以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る車両用灯具システムの内部構造を説明する概略鉛直断面図である。本実施形態の車両用灯具システム200は、左右対称に形成された一対の前照灯ユニットが車両の車幅方向の左右に1つずつ配置された配光可変式前照灯システムである。左右に配置された前照灯ユニットは左右対称の構造を有する点以外は実質的に同一の構成であるため、以下では、右側の前照灯ユニット210Rの構造を説明し、左側の前照灯ユニットの説明は適宜省略する。なお、左側の前照灯ユニットの各部材について記載する場合には、説明の便宜上、各部材に対して前照灯ユニット210Rの対応する部材と同一の符号を付す。
前照灯ユニット210Rは、車両前方側に開口部を有するランプボディ212と、この開口部を覆う透光カバー214とを有する。ランプボディ212は、その車両後方側にバルブ14の交換時等に取り外すことができる着脱カバー212aを有する。ランプボディ212と透光カバー214とによって灯室216が形成されている。灯室216には、光を車両前方に照射する灯具ユニット10(車両用灯具)が収納されている。
灯具ユニット10の一部には、当該灯具ユニット10の上下左右方向の揺動中心となるピボット機構218aを有するランプブラケット218が形成されている。ランプブラケット218は、ランプボディ212の壁面に回転自在に支持されたエイミング調整ネジ220と螺合している。したがって、灯具ユニット10は、エイミング調整ネジ220の調整状態で定められた灯室216内の所定位置に固定されるとともに、その位置を基準にピボット機構218aを中心として、前傾姿勢または後傾姿勢等に姿勢変化可能である。また、灯具ユニット10の下面には、曲線道路走行時などに進行方向を照らす曲線道路用配光可変前照灯などを構成するためのスイブルアクチュエータ222の回転軸222aが固定されている。スイブルアクチュエータ222は、ユニットブラケット224に固定されている。
ユニットブラケット224には、ランプボディ212の外部に配置されたレベリングアクチュエータ226が接続されている。レベリングアクチュエータ226は、例えばロッド226aを矢印M,N方向に伸縮させるモータなどで構成されている。ロッド226aが矢印M方向に伸長した場合、灯具ユニット10は、ピボット機構218aを中心として後傾姿勢になるように揺動する。逆にロッド226aが矢印N方向に短縮した場合、灯具ユニット10は、ピボット機構218aを中心として前傾姿勢になるように揺動する。灯具ユニット10が後傾姿勢になると、光軸Oのピッチ角度、すなわち、光軸Oの上下方向の角度を上方に向けるレベリング調整ができる。また、灯具ユニット10が前傾姿勢になると、光軸Oのピッチ角度を下方に向けるレベリング調整ができる。
灯具ユニット10下方の灯室216の内壁面には、灯具ユニット10の点消灯制御や配光パターンの形成制御、灯具ユニット10の光軸調節などを実行する照射制御部228(制御部、制御装置)が配置されている。図1の場合、前照灯ユニット210Rを制御するための照射制御部228Rが配置されている。この照射制御部228Rは、スイブルアクチュエータ222、レベリングアクチュエータ226などの制御も実行する。なお、照射制御部228Rは、前照灯ユニット210Rの外に設けられてもよい。
灯具ユニット10は、エイミング調整機構を備えることができる。例えば、レベリングアクチュエータ226のロッド226aとユニットブラケット224の接続部分に、エイミング調整時の揺動中心となるエイミングピボット機構(図示せず)を配置する。また、ランプブラケット218には前述したエイミング調整ネジ220が車幅方向に間隔を空けて配置される。そして、2本のエイミング調整ネジ220を回転させることで、灯具ユニット10をエイミングピボット機構を中心に上下左右に旋回させ、光軸Oを上下左右に調整することができる。このエイミング調整は、例えば車両出荷時や車検時、前照灯ユニット210Rの交換時に行われる。そして、前照灯ユニット210Rが設計上定められた姿勢に調整され、この姿勢を基準に配光パターンの形成制御や光軸位置の調節制御が行われる。
灯具ユニット10は、回転シェード12を含むシェード機構18、光源としてのバルブ14、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17、および投影レンズ20を備える。バルブ14は、例えば、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。本実施形態では、バルブ14をハロゲンランプで構成する例を示す。リフレクタ16は、バルブ14から放射された光を反射する。そして、バルブ14からの光およびリフレクタ16で反射した光は、その一部が回転シェード12を経て投影レンズ20へと導かれる。回転シェード12は、回転軸12aを中心に回転可能な円筒形状の部材であり、軸方向に一部が切り欠かれた切欠部と、複数のシェードプレート(図示せず)とを備える。切欠部またはシェードプレートのいずれかが光軸O上に移動されて、所定の配光パターンが形成される。リフレクタ16は、その少なくとも一部が楕円球面状であり、この楕円球面は、灯具ユニット10の光軸Oを含む断面形状が楕円形状の少なくとも一部となるように設定されている。リフレクタ16の楕円球面状部分は、バルブ14の略中央に第1焦点を有し、投影レンズ20の後方焦点面上に第2焦点を有する。
投影レンズ20は、車両前後方向に延びる光軸O上に配置される。バルブ14は、投影レンズ20の後方焦点を含む焦点面である後方焦点面よりも後方側に配置される。投影レンズ20は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を、反転像として車両用灯具システム200前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。なお、灯具ユニット10の構成は特にこれに限定されず、投影レンズ20を持たない反射型の灯具ユニットなどであってもよい。
図2は、上述のように構成された前照灯ユニットの照射制御部と車両側の車両制御部との動作連携を説明する機能ブロック図である。なお、上述のように右側の前照灯ユニット210Rおよび左側の前照灯ユニット210Lの構成は基本的に同一であるため、前照灯ユニット210R側のみの説明を行い前照灯ユニット210L側の説明は省略する。
