次に、本発明の一実施の形態を図1〜図12に基づいて説明する。
本実施形態のヒートポンプ式空調システムの全体概略構成を図1に示す。図1において、このヒートポンプ式空調システム100は、室外に設置されるヒートポンプ熱源機としての室外機1と、この室外機1に対し冷温水往き管2及び冷温水戻り管3を介して接続されて室内に設置される、複数の熱交換端末(この例では、輻射端末である冷温水パネル51及び冷温水パネル52の2つ)とを有する。
この例では、前記冷温水パネル51はA室、B室からなる2室構造のうち前記A室に配置されており、前記冷温水パネル52は前記B室に配置されている。このとき、前記室外機1から延びる前記冷温水往き管2の途中に1つの往きヘッダ91が設けられており、冷温水往き管2のうち前記往きヘッダ91より上流側部分は、1つの共通往き管2Aとして構成され、前記室外機1からの冷温水が供給される。そして、冷温水往き管2のうち前記往きヘッダ91より下流側部分2Bは、複数(この例では2つ)の往き管、すなわち、前記冷温水パネル51への往き管2B1と、前記冷温水パネル52への往き管2B2と、に分岐する形で前記往きヘッダ91に接続されている。なお、前記往き管2B1,2B2が各請求項記載の個別往き管に相当し、前記共通往き管2Aと往き管2B1とが前記冷温水パネル51への導入管路に相当し、前記共通往き管2Aと往き管2B2とが前記冷温水パネル52への導入管路に相当している。
同様に、前記室外機1へと延びる前記冷温水戻り管3の途中に1つの戻りヘッダ92が設けられており、冷温水戻り管3のうち前記戻りヘッダ92より上流側部分3Bは、複数(この例では2つ)の戻り管、すなわち、前記冷温水パネル51からの戻り管3B1と、前記冷温水パネル52からの戻り管3B2とに分かれている。そして、冷温水戻り管3のうち前記戻りヘッダ92より下流側部分は、1つの共通戻り管3Aとして構成され(すなわち分岐された戻り管3B1,3B2が共通戻り管3Aの上流側に集結する形で戻りヘッダ92に接続されている)、前記戻り管3B1,3B2を介し導入された冷温水を前記室外機1へと戻す。なお、前記戻り管3B1,3B2が各請求項記載の個別戻り管に相当し、前記共通戻り管3Aと戻り管3B1とが前記冷温水パネル51からの導出管路に相当し、前記共通戻り管3Aと戻り管3B2とが前記冷温水パネル52からの導出管路に相当している。
なお、前記共通往き管2Aと前記共通戻り管3Aとの間には、これらを接続するバイパス管50が設けられている。なお、このバイパス管50の横断面積は、前記共通往き管2A及び前記共通戻り管3Aの横断面積よりも十分に小さくなっている。
そして、前記冷温水パネル51への往き管2B1、前記冷温水パネル52への往き管2B2には、熱動弁コントローラCVからの駆動信号により各往き管を開閉可能な複数(この例では2つ)の熱動弁V1,V2がそれぞれ設けられている。この例では、前記A室には、前記冷温水パネル51,52の放熱(暖房)及び吸熱(冷房)運転操作を行うためのメインリモコン装置RMと、前記冷温水パネル51の放熱(暖房)及び吸熱(冷房)運転操作を行うための端末用リモコン装置RAとが設けられている。また、前記B室には前記冷温水パネル52の放熱(暖房)及び吸熱(冷房)運転操作を行うための端末用リモコン装置RBが設けられている。
前記メインリモコン装置RMでの操作に対応して出力される制御信号SS1は、前記室外機1の制御を行う室外機制御部(後述)へと入力され、これによって前記共通往き管2Aへ供給される冷温水の流量や温度等が制御されるとともに、さらにこれに対応して前記室外機制御部から前記熱動弁コントローラCVに制御信号SS2が出力され、これに応じて熱動弁コントローラCVから出力される制御信号S1,S2によって各熱動弁V1,V2の開閉動作が制御可能である。また、前記端末用リモコン装置RAでの操作に対応して出力される制御信号Saは前記熱動弁コントローラCVへと入力され、これに応じて熱動弁コントローラCVから出力される制御信号S1によって前記熱動弁V1の開閉動作が制御可能である。また、前記端末用リモコン装置RBでの操作に対応して出力される制御信号Sbは前記熱動弁コントローラCVへと入力され、これに応じて熱動弁コントローラCVから出力される制御信号S2によって前記熱動弁V2の開閉動作が制御可能である。
一方、前記冷温水パネル51からの戻り管3B1、及び、前記冷温水パネル52からの戻り管3B2には、戻り温度検出手段としての戻り温度センサ53,54がそれぞれ設けられている。これら戻り温度センサ53,54は、対応する戻り管3B1,3B2における温水又は冷水の温度(戻り温度)をそれぞれ検出し、検出結果を表す検出信号を前記熱動弁コントローラCVへと出力する。
熱動弁コントローラCVは、前記メインリモコン装置RM及び前記端末用リモコン装置RA,RBの操作に対応しつつ、前記戻り温度センサ53,54により検出される前記戻り温度に基づき、前記熱動弁V1,V2の開閉制御を行う(詳細は後述)。これにより、ユーザは、リモコン装置RM,RA,RBを適宜に操作することで前記冷温水パネル51,52の運転状態を制御可能となる。
次に、前記室外機1の概略的なシステム構成を図2(a)に示す。図2(a)において、室外機1は、例えばHFCなどの合成化合ガスを冷媒として循環させ室外での吸放熱を行う冷媒循環回路21と、例えば不凍液などを冷温水として循環させ前記複数の熱交換端末(この例では、冷温水パネル51及び冷温水パネル52)での吸放熱を行う、(前記冷温水往き管2及び前記冷温水戻り管3からなる)冷温水循環回路22と、の間における熱交換を行うものである。
すなわち、前記冷媒循環回路21は、前記室外機1に備えられた、前記冷媒の循環方向を切り替える四方弁6と、前記冷媒を圧縮する圧縮機7と、前記冷媒と外気との熱交換を行う室外熱交換器8(熱源側熱交換器に相当)と、前記冷媒を減圧膨張させる膨張弁9と、前記冷温水往き管2及び前記冷温水戻り管3を循環する前記冷温水と前記冷媒との熱交換を行う水−冷媒熱交換器11(水熱交換器に相当)とを、冷媒配管15で接続して形成されている。なお、前記冷媒配管15で互いに接続された前記四方弁6、前記圧縮機7、前記室外熱交換器8、前記膨張弁9によってヒートポンプ装置が構成されている。また、前記室外熱交換器8に送風する室外ファン10がさらに設けられている。
前記四方弁6は4つのポートを備える弁であり、(前記冷媒配管15の一部を構成する)冷媒主経路15a用の2つのポートのそれぞれに対して、(前記冷媒配管15の一部を構成する)他の冷媒副経路15b用の2つのポートのいずれに接続するかを切り替える。冷媒副経路15b用の2つのポートどうしはループ状に配置された冷媒副経路15bで接続されており、この冷媒副経路15b上に前記圧縮機7が設けられている。
前記圧縮機7は、低圧ガス状態の冷媒を昇圧して高圧ガス状態にするとともに、室外機1内における冷媒配管15全体の冷媒を循環させるポンプとしても機能する。なお、前記圧縮機7の吐出側における前記冷媒副経路15bには、吐出温度検出手段としての吐出温度センサ55が設けられ、圧縮機7から吐出される冷媒の温度(冷媒吐出温度)を検出し、検出結果を表す検出信号を後述の室外機制御部CUへと出力する。
また、前記四方弁6の冷媒主経路15a用の2つのポートどうしは、ループ状に配置された前記冷媒主経路15aで接続されており、この冷媒主経路15a上に前記室外熱交換器8、前記膨張弁9、及び前記水−冷媒熱交換器11が順に(図2(a)に示す例では冷媒主経路15a左回りの順に)設けられている。
前記室外熱交換器8は、その内部を通過する液体状態の前記冷媒の温度が室外の外気温度より低い場合は外気の熱を冷媒に吸熱してガス状態に蒸発させる蒸発器として機能する。また、その内部を通過するガス状態の前記冷媒の温度が室外の外気温度より高い場合は、その冷媒の熱を放熱して液体状態に凝縮させる凝縮器として機能する(後述の図2(b)参照)。
前記室外ファン10は、前記室外熱交換器8に対して送風することで、室外熱交換器8の性能を向上させる。
