以下、本開示の作業機を具体化した一実施形態である電子部品装着装置について、図を参照しつつ詳しく説明する。
(電子部品装着装置の構成)
図1に、本実施形態の電子部品装着装置10を示す。電子部品装着装置(以下、「装着装置」と略する場合がある)10は、1つのシステムベース12と、そのシステムベース12の上に並んで配設された2つの装着機16とを備えている。なお、以下の説明では、装着機16の並ぶ方向をX軸方向と称し、X軸方向に直角で装着装置10の載置面に水平の方向をY軸方向と称し、X軸方向及びY軸方向に直角な鉛直方向をZ軸方向と称する。
各装着機16は、主に、装着機本体20、搬送装置22、装着ヘッド移動装置(以下、「移動装置」と略す場合がある)24、装着ヘッド26、パーツカメラ27、供給装置28、表示装置29を備えている。装着機本体20は、フレーム部30と、そのフレーム部30に上架されたビーム部32とを備えている。
搬送装置22は、2つのコンベア装置40,42を備えている。それら2つのコンベア装置40,42は、互いに平行、かつ、X軸方向に延びるようにフレーム部30に配設されている。2つのコンベア装置40,42の各々は、電磁モータ(図4参照)46の作動によって、各コンベア装置40,42に支持される回路基板をX軸方向に搬送する。また、回路基板は、所定の位置において、基板保持装置(図4参照)48によって固定的に保持される。
移動装置24は、XYロボット型の移動装置である。移動装置24は、スライダ50をX軸方向にスライドさせる電磁モータ(図4参照)52と、Y軸方向にスライドさせる電磁モータ(図4参照)54とを備えている。スライダ50には、装着ヘッド26が取り付けられている。このため、装着ヘッド26は、2つの電磁モータ52,54の作動によって、フレーム部30上の任意の位置に移動する。
装着ヘッド26は、回路基板に対して電子部品P(図3参照)を装着するものである。図2は、カバーを外した状態の装着ヘッド26を示す斜視図である。装着ヘッド26は、図2に示すように、棒状の装着ユニット60を、例えば12本備えている。各装着ユニット60の先端部には、吸着ノズル62が装着されている。なお、装着ヘッド26は、装着ユニット60を1本備える構成、即ち、吸着ノズル62を1つだけ備える構成でも良い。
図3は、一組の装着ユニット60及び吸着ノズル62の拡大図を示している。なお、複数組の装着ユニット60及び吸着ノズル62は、同様の構成となっている。吸着ノズル62は、装着ユニット60の下端部に着脱可能とされており、電子部品Pのサイズ、形状等に応じて変更することが可能である。装着ユニット60の下端部には、円板部63が設けられている。円板部63は、円板形状をなし、Z軸方向、即ち、装着ユニット60の軸方向に対して垂直な平面を有する。円板部63の外周部分には、一対の爪部64が設けられている。爪部64は、基部65を介して円板部63に取り付けられ、基部65に対して回転可能となっている。基部65には、爪部64を付勢するバネなどの付勢部材(図示略)が設けられている。
吸着ノズル62は、円板部63の下面から下方に延びるように設けられている。吸着ノズル62は、円板部66と、ノズル部67とを備えている。円板部66は、吸着ノズル62の上端部に設けられている。円板部66は、装着ユニット60の円板部63と同じ大きさ及び形状となっており、円板形状の平面を円板部63に対向させて配置されている。装着ユニット60の爪部64は、円板部66の下面に係合されている。基部65の付勢部材(図示略)は、爪部64を円板部66の下面側へ付勢する。また、円板部63の下面には、円板部66との間に挟持するパッキン63Aが設けられている。パッキン63Aは、例えば、ゴムや樹脂等の柔軟な材料で形成された環状の部材である。装着ユニット60は、爪部64を円板部66に係合させ、パッキン63Aを間に挟んで円板部63,66を密着させて吸着ノズル62を取り付けられる。
また、ノズル部67は、円板部66に対してZ軸方向に移動可能に保持されている。ノズル部67には、スプリング67Aが設けられている。スプリング67Aは、ノズル部67のZ軸方向への移動にともなって収縮し、弾性力によってノズル部67をZ軸方向の下方へ付勢する。例えば、電子部品Pを吸着する吸着ノズル62の下降時において、ノズル部67の下端が電子部品Pに当接した時から、吸着ノズル62の下降が停止するまでの間、ノズル部67は、スプリング67Aの付勢力に抗して円板部66側へ押し込まれる。
また、装着ユニット60の内部には、装着ユニット60をZ軸方向に貫通するエア通路60Aが形成されている。また、吸着ノズル62の内部には、吸着ノズル62をZ軸方向に貫通するエア通路62Aが形成されている。吸着ノズル62のエア通路62Aは、装着ユニット60のエア通路60Aと連通している。エア通路60Aは、装着装置10の正負圧供給装置(図4参照)68に接続されている。
装着ユニット60は、パッキン63Aを間に挟んで円板部63,66を密着させた状態において、正負圧供給装置68からエア通路60Aへ負圧エアを供給される。これにより、円板部63と円板部66との間が気密状態となり、吸着ノズル62は、装着ユニット60に吸着される。なお、装着ヘッド26は、例えば、吸着ノズル62を交換する際には、エア通路60A内の負圧を解除し、円板部63を円板部66側に押し込むように動作することで、一対の爪部64を開いて吸着ノズル62を離脱することができる。
また、吸着ノズル62は、エア通路62A内に負圧エアを供給されることによって、下端部の開口部に電子部品Pを吸着保持する。また、吸着ノズル62は、エア通路62Aに正圧エアを供給されることによって、保持した電子部品Pを離脱する。
また、各装着ユニット60には、エア通路60A内の圧力の大きさに応じた信号を出力する圧力センサ60Bが取り付けられている。圧力センサ60Bは、エア通路60A内の圧力の大きさに応じた信号を装着装置10の制御装置100(図4参照)へ出力する。
また、複数の装着ユニット60は、装着ヘッド26のホルダ部69に保持されている。ホルダ部69は、Z軸方向に沿った略円柱形状をなしている。各装着ユニット60の上端部は、ホルダ部69の外周部に取り付けられている。複数の装着ユニット60の各々は、Z軸方向に沿った状態でホルダ部69に保持されている。複数の装着ユニット60の各々は、ホルダ部69の周方向において同一のピッチで配置されている。従って、12個の吸着ノズル62の各々は、12等配で1円周上に配置されている。
