができる。
さらに、後記実施例に示すように、本技術のフォームドミルクの官能特性は、泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ、弾力、泡の溶けやすさ、加熱臭、甘味及び濃厚感からなる群から選択されるいずれか1種又は2種以上であることが好適であることを明らかにしている。これを評価項目にすることで、本技術のフォームドミルクの官能特性の評価をより適切に行うことができる。
このことから、本技術のフォームドミルクの官能特性の評価方法の検討結果を、液状乳の製造条件にフィードバックすることによって、所望の食感及び風味等を有するフォームドミルクを調製可能な液状乳を得ることも可能である。よって、本技術のフォームドミルクの評価方法に基づいて、液状乳の製造条件(具体的には、組成及び/又は製法条件)を設定し、当該製造条件にてフォームドミルク用液状乳を製造することが可能である。
本技術は、以下の(1)〜(3)の工程を含むフォームドミルクの官能特性を評価する方法である。
(1)撹拌機構付き容器にて液状乳を撹拌して起泡させたフォームドミルクを得る起泡工程、
(2)前記フォームドミルクが泡沫層と液状層とに分離するまで静置し、分離した泡沫層を回収して評価用試料として得る分離工程、
(3)前記評価用試料を官能評価する評価工程。
また、本技術の別の側面は、フォームドミルクの官能特性を評価する方法であって、以下の(1)〜(2)の工程を含む調製方法にて前記液状乳から得られた評価用試料を用いることを特徴とする、評価方法である。
(1)撹拌機構付き容器にて液状乳を撹拌して起泡させてフォームドミルクを得る起泡工程、及び
(2)前記フォームドミルクが泡沫層と液状層とに分離するまで静置し、分離した液状層を除去して評価用試料を得る分離工程。
なお、本技術の評価方法は、後述する評価用試料の調製方法の手順に従って行うことができる。具体的には、本技術の評価方法は、少なくとも分離工程及び評価工程を含むものであり、好適には起泡工程、分離工程及び評価工程を含むものである。
本技術の評価方法は、前記起泡工程が、撹拌機構付容器を一定に傾けて液状乳を撹拌して起泡させることが好適である。さらに、前記分離工程前に、前記起泡工程後の1つのフォームドミルクを複数の試料容器に分注する分注工程を含むことが好適である。
本技術の評価方法は、液状層と泡沫層とに分離したフォームドミルクから泡沫層を回収して評価用試料として官能評価を行う評価工程を含むことが好適である。当該評価工程は、回収した泡沫層部分の官能特性に基づいてフォームドミルクの官能特性を評価することが好適である。
本技術の液状乳から得られる評価用試料の調製方法について、以下に示す。
本技術の評価用試料の調製方法は、少なくとも前記分離工程を含むものである。好適には、前記起泡工程及び前記分離工程を含むものであり、さらに好適には、起泡工程、分注工程及び分離工程の3工程を含むものである。また、本技術の調製方法は、前記撹拌前に、前記撹拌機構付き容器に液状乳を充填する充填工程を含んでもよい。
<起泡工程>
本技術の起泡工程は、撹拌機構付き容器にて液状乳を撹拌して起泡させる工程である。当該起泡工程により、液状乳を撹拌して起泡させてフォームドミルクを得ることができる。
前記起泡工程前に、前記撹拌機構付き容器に前記液状乳を充填する充填工程を行う。充填後、液状乳を容器の撹拌機構により撹拌することにより液状乳を起泡させる。このとき、前記撹拌機構付き容器を一定の角度に固定することが好ましい。前記撹拌機構付き容器を一定の角度に固定することで、安定して作業できるので均一な品質の起泡が得やすい。前記撹拌機構付き容器を一定の角度に固定した後に当該容器に液状乳を充填してもよいし、前記液状乳を前記撹拌機構付き容器に充填した後に当該容器を一定の角度に傾けて固定してもよい。
また、一定の角度に固定した場合、前記液状乳の起泡が終了した後は、前記容器を水平に設置することが望ましい。
本技術に用いる「液状乳」は、フォームドミルク用の原料とすることができるものであり、本技術における官能特性を評価するための評価用試料の原料となるものである。なお、本技術において、撹拌等の手段により液状乳内部に空気がとりこまれて容量が増加したものをフォームドミルクという。
前記液状乳は、起泡させることができる乳であれば特に限定されず、ウシ、ヒツジ、ヤギ又はウマ等の哺乳動物から搾乳して得られた乳が好ましいが、豆乳、アーモンドミルク又はライスミルク等の植物由来の乳であってもよい。また、当該乳を原料として成分調整等を行った乳組成物等を、殺菌、均質化したものでもよい。また、液状乳は、植物性脂肪を使用した混合脂肪乳、純植物性脂肪乳であってもよい。当該植物性脂肪として、例えば、菜種油、オリーブオイル、大豆油、パームオイル、ココナッツ油及びカカオバター等が挙げられ、これらを単独で又は組み合わせて使用することができる。前記液状乳の成分調製として、脂肪分とタンパク質の質量比を調整してもよく、例えば無脂肪の液状乳としてもよい。
また、前記液状乳は、pH調整剤、塩、界面活性剤等の液状乳の製造に使用可能な各種成分を適宜配合することにより調製してもよい。
本技術において、ウシ由来の乳成分を使用する液状乳を用いることが好ましい。
本技術に用いる「液状乳」は、製造条件(好適には、組成条件及び/又は製法条件)を適宜調整して得ることができる。液状乳の製造条件が、最終的なフォームドミルクの官能特性に影響を与えるので、液状乳の製造条件と試験用試料の官能評価結果とを検討することで、液状乳の製造方法にフィードバックすることも可能である。
前記製造条件は、例えば、液状乳の組成条件、液状乳の殺菌条件及び液状乳の均質条件等を挙げることができ、これらから選択される1種又は2種以上のものである。
さらに、前記製造条件は、例えば、液状乳の組成、液状乳の殺菌方式、液状乳の殺菌温度、液状乳の殺菌時間、液状乳の均質圧力、液状乳の均質温度、及び液状乳の均質処理時間等から選ばれる1種又は2種以上であることが望ましい。
