本発明に係るノイズフィルタは、多種多様なフィルタ特性(ノイズ低減特性等)を簡便に構築することができるよう以下の如く構成したものである。また、本発明に係るワイヤハーネスは、そのようなノイズフィルタを少なくとも2本の電線の間に介在させたものである。
本発明に係るノイズフィルタは、多種多様なフィルタ特性が簡便に構築できるように、接地可能な接地導体、第1導体及び第2導体を有する回路体を備える。接地導体は、ノイズ低減素子としての第1コンデンサの一方の電気接続部との電気的な接続が可能な第1接地側接続部と、ノイズ低減素子としての第2コンデンサの一方の電気接続部との電気的な接続が可能な第2接地側接続部と、を有している。また、第1導体は、第1コンデンサの他方の電気接続部との電気的な接続が可能なコンデンサ接続部と、外部導体との電気的な接続が可能な外部導体接続部と、インダクタ層の一端との電気的な接続が可能なインダクタ接続部と、を有している。また、第2導体は、第2コンデンサの他方の電気接続部との電気的な接続が可能なコンデンサ接続部と、前記外部導体とは別の外部導体との電気的な接続が可能な外部導体接続部と、インダクタ層の他端との電気的な接続が可能なインダクタ接続部と、を有している。回路体は、筐体に収容される。その筐体には、第1コンデンサと第2コンデンサの収容が可能な収容空間が設けられている。インダクタ層とそれぞれの外部導体は、筐体の外側に配置される。
ここで、このノイズフィルタは、次の2パターンに大別することができる。パターン1のノイズフィルタとは、第1導体のコンデンサ接続部と第2導体のコンデンサ接続部を、第1接地側接続部と第2接地側接続部とを含む仮想線上に配置したものである。一方、パターン2のノイズフィルタとは、第1導体のコンデンサ接続部と第2導体のコンデンサ接続部を、第1接地側接続部と第2接地側接続部とを含む仮想線上とは異なる位置に配置したものである。
以下に、本発明に係るノイズフィルタ及びワイヤハーネスの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
[実施形態]
本実施形態のノイズフィルタは、前述したパターン1のノイズフィルタであり、以下に示す筐体10と接地導体20と第1導体30と第2導体40とを備える。図1及び図2の符号1aは、様々なフィルタ特性の複数のノイズフィルタ1において共用されるフィルタ共用体であり、その筐体10と接地導体20と第1導体30と第2導体40の一体物を示している。
筐体10は、合成樹脂等の絶縁性材料によって成形される。この筐体10は、その内側に接地導体20と第1導体30と第2導体40とを収容するものであり、これらを収容する収容部11を備える。その収容部11は、一面が開口された箱状のものであり、その開口から接地導体20と第1導体30と第2導体40とが収容される。接地導体20と第1導体30と第2導体40は、この筐体10の内側に全てが収容されてもよく、その一部が筐体10の外側に露出していてもよい。更に、この筐体10の収容部11は、第1コンデンサ51及び第2コンデンサ52の収容空間S1を有している。第1コンデンサ51は、一対の電気接続部(リード端子等)51a,51bを備えており、その内の一方が接地導体20に対して電気的に接続され、他方が第1導体30に対して電気的に接続される。また、第2コンデンサ52は、一対の電気接続部(リード端子等)52a,52bを備えており、その内の一方が接地導体20に対して電気的に接続され、他方が第2導体40に対して電気的に接続される。
尚、この筐体10においては、例えば自らの強度を確保するために、第1コンデンサ51及び第2コンデンサ52の収容空間S1と、後述する第1外部導体61の収容空間S2と、後述する第3外部導体63の収容空間S3と、が個別に設けられている。従って、筐体10の強度が確保される場合には、これらの収容空間S1,S2,S3を1つに纏めてもよい。また、この筐体10は、これらの収容空間S1,S2,S3の開口を塞ぐ蓋部(図示略)を有している。
接地導体20は、車体等のような導電性部材(図示略)との電気的な接触部21(図1−図3)を有しており、この接触部21を介して接地される。このフィルタ共用体1aにおいて、その接触部21は、筐体10の外側に露出させている。この接触部21に形成した貫通孔21aは、雄螺子部(図示略)が挿通される孔である。フィルタ共用体1a(ノイズフィルタ)は、その貫通孔21aを介して導電性部材に螺子止めされる。
更に、この接地導体20は、第1コンデンサ51の一方の電気接続部51aとの電気的な接続が可能な第1接地側接続部22と、第2コンデンサ52の一方の電気接続部52aとの電気的な接続が可能な第2接地側接続部23と、を有している。この例示の第1接地側接続部22と第2接地側接続部23は、所定の間隔を空けて並列に配置している。このフィルタ共用体1aにおいては、この並列方向が自らの長手方向(第1方向)となる。接地導体20においては、第1及び第2の接地側接続部22,23に対して、その長手方向に間隔を空けて接触部21が配置されている。このフィルタ共用体1aにおいては、その接触部21と第1及び第2の接地側接続部22,23との間に第1導体30を配置している。そして、第2導体40については、その第1及び第2の接地側接続部22,23を間に挟んで、第1導体30とは逆側に配置している。つまり、第1及び第2の接地側接続部22,23は、第1導体30と第2導体40との間に配置している。
電気接続部51aと第1接地側接続部22との間の電気接続は、この技術分野において周知の方法を用いて行えばよい。例えば、電気接続部51aと第1接地側接続部22は、半田付けや溶着によって電気的に接続される。電気接続部52aと第2接地側接続部23との間においても同様である。この例示の第1接地側接続部22と第2接地側接続部23は、各々貫通孔22a,23aを有している。電気接続部51aと電気接続部52aは、それぞれ貫通孔22a,23aに挿通され、半田付け等によって電気接続される。
接地導体20には、その接触部21と第1及び第2の接地側接続部22,23とを繋ぐ連結部24が設けられている。その連結部24は、フィルタ共用体1aの長手方向に延在している。
第1導体30は、第1コンデンサ51の他方の電気接続部51bとの電気的な接続が可能なコンデンサ接続部31を有している。また、第2導体40は、第2コンデンサ52の他方の電気接続部52bとの電気的な接続が可能なコンデンサ接続部41を有している。それぞれのコンデンサ接続部31,41は、第1接地側接続部22と第2接地側接続部23とを含む仮想線L1(図3)上に配置している。つまり、それぞれのコンデンサ接続部31,41は、第1及び第2の接地側接続部22,23を間に挟む位置関係に配置される。このため、第1コンデンサ51と第2コンデンサ52は、それぞれの電気接続部51a,51b,52a,52bも含めて長手方向に沿って並列に配置される。ここで、仮想線L1は、フィルタ共用体1aの長手方向に延在している。従って、第1コンデンサ51と第2コンデンサ52は、その長手方向に並べて配置されている。
電気接続部51bとコンデンサ接続部31との間の電気接続は、この技術分野において周知の方法を用いて行えばよい。例えば、電気接続部51bとコンデンサ接続部31は、半田付けや溶着によって電気的に接続される。電気接続部52bとコンデンサ接続部41との間においても同様である。この例示のコンデンサ接続部31,41は、各々貫通孔31a,41aを有している。電気接続部51bと電気接続部52bは、それぞれ貫通孔31a,41aに挿通され、半田付け等によって電気接続される。
更に、第1導体30は、筐体10の外側に配置された外部導体との電気的な接続が可能な外部導体接続部32を有している。また、第2導体40は、その外部導体とは別の外部導体との電気的な接続が可能な外部導体接続部42を有している。この例示の外部導体とは、例えば電線の芯線のことである。その芯線と外部導体接続部32,42との間の電気接続は、この技術分野において周知の方法を用いて行えばよい。例えば、その芯線は、直接又は端子を介して外部導体接続部32,42に電気接続される。例えば、その電気接続には、芯線の加締めによる外部導体接続部32,42への圧着、被覆の中剥ぎによる外部導体接続部32,42への圧着、熱溶着等が利用される。
この例示の第1導体30には、最大で2つの外部導体(第1及び第2の外部導体61,62)が電気接続される。このため、この例示の第1導体30は、外部導体接続部32として、第1外部導体61との電気的な接続が可能な第1外部導体接続部32aと、第2外部導体62との電気的な接続が可能な第2外部導体接続部32bと、を有する。第1外部導体61は、筐体10におけるフィルタ共用体1aの短手方向(第2方向)の内の一方(挿通孔10a)から引き出される。また、第2外部導体62は、筐体10における当該短手方向の内の他方(挿通孔10b)から引き出される。この第1導体30においては、筐体10における第2外部導体62の挿通孔10b側に第1外部導体接続部32aが配置され、筐体10における第1外部導体61の挿通孔10a側に第2外部導体接続部32bが配置される。尚、短手方向とは、フィルタ共用体1aの長手方向と接地導体20の貫通孔21aの軸線方向とに対する直交方向のことである。