また、ホルダ部69は、ホルダ回転装置(図2参照)70の電磁モータ(図4参照)72によって、装着ユニット60を配設した角度毎に間欠的に回転する。これにより、複数の装着ユニット60の停止位置のうちの1つの停止位置である昇降ステーションには、装着ユニット60の各々が順次停止する。そして、その昇降ステーションに位置する装着ユニット60は、ユニット昇降装置(図2参照)74の電磁モータ(図4参照)76によって昇降する。これにより、吸着ノズル62に吸着保持された電子部品Pの上下方向の位置が変更される。また、各装着ユニット60は、ユニット昇降装置74の電磁モータ76の作動に応じて、Z軸方向の回転軸を中心に回転可能となっている。
また、図1に示すように、パーツカメラ27は、搬送装置22と供給装置28とのY軸方向における間に設けられている。パーツカメラ27は、フレーム部30上に設けられ、撮像方向が上方となるように設置されている。パーツカメラ27は、上方を通過する吸着ノズル62に吸着された電子部品Pを下方から撮像する。
供給装置28は、フィーダ型の供給装置であり、フレーム部30の前方側の端部に配設されている。供給装置28は、複数のテープフィーダ86を有している。複数のテープフィーダ86の各々は、テープ化部品を巻回した状態で収容している。テープ化部品は、電子部品P(図3参照)がテーピング化されたものである。そして、複数のテープフィーダ86の各々は、送出装置(図4参照)88によって、テープ化部品を送り出す。これにより、複数のテープフィーダ86の各々は、テープ化部品の送り出しによって、電子部品Pを供給位置において供給する。
また、表示装置29は、ビーム部32の前方側の端部に配設されている。表示装置29は、例えば、タッチパネルであり、液晶パネル、液晶パネルの背面側から光を照射するLED等の光源、液晶パネルの表面に貼り合わされた接触感知膜等を備えている。表示装置29は、装着装置10の制御装置100(図4参照)の制御に基づいて、液晶パネルの表示内容を変更する。これにより、装着装置10のユーザは、装着装置10の状態確認を行うことができる。また、表示装置29は、タッチパネルの操作入力に応じた信号を制御装置100に出力する。これにより、ユーザは、装着装置10に対する操作を行うことができる。
図4は、装着装置10が備える制御装置100のブロック図を示している。図4に示すように、制御装置100は、コントローラ102と、複数の駆動回路106と、記憶装置107と、画像処理回路108とを備えている。複数の駆動回路106は、上記電磁モータ46,52,54,72,76、基板保持装置48、正負圧供給装置68、送出装置88に接続されている。コントローラ102は、CPU、ROM、RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路106に接続されている。コントローラ102は、搬送装置22、移動装置24等を制御し、装着装置10の動作を統括的に制御する。本実施形態のコントローラ102は、記憶装置107に保存された制御データD1を読み込んで、回路基板に対する電子部品Pの装着作業を実行する。記憶装置107は、例えば、ハードディスクやメモリ等を備えている。また、制御データD1は、例えば、装着装置10の作動を制御する制御プログラム、生産する回路基板の種類、装着する電子部品Pの種類、電子部品Pの装着位置等のデータが設定されている。また、本実施形態の制御データD1には、電子部品Pを識別するための識別情報である部品コードや、吸着ノズル62を識別するための識別情報であるノズルコードが保存されている。
また、コントローラ102は、画像処理回路108に接続されている。画像処理回路108は、パーツカメラ27によって撮像された撮像データを処理する。コントローラ102は、画像処理回路108の処理によって検出された各種情報を取得する。コントローラ102は、例えば、画像処理回路108によってパーツカメラ27の撮像データを処理することで、吸着ノズル62に保持された電子部品Pの位置等を検出する。
また、コントローラ102は、装着ヘッド26の各装着ユニット60の圧力センサ60Bからエア通路60Aの圧力の大きさに応じた信号を入力する。コントローラ102は、圧力センサ60Bから入力した信号に基づいてエア通路60A内の圧力を検出し、吸着ノズル62に対する電子部品Pの吸着の有無を検出可能となっている。また、コントローラ102は、圧力センサ60Bの信号に基づいてエア通路60A内の圧力を検出し、装着ユニット60に対する吸着ノズル62の装着の有無を検出可能となっている。従って、コントローラ102は、圧力センサ60Bの信号に基づいて、電子部品Pや吸着ノズル62の落下を検出可能となっている。なお、電子部品Pや吸着ノズル62の落下を検出する方法は、エア通路60A内の圧力を用いた方法に限らない。例えば、コントローラ102は、エア通路60A内のエアの流量に基づいて、電子部品Pや吸着ノズル62の落下を検出しても良い。この場合、装着ユニット60に、圧力センサ60Bに代えて流量センサを取り付けても良い。また、例えば、装着ヘッド26は、電子部品Pや吸着ノズル62の落下を検出可能な赤外線センサを備えても良い。そして、コントローラ102は、赤外線センサの信号に基づいて電子部品Pや吸着ノズル62の落下を検出しても良い。
(電子部品P及び吸着ノズル62の落下時の作動)
次に、装着装置10の装着作業、及び装着作業中における電子部品Pや吸着ノズル62の落下時における作動について説明する。なお、以下の説明では、コントローラ102による制御を、単に装置名で記載する場合がある。例えば、「搬送装置22が回路基板を搬送する」という記載は、「コントローラ102が、制御データD1の制御プログラムを実行し、搬送装置22を制御することで回路基板を搬送する」ということを意味する場合がある。また、電子部品Pや吸着ノズル62の落下時の制御を実行するタイミングは、装着作業中に限らず、他のタイミング、例えば、メンテナンス時や試験運転時でも良い。
図5は、装着作業及び電子部品P等の落下時の作動を示している。コントローラ102は、例えば、装着装置10の生産ラインを管理している管理PCから回路基板を生産するための制御データD1を受信した後に生産の開始を指示する指令を受信する。コントローラ102は、生産を開始する指示を受信すると、制御データD1の制御プログラムを実行し、図5に示す処理を開始する。
まず、コントローラ102は、図5のステップ(以下、単に「S」と記載する)11において、装着作業を開始する。次に、コントローラ102は、装着作業を開始すると、電子部品P及び吸着ノズル62の落下を検出したか否かを判定する(S13)。従って、本実施形態のコントローラ102は、装着作業中において、電子部品P及び吸着ノズル62の落下を監視する。なお、コントローラ102は、電子部品P又は吸着ノズル62の一方のみの落下を監視しても良い。