さらに好適には、前記液状乳の製造条件として、液状乳の殺菌方式、液状乳の殺菌温度、及び液状乳の均質圧力から選ばれる1種又は2種以上であることが望ましい。
前記液状乳の組成条件として、例えば、乳脂肪、乳タンパク質(例えば、カゼインタンパク質、ホエイタンパク質等)、塩類、界面活性剤、pH調整剤、水分、栄養補助成分(例えば、葉酸、ビタミンD、ビタミンE等)等から選択される1種又は2種以上のものの割合を調整(例えば、添加、除去等)することが挙げられる。
前記液状乳の殺菌条件として、例えば、液状乳の組成、液状乳の殺菌方式、液状乳の殺菌温度等が挙げられる。当該殺菌方式として、例えば、インフュージョン方式、プレート方式等が挙げられる。
前記液状乳の均質条件として、例えば、均質方法、液状乳の殺菌時間、液状乳の均質圧力、液状乳の均質温度及び液状乳の均質処理時間等が挙げられる。
本技術に用いる「液状乳」は、冷蔵保存されたもの等をそのまま起泡工程に用いることもできるが、起泡状態を良好とするため、一定温度以上に加熱して起泡させることが好ましく、さらに作業性の点で容器への充填前に加熱することが好ましい。前記加熱温度は、好ましくは30〜90℃、より好ましくは40〜80℃、さらに好ましくは50〜70℃であり、55〜70℃にすることがよりさらに好ましい。
前記加熱方法は、食品の製造に利用できる加熱方法であれば、特に制限されず、熱源と直接接触させる直接加熱法であっても、熱源と間接的に接触して熱交換することにより加熱する間接加熱法のいずれであってもよい。また、前記撹拌機構付き容器に加熱装置を設けても良い。
前記容器に充填する液状乳の量は、撹拌によりフォームドミルクを調製できる限りにおいて特に制限されないが、好ましくは前記容器の1/5〜1/2容量、より好ましくは前記容器の1/4〜1/3容量となるように液状乳を充填する。
本技術に用いる「撹拌機構付き容器」は、少なくとも撹拌機構と容器とを備えるものである。前記撹拌機構付き容器は、撹拌ヘッドと、当該撹拌ヘッドを支持する軸部と、当該撹拌ヘッドを回転させるための駆動部とを備えた撹拌機構を有することが、好ましい。
前記撹拌機構付き容器の「容器」としては、液状乳を充填することができる容器形状であれば特に制限されないが、後述する撹拌機構を固定し得る形状であることが好ましく、例えば撹拌機構を固定し得る蓋部を有する容器が例示できる。
前記容器の容量は、フォームドミルクを調製できる限りにおいて特に制限されないが、好ましくは100〜2000mLであり、より好ましくは150〜1500mLであり、さらに好ましくは200〜1000mLである。
前記撹拌機構付き容器の「撹拌機構」は、撹拌ヘッドと、当該撹拌ヘッドを支持する軸部と、当該撹拌ヘッドを回転させるための駆動装置とを備えたものであり、前記容器に固定し得る部分を有することが好ましい。
前記撹拌機構は、駆動装置を起動して撹拌ヘッドを回転させることにより液状乳に空気を取り込んで、起泡させた液状乳(フォームドミルク)を得ることができるものを好適に使用することができる。
前記撹拌ヘッドの形状は、特に制限されないが、空気を効率的に取り込むことが可能なスプリングリング形状の撹拌ヘッドであることが好ましい。
前記撹拌ヘッドは、500〜3000rpmで回転(駆動)することが好ましく、1000〜2000rpmで回転することがより好ましい。このような撹拌機構として、市販のミルクフォーマーを使用することができる。
前記容器への撹拌機構の固定位置は、撹拌ヘッドの一部又は全部が撹拌前の液状乳の液面に浸漬し、かつ撹拌ヘッド及び軸部が容器と接触しないように固定されることが好ましい。前記撹拌ヘッドは、例えば、容器の底面から1〜10cm程度のところに配置することが望ましい。また、前記軸部は、容器の中心軸に配置することが望ましい。
さらに、前記容器への前記撹拌機構の固定方法としては、蓋部に前記駆動装置部を嵌めこみ、当該蓋部を前記容器に嵌合して固定する方法を例示することができる。より具体的には、前記撹拌機構の撹拌軸が蓋部の中心軸にくるように固定し、当該蓋を前記容器の開口部分に固定して、前記撹拌軸が容器の中心軸にくるように固定する方法を例示することができる。
前記撹拌機構付き容器として、好適には、撹拌機構としてのミルクフォーマーと、容器とが一体となって市販されているミルクフォーマーセットを使用することができる。
本技術の起泡工程において、前記撹拌機構付き容器内の液状乳を撹拌する際に、前記撹拌機構付き容器を一定の角度に傾けることが好ましい。容器を一定の角度に傾けることで、液状乳を撹拌した際、液状乳への空気の取り込みが促進され、風味及び安定性の良好な泡沫を形成させることができ、官能特性の評価に重要な泡沫層部分の試料を得ることができる。
前記撹拌機構付き容器を垂直とせずに一定の角度に傾けた方が、泡沫が安定であり、均一な品質の試料が得られる点で好ましい。
前記撹拌機構付き容器内の液状乳を撹拌する際に、当該容器を一定の角度に傾ける場合、前記撹拌機構付き容器を、容器の長手軸(底面の中心軸)が水平面から30〜60°(好適には30°〜50°)の角度(α)になるように傾けることが好ましく、さらに好ましくは40〜50°の角度(α)になるように傾けることである(図1参照)。なお、当該角度(α)は、0°から90°までであり、撹拌前の液面が水平面と同じである場合、当該液面と長手軸(中心軸)とからなる角度でもある。
前記容器内の液状乳を、前記撹拌機構によって一定時間撹拌して起泡させることで、評価用試料に使用するフォームドミルクを調製することができる。
前記容器内の液状乳は、少なくとも60秒間撹拌して起泡させることが好ましく、60〜150秒間撹拌させることがより好ましく、80〜120秒間撹拌することがさらに好ましい。または、起泡後のフォームドミルクの容量が、起泡前の液状乳の容量の2〜5倍になるまで撹拌することが好ましく、2〜4倍になるまで撹拌することがより好ましい。
<分注工程>