この例示の第2導体40には、最大で2つの外部導体(第3及び第4の外部導体63,64)が電気接続される。このため、この例示の第2導体40は、外部導体接続部42として、第3外部導体63との電気的な接続が可能な第1外部導体接続部42aと、第4外部導体64との電気的な接続が可能な第2外部導体接続部42bと、を有する。第3外部導体63は、筐体10における短手方向の内の一方(挿通孔10c)から引き出される。また、第4外部導体64は、筐体10における短手方向の内の他方(挿通孔10d)から引き出される。この第2導体40においては、筐体10における第4外部導体64の挿通孔10d側に第1外部導体接続部42aが配置され、筐体10における第3外部導体63の挿通孔10c側に第2外部導体接続部42bが配置される。
また更に、第1導体30は、インダクタ層70の一端との電気的な接続が可能なインダクタ接続部33を有している。また、第2導体40は、インダクタ層70の他端との電気的な接続が可能なインダクタ接続部43を有している。インダクタ層70とは、軸心と当該軸心に巻き付けたコイルの組み合わせから成るインダクタを少なくとも1つ備えたもののことである。インダクタ接続部33,43は、筐体10の内側又は外側に配置する。この例示では、それぞれのインダクタ接続部33,43を筐体10の短手方向における他方の外側に露出させている。
インダクタ層70の一端とインダクタ接続部33との間の電気接続は、この技術分野において周知の方法を用いて行えばよい。例えば、インダクタ層70の一端とインダクタ接続部33は、半田付けや溶着によって電気的に接続される。インダクタ層70の他端とインダクタ接続部43との間においても同様である。この例示のインダクタ接続部33,43は、各々貫通孔33a,43aを有している。インダクタ層70の両端は、それぞれ貫通孔33a,43aに挿通され、半田付け等によって電気接続される。
第1導体30には、そのコンデンサ接続部31と外部導体接続部32(第1外部導体接続部32a、第2外部導体接続部32b)とインダクタ接続部33とを繋ぐ連結部34が設けられている。また、第2導体40には、そのコンデンサ接続部41と外部導体接続部42(第1外部導体接続部42a、第2外部導体接続部42b)とインダクタ接続部43とを繋ぐ連結部44が設けられている。それぞれの連結部34,44は、フィルタ共用体1aの短手方向に延在している。
これらの接地導体20と第1導体30と第2導体40は、互いに直接の電気的な接続関係が生じないように配置する。これらの接地導体20と第1導体30と第2導体40は、例えば、板状の導電性材料(金属材料等)の成形体であるバスバとして各々形成することができる。この場合、筐体10の収容部11は、接地導体20と第1導体30と第2導体40とを成形型に入れたインサート成形によって形成すればよい。また、その接地導体20と第1導体30と第2導体40は、個別に成形された筐体10に螺子止めや溶着等によって固定してもよい。また、接地導体20と第1導体30と第2導体40は、基板のパターンの如く形成してもよい。例えば、接地導体20と第1導体30と第2導体40は、基板上に形成して、この基板と共に筐体10に固定してもよく、収容部11にパターンとして直接形成してもよい。尚、基板のパターンを採用する場合には、例えば、そのパターンにバスバ状のインダクタ接続部33,43を電気接続したり、絶縁性材料の壁面を設け、この壁面にインダクタ接続部33,43のパターンを印刷したりすればよい。
このように形成された筐体10と接地導体20と第1導体30と第2導体40の一体物(フィルタ共用体1a)は、これに搭載するノイズ低減素子(第1コンデンサ51、第2コンデンサ52、インダクタ層70の構成要素)の種類及び数量と外部導体の数量とを適宜変更することによって、様々なフィルタ特性(ノイズ低減特性や回路特性)のノイズフィルタを構築することができる。図4から図7には、そのフィルタ共用体1aを利用して構築された複数のノイズフィルタの内の数種類を抜き出して例示している。
図4のノイズフィルタ1Aは、第1コンデンサ51と第2コンデンサ52の内の一方と、電流の入出力を担う2つの外部導体と、をフィルタ共用体1aに設けた場合の一例である。このノイズフィルタ1Aは、第2コンデンサ52と第3外部導体63と第4外部導体64とをフィルタ共用体1aに設けている。この場合には、第3外部導体63と第4外部導体64の内の一方が電流の入力側として例えば電源(図示略)に接続され、他方が電流の出力側として例えば負荷(図示略)に接続される。つまり、このノイズフィルタ1Aは、少なくとも第3外部導体63と第4外部導体64とを有するワイヤハーネスWHにおいて、その第3外部導体63と第4外部導体64との間に介在させたものである。
図5のノイズフィルタ1Bは、同じフィルタ共用体1aを用いつつ図4のノイズフィルタ1Aのフィルタ回路を2系統設けたものに相当する。このノイズフィルタ1Bは、第1コンデンサ51と第2コンデンサ52と第1外部導体61と第2外部導体62と第3外部導体63と第4外部導体64とをフィルタ共用体1aに設けている。このノイズフィルタ1Bにおいては、第1コンデンサ51と第1外部導体61と第2外部導体62とによって第1フィルタ回路が形成され、第2コンデンサ52と第3外部導体63と第4外部導体64とによって第2フィルタ回路が形成される。第1フィルタ回路では、第1外部導体61と第2外部導体62の内の一方が電流の入力側となり、他方が電流の出力側となる。第2フィルタ回路は、図4のノイズフィルタ1Aと同じものである。つまり、このノイズフィルタ1Bは、少なくとも第1外部導体61と第2外部導体62と第3外部導体63と第4外部導体64とを有するワイヤハーネスWHにおいて、第1外部導体61と第2外部導体62との間及び第3外部導体63と第4外部導体64との間に介在させたものである。
ここで、図4のノイズフィルタ1Aと図5のノイズフィルタ1Bは、インダクタ層70を必要としない。このため、フィルタ共用体1aにおいては、インダクタ接続部33,43が不要になる。これらのノイズフィルタ1A,1Bにおいては、インダクタ接続部33,43をそのまま残しておいてもよく、インダクタ接続部33,43を切断して取り除いてもよい。図4と図5の例示は、後者を表している。
また、本実施形態のノイズフィルタ1は、導電性部材ではなく、絶縁性部材(図示略)に取り付けられる場合もある。この場合には、接地導体20の接触部21が絶縁性部材と接触することになるので、この接地導体20を接地させることができない。そこで、接地導体20を接地させることができない場合には、第1導体30の外部導体接続部32に接続された外部導体と第2導体40の外部導体接続部42に接続された外部導体の内の1つを接地させればよい。図5のノイズフィルタ1Bにおいては、第1外部導体61と第2外部導体62と第3外部導体63と第4外部導体64の内の1つを車体等の導電性部材に接続させることで、この外部導体を接地導体として利用すればよい。
図6のノイズフィルタ1Cは、第1コンデンサ51と第2コンデンサ52の内の一方と、電流の入出力を担う2つの外部導体と、インダクタ層70と、をフィルタ共用体1aに設けた場合の一例である。このノイズフィルタ1Cは、第2コンデンサ52と第1外部導体61と第3外部導体63とインダクタ層70としてのインダクタ71とをフィルタ共用体1aに設けている。インダクタ71は、直線状の軸心71aと、この軸心71aに巻き付けたコイル71bと、を有する。インダクタ接続部33には、コイル71bの一端が電気的に接続される。また、インダクタ接続部43には、コイル71bの他端が電気的に接続される。この場合には、第1外部導体61と第3外部導体63の内の一方が電流の入力側となり、他方が電流の出力側となる。つまり、このノイズフィルタ1Cは、少なくとも第1外部導体61と第3外部導体63とを有するワイヤハーネスWHにおいて、第1外部導体61と第3外部導体63との間に介在させたものである。尚、このノイズフィルタ1Cにおいては、第2コンデンサ52を第1コンデンサ51に置き換えてもよい。
図7のノイズフィルタ1Dは、図6のノイズフィルタ1Cにおいて、更に第1コンデンサ51を設けたものに相当する。この場合においても、第1外部導体61と第3外部導体63は、その内の一方が電流の入力側となり、他方が電流の出力側となる。つまり、このノイズフィルタ1Dは、少なくとも第1外部導体61と第3外部導体63とを有するワイヤハーネスWHにおいて、第1外部導体61と第3外部導体63との間に介在させたものである。
以上示したように、本実施形態のノイズフィルタ1(1A,1B,1C,1D)は、前述したが如くフィルタ共用体1aを構成しているので、このフィルタ共用体1aに搭載するノイズ低減素子の種類及び数量と外部導体の数量とを容易に変更することができる。このため、このノイズフィルタ1(1A,1B,1C,1D)は、多種多様なフィルタ特性を簡便に構築することができる。よって、このノイズフィルタ1を有するワイヤハーネスWHにおいては、簡便にノイズ低減効果を得ることができる。
ここで、図8は、フィルタ共用体1aを背面側(車体等の導電性部材側)から見た図である。図9は、フィルタ共用体1aを側面から見た図である。フィルタ共用体1aは、接地導体20の貫通孔21aを介した螺子止めのみの場合、その貫通孔21aを中心とした導電性部材に対する回転方向への位置ずれを引き起こす可能性がある。そこで、筐体10には、導電性部材に対する回転止めのための係止部10eを設ける。その係止部10eは、導電性部材の貫通孔(図示略)に挿通され、かつ、この貫通孔に保持されるクリップである。この例示の係止部10eは、筐体10の背面に形成した挿入溝10fに沿って所定位置まで挿入される。