図6は、装着作業の状態を模式的に示している。なお、図6に示す装着装置10の作動は一例である。また、以下の説明では、説明を分かり易くするため、図6に示すように、図6における右方向を+X軸方向、左方向を−X軸方向と称して説明する。また、図6における上方向を+Y軸方向、下方向を−Y軸方向と称して説明する。まず、図5のS11において装着作業を開始すると、搬送装置22は、コントローラ102の制御に基づいて回路基板121,122を+X軸方向へ搬送する。搬送装置22のコンベア装置40は、回路基板121を固定位置124まで搬送する。基板保持装置48(図4参照)は、固定位置124において回路基板121を固定的に保持する。同様に、搬送装置22のコンベア装置42は、回路基板122を固定位置125まで搬送する。基板保持装置48は、固定位置125において回路基板122を固定的に保持する。
また、テープフィーダ86は、送出装置88によってテープ化部品を送り出し、電子部品P(図3参照)を供給位置に供給する。装着ヘッド26は、テープフィーダ86の供給位置の上方に移動する。例えば、装着ヘッド26は、図6に示すテープフィーダ86Aの供給位置131の上方に移動し、吸着ノズル62によって電子部品Pを吸着保持する。
供給位置131で電子部品Pを吸着保持すると、装着ヘッド26は、次に電子部品Pの供給を受けるテープフィーダ86Bの供給位置133へ移動する。装着ヘッド26は、移動経路RT1に沿って−X軸方向へ移動する。装着ヘッド26は、例えば、供給位置131で電子部品Pを吸着した吸着ノズル62を上昇させつつ、移動経路RT1を移動する。装着ヘッド26は、電子部品Pを吸着した吸着ノズル62を上昇させると、ホルダ回転装置70の電磁モータ72の作動によってホルダ部69を回転させ、昇降ステーションにある吸着ノズル62を入れ替える。昇降ステーションには、供給位置133で電子部品Pを吸着する吸着ノズル62が配置される。
装着ヘッド26は、テープフィーダ86Bの供給位置133において、昇降ステーションに配置した吸着ノズル62を下降させて電子部品Pを吸着する。装着ヘッド26は、供給位置133で電子部品Pを吸着した後、電子部品Pを吸着した吸着ノズル62を上昇させつつ、回路基板121の電子部品Pを装着する装着位置135へ移動する。
装着ヘッド26は、供給位置133から装着位置135へ移動する移動経路RT2において、パーツカメラ27の上方を通過する。パーツカメラ27は、上方を通過する複数の吸着ノズル62及び複数の電子部品Pを撮像する。従って、本実施形態の装着装置10では、電子部品Pを吸着した吸着ノズル62を撮像する際に、装着ヘッド26を停止させることなく、移動させながら撮像する、所謂、オンザフライ撮像を実行する。コントローラ102は、パーツカメラ27で撮像した撮像データに基づいて、吸着ノズル62に対する電子部品Pの吸着位置のずれを検出する。コントローラ102は、装着ヘッド26を装着位置135まで移動させるまでの間に、ユニット昇降装置74を制御して装着ユニット60を回転させ吸着位置のずれを補正する。装着ヘッド26は、吸着位置を補正した後、装着位置135において吸着ノズル62を下降させ電子部品Pを回路基板121に装着する。
回路基板121に電子部品Pを装着した後、装着ヘッド26は、次に電子部品Pを装着する回路基板122の装着位置137へ移動する(移動経路RT3)。装着ヘッド26は、移動経路RT3を移動する際に、装着位置135で電子部品Pを装着した吸着ノズル62を上昇させつつ移動する。装着ヘッド26は、電子部品Pを装着した吸着ノズル62を上昇させると、ホルダ回転装置70の電磁モータ72の作動によってホルダ部69を回転させ、昇降ステーションにある吸着ノズル62を入れ替える。昇降ステーションには、装着位置137で電子部品Pを装着する吸着ノズル62が配置される。そして、装着ヘッド26は、装着位置137で次の電子部品Pを装着した後、テープフィーダ86の供給位置へ移動する(移動経路RT4)。
装着ヘッド26は、上記したような作動を繰り返し実行し、回路基板121,122に対する電子部品Pの装着作業を完了させる。搬送装置22は、電子部品Pの装着作業が完了すると、回路基板121,122を下流の装置へ搬出する。
図5に戻り、コントローラ102は、電子部品P及び吸着ノズル62の落下を検出していないことに応じて(S13:NO)、S11で開始した装着作業が終了したか否かを判定する(S15)。コントローラ102は、装着作業が終了していないと判定すると(S15:NO)、S13の落下検出処理を実行する。従って、コントローラ102は、上記した装着作業中において、電子部品P及び吸着ノズル62の落下を監視する。
コントローラ102は、S15において、装着作業が終了したと判定すると(S15:YES)、図5に示す処理を終了させる。コントローラ102は、例えば、管理PCから受信した制御データD1に設定された全ての回路基板121,122に対する装着作業を終了させると(S15:YES)、図5に示す処理を終了させる。
一方で、コントローラ102は、装着作業中において、電子部品P及び吸着ノズル62の落下を検出すると(S13:YES)、S17を実行する。ここで、吸着ノズル62の先端に傷がある場合や、先端に汚れが付着している場合、電子部品Pが傾いて吸着された場合など、吸着ノズル62の先端部と電子部品Pとが密着せず、吸着ノズル62によって電子部品Pを吸着する力が低下する場合がある。その結果、吸着ノズル62から電子部品Pが落下する場合がある。一度吸着した電子部品Pが吸着ノズル62から落下した場合、吸着ノズル62は、下端部のエア通路62Aの開口が閉じた状態から開いた状態となる。正負圧供給装置68から負圧エアを供給されたとしても、エア通路60A,62A内の圧力は、負圧に維持されず、大気圧に応じて上昇する。コントローラ102は、装着ユニット60に取り付けた圧力センサ60Bの信号に基づいてエア通路60Aの圧力を検出する。例えば、コントローラ102は、電子部品Pを吸着ノズル62で吸着した後から装着するまでの間、エア通路60A内が負圧で維持されるか否かを判定する。これにより、コントローラ102は、吸着ノズル62に電子部品Pが吸着されているか否か、即ち、電子部品Pが落下したか否かを検出できる。