前記膨張弁9は、高圧液体状態の前記冷媒を減圧膨張させて低圧液体状態とするよう機能する。
水−冷媒熱交換器11は、前記のように冷媒主経路15aに接続されてその内部に冷媒を通過させるとともに、前記冷温水往き管2及び前記冷温水戻り管3にも接続されてその内部に冷温水を通過させる。水−冷媒熱交換器11の内部を通過するガス状態の冷媒の温度が冷温水の温度より高い場合は、冷媒に対してその熱を冷温水に放熱し液体状態に凝縮させる凝縮器として機能する。また、水−冷媒熱交換器11の内部を通過する液体状態の冷媒の温度が前記冷温水の温度より低い場合は、冷媒に対して冷温水の熱を吸熱しガス状態に蒸発させる蒸発器として機能する(後述の図2(b)参照)。
一方、前記冷温水循環回路22は、前記室外機1に備えられた、前記水−冷媒熱交換器11、前記冷温水に循環圧力を加える循環ポンプ12、及びシスターンタンク13と、前記複数の熱交換端末(この例では、冷温水パネル51及び冷温水パネル52の2つ)を、前記冷温水往き管2(詳細には共通往き管2A)及び前記冷温水戻り管3(詳細には共通戻り管3A)で接続して形成されている。
前記水−冷媒熱交換器11は、前記冷温水往き管2及び前記冷温水戻り管3に接続されており、前記冷温水戻り管3上に、前記シスターンタンク13及び前記循環ポンプ12が設けられている。
前記シスターンタンク13は、キャビテーションなどで冷温水中に生じた気泡の分離(気水分離機能)と、前記冷温水循環回路22における膨張冷温水の吸収及び冷温水の補給を行う。
前記循環ポンプ12は、前記冷温水往き管2及び前記冷温水戻り管3全体に冷温水を循環させるよう機能する。
なお、前記水−冷媒熱交換器11の出口側の前記冷温水往き管2(詳細には共通往き管2A)には、往き温度検出手段としての往き温度センサ56が設けられ、共通往き管2Aにおける温水又は冷水の温度(往き温度)を検出し、検出結果を表す検出信号を後述の室外機制御部CUへと出力する。
そして、室外機1は、当該室外機1の制御を行う室外機制御部CUを備えている。この室外機制御部は、主にCPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータで構成され、前記メインリモコン装置RMからの前記制御信号SS1に基づいて室外機1全体の制御を行うとともに、対応する前記制御信号SS2を前記熱動弁コントローラCVに出力する(詳細は後述)。
上記構成の冷媒循環回路21において、前記圧縮機7は冷媒副経路15b上において一方向に冷媒を循環させるものであり、前記四方弁6の切り替えによって冷媒主経路15a上の冷媒の循環方向を制御する。前記図2(a)は暖房運転時の循環方向を示しており、圧縮機7から吐出した冷媒が水−冷媒熱交換器11、膨張弁9、室外熱交換器8の順で流通する。これにより、低温・低圧で吸入されたガス状態の冷媒が前記圧縮機7で圧縮されて高温・高圧のガスとなった後、前記水−冷媒熱交換器11(凝縮器として機能)において前記冷温水戻り管3からの温水に熱を放出しながら高圧の液体に変化する。こうして液体になった冷媒は前記膨張弁9で減圧されて低圧の液体となり蒸発しやすい状態となる。その後、低圧の液体が前記室外熱交換器8(蒸発器として機能)において蒸発してガスに変化することで外気から吸熱する。そして冷媒は、低温・低圧のガスとして再び前記圧縮機7へと戻る。
このとき、前記のようにして水−冷媒熱交換器11で加熱された温水は、冷温水往き管2から前記複数の熱交換端末(前記の例では、冷温水パネル51及び冷温水パネル52の2つ)に供給されて室内空気に対し輻射伝熱により放熱して室内を加温し、その後に前記シスターンタンク13を通過して再び前記循環ポンプ12へ戻る。以上のような冷媒循環回路21の冷凍サイクルと冷温水循環回路22との間で熱交換を行うことにより、室内空気の温度を上げる暖房運転が行われる。
一方、前記図2(b)は冷房運転時の循環方向を示しており、圧縮機7から吐出した冷媒が室外熱交換器8、膨張弁9、水−冷媒熱交換器11の順で流通する。これにより、低温・低圧で吸入されたガス状態の冷媒が前記圧縮機7で圧縮されて高温・高圧のガスとなった後、前記室外熱交換器8(凝縮器として機能)において前記室外ファン10の送風で冷却されることで外気に熱を放出しながら高圧の液体に変化する。こうして液体になった冷媒は前記膨張弁9で減圧されて低圧の液体となり蒸発しやすい状態となる。その後、低圧の液体が前記水−冷媒熱交換器11(蒸発器として機能)において蒸発してガスに変化することで前記冷温水戻り管3からの冷水から吸熱を行う。そして冷媒は、低温・低圧のガスとして再び前記圧縮機7へと戻る。
このとき、前記のようにして水−冷媒熱交換器11で冷却された冷水は、冷温水往き管2から前記複数の熱交換端末(前記の例では、冷温水パネル51及び冷温水パネル52の2つ)に供給されて室内空気から輻射伝熱により吸熱して室内を冷却し、その後に前記シスターンタンク13を通過して再び前記循環ポンプ12へ戻る。以上のような冷媒循環回路21の冷凍サイクルと冷温水循環回路22との間で熱交換を行うことにより、室内空気の温度を下げる冷房運転が行われる。
次に、前記室外機制御部CUの主たる機能的構成を図3により説明する。
図3に示すように、前記室外機制御部CUは、圧縮機制御手段としての圧縮機制御部61と、膨張弁制御手段としての膨張弁制御部62とを機能的に備えている。
圧縮機制御部61は、前記往き温度センサ56により検出された温水又は冷水の前記往き温度に応じて、前記圧縮機7の回転数を制御する。特にこの例では、圧縮機制御部61は、前記往き温度センサ56により検出される前記往き温度が、例えば前記メインリモコン装置RMの操作に対応して適宜に設定(詳細は省略)される所望の目標温度(目標往き温度)となるように、前記圧縮機7の回転数を制御する。
膨張弁制御部62は、前記吐出温度センサ55により検出された前記冷媒吐出温度に応じて、前記膨張弁9の弁開度を制御する。特にこの例では、膨張弁制御部62は、吐出温度センサ55により検出される前記冷媒吐出温度が、例えば前記メインリモコン装置RMの操作に対応して適宜に設定(詳細は省略)される適宜の目標吐出温度となるように、前記膨張弁9の弁開度を制御する。
前記圧縮機制御部61及び前記膨張弁制御部62が実行する制御手順を図4及び図5のフローチャートにより説明する。
まず、暖房運転時の圧縮機制御部61による制御手順を図4(a)のフローチャートに示す。図4(a)において、まずステップS10で、圧縮機制御部61は、前記室外機1が運転開始状態となったか否かを判定する。具体的には、運転開始状態とは、例えば、前記メインリモコン装置RMや前記端末用リモコン装置RA,RBを介し操作者による適宜の室外機1の運転開始操作がなされることで停止状態から起動される場合、若しくは、運転停止後から再起動して室外機1の運転が再び開始される場合(詳細は後述)、である。運転開始状態となるまではステップS10の判定が満たされず(S10:No)ループ待機し、運転開始状態となるとステップS10の判定が満たされ(S10:Yes)、ステップS15に移る。
ステップS15では、圧縮機制御部61は、室外機1が運転終了状態となったか否かを判定する。すなわち、後述のような回転数の制御の下で暖房運転を行って暖房負荷が小さくなると、前記室外機1を動作させずとも、前記戻り温度センサ53,54で検出される前記戻り温度がいずれも前記目標戻り温度以上に達する場合がある。この場合は、前記室外機制御部CUによる公知の制御により室外機1が停止され、待機状態となる(すなわち、いったん室外機1の運転が終了される)。ステップS15では、圧縮機制御部61は、室外機1がこの待機状態となったか否かを判定するものである。運転終了状態(すなわち待機状態)となっていた場合はステップS15の判定が満たされ(S15:YES)、このフローを終了する。一方、運転終了状態(すなわち待機状態)となっていない間はステップS15の判定は満たされず(S15:NO)、ステップS20に移る。