また、本技術において、後述する分離工程前に、前記起泡工程後の1つのフォームドミルクを複数の試料容器に分注する分注工程を含むことが好適である。
より具体的には、前記起泡工程後に容器を静置する前の段階で、容器に入っているフォームドミルクを、別の試料容器に分注しておくことが好ましい。
本技術では、フォームドミルクを多数に分注しても泡沫層と液状層とに良好に分離でき、分離した泡沫層を評価用試料として使用することができる。分注させても、均一な品質であり、かつ多数の評価用試料を複数のパネルに提供することができ、より良好な官能特性の評価を行うことができる。
当該分注工程を含むことによって、分離工程において試料容器を用いて、泡沫層と分離した液状層を除去しやすく、これにより残存した泡沫層を回収し易いので、作業性がよく良好な評価を得やすい。
当該分注工程は、前記起泡工程が終了した後、好ましくは30秒以内、より好ましくは20秒以内に完了させることが好ましい。
フォームドミルクを複数の試料容器に分注する際、当該容器は100〜150mL容量の容器が、複数人による官能評価用に小分けされた状態の評価用試料を複数得ることができるので、好ましい。当該容器は、市販品の試料カップを用いればよい。
<分離工程>
本技術の分離工程は、フォームドミルクが泡沫層と液状層とに分離するまで静置し、分離した後に泡沫層を回収して評価用試料を得る工程である。
前記起泡工程が終了した後又は前記分注工程が終了した後に、フォームドミルクが入った容器を水平に設置し、静置することが望ましい。容器内の評価用試料に用いるフォームドミルクを静置することで、フォームドミルクが泡沫層と液状層とに分離することができる。そして、一定時間静置することで、フォームドミルクに泡沫層と液状層との界面が発生して、これらが分離するまで前記容器を静置することが好ましい。
この泡沫層は、フォームドミルク中に取り込まれた多数の気泡が合一しつつ上部に浮上して塊となった層である。一方で、当該泡沫層が形成されることによって気泡を含有しないバルク部分を有する液状層がフォームドミルク下部に確認されるようになる。
そして、一定時間静置することで、泡沫層と液状層とが明瞭に分離してこれらの境界面が発生する。この静置する時間は、少なくとも120秒間であることが好ましく、少なくとも150秒間であることがより好ましい。また、静置する時間の上限値は、特に限定されないが、好ましくは300秒以下、より好ましくは240秒以下である。少なくとも120秒間静置することで、泡沫層と液状層の境界が明瞭となり、フォームドミルク全体としては泡沫層と液状層の2層によって構成されるものとして均一な状態となる。
そして、フォームドミルクが泡沫層と液状層とに分離した後に泡沫層を回収することが好ましい。回収した泡沫層部分は品質が均一に成り易いので、これを評価用試料とすることで官能評価のバラつきを低減することができる。
後述するフォームドミルクから調製された評価用試料の官能特性の評価は、形成された泡沫層部分を評価対象とするものである。泡沫層と液状層とを混合した状態で官能特性を評価すると評価のバラつきの原因となるため、容器を静置した後は、評価対象としない液状層を除去することが好ましい。
泡沫層の回収方法は、泡沫層を適切に回収できる限りにおいて特に制限されないが、例えば、前記容器から泡沫層のみを別の容器に移す方法や、容器を傾ける操作により泡沫層だけを容器に残したまま液状層を除去する方法等を採用することができる。泡沫層の品質の均一性が高く、操作が簡易であることから、泡沫層だけを容器に残したまま液状層を除去する方法が好ましい。
このようにして得られた泡沫層部分は、官能評価用試料として利用することができる。当該泡沫層部分は、泡沫安定性が高く、一定の品質で数及び量を多く確保することができるため、官能特性の評価に好適である。
本発明者等は、フォームドミルクは実際に喫食される際においても泡沫層と液状層へ分離すること(例えば、カプチーノや紅茶等の飲料にフォームドミルクを添加する際には、泡沫層は飲料上部に層状に形成される一方で、液状層は飲料自体と混ざり合うこと)に着目し、本技術の調製方法により調製されたフォームドミルクの泡沫層部分を官能評価対象とすることにより、実際にフォームドミルクが喫食される状態を反映することができる評価方法を見出した。したがって、本技術は、均一な状態で泡沫層部分の官能評価ができるため、官能評価結果のバラつきが生じにくい評価方法でもある。
<評価工程>
本技術における官能特性の評価は、前記調製された評価用試料を官能評価する。当該官能特性としては、好適には、後述する、「泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ、弾力、泡の溶けやすさ、加熱臭、甘味、及び濃厚感」からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。本技術で調製された評価用試料を用いて適切な官能特性を選択することによって、フォームドミルクの適切な官能特性の評価を行うことができる。さらに、当該フォームドミルクの官能特性の評価結果を、液状乳の製造方法に、フィードバックすることにより、より適切に所望とする液状乳を製造することができる。
評価する際に、より好適には、評価用試料を匙で掬って喫食することで実施することができる。評価用試料は、60〜100mLの泡沫層が厚さ30〜50mmになるように充填された容器を用い、当該容器の上面中央から容器の底面まで匙を挿入し、容器の側面に沿って泡沫を持ち上げてから喫食する方法が好ましい。当該方法であれば、カップ内の泡沫層部分である評価用試料を均一に喫食することが可能であるため、官能評価の精度を高くすることができる。
前記官能特性の評価は、複数の訓練された評価者により評価されるものであって、かつ定量的に評価できる手法であることが好ましい。
かかる官能特性評価法としては、例えば、定量的記述分析法(Quantitative Descriptive Analysis;QDA法)を例示することができる。