ところで、本実施形態では第1導体30と第2導体40との間に第1及び第2の接地側接続部22,23を配置しているが、本実施形態のフィルタ共用体1aは、第1接地側接続部22と第2接地側接続部23との間に第1及び第2の導体30,40を配置してもよい。本実施形態のノイズフィルタ1は、このようにフィルタ共用体1aを構成したとしても、このフィルタ共用体1aに搭載するノイズ低減素子の種類及び数量と外部導体の数量とを容易に変更することができるので、多種多様なフィルタ特性を簡便に構築することができる。
[変形例1]
図10の符号2は本変形例のノイズフィルタを示し、符号2aは本変形例のフィルタ共用体を示す。本変形例のフィルタ共用体2aは、以下に示す筐体110と接地導体120と第1導体130と第2導体140とを備える。
筐体110は、実施形態の筐体10と同等のものであり、収容部111が例えば接地導体120と第1導体130と第2導体140と共にインサート成形される。尚、本変形例においても、この筐体110の蓋部は、省略している。
接地導体120は、実施形態の接地導体20と同等の接触部121と第1及び第2の接地側接続部122,123と連結部124とを備える(図11)。この接地導体120は、更に補強部125を有する。補強部125は、接地導体120の強度を保つためのものである。尚、このフィルタ共用体2aは、この接地導体120に替えて、実施形態の接地導体20を用いてもよい。
第1導体130は、実施形態の第1導体30と同等のコンデンサ接続部131を備える(図11)。ここで、本変形例の第1導体130には、外部導体接続部132を1つのみ設けている。その外部導体接続部132には、実施形態の第1外部導体61又は第2外部導体62に相当する外部導体の端部(芯線)が電気接続される場合もあれば、その第1外部導体61と第2外部導体62とを1本に纏めた外部導体161の中間部(芯線)が電気接続される場合もある。図10及び図11は、後者を表しており、外部導体161の中間部の被覆が中剥ぎされ、露出した芯線が熱溶着等で外部導体接続部132に接続される。その外部導体161は、筐体110の挿通孔110a,110bから各々外側に引き出される。尚、図示しないが、この第1導体130には、その第1導体30と同等のインダクタ接続部を設けてもよい。
第2導体140は、実施形態の第2導体40と同等のコンデンサ接続部141を備える(図11)。ここで、本変形例の第2導体140には、外部導体接続部142を1つのみ設けている。その外部導体接続部142には、実施形態の第3外部導体63又は第4外部導体64に相当する外部導体の端部(芯線)が電気接続される場合もあれば、その第3外部導体63と第4外部導体64とを1本に纏めた外部導体163の中間部(芯線)が電気接続される場合もある。図10及び図11は、後者を表しており、外部導体163の中間部の被覆が中剥ぎされ、露出した芯線が熱溶着等で外部導体接続部142に接続される。その外部導体163は、筐体110の挿通孔110c,110dから各々外側に引き出される。尚、図示しないが、この第2導体140には、その第2導体40と同等のインダクタ接続部を設けてもよい。
接地導体120と第1導体130と第2導体140は、実施形態と同じように、バスバや基板のパターンとして設けることができる。
本変形例のノイズフィルタ2は、第1コンデンサ51と第2コンデンサ52と外部導体161と外部導体163とをフィルタ共用体2aに設けたものである。つまり、このノイズフィルタ2は、少なくとも外部導体161と外部導体163とを有するワイヤハーネスWHにおいて、外部導体161と外部導体163との間に介在させたものである。
本変形例のフィルタ共用体2aは、実施形態のフィルタ共用体1aと同じように、搭載するノイズ低減素子の種類及び数量と外部導体の数量とを容易に変更することができる。このため、本変形例のノイズフィルタ2は、実施形態のノイズフィルタ1(1A,1B,1C,1D)と同じように、多種多様なフィルタ特性を簡便に構築することができる。よって、このノイズフィルタ2を有するワイヤハーネスWHにおいては、簡便にノイズ低減効果を得ることができる。
[変形例2]
本変形例のノイズフィルタ3は、変形例1のノイズフィルタ2の別形態に相当するものであり、パターン1のノイズフィルタを成すためのフィルタ共用体3aを備える。そのフィルタ共用体3aは、以下に示す筐体210と接地導体220と第1導体230と第2導体240とを備える(図12及び図13)。
筐体210は、実施形態や変形例1の筐体10,110と同等のものであり、収容部211が例えば接地導体220と第1導体230と第2導体240と共にインサート成形される。本変形例の筐体210には、実施形態の係止部10eと同等の係止部210eが一体成形されている。
接地導体220は、実施形態や変形例1の接地導体20,120と同等の接触部221と第1及び第2の接地側接続部222,223と連結部224とを備える。本変形例では、短手方向における接地導体20,120とは逆側に連結部224を設けている。
第1導体230は、変形例1の第1導体130と同じように、コンデンサ接続部231と外部導体接続部232を1つずつ備える。更に、この第1導体230は、筐体210の外側に露出させたインダクタ接続部233を備える。また、第2導体240は、変形例1の第2導体140と同じように、コンデンサ接続部241と外部導体接続部242を1つずつ備える。更に、この第2導体240は、筐体210の外側に露出させたインダクタ接続部243を備える。
それぞれのコンデンサ接続部231,241は、第1接地側接続部222と第2接地側接続部223とを含む仮想線L1上に配置する。第1及び第2の接地側接続部222,223は、第1導体230と第2導体240との間に配置する。本変形例では、具体的に、コンデンサ接続部231とコンデンサ接続部241との間に第1及び第2の接地側接続部222,223が配置されている。
それぞれのインダクタ接続部233,243は、インダクタ層70を取り付ける場合に残され、インダクタ層70を取り付けない場合に切断される。
接地導体220と第1導体230と第2導体240は、実施形態や変形例1と同じように、バスバや基板のパターンとして設けることができる。尚、基板のパターンを採用する場合には、例えば、そのパターンにバスバ状のインダクタ接続部233,243を電気接続したり、絶縁性材料の壁面を設け、この壁面にインダクタ接続部233,243のパターンを印刷したりすればよい。
このフィルタ共用体3aは、これに搭載するノイズ低減素子の種類及び数量と外部導体の数量とを適宜変更することによって、様々なフィルタ特性のノイズフィルタ3を構築することができる。図14から図19には、このフィルタ共用体3aを利用して構築された複数のノイズフィルタ3の内の数種類を抜き出して例示している。ここで例示するノイズフィルタ3は、少なくとも第1外部導体261と第2外部導体262とを有するワイヤハーネスWHにおいて、第1外部導体261と第2外部導体262との間に介在させたものである。
図14及び図15の符号3Aは、本変形例のノイズフィルタ3の一例を示したものである。このノイズフィルタ3Aは、第1コンデンサ51と第2コンデンサ52と第1外部導体261と第2外部導体262とをフィルタ共用体3aに設けたものである。尚、このノイズフィルタ3Aには、インダクタ層70を設けない。このため、このノイズフィルタ3Aにおいては、インダクタ接続部233,243が切断されている。
第1外部導体261は、電線261aの芯線が圧着された端子金具261bを有する。また、第2外部導体262は、電線262aの芯線が圧着された端子金具262bを有する。ここで、第1外部導体261が電気接続される第1導体230の外部導体接続部232は、筐体210の内方において、接地導体220や第1導体230等が埋設された筐体210の壁面から立設させている。これと同様に、第2導体240についても、外部導体接続部242は、その壁面から立設させている。本変形例では、それぞれの外部導体接続部232,242を矩形の片部として形成する。このため、それぞれの端子金具261b,262bには、その外部導体接続部232,242が挿入され且つ保持される収容部261c,262cを形成している。
このノイズフィルタ3Aは、フィルタ共用体3aにおける筐体210の収容部211の開口(第1及び第2のコンデンサ51,52と第1及び第2の外部導体261,262の挿入口)を塞ぐ蓋部212を備える。その蓋部212は、3分割された第1蓋部212Aと第2蓋部212Bと第3蓋部212Cとから成る。第1蓋部212Aと第2蓋部212Bは、長手方向における両端の開口を塞ぐ。第3蓋部212Cは、その開口における第1蓋部212Aと第2蓋部212Bとの間を塞ぐ。ここで、この第3蓋部212Cは、その開口のみならず、フィルタ共用体3aの背面と側面についても覆うコの字状に成形されている。
図16及び図17の符号3Bは、本変形例のノイズフィルタ3の他の例を示したものである。このノイズフィルタ3Bは、第1コンデンサ51と第2コンデンサ52と第1外部導体261と第2外部導体262とインダクタ層70(インダクタ71)をフィルタ共用体3aに設けたものである。換言するならば、このノイズフィルタ3Bは、ノイズフィルタ3Aにインダクタ層70(インダクタ71)を追加したものに相当する。
