JP6825326B2 - 遊星ローラ式変速装置 - Google Patents
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Description
図3に示した遊星ローラ式変速装置70は、互いに同軸に配置された固定輪12及び入力軸14と、この固定輪12と入力軸14との間に配置された複数の遊星ローラ16を備えており、入力軸14が回転するときの遊星ローラ16の公転運動をキャリア18の回転として出力している(特許文献1)。
出力軸20は入力軸14に比べて回転速度が減速されており、互いに回転速度が異なっている。このため、出力軸20と入力軸14とが接触すると、接触部が摩耗したり、出力軸20に回転ムラを生じたりする。このため、出力軸20と入力軸14との間にボール72を介在させることによって、出力軸20と入力軸14とが直接接触するのを回避したものがある(特許文献2図6)。特許文献2では、ボール72が当接する出力軸20の端面を平坦な面で形成している。これによって、ボール72と出力軸20とが点接触となるので、当該接触部におけるすべり摩擦を低減することができる。
しかし、通常、入力軸14及び出力軸20では、その外径を研削加工するときに、軸心を定めるために、各軸の軸端にセンター穴74が設けられている(図4参照)。センター穴74は、軸方向に延在する所定の深さの穴と、その開口部に形成された傾斜面75とで構成されている。
図4に示すように、出力軸20と入力軸14との間に、直接、ボール72を組み込んだときには、ボール72は、入力軸14及び出力軸20の双方において、センター穴74の傾斜面75と全周にわたって線接触することになる。この状態で、出力軸20と入力軸14とが相対的に回転すると、出力軸20及び入力軸14のいずれか一方またはその両方の傾斜面75とボール72との間で、すべりが生じる。このときのすべり摩擦によって、出力軸20に回転ムラが生じる。また、すべり接触をすることによって傾斜面75やボール72が摩耗すると、遊星ローラ式変速装置70として使用できなくなってしまう。
しかし、このように栓76を挿入したり、或いは、ボールが接触する面を平坦な面にするために軸端を削ってセンター穴74を除去する等の加工を施す場合には、遊星ローラ式変速装置70の組立作業が煩雑になるとともに、製造コストが上昇する。
本発明の一実施形態(以下、「第1実施形態」という)である遊星ローラ式変速装置10について、図を用いて詳細に説明する。図1は、第1実施形態の軸方向断面における要部拡大図である。第1実施形態では、入力軸14及び出力軸20が軸方向に対向する部分の構造に特徴があり、その他の構造は、従来構造と同等である。そこで、従来構造と共通する構造については、同一の符号を付して、図3によって説明し、その後、図1によって、第1実施形態の特徴について詳細に説明する。なお、以下の説明では、回転軸線mの方向を軸方向といい、回転軸線mと直交する方向を径方向、回転軸線mの回りを周回する方向を周方向という。
遊星ローラ16は、軸方向に貫通する孔が形成された円筒形状で、軸受鋼などの高炭素鋼を焼入れ硬化処理して製作されている。外周面は研削加工によって真円形状に仕上げられている。遊星ローラ16の外周の直径寸法は、固定輪12の内周と入力軸14の外周との間の径方向寸法(半径での寸法である)よりわずかに大きい。これにより、遊星ローラ16は、固定輪12及び入力軸14に対して所定の圧接力を持って押し付けられている。遊星ローラ16と固定輪12及び入力軸14との接触面には、トラクションオイルが塗布されている。入力軸14が回転すると、トラクションオイルの剪断力によって遊星ローラ16が転動し、入力軸14の周りを公転する。このとき、遊星ローラ16の外周面と、固定輪12の内周面及び入力軸14の外周面とが転がり接触をする。
キャリアプレート22は、円板状で、ステンレス鋼で製作されている。
各駆動ピン24は、中実の円筒形状で、軸受鋼などの高炭素鋼を焼入れ硬化処理して製作されている。外周は、研削加工によって真円形状に仕上げられている。各駆動ピン24は、それぞれキャリアプレート22の中心から径方向に等しい距離だけ離れた位置で、周方向に互いに等しい間隔で、側面に対して垂直に組み込まれている。各駆動ピン24は、キャリアプレート22の軸方向の一方の側(図3ではキャリアプレート22の右側である)に突出している。