QDA法では、ヒトを分析型パネルとし、評価対象品と同一カテゴリのサンプルを使用してパネルを訓練し、訓練を通してパネル自身が官能特性の評価用語を設定する。そして、当該評価用語についてパネル間で尺度の摺合せ(キャリブレーション)をした後に本評価実施し、統計学的手法によってデータ解析を行う。
本技術において、後記実施例に示すように、定量的記述分析法(QDA法)を用いて、フォームドミルクの官能特性(特性表現用語)を分析型評価として検討した結果、「泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ、弾力、泡の溶けやすさ、加熱臭、甘味、及び濃厚感」の7つの官能特性を用いることが好ましい。これら官能特性は、評価項目ごとに15段階にて、評価することが好ましい。
本技術において、当該官能特性のうち、泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ、弾力、泡の溶けやすさは、フォームドミルクに対するヒトの食感の評価に分類されることが好ましい。また、加熱臭、甘味、濃厚感は、フォームドミルクに対するヒトの嗅覚・味覚の評価に分類されることが好ましい。
本技術によれば、均一な品質の評価用試料を一度にまとまった数と量を調製することができ、当該評価用試料は起泡性が安定した状態であるので、試料の状態が不安定であるために生じる評価のバラつきを減らすことができる。さらに、当該評価用試料であれば、細分化された前記7つの官能特性(各15段階評価)を利用することができるため、より適切に官能評価を実施することができる。そのため、本技術によって、フォームドミルク用原料となる液状乳を調製して得られるフォームドミルクの官能特性を適切に評価することができる。
さらに、本技術によれば、フォームドミルクの官能特性を適切に評価できることで、複数の異なる液状乳からそれぞれの評価用試料を調製し、それぞれの評価用試料について官能評価を行い、複数の異なる液状乳のなかから目的とする官能特性を有する液状乳を選択することも可能となる。
さらに、本技術によればフォームドミルクの官能特性を適切に評価できることで、所望の特性を有するフォームドミルクにするために原料となる液状乳の製造条件(組成及び/又は製法条件等)等を設計することができる。
そして、本技術によれば、製造条件(組成及び/又は製法条件等)が異なる複数種の液状乳を用いて調製された評価用試料を官能評価することで、液状乳から製造されるフォームドミルクの官能特性を適切に評価することができる。このため、異なる複数の液状乳を使用してフォームドミルクの官能特性を評価することが望ましい。
すなわち、本技術におけるフォームドミルクの評価方法は、異なる複数の液状乳を使用してフォームドミルクの官能特性を評価する方法であり、前記評価工程後にさらに、フォームドミルクの官能特性に基づいて原料となる液状乳を選定する工程を含むことができる。異なる複数の液状乳を使用したフォームドミルクの官能特性の評価結果から、所望の官能特性を有するフォームドミルクの原料となる液状乳を選択することにより、当該液状乳の製造条件(組成及び/又は製法条件)と、当該液状乳を原料として調製したフォームドミルクの官能特性との関連性を理解することができる。
したがって、このことから、所望のフォームドミルクに成る液状乳を設計することができる。この設計に基づき、所望の食感や風味を有するフォームドミルクを提供することができる。
さらに、本技術の別の側面は、フォームドミルク用液状乳の製造方法である。
後記実施例に示すように、本発明者等は、液状乳の製造条件と本技術の官能特性の評価結果とに関連性があることを明らかにした。
すなわち、本技術は、フォームドミルクの官能特性の評価結果に基づいて液状乳の製造条件を設定し、当該製造条件にてフォームドミルク用液状乳を製造する方法である。
以下に、本技術の方法の一例を説明するが、本技術はこれに限定されるものではない。
液状乳の製造条件のうち1つの条件(例えば、殺菌温度条件)を選択し、他の条件を固定し、その選択した条件について設定変更を行って、複数の異なる液状乳を調製する。なお、選択する条件は複数でもよいが、評価結果を検討し易いので、1つの条件選択の方が望ましい。
調製された液状乳について、上述した、本技術のフォームドミルクの官能特性を評価する方法に従って、官能評価を行う。各官能特性(各評価項目)の評価結果とこの評価に用いた液状乳の製造条件とを紐付けし、これを記憶部等に記憶させる。
更に他の液状乳についても、順次同様にして官能評価を行う。本技術によれば安定して均一な品質の評価用試料を調製できるので、複数の液状乳の官能評価を安定して行うことができる。
得られた複数の異なる液状乳の官能評価結果を表示し、設定変更した製造条件の違いに基づいて官能特性の評価点に差(好適には有意差)が生じているサンプルを、検索し抽出する。この差が生じている官能特性と選択した製造条件とに関連性があると判断する。また、抽出した官能特性結果とこの評価に用いた液状乳の製造条件とを紐付けしてもよい。
所望のフォームドミルクを製造したい場合、このフォームドミルクの食感・風味に該当若しくは類似する、又は傾向にある官能特性(評価項目)を選択し、選択された官能特性とこれに紐付けされた製造条件を選択し、液状乳の設計を行う。これにより、この製造条件にて所望のフォームドミルクの原料となる液状乳の製造を行うことができる。そして、この液状乳を提供することによって、所望の食感や風味を有するフォームドミルクを提供することができる。
また、このフォームドミルクの食感・風味に該当若しくは類似する、又は傾向にある官能特性(評価項目)が無かった場合には、液状乳の製造条件を変えて、種々の液状乳を調製する。各調製した液状乳について、上述の本技術のフォームドミルクの官能特性の評価方法に従って、官能評価を繰り返し行う。この結果、各液状乳から調製されたフォームドミルクの官能特性(評価項目)と製造条件の情報を取得し、これを紐付けする。このデータストックから、最終的に所望としているフォームドミルクの原料とすることが可能な液状乳の製造条件を選択し、この製造条件によって当該液状乳の製造を行うことが可能となる。