ステップS20では、圧縮機制御部61は、この時点で前記往き温度センサ56から検出された前記往き温度が前記目標往き温度(前記の例では60[℃])を下回っているか否かを判定する。往き温度が目標往き温度を下回っている場合、判定が満たされ(S20:YES)、ステップS25に移る。
ステップS25では、圧縮機制御部61は、前記圧縮機7の回転数を増大する。その後、前記ステップS15に戻って同様の手順を繰り返す。
一方、前記ステップS20の判定において、前記往き温度が前記目標往き温度以上である場合、判定は満たされず(S20:NO)、ステップS30に移る。
ステップS30では、圧縮機制御部61は、前記圧縮機7の回転数を低減する。その後、前記ステップS15に戻って同様の手順を繰り返す。
以上のようにして、ステップS20、ステップS25、及びステップS30の処理により、前記往き温度が前記目標往き温度に一致するよう圧縮機7の回転数を制御する、往き温度制御が行われる。
次に、暖房運転時の膨張弁制御部62による制御手順を図4(b)のフローチャートに示す。図4(b)において、まずステップS60で、膨張弁制御部62は、前記図4(a)のステップS10と同様にして、前記室外機1が運転開始状態となったか否かを判定する。運転開始状態となるまではステップS60の判定が満たされず(S60:No)ループ待機し、運転開始状態となるとステップS60の判定が満たされ(S60:Yes)、ステップS65に移る。
ステップS65では、膨張弁制御部62は、前記図4(a)のステップS15と同様にして、前記室外機1が運転終了状態となったか否かを判定する。運転終了状態(すなわち待機状態)となっていた場合はステップS65の判定が満たされ(S65:YES)、このフローを終了する。一方、運転終了状態(すなわち待機状態)となっていない間はステップS65の判定は満たされず(S65:NO)、ステップS70に移る。
ステップS70では、膨張弁制御部62は、この時点で前記吐出温度センサ55から検出された前記冷媒吐出温度が前記目標吐出温度を下回っているか否かを判定する。冷媒吐出温度が目標吐出温度を下回っている場合、判定が満たされ(S70:YES)、ステップS75に移る。
ステップS75では、膨張弁制御部62は、前記膨張弁9の弁開度を減少させる。その後、前記ステップS65に戻って同様の手順を繰り返す。
一方、前記ステップS70の判定において、前記冷媒吐出温度が前記目標吐出温度以上である場合、判定は満たされず(S70:NO)、ステップS80に移る。
ステップS80では、膨張弁制御部62は、前記膨張弁9の弁開度を増大させる。その後、前記ステップS65に戻って同様の手順を繰り返す。
以上のようにして、ステップS70、ステップS75、及びステップS80の処理により、前記冷媒吐出温度が前記目標吐出温度に一致するよう膨張弁9の弁開度を制御する、冷媒吐出温度制御が行われる。
また、冷房運転時の圧縮機制御部61による制御手順を図5(a)のフローチャートに示す。図5(a)に示すように、このフローでは、前記図4(a)のフローにおけるステップS20が、不等号の向きが逆になったステップS20Aに置き換えられている。すなわちステップS20Aでは、圧縮機制御部61は、この時点で前記往き温度センサ56から検出された前記往き温度が前記目標往き温度(7[℃])を上回っているか否かを判定する。往き温度が目標往き温度を上回っている場合は判定が満たされ(S20A:YES)て前記ステップS25に移り、前記往き温度が前記目標往き温度以下である場合は判定は満たされず(S20A:NO)、ステップS30に移る。これ以外の手順は前記図4(a)と同様であり、説明を省略する。
また、冷房運転時の膨張弁制御部62による制御手順を図5(b)のフローチャートに示す。図5(b)に示すように、このフローでは、全手順の内容が前記図4(b)のフローと同一となることから、説明を省略する。
次に、前記メインリモコン装置RMの詳細について、説明する。図6にメインリモコン装置RMの外観を示す。図6において、メインリモコン装置RMには、前記複数の熱交換端末(前記の例では、冷温水パネル51,52)の運転状態や各種設定状態を表示可能な表示部201と、メインリモコン装置RM自体の電源をON・OFFするための「電源」ボタン202と、前記熱交換端末の運転開始を指示するための「運転」ボタン203と、前記熱交換端末に対しタイマーによる運転を指示するための「タイマー」ボタン204と、前記熱交換端末の運転態様の切替を指示する「運転切替」ボタン205と、適宜の節電運転等のガイドを行うための「ecoガイド」ボタン206と、画面表示を1つ前の画面に戻すための「戻る」ボタン207と、「メニュー/決定」ボタン208と、上下左右方向への十字キー209と、が備えられている。なお、図示を省略しているが、メインリモコン装置RMには、各種の表示を行うための、演算部としてのCPUや記憶部としてのメモリ等が内蔵されている。
なお、前記端末用リモコン装置RA,RBについても、図1では区別のために別態様のシンボルにて表記しているが、対応する1つの熱交換端末(すなわち前記端末用リモコン装置RAは前記冷温水パネル51、前記端末用リモコン装置RBは前記冷温水パネル52)について前記リモコン装置RMと同等の機能を果たす、同等の構成を備えている(詳細な図示及び説明は省略)。
以上の基本構成及び作動であるヒートポンプ式空調システム100において、本実施形態の要部は、前記のようにして前記戻り温度センサ53,54により検出される前記戻り温度に基づき熱動弁コントローラCVが前記熱動弁V1,V2の開閉制御を行う際、前記戻り温度が予め定められた目標戻り温度(後述)に到達した後所定の待機時間(詳細は後述)が経過したときに対応する熱動弁V1,V2を開き状態から閉じ状態に制御する(詳細は後述)ことにある。以下、その詳細を順を追って説明する。
まず、本実施形態の第1比較例として、前記のように暖房運転を行うときで、前記と異なり、前記戻り温度が前記目標戻り温度に到達したとき(前記所定の待機時間の経過を待つことなく)に対応する熱動弁V1,V2を開き状態から閉じ状態に制御する場合の、ヒートポンプ式空調システム100の挙動を、図7中の破線で示すグラフにより説明する。なお、以下、図7及び後述の図9においては、説明の簡単化と理解の容易化のために、熱動弁V1,V2が設けられる前記往き管2B1,2B2及び前記戻り管3B1,3B2内の温水又は冷水が同一の温度挙動をとり(すなわち同時に前記戻り温度に到達)、これに対応して前記熱動弁V1,V2(以下適宜、単に「熱動弁V」と総称する)も一括して前記熱動弁コントローラCVによって開閉制御される場合を例にとって説明する。
図示において、図7(a)は、熱交換端末全体(すなわち冷温水パネル51,52)の負荷(この場合は暖房負荷)の経時推移を表している。
また、図7(b)は、前記冷温水戻り管下流側部分3Bの戻り管3B1,3B2(以下適宜、単に「戻り管3B」と総称する)における温水の前記戻り温度[℃](前記のように戻り温度センサ53,54で検出。以下同様)の経時推移を示している。
また、図7(c)は、前記冷温水往き管2の共通往き管2Aにおける温水の前記往き温度[℃](前記のように往き温度56で検出。以下同様)の経時推移を示している。
また、図7(d)は、前記往き管2B1,2B2に設けた前記熱動弁V1,V2の開き状態(図中「ON」で表す)及び閉じ状態(図中「OFF」で表す)の切り替えの経時推移を示している。
また、図7(e)は、前記室外機制御部CUが前記圧縮機7への回転制御時に指示する回転数に相当する指示周波数(但し回転数[rps]で表記)の経時推移を示している。
また、図7(f)は、前記膨張弁9の弁開度の経時推移を示している。
また、図7(g)は、前記ヒートポンプ式空調システム100全体の消費電力[kW]の経時推移を示している。