前照灯ユニット210Rの照射制御部228Rは、受信部228R1と、制御部228R2と、送信部228R3と、メモリ228R4とを有する。照射制御部228Rは、車両300に搭載された車両制御部302から得られた情報に基づいて電源回路230の制御を行い、バルブ14の点灯制御を実行する。また、照射制御部228Rは、車両制御部302から得られた情報に基づいて可変シェード制御部232、スイブル制御部234、レベリング制御部236(光軸調節部)を制御する。車両制御部302から送信された各種情報は受信部228R1によって受信され、制御部228R2によって当該情報と必要に応じてメモリ228R4に記憶されている情報とから各種制御信号が生成される。そして、送信部228R3によって当該制御信号が灯具ユニット10の電源回路230や可変シェード制御部232、スイブル制御部234、レベリング制御部236等に送信される。メモリ228R4は、例えば不揮発メモリである。
可変シェード制御部232は、回転シェード12の回転軸12aに接続されたモータ238を回転制御して、所望のシェードプレートまたは切欠部を光軸O上に移動させる。また、スイブル制御部234は、スイブルアクチュエータ222を制御して灯具ユニット10の光軸Oの角度を車幅方向(左右方向)について調整する。例えば、曲路走行や右左折走行などの旋回時に灯具ユニット10の光軸Oをこれから進行する方向に向ける。レベリング制御部236は、レベリングアクチュエータ226を制御して、灯具ユニット10の光軸Oを車両上下方向(ピッチ角度方向)について調整する。例えば、積載荷量増減時や乗車人数増減時における車両姿勢の前傾、後傾に応じて灯具ユニット10の姿勢を調整して前方照射光の到達距離を最適な距離に調整する。車両制御部302は、前照灯ユニット210Lに対しても同様の情報を提供し、前照灯ユニット210Lに設けられた照射制御部228L(制御部、制御装置)が、照射制御部228Rと同様の制御を実行する。
前照灯ユニット210L,210Rによって形成される配光パターンは、運転者によるライトスイッチ304の操作内容に応じて切り替え可能である。この場合、ライトスイッチ304の操作に応じて、照射制御部228L,228Rが可変シェード制御部232を介してモータ238を制御して灯具ユニット10により形成する配光パターンを決定する。また、前照灯ユニット210L,210Rは、ライトスイッチ304の操作によらず、車両300の状態や車両周囲の状況を各種センサで検出して最適な配光パターンを形成するように自動制御してもよい。この配光パターンの自動形成制御は、例えばライトスイッチ304によって配光パターンの自動形成制御が指示された場合に実行される。
先行車や対向車などの対象物を検出するために、車両制御部302にはステレオカメラなどのカメラ306が接続されている。カメラ306で撮影された画像フレームデータは、画像処理部308で対象物認識処理などの所定の画像処理が施され、その認識結果が車両制御部302へ提供される。また、車両制御部302は、車両300に搭載されているステアリングセンサ310、車速センサ312、ナビゲーションシステム314、加速度センサ316などからの情報も取得可能である。そして、これにより照射制御部228L,228Rは、車両300の走行状態や姿勢に応じて形成する配光パターンを選択したり、光軸Oの方向を変化させることができる。
続いて、上述の構成を備えた車両用灯具システム200によるオートレベリング制御について詳細に説明する。図3(A)および図3(B)は、車両の運動加速度ベクトルの方向と車両姿勢角度との関係を説明するための模式図である。図3(A)は、後述する車両姿勢角度θvが変化していない状態を示し、図3(B)は、車両姿勢角度θvが変化している状態を示している。また、図3(A)および図3(B)において、車両300が前進したときに生じる運動加速度ベクトルαおよび合成加速度ベクトルβを実線矢印で示し、車両300が減速あるいは後進したときに生じる運動加速度ベクトルαおよび合成加速度ベクトルβを破線矢印で示している。図4は、車両前後方向の加速度と車両上下方向の加速度の関係を表すグラフである。
たとえば、車両後部の荷室に荷物を載せたり後部座席に乗員がいる場合、車両姿勢は後傾姿勢となり、荷物が下ろされたり後部座席の乗員が下車した場合、車両姿勢は後傾姿勢の状態から前傾する。灯具ユニット10の照射方向も車両300の姿勢状態に対応して上下に変動して、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、照射制御部228L,228Rは、車両制御部302を経由して加速度センサ316の検出値を受信し、レベリング制御部236を介してレベリングアクチュエータ226を制御して光軸Oのピッチ角度を車両姿勢に応じた角度とする。このように、車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで行うオートレベリング制御を実施することで車両300の使用状況に応じて車両姿勢が変化しても前方照射の到達距離を最適に調節することができる。
加速度センサ316は、例えば互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を有する3軸加速度センサである。加速度センサ316は、センサのX軸が車両300の前後軸と、センサのY軸が車両300の左右軸と、センサのZ軸が車両300の上下軸と沿うように車両300に取り付けられている。加速度センサ316は、重力加速度ベクトルGに対する車両300の傾きを検出し、3軸方向における重力加速度ベクトルGの各軸成分の数値を出力する。すなわち、加速度センサ316は、水平面に対する路面の傾斜角度(第1角度)である路面角度θrと、路面に対する車両の傾斜角度(第2角度)である車両姿勢角度θvとが含まれる、水平面に対する車両の傾斜角度(合計角度)である合計角度θをベクトルとして検出することができる。また、加速度センサ316は、車両300の走行時、重力加速度ベクトルGと車両300の移動により生じる運動加速度ベクトルαとが合成された合成加速度ベクトルβを検出し、3軸方向における合成加速度ベクトルβの各軸成分の数値を出力する。なお、路面角度θr、車両姿勢角度θv、および合計角度θは、それぞれX軸の上下方向の角度、言い換えれば車両300のピッチ方向の角度である。また、以下の説明では加速度センサ316のY軸方向の成分、すなわち車両300のロール方向の角度は考慮しない。なお、加速度センサ316は、任意の姿勢で車両300に取り付けられてもよい。この場合、加速度センサ316から出力されるX軸、Y軸、Z軸の各成分の数値は、照射制御部228Rによって車両の前後軸、左右軸、上下軸の成分に変換される。