このノイズフィルタ3Bには、インダクタ接続部233,243とインダクタ層70(インダクタ71)を収容するインダクタ層収容部281が設けられている。インダクタ層収容部281は、筐体210の収容部211の開口と同じ方向に口を開けた開口を有する箱体である。このインダクタ層収容部281は、自らを筐体210の背面から当該筐体210に嵌合させる嵌合部281aを有する。
このノイズフィルタ3Bは、フィルタ共用体3aにおける筐体210の収容部211の開口(第1及び第2のコンデンサ51,52と第1及び第2の外部導体261,262の挿入口)を塞ぐ蓋部213を備える。その蓋部213は、3分割された第1蓋部213Aと第2蓋部213Bと第3蓋部213Cとから成る。第1蓋部213A及び第2蓋部213Bは、それぞれノイズフィルタ3Aの第1蓋部212A及び第2蓋部212Bと同じものである。一方、第3蓋部213Cは、その開口における第1蓋部213Aと第2蓋部213Bとの間を塞ぎ、かつ、インダクタ層収容部281の開口(インダクタ接続部233,243とインダクタ層70の挿入口)を塞ぐように成形されたものである。
図18及び図19の符号3Cは、本変形例のノイズフィルタ3の他の例を示したものである。このノイズフィルタ3Cは、第1コンデンサ51と第2コンデンサ52と第1外部導体261と第2外部導体262とインダクタ層70(インダクタ271)をフィルタ共用体3aに設けたものである。換言するならば、このノイズフィルタ3Cは、ノイズフィルタ3Bのインダクタ層70をインダクタ71からインダクタ271に変更したものに相当する。
このノイズフィルタ3Cに設けたインダクタ271は、環状の軸心271aと、この軸心271aに巻き付けたコイル271bと、を有する。インダクタ接続部233には、コイル271bの一端が電気的に接続される。また、インダクタ接続部243には、コイル271bの他端が電気的に接続される。
このノイズフィルタ3Cは、そのインダクタ271の形状に応じたインダクタ層収容部282を備える。そのインダクタ層収容部282は、インダクタ接続部233,243とインダクタ層70(インダクタ271)を収容するものである。このインダクタ層収容部282は、自らを筐体210の背面から当該筐体210に嵌合させる嵌合部282aを有する。
このノイズフィルタ3Cは、フィルタ共用体3aにおける筐体210の収容部211の開口(第1及び第2のコンデンサ51,52と第1及び第2の外部導体261,262の挿入口)を塞ぐ蓋部214を備える。その蓋部214は、3分割された第1蓋部214Aと第2蓋部214Bと第3蓋部214Cとから成る。第1蓋部214A及び第2蓋部214Bは、それぞれノイズフィルタ3Aの第1蓋部212A及び第2蓋部212Bと同じものである。一方、第3蓋部214Cは、その開口における第1蓋部214Aと第2蓋部214Bとの間を塞ぎ、かつ、インダクタ層収容部282の開口(インダクタ接続部233,243とインダクタ271の挿入口)を塞ぐように成形されたものである。
尚、これらの例示ではインダクタ層70が1つのインダクタ71,271を有するものとして説明したが、インダクタ層70は、直列接続された複数のインダクタ(図示略)を有するものであってもよい。
以上示したように、本変形例のフィルタ共用体3aは、実施形態や変形例1のフィルタ共用体1a,2aと同じように、搭載するノイズ低減素子の種類及び数量と外部導体の数量とを容易に変更することができる。このため、本変形例のノイズフィルタ3(3A,3B,3C)は、実施形態や変形例1のノイズフィルタ1(1A,1B,1C,1D),2と同じように、多種多様なフィルタ特性を簡便に構築することができる。よって、このノイズフィルタ3を有するワイヤハーネスWHにおいては、簡便にノイズ低減効果を得ることができる。
[変形例3]
図20及び図21の符号4は本変形例のノイズフィルタを示し、符号4aは本変形例のフィルタ共用体を示す。本変形例のノイズフィルタ4は、前述したパターン2のノイズフィルタである。本変形例のフィルタ共用体4aは、以下に示す筐体310と接地導体320と第1導体330と第2導体340と連結導体350とを備える。
筐体310は、実施形態や変形例1の筐体10,110と同等のものであり、その収容部311が例えば接地導体320と第1導体330と第2導体340と共にインサート成形される。但し、本変形例のノイズフィルタ4は、2つの外部導体(第1外部導体361、第2外部導体362)と接続されるものである。このため、この筐体310には、第1外部導体361を外部に引き出す挿通孔310aと、第2外部導体362を外部に引き出す挿通孔310bと、が短手方向における他方に形成されている。また、この筐体310には、筐体10,110と同等の係止部310eが取り付けられている。尚、この筐体310の蓋部については、省略している。
接地導体320は、実施形態や変形例1,2の接地導体20,120,220と同等の接触部321を備える(図22)。更に、この接地導体320は、第1コンデンサ51の一方の電気接続部51aとの電気的な接続が可能な第1接地側接続部322と、第2コンデンサ52の一方の電気接続部52aとの電気的な接続が可能な第2接地側接続部323と、を有している。本変形例では、第1接地側接続部322を筐体310内の短手方向における一方に配置し、第2接地側接続部323を筐体310内の短手方向における他方に配置する。接地導体320においては、第1及び第2の接地側接続部322,323に対して、長手方向に間隔を空けて接触部321が配置されている。このフィルタ共用体4aにおいては、その接触部321と第1及び第2の接地側接続部322,323との間に第1導体330を配置している。そして、第2導体340については、その第1及び第2の接地側接続部322,323を間に挟んで、第1導体330とは逆側に配置している。つまり、第1及び第2の接地側接続部322,323は、第1導体330と第2導体340との間に配置している。
第1導体330は、第1コンデンサ51の他方の電気接続部51bとの電気的な接続が可能なコンデンサ接続部331を有している。また、第2導体340は、第2コンデンサ52の他方の電気接続部52bとの電気的な接続が可能なコンデンサ接続部341を有している。ここで、本変形例の第1コンデンサ51と第2コンデンサ52は、上記の第1及び第2の接地側接続部322,323に接続しつつ、長手方向に沿って並列に配置する。このため、それぞれのコンデンサ接続部331,341は、第1接地側接続部322と第2接地側接続部323とを含む仮想線L2(図22)上とは異なる位置に配置する。コンデンサ接続部331は、第1接地側接続部322に対して長手方向における接触部321側に配置される。コンデンサ接続部341は、コンデンサ接続部331とは逆であり、第1接地側接続部322に対して長手方向における逆側に配置される。
更に、第1導体330は、第1外部導体361との電気的な接続が可能な外部導体接続部332を有している。また、第2導体340は、第2外部導体362との電気的な接続が可能な外部導体接続部342を有している。ここで、第1外部導体361と第2外部導体362は、それぞれに、電線361a,362aの芯線に圧着された端子金具361b,362bを備えている。その端子金具361b,362bには、矩形の片部361c,362cが形成されている。外部導体接続部332,342には、それぞれに、その片部361c,362cが挿入され且つ保持される収容部332a,342aが形成されている。
また更に、第1導体330は、インダクタ層70(インダクタ71)の一端との電気的な接続が可能なインダクタ接続部333を有している。また、第2導体340は、インダクタ層70の他端との電気的な接続が可能なインダクタ接続部343を有している。インダクタ接続部333,343は、筐体310の内側又は外側に配置する。この例示では、それぞれのインダクタ接続部333,343を筐体310の短手方向における一方の外側に露出させている。
連結導体350は、それぞれのインダクタ接続部333,343を電気的に接続させる。この連結導体350は、インダクタ接続部333とインダクタ接続部343との間に渡って長手方向に延在している。つまり、このフィルタ共用体4aにおいては、第1導体330と第2導体340と連結導体350とが一体化されている。この一体化物と接地導体320とは、互いに直接の電気的な接続関係が生じないように配置する。
接地導体320と第1導体330と第2導体340と連結導体350は、実施形態や変形例1,2と同じように、バスバや基板のパターンとして設けることができる。尚、基板のパターンを採用する場合には、例えば、そのパターンにバスバ状のインダクタ接続部333,343を電気接続したり、絶縁性材料の壁面を設け、この壁面にインダクタ接続部333,343のパターンを印刷したりすればよい。
本変形例のノイズフィルタ4は、第1コンデンサ51と第2コンデンサ52と第1外部導体361と第2外部導体362とをフィルタ共用体4aに設けたものである。つまり、このノイズフィルタ4は、少なくとも第1外部導体361と第2外部導体362とを有するワイヤハーネスWHにおいて、第1外部導体361と第2外部導体362との間に介在させたものである。
本変形例のフィルタ共用体4aは、実施形態や変形例1,2のフィルタ共用体1a,2a,3aと同じように、搭載するノイズ低減素子の種類及び数量と外部導体の数量とを容易に変更することができる。このため、本変形例のノイズフィルタ4は、実施形態や変形例1,2のノイズフィルタ1(1A,1B,1C,1D),2,3(3A,3B,3C)と同じように、多種多様なフィルタ特性を簡便に構築することができる。よって、このノイズフィルタ4を有するワイヤハーネスWHにおいては、簡便にノイズ低減効果を得ることができる。
