JP6840059B2 - スチレン系樹脂組成物、シート、成形品、及びシートの製造方法 - Google Patents

スチレン系樹脂組成物、シート、成形品、及びシートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、スチレン系樹脂組成物、シート、成形品、及びシートの製造方法に関する。
スチレン系樹脂組成物は透明性、成形加工性等に優れるため、家電、事務機製品、雑貨、住宅設備等の成形材料や食品包装材料に多く利用されている。近年食品包装用途においては、電子レンジの普及が進んだことにより、電子レンジでの加熱に耐えるために高い耐熱性が要求されている。また、容器形状もより複雑になっており、更なる成形性の改善も求められている。更に、スチレン系樹脂組成物の発泡シートでは、高倍率の発泡が可能で、更には深型容器への成形が可能な成形加工特性に優れる材料が求められている。
耐熱性、成形性、発泡特性に優れるスチレン系樹脂組成物を得る方法として、特許文献1はマクロモノマーとスチレンとの共重合体とポリフェニレンエーテルを含んだ樹脂組成物の技術が開示されている。
特開2011−246588号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、これらのスチレン系共重合体の使用はゲル状物質の低減については十分ではなく、成形品の外観が悪化してしまう欠点があった。
本発明の課題は、耐熱性、成形性、発泡特性、及び外観に優れるスチレン系樹脂組成物、シート、成形品、及びシートの製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を進めた結果、所定の共役ジビニル化合物を共重合させたスチレン系共重合体とポリフェニレンエーテル系樹脂とを組み合わせることで、耐熱性と成形性、発泡特性、及び外観に優れた樹脂組成物が得られることを見出し、発明を完成するに至った。
本発明は下記に示すとおりである。
〔1〕数平均分子量(Mn)が850〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とのスチレン系共重合体であって、前記共役ジビニル化合物の割合が、前記モノビニル化合物の総量1モルに対して2.0×10-6〜4.0×10-4モルであるスチレン系共重合体(A)と、
ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)と
を含む樹脂組成物であり、
前記スチレン系共重合体(A)と前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)との合計量を100質量部とした際に、前記スチレン系共重合体(A)の含有量が25〜95質量部、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)の含有量が5〜75質量部である
こと特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
〔2〕数平均分子量(Mn)が850〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とのスチレン系共重合体であって、前記共役ジビニル化合物の割合が、前記モノビニル化合物の総量1モルに対して2.0×10-6〜4.0×10-4モルであるスチレン系共重合体(A)と、
ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)と、
前記共役ジビニル化合物の共重合体ではないスチレン系樹脂(C)と
を含む樹脂組成物であり、
前記スチレン系共重合体(A)、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)、及び前記スチレン系樹脂(C)の合計量を100質量部とした際に、前記スチレン系共重合体(A)の含有量が25〜95質量部、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)の含有量が5〜75質量部、前記スチレン系樹脂(C)の含有量が0〜70質量部である
ことを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
〔3〕前記共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)が1000〜30000である、〔1〕又は〔2〕に記載のスチレン系樹脂組成物。
〔4〕前記共役ジビニル化合物が鎖状である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
〔5〕前記スチレン系共重合体(A)のZ平均分子量(PS_Mz)の前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)のZ平均分子量(PPE_Mz)に対する比(PS_Mz/PPE_Mz)が10以上である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
〔6〕スチレンの二量体と三量体との合計量が前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対して0.6質量%以下である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
〔7〕〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、非発泡又は発泡シート。
〔8〕〔7〕に記載の非発泡又は発泡シートを含むことを特徴とする、成形品。
〔9〕〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物を使用することを特徴とする、シートの製造方法。
本発明によれば、耐熱性、成形性、発泡特性、及び外観に優れるスチレン系樹脂組成物、シート、成形品、及びシートの製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
[スチレン系樹脂組成物]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物の一態様は、数平均分子量(Mn)が850〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とのスチレン系共重合体であって、前記共役ジビニル化合物の割合が、前記モノビニル化合物の総量1モルに対して2.0×10-6〜4.0×10-4モルであるスチレン系共重合体(A)と、ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)とを含む樹脂組成物であり、前記スチレン系共重合体(A)と前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)との合計量を100質量部とした際に、前記スチレン系共重合体(A)の含有量が25〜95質量部、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)の含有量が5〜75質量部であること特徴とする、スチレン系樹脂組成物である。
[[スチレン系共重合体(A)]]
本実施形態のスチレン系共重合体(A)は、数平均分子量(Mn)が850〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とのスチレン系共重合体であって、前記共役ジビニル化合物の割合が、前記モノビニル化合物の総量1モルに対して2.0×10-6〜4.0×10-4モルである、スチレン系共重合体である。
(モノビニル化合物)
本実施形態の少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物について、スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用できるが、工業的に安価で使用できることからスチレンが好ましい。
スチレン系化合物以外のモノビニル化合物の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリロニトリル等のビニル系化合物、並びにジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、無水マレイン酸、マレイミド、及び核置換マレイミド等が挙げられる。
モノビニル化合物中のスチレン系化合物の含有量は、90モル%以上が好ましく、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上である。
(共役ジビニル化合物)
本実施形態における共役ジビニル化合物は、数平均分子量(Mn)が850〜100000である。また、分子内に共役ビニル基を少なくとも2つ有する化合物であることが好ましい。
また、本実施形態における共役ジビニル化合物は、網目状ではなく、鎖状であることが好ましく、主鎖には側鎖を有していても有していなくてもよい。鎖状であることにより、分子鎖をよりリニアな形状にすることができ、それにより、絡み合い効果を向上させやすい傾向があるためである。なお側鎖は、例えば炭素数6以下が好ましく、炭素数4以下がより好ましい。
更に、共役ジビニル化合物中の共役ビニル基は、分子内の任意の位置に有することができるが、少なくとも2つの共役ビニル基のうちの2つの共役ビニル基は、分子中の異なる末端に位置していることが好ましい。また、共役ジビニル化合物が鎖状の場合には、当該2つの共役ビニル基は、主鎖の異なる末端に位置していることがより好ましい(すなわち、主鎖の両末端が共役ジビニル基になっていることがより好ましい)。共役ビニル基が末端に位置していることにより重合反応性を高めることができる。
更に、共役ジビニル化合物が鎖状であり、共役ビニル基が3つ以上存在する場合には、3つ以上の共役ビニル基のうち2つの共役ビニル基は末端に位置していることが好ましいが、残りの1つ以上の共役ビニル基も末端に位置していることがより好ましい。
なお、共役ジビニル化合物の共役ビニル基の数が多い場合、分岐点が増え、反応器や原料を回収する工程においてゲル化が起こりやすくなる可能性が生じ、スチレン系共重合体(A)の透明性の悪化や、反応器の洗浄が必要になり生産性が低下することがあるので、5つ以下であることが好ましく、4つ以下であることがより好ましく、3つ以下であることが更に好ましい。また、同様な観点から、共役ジビニル化合物の共役ビニル基は2つであることが特に好ましい。