例えば前記のようにして熱動弁Vが開き状態とされ暖房運転が行われている状態で、前記戻り温度が前記目標戻り温度(この例では42[℃]。以下同様)に到達したら(図7(b)における時間t1参照)、ただちに熱動弁Vが閉じ状態に切り替えられる(図7(d)下段における時間t1参照)。これにより、前記共通往き管2Aから供給される温水はバイパス管50から前記共通戻り管3Aへと導入され、そのまま共通戻り管3Aから前記水−冷媒熱交換器11へと還流される。この結果、温水は冷温水パネル51,52での温度降下のない状態で還流されることから、前記水−冷媒熱交換器11の出口側における前記往き温度は前記熱動弁Vを閉じた後短時間のうちに急上昇し、前記目標往き温度(この例では60[℃])を超え(図7(c)における時間t2参照)、圧縮機7の回転もそれまでの回転数(この例では90[rps])から直ちに停止(すなわち0[rps])されることになる(図7(e)下段における時間t2参照)。またこのとき、圧縮機7の停止に対応して前記膨張弁9の開度もそれまでのほぼ全閉に近い開度(以下適宜、単に「最低開度」という)から全開状態に制御される(図7(f)下段における時間t2参照)。
その後、前記熱動弁Vが閉じ制御されたタイミングから予め定められた熱動弁閉止時間(この例では前記目標戻り温度に応じて定められた熱動弁閉止時間、後述の図8(a)参照)T2′が経過すると、熱動弁Vが再び開き状態に切り替えられる(図7(d)下段における時間t3参照)。なお、前記熱動弁V1,V2それぞれの前記熱動弁閉止時間T2′は、対応する前記端末用リモコン装置RA,RBの操作に基づいてそれぞれ設定される。
すなわち、例えばユーザが、前記端末用リモコン装置RA,RBにおいて前記「運転切替」ボタン205にて暖房運転を選択し、前記「戻る」ボタン207、前記「メニュー/決定」ボタン208、前記十字キー209等を適宜に操作することで、暖房の強弱に対応した温度レベル(暖房設定レベル)を複数段階(この例では後述のようにレベル1〜レベル9の9段階)にて選択することができる。そして、この選択された温度レベルに応じて、熱動弁コントローラCVにより、前記目標戻り温度及び前記熱動弁閉止時間T2′(後述の熱動弁閉止時間T2も同様。以下適宜、単に「熱動弁閉止時間T」と総称する)が自動的に設定される。すなわち、図8(a)に示すように、温度レベルとして、暖房の程度が最も弱い(言い替えれば温度が最も低い)レベル1が選択された場合には、前記目標戻り温度は34[℃]に設定され、前記熱動弁閉止時間Tは19[分]に設定される。また、これよりも暖房の程度が1段階強いレベル2が選択された場合には、前記目標戻り温度はやや上がって39[℃]に設定され、前記熱動弁閉止時間Tはやや短くなって17[分]に設定される。以降同様に、レベル3が選択された場合には前記目標戻り温度は41[℃]で前記熱動弁閉止時間Tは15[分]となり、レベル4が選択された場合には前記目標戻り温度は42[℃](前記した例に相当)で前記熱動弁閉止時間Tは13[分]となり、レベル5が選択された場合には前記目標戻り温度は43[℃]で前記熱動弁閉止時間Tは12[分]となり、レベル6が選択された場合には前記目標戻り温度は44[℃]で前記熱動弁閉止時間Tは11[分]となり、レベル7が選択された場合には前記目標戻り温度は45[℃]で前記熱動弁閉止時間Tは10[分]となり、レベル8が選択された場合には前記目標戻り温度は46[℃]で前記熱動弁閉止時間Tは9[分]となる。そして、暖房の程度が最も強い(言い替えれば温度が最も高い)レベル9が選択された場合には前記目標戻り温度は47[℃]で前記熱動弁閉止時間Tは8[分]に設定される。なお、このように、熱動弁閉止時間Tは、高いレベルであるほど(言い替えれば目標戻り温度が高いほど)短くなっている。なお、図8(b)については後述する。
図7に戻り、前記したような熱動弁Vの開き状態への制御により、前記共通往き管2Aから供給される温水は各往き管2B1,2B2を介し冷温水パネル51,52へ導かれて放熱が行われる。このとき、前記したように前記バイパス管50の横断面積は、前記共通往き管2A及び前記共通戻り管3Aの横断面積よりも十分に小さくなっていることから、その流通抵抗の差により、前記共通往き管2Aから供給される温水は、バイパス管50へ導入されることはなく各往き管2B1,2B2を介し冷温水パネル51,52へ導かれる。そして、前記冷温水パネル51,52での放熱による温度降下を経た温水は各戻り管3B1,3B2及び共通戻り管3Aを介し前記水−冷媒熱交換器11へと還流される。この結果、前記水−冷媒熱交換器11の出口側における前記往き温度が前記目標往き温度(この例では60[℃])を割り込む(図7(c)における時間t3〜t4参照)のに対応して、圧縮機7は前記停止状態から駆動再開され(図7(e)下段における時間t4参照)、その回転数は90[rps]まで徐々に増大する(図7(e)下段における時間t4〜t7参照)。またこのとき、圧縮機7の駆動再開に対応して前記膨張弁9の開度もそれまでのほぼ全開状態から前記最低開度に制御される(図7(f)下段における時間t4参照)。
その後、前記同様、再び前記戻り温度が前記目標戻り温度(42[℃])に到達したら(図7(b)における時間t7参照)、熱動弁Vが閉じ状態に切り替えられる(図7(d)下段における時間t7参照)。なお、前記のようにして熱動弁Vが開き状態となった後このように閉じ状態にされるまでの間が、熱動弁開放時間T1′となる。このように熱動弁Vが閉じ状態になることにより、前記同様、前記往き温度が前記熱動弁Vを閉じた後短時間のうちに急上昇し、前記目標往き温度(60[℃])を超え、(図7(c)における時間t8参照)、圧縮機7の回転がそれまでの回転数(この例では90[rps])から直ちに停止(すなわち0[rps])される(図7(e)下段における時間t8参照)。これに対応して前記膨張弁9の開度も前記最低開度から再び全開状態に制御される(図7(f)下段における時間t8参照)。
以降、同様にして、前記熱動弁閉止時間T2′が経過すると熱動弁Vが開き状態となり(図7(d)下段における時間t12参照)、前記往き温度が前記目標往き温度を割り込むのに対応して圧縮機7が駆動再開され(図7(e)下段における時間t13参照)、その回転数が90[rps]まで徐々に増大し(図7(e)下段における時間t13〜t16参照)前記膨張弁9の開度も前記最低開度に制御される(図7(f)下段における時間t13参照)。そして、前記戻り温度が目標戻り温度に到達したら熱動弁Vが閉じられて前記圧縮機7が駆動停止され、以降、同様の流れが繰り返される。
なお、前記の挙動により、この第1比較例におけるヒートポンプ式空調システム100全体の消費電力(但し前記圧縮機7の消費電力が大部分を占める)は、図7(g)に示すように、前記圧縮機7が停止している時間t2〜t4において最低値で推移した後、前記圧縮機7の回転数の増大に伴い右上がりに増加して(時間t4〜t8参照)最大値2[kW]に達した(時間t8参照)後に、前記圧縮機7の駆動停止により再び前記最低値に戻る。以降同様に、時間t8〜t13の最低値の後時間t13〜t17で右上がりに増加し前記最大値に達した後に時間t17で再び前記最低値に戻り、時間t17〜t22の最低値の後時間t22〜t24で右上がりに増加し前記最大値に達した後に時間t24で再び前記最低値に戻り、同様の態様を時間t25まで繰り返す。
以上説明したように、この第1比較例においては、熱動弁Vを開→往き温度が目標往き温度を割り込んで圧縮機7駆動開始→温水供給により冷温水パネル51,52の放熱開始→戻り温度が目標戻り温度に到達し熱動弁Vを閉→往き温度が目標往き温度を超えて圧縮機7駆動停止、という流れが、比較的短い間隔で何度も繰り返されこととなる。特に、暖房負荷が比較的小さい場合は、圧縮機7の駆動開始後に短時間で前記目標戻り温度に到達することから、短時間で前記のようにして熱動弁Vが閉じ圧縮機7が駆動停止することとなる。このような運転態様となる結果、室外機1の運転効率が低下するとともに、圧縮機7の駆動開始・停止の頻発による寿命低下を招くおそれがある。