[変形例4]
図23から図25の符号5は本変形例のノイズフィルタを示し、符号5aは本変形例のフィルタ共用体を示す。本変形例のフィルタ共用体5aは、以下に示す筐体410と接地導体420と第1導体430と第2導体440とを備える(図26)。このフィルタ共用体5aは、接地導体420を中央に配置し、その周囲に第1導体430と第2導体440とを配置したものである。このフィルタ共用体5aは、前述したパターン1のノイズフィルタの構成要素として構成することもできれば、前述したパターン2のノイズフィルタの構成要素として構成することもできる。本変形例においては、パターン2のノイズフィルタを例として挙げる。
筐体410は、合成樹脂等の絶縁性材料によって成形される。この筐体410は、その内側に接地導体420と第1導体430と第2導体440とを収容するものであり、これらを収容する収容部411を備える。その収容部411は、一面が開口された箱状のものであり、その開口から接地導体420と第1導体430と第2導体440とが収容される。接地導体420と第1導体430と第2導体440は、実施形態等における筐体10等と同じように、この筐体410の内側に全てが収容されてもよく、その一部が筐体410の外側に露出していてもよい。更に、この筐体410の収容部411は、第1コンデンサ51及び第2コンデンサ52の収容空間Sを有している。この筐体410は、図25に示すように、その収容部411の開口(第1及び第2のコンデンサ51,52と第1及び第2の外部導体461,462の挿入口)を塞ぐ蓋部412を備える。その蓋部412は、3分割された第1蓋部412Aと第2蓋部412Bと第3蓋部412Cとから成る。第1蓋部412Aと第2蓋部412Bは、その開口の両端を塞ぐものである。一方、第3蓋部412Cは、その開口における第1蓋部412Aと第2蓋部412Bとの間を塞ぐものである。
接地導体420は、筐体410の中央に配置される。この接地導体420は、車体等のような導電性部材(図示略)との電気的な接触部421を有しており、この接触部421を介して接地される。具体的に、この接地導体420には、その中央に貫通孔420aが形成されている。その貫通孔420aは、筐体410の内側と外側とを連通させるものである。この接地導体420においては、その貫通孔420aの周縁部分を接触部421として利用する。例えば、筐体410は、その貫通孔420aに挿通された雄螺子部材415を介して導電性部材に固定される。このため、接地導体420は、その雄螺子部材415を接触部421に接触させることによって接地させる。例えば、接触部421においては、その一方の平面を筐体410の外側に露出させる。ここでは、その露出部分に雄螺子部材415の座金等を接触させることによって、雄螺子部材415を接触部421に接触させる(図24)。
ここで、雄螺子部材415で筐体410を導電性部材に固定するためには、雄螺子部材415を蓋部412側から外部に露出させる必要がある。そのため、第3蓋部412Cには、雄螺子部材415が挿通する内方を備えた円筒状のボス部412aが形成されている。そのボス部412aの内周面と雄螺子部材415との間には、円筒状の空間Scが形成される。そこで、例えば、導電性部材には、内周面に雌螺子部が設けられた円筒状のボス部(図示略)を形成する。そのボス部は、雌螺子部に雄螺子部材415が螺合されていくことによって、ボス部412aと雄螺子部材415との間の円筒状の空間Scに挿入されていく。筐体410は、このようにして導電性部材に固定される。
更に、この接地導体420は、第1コンデンサ51の一方の電気接続部51aとの電気的な接続が可能な第1接地側接続部422と、第2コンデンサ52の一方の電気接続部52aとの電気的な接続が可能な第2接地側接続部423と、を有している。具体的に、その第1接地側接続部422と第2接地側接続部423は、接触部421の周囲(つまり、接触部421に対して径方向外側)に設けている。この例示の第1接地側接続部422と第2接地側接続部423は、接地導体420の貫通孔420aや接触部421の中心に対して対角線上に配置している。
第1導体430は、第1コンデンサ51の他方の電気接続部51bとの電気的な接続が可能なコンデンサ接続部431を有している。また、第2導体440は、第2コンデンサ52の他方の電気接続部52bとの電気的な接続が可能なコンデンサ接続部441を有している。
本変形例の第1コンデンサ51と第2コンデンサ52は、上記の第1及び第2の接地側接続部422,423に接続しつつ、接地導体420の貫通孔420aや接触部421を間に挟んで並列に配置する。このため、それぞれのコンデンサ接続部431,441は、第1接地側接続部422と第2接地側接続部423とを含む仮想線L2(図26)上とは異なる位置に配置する。即ち、それぞれのコンデンサ接続部431,441は、接地導体420の周囲(つまり、接地導体420に対して径方向外側)に配置されている。言うなれば、接地導体420は、第1導体430と第2導体440とで囲まれた位置に配置されている。そして、第1及び第2の接地側接続部422,423は、その第1導体430と第2導体440との間に配置されている。
更に、第1導体430は、第1外部導体461との電気的な接続が可能な外部導体接続部432を有している。また、第2導体440は、第2外部導体462との電気的な接続が可能な外部導体接続部442を有している。ここで、それぞれの外部導体接続部432,442は、各々変形例2の外部導体接続部232,242と同等のものである。そして、第1外部導体461及び第2外部導体462は、各々変形例2の第1外部導体261及び第2外部導体262と同等のものである。従って、本変形例では、外部導体接続部432,442が矩形の片部として形成される。また、第1外部導体461及び第2外部導体462は、それぞれに、電線461a,462aの芯線が圧着された端子金具461b,462bを有している。その端子金具461b,462bは、外部導体接続部432,442が挿入され且つ保持される収容部461c,462cを各々備える。
尚、図示しないが、この第1導体430と第2導体440には、実施形態等における第1導体30等と同等のインダクタ接続部を各々設けてもよい。そのインダクタ接続部は、筐体410の内側又は外側に配置される。
接地導体420と第1導体430と第2導体440は、実施形態等と同じように、バスバや基板のパターンとして設けることができる。
本変形例のノイズフィルタ5は、第1コンデンサ51と第2コンデンサ52と第1外部導体461と第2外部導体462とをフィルタ共用体5aに設けたものである(図27及び図28)。つまり、このノイズフィルタ5は、少なくとも第1外部導体461と第2外部導体462とを有するワイヤハーネスWHにおいて、第1外部導体461と第2外部導体462との間に介在させたものである。
本変形例のフィルタ共用体5aは、実施形態等におけるフィルタ共用体1a等と同じように、搭載するノイズ低減素子の種類及び数量と外部導体の数量とを容易に変更することができる。このため、本変形例のノイズフィルタ5は、実施形態等におけるノイズフィルタ1(1A,1B,1C,1D)等と同じように、多種多様なフィルタ特性を簡便に構築することができる。よって、このノイズフィルタ5を有するワイヤハーネスWHにおいては、簡便にノイズ低減効果を得ることができる。
ところで、これまで例示した実施形態や各変形例1−4においては第1コンデンサ51と第2コンデンサ52とを並列に配置しているが、実施形態等における接地側接続部とコンデンサ接続部は、これらの前述した位置関係を保った上で、第1コンデンサ51と第2コンデンサ52が互いに傾斜させた状態で配置されるように設けてもよい。この場合には、ノイズフィルタが前述したパターン2として構成される。また、その接地側接続部とコンデンサ接続部は、これらの前述した位置関係を保った上で、第1コンデンサ51と第2コンデンサ52が互いに積層させた状態で配置されるように設けてもよい。この場合でも、ノイズフィルタは、前述したパターン2として構成される。
[変形例5]
図29から図31の符号6は本変形例のノイズフィルタを示す。実施形態や各変形例1−3に示したノイズフィルタ1−4においては、インダクタ層70を設ける場合、例えば変形例2のノイズフィルタ3B,3Cのように、インダクタ層収容部281,282にインダクタ層70が収容される。この種のノイズフィルタ1−4は、例えば、車両のデフォッガのアース線に接続され、ラジオの信号に乗る雑音(車載機器の電波に伴うもの)の除去に利用することができる。ここで、例えば、インダクタ層収容部281,282は、合成樹脂等の熱伝導率の低い材料で成形されているので、インダクタ層70から受熱した収容空間内の熱を外部に放熱し難い。このため、インダクタ層70の熱は、インダクタ接続部233,243との接点を介して第1導体230や第2導体240に逃がされる。従って、デフォッガのアース線等のような大電流が流れる場所に接続されたノイズフィルタ1−4においては、インダクタ層70が温度上昇して、インダクタ層70の耐久性が低下してしまう可能性がある。そこで、本変形例のノイズフィルタ6は、インダクタ層70の温度上昇を抑え得るように構成する。
