本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、実装システム10の一例を表す概略説明図である。図2は、実装ヘッド22の構成を表す説明図である。図3は、実装装置11の構成を表すブロック図である。実装システム10は、例えば、部品Pを基板Sに実装する処理を実行するシステムである。この実装システム10は、実装装置11と、管理コンピュータ50とを備えている。実装システム10は、部品Pを基板Sに実装する実装処理を実施する複数の実装装置11が上流から下流に配置されている。図1では、説明の便宜のため実装装置11を1台のみ示している。また、本実施形態において、左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)は、図1に示した通りとする。
実装装置11は、図1〜3に示すように、基板搬送ユニット12と、実装ユニット13と、部品供給ユニット14と、撮像ユニット16と、制御装置40とを備えている。基板搬送ユニット12は、基板Sの搬入、搬送、実装位置での固定、搬出を行うユニットである。基板搬送ユニット12は、図1の前後に間隔を開けて設けられ左右方向に架け渡された1対のコンベアベルトを有している。基板Sはこのコンベアベルトにより搬送される。
実装ユニット13は、部品Pを部品供給ユニット14から採取し、基板搬送ユニット12に固定された基板Sへ配置するものである。実装ユニット13は、ヘッド移動部20と、実装ヘッド22と、吸着ノズル28とを備えている。ヘッド移動部20は、ガイドレールに導かれてXY方向へ移動するスライダと、スライダを駆動するモータとを備えている。実装ヘッド22は、スライダに取り外し可能に装着されており、ヘッド移動部20によりXY方向へ移動する。実装ヘッド22の下面には、1つの吸着ノズル28が取り外し可能に装着されている。実装ヘッド22には、図2に示すように、長尺円筒状の1以上のシリンジ部材25が中心軸を中心に回転可能に且つ上下動可能に配設されている。このシリンジ部材25の下端に吸着ノズル28が取り外し可能に装着される。また、シリンジ部材25の上端には、ギア26が配設されている。実装ヘッド22は、ギア24を有するQ軸モータ23が配設されている。Q軸モータ23は、ギア24がギア26と噛み合っており、ギア26を介してシリンジ部材25を軸回転させることにより、吸着ノズル28に吸着された部品Pの角度を調整する。
吸着ノズル28は、圧力を利用して、ノズル先端に部品Pを吸着し、ノズル先端に吸着している部品Pを吸着解除する採取部材である。この吸着ノズル28は、円板状のフランジ29と、先端側に形成された管状部19とを有している(図2参照)。管状部19は、Z軸方向(上下方向)に摺動可能に吸着ノズル28の本体に配設されている。実装ヘッド22では、実装ヘッド22のY軸方向の先端側に位置する1カ所の昇降位置において、シリンジ部材25及び吸着ノズル28をZ軸方向に昇降する。なお、部品Pを採取して保持する保持部材は、ここでは吸着ノズル28として説明するが、部品Pの採取及び保持が可能であれば特に限定されず、部品Pを挟持して採取するメカニカルチャックなどとしてもよい。
実装ヘッド22は、図2に示すように、第1昇降駆動部30と、第2昇降駆動部34とを備えており、この第1昇降駆動部30や第2昇降駆動部34によってZ軸に沿って吸着ノズル28の高さを調整する。第1昇降駆動部30は、部品Pを採取する吸着ノズル28が装着されたシリンジ部材25の全体を昇降させるものである。第1昇降駆動部30は、第1リニアモータ31と、第1支持部材32とを備えている。第1リニアモータ31は、比較的大きな移動範囲A(図2参照)で第1支持部材32を上下動させる。第1支持部材32は、上下方向に形成された部材であり、第1リニアモータ31に支持されている。この第1支持部材32の下端に第2昇降駆動部34が配設されている。第1支持部材32の上端側にはシリンジ部材25に形成された円板状の水平部27と係合する第1係合部33が形成されている。第2昇降駆動部34は、シリンジ部材25のうち吸着ノズル28を昇降させるものである。第2昇降駆動部34は、第2リニアモータ35と、第2支持部材36と、第2係合部37と、検出部38とを備えている。第2リニアモータ35は、移動範囲Aに比して短い移動範囲B(図2参照)で第2支持部材36を上下動させる。第2支持部材36は、上下方向に形成された部材であり、第2リニアモータ35に支持されている。