JP6836927B2 - 高リスク部位予測方法及び高リスク部位予測装置 - Google Patents
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Description
パウダスケールはポーラスであるため、熱抵抗が大きく、多量に生成した場合は伝熱阻害因子となって伝熱管の温度上昇を引き起こし、この温度上昇に起因するクリープ損傷を引き起こす場合がある。
パウダスケールやスラッジの付着や堆積が起こる部位はばらつきがあり、発生する部位を予測することは困難である。一方、特許文献1に開示された予測方法は、スケールの生成はボイラ炉壁の各部位で一様に発生することを前提としており、パウダスケールの生成やスラッジの堆積を考慮したものではない。従って、特許文献1に開示された予測方法では、パウダスケールなどに起因した熱損リスク部位を予測することはできない。
ボイラ炉の炉壁に設けられた伝熱管の熱損リスクが高い部位を予測する高リスク部位予測方法であって、
前記炉壁の外面の温度計測対象部位のうち異なる複数の部位の温度を任意の時刻に計測する第1温度計測ステップと、
前記任意の時刻から一定時間が経過した後、前記複数の部位の温度を計測する第2温度計測ステップと、
前記複数の部位の各々において前記第1温度計測ステップで得られた第1温度計測値と前記第2温度計測ステップで得られた第2温度計測値との差分を夫々算出し、算出した複数の前記差分から統計的処理によって閾値を設定する閾値設定ステップと、
前記差分が前記閾値から逸脱した前記部位を高リスク部位と判定する判定ステップと、
を備える。
そして、高リスク部位を予測した後、当該部位の炉内温度を監視し、さらには抜管によるモニタリング等を行う。必要とあれば、伝熱管内部を洗浄することで過熱損傷を防止できる。
前記閾値設定ステップは、前記複数の部位で算出された前記差分の平均値を算出する平均値算出ステップをさらに備え、
前記閾値設定ステップにおいて、前記平均値より一定値だけ高い温度を閾値とする。
上記(2)の方法によれば、上記差分の平均値から閾値を設定するので、複数の部位の相対的変位を客観的に比較でき、これによって、予測の確率を高めることができる。
前記差分の平均値をμとし、前記差分の標準偏差をσとしたとき、前記閾値は前記平均値μに前記標準偏差σを加算した温度(μ+σ)とする。
複数の部位において夫々算出した複数の上記差分は正規分布を形成すると考えられる。
上記(3)の方法によれば、閾値を上記温度(μ+σ)とすることで、漏れが少なく、かつ高リスク部位予測の確率を高くすることができる。
前記炉壁は、複数の前記伝熱管と、隣接する伝熱管の間に介在するフィン部と、を含み、
前記第1温度計測ステップ及び前記第2温度計測ステップにおいて、前記フィン部の外面の温度を計測する。
本発明者等が得た知見によれば、ボイラ炉壁内面側の伝熱管の温度変化はボイラ炉壁外面のうちフィン外面の温度に最も顕著に現れることがわかった。そのため、フィン外面の温度を計測することで、ボイラ炉壁内面側の伝熱管の温度推移を感度良く把握できるため、高リスク部位の選定の確率を高めることができる。
前記閾値設定ステップにおいて、
前記閾値は、前記温度計測対象部位ごとに異なる温度に設定される。
温度計測対象部位のうち、例えば、伝熱管を流れる蒸気の温度が高い部位では、他の部位より絶対温度が高くなり、熱負荷が大きい部位では他の部位より温度上昇値が大きくなる。そこで、かかる部位では高リスク部位と判定される頻度が高くなるように閾値を設定する。これによって、リスク予測確率を高めることができる。
前記第1温度計測ステップは、前記ボイラ炉が熱平衡に達した後に行われる。
「熱平衡」とは、ボイラの始動後炉壁温度その他の状態量が定常運転時の状態に達した状態を言う。熱平衡に達してない時、伝熱管の温度は過熱損傷の指標とはならないので、ボイラが熱平衡に達した後、第1温度計測ステップを行うことで、高リスク部位を正確に選定できる。