本変形例のノイズフィルタ6は、第1コンデンサ51と第2コンデンサ52の収容が可能なフィルタ共用体6aを有する。そのフィルタ共用体6aは、合成樹脂等の絶縁性材料によって成形された第1筐体610を備える。第1筐体610は、収容部611と蓋部612とで構成する。
収容部611は、一面を開口させた箱状に成形される。この収容部611には、第1及び第2のコンデンサ51,52が重ね合わせて収容されるコンデンサ収容空間611aと、後述する第1外部導体661における端子金具661bの端子接続部661b1が電線661aと共に収容される第1端子収容空間611bと、後述する第2外部導体662における端子金具662bの端子接続部662b1が電線662aと共に収容される第2端子収容空間611cと、が設けられている(図32)。コンデンサ収容空間611aと第1端子収容空間611bと第2端子収容空間611cは、その順番で並べて配置されている。
第1筐体610(収容部611)には、その第1外部導体661の電線661aを外部に引き出す挿通孔610aと、その第2外部導体662の電線662aを外部に引き出す挿通孔610bと、が形成されている。また、この第1筐体610(収容部611)においては、先に説明した筐体10等と同等の係止部610eが保持溝610fに挿入されて取り付けられている(図30)。
蓋部612としては、コンデンサ収容空間611aの開口を塞ぐ第1蓋部612Aと、第1端子収容空間611bの開口を塞ぐ第2蓋部612Bと、第2端子収容空間611cの開口を塞ぐ第3蓋部612Cと、が設けられている(図29及び図30)。
更に、フィルタ共用体6aは、接地導体620と第1導体630と第2導体640とを備える(図33)。その接地導体620と第1導体630と第2導体640は、板状の導電性材料(金属材料等)の成形体であるバスバとして各々成形されている。収容部611は、その接地導体620と第1導体630と第2導体640と共にインサート成形される。
接地導体620は、先に説明した接地導体20等と同等の接触部621を備える。更に、この接地導体620は、第1コンデンサ51の一方の電気接続部51aとの電気的な接続が可能な第1接地側接続部622と、第2コンデンサ52の一方の電気接続部52aとの電気的な接続が可能な第2接地側接続部623と、を有している。これらの電気的な接続は、例えば半田付けや溶着によって行われる。その第1接地側接続部622と第2接地側接続部623は、コンデンサ収容空間611aに露出させ、筐体610の短手方向に並べて配置される。接地導体620においては、第1及び第2の接地側接続部622,623に対して、筐体610の長手方向に間隔を空けて接触部621が配置されている。
第1導体630と第2導体640は、接地導体620に対して、筐体610の長手方向における接触部621とは逆側に配置される。第1導体630は、第1コンデンサ51の他方の電気接続部51bとの電気的な接続が可能なコンデンサ接続部631を有している。また、第2導体640は、第2コンデンサ52の他方の電気接続部52bとの電気的な接続が可能なコンデンサ接続部641を有している。これらの電気的な接続は、例えば半田付け等によって行われる。そのコンデンサ接続部631とコンデンサ接続部641は、コンデンサ収容空間611aに露出させ、筐体610の短手方向に並べて配置される。更に、この第1導体630では、コンデンサ接続部631が第1接地側接続部622に対して筐体610の長手方向に並べて配置される。また、第2導体640では、コンデンサ接続部641が第2接地側接続部623に対して筐体610の長手方向に並べて配置される。従って、フィルタ共用体6aにおいては、第1コンデンサ51が先に接地導体620と第1導体630に接続され、その後、第2コンデンサ52が第1コンデンサ51に重ね合わせられた状態で接地導体620と第2導体640に接続される。
更に、第1導体630は、第1端子収容空間611bに露出させた端子接続部632を有する。その端子接続部632は、後述する第1インダクタ671側に第1外部導体661を介して接続されるものであり、インダクタ層70の一端(第1インダクタ671におけるコイル671bの一端)との電気的な接続が可能なインダクタ接続部であると言える。この端子接続部632は、第1導体630の主体部における板状面に対する直交方向に突出させ、第1外部導体661に対して電気的に接続される。第1外部導体661は、電線661aの芯線が圧着された端子金具661bを有する(図30)。端子金具661bには、2つの端子接続部(端子接続部661b1と端子接続部661b2)が並べて配置されている。一方の端子接続部661b1は、第1導体630の端子接続部632に対して電気的に接続される部分である。それぞれの端子接続部632,661b1は、一方が雄型のタブ状に形成され、他方が雌型の箱状に形成される。この例示では、端子接続部632を雄タブ端子とし、端子接続部661b1を雌型のボックス端子とする。他方の端子接続部661b2は、後述する第1導体691の端子接続部691bに対して電気的に接続される部分である。それぞれの端子接続部691b,661b2は、一方が雄型のタブ状に形成され、他方が雌型の箱状に形成される。この例示では、端子接続部691bを雄タブ端子とし、端子接続部661b2を雌型のボックス端子とする。
また、第2導体640は、第2端子収容空間611cに露出させた端子接続部642を有する。その端子接続部642は、後述する第2インダクタ672側に第2外部導体662を介して接続されるものであり、インダクタ層70の他端(第2インダクタ672におけるコイル672bの一端)との電気的な接続が可能なインダクタ接続部であると言える。この端子接続部642は、第2導体640の主体部における板状面に対する直交方向に突出させ、第2外部導体662に対して電気的に接続される。第2外部導体662は、電線662aの芯線が圧着された端子金具662bを有する(図30)。端子金具662bには、2つの端子接続部(端子接続部662b1と端子接続部662b2)が並べて配置されている。一方の端子接続部662b1は、第2導体640の端子接続部642に対して電気的に接続される部分である。それぞれの端子接続部642,662b1は、一方が雄型のタブ状に形成され、他方が雌型の箱状に形成される。この例示では、端子接続部642を雄タブ端子とし、端子接続部662b1を雌型のボックス端子とする。他方の端子接続部662b2は、後述する第2導体692の端子接続部692bに対して電気的に接続される部分である。それぞれの端子接続部692b,662b2は、一方が雄型のタブ状に形成され、他方が雌型の箱状に形成される。この例示では、端子接続部692bを雄タブ端子とし、端子接続部662b2を雌型のボックス端子とする。
このノイズフィルタ6には、インダクタ層70を設ける。この例示では、そのインダクタ層70として、第1インダクタ671と第2インダクタ672とを設けている。第1インダクタ671は、環状の軸心(鉄心)671aと、この軸心671aに巻き付けたコイル671bと、を有する。第2インダクタ672は、環状の軸心672aと、この軸心672aに巻き付けたコイル672bと、を有する。
このノイズフィルタ6には、その第1インダクタ671と第2インダクタ672を収容する第2筐体680が設けられている(図29及び図30)。第2筐体680は、合成樹脂等の絶縁性材料によって成形された収容部(インダクタ層収容部)681と蓋部682とで構成する。この例示の第2筐体680には、第3コンデンサ53も収容される。
収容部681は、一面を開口させた箱状に成形される。この収容部681には、第1インダクタ671が収容される第1インダクタ収容空間681aと、第2インダクタ672が収容される第2インダクタ収容空間681bと、第3コンデンサ53が収容されるコンデンサ収容空間681cと、が設けられている(図34)。第1インダクタ収容空間681aと第2インダクタ収容空間681bは、円環状の第1インダクタ671と第2インダクタ672の形状に合わせて円柱状に形成されている。蓋部682は、その第1インダクタ収容空間681aと第2インダクタ収容空間681bとコンデンサ収容空間681cのそれぞれの開口を塞ぐように成形されている。更に、この収容部681には、第1外部導体661における端子金具661bの端子接続部661b2が収容される第1端子収容空間681dと、第2外部導体662における端子金具662bの端子接続部662b2が収容される第2端子収容空間681eと、が設けられている。このノイズフィルタ6では、フィルタ共用体6aと第2筐体680とが接続された際に、第1端子収容空間611bと第1端子収容空間681dとが隣接し、かつ、第2端子収容空間611cと第2端子収容空間681eとが隣接するように、これらの端子収容空間を配置する(図31)。そこで、このノイズフィルタ6においては、第2蓋部612Bが第1端子収容空間681dの開口も塞ぎ、第3蓋部612Cが第2端子収容空間681eの開口も塞ぐ。
この収容部681には、第1導体691と第2導体692と第3導体693と放熱板694とを設けている(図35)。その第1導体691と第2導体692と第3導体693は、板状の導電性材料(金属材料等)の成形体であるバスバとして各々成形されている。また、放熱板694は、板状の導電性材料(金属材料等)で成形されている。この放熱板694には、熱伝導率の高い金属材料(銅板等)を用いる。これら第1導体691と第2導体692と第3導体693と放熱板694は、同一平面上に配置される。収容部681は、その第1導体691と第2導体692と第3導体693と放熱板694と共にインサート成形される。
