JP6840543B2 - プレキャストコンクリート構造物の目地構造及びプレキャストコンクリート部材 - Google Patents
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Description
また、河川等の上に架設される橋梁に道路を構築する際に、複数のプレキャストコンクリート版の側面同士を突き合わせた後、目地部にグラウトなどの目地材を充填して、プレキャストコンクリート版同士を連結する方法が知られている。
そこで、図17(b)に示すように、プレキャストコンクリート版70の連結面となる側面に、幅が開口部から底部に行くにしたがって狭くなる凹部75を設け、この凹部75同士を互いに対向させて形成された目地空間に目地材11を充填することで剪断力Fsを分散させて、連結部分の耐久性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、橋梁用のプレキャストコンクリート版(以下、橋梁用床版という)では、ひび割れの貫通により漏水が生じ、これが鋼桁等の上部工の腐食を招いて橋全体の耐久性に悪影響を及ぼしていた。
目地の断面形状が上記引用文献1に記載されたような、幅が開口部から底部に行くにしたがって狭くなる形状の場合には、ストレートな形状の場合に比較して、剪断応力によるひび割れ抵抗は増加するものの、曲げ引張抵抗性が十分ではないため、曲げモーメントが作用した際にプレキャストコンクリート版と目地材との境界に生じるひび割れを防止することが困難であった。
このように、プレキャストコンクリート部材の目地材との噛み合い部分にクサビ状に突出する突出部を設けることで、突出部によるクサビ効果により曲げ引張抵抗性を増加させるようにしたので、引張力や曲げモーメントが作用した際にプレキャストコンクリート部材と目地材との境界に生じるひび割れを防止することができる。したがって、プレキャストコンクリート構造物の耐久性を向上させることができるとともに、構造物の漏水を効果的に防止することができる。
また、本発明は、前記断面のうちの、前記プレキャストコンクリート部材に作用する曲げモーメントによる応力が引張力である断面において、前記凹部の開口部と底部とを連結する内壁の間隔が、前記凹部の開口部から底部に行くにしたがって広がっていることを特徴とする。
これにより、プレキャストコンクリート部材の曲げ引張抵抗性を確実に増加させるだけでなく、コンクリートの乾燥収縮、温度応力等にひび割れについても防止できる。
また、本発明は、前記断面のうちの、前記プレキャストコンクリート部材に曲げモーメントが作用する断面において、前記突出部の先端を、前記プレキャストコンクリート部材の中立面よりも、曲げモーメントによる引張力が作用する側に位置させたので、突出部によるクサビ効果を効果的に発揮させることができるとともに、中立面の両側に前記の突起部を設ければ、プレキャストコンクリート部材に、正負両方の曲げモーメントが作用しても、プレキャストコンクリート部材と目地材との境界に生じるひび割れを防止することができる。
なお、正の曲げモーメントとは、図4に示すように、プレキャストコンクリート部材の板面を水平に保持したときに、板面を下に凸となる(上面12側が縮み下面13側が伸びる)ように変形させるモーメントを指し、負の曲げモーメントとは、図8に示すように、板面を上に凸となる(上面22側が伸び下面23側が縮む)ように変形させるモーメントを指す。すなわち、曲げモーメントの正負は、力のモーメントとは異なり、回転が時計回りか反時計回りかではなく、モーメントが作用した結果として生じる変形が板面を下に凸にさせる変形か、板面を上に凸にさせる変形かにより決まる。
このような形状の凹部を設けることで、クサビ状に突出する突出部の体積が、引張力の大きい側(凸となる面側)で大きくなるので、クサビ効果による曲げ引張抵抗性を効果的に発揮させることができる。