また、図3に示す円板部63の下面に汚れが付着した場合や、パッキン63Aが劣化した場合など、円板部63の下面と円板部66の上面とが密着せず、装着ユニット60によって吸着ノズル62を吸着する力が低下する場合がある。その結果、装着ユニット60から吸着ノズル62が落下する場合がある。上記した電子部品Pの落下と同様に、一度装着した吸着ノズル62が装着ユニット60から落下した場合、装着ユニット60は、例えば、下端部のエア通路60Aの開口から流入するエアの流量が増大する。例えば、吸着ノズル62が装着ユニット60に装着されている状態では、正負圧供給装置68は、エア通路60A内へ一定の量の負圧エアを供給する。吸着ノズル62が装着ユニット60から落下した場合、エア通路60Aの下端部の開口から大気圧に応じた空気が流入することで、エア通路60Aの圧力は上昇する。エア通路60A内の圧力は、例えば、吸着ノズル62を装着して負圧エアを供給し、エア通路62Aの開口を開放した状態、即ち、電子部品Pを吸着していない状態に比べて上昇する。このため、エア通路60A内の圧力は、例えば、吸着ノズル62の先端から電子部品Pが落下してエア通路62Aの開口が開いた状態に比べて上昇する。そこで、コントローラ102は、吸着ノズル62を装着ユニット60に装着した後、エア通路60A内の圧力が所定値以上まで上昇したか否かを判定する。この所定値は、装着ユニット60に吸着ノズル62を装着した状態のエア通路60A内の圧力と、装着ユニット60から吸着ノズル62が落下した状態のエア通路60A内の圧力との間の値である。これにより、コントローラ102は、装着ユニット60に吸着ノズル62が装着されているか否か、即ち、吸着ノズル62が落下したか否かを検出できる。
図5に戻り、コントローラ102は、装着作業中において、電子部品P及び複数の吸着ノズル62のうち、1つの部材が落下したと判定すると(S13:YES)、装着作業を停止する(S17)。コントローラ102は、S17において、テープフィーダ86やコンベア装置40,42の作動を停止する。また、コントローラ102は、移動中の装着ヘッド26を停止させる。あるいは、コントローラ102は、例えば、電子部品P等の落下物を探す作業を行うのに邪魔とならない退避位置まで装着ヘッド26を移動させて停止させる。これにより、電子部品P等が落下した際の装着装置10の状態を維持でき、落下物の位置が変更されるのを抑制できる。
コントローラ102は、S17を実行すると、S19を実行する。S19において、コントローラ102は、落下した電子部品Pや吸着ノズル62の落下範囲を推定する。上記したように、コントローラ102は、装着作業中において常に落下の監視を実行している。そこで、コントローラ102は、落下を検出した際の装着ヘッド26の作業位置、及び装着ヘッド26の移動方向に基づいて、電子部品Pや吸着ノズル62の落下範囲を推定する。
図7は、推定した落下範囲の一例を示している。以下の説明では、一例として、作業位置141で電子部品Pの落下が発生し、落下範囲143を推定する場合について説明する。コントローラ102は、例えば、装着ヘッド26を移動経路RT2上で移動させている際に、作業位置141で落下を検出する。コントローラ102は、例えば、位置145のXY座標、位置145から落下を検出するまでの時間、装着ヘッド26の移動速度V1に基づいて、作業位置141を決定する。位置145は、作業位置141に向かう直前に装着ヘッド26の移動方向を変更した位置である。制御データD1には、装着ヘッド26を移動させるための様々な位置の情報、例えば、移動を開始する位置、移動方向を変更する位置、加速を開始する位置、減速を開始する位置、停止する位置などの情報が設定されている。これにより、コントローラ102は、制御データD1に基づいて、位置145のXY座標を取得できる。
位置145から落下を検出するまでの時間は、位置145から作業位置141まで移動するのに必要な時間である。コントローラ102は、例えば、装着ヘッド26の移動方向を変更した時間、及び落下を検出した時間を記憶装置107に記憶する。そして、コントローラ102は、記憶装置107に記憶した情報に基づいて、位置145から落下を検出するまでの時間を取得する。なお、コントローラ102は、装着ヘッド26を停止させた時間、装着ヘッド26の移動を開始した時間など、様々な地点の時間を記憶装置107に記憶し、落下時の作業位置の演算に用いる。
移動速度V1は、作業位置141を+X軸方向へ移動する装着ヘッド26の移動速度である。例えば、制御データD1には、装着ヘッド26を移動させる際の目標移動速度が設定されている。これにより、コントローラ102は、制御データD1に基づいて移動速度V1を取得できる。あるいは、コントローラ102は、移動装置24の電磁モータ52(図4参照)の回転速度や電磁モータ52を駆動する駆動電流の大きさに基づいて、移動速度V1を演算しても良い。また、装着装置10は、装着ヘッド26の移動速度V1を検出可能な速度センサを備えても良い。そして、コントローラ102は、速度センサの信号に基づいて移動速度V1を取得しても良い。
コントローラ102は、例えば、位置145から作業位置141までの時間に、移動速度V1を乗算して位置145から作業位置141までの距離を演算する。装着ヘッド26は、作業位置141を通過する際、+X軸方向に沿って移動している。このため、コントローラ102は、装着ヘッド26の移動方向に基づいて、位置145のX座標に、演算した距離を加える。これにより、コントローラ102は、作業位置141のXY座標、即ち、電子部品Pの落下が発生した位置を演算する。なお、装着ヘッド26が加速して移動している場合、コントローラ102は、加速度を考慮して作業位置141までの移動距離を演算しても良く、あるいは、移動速度V1の平均値を用いて作業位置141までの移動距離を演算しても良い。
コントローラ102は、演算した作業位置141と、装着ヘッド26の移動方向に基づいて落下範囲143を推定する。作業位置141の例では、装着ヘッド26は、+X軸方向へ移動している。このため、コントローラ102は、装着ヘッド26の移動方向に基づいて、作業位置141を基準として+X軸方向に広がる落下範囲143を設定する。例えば、コントローラ102は、図7に示すように、−X軸方向側の一辺の中点を作業位置141とする長方形状の領域を落下範囲143として推定する。なお、図7に示す落下範囲143の形状は一例であり、例えば、落下範囲143の形状は、円形、楕円形、正方形などの形状でも良い。
落下範囲143のX方向の長さ、即ち、移動方向に沿った長さLは、作業位置141で吸着ノズル62から落下した電子部品Pが+X軸方向へ飛ぶ可能性がある距離である。落下を検出した際の装着ヘッド26の移動速度V1が速い場合、電子部品Pは、作業位置141からより遠くへ飛び落下している可能性がある。逆に、落下を検出した際の装着ヘッド26の移動速度V1が遅い場合、電子部品Pは、作業位置141の近くに落下している可能性がある。従って、長さLは、作業位置141における装着ヘッド26の+X軸方向への移動速度V1が速いほど長くなることが予想される。換言すれば、落下範囲143は、作業位置141における装着ヘッド26の+X軸方向への移動速度V1が速いほど、+X軸方向へより広がることが予想される。そこで、コントローラ102は、作業位置141における移動速度V1が速くなるのにともなって、落下範囲143の長さLを長くする。