そこで、本実施形態においては、上記のような圧縮機7の駆動開始・停止の頻発を抑制するために、前記第1比較例のように前記戻り温度が前記目標戻り温度に到達したとき熱動弁V1,V2を開き状態から閉じ状態に制御するのではなく、前記戻り温度が前記目標戻り温度に到達した後、(その到達した状態が維持されて)所定の待機時間が経過したとき、熱動弁V1,V2を閉じ状態に制御する。これにより、前記第1比較例と異なり、図7の実線のグラフに示すような挙動となる。
すなわち、前記のように熱動弁Vが開き状態とされ暖房運転が行われている状態で、前記戻り温度が前記目標戻り温度(42[℃])に到達したら(図7(b)における時間t6参照)、その時点から前記待機時間(この例では10[分])が経過した後(図7(d)上段における時間t10参照)に、熱動弁Vが閉じ状態に切り替えられる。このとき、前記第1比較例とは異なり、本実施形態では、前記目標戻り温度到達後も前記所定時間の間(すなわち10分間)は熱動弁Vが開かれて冷温水パネル51,52による前記放熱が行われ前記往き温度の急上昇は防止されている。したがって、前記圧縮機7は、前記往き温度が前記目標往き温度(60[℃])に達した(図7(c)における時間t6参照)後において、往き温度が目標往き温度となるように、それまでの回転数(この例では前記第1比較例よりも小さい60[rps]。その理由については後述)から段階的に回転数が低減された後、駆動停止されることになる(図7(e)上段における時間t6〜t11参照)。なおこのとき、圧縮機7の前記の減速・停止態様に対応して、前記膨張弁9の開度も、前記待機時間(10[分])が経過する間とその直後までにわたって、それまでのほぼ全閉に近い開度(最低開度)から全開状態に向かって段階的に大きくなるように制御される(図7(f)上段における時間t6〜t11参照)。
その後、前記第1比較例同様、前記熱動弁Vが閉じ制御されたタイミングから前記熱動弁閉止時間T2(この例では前記図8(a)のテーブルを用いて定められた、前記熱動弁閉止時間T2′と同一値)が経過すると、熱動弁Vが再び開き状態に切り替えられる(図7(d)上段における時間t15参照)。この結果、前記同様、前記往き温度が前記目標往き温度(60[℃])を割り込む(図7(c)における時間t15〜t16参照)のに対応して、圧縮機7が前記停止状態から駆動再開され(図7(e)上段における時間t16参照)、その回転数は60[rps]まで徐々に増大する(図7(e)上段における時間t16〜t18参照)。またこれに対応して前記膨張弁9の開度もほぼ全開状態から前記最低開度に制御される(図7(f)上段における時間t16参照)。
その後、前記同様、再び前記戻り温度が前記目標戻り温度(42[℃])に到達し(図7(b)における時間t18参照)、さらに前記待機時間(10[分])が経過したら、熱動弁Vが閉じ状態に切り替えられる(図7(d)上段における時間t22参照)。なお、前記のようにして熱動弁Vが開き状態となった後このように閉じ状態にされるまでの間が、熱動弁開放時間T1(前記熱動弁開放時間T1′よりも長くなる。図7(d)参照)となる。そして、前記待機時間が経過する間に、前記同様、前記往き温度が前記目標往き温度(60[℃])に達した(図7(c)における時間t18参照)後において、往き温度が目標往き温度となるように、圧縮機7の回転数がそれまでの回転数(60[rps])から段階的に低減された後、駆動停止される(図7(e)上段における時間t18〜t23参照)。これに対応して前記膨張弁9の開度も前記最低開度から再び全開状態に向かって段階的に大きくなるように制御される(図7(f)上段における時間t18〜t23参照)。
以降、同様にして、前記熱動弁閉止時間T2が経過すると熱動弁Vが開き状態となり、前記往き温度が前記目標往き温度を割り込むのに対応して圧縮機7が駆動再開されて回転数が増大(この例では60[rps])し、前記膨張弁9の開度も前記最低開度に制御される。そして、前記戻り温度が目標戻り温度に到達して前記待機時間が経過したら熱動弁Vが閉じられて、往き温度の急上昇に伴い前記圧縮機7が駆動停止され、以降、同様の流れが繰り返される。
なお、前記の挙動により、本実施形態のヒートポンプ式空調システム100全体の消費電力(前記圧縮機7の消費電力が大部分を占める)は、図7(g)に示すように、前記圧縮機7が停止している時間t2〜t4において最低値で推移した後、前記圧縮機7の回転数の増大に伴い右上がりに増加して(時間t4〜t6参照)、前記第1比較例よりは小さい値である最大値1.5[kW]に達した(時間t6参照)後に、前記圧縮機7の減速により徐々に低減され(時間t6〜t11)た後、再び前記最低値に戻る(時間t11参照)。以降同様に、時間t11〜t16の最低値の後時間t16〜t18で右上がりに増加し前記最大値に達した後に時間t18〜t23で徐々に低減して時間t23で再び前記最低値に戻り、同様の態様を時間t25まで繰り返す。
なお、以上は暖房運転時を例にとって説明したが、冷房運転時においても同様の課題が生じる。本実施形態の第2比較例として、前記のように冷房運転を行うときで、前記戻り温度が前記目標戻り温度に到達したときに対応する熱動弁V1,V2を開き状態から閉じ状態に制御する場合の、ヒートポンプ式空調システム100の挙動を、前記図7(a)〜(g)にそれぞれ対応した、図9(a)〜(g)中の破線で示すグラフにより説明する。
図示において、図9(a)は、前記図7(a)同様の熱交換端末全体(冷温水パネル51,52)の負荷(この場合は冷房負荷)の経時推移を表しており、図9(b)は、前記戻り管3Bにおける冷水の前記戻り温度[℃](戻り温度センサ53,54で検出)の経時推移を示しており、図9(c)は、前記共通往き管2Aにおける冷水の前記往き温度[℃](往き温度56で検出)の経時推移を示しており、図9(d)は前記熱動弁V1,V2の開き状態及び閉じ状態の切り替えの経時推移を示しており、図9(e)は、前記圧縮機7への前記指示周波数(回転数[rps]で表記)の経時推移を示しており、図9(f)は、前記膨張弁9の弁開度の経時推移を示しており、図9(g)は、前記ヒートポンプ式空調システム100全体の消費電力[kW]の経時推移を示している。
例えば前記のようにして熱動弁Vが開き状態とされ冷房運転が行われている状態で、前記戻り温度が前記目標戻り温度(この例では15[℃]。以下同様)に到達したら(図9(b)における時間t1参照)、ただちに熱動弁Vが閉じ状態に切り替えられる(図9(d)下段における時間t1参照)。これにより、前記共通往き管2Aから供給される冷水はバイパス管50から前記共通戻り管3Aへと導入され、そのまま共通戻り管3Aから前記水−冷媒熱交換器11へと還流される。この結果、冷水は冷温水パネル51,52での温度上昇のない状態で還流されることから、前記水−冷媒熱交換器11の出口側における前記往き温度は前記熱動弁Vを閉じた後短時間のうちに急低下し、前記目標往き温度(この例では7[℃])を下回り(図9(c)における時間t2参照)、圧縮機7の回転もそれまでの回転数(この例では90[rps])から直ちに停止(すなわち0[rps])されることになる(図9(e)下段における時間t2参照)。またこのとき、圧縮機7の停止に対応して前記膨張弁9の開度もそれまでのほぼ全閉に近い開度(以下適宜、単に「最低開度」という)から全開状態に制御される(図9(f)下段における時間t2参照)。
その後、前記熱動弁Vが閉じ制御されたタイミングから予め定められた前記熱動弁閉止時間(前記目標戻り温度に応じて定められた熱動弁閉止時間、後述の図8(b)参照)T2′が経過すると、熱動弁Vが再び開き状態に切り替えられる(図9(d)下段における時間t3参照)。なお、前記暖房時と同様、前記熱動弁V1,V2それぞれの前記熱動弁閉止時間T2′は、対応する前記端末用リモコン装置RA,RBの操作に基づいてそれぞれ設定される。