また、側面に形成された凹部の開口部と底部とを連結する内壁が、ともに、前記側面に垂直な面である前記上面と下面とに対して、一方の板面側もしくは他方の板面側に傾いているプレキャストコンクリート部材を、プレキャストコンクリート構造物の正または負の曲げモーメントが作用する箇所に配置すれば、プレキャストコンクリート構造物の耐久性及び漏水防止効果を向上させることができる。
また、前記コンクリート部材を、空港エプロンや道路の舗装や河川等の上に架設される橋梁に構築される道路に用いられるプレキャストコンクリート床版(橋梁用床版)に適用すれば、プレキャストコンクリート床版の耐久性を向上させることができるだけでなく、漏水防止効果についても向上させることができる。
特に、前記コンクリート部材を橋梁用床版とした場合には、漏水を防止することで、床版だけでなく、床版を支える鋼桁の腐食を防止できるので、橋梁の耐久性を大幅に向上させることができる。
また、前記プレキャストコンクリート部材に、前記凹部に連通する、前記目地材を充填するため注入孔を設けたので、目地材を充填する際に凹部内の空気を排出することができるだけでなく、凹部に生じるエア溜まりについても、容易にプレキャストコンクリート部材の外部に排出することができる。したがって、プレキャストコンクリート部材同士を強固に連結することができるので、プレキャストコンクリート構造物の耐久性を更に向上させることができる。
図1(a)〜(c)は、本実施の形態1を示す図で、(a)はプレキャストコンクリート構造物1の目地構造を示す図、(b)図はプレキャストコンクリート部材10の斜視図、(c)図はプレキャストコンクリート部材10と目地材11との境界部の断面図(図1(a)のA−A断面図もしくはB−B断面図)である。
本例のプレキャストコンクリート構造物1は、空港エプロンなどの舗装路で、プレキャストコンクリート部材10は、(a)図の縦方向である幅方向と横方向である走行方向に、それぞれ複数個配置される。
プレキャストコンクリート部材10は平板状の部材で、以下、路面となる側の面を上面12、上面12とは反対側の面を下面13、連結面となる4つの面をそれぞれ側面14とする。本例では、上面12及び下面13を一辺がWの正方形としたが、長方形であってもよい。
(b)図及び(c)図に示すように、プレキャストコンクリート部材10の側面14には、それぞれ凹部15が形成されており、隣り合うプレキャストコンクリート部材10の凹部15同士を互いに対向させて形成された目地空間にモルタルなどのグラウト材を目地材11として充填することで、プレキャストコンクリート部材10同士を連結してプレキャストコンクリート構造物1としての舗装路を構築する。
なお、図2に示すように、プレキャストコンクリート構造物が橋梁1Zである場合には、橋梁用床版10Pを橋軸方向に複数配置する場合と、図3に示すように、橋梁用床版10Qを橋軸直角方向に複数配置する場合とがある。
橋梁用床版10Pは、橋梁1Zの橋軸方向に直角な方の側面14Wのみに凹部15が複数個設けられ、橋梁用床版10Qは、橋梁1Zの橋軸直角方向に直角な方の側面14Lのみに凹部15が複数設けられている。
いずれの場合にも、橋梁用床版10P(もしくは、橋梁用床版10Q)と目地材11との境界部の断面図であるC−C断面図(もしくは、D−D断面図)は、図1(c)に示した図1(a)のA−A断面図と同じであるので、以下、プレキャストコンクリート構造物1が、空港エプロンなどの舗装路である場合について説明する。
本例では、凹部15をプレキャストコンクリート部材10の側面14の中央部に設けるとともに、凹部15の長さwを、側面14の長さWよりも小さな値とした。
以下、凹部15の開口部を15a、底部を15b、開口部15aと底部15bとを連結する内壁を15c,15dとする。ここで、符号15cは上面12側の内壁で、符号15dは下面13側の内壁で、内壁15c,15dの延長方向は、側面14の延長方向である、図1(c)の紙面に垂直な方向である。
なお、底部15bは、側面14に平行な平面であってもよいし、側面14に平行な平面に対して開口部15a側に突出していてもよい。あるいは、開口部15aとは反対側にへこんでいてもよい。