従って、本実施形態のコントローラ102は、落下を検出した際の装着ヘッド26の移動速度V1が速くなるのに応じて落下範囲143の大きさを大きくする。これにより、落下を検出した際の装着ヘッド26の移動速度V1に応じた落下範囲143を推定できる。なお、コントローラ102は、移動速度V1の大きさに応じて長さLを変更せず、長さLとして固定値を用いても良い。
また、落下範囲143における移動方向に直交する方向の幅Wは、例えば、装着ヘッド26のホルダ部69の直径、即ち、装着ヘッド26における吸着ノズル62の移動可能な範囲に応じて調整することができる。例えば、幅Wは、ホルダ部69の直径が長くなればなるほど、より大きな値を用いることができる。
なお、上記した例では、作業位置141を決定し、作業位置141を基準として落下範囲143を推定したが、落下範囲143の推定方法はこれに限らない。例えば、位置145から次に移動方向を変更した位置147までの間に電子部品Pの落下を検出した場合、コントローラ102は、位置145、位置147、及び移動方向に基づいて、落下範囲149を推定しても良い。落下範囲149は、位置145から位置147を含むX軸方向へ広がる一定の領域となっている。即ち、コントローラ102は、落下を検出した正確な位置ではなく、落下を検出したタイミングの前後の装着ヘッド26の位置145,147を基準として落下範囲149を推定しても良い。この場合、位置145,147は、本開示の作業位置の一例である。
コントローラ102は、上記した落下範囲143の場合と同様に、他の作業位置において、作業位置と移動方向に基づいて落下範囲を推定することができる。例えば、図7に示す作業位置151において、装着ヘッド26は、+X軸方向及び+Y軸方向に向かって移動している。このため、コントローラ102は、例えば、−Y軸方向側の一辺の中点を作業位置151とし、+X軸方向及び+Y軸方向へ広がる、即ち、移動方向の先へ広がる長方形状の領域を落下範囲153として推定する。
また、例えば、装着ヘッド26は、上記した作業位置141を通過した後に位置147において移動方向を変更するため、作業位置141では減速中となる。一方で、装着ヘッド26は、作業位置151において、装着位置135に向かって加速している。このため、コントローラ102は、例えば、落下範囲143の長さLに比べて、落下範囲153の移動方向に沿った長さLを長くしても良い。これにより、コントローラ102は、装着ヘッド26の移動速度や加速度に応じた落下範囲143,153を推定できる。
また、コントローラ102は、電子部品Pの落下と同様に、吸着ノズル62の落下においても落下範囲を推定できる。例えば、装着ヘッド26は、回路基板122の装着位置137において全ての電子部品Pの装着を完了させると、テープフィーダ86に向かって移動する(移動経路RT4)。電子部品Pを全て装着しても、吸着ノズル62は、装着ヘッド26の装着ユニット60に装着された状態であるため、落下する可能性がある。そこで、コントローラ102は、例えば、図7に示す作業位置155で吸着ノズル62の落下を検出すると、作業位置155及び装着ヘッド26の移動方向に基づいて、落下範囲157を推定する。落下範囲157は、例えば、作業位置155から−X軸方向及び−Y軸方向へ広がる範囲となる。このようにして、コントローラ102は、装着作業中に電子部品Pや吸着ノズル62の落下を検出すると落下範囲143,153,157を推定する。
図5に戻り、コントローラ102は、S19で落下範囲(落下範囲143など)を推定すると、S21において推定した落下範囲を表示装置29(図1参照)に表示する。また、コントローラ102は、表示装置29の表示処理の他に、落下を検出したことを報知するために装着装置10のブザー(図示略)を鳴らす、あるいはランプを点灯させるなどの処理を実行しても良い。図8は、S21で表示する画面の一例として、図7に示した落下範囲153を表示した例を示している。図8に示すように、表示装置29の表示画面161には、第1表示領域163と、第2表示領域165とが設けられている。第1表示領域163には、落下範囲153が表示されている。また、第1表示領域163には、搬送装置22、パーツカメラ27、テープフィーダ86などの装着装置10の各装置が表示されている。第1表示領域163に表示する搬送装置22等は、搬送装置22等の模式図を表示したものでも良く、搬送装置22等の実物の画像を表示したものでも良い。また、第1表示領域163には、落下時の装着ヘッド26の移動経路RT2が表示されている。
第1表示領域163において、落下範囲153は、搬送装置22等や移動経路RT2と位置を合わせて表示されている。従って、落下範囲153は、装着装置10におけるどの範囲であるのかを認識可能に表示されている。このため、第1表示領域163を見たユーザは、装着装置10の各装置の位置、移動経路RT2、落下範囲153を関連付けて視覚的に確認することができる。ユーザは、第1表示領域163に表示された落下範囲153を探すことで、落下した電子部品Pを探すことができる。なお、第1表示領域163の表示態様は、一例である。例えば、第1表示領域163には、移動経路RT2を表示しなくとも良い。
さらに、上記したように、本実施形態のコントローラ102は、S17において装着装置10の作動を停止する。これにより、電子部品Pが落下した際の装着装置10の状態を維持でき、落下した電子部品Pの位置が、落下範囲153の外に変更されるのを抑制できる。このため、電子部品Pを探すのに必要な時間を短縮できる。
また、第2表示領域165には、第1表示部167と、第2表示部168とが表示されている。第1表示部167には、電子部品Pの落下を検出した旨や、第1表示領域163の落下範囲157を確認すべき旨が表示されている。これにより、電子部品Pの落下をユーザに認識させ、落下範囲157を捜索させることができる。
また、第2表示部168には、落下した電子部品Pに係わる部品情報が表示されている。例えば、第2表示部168には、部品コード、部品種、ノズルNO、スロット番号が表示されている。部品コードは、電子部品Pを識別するための識別情報である。部品種は、電子部品Pの種類名である。ノズルNOは、電子部品Pを落下させた吸着ノズル62を特定するための情報であり、例えば、ホルダ部69における吸着ノズル62の装着位置を示す番号である。スロット番号は、落下した電子部品Pを供給したテープフィーダ86を、装着装置10に装着した位置を示す情報である。コントローラ102は、制御データD1の情報に基づいて、これらの情報を取得し第2表示部168に表示する。これによれば、ユーザは、例えば、部品コードや部品種の内容を確認することで、どのような種類の部品が落下したのかを把握できる。これにより、落下範囲153から見つけ出した電子部品Pが落下した電子部品Pであるかどうかを確認する時間を短縮できる。