すなわち、例えばユーザが、前記端末用リモコン装置RA,RBにおいて前記「運転切替」ボタン205にて冷房運転を選択し、前記「戻る」ボタン207、前記「メニュー/決定」ボタン208、前記十字キー209等を適宜に操作することで、冷房の強弱に対応した温度レベル(冷房設定レベル)を複数段階(この例では後述のようにレベル1〜レベル9の9段階)にて選択することができる。そして、この選択された温度レベルに応じて、熱動弁コントローラCVにより、前記目標戻り温度及び前記熱動弁閉止時間T2′(後述の熱動弁閉止時間T2も同様。以下適宜、単に「熱動弁閉止時間T」と総称する)が自動的に設定される。すなわち、図8(b)に示すように、温度レベルとして、冷房の程度が最も弱い(言い替えれば温度が最も高い)レベル1が選択された場合には、前記目標戻り温度は18[℃]に設定され、前記熱動弁閉止時間Tは19[分]に設定される。また、これよりも冷房の程度が1段階強いレベル2が選択された場合には、前記目標戻り温度はやや下がって17[℃]に設定され、前記熱動弁閉止時間Tはやや短くなって17[分]に設定される。以降同様に、レベル3が選択された場合には前記目標戻り温度は16[℃]で前記熱動弁閉止時間Tは15[分]となり、レベル4が選択された場合には前記目標戻り温度は15[℃](前記した例に相当)で前記熱動弁閉止時間Tは13[分]となり、レベル5が選択された場合には前記目標戻り温度は14[℃]で前記熱動弁閉止時間Tは12[分]となり、レベル6が選択された場合には前記目標戻り温度は13[℃]で前記熱動弁閉止時間Tは11[分]となり、レベル7が選択された場合には前記目標戻り温度は12[℃]で前記熱動弁閉止時間Tは10[分]となり、レベル8が選択された場合には前記目標戻り温度は11[℃]で前記熱動弁閉止時間Tは9[分]となる。そして、冷房の程度が最も強い(言い替えれば温度が最も低い)レベル9が選択された場合には前記目標戻り温度は8[℃]で前記熱動弁閉止時間Tは8[分]に設定される。なお、このように、熱動弁閉止時間Tは、高いレベルであるほど(言い替えれば目標戻り温度が低いほど)短くなっている。
図9に戻り、前記したような熱動弁Vの開き状態への制御により、前記共通往き管2Aから供給される冷水は各往き管2B1,2B2を介し冷温水パネル51,52へ導かれて吸熱が行われ、その吸熱による温度上昇を経て各戻り管3B1,3B2及び共通戻り管3Aを介し前記水−冷媒熱交換器11へと還流される。この結果、前記水−冷媒熱交換器11の出口側における前記往き温度が前記目標往き温度(この例では7[℃])を上回る(図9(c)における時間t3〜t4参照)のに対応して、圧縮機7は前記停止状態から駆動再開され(図9(e)下段における時間t4参照)、その回転数は90[rps]まで徐々に増大する(図9(e)下段における時間t4〜t7参照)。またこのとき、圧縮機7の駆動再開に対応して前記膨張弁9の開度もそれまでのほぼ全開状態から前記最低開度に制御される(図9(f)下段における時間t4参照)。
その後、前記同様、再び前記戻り温度が前記目標戻り温度(15[℃])に到達したら(図9(b)における時間t7参照)、熱動弁Vが閉じ状態に切り替えられる(図9(d)下段における時間t7参照)。これにより、前記同様、前記往き温度が前記熱動弁Vを閉じた後短時間のうちに急低下し、前記目標往き温度(7[℃])を下回り(図9(c)における時間t7参照)、圧縮機7の回転が90[rps]から直ちに停止(すなわち0[rps])される(図9(e)下段における時間t8参照)。これに対応して前記膨張弁9の開度も前記最低開度から再び全開状態に制御される(図9(f)下段における時間t8参照)。
以降、同様にして、前記熱動弁閉止時間T2′が経過すると熱動弁Vが開き状態となり(図9(d)下段における時間t12参照)、前記往き温度が前記目標往き温度を上回るのに対応して圧縮機7が駆動再開され(図9(e)下段における時間t13参照)、その回転数が90[rps]まで徐々に増大し(図9(e)下段における時間t13〜t16参照)前記膨張弁9の開度も前記最低開度に制御される(図9(f)下段における時間t13参照)。そして、前記戻り温度が目標戻り温度に到達したら熱動弁Vが閉じられて、往き温度の降下に伴い前記圧縮機7が駆動停止され、以降、同様の流れが繰り返される。
なお、前記の挙動により、この第2比較例におけるヒートポンプ式空調システム100全体の消費電力(前記圧縮機7の消費電力が大部分を占める)も、前記第1比較例と同様、図9(g)に示すように、前記圧縮機7が停止している時間t2〜t4において最低値で推移した後、前記圧縮機7の回転数の増大に伴い右上がりに増加して(時間t4〜t8参照)最大値2[kW]に達した(時間t8参照)後に、前記圧縮機7の駆動停止により再び前記最低値に戻る。以降同様に、時間t8〜t13の最低値の後時間t13〜t17で右上がりに増加し前記最大値に達した後に時間t17で再び前記最低値に戻り、時間t17〜t22の最低値の後時間t22〜t24で右上がりに増加し前記最大値に達した後に時間t24で再び前記最低値に戻り、同様の態様を時間t25まで繰り返す。
以上の結果、この第2比較例においても、前記の暖房の場合と同様、室外機1の運転効率が低下するとともに、圧縮機7の駆動開始・停止の頻発による寿命低下を招くおそれがある。
このような冷房運転の場合においても、前記戻り温度が前記目標戻り温度に到達した後、(その到達した状態が維持されて)所定の待機時間が経過したとき、熱動弁V1,V2を閉じ状態に制御することで、図9の実線のグラフに示すような挙動となる。
すなわち、前記のように熱動弁Vが開き状態とされ冷房運転が行われている状態で、前記戻り温度が前記目標戻り温度(15[℃])に到達したら(図9(b)における時間t6参照)、その時点から前記待機時間(この例では10[分])が経過した後(図9(d)上段における時間t10参照)に、熱動弁Vが閉じ状態に切り替えられる。このとき、前記第2比較例とは異なり、本実施形態では、前記目標戻り温度到達後も前記所定時間の間(すなわち10分間)は熱動弁Vが開かれて冷温水パネル51,52による前記吸熱が行われ前記往き温度の急低下は防止されている。したがって、前記圧縮機7は、前記往き温度が前記目標往き温度(7[℃])に達した(図9(c)における時間t6参照)後において、往き温度が目標往き温度となるように、それまでの回転数(この例では前記第2比較例よりも小さい60[rps]。その理由については後述)から段階的に回転数が低減された後、駆動停止されることになる(図9(e)上段における時間t6〜t11参照)。なおこのとき、圧縮機7の前記の減速・停止態様に対応して、前記膨張弁9の開度も、前記待機時間(10[分])が経過する間とその直後までにわたって、それまでのほぼ全閉に近い開度(最低開度)から全開状態に向かって段階的に大きくなるように制御される(図9(f)上段における時間t6〜t11参照)。
その後、前記第2比較例同様、前記熱動弁Vが閉じ制御されたタイミングから前記熱動弁閉止時間T2(この例では前記図8(b)のテーブルを用いて定められた、前記熱動弁閉止時間T2′と同一値)が経過すると、熱動弁Vが再び開き状態に切り替えられる(図9(d)上段における時間t15参照)。この結果、前記同様、前記往き温度が前記目標往き温度(7[℃])を上回る(図9(c)における時間t15〜t16参照)のに対応して、圧縮機7が前記停止状態から駆動再開され(図9(e)上段における時間t16参照)、その回転数はここでは60[rps]まで徐々に増大する(図9(e)上段における時間t16〜t18参照)。またこれに対応して前記膨張弁9の開度もほぼ全開状態から前記最低開度に制御される(図9(f)上段における時間t16参照)。