なお、本技術の製造方法の設計の過程で得られる情報(例えば、製造条件、官能特性の評価結果、評価項目、紐付け等)については、記憶部にて記憶することができ、この記憶部にアクセス・検索することで液状乳の調製に必要な情報を得ることができる。
また、本技術の製造方法又は液状乳の製造条件の設定方法を、装置のCPU等を含む制御部、及び記憶媒体(USBメモリ、HDD、CD、ネットワークサーバ等)等を備えるハードウエア資源にプログラムとして格納し、制御部によって実現させることも可能である。また、本技術は、本技術の製造方法又は液状乳の製造条件の設定方法として、コンピュータを機能させるためのプログラムとすることも可能である。
本技術の製造方法において、前記製造条件が、液状乳の組成条件、殺菌条件及び均質処理条件から選ばれる1種又は2種以上であることが、好ましい。
さらに好ましくは、前記製造条件が、液状乳の原料配合割合、液状乳の成分調整条件、液状乳の殺菌方式、液状乳の殺菌温度、液状乳の殺菌時間、液状乳の均質圧力、液状乳の均質温度及び液状乳の均質処理時間から選ばれる1種又は2種以上である。
さらに、本技術の製造方法において、前記フォームドミルクの評価方法におけるフォームドミルクの官能特性の評価が、食感に基づく評価、並びに/又は、嗅覚及び味覚(以下、「嗅覚・味覚」ともいう。)に基づく評価で行われ、かつ、(1)殺菌方式、(2)殺菌温度、(3)均質圧力の何れかから選択される製造条件による製造工程を含む製造方法であることが好適である。
また、前記官能特性の評価が、泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ、弾力、泡の溶けやすさ、加熱臭、甘味及び濃厚感からなる群から選択される1種又は2種以上の官能特性の評価であることが好適である。
さらに製造条件のうちの殺菌方式は、食感の官能特性、及び嗅覚・味覚の官能特性に基づいて決定されることが好ましい。さらに好ましくは、前記殺菌方式が、泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ及び加熱臭の官能特性に基づいて決定されることである。
さらに製造条件のうちの殺菌温度が、嗅覚・味覚の評価に基づいて決定されることが好ましい。さらに好ましくは、前記殺菌温度が、甘味の評価に基づいて決定されることである。
さらに製造条件のうちの均質圧力が、食感の評価、及び嗅覚・味覚の評価に基づいて決定されることが好ましい。さらに好ましくは、前記均質圧力条件が、泡のきめ細やかさ、泡の滑らかさ、弾力、泡の溶けやすさ及び濃厚感の評価に基づいて決定されることである。
本技術のフォームドミルクの官能特性の評価方法に基づき本技術の製造方法を決定する場合について、より具体的に以下に例示して説明するが、本技術はこれに限定されることはない。
良好な甘味を呈するフォームドミルクを製造する場合、液状乳の殺菌温度は120℃以下で実施することが好ましい。
泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさが良好でかつ加熱臭の少ないフォームドミルクを製造する場合、液状乳の殺菌方式は、直接加熱式で実施することが好ましく、プレート式殺菌と比較してインフュージョン方式で実施することがより好ましい。
泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ、弾力及び濃厚感の良好なフォームドミルクを製造する場合、液状乳の均質化は、25MPa以上の均質圧で実施することが好ましい。
さらに、本技術の別の側面は、上述のとおり、フォームドミルクから得られた評価用試料の調製方法である。本技術における調製方法は、前記評価対象となるフォームドミルクの調製と同一の工程から構成されるものである。すなわち、本技術における調製方法は、容器に液状乳を充填する工程、当該液状乳を起泡してフォームドミルクを得る起泡工程を含むものが好適である。さらに、フォームドミルクから液状層を分離して泡沫層部分にする分離工程を含んでいても良い。
また、本技術の別の側面は、評価用試料に用いるフォームドミルクの製造装置である。
本技術の製造装置は、撹拌機構付き容器、当該撹拌機構付き容器を一定に傾けて固定することが可能な支持台を備えるものである。さらに、上述した本技術の方法を実行可能な装置又は機能を有する製造装置が望ましい。
前記撹拌機構付き容器は、撹拌ヘッドと、当該撹拌ヘッドを支持する軸部と、当該撹拌ヘッドを回転させるための駆動装置とを備えた撹拌機構を備えるものである。前記駆動装置により前記撹拌ヘッドを回転させて前記容器内の液状乳を撹拌して起泡させてフォームドミルクを得ることができる。
図1に、本技術の装置の概略を示すがこれに限定されるものではない。評価用試料に用いるフォームドミルクの製造装置1には、撹拌機構付き容器2が備えられ、これは支持台(図示せず)にて固定されている。当該撹拌機構付き容器2は、垂直軸7に沿って垂直に固定することも可能であるが、水平面3から容器の長手軸4(好適には容器の底5の中心軸4)との間でなす容器の傾き角度αを有するように傾けて、固定されることが好ましい。また、撹拌機構付き容器2は、右に傾けたり左に傾けたりすることができる機構が備えられていることが好ましい。また、撹拌機構付き容器の傾きの角度αは鋭角又は直角(0°〜90°)で表す。
さらに、前記撹拌機構付き容器は、当該容器を固定可能な固定部材を用いて、当該容器を支持する支持台に固定されることが望ましい。これにより、前記撹拌機構付き容器、前記固定器具及び前記支持台を備える試料作製装置を得ることができる。当該試料作製装置には、さらに、当該容器を加温するための加温機構を備えていてもよい。