出力軸20は、フロントカバー25に組み込まれた転がり軸受26によって回転軸線mと同軸に回転支持されている。
ピン48は、高炭素鋼で製造されており、好ましくは、焼き入れ硬化処理が施されて、60HRC程度の硬さを有する。ピン48は円柱形状であって、軸方向の両端の端面40は軸方向に凸となった略球面形状である。
第1実施形態では、ピン48の端面40は球面であり、穴底a,bは平面であるので、ピン48と穴底a,bとは、おおむね回転軸線m上の一点で当接している。このため、ピン48が、出力軸20及び入力軸14に対して相対的に回転するときに、接触部の摩擦による回転トルクは極めて小さい。
このため、出力軸20と入力軸14とが互いに軸方向に接近して、ピン48が穴底a,bに当接した状態であっても、出力軸20の回転ムラを効果的に抑制することができる。また、ピン48は、焼き入れ硬化処理が施されているので、その接触部の摩耗を低減することができる。
これに対して、第1実施形態では、センター穴Aの軸方向長さh1とセンター穴Bの軸方向長さh2とを足し合わせた長さは、入力軸14が、出力軸20から離れる向きに変位する変位量に比べて格段に大きい。したがって、ピン48の軸方向の両端が、常にセンター穴A及びセンター穴Bで支持されているので、入力軸14が、出力軸20から離れる向きに変位した場合であっても、ピン48が脱落することがない。また、ピン48が容易に脱落しないので、遊星ローラ式変速装置10を組み付ける工程で、ピン48の脱落を防止して確実に組み立てることができる。
例えば、図示を省略するが、ピン48が出力軸20のセンター穴Aに圧入されている場合を例にして説明すると、次のようになる。
入力軸14に形成されたセンター穴Bの内径寸法d2は、ピン48の外径寸法d0よりわずかに大きい。このため、ピン48をセンター穴Bに手作業で容易に挿入することができるので、出力軸20と入力軸14とを容易に組み付けることができる。また、センター穴Bの軸方向の長さh2は、ピン48の突出する寸法h5より小さい。出力軸20と入力軸14とが互いに軸方向に接近した場合には、出力軸20と入力軸14とが互いに接触するより前に、穴底bがピン48と当接する。こうして、出力軸20と入力軸14との間にピン48が介在しているので、出力軸20と入力軸14とが互いに接触することがない。
なお、ピン48とセンター穴Aとのしめしろが十分大きく設定されている場合には、ピン48が位置ずれしないので、ピン48の端面40と穴底aとが当接することがない。
本発明の他の実施形態(以下、「第2実施形態」という)について、図を用いて詳細に説明する。図2は、第2実施形態の軸方向断面における要部拡大図である。第2実施形態では、入力軸14及び出力軸20のいずれか一方のセンター穴にボール52を介在させた点に特徴がある。その他の構造は、第1実施形態と同様である。そこで、第1実施形態と共通する構造については簡単に説明し、第1実施形態との相違点について詳細に説明する。
ピン50は、高炭素鋼で製造されており、好ましくは、焼き入れ硬化処理が施されて、60HRC程度の硬さを有する。ピン50は、円柱形状であって、軸方向の両端は軸線と直交する平面状である。
ピン50と穴底cとの間にボール52が挿入されている。好ましくは、ボール52は、高炭素鋼などを用いた金属製であり、焼き入れ硬化処理が施されて60HRC程度の硬さを有する。その他、ボール52の材質としては、窒化けい素や炭化けい素などのセラミックスが使用できる。ボール52の直径寸法dbは、センター穴Cの内径寸法d3よりわずかに小さい。このため、ボール52をセンター穴Cに手作業で容易に挿入することができる。
なお、センター穴Dにおいては、ピン50と穴底dとが全周にわたって接触しているので、接触部の摩擦による回転トルクは比較的大きく、ピン50と入力軸14とが相対的に回転することがない。
こうして、第2実施形態では、出力軸20と入力軸14とが互いに軸方向に接近した場合であっても、ピン50がボール52を介して穴底cに当接するので、出力軸20の回転ムラを効果的に抑制することができる。また、ピン50及びボール52は、焼き入れ硬化処理が施されているので、その接触部の摩耗を低減することができる。