また、ユーザは、例えば、ノズルNOを確認することで、どの吸着ノズル62が電子部品Pを落下させたのかを把握できる。ユーザは、例えば、落下させた吸着ノズル62の状態を確認し、吸着ノズル62の交換や洗浄を実行することで、落下の再発を抑制できる。
また、ユーザは、例えば、スロット番号を確認することで、どのテープフィーダ86から供給された電子部品Pが落下したのかを把握できる。ユーザは、例えば、該当するテープフィーダ86の装着状態、テープ化部品の状態などを確認し、テープフィーダ86の交換などを実行することで、落下の再発を抑制できる。なお、コントローラ102は、吸着ノズル62の落下を検出した場合、制御データD1に基づいて第2表示部168に落下した吸着ノズル62に係わる情報を表示しても良い。例えば、コントローラ102は、吸着ノズル62を識別するためのノズルコード、吸着ノズル62の種類名、ノズルNOなどを第2表示部168に表示しても良い。
また、表示画面161には、第2表示領域165の下に確認ボタン169が表示されている。コントローラ102は、図5に示すS21を実行し表示画面161の表示処理を終了させると、図5に示す処理を終了させる。その後、例えば、ユーザは、第1表示領域163の内容を確認し、表示された落下範囲153から落下した電子部品Pを見つけ出す。ユーザは、装着装置10の状態の確認を終了すると、表示画面161の確認ボタン169を押下する。コントローラ102は、確認ボタン169の押下に応じて、停止していた回路基板121,122の装着作業を再開するとともに、装着作業中の落下監視を開始する。これにより、ユーザは、落下した電子部品Pを探し出した後、装着作業を再開させることができる。
(電子部品Pの供給時の落下検出)
上記した例では、コントローラ102は、図5のS13において、エア通路60Aの圧力の上昇を一度検出すると、電子部品Pや吸着ノズル62が落下したと判定したが(S13:YES)、他の方法で落下を判定しても良い。コントローラ102は、吸着ノズル62の位置と、エア通路60Aの圧力とに基づいて電子部品Pの落下を判定しても良い。
詳述すると、図9〜図11は、例えば、図6に示すテープフィーダ86Aの供給位置131から電子部品Pを吸着する状態を示している。図9に示すように、吸着ノズル62は、まず、テープフィーダ86Aの供給位置131に配置されたテープ171内の電子部品Pに向かって下降する。例えば、ノズル部67は、吸着ノズル62の下降にともなって、先端部を電子部品Pの上面に接触させる。その後、ノズル部67は、吸着ノズル62の下降に応じて、スプリング67Aの弾性力に抗して円板部66側へ押し込まれる。また、本実施形態の吸着ノズル62には、ノズル部67の押し込み量が一定量以上になると、エア通路62A内と外部とを連通する空気抜けの穴62B(図3参照)が形成されている。このため、一定量だけノズル部67が押し込まれると、穴62Bは、外部と連通し外気をエア通路62A内に流入させる。エア通路62A内の圧力は、負圧から上昇する。コントローラ102は、エア通路62A内の圧力の上昇を検出すると、吸着ノズル62の下降を停止する。これにより、コントローラ102は、電子部品Pに対して吸着ノズル62を一定の下降範囲で停止させることができる。
コントローラ102は、吸着ノズル62の下降を停止すると、吸着ノズル62を上昇させる。吸着ノズル62を上昇させると、ノズル部67は、スプリング67Aの弾性力によって下方へ付勢され、吸着ノズル62の上昇に対して相対的に下降する。吸着ノズル62は、ノズル部67の下降にともなって空気抜けの穴62Bを閉じ、ノズル部67の先端に電子部品Pを吸着する。図10に示すように、電子部品Pは、吸着ノズル62に吸着され、吸着ノズル62とともに上昇する。電子部品Pは、図9に示す吸着ノズル62で電子部品Pを吸着した位置である吸着位置173から所定距離Hだけ上昇した第1位置175(図10参照)まで上昇する。電子部品Pは、テープ171から持ち上げられ浮いた状態となる。電子部品Pは、吸着ノズル62の上昇にともなってさらに上昇し、図11に示す第2位置177まで上昇する。第2位置177は、例えば、吸着ノズル62を最も上昇させた位置である。装着ヘッド26は、図6に示す移動経路RT1に沿って移動しながら、供給位置131で電子部品Pを吸着した吸着ノズル62を上昇させる。
なお、吸着位置173と第1位置175との間の所定距離Hは、例えば、電子部品Pを持ち上げて、電子部品Pとテープ171とを引き離すのに必要な距離である。従って、所定距離Hは、テープ171の構造や、電子部品Pの形状等に応じて適宜変更される。また、第2位置177は、吸着ノズル62を最も上昇させた位置に限らず、吸着ノズル62を最も上昇させた位置と第1位置175との間の他の位置でも良い。
ここで、図9に示す吸着位置173では、例えば、ノズル部67の先端は、上下方向において、テープ171の電子部品Pを収容する収容部の底部171Aとの間に、電子部品Pを挟み込んでいる。ノズル部67の先端の開口部は、電子部品Pによって閉じられている。このため、空気抜けの穴62Bを閉じられると、エア通路60A,62A内は、負圧となる。換言すれば、吸着位置173では、テープフィーダ86Aの供給位置131に電子部品Pが配置されていれば、ノズル部67の開口部が閉じられ、正常に吸着できているか否かに係わらず、エア通路60A,62A内が負圧となる。従って、吸着位置173におけるエア通路60A内の圧力を、吸着を正常にできているか否かの判定に用いることは難しい。
一方で、吸着位置173から所定距離Hだけ上昇した第1位置175(図10参照)では、正常に吸着した場合、電子部品Pは、テープ171の底部171Aから浮いた状態となる。ノズル部67の開口が電子部品Pによって閉じられ、エア通路60A内は負圧となる。しかしながら、電子部品Pを吸着できなかった場合、あるいは一度吸着した電子部品Pが落下した場合、ノズル部67の開口が開いた状態となり、エア通路60A内は負圧から上昇する。従って、コントローラ102は、第1位置175におけるエア通路60Aの圧力に基づいて、吸着の有無を判定できる。