前記容器の固定部材又は固定方法は、特に制限されないが、容器外周を挟み込む機構を備えた部材を用いて、容器が傾いた状態を維持できるように固定できる部材又は方法が好ましい。
また、前記撹拌機構付き容器を固定する前に液状乳を充填してもよく、また固定した後に液状乳を充填してもよい。
本技術の評価用試料に用いるフォームドミルク製造装置により、均一な品質の試料を多数提供可能な評価用試料に用いるフォームドミルクを得ることができる。
以下に、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[調製例1:フォームドミルク用液状乳の調製]
乳牛から搾乳した牛乳を回収し、プレート式殺菌機で120℃2秒間殺菌した後、ホモゲナイザーにて14MPaで均質化処理を行った後、速やかに10℃にまで冷却してフォームドミルク用原料としての液状乳を調製した。当該液状乳を試験例1〜6に供した。
[試験例1及び2:撹拌機構付き容器の傾斜角度(50°及び90°)]
試験例1:撹拌機構付き容器の傾斜角度(50°):ミルクフォーマーが付属した蓋部と容器部分とからなるミルクフォーマーセット(スターバックスジャパン社製)を、容器部分の底面の中心軸が水平面から50°の角度になる状態で容器の位置を固定した後、調製例1の液状乳100gを55℃に加熱してから前記容器部分に投入した。ミルクフォーマーが付属した蓋部を容器に固定した後、ミルクフォーマーを90秒間回転させて液状乳を撹拌して起泡させて試験例1のフォームドミルク(傾斜角度50°)を得た。
試験例2:撹拌機構付き容器の傾斜角度(90°):ミルクフォーマーセットを垂直に立てて、当該容器部分の底面の中心軸が水平面から90°の角度になる状態にした以外は、試験例1と同様にして試験例2のフォームドミルク(傾斜角度90°)を得た。
試験例1のフォームドミルク(傾斜角度50°)の高さは容器目盛の240mLであり、撹拌時に撹拌機構付き容器を一定の角度に傾けることで、泡沫量が十分に増加し、官能評価用として好適であった。
これに対し、試験例2のフォームドミルク(傾斜角度90°)の高さは容器目盛の150mLであり、撹拌時に撹拌機構付き容器を傾けないことで、泡沫量が少なく、官能評価用として好ましくなかった。
試験例1及び2の結果により、官能評価用試料を作製する場合には、撹拌時に撹拌機構付き容器を垂直とせずに傾けることが好ましく、傾斜角度30〜60°程度に傾けることがより好適と考えた。
なお、試験例1〜6及び実施例1〜3にて使用したミルクフォーマーセット(スターバックスジャパン社製)は、撹拌ヘッドと、当該撹拌ヘッドを支持する軸部と、当該撹拌ヘッドを回転させるための駆動装置とを備えたミルクフォーマー(撹拌機構)、及び、当該ミルクフォーマーを固定し得る蓋部と、該蓋部を着脱可能な容器からなるセットである。そして、当該ミルクフォーマーセット(スターバックスジャパン社製)の容器の容量は600mLであり容器に充填する液状乳の量は、容器の1/4〜1/3容量とした。前記ミルクフォーマーの撹拌ヘッドはスプリングリング形状であり、撹拌ヘッド(回転)は1000〜2000rpm程度、撹拌ヘッドは容器の底面から2〜5cm程度になるようにして使用した。
[試験例3及び4:起泡時の温度(20℃及び55℃)]
試験例3:起泡時の温度(20℃):調製例1の液状乳100gの加熱を20℃にした以外は、試験例1と同様にして試験例3のフォームドミルク(起泡時の温度20℃)を得た。
試験例4:起泡時の温度(55℃):調製例1と同様の調製条件にて、液状乳100gを55℃に加熱して試験例4のフォームドミルク(起泡時の温度55℃)を得た。
試験例3のフォームドミルク(起泡時の温度20℃)の高さは容器目盛の230mLであり、試験例4のフォームドミルク(起泡時の温度55℃)の高さは容器目盛の260mLであった。
試験例3及び4の結果より、温度を上昇させることが重要であり、起泡時の温度は55〜70℃程度であることが好適と考えた。
[試験例5及び6:起泡後の分離工程(無し:有り)]
試験例1と同様にしてフォームドミルクを得た。当該フォームドミルクを速やかに3つのカップに3等分して分注した。
当該カップを静置することなく分注したフォームドミルクを、官能評価に供する試験例5の評価用試料(分離工程無し:フォームドミルク状態)を得た。
当該カップを150秒間静置して泡沫層(上層)と液状層(下層)とに分離し、カップから液状層のみを除去し、官能評価に供する試験例6の評価用試料(分離工程あり;泡沫層部分の容量約70mL、泡沫層部分の厚さ4mm)を得た。
後述する実施例1の官能評価に従って、試験例5及び6の評価用試料について、パネル12名で定量的記述分析法(QDA法)により官能評価を行った。
試験例5の評価用試料(分離工程無し:フォームドミルク状態)では、QDA試験における試料の官能特性(特性表現用語)を検討する段階で、提案された特性表現用語の候補について、パネル間での解釈にバラつきが大きく、パネル間で共有できる特徴を、数値化の対象となる特性表現用語として採用することが困難であったため、適切な評価(数値化)ができなかった。この理由として、各パネルが食するときの試料の掬う箇所が異なることで、掬った試料の均一品質にバラつきが生じ官能評価にバラつきが生じたと考えた。また、同一試料で複数回官能評価を行うのが一般的であるが、同一パネルであっても、掬う箇所が違ってくることや時間が経過して泡沫層と液状層との割合が変化することも、官能評価にバラつきを生じさせやすい。
これに対し、試験例6の評価用試料(分離工程あり;泡沫層部分)は、パネルにより官能特性(特性表現用語)が設定され、後述する実施例1(サンプルA)のような傾向が得られたので、適切な評価を実施することができた。
このように、意外にも、フォームドミルクを泡沫層と液状層に分離するまで待った後に、液状層を除去して、泡沫層部分を残し、この泡沫層部分を官能評価用試料にすることで、複数試料を調製しても適切な評価を実施できる程度にまで試料の品質が均一になり、このことで官能評価もバラつきが少なくすることができた。さらに、分注させても分離工程を経ることで、均一な品質の試料を得ることができた。