オートレベリング制御は、車両のピッチ方向の傾斜角度の変化にともなう車両用灯具の前方照射距離の変化を吸収して、照射光の前方到達距離を最適に保つことを目的とするものである。したがって、オートレベリング制御に必要とされる車両の傾斜角度は、車両姿勢角度θvである。すなわち、車両姿勢角度θvが変化した場合に灯具ユニット10の光軸位置を調節し、路面角度θrが変化した場合に灯具ユニット10の光軸位置を維持するように制御することが望まれる。これを実現するためには、加速度センサ316から得られる合計角度θから、車両姿勢角度θvについての情報を抽出する必要がある。
ここで、車両300は路面に対して平行に移動する。よって、運動加速度ベクトルαは、車両姿勢角度θvによらず路面に対して平行なベクトルとなる。また、図3(A)に示すように、車両300の車両姿勢角度θvが0°であった場合、理論上は加速度センサ316のX軸(あるいは車両300の前後軸)は路面に対して平行となるため、運動加速度ベクトルαは、加速度センサ316のX軸に平行なベクトルとなる。よって、車両の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際に加速度センサ316によって検出される合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、X軸に対して平行な直線となる。一方、図3(B)に示すように、車両姿勢角度θvが0°でない場合、加速度センサ316のX軸は路面に対して斜めにずれるため、運動加速度ベクトルαは、加速度センサ316のX軸に対して斜めに延びるベクトルとなる。よって、車両の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際の合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、X軸に対して傾いた直線となる。
そこで、照射制御部228Rは、受信部228R1によって加速度センサ316から車両前後方向および車両上下方向の加速度を受信する。そして、制御部228R2において車両300の加速時および減速時の少なくとも一方における、車両前後方向の加速度の時間変化量と車両上下方向の加速度の時間変化量との比率を算出する。例えば、照射制御部228Rは、図4に示すように車両前後方向の加速度を第1軸(x軸)に設定し車両上下方向の加速度を第2軸(z軸)に設定した座標に、車両の加速時および減速時の少なくとも一方における加速度センサ316の検出値を経時的にプロットする。点tA1〜tAnは、図3(A)に示す状態での時間t1〜tnにおける加速度センサ316の検出値である。点tB1〜tBnは、図3(B)に示す状態での時間t1〜tnにおける加速度センサ316の検出値である。そして、少なくとも2点から得られる直線またはベクトルの傾きを上述した比率として算出する。本実施形態では、照射制御部228Rは、プロットされた複数点tA1〜tAn,tB1〜tBnに対して最小二乗法などを用いて直線近似式A,Bを求め、当該直線近似式A,Bの傾きを比率として算出する。
車両姿勢角度θvが0°の場合、加速度センサ316の検出値から、x軸に平行な直線近似式Aが得られる。すなわち、直線近似式Aの傾きは0となる。これに対し、車両姿勢角度θvが0°でない場合、加速度センサ316の検出値から、車両姿勢角度θvに応じた傾きを有する直線近似式Bが得られる。したがって、車両300の加減速時における車両前後方向および車両上下方向の加速度の時間変化量の比率の変化を計測することで、加速度センサ316の検出値から、車両姿勢角度θvについての情報として車両姿勢角度θvの変化を知ることができる。そして、得られた車両姿勢角度θvの変化情報を利用することで、より高精度なオートレベリング制御を実現することができる。
本実施形態に係る車両用灯具システム200は、上述した比率の変化を検出することで得られる車両姿勢角度θvについての情報を利用して、次のようなオートレベリング制御を実行する。すなわち、まず、例えば車両メーカの製造工場やディーラの整備工場などで、車両300が水平面に置かれて基準状態とされる。基準状態では、車両300の運転席に1名乗車している状態、あるいは空車状態とされる。そして、工場の初期化処理装置のスイッチ操作、または照射制御部228Rと加速度センサ316とを車両制御部302を介して接続するCAN(Controller Area Network)システムの通信等により、照射制御部228Rに初期化信号が送信される。照射制御部228Rに送信された初期化信号は、受信部228R1で受信されて制御部228R2に送られる。制御部228R2は、初期化信号を受けると、受信部228R1が受信した加速度センサ316の出力値を基準傾斜角度として用いて、初期エイミング調整を実施する。また、制御部228R2は、このときの加速度センサ316の出力値を、路面角度θrの基準値(θr=0°)、車両姿勢角度θvの基準値(θv=0°)としてメモリ228R4に記録することで、これらの基準値を保持する。
車両走行中は、積載荷量や乗車人数が増減して車両姿勢角度θvが変化することは稀であるため、走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定することができる。そこで、制御部228R2は、車両走行中に合計角度θが変化した場合、光軸調節を指示する制御信号の生成を回避する。なお、制御部228R2は、車両走行中の合計角度θの変化に対して光軸位置の維持を指示する制御信号を生成し、送信部228R3からレベリング制御部236に送信するようにしてもよい。車両300が走行中であることは、例えば車速センサ312から得られる車速により判断することができる。前記「車両走行中」は、例えば車速センサ312の検出値が0を越えたときから、車速センサ312の検出値が0となるまでの間である。この「車両走行中」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