ここで、分子について「末端」とは、分子鎖の最も端となる位置とすることができるが、共役ビニル基は末端付近に存在すれば、モノビニル化合物と効果的な反応性を有しゲル化も抑制できるので、本実施形態において「末端」とは、分子鎖中で、分子鎖の最も端となる位置(原子)を含む、ある程度の範囲となる部分(端部分)とすることもできる(換言すれば、共役ビニル基を末端付近に位置させることができる)。当該ある程度の範囲となる部分とは、限定されるものではないが、共役ジビニル化合物の伸切り鎖長の20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましく、5%以下が更により好ましい。
本実施形態において共役ビニル基とは、モノビニル化合物と共重合可能なオレフィン性二重結合と、当該オレフィン性二重結合と共役系を形成する構造(限定されないが例えばカルボニル基、アリール基等)とを有する基である。共役ビニル基としては、特に限定されないが、例えばアクリロイル基、ビニル基で置換されたアリール基が挙げられ、また、共役ジビニル化合物中の共役ビニル基を有する構造としては、特に限定されないが例えば、(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ビニル、マレイン酸、フマル酸等が付加した構造も挙げられる。なお、少なくとも2つの共役ビニル基は、相互に同じであっても異なっていてもよい。
本実施形態の共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)は、850〜100000であり、より好ましくは1000〜80000、更に好ましくは1200〜80000、更により好ましくは1500〜60000、特に好ましくは1500〜30000である。数平均分子量(Mn)が850未満の場合は、共役ジビニル化合物の共役ビニル基間の距離が短いため、共役ジビニル化合物に結合したポリマー鎖間の距離が短くなり、十分な絡み合い効果が得られず、成形加工性に劣ることがある。分子量が100000を超える場合は、共役ジビニル化合物の共役ビニル基間の距離が長くなり、末端にある共役ビニル基の反応性が低下し(共役ジビニル化合物の分子量が大きいので末端の共役ビニル基が反応しにくくなる)、高分子量成分の生成量が低下することがある。
なお本開示で、共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を意味する。
本実施形態の共役ジビニル化合物の主鎖構造としては、特に限定されず、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン等のポリオレフィンやポリスチレン、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
具体的な共役ジビニル化合物としては、(水添)ポリブタジエン末端(メタ)アクリレート(「(水添)」は、水素添加された又は水素添加されていない化合物を指す。以下同様である。)、ポリエチレングリコール末端(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール末端(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールA末端(メタ)アクリレート、及びエトキシ化ビスフェノールF末端(メタ)アクリレート等の末端ジ(メタ)アクリレート化合物、並びに(水添)ポリブタジエン末端ウレタンアクリレート、ポリエチレングリコール末端ウレタンアクリレート、ポリプロピレングリコール末端ウレタンアクリレート、エトキシ化ビスフェノールA末端ウレタンアクリレート、及びエトキシ化ビスフェノールF末端ウレタンアクリレート等の末端ウレタンアクリレート化合物等が挙げられる。例えば、ポリプロピレングリコール末端(メタ)アクリレートの場合は、数平均分子量(Mn)が850〜100000となるように繰返し単位のプロピレングリコールの結合数が決められる。共役ジビニル化合物は、スチレン系共重合体(A)との相溶性の観点から、(水添)ポリブタジエン末端(メタ)アクリレート、ポリスチレン末端(メタ)アクリレート、ポリフェニレンエーテル末端ジビニルであることが好ましい。なお、化合物名中の「末端」や「両末端」は、最も端の両方に共役ビニル基が位置することを意味する。
(共役ジビニル化合物の含有量)
本実施形態の共役ジビニル化合物の含有量は、モノビニル化合物の総量1モルに対して2.0×10-6〜4.0×10-4モルであり、好ましくは5.0×10-6〜3.5×10-4モル、より好ましくは1.5×10-5〜3.0×10-4モル、更に好ましくは2.3×10-5〜2.0×10-4モルである。含有量が2.0×10-6モル未満の場合は、高分子同士の十分な絡み合いが生じにくく、ひずみ硬化が発現しない、あるいはひずみ硬化度合いが小さいために、成形品の肉厚が不均一であったり、成形時に成形品が破けることが有り、成形加工性が劣ることがある。一方、含有量が4.0×10-4モルを超える場合は、ゲル状物質の発生が多くなり、成形品の外観等が不良となることがある。
なお本開示で、モノビニル化合物の総量1モルに対する共役ジビニル化合物の含有量は、1H−NMR及び13C−NMRを使用して測定される値である。
本実施形態のスチレン系共重合体(A)は、所望の効果を損なわない範囲で共役結合を有した高分子を共重合することができる。共役結合有した高分子としては、ポリブタジエンやイソプレン等が挙げられる。
〈スチレン系共重合体(A)の含有量〉
本実施形態のスチレン系樹脂組成物中のスチレン系共重合体(A)の含有量は、スチレン系樹脂(A)とポリフェニレンエーテル系樹脂(B)との合計量を100質量部とした際に、25〜95質量部であり、好ましくは60〜90質量部であり、より好ましくは70〜85質量部である。樹脂組成物中のスチレン系共重合体(A)含有量が25質量部より少ないと、十分な立ち上がりが得られず成形性に劣り、95質量部より多くなると耐熱性が不十分となる。
〈スチレン系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)〉
本実施形態のスチレン系共重合体(A)では、重量平均分子量(Mw)は、20万〜50万であることが好ましく、より好ましくは22万〜48万であり、更に好ましくは24万〜45万である。
また、本実施形態のスチレン系共重合体(A)のZ平均分子量(Mz)は、60万〜200万であることが好ましく、より好ましくは70万〜180万、更に好ましくは80万〜160万である。
また、本実施形態のスチレン系共重合体(A)のZ平均分子量(Mz)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mz)は、好ましくは1.8〜5.0であり、より好ましくは2.0〜4.8、更に好ましくは2.1〜4.7である。
スチレン系共重合体(A)のMwを20万〜50万とし、MzとMwとの比(Mw/Mz)を1.8〜5.0の範囲にすることにより、より成形加工性と流動性に優れたスチレン系共重合体(A)が得られる。
なお、分子量及び分子量分布はGPCにより測定することができる。
〈スチレン系共重合体(A)中の高分子量成分の割合〉
本実施形態のスチレン系共重合体(A)の分子量200万以上の割合は0.3〜6.0質量%であることが好ましく、0.8〜5.0質量%であることがより好ましく、1.4〜4.8質量%であることが更に好ましい。分子量200万以上の割合を0.3〜6.0質量%の範囲にすることにより、ゲル状物質の含有量を非常に少なくすることができる。
また、分子量100万以上の割合は4.0〜20.0質量%であることが好ましく、5.0〜18.0質量%であることがより好ましく、5.0〜15.0質量%が更に好ましい。分子量100万以上の割合を4.0〜20.0質量%の範囲にすることにより、成形加工性と流動性に優れたスチレン系共重合体(A)を得ることができる。
なお、本実施形態のスチレン系共重合体(A)に含まれる200万以上と100万以上の分子量の割合は、モノビニル化合物の単量体をラジカル重合する際に、共役ジビニル化合物の種類及び添加量、反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、溶媒の種類及び量、連鎖移動剤の種類及び添加量等によって制御することができる。具体的には、上記の分子量200万以上、分子量100万以上の割合等の制御は、限定されるものではないが、例えば製造方法において、重合する際の重合開始剤の添加量を増加させ、重合の反応温度を低くすること、又は、重合溶媒の使用量を少なくする、又は、重合する際の滞留時間を長くする、等により制御することができ、このようにすることで、得られるスチレン系共重合体(A)において、低分子量成分側を低減させて、分子量200万以上、分子量100万以上の割合を適切にしつつ高分子量成分側を増加させることができる。
なお本開示で、スチレン系共重合体(A)の分子量100万以上の割合及び分子量200万以上の割合は、後述の[実施例]に記載の方法で測定することができる。
〈スチレン系共重合体(A)のメルトマスフローレート(MFR)〉
本実施形態のスチレン系共重合体(A)のメルトマスフローレート(MFR)は0.5〜5.0g/10分が好ましい。より好ましくは0.6〜4.0g/10分、更に好ましくは0.7〜3.5g/10分、とりわけ好ましくは0.8〜3.0g/10分である。メルトマスフローレートを0.5〜5.0g/10分の範囲にすることにより、より成形加工性と流動性のバランスに優れたスチレン系共重合体(A)が得られる。
なお本開示で、メルトマスフローレートは、ISO1133に準拠して、200℃、荷重5kgにて測定される値である。
〈スチレン系共重合体(A)の立ち上がりはじめひずみ及び最大立ち上がり比〉
本実施形態のスチレン系共重合体(A)の立ち上がりはじめひずみは、好ましくは0.2〜1.3であり、より好ましくは0.3〜1.1、更に好ましくは0.4〜1.0である。本願明細書において「立ち上がりはじめひずみ」とは、ひずみ硬化の発現するひずみであり、成形加工性の指標となる。立ち上がりはじめひずみが小さいほど、言い換えれば立ち上がりが早いほど低延伸時からひずみ硬化がおこり、成形加工性に優れるため、成形品の肉厚がより均一になることがあり、また成形品を薄肉化できることがある。
本実施形態のスチレン系共重合体(A)の最大立ち上がり比は、好ましくは1.2〜5.0、より好ましくは1.3〜4.8、更に好ましくは1.4〜4.6である。
本願明細書において、「最大立ち上がり比」とは、(最大立ち上がりひずみの非線形領域の伸長粘度/最大立ち上がりひずみの線形領域の伸長粘度)を意味し、「最大立ち上がりひずみ」とは、伸長粘度が最大となる時のヘンキーひずみを意味する。最大立ち上がり比は、最大立ち上がりひずみにおけるひずみ硬化の度合いを表す指標となる。最大立ち上がり比が大きいほど、ひずみ硬化度合いが大きく、成形加工性に優れる。
最大立ち上がり比が1.2以上であると、高ひずみ時、つまり樹脂が成形加工時に薄く伸ばされた際に伸長粘度が高くなるため、成形品の肉厚が均一になることや、成形時に破れにくくなる傾向がある。最大立ち上がり比が5.0以下であると、成形時の伸長粘度が高くなり過ぎないため、生産性と成形性のバランスの観点から好ましい。