この第2支持部材36の下端に第2係合部37が形成されている。第2係合部37は、吸着ノズル28のフランジ29に係合している。第2昇降駆動部34は、第2リニアモータ35の駆動力により、第2係合部37及びフランジ29を介して直接的に吸着ノズル28を上下動させる。この第2支持部材36には、ロードセルである検出部38が配設されている。検出部38は、第2係合部37にかかる荷重を検出可能な荷重センサとして構成されている。実装ヘッド22は、第1昇降駆動部30により高速で吸着ノズル28を下降させ、第2昇降駆動部34により低速で吸着ノズル28を下降させ、検出部38での検出結果に基づき部品Pが基板Sに当接する際の駆動制御を行い、部品Pにかかる負荷を低減する。実装装置11は、高さの基準となる基準面が形成された基準部材17が配設されている。
部品供給ユニット14は、図1に示すように、複数のリールを備え、実装装置11の前側に着脱可能に取り付けられている。各リールには、テープが巻き付けられ、テープの表面には、複数の部品Pがテープの長手方向に沿って保持されている。このテープは、リールから後方に向かって巻きほどかれ、部品Pが露出した状態で、吸着ノズル28で吸着される採取位置にフィーダ部により送り出される。
撮像ユニット16は、部品Pを吸着した吸着ノズル28を側方から撮像するユニットである。この撮像ユニット16は、撮像素子と、ミラーと、画像処理部とを備えている。制御装置40は、撮像ユニット16により撮像された画像を用いて、部品Pの吸着位置のずれや部品Pの変形、破損の有無などを検出する。
制御装置40は、図3に示すように、CPU41を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶するROM42、各種データを記憶するHDD43、作業領域として用いられるRAM44、外部装置と電気信号のやり取りを行うための入出力インタフェース45などを備えており、これらはバス46を介して接続されている。この制御装置40は、基板搬送ユニット12、実装ユニット13、部品供給ユニット14、撮像ユニット16へ制御信号を出力し、実装ユニット13や部品供給ユニット14、撮像ユニット16からの信号を入力する。
管理コンピュータ50は、実装システム10の各装置の情報を管理するコンピュータである。管理コンピュータ50は、作業者が各種指令を入力するキーボード及びマウス等の入力装置52と、各種情報を表示するディスプレイ54とを備えている。
次に、こうして構成された本実施形態の実装システム10の動作、具体的には、実装装置11が部品Pを基板Sに実装する実装処理について説明する。図4は、制御装置40のCPU41により実行される実装処理ルーチンの一例を表すフローチャートである。このルーチンは、制御装置40のHDD43にプログラムとして記憶され、作業者による開始指示により実行される。
このルーチンを開始すると、制御装置40のCPU41は、まず、実装ジョブ情報を管理コンピュータ50から取得する(ステップS100)。実装ジョブ情報には、部品Pの実装順、実装対象の部品Pの種別(部品種)及び厚さ(高さ)などの大きさ、基板Sにおける部品Pの実装位置(XY座標)、部品Pを吸着する吸着ノズル28の情報などが含まれている。また、実装ジョブ情報には、実装対象の部品Pの各々に対して、後述する吸着ノズル28の接触高さH1,H2が正常か否かを判定するための高さ閾値H1ref,H2refの情報も含まれている。
次に、CPU41は、吸着ノズル28が他の物体に接触した高さを取得する接触高さ取得処理を実行する(ステップS110)。ここでは、CPU41は、接触高さ取得処理を実行することで、後述する接触高さH1,H2の高さの基準となる基準高さRを取得する。図5は、接触高さ取得処理ルーチンの一例を表すフローチャートである。このルーチンは、制御装置40のHDD43にプログラムとして記憶されている。また、図6は、接触高さを測定する一例を表す説明図である。図6(a)は基準高さRの測定の一例を表す図であり、図6(b),(c)は接触高さH1の測定の一例を表す図である。