そして車両停止時に、制御部228R2は、加速度センサ316で検出された現在の合計角度θから、メモリ228R4から読み出した車両姿勢角度θvの基準値を減算して、車両停止時の路面角度θrを計算する。そして、この路面角度θrを新たな路面角度θrの基準値としてメモリ228R4に記録する。前記「車両停止時」は、例えば車速センサ312の検出値が0となった後、加速度センサ316の検出値が安定したときである。加速度センサ316の検出値が安定したときとするのは、車両300が停止してから車両姿勢が安定するまでに若干の時間を要し、車両姿勢が安定していない状態では正確な合計角度θを検出することが困難なためである。この「安定した時」は、加速度センサ316の検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときとしてもよいし、車速センサ312の検出値が0になってから所定時間経過後としてもよい。前記「車両停止時」、「所定量」、および「所定時間」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
一方、車両停止中は、車両300が移動して路面角度θrが変化することは稀であるため、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定することができる。そこで、制御部228R2は、車両停止中に合計角度θが変化した場合、加速度センサ316の検出値とメモリ228R4から読み出した路面角度θrの基準値とから得られる車両姿勢角度θvを用いて、光軸調節を指示する制御信号を生成する。具体的には、制御部228R2は、車両停止中に所定のタイミングで繰り返し車両姿勢角度θvを計算する。車両姿勢角度θvは、加速度センサ316から受信した現在の合計角度θからメモリ228R4に記録されている路面角度θrの基準値を減じて得られる。そして、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvとメモリ228R4に保持されている車両姿勢角度θvの基準値との差が所定量以上であった場合に、新たに得られた車両姿勢角度θvに基づいて制御信号を生成する。これにより、頻繁な光軸調節を回避でき、その結果、制御部228R2の制御負担を軽減することができ、またレベリングアクチュエータ226の長寿命化を図ることができる。生成された制御信号は、送信部228R3によってレベリング制御部236に送信され、制御信号に基づいた光軸調節が実行される。計算された車両姿勢角度θvは、新たな基準値としてメモリ228R4に記録される。
前記「車両停止中」は、例えば加速度センサ316の検出値が安定したときから車両発進時までであり、この「車両発進時」は、例えば車速センサ312の検出値が0を越えたときである。前記「車両停止中」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
車両の加速時および減速時の少なくとも一方、たとえば車両が発進したときあるいは停止するときの所定時間、制御部228R2は、加速度センサ316の出力値を記録する。制御部228R2は、車両上下方向の加速度を第1軸とし車両上下方向の加速度を第2軸とした座標に、記録した出力値をプロットし、最小二乗法により直線近似式を連続的、あるいは所定時間毎に算出する。そして、制御部228R2は、得られた直線近似式の傾きの変化に基づいて灯具ユニット10の光軸調節を指示する制御信号を生成し、これにより光軸位置を補正する。また、あわせてメモリ228R4に保持されている車両姿勢角度θvの基準値を補正する。例えば、制御部228R2は、得られた直線近似式の傾きと前回の計算で得られた直線近似式の傾きとを比較し、直線近似式の傾きの変化が検出された場合、当該傾きの変化に基づいて補正処理を実行する。
また、例えば、メモリ228R4に保持されている車両姿勢角度θvがp°であり、直線近似式の傾きの変化の初回計算からの積算値がq°であったとする。あるいは、前回の車両停止中における車両姿勢角度θvの変化量、すなわち車両停止時に保持していた車両姿勢角度θvと車両発進時に保持していた車両姿勢角度θvとの差がp°であり、前回の発進時に算出した直線近似式と今回の発進時に算出した直線近似式との傾きの差がq°であったとする。この場合、制御部228R2は、車両姿勢角度θvの誤差(p−q)°だけ光軸位置を調節するための制御信号を生成し、送信部228R3が当該制御信号を送信する。また、制御部228R2は、メモリ228R4に保持されている車両姿勢角度θvの基準値を(p−q)°だけ補正する。これにより、上述したように路面角度θrおよび車両姿勢角度θvの基準値を繰り返し書き換えることで加速度センサ316の検出誤差等が積み重なって、オートレベリング制御の精度が低下してしまうことを回避することができる。あるいは、オートレベリング制御の精度低下を軽減することができる。
あるいは、光軸位置および車両姿勢角度θvの基準値の補正方法は、次のようであってもよい。すなわち、車両300の加減速に起因した車両姿勢の傾きや、車両300の曲進に起因した車両姿勢の傾き等の外乱を除外できない場合、直線近似式の傾きの変化量が車両姿勢角度θvの変化量から大きくずれる可能性がある。この場合、直線近似式の傾きの変化量だけ光軸位置および車両姿勢角度θvの基準値を補正しても、実際の車両姿勢角度θvからずれてしまう。また、直線近似式の傾きが変化していることから実際の車両姿勢角度θvが保持している基準値からずれている可能性が高いため、保持している基準値を使用して光軸調節を実施しても高精度にオートレベリング制御を実施できない可能性がある。そこで、制御部228R2は、前記比率あるいは直線近似式の傾きの変化が検出された場合に、当該傾きの変化に基づく光軸位置の補正制御として、光軸位置を水平方向あるいは初期位置に近づけ、車両姿勢角度θvの基準値を0°に近づけるように補正する。これにより、灯具ユニット10の光軸位置を車両姿勢角度θvの変化に精度良く追従させることができなくなった場合でも、光軸位置を水平あるいは初期位置に近づけて運転者の視認性を確保するフェールセーフ機能を実現することができる。