前記複数の部位の各々において、前記差分が予め設定された値を下回ったとき、前記熱平衡に達したと判定する。
上記(7)の方法では、熱平衡に達する時と差分との相関関係を予め求めておき、熱平衡に達する時の差分の値を設定しておく。従って、差分がこの設定値を下回ったとき熱平衡に達したと判定することで、熱平衡に達する時を容易かつ正確に把握できる。
前記複数の部位の各々において、前記第1温度計測値が予め設定された値になったとき、前記熱平衡に達したと判定する。
上記(8)の方法では、熱平衡に達する時と第1温度計測値との相関関係を予め求めておき、熱平衡に達する時の第1温度計測値を設定しておく。従って、第1温度計測値がこの設定値になった時熱平衡に達したと判定することで、熱平衡に達する時を容易かつ正確に把握できる。
前記判定ステップで前記高リスク部位の存在が確認されたとき、前記ボイラの運転を停止させ、前記伝熱管の内部を洗浄する洗浄ステップをさらに備える。
上記(9)の方法によれば、高リスク部位の存在が確認されたとき、伝熱管の内部を洗浄することで、運転再開後、伝熱管の温度を低減でき、過熱損傷を未然に防止できる。
ボイラ炉の炉壁に設けられた伝熱管の熱損リスクが高い部位を予測する高リスク部位予測装置であって、
前記炉壁の外面の温度を計測する温度センサと、
前記炉壁の外面の温度計測対象部位のうち異なる複数の部位の温度を任意の時刻に計測した第1温度計測値と、前記任意の時刻から一定時間が経過した後、前記複数の部位で計測した第2温度計測値との差分を夫々算出する差分算出部と、
算出した複数の前記差分から統計的処理によって閾値を設定する閾値設定部と、
前記差分が前記閾値から逸脱した前記部位を高リスク部位と判定する判定部と、
を備える。
そして、高リスク部位を予測した後、当該部位の温度監視及び抜管によるモニタリングを行う。必要とあれば、伝熱管内部を洗浄することで過熱損傷を防止できる。
前記温度センサが前記炉壁の外面に配設された光ファイバである。
上記(11)の構成によれば、ボイラ炉壁外面に温度センサとして光ファイバを配設することで、低コストで多数の計測点をもつことができる。従って、炉壁外面に広範囲に亘って連続的に温度分布を計測できる。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
過熱損傷の予測対象部位が温度計測対象部位とされ、該温度計測対象部位の異なる複数の部位の温度を温度センサ12で計測し、これらの計測値は差分算出部16に送られる。差分算出部16では、複数の部位で異なる時間に計測された温度計測値の差分を求める。即ち、任意の時刻に計測した第1温度計測値と、上記任意の時刻から一定時間経過した後に計測した第2温度計測値との差分を求める。閾値設定部18では、算出された複数の差分から統計的処理によって閾値を設定する。判定部20では、該差分が該閾値から逸脱した部位を高リスク部位と判定する。
図5は炉壁102の一部を示す断面図である。図5において、炉壁102は伝熱管104とフィン部108とが互い違いに配置され、両者は例えば溶接部wによって互いに接合されている。図中、Fiは炉内側を示し、Foは炉外側を示す。
図1に示す温度センサ12は光ファイバを炉壁102の外面に配設した例を示す。温度センサとして光ファイバを配設することで、低コストで多数の計測点をもつことができる。従って、炉壁外面に広範囲に亘って連続的に温度分布を計測できる。
他方、温度センサとして例えば熱電対を配設する場合は、コスト面で光ファイバほど多数の計測点を持つことは難しく、計測点の数は限られる。
また、サーモグラフィによる計測は、ボイラ炉壁の外面が保温材で被覆されているため、炉壁外面を直接撮影することができない場合が多い。
図3において、第1温度計測ステップS10では、炉壁102の外面の温度計測対象部位のうち異なる複数の部位の温度を任意の時刻に計測する。第2温度計測ステップS12では、第1温度計測ステップS10における計測時点から一定時間が経過した後、複数の部位の温度を計測する。