その後、前記同様、再び前記戻り温度が前記目標戻り温度(15[℃])に到達し(図9(b)における時間t18参照)、さらに前記待機時間(10[分])が経過したら、熱動弁Vが閉じ状態に切り替えられる(図9(d)上段における時間t22参照)。これにより、前記同様、前記往き温度が前記目標往き温度(7[℃])に達した(図9(c)における時間t18参照)後において、往き温度が目標往き温度となるように、圧縮機7の回転数がそれまでの回転数(60[rps])から段階的に低減された後、駆動停止される(図9(e)上段における時間t18〜t23参照)。これに対応して前記膨張弁9の開度も前記最低開度から再び全開状態に向かって段階的に大きくなるように制御される(図9(f)上段における時間t18〜t23参照)。
以降、同様にして、前記熱動弁閉止時間T2が経過すると熱動弁Vが開き状態となり、前記往き温度が前記目標往き温度を上回るのに対応して圧縮機7が駆動再開されて回転数が増大(この例では60[rps])し、前記膨張弁9の開度も前記最低開度に制御される。そして、前記戻り温度が目標戻り温度に到達して前記待機時間が経過したら熱動弁Vが閉じられて、往き温度の急低下に伴い前記圧縮機7が駆動停止され、以降、同様の流れが繰り返される。
この冷房の場合も、前記同様、本実施形態のヒートポンプ式空調システム100全体の消費電力(前記圧縮機7の消費電力が大部分を占める)は、図9(g)に示すように、前記圧縮機7が停止している時間t2〜t4において最低値で推移した後、前記圧縮機7の回転数の増大に伴い右上がりに増加して(時間t4〜t6参照)、前記第2比較例より小さい値である最大値1.5[kW]に達した(時間t6参照)後に、前記圧縮機7の減速により徐々に低減され(時間t6〜t11)た後、再び前記最低値に戻る(時間t11参照)。以降同様に、時間t11〜t16の最低値の後時間t16〜t18で右上がりに増加し前記最大値に達した後に時間t18〜t23で徐々に低減して時間t23で再び前記最低値に戻り、同様の態様を時間t25まで繰り返す。
次に、以上の手法を実現するために前記熱動弁コントローラCVが実行する制御手順を、図10及び図11により説明する。
まず、暖房運転時の前記熱動弁コントローラCVによる制御手順を図10のフローチャートに示す。なお、以下では、前記戻り温度センサ53の検出結果に基づいて前記熱動弁V1を制御する内容をこのフローを用いて説明するが、前記戻り温度センサ54の検出結果に基づいて前記熱動弁V2を制御する場合も同等の内容である。
図10において、まずステップS110で、前記室外機1が運転開始状態となったか否かを判定する。具体的には、前記図4(a)のステップS10と同様の手法を、前記室外機制御部CUを介し適宜の情報を取得することによって行う。但し、この判定は、図4(a)において前記した、(前記メインリモコン装置RMや前記端末用リモコン装置RA,RBを介し)操作者による適宜の室外機1の運転開始操作がなされることで停止状態から起動されたときにのみ行われるものであり、別途述べたような運転停止後から再起動して室外機1の運転が再び開始されたときについては、この判定は行われない。運転開始状態となるまではステップS110の判定が満たされず(S110:No)ループ待機し、運転開始状態となるとステップS110の判定が満たされ(S110:Yes)、ステップS120に移る。
ステップS120では、熱動弁コントローラCVは、前記熱動弁V1を開き状態に制御する。その後、ステップS130に移る。
ステップS130では、熱動弁コントローラCVは、この時点で前記戻り温度センサ53で検出された前記戻り温度が前記目標戻り温度(前記の例では42[℃])以上であるか否かを判定する。前記戻り温度が前記目標戻り温度未満である場合、判定は満たされず(S130:NO)、後述のステップS170に移る。前記戻り温度が前記目標戻り温度以上である場合、判定が満たされ(S130:YES)、ステップS140に移る。
ステップS140では、熱動弁コントローラCVは、前記所定の待機時間としての10分間が経過したか否かを判定する。10分が経過しないうちは判定が満たされず(S140:NO)、前記ステップS130に戻って同様の手順を繰り返す。10分が経過したら(すなわちステップS130の判定が満たされる状態が10分維持されたら)、ステップS140の判定が満たされ(S140:YES)、ステップS150に移る。
ステップS150では、熱動弁コントローラCVは、前記熱動弁V1を閉じ状態に制御する。その後、ステップS160に移る。
ステップS160では、熱動弁コントローラCVは、前記熱動弁閉止時間T2が経過したか否かを判定する。熱動弁閉止時間T2が経過しないうちは判定が満たされず(S160:NO)ループ待機し、熱動弁閉止時間T2が経過したら、ステップS160の判定が満たされ(S160:YES)、ステップS170に移る。
ステップS170では、前記ステップS120と同様、熱動弁コントローラCVは、前記熱動弁V1を開き状態に制御する。その後、前記ステップS130に戻って同様の手順を繰り返す。すなわち、熱動弁コントローラCVは、前記ステップS110での判定が満たされて室外機1が起動された後は、(その後前記運転停止となっても)常に、前記戻り温度が前記目標戻り温度に対してどのような値であるかを監視しており、室外機1が待機状態で停止していてもその監視は変わらず続けているものである。
次に、冷房運転時の前記熱動弁コントローラCVによる制御手順を図11のフローチャートに示す。図11に示すように、このフローでは、前記図10のフローにおけるステップS130が、不等号の向きが逆になったステップS130Aに置き換えられている。すなわちステップS130Aでは、熱動弁コントローラCVは、この時点で前記戻り温度センサ53で検出された前記戻り温度が前記目標戻り温度(前記の例では15[℃])以下であるか否かを判定する。前記戻り温度が前記目標戻り温度を超過している場合は判定は満たされず(S130A:NO)前記ステップS170に移り、前記戻り温度が前記目標戻り温度以下である場合は判定が満たされ(S130A:YES)前記ステップS140に移る。これ以外の手順は前記図10と同様であり、説明を省略する。
なお、図示を省略しているが、前記の図4、図5、図10、及び図11のフローの各手順における任意のタイミングで操作者による適宜のヒートポンプ式空調システム100の運転終了操作がなされた場合には、各フローは終了され、室外機1を含むヒートポンプ式空調システム100が停止する。
以上説明したように、本実施形態のヒートポンプ式空調システム100によれば、熱動弁コントローラCVにより、温水又は冷水の戻り温度が前記目標戻り温度に到達した後、さらに所定の待機時間(前記の例では10分)が経過してから、熱動弁Vが閉じ状態に制御される。これにより、前記のようにして熱動弁Vが開かれた後に閉じられるまでの時間が長くなる(前記熱動弁開放時間T1′と熱動弁開放時間T1との対比を参照)ので、圧縮機7の駆動時間が延びる。具体的には、図7及び図9を用いて前記したように、圧縮機7の回転数は(前記第1及び第2比較例と異なり)、往き温度が目標往き温度になるように、段階的に低減させた後に停止されるので、その間の駆動時間を延ばすことができる。この結果、室外機1の運転効率低下を抑制できるとともに、第1及び第2比較例のような圧縮機7の駆動開始・停止の頻発傾向を抑制し、寿命を延ばすことができる。
また、目標戻り温度到達後の前記所定時間の間熱動弁Vが開かれていることで、前記した、熱動弁Vを開→圧縮機7を駆動開始→温水又は冷水供給により冷温水パネル51,52の暖房又は冷房運転を開始→戻り温度が目標戻り温度に到達し熱動弁Vを閉→往き温度が目標往き温度を超えて圧縮機7を駆動停止、という流れの繰り返しにおいて、前記戻り温度は、暖房時では前記第1比較例よりも高めに推移し、冷房時では前記第2比較例よりも低めに推移することになる(図7(b)及び図9(b)参照)。この結果、圧縮機7の駆動停止後に(温水の温度低下又は冷水の温度上昇に伴って)再度圧縮機7を駆動開始する際、圧縮機7の回転数を高回転数まで上げなくても前記戻り温度が前記目標戻り温度に到達可能となる。すなわち圧縮機7の回転数を低く抑えることができるので、駆動時に消費する電力を抑制することができる。例えば前記の例では、圧縮機7の最高回転数は、第1及び第2比較例の90[rps]よりも低い60[rps]となっており(図7(e)及び図9(e)参照)、この結果、システム全体の消費電力のピーク値も第1及び第2比較例の2[kW]よりも低い1.5[kW]となっている(図7(g)及び図9(g)参照)。これにより、前記駆動開始・停止の頻発を抑制したこととも相まって、システムトータルでみて、運転時に消費する電力を大きく低下させることができる。