なお、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvと、メモリ228R4に保持されている車両姿勢角度θvの基準値との差が所定量以上であった場合に、計算された車両姿勢角度θvを新たな基準値としてメモリ228R4に記録するようにしてもよい。同様に、制御部228R2は、計算された路面角度θrと、メモリ228R4に記録されている路面角度θrの基準値との差が所定量以上であった場合に、計算された路面角度θrを新たな基準値としてメモリ228R4に記録するようにしてもよい。これにより、路面角度θrあるいは車両姿勢角度θvの基準値が頻繁に書き換えられることを回避できる。また、制御部228R2は、車両300の発進時の合計角度θと停止時の合計角度θとが異なる場合に路面角度θrを計算してもよい。これにより、制御部228R2の制御負担を軽減することができる。
また、制御部228R2は、車両300の1回の発進から停止までの間における加減速時の加速度センサ316の検出値を記録しておき、車両停止時などに直線近似式を算出して、上述の補正処理を実行してもよい。
図5は、実施形態1に係る車両用灯具システムのオートレベリング制御のフローチャートである。図5のフローチャートではステップを意味するS(Stepの頭文字)と数字との組み合わせによって各部の処理手順を表示する。また、Sと数字との組み合わせによって表示した処理で何らかの判断処理が実行され、その判断結果が肯定的であった場合は、Y(Yesの頭文字)を付加して、例えば(S101のY)と表示し、逆にその判断結果が否定的であった場合は、N(Noの頭文字)を付加して、例えば(S101のN)と表示する。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御モードの実行指示がなされている状態において、イグニッションがオンにされた場合に照射制御部228R(制御部228R2)により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフにされた場合に終了する。
まず、制御部228R2は、車両走行中であるか判断する(S101)。車両走行中である場合(S101のY)、制御部228R2は、車両が加減速中であるか判断する(S102)。車両の加減速は、加速度センサ316の検出値、アクセルペダルやブレーキペダル(ともに図示せず)の踏み込みの有無等から検知することができる。車両が加減速中である場合(S102のY)、制御部228R2は、加速度センサ316の複数の出力値から直線近似式を算出し、得られた直線近似式の傾きと前回算出した直線近似式の傾きとを比較する(S103)。そして、制御部228R2は、直線近似式の傾きの変化を検出したか判断する(S104)。直線近似式の傾きの変化が検出された場合(S104のY)、制御部228R2は、光軸調節を指示する制御信号を生成して光軸位置を補正し、車両姿勢角度θvの基準値を補正する(S105)。その後、制御部228R2は、加速度センサ316によって検出された合計角度θが変化しても光軸調節を指示する制御信号を生成せずに、光軸調節を回避して(S106)、本ルーチンを終了する。また、制御部228R2は、車両が加減速中でない場合(S102のN)、および直線近似式の傾きの変化が検出されない場合(S104のN)も、光軸調節を回避して(S106)、本ルーチンを終了する。
車両走行中でない場合(S101のN)、制御部228R2は、車両停止時であるか判断する(S107)。車両停止時である場合(S107のY)、制御部228R2は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減じて路面角度θrを計算し(S108)、計算された路面角度θrを新たな基準値としてメモリ228R4に記録する(S109)。そして、照射制御部228Rは、光軸調節を回避して(S106)、本ルーチンを終了する。
車両停止時でない場合(S107のN)、この場合は車両停止中であることを意味するため、制御部228R2は、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減じて車両姿勢角度θvを計算する(S110)。続いて、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvと車両姿勢角度θvの基準値との差が所定量以上であるか判断する(S111)。差が所定量未満である場合(S111のN)、制御部228R2は、光軸調節を回避して(S106)、本ルーチンを終了する。差が所定量以上である場合(S111のY)、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvに基づいて光軸位置を調節する(S112)。そして、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvを基準値としてメモリ228R4に記録し(S113)、本ルーチンを終了する。
なお、左側の前照灯ユニット210Lについては、照射制御部228L(制御部228L2)が同様の制御を実行する。あるいは、照射制御部228L,228Rの一方が車両姿勢角度θvや路面角度θrを計算し、他方は計算された車両姿勢角度θvや路面角度θrを取得して光軸Oを調節する構成であってもよい。
また、車両走行中は、一般に車両300が一定速度を維持する時間は短く、大部分の時間は加減速していると推定することができる。そのため、車両300が加速または減速しているかを判断するステップ102を省略してもよい。
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具システム200は、加速度センサ316で検出される、車両前後方向および車両上下方向の加速度を導出可能な加速度を受信し、車両300の加速時および減速時の少なくとも一方における、車両前後方向の加速度の時間変化量と車両上下方向の加速度の時間変化量との比率の変化に基づいて灯具ユニット10の光軸を調節する。このように、本実施形態に係る車両用灯具システム200は、車両加減速時における車両前後方向の加速度の時間変化量と車両上下方向の加速度の時間変化量との比率の変化から車両姿勢角度θvの変化を取得するという新たな抽出方法を用いて、車両姿勢角度θvについての情報を取得している。すなわち、車両用灯具システム200は、加速度センサ316のプロット特性から車両姿勢角度θvについての情報を取得している。そのため、本実施形態に係る車両用灯具システム200によれば、加速度センサ316によって検出された合計角度θから車両姿勢角度θvについての情報を抽出する新たな技術を提供することができる。