また、第1位置175からさらに上昇した第2位置177(図11参照)では、第1位置175と同様に、正常に吸着された場合、エア通路60A内は負圧で維持される。電子部品Pを吸着できなかった場合など、エア通路60A内は負圧から上昇する。そして、コントローラ102は、第1位置175におけるエア通路60Aの圧力と、第2位置177におけるエア通路60Aの圧力に基づいて、電子部品Pがどのような状態となったかを判定することが可能となる。
図12は、第1位置175と第2位置177の吸着状態と、その判定結果を示す図である。図12に示すケース1では、例えば、第1位置175及び第2位置177においてエア通路60Aの圧力は、大気圧となる。この場合、コントローラ102は、エア通路60A内の圧力に基づいて、第1位置175及び第2位置177の両方で電子部品Pを吸着できていなかったこと、即ち、そもそも電子部品Pを吸着できていなかったことを検出できる。従って、コントローラ102は、例えば、図5に示すS19やS21の処理に代えて、吸着に失敗した電子部品Pが供給位置131に残されている旨の警告表示や、吸着に失敗したテープフィーダ86Aのスロット番号の表示を表示装置29にしても良い。これにより、ユーザは、吸着に失敗した電子部品Pの回収や、テープフィーダ86Aの状態確認など、適切な対応を実行できる。
また、ケース2では、例えば、第1位置175においてエア通路60Aの圧力は、負圧となり、第2位置177においてエア通路60Aの圧力は、大気圧となる。この場合、コントローラ102は、第1位置175では電子部品Pを吸着できていたが、第2位置177では電子部品Pを吸着できていなかったこと、即ち、吸着ノズル62の上昇中に電子部品Pが落下したことを検出できる。従って、コントローラ102は、上記した例と同様に、例えば、テープフィーダ86Aの供給位置131からテープフィーダ86Bの供給位置133の間の位置に落下範囲を表示しても良い。
また、ケース3では、例えば、第1位置175においてエア通路60Aの圧力は、大気圧となり、第2位置177においてエア通路60Aの圧力は、負圧となる。この場合、コントローラ102は、第1位置175では電子部品Pを吸着できていなかったにも係わらず、第2位置177ではノズル部67の開口を閉じられていたことを検出する。従って、異常な吸着が発生している可能性がある。例えば、電子部品P以外の埃などでノズル部67の開口を閉じられた可能性がある。あるいは、第1位置175で吸着できなかった電子部品Pが、吸着ノズル62の上昇にともなってノズル部67に吸い寄せられて浮き上がり、傾いて吸着されている可能性がある。このため、コントローラ102は、例えば、図5に示すS19やS21の処理に代えて、吸着異常が発生した旨の警告表示や、吸着異常が発生した吸着ノズル62のノズルNOの表示を表示装置29にしても良い。これにより、ユーザは、吸着ノズル62の状態確認や、吸着ノズル62の清掃など、適切な対応を実行できる。
また、ケース4では、例えば、第1位置175及び第2位置177の両方においてエア通路60Aの圧力は、負圧となる。この場合、コントローラ102は、吸着ノズル62によって電子部品Pを正常に吸着できたことを検出できる。このようにして、コントローラ102は、第1位置175、第2位置177、及びエア通路60Aの圧力を用いて、ケース1〜ケース4の場合分けにより適切な対応を実行できる。なお、上記した第1位置175、第2位置177の落下判定は、エア通路60A内の圧力に基づいて判定する方法に限らず、エア通路60A内のエアの流量に基づいて判定する方法でも良い。
(ホルダ部69の回転を考慮した落下範囲の推定)
また、上記した図7に示す例では、装着ヘッド26の直線移動のみを考慮して落下範囲143,153,157を推定した。本実施形態の装着ヘッド26は、上記したようにホルダ部69を回転させ、使用する吸着ノズル62を変更する。このため、コントローラ102は、落下時のホルダ部69の回転方向や回転速度を考慮して落下範囲を推定しても良い。
図13は、ホルダ部69の回転を考慮して推定した落下範囲を示している。なお、コントローラ102は、吸着ノズル62の落下を検出した場合の処理を、電子部品Pの落下を検出した場合と同様に実行できる。このため、以下の説明では、電子部品Pの落下を検出した場合について説明する。また、図13には、複数の吸着ノズル62のうち、電子部品Pを落下させた吸着ノズル62のみを図示し、他の吸着ノズル62の図示を省略している。
例えば、コントローラ102は、テープフィーダ86Aの供給位置131からテープフィーダ86Bの供給位置133へ装着ヘッド26を移動させる移動経路RT1において、電子部品Pの落下を検出する。移動経路RT1において、装着ヘッド26は、供給位置131で電子部品Pを吸着した吸着ノズル62を上昇させつつ移動する。装着ヘッド26は、図13における時計回り方向へホルダ部69を回転させる。装着ヘッド26は、回転中の吸着ノズル62が作業位置181となった際に、吸着ノズル62から電子部品Pを落下させる。
この場合、コントローラ102は、例えば、図13に示すように、作業位置181を基準として扇型に広がる落下範囲183を推定する。コントローラ102は、例えば、ホルダ部69の回転速度V2や、回転を開始してから落下を検出するまでの時間に基づいて、落下時の吸着ノズル62の回転位置を演算する。コントローラ102は、演算した回転位置を作業位置181として設定する。なお、作業位置181は、ホルダ部69の中心の位置でも良い。コントローラ102は、演算した回転位置とホルダ部69の中心とを結ぶ直線を落下範囲183の第1境界線183Aとして設定する。コントローラ102は、例えば、落下時のホルダ部69の回転速度V2に応じて第1境界線183Aの長さを変更しても良い。例えば、コントローラ102は、回転速度V2が速い場合、第1境界線183Aの長さをより長くしても良い。
また、コントローラ102は、作業位置181を中心に回転方向の先に向かって所定角度だけ第1境界線183Aを回転させた線を第2境界線183Bとして設定する。この回転させる所定角度は、落下時のホルダ部69の回転速度V2に応じて変更しても良い。例えば、コントローラ102は、回転速度V2が速い場合、所定角度をより大きくしても良い。コントローラ102は、第1境界線183Aと第2境界線183Bの先端を結ぶ曲線を設定し、半径が第1境界線183Aとなる扇形の領域を落下範囲183として設定する。これにより、コントローラ102は、ホルダ部69の回転方向や回転速度V2に応じて、落下範囲183を設定することができる。