なお本開示で、立ち上がりはじめひずみ及び最大立ち上がり比は、後述の[実施例]の項で説明する手順で算出される値である。
〈スチレン系共重合体(A)中のスチレン系単量体の残存量〉
本実施形態においては、スチレン系共重合体(A)中のスチレン系単量体の残存量は、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは700質量ppm以下、更に好ましくは500質量ppm以下である。シート押出時のダイス出口周りの臭気や、前記共重合樹脂の色調が改善される。
なお本開示で、スチレン系単量体の残存量は、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
〈スチレン系共重合体(A)中のスチレンの二量体及び三量体の合計残存量〉
スチレン系共重合体(A)の重合時にはスチレンの二量体や三量体が生成する。このスチレンの二量体や三量体の合計残存量は、重合開始の方法で異なる。すなわち、重合開始剤として有機過酸化物若しくはアゾ系重合開始剤を使用した場合と、熱開始のみとした場合では、それらの残存量は異なる。スチレンの二量体や三量体の合計残存量は、有機過酸化物を使用する場合が最も低く、熱開始のみの場合が最も高い。スチレンの二量体や三量体は、耐熱性の低下や押出機での押出時のダイス出口への目やにの付着、射出成形時の金型への目やにの付着等で不具合を生じさせる場合がある。従って、重合開始方法としては重合開始剤として有機過酸化物の使用が好ましい。
スチレン系共重合体(A)100質量%中のスチレンの二量体と三量体の合計残存量は低いほど好ましいが、好ましくは0.05〜0.7質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%、更に好ましくは0.15〜0.3質量%である。
スチレンの二量体と三量体としては、1,3−ジフェニルプロパン、2,4−ジフェニル−1ブテン、1,2−ジフェニルシクロブタン、1−フェニルテトラリン、2,4,6−トリフェニル−1−ヘキセン、1−フェニル−4−(1’−フェニルエチル)テトラリン等が挙げられる。
なお本開示で、スチレンの二量体及び三量体の残存量は、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
〈スチレン系共重合体(A)の製造方法〉
本実施形態のスチレン系共重合体(A)の重合方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等、公知のスチレン重合方法が挙げられる。これらの重合法は、バッチ重合法であっても連続重合法であってもよく、生産性の点から連続重合法であることが好ましい。
連続重合法としては、例えば、スチレン系単量体、共役ビニル基を有する共役ジビニル化合物、必要に応じて溶剤、重合触媒、及び連鎖移動剤等を添加及び混合して、単量体類を含む原料溶液を調製する。単独或いは直列及び/又は並列に配列された2個以上の反応器と、未反応単量体等の揮発性成分を除去する脱揮工程のための脱揮装置とを備えた設備に、上記原料溶液を連続的に送入し、段階的に重合を進行させる方法が挙げられる。
反応器としては、例えば、完全混合型反応器、層流型反応器、重合を進行させながら一部の重合液を抜き出すループ型反応器等が挙げられる。これら反応器の配列の順序に特に制限は無い。
本実施形態のスチレン系共重合体(A)の分子量及び分子量分布は、スチレンをラジカル重合する際に、反応温度、滞留時間、重合開始剤、連鎖移動剤、2つの共役性官能基を持った架橋剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。
本実施形態のスチレン系共重合体(A)を重合する際には、重合反応の制御の観点から、必要に応じて重合溶媒、有機過酸化物等の重合開始剤及び連鎖移動剤を使用することができる。
重合溶媒は、一般的に連続塊状重合や連続溶液重合において重合速度や分子量等を調整するために用いられる。重合溶媒としては、特に制限はないが、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレン等のアルキルベンゼン類、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン類、並びにヘキサン及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。
重合溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、ゲル化の制御、生産性の向上、分子量の増大等の観点から、通常、重合反応器内の重合溶液全体100質量%に対して1〜50質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましい。
本実施形態のスチレン系共重合体(A)を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、重合開始剤及び連鎖移動剤を含有させることができる。
重合開始剤としては、特に制限はないが、有機過酸化物、例えば、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、及びn−ブチル−4,4ービス(t−ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、及びジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、及びイソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、並びにt−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。
重合開始剤は、スチレン系単量体に対して0.005〜0.08質量%で使用することが好ましい。
連鎖移動剤としては、特に制限はないが、例えば、α−メチルスチレンダイマー、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、及びn−オクチルメルカプタン等を挙げることができる。
連鎖移動剤は、スチレン系単量体に対して0.01〜0.50質量%で使用することが好ましい。
〈〈脱揮工程〉〉
脱揮装置としては、例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができ、一般的には加熱器付きの真空脱揮槽や脱揮押出機等が用いられる。脱揮装置の配列としては、例えば、加熱器付きの真空脱揮槽を1段のみ使用したもの、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、及び加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したもの等が挙げられる。揮発成分を極力低減するためには、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、又は加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したものが好ましい。
脱揮工程の条件は特に制限されず、例えば、モノビニル系単量体の重合を塊状重合で行なう場合は、最終的に未反応のモノビニル系単重体が、スチレン系共重合体(A)中に好ましくは50質量%、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進めることができる。脱揮処理により、未反応物(モノビニル系単重体)及び/又は溶剤等の揮発分を除去することができる。
脱揮処理の温度は、通常、190〜280℃程度である。脱揮処理の圧力は、好ましくは0.1〜50kPa、より好ましくは0.13〜13kPa、更に好ましくは0.13〜7kPa、特に好ましくは0.13〜1.3kPaである。
脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して脱揮する方法や、揮発成分を除去するよう設計された押出機等を通して脱揮することが望ましい。
[[ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)]]
本実施形態で用いるポリフェニレンエーテル系樹脂(B)は、下記式で表される繰返し単位構造からなる単独重合体及び/又は共重合体である。
Figure 0006840059
[式中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜7の第1級又は第2級のアルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、又は少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択されるものである。]
還元粘度は、0.20〜1.00の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.30〜0.70、更に好ましくは0.35〜0.6の範囲である。還元粘度が0.20より小さいと強度に劣り、1.00を超えると流動性が悪化する。
なお本開示で、還元粘度は、0.5g/dLのクロロホルム溶液を用いて、温度30℃の条件下、ウベローデ型粘度管を用いて測定することができる。
本実施形態において用いることができるポリフェニレンエーテル系樹脂(B)は、特に限定されず、公知のものを用いてもよい。例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、更に2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)等のポリフェニレンエーテル共重合体も用いることができる。それらの中で、好ましくはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体であり、更に好ましくはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
<ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)の含有量>
本実施形態の樹脂組成物中のポリフェニレンエーテル系樹脂(B)の含有量は、スチレン系共重合体(A)とポリフェニレンエーテル系樹脂(B)との合計量を100質量部とした際に、5〜75質量部であり、好ましくは10〜40質量部であり、より好ましくは15〜30質量部である。ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)の含有量が5質量部より少ないと耐熱性が不十分であり、75質量部を超えるとスチレン共重合体(A)やスチレン系樹脂(C)との混練時に樹脂ヤケによる黒点が生じやすく、外観が劣る。
<ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)のZ平均分子量(Mz)>
本実施形態におけるポリフェニレンエーテル系樹脂(B)のZ平均分子量(Mz)は、2万〜12万が望ましく、より好ましくは3万〜10万、更に好ましくは4万〜7万である。Z平均分子量(Mz)が2万以下になると強度が不足し、Z平均分子量(Mz)が12万より大きくなると流動性が悪化する。
Z平均分子量(Mz)は酸化カップリング重合時における雰囲気、溶媒種、触媒種、反応温度、反応時間等の条件、特に、触媒種を適切に選択することにより調整可能である。
なお本開示で、Z平均分子量(Mz)は、ポリスチレン換算分子量としてGPCにて測定することができる。
本実施形態では、スチレン系樹脂組成物中のスチレン系共重合体(A)のZ平均分子量(PS_Mz)のポリフェニレンエーテル系樹脂(B)のZ平均分子量(PPE_Mz)に対する比(PS_Mz/PPE_Mz)は、10以上であることが好ましく、より好ましくは12〜50、更に好ましくは16〜40である。PS_Mz/PPE_Mzが10以上であることで、歪み硬化が生じ易くなる。
<ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)の製造方法〉
ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)の製造方法は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第3306874号明細書に記載の第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば2,6−キシレノールを酸化重合することにより容易に製造できる。或いは、米国特許第3306875号明細書、米国特許第3257357号明細書、米国特許第3257358号明細書、特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報、特開昭63−152628号公報等に記載された方法等によって製造することができる。
ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)は、フェノール化合物の酸化カップリングにより製造される。ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)の酸化カップリング反応触媒としては、特に制限はないが、銅、マンガン、コバルト等の重金属化合物の少なくとも1種を用いる(米国特許第4,042,056号、同第3,306,874号、同第3,306,875号公報等参照)。
フェノール化合物の具体例としては、フェノール、o−,m−,p−クレゾール、2,6−、2,5−、2,4−又は3,5−ジメチルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−メチルー6−t−ブチルフェノール等が挙げられる。上記フェノール化合物は二種以上を共重合してもよく、更に得られるホモポリマー若しくはコポリマーを二種以上混合使用してよい。上記フェノール化合物の中でも特に2,6−ジメチルフェノールが好適であり、従って本実施形態においてはこれを重合して得られるポリ(2,6−ジメチルー1,4−フェニレン)エーテルが良好な結果を与える。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物におけるスチレン系共重合体(A)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)成分の合計の含有量は、樹脂組成物を100質量%として、好ましくは90〜100質量%であり、より好ましくは95〜99.8質量%である
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、スチレン系共重合体(A)とポリフェニレンエーテル系樹脂(B)とは下記の方法で分離し、それぞれの分子量を測定することができる。具体的な分離法としては、スチレン系樹脂組成物を5質量%となるようにクロロホルムに溶解後、3倍量メタノールを加えて再沈させ、その後、濾過・乾燥してポリマー分を回収する。次に回収したポリマーを5質量%となるように50℃のジクロロメタンに溶解した後、−30℃にて24時間放置する。放置後、ポリマー分が析出するのでそれを濾過し、乾燥させてポリフェニレンエーテル系樹脂(B)を分離回収する。更に残ったジクロロメタン溶液に3倍量のメタノールを加え再沈させ、その後濾過・乾燥することでスチレン系共重合体(A)を分離回収する。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物の別の態様は、数平均分子量(Mn)が850〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とのスチレン系共重合体であって、前記共役ジビニル化合物の割合が、前記モノビニル化合物の総量1モルに対して2.0×10-6〜4.0×10-4モルであるスチレン系共重合体(A)と、ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)と、共役ジビニル化合物の共重合体ではないスチレン系樹脂(C)とを含む樹脂組成物であり、前記スチレン系共重合体(A)、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)、及び前記スチレン系樹脂(C)の合計量を100質量部とした際に、前記スチレン系共重合体(A)の含有量が25〜95質量部、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)の含有量が5〜75質量部、前記スチレン系樹脂(C)の含有量が0〜70質量部であることを特徴とする、スチレン系樹脂組成物である。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物の別の態様におけるスチレン系共重合体(A)及びポリフェニレンエーテル系樹脂(B)としては、上述のスチレン系共重合体(A)及びポリフェニレンエーテル系樹脂(B)を用いることができる。
〈スチレン系共重合体(A)の含有量〉
本実施形態のスチレン系樹脂組成物中のスチレン系共重合体(A)の含有量は、スチレン系共重合体(A)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)、及びスチレン系樹脂(C)の合計量を100質量部とした際に、25〜95質量部であり、好ましくは50〜90質量部であり、より好ましくは70〜85質量部である。
〈ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)の含有量〉
本実施形態の樹脂組成物中のポリフェニレンエーテル系樹脂(B)の含有量は、スチレン系共重合体(A)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)、及びスチレン系樹脂(C)の合計量を100質量部とした際に、5〜75質量部であり、好ましくは10〜50質量部であり、より好ましくは15〜30質量部である。
[[スチレン系樹脂(C)]]
本実施形態のスチレン系樹脂(C)は、共役ジビニル化合物と共重合せず、スチレン系単量体を主成分として重合することにより得られる。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用できるが、工業的に安価で使用できることからスチレンが好ましい。
また、スチレン系樹脂(C)では、所望の効果を損なわない範囲で、上記のスチレン系単量体以外の単量体との共重合や、不飽和結合を有するポリマーとの共重合(グラフト重合も含む)も可能である。
スチレン系単量体以外の共重合させることができる単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリロニトリル等のビニル系化合物、並びにジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、無水マレイン酸、マレイミド、及び核置換マレイミド等が挙げられる。
不飽和結合を有する高分子の例としては、ポリブタジエンやイソプレン、スチレン−ブタジエンブロックポリマー、またそれらの水素添加物等が挙げられる。ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合させたゴム状弾性体をポリスチレン中に含む構造体、すなわち一般的にHIPSと呼ばれるものもこのスチレン系樹脂(C)に含まれる。
共役ジビニル化合物と共重合しないとは、共役ジビニル化合物の含有量が、スチレン系樹脂(C)100質量%に対して、16×10-6質量%以下であることをいう。
<スチレン系樹脂(C)の含有量>
本実施形態の樹脂組成物中のスチレン系樹脂(C)の含有量は、スチレン系共重合体(A)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)、及びスチレン系樹脂(C)の合計量を100質量部とした際に、0〜70質量部であり、好ましくは0〜40質量部であり、より好ましくは0〜15質量部である。
本実施形態のスチレン系樹脂(C)の重量平均分子量(Mw)は、10万〜50万であることが好ましく、より好ましくは20万〜45万、更に好ましくは25万〜40万である。
また、本実施形態のスチレン系樹脂(C)のZ平均分子量(Mz)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mz)は、好ましくは1.8〜5.0であり、より好ましくは2.0〜4.8、更に好ましくは2.1〜4.7である。
スチレン系樹脂(C)のMwを20万〜50万とし、MzとMwとの比(Mw/Mz)を1.8〜5.0の範囲にすることにより、より成形加工性と流動性に優れたスチレン系樹脂(C)が得られる。
なお本開示で、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mz)は、GPCにより測定することができる。
<スチレン系樹脂(C)の製造方法>
本実施形態のスチレン系樹脂(C)は、上述のスチレン系共重合体(A)の製造条件と同様の製造条件で製造することができる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物におけるスチレン系共重合体(A)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)、及びスチレン系樹脂(C)成分の合計の含有量は、樹脂組成物を100質量%として、好ましくは90〜100質量%であり、より好ましくは95〜99.8質量%である。