そこで、本例では、左右のプレキャストコンクリート部材10の、曲げモーメントMによる引張力が作用する側の内壁である下面13側の内壁15dを、ともに、曲げモーメントの方向とは反対方向、すなわち、凹部15の開口部15aから底部15bに向かうにしたがって、上面12側から下面13側に傾斜するように形成することで、曲げ引張抵抗性を高めるようにしている。
なお、本例では、上面12側の内壁15cについても、上面12側から下面13側に傾斜するように形成したが、上面12(または、下面13)と平行になるようにしてもよいし、下面13側から上面12側に傾斜するように形成してもよい。
凹部15に目地材11を充填すると、プレキャストコンクリート部材10の目地材11との噛み合い部分は、上面12側では、コンクリートの部分の体積が開口部15aから底部15b側に行くにしたがって増加する形状となっている。一方、下面13側では、コンクリートの部分の体積が開口部15aから底部15b側に行くにしたがって減少する形状となっている。すなわち、下面13側では、コンクリートの部分が目地材11中にクサビ状に突出している形状となっている。このコンクリートがクサビ状に突出している部分を、以下、突出部16という。
図5に示すように、プレキャストコンクリート部材10に側面14の延長方向周りに曲げモーメントMが作用すると、同図の一点鎖線で示す中立面の上側である、上面12側の噛み合い部分のコンクリートには圧縮力F1が作用し、中立面の下側である、下面13側の噛み合い部分のコンクリートには引張力F2が作用する。
コンクリートは圧縮強度が高いので、上側のコンクリートと目地材11との間にひび割れが発生することはない。
これに対して、プレキャストコンクリート部材10の目地材11との境界部の引張強度は、打継ぎ目がないコンクリートの約57%と小さいので、境界部に引張力F2が作用すると、ひび割れが発生しやすい。
本発明の目地構造では、プレキャストコンクリート部材10の下側のコンクリートは、噛み合い部分である突出部16がクサビ状なので、引張力に対して剪断抵抗Sが作用し、その結果、曲げ引張抵抗性が増加する。したがって、曲げモーメントMが作用した際にプレキャストコンクリート部材10と目地材11との境界に生じるひび割れを確実に防止することができる。また、目地部への雨水や塩分の浸透が抑制されるので、舗装路(プレキャストコンクリート構造物1)の耐久性が向上するとともに、舗装路の漏水についても効果的に防止することができる。
また、図6(a)に示すように、作用する曲げモーメントMが大きいと、従来の凹部65を有するプレキャストコンクリート版60では、ひび割れKが下面63側の内壁65dから底部65bへと進行するので目地部へ雨水や塩分が浸透してしまい、耐久性が低下するだけでなく、ひび割れKからの漏水が発生してしまっていた。これに対して、本願発明の凹部15を有するプレキャストコンクリート部材10では、図6(b)に示すように、ひび割れKが生じた場合でも、コンクリートの部分が目地材11中にクサビ状に突出している形状となっているため、ひび割れKは下面13側の内壁15dの手前で一旦止まるので、目地部への雨水や塩分の浸透を抑制することができる。したがって、プレキャストコンクリート構造物1の耐久性の低下を抑制することができるとともに、ひび割れからの漏水についても防止することができる。
特に、プレキャストコンクリート構造物1が河川等の上に架設される橋梁である場合には、橋梁用床版であるプレキャストコンクリート床版だけでなく、床版を支える鋼桁の腐食についても防止できるので、橋梁の耐久性を大幅に向上させることができる。
なお、本発明による目地構造は凹部15を有しているので、従来の凹部65を有する目地構造と同様に、剪断力を分散できることはいうまでもない。
この場合には、引張力が作用する側の内壁15dと連結面となる側面14とにより囲まれたコンクリートの部分が突出部16となる。なお、凹部15の断面形状が三角形の場合には、2つの内壁15c,15dの交線が凹部15の底部15bとなる。