また、本実施形態に係る車両用灯具システム200は、車両走行中に合計角度θが変化した場合に、変化した合計角度θと車両姿勢角度θvの基準値とから路面角度θrを導出して、保持している路面角度θrの基準値を書き換え、車両停止中に合計角度θが変化した場合に、変化した合計角度θと路面角度θrの基準値とから車両姿勢角度θvを導出し、保持している車両姿勢角度θvの基準値を書き換えている。そして、車両用灯具システム200は、車両300の加減速時に、上述した方法で抽出した車両姿勢角度θvについての情報を利用して、灯具ユニット10の光軸位置を補正している。そのため、加速度センサを用いたオートレベリング制御をより高精度に実施することができる。
(実施形態2)
実施形態2に係る車両用灯具システム200は、車両前後方向の加速度の時間変化量と車両上下方向の加速度の時間変化量との比率から車両姿勢角度θvを導出し、得られた車両姿勢角度θvを用いて光軸調節を実施するものである。以下、本実施形態について説明する。なお、車両用灯具システム200の主な構成は実施形態1と同様であるため、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明および図示は適宜省略する。
本実施形態に係る車両用灯具システム200は、上述した比率の変化を検出することで得られる車両姿勢角度θvについての情報を利用して、次のようなオートレベリング制御を実行する。すなわち、まず、例えば車両メーカの製造工場やディーラの整備工場などで、車両300が水平面上で走行する基準状態とされ、その状態で車両300が加速または減速させられる。そして、制御部228R2は初期化処理として、加速度センサ316から加速度を受信し、車両300の加速時および減速時の少なくとも一方における、車両前後方向の加速度の時間変化量と車両上下方向の加速度の時間変化量との比率を算出する。制御部228R2は、得られた比率を基準値としてメモリ228R4に記録する。
車両300が実際に使用されている状況において、制御部228R2は、車両300の加速時および減速時の少なくとも一方で、現在の車両における車両前後方向の加速度の時間変化量と車両上下方向の加速度の時間変化量との比率を算出する。そして、制御部228R2は、初期化処理によって予め記録された比率の基準値と現在の車両における比率とから車両姿勢角度θvを取得し、取得した車両姿勢角度θvを用いて光軸調節を実施する。
たとえば制御部228R2は、初期化処理において、車両上下方向の加速度を第1軸とし車両上下方向の加速度を第2軸とした座標上に加速度センサ316の検出値をプロットし、プロットされた複数点から基準直線近似式を求め、当該基準直線近似式の傾きを比率の基準値として算出する。また、車両の実際の使用状況において、制御部228R2は、たとえば車両が発進したときあるいは停止するときの所定時間、加速度センサ316の出力値を記録し、記録した出力値を座標上にプロットして直線近似式を求め、当該直線近似式の傾きを比率として算出する。ここで、基準直線近似式と実際の使用状況下で算出された直線近似式とがなす角度(図4におけるθAB)は、車両姿勢角度θvに対応する。そのため、2つの直線近似式の傾き、あるいは上述した比率を比較することで、車両姿勢角度θvを取得することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具システム200では、車両300が水平面にあるときの前記比率と現在の車両の前記比率とから車両姿勢角度θvを取得して、光軸調節を実施している。そのため、車両走行中に合計角度θが変化した場合に路面角度θrの基準値を書き換え、車両停止中に合計角度θが変化した場合に車両姿勢角度θvの基準値を書き換えるオートレベリング制御の場合には、基準値の書き換えの繰り返しによって調節誤差の増大を招く可能性があるが、本実施形態のオートレベリング制御の場合にはこのような調節誤差の増大を招くことなく光軸位置を調節することができる。
(実施形態3)
実施形態3に係る車両用灯具システム200は、車両加速時のセンサ出力値と車両減速時のセンサ出力値とを一組として、当該一組のセンサ出力値を用いて直線近似式を算出するものである。以下、本実施形態について説明する。なお、車両用灯具システム200の主な構成は実施形態1と同様であるため、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明および図示は適宜省略する。
図6は、実施形態3に係る車両用灯具システムのオートレベリング制御を説明するための模式図である。図6に示すように、本実施形態に係る車両用灯具システム200において、制御部228R2は、車両300の加速度について予め定められた第1加速度範囲P1(+)および第2加速度範囲P2(+)と、車両300の減速度(負の加速度)について予め定められた第1減速度範囲P1(−)および第2減速度範囲P2(−)とを、直線近似式の算出に用いるプロットの加速度範囲についての情報(以下、適宜この情報をプロット範囲情報と称する)として保持している。このプロット範囲情報は、加速度側の範囲と減速度側の範囲とを1組として構成されている。本実施形態では、プロット範囲情報は、第1加速度範囲P1(+)と第1減速度範囲P1(−)の組と、第2加速度範囲P2(+)と第2減速度範囲P2(−)の組との2組で構成されている。これらの加速度範囲および減速度範囲は、車速センサ312で検出される車速の時間変化量、あるいは加速度センサ316の検出値から得られる車両前後方向成分の大きさに基づいて設定することができる。プロット範囲情報は、例えばメモリ228R4に記録されている。
制御部228R2は、例えば、車両300の発進から停止までの間で、車両300の加速度が第1加速度範囲P1(+)または第2加速度範囲P2(+)内にあるとき、あるいは減速度が第1減速度範囲P1(−)または第2減速度範囲P2(−)内にあるとき、加速度センサ316の検出値を記録する。そして、制御部228R2は、車両上下方向の加速度を第1軸とし車両上下方向の加速度を第2軸とした座標に、記録した検出値をプロットして直線近似式を算出する。制御部228R2は、例えば車両300の走行中、第1加速度範囲P1(+)、第1減速度範囲P1(−)、第2加速度範囲P2(+)および第2減速度範囲P2(−)における加速度センサ316の検出値あるいはプロットが揃った時点で直線近似式を算出する。
