JP3698780B2 - 遊星ローラ式動力伝達装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、遊星ローラ式動力伝達装置に係り、詳しくは、キャリアを改良したものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の遊星ローラ式動力伝達装置としては、例えば図6に示すように、ハウジング21に固定された固定輪22と、固定輪22の内側に同心状に配置されて高速の入出力軸となる太陽軸23と、太陽軸23と固定輪22との間に圧接状態で介装された複数の遊星ローラ24,…と、各遊星ローラ24をそれぞれ回転自在に支持し遊星ローラ24の公転により回転するキャリア25と、太陽軸23とキャリア25との対向端面間に介装されて該両者を位置決めするボール26とを備えている。
【0003】
キャリア25は、低速の入出力軸となる軸部252と、軸部252の内端にフランジ状に取り付けられるプレート状の本体251と、本体251の円周数箇所に植設されるピン253とで構成されている。このピン253は、ケージアンドローラと呼ばれる針状ころ軸受27を介して遊星ローラ24の中心孔に挿入されて、遊星ローラ24を回転自在に支持する。
【0004】
ボール26は、太陽軸23の端面の中心に設けられる円錐形の凹部231に約半分が埋没する状態にはめ入れられており、キャリア25の軸部251の端面に対して当接されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般的に、遊星ローラ式動力伝達装置の全構成要素の素材は、強度面を考慮して例えばJIS規格S45C、SAE規格5120などの重量のある鋼材で形成されており、特に、キャリア25の軸部251については、スラスト軸受としてのボール26が当接する関係からさらにコストのかかる硬化処理を施してその耐摩耗性の向上が図られている。
【0006】
このような関係から、上記装置においては、近年さらに要求される軽量化という点で改良の余地があるうえ、各構成要素の加工についても高精度な旋削処理などを必要とするために、同様に近年さらに要求される低コスト化という点でも改良の余地がある。
【0007】
したがって、本発明は、遊星ローラ式動力伝達装置の各構成要素のうちキャリアの構成に改良を加えることにより、装置全体としてみた場合に一層の軽量化および低コスト化を図れるようにすることを、解決すべき課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、固定輪と、固定輪の内側に同心状に配置された太陽軸と、太陽軸と固定輪との間に圧接状態で介装された複数の遊星ローラと、各遊星ローラをそれぞれ回転自在に支持するキャリアと、前記太陽軸とキャリアとの対向端面間に介装されて該両者を位置決めするボールとを備えた遊星ローラ式動力伝達装置において、次のように構成する。
【0009】
本発明では、キャリアにおいて遊星ローラ支持用のピンを保持する本体が、アルミ合金で形成された有底の円筒部材からなり、その円筒部材の凹部の開口が軸方向に開放され、その底壁部に遊星ローラ支持用のピンが植設され、この底壁部のほぼ中心位置に軸方向の貫通孔が設けられ、この貫通孔に硬質部材が圧入されており、該硬質部材は前記ボールが当接する部位となっており、さらに、前記キャリア本体の円筒部材の凹部内に低速側の入出力軸が同心に配置され、この入出力軸と前記円筒部材とは一方向クラッチを介して伝動可能に構成しているとともに、前記入出力軸と前記硬質部材との対向端面間に回転中心に位置して前記ボールとは別のボールを介装している。
【0011】
上記の構成では、キャリアの大部分を占める本体をアルミ合金としているから、重量軽減はもちろんのこと、ダイキャスト製法により製作できるようになり、製造方法がきわめて簡単で生産性に優れている。
【0012】
しかも、キャリアにおいて耐摩耗性が必要な局部については、本体とは別の硬質部材を配設することにより補っている。この別部材については特殊な形状とする必要がないし、また、本体に対する配設位置や配設形態についても高精度が要求されないから、製作コストの無駄な上昇を阻止できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を図1ないし図5に示す実施例に基づいて説明する。図1ないし図5は本発明の一実施例にかかり、図1は、遊星ローラ式動力伝達装置の縦断面図、図2は、図1の(2)−(2)線断面の矢視図、図3は、図1の(3)−(3)線断面の矢視図、図4は、支持プレートの正面図、図5は支持プレートの縦断面図である。
【0014】