一実施形態では、温度形成部位の選定は、温度計測対象部位を適宜に複数の部位に分割し、分割された部位毎に1つ又は複数の計測点を選ぶようにする。
高リスク部位を予測した後、高リスク部位と判定された部位の温度を監視し、さらには、抜管によるモニタリングを行う。必要とあれば、高リスク部位と判定された伝熱管の内部を洗浄(水洗浄、酸洗浄等)することで過熱損傷を防止できる。
図7は、コーダル型熱電対を用いて伝熱管104の内外面の温度を計測したときの一定時間後の温度変位を示すグラフである。計測点として、図5に示す4つの計測点;炉内側伝熱管中心Tc、炉外側伝熱管中心位置T1、炉外側溶接部wの中心位置T2及び炉外側フィン部中心位置T3を計測点として選定した。ボイラ炉の運転が熱平衡に達した後の第1温度計測ステップS10における計測点Tcの温度が450℃(第1温度計測値)であり、一定時間後、伝熱管104の内面にパウダスケールを含むスケールが生成したことで、第2温度計測ステップS12における計測点Tcの温度は530℃(第2温度計測値)となった。
図8は、伝熱管104の内面に付着したパウダスケールSpを含むスケールSの付着範囲を示し、数値はスケールSの厚さを示している。
図7から、計測点T3及び計測点T2の順に感度良く差分を検知できることがわかる。従って、炉外側伝熱管の計測点として、フィン部108を選択することが好ましい。
このように、各部位で算出された差分の平均値から閾値を設定するので、複数の部位の相対的変位を客観的に比較でき、これによって、予測の確率を高めることができる。
このように、閾値を上記温度(μ+σ)とすることで、高リスク部位の見逃しを少なくでき、かつ高リスク部位予測の確率を高くすることができる。
一実施形態では、閾値は平均値μに標準偏差σの1.5倍を加算した温度(μ+1.5σ)としてもよい。
図7に示すように、ボイラ炉壁内面側の伝熱管104の温度変化はボイラ炉壁外面のうちフィン部外面の温度に最も顕著に現れることがわかる。そのため、温度計測対象となる複数の部位においてフィン部外面の温度を計測することで、ボイラ炉壁内面側の伝熱管104の温度推移を感度良く把握でき、この温度推移に基づいて、高リスク部位の選定の確率を高めることができる。
温度計測対象部位のうち、例えば、伝熱管104を流れる蒸気の温度が高い部位(例えば、ボイラ炉内の蒸気流の下流側部位、即ち、上方部位と考えられる。)では、他の部位より絶対温度が高くなり、熱負荷が大きい部位(例えば、部位Bが相当する。)では他の部位より温度上昇値が大きくなる。そこで、かかる部位では高リスク部位と判定される頻度が高くなるように閾値を設定する。これによって、リスク予測確率を高めることができる。
例えば、蒸気温度(実測値又は計画値)及び熱負荷(計画値)の夫々に比例する係数を乗算することで重み付けする。
これによって、熱平衡に達する時を容易かつ正確に把握できる。
なお、計測対象となった複数の部位の大部分において、差分が予め設定された値を下回ったとき、ボイラ炉が熱平衡に達したと判定するようにしてもよい。
このように、第1温度計測値がこの設定値になった時熱平衡に達したと判定することで、熱平衡に達する時を容易かつ正確に把握できる。
なお、計測対象となった複数の部位の大部分において、第1温度計測値が予め設定された値になった時、ボイラ炉が熱平衡に達したと判定するようにしてもよい。
これによって、運転再開後、伝熱管の温度を低減でき、過熱損傷を未然に防止できる。
これによって、計測対象範囲が炉壁面の広範囲に亘るときでも、低コストでかつ作業負荷を低減できる。
12 温度センサ
14 予測部
16 差分算出部
18 閾値設定部
20 判定部
100 ボイラ炉
102 炉壁
104 伝熱管
106 バーナ
108 フィン部
Fi 炉内側
Fo 炉外側