接触高さ取得処理ルーチンを開始すると、CPU41は、まず、接触高さの測定位置まで実装ヘッド22をXY方向に移動させる(ステップS300)。ステップS110の接触高さ取得処理では基準高さRを測定するため、CPU41は測定位置である基準部材17の上方まで実装ヘッド22を移動させる。続いて、CPU41は、第1昇降駆動部30により第1支持部材32を下降させて、シリンジ部材25及び吸着ノズル28の全体を下降させる(ステップS310)。次に、CPU41は、第2昇降駆動部34により第2支持部材36を下降させ(ステップS320)、検出部38が荷重を検出したか否かを検出部38の信号に基づいて判定する(ステップS330)。検出部38が荷重を検出していないときには、CPU41は、ステップS320の処理を継続し、検出部38が荷重を検出したときには、吸着ノズル28が他の物体(ここでは基準部材17の上面)に接触したものとして、このときの接触高さを取得しRAM44に記憶して(ステップS340)、本ルーチンを終了する。ここでは、CPU41は、このときの接触高さを基準高さR(図6(a)参照)として取得しRAM44に記憶する。基準高さRは、例えば、第1リニアモータ31のエンコーダ値及び第2リニアモータ35のエンコーダ値に基づく値とする。
図4の実装処理ルーチンの説明に戻る。ステップS110で基準高さRを取得すると、CPU41は、基板Sの搬送及び固定処理を行い(ステップS120)、実装ジョブ情報に基づいて実装対象の部品種を設定する(ステップS130)。次に、CPU41は、実装対象の部品種の部品Pの吸着時における吸着ノズル28の接触高さH1を取得する接触高さ取得処理を実行する(ステップS140)。CPU41は、この処理を、図5のステップS300で部品供給ユニット14における部品Pの採取位置に実装ヘッド22を移動させる点、及び検出部38が荷重を検出したときの接触高さをステップS340において接触高さH1として取得する点以外は、上述したステップS110と同様にして行う。これにより、例えば図6(b)に示すように、フィーダ部61に送り出されたテープ62上の実装対象の部品P1に吸着ノズル28の下端が接触したときの接触高さを、接触高さH1として取得する。なお、CPU41は、第1リニアモータ31のエンコーダ値及び第2リニアモータ35のエンコーダ値に基づいて、基準高さRから吸着ノズル28の先端までの高さとして接触高さH1を測定する。
ステップS140で接触高さH1を取得すると、CPU41は、接触高さH1が高さ閾値H1refを超えているか否かを判定する接触高さ判定処理を行う(ステップS150)。高さ閾値H1refは、吸着ノズル28による吸着時の部品Pへの接触高さが正常とみなせる範囲の上限として例えば実験により予め定められた値である。高さ閾値H1refは、例えば実装対象の部品種毎に定められた値であり、各部品種の部品Pの上面の高さにマージンを持たせた値として設定されている。例えば、図6(b)に示すように、吸着ノズル28に異物が付着しておらず吸着ノズル28が実装対象の部品P1に正常に接触した場合には、ステップS140で取得した接触高さH1は高さ閾値H1ref以下となる。一方、図6(c)に示すように、吸着ノズル28に異物として例えば実装対象ではない他の部品P0が付着していた場合には、接触高さH1は部品P0の厚さ分だけ大きい値になり、高さ閾値H1refを超えた値になる。このように、CPU41は、吸着ノズル28の下降時の接触高さH1が正常な接触高さよりも上方に位置するか否かにより、吸着時の異常の有無すなわち異物の有無を判定するのである。
ステップS150で接触高さH1が高さ閾値H1refを超えていないときには、CPU41は、吸着ノズル28の下端に負圧を作用させて部品Pを吸着させる(ステップS160)。これにより、接触高さ取得処理(ステップS140)で吸着ノズル28に接触した実装対象の部品Pが吸着ノズル28に吸着される。続いて、CPU41は、撮像ユニット16に吸着ノズル28を側方から撮像させ、撮像された画像を用いて吸着ノズル28に吸着された部品Pの吸着異常の有無を判定する(ステップS170)。CPU41は、例えば、吸着位置のずれや部品Pの変形、破損の有無などを判定する。
ステップS170で吸着異常がないときには、CPU41は、実装対象の部品種の部品Pの基板Sへの実装時における吸着ノズル28の接触高さH2を取得する接触高さ取得処理を実行する(ステップS180)。CPU41は、この処理を、図5のステップS300で基板Sの実装位置に実装ヘッド22を移動させる点、及び検出部38が荷重を検出したときの接触高さをステップS340において接触高さH2として取得する点以外は、上述したステップS110と同様にして行う。図7は、接触高さH2を測定する一例を表す説明図である。図7(a)は基板Sの実装位置に異物がない場合の図であり、図7(b)は基板Sの実装位置に異物Fがある場合の図である。なお、CPU41は、第1リニアモータ31のエンコーダ値及び第2リニアモータ35のエンコーダ値に基づいて、基準高さRからの吸着ノズル28先端までの高さとして接触高さH2を測定する。