ここでは、本発明を図1に示す構成の遊星ローラ式動力伝達装置に適用した形態で説明する。図例の遊星ローラ式動力伝達装置の基本構成は、本願出願人が既に出願してあるもの(特開平7−113450号公報参照)と同様であり、固定輪2と、固定輪2の内側に同心状に配置された高速の入出力軸となる太陽軸3と、太陽軸3と固定輪2との間に圧接状に介装された複数(図示例では4個)の遊星ローラ4,…と、各遊星ローラ4をそれぞれ回転自在に支持してこれら遊星ローラ4の公転により回転するキャリア5と、太陽軸3とキャリア5との対向端面間に介装されて該両者を位置決めするボール6と、遊星ローラ4と太陽軸3および固定輪2との接触部位に潤滑油を供給する給脂ユニット7とを備えている。
【0015】
なお、固定輪2は、その両側のガイド環8,8とともにねじ9によりモータAなどのハウジング1に固定されている。
【0016】
キャリア5は、有底の円筒部材からなる本体51と、本体51の底壁部53の円周数箇所に植設されるピン52,…とで構成されている。本体51は、例えばJIS規格ADC12などのアルミ合金を用いるダイキャスト製法により形成されている。この本体51において底壁部53の中心部分には軸方向の貫通孔54が設けられていて、この貫通孔54には、例えばJIS規格SUJ2を熱処理したものなどからなる円柱形の硬質部材55が圧入されている。この硬質部材55は、例えば円筒ころ軸受などのころを流用することができる。本体51の凹部内周には、ローラ式の一方向クラッチ10が収納され、この一方向クラッチ10の内周には、低速側の入出力軸11が挿入されるようになっている。この入出力軸11の端面と本体51の底壁部53内面との間には、スラスト軸受としてのボール12が介装される。このボール12は本体51の硬質部材55に対して当接させられるようになっており、これにより本体51の早期摩耗を防止するようにしている。また、ピン52は、ケージアンドローラと呼ばれる針状ころ軸受13を介して遊星ローラ4の中心孔に挿入されて、遊星ローラ4を回転自在に支持する。なお、前述の一方向クラッチ10は、既存のローラ式一方向クラッチと同様のクラッチ本体101の両側にケージアンドローラと呼ばれる針状ころ軸受102,103を配置した構成である。クラッチ本体101は、複数のローラ104と、くさび状空間形成用のカム溝105を軸方向中間領域に有する円筒形のシェル106と、ローラ104をロック方向に弾発付勢するばね片(図示省略)を有する保持器107とを備えている。そして、この一方向クラッチ10の内周に挿入される入出力軸11に対してローラ104や、針状ころ軸受102,103の針状ころが転接する。
【0017】
ボール6は、太陽軸3の端面の中心に設けられる円錐形の凹部31に約半分が埋没する状態にはめ入れられており、キャリア5の本体51の硬質部材55に対して当接されている。
【0018】
給脂ユニット7は、隣り合う各遊星ローラ4,…の間に配置されて該遊星ローラ4それぞれに接触する複数の含油ローラ71,…と、これら含油ローラ71を回転自在(または非回転)に支持する円板状の支持プレート72とを含む。含油ローラ71は、例えば超高分子量ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂とナフテン系鉱油やシリコンオイルのようなトラクション係数の高い潤滑油との混合物を上記各樹脂の融解温度に加熱し冷却により固形化して得られたものを円筒形に形成したもので、内部の小孔には上記潤滑油が含浸されている。この他、含油ローラ71は樹脂粉末と潤滑剤粉末とを加圧成形することにより製作することができる。支持プレート72は、図4および図5に示すように、その外周の円周数箇所に含油ローラ71支持用の突片721が、また、中心位置に太陽軸3に対して非接触で外嵌される透孔722が、さらに、ピン9が遊嵌される係合部723がそれぞれ設けられており、遊星ローラ4の公転に連動して回転方向に遊びを持つ状態で回転するようになっている。
【0019】
次に、動作を説明する。太陽軸3が回転すると、遊星ローラ4が自転しながら公転し、この公転とともにキャリア5が回転する。このとき、支持プレート72に支持された含油ローラ71は、遊星ローラ4に追随するように公転するとともに、遊星ローラ4に接触しながら自転する。これで、固定輪2と遊星ローラ4との転動面に油膜が形成される。この際、各含油ローラ71は、支持プレート72の支持によりその半径方向位置が一定に保たれるから、固定輪2と遊星ローラ4との間に巻き込まれることがない。
【0020】
ところで、キャリア5の本体51をアルミ合金製として、ダイキャスト製法により製作するから、製造方法がきわめて簡単で生産性に優れている。また、本体51をアルミ合金とする上で心配であったボール6,12の当接部位については、硬質部材55の局部利用により、必要な耐摩耗性を確保できるから、寿命や強度についても何ら問題ない。ちなみに、鋼材製の従来のキャリアが253gであったのに対して本発明のキャリア5は117gとなり、実に約54%もの軽量化を実現できている。なお、硬質部材55は、本体51と一体に配設してあるから、キャリアの底壁部にスラストメタルを配設している従来例(特開平7−113450号公報参照)のような組み立て時の取り扱いの煩わしさも解消できる。