このことを図12により説明する。図12は、前記図7(g)や図9(g)に示したヒートポンプ式空調システム100の消費電力の経時挙動を、そのまま横軸を延ばす形で延長したものに相当している。図7(g)や図9(g)と同様、破線で示すグラフが第1及び第2比較例(以下、単に「比較例」と総称する)を表しており、実線で示すグラフが本実施形態を表している。
図示において、前記したように、比較例では、運転時全体において消費する電力値は図中の破線グラフの下方に位置する破線ハッチング部分の面積で表される。一方、実施形態では、運転時全体において消費する電力値は図中の実線グラフの下方に位置する実線ハッチング部分の面積で表される。
ここで、圧縮機7が起動してから停止するまでの運転期間に消費する総電力値は、比較例では期間x′(例えば図7中の時間t4〜t8に相当)における一つの山(凸部)で表され、ピーク値(最大値)は2.0[kW]となるのに対し、実施形態では前記期間x′よりもやや長い期間x(例えば図7中の時間t4〜t11に相当)における一つの山(凸部)で表され、ピーク値(最大値)は1.5[kW]となる。すなわち、ピーク値は比較例のほうが大きいが圧縮機7の前記運転期間は実施形態のほうが長い。したがって、前記1つの山(凸部)単位で見ると、消費電力値は比較例も実施形態もそれほどには差違はない。
しかしながら、もっと長い時間的スパン、例えば図示の期間X1でみた場合には、比較例では前記の山(凸部)が4個存在するのに対し、実施形態では3個にとどまり、山(凸部)1個分の差が生じることとなる。さらに長く図示の期間X1+X2でみた場合には、比較例では前記の山(凸部)が8個存在するのに対し、実施形態では6個にとどまり、山(凸部)2個分の差が生じることとなる。これらの結果、ヒートポンプ式空調システム100の運転時間が長くなればなるほど、消費する総電力値を著しく低下させることができる。
なお、前記のように前記戻り温度を前記比較例よりも高め(温水の場合)又は低め(冷水の場合)に推移させる手法として、目標戻り温度の設定に対し実際の制御をシフトする(例えば暖房運転時において目標戻り温度42℃の設定に対して実際の制御として戻り温度が43℃となるように制御する)ことも考えられる。しかしながらこの場合、暖房負荷又は冷房負荷が大きいと、熱動弁Vを開き圧縮機7を最高回転数で駆動しても、目標戻り温度42℃には到達しているのにシフト後の戻り温度43℃を実現できない可能性が生じる。この場合、熱動弁Vを全開にしての運転が長時間継続することとなり、熱動弁Vの開閉による各熱交換端末(冷温水パネル51,52)の暖房又は冷房運転において、室内の温度調整がきかず、過熱(暖房運転の場合)又は過冷却(冷房運転の場合)になってしまうという問題が生じる。
本実施形態によれば、前記のように目標戻り温度到達後の前記所定時間(10[分])の間熱動弁Vを開く手法とすることで、前記のような弊害を回避しつつ、安定した室内の温度調整が行え、前記戻り温度を高め又は低めに推移させることができ、前記した運転効率向上・圧縮機寿命向上・消費電力低減効果を得ることができる。
また、本実施形態では特に、前記圧縮機制御部61により、前記往き温度が前記目標往き温度となるように圧縮機7が制御される。これにより、ユーザの所望する温度環境に対応し、前記室外機1から適切な温水又は冷水供給を行うことができる。そして戻り温度が目標戻り温度に到達した後も、往き温度が目標往き温度になるように、圧縮機7の回転数を段階的に低くする(例えば図7(e)上段及び図9(e)上段の時間t6〜t11参照)ことで、前記比較例よりも圧縮機7の駆動時間を確実に延ばすことができる。なお、図7及び図9のt6〜t11等においては2段階にて回転数を低下させているが、これに限られず、3段階以上にてもっと小刻みに回転数を低下させても良い。
また、本実施形態では特に、前記のように往き温度が目標往き温度となるように圧縮機7が制御されるのに対応し、前記膨張弁制御部62により、前記冷媒吐出温度が前記目標吐出温度となるように膨張弁9の開度が制御される。これにより、確実に前記室外機1から適切な温水又は冷水供給を行うことができる。特に、前記のように圧縮機7の回転数が段階的に低くなる際に、膨張弁9の開度を最低開度から段階的に大きくする(例えば図7(f)上段及び図9(f)上段の時間t6〜t11参照)ことで、効率の良い最適な室外機1の運転を実行可能である。
また、前記のようにして熱動弁Vが閉じられると前記往き管2B1,2B2及び前記戻り管3B1,3B2における温水又は冷水の流動がなくなり、前記戻り温度センサ53,54で検出される前記戻り温度によって監視していた室内の負荷状況を正確に把握することができない。そこで、本実施形態では特に、熱動弁コントローラCVは、前記のようにして熱動弁Vを閉じた後、(戻り温度の検出結果に基づくことなく)前記熱動弁閉止時間T2の経過後に再び開き状態とする。これにより、前記熱動弁Vを用いて前記戻り温度を前記目標戻り温度とするための制御を、円滑かつ確実に実行することができる。
また、本実施形態では特に、図8(a)に示したように、暖房運転時においては前記目標戻り温度が高いほど前記熱動弁閉止時間T2を短くし、冷房運転時においては前記目標戻り温度が低いほど前記熱動弁閉止時間T2を短くする。すなわち、暖房時の目標戻り温度が高いほど(=ユーザによる前記暖房設定レベルが強いほど)、若しくは、冷房時の目標戻り温度が低いほど(=ユーザによる前記冷房設定レベルが強いほど)、熱動弁閉止時間T2を短くすることで、熱動弁Vが開き状態となるタイミングを早くし、速やかにユーザの所望する温度環境を実現することができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、熱交換端末として、輻射端末である冷温水パネル151,152が接続される場合を例にとって説明したが、これに限られず、冷房・暖房機能のうち少なくとも一方を備えた他の端末(吸熱・放熱端末)、例えば暖房パネル、床暖房パネル、ラジエータ、コンベクター等を接続してもよい。また、上記実施形態では、冷温水パネル151,152の2台の熱交換端末が接続される場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち3台以上の熱交換端末が接続される構成でも良い。さらに、複数台接続された熱交換端末のうち、指定された特定の熱交換端末に対応する熱動弁にのみ、先に説明したような熱動弁コントローラCVによる熱動弁Vの開閉制御を適用してもよい。
また、上記実施形態では、熱源機として、熱源側熱交換器としての室外熱交換器8に冷媒を通じる一方で外気を送風する室外ファン10を有し、熱源としての外気と前記冷媒とが熱交換される、空気熱源式のヒートポンプである前記室外機1を使用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、熱源機を、熱源側熱交換器に対して水や不凍液が供給されそれらの液体と冷媒とが当該熱源側熱交換器において熱交換する構成のものとしたり、地中又は比較的大容量の水源中に熱源側熱交換器を設け、この熱源側熱交換器で前記地中又は前記水源と冷媒とが熱交換する構成のものとしてもよい。さらには、熱源側熱交換器において前記冷媒と熱交換できるものであれば、前記液体や前記外気や前記水源に代えて、それ以外のもの(例えば、発煙、排煙、各種高温ガス等を含む気体や、熱砂、塵埃、各種粒子等を含む流動固体)を熱源側熱交換器に通じたり、太陽光、反射光、その他輻射等による熱を熱源側熱交換器に供給して用いる構成としても良い。