以下、本実施形態のスチレン系樹脂組成物の特性について記載する。
[スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度]
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は、電子レンジでの使用環境の観点から、好ましくは105℃以上であり、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは115℃以上である。また、ビカット軟化温度の上限は特にない。
なお本開示で、ビカット軟化温度は、ISO306に準拠して測定することができる。
[スチレン系樹脂組成物中のスチレン系単量体の残存量]
本実施形態においては、スチレン系樹脂組成物中のスチレン系単量体の残存量は、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは500質量ppm以下、更に好ましくは300質量ppm以下である。1000質量ppm以下であると、シート押出時のダイス出口周りの臭気や、前記共重合樹脂の色調が改善される。
なお本開示で、スチレン系単量体の残存量は、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
[スチレン系樹脂組成物中のスチレンの二量体及び三量体の合計残存量]
スチレン系樹脂組成物において、スチレン系樹脂組成物100質量%中のスチレンの二量体と三量体との合計残存量は、低いほど好ましいが、好ましくは0.6質量%、より好ましくは0.3質量%、更に好ましくは0.15質量%以下である。
なお、スチレンの二量体及び三量体の残存量は、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
[スチレン系樹脂組成物の最大立ち上がり比]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物の最大立ち上がり比は、好ましくは1.2〜4.0、より好ましくは1.6〜3.5、更により好ましくは2.0〜3.0である。
最大立ち上がり比が1.2より小さいと成形性が乏しくなる傾向があり、4.0より大きいと伸長粘度が高くなり生産性が低下する傾向がある。
なお本開示で、最大立ち上がり比は、後述の[実施例]の項で説明する手順で算出される値である。
[[添加剤]]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物には、スチレン系共重合体(A)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)、及びスチレン系樹脂(C)以外に、スチレン系樹脂組成物において使用が一般的な各種添加剤を、適宜添加してもよい。かかる添加剤としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、鉱油等が挙げられる。また、本実施形態のスチレン系樹脂組成物には、スチレン−ブタジエンブロック共重合体やMBS樹脂等の補強材やポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂についても物性を損なわない範囲で添加してもよい。
これらの配合の方法については特に規定はないが、例えば、重合時に添加して重合する方法や樹脂組成物を得る際、ブレンダーで予め添加剤を混合し、押出機やバンバリーミキサー等にて溶融混錬する方法等が挙げられる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物における添加剤の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。
(安定剤)
安定剤としては、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(商品名:スミライザーGM、住友化学社製)、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−フェニルペンチル)エチル]−4,6−ジ−t−フェニルペンチルアクリレート(商品名:スミライザーGS、住友化学社製)、6−tert−ブチル−4−[3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]プロピル]−2−メチルフェノール(商品名:スミライザーGP、住友化学社製)を挙げることができる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物における安定剤の含有量は、スチレン系樹脂組成物に対して、好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.02〜0.3質量%、更により好ましくは0.03〜0.2質量%である。
安定剤の添加法について特に制限はないが、スチレン系共重合体(A)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)、及びスチレン系樹脂(C)の溶融混練時に添加してもよいし、スチレン系共重合体(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)、及び/若しくはスチレン系樹脂(C)の製造時にあらかじめ添加してもよい。所定量の安定剤を添加することで成形性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
[スチレン系樹脂組成物の製造方法]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、例えば、上述のモノビニル化合物と共役ジビニル化合物とを上述の製造方法でラジカル重合して得られるスチレン系共重合体(A)、上述のポリフェニレンエーテル系樹脂(B)、スチレン系樹脂(C)、必要に応じて添加剤等を、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等の公知の混練機を用いて溶融混練する方法等で得ることができる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、成形加工性に優れ、かつゲル状物質が少ないことから、外観に優れる製品が得られる。
成形方法としては、射出成形、押出成形、真空成形、圧空成形、押出発泡成形、カレンダー成形、ブロー成形等に好適に使用でき、各種成形品を従来よりも広い用途で得ることができる。
[シート]
本実施形態のシートは、本実施形態のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、非発泡又は発泡シートである。
また、本実施形態のシートの製造方法は、本実施形態のスチレン系樹脂組成物を使用することを特徴とする、シートの製造方法である。
シートの製造方法としては、通常知られている方法を用いることができる。非発泡シートでは、Tダイ或いはサーキュラーダイを取り付けた単軸又は二軸押出成形機で押出し、その後一軸延伸機又は二軸延伸機でシートを引き取る装置を用いる方法等を用いることができる。発泡シートの製造方法としては、Tダイ又はサーキュラーダイを備え付けた押出発泡成形機を用いる方法等を用いることができる。
非発泡シートにおいては、例えば、厚みが0.1〜1.0mm程度であることが剛性及び熱成形サイクルの観点から好ましい。
また、シートは、通常の低倍率のロール延伸のみで形成してもよく、ロールで1.3倍から7倍程度延伸した後、テンターで1.3倍から7倍程度延伸してもよい。
また、本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、ポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂と多層化して用いてもよく、更にスチレン系樹脂以外の樹脂と多層化して用いてもよい。スチレン系樹脂以外の樹脂としては、PET樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。
発泡シートにおいては、厚みが0.5〜5.0mmであることが好ましく、見かけ密度が50〜300g/Lであることが好ましく、また、坪量が80〜300g/m2であることが好ましい。
本実施形態の発泡シートは、例えばフィルムを更にラミネートすること等によって多層化してもよい。使用するフィルムの種類は、一般のポリスチレンやポリプロピレンやポリプロピレン/ポリスチレンの貼り合わせフィルム等としてよい。
発泡シートを形成する場合、押出発泡時の発泡剤及び発泡核剤としては通常用いられる物質を使用できる。発泡剤としては、ブタン、ペンタン、フロン、二酸化炭素、水等を使用することができ、ブタンが好適である。また、発泡核剤としてはタルク等を使用できる。
また、発泡押出後に、シートを加熱しながらロールで1.3倍から7倍程度延伸した後、テンターで1.3倍から7倍程度延伸してもよい。
[成形品]
本実施形態の成形品は、本実施形態の非発泡又は発泡シートを含むことを特徴とする、成形品である。
シートから、例えば、真空成形により成形して弁当の蓋材や惣菜等を入れる食品包装容器等を製造することができる。
また、例えば、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、両面真空成形、プレス成形等の従来公知の方法で二次成形することにより、シートから、トレー、コップ、丼容器、納豆容器等の二次成形品を形成することができる。
本実施形態の二次成形品の例としては、本実施形態の押出発泡シートを成形素材として、真空成形機により、横方向を押出方向として、縦5.5〜21cm、横6.5〜36cm、深さ1.1〜20cmの食品包装容器が挙げられる。真空成型の温度条件としては、以下に限定されないが、通常、120〜150℃の条件が好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、射出成形、圧縮成形等、目的に応じた他の成形方法で用いることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<測定及び評価方法>
測定及び評価方法は以下のとおりである。
(1)スチレン1モルに対する共役ジビニル化合物の含有モル数の測定
スチレン系樹脂における、スチレン1モルに対する共役ジビニル化合物の含有モル数は、1H−NMR及び13C−NMRを使用して測定した。測定装置としては、日本電子(株)社製のJEOL−ECA500を使用した。溶媒としてクロロホルム−d1を使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。
(2)分子量の測定
スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)Z平均分子量(Mz)、分子量100万以上の割合、及び分子量200万以上の割合、ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)のZ平均分子量(Mz)、並びにスチレン系樹脂のZ平均分子量(PS_Mz)の前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)のZ平均分子量(PPE_Mz)に対する比(PS_Mz/PPE_Mz)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定した。
・試料調製:測定試料5mgを10mLの溶媒に溶解し、0.45μmのフィルターでろ過をおこなった。
・測定条件
装置:東ソー製HLC―8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM−H(内径4.6mm)を2本直列に接続
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ−H
測定溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
注入量:10μL
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
検量線の作成には東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F−850、F−450、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000)を用いた。1次直線の近似式を用いて検量線を作成した。
(3)スチレン単量体、二量体及び三量体の残存量の測定
スチレン系樹脂及びスチレン系樹脂組成物中における、スチレンの単量体、二量体及び三量体の残存量(質量%)を、下記の条件や手順で、測定した。
・試料調製:樹脂組成物2.0gをクロロホルム20mLに溶解後、更に標準物質(トリフェニルメタン)入りのメタノール5mLを加えポリマー成分を再沈させ、上澄み液を採取し、測定液とした。
・測定条件
機器:Agilent社製 6850 シリーズ GCシステム
検出器:FID
カラム:HP−1(100%ジメチルポリシロキサン)30m、膜厚0.25μm、0.32mmφ
注入量:1μL(スプリットレス)
カラム温度:40℃で2分保持→20℃/分で320℃まで昇温→320℃で15分保持
注入口温度:250℃
検出器温度:280℃
キャリアガス:ヘリウム
(4)メルトマスフローレート(MFR)の測定
スチレン系樹脂のメルトマスフローレート(g/10分)は、ISO1133に準拠して、200℃、5kg荷重条件にて測定した。
(5)伸長粘度の測定、立ち上がりはじめひずみ、最大立ち上りひずみ、及び最大立ち上り比の測定
スチレン系樹脂の立ち上がりはじめひずみ、最大立ち上りひずみ、及び最大立ち上がり比、並びにスチレン系樹脂組成物の最大立ち上がり比の測定は、以下の測定条件で行った。
装置名:粘弾性測定装置 ARES−G2(TA Instruments社製)
測定システム:ARES−EVF
試験片寸法:長さ20mm、厚さ0.7mm、幅10mm
伸長ひずみ速度:0.01/秒
測定温度:スチレン系樹脂は150℃、スチレン系樹脂組成物はビカット軟化温度+40℃
測定雰囲気:窒素気流中
予熱時間:1分
予備伸長ひずみ速度:0.05/秒
予備伸長長さ:0.295mm
予備伸長後緩和時間:1分
伸長粘度の測定は、試験片をARES−EVFシステムの測定治具のローラーに取り付け、温度が安定してから予熱した。予熱終了後、予備伸長させた。予備伸長後、1分間静置し、予備伸長で生じた応力を緩和させ、測定した。
最大立ち上がりひずみは、上記の伸長粘度測定において伸長粘度が最大となる時のヘンキーひずみを差す。立ち上がりはじめひずみを以下の方法で算出した。上記の伸長粘度測定で得られた結果から、横軸にヘンキーひずみを、縦軸に伸長粘度をプロットした両常用対数グラフを作成し、ヘンキーひずみが0.2〜0.5の範囲を線形領域として、近似直線を作成した(横軸をヘンキーひずみとし、伸長粘度を縦軸とした際の累乗近似曲線に相当する)。ひずみ硬化が起こると、この線形領域を外挿した近似直線よりも、測定された伸長粘度が大きくなる領域が観察され、これを非線形領域とした。また、同じヘンキーひずみにおける、非線形領域の伸長粘度と線形領域直線よりえられる伸長粘度(これを“線形直線の伸長粘度”とする)比べた際に、非線形領域の伸長粘度が線形直線の伸長粘度の3%以上になる時のヘンキーひずみを立ち上がりはじめひずみとした。最大立ち上がり比は、(最大立ち上がりひずみの非線形領域の伸長粘度/最大立ち上がりひずみの線形領域の伸長粘度)で算出した。
(6)ビカット軟化温度の測定
ISO306に準拠して測定した。荷重は50N、昇温速度は50℃/hとした。
(7)非発泡シートの深絞り成形性の評価方法
30mmφシート押出機(創研株式会社製)を用いてスチレン系樹脂組成物を押し出し、厚さ0.5mmのシートを作成した。得られたシートから縦250mm×横250mmの大きさに切出し、シート容器成型機(創研株式会社製)を用いて、このシート成型機の固定枠でシートを挟み、ヒータの平均温度を220℃、雰囲気温度を110℃に設定し、20秒間加熱した。次いで、径10cm深さ10cmの丼容器の金型(温度40℃)に固定枠ごとスライドさせて真空成形を行い、成形体を20個ずつ成形した。この成形体の側面に引裂きが生じていないかを目視で確認し、引裂きが起こらず成形可能であった成形体の数を深絞り成形性の指標とした。
判定は、引き裂きの数が0〜1個を「◎(優れる)」、2〜3個を「○(良好)」、4個以上の場合を「×(不可)」とした。
(8)非発泡シートの外観の評価
30mmφシート押出機(創研株式会社製)を用いてスチレン系樹脂組成物を押し出し、0.5mmのシートを作成した。得られたシートから縦100mm×横100mmの大きさに試験片を20枚切出し、(長径+短径)/2の平均径が2.0mm以上のゲル状欠点や樹脂ヤケ由来の黒点を目視で測定し、以下の評価基準で外観を判定した。
判定は、ゲル状欠点及び黒点の数が0〜2個を「◎(優れる)」、3〜10個を「○(良好)」、11個以上の場合を「×(不可)」とした。
(9)発泡シートの深絞り成形性の評価
スチレン系樹脂組成物100質量部に対して、発泡核剤としてタルク(平均粒径1.3μm)を0.15質量部、発泡剤として液化ブタンを4質量部添加してスチレン系樹脂組成物を得た。
直径150mmのサーキュラーダイを備えた押出発泡機を用い、上記スチレン系樹脂組成物を押出し発泡成形した。押出発泡機の樹脂溶融ゾーンの温度は210〜240℃、ロータリークーラー温度は140〜180℃、ダイス温度は155℃に調整した。押出発泡直後の発泡体を冷却マンドレルで冷却し、円周上の1点でカッターにより切断することにより、シート厚み1.4mm、幅1000mmの押出発泡シートを得た。押出発泡シートを23±3℃、相対湿度50±5%にて20日間にわたって放置した。その後、創研製のシート容器成型機を用いて、このシート成型機の固定枠で発泡シートを挟み、ヒータの平均温度を200℃、雰囲気温度を130℃に設定し、15秒間加熱した。次いで、径10cmで深さ3cm又は6cmの深さが異なるコップ状の金型(温度40℃)に固定枠ごとスライドさせて真空成形を行い、成形体を100個ずつ成形した。この成形体の側面に引裂きが生じていないかを目視で確認し、引裂きが起こらず成形可能であった成形体の数を深絞り成形性の指標とした。
判定は、引き裂きの数が0〜5個を「◎(優れる)」、6〜10個を「○(良好)」、11個以上の場合を「×(不可)」とした。
<材料>
実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
〈モノビニル化合物〉
スチレン単量体:スチレンモノマー[旭化成社製]
〈共役ジビニル化合物〉
〈共役ジビニル化合物1〉
共役ジビニル化合物1は、下記の方法に基づいて製造した。
撹拌機、温度計及び還流冷却管を取り付けた容量5Lの反応容器内に、ポリブタジエン両末端アルコール(Mn:1900)2742g、アクリル酸メチル379g、n−ヘキサン380g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.8194g、及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.5533gを仕込んだ。得られた混合物を塩化カルシウム管内に通しながら、その混合物に空気を吹き込み、80〜85℃で還流脱水を行った。この混合物に含まれている水分をカールフィッシャー法により測定し、その含水量が200ppm以下であることを確認した。その後、エステル交換触媒として、テトラn−ブチルチタネート1.3685gを上記混合物に添加し、生成したメタノールをその共沸溶媒であるn−ヘキサンの還流下で反応系外に留去しながら、攪拌下で80〜85℃の反応温度で10時間反応させた。
次に、反応容器内の温度を75〜80℃に調整し、使用したアクリル酸メチル及びn−ヘキサンの95%以上が留出するまで減圧度70〜2kPaで濃縮し、過剰のアクリル酸メチルとn−ヘキサンを回収した。得られたポリブタジエン両末端ジアクリレート2070gに、トルエン2000g、アセトン200g、イオン交換水20g、及びエステル交換触媒としてハイドロタルサイト(組成式Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)〔協和化学工業(株)製、商品名:キョーワード500PL〕20gを添加し、75〜80℃で2時間処理した。次に、反応容器内の温度を75〜80℃に調整し、減圧度90〜35kPaで濃縮することにより、トルエンとアセトンと水の混合留出液400gを回収し、得られた濃縮液を空気加圧下で濾過して触媒及び吸着剤を分離し、更に温度60〜80℃及び減圧度30〜0.8kPaで溶媒を脱気し、共役ジビニル化合物1を得た。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で、共役ジビニル化合物1のポリブタジエン両末端ジアクリレートの転化率を測定したところ99.3%であった。またGPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は1900であった。
共役ジビニル化合物2:ポリブタジエン末端アクリレート[大阪有機化学工業社製:BAC‐45] Mn:4800
〈共役ジビニル化合物3〉
共役ジビニル化合物3は、下記の方法に基づいて製造した。
ポリブタジエン両末端アルコールの分子量をMn:25000に変更した以外は同様の条件にて製造した共役ジビニル化合物3は、ポリブタジエン両末端ジアクリレートの転化率が99.5%であった。またGPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は26000であった。