また、図7(b)に示すように、突出部16を構成する側の内壁15cが、上面12側から下面13側、すなわち、曲げモーメントMの方向と同じ方向に傾いていてもよい。この場合には、クサビ状に突出する突出部16の体積が、引張力の小さい側(凸となる面である下面13とは反対側)で大きくなるだけでなく、凹部15の内壁15cと内壁15dとで囲まれた空間にエア溜まりが発生し易いので、凹部15の断面形状としては、図1(c)、もしくは、図7(a)に示す断面形状の方が好ましい。
要は、プレキャストコンクリート部材10が、凹部15の開口部15aと底部15bとを連結する内壁(内壁15cまたは内壁15d)と連結面となる側面14とにより囲まれたコンクリートの部分が、目地材11中にクサビ状に突出する突出部16となっていればよい。また、突出部16の先端が、プレキャストコンクリート部材10の中立面よりも、曲げモーメントによる引張力が作用する側に位置していれば更に好ましい。
前記実施の形態1では、正の曲げモーメントMが作用する箇所、すなわち、荷重により下方に凸となるような曲げモーメントが作用する箇所に配置されるプレキャストコンクリート部材10について説明したが、図8に示すように、プレキャストコンクリート部材が、負の曲げモーメントM(上方に凸となるような曲げモーメントM)が作用する箇所に配置されるプレキャストコンクリート部材20である場合には、曲げモーメントMによる引張力が作用する側の内壁である上面22側の内壁25cを、曲げモーメントMの方向とは反対方向、すなわち、凹部25の開口部25aから底部25bに向かうにしたがって下面23側から上面22側に傾斜するように形成すればよい。これにより、引張力が作用するプレキャストコンクリート部材20の上側のコンクリートの噛み合い部分である突出部26がクサビ状となるので、剪断抵抗Sによる曲げ引張抵抗性を増加させることができる。したがって、上記実施の形態と同様に、プレキャストコンクリート部材20と目地材11との境界に生じるひび割れを確実に防止することができる。
なお、本例では、凹部25の内壁25c,25dを、ともに、下面23側から上面22側に傾斜するように形成したが、下面23側の内壁25dについては、上面22(または、下面23)と平行になるようにしてもよいし、上面22側から下面23側に傾斜するように形成してもよい。
例えば、プレキャストコンクリート構造物が橋梁である場合には、橋脚間に配置されているプレキャストコンクリート部材には、プレキャストコンクリート部材を下方に凸となるように変形させる曲げモーメント(正の曲げモーメント)が作用し、橋脚の上や橋脚周辺の上部に配置されているプレキャストコンクリート部材には、プレキャストコンクリート部材を上方に凸となるように変形させる曲げモーメント(負の曲げモーメント)が作用するので、それぞれの箇所にプレキャストコンクリート部材10またはプレキャストコンクリート部材20を配置するようにすればよい。
また、図9(b)に示すように、内壁25dが、前記凹部25の開口部25aから底部25bに向かうにしたがって、前記側面に垂直な面である板面に対して、前記曲げモーメントMの方向と同じ方向に傾いていてもよい。この場合には、凹部25の下面23側の内壁25dが下面23から上面22側に向かう方向に傾いているので、目地材11を充填する際に凹部25内の空気を容易に排出することができるという利点はあるが、目地材11中にクサビ状に突出する突出部26の体積が、引張力の小さい側(凸となる面とは反対側)で大きくなるので、凹部25の断面形状としては、図8、もしくは、図9(a)に示す断面形状の方が好ましい。
前記実施の形態1,2では、正または負の曲げモーメントが作用する箇所に配置されるプレキャストコンクリート部材10,20について説明したが、図10(a)に示すように、プレキャストコンクリート部材が、連結部分に、下方に凸となるように変形させる曲げモーメント(正の曲げモーメント)と、プレキャストコンクリート部材を上方に凸となるように変形させる曲げモーメント(負の曲げモーメント)の両方の曲げモーメントが作用する箇所に配置されるプレキャストコンクリート部材30である場合には、凹部35を、幅が開口部35aから底部35bに行くにしたがって広がっている形状とすれば、正負どちらの曲げモーメントが作用しても、プレキャストコンクリート部材30と目地材11との境界に生じるひび割れを防止することができる。