【0021】
なお、本発明は上記実施例のみに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考えられる。
【0022】
(1) 図6の従来例で示すキャリアにも本発明を適用できる。この場合には、プレート状の本体をアルミ合金とし、その中心に硬質部材を配設すればよい。
【0023】
(2) 上記実施例において、給脂ユニット7を省略したものにも本発明を適用できる。
【0024】
(3) スラスト軸受としてのボール6は、太陽軸3の凹部31に約半分を埋没する状態にはめ入れるようになっているが、前述の凹部31を、硬質部材55側に設けて太陽軸3に設けないようにしてもよい。これと同様に、ボール12は、低速の入出力軸11の凹部(符号省略)に約半分を埋没する状態にはめ入れるようになっているが、前述の凹部を、硬質部材55側に設けて入出力軸11に設けないようにしてもよい。
【0025】
【発明の効果】
本発明では、遊星ローラ式動力伝達装置の各構成要素のうちキャリアの重量および加工コストを大幅に低減できるように工夫しているから、遊星ローラ式動力伝達装置の軽量化および低価格化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る遊星ローラ式動力伝達装置の縦断面図(図2の(1)−(0)−(1)線断面の矢視図)
【図2】図1の(2)−(2)線断面の矢視図
【図3】図1の(3)−(3)線断面の矢視図
【図4】支持プレートの正面図
【図5】支持プレートの縦断面図
【図6】従来例に係る遊星ローラ式動力伝達装置の縦断面図
【符号の説明】
2 固定輪
3 太陽軸
4 遊星ローラ
5 キャリア
51 キャリアの本体
52 キャリアのピン
53 本体の底壁部
54 底壁部の貫通孔
55 キャリアの硬質部材
6 ボール
Claims (1)
- 固定輪と、固定輪の内側に同心状に配置された太陽軸と、太陽軸と固定輪との間に圧接状態で介装された複数の遊星ローラと、各遊星ローラをそれぞれ回転自在に支持するキャリアと、前記太陽軸とキャリアとの対向端面間に介装されて該両者を位置決めするボールとを備えた遊星ローラ式動力伝達装置であって、
キャリアにおいて遊星ローラ支持用のピンを保持する本体が、アルミ合金で形成された有底の円筒部材からなり、その円筒部材の凹部の開口が軸方向に開放され、その底壁部に遊星ローラ支持用のピンが植設され、この底壁部のほぼ中心位置に軸方向の貫通孔が設けられ、この貫通孔に硬質部材が圧入されており、該硬質部材は前記ボールが当接する部位となっており、さらに、前記キャリア本体の円筒部材の凹部内に低速側の入出力軸が同心に配置され、この入出力軸と前記円筒部材とは一方向クラッチを介して伝動可能に構成しているとともに、前記入出力軸と前記硬質部材との対向端面間に回転中心に位置して前記ボールとは別のボールを介装している、ことを特徴とする遊星ローラ式動力伝達装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31409895A JP3698780B2 (ja) | 1995-12-01 | 1995-12-01 | 遊星ローラ式動力伝達装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP31409895A JP3698780B2 (ja) | 1995-12-01 | 1995-12-01 | 遊星ローラ式動力伝達装置 |
Publications (2)
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JPH09152003A JPH09152003A (ja) | 1997-06-10 |
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Country Status (1)
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JP6825326B2 (ja) | 2016-11-18 | 2021-02-03 | 株式会社ジェイテクト | 遊星ローラ式変速装置 |
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1995
- 1995-12-01 JP JP31409895A patent/JP3698780B2/ja not_active Expired - Fee Related
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