そして、制御部228R2は、車両走行中の任意のタイミングで、得られた直線近似式の傾きの変化に基づいて、光軸O、および車両姿勢角度θvの基準値の補正処理を実行する。具体的には、制御部228R2は、車両姿勢角度θvの基準値と、直線近似式の傾き(車両前後方向および車両上下方向の加速度の時間変化量の比率)から導出される車両姿勢角度θvとの差である誤差成分Δθeを導出する。例えば、制御部228R2は、直線近似式の傾きの変化の初回計算からの積算値を計算して車両姿勢角度θvを導出し、この車両姿勢角度θvとメモリ228R4に保持されている車両姿勢角度θvの基準値とから誤差成分Δθeを求める。あるいは、制御部228R2は、実施形態2と同様にして、予め記録された基準直線近似式と算出した直線近似式との傾きから車両姿勢角度θvを取得し、この車両姿勢角度θvとメモリ228R4に保持されている車両姿勢角度θvの基準値とから誤差成分Δθeを求める。
そして、制御部228R2は、車両姿勢角度θvの基準値を誤差成分Δθeが小さくなるよう補正する。このとき、制御部228R2は、得られた誤差成分Δθeの絶対値が所定のしきい値θthを上回る場合に(|Δθe|>θth)、車両姿勢角度θvの基準値を補正値θcだけ補正する。また、制御部228R2は、補正値θcだけ光軸位置を調節する制御信号を生成し、これにより光軸位置を補正する。なお、制御部228R2は、車両300の停止直後等に上述した補正処理を実行してもよい。
前記「所定のしきい値θth」および前記「補正値θc」は、光軸制御の分解能、誤差成分Δθeの検出精度、あるいは、直線近似式の傾きの変化を利用した車両姿勢角度θvの検出分解能などに応じて設定される。また、所定のしきい値θthは、光軸制御に支障をきたさない誤差の範囲内に設定される。補正値θcは、例えば主な誤差要因のうち発生誤差値が最小のものにより生じる誤差に応じて設定される。このような誤差要因としては、例えば同一荷重条件における車両姿勢のばらつき、すなわちサスペンション変位のばらつき等を挙げることができる。
また、補正値θcは、所定のしきい値θthよりも小さい値に設定される。これにより、誤差成分Δθeの検出精度が低い場合でも、車両姿勢角度θvの基準値を徐々に確からしい値に近づけていくことができる。例えば、直線近似式の傾きの変化を利用した角度検出の分解能は0.04°であり、しきい値θthは0.1°に、補正値θcは0.03°にそれぞれ設定される。なお、「所定のしきい値θth」および「補正値θc」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
上述のように、プロット範囲情報は、加速度側の範囲と減速度側の範囲とを1組として構成されている。このように、加速度側の範囲と減速度側の範囲とを組み合わせることで、加速により生じる車両姿勢変化等の誤差成分と減速により生じる車両姿勢変化等の誤差成分とを打ち消し合うことができるため、より高精度に直線近似式を算出することができる。また、第1加速度範囲P1(+)および第1減速度範囲P1(−)と、第2加速度範囲P2(+)および第2減速度範囲P2(−)とはそれぞれ、例えば、加減速度の大きさ(絶対値)の範囲が等しくなるように設定される。これにより、加速により生じる車両姿勢変化等の誤差成分と減速により生じる車両姿勢変化等の誤差成分とをより打ち消し合うことができるため、さらに精度よく直線近似式を算出することができる。
本実施形態では、第1加速度範囲P1(+)および第1減速度範囲P1(−)とは、所定の緩加減速度の範囲となるように設定されている。また、第2加速度範囲P2(+)および第2減速度範囲P2(−)は、第1加速度範囲P1(+)および第1減速度範囲P1(−)と比べて加減速度が大きい、所定の急加減速度の範囲となるように設定されている。本実施形態では、プロット範囲情報を緩加減速度の範囲と急加減速度の範囲とにしているため、どちらか一方の組のみの場合に比べて、より高精度に直線近似式を算出することができる。
なお、第1加速度範囲P1(+)および第1減速度範囲P1(−)と、第2加速度範囲P2(+)および第2減速度範囲P2(−)とについて、それぞれ独立に直線近似式を算出し、それぞれの直線近似式の傾きに基づいて補正処理を実行してもよい。この場合、第1加速度範囲P1(+)および第1減速度範囲P1(−)の組と、第2加速度範囲P2(+)および第2減速度範囲P2(−)の組との計算頻度や計算精度に応じて、補正値θcの大きさを変えるなど、組により補正の重み付けを異ならせてもよい。あるいは、それぞれ独立に算出された直線近似式の傾きの平均に基づいて補正処理を実行してもよい。さらには、所定時間内に第1加速度範囲P1(+)および第1減速度範囲P1(−)の組と、第2加速度範囲P2(+)および第2減速度範囲P2(−)の組とについてプロットが揃った場合にこれらのプロットを用いて直線近似式を算出し、当該所定時間内に全ての組についてプロットが揃わなかった場合に、その時点でプロットが揃った組のプロットを用いて直線近似式を算出してもよい。
また、プロット範囲情報は、第1加速度範囲P1(+)と第1減速度範囲P1(−)の組、および第2加速度範囲P2(+)と第2減速度範囲P2(−)の組のいずれか一方のみで構成されていてもよい。例えば、緩加減速度の範囲に設定された第1加速度範囲P1(+)および第1減速度範囲P1(−)の組は、急加減速度の範囲に設定された第2加速度範囲P2(+)および第2減速度範囲P2(−)の組に比べて、車両走行中に加速度センサ316の検出値が当該範囲に含まれる頻度が高いため、補正処理の回数を増大させることができる。プロット範囲情報に含まれる加速度範囲と減速度範囲の組の数は3以上であってもよい。
また、第1加速度範囲P1(+)および第1減速度範囲P1(−)と、第2加速度範囲P2(+)および第2減速度範囲P2(−)とはそれぞれ、加減速度の大きさの範囲が等しくなるように設定されることに加えて、車速の範囲が等しくなるように設定されてもよい。これにより、加速により生じる誤差成分と減速により生じる誤差成分とをより打ち消し合うことができるため、さらに精度よく直線近似式を算出することができる。加速度範囲および減速度範囲の範囲幅、加減速度の大きさ等は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