また、ピン50の端面41の形状は、第1実施形態と同様に、略球面形状であってもよい。この場合には、ボール52の表面とピン50の端面41は、いずれも凸形状となっており、ボール52とピン50とが当接したときには、おおむね回転軸線m上の一点で互いに当接する。このため、ピン50が、出力軸20及び入力軸14に対して相対的に回転するときに、接触部の摩擦による回転トルクは極めて小さい。
(従来技術)70:遊星ローラ式変速装置、72:ボール、74:センター穴
Claims (6)
- 入力軸と、
前記入力軸の径方向外方で同軸に配置された固定輪と、
前記入力軸と前記固定輪との間に組み込まれ、前記入力軸の外周および前記固定輪の内周と転がり接触する複数の遊星ローラと、
複数の前記遊星ローラのそれぞれの内周に挿入された複数の駆動ピンと、
複数の前記駆動ピンを一体に支持するキャリアと、
前記入力軸と同軸で前記キャリアに固定された出力軸とを備え、
前記出力軸の前記入力軸の側の軸端には、軸方向に所定の深さまで延在する第1の穴が同軸に形成されており、
前記入力軸の前記出力軸の側の軸端には、軸方向に所定の深さまで延在する第2の穴が同軸に形成されており、
前記第1の穴と前記第2の穴とを連通するピンが組み込まれており、
前記出力軸と前記入力軸とが互いに軸方向に接近したときに、前記ピンが介在することによって、前記出力軸と前記入力軸とが互いに接触せず、
前記ピンと、前記第1の穴及び前記第2の穴のうち少なくとも一方の穴の底との間に、ボールが組み込まれていることを特徴とする遊星ローラ式変速装置。 - 前記第1の穴及び前記第2の穴は、それぞれ前記出力軸及び前記入力軸のいずれか一方の外径を研削加工をするときに軸端を支持するためのセンター穴であることを特徴とする、請求項1に記載する遊星ローラ式変速装置。
- 前記ピンの外径寸法が、前記第1の穴及び前記第2の穴の内径寸法より小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載する遊星ローラ式変速装置。
- 入力軸と、
前記入力軸の径方向外方で同軸に配置された固定輪と、
前記入力軸と前記固定輪との間に組み込まれ、前記入力軸の外周および前記固定輪の内周と転がり接触する複数の遊星ローラと、
複数の前記遊星ローラのそれぞれの内周に挿入された複数の駆動ピンと、
複数の前記駆動ピンを一体に支持するキャリアと、
前記入力軸と同軸で前記キャリアに固定された出力軸とを備え、
前記出力軸の前記入力軸の側の軸端には、軸方向に所定の深さまで延在する第1の穴が同軸に形成されており、
前記入力軸の前記出力軸の側の軸端には、軸方向に所定の深さまで延在する第2の穴が同軸に形成されており、
前記第1の穴と前記第2の穴とを連通するピンが組み込まれており、
前記出力軸と前記入力軸とが互いに軸方向に接近したときに、前記ピンが介在することによって、前記出力軸と前記入力軸とが互いに接触せず、
前記第1の穴及び前記第2の穴は、それぞれ前記出力軸及び前記入力軸のいずれか一方の外径を研削加工をするときに軸端を支持するためのセンター穴であることを特徴とする遊星ローラ式変速装置。 - 前記ピンの外径寸法が、前記第1の穴及び前記第2の穴の内径寸法より小さいことを特徴とする請求項4に記載する遊星ローラ式変速装置。
- 入力軸と、
前記入力軸の径方向外方で同軸に配置された固定輪と、
前記入力軸と前記固定輪との間に組み込まれ、前記入力軸の外周および前記固定輪の内周と転がり接触する複数の遊星ローラと、
複数の前記遊星ローラのそれぞれの内周に挿入された複数の駆動ピンと、
複数の前記駆動ピンを一体に支持するキャリアと、
前記入力軸と同軸で前記キャリアに固定された出力軸とを備え、
前記出力軸の前記入力軸の側の軸端には、軸方向に所定の深さまで延在する第1の穴が同軸に形成されており、
前記入力軸の前記出力軸の側の軸端には、軸方向に所定の深さまで延在する第2の穴が同軸に形成されており、
前記第1の穴と前記第2の穴とを連通するピンが組み込まれており、
前記出力軸と前記入力軸とが互いに軸方向に接近したときに、前記ピンが介在することによって、前記出力軸と前記入力軸とが互いに接触せず、
前記ピンの外径寸法が、前記第1の穴及び前記第2の穴の内径寸法より小さいことを特徴とする遊星ローラ式変速装置。
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