ステップS230で接触高さH2を取得すると、CPU41は、接触高さH2が高さ閾値H2refを超えているか否かを判定する接触高さ判定処理を行う(ステップS190)。高さ閾値H2refは、基板Sの実装位置に部品Pを実装する際の接触高さが正常とみなせる範囲の上限として例えば実験により予め定められた値である。高さ閾値H2refは、例えば基板Sの実装位置の上面の高さ及び実装対象の部品種に応じて定められた値であり、基板Sに実装した際の各部品種の部品Pの上面の高さにマージンを持たせた値として設定されている。例えば、図7(a)に示すように、基板Sの実装位置に異物が存在せず吸着ノズル28に吸着された実装対象の部品P1が基板Sに正常に接触した場合には、ステップS180で取得した接触高さH2は高さ閾値H2ref以下となる。一方、図7(b)に示すように、基板Sに異物Fが存在している場合には、接触高さH2は異物Fの厚さ分だけ大きい値になり、高さ閾値H2refを超えた値になる。このように、CPU41は、吸着ノズル28の下降時の接触高さH2が正常な接触高さよりも上方に位置するか否かにより、実装時の異常の有無すなわち異物の有無を判定するのである。
ステップS190で接触高さH2が高さ閾値H2refを超えていないときには、CPU41は、所定の装着荷重となるように第2昇降駆動部34を制御するとともに部品Pの吸着解除を行う(ステップS200)。これにより、実装対象の部品Pが基板Sに実装される。部品Pを吸着解除すると、CPU41は、現基板の実装処理が完了したか否かを判定し(ステップS210)、完了していないときには、ステップS130以降の処理を実行する。即ち、CPU41は、次の実装対象の部品種を設定し、実装ユニット13を制御して接触高さH1,H2に基づく異常の判定を行いながら部品Pの基板Sへの配置を行う。一方、ステップS210で現基板の実装処理が完了したときには、CPU41は、実装完了した基板Sを基板搬送ユニット12に排出させ(ステップS220)、生産完了したか否かを判定する(ステップS230)。生産完了していないときには、CPU41は、ステップS120以降の処理を実行する。すなわち、CPU41は、新たな基板Sを搬送、固定し、ステップS130以降の処理を実行する。一方、ステップS230で生産完了したときには、CPU41は、そのまま本ルーチンを終了する。
一方、ステップS150で接触高さH1が高さ閾値H1refを超えているときには、CPU41は、吸着ノズル28が現在の基板Sへの実装を行った直近の実装対象(実装順序が1つ前の実装対象)があるか否かを実装ジョブ情報に基づいて判定し(ステップS240)、ある場合には直近の実装対象の部品種を現在の実装対象に設定する(ステップS250)。ここで、例えば実装対象の部品P1の接触高さH1に異常がある場合、図6(c)に示したように異物として他の部品P0が吸着ノズル28に付着している可能性がある。すなわち、基板S上に部品P0を配置したあとに部品P0が吸着ノズル28から離れない現象(いわゆる持ち帰り現象)が生じており、そのまま次の実装対象の部品P1を吸着しようとしている可能性がある。このような場合、吸着ノズル28による直近の実装対象(ここでは部品P0)の基板Sへの実装は完了していない。そこで、CPU41は、直近の実装対象(部品P0と同じ部品種)を再度実装対象に設定することで、持ち帰り現象のリカバリーを行うのである。なお、このような持ち帰り現象が起きる原因としては、例えば吸着ノズル28の先端に静電気が発生している場合などが考えられる。
次に、CPU41は、吸着ノズル28に付着している持ち帰り部品を廃棄する廃棄処理を行う(ステップS260)。具体的には、CPU41は、吸着ノズル28の下端に負圧を作用させ、実装ヘッド22を図示しない廃棄ボックス上に移動させてから負圧を解除する。そして、CPU41は、ステップS250で実装対象に設定した部品種の部品PについてステップS140と同様に接触高さH1を取得し(ステップS270)、ステップS150と同様に接触高さH1が高さ閾値H1refを超えているか否かを判定する接触高さ判定処理を行う(ステップS280)。ステップS280で接触高さH1が高さ閾値H1refを超えていないときには、CPU41はステップS160以降の処理を行う。すなわち、CPU41は、接触高さ取得処理(ステップS270)で吸着ノズル28に接触した実装対象の部品Pを吸着ノズル28に吸着させ、吸着異常の確認や接触高さH2に基づく異常判定を行いつつ吸着した部品Pを基板Sに実装する。