〈共役ジビニル化合物4〉
共役ジビニル化合物4は、下記の方法に基づいて製造した。
ポリブタジエン両末端アルコールの分子量をMn:57000に変更した以外は共役ジビニル化合物1の場合と同様の条件にて製造した共役ジビニル化合物4は、ポリブタジエン両末端ジアクリレートの転化率が99.2%であった。またGPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は58000であった。
共役ジビニル化合物5:芳香族ウレタンアクリレート[巴工業社製:CN9782] Mn:5200
共役ジビニル化合物6:1,3−ブチレンジオールジメタクリレート[和光純薬工業株式会社製] Mn:226
〈共役ビニル化合物〉
共役ビニル化合物:NKエステル A−GLY−20E[新中村化学工業株式会社製]Mn:1295。共役ビニル化合物の1分子中の平均の共役ビニルの数は3である。
〈多分岐状マクロモノマーの合成〉
攪拌機、温度計、滴下ロート及びコンデンサーを備えた2リットルフラスコに、室温下、特開2011−246588号公報に開示されているエトキシ化ペンタエリスリトール(5モル−エチレンオキシド付加ペンタエリスリトール)50.5g、BF3ジエチルエーテル溶液(50%)1gを加え、110℃に加熱した。これに3―エチル−3―(ヒドロキシメチル)オキセタン450gを、反応による発熱を制御しつつ、25分間でゆっくり加えた。発熱が収まったところで、反応混合物を更に120℃で3時間撹拌し、その後、室温に冷却した。得られた多分岐ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は3,000、水酸基価は530であった。
上記で得られた多分岐ポリエーテルポリオール50g、メタアクリル酸13.8g、トルエン150g、ヒドロキノン0.06g、パラトルエンスルホン酸1gを、攪拌機、温度計、コンデンサーを備えたディーンスタークデカンター及び気体導入管を備えた反応器に、加え、混合溶液中に3mL/分の速度で7%酸素含有窒素(v/v)を吹き込みながら、常圧下で撹拌し、加熱した。デカンターへの留出液量が1時間あたり30gになるように加熱量を調節し、脱水量が2.9gに到達するまで加熱を続けた。反応終了後、一度冷却し、無水酢酸36g、スルファミン酸5.7gを加え、60℃で10時間撹拌した。その後、残っている酢酸及びヒドロキノンを除去する為に5%水酸化ナトリウム水溶液50gで4回洗浄し、更に1%硫酸水溶液50gで1回、水50gで2回洗浄した。得られた有機層にメトキノン0.02gを加え、減圧下、7%酸素含有窒素(v/v)を導入しながら溶媒を留去し、イソプロペニル基及びアセチル基を有する多分岐ポリエーテル60gを得た。
得られた多分岐ポリエーテルの重量平均分子量は3,900であり、多分岐ポリエーテルポリオールへのイソプロペニル基及びアセチル基導入率は、ヒドロキシル基全体に対してそれぞれ30モル%及び62モル%であった。
なお、上述の共役ジビニル化合物2、4、及び6、共役ビニル化合物、並びに多分岐状マクロモノマーは、分子中の最も端の両方に共役ビニル基を有していた。
〈その他〉
重合開始剤1:2,2−ビス(4,4−ジ−ターシャリー−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン[日油株式会社製:パーテトラA]
重合開始剤2:1,1−ジ−(ターシャリー−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン[日油株式会社製:パーヘキサC]
安定剤1:スミライザーGS[住友化学製]
安定剤2:スミライザーGP[住友化学製]
<スチレン系樹脂>
<樹脂Aの製造>
スチレン単量体80質量部、エチルベンゼン20質量部、重合開始剤1を0.03質量部、共役ジビニル化合物1の0.035質量部を添加し、原料溶液を調整した。調製した原料溶液を、105℃の温度に保持した内容積5.4Lの完全混合型第1反応器に、1.0L/時で連続的に供給した。
次いで、第1反応器からの重合液と重合液100質量部に対して0.03質量部の重合開始剤2を内容積3.0Lのプラグフロー型第2反応器に供給した。第2反応器の温度を119℃〜143℃にとして重合液を反応させた。第2反応器出口での最終固形分濃度は64%となった。
得られた重合液を240℃の温度に加熱された真空脱気槽に供給し、未反応単量体や溶媒等の揮発性成分を取り除き、スチレン系共重合体(A)である樹脂Aを得た。
得られた樹脂Aの性状を表1に記す。
<樹脂Bの製造>
スチレン単量体80質量部、エチルベンゼン20質量部、重合開始剤1を0.03質量部、共役ジビニル化合物2の0.033質量部を添加し、原料溶液を調整した。調製した原料溶液を、105℃の温度に保持した内容積5.4Lの完全混合型第1反応器に、1.0L/時で連続的に供給した。
次いで、第1反応器からの重合液と重合液100質量部に対して0.03質量部の重合開始剤2、安定剤1の0.16質量部を内容積3.0Lのプラグフロー型第2反応器に供給した。第2反応器の温度を120℃〜130℃にとして重合液を反応させた。第2反応器出口での最終固形分濃度は65%となった。
得られた重合液を240℃の温度に加熱された真空脱気槽に供給し、未反応単量体や溶媒等の揮発性成分を取り除き、スチレン系共重合体(A)である樹脂Bを得た。
得られた樹脂Bの性状を表1に記す。
<樹脂Cの製造>
スチレン単量体78質量部、エチルベンゼン22質量部、重合開始剤1を0.03質量部、共役ジビニル化合物2の0.058質量部を添加し、原料溶液を調整した。調製した原料溶液を、105℃の温度に保持した内容積5.4Lの完全混合型第1反応器に、1.0L/時で連続的に供給した。
次いで、第1反応器からの重合液と重合液100質量部に対して0.03質量部の重合開始剤2を内容積3.0Lのプラグフロー型第2反応器に供給した。第2反応器の温度を123℃〜147℃にとして重合液を反応させた。第2反応器出口での最終固形分濃度は64%となった。
得られた重合液を240℃の温度に加熱された真空脱気槽に供給し、未反応単量体や溶媒等の揮発性成分を取り除き、スチレン系共重合体(A)である樹脂Cを得た。
得られた樹脂Cの性状を表1に記す。
<樹脂Dの製造>
スチレン単量体87質量部、エチルベンゼン13質量部、重合開始剤2を0.03質量部、共役ジビニル化合物3の0.653質量部を添加し、原料溶液を調整した。調製した原料溶液を、102℃の温度に保持した内容積5.4Lの完全混合型第1反応器に、1.0L/時で連続的に供給した。
次いで、第1反応器からの重合液と重合液100質量部に対して0.03質量部の重合開始剤2を内容積3.0Lのプラグフロー型第2反応器に供給した。第2反応器の温度を115℃〜137℃にとして重合液を反応させた。第2反応器出口での最終固形分濃度は64%となった。
得られた重合液を240℃の温度に加熱された真空脱気槽に供給し、未反応単量体や溶媒等の揮発性成分を取り除き、スチレン系共重合体(A)である樹脂Dを得た。
得られた樹脂Dの性状を表1に記す。
<樹脂Eの製造>
スチレン単量体87.0質量部、エチルベンゼン13.0質量部、重合開始剤1を0.03質量部、共役ジビニル化合物4の0.653質量部を添加し、原料溶液を調整した。調製した原料溶液を、102℃の温度に保持した内容積5.4Lの完全混合型第1反応器に、1.0L/時で連続的に供給した。
次いで、第1反応器からの重合液と重合液100質量部に対して0.03質量部の重合開始剤2を内容積3.0Lのプラグフロー型第2反応器に供給した。第2反応器の温度を115℃〜137℃にとして重合液を反応させた。第2反応器出口での最終固形分濃度は64%となった。
得られた重合液を240℃の温度に加熱された真空脱気槽に供給し、未反応単量体や溶媒等の揮発性成分を取り除き、スチレン系共重合体(A)である樹脂Eを得た。
得られた樹脂Eの性状を表1に記す。
<樹脂Fの製造>
スチレン単量体80質量部、エチルベンゼン20質量部、重合開始剤1を0.03質量部、共役ジビニル化合物5の0.600質量部を添加し、原料溶液を調整した。調製した原料溶液を、105℃の温度に保持した内容積5.4Lの完全混合型第1反応器に、1.0L/時で連続的に供給した。
次いで、第1反応器からの重合液と重合液100質量部に対して0.03質量部の重合開始剤2を内容積3.0Lのプラグフロー型第2反応器に供給した。第2反応器の温度を119℃〜142℃にとして重合液を反応させた。第2反応器出口での最終固形分濃度は65%となった。
得られた重合液を240℃の温度に加熱された真空脱気槽に供給し、未反応単量体や溶媒等の揮発性成分を取り除き、スチレン系共重合体(A)である樹脂Fを得た。
得られた樹脂Fの性状を表1に記す。
<樹脂Gの製造>
スチレン単量体82質量部、エチルベンゼン18質量部、重合開始剤1を0.025質量部添加して原料溶液を調整した。調製した原料溶液を、114℃の温度に保持した内容積5.4Lの完全混合型第1反応器に、0.6L/時で連続的に供給した。
次いで、スチレン単量体83質量部、エチルベンゼン17質量部、重合開始剤2の0.023質量部を添加して原料溶液を調整した。調製した原料溶液を108〜112℃に加温した。内容積1.5Lのプラグフロー型第2反応器に、0.17L/時で連続的に供給した。
次いで、第1反応器と第2反応器からの重合溶液を合流させ、137〜166℃に加温した内容積3Lのプラグフロー型第3反応器に供給した。第3反応器からの重合溶液を240℃の温度に加熱された真空脱気槽に供給し、未反応単量体や溶媒等の揮発性成分を取り除き、スチレン系樹脂(C)である樹脂Gを得た。
得られた樹脂Gの性状を表1に記す。
<樹脂Hの製造>
スチレン単量体74.0質量部、エチルベンゼン26.0質量部、重合開始剤1を0.03質量部、共役ジビニル化合物2の0.854質量部を添加し、原料溶液を調整した。調製した原料溶液を、105℃の温度に保持した内容積5.4Lの完全混合型第1反応器に、1.0L/時で連続的に供給した。
次いで、第1反応器からの重合液と重合液100質量部に対して0.03質量部の重合開始剤2を内容積3.0Lのプラグフロー型第2反応器に供給した。第2反応器の温度を130℃〜150℃にとして重合液を反応させた。第2反応器出口での最終固形分濃度は61%となった。
得られた重合液を240℃の温度に加熱された真空脱気槽に供給し、未反応単量体や溶媒等の揮発性成分を取り除き、スチレン系樹脂Hを得た。
得られた樹脂Hの性状を表1に記す。
樹脂Hの分子量測定では溶媒不溶分が確認されたため、溶解した部分の分子量を表中に記載した。
<樹脂Iの製造>
スチレン単量体80.0質量部、エチルベンゼン20.0質量部、重合開始剤1を0.03質量部、共役ジビニル化合物6の0.024質量部を添加し、原料溶液を調整した。調製した原料溶液を、105℃の温度に保持した内容積5.4Lの完全混合型第1反応器に、1.0L/時で連続的に供給した。