なお、連結部分に両方の曲げモーメントが作用する箇所としては、プレキャストコンクリート部材が振動する箇所、例えば、重量車両が多く走行する橋梁などの、作用する荷重が大きい箇所などがある。
また、凹部35の下面33側の内壁35dが下面側に傾き、上面32側の内壁35cが上面側に傾向いているので、プレキャストコンクリート部材30の下側のコンクリートも、上側のコンクリートも、目地材11との噛み合い部がクサビ状となる。したがって、図10(b)に示すように、連結部分に、コンクリートの乾燥収縮、温度応力等による引張力に対する噛み合い部の剪断抵抗が大きいので、乾燥、ひび割れを防止できるという利点がある。
凹部37は、図1(c)に示した凹部15と同様に、コンクリートの部分の体積が開口部37aから底部37bに行くにしたがって増加するクサビ状の突出部37Kを有し、正の曲げモーメントに対する曲げ引張抵抗性を高める。
一方、凹部38は、図9(b)に示した凹部25と同様に、コンクリートの部分の体積が開口部38aから底部38b側に行くにしたがって増加するクサビ状の突出部38Kを有し、負の曲げモーメントに対する曲げ引張抵抗性を高める。
また、図11(b)に示すように、凹部38を上面32側に開口させてもよい。上記のように、凹部38は、内壁38cが、曲げモーメントの方向に傾いているので、曲げ引張抵抗性が小さいが、凹部38を上面32側にずらすことで、突出部38Kの位置を引張り力の大きな箇所に移動できるので、図11(a)の場合に比較して、曲げ引張抵抗性を高めることができる。また、凹部39が上面32側に開口しているので、目地材の充填が容易となるだけでなく、目地材11を充填する際に凹部35内の空気を容易に排出することができる。
なお、プレキャストコンクリート部材30に設けられる凹部の数は2個に限るものではなく、下面33側に凹部37と同様の凹部を2個、上面32側に凹部38と同様の凹部を2個設けるなど。複数であってもよい。あるいは、下面33側に2個、上面32側に1個など、奇数個であってもよい。
図12(a),(b)は、本実施の形態4に係るプレキャストコンクリート構造物1の目地構造を示す図である。図10に示した凹部35では、凹部35の底部35bと内壁35cとの作る空間が開口部35aよりも上面側にあるので、目地材11を充填する際にエア溜まりが生じてしまうおそれがある。そこで、同図に示すように、凹部35に連通する、目地材を充填するため注入孔39を設けるようにすれば、目地材11を充填する際に凹部35内の空気を排出することができるだけでなく、凹部35の底部35bと上面22側の内壁35cとにより囲まれた空間に生じるエア溜まりについても、プレキャストコンクリート部材の外部に容易に排出することができる。したがって、プレキャストコンクリート部材30同士を強固に連結することができる。
なお、注入孔39は、図12(b)に示すように、凹部35の延長方向に沿って、所定間隔隔てて複数個設ければよい。
また、図は省略するが、図8に示した凹部25についても、注入孔39と同様の注入孔を設ければ、凹部25に生じるエア溜まりをなくすことができることはいうまでもない。
また、空港のエプロン舗装や橋梁など、コンクリート構造物が高い連結強度を要求されるコンクリート構造物である場合には、図14に示すように、隣り合うプレキャストコンクリート部材10同士を、例えば、C型金物17aとC型金物17a内に挿入されるH型金物17bとから成る継手17を用いて連結するとともに、継手17間に凹部15を配置する構成としてもよい。
図15(a),(b)は、本実施の形態5に係るプレキャストコンクリート構造物1の目地構造を示す図で、(a)図は平面図、(b)図はプレキャストコンクリート部材40の斜視図である。
プレキャストコンクリート部材40の連結面となる側面44には、上面42から下面43まで貫通する、上面42及び下面43に垂直な方向に延長する複数の凹部45が形成されており、隣り合うプレキャストコンクリート部材40の凹部45同士を互いに対向させて形成された目地空間にモルタルなどのグラウト材を目地材11として充填することで、プレキャストコンクリート部材40同士を連結させることができる。