また、ステップS170で吸着異常があるときには、CPU41はステップS260以降の処理を実行する。すなわち、CPU41は、吸着異常のある部品Pを廃棄し、実装対象の部品Pについて吸着時の接触高さH1に基づく異常判定を再度行う。
一方、ステップS240で直近の実装対象がないとき、ステップS280で接触高さH1が高さ閾値H1refを超えているとき、又はステップS190で接触高さH2が高さ閾値H2refを超えているときには、CPU41は、作業者に異常を報知して(ステップS290)、実装処理を中断し本ルーチンを終了する。例えば、CPU41は、異物が存在する旨の画面を図示しない実装装置11の表示パネルに表示したり、警告音や異物が存在する旨の音声を出力したりする。なお、ステップS280で接触高さH1が高さ閾値H1refを超えている場合としては、例えば吸着ノズル28の先端にはんだが付着していることで持ち帰り部品PやステップS160で異常と判定された部品P等が離れず廃棄できなかった場合が考えられる。あるいは、吸着ノズル28に部品以外の異物が付着している場合が考えられる。また、ステップS190で接触高さH2が高さ閾値H2refを超えている場合には、基板Sに異物が付着していることが考えられる。これらのような場合には実装処理を継続せず作業者が吸着ノズル28や基板Sの状態を確認することが望ましいため、実装処理を中止して異常を報知するのである。
なお、持ち帰り現象のリカバリー(ステップS240〜S280)を行った場合でも、実際には持ち帰り現象が生じておらず吸着ノズル28の先端に異物が付着している場合もある。このような場合でも、ステップS170又はステップS280の少なくとも一方において、CPU41は異常を検出することができる。また、異物が実装対象の部品Pの形状に近いことでステップS170又はステップS280で異常が検出できない場合でも、持ち帰り現象ではない場合には直近の実装対象は基板Sに実装済みであり、リカバリーにより実装済みの部品Pと同じ実装位置で接触高さH2を測定することになる。この場合、接触高さH2は実装済みの部品Pに異物の高さを加えた値になるため、CPU41はステップS190で異常を検出することができる。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の吸着ノズル28が本発明の保持部材に相当し、実装ヘッド22が実装ヘッドに相当し、第1昇降駆動部30及び第2昇降駆動装置34が昇降部に相当し、検出部38が接触検出部に相当し、制御装置40が異常判定部に相当する。また、制御装置40が実装制御部に相当する。
以上説明した実施形態の実装装置11は、部品Pを吸着して保持する吸着ノズル28を有し吸着した部品Pを基板Sに実装する実装ヘッド22と、吸着ノズル28を昇降させる第1昇降駆動部30及び第2昇降駆動装置34と、吸着ノズル28が他の物体に接触したことを検出する検出部38と、を備えている。そして、この実装装置11では、制御装置40は、吸着ノズル28の下降時の正常な接触高さよりも上方において検出部38が吸着ノズル28と他の物体との接触を検出した場合に異常と判定する接触高さ判定処理を行う。これにより、吸着ノズル28の下降時の異物を検出することができる。
また、制御装置40は、吸着ノズル28が部品Pを吸着する際の吸着ノズル28の下降時の接触に関してステップS150,S200の接触高さ判定処理を行う。これにより、吸着ノズル28が部品Pを吸着する際の異物を検出することができる。また、上述した持ち帰り現象が生じているときに、吸着ノズル28が持ち帰った部品(例えば図6(c)の部品P0)と実装対象の部品(例えば図6(c)の部品P1)とが定数違いの同じ形状の部品である場合がある。この場合、ステップS170における撮像ユニット16を用いた判定では部品P0と部品P1とを区別できず、異常を検出できない場合がある。本実施形態では、このような場合でも、制御装置40がステップS150の接触高さ判定処理を行うことで、持ち帰り現象に起因する異常を検出することができる。
さらに、制御装置40は、吸着ノズル28が部品Pを吸着する際のステップS150の接触高さ判定処理において異常と判定した場合には、ステップS240〜S280の処理を行う。すなわち、制御装置40は、吸着ノズル28による直近の実装対象と同じ種別の部品Pを直近の実装対象の実装位置に実装するよう実装ヘッド22,第1昇降駆動部30及び第2昇降駆動装置34を制御する。これにより、持ち帰り現象が生じてしまい実装されなかった部品Pを基板S上に適切に実装することができる。すなわち持ち帰り現象のリカバリーを行うことができる。