[試験例7及び8:起泡後の静置時間(0秒間及び120秒間)]
試験例1と同様にしてフォームドミルクを得た。容器を垂直にした後、撹拌直後の起泡直後(0秒)では泡沫層と液状層との界面は確認することができなかったが、時間をおくごとに起泡層と液状層とに分離してきた。起泡後120秒間静置することで、泡沫層と液状層との界面が確認でき、この界面の高さは安定しており、界面の高さは容器目盛60mLであった。なお、150秒間静置したときに起泡層と液状層の界面が120秒よりもより明瞭に分離し、240秒間経過しても起泡層があまり減ることはなかった。
試験例5〜8の結果より、官能評価用の試料を調製する場合、得られたフォームドミルクを約120秒〜240秒程度の一定時間静置して、泡沫層及び液状層に分離し、液状層を除去して、泡沫層部分を評価用試料として、官能評価を行うことが重要であると考えた。また、分注後に静置させることで、均一な品質の官能評価用試料を多数提供することができるという利点もある。
[実施例1]
(1)フォームドミルク用液状乳の調製
乳牛から搾乳した牛乳を回収し、プレート式殺菌機で殺菌した後、ホモゲナイザーにて14MPaで均質化処理を行った後、速やかに10℃にまで冷却してフォームドミルク用液状乳を調製した。液状乳は、殺菌条件の異なる2種類のサンプルを調製し、殺菌条件を120℃2秒間としたサンプルAと、140℃2秒間としたサンプルBとを調製した。
(2)フォームドミルクの調製及び官能特性評価
ミルクフォーマーが付属した蓋部と容器部分とからなるミルクフォーマーセット(スターバックスジャパン社製)を、容器部分の底面の中心軸が水平面から50°の角度になる状態で容器の位置を固定した後、前記(1)にて調製した液状乳100gを60℃に加熱してから前記容器部分に投入した。ミルクフォーマーが付属した蓋部を容器に固定した後、ミルクフォーマーを90秒間回転させて液状乳を撹拌して起泡させてフォームドミルクを得た。このフォームドミルクの容量は、起泡前の液状乳の容量の約2〜4倍程度であった。
当該フォームドミルクを速やかに3つのカップ(カップ容量:120mL)に3等分して分注した。当該カップを150秒間静置して泡沫層(上層)と液状層(下層)とに分離し、試料カップから液状層のみを除去した。この試料カップには、泡沫層部分の容量約70mLであり、泡沫層部分の厚さ40mmであった。以上の手順にて、評価用サンプルを評価者の人数分(12カップ)用意し、液状層を除去したカップ内に残存する泡沫層を匙で掬って喫食することで、フォームドミルクの官能特性を評価した。
当該官能特性の評価は、前記(1)にて調製したサンプルA及びBの各々について実施し、定量的記述分析法(QDA法)により、30〜50歳代の12名の評価者が15段階の尺度を用いてサンプルを評点する形式で行った。評価者は、あらかじめ複数の試験評価を実施し、該試験を通して、以下の表1に記載したフォームドミルクについての7つの官能特性(特性表現用語)を設定し、各官能特性についての評価者間での評点強度の摺合せを実施した後に、1〜15の尺度で評点する本評価を実施し、t検定により統計的有意差を解析した。
Figure 0006840641
(3)結果
その結果、フォームドミルクの官能特性の評価結果は、以下のとおりとなった。フォームドミルク用液状乳の殺菌温度の相違により、フォームドミルク(泡沫層部分のみ)の甘味に有意差が生じ、殺菌温度120℃で処理したサンプルの方がフォームドミルクの甘味が強くなることが示唆された。
すなわち、液状乳として牛乳を用いた場合では、殺菌温度を低くすることで、フォームドミルクの甘さが増加するという特性を有することが確認された。
Figure 0006840641
[実施例2]
(1)フォームドミルク用液状乳の調製
乳牛から搾乳した牛乳を回収し、プレート式殺菌機で130℃2秒間殺菌した後、ホモゲナイザーにて均質化処理を行った後、速やかに10℃にまで冷却してフォームドミルク用液状乳を調製した。液状乳は、均質化条件の異なる2種類のサンプルを調製し、均質圧力を25MPaとしたサンプルCと、7MPaとしたサンプルDとを調製した。
(2)フォームドミルクの調製及び官能特性評価
前記実施例1と同様の手順で、サンプルC及びDの評価を行った。
(3)結果
その結果、フォームドミルクの官能特性の評価結果は、以下のとおりとなった。フォームドミルク用液状乳の均質圧力の相違により、フォームドミルクの泡沫層の泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ、弾力、泡の溶けやすさ及び濃厚感に有意差が生じた。均質圧力が25MPaの方は、泡沫層の泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ、弾力、濃厚感が強くなることが示唆された。一方、均質圧力を7MPaにまで低くすることで、泡の溶けやすさは向上することがわかった。
すなわち、液状乳として牛乳を用いた場合では、均質圧力を高くすることで、泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ、弾力、濃厚感が強くなる一方で、泡の溶けやすさが低下するという特性を有することが確認された。
Figure 0006840641
[実施例3]
(1)フォームドミルク用液状乳の調製
乳牛から搾乳した牛乳を回収し、130℃で2秒間殺菌した後、ホモゲナイザーにて14MPaで均質化処理を行った後、速やかに10℃にまで冷却してフォームドミルク用液状乳を調製した。液状乳は、殺菌方式の異なる2種類のサンプルを調製し、プレート式殺菌機にて殺菌したサンプルEと、インフュージョン式殺菌機にて殺菌したサンプルFとを調製した。
(2)フォームドミルクの調製及び官能特性評価
前記実施例1と同様の手順で、サンプルE及びFの評価を行った。