第1導体691は、第1インダクタ671におけるコイル671bの一端との電気的な接続が可能なインダクタ接続部691aを有している。第2導体692は、第2インダクタ672におけるコイル672bの一端との電気的な接続が可能なインダクタ接続部692aを有している。第3導体693は、第1インダクタ671におけるコイル671bの他端との電気的な接続が可能なインダクタ接続部693aと、第2インダクタ672におけるコイル672bの他端との電気的な接続が可能なインダクタ接続部693bと、を有している。これらの電気的な接続は、例えば半田付け等によって行われる。第1インダクタ671に関わるインダクタ接続部691a,693aは、第1インダクタ収容空間681aと収容部681の外部とに露出させている(図34及び図36)。第2インダクタ672に関わるインダクタ接続部692a,693bは、第2インダクタ収容空間681bと収容部681の外部とに露出させている。
また、第1導体691は、第1端子収容空間681dに露出させた端子接続部691bを有する。その端子接続部691bは、第1導体691の主体部における板状面に対する直交方向に突出させ、第1外部導体661における端子金具661bの端子接続部661b2に対して電気的に接続される。
また、第2導体692は、第2端子収容空間681eに露出させた端子接続部692bを有する。その端子接続部692bは、第2導体692の主体部における板状面に対する直交方向に突出させ、第2外部導体662における端子金具662bの端子接続部662b2に対して電気的に接続される。
また、第3導体693は、第3コンデンサ53の一方の電気接続部53aとの電気的な接続が可能なコンデンサ接続部693cを有する。その第3コンデンサ53の他方の電気接続部53bは、放熱板694の後述するコンデンサ接続部694cと電気的に接続される。これらの電気的な接続は、例えば半田付け等によって行われる。そのコンデンサ接続部693c,694cは、コンデンサ収容空間681cと収容部681の外部とに露出させている(図34及び図36)。
放熱板694は、収容部681の壁部681f(図36)の全面に渡って存在させた板状の主体部694aと、この主体部694aと同一平面上で収容部681から突出させた板状の突出部694bと、を有する(図34−図36)。この例示では、主体部694aと突出部694bをそれぞれ矩形に形成している。
主体部694aには、貫通孔694a1が形成されている。その貫通孔694a1には、互いに間隔を空けて、第1導体691と第2導体692と第3導体693とが配置されている。主体部694aは、第1インダクタ収容空間681aに露出させた第1露出部694a2と、第2インダクタ収容空間681bに露出させた第2露出部694a3と、を有する(図34)。第1露出部694a2と第2露出部694a3は、円環状の第1インダクタ671と第2インダクタ672の形状に合わせて円形に形成されている。第1インダクタ671と第2インダクタ672は、その第1露出部694a2と第2露出部694a3から間隔を空けて配置する。第1露出部694a2は、第1インダクタ収容空間681aの空気の熱を奪うことができる。第2露出部694a3は、第2インダクタ収容空間681bの空気の熱を奪うことができる。
主体部694aには、第3コンデンサ53の他方の電気接続部53bとの電気的な接続が可能なコンデンサ接続部694cが形成されている。
突出部694bは、第2筐体680をフィルタ共用体6aに接続するための接続部として利用される。第1筐体610(収容部611)には、その突出部694bが突出方向に挿入され且つ保持される保持溝610gが形成されている(図30及び図37)。その保持溝610gは、突出部694bにおける対向する2つの辺部が各々嵌合されるものである。この保持溝610gは、突出部694bの一方の板状面を第1筐体610(収容部611)の外部に露出させる。このため、放熱板694は、その突出部694bから外部の空気に放熱することができる。その突出部694bの一方の板状面とは、接地導体620の接触部621における車体との接地面と同じ側に存在している。この例示では、接触部621が車体に取り付けられた際に、その突出部694bの板状面が車体に対して間隔を空けて向き合っている。
ここで、この突出部694bには、貫通孔694b1が形成されている(図35)。その貫通孔694b1には、片持ちの板バネ部694dが設けられている。その板バネ部694dは、貫通孔694b1における主体部694a側の端部から、突出部694bの突出方向で且つ突出部694bの一方の板状面と対向する車体に向けて突出させる(図36及び図37)。このため、この板バネ部694dは、突出部694bの一方の板状面よりも車体側に突出している。この板バネ部694dは、接触部621が車体に取り付けられた際に、車体から押動されて根元側を支点に傾倒し、その際に発生する弾発力によって車体との接触状態を保持する。このため、放熱板694は、この板バネ部694dを介して突出部694bの熱を車体に逃がすことができる。
本変形例のノイズフィルタ6においては、通電に伴い、第1インダクタ671で発生した熱が第1インダクタ収容空間681aの空気に伝わると共に、第2インダクタ672で発生した熱が第2インダクタ収容空間681bの空気に伝わる。そして、このノイズフィルタ6では、第1インダクタ収容空間681aの空気の熱が主として放熱板694の第1露出部694a2に伝わると共に、第2インダクタ収容空間681bの空気の熱が主として放熱板694の第2露出部694a3に伝わる。その第1及び第2の露出部694a2,694a3の熱は、主に均熱効果によって放熱板694の主体部694aで拡散すると共に、突出部694bと板バネ部694dに伝達される。その突出部694bと板バネ部694dからは、周囲の空気に放熱される。更に、板バネ部694dからは、車体にも放熱される。このため、このノイズフィルタ6においては、第1インダクタ671と第2インダクタ672の温度上昇を抑えることができる。
また、本変形例のノイズフィルタ6においては、放熱板694の主体部694aが収容部681の壁部681fの全面に渡って存在しているので、この主体部694aに接する壁部681fに対して当該主体部694aの熱が伝わり、主体部694aよりも熱の拡散時間を要するが、その壁部681fでも熱が拡散して収容部681の外部に放熱される。更に、本変形例のノイズフィルタ6においては、第1インダクタ671のコイル671bの両端から第1導体691と第3導体693とに放熱され、かつ、第2インダクタ672のコイル672bの両端から第2導体692と第3導体693とに放熱される。その第1から第3の導体691,692,693の熱は、それぞれが接している壁部681fに伝わり、主体部694aよりも熱の拡散時間を要するが、その壁部681fでも熱が拡散して収容部681の外部に放熱される。このため、このノイズフィルタ6においては、これらの熱伝達経路を熱が伝わることでも、第1インダクタ671と第2インダクタ672の温度上昇を抑えることができる。
以上示したように、本変形例のノイズフィルタ6は、従来のようなコイルを経てインダクタの熱を放散させるのみならず、収容部681の壁に占める割合の大きい放熱板694を介して多くの熱を放散させることができる。このため、このノイズフィルタ6は、第1インダクタ671と第2インダクタ672の温度上昇を適切に抑えることができる。そして、これにより、このノイズフィルタ6は、第1インダクタ671と第2インダクタ672の温度上昇に伴う耐久性の低下を抑制することができる。また、このノイズフィルタ6は、過度に耐熱温度の高い第1インダクタ671と第2インダクタ672を用いる必要が無くなるので、原価の低減をも図ることができる。更に、このノイズフィルタ6を有するワイヤハーネスWHにおいては、そのノイズフィルタ6によって得られた作用効果と同等のものを得ることができる。
ここで、第1インダクタ収容空間681aと第2インダクタ収容空間681bにおいては、第1インダクタ671と第2インダクタ672とが各々室内の空気に触れた状態にある。このため、第1インダクタ671と第2インダクタ672からの放熱は、その空気の熱伝導率の影響を受ける。換言するならば、第1インダクタ671と第2インダクタ672は、接触している物質の熱伝導率が高い程、放熱し易くなる。
そこで、第1インダクタ671と第2インダクタ672は、空気よりも熱伝導率が高く且つ絶縁性を有する高熱伝導率部材675にコイル671b,672bの接点部(両端)を除いて埋め込み、その接点部を除いた全ての外壁面を高熱伝導率部材675に接触させることによって、放熱効果を高めることが望ましい(図38)。その高熱伝導率部材675は、例えば、2分割されている内部空間が円柱の樹脂金型に第1インダクタ671又は第2インダクタ672を配置し、その内部空間に高熱伝導率で絶縁性及び耐熱性を備えたポッティング材料を充填させることによって成形する。そのポッティング材料としては、例えば、ウレタン樹脂、各種フィラーが添加されたプラスチック材料やセラミック材料、ガラス、アスファルト、コンクリート等が考えられる。ポッティング材料は、第1インダクタ671や第2インダクタ672の体格や放熱量等に応じて適宜選択すればよい。