さらにまた、制御装置40は、部品Pを保持した吸着ノズル28が基板Sに部品Pを実装する際の吸着ノズル28の下降時の接触に関してステップS190の接触高さ判定処理を行う。これにより、基板Sに部品Pを実装する際の異物を検出することができる。
そしてまた、検出部38は、吸着ノズル28の下降時に下方から吸着ノズル28に加わる荷重を検出する荷重センサである。これにより、吸着ノズル28に加わる荷重に基づいて、吸着ノズル28が他の物体に接触したことを適切に検出できる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、検出部38は荷重センサとしたが、吸着ノズル28が他の物体に接触したことを検出できれば、これに限られない。例えば、タッチセンサとしてもよい。あるいは、検出部38を省略し、第2リニアモータ35の負荷電流の増大に基づいて制御装置40が接触を検出してもよい。また、下降時に吸着ノズルが他の物体に接触すると吸着ノズルが備える複数の部材が相対移動するようにし、この相対移動の有無により接触を検出してもよい。図8は、この場合の変形例の実装ヘッド22Aの一例を表す部分断面図である。図9は、図8のC−C断面図である。実装ヘッド22Aは、第2昇降駆動装置34が検出部38を備えておらず、代わりに検出部70を備えている。また、吸着ノズル28Aは、管状部19に代えて管状部81,スプリング82,吸着部83を備えている点以外は、吸着ノズル28と同じ構成をしている。管状部81は、管状部19と同様に第1昇降駆動部30や第2昇降駆動装置34によって上下に昇降する。吸着部83は、スプリング82を介して管状部81に接続された円筒状の部材であり、先端(下端)に部品Pを吸着可能である。吸着部83は、内周面が管状部81の外周面に接触しており、管状部81に対して相対的に上下に摺動可能である。また、吸着部83は、上端に円筒状の遮蔽部84を有している。検出部70は、投光器71と受光器72とを備えた光学センサとして構成されている。この実装ヘッド22Aは、吸着部83の下端に他の物体が接触していない状態では、スプリング82の弾性力によって管状部81と吸着部83との相対位置が保たれており、投光器71から受光器72への光軸Lは遮蔽されない。一方、吸着ノズル28Aが下降して吸着部83の下端に他の物体が接触すると、吸着部83が管状部81に対して上方に相対移動して、光軸Lを遮蔽部84が遮蔽する。そのため、制御装置40は、受光器72が投光器71からの光軸を受光しなくなったことによって、吸着ノズル28Aが他の物体に接触したことを検出できる。このように吸着ノズルが備える複数の部材の上下の相対移動を検出する場合でも、上述した実施形態と同様に、吸着ノズルの下降時の異物を検出することができる。なお、吸着ノズルが備える複数の部材が相対移動の検出を行う検出部は、図8,9に示した検出部70の例に限られない。例えばフランジ29の下部に投光器及び受光器を取り付け、投光器からの光を遮蔽部84の上面で反射させ、受光器が反射光を受光することでフランジ29と遮蔽部84と相対移動の検出を行ってもよい。
上述した実施形態では、制御装置40は、吸着ノズル28の下降時の正常な接触高さよりも上方において検出部38が吸着ノズル28と他の物体との接触を検出した場合に異常と判定したが、これに限られない。制御装置40は、吸着ノズル28の下降時の正常な接触タイミングよりも早いタイミングで検出部38が吸着ノズル28と他の物体との接触を検出した場合に異常と判定してもよい。例えば、制御装置40は、第1昇降駆動部30及び第2昇降駆動装置34による吸着ノズル28の下降を開始してから検出部38が荷重を検出するまでの時間を下降時間として測定し、測定した時間が所定の時間閾値よりも短い場合に異常と判定してもよい。こうしても、上述した実施形態と同様に、吸着ノズルの下降時の異物を検出することができる。