次いで、第1反応器からの重合液と重合液100質量部に対して0.03質量部の重合開始剤2を内容積3.0Lのプラグフロー型第2反応器に供給した。第2反応器の温度を119℃〜143℃にとして重合液を反応させた。第2反応器出口での最終固形分濃度は65%となった。
得られた重合液を240℃の温度に加熱された真空脱気槽に供給し、未反応単量体や溶媒等の揮発性成分を取り除き、スチレン系樹脂Iを得た。
得られた樹脂Iの性状を表1に記す。
<樹脂Jの製造>
スチレン単量体80.0質量部、エチルベンゼン20.0質量部、重合開始剤としてパーテトラAを0.030質量部、架橋剤として共役ビニル化合物の0.144質量部を添加して原料溶液を調整した。100℃の温度に保持した内容積5.4Lの完全混合型第1反応器に、1.0L/時で連続的に供給した。
次いで、第1反応器からの重合液と重合液100質量部に対して0.03質量部の重合開始剤2を内容積3.0Lのプラグフロー型第2反応器に供給した。第2反応器の温度を119℃〜143℃にとして重合液を反応させた。第2反応器出口での最終固形分濃度は65%となった。
得られた重合液を240℃の温度に加熱された真空脱気槽に供給し、未反応単量体や溶媒等の揮発性成分を取り除き、スチレン系樹脂Jを得た。
得られた樹脂Jの性状を表1に記す。
<樹脂Kの製造>
スチレン単量体90部、上述の製造方法で得られた多分岐状マクロモノマーをスチレン単量体に対し500ppm、及びトルエン10部からなる混合溶液を調製し、更に、有機過酸化物としてスチレン単量体に対し300ppmのt−ブチルパーオキシベンゾエートを加え反応溶液を作成した。撹拌式反応機(A)の後に静置型のミキシングエレメントの入ったループ型反応器(B)を直列で連結し、更にそのあとに静置型のミキシングエレメントの入ったライン反応器(C)を連結させた反応器に混合溶液を9L/hの速度で、連続的に供給した。各反応機での温度とループ型反応器の還流比は以下のように設定した。
撹拌式反応器(A)の反応温度:120℃
ループ型反応器(B)の反応温度:120℃
ライン反応器(C)の反応温度:130〜150℃
還流比:R=F1/F2=6
ただし、F1はループ型反応器内を還流する混合溶液の流量を、F2は非循環重合ライ
ンへ流出する混合溶液の流量を示す。
反応器からの重合溶液を240℃の温度に加熱された真空脱気槽に供給し、未反応単量体や溶媒等の揮発性成分を取り除き、スチレン系樹脂Kを得た。
得られた樹脂Kの性状を表1に記す。
Figure 0006840059
<ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)>
ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)は以下のものを使用した。
・ザイロン S201A[旭化成社製](Mz分子量8.0×104
・ザイロン S202A[旭化成社製](Mz分子量6.0×104
・ザイロン S203A[旭化成社製](Mz分子量4.0×104
*括弧内はGPC測定によるMz分子量の結果である。
<実施例1>
二軸押出機[東芝機械製 TEM26]にて樹脂Aを90質量部、ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)(ザイロン S202A)を10質量部、230〜280℃、100rpmの条件で混練し、樹脂組成物を得た。実施例1の物性を表2に記す。
<実施例2〜8>
実施例1と同様の条件で、表2の種類・割合となるようにスチレン系共重合体(A)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)、安定剤を添加、混練し、樹脂組成物を作製した。実施例2〜8の物性を表2に記す。
<比較例1>
実施例1と同様の条件で、スチレン系樹脂(C)(樹脂G)80質量部とポリフェニレンエーテル系樹脂(B)(ザイロン S202A)20質量部とを混練し、樹脂組成物を得た。比較例1の物性を表2に記す。
得られた樹脂組成物は、PS中に共役ジビニルによる分岐構造が含まれておらず、PS_Mz/PPE_Mzも低いため、伸長粘度の立ち上がりも見られず、発泡シートの深絞り性に劣る結果となった。
<比較例2>
実施例1と同様の条件で、スチレン系共重合体(樹脂H)80質量部とポリフェニレンエーテル系樹脂(B)(ザイロン S202A)20質量部とを混練し、樹脂組成物を得た。比較例2の物性を表2に記す。
得られた樹脂組成物は、スチレン系共重合体(樹脂H)中に共重合ジビニル化合物の量が多いため、スチレン系共重合体(樹脂H)由来のゲル状物質も多く、外観不良が確認された。
<比較例3>
実施例1と同様の条件で、スチレン系共重合体(樹脂I)80質量部とポリフェニレンエーテル系樹脂(B)(ザイロン S202A)20質量部とを混練し、樹脂組成物を得た。比較例3の物性を表2に記す。
得られた樹脂組成物は、共役ジビニル化合物の分子量が小さいために、絡み合いが十分に得られず、伸長粘度の立ち上がりが不十分で、深絞り性に劣る結果となった。
<比較例4>
実施例1と同様の条件で、スチレン系共重合体(樹脂J)80質量部とポリフェニレンエーテル系樹脂(B)(ザイロン S202A)20質量部とを混練し、樹脂組成物を得た。比較例4の物性を表2に記す。
得られた樹脂組成物は、スチレン共重合体(樹脂J)由来のゲル状物質が多く、外観に劣る結果となった。
<比較例5>
実施例1と同様の条件で、スチレン系共重合体(樹脂K)80質量部とポリフェニレンエーテル系樹脂(B)(ザイロン S202A)20質量部とを混練し、樹脂組成物を得た。比較例5の物性を表2に記す。
得られた樹脂組成物は、スチレン共重合体(樹脂K)由来のゲル状物質が多く、外観に劣る結果となった。
<比較例6>
実施例1と同様の条件で、スチレン系共重合体(樹脂B)20質量部とポリフェニレンエーテル系樹脂(B)(ザイロン S202A)80質量部とを混練し、樹脂組成物を得た。比較例6の物性を表2に記す。
得られた樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)の含有量が多いため、加工時の樹脂ヤケ由来の黒点が多く、外観に劣る結果となった。また、スチレン系共重合体(A)の含有量も少なく、成形性に劣る結果となった。
Figure 0006840059
本発明によれば、耐熱性、成形性、発泡特性、及び外観に優れるスチレン系樹脂組成物、シート、成形品、及びシートの製造方法を提供することができる。
本発明によるスチレン系樹脂組成物は、成形加工性に優れ、かつゲル状物質が少ないため、例えば家電、事務機製品、雑貨、住宅設備等の成形材料や食品包装材料等として広く利用することができる。

Claims (9)

  1. 数平均分子量(Mn)が850〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とのスチレン系共重合体であって、前記共役ジビニル化合物の割合が、前記モノビニル化合物の総量1モルに対して2.0×10-6〜4.0×10-4モルであるスチレン系共重合体(A)と、
    ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)と
    を含む樹脂組成物であり、
    前記スチレン系共重合体(A)と前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)との合計量を100質量部とした際に、前記スチレン系共重合体(A)の含有量が25〜95質量部、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)の含有量が5〜75質量部である
    こと特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
  2. 数平均分子量(Mn)が850〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とのスチレン系共重合体であって、前記共役ジビニル化合物の割合が、前記モノビニル化合物の総量1モルに対して2.0×10-6〜4.0×10-4モルであるスチレン系共重合体(A)と、
    ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)と、
    前記共役ジビニル化合物の共重合体ではないスチレン系樹脂(C)と
    を含む樹脂組成物であり、
    前記スチレン系共重合体(A)、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)、及び前記スチレン系樹脂(C)の合計量を100質量部とした際に、前記スチレン系共重合体(A)の含有量が25〜95質量部、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)の含有量が5〜75質量部、前記スチレン系樹脂(C)の含有量が0〜70質量部である
    ことを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
  3. 前記共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)が1000〜30000である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
  4. 前記共役ジビニル化合物が鎖状である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
  5. 前記スチレン系共重合体(A)のZ平均分子量(PS_Mz)の前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(B)のZ平均分子量(PPE_Mz)に対する比(PS_Mz/PPE_Mz)が10以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
  6. スチレンの二量体と三量体との合計量が前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対して0.6質量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、非発泡又は発泡シート。
  8. 請求項7に記載の非発泡又は発泡シートを含むことを特徴とする、成形品。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物を使用することを特徴とする、シートの製造方法。
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