図39には、第1インダクタ671又は第2インダクタ672に対する通電時間とコイル671b,672bの表面温度との関係を示している。本図では、実線が高熱伝導率部材675を有する場合を示し、破線が高熱伝導率部材675を具備しない場合(つまり第1インダクタ671又は第2インダクタ672が空気に触れている場合)を示している。本図によれば、高熱伝導率部材675を設けることで、第1インダクタ671と第2インダクタ672が空気に直接触れている場合よりも、コイル671b,672bの温度上昇が抑えられていることが判る。よって、本変形例のノイズフィルタ6は、高熱伝導率部材675を設けることで、第1インダクタ671と第2インダクタ672の温度上昇の更なる抑制効果を得ることができる。
[変形例6]
図40及び図41の符号7は本変形例のノイズフィルタを示す。実施形態や各変形例1−4及び5に示したノイズフィルタ1−4,6においては、インダクタ層70と共に一体化された構造物から電線が引き出されてワイヤハーネスWHが形成されている。このため、その電線は、例えばワイヤハーネスWHの搬送中や車体への取り付け後などにノイズフィルタ1−4,6から荷重が加わることで、耐久性の低下を引き起こしてしまう可能性がある。そこで、本変形例のノイズフィルタ7は、先に示したノイズフィルタ1−4,6において、コンデンサ側とインダクタ層側とを別体構造とし、これらの間を電線で連結させるように構成する。
例えば、ここでは、変形例3のノイズフィルタ4をベースにして本変形例のノイズフィルタ7の説明を行う。本変形例のノイズフィルタ7は、ノイズフィルタ4のフィルタ共用体4aと略同等のコンデンサ側収容体としてのフィルタ共用体7aと、インダクタ層70を有するインダクタ側収容体7bと、を備える。更に、このノイズフィルタ7は、そのフィルタ共用体(コンデンサ側収容体)7aとインダクタ側収容体7bとを電気的に連結させる第1及び第2の電線791,792を備える。
フィルタ共用体(コンデンサ側収容体)7aは、フィルタ共用体4aと同じように第1及び第2のコンデンサ51,52を有するものであるが、そのフィルタ共用体4aとは次の点が異なる。本変形例のフィルタ共用体7aには、フィルタ共用体4aの第1導体330に替えて、コンデンサ接続部731及び外部導体接続部732を有する第1導体730が設けられ、かつ、フィルタ共用体4aの第2導体340に替えて、コンデンサ接続部741及び外部導体接続部742を有する第2導体740が設けられている。
第1導体730は、板状の導電性材料(金属材料等)の成形体であるバスバとして成形されている。コンデンサ接続部731は、第1導体330のコンデンサ接続部331と同等のものであり、第1コンデンサ51の他方の電気接続部51bとの電気的な接続が可能である。外部導体接続部732は、第1外部導体761との電気的な接続が可能なものである。この外部導体接続部732は、例えば第1導体730の主体部の板状面から突出させた圧着部であり、第1外部導体761の電線761aの芯線等に対して電気的に接続される。その電線761aは、フィルタ共用体4aと同じように、筐体310(収容部311)の挿通孔310aから外部に引き出される。この電線761aは、ワイヤハーネスWHの幹線WH1から分岐している。
この第1導体730は、更に端子接続部733を有している。その端子接続部733は、インダクタ層70の一端に第1電線791を介して接続されるものであり、インダクタ層70の一端との電気的な接続が可能なインダクタ接続部であると言える。この端子接続部733は、第1電線791の一端に対して電気的に接続される部分であり、第1電線791の一端に設けた端子接続部791aと接続される。それぞれの端子接続部733,791aは、一方が雄型のタブ状に形成され、他方が雌型の箱状に形成される。この例示では、端子接続部791aを雄タブ端子とし、端子接続部733を雌型のボックス端子とする。本変形例の筐体310(収容部311)には、短手方向で挿通孔310aと対向する位置に挿通孔710cが形成されている。第1電線791は、その挿通孔710cから外部に引き出される。
第2導体740は、板状の導電性材料(金属材料等)の成形体であるバスバとして成形されている。コンデンサ接続部741は、第2導体340のコンデンサ接続部341と同等のものであり、第2コンデンサ52の他方の電気接続部52bとの電気的な接続が可能である。外部導体接続部742は、第2外部導体762との電気的な接続が可能なものである。この外部導体接続部742は、例えば第2導体740の主体部の板状面から突出させた圧着部であり、第2外部導体762の電線762aの芯線等に対して電気的に接続される。その電線762aは、フィルタ共用体4aと同じように、筐体310(収容部311)の挿通孔310bから外部に引き出される。この電線762aは、ワイヤハーネスWHの幹線WH1から分岐している。
この第2導体740は、更に端子接続部743を有している。その端子接続部743は、インダクタ層70の他端に第2電線792を介して接続されるものであり、インダクタ層70の他端との電気的な接続が可能なインダクタ接続部であると言える。この端子接続部743は、第2電線792の一端に対して電気的に接続される部分であり、第2電線792の一端に設けた端子接続部792aと接続される。それぞれの端子接続部743,792aは、一方が雄型のタブ状に形成され、他方が雌型の箱状に形成される。この例示では、端子接続部792aを雄タブ端子とし、端子接続部743を雌型のボックス端子とする。本変形例の筐体310(収容部311)には、短手方向で挿通孔310bと対向する位置に挿通孔710dが形成されている。第2電線792は、その挿通孔710dから第1電線791と同じ向きで外部に引き出される。
インダクタ側収容体7bは、インダクタ層70と筐体780と第1導体785と第2導体786とを備える。
インダクタ側収容体7bにおいては、インダクタ層70としてインダクタ771を設けている。インダクタ771は、直線状の軸心771aと、この軸心771aに巻き付けたコイル771bと、を有する。
筐体780は、合成樹脂等の絶縁性材料によって成形された収容部(インダクタ層収容部)781と蓋部(図示略)とで構成する。収容部781は、一面を開口させた箱状に成形される。蓋部は、その開口を塞ぐものである。収容部781には、第1導体785と第2導体786とを設けている。この収容部781は、その第1導体785と第2導体786と共にインサート成形される。
第1導体785と第2導体786は、板状の導電性材料(金属材料等)の成形体であるバスバとして各々成形されている。第1導体785は、インダクタ771におけるコイル771bの一端との電気的な接続が可能なインダクタ接続部785aを有している。第2導体786は、インダクタ771におけるコイル771bの他端との電気的な接続が可能なインダクタ接続部786aを有している。これらの電気的な接続は、例えば半田付け等によって行われる。
更に、第1導体785は、第1電線791の他端に設けた端子接続部791bと接続される端子接続部785bを有している。それぞれの端子接続部785b,791bは、一方が雄型のタブ状に形成され、他方が雌型の箱状に形成される。この例示では、端子接続部791bを雄タブ端子とし、端子接続部785bを雌型のボックス端子とする。筐体780(収容部781の1つの側壁)には、挿通孔780aが形成されている。第1電線791は、その挿通孔780aから外部に引き出される。
また、第2導体786は、第2電線792の他端に設けた端子接続部792bと接続される端子接続部786bを有している。それぞれの端子接続部786b,792bは、一方が雄型のタブ状に形成され、他方が雌型の箱状に形成される。この例示では、端子接続部792bを雄タブ端子とし、端子接続部786bを雌型のボックス端子とする。筐体780(挿通孔780aが配置されている収容部781の側壁)には、挿通孔780bが形成されている。第2電線792は、その挿通孔780bから第1電線791と同じ向きで外部に引き出される。
このように、本変形例のノイズフィルタ7は、フィルタ共用体(コンデンサ側収容体)7aとインダクタ側収容体7bとを個別に設け、これらの間を第1電線791と第2電線792とで電気的に接続する。このため、本変形例のワイヤハーネスWHにおいては、フィルタ共用体(コンデンサ側収容体)7aよりも重いインダクタ側収容体7bをワイヤハーネスWHの幹線WH1に保持部材795を介して保持させることができるので、コンデンサ側とインダクタ層側とが一体化されたノイズフィルタを備えたものと比較して、電線761a,762aに掛かるノイズフィルタ7からの荷重が軽減される。従って、本変形例のノイズフィルタ7は、例えばワイヤハーネスWHの搬送中や車体への取り付け後などにおいて、振動や車体からの入力等によって電線761a,762aに加わる負荷を抑え、この電線761a,762aの耐久性の低下を抑えることができる。これにより、信頼性の高いノイズフィルタ7の車両への実装が可能になる。更に、このノイズフィルタ7を有するワイヤハーネスWHにおいては、そのノイズフィルタ6によって得られた作用効果と同等のものを得ることができる。
ここで、その保持部材795には、粘着テープや結束バンド等を利用することができる。例えば、粘着テープを用いる場合には、インダクタ側収容体7bと幹線WH1を粘着テープで幾重にも巻き付けて相互間の固定を行えばよい。また、保持部材795としては、クリップ等による相互間の保持機構を用いてもよい。