凹部45は、開口部45aと底部45bと、開口部45aと底部45bとを連結する内壁45c,45dとを備えた、開口部45aを上底、底部45bを下底とする台形状をなす。また、凹部45は、上面42または下面43から見たときに、2つの内壁45c,45d間隔が、開口部45aから底部45bに行くにしたがって広がっている。
すなわち、プレキャストコンクリート部材40も、前記実施の形態1〜4と同様に、内壁45cと連結面となる側面44とにより囲まれたコンクリートの部分と、内壁45dと側面44とにより囲まれたコンクリートの部分とが、目地空間に充填された目地材中にクサビ状に突出する突出部46を備えた凹部45を有する。
プレキャストコンクリート部材40に正の曲げモーメントが作用した場合には、図15(a)に示すように、下面43に引張力F2が作用し、負の曲げモーメントが作用した場合には、上面42に引張力F2が作用する。
本例では、正の曲げモーメントによる引張力に対しては、凹部45の下面43側で剪断抵抗Sが作用し、負の曲げモーメントによる引張力に対しては、凹部45の上面42側で剪断抵抗Sが作用するので、曲げモーメントによりプレキャストコンクリート部材40と目地材41との境界に生じるひび割れを確実に防止することができるだけでなく、コンクリートの乾燥収縮、温度応力等にひび割れについても防止することができる。
なお、本例のプレキャストコンクリート構造物2の目地構造も、隣り合うプレキャストコンクリート部材40同士を継手17を用いて連結する構成とすれば、前述した空港のエプロン舗装や橋梁など、コンクリート構造物が高い連結強度を要求されるコンクリート構造物にも適用可能であることはいうまでもない。
例えば、図16(a)に示すように、ボックスカルバート50を直線状に連結してなるコンクリート構造物(排水用管路)2は、通常、地中に埋設されるので、図16(b)に示すように、上側の面52は、埋立土壌3及び表面舗装4からの荷重を受け、その結果、上側の面52の連結部分には、上側の面52を下方に凸となるように変形させる曲げモーメント(正の曲げモーメント)Mが作用する。
そこで、正の曲げモーメントMが作用する上側の面52の連結面である側面52kに、実施の形態の凹部15と同様の形状に凹部55を設けて隣り合うボックスカルバート50同士を連結するようにすれば、ボックスカルバート50の上側の面52と目地材11との境界に生じるひび割れを確実に防止することができるとともに、ひび割れからの漏水についても防止することができる。
なお、ボックスカルバート50を連結して構築されるコンクリート構造物2を地中深く埋設する場合には、下側の面53や横側の面56に地下水からの圧力により、下側の面53や横側の面56がボックスカルバート50の内部側に凹むように変形する場合がある。その場合には、下側の面53や横側の面56の側面にも、凹部55と同様の凹部を設ければよい。
また、上側の面52、下側の面53、及び、横側の面56の連結面に設ける凹部の形状や大きさについては、地下水の流路や水圧など、コンクリート構造物2の周囲の状況に応じて適宜決定すればよい。
11 目地材、12 プレキャストコンクリート部材の上面、13 下面、14 側面、
15 凹部、15a 開口部、15b 底部、15c,15d 内壁、16 突出部。
Claims (10)
- 隣り合うプレキャストコンクリート部材の連結面に設けられた目地空間に目地材を充填して、プレキャストコンクリート部材同士を連結して成るプレキャストコンクリート構造物の目地構造であって、
前記目地空間は、前記プレキャストコンクリート部材の連結面となる側面にそれぞれ形成されて互いに対向する2つの凹部と、前記プレキャストコンクリート部材の側面間の隙間から成り、前記プレキャストコンクリート部材の上面から下面まで延長するストレート部とを備え、
前記プレキャストコンクリート部材を、前記連結面となる側面と、前記側面に垂直な面である前記プレキャストコンクリート部材の上面と下面とに直交する面で切った断面には、