ここで、ホルダ部69を回転させて吸着ノズル62を入れ替えて使用する構成では、ホルダ部69を回転させた際に、電子部品Pが吸着ノズル62から落下する虞がある。そこで、コントローラ102は、電子部品Pの落下に応じて、吸着ノズル62の作業位置181及びホルダ部69の回転方向に基づいて落下範囲183を推定し、推定した落下範囲183を報知(表示など)する。これにより、ホルダ部69が回転する場合であっても、回転方向に応じた落下範囲183を報知できる。
同様に、装着ヘッド26は、回路基板121の装着位置135から回路基板122の装着位置137へ移動する場合にもホルダ部69を回転させ、使用する吸着ノズル62を変更する。例えば、装着ヘッド26は、図13における反時計回り方向へとホルダ部69を回転させる。このような回転方向が反対となる場合であっても、図13に示すように、コントローラ102は、上記した推定処理を実行することで、ホルダ部69の回転方向や回転速度V2に応じて落下範囲183を設定することが可能となる。なお、コントローラ102は、作業位置181と回転方向のみで落下範囲183を推定しても良い。例えば、コントローラ102は、予め大きさや回転方向に対する向きを設定された扇型の落下範囲183を、作業位置181を中心に設定しても良い。この場合、コントローラ102は、回転方向に対する落下範囲183の向きのみを確認し、回転速度V2に応じた変更をせず、落下範囲183を設定できる。
因みに、テープフィーダ86は、部品供給装置の一例である。コントローラ102は、制御装置の一例である。電子部品Pは、部品の一例である。落下範囲143,149,153,157,183は、部品落下範囲及びノズル落下範囲の一例である。
以上、上記した本実施形態では、以下の効果を奏する。
本実施形態のコントローラ102では、電子部品Pの落下を検出すると(S13:YES)、落下を検出した際の装着ヘッド26の作業位置141及び装着ヘッド26の移動方向に基づいて、電子部品Pの落下範囲143を推定する(S19)。コントローラ102は、推定した落下範囲143を表示画面161に表示する(S21)。
ここで、装着装置10内に電子部品Pや吸着ノズル62が落下した場合、落下物をそのまま放置すると、装置の故障や生産の停止などの不具合を発生させる虞がある。その一方で、作業者などのユーザは、テープフィーダ86のテープ化部品の補給や、他の装置のメンテナンスなどを行う必要があり、常に装着装置10の前に立ち装着作業を監視することは難しい。このため、ユーザは、電子部品Pの落下が発生した後にアラームなどで気付いて装着装置10の所まで移動し、電子部品P等を探すこととなる。電子部品Pや吸着ノズル62は、小さな部品であるため、装着ヘッド26の作業範囲が広く、落下の可能性がある範囲が広くなると、落下した部品を探すのに必要な時間が長くなる。その結果、装着装置10を停止させて装着作業を停止する時間が長くなってしまう。
これに対し、本実施形態のコントローラ102は、電子部品Pや吸着ノズル62の落下に応じて、装着ヘッド26の作業位置141及び移動方向に基づいて落下範囲143を推定し、推定した落下範囲143を表示装置29の表示画面161に表示する。これにより、1つの装着ヘッド26の作業領域内において電子部品Pや吸着ノズル62がどのあたりに落下したのかをユーザに認識させることができる。ユーザは、装着ヘッド26の可動範囲内をすべて探す必要がなくなり、落下した電子部品P等を探すのに必要な時間を短縮できる。その結果、装着装置10の停止時間を短くして生産効率を向上させることができる。
なお、コントローラ102は、図4に示すように、落下検出部191と、落下範囲推定部192と、報知部193と、停止部194と、を有している。落下検出部191等は、例えば、コントローラ102のCPUで制御データD1の制御プログラムを実行することで実現される処理モジュールである。なお、落下検出部191等を、処理モジュールなどのソフトウェアで構成せず、処理回路などのハードウェアで構成しても良い。また、落下検出部191等を、ソフトウェアとハードウェアとを組み合わせて構成しても良い。落下検出部191は、電子部品Pや吸着ノズル62の落下を検出する機能部である。落下範囲推定部192は、落下を検出した際の装着ヘッド26の作業位置(作業位置141など)及び装着ヘッド26の移動方向に基づいて、電子部品Pや吸着ノズル62の落下範囲(落下範囲143など)を推定する機能部である。また、報知部193は、落下範囲を表示装置29に表示する機能部である。停止部194は、落下の検出に応じて装着装置10の作業を停止する機能部である。因みに、落下検出部191により実行される工程(S13)は、落下検出工程の一例である。落下範囲推定部192により実行される工程(S19)は、落下範囲推定工程の一例である。報知部193により実行される工程(S21)は、報知工程の一例である。
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
例えば、本開示における部品は、電子部品Pに限らず、吸着ノズル62に吸着可能な様々な部品を採用できる。
また、本開示の部品供給装置は、テープフィーダ86に限らず、吸着ノズル62に吸着可能な部品を供給する様々な供給装置を採用できる。例えば、部品供給装置は、電子部品Pをトレイの上に配置したトレイ型の供給装置でも良い。
また、コントローラ102は、落下範囲143を装着装置10の表示装置29に表示したが、別の装置、例えば、生産ラインを管理する管理パソコンの表示画面に落下範囲143を表示させても良い。
また、落下範囲143を報知する方法は、表示する方法に限らず、例えば、落下範囲143のXY座標の位置や、落下範囲143の近くの装置名を音声で報知する方法でも良い。
また、装着装置10は、複数の装着ヘッド26を備えても良い。この場合、コントローラ102は、複数の装着ヘッド26の各々について、落下範囲143を推定及び報知しても良い。
また、コントローラ102は、落下を検出した際の装着ヘッド26の移動速度V1に応じて落下範囲143の大きさを変更しなくとも良い。
また、コントローラ102は、電子部品Pと吸着ノズル62の両方の落下範囲の推定を実行したが、どちらか一方のみの落下範囲の推定を実行する構成でも良い。
また、コントローラ102は、落下の検出に応じて装着装置10の作業を停止しなくとも良い。
また、コントローラ102は、部品情報を表示装置29に表示しなくとも良い。
また、コントローラ102は、図9〜図12に示す電子部品Pの供給時の落下検出を実行しなくとも良い。
また、コントローラ102は、図13に示すホルダ部69の回転を考慮した落下範囲183の推定を実行しなくとも良い。
また、本開示における作業機としては、回路基板121,122に対して電子部品Pの装着作業を行う電子部品装着装置10に限らず、各種の部品の組み立てや部品の整列など、様々な作業を行う作業機を採用できる。