上述した実施形態において、ステップS150で接触高さH1が高さ閾値H1refを超えているときには、制御装置40はステップS240〜S280の処理を行わずにステップS290で異常を報知してもよい。すなわち、持ち帰り現象のリカバリーを行わなくてもよい。ここで、持ち帰り現象が生じた場合、持ち帰り部品は一度基板S上に配置する処理を行っているため、このときに基板Sのはんだが部品によってつぶされている場合がある。このような状態の製品を作業者が望まない場合には、リカバリーを行わない方が好ましい。また、図示しない操作部を介して作業者から入力した指示に基づいて、制御装置40がリカバリーを行うか否かを切り替えるようにしてもよい。また、持ち帰り部品のリカバリーを行わない場合でも、ステップS170で吸着異常がある場合には制御装置40はステップS260以降の処理を行ってもよい。
上述した実施形態では、制御装置40は、吸着時の異物の検出(ステップS140,S150)と実装時の異物の検出(ステップS180,S190)とを行ったが、これらのいずれか一方を省略してもよい。こうしても、吸着時と実装時との少なくとも一方において吸着ノズル28の下降時の異物を検出することはできる。
上述した実施形態では、実装ヘッド22は第1昇降駆動部30と第2昇降駆動装置34との2つの昇降駆動部を備えるものとしたが、吸着ノズル28を昇降させることができればこれに限られない。例えば実装ヘッド22が備える昇降駆動部が1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
上述した実施形態では、吸着ノズル28は1つとして説明したが、1以上であればよく、例えば実装ヘッド22が複数の吸着ノズル28を備えていてもよい。この場合、ステップS240で実装対象に設定する「直近の実装対象」は、単に実装順序が1つ前の実装対象ではなく、複数の吸着ノズル28のうちステップS150で異常が判定された吸着ノズル28による直近の実装対象である。また、実装ヘッド22が複数の吸着ノズル28を備えている場合、制御装置40は接触高さ判定処理で異常が検出された吸着ノズル28以外の吸着ノズル28を用いて持ち帰り部品のリカバリーを行ってもよい。あるいは、制御装置40は接触高さ判定処理で異常が判定された吸着ノズル28を以降の処理では使用しないようにしてもよい。
上述した実施形態では、制御装置40は持ち帰り部品のリカバリーを行う場合もステップS260で部品Pを一度廃棄したが、廃棄しなくてもよい。すなわち、ステップS150で接触高さH1が高さ閾値H1refを超えている場合には、持ち帰り現象により吸着ノズル28に直近の実装対象の部品Pが吸着されているとみなして、制御装置40はステップS250を実行し、ステップS270以降の処理を実行してもよい。こうしても、持ち帰り現象のリカバリーを行うことはできる。
上述した実施形態では、基準高さRは基準部材17の上面の高さとしたが、これに限られない。例えば、吸着ノズル28の初期高さ(第1昇降駆動部30と第2昇降駆動装置34とを最大まで上昇させた時の高さなど)を基準高さRとしてもよいし、基板Sの上面の高さを基準高さRとしてもよい。
上述した実施形態では、高さ閾値H2refは予め定められた値としたが、これに限られない。例えば、制御装置40は、基板Sの上面の高さや実装対象の部品Pの厚さ(高さ)を実測して、実測した値に基づいて高さ閾値H2refを設定してもよい。例えば、制御装置40は、吸着ノズル28が部品Pを吸着しない状態で基板S上に実装ヘッド22を移動して接触高さ取得処理ルーチンを行うことで、基板Sの上面の高さを測定してもよい。また、制御装置40は、吸着ノズル28が部品Pを吸着した状態で基準部材17上に実装ヘッド22を移動して接触高さ取得処理ルーチンを行うことで、部品Pの厚さを測定してもよい。あるいは、制御装置40は、撮像ユニット16が撮像した画像に基づいて部品Pの厚さを測定してもよい。
上述した実施形態では、接触高さH2は吸着ノズル28の下端の高さとしたが、吸着ノズル28に吸着されているであろう実装対象の部品Pの下端の高さを接触高さH2としてもよい。この場合、例えば吸着ノズル28の下端の高さから実装対象の部品Pの厚さを減じた値を接触高さH2とすればよい。また、この場合の高さ閾値H2refは基板Sの実装位置の上面の高さに応じて定めておけばよい。
上述した実施形態では、CPU41は、接触高さ判定処理(ステップS150,S280)において接触高さH1が高さ閾値H1refを超えていないときに、ステップS160で部品Pを吸着したが、これに限られない。例えば、接触高さ取得処理(ステップS140,S270)のステップS320において、CPU41は第2支持部材36を下降させると共に吸着ノズル28の下端に負圧を作用させて、ステップS330での荷重の検出と同時に部品Pが吸着ノズル28に吸着されるようにしてもよい。