前記凹部の開口部と底部とを連結する内壁と前記連結面となる側面とにより囲まれたコンクリートの部分が、前記目地空間に充填された目地材中にクサビ状に突出する突出部が形成されていることを特徴とするプレキャストコンクリート構造物の目地構造。 - 前記断面のうちの、前記プレキャストコンクリート部材に作用する曲げモーメントによる応力が引張力である断面において、
前記凹部の開口部と底部とを連結する内壁の間隔が、前記凹部の開口部から底部に行くにしたがって広がっていることを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート構造物の目地構造。 - 前記断面のうちの、前記プレキャストコンクリート部材に曲げモーメントが作用する断面において、
前記突出部の先端が、前記プレキャストコンクリート部材の中立面よりも、曲げモーメントによる引張力が作用する側に位置していることを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート構造物の目地構造。 - 前記プレキャストコンクリート部材が、
前記プレキャストコンクリート部材の連結部分に、正または負のいずれかの曲げモーメントが作用する箇所に配置されるプレキャストコンクリート部材であり、
前記凹部の開口部と底部とを連結する内壁のうちの、前記曲げモーメントによる応力が引張力である側の内壁が、前記凹部の開口部から底部に向かうにしたがって、前記側面に垂直な面である前記上面と下面とに対して、前記曲げモーメントの方向とは反対方向に傾いていることを特徴とする請求項3に記載のプレキャストコンクリート構造物の目地構造。 - 前記プレキャストコンクリート部材が、
前記プレキャストコンクリート部材の連結部分に、正負両方の曲げモーメントが作用する箇所に配置されるプレキャストコンクリート部材であり、
前記凹部の幅が、前記凹部の開口部から底部に行くにしたがって広がっていることを特徴とする請求項3に記載のプレキャストコンクリート構造物の目地構造。 - 前記プレキャストコンクリート部材に、
前記凹部に連通する、前記目地材を充填するため注入孔を設けたことを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれかに記載のプレキャストコンクリート構造物の目地構造。 - 前記プレキャストコンクリート部材が、
側面に前記凹部が形成されたプレキャストコンクリート床版であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のプレキャストコンクリート構造物の目地構造。 - 側面に凹部が形成されたプレキャストコンクリート部材であって、
前記凹部の開口部と底部とを連結する内壁が、ともに、前記凹部の開口部から底部に向かうにしたがって、前記側面に垂直な面である前記プレキャストコンクリート部材の上面側から下面側に向かって傾斜するように形成されているか、もしくは、前記下面側から前記上面側に向かって傾斜するように形成されていることを特徴とするプレキャストコンクリート部材。 - 側面に凹部が形成されたプレキャストコンクリート部材であって、
前記凹部の開口部と底部とを連結する内壁のうち、上面側または下面側の内壁が、前記凹部の開口部から底部に向かうにしたがって、前記側面に垂直な面である前記プレキャストコンクリート部材の上面側から下面側に向かって傾斜するように形成されているか、もしくは、前記下面側から前記上面側に向かって傾斜するように形成され、下面側または上面側の内壁が、前記プレキャストコンクリート部材の下面と上面とに平行になるように形成されていることを特徴とするプレキャストコンクリート部材。 - 前記プレキャストコンクリート部材が、
側面に前記凹部が形成されたプレキャストコンクリート床版であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のプレキャストコンクリート部材。
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