図7は、実施形態3に係る車両用灯具システムのオートレベリング制御のフローチャートである。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御モードの実行指示がなされている状態において、イグニッションがオンにされた場合に照射制御部228R(制御部228R2)により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフにされた場合に終了する。
制御部228R2は、車両走行中であるか判断する(S201)。車両走行中である場合(S201のY)、制御部228R2は、第1加速度範囲P1(+)、第1減速度範囲P1(−)、第2加速度範囲P2(+)および第2減速度範囲P2(−)における加速度センサ316の検出値プロットが揃ったか判断する(S202)。プロットが揃っていない場合(S202のN)、制御部228R2は、光軸調節を回避して(S203)、本ルーチンを終了する。プロットが揃った場合(S202のY)、制御部228R2は、直線近似式を算出し(S204)、直線近似式の傾きから導出される車両姿勢角度θvと、メモリ228R4に記録されている車両姿勢角度θvの基準値との差である誤差成分Δθeを計算する(S205)。
制御部228R2は、誤差成分Δθeの絶対値がしきい値θthを上回るか判断する(S206)。誤差成分Δθeの絶対値がしきい値θthを上回る場合(S206のY)、制御部228R2は、車両姿勢角度θvの基準値および光軸位置を補正値θcだけ補正する(S207)。その後、制御部228R2は、加速度センサ316の検出値から得られる合計角度θの変化に対して光軸調節を回避して(S203)本ルーチンを終了する。誤差成分Δθeの絶対値がしきい値θth以下である場合(S206のN)、制御部228R2は、補正処理を実行することなく光軸調節を回避して(S203)本ルーチンを終了する。
車両走行中でない場合(S201のN)、制御部228R2は、車両停止時であるか判断する(S208)。車両停止時である場合(S208のY)、制御部228R2は、路面角度θrを計算し(S209)、計算された路面角度θrを新たな基準値として記録し(210)、光軸調節を回避して(S203)本ルーチンを終了する。車両停止時でない場合(S208のN)、制御部228R2は、車両姿勢角度θvを計算し(S211)、計算された車両姿勢角度θvと車両姿勢角度θvの基準値との差が所定量以上であるか判断する(S212)。差が所定量未満である場合(S212のN)、制御部228R2は、光軸調節を回避して(S203)本ルーチンを終了する。差が所定量以上である場合(S212のY)、制御部228R2は、計算された車両姿勢角度θvに基づいて光軸位置を調節し(S213)、計算された車両姿勢角度θvを基準値として記録して(S214)本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具システム200において、制御部228R2は、車両300の加速度が予め定められた範囲にあるときの加速度センサ316の検出値のプロットと、車両300の減速度が予め定められた範囲内にあるときの加速度センサ316の検出値のプロットとから直線近似式を算出している。そのため、加速により生じる車両姿勢変化等の誤差成分と減速により生じる車両姿勢変化等の誤差成分とを打ち消し合うことができるため、より車両姿勢角度θvに近い傾きを持った直線近似式を算出することができる。
また、制御部228R2は、予め定められた加速度範囲および減速度範囲についてプロットが得られた時点で補正処理を実行している。そのため、例えば、車両停止直後に、車両300の発進から停止までの間に記録した加速度センサ316の検出値から直線近似式を算出して補正処理を実行する制御では、補正処理後の車両停止中に行われる車両姿勢角度θvの計算および光軸調節に誤差が発生した場合、当該誤差を含んだまま車両300が走行することになり得るが、本実施形態によればそのような事態を回避することができる。
なお、各実施形態に係る車両用灯具システム200は本発明の一態様である。この車両用灯具システム200は、光軸を調節可能な灯具ユニット10と、加速度センサ316と、灯具ユニット10を制御するための照射制御部228L,228Rとを備え、照射制御部228L,228Rにより上述したオートレベリング制御を実行する。
本発明の他の態様としては、制御装置としての照射制御部228L,228Rを挙げることができる。照射制御部228L,228Rは、加速度センサ316から車両前後方向および車両上下方向の加速度を受信するための受信部228L1,228R1と、上述したオートレベリング制御を実行するための制御部228L2,228R2と、制御部228L2,228R2により生成された制御信号をレベリング制御部236に送信するための送信部228L3,228R3とを備える。車両用灯具システム200における照射制御部228は広義の制御部に相当し、照射制御部228における制御部228L2,228R2は狭義の制御部に相当する。
またさらに、本発明の他の態様としては、車両用灯具の制御方法を挙げることができる。この制御方法は、車両300の加速時および減速時の少なくとも一方における、車両前後方向の加速度の時間変化量と車両上下方向の加速度の時間変化量との比率の変化に基づいて灯具ユニット10の光軸を調節する。
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような組み合わせられ、もしくは変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。上述の各実施形態同士、および上述の各実施形態と以下の変形例との組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
上述の各実施形態において、照射制御部228がレベリング制御部236を介さずに光軸調節部としてのレベリングアクチュエータ226を制御してもよい。すなわち、照射制御部228がレベリング制御部236として機能してもよい。また、上述の各実施形態における光軸調節を指示する制御信号の生成は、車両制御部302が実施してもよい。すなわち、車両制御部302がオートレベリング制御を実行する制御装置を構成してもよい。この場合、照射制御部228は、車両制御部302からの指示に基づいてレベリングアクチュエータ226の駆動を制御する。
実施形態1においても、実施形態3と同様に、所定のしきい値θthおよび補正値θcを用いた補正処理を実行してもよい。