(3)結果
その結果、フォームドミルクの官能特性の評価結果は、以下のとおりとなった。フォームドミルク用液状乳の殺菌方式の相違により、フォームドミルクの泡沫層の泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ及び加熱臭に有意差が生じた。インフュージョン式殺菌したサンプルFは、フォームドミルクの泡沫層の泡のきめ細やかさ及び泡のなめらかさが向上することが示唆された。一方、プレート式殺菌機にて殺菌したサンプルEは、加熱臭が高くなることがわかった。
すなわち、液状乳として牛乳を用いた場合では、直接加熱殺菌(インフュージョン方式)を採用することで、間接加熱殺菌(プレート式)に比較して、フォームドミルクの泡沫層の泡のきめ細やかさ及び泡のなめらかさが向上する一方で、間接殺菌よりも加熱臭は抑えられるという特性を有することが確認された。
Figure 0006840641
以上のことから、フォームドミルクの原料となる液状乳の製造条件が、フォームドミルクの官能特性に影響を与えることが確認された。すなわち、本技術の方法により、液状乳の殺菌温度を低くすることで、フォームドミルクの甘味が向上することが確認された。また、液状乳の殺菌方法として、直接加熱殺菌(インフュージョン方式)では、間接加熱殺菌(プレート式)と比較して、フォームドミルクの泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさが向上する一方、加熱臭が抑えられることが確認された。液状乳の均質圧力を高くすることで、フォームドミルクの泡沫層の泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ、弾力及び濃厚感が向上することが確認された。
本技術の方法を用いることにより、フォームドミルク用原料となる液状乳から調製して得られるフォームドミルクを適切に評価することができた。すなわち、本技術によれば、官能特性に基づいて液状乳の泡沫層部分を評価することで、所望の特性を有するフォームドミルクを調製するための、液状乳の製造条件(組成や製法条件)を適切に設計することができる。
1 評価用試料に用いるフォームドミルクの製造装置;2 撹拌機構付き容器;3 水平面;4 容器の長手軸(中心軸);5 容器の底;6 液面;7 垂直軸;α 容器の傾き角度

Claims (10)

  1. 以下の(1)〜(3)の工程を含むフォームドミルクの官能特性を評価する方法:
    (1)撹拌機構付き容器にて液状乳を撹拌して起泡させたフォームドミルクを得る起泡工程、
    (2)前記フォームドミルクが泡沫層と液状層とに分離するまで静置し、分離した泡沫層を回収して評価用試料として得る分離工程、
    (3)前記評価用試料を官能評価する評価工程。
  2. 前記官能特性は、泡のきめ細やかさ、泡のなめらかさ、弾力、泡の溶けやすさ、加熱臭、甘味、及び濃厚感からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1記載の評価方法。
  3. 前記起泡工程は、撹拌機構付き容器を一定に傾けて液状乳を撹拌して起泡させたフォームドミルクを得る起泡工程である、請求項1又は2記載の評価方法。
  4. 前記評価方法は、前記分離工程前であり、前記起泡工程後に、1つのフォームドミルクを複数の試料容器に分注する分注工程を含む、請求項1〜3の何れか1項記載の評価方法。
  5. 前記起泡工程において、前記液状乳を少なくとも60秒間撹拌して起泡させる、請求項1〜4の何れか1項記載の評価方法。
  6. 前記分離工程において、泡沫層と液状層とに分離するまで少なくとも120秒間静置する、請求項1〜5の何れか1項記載の評価方法。
  7. 前記評価方法は、異なる複数の液状乳を使用してフォームドミルクの官能特性を評価する方法であり、前記評価工程後にさらに、フォームドミルクの官能特性に基づいて原料となる液状乳を選定する選定工程を含む、請求項1〜6の何れか1項記載の評価方法。
  8. 前記請求項7の評価方法に基づいて選定された液状乳の製造条件を設定し、当該製造条件にてフォームドミルク用液状乳を製造する方法であって、
    前記製造条件が、液状乳の組成、液状乳の殺菌方式、液状乳の殺菌温度、液状乳の殺菌時間、液状乳の均質圧力、液状乳の均質温度及び液状乳の均質処理時間からなる群から選択される1種又は2種以上の製造条件である、製造方法。
  9. 前記フォームドミルクの官能特性の評価が、食感に基づく評価及び/又は嗅覚・味覚に基づく評価であり、かつ、以下の(1)〜(3)の何れかから選択される製造条件による製造工程を含む、請求項8記載の製造方法:
    (1)前記製造条件のうちの殺菌方式が、食感の評価、及び嗅覚・味覚の評価に基づいて決定される殺菌方式である、
    (2)前記製造条件のうちの殺菌温度が、嗅覚・味覚の評価に基づいて決定される殺菌温度である、
    (3)前記製造条件のうちの均質圧力が、食感の評価、及び嗅覚・味覚の評価に基づいて決定される均質圧力条件である。
  10. 前記フォームドミルクの官能特性の評価が、泡のきめ細やかさ、泡の滑らかさ、弾力、泡の溶けやすさ、加熱臭、甘味及び濃厚感からなる群から選択される1種又は2種以上の評価であり、かつ、
    以下の(1)〜(3)の何れかから選択される製造条件による製造工程を含む、請求項8記載の製造方法:
    (1)前記製造条件のうちの殺菌方式が、泡のきめ細やかさ、泡の滑らかさ及び加熱臭の評価に基づいて決定される殺菌方式である、
    (2)前記製造条件のうちの殺菌温度が、甘味の評価に基づいて決定される殺菌温度である、
    (3)前記製造条件のうちの均質圧力が、泡のきめ細やかさ、泡の滑らかさ、弾力、泡の溶けやすさ及び濃厚感の評価に基づいて決定される均質圧力である。
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