Pi 酸化鉄粒子
S スケール
Sp パウダスケール
w 溶接部
Claims (10)
- ボイラ炉の炉壁に設けられた伝熱管の熱損リスクが高い部位を予測する高リスク部位予測方法であって、
前記炉壁の外面の温度計測対象部位のうち異なる複数の部位の温度を任意の時刻に計測する第1温度計測ステップと、
前記任意の時刻から一定時間が経過した後、前記複数の部位の温度を計測する第2温度計測ステップと、
前記複数の部位の各々において前記第1温度計測ステップで得られた第1温度計測値と前記第2温度計測ステップで得られた第2温度計測値との差分を夫々算出し、算出した複数の前記差分から統計的処理によって閾値を設定する閾値設定ステップと、
前記差分が前記閾値から逸脱した前記部位を高リスク部位と判定する判定ステップと、
を備え、
前記閾値設定ステップにおいて、
前記ボイラ炉内におけるバーナ近傍における閾値よりも、前記バーナ近傍よりも下流側における閾値の方が小さくなるように、前記閾値を設定する、
ことを特徴とする高リスク部位予測方法。 - 前記閾値設定ステップは、前記複数の部位で算出された前記差分の平均値を算出する平均値算出ステップをさらに備え、
前記閾値設定ステップにおいて、前記平均値より一定値だけ高い温度を閾値とすることを特徴とする請求項1に記載の高リスク部位予測方法。 - 前記差分の平均値をμとし、前記差分の標準偏差をσとしたとき、
前記閾値は前記平均値μに前記標準偏差σを加算した温度(μ+σ)とすることを特徴とする請求項2に記載の高リスク部位予測方法。 - 前記炉壁は、複数の前記伝熱管と、隣接する伝熱管の間に介在するフィン部と、を含み、
前記第1温度計測ステップ及び前記第2温度計測ステップにおいて、前記フィン部の外面の温度を計測することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の高リスク部位予測方法。 - 前記第1温度計測ステップは、前記ボイラ炉が熱平衡に達した後に行われることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の高リスク部位予測方法。
- 前記複数の部位の各々において、前記差分が予め設定された値を下回ったとき、前記熱平衡に達したと判定することを特徴とする請求項5に記載の高リスク部位予測方法。
- 前記複数の部位の各々において、前記第1温度計測値が予め設定された値になったとき、前記熱平衡に達したと判定することを特徴とする請求項5に記載の高リスク部位予測方法。
- 前記判定ステップで前記高リスク部位の存在が確認されたとき、前記ボイラ炉の運転を停止し、前記伝熱管の内部を洗浄する洗浄ステップをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の高リスク部位予測方法。
- ボイラ炉の炉壁に設けられた伝熱管の熱損リスクが高い部位を予測する高リスク部位予測装置であって、
前記炉壁の外面の温度を計測する温度センサと、
前記炉壁の外面の温度計測対象部位のうち異なる複数の部位の温度を任意の時刻に計測した第1温度計測値と、前記任意の時刻から一定時間が経過した後、前記複数の部位で計測した第2温度計測値との差分を夫々算出する差分算出部と、
算出した複数の前記差分から統計的処理によって閾値を設定する閾値設定部と、
前記差分が前記閾値から逸脱した前記部位を高リスク部位と判定する判定部と、
を備え、
前記閾値設定部は、
前記ボイラ炉内におけるバーナ近傍における閾値よりも、前記バーナ近傍よりも下流側における閾値の方が小さくなるように、前記閾値を設定するように構成される、
ことを特徴とする高リスク部位予測装置。 - 前記温度センサが前記炉壁の外面に配設された光ファイバであることを特徴とする請求項9に記載の高リスク部位予測装置。
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